以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである
本発明の実施形態を説明する前に本発明が適用される一例としての操舵装置の構成、及び電動パワーステアリング装置の基本的な構成について、図1〜図8を用いて簡単に説明する。
まず、自動車の前輪を操舵するための操舵装置について説明する。操舵装置1は図1に示すように構成されている。図示しないステアリングホイールに連結されたステアリングシャフト2の下端にはピニオン3が設けられ、このピニオン3は車体左右方向へ長いラック軸と噛み合っている。このラック軸の両端には前輪を左右方向へ操舵するためのタイロッド5が連結されており、ラック軸はラックハウジング4に覆われている。そして、ラックハウジング4とタイロッド5との間にはゴムブーツ6が設けられている。
ステアリングホイールを回動操作する際のトルクを補助するため、電動パワーステアリング装置7が設けられている。即ち、ステアリングシャフト2の回動方向と回動トルクとを検出するトルクセンサ8、舵角センサ9が設けられ、トルクセンサ8の検出値に基づいてラック軸に減速ギヤ部10を介して操舵補助力を付与する電動モータ部11と、電動モータ部11に隣接して配置された、電動モータを制御する電子制御ユニット12とが設けられている。また、電動パワーステアリング装置7の電動モータ部11は、出力軸側の外周部の3箇所が図示しないボルトを介して減速ギヤ部10に接続され、電動モータ11部の出力軸とは反対側に電子制御ユニット12が設けられている。
電動パワーステアリング装置7においては、ステアリングホイールが操作されることによりステアリングシャフト2がいずれかの方向へ回動操作されると、このステアリングシャフト2の回動方向と回動トルクとをトルクセンサ8が検出し、この検出値に基づいて電子制御ユニット12の制御回路部が電動モータの駆動操作量を演算する。
この演算された駆動操作量に基づいて電力変換回路部のパワースイッチング素子により電動モータが駆動され、電動モータの出力軸はステアリングシャフト2の操作方向と同じ方向へ駆動するように回動される。出力軸の回動は、図示しないピニオンから減速ギヤ部10を介してラック軸へ伝達され、自動車が操舵される。これらの構成、作用は既によく知られているので、これ以上の説明は省略する。
図2は電動パワーステアリング装置7を示しているが、この電動パワーステアリング装置7は、図1に示す電動パワーステアリング装置7の電子制御ユニット12の構成が異なっているが、機能としては同じである。
次に、電動パワーステアリング装置の構成について、図2〜図8を用いて簡単に説明する。ただ、図2〜図8に示す電動パワーステアリング装置は、本願発明の特徴を示すものではなく、電動パワーステアリング装置の構成をおおまかに説明するためのものである。
図2は電動パワーステアリング装置の構成部品を分解して斜め方向から見た図面であり、図3〜図8は各構成部品の組み立て順序にしたがって、各構成部品を組み付けていった状態を示す図面である。したがって、以下の説明では、各図面を適宜引用しながら説明を行うものとする。
図2に電動パワーステアリング装置7の分解斜視図を示している。図2に示すように、電動パワーステアリング装置を構成する電動モータ部11は、アルミニウム、或いはアルミ合金等のアルミ系金属から作られた筒部を有するモータハウジング13及びこれに収納された図示しない電動モータとから構成され、電子制御ユニット12は、モータハウジング13の軸方向の出力軸とは反対側に配置された、アルミニウム、或いはアルミ合金等のアルミ系金属、或いは鉄系の金属で作られた金属カバー14及びこれに収納された電子制御部ECから構成されている。
モータハウジング13と金属カバー14は、その対向端面に形成された外周方向の固定領域部において、加締め固定やボルト固定によって一体的に固定される。金属カバー14の内部に収納された電子制御部ECは、必要な電源を生成する電源回路部や、電動モータ部11の電動モータを駆動制御するMOSFET、或いはIGBT等からなるパワースイッチング素子を有する電力変換回路や、このパワースイッチング素子を制御する制御回路部からなり、パワースイッチング素子の出力端子と電動モータのコイル入力端子とはバスバーを介して電気的に接続されている。
モータハウジング13とは反対側の金属カバー14の端面には、金属カバー14に形成した孔部からコネクタ端子組立体19が露出している。金属カバー14は、モータハウジング13の端面側に固定された電子制御部ECの全てと、電子制御部ECを外部の機器と接続するコネクタ端子組立体19の一部を覆うように形成され、電子制御部ECを機械的、電気的に保護するようになっている。
コネクタ端子組立体19は、合成樹脂から形成されている樹脂製コネクタであり、コネクタ端子組立体19と金属カバー14は、組み立て状態では液密的に係合されている。例えば、シリコン製のシールリングを介して両者が圧接係合され、これによって液密構造を確保することができる。或いは、コネクタ端子組立体13の表面に金属カバーの端面を収納する溝を形成し、この溝に液状シール剤を充填して金属カバーの端面を収納することで液密を確保することができる。
また、コネクタ端子組立体19は、モータハウジング13に形成した固定部に固定ねじによって固定されている。コネクタ端子組立体19には電力供給用のコネクタ端子形成部、検出センサ用のコネクタ端子形成部、制御状態を外部機器に送出する制御状態送出用のコネクタ端子形成部を備えている。
そして、金属カバー14に収納された電子制御部ECは、合成樹脂から作られた電力供給用のコネクタ端子形成部を介して電源から電力が供給され、また、検出センサ類から運転状態等の検出信号が、検出センサ用のコネクタ形成端子部を介して供給され、現在の電動パワーステアリング装置の制御状態信号が、制御状態送出用のコネクタ端子形成部を介して送出されている。
モータハウジング13には内部に円環状の鉄製のサイドヨーク(図示せず)が嵌合されており、このサイドヨーク内に電動モータ(図示せず)が収納されている。電動モータの出力部はギヤを介してラックに操舵補助力を付与している。尚、電動モータの具体的な構造は良く知られているので、ここでは説明を省略する。
モータハウジング13はアルミ合金から作られており、電動モータで発生した熱や、後述する電源回路部や電力変換回路部で発生した熱を外部大気に放出するヒートシンク部材として機能している。電動モータとモータハウジング13で電動モータ部11を構成している。
電動モータ部11の出力部の反対側のモータハウジング13の端面部15には電子制御部ECが取り付けられている。電子制御部ECは、電力変換回路部16、電源回路部17、制御回路部18、コネクタ端子組立体19から構成されている。モータハウジング13の端面部15は、モータハウジング13と一体的に形成されているが、この他に端面部15だけを別体に形成し、ねじや溶接によってモータハウジング13と一体化しても良い。
ここで、電力変換回路部16、電力変換回路部17、制御回路部18は冗長系を構成するものであり、第1電子制御部と第2電子制御部の二重系を構成している。そして、通常は第1電子制御部によって電動モータが制御、駆動されているが、第1電子制御部に異常や故障が生じると、第2電子制御部に切り換えられて電動モータが制御、駆動される。また、第1電子制御部と第2電子制御部を合せて正規の電子制御部として機能させ、一方の電子制御部に異常、故障が生じると、他方の電子制御部で半分の能力によって電動モータを制御、駆動することも可能である。この場合、電動モータの能力は半分となるが、いわゆる「パワーステアリング機能」は確保されるようになっている。
電子制御部ECは電力変換回路部16、電源回路部17、制御回路部18、コネクタ端子組立体19から構成されており、端面部15側から離れる方向に向かって、電力変換回路部16、電源回路部17、制御回路部18、コネクタ端子組立体19の順序で配置されている。
制御回路部18は電力変換回路部16のスイッチング素子を駆動する制御信号を生成するもので、マイクロコンピュータ、周辺回路等から構成されている。電源回路部17は、制御回路部18を駆動する電源及び電力変換回路部16の電源を生成するもので、コンデンサ、コイル、スイッチング素子等から構成されている。電力変換回路部16は、電動モータのコイルに流れる電力を調整するもので、3相の上下アームを構成するスイッチング素子等から構成されている。
制御回路部18と金属カバー14の間には、合成樹脂からなるコネクタ端子組立体19が設けられており、車両バッテリ(電源)や外部の図示しない他の制御装置と接続されている。もちろん、このコネクタ端子組立体19は、電力変換回路部16、電源回路部17、制御回路部18と電気的に接続されていることはいうまでもない。
金属カバー14は、電力変換回路部16、電源回路部17、制御回路部18を収納して、これらを液密的に封止する機能を備えているものであり、本実施形態では加締め固定によってモータハウジング13に固定されている。
次に、図3から図8に基づき各構成部品の構成と組み立て方法について説明する。先ず、図3はモータハウジング13の外観を示しており、図4はその軸方向断面を示している。
図3、図4において、モータハウジング13は、筒状の形態に形成されて側周面部13Aと、側周面部13Aの一端を閉塞する端面部15と、側周面部13Aの他端を閉塞する端面部37とから構成されている。本実施形態では、モータハウジング13は有底円筒状であり、側周面部13Aと端面部15は一体的に形成されている。また、端面部37は、蓋の機能を備えており、側周面部13Aに電動モータを収納した後に側周面部13Aの他端を閉塞する。
また、端面部15の全周面には環状溝部(以下、モータハウジング側環状溝部と表記する)35が設けられており、このモータハウジング側環状溝部35に、図8に示す金属カバー14の開口端(以下、金属カバー側環状先端部と表記する)が収納される。モータハウジング側環状溝部と金属カバー14の金属カバー側環状先端部の間の部分は、いわゆる液状シール剤によって液密的に接合されている。
図4にあるように、モータハウジング13の側周面部13Aの内部には、鉄心にコイル20が巻回されたステータ21が嵌合されており、このステータ21の内部に、永久磁石を埋設したロータ22が回転可能に収納されている。ロータ22には回転軸23が固定されており、一端は出力部38となり、他端は回転軸23の回転位相や回転数を検出するための回転検出部24となっている。回転検出部24には永久磁石が設けてあり、端面部15に設けた貫通孔25を貫通して外部に突き出している。そして、図示しないGMR素子等からなる感磁部によって回転軸23の回転位相や回転数を検出するようになっている。
図3に戻って、回転軸23の出力部38とは反対側に位置する端面部15の面には電力変換回路部16、電源回路部17の放熱部15A、15Bが形成されている。端面部15の四隅には、基板/コネクタ固定凸部26が一体的に植立されており、内部にねじ穴26Sが形成されている。
基板/コネクタ固定凸部26は後述する制御回路部18の基板、及びコネクタ端子組立体19を固定するために設けられている。また、後述する電力変換用放熱領域15Aから植立した基板/コネクタ固定凸部26には、これも後述する電源用放熱領域15Bと軸方向で同じ高さの基板受け部27が形成され、基板受け部27には、ねじ孔27Sが形成されている。この基板受け部27は、後述する電源回路部17を構成するガラスエポキシ基板からなる電源回路基板31を載置、固定するためのものである。
端面部15を形成している、回転軸23と直交する径方向の平面領域は、2分割されている。1つはMOSFET等のスイッチング素子よりなる電力変換回路部16が取り付けられる電力変換用放熱領域15Aを形成し、もう1つは電源回路部17が取り付けられる電源用放熱領域15Bを形成している。本実施形態では、電力変換用放熱領域15Aの方が、電源用放熱領域15Bより面積が大きく形成されている。これは、上述したように二重系を採用しているため、電力変換回路部16の設置面積を確保するためである。
そして、電力変換用放熱領域15Aと電源用放熱領域15Bは、軸方向(回転軸23が延びる方向)に向けて高さが異なる段差を有している。つまり、電源用放熱領域15Bは、電動モータの回転軸23の方向で見て、電力変換用放熱領域15Aに対して離れる方向に段差を有して形成されている。この段差は、電力変換回路部16を設置した後に電源回路部17を設置した場合に、電力変換回路部16と電源回路部17が夫々干渉しない長さに設定されている。
電力変換用放熱領域15Aには、3個の細長い矩形の突状放熱部28が形成されている。この突状放熱部28は後述する二重系の電力変換回路部16が設置されるものである。また、突状放熱部28は、電動モータの回転軸23の方向で見て電動モータから離れる方向に突出して延びている。
また、電源用放熱領域15Bは平面状であって、後述する電源回路部17が設置される。したがって、突状放熱部28は電力変換回路部16で発生した熱を端面部15に伝熱する放熱部として機能し、電源用放熱領域15Bは電源回路部17で発生した熱を端面部15に伝熱する放熱部として機能する。
次に、図5は電力変換回路部16を突条放熱部28(図3参照)に設置した状態を示している。図5にある通り、電力変換用放熱領域15Aに形成された突状放熱部28(図3参照)の上部には二重系よりなる電力変換回路部16が設置されている。電力変換回路部16を構成するスイッチング素子は金属基板(ここではアルミ系の金属を使用している)に載置され、放熱されやすく構成されている。そして、金属基板は突状放熱部28に摩擦撹拌接合によって溶着されている。
したがって、金属基板は突状放熱部28(図3参照)に強固に固定され、またスイッチング素子で発生した熱を効率良く突状放熱部28(図3参照)に伝熱させることができる。突状放熱部28(図3参照)に伝えられた熱は電力変換用放熱領域15Aに拡散され、更にモータハウジング13の側周面部13Aに伝熱されて外部に放熱される。ここで、上述した通り、電力変換回路部16の軸方向の高さは、電源用放熱領域15Bの高さより低くなっているので、後述する電源回路部17と干渉することはない。
このように、電力変換用放熱領域15Aに形成された突状放熱部28の上部に電力変換回路部16が設置されている。したがって、電力変換回路部16のスイッチング素子で発生した熱を効率良く突状放熱部28に伝熱させることができる。更に、突状放熱部28に伝えられた熱は電力変換用放熱領域15Aに拡散され、モータハウジング13の側周面部13Aに伝熱されて外部に放熱される。
次に、図6は電力変換回路部16の上から電源回路部17を設置した状態を示している。図6にある通り、電源用放熱領域15Bの上部には電源回路部17が設置されている。電源回路部17を構成するコンデンサ29やコイル30等はガラスエポキシ基板からなる電源回路基板31に載置されている。電源回路部17も二重系が採用されており、図からわかるように、夫々対称にコンデンサ29やコイル30等からなる電源回路が形成されている。尚、電源回路基板31には、電力変換回路16のスイッチング素子以外のコンデンサ等の電気素子が載置されている。
この電源回路基板31の電源用放熱領域15B(図5参照)側の面は、電源用放熱領域15Bと接触するようにして端面部15に固定されている。固定方法は、図6にあるように、基板/コネクタ固定凸部26の基板受け部27に設けられたねじ穴27Sに図示しない固定ねじによって固定されている。また、電源用放熱領域15B(図5参照)に設けられたねじ穴27Sにも図示しない固定ねじによって固定されている。
尚、電源回路部17が電源回路基板31で形成されているため、両面実装が可能である。そして、電源回路基板31の電源用放熱領域15B(図5参照)側の面には、図示しないGMR素子やこれの検出回路等からなる回転位相、回転数検出部が実装され、回転軸23(図4参照)に設けた回転検出部24(図4参照)と協働して、回転の回転位相や回転数を検出するようになっている。
このように、電源回路基板31は電源用放熱領域15B(図5参照)に接触するようにして固定されているので、電源回路部17で発生した熱を効率良く電源用放熱領域15B(図5参照)に伝熱させることができる。電源用放熱領域15B(図5参照)に伝えられた熱は、モータハウジング13の側周面部13Aに拡散して伝熱されて外部に放熱される。ここで、電源回路基板31と電源用放熱領域15B(図5参照)の間は、熱伝達性の良い接着剤、放熱グリース、放熱シートのいずれか1つを介在させることで、更に熱伝達性能を向上させることができる。
このように、電源用放熱領域15Bの上部には電源回路部17が設置されている。電源回路部17の回路素子が載置された電源回路基板31の電源用放熱領域15B側の面は、電源用放熱領域15Bと接触するようにして端面部15に固定されている。したがって、電源回路部17で発生した熱を効率良く電源用放熱領域15Bに伝熱させることができる。電源用放熱領域15Bに伝えられた熱は、モータハウジング13の側周面部13Aに拡散して伝熱されて外部に放熱される。
次に、図7は電源回路部17の上から制御回路部18を設置した状態を示している。図7にある通り、電源回路部17の上部には制御回路部18が設置されている。制御回路部18を構成するマイクロコンピュータ32や周辺回路33はガラスエポキシ基板からなる制御回路基板34に載置されている。制御回路部18も二重系が採用されており、図からわかるように、それぞれ対称にマイクロコンピュータ32や周辺回路33からなる制御回路が形成されている。尚、マイクロコンピュータ32や周辺回路33は、制御回路基板34の電源回路17側の面に設けられていても良い。
この制御回路基板34は、図7にあるように、基板/コネクタ固定凸部26(図6参照)の頂部に設けられたねじ穴26Sにコネクタ端子組立体13によって挟まれる形態で図示しない固定ねじによって固定されており、電源回路部17(図6参照)の電源回路基板31と制御回路部18の制御回路基板34の間は、図7に示す電源回路部17のコンデンサ29やコイル30等が配置される空間となっている。
電源回路部17の電源回路基板31と制御回路部18の制御回路基板34とは、折り曲げることができる可撓性の配線基板39によって電気的に接続されている。可撓性を有する配線基板としては、例えば、フレキシブルプリント配線基板39が知られている。このフレキシブルプリント配線基板39は、絶縁性を持った薄く柔らかいポリイミド等からなるベースフィルムと銅箔等の導電性金属を貼りあわせた基材に電気配線回路を形成した基板である。フレキシブルプリント配線基板39を折り曲げて、積層された電源回路基板31と制御回路基板34とを簡単な構成で電気的に接続できることから組み立ても容易になり、しかも小型化が図れるようになる。
次に、図8は制御回路部18の上からコネクタ端子組立体19を設置した状態を示している。図8にある通り、制御源回路部18の上部にはコネクタ端子組立体19が設置されている。そして、コネクタ端子組立体19は基板/コネクタ固定凸部26の頂部に設けられたねじ穴に制御回路部18を挟み込むようにして固定ねじ36によって固定されている。この状態で、コネクタ端子組立体19が電力変換回路部16、電源回路部17、制御回路部18と接続されている。
更にこの後に金属カバー14の金属カバー側環状先端部が、モータハウジング13のモータハウジング側環状溝部35に収納され、金属カバー14の外周方向に沿って設けられた加締め固定部によって固定される。
以上に説明した電動パワーステアリング装置においては、電源回路基板31と制御回路基板34においては、フレキシブルプリント配線基板39の接続以外に、電源回路基板31の基板面に固定された受電用差し込み接続端子と、電源回路基板31の基板面と向き合う制御回路基板34の基板面に固定された電源側コネクタの給電用差し込み接続端子を接続することが必要とされる。
このため、電源回路基板31と制御回路基板34がフレキシブルプリント配線基板39で接続されている場合、上述した構成と異なり、制御回路基板34にコネクタ端子組立体19を固定ねじで固定する構成としている。そして、制御回路基板34の基板面に貫通孔を形成し、この貫通孔からコネクタ端子組立体19の電力供給用の給電用差し込み接続端子が露出するように突出している。
一方、電源回路基板31には電力を受け入れるために筒状の受電用差し込み接続端子が固定されている。そして、組み付け工程において、給電用差し込み接続端子を筒状の受電用差し込み接続端子に差し込み結合することで、電源回路部に電力を供給することができる。
しかしながら、組み付け工程で、制御回路基板34に固定されたコネクタ端子組立体19の給電用差し込み接続端子を、電源回路基板31の受電用差し込み接続端子に差し込んで接続する場合、組み付け機械によって、フレキシブルプリント配線基板39の側を回転中心として、斜め上方から給電用差し込み接続端子端子を円弧を描くように移動させるため、どうしても筒状の受電用差し込み接続端子と給電用差し込み接続端子とが干渉して、給電用差し込み接続端子が筒状の受電用差し込み接続端子に良好に差し込み接続することができないという課題を生じる。
このような背景から、本発明では次のような構成の電動パワーステアリング装置を提案するものである。
本発明の第1の実施形態においては、電源回路基板と制御回路基板がフレキシブルプリント配線基板によって接続された電子制御部であって、電源回路基板に固定された受電用差し込み接続端子が、フレキシブルプリント配線基板とは反対側が開口された筒状の受電用差し込み接続端子とされ、制御回路基板に固定された給電用差し込み接続端子が受電用差し込み接続端子の開口を通って、受電用差し込み接続端子に差し込み接続される構成にしたものである。
次に、本発明の第1の実施形態になる電動パワーステアリング装置の具体的な構成について、図9〜図11を用いて詳細に説明する。
ここで、図9においては、電源回路基板31と制御回路基板34には、電源回路部17や制御回路部18を構成する電子部品や電気部品の表示を省略しており、電源回路基板31に実装された電源回路に電力を供給する受電用差し込み接続端子40と、車両バッテリ(電源)から電力を供給される給電用差し込み接続端子41のみを表示している。
電源回路基板31と制御回路基板34とはフレキシブルプリント配線基板39によって接続されており、電源回路基板31と制御回路基板34とが平行に配置された状態で、フレキシブルプリント配線基板39は湾曲して折れ曲がり、電源回路17から制御回路18に電源電圧を供給する。
また、コネクタ端子組立体19は、図示しない固定ねじによって制御回路基板34に一体的に固定されている。したがって、以下ではコネクタ端子組立体19も含めて制御回路基板34として取り扱う。尚、コネクタ端子組立体19には図示していないが、最終的な組み付け工程で、図8に示すよ固定ねじ36でモータハウジング13側に固定される構成となっている。
制御回路基板34の一部には、貫通孔42が形成されており、コネクタ端子組立体19が制御回路基板34に一体的に固定された状態で、給電用差し込み接続端子41が、制御回路基34の板貫通孔42から露出する形態で突出されている。給電用差し込み接続端子41は、対(2個)で設けられており、車両バッテリ(電源)の正極と負極にそれぞれ接続される。
給電用差し込み接続端子41が位置する制御回路基板34の基板面に向き合う電源回路基板31の基板面には、受電用差し込み接続端子40が設けられている。正規の状態で組み付けられた場合、給電用差し込み接続端子40と受電用差し込み接続端子41は、互いに結合される位置に配置されている。
ここで、2個の受電用差し込み接続端子40と2個の給電用差し込み接続端子41は、フレキシブルプリント配線基板39に向かう同一直線上に順番に並んで配置されており、2個の受電用差し込み接続端子40の間隔は、制御回路基板34を組み付ける時に、給電用差し込み接続端子41が移動する円弧状の軌跡Trjと干渉しない長さに設定されている。ここで、軌跡Trjは、給電用差し込み接続端子41の先端の中間点の軌跡を意味している。
尚、フレキシブルプリント配線基板39に向かう直線と直交する直線上に、2個の受電用差し込み接続端子40と2個の給電用差し込み接続端子41を配置する場合は、このような干渉に関する配慮は必要なく、フレキシブルプリント配線基板39に向かう直線と直交する直線上に並べて配置することができる。
図9、図10に示しているように、受電用差し込み接続端子40は、電源回路基板31に平行な断面が、フレキシブルプリント配線基板39に向かう直線の方向に沿って細長い矩形の筒状に形成されている。しかも、フレキシブルプリント配線基板39とは反対側の壁面が切り欠かれて形成された開口部40Cを有し、フレキシブルプリント配線基板39に向かう直線の方向に沿った2つの壁面40Aと、この壁面40Aに繋がり直交する壁面40Bから形成されている。したがって、受電用差し込み接続端子40は、電源回路基板31に平行な断面が「コ」状に形成されている。
そして、2つの壁面40Aと壁面40Bとで給電用差し込み接続端子41の収納空間43が形成され、この収納空間43に給電用差し込み接続端子41が収納されている。2つの壁面40Aの間隔は、給電用差し込み接続端子41の幅より少し短く設定されているので、給電用差し込み接続端子41が収納空間43に収納されると、弾性的に保持されることになる。
給電用差し込み接続端子41のフレキシブルプリント配線基板39側の先端は、電源回路基板31に平行な断面で見て、角部の領域が面取り部44とされており、受電用差し込み接続端子40に形成した開口部40Cに円滑に進入できる形態とされている。これによって、給電用差し込み接続端子41が、受電用差し込み接続端子40に形成した開口部40Cに引っ掛かる恐れを少なくできる。
そして、図9に示すように、組み付け工程で、制御回路基板34に固定されたコネクタ端子組立体19の給電用差し込み接続端子41を、電源回路基板31の受電用差し込み接続端子40に差し込んで接続する場合、組み付け機械によって、フレキシブルプリント配線基板39の側を回転中心として、斜め上方から給電用差し込み接続端子41を円弧を描くように移動させる。
この場合、給電用差し込み接続端子41は、受電用差し込み接続端子40の開口部40Cを通過することによって、従来のように受電用差し込み接続端子40と干渉することなく、受電用差し込み接続端子40の収納空間43まで進入することができる。これによれば、電源回路基板31に固定された受電用差し込み接続端子40に、制御回路基板の給電用差し込み接続端子41を円滑に、しかも良好に接続することができる。
次に第1の実施形態の変形例を図11に基づき説明する。図10に示す実施形態では、電源回路基板31に平行な断面形状が、2つの壁面40Aと、これに繋がり直交する壁面40Bとからなる「コ」状の形状であった。
これに対して変形例においては、図11にあるように、受電用差し込み接続端子40は、電源回路基板31に平行な断面が、フレキシブルプリント配線基板39に向かう直線の方向に沿って細長い通路状に形成されている。このため、フレキシブルプリント配線基板39とは反対側の壁面と、これに対向する壁面が切り欠かれて形成された開口部40C、40Dとを有し、フレキシブルプリント配線基板39に向かう直線の方向に沿った2つの壁面40Aから形成されている。したがって、受電用差し込み接続端子40は、電源回路基板31に平行な断面が通路状に形成されている。
そして、2つの壁面40Aで給電用差し込み接続端子41の収納空間43が形成され、この収納空間43に給電用差し込み接続端子41が収納されている。2つの壁面40Aの間隔は、給電用差し込み接続端子41の幅より少し短く設定されているので、給電用差し込み接続端子41が収納空間43に収納されると弾性的に保持されることになる。これによれば、2つの壁面40Aを形成するだけなので、構成が簡単となる。
また、フレキシブルプリント配線基板39とは反対側の開口部40Cには、外側に向けて弧状に拡開する拡開部45が形成されている。したがって、給電用差し込み接続端子41の面取り部44と拡開部45によって、受電用差し込み接続端子40に形成した開口部40Cに給電用差し込み接続端子41を円滑に進入でき、給電用差し込み接続端子41が、受電用差し込み接続端子40に形成した開口部40Cに引っ掛かる恐れを少なくできる。
次に、本発明の第2の実施形態になる電動パワーステアリング装置について説明する。
本発明の第2の実施形態においては、電源回路基板と制御回路基板がフレキシブルプリント配線基板によって接続された電子制御部であって、電源回路基板に固定された受電用差し込み接続端子が、フレキシブルプリント配線基板とは反対側に向けて傾斜された筒状の受電用差し込み接続端子とされ、制御回路基板に固定された給電用差し込み接続端子が、受電用差し込み接続端子に差し込み結合された状態で、受電用差し込み接続端子の形状に沿った傾斜形状に形成されている構成にしたものである。
第2の実施形態になる電動パワーステアリング装置の具体的な構成について、図12〜図13を用いて詳細に説明する。
ここで、図12においても、電源回路基板31と制御回路基板34には、電源回路部17や制御回路部18を構成する電子部品や電気部品の表示を省略しており、電源回路基板31に実装された電源回路に電力を供給する受電用差し込み接続端子46と、車両バッテリ(電源)から電力を供給される給電用差し込み接続端子47のみを表示している。
電源回路基板31と制御回路基板34とはフレキシブルプリント配線基板39によって接続されており、電源回路基板31と制御回路基板34とが平行に配置された状態で、フレキシブルプリント配線基板39は湾曲して折れ曲がり、電源回路17から制御回路18に電源電圧を供給する。
また、第1の実施形態と同様に、コネクタ端子組立体19は、図示しない固定ねじによって制御回路基板34に一体的に固定されている。尚、コネクタ端子組立体19には図示していないが、最終的な組み付け工程で、図8に示すよ固定ねじ36でモータハウジング13側に固定される構成となっている。
制御回路基板34の一部には、貫通孔42が形成されており、コネクタ端子組立体19が制御回路基板34に一体的に固定された状態で、給電用差し込み接続端子47が貫通孔42から露出する形態で突出されている。給電用差し込み接続端子47は、対(2個)で設けられており、車両バッテリ(電源)の正極と負極にそれぞれ接続される。
給電用差し込み接続端子47が位置する制御回路基板34の基板面に向き合う電源回路基板31の基板面には、受電用差し込み接続端子46が設けられている。正規の状態で組み付けられた場合、給電用差し込み接続端子46と受電用差し込み接続端子47は、互いに結合されるされる位置に配置されている。
ここで、第1の実施形態と同様に、2個の受電用差し込み接続端子46と2個の給電用差し込み接続端子47は、フレキシブルプリント配線基板39に向かう同一直線上に順番に並んで配置されており、2個の受電用差し込み接続端子46の間隔は、制御回路基板34を組み付ける時に、給電用差し込み接続端子47が移動する円弧状の軌跡Trjと干渉しない長さに設定されている。
尚、フレキシブルプリント配線基板39に向かう直線と直交する直線上に、2個の受電用差し込み接続端子46と2個の給電用差し込み接続端子47を配置する場合は、このような配慮は必要なく、フレキシブルプリント配線基板39に向かう直線と直交する直線上に並べて配置することができる。
図12に示しているように、電源回路基板31に固定された受電用差し込み接続端子46は、フレキシブルプリント配線基板39に向かう直線の方向で見て、フレキシブルプリント配線基板39とは反対側で電源回路基板31から遠ざかる方向に向けて、所定の角度だけ傾斜された筒状の受電用差し込み接続端子46とされている。また、受電用差し込み接続端子46には収納空間48が形成されており、この収納空間48も受電用差し込み接続端子46に倣って所定角度だけ傾斜されている。
受電用差し込み接続端子46、及び収納空間48の傾斜角度は、制御回路基板34を組み付ける時に、給電用差し込み接続端子47が移動する円弧状の軌跡Trjに沿った傾斜角度に設定されている。ここでも、軌跡Trjは、給電用差し込み接続端子41の先端の中間点の軌跡を意味している。
また、これに合せて、制御回路基板34に固定されたコネクタ端子組立体19の給電用差し込み接続端子47の先端側にも、傾斜部47Aが形成されており、傾斜した受電用差し込み接続端子46に形成した収納空間48に、傾斜部47Aの全体が収納される形態とされている。この給電用差し込み接続端子47の傾斜部47Aは、フレキシブルプリント配線基板39に向かう直線の方向で見て、フレキシブルプリント配線基板39の側に向けて、給電用差し込み接続端子47の途中から、所定の傾斜角度だけ傾斜されている。
この傾斜角度は、給電用差し込み接続端子47が正規の位置で受電用差し込み接続端子46に接続された時に、受電用差し込み接続端子46の収納空間48の傾斜に一致する傾斜角度に設定されている。したがって、制御回路基板34を組み付ける時に、給電用差し込み接続端子47が移動する円弧状の軌跡Trjに沿って移動しても、給電用差し込み接続端子47が受電用差し込み接続端子46に干渉することなく、収納空間48に差し込み接続することができる。尚、この場合、受電用差し込み接続端子48の収納空間48の形状は、給電用差し込み接続端子47の移動軌跡に合せて形成されている。
受電用差し込み接続端子46は、電源回路基板31に平行な断面が、フレキシブルプリント配線基板39に向かう直線の方向に沿って細長い矩形の筒状に形成されている。受電用差し込み接続端子46は、フレキシブルプリント配線基板39に向かう直線の方向に沿った2つの壁面46Aと、この壁面46Aに繋がり直交する壁面46B,46Cから形成されている。
そして、4つの壁面46A〜46Cとで給電用差し込み接続端子47の傾斜部47Aの収納空間48が形成され、この収納空間48に給電用差し込み接続端子47が収納されている。2つの壁面46Aの間隔は、給電用差し込み接続端子47の幅より少し短く形成されているので、給電用差し込み接続端子47が収納空間48に収納されると、弾性的に保持されることになる。
給電用差し込み接続端子47の傾斜部47Aの先端は、収納空間48を形成する壁面46A側の角部の領域が面取りされており、受電用差し込み接続端子46に形成した収納空間48の開口に円滑に進入できる形態とされている。これによって、給電用差し込み接続端子47の傾斜部47Aが、受電用差し込み接続端子46の収納空間48に形成した開口に引っ掛かる恐れを少なくできる。
そして、図12に示すように、組み付け工程で、制御回路基板34に固定されたコネクタ端子組立体19の給電用差し込み接続端子47を、電源回路基板31の受電用差し込み接続端子46に差し込んで接続する場合、組み付け機械によって、フレキシブルプリント配線基板39の側を回転中心として、斜め上方から給電用差し込み接続端子47を円弧を描くように移動させる。
この場合、給電用差し込み接続端子47は、傾斜した受電用差し込み接続端子46の収納空間48の開口によって、従来のように受電用差し込み接続端子46と干渉することなく、受電用差し込み接続端子46の収納空間48に進入することができる。これによれば、電源回路基板31に固定された受電用差し込み接続端子46に、制御回路基板34の給電用差し込み接続端子47を円滑に、しかも良好に接続することができる。
ここで、本実施形態では、収納空間48や給電用差し込み接続端子47の形状を、軌跡Trjに合せて円弧状に形成することも可能であり、この円弧状の形態も「傾斜」の概念に含まれるものである。
また、図14、図15にあるように、受電用差し込み接続端子46の外側の周囲に電気絶縁性の合成樹脂によるコーティング膜49を形成しても良い。このように、電気絶縁性の保護樹脂によるコーティング膜49を、受電用差し込み端子の外周面に形成することで、端子材質の劣化を防ぐことができ、また、他の導電体の接触等による、電気的なショートの危険性を下げることができる。この実施例においては、受電用差し込み接続端子46は、給電用差し込み接続端子47との接触が保たれる範囲であれば、樹脂コーティングに部分的に存在するように配置することもできる。
尚、上述した実施形態は、電源回路部に電力を供給するための給電用差し込み接続端子と受電用差し込み接続端子を示したが、給電用差し込み接続端子と受電用差し込み接続端子に限らず、これ以外の回路基板の接続端子についても同様に適用することができる。
以上述べた通り、本発明によれば、第1回路基板と第2回路基板がフレキシブルプリント配線基板によって接続された電子制御部であって、第1回路基板に固定された差し込み接続端子が、フレキシブルプリント配線基板とは反対側と前記第2回路基板と対向する面とが開口された開口部を有する筒状の第1差し込み接続端子とされ、第2回路基板に固定された第2差し込み接続端子が第1差し込み接続端子の開口部を通って、第1差し込み接続端子に差し込み接続される構成とした。
また、本発明によれば、第1回路基板と第2回路基板がフレキシブルプリント配線基板によって接続された電子制御部であって、第1回路基板に固定された差し込み接続端子が、フレキシブルプリント配線基板とは反対側に向けて第1回路基板から遠ざかる方向に傾斜された筒状の第1差し込み接続端子とされ、第2回路基板に固定された第2差し込み接続端子が、第1差し込み接続端子に差し込み結合された状態で、第1差し込み接続端子の形状に沿った傾斜部を備えている構成とした。
これによれば、第1回路基板と第2回路基板がフレキシブルプリント配線基板によって接続された電子制御部において、第1回路基板に固定された差し込み接続端子に、第2回路基板の差し込み接続端子を円滑に、しかも良好に接続することができる。
尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。