JP2020033591A - 陽極酸化皮膜を有する金属成形体の製造方法、陽極酸化皮膜を有する金属成形体、ピストンおよび内燃機関 - Google Patents

陽極酸化皮膜を有する金属成形体の製造方法、陽極酸化皮膜を有する金属成形体、ピストンおよび内燃機関 Download PDF

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Abstract

【課題】剥離がより生じにくい陽極酸化皮膜を有する金属成形体を製造する方法の提供。【解決手段】Al系基材に電流密度を上昇させながら陽極酸化処理を施して、前記陽極酸化皮膜の最表面を含む表層を形成する工程と、電流密度を低下させながら陽極酸化処理を施して、前記陽極酸化皮膜の活性層または基材に接して配置された前記陽極酸化皮膜の底部層を形成する工程と、をこの順に行う、陽極酸化皮膜を有する金属成形体の製造方法。【選択図】図1

Description

本開示は、陽極酸化皮膜を有する金属成形体の製造方法、陽極酸化皮膜を有する金属成形体、ピストンおよび内燃機関に関する。
単体のアルミニウム(Al)およびアルミニウム合金などを含むAl系材料を少なくともその表面に含む成形体の耐食性および耐摩耗性を高める方法として、上記成形体のAl系材料を含む表面に多孔質アルミナ陽極酸化皮膜を形成する方法が知られている。多孔質アルミナ陽極酸化皮膜は、内燃機関用のピストンなどの、高い強度および遮熱性が要求される用途に使用されることがある。
多孔質アルミナ陽極酸化皮膜は、陽極となる上記Al系材料の成形体および陰極となる鉛板などを、酸を含む電解液中に浸漬し、両極間に通電することにより、作製される。このとき、上記酸がAl系材料を局所的に溶解させ、一方で上記通電がAl系材料から酸化皮膜を成長させることにより、酸化アルミニウムを主成分とする皮膜内に多数の細孔を有する、多孔性の陽極酸化皮膜が形成される。
このとき、電解液の種類と通電条件を変化させながら陽極酸化皮膜を形成することで、陽極酸化皮膜の細孔密度や細孔径などが異なる複数の層を有する陽極酸化皮膜を作製できることが知られている。
たとえば、特許文献1には、Al系材料に対し、第1の通電を行って陽極酸化皮膜の第1層を形成した後、電流量をより多くした第2の通電を行って陽極酸化皮膜の第2層を形成する方法が記載されている。特許文献1によれば、このようにして作製された陽極酸化皮膜は、細孔径がより小さく緻密な第1層が表層部に形成されるため、陽極酸化皮膜の表面をより平滑にするなどの効果を有するとされている。
また、特許文献2には、Al系材料に対し、交直重畳電解によって陽極酸化皮膜の第1層を形成した後、直流電解によって陽極酸化皮膜の第2層を形成する方法が記載されている。特許文献2によれば、このようにして作製された陽極酸化皮膜は、ランダムに配向された細孔が表層部に形成されるため、Al系材料の耐食性を高めるなどの効果を有するとされている。
さらに、発明者の一人による非特許文献1には、Al系材料に対し、硫酸、シュウ酸およびリン酸電解液を用いて、印加電圧により細孔間距離(セルサイズ)と細孔径を段階的に制御し、2層以上の複層多孔質構造を持つアルミナ陽極酸化皮膜を形成する段階的陽極酸化法が記載されている。非特許文献1によれば、電解液と印加電圧との組合せを変えながらアルミナ陽極酸化皮膜の各層を形成することにより、アルミナ皮膜のセルサイズと細孔径を層ごとに1〜10倍または1/2〜1/5の段差で制御することができる。
特開2009−256778号公報 特開2015−194149号公報
S. Z. Kure-Chuら、ECS Journal of Solid State Science and Technology, Vol. 5, No.5, p285-292, 2016.05.
内燃機関用のピストンなどに用いる材料には、長期の耐久性が求められる。しかし、本発明者らの検討によると、特許文献1および特許文献2などに記載された方法で作製した陽極酸化皮膜は、剥離が生じやすく、耐久性が十分であるとはいえなかった。また、非特許文献1に記載された段階的陽極酸化法では、単独の酸溶液を利用するので、複数の電解槽で処理することは手間がかかり、実用上には生産効率が悪いと予想される。
本開示の目的は、剥離がより生じにくい陽極酸化皮膜を有する金属成形体を製造する方法、当該方法により作製された陽極酸化皮膜を有する金属成形体、および当該金属成形体であるピストンを含む内燃機関を提供することにある。
一態様に係る陽極酸化皮膜を有する金属成形体の製造方法は、少なくともその表面にAl系材料を含む成形体である基材に電解液中で陽極酸化処理を施して、前記基材の前記表面に形成された陽極酸化皮膜を有する金属成形体を製造する方法である。上記方法は、電流密度を上昇させながら陽極酸化処理を施して、前記陽極酸化皮膜の最表面を含む表層を形成する工程と、電流密度を低下させながら陽極酸化処理を施して、前記陽極酸化皮膜の活性層または基材に接して配置された前記陽極酸化皮膜の底部層を形成する工程と、をこの順に行う。
また、一態様に係る金属成形体は、少なくともその表面にAl系材料を含む成形体である基材と、前記基材の表面に形成された陽極酸化皮膜を有する金属成形体である。前記陽極酸化皮膜は、前記陽極酸化皮膜の最表面を含む表層と、前記陽極酸化皮膜の活性層または基材に接して配置された、前記基材側に向かって細孔径が漸減する底部層と、を有する。
また、一態様に係る内燃機関用のピストンは、上記の陽極酸化皮膜を有する金属成形体である。
また、一態様に係る内燃機関は、上記のピストンを有する。
本開示によれば、剥離がより生じにくい陽極酸化皮膜を有する金属成形体を製造する方法、当該方法により作製された陽極酸化皮膜を有する金属成形体、および当該金属成形体であるピストンを含む内燃機関が提供される。
図1は、一実施形態に関する陽極酸化皮膜を有する金属成形体の製造方法の、例示的な工程を示すフローチャートである。 図2は、別の実施形態に関する陽極酸化皮膜を有する金属成形体の製造方法の、例示的な工程を示すフローチャートである。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は一例であり、本発明はこの実施形態により限定されるものではない。
[第1の実施形態]
図1は、一実施形態に関する陽極酸化皮膜を有する金属成形体の製造方法の、例示的な工程を示すフローチャートである。
図1に示すように、本実施形態に関する方法は、陽極酸化皮膜の表層を形成する工程(工程S110)と、陽極酸化皮膜の底部層を形成する工程(工程S130)と、を有する。
(陽極酸化皮膜の表層を形成する工程(工程S110))
本工程では、少なくともその表面にAl系材料を含む成形体である基材と、陰極となる金属体と、を浸漬させた電解液の中に、電流密度を上昇させながら通電して、前記基材に陽極酸化処理を施す。上記陽極酸化処理時の通電は、直流でも交流でもよいが、直流であることが好ましい。
上記陽極酸化処理により、酸化アルミニウムを主体とする多孔質状の陽極酸化皮膜が基材の表面に形成される。陽極酸化皮膜は、通常、皮膜の厚み方向に形成された細孔を中心部に有する略六角柱状のセルが密集した形状を有する。また、陽極酸化皮膜は、上記細孔が形成された多孔層と基材との間に、細孔が形成されていないバリア層を有する。
ここで、本工程では、電流密度を上昇させながら、上記陽極酸化処理を上記基材に施す。
上記電流密度は、本工程の終了時点において、本工程の開始時点よりも高い密度になっていればよいが、連続的に上昇させることが好ましい。電流密度を連続的に上昇させることにより、本工程で形成される陽極酸化皮膜の最表面を含む層(表層)内で細孔径を連続的に変化させて、細孔径が断続的に変化する界面を形成させにくくすることができる。そのため、電流密度を連続的に上昇させることにより、上記細孔径が断続的に変化する界面を切断面とする表層の層内剥離を抑制することができる。
なお、本明細書において、電流密度または電圧を連続的に上昇もしくは低下させる(または推移させる)とは、電流密度または電圧が継時的に滑らかに変移し、処理中に大きく変化することがないことを意味し、たとえば、横軸が各工程の処理開始時からの経過時間となり、縦軸が各時点における電流密度または電圧となるように、経過時間ごとの電流密度または電圧をプロットしてグラフ化したときに、連続したひとつの直線状または曲線状のグラフが得られることを意味する。
上記電流密度は、0(A/dm)から所定の電流密度までに上昇させることが好ましい。これにより、陽極酸化皮膜の最表面における細孔径をより小さくして、より緻密な表面層を形成することができる。また、上記電流密度は、本工程の終了時には35(A/dm)以下であることが好ましく、30(A/dm)以下であることがより好ましい。これにより、表層の基材側では細孔径をより大きくして空孔率を高め、陽極酸化皮膜の強度を保ちつつ、皮膜の遮熱性をより高めることができる。
このときの電圧は、本工程の開始直後には0(V)であることが好ましい。これにより、陽極酸化皮膜の最表面におけるセルサイズをより小さくして、より緻密な表面層を形成することができる。また、上記電圧は、本工程を通じて連続的に上昇することが好ましい。これにより、表面層における細孔間距離をより基材側に向かうにつれて大きくするように制御することができ、皮膜の強度をより高め、かつ皮膜の剥離をより生じにくくすることができる。上記電圧の上昇は、電流密度および電解液の組み合わせによって制御することができる。また、上記電圧は、370(V)以下に制限することが好ましく、200(V)以下であることがより好ましい。これにより、皮膜の焼けと剥離を抑制でき、表層の基材側ではセルサイズをより大きくして空孔率を高め、陽極酸化皮膜の遮熱性をより高めることができる。
上記基材は、少なくともその表面にAl系材料を含む成形体である。上記基材は、上記Al系材料を表面に含めばよいが、その全体が上記Al系材料からなる成形体であってもよい。
上記Al系材料は、Alを含む材料であり、電解液中で通電したときに陽極として作用し、陽極酸化皮膜が形成される材料であればよい。
たとえば、強度に優れることから、上記Al系材料は、Al−Si系過共晶合金とすることができる。上記Al−Si系過共晶合金は、アルミニウム(Al)およびシリコン(Si)を含む合金(Al−Si系合金)であり、共晶点よりもSiの含有量が多い、過共晶の合金である。Siの含有量は、10.5質量%以上30.0質量%以下とすることができる。上記Al−Si系過共晶合金の全質量に対して、Siの含有量は10.5質量%以上20.0質量%以下、好ましくは10.5質量%以上15.0質量%以下、より好ましくは10.5質量%以上13.0質量%以下、さらに好ましくは11.0質量%以上13.0質量%以下とすることができる。
上記Al−Si系過共晶合金は、AlおよびSi以外の元素を含んでもよい。上記Al−Si系過共晶合金が含み得る元素の例には、銅(Cu)、ニッケル(Ni)およびマグネシウム(Mg)などが含まれる。
上記Al−Si系過共晶合金中の上記Cu、NiおよびMgの含有量は、金属成形体の用途などに応じて適宜設定することができる。たとえば、上記Al−Si系過共晶合金の全質量に対して、Cuの含有量は1.0質量%以上6.0質量%以下、Niの含有量は1.0質量%以上3.5質量%以下、Mgの含有量は0.1質量%以上1.0質量%以下、などとすることができる。
なお、上記Al−Si系過共晶合金中の上記Cuの含有量が多い場合、定電流で陽極酸化処理を施すと、皮膜の表面が電解液に溶解しやすく、皮膜の脱落も生じやすい。しかし、本実施形態に関する方法によれば、Cuの含有量が多いAl系材料を用いても、皮膜の溶解や皮膜の脱落が生じにくい。これは、ホウ酸イオンおよびアンモニウムイオンの導入により比皮膜の耐食性と強度を改善し、皮膜溶解と剥離を抑制されたと考えられる。
Al系材料中の各元素の比率は、発光分光分析法などの公知の方法で測定することができる。
上記基材は、たとえば、Al系材料に含まれるべき元素を所定の割合で含有する合金溶湯を冷却または加圧凝固させて、作製することができる。上記合金溶湯中の上記各元素の比率は、たとえば上述した各元素の組成と同様にすればよい。上記合金溶湯は、個別に用意した上記各元素を加熱し互いに溶解させて作製してもよいし、JIS H 5202(2010年)で規定されるAC8A、AC9AおよびAC9Bなどの規格品を溶解させて作製してもよい。
このとき、上記合金溶湯を内燃機関用のピストンの形状を有する型に入れて冷却または加圧凝固させることで、上記Al−Si系過共晶合金を所望の形状(たとえば、内燃機関用のピストンの形状)に成形することができる。上記成形法のうち、組織の微細化と鋳造欠陥を容易に無くす観点からは、加圧凝固が好ましい。
上記陰極となる金属体は、陽極酸化処理における陰極として用いられ得るものであればよく、鉛板および黒鉛板などとすればよい。
上記電解液は、有機酸または無機酸を含有する水溶液とすることができる。上記有機酸は、陽極酸化処理に通常用いられる有機酸、たとえば2個以上のカルボキシル基を有する有機酸であればよい。このような有機酸の例には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、イタコン酸、リンゴ酸、酒石酸およびクエン酸などが含まれ、これらのうち、シュウ酸およびクエン酸が好ましい。上記無機酸は、陽極酸化処理に通常用いられる無機酸、たとえば硫酸、リン酸および硝酸などであればよい。上記電解液は、これらのうち1種の酸のみを含有してもよいし、複数の酸を含有する混合酸溶液であってもよい。
上記電解液は、形成される陽極酸化皮膜の強度をより高める観点から、ホウ酸イオンおよびアンモニウムイオンを含有する無機酸系混合酸溶液であることが好ましく、ホウ酸イオンおよびアンモニウムイオンを含有する硫酸系混合酸溶液であることが好ましい。
ホウ酸イオンは、陽極酸化皮膜の細孔密度を低下させて、陽極酸化皮膜の強度をより高めることができる。ここで、ホウ酸イオンは特に限定されず、ホウ酸イオンおよび四ホウ酸イオンなどであればよい。
なお、電解液に硫酸を用いたときなどには、特に印加電圧が高く(およそ70V以上)なったときに、陽極酸化皮膜がセルごとに分離してナノチューブ状の皮膜となり、陽極酸化皮膜の強度が低下することがある(粉ふき現象)。これは、硫酸に由来する硫黄原子(S)が陽極酸化皮膜に取り込まれ、セル境界部において酸化アルミニウム(Al)の酸素原子(O)を置換することにより生じると考えられる。これに対し、電解液がホウ酸イオンを含有すると、粉ふき現象を生じにくくすることによって、陽極酸化皮膜の強度をより高めることもできる。これは、おそらくはAlイオンと同じ価数を持つホウ素原子(B)が陽極酸化皮膜中へのSの取り込みを抑制し、皮膜の強度を改善するためと考えられる。
上記観点から、電界液中のホウ酸イオンの濃度は、0.001mol/L以上2.0mol/L以下であることが好ましく、0.01mol/L以上0.5mol/L以下であることがより好ましい。上記ホウ酸イオンの濃度が0.01mol/L以上であると、上述した作用により、陽極酸化皮膜の強度をより高めることができる。特に上記ホウ酸イオンの濃度が0.5mol/L以下であると、最表面層の剥離が生じにくくなるため、多孔質皮膜の成長速度をより速めることができる。
アンモニウムイオンは、電解液中のpH緩衝剤として作用し、形成された陽極酸化皮膜の酸による溶解を抑制して、陽極酸化皮膜の強度をより高めることができる。なお、上記形成された陽極酸化皮膜の溶解は、特に腐食性が高い硫酸などを電解液に用いたときなどに生じやすい。そのため、アンモニウムイオンによる上記硬化は、硫酸などを電解液に用いたときなどに顕著である。
上記観点から、電界液中のアンモニウムイオンの濃度は、0.001mol/L以上1.0mol/L以下であることが好ましい。上記アンモニウムイオンの濃度が0.001mol/L以上であると、上述した緩衝作用により、陽極酸化皮膜の強度をより高めることができる。上記アンモニウムイオンの濃度が1.0mol/L以下であると、電解液が塩基性側に移行しにくく、陽極酸化皮膜の成長性(成長速度)がアンモニウムイオンによって損なわれにくい。
また、上記アンモニウムイオンとホウ酸イオンとの濃度比(ホウ酸イオンの濃度に対するアンモニウムイオンの濃度比)は、1以上10以下であることが好ましく、2以上8以下であることがより好ましい。上記濃度比がこの範囲であると、皮膜の成長速度と皮膜の補強効果のバランスを取りやすい。上記濃度比が2以上であると、形成された陽極酸化皮膜の化学溶解を抑制して、陽極酸化皮膜の強度をより高めることができる。上記濃度比が8以下であると、電解液が塩基性側に移行しにくく、陽極酸化皮膜の成長性(成長速度)がアンモニウムイオンによって損なわれにくい。
本工程により、より緻密な表層を形成することができる。上記表層は、陽極酸化皮膜を有する金属成形体の耐摩耗性および強度などを高めることができる。
また、本工程により、基材側では細孔径をより大きくして空孔率を高め、陽極酸化皮膜の遮熱性をより高めた表層を形成することができる。上記表層は、基材側で接する他の層(底部層など)との界面における層間の細孔径の差をより小さくして、表層と上記他の層との界面を切断面とする表層の剥離を抑制することができる。
(陽極酸化皮膜の底部層を形成する工程(工程S130))
本工程では、上記表層が形成された後に、電流密度を低下させながら、上記陽極酸化処理を上記基材に施す。上記陽極酸化処理時の通電は、直流でも交流でもよいが、直流であることが好ましい。
本工程で形成される陽極酸化皮膜の層(底部層)は、電流密度を低下させながら形成するため、基材側に向かうにつれて細孔径が小さくなる。また、電流密度を低下させながら形成すると、経時的に発熱量が小さくなり、酸による溶解も小さくなっていくことによっても、基材側に向かうにつれて細孔径が小さくなる。そのため、本工程では、表層側ではより大きい細孔径を有し、かつ、基材側に向かって細孔径が漸減する底部層を形成することができる。
このような底部層は、基材側において、細孔径を小さくして細孔壁をより厚くすることができる。これにより、底部層は、底部層と基材との界面における接触面積を広げて底部層の基材側端部と基材との間の密着性を高め、陽極酸化皮膜の基材からの剥離を抑制することができる。あるいは、底部層は、底部層と活性層との界面における接触面積を広げて底部層の基材側端部と活性層との間の密着性を高め、多孔質層の活性層からの剥離を抑制することができる。
上記電流密度は、本工程の終了時点において、本工程の開始時点よりも低い密度になっていればよいが、連続的に低下させることが好ましい。これにより、底部層内で細孔径を連続的に変化させることができるため、細孔径が断続的に変化する界面を切断面とする底部層の層内剥離を抑制することができる。
上記電流密度は、本工程の開始時には、表層を形成する工程の終了時における電流密度と同じ高さであってもよいし、異なる高さであってもよい。
なお、本工程においても、上記電圧は、本工程を通じて連続的に上昇することが好ましい。これにより、底部層における細孔間距離をより基材側に向かうにつれて大きくするように制御することができ、皮膜の強度をより高め、かつ皮膜の剥離をより生じにくくすることができる。上記電圧の上昇は、電流密度および電解液の組み合わせによって制御することができる。また、本工程においても、このときの電圧は、370(V)以下に制限することが好ましく、200(V)以下であることがより好ましい。これにより、皮膜の焼けと剥離を抑制でき、表層の基材側ではセルサイズをより大きくして空孔率を高め、陽極酸化皮膜の遮熱性をより高めることができる。
本工程で用いる電解液および陰極となる金属体は、表層を形成する工程と同様のものを使用することができる。同一の反応槽内で、表層を形成する工程と本工程とを連続して行うことが好ましい。
本工程により、基材側では細孔壁をより厚くして基材(または活性層)との接触面積を広げ、陽極酸化皮膜の基材(または活性層)からの剥離が抑制されるような底部層を形成することで、形成される陽極酸化皮膜の強度を高めることができる。また、上記基材層は、表層側で接する他の層との界面における層間の細孔径の差をより小さくして、基材層と上記他の層との界面を切断面とする表層の剥離を抑制することができる。
(その他)
上記陽極酸化皮膜の底部層を形成する工程の後に、公知の方法で表層に封孔処理を施してもよい。これにより、細孔を気密して液体(金属成形体を内燃機関用のピストンとして使用したときの、燃焼用の燃料など)の浸透を抑制し、陽極酸化皮膜の遮熱性を維持しやすくすることができる。
また、陽極酸化処理時の電圧は、表層を形成する工程と、底部層を形成する工程と、を通じて連続的に上昇させることが好ましい。これにより、表層と底部層との間で細孔間距離も連続的に変化させることができ、表層と底部層との界面を切断面とする表層の剥離をより効果的に抑制することができる。
(陽極酸化皮膜を有する金属成形体)
上記工程により、Al系材料からなる成形体である基材と、前記基材の表面に形成された陽極酸化皮膜を有する金属成形体が製造される。上記陽極酸化皮膜は、陽極酸化皮膜の最表面を含む表層と、陽極酸化皮膜の活性層または基材に接して配置された、基材側に向かって細孔径が漸減する底部層と、を有する。
上記表層は、セルサイズが小さいセルが密集してなる層であり、より小さい細孔径を有する多数の細孔が密集して、緻密な構造の皮膜が形成された層である。上記表層は、細孔間距離が40nm以上60nm以下であり、かつ、細孔径が2nm以上10nm以下の層であることが好ましい。また、上記表層は、厚みが5μm以上20μm以下の層であることが好ましい。
上記底部層は、セルサイズがより大きいセルを有する層であり、基材側に向かって細孔径が漸減する、より少数の細孔を有する層である。上記底部層は、細孔間距離が400nm以上700nm以下であり、かつ細孔径が40nm以上100nm以下の層であることが好ましい。また、上記底部層は、厚みが2μm以上10μm以下の層であることが好ましい。
なお、上記表層および底部層の細孔間距離は、FE−SEMおよびTEMの断面観察によって測定される平均値である。また、上記表層および底部層の細孔径は、FE−SEMおよびTEM断面観察によって測定される平均細孔径である。また、上記表層および底部層の厚みは、FE−SEM断面観察によって測定される平均厚みである。本実施形態では、表層と底部層との間に明確な界面が生じていないこともあるが、このときは、細孔サイズとセルサイズが大きく変化する点を表層と底部層との界面とすればよい。
上記陽極酸化皮膜の膜厚は、100μm以上500μm以下であることが好ましい。上記膜厚が100μm以上500μm以下であると、陽極酸化皮膜の強度および遮熱性などを十分に高めることができる。
また、上記陽極酸化皮膜は、表層または基材層の内部に、シリカ(SiO)で被覆されたシリコン(Si)微粒子を有してもよい。上記Si微粒子は、Al−Si系過共晶合金を成形するときに不可避的に生成する初晶Siの微結晶である。各層を形成するための陽極酸化処理時に、Si微粒子も通電により酸化されて表面に緻密なシリカ薄膜が形成される。ただし、シリカは絶縁性が高いため、Si微粒子の内部は酸化されない。上記シリカは、Si微粒子と各層を構成する酸化アルミニウムとの間の密着性を高めて、陽極酸化皮膜の強度を高める。また、上記シリカは、断熱性が高いため、陽極酸化皮膜の遮熱性を高める。
上記金属成形体は、内燃機関用のピストンとすることができる。
燃焼室内からピストン内部へ熱が伝達することによる冷却損失をより抑制する観点からは、上記内燃機関用のピストンは、少なくともピストンの頂面を形成する壁面または燃焼室を形成する壁面の一部に上記陽極酸化皮膜を有することが好ましく、ピストンの頂面を形成する壁面または燃焼室を形成する壁面の全面に上記陽極酸化皮膜を有することがより好ましい。このとき、上記陽極酸化皮膜はピストンの最外層を形成していてもよく、上記陽極酸化皮膜の表面に別の皮膜が形成されていてもよい。
上記内燃機関用のピストンは、ガソリンエンジン用ピストンでもディーゼルエンジン用ピストンでもよいが、燃焼室がより広いために冷却損失の問題がより生じやすいという特性を有するディーゼルエンジン用ピストンにおいて、上記金属成形体の高い遮熱効果による燃費の低減がより顕著に見られる。
[第2の実施形態]
図2は、別の実施形態に関する陽極酸化皮膜を有する金属成形体の製造方法の、例示的な工程を示すフローチャートである。
図2に示すように、本実施形態に関する方法は、陽極酸化皮膜の表層を形成する工程(工程S110)と、陽極酸化皮膜の中間層を形成する工程(工程S120)と、陽極酸化皮膜の底部層を形成する工程(工程S130)と、を有する。
(陽極酸化皮膜の表層を形成する工程(工程S110))
本工程は、第1の実施形態と同様に行い得るので、詳しい説明を省略する。
(陽極酸化皮膜の中間層を形成する工程(工程S120))
本工程では、上記表層が形成された後に、電流密度をデザインされたパターンに制御しながら、上記陽極酸化処理を上記基材に施す。上記陽極酸化処理時の通電は、直流でも交流でもよいが、直流であることが好ましい。上記電流密度のパターンは特に限定されず、任意に設定すればよい。
本工程で形成される陽極酸化皮膜の層(中間層)は、電流密度に応じて陽極酸化皮膜の厚み方向に制御された細孔径を有する。そのため、本工程では、上記電流密度のパターンに応じて、製造される金属成形体の用途に適合した形状の細孔を有する中間層を形成することができる。
上記電流密度は、本工程においても、連続的に推移させることが好ましい。これにより、細孔径が断続的に変化する界面を切断面とする中間層の層内剥離を抑制することができる。
上記電流密度は、本工程の開始時には、表層を形成する工程の終了時における電流密度と同じ高さであることが好ましいが、表層を形成する工程の終了時における電流密度より上下20%(好ましくは10%)程度の範囲で変動していてもよい。これにより、表層と中間層との界面における両層間の細孔径の差をより小さくして、表層と中間層との界面を切断面とする表層の剥離を抑制することができる。
また、上記電流密度は、本工程の終了時には、底部層を形成する工程の開始時における電流密度と同じ高さであることが好ましいが、底部層を形成する工程の開始時における電流密度より上下20%(好ましくは10%)程度の範囲で変動していてもよい。これにより、中間層と底部層との界面における両層間の細孔径の差をより小さくして、中間層と底部層との界面を切断面とする表層の剥離を抑制することができる。
なお、本工程においても、上記電圧は、本工程を通じて連続的に上昇することが好ましい。これにより、中間層における細孔間距離をより基材側に向かうにつれて大きくするように制御することができ、皮膜の強度をより高め、かつ皮膜の剥離をより生じにくくすることができる。また、本工程においても、このときの電圧は、370(V)以下に制限することが好ましく、200(V)以下であることがより好ましい。これにより、皮膜の焼けと剥離を抑制でき、表層の基材側ではセルサイズをより大きくして空孔率を高め、陽極酸化皮膜の遮熱性をより高めることができる。
本工程で用いる電解液および陰極となる金属体は、表層を形成する工程と同様のものを使用することができる。同一の反応槽内で、表層を形成する工程と本工程とを連続して行うことが好ましい。
(陽極酸化皮膜の底部層を形成する工程(工程S130))
本工程は、第1の実施形態と同様に行い得るので、詳しい説明を省略する。
(その他)
本実施形態においても、上記陽極酸化皮膜の底部層を形成する工程の後に、公知の方法で表層に封孔処理を施してもよい。これにより、細孔を気密して液体(金属成形体を内燃機関用のピストンとして使用したときの、燃焼用の燃料など)の浸透を抑制し、陽極酸化皮膜の遮熱性を維持しやすくすることができる。
また、本実施形態においても、陽極酸化処理時の電圧は、表層を形成する工程と、中間層を形成する工程と、底部層を形成する工程と、を通じて連続的に上昇させることが好ましい。これにより、表層、中間層および底部層との間で細孔間距離も連続的に変化させることができ、表層と中間層との界面、または、中間層と底部層との界面、を切断面とする表層の剥離をさらに抑制することができる。
(陽極酸化皮膜を有する金属成形体)
上記工程により、Al系材料からなる成形体である基材と、前記基材の表面に形成された陽極酸化皮膜を有する金属成形体が製造される。上記陽極酸化皮膜は、陽極酸化皮膜の最表面を含む表層と、活性層または基材に接して配置された、基材側に向かって細孔径が漸減する底部層と、表層と底部層との間に配置された中間層と、を有する。
上記表層および底部層は、第1の実施形態と同様とし得るので、詳しい説明を省略する。
上記中間層は、セルサイズが上記表層と上記底部層との間の大きさであるセルを有する層であり、デザインされた形状の細孔を有する層である。
たとえば、上記中間層は、基材側に向かってセルサイズおよび細孔径が互いに異なる増加率で大きくなる構造とすることができる。これにより、中間層は、特に基材側において、細孔径がより大きく、かつ細孔壁がより厚い構造を有することができる。このようにすることで、空孔率をより高めて中間層による遮熱性をより高める一方で、細孔壁をより厚くして中間層の強度もより高めることができる。
上記中間層は、細孔間距離が200nm以上350nm以下であり、かつ、細孔径が30nm以上80nm以下の層であることが好ましい。また、上記中間層の厚みは、陽極酸化皮膜全体の厚みの4/5以上であることが好ましい。
なお、上記中間層の細孔間距離、細孔径および厚みは、第1の実施形態における表層および底部層の細孔間距離、細孔径および厚みと同様に測定された値である。
上記金属成形体は、内燃機関用のピストンとすることができる。本実施形態に関する金属成形体は、中間層の構造を調整することにより遮熱性および強度を高めることができるため、耐久性および燃費の低減率が高いピストンとすることができる。
以下、本発明の具体的な実施例を比較例とともに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.試験片の作製
1−1.試験片1
片面をマスキングした円形形状(12.5mmφ,厚さ2mm)の、1.0質量%のCuを含むAl−Si系過共晶合金である基材と、陰極とを、硫酸、ホウ酸およびアンモニアを含有する電解液に浸漬し、通電時の電流密度および電圧を変化させながら180分通電して、マスキングしなかった面に陽極酸化皮膜を有する金属成形体である試験片1を得た。なお、ホウ酸およびアンモニアは、ホウ酸イオンの濃度が0.001mol/L以上2mol/L以下となり、0.001mol/L以上1.0mol/L以下となり、アンモニウムイオンとホウ酸イオンとの濃度比(ホウ酸イオンの濃度に対するアンモニウムイオンの濃度)は、1以上10以下となるように添加量を調整した。
1−2.試験片2
通電時の電流密度の変化パターンを変更し、90分通電した以外は試験片1と同様にして、片面に陽極酸化皮膜を有する金属成形体である試験片2を得た。
1−3.試験片3
通電時の電流密度の変化パターンを変更し、60分通電した以外は試験片1と同様にして、片面に陽極酸化皮膜を有する金属成形体である試験片3を得た。
1−4.試験片4
通電時の電流密度の変化パターンを変更し、30分通電した以外は試験片1と同様にして、片面に陽極酸化皮膜を有する金属成形体である試験片4を得た。
1−5.試験片5
円形形状(12.5mmφ,厚さ2mm)の、2.5質量%のCuを含むAl−Si系過共晶合金である基材を、片面をマスキングして、試験片1の作製と同様の組成を有する電解液に浸漬し、通電時の電流密度および電圧を変化させながら50分通電して、マスキングしなかった面に陽極酸化皮膜を有する金属成形体である試験片5を得た。
1−6.試験片6
通電時の電流密度を一定にし、60分通電した以外は試験片1と同様にして、片面に陽極酸化皮膜を有する金属成形体である試験片6を得た。
1−7.試験片7
電解液を、12質量%の硫酸を含有し、ホウ酸およびアンモニアを含有しない電解液とし、通電時の電流密度および電圧の変化パターンを変更し、90分通電した以外は試験片1と同様にして、片面に陽極酸化皮膜を有する金属成形体である試験片7を得た。
1−8.試験片8
通電時の電流密度を一定にし、60分通電した以外は試験片5と同様にして、試験片8を得た。
試験片1〜試験片8の製造条件(基材中のCu量、電解液の種類、電流密度の変化、電圧の変化、および通電時間)を表1に示す。なお、電解液の種類については、ホウ酸イオンおよびアンモニウムイオンを含有する電解液を「混合酸」、ホウ酸イオンおよびアンモニウムイオンを含有しない電解液を「硫酸」と表記する。また、電流密度の変化については、表層、中間層および底部層のそれぞれを形成するステップにおける、各ステップの開始時および終了時の電流密度を、時間経過を示す矢印とともに示す。各ステップにおいて電流密度を変化させたときは、いずれも、連続的に電流密度を変化させた。試験片2の作製においては、中間層を形成するとき、はじめに一定の電流密度で通電し、その後、電流密度を上昇させながら通電した。
Figure 2020033591
2.測定および評価
2−1.膜厚
試験片1〜試験片8が有する陽極酸化皮膜の膜厚を、膜厚計(DUALSCOPE MP0R, Fischer)で測定した。
2−2.ビッカース硬さ(Hv)分布
試験片1〜試験片8が有する陽極酸化皮膜のうち、膜厚方向の上部、中部および下部におけるビッカース硬さ(Hv)を、微小硬度計で測定した。
2−3.皮膜状態(外観)
試験片1〜試験片8が有する陽極酸化皮膜の状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。
A 皮膜状態は良好であり、剥離はみられない
B 皮膜の一部が剥離していた
C 皮膜の表面部分が部分的に溶解しており、皮膜の一部が剥離していた
D 皮膜の表面部分が全体的に溶解しており、皮膜が脱落していた
試験片1〜試験片8の製造条件(基材中のCu量、電解液の種類(ホウ酸イオンおよびアンモニウムイオンを含有する電解液を「混合酸」、ホウ酸イオンおよびアンモニウムイオンを含有しない電解液を「硫酸」と表記する。)、電流密度の変化、電圧の変化、および通電時間)、ならびに、形成された陽極酸化皮膜の評価結果(膜厚、ビッカース硬さ(Hv)分布、および皮膜状態)を、表2に示す。
Figure 2020033591
電流密度を上昇させながら陽極酸化処理を施して、前記陽極酸化皮膜の最表面を含む表層を形成する工程と、電流密度を低下させながら陽極酸化処理を施して、前記陽極酸化皮膜の活性層または基材に接して配置された前記陽極酸化皮膜の底部層を形成する工程と、をこの順に行って陽極酸化皮膜を形成したところ、剥離が少ない陽極酸化皮膜を有する金属成形体が得られた。
なお、試験片1および試験片2をFE−SEMおよびTEMの断面観察によって測定したところ、細孔間距離の平均値が40nm以上60nm以下であり、かつ細孔径の平均値が2nm以上10nm以下である表層と、細孔径の平均値が30nm以上80nm以下であり、かつ細孔間距離の平均値が200nm以上350nm以下である中間層と、細孔間距離の平均値が400nm以上700nm以下であり、かつ細孔径の平均値が40nm以上100nm以下である底部層と、が形成されていることが確認された。
また、試験片3〜試験片5をFE−SEMおよびTEMの断面観察によって測定したところ、細孔間距離の平均値が40nm以上60nm以下であり、かつ細孔径の平均値が2nm以上10nm以下である表層と、細孔間距離の平均値が400nm以上700nm以下であり、かつ細孔径の平均値が40nm以上100nm以下である底部層と、が形成されていることが確認された。
本開示によれば、陽極酸化皮膜の剥離が生じにくい金属成形体が提供される。本開示の金属成形体は、内燃機関のピストンとして利用可能である。

Claims (10)

  1. 少なくともその表面にAl系材料を含む成形体である基材に電解液中で陽極酸化処理を施して、前記基材の前記表面に形成された陽極酸化皮膜を有する金属成形体を製造する方法であって、
    電流密度を上昇させながら陽極酸化処理を施して、前記陽極酸化皮膜の最表面を含む表層を形成する工程と、
    電流密度を低下させながら陽極酸化処理を施して、前記陽極酸化皮膜の活性層または基材に接して配置された前記陽極酸化皮膜の底部層を形成する工程と、
    をこの順に行う、陽極酸化皮膜を有する金属成形体の製造方法。
  2. 前記表層を形成する工程と前記底部層を形成する工程との間に、
    電流密度をデザインされたパターンに制御しながら陽極酸化処理を施して、前記陽極酸化皮膜の前記表層と前記底部層との間に配置される中間層を形成する工程を含む、
    請求項1に記載の陽極酸化皮膜を有する金属成形体の製造方法。
  3. 前記電解液は、
    0.001mol/L以上2.0mol/Lのホウ酸イオンと、
    0.001mol/L以上1.0mol/L以下のアンモニウムイオンと、を含有し、
    前記アンモニウムイオンと前記ホウ酸イオンとの濃度比は、1以上10以下である無機酸系混合酸溶液である、
    請求項1または2に記載の陽極酸化皮膜を有する金属成形体の製造方法。
  4. 少なくともその表面にAl系材料を含む成形体である基材と、前記基材の表面に形成された陽極酸化皮膜を有する金属成形体であって、
    前記陽極酸化皮膜は、
    前記陽極酸化皮膜の最表面を含む表層と、
    前記陽極酸化皮膜の活性層または基材に接して配置され、前記基材側に向かって細孔径が漸減する底部層と、を有する、
    陽極酸化皮膜を有する金属成形体。
  5. 前記表層は、細孔間距離が40nm以上60nm以下であり、かつ細孔径が2nm以上10nm以下の層である、
    請求項4に記載の陽極酸化皮膜を有する金属成形体。
  6. 前記底部層は、細孔間距離が400nm以上700nm以下であり、かつ細孔径が40nm以上100nm以下の層である、
    請求項4または5に記載の陽極酸化皮膜を有する金属成形体。
  7. 前記底部層と前記表層との間に、細孔径が30nm以上80nm以下であり、かつ細孔間距離が200nm以上350nm以下である中間層を有する、
    請求項4〜6のいずれか1項に記載の陽極酸化皮膜を有する金属成形体。
  8. 前記Al系材料は、Al−Si系合金であり、
    前記陽極酸化皮膜は、シリカ(SiO)で被覆されたシリコン(Si)微粒子を有する、
    請求項4〜7のいずれか1項に記載の陽極酸化皮膜を有する金属成形体。
  9. 請求項4〜8のいずれか1項に記載の陽極酸化皮膜を有する金属成形体である、内燃機関用のピストン。
  10. 請求項9に記載のピストンを有する、内燃機関。
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