JP2020034091A - 無段変速機の制御装置及び制御方法 - Google Patents

無段変速機の制御装置及び制御方法 Download PDF

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篤志 廣枝
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浩介 阿部
Kosuke Abe
浩介 阿部
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Abstract

【課題】バルブに異物の噛み込み等による作動不良が生じた場合に速やかに無段変速機の保護を図ることができるようにする。【解決手段】プライマリプーリ4とセカンダリプーリ5と両プーリに巻き掛けられたベルト6とを備え、車両の駆動源10に接続され、変速比を制御する油圧制御用ソレノイドバルブ63を備えた無段変速機1の制御装置であって、油圧制御用ソレノイドバルブ63への指示圧の変化に対する実圧の変化に遅れが発生したことを判定する判定手段71と、判定手段が遅れの発生を判定したら無段変速機1の保護制御を行う保護制御手段73とを備える。【選択図】図1

Description

本発明は、バルブに異物の噛み込みに起因した作動不良が生じた場合を考慮して無段変速機を制御する無段変速機の制御装置及び制御方法に関するものである。
車両用の自動変速機の制御装置には、入力信号に基づいて制御圧を発生するリニアソレノイドバルブ(以下、単にバルブともいう)が使用されている。このバルブは、入力ポート、出力ポート、ドレンポート等を備えたスリーブ内でスプールがソレノイドによって軸方向移動することで油圧が調整され制御圧が発生する。出力油圧を調圧している状態では、入力ポートやドレンポートのクリアランスは極めて小さいため、油中に混入している鉄粉等の異物(夾雑物、「コンタミ」とも言う)がこのポートのクリアランスに噛み込んで適切な油圧制御に支障をきたすおそれがある。
そこで、例えば特許文献1に開示されているように、ソレノイドを作動させてスプールを一時的に往復移動させる異物除去動作を行う技術が開発されている。
特許文献1の技術では、車両が停止状態でかつN制御(車両が走行レンジで停車中に入力クラッチによって伝達されるトルクを小さくする制御)の開始前や、車両が停止状態でかつN制御の終了直後のタイミングで異物除去動作を行う。これらのタイミングでは、異物除去動作を行った場合でも入力クラッチの係合圧は殆ど変動しないので、入力クラッチの係合圧の変動に伴うショックの発生も招かない。
特開2008−101632号公報
ところで、特許文献1に記載のように、車両が停止状態でかつN制御の開始前や終了直後のタイミングで異物除去動作を行う構成では、バルブに異物が噛み込んで作動不良が生じてから異物除去動作を行うまでの間にタイムラグが生じる場合がある。つまり、バルブに異物の噛み込みに起因した作動不良が発生しても、上記の条件が成立するタイミングになるまでは、異物除去動作を行なわないので、この間、バルブの作動不良状態が継続され、自動変速機の作動に支障をきたすおそれがあり、ベルト式無段変速機の場合には、ベルト滑りによって無段変速機の損傷を招くおそれもある。
本発明は、このような課題に着目して創案されたもので、バルブに異物の噛み込み等による作動不良が生じた場合に速やかに無段変速機の保護を図ることができるようにした無段変速機の制御装置及び制御方法を提供することを目的としている。
(1)上記の目的を達成するために、本発明の無段変速機の制御装置は、プライマリプーリとセカンダリプーリと前記両プーリに巻き掛けられたベルトとを備え、車両の駆動源に接続され、変速比を制御する油圧制御用ソレノイドバルブを備えた無段変速機の制御装置であって、前記油圧制御用ソレノイドバルブへの指示圧の変化に対する実圧の変化に遅れが発生したことを判定する判定手段と、前記判定手段が前記遅れの発生を判定したら前記無段変速機の保護制御を行う保護制御手段と、を備えていることを特徴としている。
(2)前記保護制御には、前記無段変速機への入力トルクを制限する入力トルク制限制御が含まれていることが好ましい。
(3)前記判定手段が前記遅れの発生を判定したら、前記保護制御を実施する前に、前記油圧制御用ソレノイドバルブのスプールを一時的に往復移動させる異物除去動作を行うバルブ制御手段を備え、前記異物除去動作後に前記遅れが解消した場合には、前記保護制御手段は前記保護制御を行わないことが好ましい。
(4)前記判定手段は、前記指示圧と前記実圧との差の変化量が所定量以上になったときに、前記遅れが発生したと判定することが好ましい。
(5)前記判定手段は、前記無段変速機への入力及び前記変速比の少なくとも一方の状態が定常状態である場合の前記指示圧と前記実圧との差である第1オフセットと、前記一方の状態が過渡状態である場合の前記指示圧と前記実圧との差である第2オフセットとを比較し、前記第2オフセットと前記第1オフセットとの差が所定以上大きいときに、前記遅れが発生したと判定することが好ましい。
(6)前記セカンダリプーリに加えられるセカンダリ圧は、前記無段変速機への入力トルクの大きさに応じたセカンダリ指示圧で制御され、前記プライマリプーリに加えられるプライマリ圧は、前記変速比と前記セカンダリ圧とに応じたプライマリ指示圧で制御され、前記油圧制御用ソレノイドバルブは、前記プライマリ圧を制御するプライマリバルブであって、前記指示圧は前記プライマリ指示圧であることが好ましい。
(7)本発明の無段変速機の制御方法は、プライマリプーリとセカンダリプーリと前記両プーリに巻き掛けられたベルトとを備え、車両の駆動源に接続され、変速比を制御する油圧制御用ソレノイドバルブを備えた無段変速機の制御方法であって、油圧制御用ソレノイドバルブへの指示圧の変化に対する実圧の変化に遅れが発生したか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップで前記遅れの発生を判定したら前記無段変速機の保護制御を行う保護制御ステップと、を備えていることを特徴としている。
本発明によれば、油圧制御用ソレノイドバルブへの指示圧の変化に対する実圧の変化に遅れが発生したら、バルブの作動不良が想定され、このときには、無段変速機の保護制御を行うので、例えばベルト滑りの発生が速やかに抑制され無段変速機の損傷の回避を図ることができる。
また、前記遅れが発生したら、保護制御を行う前に、油圧制御用ソレノイドバルブのスプールを一時的に往復移動させる異物除去動作を行うと、油圧制御用ソレノイドバルブの作動不良を速やかに解消することが可能になる。
つまり、油圧制御用ソレノイドバルブが正常であれば、油圧制御用ソレノイドバルブの指示圧が変化した際に実圧の変化に遅れ(一定以上の遅れ)は発生しないが、油圧制御用ソレノイドバルブが作動不良の場合は、指示圧が変化した際に実圧の変化に遅れが発生することがあり、この場合、同時にベルトのスリップが発生する可能性が極めて高い。そこで、遅れが発生したら異物除去動作を行うことで、油圧制御用ソレノイドバルブの作動不良の原因が異物の噛み込みにある場合には、異物除去動作で異物を除去できれば油圧制御用ソレノイドバルブを正常状態に復帰させることができ、ベルトのスリップの再発を防止することができる。
こうして、油圧制御用ソレノイドバルブの作動不良が解消されれば保護制御は不要になり、保護制御に伴う車両の運転性能の低下を回避することができる。
本発明の一実施形態にかかる車両の駆動系及び無段変速機並びにその制御装置の構成図である。 本発明の一実施形態にかかる無段変速機の制御装置による制御原理を説明するタイムチャートである。 本発明の一実施形態にかかる無段変速機の制御装置によるバルブの作動不良の判定(異常判定)の一例を説明するフローチャートである。 本発明の一実施形態にかかる無段変速機の制御装置による異物除去及び保護制御の一例を説明するフローチャートである。 本発明の一実施形態にかかる無段変速機の制御装置による制御の一例を説明するタイムチャートである。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。以下の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することや適宜組み合わせることが可能である。
[全体システム構成]
図1は本実施形態に係る車両及びこの車両に搭載された無段変速機とその制御装置の要部を示す構成図である。
図1に示すように、無段変速機(CVT)1は、駆動源であるエンジン(内燃機関)10の出力軸10aとトルクコンバータ11を介して駆動連結された入力軸2と、入力軸2と平行に配置され、駆動輪12と減速機13及び差動機構14を介して駆動連結された出力軸3と、入力軸2と連結されたプライマリプーリ4と、出力軸3と連結されたセカンダリプーリ5と、プライマリプーリ4とセカンダリプーリ5とに巻き掛けられた無端状のベルト6と、を備えている。
プライマリプーリ4は、固定シーブ41と、可動シーブ42と、可動シーブ42を軸方向に移動させるプライマリ油室43とを有する。
セカンダリプーリ5は、固定シーブ51と、可動シーブ52と、可動シーブ52を軸方向に移動させるセカンダリ油室53とを有する。
無段変速機1は、プライマリ油室43及びセカンダリ油室53に作動油を供給するために、エンジン10で駆動されるオイルポンプ61と、オイルポンプ61から吐出された作動油を所定のライン圧Pに調圧するライン圧制御弁(プレッシャレギュレータ弁)62と、ライン圧Pを元圧としてプライマリ圧Ppriに調圧するプライマリ圧制御弁63と、ライン圧Pを元圧としてセカンダリ圧Psecに調圧するセカンダリ圧制御弁64とを備えている。
各制御弁62,63,64は、油圧制御回路60内に設けられ、詳細は図示しないが、入力ポート、出力ポート、ドレンポート等を備えたスリーブに内装されたスプールをソレノイドで駆動するソレノイドバルブであって、CVTECU(CVT電子制御ユニット)7によって、各ソレノイド62a,63a,64aへの電流を制御することにより、スプールが駆動され出力する油圧が調整される。そこで、制御弁62,63,64については、「油圧制御用ソレノイドバルブ」とも言う。
CVTECU7には、プライマリプーリ4の回転速度(単位時間回転数、プライマリプーリ回転数)Npriを検出するプライマリ回転センサ81、セカンダリプーリ5の回転速度(単位時間回転数、セカンダリプーリ回転数)Nsecを検出するセカンダリ回転センサ82、プライマリ油室43の圧力(プライマリ圧)Ppriを検出するプライマリ圧センサ83、セカンダリ油室53の圧力(セカンダリ圧)Psecを検出するセカンダリ圧センサ84等の各種センサが接続され、これらのセンサ情報やスイッチ情報が入力される。また、CVTECU7は、エンジンECU(エンジン電子制御ユニット)8と情報伝達可能に接続されている。
無段変速機1は、ベルト6とプーリ4,5との間で滑りが発生しない範囲でできるだけ低い推力を各プーリ4,5に付与し、変速比Rを変更する際には、プライマリプーリ4とセカンダリプーリ5との間に差推力を加えて目標変速比Ratio0が達成されるように各可動シーブ42,52を軸方向に駆動する。これらの推力及び差推力は、CVTECU7によってプライマリ圧Ppri及びセカンダリ圧Psecを制御することによって行う。
[油圧制御系の構成]
このため、CVTECU7は、詳細は図示しないが、ライン圧Pを制御するライン圧制御部と、プライマリ圧Ppriを制御するプライマリ圧制御部と、セカンダリ圧Psecを制御するセカンダリ圧制御部とを有する変速制御部(変速制御手段)70を備えている。
また、CVTECU7は、プライマリプーリ回転数Npri及びセカンダリプーリ回転数Nsecから実変速比Ratioを算出する変速比演算部(図示略)を備えている。
ライン圧制御部は、所定の制御指令(ライン圧指示値)をライン圧ソレノイド62aに出力する。
プライマリ圧制御部は、所定のプライマリ圧目標値Ppri_tを得る制御指令(プライマリ圧指示値Ppri_d)をプライマリ油圧ソレノイド63aに出力する。
セカンダリ圧制御部は、所定のセカンダリ圧目標値Psec_tを得る制御指令(セカンダリ圧指示値Psec_d)をセカンダリ油圧ソレノイド64aに出力する。
さらに詳細には、セカンダリ圧制御部は、エンジンECU8からの出力情報及びセカンダリ回転センサ82からの車速情報等に基づいて無段変速機1により伝達するトルク容量(必要トルク伝達容量)を算出し、この伝達トルク容量から必要推力に応じたセカンダリ圧目標値Psec_tを導出してセカンダリ圧指示値Psec_dを設定する。なお、セカンダリ圧指示値Psec_dはこのセカンダリ圧目標値Psec_tに、セカンダリ実圧Psecに基づくフィードバック補正量を加算することで設定する。したがって、セカンダリ圧Psecはセカンダリ実圧Psecに基づくフィードバック制御(PID制御)によって制御される。
プライマリ圧制御部は、エンジンECU8からの出力情報及びセカンダリ回転センサ82からの車速情報等に基づいて算出した目標変速比Ratio0と変速比演算部(図示略)で演算した実変速比Ratioとセカンダリ圧指示値(セカンダリ指示圧)Psec_dとから、プライマリ圧目標値Ppri_tを設定し、このプライマリ圧目標値Ppri_tとプライマリ実圧Ppriとからプライマリ圧指示値(プライマリ指示圧)Ppri_dを設定する。つまり、プライマリ圧制御部では、目標変速比Ratio0と実変速比Ratioとの偏差(Ratio0−Ratio)に基づくフィードバック制御(PID制御)によって、セカンダリ圧指示値Psec_dとの関係が目標差推力に応じたものとなるプライマリ圧目標値Ppri_tを与えてライマリ実圧Ppriを考慮しながらプライマリ圧指示値Ppri_dを設定する。
ライン圧制御部はセカンダリ圧指示値Psec_d及びプライマリ圧指示値Ppri_dに基づいて、セカンダリ圧指示値Psec_d及びプライマリ圧指示値Ppri_dを達成可能とするように、セカンダリ圧指示値Psec_d及びプライマリ圧指示値Ppri_dのうち大きい方よりもマージン分(差圧ΔP0)だけ高いライン圧指示値P_dを設定する。
ところで、このような無段変速機1に装備された制御弁62,63,64は、ソレノイド62a,63a,64aへの電流を制御することにより、出力する油圧を調整する油圧制御用ソレノイドバルブであるが、例えば入力ポートやドレンポートとスプールとの間などの極めて小さいクリアランスに、油中に混入している鉄粉等の異物(夾雑物、或いはコンタミとも言う)が噛み込んで、所謂バルブスティックを生じて、適切な油圧制御に支障をきたす場合がある。この場合、同時にベルト滑りが発生している可能性が極めて高い。
本装置は、バルブに作動不良が生じているか否かを判定して、バルブに作動不良が生じていると判定されたら、まず、異物の噛み込みによる作動不良の解消を試みる異物除去動作を実施する。それでも作動不良が解消されない場合には、バルブの作動不良による油圧不足でプーリの推力が低下しベルト滑り等の無段変速機1の作動不良が生じ、無段変速機1の損傷を招くおそれがあるので、無段変速機1の保護制御を実施する。
以下、プライマリ圧制御弁63に着目して、異物除去動作及び保護制御を説明する。
CVTECU7は、図1に示すように、バルブに作動不良が生じているか否かを判定する判定部(判定手段)71と、判定部71がバルブに作動不良が生じていると判定したら、異物除去動作を行うバルブ制御部(バルブ制御手段)72と、異物除去動作を行ってもバルブに作動不良が生じているとの判定が継続したら、無段変速機1の保護制御を行う保護制御部(保護制御手段)73と、を備えている。
判定部71によるバルブに作動不良が生じているか否かの判定は、プライマリ指示圧Ppri_dの変化(ここでは、増加)に対するプライマリ実圧Ppriの変化(ここでは、増加)に遅れが発生したか否かによって判定している。つまり、プライマリ指示圧Ppri_dの変化に対してプライマリ実圧Ppriの変化が一定以上遅れたら、バルブに作動不良が生じている(即ち、ベルト滑りが発生している)と判定する。
ところで、上記のように、セカンダリ指示圧Ppri_dは必要推力に応じたセカンダリ圧目標値Psec_tから値を設定されるため、フィードバック制御に用いるセカンダリ実圧Psecは値を適切に把握する必要がある。このため、セカンダリ実圧Psecを検出するセカンダリ圧センサ84は、予めキャリブレーションが実施される。
したがって、セカンダリ圧制御弁64の場合には、セカンダリ指示圧Psec_dの変化に対してセカンダリ実圧Psecの変化に遅れが発生しなければ、セカンダリ実圧Psecはセカンダリ指示圧Psec_dとほぼ一致(両者の差が微小)し、前記遅れが発生したら、セカンダリ実圧Psecとセカンダリ指示圧Psec_dとの差が一定値以上になる。このことから、前記遅れの発生を判定することができる。
これに対して、プライマリ指示圧Ppri_dは、目標変速比Ratio0と実変速比Ratioとセカンダリ指示圧Psec_dとに応じたプライマリ圧目標値Ppri_tから設定されるため、フィードバック制御に用いるプライマリ実圧Ppriの検出値に実際値とズレが生じていても、支障なくフィードバック制御できる。このため、プライマリ実圧Ppriを検出するプライマリ圧センサ83は、このような検出値に実際値とズレを補正するキャリブレーションが実施されることなく使用される。
このような事情から、プライマリ圧センサ83の検出値は、実際値に対してプラス方向或いはマイナス方向に一定のズレをもっていることが想定される。したがって、プライマリ指示圧Ppri_dとプライマリ実圧Ppriとの差に着目しても、プライマリ指示圧Ppri_dの変化に対するプライマリ実圧Ppriの変化の遅れを適正には判定できない。
そこで、判定部71は、変速比Rが定常状態(換言すれば、無段変速機1が定常状態)であることを前提条件として、指示圧Ppri_dと実圧Ppriとの差の変化量が所定量以上になったときに、実圧Ppriの変化に遅れが発生したと判定する。
上記の変速比Rが定常状態であるとする判定条件について、ここでは、到達変速比DRatioと目標変速比Ratio0との差であるRatio差(=|DRatio−Ratio0|)を判定基準値(微小値)αと比較して、Ratio差が判定基準値α以下の状態が所定時間P1以上継続したこととしている。
到達変速比DRatioは車両の走行状態に基づいて設定され、目標変速比Ratio0は実変速比Ratioをこの到達変速比DRatioに所定の変化速度で到達(収束)させるために設定される。過渡状態では、到達変速比DRatioが変更され、これに伴って目標変速比Ratio0が変更されるが、目標変速比Ratio0の変更は小さく抑えられるため、Ratio差が判定基準値α以上となる。したがって、定常状態の判定に、かかる判定手法を用いている。
なお、定常状態の判定には、駆動源のエンジン10から無段変速機1への入力トルクが定常状態であることを、変速比Rが定常状態であることに加えて或いは替えて、前提条件としてもよい。
プライマリ指示圧Ppri_dの変化に対するプライマリ実圧Ppriの変化の遅れの判定について、具体的には、判定部71は、無段変速機1が上記定常状態である場合の指示圧Pd(ここでは、プライマリ指示圧Ppri_d)と実圧Pr(ここでは、プライマリ実圧Ppri)との差である第1オフセットOff1(=Pd−Pr)と、この定常状態から変速比Rが変動する過渡状態(換言すれば、無段変速機1が過渡状態)となった場合の指示圧Pd(プライマリ指示圧Ppri_d)と実圧Pr(プライマリ実圧Ppri)との差である第2オフセットOff2(=Pd−Pr)とを比較し、第2オフセットOff2と第1オフセットOff1との差Dif(=Off2−Off1)が所定差Dif0以上大きいときに、実圧Prの変化に遅れが発生したと判定する。
なお、変速比Rが過渡状態となったことの判定については、Ratio差が判定基準値α以下の状態で、目標変速比Ratio0と実変速比Ratioとの偏差(=|Ratio0−Ratio|)を判定基準値(微小値)βと比較して、この偏差が判定基準値β以上になったら、変速比Rが過渡状態となったと判定する。判定基準値βは判定基準値αとほぼ同レベルの値(判定基準値αと等しいかこれよりもやや小さい値)とする。逆に、定常状態を判定するには、この偏差が判定基準値β未満であることが条件に含まれている。
バルブ制御部72による異物除去動作は、具体的には、バルブ(プライマリバルブ63)のソレノイド(プライマリソレノイド63a)に対して、所定周期で電流が変化するディザ制御用の電流を一時的(一定時間)に流すことで、バルブ63のスプールを、一時的に往復移動させる制御(「ディザ制御」)である。この異物除去動作を行う時間の長さ(ディザ制御用の電流を流す期間)は適宜に設定してよい。検知された調圧不良が、コンタミ等により一時的に発生したものである場合、異物除去動作を行うことで、その調圧不良の解消が期待できる。
保護制御部73による保護制御は、具体的には、エンジン10から無段変速機1への入力トルクを制限する入力トルク制限制御を適用している。無段変速機1のベルト6の滑りは、プーリ4への作動油の実圧Prが指示圧Pdよりも一定量(マージン)以上低いと、無段変速機1への入力トルクに対してプーリ4の推力不足を招いて発生する。したがって、ベルト6の滑りの発生を抑制して無段変速機1を保護するには、無段変速機1への入力トルク(駆動源10の発生トルク)を制限することが有効である。
ここで、図2のタイムチャートを参照して、判定部71による判定及び判定結果に応じた制御の一例を説明する。
図2のタイムチャートには、複数のフラグを示している。
このうち、フラグF1は変速比Rが所定期間(又は、所定時間)以上定常状態にあると1とされ、定常判定がなされるまでは0とされる定常判定フラグである。
フラグF2は変速比Rが定常状態では1(クリア)、過渡状態では0(セット)とされる定常判定クリアフラグ(過渡判定フラグ)である。
フラグF3は指示圧Pdの変化に対する実圧Prの変化に遅れが生じてベルト滑りの可能性のある運転領域では1とされ、他の運転領域では0とされる滑り領域判定フラグである。
フラグF4はベルト滑りの可能性のある運転領域において、異物除去動作としてのディザ処理(有事ディザ)の作動要求をする場合に1とされ、その他の場合に0とされる有事ディザ作動要求フラグである。
フラグF5はベルト滑りの可能性のある運転領域となって(フラグF3=1)有事ディザを実施(フラグF4=1)した場合1とされ、その他の場合に0とされる滑り判定フラグである。
まず、図2に示す時点t1で、到達変速比DRatioと目標変速比Ratio0との差(=DRatio−Ratio0)が判定基準値α以下となり、この状態が所定時間P1後の時点t2まで継続すると、定常状態であることが判定されて、定常判定フラグF1がオン(F1=1)とされる。
この定常判定フラグF1がオン状態で且つ定常判定クリアフラグF2がクリア状態(定常判定許容状態、F2=1)であれば、変速比Rは定常状態であり、指示圧Pd(プライマリ指示圧Ppri_d)と実圧Pr(プライマリ実圧Ppri)との差である第1オフセットOff1(=Pd−Pr)を算出する。
その後の時点t3で、到達変速比DRatio及び目標変速比Ratio0は変動がないが実変速比Ratioのみが変動(ここでは、上昇)して目標変速比Ratio0と実変速比Ratioとの偏差(=|Ratio0−Ratio|)が判定基準値β以上になると、定常判定クリアフラグF2はセット状態(F2=0)となり、変速比Rは過渡状態と判定される。この時には、オフセットOffも第1オフセットOff1よりも大きな値Offsに増大する。
この状態で、指示圧Pd(プライマリ指示圧Ppri_d)と実圧Pr(プライマリ実圧Ppri)との差である第2オフセットOff2(=Pd−Pr)を算出する。
第2オフセットOff2が増大し、時点t4で、第2オフセットOff2と第1オフセットOff1との差Dif(=Off2−Off1)が所定差Dif0に達すると、実圧Prの変化に遅れが発生したと判定し、ベルト滑りが懸念される領域にあることを示す滑り領域判定フラグF3がオンとなって(F3=1)、同時に、有事ディザ作動要求フラグF4がオンとなって(F4=1)、ディザ制御によるディザ(異物除去動作)が実施される。滑り領域判定フラグF3及び有事ディザ作動要求フラグF4は一定時間オン状態が継続されて一定時間後の時点t7でオフに戻る。
また、滑り領域判定フラグF3及び有事ディザ作動要求フラグR4がオン状態とされている間に適宜のタイミング(ここでは、変速比Rが定常復帰したタイミング)t6で、滑り判定フラグF5がオン(F5=1)にセットされる。
なお、定常判定フラグF1,定常判定クリアフラグF2,滑り判定フラグF5は、滑り領域判定フラグF3及び有事ディザ作動要求フラグF4がオフに戻るタイミング(時点t7)でそれぞれリセット(F1=0,F2=1,F5=0)される。ただし、定常判定クリアフラグF2については、二点鎖線で示すように、変速比Rが定常復帰したタイミングT6から所定時間P2後にリセットするようにしてもよい。
そして、この滑り判定フラグが所定期間内にオンにセットされる回数に応じて滑りカウンタをカウントし、滑りカウンタのカウント値Cが所定数に達したら上記の保護制御が実施される。
〔作用及び効果〕
本実施形態にかかる無段変速機の制御装置は、上述のように構成されるので、図3,図4及び図5に示すように、無段変速機の制御を実施することができる。
なお、ここで示す制御例では、滑り判定フラグが一回オンになってから車両の走行距離Mが所定距離Ms内のうちに再び滑り判定フラグがオンになったら、保護制御を実施するように設定されている。
まず、指示圧Pdの変化に対する実圧Prの変化に遅れが生じたか否か(即ち、ベルトの滑りが生じたか否か)を判定する。
つまり、図3に示すように、変速比Rが所定期間(又は、所定時間)以上定常状態にあったか否かを判定する(ステップS11)。所定期間以上定常状態になければリターンする。所定期間以上定常状態にあれば、定常判定フラグF1をオン(F1=1)にセットし(ステップS12)、次に、現在、定常状態にあるか否かを判定し(ステップS13)、現在、定常状態にあれば、指示圧Pdと実圧Prとの差である第1オフセットOff1(=Pd−Pr)を算出する(ステップS14)。
一方、現在、定常状態になければ、定常判定クリアフラグF2をセット(F2=0)し(ステップS15)、指示圧Pdと実圧Prとの差である第2オフセットOff2(=Pd−Pr)を算出する(ステップS16)。そして、第2オフセットOff2と第1オフセットOff1との差Dif(=Off2−Off1)を算出し(ステップS17)、この差Difが所定差Dif0以上になったか否かを判定する(ステップS18)、走行距離Mが所定距離Ms以上となったら、指示圧Pdの変化に対する実圧Prの変化に遅れが生じたと判断し、滑り領域判定フラグF3をオン(F3=1)にセットする(ステップS19)。
このような指示圧Pdの変化に対する実圧Prの変化に遅れが生じたか否かの判定に基づいて、図4に示すように、ディザ処理や保護制御の各処理が行われる。実圧Prの変化に遅れが生じなければ(滑り領域判定フラグF3が0ならば)、これらの処理は行わない。
まず、走行距離(走行距離カウント値)Mが所定距離Ms以上であるか否かを判定する(ステップS2)。走行距離Mは、滑り判定フラグがオンになったらカウントを開始する距離カウント値である。
走行距離Mが所定距離Ms以上であれば、走行距離Mを0にリセットし(ステップS4)、後述のフラグF6を0にリセットし(ステップS6)、滑りカウンタのカウント値Cを0にリセットする(ステップS8)。
次に、指示圧Pdの変化に対する実圧Prの変化に遅れが生じたか否か(滑り領域判定フラグF3が1か否か)を判定する(ステップS10)。
指示圧Pdの変化に対する実圧Prの変化に遅れが生じた(F3=1)と判定されると、まず、フラグF6が0であるか否かを判定する(ステップS20)。このフラグF6は、滑り判定がされディザ処理が1回実施されると、1にセットされ、その後、車両の走行距離Mが所定距離Ms以上となるまでの間に滑り判定がなされなければ0にリセットされる(ステップS6)。
フラグF6が0であればフラグF6を1にセットし(ステップS30)、車両の走行距離Mのカウントを開始し(ステップS40)、有事ディザ作動要求フラグF4を1にセットし、ディザ処理(異物除去動作)を所定時間実施する(ステップS50)。そして、滑り判定フラグF5を1にセットし(ステップS52)、ディザ処理(異物除去動作)が所定時間継続されたか否かを判定し(ステップS54)、ディザ処理が所定時間継続されたら、各フラグF1〜F6をリセットする(ステップS56)
一方、フラグF6が0でなければ、フラグF6は1であり、車両の走行距離Mのカウントを継続し(ステップS58)、ディザ処理(異物除去動作)を所定時間実施する(ステップS60)。そして、滑り判定フラグF5を1にセットし(ステップS62)、滑りカウンタのカウント値Cをインクリメントして(ステップS64)、カウント値Cが閾値Cs(ここでは、Cs=2)以上であるか否かを判定する(ステップS66)。
カウント値Cが閾値Cs以上でなければ、ディザ処理(異物除去動作)が所定時間継続されたか否かを判定し(ステップS54)、ディザ処理が所定時間継続されたら、各フラグF1〜F6をリセットする(ステップS56)
一方、カウント値Cが閾値Cs以上であれば、無段変速機1の保護制御を実施する(ステップS70)。
この場合は、車両に警告表示を行って、ドライバに修理を案内する。
図5は図3,図4のフローチャートに対応したタイムチャートであり、図5において、VSPは車速、TVOはスロットル開度を示す。
図5に示すように、時点t11で指示圧Pdの変化に対する実圧Prの変化に遅れが生じたことからベルト滑りが検知され、時点t11〜t12で、ディザ処理が実施され(ディザ作動)、滑りフラグがセットされる。また、滑りカウンタが0(正常)から1(仮故障)に切り換えられる。
その後、車両の走行距離Mが所定距離Ms以上となる時点t13までベルト滑りが検知されないため、滑りカウンタは0(正常)にリセットされる。
その後、時点t14で指示圧Pdの変化に対する実圧Prの変化に遅れが生じたことからベルト滑りが検知され、時点t14〜t15で、ディザ処理が実施され(ディザ作動)、滑りフラグがセットされる。また、滑りカウンタが0(正常)から1(仮故障)に切り換えられる。車両の走行距離Mが所定距離Ms以上となる前の時点t16でベルト滑りが検知されると、時点t16〜t17で、ディザ処理が実施され(ディザ作動)、滑りフラグがセットされ、滑りカウンタが1(仮故障)から2(故障確定)に切り換えられて、無段変速機1の保護制御が実施される。
このようにして、本装置によれば、油圧制御用ソレノイドバルブであるプライマリ制御弁63への指示圧Pdの変化に対する実圧Prの変化に遅れが発生したら、バルブ63の作動不良によるベルト滑りの発生の可能性が高くなるが、バルブ63のスプールを一時的に往復移動させる異物除去動作を行うので、バルブ63の作動不良を速やかに解消することが可能になる。
また、バルブ63の作動不良が解消されない場合や、バルブ63の作動不良が解消されても、長い期間を置かずに再度バルブ63の作動不良が発生した場合には、無段変速機1の保護制御を行うので、例えばベルト滑りの発生が速やかに抑制され無段変速機1の損傷の回避を図ることができる。
なお、前記遅れが発生したら、すぐに保護制御を行うことも可能であるが、保護制御を行う前に、異物除去動作を行うと、バルブ63の作動不良を速やかに解消することが可能になり、こうして、バルブ63の作動不良が解消されれば保護制御は不要になり、保護制御に伴う車両の運転性能の低下を回避することができる。
また、本プライマリ制御弁63については、検出値に実際値とズレを補正するキャリブレーションが実施されることなく使用されるため、バルブ63への指示圧Pdと実圧Prとの単純な比較によってバルブ63の作動不良を判定することはできないが、バルブ63への指示圧Pdの変化に対する実圧Prの変化に遅れが発生したことからバルブ63の作動不良を判定するので、適切に判定することができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はかかる実施形態を適宜変更して実施してもよい。
例えば、上記実施形態では、プライマリ制御弁63に係る異物除去動作及び保護制御を説明したが、例えば、セカンダリ制御弁64など他の油圧制御用ソレノイドバルブの管理にも適用することができる。
また、上記実施形態では、指示圧Pdの変化に対する実圧Prの変化に遅れが発生したら、保護制御を行う前に、ディザ(異物除去動作)を実施しており、ディザを実施しても再び実圧Prの変化に遅れが発生したら保護制御を行っているが、異物除去動作については省略してもよい。
1 車両用無段変速機(CVT)
4 プライマリプーリ
5 セカンダリプーリ
6 無端状のベルト
63 プライマリ圧制御弁(油圧制御用ソレノイドバルブ)
63 セカンダリ圧制御弁(油圧制御用ソレノイドバルブ)
70 変速制御部(変速制御手段)
71 判定部(判定手段)
72 バルブ制御部(バルブ制御手段)
73 保護制御部(保護制御手段)

Claims (7)

  1. プライマリプーリとセカンダリプーリと前記両プーリに巻き掛けられたベルトとを備え、車両の駆動源に接続され、変速比を制御する油圧制御用ソレノイドバルブを備えた無段変速機の制御装置であって、
    前記油圧制御用ソレノイドバルブへの指示圧の変化に対する実圧の変化に遅れが発生したことを判定する判定手段と、
    前記判定手段が前記遅れの発生を判定したら前記無段変速機の保護制御を行う保護制御手段と、を備えている
    ことを特徴とする無段変速機の制御装置。
  2. 前記保護制御には、前記無段変速機への入力トルクを制限する入力トルク制限制御が含まれている
    ことを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の制御装置。
  3. 前記判定手段が前記遅れの発生を判定したら、前記保護制御を実施する前に、前記油圧制御用ソレノイドバルブのスプールを一時的に往復移動させる異物除去動作を行うバルブ制御手段を備え、
    前記異物除去動作後に前記遅れが解消した場合には、前記保護制御手段は前記保護制御を行わない
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の無段変速機の制御装置。
  4. 前記判定手段は、前記指示圧と前記実圧との差の変化量が所定量以上になったときに、前記遅れが発生したと判定する
    ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の無段変速機の制御装置。
  5. 前記判定手段は、前記無段変速機への入力及び前記変速比の少なくとも一方の状態が定常状態である場合の前記指示圧と前記実圧との差である第1オフセットと、前記一方の状態が過渡状態である場合の前記指示圧と前記実圧との差である第2オフセットとを比較し、前記第2オフセットと前記第1オフセットとの差が所定以上大きいときに、前記遅れが発生したと判定する
    ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の無段変速機の制御装置。
  6. 前記セカンダリプーリに加えられるセカンダリ圧は、前記無段変速機への入力トルクの大きさに応じたセカンダリ指示圧で制御され、
    前記プライマリプーリに加えられるプライマリ圧は、前記変速比と前記セカンダリ圧とに応じたプライマリ指示圧で制御され、
    前記油圧制御用ソレノイドバルブは、前記プライマリ圧を制御するプライマリバルブであって、前記指示圧は前記プライマリ指示圧である
    ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の無段変速機の制御装置。
  7. プライマリプーリとセカンダリプーリと前記両プーリに巻き掛けられたベルトとを備え、車両の駆動源に接続され、変速比を制御する油圧制御用ソレノイドバルブを備えた無段変速機の制御方法であって、
    油圧制御用ソレノイドバルブへの指示圧の変化に対する実圧の変化に遅れが発生したか否かを判定する判定ステップと、
    前記判定ステップで前記遅れの発生を判定したら前記無段変速機の保護制御を行う保護制御ステップと、を備えている
    ことを特徴とする無段変速機の制御方法。
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