JP2020030084A - 応力ひずみ曲線作成装置および応力ひずみ曲線作成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡易な構成で、高精度な応力ひずみ曲線を作成する応力ひずみ曲線作成技術を提供する。【解決手段】応力ひずみ曲線作成装置3は、試験片Aに対する荷重の時系列データから、観測断面引張力データを取得し、ひずみ測定値の時系列データから、取得するひずみ分布データを取得し、所定の分割基準に基づいて、ひずみ分布データを複数のひずみ集合に分割し、各々のひずみ集合に属する前記ひずみ分布データから代表ひずみを算出し、各々の代表ひずみに対応する代表面積を算出し、観測断面引張力データと代表面積に基づいて、力のつり合い式を作成し、応力ひずみ曲線上において、連続する複数点が平滑であることを示す平滑条件式を作成し、つり合い式と平滑条件式とに基づき、観測方程式を作成し、観測方程式を解くことにより代表応力を算出し、記代表ひずみと代表応力とから応力ひずみ曲線を作成する。【選択図】図1
Description
本発明は、コンクリートや鉄等の応力軟化域を含む全範囲の応力ひずみ曲線を作成する応力ひずみ曲線作成技術に関する。
構造物の安全性を担保する等のために、コンクリートや鉄等の材料の強度の測定が行われている。その強度の測定の一つに、引張試験がある。例えば、コンクリートの引張試験は日本工業規格(JIS A 1113)で規定されている(非特許文献1)。しかしながら、この規格では応力ひずみ曲線を求めることはできない。また、載荷方向に圧縮応力が加わるため、一軸引張状態を再現できないという課題がある。一方、直接引張試験は、一軸引張状態の下で強度と応力ひずみ曲線とを同時に求めることができる有用な方法であり、例えば、特許文献1の一軸引張試験装置では、コンクリート供試体の上端と下端の側面にそれぞれ堅固に取付けられる上側および下側のガイド部材と、コンクリート供試体の下面および下側のガイド部材の下面との間に間隔を隔てた状態で上側のガイド部材を保持する保持部分と、下側のガイド部材に下向きの力を加える載荷部分とを備え、載荷部分に下向きの力を加えることによって、コンクリート供試体に引張力を加えるように構成されている。このような構成により、特許文献1の一軸引張試験装置では、引張強度を直接的に測定することができる。
しかしながら特許文献1の一軸引張試験装置では、引張試験を行う際に発生する曲げモーメントによって、正確な引張強度を測定できないという指摘もある。このような課題を解決するために、非特許文献2では、供試体に引張力を載荷し、精度の高い特殊な試験装置を用いて、供試体の微小な曲げモーメントを感知し、逆方向に曲げモーメントを加えることで、一様な引張ひずみ状態を再現する方法が提案されている。
日本工業規格 JIS A 1113
秋田宏,小出英夫,孫銅基,外門正直:コンクリートの直接引張で得られる引張強度の精度に関する検討,コンクリート工学論文集,Vol.12,No.2,pp.105−112,2001
日本工業規格 JIS Z 2241
特許文献1の一軸引張試験装置では、試験器具の条件や供試体形状、供試体が不均一であることに起因して曲げモーメントが発生する可能性があり、その場合には、正確な引張強度を測定することができない。
また、非特許文献2の試験方法では、曲げモーメントを打ち消すための工夫がされているものの、精度の高い特殊な試験装置が必要であり、1試験あたりの試験時間が1時間半から2時間程度と長いため、簡便さに欠けている。また、曲げモーメントを打ち消し、全面一様な引張ひずみ状態を再現した場合にも、供試体の最も弱い箇所から損傷が始まるため、長さ方向に複数ひび割れが発生し、曲げモーメントの抑制が困難になる可能性もある。
一方、鉄の応力ひずみ曲線を求める試験方法は日本工業規格(JIS Z 2241)に規定されている(非特許文献3)。この規格では、供試体断面は円形形状または長方形形状とし、標点をパンチまたはけがき針で付してひずみを測定し、下降伏点までの載荷速度を毎秒3〜30N/mm2とし、以降、破断までは供試体の平行部のひずみ増加率が毎分20〜50%となるよう載荷するよう決められている。
しかしながら、この規格による試験方法によれば、供試体に対する載荷の過程で絞りによる断面の減少が生じ、供試体に横方向からの圧縮が力が作用する。すなわち、この規格による試験方法では、供試体に対して引張力以外の力が作用するため、一軸引張状態を再現できていない。この断面減少は、延性に富む軟鋼のような材料では顕著である。応力を求める際には、荷重を断面積で除するため、正確な応力を求めるためには、載荷過程での断面積変化を考慮する必要がある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構成で、高精度な応力ひずみ曲線を作成する応力ひずみ曲線作成技術を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明に係る、試験片に対して時間的に連続して荷重を付加した際のひずみから、当該試験片の応力ひずみ曲線を作成する応力ひずみ曲線作成装置の好適な実施形態の一つでは、前記試験片に対して付加された前記荷重を取得する荷重取得部と、前記試験片の観測断面の縁辺上に取り付けられた複数のひずみ測定装置から第1のひずみ測定値を取得するひずみ取得部と、前記荷重取得部から取得した前記荷重と、前記ひずみ取得部から取得した前記第1のひずみ測定値と、のそれぞれを所定の時間間隔でサンプリングした時系列データとして記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記荷重の時系列データと、前記第1のひずみ測定値の時系列データと、から前記応力ひずみ曲線を作成する応力ひずみ曲線作成部と、を備え、前記応力ひずみ曲線作成部は、前記荷重の時系列データから、前記観測断面における時系列での荷重を表す観測断面引張力データを取得する観測断面引張力データ取得モジュールと、前記第1のひずみ測定値の時系列データから、前記観測断面における時系列でのひずみ分布を表すひずみ分布データを取得するひずみ分布データ取得モジュールと、所定の分割基準に基づいて、前記ひずみ分布データを複数のひずみ集合に分割するひずみ集合作成モジュールと、各々の前記ひずみ集合に属する前記ひずみ分布データを代表する統計量である代表ひずみを算出する代表ひずみ算出モジュールと、前記観測断面において、各々の前記代表ひずみに対応する面積である代表面積を算出する代表面積算出モジュールと、前記観測断面引張力データと前記代表面積に基づいて、力のつり合い式を作成するつり合い式作成モジュールと、前記応力ひずみ曲線上において、連続する複数点が平滑であることを示す平滑条件式を作成する平滑条件式作成モジュールと、前記つり合い式と前記平滑条件式とに基づき、観測方程式を作成する観測方程式作成モジュールと、前記観測方程式を解くことにより、代表応力を算出する代表応力算出モジュールと、前記代表ひずみと前記代表応力とから前記応力ひずみ曲線を作成する応力ひずみ曲線作成モジュールと、を備えている。
応力ひずみ曲線を作成する際には、試験片の形状に応じて作成方法を異ならせることが好ましい。そのため、試験片が板状の場合の本発明に係る応力ひずみ曲線作成装置の好適な実施形態の一つでは、前記観測断面引張力データ取得モジュールは、前記荷重の時系列データを前記観測断面引張力データとして取得し、前記ひずみ取得部は、前記第1のひずみ測定値の時系列データを前記歪分布データとして取得する。
また、試験片が柱状の場合の本発明に係る応力ひずみ曲線作成装置の好適な実施形態の一つでは、前記ひずみ取得部は、前記観測断面の縁辺と前記試験片の下端面の縁辺とにわたって配置された前記ひずみ測定装置からの第2のひずみ測定値を取得し、前記観測断面引張力データ取得モジュールは、前記第2のひずみ測定値に基づき、前記観測断面の傾きを求めるとともに、当該傾きによって前記荷重の時系列データを補正することにより前記観測断面引張力データを取得し、前記ひずみ分布データ取得モジュールは、前記第1のひずみ測定値に基づき、前記観測断面を複数の領域に分割した各々の領域におけるひずみを前記ひずみ分布データとして取得する。
本発明は、試験片に対して時間的に連続して荷重を付加した際のひずみから、当該試験片の応力ひずみ曲線を作成する応力ひずみ曲線作成方法をも権利範囲としており、そのような応力ひずみ曲線作成方法の好適な実施形態の一つでは、前記試験片に対して付加された前記荷重を取得する荷重取得ステップと、前記試験片の観測断面の縁辺上に取り付けられた複数のひずみ測定装置から第1のひずみ測定値を取得するひずみ取得ステップと、前記荷重取得ステップにより取得した前記荷重と、前記ひずみ取得ステップにより取得した前記第1のひずみ測定値と、のそれぞれを所定の時間間隔でサンプリングした時系列データとして記憶部に記憶させる記憶ステップと、前記荷重の時系列データと、前記第1のひずみ測定値の時系列データと、から前記応力ひずみ曲線を作成する応力ひずみ曲線作成ステップと、を備え、前記応力ひずみ曲線作成部は、さらに、前記荷重の時系列データから、前記観測断面における時系列での荷重を表す観測断面引張力データを取得する観測断面引張力データ取得ステップと、前記ひずみ測定値の時系列データから、前記観測断面における時系列でのひずみ分布を表すひずみ分布データを取得するひずみ分布データ取得ステップと、所定の分割基準に基づいて、前記ひずみ分布データを複数のひずみ集合に分割するひずみ集合作成ステップと、各々の前記ひずみ集合に属する前記ひずみ分布データを代表する統計量である代表ひずみを算出する代表ひずみ算出ステップと、前記観測断面において、各々の前記代表ひずみに対応する面積である代表面積を算出する代表面積算出ステップと、前記観測断面引張力データと前記代表面積に基づいて、力のつり合い式を作成するつり合い式作成ステップと、前記応力ひずみ曲線上において、連続する複数点が平滑であることを示す平滑条件式を作成する平滑条件式作成ステップと、前記つり合い式と前記平滑条件式とに基づき、観測方程式を作成する観測方程式作成ステップと、前記観測方程式を解くことにより、代表応力を算出する代表応力算出ステップと、前記代表ひずみと前記代表応力とから前記応力ひずみ曲線を作成する応力ひずみ曲線作成ステップと、を備えている。当然ながら、上述した応力ひずみ曲線作成装置の付加的な構成を応力ひずみ曲線作成方法にも適用することができ、同様の作用効果を奏する。
〔応力ひずみ曲線作成システム〕
以下に図面を用いて、本発明に係る応力ひずみ曲線作成システムの実施形態を説明する。図1は、本実施形態における応力ひずみ曲線作成システムの概略図である。図に示すように、本実施形態の応力ひずみ曲線作成システムは、載荷装置1とひずみ測定装置2と応力ひずみ曲線作成装置3とから構成されている。応力ひずみ曲線の作成対象となる試験片Aは、コンクリートや鉄等であり、長尺形状に構成されている。また、試験片Aには、その長手方向(引張方向,荷重方向)に直交する観測断面Sが設定されている。
以下に図面を用いて、本発明に係る応力ひずみ曲線作成システムの実施形態を説明する。図1は、本実施形態における応力ひずみ曲線作成システムの概略図である。図に示すように、本実施形態の応力ひずみ曲線作成システムは、載荷装置1とひずみ測定装置2と応力ひずみ曲線作成装置3とから構成されている。応力ひずみ曲線の作成対象となる試験片Aは、コンクリートや鉄等であり、長尺形状に構成されている。また、試験片Aには、その長手方向(引張方向,荷重方向)に直交する観測断面Sが設定されている。
〔載荷装置〕
載荷装置1は、コンクリートや鉄等の試験片Aに対して、その長手方向に引張力を付与するものである。本実施形態では、載荷装置1は、固定部11と荷重部12と荷重測定部13とから構成されている。固定部11および荷重部12はそれぞれ試験片Aの長手方向の両端を保持するよう構成されている。固定部11は、載荷装置1に対して移動しないよう支持部材等に固定されている。一方、荷重部12は、試験片Aの長手方向に沿って固定部11から離間する方向に移動することで、試験片Aに対して観測断面Sに直交する方向に引張力を付与する。図1では、この引張力を矢印で示している。また、本実施形態では、荷重部載荷点に荷重測定部13を設けることにより、荷重を測定している。荷重測定部13として、例えば、S型ロードセルを用いることができる。荷重測定部13によって測定された荷重は、応力ひずみ曲線作成装置3に入力されている。
載荷装置1は、コンクリートや鉄等の試験片Aに対して、その長手方向に引張力を付与するものである。本実施形態では、載荷装置1は、固定部11と荷重部12と荷重測定部13とから構成されている。固定部11および荷重部12はそれぞれ試験片Aの長手方向の両端を保持するよう構成されている。固定部11は、載荷装置1に対して移動しないよう支持部材等に固定されている。一方、荷重部12は、試験片Aの長手方向に沿って固定部11から離間する方向に移動することで、試験片Aに対して観測断面Sに直交する方向に引張力を付与する。図1では、この引張力を矢印で示している。また、本実施形態では、荷重部載荷点に荷重測定部13を設けることにより、荷重を測定している。荷重測定部13として、例えば、S型ロードセルを用いることができる。荷重測定部13によって測定された荷重は、応力ひずみ曲線作成装置3に入力されている。
〔ひずみ測定装置〕
ひずみ測定装置2は、試験片Aに設定された観測断面Sの縁辺L上に設定された複数の観測点におけるひずみを測定する。図1では、5つのひずみ測定装置2を配置しており、これらが配置されている点が観測点である。このようなひずみ測定装置2として、ひずみゲージや特開2011−163784号公報に開示されたひずみ測定用シート及びこれを用いたひずみ測定装置を用いることができる。後者の場合には、測定物(試験片A)の変形を妨げずに歪を測定することができる。ひずみ測定装置2により測定されたひずみは、観測点番号とともに応力ひずみ曲線作成装置3に入力されている。本実施例では、ひずみ測定装置2により測定されたひずみが、本発明の第1のひずみデータに相当する。
ひずみ測定装置2は、試験片Aに設定された観測断面Sの縁辺L上に設定された複数の観測点におけるひずみを測定する。図1では、5つのひずみ測定装置2を配置しており、これらが配置されている点が観測点である。このようなひずみ測定装置2として、ひずみゲージや特開2011−163784号公報に開示されたひずみ測定用シート及びこれを用いたひずみ測定装置を用いることができる。後者の場合には、測定物(試験片A)の変形を妨げずに歪を測定することができる。ひずみ測定装置2により測定されたひずみは、観測点番号とともに応力ひずみ曲線作成装置3に入力されている。本実施例では、ひずみ測定装置2により測定されたひずみが、本発明の第1のひずみデータに相当する。
〔応力ひずみ曲線作成装置〕
応力ひずみ曲線作成装置3は、タイマ31,荷重取得部32,ひずみ取得部33,応力ひずみ曲線作成部34,記憶部35を備えている。タイマ31は、データを取得するタイミングを生成する機能を備えており、予め設定された時間間隔毎に荷重取得部32およびひずみ取得部33に対して信号を送信する。荷重取得部32は、タイマ31からの信号を受信したタイミングで、荷重測定部13により測定された荷重データを取得する。ひずみ取得部33も同様に、タイマ31からの信号を受信したタイミングで、ひずみ測定装置2により測定された観測点位置におけるひずみデータを取得する。荷重取得部32により取得された荷重データは、時系列データとして時刻インデックスiと関連付けられて記憶部35に記憶される。一方、ひずみ取得部33により取得されたひずみデータは、時系列データとして観測点番号および時刻インデックスiと関連付けられて記憶部35に記憶される。
応力ひずみ曲線作成装置3は、タイマ31,荷重取得部32,ひずみ取得部33,応力ひずみ曲線作成部34,記憶部35を備えている。タイマ31は、データを取得するタイミングを生成する機能を備えており、予め設定された時間間隔毎に荷重取得部32およびひずみ取得部33に対して信号を送信する。荷重取得部32は、タイマ31からの信号を受信したタイミングで、荷重測定部13により測定された荷重データを取得する。ひずみ取得部33も同様に、タイマ31からの信号を受信したタイミングで、ひずみ測定装置2により測定された観測点位置におけるひずみデータを取得する。荷重取得部32により取得された荷重データは、時系列データとして時刻インデックスiと関連付けられて記憶部35に記憶される。一方、ひずみ取得部33により取得されたひずみデータは、時系列データとして観測点番号および時刻インデックスiと関連付けられて記憶部35に記憶される。
時刻インデックスiは、初期値を1として、データが記録される毎にカウントアップされる。なお、以下の説明では、時刻インデックスiが示す時刻を時刻iと表記する。また、記憶部35としては、揮発性記憶媒体、不揮発性記憶媒体のいずれを使用しても構わない。
応力ひずみ曲線作成部34は、荷重測定部13およびひずみ測定装置2によって取得された時系列の荷重データおよびひずみデータから応力ひずみ曲線を作成する。そのため、本実施形態における応力ひずみ曲線作成部34は、観測断面引張力データ取得モジュール34a,ひずみ分布データ取得モジュール34b,分割基準算出モジュール34c,ひずみ集合作成モジュール34d,代表ひずみ算出モジュール34e,代表面積算出モジュール34f,つり合い式作成モジュール34g,平滑条件式作成モジュール34h,観測方程式作成モジュール34i,代表応力算出モジュール34j,応力ひずみ曲線作成モジュール34kを備えている。なお、これらのモジュールの動作は後述する。
応力ひずみ曲線作成装置3としては、汎用コンピュータを用いることもできるし、専用のハードウェアを用いることもできる。前者の場合には、各機能部は、汎用コンピュータのハードウェアとソフトウェアとが協働して構成される。
以下に、試験片Aに対する引張試験(荷重データ、および、ひずみデータの取得)と応力ひずみ曲線作成部34による応力ひずみ曲線の作成処理について説明する。なお、以下の説明においては、観測点数をm、観測時刻数、すなわち、時間軸方向のサンプリング回数をnとする。また、特に断りがない限り、各変数の添字に使用するiは時刻インデックス、すなわち、サンプリング時間番号(時刻)を表し、jは観測点番号を表している。
〔引張試験(荷重データ、および、ひずみデータの取得)〕
以下に、図2のフローチャートを用いて、応力ひずみ曲線の作成に使用するデータを取得するための引張試験の処理の流れを説明する。先ず、試験片Aを載荷装置1に取り付ける。このとき、試験片Aに設定された観測断面Sの縁辺L上の測定点上に各々のひずみ測定装置2が取り付けられている。また、時刻インデックスiは初期値として1が設定されている。
以下に、図2のフローチャートを用いて、応力ひずみ曲線の作成に使用するデータを取得するための引張試験の処理の流れを説明する。先ず、試験片Aを載荷装置1に取り付ける。このとき、試験片Aに設定された観測断面Sの縁辺L上の測定点上に各々のひずみ測定装置2が取り付けられている。また、時刻インデックスiは初期値として1が設定されている。
応力ひずみ曲線作成装置3から、載荷装置1に対して試験の開始を指示する信号を送信されると、載荷装置1は試験片Aに対して荷重の負荷を開始する(#01)。なお、荷重は時間の経過とともに増大させてゆく。同時に、タイマ31が計時を開始し、所定の時間間隔に達すると(#02のYes分岐)、タイマ31は荷重測定部13、および、ひずみ測定装置2に対して各々荷重データ、および、各観測点におけるひずみデータを送信するよう指示を出す。荷重測定部13、および、ひずみ測定装置2からのデータは各々荷重取得部32、および、ひずみ取得部33によって取得される(#03)。荷重データは時刻インデックスiと関連付けられて記憶部35に記憶され、ひずみデータは観測点番号および時刻インデックスiと関連付けられて記憶部35に記憶される(#04)。
上述の処理が、試験片Aが破断したり、明示的に処理の終了が指示されたり等、所定の終了条件を満たす(#05のYes分岐)まで繰り返される。終了条件が満たされていない場合(#05のNo分岐)には、時刻インデックスiをインクリメントし(#06)、処理を#02に移行させる。
なお、本実施形態では、タイマ31から送信された信号を受信した際に、荷重取得部32およびひずみ取得部33から各々荷重測定部13およびひずみ測定装置2に対してデータを送信するよう指示を出すことによって各データを取得する構成としたが、荷重測定部13およびひずみ測定装置2から時々刻々のデータが応力ひずみ曲線作成装置3に入力されており、タイマ31から信号が送信されたタイミングで各データを取得する構成としても構わない。
〔応力ひずみ曲線の作成〕
以下に、図3のフローチャートを用いて、応力ひずみ曲線の作成処理の流れを説明する。なお、ここでは処理の概要のみを説明し、詳細な計算方法等は後述の実施例で説明する。
以下に、図3のフローチャートを用いて、応力ひずみ曲線の作成処理の流れを説明する。なお、ここでは処理の概要のみを説明し、詳細な計算方法等は後述の実施例で説明する。
先ず、記憶部35に記憶されているデータに基づいて、各時刻iの断面平均応力σaviと、断面平均ひずみεaviを算出する(#11)。これらによって、応力ひずみ曲線の概略形状を推定することができ、これによって推定された応力ひずみ曲線を平均応力ひずみ曲線と称する。
次に、平均応力ひずみ曲線において、応力が最大となるときのひずみの値を求める(#12)。このときのひずみの値を想定最大応力時ひずみと称し、εσmaxと表す。この想定最大応力時ひずみεσmaxは、応力ひずみ曲線において軟化開始時のひずみの値と考えることができる。
なお、ステップ#12では、試験片Aが鉄の場合には、平均応力ひずみ曲線において、曲線の勾配の変化量が最大となるときのひずみの値をも求める。このときのひずみの値を想定最大勾配変化時ひずみと称し、εvmaxと表す。この想定最大勾配変化時ひずみεvmaxは、試験片Aが鉄である場合に、可塑性が始まる第1軟化点のひずみの値と考えることができる。
次に、ひずみ分布データε0ijを昇順にソートしたデータを、小さい値から所定条件に基づいて区切り、複数の集合に分割する(#13)。このときの集合をひずみ集合と称し、Ωkと表す。ここで、kはひずみ集合の番号であり、ひずみ集合数をsとする。
そして、ひずみ集合Ωkごとに、そこに属するひずみ分布データε0ijに基づいて、代表ひずみを算出する(#14)。以下、代表ひずみをεkと表す。あわせて、代表ひずみεkが観測断面S上で占める面積、すなわち、代表ひずみεkが観測断面S上で代表する面積を算出する(#15)。このときの面積を代表面積と称し、a1ikと表記する。
ここで、代表ひずみεkに対応する応力である代表応力σkを定義する。一般的に、応力ひずみ曲線は急峻な変化がないため、代表ひずみεkと代表応力σkで規定される応力ひずみ曲線(代表応力ひずみ曲線)上では、隣接する点同士は平滑に並んでいることが想定される。そのため、ここでは隣接する点同士が平滑に並ぶ条件を定式化した平滑条件式を作成する(#16)。
そして、上述の処理によって求められた値や式等から観測方程式を作成し(#17)、その観測方程式を解く(#18)ことによって代表応力σkを求めることができ、代表ひずみεkと代表応力σkとによって規定される応力ひずみ曲線を作成することができる(#19)。
〔応力ひずみ曲線算出処理〕
以下に、試験片Aの観測断面Sの形状が矩形、特に、試験片Aが板状である場合の応力ひずみ曲線の生成(算出)方法を説明する。なお、本実施例では、試験片Aが、鉄に代表される塑性を有する物質の場合と、コンクリートに代表される塑性を有しない物質の場合と、について説明しているが、当然ながら、本発明は試験片Aが鉄およびコンクリート以外の物質にも適用することが可能である。
以下に、試験片Aの観測断面Sの形状が矩形、特に、試験片Aが板状である場合の応力ひずみ曲線の生成(算出)方法を説明する。なお、本実施例では、試験片Aが、鉄に代表される塑性を有する物質の場合と、コンクリートに代表される塑性を有しない物質の場合と、について説明しているが、当然ながら、本発明は試験片Aが鉄およびコンクリート以外の物質にも適用することが可能である。
図4は、本実施例における試験片Aの斜視図である。上述したように、本実施例では試験片Aの断面形状は矩形であり、特に、厚みbが比較的大きくない略板状に構成されている。また、本実施例における試験片Aの4側面のうち、ひずみ測定装置2が設けられる面に隣接する2つの面には切り欠きa1が形成されている。2つの切り欠きa1は同じ形状であり、各々の切り欠きa1は縁辺Lに対して線対称になっている。
本実施例では、ひずみ測定装置2として、特開2011−163784号公報に開示されたひずみ測定用シート及びこれを用いたひずみ測定装置を用いている。本実施例では、図4に示すように、ひずみ測定用シートTには、一列に等間隔で配置されたm個(この例では5個)のマークMが形成されている。図4に示すように、にひずみ測定用シートTは、複数のマークMが観測断面Sの縁辺Lに沿うように、ひずみ測定用シートTを試験片Aの1つの側面に貼付されている。なお、ひずみ測定用シートTを用いた場合には、特開2011−163784号公報に開示されたひずみ測定装置が必要であるが、図4には表しておらず、また、詳細な説明も省略する。
このような構成によって、本実施例におけるひずみ測定装置2は、各マークMの位置におけるひずみを測定することができる。したがって、各マークMの位置が観測点となるため、観測点数はmとなる。当然ながら、ひずみ測定装置2は、試験片Aに設定された断面の縁辺L上に設定された複数の観測点のひずみを測定するものであれば、ひずみゲージ等、他の測定装置を用いても構わない。
以下に、本実施例における応力ひずみ曲線の作成処理の具体的な計算等の方法を説明する。先ず、本発明に係る応力ひずみ曲線の作成方法は、各時刻iにおける観測断面S全体の引張力の大きさを表す観測断面引張力データFiは、以下の式(1)によって表すことができるということに基づいている。
ここで、σ0ijは応力ひずみ曲線において、ひずみ分布データε0ijに対応する応力であり、応力分布データと称する。また、a0jは各々の観測点におけるひずみ分布データε0ijが観測断面S上で占める面積であり、代表面積と称する。観測断面Sを微小領域に分割したと仮定した場合に、微小領域のひずみの値はいずれかのひずみ分布データε0ijに反映されていると考えられる。このとき、各々のひずみ分布データε0ijにそのひずみの値が反映されている微小領域の面積の総和が代表面積a0jである。また、v0iは残差である。
ここで、代表面積a0jは以下の式で表すことができる。
ここで、αjはj番目の観測点と(j+1)番目の観測点との距離であり、以下、αjを測定点間距離と称する。また、bは図4における試験片Aの厚みである。
以下、図3のフローチャートを参照しつつ、本実施例における応力ひずみ曲線の作成処理を説明する。本実施例では、観測断面引張力データFiは、荷重取得部32によって取得されたデータであり、ひずみ分布データε0ijは、ひずみ取得部33によって取得された時系列データである。したがって、観測断面引張力データ取得モジュール34aは、荷重取得部32によって取得された時系列データを観測断面引張力データFiとして取得する。また、ひずみ分布データ取得モジュール34bは、ひずみ取得部33によって取得された時系列データをひずみ分布データε0ijとして取得する。
先ず、分割基準算出モジュール34cは、観測断面引張力データFiとひずみ分布データε0ijとから、応力分布データσ0ij、および、ひずみ分布データε0ijを各時刻iにおいて観測断面S全体で平均化した値である断面平均応力σavi、および、断面平均ひずみεaviを以下の式(2)および(3)によって算出する(#11)。これにより、平均応力ひずみ曲線を作成することができる。
次に、分割基準算出モジュール34cは、平均応力ひずみ曲線において、想定最大応力時ひずみεσmaxを算出する(#12)。想定最大応力時ひずみεσmaxは以下の式(4)で求めることができる。
試験片Aが鉄の場合には、可塑性があるため、応力ひずみ曲線の作成においてもその可塑性を考慮する必要がある。そのため、上述したように、試験片Aが鉄の場合には、分割基準算出モジュール34cは、想定最大勾配変化時ひずみεvmaxを算出する(#12)。想定最大勾配変化時ひずみεvmaxは以下の式(5)で求めることができる。
次に、分割基準算出モジュール34cは、複数のひずみ集合Ωkを作成するために、各々のひずみ集合に属するひずみ分布データε0ijの最大値と最小値との差分の上限値として、区分ひずみεf(本発明における分割基準の例)を算出する。区分ひずみεfは、試験片Aがコンクリートの場合には式(6)によって規定され、試験片Aが鉄の場合には式(7)によって規定される。
次に、ひずみ集合作成モジュール34dは、ひずみ分布データε0ijから複数のひずみ集合Ωkを作成する(#13)。具体的には、ひずみ分布データε0ijを昇順にソートし、区分ひずみεfに基づき、複数の集合(ひずみ集合)に分割する。具体的には、式(8)によって複数のひずみ集合Ωkを作成する。上述したように、ここで作成されるひずみ集合Ωkの数をsとする。
このようにして、複数のひずみ集合Ωkの作成が完了すると、代表ひずみ算出モジュール34eは、各々のひずみ集合Ωkの代表ひずみεkを式(9)によって算出する(#14)。
ここで、
である。すなわち、Χijkはひずみ分布データε0ijがひずみ集合Ωkに属する場合に1であり、属さない場合に0を返す関数である。
すべてのひずみ分布データε0ijのうち、ε0ij∈Ωkを満たすデータの数はひずみ集合Ωkに属するデータ数と同数である。また、上述のひずみ集合の作成方法からも明らかなように、任意のひずみ分布データε0ijは一つのひずみ集合Ωkに属している。これらから、以下の関数Χijkの特性を導くことができる。
なお、n()は集合に属するデータ数を返す関数である。
次に、代表面積算出モジュール34fは、観測断面S上で、代表ひずみεkが代表する面積a1ikを求める(#15)。本実施例では、試験片Aが鉄の場合には応力ひずみ曲線を直線近似し、試験片Aがコンクリートの場合には、応力ひずみ曲線を2次曲線で近似している。ただし、試験片Aがコンクリートであっても、区分数が最大、すなわち、k=sのときには、応力ひずみ曲線を直線近似している。具体的には、コンクリートの場合には式(10)、鉄の場合には式(11)によって、観測断面S上で、代表ひずみεkが代表する面積a1ikを求めることができる。
代表ひずみεkに対応する応力(以下、代表応力と称する)σkを求めることができれば、これらの関係により応力ひずみ曲線を作成することできる。そこで、以下の方法により代表応力σkを求める。先ず、つり合い式作成モジュール34gは、式(1)と同様に、観測断面引張力データFiを代表ひずみεkと、代表ひずみεkが代表する面積a1ikとによって表すと式(12)を作成する。
次に、平滑条件式作成モジュール34hは、平滑条件式を作成する(#16)。上述したように、本実施例では、試験片Aがコンクリートの場合には応力ひずみ曲線を2次曲線近似し、試験片Aが鉄の場合には応力ひずみ曲線を直線近似している。具体的には、試験片Aがコンクリートの場合には、応力ひずみ曲線上における連続する3区間で、代表応力σkの代表ひずみεkに対する変化率の差分が一定であると仮定している。すなわち、
である。この両辺に(εk+2―εk+1)(εk+1―εk)(εk―εk−1)をかけると式(13)が得られる。ただし、ε0=σ0=0である。
一方、試験片Aが鉄の場合には、応力ひずみ曲線における連続する3点では、代表応力σkお代表ひずみεkに対する変化率が一定であると仮定している。すなわち、
である。この両辺に(εk+1―εk)(εk―εk−1)をかけると式(14)が得られる。ただし、ε0=σ0=0である。
次に、観測方程式作成モジュール34iは、式(12)の釣り合い式と式(13),(14)の平滑条件式とを用いて観測方程式を作成する(#17)。具体的には、試験片Aがコンクリートの場合には、式(15a)に示すように、n個の釣り合い式(12)と、(s−2)個の平滑条件式(13)と、からなる方程式群を作成する。一方、試験片Aが鉄の場合には、式(15b)に示すように、n個の釣り合い式(12)と、(s−1)個の平滑条件式(14)と、からなる方程式群を作成する。
式(15a)または式(15b)を行列表記にすると、[τ]=[A][z]+[v]となる。なお、以下の説明において、行列およびベクトルを表す場合には[]を付し、大文字は行列、小文字はベクトルを表している。また、[ei]は、試験片Aが鉄のときには(n+s−1)次元ベクトルであり、試験片Aがコンクリートのときには(n+s−2)次元ベクトルであり、i番目の要素が1で、他の要素は0である。したがって、[ei]は単位ベクトルであり、ベクトル群{[ei]}は正規直交基底をなす。ここで、[τ],「z」はそれぞれ式(16)および(17)で規定される。また、[A]および[v]は、試験片Aがコンクリートの場合にはそれぞれ式(18)および(19)で規定され、試験片Aが鉄の場合にはそれぞれ式(20)および(21)で規定される。
代表応力算出モジュール34jは、この観測方程式から[z]を求める、すなわち、観測方程式を逆問題として解くことにより、代表応力σkを算出する。逆問題の解法として、最小二乗法,特異値分解,QR分解等の既知の解法を用いることができるが、本実施形態では最小二乗法を用いる。すなわち、
となる。ここで、[P]は対角行列(以下、重み行列と称する)であり、試験片Aが鉄の場合には、[P]=diag(p1,・・・,pn,p0n+1,・・・,p0n+s−1)であり、試験片Aがコンクリートの場合には、[P]=diag(p1,・・・,pn,p0n+1,・・・,p0n+s−2)である。
重み行列[P]の要素中の重み値piおよびp0iの初期値は、試験片Aが鉄の場合には次の式(23a)で与えられ、試験片Aがコンクリートの場合には次の式(23b)によって与えられる。
ここで、BLは力の釣り合い式と平滑条件との重みバランスを調整するための値である。
また、上述の式(23a)または式(23b)中の関数f(εk)は、試験片Aがコンクリートの場合には式(24)で定義され、試験片Aが鉄の場合には式(25)で定義される。
ここで、efrc()は次式で定義される相補誤差関数である。
式(23a)または式(23b)で定義した値を式(22)に代入すれば[z]を求めることができる。しかしながら、その場合には、誤差の大きなデータが混入していた場合に、解がそのデータの影響を受けるため、解の誤差も大きくなる可能性がある。特に、試験片Aがコンクリートの場合、観測されるひずみの値が小さいため、計測誤差の影響を受けやすい。そのため、本実施形態では、繰り返し演算により重み行列[P]を修正することにより解を求める。具体的には以下の処理を行う。
まず、式(22)を計算し、得られた[z]を用いて残差ベクトル[v]を求める。次に式(26)により重み値piを修正する。
ここで、v1iは上述の処理で求めた残差ベクトル[v]のi番目の要素であり、
である。なお、cは|v1i|の中央値の10〜100倍程度の値とすることが好ましい。
このようにして修正されたpiを要素とする重み行列[P]を作成し、再度式(22)を計算し、[z]を計算する。これらの一連の処理を、w(v1i)が変化しなくなるまで、または、所定の閾値より小さくなるまで繰り返す。これにより、誤差の大きなデータ混入していた場合であっても、その誤差の影響を小さくした解[z]を得ることができる。
応力ひずみ曲線作成モジュール34kは、このようにして得られた[z]、すなわち、代表応力σkと代表ひずみεkとにより、応力ひずみ曲線を作成する。
測定されたひずみデータには様々な原因で誤差を含むデータが存在する可能性がある。そのようなデータを用いて代表応力σkを求めた場合、上述の重み行列[P]を用いたとしても、精度の高い値を求めることが困難となる。そのため、誤差、特に大きな誤差を含むデータを検出し、そのようなデータを除外することが望ましい。以下に、試験片Aがコンクリートの場合と、鉄の場合とに分けて代表応力算出モジュール34jの処理方法を説明する。
〔試験片がコンクリートの場合〕
試験片Aがコンクリートであり、代表ひずみεkの中に応力解放された後の値が含まれている場合には、応力ひずみ曲線において、応力解放後のひずみ領域で誤差が含まれる可能性がある。その誤差は、(i)応力が正から負に転じる場合と、(ii)応力がひずみの増加に対して一度0に近づいた後に再度増加する場合と、に起因するものが想定される。
試験片Aがコンクリートであり、代表ひずみεkの中に応力解放された後の値が含まれている場合には、応力ひずみ曲線において、応力解放後のひずみ領域で誤差が含まれる可能性がある。その誤差は、(i)応力が正から負に転じる場合と、(ii)応力がひずみの増加に対して一度0に近づいた後に再度増加する場合と、に起因するものが想定される。
上述の(i)の場合の代表ひずみ集合をB1とすると、集合B1は以下の式(28)となる。なお、σ(ε)は、応力ひずみ曲線において、引数εに対応する応力を返す関数である。応力ひずみ曲線は、応力方向が反転しない状態では、ひずみに対応する応力は一意に定まる性質を有しているため、このような関数σ(ε)を定義することができる。
一方、上述の(ii)の場合のひずみ集合をB4とすると、集合B4は式(29)となる。
ここで、
である。
このとき、B1∪B4≠φであれば、上述の(i)または(ii)の場合に対応する誤差を含むデータが存在していることとなる。この場合には、以下の処理を行う。
〔ステップ1〕
ひずみ集合Ωkの数を一つ減らすために、s=s−1とし、代表応力σs=0とする。
〔ステップ2〕
上述した計算方法により、[z]すなわち代表応力σkを求める。
〔ステップ3〕
歪代表集合B1およびB4を求める。
〔ステッ4〕
B1∪B4≠φであればステップ1に戻る。
ひずみ集合Ωkの数を一つ減らすために、s=s−1とし、代表応力σs=0とする。
〔ステップ2〕
上述した計算方法により、[z]すなわち代表応力σkを求める。
〔ステップ3〕
歪代表集合B1およびB4を求める。
〔ステッ4〕
B1∪B4≠φであればステップ1に戻る。
これにより、上述の(i)または(ii)の場合に対応する誤差を含むデータを除外した代表応力σkを求めることができる。
〔試験片が鉄の場合〕
試験片Aが鉄であり、代表ひずみεkの中に応力解放された後の値が含まれている場合には、応力ひずみ曲線において、応力解放後のひずみ領域で誤差が含まれる可能性がある。具体的には、試験片Aが鉄の場合の応力ひずみ曲線では、応力解放域付近で応力が急激に減少するため、応力解放域付近にひずみ分布データε0ijが存在する場合、求められた応力ひずみ曲線の精度が低下する。そのため、代表応力σkを求める際に、応力解放域付近のひずみ分布データε0ijを含む測定データを除外する。詳細は、以下の通りである。
試験片Aが鉄であり、代表ひずみεkの中に応力解放された後の値が含まれている場合には、応力ひずみ曲線において、応力解放後のひずみ領域で誤差が含まれる可能性がある。具体的には、試験片Aが鉄の場合の応力ひずみ曲線では、応力解放域付近で応力が急激に減少するため、応力解放域付近にひずみ分布データε0ijが存在する場合、求められた応力ひずみ曲線の精度が低下する。そのため、代表応力σkを求める際に、応力解放域付近のひずみ分布データε0ijを含む測定データを除外する。詳細は、以下の通りである。
先ず、初期推定観測時刻数ninitを次の式(30)で定義する。
すなわち、初期推定観測時刻数ninitは、断面平均ひずみεaviのうち、想定最大応力時ひずみεσmaxよりも少し小さい値(ここでは、想定最大応力時ひずみεσmaxの0.9倍)以下のものの最大時刻インデックスである。
そして、観測時刻数を実際のnとした場合と、初期推定観測時刻数ninitとした場合との各々で、代表応力σkを求め、各々の場合の残差[v]の分散値m0を求める。なお、分散値m0は次の式(31)により求めることができる。
このとき、次の式(32)により、2つの分散値m0(n)とm0(ninit)とが所定閾値以上になっているか否かを判定する。
ここで、mrfは差の程度を表す値であり、本実施形態では2としている。
式(32)を満たす場合には、以下の処理により誤差を含むと思われるデータを除外する。一方、式(32)を満たさない場合には、以下の処理は行わない。
先ず、次の式(33)により集合B1を作成する。
具体的には、集合B1は以下の方法により作成することができる。先ず、推定観測時刻数nestを初期推定観測時刻数ninitとする。そして、観測時刻数を推定観測時刻数nestとした場合と、推定観測時刻数nest+1とした場合との各々で、代表応力σkを求め、各々の場合の残差[v]の分散値m0(nest)とm0(nest+1)とを求める。このとき、これらの分散値が式(33)の一番右の不等式を満たせば、推定観測時刻数nestをB1に加える。そして、推定観測時刻数nestをインクリメントして、推定観測時刻数nestが観測時刻数n−1なるまで上述の処理を繰り返す。
このようにして得られた集合B1が空集合でなければ、集合B1に含まれる観測数の中で最も小さな値をnmin=min(B1)とし、このnminを観測時刻数として、ひずみ集合の作成から代表応力の計算までの一連の処理を行う。これにより、上述の場合に対応する誤差を含むデータを除外した代表応力σkを求めることができる。
〔数値解析による確認〕
以下に、数値解析によって、本発明に係る応力ひずみ曲線作成技術によって応力ひずみ曲線を作成できることを確認する。具体的には、以下の処理を行う。
(1)ひずみ分布データε0ijと応力ひずみ曲線(離散データ)を任意に設定する。
(2)ひずみ分布データε0ijのうち、同じ観測時刻のデータ同士をスプライン近似により平滑線で結び、ひずみ分布連続データε0i(x)を作成する。
(3)応力ひずみ曲線の隣り合う点をスプライン近似により平滑線で結び、応力ひずみ曲線の連続データを作成する。
(4)(1)で設定した応力ひずみ曲線からひずみ分布連続データε0i(x)に対応する応力を求め、応力分布連続データσ0i(x)を作成する。
(5)次の式(34)により、観測断面S内での応力分布連続データσ0i(x)を積分して観測断面引張力データFiを算出する。
ここで、Xは時刻iにおける観測断面Sの縁辺Lの長さである。
(6)式(2),(3)によって、断面平均応力σavi、および、断面平均ひずみεaviを算出する。
(7)ひずみ分布データε0ijと観測断面引張力データFiとから、本発明に係る方法により応力ひずみ曲線を作成する。
(8)(7)で作成した応力ひずみ曲線と、(1)で設定した応力ひずみ曲線とを、比較することにより、本発明に係る応力ひずみ曲線の精度を判定する。
以下に、数値解析によって、本発明に係る応力ひずみ曲線作成技術によって応力ひずみ曲線を作成できることを確認する。具体的には、以下の処理を行う。
(1)ひずみ分布データε0ijと応力ひずみ曲線(離散データ)を任意に設定する。
(2)ひずみ分布データε0ijのうち、同じ観測時刻のデータ同士をスプライン近似により平滑線で結び、ひずみ分布連続データε0i(x)を作成する。
(3)応力ひずみ曲線の隣り合う点をスプライン近似により平滑線で結び、応力ひずみ曲線の連続データを作成する。
(4)(1)で設定した応力ひずみ曲線からひずみ分布連続データε0i(x)に対応する応力を求め、応力分布連続データσ0i(x)を作成する。
(5)次の式(34)により、観測断面S内での応力分布連続データσ0i(x)を積分して観測断面引張力データFiを算出する。
(6)式(2),(3)によって、断面平均応力σavi、および、断面平均ひずみεaviを算出する。
(7)ひずみ分布データε0ijと観測断面引張力データFiとから、本発明に係る方法により応力ひずみ曲線を作成する。
(8)(7)で作成した応力ひずみ曲線と、(1)で設定した応力ひずみ曲線とを、比較することにより、本発明に係る応力ひずみ曲線の精度を判定する。
〔試験片がコンクリートの場合〕
本数値解析では、試験片Aの観測断面Sの寸法を7cm(幅)×3cm(奥行き)とする。また、載荷速度は、初期荷重増加を毎秒0.15N/mm2とし、その変位速度を保ちつつ、変位制御によって試験片Aに対して載荷する。
本数値解析では、試験片Aの観測断面Sの寸法を7cm(幅)×3cm(奥行き)とする。また、載荷速度は、初期荷重増加を毎秒0.15N/mm2とし、その変位速度を保ちつつ、変位制御によって試験片Aに対して載荷する。
先ず、最大応力を5N/mm2、最大応力時ひずみを0.2%として応力ひずみ曲線を設定する。また、観測時刻数を24、観測点数を8、力の釣り合い式と平滑条件との重みバランスを調整するための値BLを1とする。
このときの、応力ひずみ曲線,ひずみ分布データ,観測断面引張力データをそれぞれ図5の実線,図6,図7に示す。図5の横軸はひずみ(%)であり、縦軸は応力(N/mm2)である。図6の横軸は観測点番号であり、複数のグラフは下から観測時刻の昇順に並んでいる。図7の横軸は観測時刻であり、縦軸は観測断面引張力である。
図5において一点鎖線と「×」によって示されるグラフは、断面平均ひずみεaviと断面平均応力σaviとによって得られる平均応力ひずみ曲線(横軸は平均ひずみ、縦軸は平均応力)であり、この曲線によって応力ひずみ曲線の概略形状を推定することができる。しかしながら、観測断面S上のひずみの分布に勾配が生じた際には、平均応力ひずみ曲線は実際の応力ひずみ曲線に対する誤差を含む可能性がある。平均応力ひずみ曲線の作成方法は、観測断面引張力データFiを観測断面Sの面積で除しているのと同等であり、従来の引張試験による応力ひずみ曲線の作成方法と同様であると考えることができる。すなわち、平均応力ひずみ曲線は従来の引張試験によって作成された応力ひずみ曲線とみなすことができる。
平均応力ひずみ曲線を見ると、応力の最大値は数値解析で想定した応力ひずみ曲線の応力の最大値よりも5%程度小さくなっている。一方、図5の点線および「■」によって示される、本発明によって作成された応力ひずみ曲線は、数値解析で想定した応力ひずみ曲線と精度よく合致している。また計算時間も0.38秒と短時間であった。すなわち、本発明に係る応力ひずみ曲線の作成技術によれば、従来の引張試験によって作成される応力ひずみ曲線よりも精度の高い応力ひずみ曲線を短時間で作成することができる。
〔試験片が鉄の場合〕
次に、試験片Aが鉄の場合について説明する。本数値解析では、試験片Aの観測断面Sの寸法を5cm(幅)×0.3cm(奥行き)とする。また、平均応力ひずみ曲線の第一降伏点までは荷重増加率が毎秒20N/mm2となるよう変位制御によって載荷し、その後は、ひずみ増加率が毎分40%となるように変位制御によって載荷する。
次に、試験片Aが鉄の場合について説明する。本数値解析では、試験片Aの観測断面Sの寸法を5cm(幅)×0.3cm(奥行き)とする。また、平均応力ひずみ曲線の第一降伏点までは荷重増加率が毎秒20N/mm2となるよう変位制御によって載荷し、その後は、ひずみ増加率が毎分40%となるように変位制御によって載荷する。
まず、最大応力を509N/mm2、最大応力時ひずみを24%として、応力ひずみ曲線を設定する。また、観測時刻数を33、観測点数を8、力の釣り合い式と平滑条件との重みバランスを調整するための値BLを1とする。
このときの、応力ひずみ曲線,ひずみ分布データ,観測断面引張力データをそれぞれ図8の実線,図9,図10に示す。
図8に一点鎖線および「×」で示される、平均応力ひずみ曲線を見ると、応力の最大値は数値解析で想定した応力ひずみ曲線の応力の最大値よりも10%程度小さく、全体的に丸みを帯びた形状となっている。一方、図8に点線と「■」で示される、本発明に係る応力ひずみ曲線作成技術によって作成された応力ひずみ曲線は、数値解析で想定した応力ひずみ曲線と精度よく合致している。また計算時間も0.28秒と短時間であった。すなわち、本発明に係る応力ひずみ曲線の作成技術によれば、従来の引張試験によって作成される応力ひずみ曲線よりも精度の高い応力ひずみ曲線を短時間で作成することができる。
なお、引張試験において、荷重測定部13、および、ひずみ測定装置2からの計測データを取得する所定の時間間隔は、試験片Aがコンクリートの場合と鉄の場合とで異ならせることが好ましい。具体的には、試験片Aがコンクリートの場合には、平均応力ひずみ曲線において、連続する2つの時刻i,i+1での断面平均ひずみεaviとεavi+1との差が略一定となる程度の時間間隔とする。このとき、断面平均ひずみεaviが想定最大応力時ひずみεσmaxに達するまでのサンプリング回数を10以上とすることが好ましい。
一方、試験片Aが鉄の場合には、平均応力ひずみ曲線において、第一降伏点までのサンプリング時刻数が7以上であり、第一降伏点までの連続する2つの時刻i,i+1での断面平均ひずみεaviとεavi+1との差が、第一降伏点以降の連続する2つの時刻i,i+1での断面平均ひずみεaviとεavi+1との差の半分程度となる程度の時間間隔とする。
なお、断面平均ひずみεaviは、試験片Aの載荷点と固定点とでの変位差を試験片Aの荷重方向長さで除したものと考えることができる。そのため、このような方法で断面平均ひずみを簡易的に推定し、これを元にデータを取得する時間間隔を決定することができる。
〔応力ひずみ曲線算出〕
以下に、コンクリートからなる試験片Aの断面Sの形状が円形である場合の応力ひずみ曲線の生成(算出)方法を説明する。なお、実施例1と同様の構成等については詳細な説明は省略する。
以下に、コンクリートからなる試験片Aの断面Sの形状が円形である場合の応力ひずみ曲線の生成(算出)方法を説明する。なお、実施例1と同様の構成等については詳細な説明は省略する。
図11は、本実施例における試験片Aを示す図である。円柱状の試験片Aの軸芯方向の中間部に、軸芯に直交する観測断面Sが設定されている。観測断面Sの縁辺L上には、ひずみ測定装置2としての4つのひずみゲージ21が軸芯方向視において90°間隔で取り付けられている。また、観測断面Sの縁辺Lと試験片Aの下端面の縁辺LLとをつなぐように、ひずみ測定装置2としての4つのひずみゲージ22が軸芯方向視において、ひずみゲージ21の間に90°間隔で取り付けられている。本実施例では、軸芯方向視において、ひずみゲージ21とひずみゲージ22とは交互に、45°間隔で取り付けられている。本実施例では、ひずみゲージ21により測定されたひずみが本発明の第1のひずみデータに相当し、ひずみゲージ22により測定されたひずみが本発明の第2のひずみデータに相当する。本実施例では、ひずみ測定装置2としてひずみゲージを用いているが、本実施例においても、ひずみゲージ21に代えて、実施例1と同様にひずみ測定用シートTを用いることもできる。
本実施例においても実施例1と同様に、試験片Aは載荷装置1に取り付けられて荷重が付加され、その際、荷重測定部13、および、各ひずみゲージ21,22からの測定値が所定の時刻間隔で取得され、時系列データとして記憶される。実施例1では、荷重測定部13によって測定されたデータを観測断面引張力データFiとして用い、ひずみ測定装置2によって測定されたデータをひずみ分布データε0ijとして使用したが、本実施例では、観測断面引張力データ取得モジュール34aおよびひずみ分布データ取得モジュール34bが以下の処理によって、これらのデータから観測断面引張力データFi、および、ひずみ分布データε0ijを求め、取得する。
対向する2組のひずみゲージ21をそれぞれ直線で結ぶと、直線は円形の観測断面Sの中心で直交する。そこで、それらの2直線をそれぞれx軸とy軸と規定し、その交点を原点とする。このとき、試験片Aが破壊に至るまで、観測断面Sが平面を維持すると仮定すると、観測断面S内の任意の点でのひずみε0i(x,y)は次の式(35)で表すことができる。なお、以下の説明ではひずみゲージ21、ひずみゲージ22、または、ひずみゲージ21,ひずみゲージ22が設置されている測定点に対して種別毎に1から4までの番号を付している。ひずみゲージ21の番号は、x軸の正側が1、y軸正側が2、x軸負側が3、y軸負側が4である。一方、ひずみゲージ22は、1番および2番のひずみゲージ21の間に配置されているひずみゲージ22の番号を1として、以下、反時計回りに2から4番を付している。
直交座標系での点(x,y)を極座標で表すと、x=rcosθ、y=rsinθであるため、式(35)を極座標で表現すると式(36)となる。
ここで、
である。
本実施例では、観測断面Sは平面形状を維持した状態ではあるが、荷重によって荷重方向に対して傾斜する場合を考慮している。そのため、試験片Aの下端面と観測断面Sとのなす角度δfiを考える。なお、角度δfiは、試験片Aの下端面上の任意の2点を結ぶベクトルと、観測断面S上の任意の2点を結ぶベクトルと、がなす角度の最大値である。観測断面Sと試験片Aの下端面との間の初期の距離、すなわち、荷重がかかっていない状態での距離をLfとすると、これら2面のなす角度δfiは次の式(37)により表すことができる。
ここで、
であり、ε0bfitはt番のひずみゲージ22の測定データである。
試験片Aの軸芯方向に交差する任意の断面では、応力の主方向は荷重の載荷方向と一致する。そのため、試験片Aの下端面縁辺LLを観測断面S上に投影した後、荷重測定装置3により計測された引張力F0iの方向を観測断面Sに対して垂直方向に補正する必要がある。これにより、荷重測定装置3により計測された引張力F0iから重力による影響を控除した後、係数γfiで除して、観測断面引張力データFiを求める。具体的には、観測断面引張力データ取得モジュール34aは、以下の式(38)により観測断面引張力データFiを求める。
次に、代表応力σkを用いて観測断面引張力データFiを線形近似した力のつり合い式における観測断面引張力データを応力分布データσ0ijで線形近似する。そのために、観測断面Sを動径方向に複数の領域Djに分割する。このとき、領域Djは次の式(39)で表すことができる。
ひずみ分布データε0ijが代表する面積(観測断面Sで占める面積)a0jは領域Djの面積と定義することができる。また、上述の定義より領域Djの面積は一定であり、その面積は式(40)で表すことができる。
次に、ひずみ分布データε0ijを領域Dj内の平均ひずみとして考えると、ひずみ分布データε0ijは次の式(41)で表すことができる。すなわち、ひずみ分布データ取得モジュール34bは、式(41)によってひずみ分布データε0ijを取得する。
ここで、
である。
このように、式(38)によって観測断面引張力データFiが算出でき、式(41)によってひずみ分布データε0ijを算出することができる。また、本実施例における観測断面引張力データFiを応力分布データσ0ijを用いて表した力の釣り合い式は実施例1と同様に式(42)となる。したがって、実施例1と同様の方法により、代表ひずみと代表応力とを求めることにより、応力ひずみ曲線を作成することができる。
〔数値解析による確認〕
以下に、数値解析によって、本発明によって応力ひずみ曲線を作成できることを確認する。具体的には、以下の処理を行う。
(1)ひずみ分布データε0ijと応力ひずみ曲線(離散データ)を任意に設定する。
(2)半径方向の分割数を5として、式(41)により、ひずみ分布データからひずみ分布連続データε0i(x,y)を算出する。
(3)応力ひずみ曲線の隣り合う点をスプライン近似により平滑線で結び、応力ひずみ曲線の連続データを作成する。
(4)(1)で設定した応力ひずみ曲線からひずみ分布連続データε0i(x,y)に対応する応力を求め、応力分布連続データσ0i(x,y)を作成する。
(5)次の式(43)により、 観測断面S内での応力分布連続データσ0i(x,y)を積分して観測断面引張力データFiを算定する。
ここで、Sは観測断面Sの全領域である。
(6)式(2),(3)によって、断面平均応力σavi、および、断面平均ひずみεaviを算出する。
(7)ひずみ分布データε0ijと観測断面引張力データFiとから、本発明に係る方法により応力ひずみ曲線を作成する。
(8)(7)で作成した応力ひずみ曲線と、(1)で設定した応力ひずみ曲線とを、比較することにより、本発明に係る応力ひずみ曲線の精度を判定する。
以下に、数値解析によって、本発明によって応力ひずみ曲線を作成できることを確認する。具体的には、以下の処理を行う。
(1)ひずみ分布データε0ijと応力ひずみ曲線(離散データ)を任意に設定する。
(2)半径方向の分割数を5として、式(41)により、ひずみ分布データからひずみ分布連続データε0i(x,y)を算出する。
(3)応力ひずみ曲線の隣り合う点をスプライン近似により平滑線で結び、応力ひずみ曲線の連続データを作成する。
(4)(1)で設定した応力ひずみ曲線からひずみ分布連続データε0i(x,y)に対応する応力を求め、応力分布連続データσ0i(x,y)を作成する。
(5)次の式(43)により、 観測断面S内での応力分布連続データσ0i(x,y)を積分して観測断面引張力データFiを算定する。
(6)式(2),(3)によって、断面平均応力σavi、および、断面平均ひずみεaviを算出する。
(7)ひずみ分布データε0ijと観測断面引張力データFiとから、本発明に係る方法により応力ひずみ曲線を作成する。
(8)(7)で作成した応力ひずみ曲線と、(1)で設定した応力ひずみ曲線とを、比較することにより、本発明に係る応力ひずみ曲線の精度を判定する。
以下に、数値解析による確認の結果を示す。本数値解析では、試験片Aの観測断面Sの直径を50mmとする。また、載荷速度は、初期荷重増加を毎秒0.15N/mm2とし、その変位速度を保ちつつ、変位制御によって試験片Aに対して載荷する。
まず、応力ひずみ曲線の応力の最大値を5N/mm2、最大応力時ひずみを0.2%として応力ひずみ曲線を設定する。また、観測時刻数を17、半径方向の分割数を5、力の釣り合い式と平滑条件との重みバランスを調整するための値BLを0.1としている。
このときの、応力ひずみ曲線,ひずみ分布データ,観測断面引張力データをそれぞれ図12の実線,図13,図14に示す。図11の横軸はひずみ(%)であり、縦軸は応力(N/mm2)である。図13では、ひずみの大きさを極座標表示しており、動径0°,90°,180°,270°は、データを計測した番号1〜4のひずみゲージ21を示しており、半径はひずみの大きさを表している。また、最も内側のグラフは最初の測定データを示しており、外側のグラフほど遅い測定時刻に測定されたデータを示している。
図12において一点鎖線と「×」によって示される、平均応力ひずみ曲線を見ると、応力の最大値は数値解析で想定した応力ひずみ曲線の応力の最大値よりも10%程度小さくなっている。また、応力が最大となるときのひずみ値が、実際の値よりも小さくなっている。一方、図12の点線および「■」によって示される、本発明によって作成された応力ひずみ曲線は、数値解析で想定した応力ひずみ曲線と精度よく合致している。また計算時間も0.25秒と短時間であった。すなわち、本発明に係る応力ひずみ曲線の作成技術によれば、従来の引張試験によって作成される応力ひずみ曲線よりも精度の高い応力ひずみ曲線を短時間で作成することができる。
〔別実施形態〕
(1)実施例1では、試験片Aの破壊位置を安定させるために、観測断面Sの縁辺Lの端部に切り欠きa1を形成したが、必ずしもこのような切り欠きを設けなくとも構わない。
(1)実施例1では、試験片Aの破壊位置を安定させるために、観測断面Sの縁辺Lの端部に切り欠きa1を形成したが、必ずしもこのような切り欠きを設けなくとも構わない。
(2)実施例2では、その断面形状が円形である試験片Aを用いて説明したが、矩形の断面形状の場合であっても、実施例2と同様の方法によって応力ひずみ曲線を作成することができる。例えば、断面形状が矩形の場合には、観測断面Sの4つの縁辺Lの各々の中点にひずみ測定装置2を設置すればよい。このとき、実施例2で示した応力ひずみ曲線の作成に使用する各計算式を、観測断面Sの形状に合わせて変更することにより、応力ひずみ曲線を求めることができる。
本発明は、コンクリートをはじめとする非可塑性物質や鉄をはじめとする可塑性物質の応力ひずみ曲線の作成に利用することができる。
A:試験片
a1:切り欠き
L:縁辺
M:マーク
S:観測断面
T:ひずみ測定用シート
m:観測点数
n:観測時刻数
ninit:初期推定観測時刻数
nest:推定観測時刻数
i:時刻インデックス(時刻)
Fi:観測断面引張力データ
ε0ij:ひずみ分布データ
εavi:断面平均ひずみ
εσmax:想定最大応力時ひずみ
εvmax:想定最大勾配変化時ひずみ
εf:区分ひずみ
εk:代表ひずみ
σ0ij:応力分布データ
σavi:断面平均応力
σk:代表応力
a0j:代表面積
a1ik:代表面積
Dj:領域
P:重み行列
v0i:残差
v1i:残差
vavi:断面平均応力勾配
αj:測定点間距離
Ωk:ひずみ集合
1:載荷装置
11:固定部
12:荷重部
13:荷重測定部
2:ひずみ測定装置
21:ひずみゲージ
22:ひずみゲージ
3:応力ひずみ曲線作成装置
31:タイマ
32:荷重取得部
33:ひずみ取得部
34:応力ひずみ曲線作成部
34a: 観測断面引張力データ取得モジュール
34b:ひずみ分布データ取得モジュール
34c:分割基準算出モジュール
34d:ひずみ集合作成モジュール
34e:代表ひずみ算出モジュール
34f:代表面積算出モジュール
34g:つり合い式作成モジュール
34h:平滑条件式作成モジュール
34i:観測方程式作成モジュール
34j:代表応力算出モジュール
34k:応力ひずみ曲線作成モジュール
35:記憶部
a1:切り欠き
L:縁辺
M:マーク
S:観測断面
T:ひずみ測定用シート
m:観測点数
n:観測時刻数
ninit:初期推定観測時刻数
nest:推定観測時刻数
i:時刻インデックス(時刻)
Fi:観測断面引張力データ
ε0ij:ひずみ分布データ
εavi:断面平均ひずみ
εσmax:想定最大応力時ひずみ
εvmax:想定最大勾配変化時ひずみ
εf:区分ひずみ
εk:代表ひずみ
σ0ij:応力分布データ
σavi:断面平均応力
σk:代表応力
a0j:代表面積
a1ik:代表面積
Dj:領域
P:重み行列
v0i:残差
v1i:残差
vavi:断面平均応力勾配
αj:測定点間距離
Ωk:ひずみ集合
1:載荷装置
11:固定部
12:荷重部
13:荷重測定部
2:ひずみ測定装置
21:ひずみゲージ
22:ひずみゲージ
3:応力ひずみ曲線作成装置
31:タイマ
32:荷重取得部
33:ひずみ取得部
34:応力ひずみ曲線作成部
34a: 観測断面引張力データ取得モジュール
34b:ひずみ分布データ取得モジュール
34c:分割基準算出モジュール
34d:ひずみ集合作成モジュール
34e:代表ひずみ算出モジュール
34f:代表面積算出モジュール
34g:つり合い式作成モジュール
34h:平滑条件式作成モジュール
34i:観測方程式作成モジュール
34j:代表応力算出モジュール
34k:応力ひずみ曲線作成モジュール
35:記憶部
Claims (4)
- 試験片に対して時間的に連続して荷重を付加した際のひずみから、当該試験片の応力ひずみ曲線を作成する応力ひずみ曲線作成装置であって、
前記試験片に対して付加された前記荷重を取得する荷重取得部と、
前記試験片の観測断面の縁辺上に取り付けられた複数のひずみ測定装置から第1のひずみ測定値を取得するひずみ取得部と、
前記荷重取得部から取得した前記荷重と、前記ひずみ取得部から取得した前記第1のひずみ測定値と、のそれぞれを所定の時間間隔でサンプリングした時系列データとして記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記荷重の時系列データと、前記第1のひずみ測定値の時系列データと、から前記応力ひずみ曲線を作成する応力ひずみ曲線作成部と、を備え、
前記応力ひずみ曲線作成部は、
前記荷重の時系列データから、前記観測断面における時系列での荷重を表す観測断面引張力データを取得する観測断面引張力データ取得モジュールと、
前記第1のひずみ測定値の時系列データから、前記観測断面における時系列でのひずみ分布を表すひずみ分布データを取得するひずみ分布データ取得モジュールと、
所定の分割基準に基づいて、前記ひずみ分布データを複数のひずみ集合に分割するひずみ集合作成モジュールと、
各々の前記ひずみ集合に属する前記ひずみ分布データを代表する統計量である代表ひずみを算出する代表ひずみ算出モジュールと、
前記観測断面において、各々の前記代表ひずみに対応する面積である代表面積を算出する代表面積算出モジュールと、
前記観測断面引張力データと前記代表面積に基づいて、力のつり合い式を作成するつり合い式作成モジュールと、
前記応力ひずみ曲線上において、連続する複数点が平滑であることを示す平滑条件式を作成する平滑条件式作成モジュールと、
前記つり合い式と前記平滑条件式とに基づき、観測方程式を作成する観測方程式作成モジュールと、
前記観測方程式を解くことにより、代表応力を算出する代表応力算出モジュールと、
前記代表ひずみと前記代表応力とから前記応力ひずみ曲線を作成する応力ひずみ曲線作成モジュールと、を備えた応力ひずみ曲線作成装置。 - 前記試験片が板状であり、
前記観測断面引張力データ取得モジュールは、前記荷重の時系列データを前記観測断面引張力データとして取得し、
前記ひずみ取得部は、前記第1のひずみ測定値の時系列データを前記歪分布データとして取得する請求項1記載の応力ひずみ曲線作成装置。 - 前記試験片が柱状であり、
前記ひずみ取得部は、前記観測断面の縁辺と前記試験片の下端面の縁辺とにわたって配置された前記ひずみ測定装置からの第2のひずみ測定値を取得し、
前記観測断面引張力データ取得モジュールは、前記第2のひずみ測定値に基づき、前記観測断面の傾きを求めるとともに、当該傾きによって前記荷重の時系列データを補正することにより前記観測断面引張力データを取得し、
前記ひずみ分布データ取得モジュールは、前記第1のひずみ測定値に基づき、前記観測断面を複数の領域に分割した各々の領域におけるひずみを前記ひずみ分布データとして取得する請求項1記載の応力ひずみ曲線作成装置。 - 試験片に対して時間的に連続して荷重を付加した際のひずみから、当該試験片の応力ひずみ曲線を作成する応力ひずみ曲線作成方法であって、
前記試験片に対して付加された前記荷重を取得する荷重取得ステップと、
前記試験片の観測断面の縁辺上に取り付けられた複数のひずみ測定装置から第1のひずみ測定値を取得するひずみ取得ステップと、
前記荷重取得ステップにより取得した前記荷重と、前記ひずみ取得ステップにより取得した前記第1のひずみ測定値と、のそれぞれを所定の時間間隔でサンプリングした時系列データとして記憶部に記憶させる記憶ステップと、
前記荷重の時系列データと、前記第1のひずみ測定値の時系列データと、から前記応力ひずみ曲線を作成する応力ひずみ曲線作成ステップと、を備え、
前記応力ひずみ曲線作成部は、さらに、
前記荷重の時系列データから、前記観測断面における時系列での荷重を表す観測断面引張力データを取得する観測断面引張力データ取得ステップと、
前記第1のひずみ測定値の時系列データから、前記観測断面における時系列でのひずみ分布を表すひずみ分布データを取得するひずみ分布データ取得ステップと、
所定の分割基準に基づいて、前記ひずみ分布データを複数のひずみ集合に分割するひずみ集合作成ステップと、
各々の前記ひずみ集合に属する前記ひずみ分布データを代表する統計量である代表ひずみを算出する代表ひずみ算出ステップと、
前記観測断面において、各々の前記代表ひずみに対応する面積である代表面積を算出する代表面積算出ステップと、
前記観測断面引張力データと前記代表面積に基づいて、力のつり合い式を作成するつり合い式作成ステップと、
前記応力ひずみ曲線上において、連続する複数点が平滑であることを示す平滑条件式を作成する平滑条件式作成ステップと、
前記つり合い式と前記平滑条件式とに基づき、観測方程式を作成する観測方程式作成ステップと、
前記観測方程式を解くことにより、代表応力を算出する代表応力算出ステップと、
前記代表ひずみと前記代表応力とから前記応力ひずみ曲線を作成する応力ひずみ曲線作成ステップと、を備えた応力ひずみ曲線作成方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018155140A JP2020030084A (ja) | 2018-08-22 | 2018-08-22 | 応力ひずみ曲線作成装置および応力ひずみ曲線作成方法 |
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Family
ID=69622274
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JP2018155140A Pending JP2020030084A (ja) | 2018-08-22 | 2018-08-22 | 応力ひずみ曲線作成装置および応力ひずみ曲線作成方法 |
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JP (1) | JP2020030084A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2022259340A1 (ja) * | 2021-06-07 | 2022-12-15 | 日本電信電話株式会社 | 測定装置、測定システム、測定方法及びプログラム |
CN115687854A (zh) * | 2023-01-04 | 2023-02-03 | 山东省地震工程研究院 | 高精度土样参数测量方法及其系统 |
-
2018
- 2018-08-22 JP JP2018155140A patent/JP2020030084A/ja active Pending
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WO2022259340A1 (ja) * | 2021-06-07 | 2022-12-15 | 日本電信電話株式会社 | 測定装置、測定システム、測定方法及びプログラム |
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