JP2020026423A - 含フッ素重合性単量体の蒸留精製法 - Google Patents
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Abstract
【課題】式(1)で表される含フッ素重合性単量体を、工業生産規模であっても、重合を抑制でき、効率的に蒸留精製できる新規方法を提供する。【解決手段】該含フッ素重合性単量体に、重合禁止剤として6−tert−ブチル−2,4−キシレノール等のフェノール系化合物Aと、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)等のフェノール系化合物Bを含有させて蒸留精製を行うことによって、前記課題は解決する。すなわち、フェノール系化合物Aとフェノール系化合物Bを併用すると、蒸留中のオリゴマー化、ポリマー化が格段に抑制できる。【選択図】なし
Description
本発明は、反射防止材料、感光性コーティング材料、半導体用レジスト材料、およびレジストの上層膜等に有用な含フッ素重合体の原料である含フッ素重合性単量体の蒸留精製法に関する。また当該蒸留精製法によって得た単量体を用いて、該単量体を繰り返し単位として含む含フッ素重合体を製造する方法に関する。
フッ素系化合物は、フッ素の持つ撥水性、撥油性、低吸水性、耐熱性、耐候性、耐腐食性、透明性、感光性、低屈折率性、低誘電性などの特徴から先端材料分野を中心として幅広い応用分野で使用または開発が続けられている。例えば、低屈折率性と可視光の透明性を応用した反射防止膜、高波長帯(光通信波長帯)での透明性を応用した光デバイス、紫外線領域(特に真空紫外波長域)での透明性を応用したレジスト材料などの分野で活発な研究開発が行われてきた。
これらの中で、式(1)で表される含フッ素重合性単量体は、ヘキサフルオロアセトンに起因する(CF3)2(OR3)C−部位を有し、高いフッ素含量を有しながら同一分子内にバランスよく極性基を持たせることに成功した単量体化合物である(特許文献1)。
(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、及び含フッ素アルキル基(該含フッ素アルキル基は、直鎖または分岐鎖であり、環状構造を含むことができる)からなる群より選ばれる基を表す。R2は2価ないし3価の有機基であって、当該有機基は、脂肪族炭化水素基(該脂肪族炭化水素基は、直鎖または分岐鎖であり、環状構造を含むことができる)、芳香環基、またはそれらの複合置換基から選ばれる基であって、その水素原子の一部又は全部がフッ素原子又は水酸基によって置換されていてもよい。R3は水素原子、炭化水素基、含フッ素アルキル基(当該含フッ素アルキル基は、直鎖または分岐鎖であり、環状構造を含むことができる)、又は芳香環基であって、該炭化水素基、又は該含フッ素アルキル基の内部に、エーテル基(−O−)、カルボニル基(−(C=O)−)から選ばれる2価連結基を含んでもよい。mは1〜2の整数を表す。mが2であるとき、2つのR3は、お互いに同一のものを取ることも、異なるものを取ることもできる。)
該含フッ素重合性単量体は重合性にも優れ、該単量体を重合して得た含フッ素重合体は、フッ素原子によってもたらされる透明性と、極性基によってもたらされる密着性、加工性を併せ持ち、反射防止膜材料、光デバイス材料、レジスト用材料等として優れた物性を有することが知られている(特許文献1)。
他方、光学材料、半導体用材料は、近年高品質化が求められており、これらの材料の原料である重合性単量体についても同様に、高品質化が求められている。高純度で製造ロット毎の品質ばらつきが少なく、かつ低価格で重合性単量体を提供するために種々の提案が為されている。
混合物(粗体)から高純度で一つの化合物を得る手法として、再結晶、再沈殿、蒸留、昇華、カラムクロマトグラフィといった精製法が挙げられる。カラムクロマトグラフィは実験室レベルでは有効な精製法であるが、大量生産する場合には効率的ではなく、高コスト化の要因となり得る。また再結晶、再沈殿、昇華といった精製法は、常温付近で液体の化合物には適用し難い。その上、煩雑な洗浄操作が必要となったり、比較的大きな温度変動を伴う工程(例えば50℃を超える温度から0℃以下の低温へと冷却する工程)を行う必要が生じたりし、簡便な方法とは言いがたい。
その点、蒸留は、対象化合物の沸点が常温〜数百度の範囲にある場合、一度に大量の化合物を精製するのにしばしば簡便で優れた手法である。但し蒸留を採用する場合、目的の化合物が蒸留実施中に、分解反応や重合を起こすことがない様、工夫が必要なことがある。
易重合反応性化合物を蒸留する場合、重合禁止剤を添加して行うことはよく知られている。重合禁止剤は、フェノール系化合物(ヒドロキノン誘導体とも言う)や2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル(TEMPO)誘導体など市販されている商品が多数あり、これらを用いる例は枚挙にいとまがない。一方、より高機能性を謳った化合物の場合、市販の重合禁止剤を用いるのではなく、その目的の化合物に合うような重合禁止剤を新たに開発して用いる手法(特許文献2、特許文献3)もある。
また、蒸留設備に工夫を凝らす例も開示されている。例えば、特許文献4、特許文献5では、蒸留設備内での目的物の重合反応を抑制し、蒸留塔内でのポリマー生成による閉塞を抑え、更に蒸留設備の洗浄を軽減し効率的に目的物を得る特殊な構造の蒸留設備が提案されている。この手法は確かに効果的ではあるが、新たな設備導入が必要となる。
更にフェノール系重合禁止剤の効果を高めるために、蒸留設備内に酸素ガスを流通させながら蒸留を行うといった手法(いわゆる「エアレーション蒸留」)も広く一般的に知られている。それに加えて気相部の重合を抑制する目的で二酸化窒素ガスなどのNOxを重合禁止剤として併用している例もある(特許文献6)。
このような中、特許文献7,8では、上記式(1)の化合物の範疇に含まれる、式(1a)で表される1,1−ビス(トリフルオロメチル)−1,3−ジオール類アクリル酸系エステル
[但し、式中のR1aは水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、又はパーフルオロエチル基である。R2aは水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、またはパーフルオロエチル基である。]
を合成する工程において、ヒドロキノン、メトキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、2,5−ビステトラメチルブチルヒドロキノン、ロイコキニザリン、ノンフレックスF、ノンフレックスH、ノンフレックスDCD、ノンフレックスMBP、オゾノン35、フェノチアジン、テトラエチルチウラム ジスルフィド、1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル、1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジン、Q−1300(和光純薬工業製)、Q−1301(和光純薬工業製)から選択される化合物を重合禁止剤として用いる態様を開示している。
を合成する工程において、ヒドロキノン、メトキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、2,5−ビステトラメチルブチルヒドロキノン、ロイコキニザリン、ノンフレックスF、ノンフレックスH、ノンフレックスDCD、ノンフレックスMBP、オゾノン35、フェノチアジン、テトラエチルチウラム ジスルフィド、1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル、1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジン、Q−1300(和光純薬工業製)、Q−1301(和光純薬工業製)から選択される化合物を重合禁止剤として用いる態様を開示している。
これら特許文献7,8においては、当該化合物の合成工程の後、水洗等の後処理操作を行った後、蒸留精製を行える旨が開示されている。重合禁止剤は水洗を数回行うだけでは式(1a)の粗体中から完全には除去されない。このため、これらの実施態様では、合成時に添加した重合禁止剤の一部がそのまま蒸留時の重合禁止剤を兼ねることとなる。但し、特許文献7の実施例2においては、合成時に用いた重合禁止剤(フェノチアジン)が系中に残ると共に、蒸留直前に重合禁止剤(フェノチアジン)を別途、追添加して蒸留が行われている。
本発明で言及する含フッ素重合性単量体とは、下記式(1)で示される化合物である。
(式中、各記号の意味は前記と同じ。)
式(1)の化合物の蒸留精製方法としては、前述の通り、特許文献7、8において、重合禁止剤として、ヒドロキノン、メトキノン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼンなどのフェノール系化合物(ヒドロキノン誘導体)や、フェノチアジン、1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル、ノンフレックスF(N,N'−ジ−2−ナフチル−パラ−フェニレンジアミン)などの含窒素重合禁止剤の存在下で蒸留を行う方法が開示されている。これらの重合禁止剤を共存させることによって、重合禁止剤のない状態での蒸留に比べ、蒸留実施時の加温による熱重合が大幅に抑制され、その結果、蒸留収率は増大傾向を示し、また蒸留設備内の固化も格段に起こりにくくなる。
これら重合禁止剤の中でも「フェノール系化合物(ヒドロキノン誘導体とも呼ぶ)」は、安価であり、かつ、少量の添加で高い重合禁止能を有する優れた重合禁止剤である。それと共に、式(1)の化合物を蒸留するにあたって「フェノール系化合物」を重合禁止剤として用いると、含窒素重合禁止剤に比べ、蒸留中の着色現象(黄変等)が低レベルに抑えられるという利点があることも分かっている。
しかし、この「フェノール系化合物」を、式(1)の化合物の蒸留時の重合禁止剤に用いる場合には、次のような技術的課題が存在することが分かってきた。
すなわち、式(1)の化合物を蒸留精製するとき、蒸留釜に仕込む当該化合物の量が相対的に多くなると、蒸留時の局所的な高分子化が生じやすいことが分かってきた。具体的には、蒸留釜に仕込む式(1)の化合物の量が500g以下(典型的には100g以下)という「実験室レベルの蒸留」の場合は、上述のフェノール系化合物の何れかの存在下、蒸留を行うことによって、円滑に高純度の目的物(主留分)が得られ、特に操作上の問題が特に見出されないことも多い。ところが、式(1)の化合物の仕込み量がそれを超える量(すなわち500gを超える量。以下、本明細書において「量産規模の蒸留」と呼ぶことがある)になると、蒸留時に局所的にポリマー化またはオリゴマー化が発生しやすくなり、それが装置内(ボトム(釜)、蒸留塔、留出物の何れか)の局所的な固化につながる傾向があることが判明した(後述の比較例を参照)。こうした現象は、実験室レベルの蒸留では必ずしも確認できないため、スケールアップに伴う加熱時間の長期化や、蒸留装置の徐熱効率の低下が原因と推測している。
一たび蒸留設備内で、少量でも固化が発生すると、蒸留塔内の閉塞が起こって装置の解体洗浄が必要となることがあり、又はボトム液を排液する操作が煩雑になったりして、生産性(歩留まり)の低下を招く恐れがある。
このような事情に鑑み、本発明者らは、含フッ素重合性単量体(式(1)の化合物)を「量産規模の蒸留」で精製するにあたり、重合禁止剤として「フェノール系化合物」の種類を種々変更することを試みた。
しかし、種々のフェノール性化合物の使用を試みたものの、何れも「量産規模の蒸留」では、ボトム(釜)、蒸留塔、留出物の何れかに、固体の生成が起こるという傾向は簡単に改善するものでなかった。こうした「固体が生成する傾向」に対応して、ボトム蒸留塔、もしくは留分中に、分子量の大きい成分(ポリマー又はオリゴマー領域にピークを持つ化学種)が検出されやすいという傾向が観測された(後述の「比較例」を参照)。
このように、式(1)の含フッ素重合性単量体を、「量産規模の蒸留」で精製するにあたり、優れた重合禁止剤である「フェノール性化合物」を用いつつ、ポリマー化を抑制できる新規蒸留精製方法が求められていた。
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討した結果、式(1)で表される含フッ素重合性単量体を蒸留するに当たって、重合禁止剤として、式(2)で表される「フェノール系化合物A」と、
(式中、R4、R5は、それぞれ水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルコキシ基(該アルコキシ基は直鎖または分岐鎖を取り得る)、炭素数1〜4のアルキル基(該アルキル基は直鎖または分岐鎖を取り得る)、環状構造を有するアルキル基、又は置換基を持たない芳香環基である。R4、R5はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。また、nは1〜2の整数を表す。nが2であるとき、複数のR5は互いに同一であっても、異なっていてもよい。)
式(3)で表される「フェノール系化合物B」と、
式(3)で表される「フェノール系化合物B」と、
(式中、R6、R7、R8、R9は、それぞれ水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルコキシ基(該アルコキシ基は直鎖または分岐鎖を取り得る)、炭素数1〜4のアルキル基(該アルキル基は直鎖または分岐鎖を取り得る)、環状構造を有するアルキル基、又は芳香環基である。R6、R7、R8、R9はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)を併用して蒸留を実施すると、式(1)の化合物が量産規模(仕込む式(1)の化合物の量が500gを超える規模)であっても、ポリマー化やオリゴマー化が格段に抑制され、より円滑に蒸留精製が行えるという事実を見出した。
すなわち、重合禁止剤として「フェノール系化合物A」のみを用いた場合、「フェノール系化合物B」のみを用いた場合には、どちらも、量産規模で式(1)の化合物を蒸留した場合には、蒸留設備内(ボトムや蒸留塔内の何れかにおいて)ポリマー化あるいはオリゴマー化が観測される傾向がある(後述の比較例を参照)。それに対し、「フェノール系化合物A」と「フェノール系化合物B」を併用して蒸留を行うと、重合禁止剤の総量は同じであっても、蒸留装置内のポリマー化、オリゴマー化が格段に抑制できる。その原因は定かではないが、「フェノール系化合物A」と「フェノール系化合物B」それぞれの持つ重合禁止効果の単純な総和を超えた、特異な相乗効果が、本蒸留系では起こったものと考えられる。
このような特定の2つのフェノール系化合物を重合禁止剤として併用しつつ、式(1)の含フッ素重合性単量体を蒸留精製する、という考え方は、これまでなかった。
発明者らはさらに、このように「フェノール系化合物A」と「フェノール系化合物B」という複数の重合禁止剤を併用して蒸留して留分として得た、純度の高められた式(1)の含フッ素重合性単量体を、続いて重合反応条件に付した場合には、支障なく目的とする重合反応を起こし、次の式(4)の繰り返し単位
を有する含フッ素重合体(ホモポリマーおよびヘテロポリマー)を生成するという知見を見出し、発明を完成した。
すなわち本発明は、式(1)で表される含フッ素重合性単量体を蒸留精製する優れた方法を提供する。さらに本発明は、該蒸留精製によって高純度の該重合性単量体を得た後、該重合性単量体を重合させる工程をさらに含む、式(4)で表される繰り返し単位を有する含フッ素重合体の製造方法を提供する。
本発明は以下の通りである。
[発明1]
次の第1工程を含む、下記一般式(1)で表される含フッ素重合性単量体の精製方法。
次の第1工程を含む、下記一般式(1)で表される含フッ素重合性単量体の精製方法。
(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、及び含フッ素アルキル基(該含フッ素アルキル基は、直鎖または分岐鎖であり、環状構造を含むことができる)からなる群より選ばれる基を表す。R2は2価ないし3価の有機基であって、当該有機基は、脂肪族炭化水素基(該脂肪族炭化水素基は、直鎖または分岐鎖であり、環状構造を含むことができる)、芳香環基、またはそれらの複合置換基から選ばれる基であって、その水素原子の一部又は全部がフッ素原子又は水酸基によって置換されていてもよい。R3は水素原子、炭化水素基、含フッ素アルキル基(当該含フッ素アルキル基は、直鎖または分岐鎖であり、環状構造を含むことができる)、又は芳香環基であって、該炭化水素基又は該含フッ素アルキル基の内部に、エーテル基(−O−)、カルボニル基(−(C=O)−)から選ばれる2価連結基を含んでもよい。mは1〜2の整数を表す。mが2であるとき、2つのR3は、お互いに同一のものを取ることも、異なるものを取ることもできる。)
第1工程:前記含フッ素重合性単量体を、式(2)で表される「フェノール系化合物A」及び式(3)で表される「フェノール系化合物B」を共存させて蒸留し、該含フッ素重合性単量体を留分として得る、蒸留精製工程。
(式中、R4、R5は、それぞれ水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルコキシ基(該アルコキシ基は直鎖または分岐鎖を取り得る)、炭素数1〜4のアルキル基(該アルキル基は直鎖または分岐鎖を取り得る)、環状構造を有するアルキル基、又は置換基を持たない芳香環基である。R4、R5はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。また、nは1〜2の整数を表す。nが2であるとき、複数のR5は互いに同一であっても、異なっていてもよい。)
(式中、R6、R7、R8、R9は、それぞれ水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルコキシ基(該アルコキシ基は直鎖または分岐鎖を取り得る)、炭素数1〜4のアルキル基(該アルキル基は直鎖または分岐鎖を取り得る)、環状構造を有するアルキル基、又は芳香環基である。R6、R7、R8、R9はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
[発明2]
前記フェノール系化合物AのR4とR5がそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、n−プロピル基、n−プロピルオキシ基、i−プロピル基、i−プロピルオキシ基、n−ブチル基、n−ブチルオキシ基、i−ブチル基、i−ブチルオキシ基、t−ブチル基、t−ブチルオキシ基及び水酸基からなる群から選ばれ、かつ、R4とR5の少なくとも1つは水素原子でなく、
前記フェノール系化合物BのR6、R7、R8およびR9がそれぞれ独立に 水素原子、メチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、n−プロピル基、n−プロピルオキシ基、i−プロピル基、i−プロピルオキシ基、n−ブチル基、n−ブチルオキシ基、i−ブチル基、i−ブチルオキシ基、t−ブチル基、t−ブチルオキシ基及び水酸基からなる群から選ばれ、かつ、R6、R7、R8およびR9の少なくとも1つは水素原子でない、
発明1に記載の精製方法。
前記フェノール系化合物AのR4とR5がそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、n−プロピル基、n−プロピルオキシ基、i−プロピル基、i−プロピルオキシ基、n−ブチル基、n−ブチルオキシ基、i−ブチル基、i−ブチルオキシ基、t−ブチル基、t−ブチルオキシ基及び水酸基からなる群から選ばれ、かつ、R4とR5の少なくとも1つは水素原子でなく、
前記フェノール系化合物BのR6、R7、R8およびR9がそれぞれ独立に 水素原子、メチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、n−プロピル基、n−プロピルオキシ基、i−プロピル基、i−プロピルオキシ基、n−ブチル基、n−ブチルオキシ基、i−ブチル基、i−ブチルオキシ基、t−ブチル基、t−ブチルオキシ基及び水酸基からなる群から選ばれ、かつ、R6、R7、R8およびR9の少なくとも1つは水素原子でない、
発明1に記載の精製方法。
[発明3]
フェノール系化合物Aが、6−tert−ブチル−2,4−キシレノールおよびメトキノンからなる群より選ばれる少なくとも1つであり、フェノール系化合物Bが、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)および2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)からなる群より選ばれる少なくとも1つである、発明1に記載の精製方法。
フェノール系化合物Aが、6−tert−ブチル−2,4−キシレノールおよびメトキノンからなる群より選ばれる少なくとも1つであり、フェノール系化合物Bが、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)および2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)からなる群より選ばれる少なくとも1つである、発明1に記載の精製方法。
[発明4]
フェノール系化合物Aが、6−tert−ブチル−2,4−キシレノール、フェノール系化合物Bが、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)である発明1に記載の精製方法。
フェノール系化合物Aが、6−tert−ブチル−2,4−キシレノール、フェノール系化合物Bが、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)である発明1に記載の精製方法。
[発明5]
フェノール系化合物Aとフェノール系化合物Bの質量比が1:0.1〜1:10の範囲である、発明1〜4の何れかに記載の精製方法。
フェノール系化合物Aとフェノール系化合物Bの質量比が1:0.1〜1:10の範囲である、発明1〜4の何れかに記載の精製方法。
[発明6]
式(1)で表される含フッ素重合性単量体が、次の式(1a)、式(1b)又は式(1c)で表される含フッ素重合性単量体である、発明1乃至発明5の何れかに記載の精製方法。
式(1)で表される含フッ素重合性単量体が、次の式(1a)、式(1b)又は式(1c)で表される含フッ素重合性単量体である、発明1乃至発明5の何れかに記載の精製方法。
[式(1a)〜式(1c)において、R1aは水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、またはパーフルオロエチル基である。式(1a)において、R2aは水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、又はパーフルオロエチル基である。]。
[発明7]
前記第1工程に使用する、式(1)で表される含フッ素重合性単量体が、次の式(5)で表される化合物と式(6)で表される化合物を縮合反応させて合成されるものであり、
前記第1工程に使用する、式(1)で表される含フッ素重合性単量体が、次の式(5)で表される化合物と式(6)で表される化合物を縮合反応させて合成されるものであり、
(式中、Xは水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基またはオキソカルボニル基を表す。それ以外の記号の意味は式(1)と同じである。)
該縮合反応が、前記、フェノール系化合物Aと、フェノール系化合物Bのうち、少なくとも1種類の化合物の存在下行われる、発明1乃至発明6の何れかに記載の精製方法。
該縮合反応が、前記、フェノール系化合物Aと、フェノール系化合物Bのうち、少なくとも1種類の化合物の存在下行われる、発明1乃至発明6の何れかに記載の精製方法。
[発明8]
発明1乃至発明7の何れかに記載の第1工程を行った後に、次の第2工程を行うことを特徴とする、下記一般式(4)
発明1乃至発明7の何れかに記載の第1工程を行った後に、次の第2工程を行うことを特徴とする、下記一般式(4)
(式中、R1、R2、R3、mは、発明1に記載の内容と同じ。)
の繰り返し単位を有する含フッ素重合体を製造する方法。
の繰り返し単位を有する含フッ素重合体を製造する方法。
第2工程:前記第1工程で得た該含フッ素重合性単量体を重合させて、前記一般式(4)の繰り返し単位を有する含フッ素重合体を合成する、重合工程。
本発明の精製方法を採用することにより、式(1)で表される含フッ素重合性単量体を、量産規模(とりわけ500gを超える規模)で蒸留するにあたり、蒸留装置内の高分子化(ポリマー化又はオリゴマー化)を有意に抑制できるという効果を奏する。
また、上記精製方法を第1工程としたとき、当該第1工程で留分として得た純度の高められた該含フッ素重合性単量体は、続いて重合条件下に付すことにより、円滑に式(4)の繰り返し単位を有する含フッ素重合体に変換できる(第2工程)。すなわち、第1工程(蒸留精製工程)と第2工程(重合工程)を組み合わせることによって、該含フッ素重合体が、これまでに比べてより有利に製造できる、という効果を奏する。
以下、本発明について説明する。本発明は、これらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。また、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、および公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。
[含フッ素重合性単量体]
本発明の対象とする含フッ素重合性単量体は、次の式(1)で表されるものである。
本発明の対象とする含フッ素重合性単量体は、次の式(1)で表されるものである。
(式(1)中の各記号の意味は、前記と同じ)。
これらは(メタ)アクリル部位とヘキサフルオロアセトンに由来する部位が1分子中に共存する構造を有し、多数のフッ素原子を有しながら適度な極性を保有し、重合特性も優れている。
式(1)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、及び含フッ素アルキル基(該含フッ素アルキル基は、直鎖または分岐鎖であり、環状構造を含むことができる)からなる群より選ばれる基を表す。ここで、ハロゲン原子としては、フッ素が特に好ましい。炭化水素基としては、炭素数1〜10のアルキル基(該アルキル基は直鎖、分岐鎖又は環状構造を取り得る)、フェニル基、トルイル基が挙げられ、メチル基が特に好ましい。含フッ素アルキル基としては炭素数1〜6の含フッ素アルキル基が挙げられ、トリフルオロメチル基は好ましい例である。これらの中でも、R1が水素、メチル基の場合は、後述の通り、該重合性単量体を合成するための原料がアクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体となり、大量規模の入手が容易なため、特に好ましい。
式(1)中、R2は2価(m=1のとき)ないし3価(m=2のとき)の有機基であって、当該有機基は、脂肪族炭化水素基(該脂肪族炭化水素基は、直鎖または分岐鎖であり、環状構造を含むことができる)、芳香環基、またはそれらの複合置換基から選ばれる基であって、その水素原子の一部又は全部がフッ素原子又は水酸基によって置換されていてもよい。脂肪族炭化水素基としては炭素数1〜20のものを挙げることができる。芳香環基としては、ベンゼン環に2個乃至3個の結合手がついているものを挙げることができる。「複合置換基」とは、1つのR2の中に、脂肪族炭化水素ユニットと芳香環ユニットとが、直列或いは並列関係で含まれるものを言う。
中でもR2として、下記の官能基のものは、優れた物性を持つ重合体の原料になり得るため、好ましい(式中の点線は、結合手を表す)。
R3は水素原子、炭化水素基、含フッ素アルキル基(当該含フッ素アルキル基は、直鎖または分岐鎖であり、環状構造を含むことができる)、又は芳香環基であって、該炭化水素基又は該含フッ素アルキル基の内部に、エーテル基(−O−)、カルボニル基(−(C=O)−)から選ばれる2価連結基を含んでもよい。炭化水素基は炭素数1〜20のものが挙げられ、特に炭素数1〜6のアルキル基は好ましい。含フッ素アルキル基は炭素数1〜6のものが挙げられ、特に−CF3基は好ましい。芳香環基としてはフェニル基やトルイル基が挙げられる。「炭化水素基、又は含フッ素アルキル基の内部に、エーテル基(−O−)、カルボニル基(−(C=O)−)から選ばれる2価連結基を含む」とは、炭化水素基等の炭素原子と炭素原子の間に、−O−、−(C=O)−、−(C=O)O−等の結合が挿入された基のことを言う。
式(1)の含フッ素重合性単量体の中でも、次の式(1a)、(1b)、(1c)で表される含フッ素重合性単量体は、得られる樹脂の性能が優れていることから、一層好ましい化合物である。
(式(1a)〜(1c)中の各記号の意味は前記と同じ)。
式(1a)〜(1c)のR1a基としては水素原子、メチル基がとりわけ好ましい。
式(1a)のR2a基としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、トリフルオロメチル基が好ましいものとして挙げられ、水素原子がとりわけ好ましい。
式(1a)のR2a基としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、トリフルオロメチル基が好ましいものとして挙げられ、水素原子がとりわけ好ましい。
[重合禁止剤]
本発明の蒸留精製工程(第1工程)において重合禁止剤として「フェノール系化合物A」及び「フェノール系化合物B」はそれぞれ、次の構造式で表される。
本発明の蒸留精製工程(第1工程)において重合禁止剤として「フェノール系化合物A」及び「フェノール系化合物B」はそれぞれ、次の構造式で表される。
(式中、R4、R5は、それぞれ水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルコキシ基(該アルコキシ基は直鎖または分岐鎖を取り得る)、炭素数1〜4のアルキル基(該アルキル基は直鎖または分岐鎖を取り得る)、環状構造を有するアルキル基、又は置換基を持たない芳香環基である。R4、R5はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。また、nは1〜2の整数を表す。nが2であるとき、複数のR5は互いに同一であっても、異なっていてもよい。)
(式中、R6、R7、R8、R9は、それぞれ水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルコキシ基(該アルコキシ基は直鎖または分岐鎖を取り得る)、炭素数1〜4のアルキル基(該アルキル基は直鎖または分岐鎖を取り得る)、環状構造を有するアルキル基、又は芳香環基である。R6、R7、R8、R9はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
前記フェノール系化合物Aとしては、R4とR5がそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、n−プロピル基、n−プロピルオキシ基、i−プロピル基、i−プロピルオキシ基、n−ブチル基、n−ブチルオキシ基、i−ブチル基、i−ブチルオキシ基、t−ブチル基、t−ブチルオキシ基及び水酸基からなる群から選ばれ、かつ、R4とR5の少なくとも1つは水素原子でないものが好ましい。なお、R4とR5の両方が水素原子であるときには、フェノール系化合物Aは、無置換フェノールとなる。無置換フェノールも重合禁止剤としての機能はあるが、本発明のフェノール系化合物Aとしては、無置換フェノールを除いたものが、より好ましい。
前記フェノール系化合物Bとしては、R6、R7、R8およびR9がそれぞれ独立に 水素原子、メチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、n−プロピル基、n−プロピルオキシ基、i−プロピル基、i−プロピルオキシ基、n−ブチル基、n−ブチルオキシ基、i−ブチル基、i−ブチルオキシ基、t−ブチル基、t−ブチルオキシ基及び水酸基からなる群から選ばれ、かつ、R6、R7、R8およびR9の少なくとも1つは水素原子でないものが、好ましい。なお、R6、R7、R8およびR9の全てが水素原子であるものも重合禁止剤としての機能があるが、本発明のフェノール系化合物Bとしては、R6、R7、R8およびR9の少なくとも1つは水素原子でないものが、より好ましい。
重合禁止剤として、上述の「好ましい」としたフェノール系化合物Aとフェノール系化合物Bを併用することは、本発明の好ましい態様の1つである。
より具体的に、フェノール系化合物Aのさらに好ましい例、フェノール系化合物Bのさらに好ましい例としては次のものが挙げられ、これらどうしを組み合わせて用いることは、本発明の、より好ましい態様である。
これらの中でも、フェノール系化合物Aが、6−tert−ブチル−2,4−キシレノールおよびメトキノンからなる群より選ばれる少なくとも1つであり、かつ、フェノール系化合物Bが、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)および2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)からなる群より選ばれる少なくとも1つである実施態様は、特に好ましい。
これらの中でも、フェノール系化合物Aが、6−tert−ブチル−2,4−キシレノール、なおかつBが、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)である実施態様は、特により好ましい。
なお、フェノール系化合物Aのうちの複数種類、又は、フェノール系化合物Bのうちの複数種類を用いる態様もけして妨げられるものではないが、あまり多数種のフェノール系化合物を併用しても、品質管理が複雑になるので、通常はフェノール系化合物Aとフェノール系化合物Bを1種類ずつ用いることが、特に好ましい。
フェノール系化合物Aとフェノール系化合物Bの量比に特別な制限はないが、質量比が1:0.1〜1:10の範囲であると、両タイプの重合禁止剤を併用する効果が高まるので好ましく、1:0.2〜1:5の範囲であれば、より好ましい。典型的には両者の質量比が1:0.2〜1:2の範囲であることが特に好ましい。
なお、ここでいうフェノール系化合物Aとフェノール系化合物Bの「量比」の算定基準になるのは、「蒸留精製工程(第1工程)で蒸留釜に仕込む式(1)の含フッ素重合性単量体中に溶存しているフェノール系化合物の総量」である。すなわち、当該蒸留精製工程に先立つ、該含フッ素重合性単量体の合成工程において、前記フェノール系化合物の何れかが重合禁止剤として添加され、その一部が系内に残存していた場合、上記「量比」の算定根拠になるフェノール系化合物Aまたはフェノール系化合物Bの量は、「蒸留前から存在し、系中に残存したフェノール系化合物」と「蒸留開始時に追加したフェノール系化合物」の量の合計となる。具体的な量比の調整方法は、後述の「第1工程(蒸留精製工程)」の項で述べる。
本発明に関係する各工程を、次のスキーム1として示す。
本発明において中心となる工程は「蒸留精製工程(第1工程)」である。しかし、それに先立って行われる「合成工程」においても重合禁止剤を共存させることが好ましく、そこで用いた重合禁止剤の少なくとも一部は、合成工程に引き続いて行われる後処理工程の後にも、残存することが典型的である。このため、「合成工程」と「後処理工程」の操作も、続く「第1工程」と関連がある。そこで、以下の本明細書では、まず「合成工程」「後処理工程」について一通り説明を行い、そのあとで「第1工程」と「重合工程(第2工程)」につき、詳述を加える。
[含フッ素重合性単量体(式(1))の合成工程](「合成工程」とも呼ぶ) 式(1)の含フッ素重合性単量体は、以下に示すスキーム2のように、式(6)で表されるアルコールと、式(5)で表される重合性二重結合含有のカルボン酸、カルボン酸ハライド、カルボン酸エステル、或いはカルボン酸無水物との縮合反応から合成することができる。
式中、Xは水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基またはオキソカルボニル基を表す。それ以外の記号は式(1)と同じである。ハロゲン原子としては、特に「塩素」「フッ素」のものがよく使われる。アルコキシ基としては、炭素数1〜6のものが挙げられる。またオキソカルボニル基としては、(R1(C=C)−(C=O)O)のものがよく用いられる(特にR1が、式(5)左側のR1と同一のものが、いわゆる酸無水物としてよく用いられる)。前述の通り、この合成工程自体は、文献既知の反応である(特許文献7、8に詳しい)。
式(5)で表される化合物は、目的とする含フッ素重合性単量体の構造に応じて選択することができる。本明細書においては、このうちR1が水素であるものを「アクリル化剤」、R1がメチル基であるものを「メタクリル化剤」、R1がフッ素であるものを「2−フルオロアクリル化剤」、R1がトリフルオロメチル基であるものを「2−トリフルオロメチルアクリル化剤」と呼ぶことがある。
アクリル化剤としてアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル等のアクリル酸エステル、アクリル酸クロリド、アクリル酸フルオリド、アクリル酸ブロミドなどの酸ハライド、アクリル酸無水物、アクリル酸を例示することができる。またメタクリル化剤としてメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸iso−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸iso−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル等のメタクリル酸エステル、メタクリル酸クロリド、メタクリル酸フルオリド、メタクリル酸ブロミドなどの酸ハライド、メタクリル酸無水物、メタクリル酸を例示することができる。2−フルオロアクリル化剤として、2−フルオロアクリル酸メチル、2−フルオロアクリル酸エチル、2−フルオロアクリル酸n−プロピル、2−フルオロアクリル酸iso−プロピル、2−フルオロアクリル酸n−ブチル、2−フルオロアクリル酸iso−ブチル、2−フルオロアクリル酸sec−ブチル、2−フルオロアクリル酸tert−ブチル等のアクリル酸エステル、2−フルオロアクリル酸クロリド、2−フルオロアクリル酸フルオリド、2−フルオロアクリル酸ブロミドなどの酸ハライド、2−フルオロアクリル酸無水物、2−フルオロアクリル酸を例示することができる。2−トリフルオロメチルアクリル化剤として2−トリフルオロメチルアクリル酸メチル、2−トリフルオロメチルアクリル酸エチル、2−トリフルオロメチルアクリル酸n−プロピル、2−トリフルオロメチルアクリル酸iso−プロピル、2−トリフルオロメチルアクリル酸n−ブチル、2−トリフルオロメチルアクリル酸iso−ブチル、2−トリフルオロメチルアクリル酸sec−ブチル、2−トリフルオロメチルアクリル酸tert−ブチル等の2−トリフルオロメチルアクリル酸エステル、2−トリフルオロメチルアクリル酸クロリド、2−トリフルオロメチルアクリル酸フルオリド、2−トリフルオロメチルアクリル酸ブロミドなどの酸ハライド、2−トリフルオロメチルアクリル酸無水物、2−トリフルオロメチルアクリル酸を例示することができる。
これらの中でも、特許文献6や7が開示するように、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸クロリドは、上記スキーム1の反応の反応性が高いこと、得られた含フッ素重合性単量体の重合特性が優れることから、特に好ましい。
式(6)で表されるアルコールとしては、以下の化合物を例示できる。
なお、上記式(6)で表されるアルコールの置換基R3は、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基などアルキル基、フルオロアルキル基の他、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシイソプロピル基、アセチル基、tert−ブトキシカルボニル基、トリアルキルシリル基といった酸や塩基で容易に脱保護可能な保護基を例示することができる。mが2であるとき、2つのR3は、同一であっても異なっていてもよい。
当該合成工程は、特許文献7,8に開示されるように、ヒドロキノン、メトキノン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼンなどのフェノール系重合禁止剤(ヒドロキノン系重合禁止剤とも呼ばれる)や、フェノチアジン、1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル、ノンフレックスF(N,N'−ジ−2−ナフチル−パラ−フェニレンジアミン)などの含窒素重合禁止剤の存在下、行うと、目的とする含フッ素重合性単量体が安定的に高い収率で得られる傾向があり、好ましい。重合禁止剤の量(複数種類の重合禁止剤を使用するときはそれらの合計量)は、式(6)で表されるアルコール100質量部に対して通常0.005質量以上3質量部以下であり、0.01質量部以上〜2質量部以下が好ましく、0.01質量部以上、1質量部以下がより好ましい。
当該合成反応は、以下にも述べる通り、比較的穏和な条件で進行するものであり、後述の蒸留精製工程(第1工程)に比べると、副反応である重合反応が生じる頻度ははるかに低い。加えて、反応工程の場合、蒸留工程におけるような「装置内の閉塞」といった問題も限定的である。このため、式(1)の含フッ素重合性単量体の合成工程では、重合禁止剤の選択について、特別な制限はない。
但し、一旦反応系に加えられた重合禁止剤は、その後、「後処理工程(典型的には水洗処理)」を実施したとしても、その一部は系中に残存する傾向がある。そして、本明細書の冒頭に述べた通り、重合禁止剤の種類によっては、式(1)の含フッ素重合性単量体の蒸留時に至って、着色を生じることがある(比較例1−3も参照)。このため、着色の抑制まで視野に入れた場合、当該「合成工程」で用いる重合禁止剤も、(含窒素重合禁止剤は敢えて用いずに)「フェノール系化合物(ヒドロキノン誘導体)」とすることが、特に好ましい。そうすることによって、後の蒸留精製工程(第1工程)において、「着色を生じにくい」というフェノール系重合禁止剤の利点を、享受しやすくなる。
より具体的には、当該合成工程における重合禁止剤としては、上述のフェノール系化合物A、フェノール系化合物Bのうちの少なくとも1種を用いるのが、特に好ましい。フェノール系化合物A、フェノール系化合物Bの両方を添加して合成工程を行うことも妨げられない。但し、先に述べた通り、合成工程における副反応としての重合反応は相対的に起こりにくい上に、合成工程の後に洗浄(水洗)を行った場合、フェノール系化合物の一部は水に溶けて系外に失われてしまう。こうしたことから、合成工程の段階では、フェノール系化合物A、フェノール系化合物Bの両方を添加することは必ずしも求められず、どちらか一方(例えば一般的に入手の容易なフェノール系化合物A)のみを使って合成工程を行っても差し支えない。
反応は、酸性条件、塩基性条件どちらで実施してもかまわない。酸触媒としては硫酸、塩酸、リン酸、塩化亜鉛、四塩化チタンなどの無機酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸が挙げられる。これらは単独で用いても複数を混合して用いてもよい。塩基としては、アンモニア、ピリジン、2,6−ルチジン、トリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、N,N’−ジメチル−4−アミノピリジン、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどが挙げられる。これらは単独で用いても複数を混合して用いてもよい。
これらの酸触媒、塩基触媒の量に特別の制限はないが、例えば式(6)で表されるアルコール1モルに対して酸触媒であれば0.01〜2モル、塩基触媒であれば0.5〜3モル使用するのは、好ましい形態である。
反応温度には特別の制限はないが、酸触媒を使用する場合には、例えば0〜80℃の範囲で当業者が適宜設定できる。塩基触媒であれば、例えば、−20〜+100℃の範囲で当業者が適宜設定すれば良い。
反応を行う際の溶媒の種類については、縮合反応に関与しなければ特に制限がなく、炭化水素類、芳香族炭化水素類、ケトン類、エーテル類、ハイドロフルオロカーボン類、ハイドロフルオロエーテル類が挙げられる。なお、反応は無溶媒で行っても良いが、反応温度の制御や得られる反応液のハンドリング性を考慮した場合、溶媒を用いることが好ましい。
具体的には、炭化水素類としてはブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンまたはデカン、芳香族系炭化水素類としてはベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンまたはパーフルオロベンゼン、ケトン類としてはアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−iso−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトンまたはメチル−iso−ブチルケトン、エーテル類としてはジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルまたはテトラヒドロフラン、ハイドロフルオロカーボン類としては、トリフルオロメタン、ジフルオロメタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,3,3−ヘプタフルオロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタンまたは1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン、ハイドロフルオロエーテル類としては、メチル1,1,2,2,2−ペンタフルオロエチルエーテル、メチルトリフルオロメチルエーテル、メチル1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、(2,2,3,3−テトラフロオプロピル)(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)エーテル、(メチル)(ノナフルオロブチル)エーテル、(メチル)(ノナフルオロイソブチル)エーテル、(エチル)(ノナフルオロブチル)エーテル、(エチル)(ノナフルオロイソブチル)エーテル、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタン、2−トリフルオロメチル−3−エトキシ−ドデカフルオロヘキサンまたは1,1,1,2,3−ヘキサフルオロ−4−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)ペンタンを例示することができる。これら溶媒は単独で用いても、複数を混合して用いてもよい。
[後処理工程]
上記「合成工程」の終了後、反応混合物を「後処理工程」に付すことができる。「後処理工程」としては、水洗、濾過、濃縮(エバポレーション、フラッシュ蒸留)などの操作のことで、これらのうち、任意のものを選択できるが、これらのうち、水洗と濃縮は特に有用である。
上記「合成工程」の終了後、反応混合物を「後処理工程」に付すことができる。「後処理工程」としては、水洗、濾過、濃縮(エバポレーション、フラッシュ蒸留)などの操作のことで、これらのうち、任意のものを選択できるが、これらのうち、水洗と濃縮は特に有用である。
「後処理工程」は必須ではないが、これを行うことによって、「合成工程」において用いた酸触媒、塩基触媒の残分を除去でき、また反応溶媒を除去できれば、続く「蒸留精製工程(第1工程)」における蒸留設備の負荷が低減される。このため「合成工程」の終了後、第1工程の実施よりも前に、「後処理工程」を実施するのが好ましい。
「後処理工程」の手順に特別な限定はないが、例えば「水洗」については、「合成工程」で得られた反応混合物1gに対して、0.5〜10gの水を加えてよく攪拌したのち、静置し、次いで二相分離するという操作は好ましい。この「水洗」は2〜3回繰り返すと、一層効果的である。
水洗を行うにあたっては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムなどの無機塩基を共存させてもよい。一方、純水(工業用水を含む)を用いて水洗してもよい。
ただ、前述したように、合成工程において重合禁止剤としてフェノール系化合物Aまたはフェノール系化合物Bを用いた場合、フェノール系化合物は水溶性も有するため、水洗処理中に徐々に水によって洗い流されていく。水洗を2回〜3回行う場合には、合成工程において用いた重合禁止剤のうち、典型的には10%〜50%が水によって洗い流され、50%〜90%が反応混合物中になお残存する結果となる。
水洗処理を実施した後、エバポレーション(濃縮)を行えば、合成工程で用いた溶媒や、式(5)、(6)で表される原料物質の残分、低沸点の副生物を除去することができる。
また、縮合反応に使用した固体触媒や用いた塩基由来の塩、副生した重合体など、何らかの固体物質が存在していた場合には、濾過を行うことで、それらを分離除去できる。
このような「後処理工程」を経た該含フッ素重合性単量体を「蒸留精製工程(第1工程)」の原料として用いることができる。濾過に用いるフィルターや、濾過の操作方法については、特別な制限はない。
このような「後処理工程」を経た該含フッ素重合性単量体を「蒸留精製工程(第1工程)」の原料として用いることができる。濾過に用いるフィルターや、濾過の操作方法については、特別な制限はない。
[蒸留精製工程(第1工程)]
続いて、蒸留精製工程(第1工程とも呼ぶ)について説明する。「蒸留精製工程(第1工程)」は、式(1)で表される含フッ素重合性単量体を、前記フェノール系化合物Aとフェノール系化合物Bの存在下、蒸留する工程である。
続いて、蒸留精製工程(第1工程とも呼ぶ)について説明する。「蒸留精製工程(第1工程)」は、式(1)で表される含フッ素重合性単量体を、前記フェノール系化合物Aとフェノール系化合物Bの存在下、蒸留する工程である。
上述した「後処理工程」によっても、該含フッ素重合性単量体は一定程度、純度を高められるが、第1工程の蒸留精製を行うことによって、高沸点成分や、沸点の近接した不純物が存在している場合にはそれらも除去することができ、該含フッ素重合性単量体の品質としての信頼性を格段に高めることができる。
本発明は、当該第1工程において、前記フェノール系化合物Aとフェノール系化合物Bを共存させて蒸留を行うことを特徴とし、それによって、蒸留中における式(1)で表される含フッ素重合性単量体を含む重合性単量体の重合反応(オリゴマー化またはポリマー化をいう)を有意に抑制することができる。
ここで、第1工程の蒸留工程の条件(蒸留温度、段数、還流比など)は、本来、蒸留に供する重合性単量体の種類、不純物プロフィール、沸点、さらには、目的物(留分)に求められる精製度合等に依存して変わるものである。蒸留条件が穏和で済むのであれば、蒸留中における重合反応はそれだけ生じにくいし、逆に、蒸留条件が厳しい場合(例えば、重合性単量体の沸点が高かったり、沸点の近接した不純物が存在していたりして、より厳密な蒸留を行わなければならない場合)は、蒸留中における重合反応はそれだけ起こりやすい。また重合性単量体の種類によっても、蒸留中の重合の起こりやすさは異なることがある。
しかしながら、重要な点として、本発明の第1工程において前記フェノール系化合物Aとフェノール系化合物Bを共存させて蒸留を行うことによって、重合反応が起こりやすい蒸留条件であるか、重合反応が起こりにくい蒸留条件であるかに関わらず、蒸留中の重合反応が相対的には大きく抑制され、蒸留の操作性が著しく向上する。当該効果は、例えば、他の条件を全く同一にして、重合禁止剤として重合禁止剤Aのみ、或いは重合禁止剤Bのみを用いて蒸留を行った場合に比べて、蒸留中における重合反応が大幅に低減される、ということからも確認できる。(後に実施例、比較例として例証する。)。
フェノール系化合物AとBのうち好ましいもの、特に好ましいものは、既に記した通りである。
第1工程(蒸留精製工程)において、フェノール系化合物A又はフェノール系化合物Bとして、それぞれ複数のものを併用することも妨げられない。しかし、重合禁止剤の種類をあまり増やしても、管理面で煩雑になる一方で、重合禁止効果が顕著に高まるわけではない。このため、フェノール系化合物A、フェノール系化合物Bはそれぞれ1種類ずつ用いることが、特に好ましい。
また、フェノール系化合物A,フェノール系化合物Bの他に、第三の重合禁止剤(例えば前述の含窒素重合禁止剤)を別途添加して蒸留精製することも勿論可能である。しかし、品質管理面で煩雑になることはもちろん、3種類目以降の添加の効果は顕著には認められないため、フェノール系化合物A、Bの2種類の添加で十分である。
重合禁止剤であるフェノール系化合物A、Bの含フッ素重合性単量体(式(1))の蒸留前の粗体中の含有量は、式(1)の粗体を基準としてそれぞれ100質量部に対して0.01質量部以上、5質量部以下であり、好ましくは0.01質量部以上、1質量部以下である。
それぞれ0.01質量部未満であると、重合禁止剤の効果が十分でないことがあり、逆に5質量部を超えると、経済的に負担となる。また重合性単量体中の重合禁止剤の含有量が多すぎる場合、後の重合工程でのポリマー化を阻害する場合も起こり得、蒸留終了後に重合禁止剤を別途除去する工程が必要になることもあるので、好ましくない。
第1工程の蒸留精製は、フェノール系化合物Aとフェノール系化合物Bの質量比が1:0.05〜1:10の範囲であると、フェノール系化合物Aとフェノール系化合物Bを重合禁止剤として併用する効果が高まるので、好ましい。質量比が1:0.2〜1:2の範囲であることは、特に好ましい。質量比がこの範囲外であると、2種のフェノール系化合物を併用する効果が十分に現れない場合がある。
なお、ここでいうフェノール系化合物A,Bの含有量の調整方法に特段の制限はない。例えば、全くフェノール系化合物を含有しない含フッ素重合性単量体であれば、その含フッ素重合性単量体の質量に対して、所定の質量のフェノール系化合物A,Bを添加する、という方法を採ればよい。
一方、前述の「合成工程」において、フェノール系化合物A又はBを重合禁止剤として既に添加していた場合、それらの少なくとも一部(典型的には、合成工程時に含まれていた重合禁止剤の50%〜90%)が、含フッ素重合性単量体中に残存していることが通例である。この場合は、例えば次のように含有量を調節することができる。
まず予め、既知試料を用いて、ガスクロマトグラフィーによって、フェノール系化合物A、Bの含有量とガスクロマトグラフ強度の相関係数を割り出しておく。そして、同一の機器を用いて、前述の「合成工程」「後処理工程」を経た、蒸留前の式(1)の含フッ素重合性単量体のガスクロマトグラフを測定する。そこでのフェノール系化合物A又はBのピーク強度から、蒸留前の式(1)の含フッ素重合性単量体に既に含まれているフェノール系化合物A又はBの質量を割り出す。
蒸留直前に新たに追加すべきフェノール系化合物A、Bの量は、それぞれ前記「蒸留直前の含有量」から、当該「既に含まれている量」を差し引いた不足分となる。この手法を採れば、含フッ素重合性単量体中に既にフェノール系化合物A、Bのうち一方のみが含まれていたとしても、或いは、フェノール系化合物A、Bの含有量が、所望の値よりも少なくなっていたとしても、蒸留直前に、両方のフェノール系化合物を、所望の量比(例えば1:1)に調製することができる。
第1工程の蒸留精製を行う圧力は、式(1)の含フッ素重合性単量体の沸点に応じて定めることが好ましい。具体的には大気圧よりも減圧して蒸留精製する方が、蒸留温度を抑制でき、予期せぬ分解を抑止できると共に、エネルギーの節約にもなる。
具体的に、蒸留温度(ボトムの液温)は概ね、50〜250℃であり、80〜180℃であることが好ましく、含フッ素重合性単量体の蒸留がこの範囲の温度で行えるように、減圧条件を設定して蒸留を行うのが好ましい。
具体的に、蒸留温度(ボトムの液温)は概ね、50〜250℃であり、80〜180℃であることが好ましく、含フッ素重合性単量体の蒸留がこの範囲の温度で行えるように、減圧条件を設定して蒸留を行うのが好ましい。
蒸留設備としては一般式(1)の含フッ素重合性単量体の粗体中の組成、即ち分離が必要な副生物の含量に拠るが、薄膜蒸留などの短行程蒸留設備、単蒸留設備、または蒸留塔を用いた設備で実施可能である。蒸留塔を用いる場合、その段数に特別の制限があるわけではないが、通常1〜40段であり、2〜20段であることは、より好ましい。蒸留塔の段数は高いほどに、不純物を分離除去する能力が向上するが、40段を超えるとエネルギー効率の面で不利となる。
段数の下限は特にないものの、第1工程に使用する本発明の重合禁止剤は、段数が相対的に大きく蒸留条件が厳しい場合に、その効果を発揮する傾向がある。よって段数が1である蒸留塔よりは、段数が2以上の蒸留塔、さらに段数が3以上の蒸留塔において、本発明の重合禁止剤を適用することが、本発明の重合禁止剤を用いるメリットが発揮されやすいので、特に好ましい。
蒸留の還流比にも特別の制限はないが、通常1:1〜1:50であり、1:1〜1:20であることが、より好ましい。
第1工程の蒸留精製を、いわゆるエアレーション蒸留として、酸素ガスまたは希釈酸素(窒素、アルゴンなどの不活性ガスで希釈したもの)などを蒸留釜に流通させながら実施してもよい。そうすることによって重合禁止剤の効果を一層高めることができる。
なお、前記フェノール系化合物Aとフェノール系化合物Bの多くのものは固体であるが、何れも昇華性を有するため、第1工程の蒸留条件によって、その一部が留分中に同伴してくる(フェノール系化合物Aであれば、通常0.005〜0.1質量部、フェノール系化合物Bであれば通常0〜0.01質量部)。しかし、重要なこととして、これらフェノール系の重合禁止剤は上記範囲内の含有量であれば、それに続く「重合工程(第2工程)」の条件を設定した場合には、特に重合反応を阻害することはない。また留分に含まれるフェノール系化合物は、該含フッ素重合性単量体の、その後の保存安定性(第1工程終了後から第2工程を開始する前までにおける貯蔵安定性をいう)に大きく寄与する、こうしたことから、これらフェノール系化合物を留分から取り除く必要は、通常ない。その存在量をロット間で揃えるためには、留分中のフェノール系化合物A、Bの存在量をそれぞれ分析して、新たにフェノール系化合物A,Bを補充して、所定の値にこれらの含有量を調節するのが好ましい。
[重合工程(第2工程)]
「重合工程(第2工程)」は、前記第1工程で得た、純度の高められた該含フッ素重合性単量体を重合させて、前記一般式(4)の繰り返し単位を有する含フッ素重合体を合成する工程のことである。
「重合工程(第2工程)」は、前記第1工程で得た、純度の高められた該含フッ素重合性単量体を重合させて、前記一般式(4)の繰り返し単位を有する含フッ素重合体を合成する工程のことである。
なお、本発明の式(1)の含フッ素重合性単量体は、自己重合性を有し、他の重合性単量体が存在しない場合には、高収率で、式(4)の繰り返し単位一種類のみからなるホモポリマーを生成する。一方、他の幅広い重合性単量体(C=C二重結合を有する物質)と任意の比率で共重合して、ヘテロポリマー(以下、含フッ素共重合体とも呼ぶ)を生成する。但し、その場合でも、式(1)の含フッ素重合性単量体のホモポリマーも系内に一部、生成することもある。本発明において「式(4)の繰り返し単位を有する含フッ素重合体」と言ったときは、これら、式(1)の含フッ素重合性単量体から生成したポリマー全般(ホモポリマーおよびヘテロポリマー)を指すものとする。
第2工程(重合工程)は、式(1)の含フッ素重合性単量体を重合開始剤と接触させ、所定の温度、所定の時間反応させることにより、実施できる。目的物がヘテロポリマーである場合には、式(1)の含フッ素重合性単量体以外の重合性単量体(本明細書において「他の重合性単量体」と呼ぶことがある)を共存させて、第2工程を行えば良い。重合開始剤は、ラジカル重合であればラジカル開始剤、カチオン重合のときプロトン酸やルイス酸、アニオン重合の場合は有機金属錯体を用いるが、本発明の重合については、ラジカル重合が特に好ましい。
なお、第2工程(重合工程)の原料である式(1)の含フッ素重合性単量体には、先述の第1工程(蒸留工程)にて用いられた重合禁止剤(A)及び/又は(B)が通常、微量に含まれている。この原料モノマー含まれている前記重合禁止剤の量を工程分析した上で、フェノール系化合物Aとフェノール系化合物Bがそれぞれ定められた含量になるよう、それぞれを追添加することは、第2工程によって得られる含フッ素重合体の品質を一定にする観点から、好ましい。具体的に、式(1)の含フッ素重合性単量体100質量部に対してフェノール系化合物Aは0.05〜0.2質量部、フェノール系化合物Bは0.05質量部〜0.1質量部になるようその必要量を、上述の工程分析より算出して添加することは好ましい例である。なお、本発明の第2工程において上述の重合開始剤を添加することにより、前記重合禁止剤の重合禁止作用は速やかに消失し、円滑に含フッ素重合体を生成する(後述の実施例5〜6を参照)。
「他の重合性単量体」としては、式(1)の含フッ素重合性単量体のR1、R2、R3、mの一つ以上が異なる含フッ素重合性単量体、アクリル酸エステル類、含フッ素アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、含フッ素メタクリル酸エステル類、スチレン類、含フッ素スチレン類、ビニルエーテル類、含フッ素ビニルエーテル類、アリルエーテル類、含フッ素アリルエーテル類、不飽和アミド類、オレフィン類、含フッ素オレフィン類、ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物、ビニルシラン類、ビニルスルホン酸またはビニルスルホン酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸から選ばれた一種類以上の単量体を挙げることができる。
なお、アクリル酸エステル類について更に具体的に例示すると、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートtert−ブチルアクリレート、3−オキソシクロヘキシルアクリレート、アダマンチルアクリレート、メチルアダマンチルアクリレート、エチルアダマンチルアクリレート、ヒドロキシアダマンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、またはトリシクロデカニルアクリレートなどが挙げられる。
次にメタリル酸エステル類について更に具体的に例示すると、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、または2−ヒドロキシプロピルメタクリレートをtert−ブチルメタクリレート、3−オキソシクロヘキシルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、メチルアダマンチルメタクリレート、エチルアダマンチルメタクリレート、ヒドロキシアダマンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、またはトリシクロデカニルメタクリレートなどが挙げられる。
また、「他の重合性単量体」は、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール構造を有するアクリレートまたはメタクリレートであってもよく、ラクトン環やノルボルネン環等の環構造を有したアクリレートまたはメタクリレートであってもよい。更にアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルコキシシラン構造を含有したアクリル酸、ビニルシランであってもよい。
続いて「他の重合性単量体」における含フッ素アクリル酸エステルまたは含フッ素メタクリル酸エステル類について説明する。具体的には、フッ素原子またはフッ素原子を有するアルキル基をアクリル構造のα位に含有したアクリル酸エステル、またはエステル構造にフッ素原子またはフッ素原子を有するアルキル基を含有したアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを例示することができる。
なお、含フッ素アクリル酸エステルまたは含フッ素メタクリル酸エステル類において、アクリル構造のα位とエステル部位の両方にフッ素原子またはフッ素原子を有するアルキル基を含有していてもよい。
含フッ素アクリル酸エステルまたは含フッ素メタクリル酸エステル類において、アクリル構造のα位に導入するフッ素原子を有するアルキル基としては、具体的には、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ノナフルオロ−n−ブチル基を例示することができる。
含フッ素アクリル酸エステルまたは含フッ素メタクリル酸エステル類において、エステル構造がパーフルオロアルキル基またはフルオロアルキル基等のフッ素化アルキル基を有してもよく、エステル構造に環状構造とフッ素原子が共存していてもよく、その環状構造が、フッ素原子、トリフルオロメチル基、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基等を有する含フッ素ベンゼン環、含フッ素シクロペンタン環、含フッ素シクロヘキサン環また含フッ素シクロヘプタン環等を有していてもよい。
この様な含フッ素アクリル酸エステルとしては、具体的には、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルアクリレート、1,1−ジヒドロヘプタフルオロ−n−ブチルアクリレート、1,1,5−トリヒドロオクタフルオロ−n−ペンチルアクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロトリデカフルオロ−n−オクチルアクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロヘプタデカフルオロ−n−デシルアクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチルアクリレート、6−[3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−2−イルアクリレート、6−[3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−2−イル 2−(トリフルオロメチル)アクリレート、または3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシル−2−トリフルオロメチルアクリレート、2−(パ―フルオロヘキシル)エチルアクリレートなどが例示できる。
含フッ素メタクリル酸エステル類としては、具体的には、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルメタクリレート、1,1−ジヒドロヘプタフルオロ−n−ブチルメタクリレート、1,1,5−トリヒドロオクタフルオロ−n−ペンチルメタクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロトリデカフルオロ−n−オクチルメタクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロヘプタデカフルオロ−n−デシルメタクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチルメタクリレート、6−[3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−2−イルメタクリレート、3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシルアクリレート、または3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシルメタクリレート、2−(パ―フルオロヘキシル)エチルメタクリレートなどが例示できる。
「他の重合性単量体」としてのスチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物としては、スチレン、フッ素化スチレン、ヒドロキシスチレン等を挙げることができる。
例えば、フッ素原子またはトリフルオロメチル基で芳香環の水素を置換したスチレンとしての、ペンタフルオロスチレン、トリフルオロメチルスチレンまたはビストリフルオロメチルスチレンを例示することができる。また、芳香環の水素を、ヘキサフルオロイソプロパノール基またはその水酸基を保護基で保護したヘキサフルオロイソプロパノール基で置換したスチレンを例示することができる。また、α位にハロゲン、アルキル基、含フッ素アルキル基が結合した上記スチレン、パーフルオロビニル基含有のスチレン等を挙げることができる。
「他の重合性単量体」におけるビニルエーテル類、含フッ素ビニルエーテル類、アリルエーテル類または含フッ素アリルエーテル類は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヒドロキシエチル基またはヒドロキシブチル基等のヒドロキシル基をこの像中に含有してもよい。シクロヘキシル基、ノルボルニル基、芳香環、もしくはその環状構造内に水素やカルボニル結合を有した環状型ビニル類またはアリルエーテル類を構造中に含有してもよく、これら有する水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよい。
「他の重合性単量体」における不飽和アミド類としては、具体的には、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、またはジアセトンアクリルアミドを例示することができる。
「他の重合性単量体」におけるオレフィン類としては、エチレン、プロピレン、イソブテン、シクロペンテンまたはシクロヘキセンを例示することができる。含フッ素オレフィン類としては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテンを例示することができる。
なお、以上の「他の重合性単量体」は、単独で式(1)の含フッ素重合性単量体と共重合させてもよいし、二種以上のものを併用してもよい。
式(4)で表される繰り返し単位を含む含フッ素重合体が、他の重合性単量体との含フッ素共重合体である場合、含フッ素共重合体中の含フッ素重合性単量体(式(1))が開裂して形成した繰り返し単位と、他の重合性単量体が開裂して形成した繰り返し単位の割合は特に制限なく設定される。例えば、該含フッ素重合体中の繰り返し単位数に占める、式(1)の含フッ素重合性単量体の繰り返し単位数の割合は、1〜99.9%という値を取ることができる。これらは、第2工程の仕込み組成を調節することで設定可能である。
既に述べたように、式(1)の含フッ素重合性単量体には自己重合性があり、式(1)の含フッ素重合性単量体どうしが重合し直鎖を形成していくことができるが、他の重合性単量体が存在していれば、それらもポリマーの主鎖中に取り込み、共重合体を形成する。式(1)の含フッ素重合性単量体の繰り返し単位数の好ましい割合が1〜99.9%と広いのはこのためである。この中でも、該含フッ素重合体中に占める、式(1)の含フッ素重合体の繰り返し単位数の割合が50%以上であることは、式(1)の含フッ素重合体の繰り返し単位の持つ優れた物性をポリマーに反映させやすいので、好ましい一態様である。一方、前記「他の重合性単量体」の繰り返し単位は、該含フッ素重合体のある種の物性を改善するために、添加剤のように、ごく少量添加することも妨げられず、それゆえ式(1)の含フッ素重合性単量体の繰り返し単位数の割合には特別な上限がない。尤も式(1)の含フッ素重合性単量体の繰り返し単位数の好ましい割合が99.9%を超えることも妨げられないが、そうした場合は「他の重合性単量体」がその分、極めて少なくなるから、敢えてそれらの重合性単量体を加える技術的意義が小さくなる。
なお、例えば式(1)の含フッ素重合性単量体の繰り返し単位の割合が90%を超えるような場合、微視的には、式(1)の含フッ素重合性単量体のみが連なったホモポリマーと、式(1)の含フッ素重合性単量体と「他の重合性単量体」の共重合体が混在して一つの樹脂組成物を形成することもあるが、それらすべてが、本発明における式(1)の含フッ素重合体に含まれる。
続いて、式(4)で表される繰り返し単位を含む含フッ素重合体、及び他の重合性単量体との含フッ素共重合体の製造方法について説明する。
一般的に使用される重合反応処方を用いた製造方法であれば特に制限されない。係る製造方法はラジカル重合、イオン重合が好ましく、場合により配位アニオン重合、リビングアニオン重合、カチオン重合を使用してもよい。これらの中でも、ラジカル重合は操作的に特に簡便であり、本発明の式(1)の含フッ素重合性単量体の場合、汎用のラジカル開始剤を用いることで、高収率で目的とする含フッ素重合体を合成できるため、ラジカル重合が特に好ましい。そこで、以下ラジカル重合について詳述する。
本発明の式(4)で表される繰り返し単位を含む含フッ素重合体またはその含フッ素共重合体の製造方法において、ラジカル重合は、ラジカル重合開始剤の存在下で、塊状、溶液、懸濁または乳化等の公知の重合形態で、回分式、半連続式または連続式等の操作を行い、重合反応を行うことができる。反応器内部はよく攪拌し、反応熱を測定しながら、反応を行うことが好ましいことは、言うまでもない。
ラジカル重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、アゾ系化合物、過酸化物系化合物、レドックス系化合物を挙げることができる。なお、リビングラジカル重合を行う場合、それに対応する試薬を添加することができる。
ラジカル重合開始剤を具体的に例示すると、アゾ系化合物としての2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(イソビチレート)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオナミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミンド]、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、過酸化物系化合物としては、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ−t−ブチルパーオキシド、i−ブチリルパーオキシド、ラウロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキシド、ジシンナミルパーオキシド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、過酸化ベンゾイル、過酸化水素または過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
リビングラジカル重合の一つである可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合の際に添加されるRAFT試薬としてジチオベンゾアート化合物、トリチオカルボナート化合物、ジチオカルバマート化合物、キサンタート化合物があるが、具体的に例示すると、2−シアノ−2−プロピルベンゾジチオエート、4−シアノ−4−[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸、シアノメチルメチル(フェニル)カルバモジチオエート、4−シアノ−4−(フェニルカルボノチオイルチオ)ペンタン酸、2−シアノ−2−プロピルドデシルトリチオカルボネート、2−(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)−2−メチルプロピオン酸、シアノメチルドデシルトリチオカルボネートなどが挙げられる。
なお、重合反応に用いる反応容器は特に限定されない。また重合反応において溶媒を用いてもよい。
重合反応溶媒としては、ラジカル重合反応を阻害しないものであればよく、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、環状エーテル系溶剤、フロン系溶剤、芳香族系溶剤または水から選択することができる。これらの溶剤は単独または2種類以上を混合しても使用してもよい。
具体的には、エステル系溶剤としての酢酸エチルもしくは酢酸n−ブチル、ケトン系溶剤としてのアセトンもしくはメチルイソブチルケトン、炭化水素系溶剤としてのトルエンもしくはシクロヘキサン、またはアルコール系溶剤としてのメタノール、イソプロピルアルコールもしくはエチレングリコールモノメチルエーテルなどを例示することができる。
また、ラジカル重合反応において、メルカプタンのような分子量調整剤を併用してもよい。ラジカル重合反応における反応温度は、ラジカル重合開始剤あるいはラジカル重合開始源の種類により適宜変更されるが、好ましくは20℃以上、200℃以下であり、特に好ましくは、30℃以上、140℃以下である。
第2工程(重合反応)を行う場合、各重合性単量体は一括仕込みをしてもよいが、反応器の大きさ、用いる単量体の種類によっては、単量体の一部または全部を逐次添加、或いは連続添加することが好ましいことがある。当業者の知識で、反応熱の状況を観測しながら、仕込みの様式は適宜調節することができる。
第2工程(重合反応)を行う場合、各重合性単量体は一括仕込みをしてもよいが、反応器の大きさ、用いる単量体の種類によっては、単量体の一部または全部を逐次添加、或いは連続添加することが好ましいことがある。当業者の知識で、反応熱の状況を観測しながら、仕込みの様式は適宜調節することができる。
前述のような重合反応により得られる含フッ素重合体またはその含フッ素共重合体の溶液または分散液から、媒質である有機溶剤または水を除去する方法としては、公知の方法を使用することができる。具体的には再沈殿、ろ過、水洗浄または減圧下での加熱留出等の方法を例示することができる。この時得られる含フッ素重合体、含フッ素共重合体の重量平均分子量としては1,000〜100,000、分子量分散度は1〜4が通常の範囲である。
本発明の具体的な実施例を示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、本発明において重合性単量体の純度はガスクロマトグラフィ(GC)を用いて測定している。また重合性単量体中に含まれる重合体(オリゴマー、ポリマー)の不純物については、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)にて測定している。また、第2工程の結果、得られた含フッ素重合性単量体を用いて得られる含フッ素重合体、及び含フッ素共重合体の分子量、分子量分散度については、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)にて測定している。実施例における各分析条件は以下の通りである。
[GC条件]
装置:島津製作所社製、GC2010
カラム:キャピラリーカラム(アジレントJ&W社製、DB−1:膜厚0.25μm、内径0.25mm、長さ30m)
温度プログラム:100℃(3分保持)から10℃/分で250℃まで昇温(10分保持)
気化室、検出器温度:気化室250℃、検出器250℃
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
キャリアガス:ヘリウム
[GPC条件]
装置:東ソー社製、HLC−8320GPC
重合性単量体分析用カラム:東ソー社製、TSKgelシリーズ(G2500HXL、G2000HXL、G1000HXL、G1000HXLの順に直列に接続)
重合体分析用カラム:東ソー社製、TSKgelシリーズ(G2500HXL、G2000HXL、G1000HXL、G1000HXLの順に直列に接続)
温度プログラム:40℃(保持)
流速:1mL/分
検出器:示差屈折検出器(RI)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
また、以下実施例では重合性単量体の純度を便宜上GC面積%として表している。一方、重合禁止剤についてはそれぞれの化合物について、当該分析条件でのGC面積%と質量%の相関取りを事前に実施し、質量%でその含量を表記している。
装置:島津製作所社製、GC2010
カラム:キャピラリーカラム(アジレントJ&W社製、DB−1:膜厚0.25μm、内径0.25mm、長さ30m)
温度プログラム:100℃(3分保持)から10℃/分で250℃まで昇温(10分保持)
気化室、検出器温度:気化室250℃、検出器250℃
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
キャリアガス:ヘリウム
[GPC条件]
装置:東ソー社製、HLC−8320GPC
重合性単量体分析用カラム:東ソー社製、TSKgelシリーズ(G2500HXL、G2000HXL、G1000HXL、G1000HXLの順に直列に接続)
重合体分析用カラム:東ソー社製、TSKgelシリーズ(G2500HXL、G2000HXL、G1000HXL、G1000HXLの順に直列に接続)
温度プログラム:40℃(保持)
流速:1mL/分
検出器:示差屈折検出器(RI)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
また、以下実施例では重合性単量体の純度を便宜上GC面積%として表している。一方、重合禁止剤についてはそれぞれの化合物について、当該分析条件でのGC面積%と質量%の相関取りを事前に実施し、質量%でその含量を表記している。
なお、以下の実施例では、本発明の「含フッ素重合性単量体」のことを、「モノマー」、「重合性単量体」と表記することがある(「モノマーa」「重合性単量体d」などとも表記する)。
実施例1:モノマーa(異性体混合物)の蒸留精製
上記反応式に示されるメタクリル酸無水物(重合禁止剤未含有)(アルコールに対して0.95倍モル量)とアルコール(40kg)のテトラヒドロフラン溶液(アルコール100質量部に対して300質量部)に2,6−ルチジン(アルコールに対して2倍モル量)を加え、重合禁止剤として6−tert−ブチル−2,4−キシレノール(アルコール100質量部に対して0.18質量部)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(アルコール100質量部に対して0.2質量部)を添加した。この溶液を窒素雰囲気下、50℃で8時間攪拌する。反応溶液を室温まで冷却後、水(反応溶液の0.5質量倍量)を添加し、室温下で30分間攪拌した。その後、30分間静定し二層分離し、下層の水層を抜き出した。得られた有機層(上層)に対して同様の水洗をさらに3回繰り返した後、フラッシュ蒸留にてテトラヒドロフランを留去した。この時の粗体のGC純度(残存溶媒であるテトラヒドロフランを除く)は、90.5面積%であった。また重合禁止剤の量も算出したところ、6−tert−ブチル−2,4−キシレノールは、0.10質量%であり、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)は、0.13質量%であった。
このようにして得られた粗体(未精製重合性単量体a)を20L蒸留装置(理論段数4
段)に10kg仕込んだ。ここに重合禁止剤Aとして6−tert−ブチル−2,4−キシレノール(粗体100質量部に対して0.15質量部)と重合禁止剤Bとして2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(粗体100質量部に対して0.12質量部)を添加した。(この結果、粗体100質量部に対する重合禁止剤Aと重合禁止剤Bの含有量は、ともに0.25質量部となった)。
段)に10kg仕込んだ。ここに重合禁止剤Aとして6−tert−ブチル−2,4−キシレノール(粗体100質量部に対して0.15質量部)と重合禁止剤Bとして2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(粗体100質量部に対して0.12質量部)を添加した。(この結果、粗体100質量部に対する重合禁止剤Aと重合禁止剤Bの含有量は、ともに0.25質量部となった)。
続いて、攪拌下、外温140〜160℃とし、0.1〜0.3kPaで減圧蒸留を行った。この際、3%酸素(窒素希釈)を0.5L/分の速度で流しながら還流比1:1で5時間かけて蒸留を実施した。初留0.8kgを分離後、主留に切り替え重合性単量体a(異性体混合物)を8.1kg回収した。得られた主留分(無色透明)の重合性単量体a(異性体混合物)のGC純度は97.0面積%であり、GPC分析においてオリゴマー、ポリマー領域にピークは検出されなかった。また蒸留後の釜残渣について確認したところ、流動性は高く底排弁から詰まりなく回収可能であった。回収量は0.9kgであり、GPC分析においてオリゴマー、ポリマー領域のピークは観られなかった。またマイクロスコープで蒸留塔頂部の内部を確認したところ、固形物は観られず重合体の生成は観られなかった。
実施例1は、後に示す比較例1−1、比較例1−2と、重合禁止剤の他は蒸留原料、条件とも、一切を同一にして蒸留したものであるが、蒸留装置内部(釜残、蒸留塔頂部、又は留出物)における、蒸留原料の重合化が、該比較例に比べて有意に抑制されることが分かった。また比較例1−3に比べて、蒸留中の着色が抑制されていることも確認できた。
比較例1−1
実施例1の反応式に示されるメタクリル酸無水物(重合禁止剤未含有)(アルコールに対して0.95倍モル量)とアルコール(40kg)のテトラヒドロフラン溶液(アルコール100質量部に対して300質量部)に2,6−ルチジン(アルコールに対して2倍モル量)を加え、重合禁止剤として6−tert−ブチル−2,4−キシレノール(アルコール100質量部に対して0.18質量部)を添加した。この溶液を窒素雰囲気下、50℃で8時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却後、水(反応溶液の0.5質量倍量)を添加し、室温下で30分間攪拌した。その後、30分間静定し二層分離し、下層の水層を抜き出した。得られた有機層(上層)に対して同様の水洗をさらに3回繰り返した後、フラッシュ蒸留にてテトラヒドロフランを留去した。この時の粗体のGC純度(残存溶媒であるテトラヒドロフランを除く)は、90.1面積%であった。また重合禁止剤の量も算出したところ、6−tert−ブチル−2,4−キシレノールは、0.10質量%であった。このようにして得られた粗体(未精製重合性単量体a)を20L蒸留装置(理論段数
4段)に10kg仕込んだ。ここに重合禁止剤Aとして6−tert−ブチル−2,4−キシレノール(粗体100質量部に対して0.40質量部)を添加した。(この結果、粗体100質量部に対する重合禁止剤Aの含有量は0.50質量部となった。)。
実施例1の反応式に示されるメタクリル酸無水物(重合禁止剤未含有)(アルコールに対して0.95倍モル量)とアルコール(40kg)のテトラヒドロフラン溶液(アルコール100質量部に対して300質量部)に2,6−ルチジン(アルコールに対して2倍モル量)を加え、重合禁止剤として6−tert−ブチル−2,4−キシレノール(アルコール100質量部に対して0.18質量部)を添加した。この溶液を窒素雰囲気下、50℃で8時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却後、水(反応溶液の0.5質量倍量)を添加し、室温下で30分間攪拌した。その後、30分間静定し二層分離し、下層の水層を抜き出した。得られた有機層(上層)に対して同様の水洗をさらに3回繰り返した後、フラッシュ蒸留にてテトラヒドロフランを留去した。この時の粗体のGC純度(残存溶媒であるテトラヒドロフランを除く)は、90.1面積%であった。また重合禁止剤の量も算出したところ、6−tert−ブチル−2,4−キシレノールは、0.10質量%であった。このようにして得られた粗体(未精製重合性単量体a)を20L蒸留装置(理論段数
4段)に10kg仕込んだ。ここに重合禁止剤Aとして6−tert−ブチル−2,4−キシレノール(粗体100質量部に対して0.40質量部)を添加した。(この結果、粗体100質量部に対する重合禁止剤Aの含有量は0.50質量部となった。)。
続いて、攪拌下、外温を140〜160℃とし、0.1〜0.3kPaで蒸留を行った。この際空気を0.5L/分の速度で流しながら、還流比1:1で5時間かけて蒸留を実施した。初留0.8kgを分離後、主留に切り替えモノマーa(異性体混合物)を7.5kg回収した。得られた主留分(無色透明)のモノマーa(異性体混合物)のGC純度は96.7面積%であった。GPC分析で留分中にオリゴマー、ポリマーのピークが観測されなかったが、蒸留後の釜残渣については、粘度上昇が観られ底排弁からの排出に時間を要した。回収量は1.5kgであり、GPC分析においてオリゴマー、ポリマー領域にピークが32面積%で検出された。またマイクロスコープで蒸留塔頂部の内部を確認したところ、固形物は観られず重合体の生成は観られなかった。
比較例1−2
実施例1の反応式に示されるメタクリル酸無水物(重合禁止剤未含有)(アルコールに対して0.95倍モル量)とアルコール(40kg)のテトラヒドロフラン溶液(アルコール100質量部に対して300質量部)に2,6−ルチジン(アルコールに対して2倍モル量)を加え、重合禁止剤として2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(アルコール100質量部に対して0.20質量部)を添加した。この溶液を窒素雰囲気下、50℃で8時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却後、水(反応溶液の0.5質量倍量)を添加し、室温下で30分間攪拌した。その後、30分間静定し二層分離し、下層の水層を抜き出した。得られた有機層(上層)に対して同様の水洗をさらに3回繰り返した後、フラッシュ蒸留にてテトラヒドロフランを留去した。この時の粗体のGC純度(残存溶媒であるテトラヒドロフランを除く)は、90.2面積%であった。また重合禁止剤の量も算出したところ、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)は、0.13質量%であった。このようにして得られた粗体(未精製重合性単量体a)を20L蒸留装置(理論段数4段)に10kg仕込んだ
。ここに重合禁止剤Bとして2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(粗体100質量部に対して0.37質量部)を添加した。(この結果、粗体100質量部に対する重合禁止剤Bの含有量は0.50質量部となった。)。
実施例1の反応式に示されるメタクリル酸無水物(重合禁止剤未含有)(アルコールに対して0.95倍モル量)とアルコール(40kg)のテトラヒドロフラン溶液(アルコール100質量部に対して300質量部)に2,6−ルチジン(アルコールに対して2倍モル量)を加え、重合禁止剤として2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(アルコール100質量部に対して0.20質量部)を添加した。この溶液を窒素雰囲気下、50℃で8時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却後、水(反応溶液の0.5質量倍量)を添加し、室温下で30分間攪拌した。その後、30分間静定し二層分離し、下層の水層を抜き出した。得られた有機層(上層)に対して同様の水洗をさらに3回繰り返した後、フラッシュ蒸留にてテトラヒドロフランを留去した。この時の粗体のGC純度(残存溶媒であるテトラヒドロフランを除く)は、90.2面積%であった。また重合禁止剤の量も算出したところ、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)は、0.13質量%であった。このようにして得られた粗体(未精製重合性単量体a)を20L蒸留装置(理論段数4段)に10kg仕込んだ
。ここに重合禁止剤Bとして2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(粗体100質量部に対して0.37質量部)を添加した。(この結果、粗体100質量部に対する重合禁止剤Bの含有量は0.50質量部となった。)。
続いて、攪拌下、外温を140〜160℃とし、0.1〜0.3kPaで蒸留を行った。この際空気を0.5L/分の速度で流しながら、還流比1:1で5時間かけて蒸留を実施した。初留0.8kgを分離後、主留に切り替えモノマーa(異性体混合物)を7.9kg回収した。得られた主留分(無色透明)のモノマーa(異性体混合物)のGC純度は96.9面積%であった。GPC分析で留分中にオリゴマー、ポリマー領域のピークが0.5面積%検出された。一方、蒸留後の釜残渣について確認したところ、流動性は高く底排弁から詰まりなく回収可能であった。回収量は1.1kgであり、GPC分析においてオリゴマー、ポリマー領域のピークは未検出であった。またマイクロスコープで蒸留塔頂部の内部を確認したところ、固形物は観られず重合体の生成は観られなかった。
比較例1−3
実施例1の反応式に示されるメタクリル酸無水物(重合禁止剤未含有)(アルコールに対して0.95倍モル量)とアルコール(40kg)のテトラヒドロフラン溶液(アルコール100質量部に対して300質量部)に2,6−ルチジン(アルコールに対して2倍モル量)を加え、重合禁止剤としてフェノチアジン(アルコール100質量部に対して0.20質量部)を添加した。この溶液を窒素雰囲気下、50℃で8時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却後、水(反応溶液の0.5質量倍量)を添加し、室温下で30分間攪拌した。その後、30分間静定し二層分離し、下層の水層を抜き出した。得られた有機層(上層)に対して同様の水洗をさらに3回繰り返した後、フラッシュ蒸留にてテトラヒドロフランを留去した。この時の粗体のGC純度(残存溶媒であるテトラヒドロフランを除く)は、90.0面積%であった。また重合禁止剤の量も算出したところ、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)は、0.15質量%であった。
このようにして得られた粗体(未精製重合性単量体a)を20L蒸留装置(理論段数4段
)に10kg仕込んだ。ここに重合禁止剤Bとして2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(粗体100質量部に対して0.35質量部)を添加した。(この結果、粗体100質量部に対するフェノチアジンの含有量は0.50質量部となった。)。
実施例1の反応式に示されるメタクリル酸無水物(重合禁止剤未含有)(アルコールに対して0.95倍モル量)とアルコール(40kg)のテトラヒドロフラン溶液(アルコール100質量部に対して300質量部)に2,6−ルチジン(アルコールに対して2倍モル量)を加え、重合禁止剤としてフェノチアジン(アルコール100質量部に対して0.20質量部)を添加した。この溶液を窒素雰囲気下、50℃で8時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却後、水(反応溶液の0.5質量倍量)を添加し、室温下で30分間攪拌した。その後、30分間静定し二層分離し、下層の水層を抜き出した。得られた有機層(上層)に対して同様の水洗をさらに3回繰り返した後、フラッシュ蒸留にてテトラヒドロフランを留去した。この時の粗体のGC純度(残存溶媒であるテトラヒドロフランを除く)は、90.0面積%であった。また重合禁止剤の量も算出したところ、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)は、0.15質量%であった。
このようにして得られた粗体(未精製重合性単量体a)を20L蒸留装置(理論段数4段
)に10kg仕込んだ。ここに重合禁止剤Bとして2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(粗体100質量部に対して0.35質量部)を添加した。(この結果、粗体100質量部に対するフェノチアジンの含有量は0.50質量部となった。)。
続いて、攪拌下、外温を140〜160℃とし、0.1〜0.3kPaで蒸留を行った。この際空気を0.5L/分の速度で流しながら、還流比1:1で5時間かけて蒸留を実施した。初留0.9kgを分離後、主留に切り替えモノマーa(異性体混合物)を7.3kg回収した。得られた主留分(薄い桃色)のモノマーa(異性体混合物)のGC純度は95.9面積%であった。GPC分析で留分中にオリゴマー、ポリマーのピークが観測されなかったが、蒸留後の釜残渣については、粘度上昇が観られ底排弁からの排出に時間を要した。回収量は1.6kgであり、GPC分析においてオリゴマー、ポリマー領域にピークが39面積%で検出された。またマイクロスコープで蒸留塔頂部の内部を確認したところ、固形物は観られず重合体の生成は観られなかった。
実施例2:モノマーbの蒸留精製
上記反応式に示されるメタクリル酸無水物(重合禁止剤未含有)(アルコールに対して1倍モル量)とアルコール(40kg)のテトラヒドロフラン溶液(アルコール100質量部に対して300質量部)に2,6−ルチジン(アルコールに対して2倍モル量)を加え、重合禁止剤として6−tert−ブチル−2,4−キシレノール(アルコール100質量部に対して0.2質量部)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(アルコール100質量部に対して0.2質量部)を添加した。この溶液を窒素雰囲気下、40℃で5時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却後、水(反応溶液の0.5質量倍量)を添加し、室温下で30分間攪拌した。その後、30分間静定し二層分離し、下層の水層を抜き出した。得られた有機層(上層)に対して同様の水洗をさらに3回繰り返した後、フラッシュ蒸留にてテトラヒドロフランを留去した。この時の粗体のGC純度(残存溶媒であるテトラヒドロフランを除く)は、96.5面積%であった。また重合禁止剤の量も算出したところ、6−tert−ブチル−2,4−キシレノールは、0.10質量%、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)は、0.15質量%であった。このようにして得られた粗体(未精製重合性単量体b)を30L蒸留装置(不規則充填物、理論段数8段)に15kg仕込んだ。ここに重合禁止剤Aとして6−tert−ブチル−2,4−キシレノール(粗体100質量部に対して0.1質量部)と重合禁止剤Bとして2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(粗体100質量部に対して0.05質量部)を添加した。(この結果、粗体100質量部に対する重合禁止剤Aと重合禁止剤Bの含有量は、ともに0.20質量部となった)。
続いて、攪拌下、外温を120〜130℃とし、1〜3kPaで減圧蒸留を行った。この際、3%酸素(窒素希釈)を0.5L/分の速度で流しながら、還流比1:5で8時間蒸留を実施した。初留1.1kgを分離後、主留に切り替え重合性単量体bを12.0kg回収した。得られた主留分(無色透明)の重合性単量体bのGC純度は99.6面積%であり、GPC分析においてオリゴマー、ポリマー領域にピークは検出されなかった。また蒸留後の釜残渣について確認したところ、流動性は高く底排弁から詰まりなく回収可能であった。回収量は1.7kgであり、GPC分析においてオリゴマー、ポリマー領域にピークは観られなかった。またマイクロスコープで蒸留塔頂部の内部を確認したところ、固形物は観られず重合体の生成は観られなかった。
実施例2は、後に示す比較例2−1、比較例2−2と、重合禁止剤の他は蒸留原料、蒸留条件とも、同一にして蒸留したものであるが、蒸留装置内部(釜残、蒸留塔頂部、又は留出物)における、蒸留原料の重合化が、該比較例に比べて有意に抑制されていることが分かった。
比較例2−1
実施例2の反応式に示されるメタクリル酸無水物(重合禁止剤未含有)(アルコールに対して1倍モル量)とアルコール(40kg)のテトラヒドロフラン溶液(アルコール100質量部に対して300質量部)に2,6−ルチジン(アルコールに対して2倍モル量)を加え、重合禁止剤として6−tert−ブチル−2,4−キシレノール(アルコール100質量部に対して0.2質量部)を添加した。この溶液を窒素雰囲気下、40℃で5時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却後、水(反応溶液の0.5質量倍量)を添加し、室温下で30分間攪拌した。その後、30分間静定し二層分離し、下層の水層を抜き出した。得られた有機層(上層)に対して同様の水洗をさらに3回繰り返した後、フラッシュ蒸留にてテトラヒドロフランを留去した。この時の粗体のGC純度(残存溶媒であるテトラヒドロフランを除く)は、96.3面積%であった。また重合禁止剤の量も算出したところ、6−tert−ブチル−2,4−キシレノールは、0.10質量%であった。 このようにして得られた粗体(未精製重合性単量体b)を30L蒸留装置(不規則充填物、理論段数8段)に15kg仕込んだ。ここに重合禁止剤Aとして6−tert−ブチル−2,4−キシレノール(粗体100質量部に対して0.3質量部)を添加した。(この結果、粗体100質量部に対する重合禁止剤Aの含有量は0.40質量部となった。)。
実施例2の反応式に示されるメタクリル酸無水物(重合禁止剤未含有)(アルコールに対して1倍モル量)とアルコール(40kg)のテトラヒドロフラン溶液(アルコール100質量部に対して300質量部)に2,6−ルチジン(アルコールに対して2倍モル量)を加え、重合禁止剤として6−tert−ブチル−2,4−キシレノール(アルコール100質量部に対して0.2質量部)を添加した。この溶液を窒素雰囲気下、40℃で5時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却後、水(反応溶液の0.5質量倍量)を添加し、室温下で30分間攪拌した。その後、30分間静定し二層分離し、下層の水層を抜き出した。得られた有機層(上層)に対して同様の水洗をさらに3回繰り返した後、フラッシュ蒸留にてテトラヒドロフランを留去した。この時の粗体のGC純度(残存溶媒であるテトラヒドロフランを除く)は、96.3面積%であった。また重合禁止剤の量も算出したところ、6−tert−ブチル−2,4−キシレノールは、0.10質量%であった。 このようにして得られた粗体(未精製重合性単量体b)を30L蒸留装置(不規則充填物、理論段数8段)に15kg仕込んだ。ここに重合禁止剤Aとして6−tert−ブチル−2,4−キシレノール(粗体100質量部に対して0.3質量部)を添加した。(この結果、粗体100質量部に対する重合禁止剤Aの含有量は0.40質量部となった。)。
続いて、攪拌下、外温を120〜130℃とし、1〜3kPaで減圧蒸留を行った。この際空気を0.5L/分の速度で流しながら、蒸留を実施した。初留1.2kgを分離後、主留に切り替えモノマーbを11.1kg回収した。得られた主留分(無色透明)のモノマーbのGC純度は99.4面積%であり、GPC分析においてオリゴマー、ポリマー領域にピークは観られなかった。一方、蒸留後の釜残渣については、粘度上昇が観られ底排弁からの抜き出しに時間を要した。回収量は1.6kgであり、GPC分析の結果、オリゴマー、ポリマー領域にピークが8.2面積%で検出された。またマイクロスコープで蒸留塔頂部の内部を確認したところ、固形物は観られず重合体の生成は観られなかった。
比較例2−2
実施例2の反応式に示されるメタクリル酸無水物(重合禁止剤未含有)(アルコールに対して1倍モル量)とアルコール(40kg)のテトラヒドロフラン溶液(アルコール100質量部に対して300質量部)に2,6−ルチジン(アルコールに対して2倍モル量)を加え、重合禁止剤として2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(アルコール100質量部に対して0.20質量部)を添加した。この溶液を窒素雰囲気下、40℃で5時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却後、水(反応溶液の0.5質量倍量)を添加し、室温下で30分間攪拌した。その後、30分間静定し二層分離し、下層の水層を抜き出した。得られた有機層(上層)に対して同様の水洗をさらに3回繰り返した後、フラッシュ蒸留にてテトラヒドロフランを留去した。この時の粗体のGC純度(残存溶媒であるテトラヒドロフランを除く)は、96.4面積%であった。また重合禁止剤の量も算出したところ、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)は、0.15質量%であった。このようにして得られた粗体(未精製モノマーb)を30L蒸留装置(不規則充填物、理論段数8段)に15kg仕込んだ。ここに重合禁止剤Bとして2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(粗体100質量部に対して0.25質量部)を添加した。(この結果、粗体100質量部に対する重合禁止剤Bの含有量は0.40質量部となった。)。
実施例2の反応式に示されるメタクリル酸無水物(重合禁止剤未含有)(アルコールに対して1倍モル量)とアルコール(40kg)のテトラヒドロフラン溶液(アルコール100質量部に対して300質量部)に2,6−ルチジン(アルコールに対して2倍モル量)を加え、重合禁止剤として2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(アルコール100質量部に対して0.20質量部)を添加した。この溶液を窒素雰囲気下、40℃で5時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却後、水(反応溶液の0.5質量倍量)を添加し、室温下で30分間攪拌した。その後、30分間静定し二層分離し、下層の水層を抜き出した。得られた有機層(上層)に対して同様の水洗をさらに3回繰り返した後、フラッシュ蒸留にてテトラヒドロフランを留去した。この時の粗体のGC純度(残存溶媒であるテトラヒドロフランを除く)は、96.4面積%であった。また重合禁止剤の量も算出したところ、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)は、0.15質量%であった。このようにして得られた粗体(未精製モノマーb)を30L蒸留装置(不規則充填物、理論段数8段)に15kg仕込んだ。ここに重合禁止剤Bとして2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(粗体100質量部に対して0.25質量部)を添加した。(この結果、粗体100質量部に対する重合禁止剤Bの含有量は0.40質量部となった。)。
続いて、攪拌下、外温を120〜130℃とし、1〜3kPaで減圧蒸留を行った。この際、3%酸素(窒素希釈)を0.5L/分の速度で流しながら、還流比1:5で8時間蒸留を実施した。初留1.1kgを分離後、主留に切り替え重合性単量体bを11.9kg回収した。得られた主留分(無色透明)の重合性単量体bのGC純度は99.0面積%であり、GPC分析においてオリゴマー、ポリマー領域に0.8面積%のピークが検出された。一方、蒸留後の釜残渣について確認したところ、流動性は高く底排弁から詰まりなく回収可能であった。回収量は1.8kgであり、GPC分析においてオリゴマー、ポリマー領域にピークは観られなかった。またマイクロスコープで蒸留塔頂部の内部を確認したところ、白色固形物が観られた。アセトンでの炊き上げ洗浄を繰り返したが、この白色固形物を完全に除去することはできなかったため、蒸留塔を解体して物理的にこそぎ落とし設備を復旧した。
実施例3:モノマーcの蒸留精製
上記反応式に示されるメタクリル酸無水物(重合禁止剤未含有)(アルコールに対して1倍モル量)とアルコール(40kg)のテトラヒドロフラン溶液(アルコール100質量部に対して400質量部)にトリエチルアミン(アルコールに対して2倍モル量)を加え、重合禁止剤として6−tert−ブチル−2,4−キシレノール(アルコール100質量部に対して0.2質量部)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)(アルコール100質量部に対して0.2質量部)を添加した。この溶液を窒素雰囲気下、50℃で6時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却後、水(反応溶液の0.5質量倍量)を添加し、室温下で30分間攪拌した。その後、30分間静定し二層分離し、下層の水層を抜き出した。得られた有機層(上層)に対して同様の水洗をさらに2回繰り返した後、フラッシュ蒸留にてテトラヒドロフランを留去した。この時の粗体のGC純度(残存溶媒であるテトラヒドロフランを除く)は、97.2面積%であった。また重合禁止剤の量も算出したところ、6−tert−ブチル−2,4−キシレノールは、0.12質量%、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)は、0.15質量%であった。このようにして得られた粗体(未精製重合性単量体c)を30L蒸留装置(不規則充填物、理論段数8段)に12kg仕込んだ。ここに重合禁止剤Aとして6−tert−ブチル−2,4−キシレノール(粗体100質量部に対して0.08質量部)と重合禁止剤Bとして2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)(粗体100質量部に対して0.05質量部)を添加した。(この結果、粗体100質量部に対する重合禁止剤Aと重合禁止剤Bの含有量は、ともに0.20質量部となった)。
続いて、攪拌下、外温を125〜140℃とし、1〜3kPaで減圧蒸留を行った。この際3%、酸素(窒素希釈)を0.5L/分の速度で流しながら、還流比1:5で8時間蒸留を実施した。初留0.8kgを分離後、主留に切り替え重合性単量体cを9.5kg回収した。得られた主留分(無色透明)の重合性単量体cのGC純度は99.8面積%であり、GPC分析においてオリゴマー、ポリマー領域にピークは観られなかった。また蒸留後の釜残渣について確認したところ、流動性は高く底排弁から詰まりなく回収可能であった。回収量は1.3kgであり、GPC分析においてオリゴマー、ポリマー領域にピークは観られなかった。またマイクロスコープで蒸留塔頂部の内部を確認したところ、固形物は観られず重合体の生成は観られなかった。
実施例3は、後に示す比較例3−1、比較例3−2と、重合禁止剤の他は蒸留原料、蒸留条件とも、同一にして蒸留したものであるが、蒸留装置内部(釜残、蒸留塔頂部、又は留出物)における、蒸留原料の重合化が、該比較例に比べて有意に抑制されていることが分かった。
比較例3−1
実施例3の反応式に示されるメタクリル酸無水物(重合禁止剤未含有)(アルコールに対して1倍モル量)とアルコール(40kg)のテトラヒドロフラン溶液(アルコール100質量部に対して400質量部)にトリエチルアミン(アルコールに対して2倍モル量)を加え、重合禁止剤として6−tert−ブチル−2,4−キシレノール(アルコール100質量部に対して0.2質量部)を添加した。この溶液を窒素雰囲気下、40℃で5時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却後、水(反応溶液の0.5質量倍量)を添加し、室温下で30分間攪拌した。その後、30分間静定し二層分離し、下層の水層を抜き出した。得られた有機層(上層)に対して同様の水洗をさらに2回繰り返した後、フラッシュ蒸留にてテトラヒドロフランを留去した。この時の粗体のGC純度(残存溶媒であるテトラヒドロフランを除く)は、96.9面積%であった。また重合禁止剤の量も算出したところ、6−tert−ブチル−2,4−キシレノールは、0.12質量%であった。このようにして得られた粗体(未精製重合性単量体c)を30L蒸留装置(不規則充填物、理論段数8段)に12kg仕込んだ。ここに重合禁止剤Aとして6−tert−ブチル−2,4−キシレノール(粗体100質量部に対して0.28質量部)を添加した。(この結果、粗体100質量部に対する重合禁止剤Aの含有量は0.40質量部となった。)。
実施例3の反応式に示されるメタクリル酸無水物(重合禁止剤未含有)(アルコールに対して1倍モル量)とアルコール(40kg)のテトラヒドロフラン溶液(アルコール100質量部に対して400質量部)にトリエチルアミン(アルコールに対して2倍モル量)を加え、重合禁止剤として6−tert−ブチル−2,4−キシレノール(アルコール100質量部に対して0.2質量部)を添加した。この溶液を窒素雰囲気下、40℃で5時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却後、水(反応溶液の0.5質量倍量)を添加し、室温下で30分間攪拌した。その後、30分間静定し二層分離し、下層の水層を抜き出した。得られた有機層(上層)に対して同様の水洗をさらに2回繰り返した後、フラッシュ蒸留にてテトラヒドロフランを留去した。この時の粗体のGC純度(残存溶媒であるテトラヒドロフランを除く)は、96.9面積%であった。また重合禁止剤の量も算出したところ、6−tert−ブチル−2,4−キシレノールは、0.12質量%であった。このようにして得られた粗体(未精製重合性単量体c)を30L蒸留装置(不規則充填物、理論段数8段)に12kg仕込んだ。ここに重合禁止剤Aとして6−tert−ブチル−2,4−キシレノール(粗体100質量部に対して0.28質量部)を添加した。(この結果、粗体100質量部に対する重合禁止剤Aの含有量は0.40質量部となった。)。
続いて、攪拌下、外温を125〜140℃とし、1〜3kPaで減圧蒸留を行った。この際3%、酸素(窒素希釈)を0.5L/分の速度で流しながら、還流比1:5で8時間蒸留を実施した。初留0.8kgを分離後、主留に切り替え重合性単量体cを9.3kg回収した。得られた主留分(無色透明)のモノマーcのGC純度は99.5面積%であり、GPC分析においてオリゴマー、ポリマー領域にピークは観られなかった。一方、蒸留後の釜残渣については、流動性は高く底排弁から詰まりなく回収可能であったが、GPC分析の結果、オリゴマー、ポリマー領域にピークが2.2面積%で検出された。釜残渣の回収量は1.5kgであった。またマイクロスコープで蒸留塔頂部の内部を確認したところ、固形物は観られず重合体の生成は観られなかった。
比較例3−2
実施例3の反応式に示されるメタクリル酸無水物(重合禁止剤未含有)(アルコールに対して1倍モル量)とアルコール(40kg)のテトラヒドロフラン溶液(アルコール100質量部に対して400質量部)にトリエチルアミン(アルコールに対して2倍モル量)を加え、重合禁止剤として2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)(アルコール100質量部に対して0.20質量部)を添加した。この溶液を窒素雰囲気下、40℃で5時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却後、水(反応溶液の0.5質量倍量)を添加し、室温下で30分間攪拌した。その後、30分間静定し二層分離し、下層の水層を抜き出した。得られた有機層(上層)に対して同様の水洗をさらに2回繰り返した後、フラッシュ蒸留にてテトラヒドロフランを留去した。この時の粗体のGC純度(残存溶媒であるテトラヒドロフランを除く)は、97.1面積%であった。また重合禁止剤の量も算出したところ、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)は、0.16質量%であった。このようにして得られた粗体(未精製重合性単量体c)を30L蒸留装置(不規則充填物、理論段数8段)に12kg仕込んだ。ここに重合禁止剤Bとして2,2−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)(粗体100質量部に対して0.24質量部)を添加した。(この結果、粗体100質量部に対する重合禁止剤Bの含有量は0.40質量部となった。)。
実施例3の反応式に示されるメタクリル酸無水物(重合禁止剤未含有)(アルコールに対して1倍モル量)とアルコール(40kg)のテトラヒドロフラン溶液(アルコール100質量部に対して400質量部)にトリエチルアミン(アルコールに対して2倍モル量)を加え、重合禁止剤として2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)(アルコール100質量部に対して0.20質量部)を添加した。この溶液を窒素雰囲気下、40℃で5時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却後、水(反応溶液の0.5質量倍量)を添加し、室温下で30分間攪拌した。その後、30分間静定し二層分離し、下層の水層を抜き出した。得られた有機層(上層)に対して同様の水洗をさらに2回繰り返した後、フラッシュ蒸留にてテトラヒドロフランを留去した。この時の粗体のGC純度(残存溶媒であるテトラヒドロフランを除く)は、97.1面積%であった。また重合禁止剤の量も算出したところ、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)は、0.16質量%であった。このようにして得られた粗体(未精製重合性単量体c)を30L蒸留装置(不規則充填物、理論段数8段)に12kg仕込んだ。ここに重合禁止剤Bとして2,2−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)(粗体100質量部に対して0.24質量部)を添加した。(この結果、粗体100質量部に対する重合禁止剤Bの含有量は0.40質量部となった。)。
続いて、攪拌下、外温を125〜140℃とし、1〜3kPaで減圧蒸留を行った。この際3%、酸素(窒素希釈)を0.5L/分の速度で流しながら、還流比1:5で8時間蒸留を実施した。初留0.8kgを分離後、主留に切り替え重合性単量体cを9.4kg回収した。得られた主留分(無色透明)のモノマーcのGC純度は99.0面積%であり、GPC分析でオリゴマー領域に0.1面積%のピークが検出された。一方、蒸留後の釜残渣については、流動性は高く底排弁から詰まりなく回収可能であった。回収量は1.4kgであり、GPC分析においてオリゴマー、ポリマー領域にピークは観られなかった。またマイクロスコープで蒸留塔頂部の内部を確認したところ、固形物は観られず重合体の生成は観られなかった。
実施例4:重合性単量体dの蒸留精製
上記反応式に示されるアクリル酸クロリド(アルコールに対して1.05倍モル量)とアルコール(30kg)のテトラヒドロフラン溶液(アルコール100質量部に対して400質量部)にトリエチルアミン(アルコールに対して2.1倍モル量)、N,N−ジメチルー4−アミノピリジン(アルコール100質量部に対して0.05質量部)を加え、重合禁止剤としてメトキノン(アルコール100質量部に対して0.2質量部)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)(アルコール100質量部に対して0.2質量部)を添加した。この溶液を窒素雰囲気下、40℃で5時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却後、水(反応溶液の0.5質量倍量)を添加し、室温下で30分間攪拌した。その後、30分間静定し二層分離し、下層の水層を抜き出した。得られた有機層(上層)に対して同様の水洗をさらに3回繰り返した後、フラッシュ蒸留にてテトラヒドロフランを留去した。この時の粗体のGC純度(残存溶媒であるテトラヒドロフランを除く)は、95.8面積%であった。また重合禁止剤の量も算出したところ、メトキノンは、0.08質量%、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)は、0.1質量%であった。であった。このようにして得られた粗体(未精製重合性単量体d)を20L蒸留装置(理論段数4段)に10kg仕込んだ。ここに重合禁止剤Aとしてメトキノン(粗体100質量部に対して0.12質量部)と重合禁止剤Bとして2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)(粗体100質量部に対して0.1質量部)を添加した。(この結果、粗体100質量部に対する重合禁止剤Aと重合禁止剤Bの含有量は、ともに0.20質量部となった)。
続いて、攪拌下、外温を130〜145℃とし、0.5〜2kPaで減圧蒸留を行った。この際3%、酸素(窒素希釈)を0.5L/分の速度で流しながら、還流比1:1で5時間蒸留を実施した。初留0.9kgを分離後、主留に切り替え重合性単量体dを7.3kg回収した。得られた主留分(無色透明)の重合性単量体dのGC純度は98.5面積%であり、GPC分析においてオリゴマー、ポリマー領域にピークは観られなかった。一方、蒸留後の釜残渣については、流動性は高く底排弁から詰まりなく回収可能であったが、GPC分析の結果、オリゴマー、ポリマー領域にピークが2.2面積%で検出された。釜残渣の回収量は1.5kgであった。またマイクロスコープで蒸留塔頂部の内部を確認したところ、固形物は観られず重合体の生成は観られなかった。
実施例4は、後に示す比較例4−1、比較例4−2と、重合禁止剤の他は蒸留原料、蒸留条件とも、同一にして蒸留したものであるが、蒸留装置内部(釜残、蒸留塔頂部、又は留出物)における、蒸留原料の重合化が、該比較例に比べて有意に抑制されていることが分かった。
比較例4−1
実施例4の反応式に示されるアクリル酸クロリド(アルコールに対して1.05倍モル量)とアルコール(30kg)のテトラヒドロフラン溶液(アルコール100質量部に対して400質量部)にトリエチルアミン(アルコールに対して2.1倍モル量)、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(アルコール100質量部に対して0.05質量部)を加え、重合禁止剤としてメトキノン(アルコール100質量部に対して0.2質量部)を添加した。この溶液を窒素雰囲気下、40℃で5時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却後、水(反応溶液の0.5質量倍量)を添加し、室温下で30分間攪拌した。その後、30分間静定し二層分離し、下層の水層を抜き出した。得られた有機層(上層)に対して同様の水洗をさらに3回繰り返した後、フラッシュ蒸留にてテトラヒドロフランを留去した。この時の粗体のGC純度(残存溶媒であるテトラヒドロフランを除く)は、95.8面積%であった。また重合禁止剤の量も算出したところ、メトキノンは、0.08質量%であった。であった。このようにして得られた粗体(未精製重合性単量体d)を20L蒸留装置(理論段数4段)に10kg仕込んだ。ここに重合禁止剤Aとしてメトキノン(粗体100質量部に対して0.32質量部)を添加した。(この結果、粗体100質量部に対する重合禁止剤Aの含有量は0.40質量部となった。)。
実施例4の反応式に示されるアクリル酸クロリド(アルコールに対して1.05倍モル量)とアルコール(30kg)のテトラヒドロフラン溶液(アルコール100質量部に対して400質量部)にトリエチルアミン(アルコールに対して2.1倍モル量)、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(アルコール100質量部に対して0.05質量部)を加え、重合禁止剤としてメトキノン(アルコール100質量部に対して0.2質量部)を添加した。この溶液を窒素雰囲気下、40℃で5時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却後、水(反応溶液の0.5質量倍量)を添加し、室温下で30分間攪拌した。その後、30分間静定し二層分離し、下層の水層を抜き出した。得られた有機層(上層)に対して同様の水洗をさらに3回繰り返した後、フラッシュ蒸留にてテトラヒドロフランを留去した。この時の粗体のGC純度(残存溶媒であるテトラヒドロフランを除く)は、95.8面積%であった。また重合禁止剤の量も算出したところ、メトキノンは、0.08質量%であった。であった。このようにして得られた粗体(未精製重合性単量体d)を20L蒸留装置(理論段数4段)に10kg仕込んだ。ここに重合禁止剤Aとしてメトキノン(粗体100質量部に対して0.32質量部)を添加した。(この結果、粗体100質量部に対する重合禁止剤Aの含有量は0.40質量部となった。)。
続いて、攪拌下、外温を130〜145℃とし、0.5〜2kPaで減圧蒸留を行った。この際3%、酸素(窒素希釈)を0.5L/分の速度で流しながら、還流比1:1で5時間蒸留を実施した。初留0.9kgを分離後、主留に切り替え重合性単量体dを7.0kg回収した。得られた主留分(無色透明)の重合性単量体dのGC純度は98.8面積%であり、GPC分析においてオリゴマー、ポリマー領域にピークは観られなかった。一方、蒸留後の釜残渣については、粘度上昇が観られ底排弁からの抜き出しに時間を要した。回収量は1.0kgであり、GPC分析においてオリゴマー、ポリマー領域にピークが44面積%検出された。またマイクロスコープで蒸留塔頂部の内部を確認したところ、固形物は観られず重合体の生成は観られなかった。
比較例4−2
実施例4の反応式に示されるアクリル酸クロリド(アルコールに対して1.05倍モル量)とアルコール(30kg)のテトラヒドロフラン溶液(アルコール100質量部に対して400質量部)にトリエチルアミン(アルコールに対して2.1倍モル量)、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(アルコール100質量部に対して0.05質量部)を加え、重合禁止剤として2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)(アルコール100質量部に対して0.2質量部)を添加した。この溶液を窒素雰囲気下、40℃で5時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却後、水(反応溶液の0.5質量倍量)を添加し、室温下で30分間攪拌した。その後、30分間静定し二層分離し、下層の水層を抜き出した。得られた有機層(上層)に対して同様の水洗をさらに3回繰り返した後、フラッシュ蒸留にてテトラヒドロフランを留去した。この時の粗体のGC純度(残存溶媒であるテトラヒドロフランを除く)は、95.8面積%であった。また重合禁止剤の量も算出したところ、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)は、0.1質量%であった。であった。このようにして得られた粗体(未精製重合性単量体d)を20L蒸留装置(理論段数4段)に10kg仕込んだ。ここに重合禁止剤Bとして2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)(粗体100質量部に対して0.3質量部)を添加した。(この結果、粗体100質量部に対する重合禁止剤Bの含有量は0.40質量部となった。)。
実施例4の反応式に示されるアクリル酸クロリド(アルコールに対して1.05倍モル量)とアルコール(30kg)のテトラヒドロフラン溶液(アルコール100質量部に対して400質量部)にトリエチルアミン(アルコールに対して2.1倍モル量)、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(アルコール100質量部に対して0.05質量部)を加え、重合禁止剤として2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)(アルコール100質量部に対して0.2質量部)を添加した。この溶液を窒素雰囲気下、40℃で5時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却後、水(反応溶液の0.5質量倍量)を添加し、室温下で30分間攪拌した。その後、30分間静定し二層分離し、下層の水層を抜き出した。得られた有機層(上層)に対して同様の水洗をさらに3回繰り返した後、フラッシュ蒸留にてテトラヒドロフランを留去した。この時の粗体のGC純度(残存溶媒であるテトラヒドロフランを除く)は、95.8面積%であった。また重合禁止剤の量も算出したところ、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)は、0.1質量%であった。であった。このようにして得られた粗体(未精製重合性単量体d)を20L蒸留装置(理論段数4段)に10kg仕込んだ。ここに重合禁止剤Bとして2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)(粗体100質量部に対して0.3質量部)を添加した。(この結果、粗体100質量部に対する重合禁止剤Bの含有量は0.40質量部となった。)。
続いて、攪拌下、外温を130〜145℃とし、0.5〜2kPaで減圧蒸留を行った。この際3%、酸素(窒素希釈)を0.5L/分の速度で流しながら、還流比1:1で5時間蒸留を実施した。初留0.8kgを分離後、主留に切り替えたが、蒸留途中から留分の流動性の低下が観測されたため、蒸留を中止した。得られた主留分(5.3kg)の重合性単量体dのGC純度は96.2面積%であったが、GPC分析でオリゴマー、ポリマー領域に5.9面積%のピークが検出された。一方、蒸留後の釜残渣については、流動性は高く底排弁から詰まりなく回収可能であった。回収量は2.9kgであり、GPC分析の結果、オリゴマー、ポリマー領域にピークが2.1面積%で検出された。またマイクロスコープで蒸留塔頂部の内部を確認したところ、白色固形物が観られた。アセトンでの炊き上げ洗浄を繰り返したが、この白色固形物を完全に除去することはできなかったため、蒸留塔を解体して物理的にこそぎ落とし設備を復旧した。
実施例5−1:含フッ素重合体(ホモポリマー)の製造
実施例1で製造した重合性単量体aを用いて繰り返し単位(5a)を含む含フッ素重合体を製造した。
実施例1で製造した重合性単量体aを用いて繰り返し単位(5a)を含む含フッ素重合体を製造した。
繰り返し単位(5a)を含む含フッ素重合体の製造について具体的に説明する。室温(約20℃)にて重合性単量体a(100g)を500mLナス型フラスコに仕込み、2−ブタノン(200g)を加え、均一溶液とした。ここに重合開始剤ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(2.56g)を添加し溶解させた後、500mL滴下ロートに全量移した。続いて、攪拌翼、ジムロート冷却管、温度計を備え付けた1Lの四口フラスコに2−ブタノン(100g)を仕込み、オイルバスを用いて窒素気流下で加熱還流させた。その後、この四口フラスコに最初に用意した滴下ロートを取り付けて、窒素気流下、還流状態を維持させた状態で重合性単量体aと重合開始剤の2−ブタノン溶液を攪拌下で2時間かけて滴下した。滴下後、還流状態を維持したまま6時間窒素気流下で攪拌した。次にオイルバスを取外し、窒素気流下、攪拌しながら内温が30℃になるまで自然冷却させた。このようにして得られた重合反応液を500mL滴下ロートに全量移した。3L四口フラスコにn−ヘプタン(1600g)を仕込み、ウォーターバスを用いて内温25〜30℃に制御した。攪拌下、滴下ロートを通じて重合液を1時間かけて滴下した。その後、内温25〜30℃を維持したまま、2時間攪拌した。こうして得られた含フッ素重合体(5a)のスラリー液をろ紙(アドバンテック製No.5A)を用いて吸引ろ過し、含フッ素重合体(5a)を回収した。この含フッ素重合体(5a)に2−ブタノン(200g)を加え、室温下で溶解させ、500mL滴下ロートに全量移した。この含フッ素重合体(5a)の2−ブタノン溶液を3L四口フラスコに仕込んだn−ヘプタン(1600g)中に、ウォーターバスを用いて内温25−30℃に維持したまま、攪拌下、滴下ロートを通じて1時間かけて滴下した。その後、内温25−30℃を維持したまま、2時間攪拌した。こうして得られた含フッ素重合体(5a)のスラリー液をろ紙(アドバンテック製No.5A)を用いて吸引ろ過し、含フッ素重合体(5a)を回収した。この溶媒を含んだ含フッ素重合性単量体(5a)を棚段式真空乾燥機(60℃、1kPa)内で乾燥させた。結果、白色粉体(76g)が得られ、GPC分析を行ったところ、重量平均分子量11332、分子量分散度は2.0であった。
実施例5−2:含フッ素重合体(ホモポリマー)の製造
実施例2で製造した重合性単量体bを用いて繰り返し単位(5b)を含む含フッ素重合体を製造した。
実施例2で製造した重合性単量体bを用いて繰り返し単位(5b)を含む含フッ素重合体を製造した。
繰り返し単位(5b)を含む含フッ素重合体の製造について具体的に説明する。室温(約20℃)にて重合性単量体b(100g)を500mLナス型フラスコに仕込み、2−プロパノール(200g)を加え、均一溶液とした。ここに重合開始剤ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(6.26g)を添加し溶解させた後、500mL滴下ロートに全量移した。続いて、攪拌翼、ジムロート冷却管、温度計を備え付けた1Lの四口フラスコに2−プロパノール(100g)を仕込み、オイルバスを用いて窒素気流下で加熱還流させた。その後、この四口フラスコに最初に用意した滴下ロートを取り付けて、窒素気流下、還流状態を維持させた状態で重合性単量体bと重合開始剤の2−プロパノール溶液を攪拌下で2時間かけて滴下した。滴下後、還流状態を維持したまま6時間窒素気流下で攪拌した。次にオイルバスを取外し、窒素気流下、攪拌しながら内温が30℃になるまで自然冷却させた。このようにして得られた重合反応液を500mL滴下ロートに全量移した。3L四口フラスコにn−デカン(1600g)を仕込み、ウォーターバスを用いて内温20〜25℃に制御した。攪拌下、滴下ロートを通じて重合液を1時間かけて滴下した。その後、内温20〜25℃を維持したまま、2時間攪拌した。こうして得られた含フッ素重合体(5b)のスラリー液をろ紙(アドバンテック製No.5A)を用いて吸引ろ過し、含フッ素重合体(5b)を回収した。この含フッ素重合体(5b)に2−プロパノール(200g)を加え、室温下で溶解させ、500mL滴下ロートに全量移した。この含フッ素重合体(5b)の2−プロパノール溶液を3L四口フラスコに仕込んだn−デカン(1600g)中に、ウォーターバスを用いて内温20〜25℃に維持したまま、攪拌下、滴下ロートを通じて1時間かけて滴下した。その後、内温20〜25℃を維持したまま、2時間攪拌した。このようにして得られた含フッ素重合体(5b)のスラリー液をろ紙(アドバンテック製No.5A)を用いて吸引ろ過し、含フッ素重合体(5b)を回収した。この溶媒を含んだ含フッ素重合性単量体(5b)を棚段式真空乾燥機(70℃、1kPa)内で乾燥させた。結果、白色粉体(71g)が得られ、GPC分析を行ったところ、重量平均分子量12015、分子量分散度は1.9であった。
実施例6−1:含フッ素共重合体(6a)の製造
実施例1で製造した重合性単量体aを用いて繰り返し単位(6a)を含む含フッ素共重合体を製造した。
実施例1で製造した重合性単量体aを用いて繰り返し単位(6a)を含む含フッ素共重合体を製造した。
繰り返し単位(6a)を含む含フッ素重合体の製造について具体的に説明する。室温(約20℃)にて、実施例1で留分として得た重合性単量体a(45g)と2−(パーフルオロヘキシエル)エチルメタクリレート(ユニマテック社:商品名CHEMINOX F
AMAC−6)(55g)を500mLナス型フラスコに仕込み、3M社製商品名ノベック7300(100g)を加え、均一溶液とした。ここに重合開始剤2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(1.7g)を添加し溶解させた後、500mL滴下ロートに全量移した。続いて、攪拌翼、ジムロート冷却管、温度計を備え付けた1Lの四口フラスコにノベック7300(200g)を仕込み、オイルバスを用いて窒素気流下で加熱還流させた。その後、この四口フラスコに最初に用意した滴下ロートを取り付けて、窒素気流下、還流状態を維持させた状態で重合性単量体aとCHEMINOX FAMAC−6と重合開
始剤のノベック7300溶液を攪拌下で2時間かけて滴下した。滴下後、還流状態を維持したまま8時間窒素気流下で攪拌した。次にオイルバスを取外し、窒素気流下、攪拌しながら内温が30℃になるまで自然冷却させた。このようにして得られた重合反応液を500mL滴下ロートに全量移した。3L四口フラスコにn−デカン(1600g)を仕込み、ウォーターバスを用いて内温20〜25℃に制御した。攪拌下、滴下ロートを通じて重合液を1時間かけて滴下した。その後、内温20〜25℃を維持したまま、2時間攪拌した。こうして得られた含フッ素共重合体(6a)のスラリー液をろ紙(アドバンテック製No.5A)を用いて吸引ろ過し、含フッ素共重合体(6a)を回収した。この含フッ素共重合体(6a)にノベック7300(160g)を加え、室温下で溶解させ、500mL滴下ロートに全量移した。この含フッ素共重合体(6a)のノベック7300溶液を3L四口フラスコに仕込んだn−デカン(1600g)中に、ウォーターバスを用いて内温20〜25℃に維持したまま、攪拌下、滴下ロートを通じて1時間かけて滴下した。その後、内温20〜25℃を維持したまま、2時間攪拌した。このようにして得られた含フッ素共重合体(6a)のスラリー液をろ紙(アドバンテック製No.5A)を用いて吸引ろ過し、含フッ素共重合体(6a)を回収した。この溶媒を含んだ含フッ素共重合体(6a)を棚段式真空乾燥機(60℃、1kPa)内で乾燥させた。結果、白色粉体(90g)が得られ、GPC分析を行ったところ、重量平均分子量14230、分子量分散度は2.0であった。
AMAC−6)(55g)を500mLナス型フラスコに仕込み、3M社製商品名ノベック7300(100g)を加え、均一溶液とした。ここに重合開始剤2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(1.7g)を添加し溶解させた後、500mL滴下ロートに全量移した。続いて、攪拌翼、ジムロート冷却管、温度計を備え付けた1Lの四口フラスコにノベック7300(200g)を仕込み、オイルバスを用いて窒素気流下で加熱還流させた。その後、この四口フラスコに最初に用意した滴下ロートを取り付けて、窒素気流下、還流状態を維持させた状態で重合性単量体aとCHEMINOX FAMAC−6と重合開
始剤のノベック7300溶液を攪拌下で2時間かけて滴下した。滴下後、還流状態を維持したまま8時間窒素気流下で攪拌した。次にオイルバスを取外し、窒素気流下、攪拌しながら内温が30℃になるまで自然冷却させた。このようにして得られた重合反応液を500mL滴下ロートに全量移した。3L四口フラスコにn−デカン(1600g)を仕込み、ウォーターバスを用いて内温20〜25℃に制御した。攪拌下、滴下ロートを通じて重合液を1時間かけて滴下した。その後、内温20〜25℃を維持したまま、2時間攪拌した。こうして得られた含フッ素共重合体(6a)のスラリー液をろ紙(アドバンテック製No.5A)を用いて吸引ろ過し、含フッ素共重合体(6a)を回収した。この含フッ素共重合体(6a)にノベック7300(160g)を加え、室温下で溶解させ、500mL滴下ロートに全量移した。この含フッ素共重合体(6a)のノベック7300溶液を3L四口フラスコに仕込んだn−デカン(1600g)中に、ウォーターバスを用いて内温20〜25℃に維持したまま、攪拌下、滴下ロートを通じて1時間かけて滴下した。その後、内温20〜25℃を維持したまま、2時間攪拌した。このようにして得られた含フッ素共重合体(6a)のスラリー液をろ紙(アドバンテック製No.5A)を用いて吸引ろ過し、含フッ素共重合体(6a)を回収した。この溶媒を含んだ含フッ素共重合体(6a)を棚段式真空乾燥機(60℃、1kPa)内で乾燥させた。結果、白色粉体(90g)が得られ、GPC分析を行ったところ、重量平均分子量14230、分子量分散度は2.0であった。
実施例6−2:含フッ素共重合体(6b)の製造
実施例2で製造した重合性単量体bを用いて繰り返し単位(6b)を含む含フッ素共重合体を製造した。
実施例2で製造した重合性単量体bを用いて繰り返し単位(6b)を含む含フッ素共重合体を製造した。
繰り返し単位(6b)を含む含フッ素重合体の製造について具体的に説明する。室温(約20℃)にて、実施例2で留分として得た重合性単量体b(64g)と2−(パーフルオロヘキシエル)エチルメタクリレート(ユニマテック社:商品名CHEMINOX F
AMAC−6)(36g)を500mLナス型フラスコに仕込み、3M社製商品名ノベック7300(100g)を加え、均一溶液とした。ここに重合開始剤2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(3.0g)を添加し溶解させた後、500mL滴下ロートに全量移した。続いて、攪拌翼、ジムロート冷却管、温度計を備え付けた1Lの四口フラスコにノベック7300(200g)を仕込み、オイルバスを用いて窒素気流下で加熱還流させた。その後、この四口フラスコに最初に用意した滴下ロートを取り付けて、窒素気流下、還流状態を維持させた状態で重合性単量体bとCHEMINOX FAMAC−6と重合開
始剤のノベック7300溶液を攪拌下で2時間かけて滴下した。滴下後、還流状態を維持したまま8時間窒素気流下で攪拌した。次にオイルバスを取外し、窒素気流下、攪拌しながら内温が30℃になるまで自然冷却させた。このようにして得られた重合反応液を500mL滴下ロートに全量移した。3L四口フラスコにn−デカン(1600g)を仕込み、ウォーターバスを用いて内温20〜25℃に制御した。攪拌下、滴下ロートを通じて重合液を1時間かけて滴下した。その後、内温20〜25℃を維持したまま、2時間攪拌した。こうして得られた含フッ素共重合体(6b)のスラリー液をろ紙(アドバンテック製No.5A)を用いて吸引ろ過し、含フッ素共重合体(6b)を回収した。この含フッ素共重合体(6b)にノベック7300(160g)を加え、室温下で溶解させ、500mL滴下ロートに全量移した。この含フッ素共重合体(6a)のノベック7300溶液を3L四口フラスコに仕込んだn−デカン(1600g)中に、ウォーターバスを用いて内温20〜25℃に維持したまま、攪拌下、滴下ロートを通じて1時間かけて滴下した。その後、内温20〜25℃を維持したまま、2時間攪拌した。こうして得られた含フッ素共重合体(6b)のスラリー液をろ紙(アドバンテック製No.5A)を用いて吸引ろ過し、含フッ素共重合体(6b)を回収した。この溶媒を含んだ含フッ素共重合体(6b)を棚段式真空乾燥機(60℃、1kPa)内で乾燥させた。結果、白色粉体(86g)が得られ、GPC分析を行ったところ、重量平均分子量12110、分子量分散度は1.9であった。
AMAC−6)(36g)を500mLナス型フラスコに仕込み、3M社製商品名ノベック7300(100g)を加え、均一溶液とした。ここに重合開始剤2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(3.0g)を添加し溶解させた後、500mL滴下ロートに全量移した。続いて、攪拌翼、ジムロート冷却管、温度計を備え付けた1Lの四口フラスコにノベック7300(200g)を仕込み、オイルバスを用いて窒素気流下で加熱還流させた。その後、この四口フラスコに最初に用意した滴下ロートを取り付けて、窒素気流下、還流状態を維持させた状態で重合性単量体bとCHEMINOX FAMAC−6と重合開
始剤のノベック7300溶液を攪拌下で2時間かけて滴下した。滴下後、還流状態を維持したまま8時間窒素気流下で攪拌した。次にオイルバスを取外し、窒素気流下、攪拌しながら内温が30℃になるまで自然冷却させた。このようにして得られた重合反応液を500mL滴下ロートに全量移した。3L四口フラスコにn−デカン(1600g)を仕込み、ウォーターバスを用いて内温20〜25℃に制御した。攪拌下、滴下ロートを通じて重合液を1時間かけて滴下した。その後、内温20〜25℃を維持したまま、2時間攪拌した。こうして得られた含フッ素共重合体(6b)のスラリー液をろ紙(アドバンテック製No.5A)を用いて吸引ろ過し、含フッ素共重合体(6b)を回収した。この含フッ素共重合体(6b)にノベック7300(160g)を加え、室温下で溶解させ、500mL滴下ロートに全量移した。この含フッ素共重合体(6a)のノベック7300溶液を3L四口フラスコに仕込んだn−デカン(1600g)中に、ウォーターバスを用いて内温20〜25℃に維持したまま、攪拌下、滴下ロートを通じて1時間かけて滴下した。その後、内温20〜25℃を維持したまま、2時間攪拌した。こうして得られた含フッ素共重合体(6b)のスラリー液をろ紙(アドバンテック製No.5A)を用いて吸引ろ過し、含フッ素共重合体(6b)を回収した。この溶媒を含んだ含フッ素共重合体(6b)を棚段式真空乾燥機(60℃、1kPa)内で乾燥させた。結果、白色粉体(86g)が得られ、GPC分析を行ったところ、重量平均分子量12110、分子量分散度は1.9であった。
実施例6−3:含フッ素共重合体の製造
実施例3で製造した重合性単量体cを用いて繰り返し単位(6c)を含む含フッ素共重合体を製造した。
実施例3で製造した重合性単量体cを用いて繰り返し単位(6c)を含む含フッ素共重合体を製造した。
繰り返し単位(6c)を含む含フッ素重合体の製造について具体的に説明する。室温(約20℃)にて重合性単量体c(101g)と1,1,2,2−テトラヒドロヘプタデカフルオロ−n−デシルアクリレート(18g)を500mLナス型フラスコに仕込み、2−ブタノン(238g)を加え、均一溶液とした。ここに重合開始剤2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(3.3g)を添加し溶解させた後、500mL滴下ロートに全量移した。続いて、攪拌翼、ジムロート冷却管、温度計を備え付けた1Lの四口フラスコに2−ブタノン(119g)を仕込み、オイルバスを用いて窒素気流下で加熱還流させた。その後、この四口フラスコに最初に用意した滴下ロートを取り付けて、窒素気流下、還流状態を維持させた状態で重合性単量体cと1,1,2,2−テトラヒドロヘプタデカフルオロ−n−デシルアクリレートと重合開始剤の2−ブタノン溶液を攪拌下で2時間かけて滴下した。滴下後、還流状態を維持したまま6時間窒素気流下で攪拌した。次にオイルバスを取外し、窒素気流下、攪拌しながら内温が30℃になるまで自然冷却させた。このようにして得られた重合反応液を500mL滴下ロートに全量移した。3L四口フラスコにn−デカン(2142g)を仕込み、ウォーターバスを用いて内温15〜20℃に制御した。攪拌下、滴下ロートを通じて重合液を1時間かけて滴下した。その後、内温15〜20℃を維持したまま、2時間攪拌した。こうして得られた含フッ素共重合体(6c)のスラリー液をろ紙(アドバンテック製No.5A)を用いて吸引ろ過し、含フッ素共重合体(6c)を回収した。このようにして得られたろ物に2−ブタノン(239g)を加え、室温下で溶解させ、500mL滴下ロートに全量移した。この含フッ素共重合体(6c)の2−ブタノン溶液を3L四口フラスコに仕込んだn−デカン(2142g)中に、ウォーターバスを用いて内温15〜20℃に維持したまま、攪拌下、滴下ロートを通じて1時間かけて滴下した。その後、内温15〜20℃を維持したまま、2時間攪拌した。こうして得られた含フッ素共重合体(5c)のスラリー液をろ紙(アドバンテック製No.5A)を用いて吸引ろ過し、含フッ素共重合体(6c)を回収した。この溶媒を含んだ含フッ素重合性単量体(6c)を棚段式真空乾燥機(60℃、1kPa)内で乾燥させた。結果、白色粉体(66g)が得られ、GPC分析を行ったところ、重量平均分子量9029、分子量分散度は1.9であった。
実施例6−4:含フッ素共重合体の製造
実施例4で製造した重合性単量体dを用いて繰り返し単位(6d)を含む含フッ素共重合体を製造した。
実施例4で製造した重合性単量体dを用いて繰り返し単位(6d)を含む含フッ素共重合体を製造した。
繰り返し単位(6d)を含む含フッ素重合体の製造について具体的に説明する。室温(約20℃)にて重合性単量体d(85g)とメチルα−フルオロアクリレート(13g)を500mLナス型フラスコに仕込み、酢酸n−ブチル(196g)を加え、均一溶液とした。ここに重合開始剤2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(4.2g)を添加し溶解させた後、500mL滴下ロートに全量移した。続いて、攪拌翼、ジムロート冷却管、温度計を備え付けた1Lの四口フラスコに酢酸n−ブチル(98g)を仕込み、オイルバスを用いて窒素気流下で加熱還流させた。その後、この四口フラスコに最初に用意した滴下ロートを取り付けて、窒素気流下、還流状態を維持させた状態で重合性単量体dとメチルα−フルオロアクリレートと重合開始剤の酢酸n−ブチル溶液を攪拌下で2時間かけて滴下した。滴下後、還流状態を維持したまま6時間窒素気流下で攪拌した。次にオイルバスを取外し、窒素気流下、攪拌しながら内温が30℃になるまで自然冷却させた。このようにして得られた重合反応液を500mL滴下ロートに全量移した。3L四口フラスコにn−デカン(1960g)を仕込み、ウォーターバスを用いて内温20〜25℃に制御した。攪拌下、滴下ロートを通じて重合液を1時間かけて滴下した。その後、内温20〜25℃を維持したまま、2時間攪拌した。こうして得られた含フッ素共重合体(6d)のスラリー液をろ紙(アドバンテック製No.5A)を用いて吸引ろ過し、含フッ素共重合体(6d)を回収した。このようにして得られたろ物に酢酸n−ブチル(196g)を加え、室温下で溶解させ、500mL滴下ロートに全量移した。この含フッ素共重合体(6d)の酢酸n−ブチル溶液を3L四口フラスコに仕込んだn−デカン(1960g)中に、ウォーターバスを用いて内温20〜25℃に維持したまま、攪拌下、滴下ロートを通じて1時間かけて滴下した。その後、内温20〜25℃を維持したまま、2時間攪拌した。こうして得られた含フッ素共重合体(6d)のスラリー液をろ紙(アドバンテック製No.5A)を用いて吸引ろ過し、含フッ素共重合体(6d)を回収した。この溶媒を含んだ含フッ素共重合体(6d)を棚段式真空乾燥機(60℃、1kPa)内で乾燥させた。結果、白色粉体(75g)が得られ、GPC分析を行ったところ、重量平均分子量10095、分子量分散度は2.2であった。
このように、実施例1〜4の方法で精製した式(1)で表される重合性単量体は、重合開始剤の存在下、円滑に重合体(ホモポリマー、ヘテロポリマー)を形成することを確認した。蒸留時にフェノール系重合禁止剤Aとフェノール系重合禁止剤Bを併用したことによる、重合反応の反応性の阻害は、特に認められなかった。
Claims (7)
- 以下の工程を含む、下記一般式(1)で表される含フッ素重合性単量体の精製方法。
合成工程:
次の式(5)で表される化合物と式(6)で表される化合物を、次の式(2)で表される「フェノール系化合物A」と式(3)で表される「フェノール系化合物B」のうち少なくとも1種類の化合物の存在下、縮合反応させて、前記含フッ素重合性単量体を含む反応混合物を得る工程。
後処理工程:
前記合成工程で得られた反応混合物に対し、水洗処理を行い、含フッ素重合性単量体を得る後処理工程。
第1工程:前記後処理工程で得られた含フッ素重合性単量体を、前記フェノール系化合物A及び前記フェノール系化合物Bを共存させて蒸留し、該含フッ素重合性単量体を留分として得る、蒸留精製工程。 - 前記フェノール系化合物AのR4とR5がそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、n−プロピル基、n−プロピルオキシ基、i−プロピル基、i−プロピルオキシ基、n−ブチル基、n−ブチルオキシ基、i−ブチル基、i−ブチルオキシ基、t−ブチル基、t−ブチルオキシ基及び水酸基からなる群から選ばれ、かつ、R4とR5の少なくとも1つは水素原子でなく、
前記フェノール系化合物BのR6、R7、R8およびR9がそれぞれ独立に 水素原子、メチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、n−プロピル基、n−プロピルオキシ基、i−プロピル基、i−プロピルオキシ基、n−ブチル基、n−ブチルオキシ基、i−ブチル基、i−ブチルオキシ基、t−ブチル基、t−ブチルオキシ基及び水酸基からなる群から選ばれ、かつ、R6、R7、R8およびR9の少なくとも1つは水素原子でない、
請求項1に記載の精製方法。 - フェノール系化合物Aが、6−tert−ブチル−2,4−キシレノールおよびメトキノンからなる群より選ばれる少なくとも1つであり、フェノール系化合物Bが、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)および2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)からなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載の精製方法。
- フェノール系化合物Aが、6−tert−ブチル−2,4−キシレノール、フェノール系化合物Bが、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)である請求項1に記載の精製方法。
- フェノール系化合物Aとフェノール系化合物Bの質量比が1:0.1〜1:10の範囲である、請求項1〜4の何れかに記載の精製方法。
- 式(1)で表される含フッ素重合性単量体が、次の式(1a)、式(1b)又は式(1c)で表される含フッ素重合性単量体である、請求項1乃至請求項5の何れかに記載の精製方法。
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- 2019-02-14 JP JP2019024709A patent/JP2020026423A/ja active Pending
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