JP2020029382A - 酸窒化チタン膜及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】絶縁性と高い遮光性を有し、かつ耐光性と耐湿性を兼備した耐候性に優れ、膜の外観が良好である。【解決手段】酸窒化チタン膜は、温度60℃、湿度90%の条件で100時間処理したとき、処理前と処理後の膜の表面抵抗率がそれぞれ5×1013Ω/cm2以上であり、かつ540J/cm2のUV光を照射した後の膜の表面抵抗率が5×1013Ω/cm2以上であり、膜厚1.0μm当りのOD値が2.4以上である。【選択図】なし
Description
本発明は、絶縁性と高い遮光性を有し、かつ耐光性と耐湿性を兼備した耐候性に優れ、膜の外観が良好であって、黒色パターニング膜として好適に用いられる酸窒化チタン膜及びその製造方法に関する。
この種の黒色パターニング膜を形成するための原料である黒色顔料は、感光性樹脂に分散されて黒色感光性組成物に調製され、この組成物を基板に塗布してフォトレジスト膜を形成し、フォトリソグラフィー法でフォトレジスト膜に露光してパターニング膜を形成することで、液晶ディスプレイのカラーフィルター等の画像形成素子のブラックマトリックスに用いられる。
従来、絶縁性の高い黒色顔料を用いた高抵抗黒色膜として、特定の組成の酸窒化チタンとも称されるチタン酸窒化物からなる黒色粉末と、Y2O3、ZrO2、Al2O3、SiO2、TiO2、V2O5を少なくとも1種からなる絶縁粉末とを含有する高抵抗黒色膜が開示されている(例えば、特許文献1(要約、請求項7、請求項9、段落[0010]、段落[0020]、段落[0021])参照。)。この黒色膜によれば、抵抗値が高く、遮光性に優れるので、カラーフィルターのブラックマトリックスとして好適であるとされている。特許文献1には、このチタン酸窒化物粉末及び絶縁粉末を含有する高抵抗黒色粉末が、原料の酸化チタンに絶縁粉末を添加して窒化還元処理し、又は酸化チタンの窒化還元処理の後に絶縁粉末を添加することにより、製造され、この酸化チタンの窒化還元処理が、例えば、原料の酸化チタン粉末をアンモニアなどの還元性ガスの雰囲気下で、700〜1000℃に加熱して行われることが記載されている。
特許文献1に示される酸窒化チタン膜である高抵抗黒色膜は、酸化チタンの窒素還元処理により製造された酸窒化チタン粉末から作られるため、大気雰囲気下で保管すると、耐候性が不十分であって、遮光性能が劣化し易く、未だ改善する余地があった。
従来、黒色顔料の一種である黒色酸窒化チタンにおいて、その原料粉末の鉛不純物に起因するα線を遮蔽するために、シリカ膜で被覆された黒色酸窒化チタン粉末が開示されている(例えば、特許文献2(請求項1)参照。)。
特許文献2に示されるシリカ膜で粉末表面を被覆された酸窒化チタン粉末を用いて酸窒化チタン膜からなる黒色パターニング膜を形成したときには、この黒色パターニング膜は大気雰囲気下で、耐湿性は向上するけれども、耐光性の改善がみられず、結果として、耐候性が不十分であった。
本発明の目的は、絶縁性と高い遮光性を有し、かつ耐光性と耐湿性を兼備した耐候性に優れ、膜の外観が良好である酸窒化チタン膜及びその製造方法を提供することにある。
本発明の第1の観点は、酸窒化チタン膜を温度60℃、湿度90%の条件で100時間高温耐湿試験を行ったときに、試験前と試験後の膜の表面抵抗率がそれぞれ5×1013Ω/cm2以上であり、かつ540J/cm2のUV光を照射した後の膜の表面抵抗率が5×1013Ω/cm2以上であり、膜厚1.0μm当りのOD値が2.4以上であることを特徴とする酸窒化チタン膜である。
本発明の第2の観点は、エポキシ樹脂(a)と、下記式(1)で表されるアミノ基を含むシラン化合物(b)と、シリコンアルコキシド又はその縮合物(c)と、第1有機溶媒とを質量比で(b)/(a)=0.1〜3.0及び(c)/(a)=0.01〜1.5の割合で混合した混合液に、酸窒化チタン粉末(d)を質量比で((a)+(b)+(c))/(d)=0.01〜0.25の割合で添加して分散液を調製し、前記分散液にバインダ(e)と第2有機溶媒とを質量比で(d)/((a)+(b)+(c)+(d)+(e))=0.5〜0.8の割合で混合した液組成物を調製し、前記液組成物を基材上に塗布乾燥し前記第1及び第2有機溶媒を除去して酸窒化チタン膜を製造する方法である。
R(4-n)−Si−(OR’)n (1)
但し、式中、Rはアミノ基含有の有機基を表し、R’はメチル基、エチル基又はプロピル基を表し、nは1〜3から選択される整数を表す。
R(4-n)−Si−(OR’)n (1)
但し、式中、Rはアミノ基含有の有機基を表し、R’はメチル基、エチル基又はプロピル基を表し、nは1〜3から選択される整数を表す。
本発明の第3の観点は、第2の観点に基づく発明であって、前記シラン化合物(b)が、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン及びN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランからなる群より選択される少なくとも1種のシラン化合物である酸窒化チタン膜の製造方法である。
本発明の第4の観点は、第2の観点に基づく発明であって、前記エポキシ樹脂(a)が、ビスフェノールA型又はビスフェノールF型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂及びポリグリコール型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂である酸窒化チタン膜の製造方法である。
本発明の第5の観点は、第2の観点に基づく発明であって、前記バインダ(e)がエポキシ樹脂又はアクリル樹脂である酸窒化チタン膜の製造方法である。
本発明の第1の観点の酸窒化チタン膜は、膜厚1.0μm当りのOD値が2.4以上であるため、遮光性に優れ、絶縁性に優れる。また酸窒化チタン膜を温度60℃、湿度90%の条件で100時間高温耐湿試験を行ったときに、試験前と試験後の膜の表面抵抗率がそれぞれ5×1013Ω/cm2以上であり、かつ540J/cm2のUV照射光にて処理した後の膜の表面抵抗率が5×1013Ω/cm2以上であり、耐湿性及び耐光性に優れる。
本発明の第2の観点の酸窒化チタン膜の製造方法では、エポキシ樹脂(a)と、所定の構造式のアミノ基を含むシラン化合物(b)と、シリコンアルコキシド又はその縮合物(c)と、第1有機溶媒とを所定の質量比で混合し、この混合液に所定の酸窒化チタン粉末(d)を所定の質量比で添加して分散液を調製し、この分散液にバインダ(e)と第2有機溶媒とを所定の質量比で混合して液組成物を調製し、この液組成物を基材上に塗布乾燥し第1及び第2有機溶媒を除去して酸窒化チタン膜を製造する。このため、製造された酸窒化チタン膜は、耐光性と耐湿性を兼備した耐候性に優れ、膜の外観が良好となる。また黒色パターニング膜として使用したときに高い遮光性能を有する。
本発明の第3の観点の酸窒化チタン膜の製造方法では、前記シラン化合物(b)が所定のシラン化合物であるため、このシラン化合物がエポキシと反応することで、化学的結合の効果が得られ、この結果、酸窒化チタン膜に絶縁性が得られる。
本発明の第4の観点の酸窒化チタン膜の製造方法では、前記エポキシ樹脂(a)が所定のエポキシ樹脂であるため、このエポキシ樹脂は酸窒化チタン粉末とシラン化合物とが均一に混ざり合い、この結果、酸窒化チタン膜は所定の隠蔽性と絶縁性を両立した膜になる。
本発明の第5の観点の酸窒化チタン膜の製造方法では、前記バインダ(e)がエポキシ樹脂又はアクリル樹脂であるため、酸窒化チタン膜は所定の隠蔽性と絶縁性を両立した膜になる。
次に本発明を実施するための形態を説明する。
[原料粉末である酸窒化チタン粉末]
本実施形態の原料粉末である酸窒化チタン粉末は、粉末L値が15未満であり、黒色を呈する特徴がある。またこの酸窒化チタン粉末は、化学式:TiNXOY(但し、X=0.2〜1.4,Y=0.1〜1.8)、又は化学式:TiWO2W-1(但し、W=1〜10)で表されることが好ましい。ここで、上記化学式:TiNXOYにおいて、Xを0.2〜1.4の範囲内に限定したのは、0.2未満では還元割合が低いことから黒色度が不十分であり、1.4を超えると黄色味を呈してくるため黒色顔料として所定の色調が得られないからである。また、上記化学式:TiNXOYにおいて、Yを0.1〜1.8の範囲内に限定したのは、この範囲外では黒色顔料として所定の色調が得られないからである。更に、上記化学式:TiWO2W-1において、Wを1〜10の範囲内に限定したのは、1未満の化合物は一般的に存在せず、10を超えると黒色顔料として所定の色調が得られないからである。なお、上記化学式:TiNXOYの酸素と窒素の質量比(O/N)は、0.2〜6の範囲であることが好ましい。
本実施形態の原料粉末である酸窒化チタン粉末は、粉末L値が15未満であり、黒色を呈する特徴がある。またこの酸窒化チタン粉末は、化学式:TiNXOY(但し、X=0.2〜1.4,Y=0.1〜1.8)、又は化学式:TiWO2W-1(但し、W=1〜10)で表されることが好ましい。ここで、上記化学式:TiNXOYにおいて、Xを0.2〜1.4の範囲内に限定したのは、0.2未満では還元割合が低いことから黒色度が不十分であり、1.4を超えると黄色味を呈してくるため黒色顔料として所定の色調が得られないからである。また、上記化学式:TiNXOYにおいて、Yを0.1〜1.8の範囲内に限定したのは、この範囲外では黒色顔料として所定の色調が得られないからである。更に、上記化学式:TiWO2W-1において、Wを1〜10の範囲内に限定したのは、1未満の化合物は一般的に存在せず、10を超えると黒色顔料として所定の色調が得られないからである。なお、上記化学式:TiNXOYの酸素と窒素の質量比(O/N)は、0.2〜6の範囲であることが好ましい。
粉末L値が15以上であると、黒色顔料としてパターニング膜を形成するときに、形成したパターニング膜の遮光性が不足し高いOD値が得られない。また表面処理される前の酸窒化チタン粉末が、化学式:TiNXOY(但し、X=0.2〜1.4,Y=0.1〜1.8)、又は化学式:TiWO2W-1(但し、W=1〜10)の構造を有すると、より遮光性に優れ、高いOD値が得られる。
原料粉末である酸窒化チタン粉末は、BET法により測定される比表面積が10m2/g〜100m2/gであることが好ましい。酸窒化チタン粉末の上記比表面積が10m2/g未満では、黒色レジストとしたときに、長期保管時に顔料が沈降し易いからであり、100m2/gを超えると、黒色顔料としてパターニング膜を形成したときに、遮光性が不足し易い。15m2/g〜90m2/gがより好ましい。この酸窒化チタン粉末は、白色酸化チタン粉末(TiO2)を還元ガスにより還元して製造される。ここで、還元ガスとしてアンモニアガスを用いると、化学式:TiNXOY(但し、X=0.2〜1.4,Y=0.1〜1.8)で表される黒色酸窒化チタンが生成される。上記白色酸化チタン粉末(TiO2)の還元率は、反応温度を高くしたり、アンモニアガス流量を上げたり、或いは反応時間を延ばすことにより、コントロール可能であり、還元率が高くなると、粉末の黒色度が向上する。即ち、L値が低くなる。
[酸窒化チタン膜の製造方法]
製造された酸窒化チタン膜の遮光性(透過率の減衰)を表す指標として光学濃度、即ちOD(Optical Density)値が知られている。本実施形態の製造された酸窒化チタン膜は高いOD値を有する。ここでOD値は、光が酸窒化チタン膜を通過する際に吸収される度合を対数で表示したものであって、次の式(2)で定義される。式(2)中、Iは透過光量、I0は入射光量である。
OD値=−log10(I/I0) (2)
製造された酸窒化チタン膜の遮光性(透過率の減衰)を表す指標として光学濃度、即ちOD(Optical Density)値が知られている。本実施形態の製造された酸窒化チタン膜は高いOD値を有する。ここでOD値は、光が酸窒化チタン膜を通過する際に吸収される度合を対数で表示したものであって、次の式(2)で定義される。式(2)中、Iは透過光量、I0は入射光量である。
OD値=−log10(I/I0) (2)
本実施形態の酸窒化チタン膜を製造するために、先ず、エポキシ樹脂(a)と、上述した式(1)で表されるアミノ基を含むシラン化合物(b)と、シリコンアルコキシド又はその縮合物(c)と、第1有機溶媒とを用意する。
本実施形態のエポキシ樹脂(a)としては、ビスフェノールA型又はビスフェノールF型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、ポリグリコール型エポキシ樹脂等が例示される。このエポキシ樹脂は単独で使用することも、また2種以上で併用することもできる。これらのエポキシ樹脂は酸窒化チタン粉末とシラン化合物とが均一に混ざり合うことができるので、好ましい。その中でもビスフェノールA型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が、製造された酸窒化チタン膜に対して、隠蔽力を維持しながら、耐候性を付与しやすいため、特に好ましい。
本実施形態のアミノ基を含むシラン化合物(b)としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(上述した式(1)のn=3)、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(同じくn=3)、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン(同じくn=3)、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン(同じくn=2)、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(同じくn=3)等が例示される。このシラン化合物は単独で使用することも、また2種以上で併用することもできる。これらのシラン化合物はエポキシ樹脂のエポキシ基との反応により、化学的結合が生じるため、好ましい。その中でもγ−アミノプロピルトリメトキシシランが、製造された酸窒化チタン膜に対して、隠蔽力を維持しながら、耐候性を付与しやすいため、特に好ましい。
本実施形態のシリコンアルコキシド又はその縮合物(c)としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン等の4つのアルコキシ基を有するテトラアルコキシシラン類、及びモノメチルトリアルコシキシラン、モノフェニルトリアルコキシシラン等の3つのアルコキシ基と1つのアルキル基又はアリ−ル基を有するトリアルコキシシラン類、もしくはそれらの混合物、更にはこれらのシリコンアルコキシドを部分加水分解・重縮合させたもののうち、第1有機溶媒に溶解もしくは均質懸濁するものが用いられる。このシリコンアルコキシドとその縮合物(c)は単独で使用することも、また2種以上で併用することもできる。
本実施形態のシリコンアルコキシドの縮合物の平均重合度としては2〜10が好ましく、予め調製したものを用いても、又は均質な混合液中で調製してもよい。またシリコンアルコキシド又はその縮合物(c)の沸点が第1有機溶媒の沸点より高いものを用いることは特に好ましい。
またシリコンアルコキシド又はその縮合物(c)として、第1有機溶媒を分散溶媒とするシリカゾルを用いることも可能である。具体的には、例えば、メタノ−ル、メチルセルソルブ等に分散されたシリカゾルが挙げられる。本実施形態では、シリコンアルコキシド又はその縮合物(c)とともに、例えば、チタンアルコキシド、アルミニウムアルコシキド、ジルコニウムアルコシキドなどの他の金属アルコキシドを少量用いてもよい。
本実施形態の第1有機溶媒としては、エポキシ樹脂(a)とアミノ基を含むシラン化合物(b)とシリコンアルコキシド又はその縮合物(c)とともに溶解もしくは均質懸濁することができるものが用いられる。また、第1有機溶媒の沸点が、シリコンアルコキシド又はその縮合物(c)の沸点より低いものは特に好ましく用いられる。
本実施形態の第1有機溶媒としては、メタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、シクロヘキサノ−ル、フェノ−ル、エチレングリコ−ル、アセトン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、キノリン、アニソ−ル、ジメチルエ−テル、ジメチルスルホオキシド、メチルセルソルブ、3−メトキシ−3−メチルブタノールなどが用いられる。
次に、用意したエポキシ樹脂(a)と、上述した式(1)で表されるアミノ基を含むシラン化合物(b)と、シリコンアルコキシド又はその縮合物(c)と、第1有機溶媒とを混合して混合液を調製する。エポキシ樹脂(a)を含むことにより、製造された酸窒化チタン膜には耐湿性と耐光性の効果を生じる。またアミノ基を含むシラン化合物を含むことにより、製造された酸窒化チタン膜にはエポキシ樹脂との反応効果と、シリコンアルコキシドとの結合効果を生じる。更にシリコンアルコキシド又はその縮合物を含むことにより、製造された酸窒化チタン膜には電気的絶縁性の効果を生じる。エポキシ樹脂(a)とアミノ基を含むシラン化合物(b)とを混合する比率は、質量比で(b)/(a)=0.1〜3.0の割合である。(b)/(a)が0.1未満であると、エポキシ樹脂中のエポキシ基とアミノ基を含むシランの反応が少ないため、フリーのエポキシ樹脂が多く存在し、このため製造された酸窒化チタン膜の表面抵抗率とOD値を両立することができない。即ち、製造された酸窒化チタン膜の表面抵抗率が5×1013Ω/cm2以上に高めようとすると、膜厚1.0μm当りのOD値が2.3以下となる。(b)/(a)が3.0を超えると、フリーのアミノシランが多く存在し、このため製造された酸窒化チタン膜をUV照射した後の膜の表面抵抗率が5×1013Ω/cm2以上にならず、耐光性に劣る。また膜の表面に凝集粒が発生し、膜の外観が不良になる。(b)/(a)は0.2〜2.5であることが好ましい。
またエポキシ樹脂(a)とシリコンアルコキシド又はその縮合物(c)とを混合する比率は、質量比で(c)/(a)=0.01〜1.5の割合である。(c)/(a)が0.01未満であると、シリコンアルコキシドがエポキシ樹脂に対して少な過ぎるため、製造された酸窒化チタン膜の表面抵抗率とOD値を両立することができない。即ち、製造された酸窒化チタン膜の表面抵抗率が5×1013Ω/cm2以上に高めようとすると、膜厚1.0μm当りのOD値が2.3以下となる。また膜の外観も不良になる。(c)/(a)が1.5を超えると、シリコンアルコキシドがエポキシ樹脂に対して多過ぎるため、即ち金属酸化物の割合が高くなり過ぎるため、製造された酸窒化チタン膜にUV光を照射した後の膜の表面抵抗率が5×1013Ω/cm2以上にならず、耐光性に劣る。また膜の外観も不良になる。(c)/(a)は0.02〜1.3であることが好ましい。また第1有機溶媒は、上記(a)、(b)及び(c)の固形分100質量%に対して50質量%〜500質量%加えることが好ましい。
得られた混合液に、上述した酸窒化チタン粉末(d)を添加混合して分散液を調製する。添加する比率は、質量比で((a)+(b)+(c))/(d)=0.01〜0.25の割合である。((a)+(b)+(c))/(d)が0.01未満であると、製造された酸窒化チタン膜の表面抵抗率とOD値を両立することができない。即ち、製造された酸窒化チタン膜の表面抵抗率が5×1013Ω/cm2以上に高めようとすると、膜厚1.0μm当りのOD値が2.3以下となる。また膜の外観も不良になる。((a)+(b)+(c))/(d)が0.25を超えると、製造された酸窒化チタン膜の膜厚1.0μm当りのOD値が2.3以下となる。また膜の外観も不良になる。((a)+(b)+(c))/(d)は0.02〜0.23であることが好ましい。
調製した分散液にバインダ(e)と第2有機溶媒とを質量比で(d)/((a)+(b)+(c)+(d)+(e))=0.5〜0.8の割合で混合した液組成物を調製する。第2有機溶媒は、各成分が良好に分散した液組成物になるように、また基材への液組成物の塗工性を考慮して、液組成物100質量%に対して10質量%〜95質量%加えることが好ましい。第2有機溶媒の添加量が上記範囲外であると、製造された酸窒化チタン膜の外観が不良になり、OD値も低くなる。高いOD値を得るためには、酸窒化チタン粉末(d)を高濃度で添加する必要がある。酸窒化チタン粉末(d)は液組成物中で良好に分散している必要がある。
バインダ(e)としては、エポキシ樹脂又はアクリル樹脂が好ましい。また第2有機溶媒としては、メタノ−ル、エタノ−ル、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、フェノール、キシレン、トルエン、酢酸2−メトキシ−1−メチルエチル(以下、PGMEAという。)等が挙げられる。調製した液組成物を基材上に塗布乾燥した後、第1及び第2有機溶媒を除去することにより酸窒化チタン膜が得られる。基材としては、ガラス、ポリカーボネート、ポリエステル、アクリル、芳香族アミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等が挙げられる。また第1及び第2有機溶媒を除去する方法としては、例えば乾燥機等を用いて乾燥する方法が挙げられる。
[製造された酸窒化チタン膜]
本実施形態の製造された酸窒化チタン膜は、温度60℃、湿度90%の条件で100時間高温耐湿試験を行ったときに、試験前と試験後の膜の表面抵抗率がそれぞれ5×1013Ω/cm2以上であり、かつ540J/cm2のUV光を照射した後の膜の表面抵抗率が5×1013Ω/cm2以上であり、膜厚1.0μm当りのOD値が2.4以上である特徴を有する。
本実施形態の製造された酸窒化チタン膜は、温度60℃、湿度90%の条件で100時間高温耐湿試験を行ったときに、試験前と試験後の膜の表面抵抗率がそれぞれ5×1013Ω/cm2以上であり、かつ540J/cm2のUV光を照射した後の膜の表面抵抗率が5×1013Ω/cm2以上であり、膜厚1.0μm当りのOD値が2.4以上である特徴を有する。
〔酸窒化チタン膜を黒色パターニング膜として形成する方法〕
本実施形態の酸窒化チタン膜をブラックマトリックスに代表されるパターニング膜として形成する方法について述べる。先ず、上述した液組成物に感光性樹脂を含ませて黒色感光性組成物に調製する。次いでこの黒色感光性組成物を基板上に塗布した後、プリベークを行って溶剤を蒸発させて、フォトレジスト膜を形成する。次にこのフォトレジスト膜にフォトマスクを介して所定のパターン形状に露光したのち、アルカリ現像液を用いて現像して、フォトレジスト膜の未露光部を溶解除去し、その後好ましくはポストベークを行うことにより、所定の黒色パターニング膜が形成される。
本実施形態の酸窒化チタン膜をブラックマトリックスに代表されるパターニング膜として形成する方法について述べる。先ず、上述した液組成物に感光性樹脂を含ませて黒色感光性組成物に調製する。次いでこの黒色感光性組成物を基板上に塗布した後、プリベークを行って溶剤を蒸発させて、フォトレジスト膜を形成する。次にこのフォトレジスト膜にフォトマスクを介して所定のパターン形状に露光したのち、アルカリ現像液を用いて現像して、フォトレジスト膜の未露光部を溶解除去し、その後好ましくはポストベークを行うことにより、所定の黒色パターニング膜が形成される。
上記基板としては、例えば、ガラス、シリコン、ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等を挙げることができる。また上記基板には、所望により、シランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理を施しておくこともできる。黒色感光性組成物を基板に塗布する際には、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布法を採用することができる。塗布厚さは、乾燥後の膜厚として、通常、0.1μm〜10μm、好ましくは0.2μm〜7.0μm、更に好ましくは0.5μm〜6.0μmである。パターニング膜を形成する際に使用される放射線としては、本実施形態では、波長が250nm〜370nmの範囲にある放射線が好ましい。放射線の照射エネルギー量は、好ましくは10J/m2〜10,000J/m2 である。また上記アルカリ現像液としては、例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等の水溶液が好ましい。上記アルカリ現像液には、例えばメタノール、エタノール等の水溶性有機溶剤や界面活性剤等を適量添加することもできる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗する。現像処理法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができ、現像条件は、常温で5〜300秒が好ましい。このようにして形成されたパターニング膜は、高精細の液晶、有機EL用ブラックマトリックス材、イメージセンサー用遮光材等の光学部材用遮光材、遮光フィルター、IRカットフィルター等に好適に用いられる。
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
(実施例及び比較例で用いるエポキシ樹脂(a))
実施例1〜17及び比較例1、3〜10において使用されるエポキシ樹脂(a)を表1に示す。
実施例1〜17及び比較例1、3〜10において使用されるエポキシ樹脂(a)を表1に示す。
(実施例及び比較例で用いるアミノ基を含むシラン化合物(b))
実施例1〜17及び比較例1、3〜10において使用されるアミノ基を含むシラン化合物(b)を表2に示す。
実施例1〜17及び比較例1、3〜10において使用されるアミノ基を含むシラン化合物(b)を表2に示す。
(実施例及び比較例で用いるシリコンアルコキシド又はその縮合物(c))
実施例1〜17及び比較例1、3〜10において使用されるシリコンアルコキシド又はその縮合物(c)を表3に示す。
実施例1〜17及び比較例1、3〜10において使用されるシリコンアルコキシド又はその縮合物(c)を表3に示す。
(実施例及び比較例で用いる酸窒化チタン粉末(d))
実施例1〜17及び比較例1〜10において使用される酸窒化チタン粉末(d)を表4に示す。酸窒化チタン粉末(d-1)は、特許文献2の比較例1に記載された酸窒化チタン粉末、即ち特許文献2の実施例1に記載された酸窒化チタンの母体粉末である。一方、酸窒化チタン粉末(d-2)は、特許文献2の実施例1に記載されたシリカ膜が被覆された酸窒化チタン粉末である。
実施例1〜17及び比較例1〜10において使用される酸窒化チタン粉末(d)を表4に示す。酸窒化チタン粉末(d-1)は、特許文献2の比較例1に記載された酸窒化チタン粉末、即ち特許文献2の実施例1に記載された酸窒化チタンの母体粉末である。一方、酸窒化チタン粉末(d-2)は、特許文献2の実施例1に記載されたシリカ膜が被覆された酸窒化チタン粉末である。
(実施例及び比較例で用いるバインダ(e))
実施例1〜17及び比較例1〜10において使用されるバインダ(e)を表5に示す。
実施例1〜17及び比較例1〜10において使用されるバインダ(e)を表5に示す。
<実施例1>
酸窒化チタン粉末として、特許文献2の比較例1に記載された酸窒化チタン粉末(特許文献2の実施例1に記載された酸窒化チタンの粉末母体と同じ粉末)を用意した。即ち、先ず、BET法により測定される比表面積が10m2/gの白色酸化チタン粉末(TiO2)をアンモニアガス(還元ガス)により還元して比表面積が40m2/gの酸窒化チタン粉末(d)を得た。ここで、還元反応時間(白色酸化チタン粉末のアンモニアガスへの接触時間)を120分とした。この酸窒化チタン粉末は、化学式:TiNXOY(但し、X=0.3,Y=0.9)で表される。
酸窒化チタン粉末として、特許文献2の比較例1に記載された酸窒化チタン粉末(特許文献2の実施例1に記載された酸窒化チタンの粉末母体と同じ粉末)を用意した。即ち、先ず、BET法により測定される比表面積が10m2/gの白色酸化チタン粉末(TiO2)をアンモニアガス(還元ガス)により還元して比表面積が40m2/gの酸窒化チタン粉末(d)を得た。ここで、還元反応時間(白色酸化チタン粉末のアンモニアガスへの接触時間)を120分とした。この酸窒化チタン粉末は、化学式:TiNXOY(但し、X=0.3,Y=0.9)で表される。
次いで、アミノ基を含むシラン化合物(b)として3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、KBM−903)2.0gに、シリコンアルコキシド(c)として平均重合度が4のテトラメトキシシラン(三菱ケミカル社製、MKシリケート51)1.0gと、有機溶媒として3−メトキシ−3−メチルブタノール150.0gとを混合し、更にエポキシ樹脂(a)としてビスフェノールA型のエポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、jER828)10.0gを添加して、室温で10分間撹拌混合して混合液を用意した。この混合液では、(b)/(a)=0.2、(c)/(a)=0.1であった。
次に、この混合液に、上記得られた酸窒化チタン粉末(d)130gを添加して、室温で10分間撹拌した後、ビーズミル(アシザワ社製、ラボスターミニ)でビースミルの出口温度を40℃に維持して、酸窒化チタン粉末の分散液を得た。この分散液では、((a)+(b)+(c))/(d)=0.1であった。この分散液の総固形分は48.6質量%であり、酸窒化チタン濃度は44.3質量%であった。一方、バインダ(e)としてのエポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、jER828)73.6gと第2有機溶媒としてのPGMEA217gとを混合してバインダ液を調製した。上記分散液に上記バインダ液を添加し、室温にて10分間混合して液組成物を調製した。ここで、(d)/((a)+(b)+(c)+(d)+(e))は質量比で0.6であった。たて100mm、よこ100mm、厚さ1mmのガラス基板上に、得られた液組成物1gをスピンコーターで1500rpm、90秒間スピンコーティングした後、大気雰囲気下、塗膜を120℃で30分間加熱して、酸窒化チタン膜を得た。
<実施例2〜17及び比較例3〜10>
実施例2〜17及び比較例3〜10では、実施例1と同一の酸窒化チタン粉末を用いた。以下の表6に示すように、エポキシ樹脂(a)、アミノ基を含むシラン化合物(b)、シリコンアルコキシド又はその縮合物(c)及びバインダ(e)の種類を実施例1と同一にするか、又は変更し、各質量比を実施例1と同一にするか、又は変更した。それ以外は、実施例1と同様にして実施例2〜17及び比較例3〜10の酸窒化チタン膜を得た。
実施例2〜17及び比較例3〜10では、実施例1と同一の酸窒化チタン粉末を用いた。以下の表6に示すように、エポキシ樹脂(a)、アミノ基を含むシラン化合物(b)、シリコンアルコキシド又はその縮合物(c)及びバインダ(e)の種類を実施例1と同一にするか、又は変更し、各質量比を実施例1と同一にするか、又は変更した。それ以外は、実施例1と同様にして実施例2〜17及び比較例3〜10の酸窒化チタン膜を得た。
<比較例1>
酸窒化チタン粉末として、特許文献2の実施例1に記載されたシリカ膜により被覆された酸窒化チタン粉末を用意した。即ち、先ず、BET法により測定される比表面積が10m2/gの白色酸化チタン粉末(TiO2)をアンモニアガス(還元ガス)により還元して酸窒化チタンの粉末母体を得た。ここで、還元反応時間(白色酸化チタン粉末のアンモニアガスへの接触時間)を120分とした。この酸窒化チタンの粉末母体は、化学式:TiNXOY(但し、X=0.3,Y=0.9)で表される。この粉末母体0.1モルに対しアルコールとしてエタノールを12モル添加し、粉末母体をエタノールに分散させて、ビーズミルにより湿式粉砕することにより、平均一次粒径150nmの粉末母体の分散液を得た。次いでこの粉末母体の分散液に、濃度調整のためのエタノールを6モル添加した後、シリカ膜を形成するためのシリカ源としてオルトケイ酸テトラメチルを1×10-2モル添加した。次にこのオルトケイ酸テトラメチルが添加された粉末母体の分散液にアルカリ源(反応開始剤)として水酸化ナトリウムを1×10-3モル添加して分散液での反応を開始した。更にこの分散液を遠心分離器にかけた後に、分散液をイオン交換樹脂製のフィルタに通すことにより洗浄し乾燥した。その後、窒素ガス雰囲気中で350℃に5時間保持して焼成することにより、酸窒化チタンの粉末母体が厚さ2.56nmのシリカ膜により被覆された酸窒化チタン粉末を得た。
得られた酸窒化チタン粉末100gとPGMEA300gを混合し、ビーズミルで分散して酸窒化チタン粉末の分散液を得た。得られた分散液400gに、バインダ(e)としてエポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、jER828)66.6gを添加して、10分間室温で混合し、液組成物を得た。ここで、(d)/((a)+(b)+(c)+(d)+(e))は質量比で0.6であった。実施例1と同一のガラス基板上に、得られた液組成物1gを実施例1と同じ条件でスピンコーティングした後、加熱して、酸窒化チタン膜を得た。
酸窒化チタン粉末として、特許文献2の実施例1に記載されたシリカ膜により被覆された酸窒化チタン粉末を用意した。即ち、先ず、BET法により測定される比表面積が10m2/gの白色酸化チタン粉末(TiO2)をアンモニアガス(還元ガス)により還元して酸窒化チタンの粉末母体を得た。ここで、還元反応時間(白色酸化チタン粉末のアンモニアガスへの接触時間)を120分とした。この酸窒化チタンの粉末母体は、化学式:TiNXOY(但し、X=0.3,Y=0.9)で表される。この粉末母体0.1モルに対しアルコールとしてエタノールを12モル添加し、粉末母体をエタノールに分散させて、ビーズミルにより湿式粉砕することにより、平均一次粒径150nmの粉末母体の分散液を得た。次いでこの粉末母体の分散液に、濃度調整のためのエタノールを6モル添加した後、シリカ膜を形成するためのシリカ源としてオルトケイ酸テトラメチルを1×10-2モル添加した。次にこのオルトケイ酸テトラメチルが添加された粉末母体の分散液にアルカリ源(反応開始剤)として水酸化ナトリウムを1×10-3モル添加して分散液での反応を開始した。更にこの分散液を遠心分離器にかけた後に、分散液をイオン交換樹脂製のフィルタに通すことにより洗浄し乾燥した。その後、窒素ガス雰囲気中で350℃に5時間保持して焼成することにより、酸窒化チタンの粉末母体が厚さ2.56nmのシリカ膜により被覆された酸窒化チタン粉末を得た。
得られた酸窒化チタン粉末100gとPGMEA300gを混合し、ビーズミルで分散して酸窒化チタン粉末の分散液を得た。得られた分散液400gに、バインダ(e)としてエポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、jER828)66.6gを添加して、10分間室温で混合し、液組成物を得た。ここで、(d)/((a)+(b)+(c)+(d)+(e))は質量比で0.6であった。実施例1と同一のガラス基板上に、得られた液組成物1gを実施例1と同じ条件でスピンコーティングした後、加熱して、酸窒化チタン膜を得た。
<比較例2>
酸窒化チタン粉末として、特許文献2の比較例1に記載された酸窒化チタン粉末(特許文献2の実施例1に記載された酸窒化チタンの粉末母体と同じ粉末)を用意した。即ち、先ず、BET法により測定される比表面積が10m2/gの白色酸化チタン粉末(TiO2)をアンモニアガス(還元ガス)により還元して酸窒化チタン粉末を得た。ここで、還元反応時間(白色酸化チタン粉末のアンモニアガスへの接触時間)を120分とした。この酸窒化チタン粉末は、化学式:TiNXOY(但し、X=0.3,Y=0.9)で表される。得られた酸窒化チタン粉末100gとPGMEA300gを混合し、ビーズミルで分散して酸窒化チタン粉末の分散液を得た。得られた分散液400gに、バインダ(e)としてエポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、jER828)66.6gを添加して、10分間室温で混合し、液組成物を得た。ここで、(d)/((a)+(b)+(c)+(d)+(e))は質量比で0.6であった。実施例1と同一のガラス基板上に、得られた液組成物1gを実施例1と同じ条件でスピンコーティングした後、加熱して、酸窒化チタン膜を得た。
酸窒化チタン粉末として、特許文献2の比較例1に記載された酸窒化チタン粉末(特許文献2の実施例1に記載された酸窒化チタンの粉末母体と同じ粉末)を用意した。即ち、先ず、BET法により測定される比表面積が10m2/gの白色酸化チタン粉末(TiO2)をアンモニアガス(還元ガス)により還元して酸窒化チタン粉末を得た。ここで、還元反応時間(白色酸化チタン粉末のアンモニアガスへの接触時間)を120分とした。この酸窒化チタン粉末は、化学式:TiNXOY(但し、X=0.3,Y=0.9)で表される。得られた酸窒化チタン粉末100gとPGMEA300gを混合し、ビーズミルで分散して酸窒化チタン粉末の分散液を得た。得られた分散液400gに、バインダ(e)としてエポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、jER828)66.6gを添加して、10分間室温で混合し、液組成物を得た。ここで、(d)/((a)+(b)+(c)+(d)+(e))は質量比で0.6であった。実施例1と同一のガラス基板上に、得られた液組成物1gを実施例1と同じ条件でスピンコーティングした後、加熱して、酸窒化チタン膜を得た。
<比較試験と評価>
実施例1〜17、比較例1〜10で得られた酸窒化チタン膜をそれぞれ試料として、以下に詳述する方法で、(1) 膜厚0.1μmのときのOD値(以下、単にOD値ということもある。)、(2) 膜の外観、(3) 高温耐湿試験前後の膜の表面抵抗率及び (4) UV光を照射した後の膜の表面抵抗率をそれぞれ測定又は算出した。それぞれの測定結果又は算出結果を以下の表7に示す。
実施例1〜17、比較例1〜10で得られた酸窒化チタン膜をそれぞれ試料として、以下に詳述する方法で、(1) 膜厚0.1μmのときのOD値(以下、単にOD値ということもある。)、(2) 膜の外観、(3) 高温耐湿試験前後の膜の表面抵抗率及び (4) UV光を照射した後の膜の表面抵抗率をそれぞれ測定又は算出した。それぞれの測定結果又は算出結果を以下の表7に示す。
(1) OD値:光学濃度計(361TVisual;X−Rite社製)を用いて、遮光性OD値を測定した。また走査型レーザー顕微鏡(LEXT OLS4500:オリンパス社製)にて、膜厚を測定することで、1μm当りのOD値を算出した。
(2) 膜の外観:黙視により酸窒化チタン膜の表面を観察し、膜表面に凝集粒がなく平滑である膜を「良好」とし、膜表面に凝集粒が存在する膜を「不良」と判定した。
(3) 高温耐湿試験前後の膜の表面抵抗率:試料を温度60℃、湿度90%に設定した恒温恒湿器に100時間入れ、高温耐湿試験を行った。試験前と試験後の各膜の表面抵抗率は三菱ケミカルアナリテック社製ハイレスタ(型番:MCP−HT800)を用いて、電圧1000Vで測定した。
(4) UV光を照射した後の膜の表面抵抗率:岩崎電機社製のSUV−W161を用いて、150mW/cm2のUV光を試料に照射した後、上記(3)と同様にして、UV光を試料に照射した後の膜の表面抵抗率を算出した。
表7から明らかなように、比較例1の試料は、エポキシ樹脂(a)、アミノ基含有シラン化合物(b)、シリコンアルコキシド又はその縮合物(c)、バインダ(e)等と混合することなく製造した酸窒化チタン膜であったため、高温耐湿試験前後の膜の表面抵抗率(以下、第1表面抵抗率という。)がそれぞれ5.8×1013Ω/cm2及び9.6×1012Ω/cm2であった。また540J/cm2のUV光を照射した後の膜の表面抵抗率(以下、第2表面抵抗率という。)が7.7×1012Ω/cm2であり、耐湿性及び耐光性に劣っていた。OD値は3.4であり、隠蔽性は良好であり、膜の外観も良好であった。
比較例2では、用いた試料が実施例1と同一ではあるが、エポキシ樹脂(a)、アミノ基含有シラン化合物(b)、シリコンアルコキシド又はその縮合物(c)と混合することなく製造した酸窒化チタン膜であったため、膜の外観は良好であり、OD値は3.5と高かった。しかしながら、高温耐湿試験前の第1表面抵抗率が5.8×1012Ω/cm2と低く、高温耐湿試験後の第1表面抵抗率が6.6×1011Ω/cm2であり、また第2表面抵抗率が3.7×1011Ω/cm2であり、いずれの表面抵抗率も低く、耐湿性及び耐光性に劣っていた。
比較例3では、(b)/(a)が0.05と低く、エポキシ樹脂に比べてアミノ基含有シラン化合物が少な過ぎたため、酸窒化チタン膜中に未反応のエポキシ樹脂が多く存在し、膜の外観が不良であって、OD値が2.1と低く、高温耐湿試験前の第1表面抵抗率が4.8×1013Ω/cm2であり、また高温耐湿試験後の第1表面抵抗率が6.7×1012Ω/cm2であった。また第2表面抵抗率が2.9×1013Ω/cm2であった。この結果、いずれの表面抵抗率も低く、耐湿性及び耐光性に劣っていた。
比較例4では、(b)/(a)が3.3と高く、エポキシ樹脂に比べてアミノ基含有シラン化合物が多過ぎたため、表面処理された酸窒化チタン粉末中に未反応のアミノ基含有シランが多く存在し、高温耐湿試験前後の第1表面抵抗率がともに9.6×1013Ω/cm2であって、耐湿性は良好であったが、フリーのアミノシランが多く、エポキシ樹脂の比率が低かったため、OD値が2.5と高いものの、第2表面抵抗率が2.9×1013Ω/cm2となり、耐光性に劣っていた。膜の外観は良好であった。
比較例5では、(c)/(a)が0.005と低く、エポキシ樹脂に比べてシリコンアルコキシドが少な過ぎたため、膜の外観が不良であって、OD値が2.1と低く、高温耐湿試験前の第1表面抵抗率が4.8×1013Ω/cm2であり、また高温耐湿試験後の第1表面抵抗率が7.7×1012Ω/cm2であった。また第2表面抵抗率が2.9×1013Ω/cm2であった。この結果、いずれの表面抵抗率も低く、耐湿性及び耐光性に劣っていた。
比較例6では、(c)/(a)が1.8と高く、エポキシ樹脂に比べてシリコンアルコキシドが多過ぎたため、高温耐湿試験前後の第1表面抵抗率がともに1.9×1014Ω/cm2であって、耐湿性は良好であったが、シリコンアルコキシドの比率が高いことによる金属酸化物の比率が高くなったため、OD値は2.3と低かった。また第2表面抵抗率が3.8×1013Ω/cm2となり、耐光性に劣っていた。膜の外観は良好であった。
比較例7では、((a)+(b)+(c))/(d)が0.005と低く、酸窒化チタン粉末に対して他の成分が少な過ぎ、酸窒化チタン膜の改質効果がなく、膜の外観は不良であって、OD値が2.1と低く、第1及び第2表面抵抗率が5×1013Ω/cm2以上にならず、耐湿性及び耐光性に劣っていた。
比較例8は、((a)+(b)+(c))/(d)が0.3と高く、酸窒化チタン粉末に対して他の成分が多過ぎたため、第1及び第2表面抵抗率が5×1013Ω/cm2以上となり、耐湿性及び耐光性に優れていたが、OD値が2.1と低かった。膜の外観は良好であった。
比較例9は、(d)/((a)+(b)+(c)+(d)+(e))が0.45と低く、膜中の酸窒化チタン成分が低いため、第1及び第2表面抵抗率が5×1013Ω/cm2以上となり、耐湿性及び耐光性に優れていたが、OD値は2.3と低く、隠蔽性に劣っていた。膜の外観は良好であった。
比較例10は、(d)/((a)+(b)+(c)+(d)+(e))が0.85と高く、膜中の酸窒化チタン成分が高過ぎたため、チタン成分の密着性が悪かった。これにより、第1及び第2表面抵抗率が5×1013Ω/cm2以上となり、耐湿性及び耐光性に優れていたが、OD値が2.1と低く、また膜の外観が不良であった。
これに対して、実施例1〜17の試料は、本発明の第1の観点の要件を満たしているため、膜厚1.0μm当りのOD値が2.4以上であって可視光の遮光性能が高く、紫外線を透過するためパターニングに有利であることに加え、第1及び第2表面抵抗率は5×1013Ω/cm2以上であり、耐光性及び耐湿性の双方に優れ、耐候性を有し、また膜の外観も良好であることが判った。
本発明の酸窒化チタン膜は、高精細の液晶、有機EL用ブラックマトリックス材、イメージセンサー用遮光材等の光学部材用遮光材、遮光フィルター、IRカットフィルター等に利用することができる。
Claims (5)
- 酸窒化チタン膜を温度60℃、湿度90%の条件で100時間高温耐湿試験を行ったときに、試験前と試験後の膜の表面抵抗率がそれぞれ5×1013Ω/cm2以上であり、かつ540J/cm2のUV光を照射した後の膜の表面抵抗率が5×1013Ω/cm2以上であり、膜厚1.0μm当りのOD値が2.4以上であることを特徴とする酸窒化チタン膜。
- エポキシ樹脂(a)と、下記式(1)で表されるアミノ基を含むシラン化合物(b)と、シリコンアルコキシド又はその縮合物(c)と、第1有機溶媒とを質量比で(b)/(a)=0.1〜3.0及び(c)/(a)=0.01〜1.5の割合で混合した混合液に、酸窒化チタン粉末(d)を質量比で((a)+(b)+(c))/(d)=0.01〜0.25の割合で添加して分散液を調製し、前記分散液にバインダ(e)と第2有機溶媒とを質量比で(d)/((a)+(b)+(c)+(d)+(e))=0.5〜0.8の割合で混合した液組成物を調製し、前記液組成物を基材上に塗布乾燥し前記第1及び第2有機溶媒を除去して酸窒化チタン膜を製造する方法。
R(4-n)−Si−(OR’)n (1)
但し、式中、Rはアミノ基含有の有機基を表し、R’はメチル基、エチル基又はプロピル基を表し、nは1〜3から選択される整数を表す。 - 前記シラン化合物(b)が、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン及びN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランからなる群より選択される少なくとも1種のシラン化合物である、請求項2記載の製造方法。
- 前記エポキシ樹脂(a)が、ビスフェノールA型又はビスフェノールF型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂及びポリグリコール型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂である、請求項2記載の製造方法。
- 前記バインダ(e)がエポキシ樹脂又はアクリル樹脂である請求項2記載の製造方法。
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