JP2020029771A - 高圧燃料供給ポンプ - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、単純な形状で構成された吸入弁体の流体抵抗力増加部を有する高圧燃料供給ポンプを提供することにある。【解決手段】高圧燃料供給ポンプは、吸入弁体31と変位規制部43との対向部に吸入弁体31に作用する流体抵抗力を増加させる流体抵抗力増加部200を備える。流体抵抗力増加部200は、変位規制部43の吸入弁体31と対向する側の端面31cに形成され吸入弁体31の外径よりも大きな内径を有する変位規制部側凹部201と、変位規制部側凹部201の底面201aに形成され加圧室の側に連通する連通部202と、を備える。吸入弁体31の変位規制部側凹部201の側の一部が変位規制部側凹部201の内側に挿入された状態において、吸入弁体31の外周面31bと変位規制部側凹部201の内周面201bとの間に流体の絞り通路203が形成される。【選択図】図3A

Description

本発明は油圧機械の一種である高圧燃料供給ポンプに係わり、特に自動車に用いるのに好適な高圧燃料供給ポンプに関する。
本発明の背景技術として、特開2010−168901号公報(特許文献1)に記載された高圧燃料ポンプが知られている。特許文献1の高圧燃料ポンプでは、加圧室に電磁弁を介して接続された燃料吸入通路と、電磁弁の弁体が着座する環状のシート面を有するシート部材と、を備えた高圧燃料ポンプにおいて、弁体及びシート面には、弁体の着座時に互いに凹凸嵌合する凹凸嵌合部が形成されている。これによって、電磁弁が閉弁する際には、凹凸嵌合部の凹部内の燃料が凸部によって圧縮される過程で、圧縮される燃料によって弁体には閉弁方向とは逆の力が付与され、弁体がシート面に着座する際の衝突エネルギを低減させ、弁体の着座音を低減することができる(要約参照)。
また、特許文献1には、凹凸嵌合部の凹部の底壁面に燃料供給通路と連通する貫通穴を設け、凹部内の燃料の一部が貫通穴から流れ出るようにすることで、弁体の着座時の移動速度を低減し、弁体の着座時の衝突エネルギを効果的に低減することが記載されている(段落0028,0029及び図6,7参照)。
特開2010−168901号公報
特許文献1の高圧燃料ポンプの構造では、弁体に凹凸嵌合部の凸部が形成され、シート部材に凹凸嵌合部の凹部が形成される。すなわち特許文献1の高圧燃料ポンプは、弁体及びシート部材の両方に、凹凸嵌合部を構成するための特殊な形状部を形成する必要がある。またこの特殊な形状部は、弁体とシート部材とが対向するそれぞれの対向面の一部に形成される。そして、この特殊な形状部を形成するために、弁体及びシート部材を大きくする必要があり、また弁体及びシート部材の形状が複雑化する。
特許文献1の凹凸嵌合部は、弁体に作用する流体抵抗力を増加させる機構であり、本明細書では、流体抵抗力増加部又は流体抵抗力増加機構と呼ぶ。この流体抵抗力増加部は、弁体とシート部材との対向面ではなく、弁体がシート部材のシート面(弁座)から離間する方向に移動する動作(開弁動作)を行った場合に、弁体と当接して弁体の開弁方向への変位を規制する変位規制部に設けることにより、弁体と変位規制部との衝突エネルギを効果的に低減し、弁体が変位規制部に衝突する際の衝突音を低減することができる。本発明では、シート面及び変位規制部のように弁体がその開閉弁動作により当接する部位又は部材を当接部と呼んで説明する。また、高圧燃料供給ポンプには複数の弁機構が設けられているため、本発明が対象とする弁体を吸入弁体と呼んで説明する。
本発明の目的は、単純な形状で構成された吸入弁体の流体抵抗力増加部を有する高圧燃料供給ポンプを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の高圧燃料供給ポンプは、
加圧室と、前記加圧室に連通する燃料通路に設けられた電磁吸入弁機構とを備え、前記電磁吸入弁機構に吸入弁体、前記吸入弁体と協働して燃料通路の開閉を行う弁座及び前記吸入弁体の開弁方向への変位を規制する変位規制部を有する高圧燃料供給ポンプにおいて、
前記吸入弁体と前記変位規制部との対向部に前記吸入弁体に作用する流体抵抗力を増加させる流体抵抗力増加部を備え、
前記流体抵抗力増加部は、前記変位規制部の前記吸入弁体と対向する側の端面に形成され前記吸入弁体の外径よりも大きな内径を有する変位規制部側凹部と、前記変位規制部側凹部の底面に形成され前記加圧室の側に連通する連通部と、を備えると共に、前記吸入弁体の前記変位規制部側凹部の側の一部が前記変位規制部側凹部の内側に挿入された状態において前記吸入弁体の外周面と前記変位規制部側凹部の内周面との間に流体の絞り通路が形成されるように構成される。
また上記目的を達成するために、本発明の高圧燃料供給ポンプは、
加圧室と、前記加圧室に連通する燃料通路に設けられた電磁吸入弁機構とを備え、前記電磁吸入弁機構に吸入弁体、前記吸入弁体と協働して燃料通路の開閉を行う弁座及び前記吸入弁体の開弁方向への変位を規制する変位規制部を有する高圧燃料供給ポンプにおいて、
前記吸入弁体と前記弁座との対向部に前記吸入弁体に作用する流体抵抗力を増加させる流体抵抗力増加部を備え、
前記流体抵抗力増加部は、前記弁座の前記吸入弁体と対向する側の端面に形成され前記吸入弁体の外径よりも大きな内径を有する弁座側凹部を備えると共に、前記吸入弁体の前記弁座側凹部の側の一部が前記弁座側凹部の内側に挿入された状態において前記吸入弁体の外周面と前記弁座側凹部の内周面との間に流体の絞り通路が形成されるように構成される。
本発明によれば、吸入弁体の流体抵抗力増加部を単純な形状で構成することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
高圧燃料供給ポンプを含む燃料供給システムの概略図である。 高圧燃料供給ポンプの一例を正面から見た断面図である。 本発明の第1実施例における吸入弁体領域の詳細な断面図であり、吸入弁体が当接部(変位規制部)に衝突する状態を示す図である。 本発明の第1実施例における吸入弁体領域の詳細な断面図であり、吸入弁体が当接部(変位規制部)から分離する状態を示す図である。 本発明の第1実施例における吸入弁体領域の詳細な断面図であり、絞りを示す図である。 本発明の第1実施例において、吸入弁体が傾いた状態を示す詳細断面図である。 本発明の第2実施例における吸入弁体領域の詳細な断面図である。 絞り203と凹部201との寸法関係を示す図である。
以下、図面を用いて、本発明の実施例について説明する。
図1を用いて、燃料供給システム(燃料ポンプシステム)の構成と動作について説明する。図1は、高圧燃料供給ポンプを含む燃料供給システムの概略図である。図1においては、高圧燃料供給ポンプ1の部分はその概念を模式的に示している。破線で囲まれた部分が高圧燃料供給ポンプ1の本体を示し、この破線の中に示している機構及び部品は、高圧燃料供給ポンプ1の本体に一体に組み込まれていることを示す。なお、以下の説明では、高圧燃料供給ポンプ1の本体をポンプ本体1と呼んで説明する。
燃料タンク20の燃料はフィードポンプ21によって汲み上げられ、吸入配管28を通してポンプ本体1の吸入ジョイント10aに送られる。吸入ジョイント10aを通過した燃料は、吸入通路10bを介して、容量可変機構を構成する電磁吸入弁機構30の吸入ポート30aに至る。
電磁吸入弁機構30は電磁コイル30bを備え、この電磁コイル30bが通電されていない状態では、可動子30cはバネ33により付勢されて図1の右方に移動した状態である。バネ33は圧縮バネで構成され、可動子30cが右方へ移動した状態では圧縮量が少なくなっている。可動子30cの先端に取り付けられた吸入弁体31がポンプ本体1の加圧室11につながる吸入口32を開いている。このバネ33の付勢力により、吸入弁体31は開弁方向に付勢され、吸入口32は開いた状態となっている。
電磁吸入弁機構30は、以下のように動作する。
後で述べるカム5の回転により、プランジャ2が図1の下方に変位して、ポンプ本体1が吸入工程状態にある時は、加圧室11の容積は増加し、加圧室11内の燃料圧力が低下する。この過程で、加圧室11内の燃料圧力が吸入通路10bの圧力よりも低くなり、吸入ポート30aから吸入口32を通り、燃料が加圧室11内に流れ込む。
プランジャ2が吸入工程を終了し、圧縮工程(プランジャ2が図1の上方へ移動する状態)に移る状態では、依然として、吸入弁体31は開弁したままである。加圧室11の容積は、プランジャ2の圧縮運動に伴い減少するが、加圧室11に吸入された燃料が、再び開弁状態の吸入弁体31を介して吸入通路10bへと戻されるので、加圧室11の圧力は上昇しない。この工程を戻し工程と呼ぶ。この状態で、エンジンコントロールユニット(ECU)27からの制御信号が電磁吸入弁機構30に印加されると、電磁吸入弁機構30の電磁コイル30bには電流が流れ、磁気吸引力により、可動子30cが図1の左方に移動し、バネ33が圧縮される。その結果、吸入弁体31も図1の左方に移動し、吸入口32が閉じられる。
吸入弁体31が閉じると、このときから加圧室11の燃料圧力はプランジャ2の上昇運動とともに上昇する。加圧室11の燃料圧力が燃料吐出口12の圧力以上になると、吐出弁機構8を介して加圧室11に残っている燃料の高圧吐出が行われ、吐出された高圧燃料はコモンレー23へと供給される。この工程を吐出工程と呼ぶ。すなわち、プランジャ2の圧縮過程は、戻し工程と吐出工程とからなる。この状態で、ECU27からの制御信号を解除して、電磁コイル30bへの通電を断つと、可動子30cに働いている磁気吸引力は一定の時間後(磁気的、機械的遅れ時間後)に消去される。可動子30cにはバネ33による付勢力が働いているので、図1の右方向に移動しようとする。しかし、プランジャ2の圧縮行程中は加圧室11内の圧力が高く、その圧力によって吸入弁体31は閉弁状態を維持する。そのため可動子30cは、ECU27からの制御信号が解除された後でも、プランジャ2の圧縮行程中は、図1の左方に移動した状態が維持される。
プランジャ2の圧縮行程が終了し再び吸入行程が開始すると、加圧室11内の圧力が下がり、吸入弁体31は可動子30cを介してバネ33の付勢力を受け、可動子30cと共に図1の右方に移動し、吸入口32が開かれる。
電磁吸入弁機構30の電磁コイル30bへの通電を開始するタイミングを制御することで、吐出される高圧燃料の量を制御することができる。電磁コイル30bへの通電を開始するタイミングを早くすれば、圧縮工程中の戻し工程の割合が小さくなり、吐出工程の割合が大きくなる。すなわち、吸入通路10bに戻される燃料が少なくなり、加圧室11から燃料吐出口12に高圧吐出される燃料は多くなる。一方、通電を開始するタイミングを遅くすれば、圧縮工程中の戻し工程の割合が大きくなり、吐出工程の割合が小さくなる。すなわち、吸入通路10bに戻される燃料が多くなり、加圧室11から燃料吐出口12に高圧吐出される燃料は少なくなる。電磁コイル30bへの通電を解除するタイミングは、ECU27からの指令によって制御される。以上のように構成することで、電磁コイル30bへの通電を開始するタイミングを制御することで、高圧吐出される燃料の量を内燃機関が必要とする量に制御することが出来る。
加圧室11の出口には吐出弁機構8が設けられている。吐出弁機構8は吐出弁シート8a、吐出弁8b、吐出弁バネ8cを備え、加圧室11の燃料圧力と燃料吐出口12の燃料圧力との間に燃料差圧が無い状態では、吐出弁8bは吐出弁バネ8cによる付勢力により、吐出弁シート8aに圧着され閉弁状態となっている。加圧室11の燃料圧力が、燃料吐出口12の燃料圧力よりも大きくなった時に始めて、吐出弁8bは吐出弁バネ8cの付勢力に逆らって開弁し、加圧室11内の燃料は燃料吐出口12を経てコモンレー23へと高圧吐出される。
かくして、燃料吸入口32に導かれた燃料は、ポンプ本体1の加圧室11にてプランジャ2の往復動によって必要な量が高圧に加圧され、燃料吐出口12からコモンレー23に圧送される。
コモンレー23には、インジェクタ24、圧力センサ26が装着されている。インジェクタ24は、内燃機関の気筒数に合わせて、通常複数のインジェクタが装着されており、ECU27の制御信号にてしたがって開閉弁して、燃料をシリンダ内に噴射する。
ポンプ本体1にはさらに、吐出弁8bの下流側と加圧室11とを連通するリリーフ通路100Aが吐出流路とは別に吐出弁8bをバイパスして設けられている。リリーフ通路100Aには燃料の流れを吐出流路から加圧室11への一方向のみに制限するリリーフ弁102が設けられている。リリーフ弁102は、押付力を発生するリリーフバネ104によりリリーフ弁シート101に押付けられており、加圧室11内とリリーフ通路100A内との間の圧力差が規定の圧力以上になるとリリーフ弁102がリリーフ弁シート101から離れ、開弁するように設定されている。
インジェクタ24の故障等によりコモンレール23等に異常高圧が発生した場合、リリーフ通路100Aの燃料圧力と加圧室11の燃料圧力との差圧がリリーフ弁102の開弁圧力以上になると、リリーフ弁102が開弁し、異常高圧となった燃料はリリーフ通路100Aから加圧室11へと戻され、コモンレール23等の高圧部配管が保護される。
以下に高圧燃料供給ポンプ1の構成と動作を、図2を用いてさらに詳しく説明する。図2は、高圧燃料供給ポンプの一例を正面から見た断面図である。なお図2は、高圧燃料供給ポンプ1の基本構成の一例を示しており、高圧燃料供給ポンプ1の概念を模式的に示している。
ポンプ本体1には中心に加圧室11が形成されており、さらに加圧室11に燃料を供給するための電磁吸入弁機構30と、加圧室11から吐出通路に燃料を吐出するための吐出弁機構8とが設けられている。
プランジャ2の進退運動をガイドするシリンダ6が加圧室11に臨むようにして取り付けられている。シリンダ6は外周がシリンダホルダ7で保持され、ポンプ本体1に固定される。シリンダ6は加圧室11内で進退運動するプランジャ2をその進退運動方向に沿って摺動可能に保持する。
プランジャ2の下端には、エンジンのカムシャフトに取り付けられたカム5の回転運動を上下運動に変換し、プランジャ2に伝達するタペット3が設けられている。これによりカム5の回転運動に伴い、プランジャ2を上下に進退(往復)運動させることができる。ダンパカバー14には、ポンプ内で発生した圧力脈動が燃料配管28へ波及するのを低減させる圧力脈動低減機構9が設置されている。
圧力脈動低減機構9を通った燃料は、吸入通路10b、吸入ポート30aの順に吸入口32を通って加圧室11内へ流れる。先述の通り、電磁吸入弁機構30は電磁コイル30bを備え、この電磁コイル30bが通電されていない状態では可動子30cが図1の右方に移動した状態である。可動子30cの先端に取り付けられた吸入弁体31がポンプ本体1の加圧室11につながる吸入口32を開いている。このバネ33の付勢力により、吸入弁体31は開弁方向に付勢され、吸入口32は開いた状態となっている。
プランジャ2の圧縮期間中に制御信号が電磁吸入弁機構30に印加されると、電磁吸入弁機構30の電磁コイル30bに電流が流れ、磁気吸引力により可動子30cが図1の左方に移動し、バネ33が圧縮される。この時、吸入弁体31も可動子30cと一緒に左方に移動し、弁座44と衝突した際に衝突音が発生する。また、プランジャ2の圧縮工程が終了し、吸入工程に移る際に、電磁吸入弁機構30に通電されている制御信号(駆動電流)がなくなると、バネ33によって、可動子30cが右方に移動する。そして、可動子30cと吸入弁体31とが衝突し、可動子30cと吸入弁体31とが一緒に右方に移動し、吸入弁体31と吸入弁体31の変位規制部43とが衝突し、衝突音が発生する。一般的に、衝突する物体の速度が速ければ速いほど衝突音も大きくなる。従って、吸入弁体31が変位規制部43と衝突する速度を低減出来れば、吸入弁体31と変位規制部43との衝突時に発生する衝突音を低減できる。
そこで、本実施例では、吸入弁体31と変位規制部43とが衝突する直前で、吸入弁体31に作用する流体抵抗力を増加させることで、衝突速度の低減を実現させた。この流体抵抗力を増加させる機構を流体抵抗力増加機構又は流体抵抗力増加部と呼ぶ。なお変位規制部43は、吸入弁体31が弁座44から離間する方向に移動する動作(開弁動作)を行った場合に、吸入弁体31と当接して吸入弁体31の開弁方向への変位を規制するストッパを構成する。
流体抵抗力増加機構の第1実施例を、図3A、図3B及び図3Cを用いて詳細に説明する。図3Aは、本発明の第1実施例における吸入弁体領域の詳細な断面図であり、吸入弁体が当接部(変位規制部)に衝突する状態を示す図である。図3Bは、本発明の第1実施例における吸入弁体領域の詳細な断面図であり、吸入弁体が当接部(変位規制部)から分離する状態を示す図である。図3Cは、本発明の第1実施例における吸入弁体領域の詳細な断面図であり、絞りを示す図である。
吸入弁体31が変位規制部43に衝突する領域に、流体抵抗力増加機構200を構成する。流体抵抗力増加機構200は、凹部(変位規制部側凹部)201と、連通部202と、絞り203とを含んで構成される。
凹部201及び連通部(連通孔)202は、変位規制部43側に形成される。凹部201は、吸入弁体31の半径R31より大きく、変位規制部43の半径R43より小さい半径R201を有するように、変位規制部43における吸入弁体31と対向する側の端面43aに凹状に形成されている。すなわち、凹部201の直径(内径)は、吸入弁体31の直径よりも大きく、変位規制部43の直径(外径)よりも小さい。連通部202は、凹部201の底面201aに開口し、凹部201の内側と加圧室11側の燃料通路とを連通するように、変位規制部43側に形成される。
吸入弁体31は、外形が円形で、バネ(閉弁方向付勢バネ)37側の端面に突状部31aが形成された円盤状の部材であり、その直径が厚さ方向(開閉弁方向に沿う方向の寸法)の寸法よりも大きい。一方、凹部201は、変位規制部43の端面43aに円形の開口を形成する断面が円形の内周面を有する。吸入弁体31の外径は凹部201の内径よりもわずかに小さく、吸入弁体31は、凹部201に対向する側の一部が凹部201の内側に出入り可能な状態で、変位規制部43に組み付けられている。吸入弁体31は、凹部201に近接することで、或いは凹部201に対向する側の一部が凹部201の内側に入り込むことで、図3Cに示すように、吸入弁体31の外周面31bと凹部201の内周面201bとの間に絞り203が構成される。そして吸入弁体31は、凹部201に対向する側の端面31cが凹部201の底面201aに当接することで、開弁方向への変位が規制される。
すなわち本実施例では、吸入弁体31と変位規制部43とが衝突する前に、吸入弁体31の外周面と、凹部201の内周面とによって、流路が狭まる絞り203が形成される形状となっている。絞り203は凹部201から流出する流体(燃料)の流路断面積を小さくする絞り流路(絞り通路)を構成する。
変位規制部43に凹部201を設けることで、吸入弁体31と変位規制部43とが衝突する直前で絞り203が形成される。これによって、吸入弁体31の端面31cと凹部201の底面201aとの間の流体(燃料)が凹部201から流出しにくくなり、吸入弁体31と変位規制部43との間の領域で圧力が上昇する。そして、吸入弁体31の開弁方向への進行を妨げる方向に作用する流体力が増加し、吸入弁体31の衝突速度が低下する。その結果、吸入弁体31が変位規制部43に当接する際の衝突音も低減する。
この場合、吸入弁体31の変位規制部と対向する側の端面31cを、流体抵抗力増加部200による流体抵抗力が作用する受圧面31eとして構成する。吸入弁体31は、端面31cの外周を受圧面31eの外周とする。
凹部201の底面201aの連通部202よりも径方向内方の部分に窪み部43bが形成されている。窪み部43bには、吸入弁体31を閉弁方向に付勢するバネ37が収容され、吸入弁体31の突状部31aの一部が挿入される。そしてバネ37は、突状部31aの外周よりも径方向外方において、吸入弁体31の端面31cに当接している。このような構成において、受圧面31eの内周は、突状部31aの外周、さらにはバネ37の外周よりも径方向外方に位置し、受圧面31eは、図3Aに示すように、端面31cの、凹部201の底面201aと対向する部分S31eになる。
図6は、絞り203と凹部201との寸法関係を示す図である。吸入弁体31の端面31cが凹部201の開口面上に位置する場合、端面31cと凹部201の底面201aとの間に構成される隙間寸法laに対して、吸入弁体31の径方向における絞り通路203の寸法(吸入弁体31の外周面31bと凹部201の内周面201bとの間隔寸法)lbが小さくなる。端面31cと凹部201の底面201aとの隙間寸法laは、凹部201の深さ寸法に等しい。
しかし、絞り203のみを設けた変位規制部43の場合、吸入弁体31が変位規制部43から分離(離間)する際に、吸入弁体31と変位規制部43との間で、低圧領域Aが生じ、吸入弁体31を変位規制部43に引き寄せる方向に作用する力が増加し、吸入弁体31が変位規制部43から分離し難くなる。その結果、弁の閉じ遅れ現象が起こり、製品の性能にばらつきが生じる。そこで、図3Bに示すように、変位規制部43に連通部202を設けることで、吸入弁体31が変位規制部43から離れる際に、連通部202を通じて加圧室11側の燃料が吸入弁体31の端面31cと凹部201の底面201aとの間に流入できるようにする。これにより端面31cと底面201aとの間に発生する低圧領域Aを低減させ、吸入弁体31を変位規制部43から分離しやすくする。その結果、弁の閉じ遅れ現象を抑制することができ、製品の性能のばらつきを抑制することができる。
変位規制部43は、衝突音の低減を可能にするだけでなく、吸入弁体31が変位規制部43に傾いて衝突する際の、傾き角を抑制する効果もある。この効果を、図4を用いて説明する。図4は、本発明の第1実施例において、吸入弁体が傾いた状態を示す詳細断面図である。
図4で示すように、吸入弁体31が変位規制部43に対して傾いた状態で衝突する際に、吸入弁体31と変位規制部43との間の距離が近い領域と、距離が遠い領域の2つの領域が存在する。吸入弁体31と変位規制部43との間の距離が近い領域では、吸入弁体31と変位規制部43とが衝突する直前に、吸入弁体31と変位規制部43との間の圧力が上昇し、吸入弁体31の衝突速度が減速する。また、吸入弁体31と変位規制部43との間の距離が遠い領域では、吸入弁体31と変位規制部43との間の圧力が近い領域と比べて上昇せず、速度が減速しない。このため、吸入弁体31と変位規制部43とのが衝突する直前に、吸入弁体31と変位規制部43とが平行になるように、吸入弁体31の傾きが修正される。
本実施例では、吸入弁体31の形状は円盤形状に形成するだけでよく、例えば突起状の部位や凹状に窪んだ部位などを特別ね形成する必要が無く、変位規制部43に凹部201と連通部202とを形成するだけでよい。すなわち、互いに当接する2つの部材(吸入弁体31、変位規制部43)のうち、一方の部材(本実施例では、変位規制部43に)凹部201と連通部202とを形成するだけでよい。これにより、吸入弁体の流体抵抗力増加部を単純な形状で構成することができる。
なお、連通部202は、1つであってもよいし、2つ以上設けられてもよい。
図5を用いて、第2実施例の高圧燃料供給ポンプについて説明する。図5は、本発明の第2実施例における吸入弁体領域の詳細な断面図である。
本実施例では、吸入弁体31が弁座44に衝突する領域に、流体抵抗力増加機構207を構成している。流体抵抗力増加機構207は、凹部(弁座側凹部)208と、絞り209とを含んで構成される。
凹部208は、弁座44における吸入弁体31と対向する側の端面44aに凹状に形成されている。凹部208の半径R208は、吸入弁体31の半径R31よりも大きい。すなわち、凹部208の直径(内径)は、吸入弁体31の直径(外径)よりも大きい。変位規制部43における吸入弁体31との対向面(端面)43aに凹状に形成されている。
弁座44は、吸入弁体31と協働して加圧室11への燃料通路を開閉する弁部を構成し、吸入弁体31が弁座44に当接することにより加圧室11への燃料の流入または加圧室11からの燃料の流出を遮断し、吸入弁体31が弁座44から離間することにより加圧室11への燃料の流入または加圧室11からの燃料の流出を許す。特に本実施例では、弁座44の吸入弁体31と当接するシート部(当接部)は、凹部208の底面208aに形成されている。
吸入弁体31は、凹部208に近接することで、或いは凹部208に対向する端面31d側の一部が凹部208の内側に入り込むことで、吸入弁体31の外周面31bと凹部208の内周面208bとの間に絞り209が構成される。そして吸入弁体31は、端面31dが底面208aに当接することで、閉弁方向への変位が規制される。なお本実施例では、第1実施例における連通部202は、吸入ポート30aと加圧室11とを連通する燃料通路210によって構成される。
絞り203と凹部208との寸法関係は、図6を用いて説明した、第1実施例の絞り203と凹部201との寸法関係と同様に構成される。すなわち、吸入弁体31の外周面31bと凹部208の内周面208bとの間隔寸法(吸入弁体31の径方向における絞り通路209の寸法)lbと、吸入弁体31の端面31dが凹部208の開口面上に位置する場合の、端面31dと凹部208の底面208aとの間に構成される隙間寸法とは、第1実施例の隙間寸法lbと隙間寸法laとの関係と同様に構成される。
本実施例では、図5で示すように、第1実施例の高圧燃料供給ポンプ1に流体抵抗力増加機構207を弁座44側に追加している。しかし流体抵抗力増加機構200及び流体抵抗力増加機構207の両方を備えた構成に限らず、流体抵抗力増加機構200又は流体抵抗力増加機構207のどちらか一方を備えた構成であってもよい。
本発明に係る上述した各実施例によれば、円盤状の吸入弁体31の平らな端面31C、31Dを流体力が作用する受圧面としているため、流体抵抗力増加機構200,207を構成する受圧面を広くすることができる。このため各実施例の流体抵抗力増加機構200,207は、大きな流体抵抗力を容易に発生することができる。また、連通部202を構成する場合に、連通部202の断面積を適切な大きさにしたり、連通部202の数を適切な数にしたりすることが容易で、開閉弁動作の低速化を招くことなく吸入弁体31の移動速度を低減して、吸入弁体31と当接部(変位規制部43、弁座44)との衝突エネルギを効果的に低減することができる。
また、特許文献1の高圧燃料ポンプの構造では、弁体とシート面(弁座)とが分離する際に凹凸嵌合部内で負圧が生じ、弁体がシート面から分離しづらくなり、弁体がシート面に張り付いた状態になることがある。凹凸嵌合部内の負圧により弁体がシート面に張り付くと、弁体がシート面から分離する動作(開弁動作)が遅くなる。そして製品ごとに生じる凹凸嵌合部の個体差により、製品性能にばらつきが生じる。本実施例では、製品ごとに生じる性能のばらつきを抑制することができる。
なお、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
1…高圧燃料ポンプ本体、2…プランジャ、3…タペット、8…吐出弁機構、9…圧力脈動低減機構、10a…吸入ジョイント、10b…吸入通路、11…加圧室、12…燃料吐出口、23…コモンレール、20…燃料タンク、21…フィードポンプ、28…吸入配管、30…電磁吸入弁機構、30a…吸入ポート、30b…電磁コイル、30c…可動子、31…吸入弁体、33…バネ、43…変位規制部、44…弁座、102…リリーフ弁、202…連通部、200…流体抵抗力増加機構、201…凹部、203…絞り、207…流体抵抗力増加機構、208…凹部、209…絞り。

Claims (5)

  1. 加圧室と、前記加圧室に連通する燃料通路に設けられた電磁吸入弁機構とを備え、前記電磁吸入弁機構に吸入弁体、前記吸入弁体と協働して燃料通路の開閉を行う弁座及び前記吸入弁体の開弁方向への変位を規制する変位規制部を有する高圧燃料供給ポンプにおいて、
    前記吸入弁体と前記変位規制部との対向部に前記吸入弁体に作用する流体抵抗力を増加させる流体抵抗力増加部を備え、
    前記流体抵抗力増加部は、前記変位規制部の前記吸入弁体と対向する側の端面に形成され前記吸入弁体の外径よりも大きな内径を有する変位規制部側凹部と、前記変位規制部側凹部の底面に形成され前記加圧室の側に連通する連通部と、を備えると共に、前記吸入弁体の前記変位規制部側凹部の側の一部が前記変位規制部側凹部の内側に挿入された状態において前記吸入弁体の外周面と前記変位規制部側凹部の内周面との間に流体の絞り通路が形成されるように構成されたことを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。
  2. 請求項1に記載の高圧燃料供給ポンプにおいて、
    前記吸入弁体の前記変位規制部と対向する側の変位規制部側端面を、前記流体抵抗力増加部による流体抵抗力が作用する受圧面として構成したことを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。
  3. 請求項2に記載の高圧燃料供給ポンプにおいて、
    前記吸入弁体の径方向における前記絞り通路の寸法は、前記変位規制部側凹部の深さ寸法よりも小さいことを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。
  4. 請求項3に記載の高圧燃料供給ポンプにおいて、
    前記吸入弁体は、円盤状の部材で構成されると共に、前記変位規制部側端面の中央部に突状部を備え、
    前記吸入弁体は、前記変位規制部側端面の外周を前記受圧面の外周とすることを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。
  5. 加圧室と、前記加圧室に連通する燃料通路に設けられた電磁吸入弁機構とを備え、前記電磁吸入弁機構に吸入弁体、前記吸入弁体と協働して燃料通路の開閉を行う弁座及び前記吸入弁体の開弁方向への変位を規制する変位規制部を有する高圧燃料供給ポンプにおいて、
    前記吸入弁体と前記弁座との対向部に前記吸入弁体に作用する流体抵抗力を増加させる流体抵抗力増加部を備え、
    前記流体抵抗力増加部は、前記弁座の前記吸入弁体と対向する側の端面に形成され前記吸入弁体の外径よりも大きな内径を有する弁座側凹部を備えると共に、前記吸入弁体の前記弁座側凹部の側の一部が前記弁座側凹部の内側に挿入された状態において前記吸入弁体の外周面と前記弁座側凹部の内周面との間に流体の絞り通路が形成されるように構成されたことを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。
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