JP2020033218A - ジルコニア質セラミックスおよびこれを用いた射出成形用金型部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】加熱および冷却が繰り返されても、亀裂が発生しにくく、長期間に亘って破損することなく使用できるジルコニア質セラミックスおよびこれを用いた射出成形用金型部品を提供する。【解決手段】本開示のジルコニア質セラミックスは、気孔を有し、構成される全成分100質量%のうち、安定化剤を含むジルコニアの含有量が98質量%以上である。また、気孔は、面積占有率が0.1%以上4.0%以下であり、円相当径の平均値Dが0.8μm以上1.5μm以下であり、円相当径の標準偏差Dσに対する円相当径の平均値Dの比Dσ/Dが0.7以下である。また、本開示の射出成形用金型部品は、上記構成のジルコニア質セラミックスを用いたものである。【選択図】なし
Description
本開示は、ジルコニア質セラミックスおよびこれを用いた射出成形用金型部品に関する。
ジルコニア質セラミックスは、優れた機械的強度を備えながら、セラミックスの中でも熱伝導率が低いため、様々な分野で広く用いられている。
例えば、特許文献1には、ジルコニア質セラミックスを射出成形用金型部品として用いることが記載されている。このように、熱伝導率が低いジルコニア質セラミックスを射出成形用金型部品として用いれば、原料が射出成形用金型部品と接触しても、原料の熱が射出成形用金型部品に奪われにくく、原料が冷めにくいことから、原料の流動性を高く維持することができる。
射出成形用金型部品として使用されるジルコニア質セラミックスは、原料との接触により、使用時には加熱され、使用が終わると冷却される。そのため、使用の度に、加熱と冷却とが繰り返され、長期間の使用においては、亀裂が発生し、破損してしまうおそれがある。
本開示は、このような事情に鑑みて案出されたものであり、加熱および冷却が繰り返されても、亀裂が発生しにくく、長期間に亘って破損することなく使用できるジルコニア質セラミックスおよびこれを用いた射出成形用金型部品を提供することを目的とする。
本開示のジルコニア質セラミックスは、気孔を有し、構成される全成分100質量%のうち、安定化剤を含むジルコニアの含有量が98質量%以上である。また、気孔は、面積占有率が0.1%以上4.0%以下であり、円相当径の平均値Dが0.8μm以上1.5μm以下であり、円相当径の標準偏差Dσに対する円相当径の平均値Dの比Dσ/Dが0.7以下である。
また、本開示の射出成形用金型部品は、上記構成のジルコニア質セラミックスを用いたものである。
本開示のジルコニア質セラミックスは、加熱および冷却が繰り返されても、亀裂が発生しにくい。
本開示の射出成形用金型部品は、上記ジルコニア質セラミックスを備えるものであることから、長期間に亘って、破損することなく使用できる。
以下に、本開示のジルコニア質セラミックスおよびこれを用いた射出成形用金型部品の一例について説明する。
本開示のジルコニア質セラミックスは、気孔を有し、構成される全成分100質量%のうち、安定化剤を含むジルコニアの含有量が98質量%以上である。このように、本開示のジルコニア質セラミックスは、安定化剤を含むジルコニアの含有量が98質量%以上であることから、優れた機械的強度を有し、かつ、熱伝導率が低い。
ここで、安定化剤とは、ジルコニアを安定した相状態(正方晶または立方晶)に保つためのものであり、例えば、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化セリウム(CeO2)、酸化ディスプロシウム(Dy2O3)、酸化マグネシウム(MgO)および酸化カルシウム(CaO)等から選ばれる少なくとも1種のことである。特に、安定化剤が酸化マグネシウムであれば、ジルコニアが耐熱性および靱性に優れたものとなる。
また、本開示のジルコニア質セラミックスにおける、安定化剤を含むジルコニアの含有量については、まず、蛍光X線分析装置(XRF)を用いてジルコニア質セラミックスの半定量分析を行なうことで、ジルコニウム(Zr)の含有量を求め、このジルコニウムをジルコニア(ZrO2)に換算することで算出する。
次に、安定化剤の含有量については、ジルコニアと同様に、XRFを用いてジルコニア質セラミックスの半定量分析を行ない、例えばマグネシウム(Mg)が検出されたならば、マグネシウムの含有量を酸化マグネシウムに換算することで算出すればよい。そして、上述の方法により算出した、ジルコニアおよび安定化剤の含有量を合計することで、安定化剤を含むジルコニアの含有量を算出することができる。
そして、本開示のジルコニア質セラミックスにおける気孔は、面積占有率が0.1%以上4.0%以下であり、円相当径の平均値Dが0.8μm以上1.5μm以下であり、円相当径の標準偏差Dσに対する円相当径の平均値Dの比Dσ/Dが0.7以下である。このような構成を満足していることにより、加熱および冷却が繰り返される際の熱応力を気孔が効果的に緩和し、本開示のジルコニア質セラミックスは、加熱および冷却が繰り返される環境下において、亀裂が発生しにくい。
これに対し、気孔の面積占有率が0.1%未満では、気孔が少ないために、熱応力が緩和されにくく、亀裂が発生しやすくなる。また、気孔の面積占有率が4.0%を超えると、気孔が多いために、亀裂が発生した際に、気孔を介して亀裂が進展し、破損しやすくなる。
また、気孔の円相当径の平均値Dが0.8μm未満では、気孔が小さいために、気孔による熱応力の緩和がされにくく、亀裂が発生しやすくなる。また、気孔の円相当径の平均値Dが1.5μmを超えると、気孔が大きいために、亀裂が発生した際に、気孔を介して亀裂が進展し、破損しやすくなる。
また、気孔の円相当径の標準偏差Dσに対する気孔の円相当径の平均値Dの比Dσ/Dにおいては、気孔の円相当径の平均値が一定の場合、気孔の円相当径の標準偏差Dσの値が大きくなれば、比Dσ/Dの値が大きくなるため、この比Dσ/Dが0.7を超えると、気孔による熱応力の緩和が均一に行なわれにくく、亀裂が発生しやすくなる。
本開示のジルコニア質セラミックスにおいて、気孔の円相当径の標準偏差Dσは、例えば、0.9μm以下である。
また、本開示のジルコニア質セラミックスにおける気孔は、重心間距離の標準偏差Lσに対する重心間距離の平均値Lの比Lσ/Lが0.7以下であってもよい。このような構成を満足するならば、ジルコニア質セラミックスにおいて、気孔が均一に分散していることから、気孔による熱応力の緩和が均一に行なわれやすくなり、亀裂がより発生しにくくなる。
なお、本開示のジルコニア質セラミックスにおいて、気孔の重心間距離の平均値Lは、例えば、5μm以上16μm以下であってもよい。また、気孔の重心間距離の標準偏差Lσは、例えば、10μm以下であってもよい。
また、本開示のジルコニア質セラミックスにおける気孔は、円相当径の分布曲線における歪度が0より大きくてもよい。ここで、気孔の円相当径の分布曲線とは、2次元のグラフにおける横軸を気孔の円相当径、縦軸を気孔の個数とした、気孔の円相当径の分布を示す曲線をいい、気孔の円相当径の分布範囲を示すものである。
また、歪度とは、分布の非対称性を示す指標であり、Excel(登録商標、Microsoft Corporation)に備えられている関数SKEWを用いて求めることができる。
なお、歪度が0より大きければ、気孔の円相当径の分布曲線において、気孔の円相当径の平均値Dよりも小さい円相当径を有する気孔の個数が、気孔の円相当径の平均値Dよりも大きい円相当径を有する気孔の個数よりも多いことを意味する。
よって、気孔の面積占有率が一定の場合において、気孔の円相当径の平均値Dよりも小さい円相当径を有する気孔の個数が多いことは、気孔の円相当径の平均値Dよりも大きい円相当径を有する気孔の個数が多い場合よりも、気孔の全個数が多いことを意味する。そのため、上記構成を満足するならば、気孔により熱応力が効果的に緩和されるため、亀裂がより発生しにくくなる。
ここで、本開示のジルコニア質セラミックスにおける、気孔の面積占有率、気孔の円相当径の平均値D、気孔の円相当径の標準偏差Dσ、気孔の重心間距離の平均値L、気孔の重心間距離の標準偏差Lσおよび気孔の円相当径の分布曲線における歪度は、以下の方法で測定すればよい。
まず、本開示のジルコニア質セラミックスを切断し、切断した面を鏡面研磨し、鏡面研磨した面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて1500倍の倍率で撮影する。そして、撮影した写真に対して、画像解析ソフト「A像くん」(登録商標、旭化成エンジニアリング(株)製、なお、以降に画像解析ソフト「A像くん」と記した場合、旭化成エンジニアリング(株)製の画像解析ソフトを示すものとする。)の粒子解析という手法を適用して画像解析を行なうことにより、気孔の面積占有率、気孔の円相当径の平均値Dおよび気孔の円相当径の標準偏差Dσを、分散解析という手法を適用して画像解析を行なうことにより、気孔の重心間距離の平均値Lおよび気孔の重心間距離の標準偏差Lσを求めることができる。また、得られた気孔の円相当径のデータから気孔の円相当径の分布曲線における歪度を算出することができる。ここで、画像解析ソフト「A像くん」の解析条件としては、結晶粒子の明度を「暗」、2値化の方法を「手動」、小図形除去面積を0.4μm、画像の明暗を示す指標であるしきい値を50以上120以下とすればよい。
また、上記構成のジルコニア質セラミックスを用いた射出成形用金型部品であれば、原料の流動性を高く維持できるとともに、原料との接触による加熱および冷却が繰り返されても、亀裂が発生しにくく、長期間に亘って、破損することなく使用できる。
ここで、射出成形用金型部品とは、例えば、原料と接触する、金型までの導入部品にあたるスプルーブッシュ等である。
次に、本開示のジルコニア質セラミックスの製造方法の一例について説明する。
まず、ジルコニア粉末を準備し、ジルコニア粉末100質量部に対して、安定化剤である酸化マグネシウム粉末を2質量部以上4質量部以下と溶媒とを添加し、ボールミルまたはビーズミル等を用いて粉砕し、スラリーとする。なお、焼成後の焼結体において、安定化剤を含むジルコニアが98質量%以上となるならば、焼結助剤として酸化アルミニウム粉末または酸化珪素粉末等を添加してもよい。
次に、スラリーにアニオン系の分散剤を添加し、これらを混合した後にスプレードライヤーで噴霧乾燥することにより顆粒とする。ここで、アニオン系の分散剤を加えることにより、ジルコニア粉末および安定化剤としての酸化マグネシウム粉末を適度に分散させることができる。そして、アニオン系の分散剤の添加量および添加後の混合時間を適宜調整することで、焼成後において、気孔の量および大きさに制御することができる。ここで、アニオン系の分散剤は、ジルコニア粉末および安定化剤としての酸化マグネシウム粉末の合計100質量部に対し、0.1質量部以上1.0質量部以下加えればよい。
そして、この顆粒を用いて所望の成形法、例えば、乾式加圧成形法,冷間静水圧加圧成形法等により成形体を作製する。または、この顆粒を坏土化することで押出成形法、射出成形法等により成形体を作製してもよい。
その後、この成形体を1600℃以上1750℃以下で焼成することによって、焼結体を得ることができる。そして、この焼結体に、所望の加工方法、例えば、研削加工および研磨加工等を行なうことによって、本開示のジルコニア質セラミックスを得る。
Claims (4)
- 気孔を有し、構成される全成分100質量%のうち、安定化剤を含むジルコニアの含有量が98質量%以上であり、
前記気孔は、
面積占有率が0.1%以上4.0%以下であり、
円相当径の平均値Dが0.8μm以上1.5μm以下であり、
円相当径の標準偏差Dσに対する円相当径の平均値Dの比Dσ/Dが0.7以下であるジルコニア質セラミックス。 - 前記気孔は、重心間距離の標準偏差Lσに対する重心間距離の平均値Lの比Lσ/Lが0.7以下である請求項1に記載のジルコニア質セラミックス。
- 前記気孔は、円相当径の分布曲線における歪度が0より大きい請求項1または請求項2に記載のジルコニア質セラミックス。
- 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のジルコニア質セラミックスを用いた射出成形用金型部品。
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JP2018160534A JP2020033218A (ja) | 2018-08-29 | 2018-08-29 | ジルコニア質セラミックスおよびこれを用いた射出成形用金型部品 |
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---|---|---|---|---|
CN116283280A (zh) * | 2023-03-29 | 2023-06-23 | 合肥商德应用材料有限公司 | 氧化锆基复合陶瓷和陶瓷吸嘴 |
-
2018
- 2018-08-29 JP JP2018160534A patent/JP2020033218A/ja active Pending
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