以下に、実施形態に係るエレベータ制御装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれ、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
図1は、実施形態のエレベータ制御装置を適用可能なエレベータ10の構成を示す例示的な模式図である。エレベータ10は、建物(ビルやマンション等)に設置される昇降路12を乗りかご14が昇降し、各階に設けられた乗り場16の間を移動する。このエレベータ10には、乗りかご14と重量バランスを取るためのカウンタウエイト18が設けられる。そして、乗りかご14は図示を省略したかご用ガイドレールにガイドされ、カウンタウエイト18はウエイト用ガイドレールにガイドされながら昇降可能となっている。
乗りかご14は、当該乗りかご14の天井上面に例えば複数のかご上シーブ20を備える。かご上シーブ20には、両端部が例えば昇降路12の頂上部に設けられた固定部22a,22bに固定されたロープ24が架設されている。また、ロープ24は、例えば、昇降路12の壁面の一部に固定された巻上機26のモータ軸26aに固定されたトラクションシーブ28に架設され、さらに、カウンタウエイト18の上部にもうけされたウエイトシーブ30に架設されている。したがって、巻上機26のモータ軸26aが回転駆動することでトラクションシーブ28が回転する。その結果、トラクションシーブ28に巻回されたロープ24が移動し、乗りかご14およびカウンタウエイト18がつるべ式に昇降動作することになる。なお、昇降路12の最上部に機械室が設けられている場合もあり、この場合、巻上機26は機械室内に設置される。
巻上機26のモータ軸26aはエンコーダ32を備え、モータ軸26a(巻上機26)の回転に同期して出力されるパルス信号を出力する。後述するかご位置検出部は、エンコーダ32の出力するパルス信号のパルス数を連続的に検出することにより、巻上機26の駆動状態、つまり、ロープ24の移動量ひいては乗りかご14の位置を連続的に検出することができる。
昇降路12の各階の乗り場16には、例えば長方形の乗り場開口部16aが設けられている。かごドア14aが各乗り場16に移動して停止する(着床)する場合、乗りかご14のかごドア14aが各乗り場開口部16aの位置と一致する。各乗り場16には、乗り場開口部16aを塞ぐように、開閉可能な乗り場ドア34が設けられている。乗り場ドア34は、通常は閉鎖状態になっており、ロック機構(図示省略)により、開状態への動作が規制されている。これにより、乗り場ドア34は、通常時は乗り場16側と昇降路12側との間を遮っている。乗り場ドア34は、乗りかご14が目的階に到着して、かごドア14aがドアモータ(図示省略)の駆動により閉状態から開状態に動作するのに連動(従動)して、ロック機構によるロックを解除すると共に、閉状態から開状態となる。なお、各乗り場ドア34には、当該乗り場ドア34が開動作したことを検出するドアスイッチ36が設けられている。ドアスイッチ36は、例えば、乗り場ドア34が開動作した場合に、OFFされる常閉型のスイッチとすることができる。ドアスイッチ36の詳細は後述する。
また、乗りかご14の底部には、各階の乗り場16の着床位置を検出するための着床検出センサ38が設けられている。また、各階において、乗りかご14が着床した際に着床検出センサ38と対面する位置、すなわち、昇降路12の壁面には、所定長さの着検板40(「着床検出板」ともいう)が設けられている。着床検出センサ38は、一例として、図2に示すように、複数(例えば、三つ)のリミットスイッチ38sa,38sc,38sbが乗りかご14の昇降方向に所定の間隔で配列されて構成されている。リミットスイッチ38sa,38sc,38sbは、それぞれ例えば投光器と受光器を対向配置させた略C字型の光電センサを用いることができる。着検板40は、投光器と受光器との間(略C字形状の対向する内側部分)を通過可能なように、着床検出センサ38に対して位置決めされている。定常時、投光器と受光器との間(略C字形状の対向する内側部分)で光の送受が行われている。この状態で、各リミットスイッチ38sa,38sc,38sbの出力はOFFである。一方、乗りかご14の昇降移動によって、着床検出センサ38が移動し、着検板40が投光器と受光器との間(略C字形状の対向する内側部分)に進入し光を遮ることにより、光が遮られたリミットスイッチ38sa,38sc,38sbの出力がONする。図2に示す例では、乗りかご14がUP方向(上方向)に移動しているときは、リミットスイッチ38sa−38sc−38sbの順でON出力が得られる。また、乗りかご14がDN方向(下方向)に移動しているときは、リミットスイッチ38sb−38sc−38saの順でON出力が得られる。そして、リミットスイッチ38sa,38sc,38sbの全てがONしている場合に、乗りかご14が予め定められた着床位置に正しく着床していることを示す。なお、安全基準では、リミットスイッチ38scの前後10mmが着床レベルとして規定されている。
また、リミットスイッチ38saまたはリミットスイッチ38sbがONしている場合に(リミットスイッチ38scはON)、乗りかご14が乗り場16付近でドア開可能な範囲内に入っているものとする。このドア開可能な範囲のことを「ドアゾーン」と称し、例えばリミットスイッチ38scの前後200mmに規定されている。着検板40の長さは、このドアゾーンの範囲を規定している。なお、リミットスイッチ38scの前後75mmはワイヤーストレッチゾーンであり、利用者が乗り降りするときの乗りかご14の上下の揺れの範囲を許容している。乗りかご14が各階床(乗り場16)を通過あるいは着床したときに、リミットスイッチ38sa,リミットスイッチ38sc,リミットスイッチ38sbのON/OFFの組み合わせ信号が着床検出センサ38の着床信号として、後述する着床位置検出部に提供される。
また、着床検出センサ38のリミットスイッチ38sa,38sc,38sbとは別に、図1に示されるように、昇降路12の最下階に対応する位置には、最下階の検出用の最下階リミットスイッチ42が設けられ、最上階に対応する位置には、最上階の検出用の最上階リミットスイッチ44が設けられている。乗りかご14が最下階に着床すると、最下階リミットスイッチ42がON動作して、その信号が着床位置検出部に提供される。同様に、乗りかご14が最上階に着床すると、最上階リミットスイッチ44がON動作して、その信号が着床位置検出部に提供される。
エレベータ10の全体の制御は、昇降路12の壁面の一部や三方枠または、昇降路12の最上部に設けられた機械室内に設置されたエレベータ制御装置46によって実行される。図1の場合、エレベータ制御装置46は昇降路12の壁面の一部に設けられている例を示している。エレベータ制御装置46は、「制御盤」とも称される。エレベータ制御装置46は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、所定の制御プログラム等を予め記憶しているROM(Read Only Memory)、CPUの演算結果を一時記憶するRAM(Random Access Memory)、予め用意された参照データ、エレベータ10の仕様等の情報を記憶するバックアップRAM及び入出力ポート装置を有するマイクロコンピュータ及び駆動回路等を備える。エレベータ制御装置46は、種々のセンサ、検出器やエレベータ10の各部と,電気的に接続され、各部の動作を統括的に制御する。例えば、エレベータ制御装置46は、巻上機26の駆動制御(乗りかご14の運行制御)、かごドア14aの開閉制御、乗りかご14内に設けられたかご内登録装置14bや各乗り場16に設けられた乗り場登録装置16bの操作に対する呼び登録に基づく制御等を行う。エレベータ制御装置46と各機器との通信は、有線または無線で実行される。後述するが、本実施形態のエレベータ制御装置46は、エンコーダ32のパルス信号のパルス数のカウント値に基づき検出される乗りかご14の位置に位置ずれが生じた場合、その位置ずれを補正する機能を備えている。エレベータ制御装置46の詳細は後述する。
なお、図1の場合、いわゆる、「2:1ローピング式エレベータ」の構成を示しているが、この構造に限らず、いわゆる、「1:1ローピング式エレベータ」や他の構成のエレベータでも、以下に示す本実施形態のエレベータ制御装置は適用可能であり、同様の効果を得ることができる。なお、以下の説明では、エレベータ制御装置46に対する信号の送受の方式の違いにより、実施形態を分けて説明する。まず、実施形態1では、最近のエレベータで多用されているシリアル通信を用いた構成について説明し、実施形態2では、旧型のエレベータで多用されているパラレル通信を用いた構成について説明する。なお、エレベータ10の全体構成や着床検出センサ38の構成は、実施形態1および実施形態2で同様であり、詳細な説明は省略する。
<実施形態1>
図3は、実施形態1のエレベータ制御装置46にドア開検出信号を提供するドアスイッチ36の構成を示す例示的な模式図である。エレベータ10の各階の乗り場16には、階床ごとに利用者の要求を受け付ける乗り場登録装置16bが設けられている。乗り場登録装置16bは、エレベータ制御装置46とシリアル通信路48を用いて接続されている。また、本実施形態1の場合、各乗り場16の乗り場ドア34に設けられて当該乗り場ドア34の開動作を検出するドアスイッチ36が直列に接続されたドア回路50を形成している。また、各乗り場16において分岐したドア回路50は、乗り場登録装置16bに接続されている。そして、各乗り場登録装置16bは乗り場呼びボタン16cの状態とともに、各乗り場16のドア回路50の信号(例えば、「ON」または「H」や「OFF」または「L」)を、シリアル通信路48を用いてエレベータ制御装置46に送信できるように構成されている。図4は、シリアル通信路48を用いて送信されるデータフォーマットDFの一例である。このデータフォーマットDFは、例えば、アドレス情報A、呼び情報B、ドア回路情報C等を含むように構成されている。アドレス情報Aは、乗り場16(階床)を特定するために1階床ごとに割り振られる情報である。呼び情報Bは、各階床に割り振られた1アドレスの中で乗り場呼びボタン16cの状態(上階移動呼びか下階移動呼び)をエレベータ制御装置46に通知する情報である。ドア回路情報Cは、各階床に割り振られた1アドレスの中で使用していないビットを用いて、その階床のドア回路50の状態(ONまたはOFF)をエレベータ制御装置46に通知する情報である。なお、図3において、最下階における乗り場登録装置16bは上階移動を示す乗り場呼びボタン16cのみが設けられ、最上階における乗り場登録装置16bは下階移動を示す乗り場呼びボタン16cのみが設けられている。
図5は、各乗り場16のドアスイッチ36の状態に基づくドア回路50の状態を示す例示的な説明図である。例えば、エレベータ10が10階建の建物に設置される場合を考える。例えば、5階の乗り場ドア34が開動作した場合、5階以下の乗り場16におけるドア回路50は「OFF」状態となる。したがって、5階以下の乗り場16の乗り場登録装置16bは、乗り場呼びボタン16cの状態とともに、ドア回路50が「OFF」状態であることを示す信号を図4に示すデータフォーマットDFで送信する。逆に、6階以上の乗り場16の乗り場登録装置16bは、乗り場呼びボタン16cの状態とともに、ドア回路50が「ON」状態であることを示す信号をデータフォーマットDFで送信する。
図6は、実施形態1のエレベータ制御装置46の機能ブロック図の例示的な模式図である。実施形態1において、エレベータ制御装置46に含まれるCPUは、ROM等の記憶装置に記憶されたプログラム読出し実行することで、乗りかご14の位置ずれの検出および位置ずれが生じた場合の補正を実現するモジュールを実現する。また、別に実施形態においては、各モジュールを専用のハードウエアで構成してもよい。
エレベータ制御装置46は、かご位置検出部52、着床位置検出部54、かごずれ判定部56、階層パルステーブル58、運転制御部60、シリアル通信部62、ドア開検出部64、停止階特定部66、補正部68等のモジュールを含む。
かご位置検出部52は、巻上機26に巻回されるロープ24によって複数の階床を移動可能な乗りかご14の位置を、巻上機26の回転に同期して出力されるパルス信号のパルス数を計測して連続的に検出する。具体的には、かご位置検出部52は、巻上機26のモータ軸26aの回転に同期してエンコーダ32から出力されるパルス信号のパルス数をカウントし、そのカウント値から乗りかご14の移動中のかご位置を連続的に検出する。
着床位置検出部54は、乗りかご14の移動に伴い図2に示す着床検出センサ38が、各乗り場16の階床毎に設けられた着検板40によりON/OFF動作させられることで出力される着床信号に基づき、乗りかご14の着床位置を検出する。例えば、着床位置検出部54は、着床検出センサ38のリミットスイッチ38sa,38sc,38sbの全てがONしている場合に、乗りかご14が予め定められた着床位置に正しく着床していることを示す検出結果を取得する。
かごずれ判定部56は、かご位置検出部52の検出する乗りかご14のかご位置と制御上存在すべき位置とに位置ずれが生じたか否かを判定する。例えば、かごずれ判定部56は、かご位置検出部52が検出する乗りかご14のかご位置と、着床位置検出部54の検出した乗りかご14の着床位置との間に、例えば50mm、100mm、200mmなどの予め定めた所定値以上の誤差が生じた場合、かご位置検出部52の検出結果に位置ずれが生じたと判定する。
階層パルステーブル58は、ROM等の記憶部に予め記憶された、乗りかご14に位置ずれが発生していない状態で乗りかご14が各乗り場16の階床に着床した場合の正規かご位置を用いて形成されるテーブルである。図7は、階層パルステーブル58の一例であり、1階(1F)を基準に各階床(乗り場16)まで、乗りかご14が移動する際にエンコーダ32が出力するパルス数を示したものである。前述したように、階層パルステーブル58は、乗りかご14の位置ずれが生じていない場合に計測されたパルス数を示す。なお、説明を簡略化するため、階層パルステーブル58が示す1パルスは、1mmに相当するものとする。したがって、階層パルステーブル58は、予め測定された各階床間の階高長が記憶されているともいえる。例えば、図8に示すように1階と2階との間の階高長が5000(mm)、2階と3階との間の階高長が3000(mm)等であったとする。PD(パルスデータ)セット時に最下階(1階)からUP方向に乗りかご14を運転したときにエンコーダ32から出力されるパルス信号のパルス数を逐次カウントする。その結果、1階は「000000」、2階は「005000」、3階は「008000」等といった乗りかご14のかご位置が得られる。これらのかご位置を各乗り場16の階床と関連付けて階層パルステーブル58を形成する。乗りかご14に位置ずれが発生していない場合、乗りかご14が各乗り場16の階床に着床したときに、かご位置検出部52にて検出されるかご位置は、階層パルステーブル58に記憶された各階床のパルス数と一致することになる。逆に、乗りかご14に位置ずれが発生している場合、乗りかご14が各乗り場16の階床に着床したときに、かご位置検出部52にて検出されるかご位置は、階層パルステーブル58に記憶された各階床のパルス数と不一致となる。つまり、かごずれ判定部56は、乗りかご14の位置ずれが発生していると判定することができる。なお、補正部68は、正規かご位置(正規パルス数)をROMから直接読み出すようにしてもよい。この場合、階層パルステーブル58は省略することができる。
また別の実施形態では、かごずれ判定部56は、乗りかご14が急停止された場合に、かご位置検出部52の検出結果に位置ずれが生じたと判定してもよい。前述したように、停電やその他の原因、例えば、乗りかご14の運行に影響するような不具合(部品の破損やセンサの異常等)により乗りかご14(巻上機26)急停止した場合、乗りかご14およびカウンタウエイト18の慣性により、ロープ24がトラクションシーブ28上を滑る場合がる。この場合、乗りかご14が移動しているにも拘わらずエンコーダ32からパルス信号が出力されず、かご位置検出部52の検出結果が実際の乗りかご14のかご位置、つまり、階層パルステーブル58で示されるパルス数と異なってしまう場合がある。このような場合、かごずれ判定部56は、乗りかご14の位置ずれが発生していると判定する。
運転制御部60は、かご位置検出部52によって検出される乗りかご14のかご位置と、かご内登録装置14bまたは乗り場登録装置16bで登録された目的階に、乗りかご14を所定の速度で移動させる速度制御を実行する。その後、運転制御部60は、目的階に乗りかご14を着床させる位置制御を実行する。また、運転制御部60は、かごずれ判定部56が乗りかご14に位置ずれありと判定したとする。例えば、かご位置検出部52によって検出されたかご位置にずれが発生した場合(かご位置検出部52のパルスカウント値が現在のかご位置を正しく示していない場合)である。この場合、運転制御部60は、乗りかご14を現在の位置から最も近い最寄り階床に向けて移動させる。運転制御部60は、着床位置検出部54の検出結果を参照しながら乗りかご14を正しい位置に着床させたら、かごドア14aの開動作および、かごドア14aの開動作に連動(従動)する乗り場ドア34の開動作を実行する。この場合、例えば、運転制御部60は、乗りかご14内に搭乗している利用者を一旦乗りかご14の外へ退避させるように促してもよい。例えば、運転制御部60は、かご内登録装置14bの表示装置等に、「乗りかご位置修正作業を実行するため、一度降りてください。」等のメッセージを表示したり、スピーカ等から音声メッセージを出力するようにしたりしてもよい。同様に、運転制御部60は、最寄り階に着床させ、かごドア14a(乗り場ドア34)の開動作を行った乗りかご14に利用者が乗り込まないように、乗り場16に設けられた表示装置やスピーカ等用いて、メッセージを出力するようにしてもよい。
シリアル通信部62は、乗り場登録装置16bとのシリアル通信を実行し、各乗り場16のドア回路50の信号を取得し、ドア開検出部64に出力する。ドア開検出部64では、階床ごとの乗り場ドア34の開動作を検知し、図5に示すようなドア回路50の状態を示す情報を生成する。
停止階特定部66は、運転制御部60によって、乗りかご14が最寄り階床に着床させられ、かごドア14a(乗り場ドア34)の開動作が実行された場合に、ドア開検出部64の検知結果に基づき乗りかご14が着床した最寄り階床、つまり乗り場ドア34が開動作させられた階床位置を特定する。例えば、図5に示すように、5階(5F)以下の階のドア回路50の信号が「OFF」の場合、最も上階である5階の乗り場ドア34が開状態であり、5階が乗りかご14の着床した最寄り階床であると特定することができる。
補正部68は、乗りかご14の位置ずれが発生している場合、つまり、乗りかご14が最寄り階に着床して、かごドア14a(乗り場ドア34)が開動作させられた場合、停止階特定部66によって特定された着床階の位置(正規かご位置)にかご位置検出部52で検出される乗りかご14のかご位置を合わせる。つまり、補正部68は、特定された着床階(最寄り階)階床のかご位置(パルス数)を階層パルステーブル58から読み出し、そのかご位置(パルス数)に基づいて、かご位置検出部52が認識するエンコーダ32のカウント値を補正する。例えば、停止階特定部66が特定した乗りかご14が移動した最寄り階床が「5階」であったとする。そして、このとき、かご位置検出部52が検出するかご位置(パルス数)が「015000」であったとする。一方、図7に示す階層パルステーブル58を参照すると最寄り階床として特定された「5階」に対応した正規かご位置(パルス数)は「013000」である。したがって、かご位置検出部52が検出した乗りかご14のかご位置と正規かご位置とでは、「2000」パルス数分の位置ずれが生じていることになる。したがって、補正部68は、かご位置検出部52が認識するエンコーダ32のカウント値(かご位置)を「015000」から正規かご位置(正規カウント数)である「013000」に補正する。このように、正規かご位置(正規カウント数)を用いることにより、乗りかご14の位置ずれを容易かつ迅速に解消することができる。
なお、ドア開検出部64は、エレベータ10の休止時、例えば、夜間等でかご内登録装置14bや乗り場登録装置16bによる呼び登録が行われていない状態のときに、各乗り場16のドア回路50(ドアスイッチ36)が正常に機能しているか否かを確認する。換言すれば、ドア開検出部64は、全ての乗り場16(階床)の乗り場ドア34の開閉動作を示す信号を、運転制御部60が最寄り階床でのドア開動作を実行する前に取得し、ドア回路50(ドアスイッチ36)の正常性を確認する。例えば、呼び登録が全く行われていない場合、つまり、いずれの乗り場16(階床)の乗り場ドア34も開動作していない場合、図5に示す各階床のドア回路状態は、全て「ON」となる。もし、このとき、いずれかのドア回路状態が「OFF」していた場合、ドア回路50(ドアスイッチ36)が断線や接触不良、ドアスイッチ36の不具合等により正常に動作していないと判定できる。この場合、乗りかご14の着床した最寄り階床の乗り場ドア34の開動作により出力されるドア回路50の「OFF」信号とドア回路50(ドアスイッチ36)の異常により出力される「OFF」信号との区別ができない。したがって、ドア回路50(ドアスイッチ36)が正常に機能していない場合には、停止階特定部66による最寄り階(かご位置)の特定や補正部68によるかご位置の補正は実行しないようにしてもよい。また、この場合、エレベータ制御装置46は、ドア回路50(ドアスイッチ36)に不具合があることを示す警報を例えば、エレベータ10の運行を監視している管理センタ等に通知するようにしてもよい。
以上のように構成されるエレベータ制御装置46による乗りかご14の位置ずれ補正および補正に関連する乗りかご14の運行の様子の一例を図9、図10のフローチャートを用いて説明する。
かごずれ判定部56は、エレベータ10の通常運行時に常時、乗りかご14に位置ずれが生じているか否かの判定を行っている(S100)。前述したように、何らかの異常で乗りかご14の運転(巻上機26の駆動)が急停止したとする。急停止すると、その反動(例えば、乗りかご14等の慣性が原因)で巻上機26のトラクションシーブ28に巻回されたロープ24がスリップし、乗りかご14がそのスリップ分だけ今までの移動方向と同じ方向に移動する。このとき、巻上機26のモータ軸26aに取り付けられたエンコーダ32からはパルス信号が出力されないため、エレベータ制御装置46のかご位置検出部52で検出されているかご位置(パルスカウント値から得られるかご位置)と実際のかご位置との間にずれが生じることになる。つまり、かごずれ判定部56は、乗りかご14(巻上機26)が急停止した場合に乗りかご14に位置ずれが発生していると判定する(S100のYes)。なお、別の実施形態では、かごずれ判定部56は、かご位置検出部52の検出結果に基づく乗りかご14のかご位置(パルス信号に基づくかご位置)と着床位置検出部54が検出する乗りかご14の着床位置との間に所定値以上の誤差が生じた場合、乗りかご14に位置ずれが発生したと判定してもよい。S100おいて、乗りかご14には、位置ずれが発生していないと判定された場合(S100のNo)、このフローを一旦終了する。
かごずれ判定部56が乗りかご14に位置ずれが発生したと判定した場合(S100のYes)、運転制御部60は乗りかご14を最寄り階(例えば、位置ずれありと判定される前までの運行方向における最寄り階)へ向けて、例えば、通常運行時より低速で走行させる(S102)。着床位置検出部54は、乗りかご14が最寄り階に着床したか否かを確認している(S104のNo)。そして、乗りかご14が最寄り階に着床したことが確認された場合(S104のYes)、運転制御部60は、着床した最寄り階でドアを開動作させる(S106)。つまり、運転制御部60は、乗りかご14のドアモータを駆動し、かごドア14aを開動作させる。その結果、着床した最寄り階の乗り場ドア34がかごドア14aに連動して開動作する。
停止階特定部66は、ドア開検出部64から提供されるドア開検出結果に基づき各乗り場ドア34におけるドア回路50(ドアスイッチ36)の正常性が確認された上で、ドアが正常に開動作したことが確認できた場合(S108のYes)、乗り場ドア34が生成するドア回路50の状態を示す情報(図5参照)に基づき、現在、乗りかご14が停止(着床)している位置(最寄り階の位置)を特定する(S110)。例えば、全階床のドア開閉情報から乗り場ドア34が開動作した乗り場16(階床)を特定する。その後、停止階特定部66は、特定した階床を示す階床データを補正部68に提供する。例えば、乗りかご14の位置ずれ後に最寄り階に停止してドアの開動作を実行させた場合、図5に示されるように1階(1F)〜5階(5F)におけるドア回路50の信号として「OFF」が検出されたとする。この場合、乗りかご14が停止している乗り場16(階床)、つまり、「最寄り階」は5階であると推定することができる。
ここで、S108とS110の処理を図10に示すフローチャートを用いて詳細に説明する。前述したように、運転制御部60は、ドア開検出部64がエレベータ10において呼び登録が行われていないタイミングで、全乗り場16(階床)のドア開閉情報を収集することにより(S200)、ドア回路50(ドアスイッチ36)が正常性を管理している。そして、運転制御部60は、乗りかご14が着床した最寄り階でドアを開動作させたにも拘わらず、全乗り場16(階床)でドア回路状態が「ON」になった場合(S202のYes)、ドア開動作異常であると判定する(S204、S108)。この場合、図9のフローのS108において、乗り場ドア34が正常に開動作していないと判定して(S108のNo)、図9のフローを一旦終了する。つまり、補正部68による乗りかご14の位置ずれの補正を実行しない。一方、全乗り場16(階床)でドア回路状態が「ON」になっていない場合(S202のNo)、つまり、ドア回路50(ドアスイッチ36)は正常であると判定できた場合、ドア回路50が「OFF」している乗り場16(階床)のなかで最上階を検出する(S206)。そして、ドア回路50が「OFF」している最上階を乗りかご14の停止階、つまり、「最寄り階」として特定する(S208、S110)。
なお、乗り場ドア34の開動作が正常でない場合の一例として、「アドレスセット」が完了していない乗り場登録装置16bが設置されている場合も含まれる。乗り場登録装置16bを用いるにはアドレスセットという設置階を登録する操作が必要となる。例えば、乗り場16から呼び登録を行う乗り場登録装置16b(乗り場呼びボタン16c)は、基板化され全乗り場16で同一のものが利用されている。したがって、基板毎にいずれの乗り場16に設置されているか登録する必要があり、この作業を「アドレスセット」と称する。したがって、「アドレスセット」が完了していない場合、いずれの乗り場16の乗り場ドア34が開動作しているか特定できない。本実施形態においては、この場合もS108において「ドア正常」ではないと見なし、最寄り階の特定や乗りかご14の位置ずれ補正を実施しないものとしている(禁止条件)。
図9のフローにおいて、乗りかご14が移動した最寄り階が特定できた場合、補正部68は階層パルステーブル58を参照して、停止階床に対応した乗りかご14のかご位置(正規かご位置)を取得する(S112)。図7に示すように、階層パルステーブル58には、予めPDセット時に終端階(この例では1階)を基準にして測定された各乗り場16(階床)のかご位置(正規かご位置)に対応するパルス数が記憶されている。補正部68は、例えば、乗りかご14が移動した最寄り階が「5階」であると特定された場合、5階における正規かご位置を示すパルス数(013000)を取得する。
そして、補正部68は、階層パルステーブル58を参照して取得した正規かご位置に基づいて、かご位置検出部52で検出される乗りかご14の位置ずれを補正する(S114)。つまり、補正部68は、かご位置検出部52で認識している、エンコーダ32のパルス数を階層パルステーブル58から取得して正規かご位置を示すパルス数に再設定(かご位置をリセット)する。例えば、乗りかご14が「5階」に停止しているときに、かご位置検出部52が検出するかご位置(パルス数)が「015000」であった場合、階層パルステーブル58(図7参照)における5階の正規かご位置(013000)に対して、2000パルス数分の位置ずれが生じていることになる。したがって、補正部68は、かご位置検出部52の認識する、かご位置(パルス数)を「015000」から「013000」補正(再設定)する。
かご位置検出部52が認識する乗りかご14のかご位置が再設定された後、運転制御部60は、乗りかご14の運転(巻上機26の駆動)を通常速度の通常運転に復帰させる(S116)。なお、乗りかご14の位置ずれ補正が完了して、通常運転を再開する場合、エレベータ制御装置46は、運転復帰のメッセージを出力するようにしてもよい。
このように実施形態1のエレベータ制御装置46によれば、乗りかご14に位置ずれが発生した場合で乗りかご14を最寄り階に着床させる場合、各乗り場16(階床)のドア回路50からの信号を用いることで、乗りかご14が着床した階床(最寄り階)の特定ができる。また、その特定した階床に乗りかご14が停止した場合に、正規かご位置を示すデータ(階層パルステーブル58が示すパルス数)を用いて、かご位置検出部52が認識して乗りかご14のかご位置(エンコーダ32から取得するパルス数)の補正が可能になり、乗りかご14の位置ずれ補正を迅速に行うことができる。特に階床数の多い建物では、乗りかご14を例えば終端階(最下階や最上階)まで移動させて、位置ずれを修正する場合、乗りかご14が終端階でオーバランすることを防止するために、極低速で移動させるため、終端階への移動に時間がかかる。一方、実施形態1のエレベータ制御装置46によれば、位置ずれが発見された後、最寄り階への移動距離は、最大でも1階床分であり、移動に必要な時間は、終端階に移動させる場合に比べ十分に短い。そして、乗りかご14を短時間で移動させた後に、特定した最寄り階に基づく正規かご位置(正規パルス数)により、かご位置検出部52のパルス数を補正するのみで、乗りかご14の位置ずれ補正が完了できる。その結果、乗りかご14の位置ずれ補正の処理時間が短縮可能であり、エレベータ10の通常運転を迅速に再開させることができる。
<実施形態2>
上述した実施形態1は、各乗り場16(階床)におけるドア回路50の信号を乗り場登録装置16bを介してシリアル通信路48を用いてエレベータ制御装置46に通知した。一方、実施形態2では、各乗り場16(階床)のドア回路50の信号を、パラレル通信路70を介してエレベータ制御装置46に通知している。実施形態2の構成について、図11および図12を用いて説明する。なお、実施形態1と実施形態2とでは、ドア回路50の信号の通信方法が異なるのみで、他の構成は基本的に同じである。例えば、図11においては、図3のシリアル通信路48に代えてパラレル通信路70を備えている。また、図12においては、図6のシリアル通信部62に代えて、ドア回路信号取得部72を備える。したがって、実施形態2において、実施形態1と実質的に同じ構成、同じ機能の部材には、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図11は、実施形態2において、エレベータ制御装置46にドア開検出信号を提供するドアスイッチ36の構成およびパラレル通信路70を示す例示的な模式図である。また、図12は、実施形態2のエレベータ制御装置46の機能ブロック図の例示的な模式図である。
実施形態2においても、実施形態1と同様に乗り場ドア34は着床時にかごドア14aに追従して開閉動作する。また、各乗り場16(階床)の乗り場ドア34には、乗り場ドア34ごとにドア開動作を検出するドアスイッチ36が設けられている。実施形態2のドアスイッチ36も実施形態1のドアスイッチ36と同様に、例えば、乗り場ドア34が開動作した場合に、OFFされる常閉型のスイッチとすることができる。実施形態2も、各乗り場16の乗り場ドア34に設けられて当該乗り場ドア34の開動作を検出するドアスイッチ36が直列に接続されたドア回路50を形成している。そして、各乗り場16のドア回路50から分岐した信号(例えば、「ON」または「H」や「OFF」または「L」)を、個々のパラレル通信路70を用いてエレベータ制御装置46に送信できるように構成されている。その結果、図5に示すような各乗り場16(階床)のドア回路状態を示す情報(ドア回路信号)がエレベータ制御装置46に送信される。送信されたドア回路信号は、ドア回路信号取得部72によって受信(取得)される。したがって、ドア開検出部64は、実施形態1と同様に図5に示すような各階床のドア回路50の状態示す情報を生成することができる。なお、図11では、図示を省略しているが、各乗り場16の乗り場登録装置16bの乗り場呼びボタン16cの操作に基づく呼び登録を示す信号は、別途通信路を介してエレベータ制御装置46に提供されている。
したがって、実施形態2の構成においても実施形態1の構成と同様に、乗りかご14の位置ずれが発生した場合に、乗りかご14を最寄り階に移動させ、ドア開動作を実行させることにより、乗りかご14が着床した最寄り階を特定することができる。そして、特定した最寄り階に基づき乗りかご14の正規かご位置(パルス数)を用いてかご位置検出部52が認識している乗りかご14のかご位置(パルス数)を修正することができる。その結果、実施形態2の構成においても、実施形態1の構成と同様に、乗りかご14の位置ずれを迅速に修正し、エレベータ10を通常運転に速やかに復帰させることができる。
このように、シリアル通信路48を備えないエレベータ10においても、本実施形態1と同様に、乗りかご14に位置ずれが発生した場合で乗りかご14を最寄り階に着床させる場合、各乗り場16(階床)のドア回路50からの信号を用いることで、乗りかご14が着床した階床(最寄り階)の特定ができる。また、その特定した階床に乗りかご14が停止した場合に、正規かご位置を示すデータ(階層パルステーブル58が示すパルス数)を用いて、かご位置検出部52が認識して乗りかご14のかご位置(エンコーダ32から取得するパルス数)の補正が可能になり、乗りかご14の位置ずれ補正を迅速に行うことができる。なお、シリアル通信路48は、例えば、最近のエレベータ10で用いられている場合が多い。一方、パラレル通信路70は、例えば旧型のエレベータ10で用いられている場合が多い。したがって、エレベータ10が備える通信タイプに応じて実施形態1の構成を採用するか実施形態2の構成を作用するかの選択が可能である。特に、パラレル通信路70が作用されている旧型のエレベータ10において、乗りかご14に位置ずれが発生した場合で乗りかご14を最寄り階に着床させた場合の最寄り階の特定機能や、その特定に基づく乗りかご14の位置ずれの補正機能を追加するバージョンアップが容易であり、エレベータ10の使い勝手向上に寄与することができる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
実施形態のエレベータ制御装置は、例えば、かご位置検出部と、かごずれ判定部と、運転制御部と、ドア開検出部と、停止階特定部と、を備える。かご位置検出部は、巻上機に巻回されるロープによって複数の階床を移動可能な乗りかごのかご位置を、巻上機の回転に同期して出力されるパルス信号のパルス数を計測して連続的に検出する。かごずれ判定部は、かご位置検出部の検出するかご位置と制御上存在すべき位置とに位置ずれが生じたか否かを判定する。運転制御部は、かごずれ判定部が位置ずれありと判定した場合に、乗りかごを最寄り階床に移動させるとともにドア開動作を実行可能である。ドア開検出部は、階床ごとの乗り場ドアに設けられたドア開動作を検知するドアスイッチが直列に接続されて成るドア回路から、階床ごとに分岐されて出力されるドアスイッチの開閉情報を取得する。停止階特定部は、運転制御部により乗りかごが最寄り階床に着床してドア開動作が実行された場合に、ドア開検出部が取得した階床ごとの開閉情報の開閉切替状態に基づき最寄り階床の階床位置を特定する。