JP2020033642A - 金属積層成形体及びその製造方法 - Google Patents

金属積層成形体及びその製造方法 Download PDF

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晴行 乾
Haruyuki Inui
晴行 乾
恭輔 岸田
Kyosuke Kishida
恭輔 岸田
修二 小岩井
Shuji Koiwai
修二 小岩井
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Abstract

【課題】任意の形状、大きさの共晶合金を得るための技術を提供する。【解決手段】2種以上の元素からなる原料金属を電子ビームあるいはレーザー積層工法により成形してなり、その積層体において共晶組織が体積分率で70%以上であって、残部が共晶を構成する元素による金属単体、固溶体及び化合物相によって形成されることを特徴とする金属積層成形体。【選択図】なし

Description

本発明は、金属積層成形体及びその製造方法に関する。
2015年のパリ協定<フランスのパリで開催された国連気候変動枠組条約 第21回締約国会議(COP21)>ですべての国の温室効果ガス排出量の削減への取り組みが採択された。温室効果ガスの中で特に重要なものは二酸化炭素(CO)であり、このCOの総排出量をどのように大幅に削減するのかが喫緊の課題である。日本国内のCO総排出量のうち約30%は発電プラントから発生し、そのうち約99%は火力発電が関与している。従って、火力発電からのCO2削減が最も有効と考えられる。最新型の火力発電システムはコンバインドサイクル型であり、ガスタービンを使って発電した後、その排熱を利用して作った蒸気により蒸気タービンを使って再度発電させるシステムである。現行はガスタービン材料にNi基超合金を用いて、約1500℃の高温で動作させ熱効率約52%を得ている。ガスタービンの入り口温度を上昇すれば、熱効率の増大も見込まれており、たとえば、約1700℃以上の耐熱性を実現できれば、熱効率が約60%以上になると予想される。この1700℃を越えるガスタービンならば、発電所からのCO発生量は11〜19%は削減可能と考えられており、これに耐える新規の超耐熱材料(合金)の実現が望まれている。
そこで注目されている材料として、モリブデンダイシリサイド(2珪化モリブデンとも言う)(MoSi)合金が挙げられる。MoSi合金は優れた塑性変形能、高い融点(2020℃)、優れた耐酸化性を有しており、また軽量(Ni基超合金の密度約8g/cmに対して、約6.2g/cm)であり、戦略的元素を含まないという点で安価である。しかしながら、室温靭性が乏しく(約2MPam1/2)、クリープ強度が不十分である。
非特許文献1は、MoSi/MoSi共晶合金を記載している。
MoSi系以外にも種々の共晶合金が知られているが、構造が制御された共晶合金から構成される大型の成形体の製造は困難であった。
Fujiwara et al., Intermetallics 52, 72-85 (2014)
本発明は、任意の形状、大きさの金属積層成形体を得るための技術を提供することを主な目的とする。
本発明は、以下の金属積層成形体及びその製造方法を提供するものである。
項1. 2種以上の元素からなる原料金属を電子ビームあるいはレーザー積層工法により成形してなり、その積層体において共晶組織が体積分率で70%以上であって、残部が共晶を構成する元素による金属単体、固溶体及び化合物相によって形成されることを特徴とする金属積層成形体。
項2. 前記成形体が種晶用基体部分と前記積層体部分を含む、項1に記載の金属積層成形体。
項3. 前記種晶用基体部分と前記積層体部分が同じ結晶方位を持つことを特徴とする項2記載の金属積層成形体。
項4. 共晶組織の層間隔が、1〜100℃/sの凝固区間冷却速度を有する同一合金組成の鋳造材の層間隔の1/10〜1/1000であることを特徴とする、項1ないし3記載の金属積層成形体。
項5. ビッカース硬さ、破壊靭性値(インデーテーション法)の一方又は両方が、1〜100℃/sの凝固区間冷却速度を有する同一合金組成の鋳造材よりも20%以上高いことを特徴とする項1ないし項4記載の金属積層成形体。
項6. 共晶組織を構成する元素が、金属元素として周期表の第3族(Y、ランタノイド、アクチノイド)、第4族(Ti,Zr,Hf)、第5族(V,Nb,Ta)、第6族(Cr、Mo,W)、第7族(Mn,Tc,Re)、第8族(Fe,Ru,Os)、第9族(Co,Rh,Ir)、第10族(Ni,Pd,Pt)、第11族(Cu,Ag,Au)、第12族(Zn,Cd,Hg)、Al,Ga,In,Tl,Si,Ge,Sn,Pb,As,Sbの少なくとも1種以上含み、C、B、O、N、Pの1種以上含むことができることを特徴とする項1ないし項5記載の金属積層成形体。
項7. 前記共晶組織を有する共晶合金系が、
MoSi2-Mo5Si3, NbSi2-Nb5Si3, WSi2-W5Si3, TaSi2-Ta5Si3, VSi2-V5Si3, MoSi2-Mo5Si3-Mo5Si3C, NbSi2-Nb5Si3-Nb5Si4C, TaSi2-Ta5Si3-Ta4.8Si3C0.5, Nb-Nb5Si3, W-W5Si3, Ni-Ni3Al, Ni-Ni3Nb, Ni3Al-Ni3Nb, Ni-Cr, Ni-Ni3Al-Ni3Nb, Ni-Ni3Al-TaC, Ni-Ni3Al-NbC, Ni-Ni3Al-Mo, Ni-Ni3Al-Cr7C3, Ni-Ni3Al-Cr3C2, NiAl-Mo, NiAl-Cr, Cr-Cr23C6, Mo-Mo2C, Nb-Nb2C, Ta-Ta2C, W-W2C, Ta-Ta2N, Cr-Cr2B, Al2O3-ZrO2, ZrB2-ZrC, (Fe,Ni)-(Fe,Ni)Alのいずれか一つであることを特徴とする項1ないし項6記載の金属積層成形体。
項8. 前記共晶組織を有する共晶合金系が、MoSi2-Mo5Si3,であることを特徴とする項7記載の金属積層成形体。
項9. さらにTa、Nb及びWからなる群から選ばれる少なくとも1種の添加元素を含むことを特徴とする項7ないし項8記載の金属積層成形体。
項10. 積層を行う造形ステージ上に単相又は共晶合金の単結晶を含む種晶用基体を配置し、前記基体上に原料金属層を形成し、前記原料金属層の表面に高エネルギー線を照射することにより、原料金属を溶融し、種結晶と同じ結晶方位を有する表面層を形成することを特徴とする項1ないし項9記載の金属積層成形体の製造方法。
本発明によれば、任意の形状、大きさの共晶合金組織を含む金属積層成形体を得ることができる。
MoSiの平衡状態図 レーザービーム照射に使用する(a)スキャン方法及び(b) レーザービーム照射されたサンプルのA-A’断面図 レーザービーム照射をした断面のミクロ組織(低倍と高倍)の一例。(a) SEM後方散乱電子像 (b)フェーズマップ(Phase map) (c)Z軸方向のオリエンテーション・マップ(Orientation map)。図3(b)と図3(c)は、図3(a)の点線の枠内の図である。Mo5Si3は[001]方向に配向し、MoSi2は[110]面に配向する。 実施例4で得られた金属積層成形体の破壊靱性を測定したときのクラックの状態を示す。図4(a)と図4(b)はラメラ界面にほぼ垂直に、図4(c)と図4(d)はラメラ界面にほぼ平行にクラックが進行している例である。図4(a)と図4(b)中の矢印の部分で示す部分でクラックのブリッジングが、図4(c)と図4(d)中の矢印の部分で層間剥離が生じている。
本発明では、3Dプリンターを用いて金属積層成形体を得ることができる。3Dプリンターは特に制限はなく、市販の3Dプリンターを使用することができる。3Dプリンターによる金属積層成形体の製造は、原料金属の粉末を造形テーブルに平らに敷き詰めて、レーザー、電子ビームなどの高エネルギー線を固化したいところに照射して溶融、焼結させる粉末焼結式の積層法、必要な個所に粉末を噴射しながら、あるいは線材を近づけ、その部位を加熱溶解するデポジット式の積層法、また、原料金属表面に照射してその製品のもともとの表層の金属組織を金属積層特有の金属組織に改質することなどにより行うことができるが、これらに限定されず、高エネルギー線を照射する積層法であれば、いずれの方法でも本発明の金属積層成形体の製造に使用することができる。
造形テーブル上には、対象となる共晶又は共晶の構成要素となる単相の単結晶から構成される種晶用基体を載せ、種晶用基体の上に原料金属の粉末を敷き詰め、高エネルギー線で所定の部分の原料金属粉末を溶解する。種結晶が共晶組織から構成される場合、原料金属粉末の溶解物は種結晶と同じ共晶組織になる。また、種結晶が共晶の一部の単結晶(例えばMoSi2/Mo5Si3共晶に対してMoSi2単結晶又はMo5Si3単結晶)であっても、溶融原料金属は種結晶と同じ結晶方位を有する共晶組織になる。なお、種晶用基体は金属積層成形体を製造後に切断して除くことができる。
本発明では、2種以上の元素を一部あるいは全部が共晶合金組成である粉末、線材、棒材などの原料金属を使用する。2種以上の元素は、少なくとも1種の金属元素を含み、非金属元素を含んでいてもよい。共晶合金の元素数としては、2,3,4,5又は6、好ましくは2,3又は4である。粉末、線材、棒材などの原料金属は、共晶組織を有していてもよいが、固溶体などの非共晶合金であってもよく、共晶合金組成に完全になっていなくてもよい。
本発明の金属積層成形体は、共晶組織を体積分率で70%以上含むが、より好ましくは80%以上の共晶組織で構成されることが好ましい。
本発明の金属積層成形体の共晶組織を形成する少なくとも1種の金属元素としては、周期表の第3族(Y、ランタノイド、アクチノイド)、第4族(Ti,Zr,Hf)、第5族(V,Nb,Ta)、第6族(Cr、Mo,W)、第7族(Mn,Tc,Re)、第8族(Fe,Ru,Os)、第9族(Co,Rh,Ir)、第10族(Ni,Pd,Pt)、第11族(Cu,Ag,Au)、第12族(Zn,Cd,Hg)、Al,Ga,In,Tl,Si,Ge,Sn,Pb,As,Sbが挙げられる。共晶組織に含まれ得る非金属元素としては、C、B、O、N、Pが挙げられる。
共晶組織を構成する共晶合金系としては、以下が挙げられるが、これらに限定されることはない:
MoSi2-Mo5Si3, NbSi2-Nb5Si3, WSi2-W5Si3, TaSi2-Ta5Si3, VSi2-V5Si3,
MoSi2-Mo5Si3-Mo5Si3C, NbSi2-Nb5Si3-Nb5Si4C, TaSi2-Ta5Si3-Ta4.8Si3C0.5
Nb-Nb5Si3, W-W5Si3,
Ni-Ni3Al, Ni-Ni3Nb, Ni3Al-Ni3Nb, Ni-Cr
Ni-Ni3Al-Ni3Nb, Ni-Ni3Al-TaC, Ni-Ni3Al-NbC, Ni-Ni3Al-Mo,
Ni-Ni3Al-Cr7C3, Ni-Ni3Al-Cr3C2,
NiAl-Mo, NiAl-Cr
Cr-Cr23C6, Mo-Mo2C, Nb-Nb2C, Ta-Ta2C, W-W2C,
Ta-Ta2N, Cr-Cr2B,
Al2O3-ZrO2, ZrB2-ZrC
(Fe,Ni)-(Fe,Ni)Al。
本発明で使用する粉末、線材、棒材などの原料金属は、全てが共晶合金組成の原料金属であってもよい。また、レーザービーム又は電子ビームなどの高エネルギー線により溶解されて共晶合金組成になるものであれば、個々の原料金属が共晶合金組成である必要はない。なお、原料金属は共晶組織を形成する原料であり、全てが金属である必要はなく、共晶組織に含まれる非金属元素を含んでいてもよく、共晶組織が体積分率で70%以上になれば、共晶組織を形成しない金属元素又は非金属元素を少量含んでいてもよい。
本発明の金属積層成形体の製造方法の1つの好ましい実施形態において、2種以上の元素を共晶合金組成で含む原料金属が粉末の場合、3Dプリンターの造形ステージ上に原料金属が敷き詰められ、第1原料金属層を形成し、高エネルギー線が最終的な造形物を製造するために所定の場所に照射されて溶融される。2種以上の元素を共晶合金組成で含む溶融物は、その後冷却される過程で共晶合金構造を形成する。
本発明の金属積層成形体の製造方法の他の好ましい実施形態において、2種以上の元素を共晶合金組成で含む原料金属が粉末、線材、棒材の場合、3Dプリンターの造形ステージ上の必要な箇所に粉末を噴射しながら、或いは、線材もしくは棒材を近づけ、粉末、線材もしくは棒材の特定の部位を加熱溶解するデポジット方式で所望の形状に積層してもよい。加熱溶解は、レーザー、電子ビームなどの高エネルギー線により行うことができる。加熱溶解した原料金属の下には上記と同様に共晶合金構造が存在するので、溶融物が冷却される過程で共晶合金構造が形成される。
本発明の金属積層成形体の製造方法の他の好ましい実施形態において、共晶組織が体積分率で70%以上を示す原料金属表面に照射してその製品のもともとの表層の金属組織を金属積層特有の金属組織に改質してもよい。この方法は、エネルギーをそのまま照射するだけで行われるものであり、瞬間加熱溶解、瞬間凝固がスムースにできる。
溶融物に形成される共晶合金は、微細な構造を有することが好ましい。また、本発明で製造される共晶合金は、好ましくは一方向の共晶組織が主構造のものであり、特に全体が一方向の共晶組織を有する。
本発明の好ましい金属積層成形体は、共晶組織がラメラ状,スクリプトラメラ状あるいはロッド状に発達した構造を有する。本発明の成形体のラメラ状あるいはスクリプトラメラ状の共晶組織の層間隔は、金型に本発明の成形体と同一合金組成の溶融金属を流し込み、1〜100℃/sの凝固区間冷却速度で冷却して共晶組織を形成する従来の鋳造法で製造される成形体と比較して、1/10〜1/1000程度である。本発明の金属積層成形体は、例えば、固化したいところのみに高エネルギー線を照射して合金組成の金属を加熱溶解するステップを繰り返して製造することができ、積層した上側の層は、下側の共晶合金構造と同様な共晶組織が形成されるだけでなく、非常に微細な共晶組織になり、ラメラ状あるいはスクリプトラメラ状共晶組織の層間隔が非常に小さくなる。このような小さな層間隔は、金属積層成形体の強度の向上に役立つ。例えば本発明の金属積層成形体のビッカース硬さ、破壊靭性値( インデーテーション法 )の一方又は両方は、金型に本発明の成形体と同一合金組成の溶融金属を流し込み、1〜100℃/sの凝固区間冷却速度で冷却して共晶組織を形成する従来の鋳造法で製造される成形体と比較して20%以上高い。
Mo−Si系の平衡状態図を図1に示す。MoSi系の場合、Mo(46at.%)とSi(54at.%)を含む場合に、溶融温度は1900℃になり、1900℃以上に加熱後、冷却することにより二元系MoSi/MoSi共晶合金が得られる。共晶合金組成の溶融温度は、公知の合金状態図に示されており、例えばAl−O−Zr三元共晶合金系では1880℃、Al−Nb−Ni三元共晶合金系では1280℃、B−C−Zr三元共晶合金系では2660℃であり、これらの溶融温度以上に加熱して粉末を溶融し、冷却することで共晶組織を有する成形体を得ることができる。したがって、対象となる共晶合金の合金状態図と溶融温度を確認し、粉末層の厚さなどを考慮して高エネルギー線の照射条件を決定することになる。
MoSi/MoSi共晶合金のMoとSiの原子比率は、Mo(46at.%)とSi(54at.%)である。本発明の共晶合金は、共晶組織が70%以上の主構造であればよく、好ましくは全体が共晶組織となる。共晶組織における各元素の比率は公知の合金状態図に記載されており、全体が共晶組織あるいは70%以上が共晶組織となる各元素の原子比率には幅がある。各共晶合金を製造するための各元素の割合は、MoSi/MoSi共晶合金の場合を参考にして当業者が容易に決定することができる。
共晶合金系原料金属(共晶組織の割合が体積分率で70%以上を示すもの)の加熱は、レーザービーム或いは電子ビームなどの高エネルギー線の照射により行うことができる。電子ビームにおいては共晶合金系原料金属を予熱後に電子ビームを照射することが好ましい。予熱温度は、粉末の飛散防止および、積層成形体の割れ防止のために、共晶合金系の溶融温度の1/4以上(例えば溶融温度が1000℃の場合、250℃以上)、好ましくは1/2以上とし、また粉末の固化防止のために溶融温度以下マイナス300℃以下、好ましくは400℃以下とする。例えばMoSi/MoSi共晶合金の場合、予熱温度は700〜1500℃であることが、粉末の飛散防止、鋳造割れ防止のために好ましい。
また、電子ビームあるいはレーザーのエネルギー密度は割れ防止のために3〜10J/mm程度が好ましい。
なお、共晶合金系成形体の表面の平滑性を高くするためには、レーザー積層法より電子ビーム積層法の方が有利である。
レーザービーム、電子ビームは、表面の共晶混合系を溶解し、共晶合金が溶解物の下に残るようにする。溶解した共晶混合系は、下層の共晶合金をテンプレートとして徐々に共晶結晶が成長するので、結晶方向が揃った共晶組織が得られる。したがって、特に第1回目の高エネルギー線の照射は結晶方向が揃った共晶組織を残すように行われる。
共晶合金組成は、多少の添加元素を加えることができる。例えば二元系MoSi/MoSi共晶合金の場合、Ta、Nb、Wなどの金属を加えることができ、さらに、B、C、Fe、Co、Ni、Cu、Ir、Y、Zr、Hf、La等の少なくとも1種を添加してもよい。これらの添加元素は共晶組織を壊さないことが必要であるので、通常10質量%以下の量で添加される。二元系MoSi/MoSi共晶合金以外の共晶合金の場合にも同様に添加元素を含むことができる。これらの添加元素は、例えば破壊靭性を向上させることができる。
以下、実施例を用いて、本明細書において開示される事項をより詳細に説明する。
本実施例において、以下のように測定を行った。
(1)レーザービーム照射装置
装置名:EOS EOSINT-M280(EOS社製)
(2)電子ビーム照射装置
装置名:EBMA2(Arcam社製) 、
(3)ビッカース硬度
測定装置としてSHIMADZU HMV-G21(株式会社島津製作所)を用い、15秒間0.98Nの負荷でサンプルのビッカース硬度を測定した。
(4)破壊靭性
測定装置としてSHIMADZU HMV-G21(株式会社島津製作所)を用い、インデンテーション法により測定した。測定条件は、9.8N、15秒であり、計算式:Niiharaの式(クラック形状(Palmqvistクラック)から選択)を用いた(K. Niihara et al., J. Mater. Sci.Lett. 1 (1982) 13-16)。
実施例1
高純度のMoとSiをMo(46at.%)およびSi(54at.%)になるように秤量し、アークメルト法で作製された棒状共晶合金を用いて、10mm/hの速度で共晶成長させて、MoSi−MoSi共晶合金単結晶を作製した。併せて、前記共晶率(共晶組織が全体の組織の中で占める体積率)の異なる単結晶も作成した。得られた単結晶から7×5×3mmの直方体を切り出し、図2に示すジグザグパターンでレーザービームを照射した。その時のエネルギー密度は、3.1〜6.3J/mmである。
エネルギー密度5.7J/mmでレーザー照射されたMoSi2/Mo5Si3共晶合金の初期固体―液体界面(LSI)領域で撮影された(a) SEM-後方散乱電子顕微鏡写真、(b)フェーズマップ、(c)オリエンテーション・マップを図3に示す。フェーズとオリエンテーションは一致しており、共晶を構成するMoSi2とMo5Si3は一方向の共晶であることが示された。
実施例2〜4及び比較例1〜7
表1に示すMoSi2(A)とMo5Si3(B)からなる共晶組織(共晶組織の割合が異なる)を有する金属素材、エネルギー密度3.2J/mmのレーザービームを用いて積層した結果を表1に示す。表1において2つの「上昇率(%)」は、各々比較例5の「単結晶(1対0)」の破壊靱性値(3.4 MPa*m0.5)、ビッカース硬さ(11.0 GPa)に対する上昇率である。共晶組織の発生率が体積分率で70%以上の実施例2〜4においては、出来た積層成形体の破壊靭性値(MPa*m0.5)はいずれも4.0を超え、金属素材として使用した同金属の単結晶材(比較例3〜5)に比較して、その値の上昇率は20%を超える。しかし、70%未満の比較例においては、上昇率は20%未満である。
また、ビッカース硬さにおいても、積層成形体の硬さ(GPa)は14.2以上であり、その上昇率も20%を超える。しかし、70%未満の比較例においては硬さも低く、上昇率は15%以下と低い。また共晶組織の層間隔については、共晶組織の発生割合にあまり影響されず0.1μmと微細であり、比較例に示す金属素材のそれと比較して、1/35以下と細かいのがわかる。硬さと靭性を兼ね備えているのは、微細な共晶層のよるところが極めて大きい。
この破壊靭性の向上は、微細化した共晶構造に起因し、それはクラックがMoSi2/Mo5Si3境界面により多く相互作用するためである。クラックが共晶ラメラ境界にほぼ垂直に伝播する場合には、クラックの進行はしばしば共晶境界により進行を阻止されるが、そのクラックが停止した部分のすぐ近くで新たにクラックが形成、進行するというブリッジングという現象を伴うことでクラックの伝播、すなわち破壊の進行が抑制される(図4(a)、(b))。またクラックがラメラ境界とほぼ平行に伝播するときには、しばしば層間剥離が観察され、クラックが優先的に共晶境界に沿って伝播することでクラックの伝播経路が湾曲し、破壊の進行が抑制される(図4(c)、(d))。このように本発明で得られる共晶合金は、共晶の微細構造のために破壊靭性が向上する。
実施例5〜7及び比較例8〜14
表2に示すMoSi2(A)とMo5Si3(B)からなる共晶組織(共晶組織の割合が異なる)を有する金属素材、電子ビームを用いて積層した結果を表2に示す。表2において2つの「上昇率(%)」は、各々比較例12の「単結晶(1対0)」の破壊靱性値(3.4 MPa*m0.5)、ビッカース硬さ(11.0 GPa)に対する上昇率である。共晶組織の発生率が体積分率で70%以上の実施例5〜7においては、出来た積層成形体の破壊靭性値(MPa*m0.5)はいずれも4.0以上を示し、金属素材として使用した同金属の単結晶材に比較して、その値の上昇率は20%を超える。しかし、70%未満の比較例13〜14においては、上昇率は20%未満である。
また、ビッカース硬さにおいても、積層成形体の硬さ(GPa)は13.8以上であり、その上昇率も20%を超える。しかし、70%未満の比較例13〜14においては硬さも低く、上昇率は10%台と低い。また共晶組織の層間隔については、共晶組織の発生割合にあまり影響されず0.2μm以下と微細であり、比較例8〜12に示す金属素材のそれと比較して、1/20以下と細かいのがわかる。硬さと靭性を兼ね備えているのは、微細な共晶層のよるところが極めて大きい。
実施例8〜10及び比較例15〜21
高純度のMoとSiとTaをMo(41at.%),Si(54at.%)およびTa(5at.%)になるように秤量し、アークメルト法で作製された棒状共晶合金を用いて、10mm/hの速度で共晶成長させて、Ta添加MoSi−MoSi共晶合金単結晶を作製した。併せて、前記共晶率(共晶組織が全体の組織の中で占める体積率)の異なる単結晶も作成した。得られた単結晶から7×5×3mmの直方体を切り出し、図2に示すジグザグパターンでレーザービームを照射した。その時のレーザービームのエネルギー密度は、3.0〜9.4J/mmである。
表3に示すTa添加MoSi(C)とTa添加MoSi(D)からなる共晶組織(共晶組織の割合が異なる)を有する金属素材、エネルギー密度9.4J/mmのレーザービームを用いて積層した結果を表3に示す。表3において2つの「上昇率(%)」は、各々比較例19の「単結晶(1対0)」の破壊靱性値(3.2MPa*m0.5)、ビッカース硬さ(9.7GPa)に対する上昇率である。共晶組織の発生率が体積分率で70%以上の実施例8〜10においては、出来た積層成形体の破壊靭性値(MPa*m0.5)はいずれも4.3を超え、金属素材として使用した同金属の単結晶材(比較例17〜19)に比較して、その値の上昇率は20%を超える。しかし、70%未満の比較例20,21においては、上昇率は20%未満である。
また、ビッカース硬さにおいても、実施例8〜10の積層成形体の硬さ(GPa)は12.5以上であり、その上昇率も20%を超える。しかし、70%未満の比較例20,21においては硬さも低く、上昇率は16%以下と低い。また共晶組織の層間隔については、共晶組織の発生割合にあまり影響されず0.13μmと微細であり、比較例15〜19に示す金属素材のそれと比較して、1/89以下と細かいのがわかる。硬さと靭性を兼ね備えているのは、微細な共晶層によるところが極めて大きい。

Claims (10)

  1. 2種以上の元素からなる原料金属を電子ビームあるいはレーザー積層工法により成形してなり、その積層体において共晶組織が体積分率で70%以上であって、残部が共晶を構成する元素による金属単体、固溶体及び化合物相によって形成されることを特徴とする金属積層成形体。
  2. 前記成形体が種晶用基体部分と前記積層体部分を含む、請求項1に記載の金属積層成形体。
  3. 前記種晶用基体部分と前記積層体部分が同じ結晶方位を持つことを特徴とする請求項請求項2記載の金属積層成形体。
  4. 共晶組織の層間隔が、1〜100℃/sの凝固区間冷却速度を有する同一合金組成の鋳造材の層間隔の1/10〜1/1000であることを特徴とする、請求項1ないし3記載の金属積層成形体。
  5. ビッカース硬さ、破壊靭性値(インデーテーション法)の一方又は両方が、1〜100℃/sの凝固区間冷却速度を有する同一合金組成の鋳造材よりも20%以上高いことを特徴とする請求項1ないし請求項4記載の金属積層成形体。
  6. 共晶組織を構成する元素が、金属元素として周期表の第3族(Y、ランタノイド、アクチノイド)、第4族(Ti,Zr,Hf)、第5族(V,Nb,Ta)、第6族(Cr、Mo,W)、第7族(Mn,Tc,Re)、第8族(Fe,Ru,Os)、第9族(Co,Rh,Ir)、第10族(Ni,Pd,Pt)、第11族(Cu,Ag,Au)、第12族(Zn,Cd,Hg)、Al,Ga,In,Tl,Si,Ge,Sn,Pb,As,Sbの少なくとも1種以上含み、C、B、O、N、Pの1種以上含むことができることを特徴とする請求項1ないし請求項5記載の金属積層成形体。
  7. 前記共晶組織を有する共晶合金系が、
    MoSi2-Mo5Si3, NbSi2-Nb5Si3, WSi2-W5Si3, TaSi2-Ta5Si3, VSi2-V5Si3, MoSi2-Mo5Si3-Mo5Si3C, NbSi2-Nb5Si3-Nb5Si4C, TaSi2-Ta5Si3-Ta4.8Si3C0.5, Nb-Nb5Si3, W-W5Si3, Ni-Ni3Al, Ni-Ni3Nb, Ni3Al-Ni3Nb, Ni-Cr, Ni-Ni3Al-Ni3Nb, Ni-Ni3Al-TaC, Ni-Ni3Al-NbC, Ni-Ni3Al-Mo, Ni-Ni3Al-Cr7C3, Ni-Ni3Al-Cr3C2, NiAl-Mo, NiAl-Cr, Cr-Cr23C6, Mo-Mo2C, Nb-Nb2C, Ta-Ta2C, W-W2C, Ta-Ta2N, Cr-Cr2B, Al2O3-ZrO2, ZrB2-ZrC, (Fe,Ni)-(Fe,Ni)Alのいずれか一つであることを特徴とする請求項1ないし請求項6記載の金属積層成形体。
  8. 前記共晶組織を有する共晶合金系が、MoSi2-Mo5Si3,であることを特徴とする請求項7記載の金属積層成形体。
  9. さらにTa、Nb及びWからなる群から選ばれる少なくとも1種の添加元素を含むことを特徴とする請求項7ないし請求項8記載の金属積層成形体。
  10. 積層を行う造形ステージ上に単相又は共晶の単結晶を含む種晶用基体を配置し、前記基体上に原料金属層を形成し、前記原料金属層の表面に高エネルギー線を照射することにより、原料金属を溶融し、種結晶と同じ結晶方位を有する積層体を形成することを特徴とする請求項1ないし請求項9記載の金属積層成形体の製造方法。
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