JP2020019729A - ヘルペスウイルス回帰発症抑制剤 - Google Patents

ヘルペスウイルス回帰発症抑制剤 Download PDF

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京子 林
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Abstract

【課題】ヘルペスウイルスの回帰発症の抑制に有効な新たな手段を提供することを課題とする。【解決手段】コッコミクサ属に属する微細藻類の藻体又はその乾燥粉末を有効成分として含む、ヘルペスウイルス回帰発症抑制剤が提供される。【選択図】なし

Description

本発明は、潜伏感染したヘルペスウイルスの再活性化による発症(回帰発症)に対する薬剤(ヘルペスウイルス回帰発症抑制剤)に関する。詳細には、微細藻類由来の物質を用いたヘルペスウイルス回帰発症抑制剤及びその用途等に関する。
ヘルペスウイルスは二本鎖DNAをゲノムとして有するDNAウイルスである。ヘルペスウイルスはαヘルペスウイルス亜科、βヘルペスウイルス亜科及びγヘルペスウイルス亜科に分類される。αヘルペスウイルス亜科に属する単純ヘルペスウイルス(HSV)はヒトに様々な疾患を引き起こす。HSV感染症の代表的なものとして、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)が病原体の口唇ヘルペス、単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)が病原体の性器ヘルペスが挙げられる。ヘルペスウイルスの特徴は、初感染後、潜伏感染(体内に持続感染)することであり、種々の原因(紫外線、発熱、種々のストレス、月経、免疫抑制など)によって再活性化し、再び局所に病態を引き起こす(回帰発症)。ヘルペスウイルス感染に対する根本的な治療法はなく、ヘルペスウイルスに感染した個体は局所での病態/症状を繰り返し経験することになる。
ヘルペスウイルス感染に対する治療には核酸アナログやDNA合成阻害剤等(例えば、アシクロビル、バラシクロビル)が用いられるが(例えば非特許文献1、2を参照)、これらの抗ウイルス剤は、増殖期のウイルスを標的としているため、潜伏感染しているウイルス感染細胞には効果を発揮できない。抗ウイルス剤の長期的な服用により再活性化を抑えようとする治療(再発抑制療法)も行われるが、患者への負担は大きく、また医療経済上の問題もあり、新たな治療戦略の確立が切望される。
John M. Douglas et al., N Engl J Med 1984; 310:1551-1556. Lisa G. Kaplowitz et al., JAMA. 1991;265(6):747-751.
ヘルペスウイルスの潜伏感染からの再活性化による発症、即ち回帰発症に対して直接的な治療効果を示す薬剤はなく、再発性ヘルペスウイルス感染症の根治は現時点では不可能である。このような現状に鑑み本発明は、ヘルペスウイルスの回帰発症の抑制に有効な新たな手段を提供することを課題とする。
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、動物実験(マウスモデル)において、コッコミクサ属(Coccomyxa)微細藻類の藻体(乾燥粉末)が回帰発症に対して優れた抑制効果を発揮した。また、回帰発症が抑制された個体では血清中の中和抗体価の顕著な上昇が認められ、コッコミクサ属微細藻類の藻体(乾燥粉末)の作用メカニズムの一端が明らかになるとともに、有効性が裏付けられた。
主として上記の成果及び考察に基づき、以下の発明が提供される。
[1]コッコミクサ属に属する微細藻類の藻体又はその乾燥粉末を有効成分として含む、ヘルペスウイルス回帰発症抑制剤。
[2]前記微細藻類がコッコミクサ sp. KJ株又はその変異株である、[1]に記載のヘルペスウイルス回帰発症抑制剤。
[3]標的のヘルペスウイルスが単純ヘルペスウイルス1型又は単純ヘルペスウイルス2型である、[1]又は[2]に記載のヘルペスウイルス回帰発症抑制剤。
[4][1]〜[3]のいずれか一項に記載のヘルペスウイルス回帰発症抑制剤を含む組成物。
[5]ヘルペスウイルス回帰発症に対する医薬である、[4]に記載の組成物。
[6]食品又は餌である、[4]に記載の組成物。
1.用語、作用
ヘルペスウイルス回帰発症抑制剤とは、ヘルペスウイルスの回帰発症の予防に有効な薬剤である。本発明のヘルペスウイルス回帰発症抑制剤を使用すると、典型的には、回帰発症率の低減、軽症化(症状の軽度化や症状の持続期間の短縮化等)等を期待できる。理論に拘泥するわけではないが、後述の実施例に示した実験の結果に鑑みれば、本発明のヘルペスウイルス回帰発症抑制剤は、ヘルペスウイルスに対する中和抗体の産生促進を介してその効果を発揮するといえる。上記の通り、ヘルペスウイルスは、3種類のヘルペスウイルス亜科(αヘルペスウイルス亜科、βヘルペスウイルス亜科、γヘルペスウイルス亜科)に分類される。αヘルペスウイルス亜科には単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)、単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)、水痘・帯状疱疹ウイルス(HHV-3)が属し、βヘルペスウイルス亜科にはヒサイトメガロウイルス(HHV-5)、ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)、ヒトヘルペスウイルス7(HHV-7)が属し、γヘルペスウイルス亜科にはエプスタイン・バール・ウイルス(HHV-4)、ヒトヘルペスウイルス8(HHV-8、別名:カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV))が属する。本発明のヘルペスウイルス回帰発症抑制剤の特に好適な標的は単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)又は単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)である。
2.ヘルペスウイルス回帰発症抑制剤の有効成分
本発明のヘルペスウイルス回帰発症抑制剤はコッコミクサ属(Coccomyxa)に属する微細藻類の藻体又はその乾燥粉末を有効成分とする。コッコミクサ属微細藻類は特に限定されないが、好ましい例として、コッコミクサ sp. KJ株又はその変異株を挙げることができる。コッコミクサ sp. KJ株(KJデンソー)は、2013年6月4日付で独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター 特許生物寄託センター(NITE−IPOD)(千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 120号室)に受託番号FERM P−22254として寄託され、2015年6月2日付でプタベスト条約の規定下で受託番号FERM BP−22254として国際寄託に移管されている。
コッコミクサ sp. KJ株の変異株は、紫外線、X線、γ線などの照射、変異原処理、重ビーム照射、遺伝子操作(外来遺伝子の導入、遺伝子破壊、ゲノム編集による遺伝子改変等)等によって得ることができる。ヘルペスウイルス回帰発症抑制活性を示す変異株が得られる限りにおいて、変異株の取得方法、特性等は特に限定されない。
コッコミクサ属微細藻類の培養方法は特に限定されない。コッコミクサ属微細藻類を培養するための培地としては、微細藻類の培養に通常使用されているものでよく、例えば、各種栄養塩、微量金属塩、ビタミン等を含む公知の淡水産微細藻類用の培地、海産微細藻類用の培地のいずれも使用可能である。培地としては、例えば、AF6培地が挙げられる。AF6培地の組成(100mlあたり)は以下のとおりである。
NaNO3 14mg
NH4NO3 2.2mg
MgSO4・7H2O 3mg
KH2PO4 1mg
K2HPO4 0.5mg
CaCl2・2H2O 1mg
CaCO3 1mg
Fe-citrate 0.2mg
Citric acid 0.2mg
Biotin 0.2μg
Thiamine HCl 1μg
Vitamin B6 0.1μg
Vitamin B12 0.1μg
Trace metals 0.5mL
Distilled water 99.5mL
栄養塩としては、例えば、NaNO3、KNO3、NH4Cl、尿素などの窒素源、K2HPO4、KH2PO4、グリセロリン酸ナトリウムなどのリン源が挙げられる。また、微量金属としては、鉄、マグネシウム、マンガン、カルシウム、亜鉛等が挙げられ、ビタミンとしてはビタミンB1、ビタミンB12等が挙げられる。
培養方法は、通気条件で二酸化炭素の供給とともに攪拌を行えばよい。その際、蛍光灯で12時間の光照射、12時間の暗条件などの明暗サイクルをつけた光照射、又は、連続光照射して培養する。培養条件も、コッコミクサ属微細藻類の増殖に悪影響を与えない範囲内であれば特に制限はされないが、例えば培養液のpHは3〜9とし、培養温度は10〜35℃にする。
尚、コッコミクサ sp. KJ株の培養方法に関しては、特開2015−15918、WO 2015/190116 A1、Satoh, A. et al., Characterization of the Lipid Accumulation in a New Microalgal Species, Pseudochoricystis ellipsoidea (Trebouxiophyceae) J. Jpn. Inst. Energy (2010) 89:909-913.等が参考になる。
藻体の乾燥粉末は、回収した藻体を乾燥処理と破砕(粉砕)処理に供することによって調製することができる。乾燥処理としては例えば、ドラムドライ、スプレードライ、凍結乾燥等を採用することができる。破砕処理には、ビーズ式破砕装置、ホモジナイザー、フレンチプレス、ミキサー/ブレンダー、微粉砕機等を利用することができる。乾燥処理と破砕処理の順序は問わない。また、乾燥及び破砕の機能を備えた装置を利用し、乾燥処理と破砕処理を同時に行うことにしてもよい。
乾燥粉末の粒子径は特に限定されない。例えば、平均粒子径が0.2μm〜2mm、好ましくは0.4μm〜400μmの乾燥粉末にする。
3.ヘルペスウイルス回帰発症抑制剤の用途・使用方法
本発明のヘルペスウイルス回帰発症抑制剤は、典型的には、それを含む組成物として、ヘルペスウイルス回帰発症対策に用いることができる。ここでの組成物の例は医薬、食品、餌である。
後述の実施例に裏付けられるように、好ましくは、HSV-1による回帰発症(典型的には口唇ヘルペス、ヘルペス口内炎、角膜ヘルペス、単純ヘルペス脳炎等)に対する医薬等に、本発明のヘルペスウイルス回帰発症抑制剤の利用が図られる。
本発明の医薬はヘルペスウイルス回帰発症に対して治療的効果又は予防的効果(これら二つの効果をまとめて「医薬効果」と呼ぶ)を発揮し得る。ここでの医薬効果には、回帰発症率の低減、軽症化(症状の軽度化や症状の持続期間の短縮化等)等が含まれる。尚、治療的効果と予防的効果は一部において重複する概念であることから、明確に区別して捉えることは困難な場合があり、またそうすることの実益は少ない。
医薬の製剤化は常法に従って行うことができる。製剤化する場合には、製剤上許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水など)を含有させることができる。賦形剤としては乳糖、デンプン、ソルビトール、D-マンニトール、白糖等を用いることができる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。乳化剤としてはアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。懸濁剤としてはモノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。無痛化剤としてはベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としては塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等を用いることができる。
製剤化する場合の剤形も特に限定されない。剤形の例は錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、注射剤、外用剤(軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、液剤、ゲル剤、パップ剤、プラスター剤、テープ剤、エアゾール剤等)、及び座剤である。医薬はその剤形に応じて経口投与又は非経口投与(局所注入、静脈内、動脈内、皮下、皮内、筋肉内、又は腹腔内注射、経皮、経鼻、経粘膜など)によって対象に適用される。また、全身的な投与と局所的な投与も対象により適応される。これらの投与経路は互いに排他的なものではなく、任意に選択される二つ以上を併用することもできる。
本発明の医薬には、期待される効果を得るために必要な量(即ち治療又は予防上有効量)の有効成分が含有される。本発明の医薬中の有効成分量は一般に剤形によって異なるが、所望の投与量を達成できるように有効成分量を例えば約0.1重量%〜約99重量%の範囲内で設定する。
本発明の医薬の投与量は、期待される効果が得られるように設定される。治療又は予防上有効な投与量の設定においては一般に症状、患者の年齢、性別、及び体重などが考慮される。当業者であればこれらの事項を考慮して適当な投与量を設定することが可能である。投与量の例を示すと、成人(体重約60kg)を対象として一日当たりの有効成分量が1 mg〜20 mg、好ましくは2 mg〜10 mgとなるよう投与量を設定することができる。投与スケジュールとしては例えば一日一回〜数回、二日に一回、或いは三日に一回などを採用できる。投与スケジュールの作成においては、患者の状態や有効成分の効果持続時間などを考慮することができる。
以上の記述から明らかな通り本願は、ヘルペスウイルスが潜伏感染/持続感染した対象に対して、本発明のヘルペスウイルス回帰発症抑制剤を含む医薬を、治療又は予防上有効量投与することを特徴とする、ヘルペスウイルス回帰発症を抑制する方法も提供する。治療又は予防の対象は典型的にはヒトであるが、ヒト以外の哺乳動物(例えばサル、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウサギ、等)、鳥類(ニワトリ、ウズラ、七面鳥、ガチョウ、アヒル、ダチョウ、カモ、インコ、文鳥等)等に適用することにしてもよい。
上記の通り、本発明のヘルペスウイルス回帰発症抑制剤の利用形態の一つとして、本発明のヘルペスウイルス回帰発症抑制剤を含む食品又は餌が挙げられる。本発明の食品の例として一般食品(穀類、野菜、食肉、各種加工食品、菓子・デザート類、牛乳、清涼飲料水、果汁飲料、珈琲飲料、野菜汁飲料、アルコール飲料等)、栄養補助食品(サプリメント、栄養ドリンク等)、食品添加物、愛玩動物用食品、愛玩動物用栄養補助食品を挙げることができる。栄養補助食品又は食品添加物の場合、粉末、顆粒末、タブレット、ペースト、液体等の形状で提供することができる。食品組成物の形態で提供することによって、本発明の有効成分を日常的に摂取したり、継続的に摂取したりすることが容易となる。
本発明の餌の例は、飼料(例えば家畜、家禽などの餌)、ペットフードである。
本発明の食品又は餌には、治療的又は予防的効果が期待できる量の有効成分が含有されることが好ましい。添加量は、それが使用される対象となる者の状態、年齢、性別、体重などを考慮して定めることができる。
1.コッコミクサ属微細藻類の乾燥粉末(藻体)の調製
既報の方法に準じてコッコミクサ sp. KJ株を培養した。具体的には、AF6培地にコッコミクサ sp. KJ株を植藻した後、2%CO2(v/v)を通気し、光(300μmol/m2/s)を照射しながら室温(25℃)で48時間培養した。培養液から遠心分離により藻体を回収した。回収した藻体をドラムドライヤで乾燥させるとともに微粉砕機で粉砕し、粉末状とした(藻体の乾燥粉末)。
2.HSV-1感染潜伏感染からの回帰発症に対する阻止効果の評価
単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)は、口や角膜などからの初感染後、一過性の急性感染症状(口内炎など)を呈したり、多くの場合には無症状であったりして、急性期を経過する。その後、感染部位の近くの神経細胞に感染して、最終的には三叉神経節に潜伏感染状態となる。この潜伏感染状態は初感染の約1ヵ月後に成立し、感染力のあるウイルス粒子は検出できなくなっている。このままで一生をやり過ごす事ができれば問題はないのであるが、紫外線や発熱、種々のストレスなどによって、ウイルスDNAから感染力のあるウイルス粒子が産生されて、神経細胞を伝って口唇や角膜などの皮膚表面に達し、増殖を繰り返して、口唇ヘルペスや角膜ヘルペスなどの症状をもたらす。このような潜伏感染・回帰発症系は小型実験動物(マウス)で再現する事が可能である。そこで、BALB/cマウスの角膜にHSV-1を接種し、潜伏感染の成立する約1ヵ月後に、刺激(酪酸ナトリウムの腹腔内注射)を与えて回帰発症を誘導した。この回帰発症を、コッコミクサ sp. KJ株の藻体(乾燥粉末)の経口投与によって阻止できるかを評価した。使用したHSV-1は、回帰発症率が最も高いとされているMcKrae株である。
<方法>
(1)BALB/cマウスに麻酔下で、左右の角膜を23ゲージ針束で3回ずつ交差して擦過後、HSV-1 McKrae株(1 x 105 PFU/ 5μl/mouse)を接種する。
(2)14日間にわたって、角膜の症状(Lesion scores)を記録する。
(3)感染3日後と5日後に、PBS 0.1 mlずつで左右の角膜を洗浄し、回収した洗浄液をプラークアッセイに供する。
(4)生存したマウスについて、発症の程度及び左右角膜のウイルス量のデータに基づいて、均等に1群7匹ずつ、3群に分ける。
(5)感染28日後に1回目の血清採取(尾採血)を行い、中和抗体価を測定する。以下の試験区を設け、感染37日後まで、1日2回(9時と18時)サンプルを経口投与する。
試験区#1:コントロール(滅菌水)(0.4 ml/day)
試験区#2:ACV(アシクロビル)(1 mg/0.4 ml/day)
試験区#3:藻体(乾燥粉末)(5 mg/0.4 ml/day)
(6)感染35日後に酪酸ナトリウム (NaB)(1200 mg/kg)を腹腔内注射する。
(7)翌日(感染36日後)、さらにNaB(600 mg/kg)を腹腔内注射し、4時間後に43℃の温浴に10分間浸漬する。
(8)感染38日後(初回のNaB処置後3日後)に、全血、左右の眼球、左右の三叉神経節(TG)、脳を採取する。尚、眼球、TG、脳については、超音波処理し、遠心後、上清からウイルスの検出を試みる。
(9)血清については、2回目の中和抗体価を測定し、1回目の測定値と比較して、サンプル投与による抗体価の変動を検討する。
<結果・考察>
(1)BALB/cマウス30匹にウイルス接種したところ、7匹が、感染6〜14日後に死亡した。生存した23匹中、角膜に症状が認められず、かつ、角膜からウイルスが検出されなかったマウスが2匹いた。そのため、残りの21匹を試験区#1〜#3の各群に7匹ずつ振り分けた。
(2)初感染から35〜36日後に、回帰発症を起こすために、2回のNaB注射及び1回の熱刺激処置を行ったが、熱刺激後に#3のマウス1匹が死亡した。
(3)表1に示した通り、試験区#1(コントロール群)に比べて、試験区#3(藻体)は回帰発症率が低かった。また、すべてのマウスについて、脳からウイルスは検出されなかった。
Figure 2020019729
回帰発症率の比較
(4)表2に示した通り、試験区#1(コントール群)及び試験区#2(ACV)の血清の中和抗体価は8日間のサンプル投与後にも変動はなかった。試験区#3(藻体)の中和抗体価は、投与後に約1.9倍上昇した。
Figure 2020019729
中和抗体価の比較
以上の通り、コッコミクサ sp. KJ株の藻体(乾燥粉末)に、回帰発症に対する顕著な抑制効果が認められた。
本発明のヘルペスウイルス回帰発症抑制剤は、回帰発症に対して特異的に活性を発揮し得るという、極めて特徴的なものであり、既存の抗ヘルペスウイルス剤とは一線を画す。本発明のヘルペスウイルス剤によれば、既存の抗ヘルペスウイルス剤では不可能な「回帰発症の直接的な抑制」という効果を期待できる。また、既存の抗ヘルペスウイルス剤との併用による、総合的な治療に本発明を利用することも想定される。一方、本発明のヘルペスウイルス回帰発症抑制剤には、その有効成分が微細藻類の藻体であるが故に高い安全性も期待できる。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。

Claims (6)

  1. コッコミクサ属に属する微細藻類の藻体又はその乾燥粉末を有効成分として含む、ヘルペスウイルス回帰発症抑制剤。
  2. 前記微細藻類がコッコミクサ sp. KJ株又はその変異株である、請求項1に記載のヘルペスウイルス回帰発症抑制剤。
  3. 標的のヘルペスウイルスが単純ヘルペスウイルス1型又は単純ヘルペスウイルス2型である、請求項1又は2に記載のヘルペスウイルス回帰発症抑制剤。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のヘルペスウイルス回帰発症抑制剤を含む組成物。
  5. ヘルペスウイルス回帰発症に対する医薬である、請求項4に記載の組成物。
  6. 食品又は餌である、請求項4に記載の組成物。
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