JP2020015879A - 剥離性スケール付着防止材、剥離性スケール付着防止層を有する無機部材、及びスケール付着防止方法 - Google Patents

剥離性スケール付着防止材、剥離性スケール付着防止層を有する無機部材、及びスケール付着防止方法 Download PDF

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Abstract

【課題】無機部材へのスケールの付着及び堆積をより効果的に抑制し、部材の長寿命化に有効なコーティング層を形成可能なスケール付着防止材、及び上記スケール付着防止材を用いてなるコーティング層を有する無機部材を提供する。【解決手段】硬化性樹脂と、前記硬化性樹脂100質量部に対して10〜500質量部の無機粒子とを含む、剥離性スケール付着防止材。【選択図】図2B

Description

本開示は、剥離性スケール付着防止材、及び剥離性スケール付着防止層を有する無機部材に関する。また、本開示は、スケール付着防止方法に関する。
従来から、地熱発電及び温泉等の設備で使用される配管及び熱交換器等の部材の表面には、スケールと呼ばれる物質が付着及び堆積しやすいことが知られている。例えば、配管では、配管内部にスケールが付着及び堆積することによって目詰まりが起こり、流体の通過量の低下を招く。そのため、スケールを除去するために、代表的に、部材の表面を高圧水で洗浄する方法、又は酸などの薬品によってスケールを溶解する方法が適用されている。
しかし、高圧水で洗浄する方法では、十分な洗浄能力を得ることが難しく、スケールを効率良く除去する方法が求められている。一方、薬品によってスケールを溶解する方法は、適用可能な設備が制限される。特に、温泉バイナリー発電の設備など、温泉地での薬品の使用は困難である。
この様な状況に対し、部材にコーティング層を設けることによってスケールの付着を防止する方法が報告されている。例えば、特許文献1は、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂、金属化合物を含有する樹脂組成物の硬化物からなるコーティング層を開示している。また、特許文献2は、有機ケイ素化合物と、金属化合物と、熱硬化性樹脂とを含有する樹脂組成物の硬化物からなるコーティング層を開示している。
これらのコーティング層を用いるスケール付着防止方法によれば、部材へのスケールの付着が抑制され、スケールの堆積物によって部材に不具合が生じるまでの期間を遅延化できる。
特開2016−132711号公報 WO2015/025592号公報
しかし、上述のように、スケールの付着防止を目的としたコーティング材を使用しても、スケール堆積物の生成は避けられず、メンテナンスが必要となる。メンテナンスには、手間とコストが掛かるため、部材へのスケールの付着及び堆積をより効果的に抑制し、部材の長寿命化を可能とするコーティング材の開発が望まれている。
したがって、本開示は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、部材へのスケールの付着及び堆積をより効果的に抑制し、部材の長寿命化を可能とするコーティング層を形成可能なスケール付着防止材を提供する。また、本開示は、上記スケール付着防止材を用いてなるスケール付着防止コーティング層を有する部材を提供する。
本発明者は、コーティング層を用いて部材へのスケールの付着及び堆積を抑制する方法について鋭意研究を重ねた結果、付着したスケールとコーティング層表面の少なくとも一部とを一緒に剥離させる方法が簡便かつ好適であることを見出した。より詳細には、スケールの付着後に、スケールと一緒にコーティング層表面の一部が剥離可能なコーティング層を形成することによって部材の長寿命化を実現することができ、メンテナンスに要する手間とコストの低減が可能になることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の実施形態は以下に関する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されず、様々な実施形態を含む。
一実施形態は、硬化性樹脂と、上記硬化性樹脂100質量部に対して10〜500質量部の無機粒子とを含む、剥離性スケール付着防止材に関する。
一実施形態において、上記硬化性樹脂は熱硬化性樹脂であることが好ましい。
一実施形態において、上記熱硬化性樹脂は、フラン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、及びジアリルフタレート樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
一実施形態において、上記無機粒子の平均粒径は、5〜300μmであることが好ましい。
一実施形態において、上記剥離性スケール付着防止材は、更に硬化剤を含有することが好ましい。
一実施形態は、剥離性スケール付着防止層を有する無機部材であって、上記剥離性スケール付着防止層が上記実施形態の剥離性スケール付着防止材の硬化物から形成される無機部材に関する。
一実施形態において、上記剥離性スケール付着防止層の膜厚は10〜1000μmであることが好ましい。
一実施形態は、無機部材表面へのスケールの付着を防止する方法であって、無機部材表面のスケール付着防止層に付着したスケールを、該スケールと共に前記スケール付着防止層の少なくとも一部を剥離することにより除去することを含む、スケール付着防止方法。
本開示によれば、部材へのスケールの付着及び堆積を効果的に抑制し、部材の長寿命化を可能とするコーティング層を形成可能な剥離性スケール付着防止材を提供することができる。また、本開示によれば、上記剥離性スケール付着防止材を用いてなるスケール付着防止層を有する部材を提供することができる。
図1は、従来のコーティング層によるスケールの付着防止のメカニズムを説明する断面模式図である。 図2Aは、本実施形態の剥離性スケール付着防止層によるスケールの付着防止のメカニズムを説明する断面模式図である。 図2Bは、図2Aに示したメカニズムによって無機部材からスケールが剥離した状態を例示する断面模式図である。 図3Aは、本実施形態の剥離性スケール付着防止層によるスケールの付着防止のメカニズムを説明する断面模式図である。 図3Bは、図3Aに示したメカニズムによって無機部材からスケールが剥離した状態を例示する断面模式図である。 炭素鋼からなる部材に対するスケール付着のメカニズムを説明する断面模式図である。 図5Aは、本実施形態の剥離性スケール付着防止層を有する無機部材にスケールが付着した状態を例示する断面模式図である。 図5Bは、本実施形態の剥離性スケール付着防止層の一部がスケールと一緒に剥離した状態を例示する断面模式図である。 図6は、コーティング層の剥離性を評価する剥離試験の方法に用いた装置を説明する断面模式図である。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本開示において「層」との語には、当該層膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本開示において「コーティング層」との語は、「スケール付着防止層」又は「剥離性スケール付着防止層」のことであってもよい。
本開示において「コーティング剤」又は「コーティング層形成材」との語は、「スケール付着防止材」のことであってもよい。
<スケール付着防止方法>
一実施形態は、スケール付着防止方法に関する。図1、図2A及び図2Bは、部材へのスケールの付着をコーティング層によって防止するメカニズムを説明する断面模式図である。各図において、10は無機部材、20及び22はコーティング層、30はスケールを表す。図1に示すように、従来のスケール付着防止材を用いたコーティング層20は、コーティング層20の表面特性によってスケール30の付着そのものを抑制している。
一方、図2A及び図2Bに示すように、本実施形態のスケール付着防止方法は、無機部材10上のコーティング層22の表面に付着したスケール30を、該スケール30と共にコーティング層22の少なくとも一部を剥離することにより除去することを含む。すなわち、本実施形態のスケール付着防止方法は、スケール30の付着後に、スケール30と一緒にコーティング層22の表面の少なくとも一部が剥離することを特徴とする。そのため、上記コーティング層22は、コーティング層表面の少なくとも一部がスケールと一緒に剥離可能となる材料から構成される。本明細書では、上述のように、コーティング層表面の少なくとも一部の剥離が可能となる材料を「剥離性スケール付着防止材」と称す。一実施形態において、無機部材表面へのスケールの付着を防止する方法は、無機部材の表面に剥離性スケール付着防止材の硬化物から形成されるスケール付着防止層を形成すること、及び付着したスケールと共に上記スケール付着防止層の少なくとも一部が剥離することを含んでよい。剥離性スケール付着防止材の詳細については、後述する。
本明細書において、スケールとは、水等の流体が接触する部材の表面に析出した、流体中に含まれる珪素、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム等を主成分とした固体沈殿物を意味する。なかでも、特に、珪素又はカルシウムを主成分とする、シリカ系スケール又はカルシウム系スケールを意味する。シリカ系スケール又はカルシウム系スケールは、珪素又はカルシウムの酸化物及び硫化物等の化合物、並びにそれらの混合物等を含んでよい。具体的には、スケールの主成分として、珪酸、炭酸カルシウム、珪酸アルミニウム、及び珪酸マグネシウム等が挙げられる。
一実施形態において、剥離性スケール付着防止材は、室温(概ね15〜30℃の範囲)で液状の硬化性樹脂組成物であってよい。この樹脂組成物を部材表面に塗布し、塗膜を硬化させることによって、部材表面にスケール付着防止材の硬化物から形成されるコーティング層を形成することができる。
コーティング層に剥離性を発現する要因は、コーティング層を形成する樹脂組成物の硬化物の脆性に関すると考えられる。以下、推論ではあるが、硬化物が脆性である場合、図3Aに示すように、流体によるせん断応力によって、コーティング層22の表面付近に微小なクラック23が入り易くなる。更に、流体の応力によるクラックが、無機部材10とコーティング層22との界面に達する前に、図3Bに示すように、コーティング層の少なくとも一部22aが、矢印で示す流体の流れ方向に剥離し易くなる。コーティング層22の表面にスケール30が付着した場合、クラックの発生がさらに容易になるため、スケール30とコーティング層の少なくとも一部22aが一緒に剥離することになる。このようなメカニズムにより、コーティング層表面にはスケールが無くなり、スケールの堆積を効果的に抑制することできると考えられる。すなわち、上記実施形態のスケール付着防止方法によれば、部材の長寿命化が可能になるため、メンテナンスの手間とコストの低減が可能である。
上記実施形態のスケール付着防止方法において、剥離性スケール付着防止材を用いたコーティング層表面の剥離の形態は、特に限定されない。例えば、図3Bに示したように、表層の一部が剥離する形態であってよい。また、図2Bに示したように、スケール付着部位を含む表層が広域に剥離する形態であってよい。
また、コーティング層表面の剥離量は、特に限定されない。部材の使用時に部材表面に加わる流体のせん断応力を考慮して、コーティング層によるスケールの付着及び堆積の抑制効果を効率的に、かつ長期的に得られるように調整することができる。コーティング層の剥離量は、コーティング層を形成するスケール付着防止材の構成材料及びその配合量によって調整することができる。
一実施形態において、単位時間当たりのコーティング層の剥離量は、膜残存率としても規定することができる。特に限定されないが、例えば、流体によるせん断応力を加えてから半年後(4320時間経過後)の膜残存率は、20%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、40%以上がさらに好ましい。コーティング層の剥離量が上記範囲内である場合、メンテナンスの手間とコストとを容易に低減することが可能である。
本明細書において「流体」とは、上記スケール成分を含有するいかなる水であってよく、温水及び冷水のいずれであってもよい。一実施形態において、上記剥離性スケール付着防止材の硬化物から形成されるコーティング層は、優れた耐熱性を有することから、源泉から直接汲み上げた温泉水のような、スケール成分が多く、かつ高温の流体と接触する部材に対しても適用可能であり、部材に優れたスケール付着防止性を付与することができる。
上記実施形態のスケール付着防止方法において、コーティング層表面の剥離が生じる前に、スケールが大量に付着し堆積物が形成されると、スケール成分の硬度の観点から、流体のせん断応力によってコーティング層表面を剥離させることが困難になる。そのため、部材の長寿命化の観点から、部材表面に形成されるコーティング層は、スケールの付着そのものを抑制する材料から構成されることがより好ましい。
スケールの付着に関するメカニズムは未解明である部分が多いが、日本金属学会誌第5巻(2016)によれば、基板へのスケールの付着は、スケール成分と腐食した基板との表面反応による化学結合が要因の1つとされている。一般的に、無機材料は耐食性に劣る。そのため、例えば、炭素鋼からなる部材12の場合、図4に示すように、腐食によって生成した鉄酸化物12aの上の鉄水酸化物12bと、スケール成分の水酸基とが縮合し、強固な結合が形成される。すなわち、腐食性が高い無機材料を使用した部材は、スケール付着防止性が低く、表面にスケールが付着しやすい。
このような観点から、コーティング層によって優れたスケール付着防止性を得るために、上記剥離性スケール付着防止材は、耐食性の高い樹脂材料を含むことが好ましい。但し、樹脂材料であっても硬化度が低い、すなわちコーティング層(硬化物)の表面に水酸基が残存している場合は、スケール成分との結合を形成し易くなる。したがって、コーティング層形成時に樹脂材料は十分に硬化されていることが好ましい。
<剥離性スケール付着防止材>
以下、剥離性スケール付着防止材の構成成分についてより具体的に説明する。一実施形態において、剥離性スケール付着防止材は、硬化性樹脂と無機粒子とを含む硬化性樹脂組成物であることが好ましい。一般的に、硬化性樹脂に対して無機粒子を添加すると、硬化物における耐熱性の向上、及び硬化物と基材との密着性の向上が可能となる。一方、硬化物における無機粒子と樹脂との結合力は低いため、無機粒子の添加によってコーティング層の脆性が向上する。したがって、硬化性樹脂と無機粒子とを併用することによって、所望とする各種特性を有するコーティング層を形成可能な剥離性スケール付着防止材を容易に得ることができる。
(硬化性樹脂)
硬化性樹脂は、特に限定されないが、剥離性及び耐熱性の観点から、熱硬化性樹脂がより好ましい。
熱硬化性樹脂の具体例として、フラン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、及びジアリルフタレート樹脂が挙げられる。これらの1種を単独で使用しても、又は2種類以上を組合せて使用してもよい。上記熱硬化性樹脂のなかでも、フラン樹脂がより好ましい。フラン樹脂は、撥水性が高いため、スケールのような親水性物質との相互作用が起こりにくい。そのため、フラン樹脂を含む材料の硬化物から形成されるコーティング層は、スケールの付着を容易に抑制することができる。
(フラン樹脂)
フラン樹脂は、分子内に、少なくともフラン環と架橋性官能基とを有する重合体を含む。本明細書において上記「フラン樹脂」とは、上記重合体の中間生成物、及び上記重合体を構成するモノマー化合物を含んでもよい。本明細書において、上記「重合体」の用語は、重合度の高いポリマーだけでなく、二量体及び三量体などの重合度の低いオリゴマーも含む。
上記架橋性官能基は、例えば、水酸基(但し、カルボキシル基に含まれる水酸基は除く)、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、及びシリル基などが挙げられる。フラン樹脂成分は、架橋性官能基が反応することによって硬化物を形成する。
上記フラン樹脂において、少なくともフラン環と架橋性官能基とを有する重合体は、フラン環を有するフラン化合物に由来する構造単位(以下、フラン環含有構造単位という)を含む。一実施形態において、フラン樹脂における上記重合体の含有量は60質量%以上であることが好ましい。一実施形態において、上記重合体におけるフラン環含有構造単位の割合(モル比)は、50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、70モル%以上がさらに好ましい。上記重合体におけるフラン環含有構造単位の割合(モル比)は100モル%であってもよい。一実施形態において、フラン樹脂は、上記重合体の他に、上記重合体の中間生成物又は上記重合体を構成するモノマー化合物を含んでよい。この場合、上記フラン環含有構造単位の割合は、フラン樹脂全体におけるフラン環含有構造単位の割合を意味する。すなわち、上記重合体におけるフラン環含有構造単位の割合と、上記重合体の中間生成物又は上記重合体を構成するモノマー化合物から誘導可能なフラン環含有構造単位の割合との合計量が上記範囲になることが好ましい。
フラン樹脂において、フラン環含有構造単位の割合が50モル%以上である場合、耐酸性及び耐アルカリ性に優れ、かつ耐熱性に優れたコーティング層を形成可能な樹脂組成物を容易に得ることができる。上記フラン環含有構造単位の割合は、例えば、IR解析におけるフラン環の吸収ピーク強度、フラン樹脂を構成するモノマー化合物の仕込み量のモル比等によって特定することができる。
フラン樹脂を構成するモノマー化合物は、少なくともフラン化合物を含む。一実施形態において、フラン化合物は、フルフラール又はフルフリルアルコールを含むことが好ましい。フラン樹脂は、例えば、フルフラール又はフルフリルアルコールを出発物質とする縮合反応で生成する重合体であってよい。例えば、少なくともフルフリルアルコールを用いて得られるフラン樹脂は、架橋性官能基として少なくとも水酸基を有する。フラン樹脂は、水酸基に限らず、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、及びシリル基等のその他の架橋性官能基を有するフラン化合物を用いて得られる重合体であってもよい。フラン樹脂は、1種又は2種以上の架橋性官能基を含んでよい。
他の実施形態において、フラン樹脂は変性されていてもよい。変性フラン樹脂は、例えば、フラン化合物と、アルデヒド類、ケトン類、フェノール類、エポキシ類、尿素、及びメラミン等の上記フラン化合物と反応可能な官能基を有するその他の化合物との反応を経て生成する重合体であってよい。但し、その他の化合物はフラン環を含まない。すなわち、一実施形態において、フラン樹脂は、フラン化合物に由来するフラン環含有構造単位と、その他の化合物に由来するフラン環を持たない構造単位とを含んでよく、上記構造単位の少なくとも一部に架橋性官能基を有する。架橋性官能基は、フラン樹脂の側鎖として存在してもよいが、末端に存在することがより好ましい。
フラン樹脂の具体例として、フラン化合物の単独縮合物であるフルフリルアルコール縮合型の重合体が挙げられる。また、フラン化合物の共縮合物であるフルフリルアルコール−フルフラール共縮合型の重合体が挙げられる。
変性フラン樹脂の具体例として、フルフラール又はフルフリルアルコールと、これらフラン化合物と反応可能なその他の化合物との共縮合物が挙げられる。より詳細には、変性フラン樹脂として、フルフリルアルコール−アルデヒド共縮合型、フルフラール−ケトン共縮合型、フルフラール−フェノール共縮合型、フルフリルアルコール−尿素共縮合型、及びフルフリルアルコール−フェノール共縮合型等の重合体が挙げられる。
一実施形態において、変性フラン樹脂は、フラン化合物とその他の化合物との反応後に、さらに架橋性官能基を導入した化合物であってよい。例えば、エポキシ変性フラン樹脂の一例として、2,5−フランジカルボン酸と、アシルグリシジルエーテルとの反応によって得られるジアリルフラン化合物をさらにエポキシ化することによって得られるエステル型のエポキシ変性フラン樹脂が挙げられる。
特に限定されないが、工業的に安定に供給されていることから、フルフリルアルコール単独縮合型の重合体、フルフリルアルコール−フルフラール共縮合型の重合体、及びフルフリルアルコール−ホルムアルデヒド共縮合型の重合体が好ましい。フラン樹脂として、これらの1種を単独で使用しても、又は2種類以上を組合せて使用してよい。
一実施形態において、フラン樹脂として、日立化成株式会社製の商品名「ヒタフランVF−303」、「ヒタフランVF−302」、「ヒタフランVF−958」、及び「ヒタフランVF−3007」等のヒタフランシリーズを使用することができる。これらは、フルフリルアルコール単独縮合型のフラン樹脂と、フラン樹脂を構成するモノマー化合物であるフルフリルアルコール及びフルフラールとの混合物である。成分中に含まれるフルフリルアルコール及びフルフラールは、加熱時にフラン樹脂を構成することができる一方で、加熱前は溶剤としても機能し得る。そのため、保存時には溶剤として機能し粘度調整に寄与するが、加熱時には共縮合反応によってフラン樹脂を構成することができる。
先に例示した中でも、「ヒタフランVF−303」を好適に使用することができる。「ヒタフランVF−303」は、成分の全重量を基準として、下式(a)で表される構造を有するフルフリルアルコール単独縮合型のフラン樹脂を67%、下式(b)で表されるフルフリルアルコールを16%、及び下式(c)で表されるフルフラールを17%含む混合物である。なお、式(a)中、nは整数である。
Figure 2020015879
(無機粒子)
上記実施形態の剥離性スケール付着防止材は、熱硬化性樹脂と無機粒子との併用によって、コーティング層の剥離性を容易に向上させることができる。また、無機部材と無機粒子との間で配位結合が形成されるため、無機部材とコーティング層(硬化物)との密着性を容易に向上させることができる。また、コーティング層の耐熱性を容易に向上させることができる。更に、液状の樹脂前駆体に無機粒子を添加し、加熱すると、硬化物の重合度が低減するため、コーティング層の剥離性が向上する。
一実施形態において、無機粒子の平均粒径は、5μm以上であることが好ましく、7.5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。一方、上記平均粒径は、300μm以下であることが好ましく、275μm以下であることがより好ましく、250μm以下であることがさらに好ましい。無機粒子の平均粒径が5μm以上である場合、硬化物の脆性が高くなり、剥離性が向上しやすい。さらに、無機部材とコーティング層との密着性が向上しやすい。また、無機粒子の平均粒径が300μm以下である場合、単位面積当たりの無機材料が少なく、耐食性が向上しやすい。そのため、コーティング層によって、スケールの付着を効果的に抑制することが可能となる。
無機粒子の平均粒径は、走査型顕微鏡による画像処理、レーザー回折法、遠心沈降法、及び電気的検知法等の様々な方法で測定することができる。但し、本明細書において記載する無機粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡による観測で得られたSEM画像を解析することによって得た平均一次粒径を意味する。より具体的には、平均粒径は、以下の手順に従って得た値である。
先ず、無機粒子のSEM画像において、無作為に複数個(例えば20個)の粒子を選択し、選択した粒子についてSEMで表示される縮尺を基準として粒径を計測する。粒径の計測は、粒子の最長径及びその垂直二等分線について実施する。次いで、各粒子について、最長径及びその垂直二等分線の値の積の平方根を求める。さらに、得られた複数の値の平均値を求め、平均粒径として規定する。
一実施形態において、無機粒子の添加量は、硬化性樹脂100質量部に対して、10重量部以上が好ましく、20重量部以上がより好ましく、30重量部以上がさらに好ましい。また、上記添加量は、500重量部以下であることが好ましく、400重量部以下であることが好ましく、300質量部以下であることが好ましい。
一実施形態において、上記添加量は、10〜500質量部であることが好ましく、20〜400質量部であることがより好ましく、30〜300質量部であることがさらに好ましい。 無機粒子の添加量が10質量部以上である場合、コーティング層の脆性がより高くなるため、剥離性の向上が容易となる。また、無機部材とコーティング層との密着性の向上が容易となる。また、無機粒子の添加量が500質量部以下である場合、単位面積当たりの無機材料が少なく、耐食性が向上しやすいため、スケール付着を容易に抑制するが容易となる。
無機粒子は、硬化性樹脂用フィラーとして公知の材料であってよい。例えば、黒鉛、タルク、珪石、マイカ、ガラスビーズ、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、及び炭化ケイ素等が挙げられる。一実施形態において、無機材料は、黒鉛タルク、珪石、マイカ、ガラスビーズ、カオリン、シリカ、酸化アルミニウム、及び窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。なかでも、撥水性の観点から、黒鉛が最も好ましい。撥水性の高い物質は、スケールのような親水性物質との相互作用が起こりにくい。そのため、黒鉛などの撥水性の高い無機粒子を使用した場合、スケール付着の抑制効果の向上が容易となる。
黒鉛は、人造黒鉛と、天然黒鉛とに分類される。汎用性の観点から、天然黒鉛が好ましい。さらに、天然黒鉛は、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛、半鱗状黒鉛、土状黒鉛、球状黒鉛、膨張黒鉛、塊状黒鉛、及び膨張黒鉛に分類される。なかでも、耐熱性の関連から、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛、半鱗状黒鉛、土状黒鉛、球状黒鉛、膨張化黒鉛、及び塊状黒鉛が好ましい。また、ワニス(樹脂組成物)の流動抵抗の観点から、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、半鱗状黒鉛、及び膨張化黒鉛が望ましい。これらの天然黒鉛を使用した場合、流動抵抗を容易に小さくすることができる。そのため、黒鉛の添加によって樹脂組成物の粘度が上昇することを抑制することができ、取扱い性に優れた樹脂組成物を容易に提供することができる。上記各種黒鉛のいずれか1種を単独で使用しても、又は2種類以上を組合せて使用してもよい。
一実施形態において、黒鉛は、濃硫酸などの酸で処理されたものであってよく、処理後のpHは適宜調整されることが好ましい。例えば、熱硬化性樹脂としてフラン樹脂を使用する場合、併用する黒鉛のpHは1〜10が好ましい。この実施形態において、黒鉛のpHは、1.5〜9がより好ましく、2〜8がさらに好ましい。黒鉛のpHを1以上に調整した場合、フラン樹脂の硬化が急激に進行することを容易に抑制することができる。そのため樹脂組成物における黒鉛の充填量を高めることも可能である。また、処理後の黒鉛のpHを10以下に調整した場合、フラン樹脂の硬化時間の短縮が可能になる。ここで、上記pHの値は、黒鉛を水に分散させたときの分散液のpHを意味し、水は脱イオン水であることが好ましい。分散液のpHは、市販のpHメーターを使用して測定することができる。分散液は、例えば、黒鉛0.5gを、水10gに分散させた液であってよい。
(硬化剤)
一実施形態において、上記剥離性スケール付着防止材は、更に硬化剤を含んでもよい。硬化剤は、特に限定されず、併用する硬化性樹脂を硬化可能ないかなる化合物を使用してもよい。硬化剤の使用によって、樹脂の硬化が促進され、硬化物中の水酸基が減少するため、スケール付着の抑制が容易となる。硬化剤は、1種を単独で使用しても、2種類以上を組合せて使用してもよい。
例えば、熱硬化性樹脂としてフラン樹脂を使用する場合、硬化剤は、無機酸、有機酸、アンモニウム塩、及びアミン塩からなる群から選択されることが好ましい。硬化剤として、上記化合物の1種を単独で使用しても、又は2種類以上を組合せて使用してもよい。
一実施形態において、硬化剤は、無機酸及び有機酸の少なくとも1種を含む酸成分であってよい。
無機酸は、当技術分野で強酸として周知の化合物であってよく、特に限定されない。一実施形態において、無機酸は、塩酸、硝酸、リン酸、及び硫酸からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
有機酸は、スルホン酸及びカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。上記スルホン酸としては、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、及びフェノールスルホン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。また、上記カルボン酸は、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、りんご酸、酢酸、乳酸、コハク酸、及び安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
一実施形態において、酸解離定数の観点から、硬化剤は、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、及びフェノールスルホン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含む有機スルホン酸、又は少なくともシュウ酸を含むカルボン酸であることが好ましい。これらの中でも、汎用性の観点から、パラトルエンスルホン酸が好ましい。
硬化剤としてアンモニウム塩又はアミン塩を使用した場合、スケール付着防止材(樹脂組成物)の加熱硬化時に、加熱によって塩よりアンモニア又はアミンが解離する。そして、上記アンモニア又はアミンと、フラン樹脂中に微少量含まれるホルムアルデヒドとが反応し、アミン化合物を形成することによって安定化する。一実施形態において、上記アンモニウム塩又はアミン塩は、上記酸成分と併用されることが好ましい。酸成分との併用において、加熱時に解離したアンモニア又はアミンは酸成分を遊離させ、この遊離酸によってフラン樹脂を速やかに硬化させることができる。そのため、アンモニウム塩又はアミン塩を使用した場合、硬化時間の短縮とポットライフの長期化との両立を図ることができる。
アンモニウム塩は、例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、及び臭化アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。また、アミン塩は、第1級、第2級、第3級のいずれであってもよく、例えば、メチルアミン塩酸塩、ジメチルアミン塩酸塩、エチルアミン塩酸塩、及びジエチルアミン塩酸塩からなる群から選択される少なくとも1種を含む塩酸塩が好ましい。その他、先に例示した各種塩酸塩を硫酸塩などの鉱酸塩に置き換えたアミン塩であってもよい。
なかでも、塩基解離定数の観点から、スケール付着防止材は、硬化剤として、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、及び臭化アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。このような実施形態によれば、フラン樹脂の硬化反応が促進され、優れた耐酸性及び耐アルカリ性と、優れたスケール付着防止性とを得ることが容易となる。特に、汎用性の観点から、臭化アンモニウム塩が好ましい。
上記アンモニウム塩又はアミン塩は、フラン樹脂への添加及び分散を容易にするために、希釈剤に溶解させるか、又は希釈剤中に分散させた希釈物の状態で使用することが好ましい。希釈剤としては、脱イオン水、又は後述する溶剤を使用することができ汎用性の観点から、脱イオン水又はアルコール系溶剤が好ましい。一実施形態において、上記アンモニウム塩及びアミン塩は、それぞれ、脱イオン水又はアルコール系溶剤による希釈物であってよい。例えば、ジメチルアミンの水溶液を好適に使用することができる。
(その他の成分)
一実施形態において、上記剥離性スケール付着防止材は、さらに溶剤を含んでもよい。溶剤を含む剥離性スケール付着防止材は、上記スケール付着防止コーティング層を形成するコーティング剤組成物として好適に使用することができる。
溶剤の具体例として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びブタノールなどのアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、トルエン、及びエチルベンゼンなどの芳香族炭化水素溶剤、並びにこれらの混合物が挙げられる。一実施形態として、フルフリルアルコール、及びフルフラール等のフラン環含有化合物を使用してもよい。なかでも、フルフリルアルコール又はフルフラールを使用することが好ましい。フラン環含有化合物は、フラン樹脂を構成するモノマー化合物としても機能し得る。
上記溶剤は、硬化剤として使用されるアンモニウム塩又はアミン塩の希釈剤として使用されてもよい。一実施形態において、上記希釈剤は、フルフリルアルコール及びメタノールからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
上記剥離性スケール付着防止材は、フラン樹脂等の硬化性樹脂、無機粒子、及び必要に応じて使用される硬化剤及び溶剤による効果を損なわない範囲で、さらに他の成分を含んでもよい。例えば、上記成分に、消泡剤、増粘剤、分散剤、及び湿潤剤等をさらに加えてもよい。
<剥離性スケール付着防止層を有する無機部材>
一実施形態は、剥離性スケール付着防止層(コーティング層)を有する無機部材に関し、上記コーティング層は上記実施形態の剥離性スケール付着防止材の硬化物から形成される。図5Aに示すように、無機部材10の上に形成される上記剥離性スケール付着防止層22は、硬化性樹脂22aと無機粒子22bとを含む。コーティング層22の表面にスケール30が付着した場合、熱硬化性樹脂22a及び無機粒子22bの一部が、矢印で示す流体のせん断力によって、図5Bに示すように上記スケール30と一緒に剥離し、新しい表面が形成されることになる。
(部材)
上記部材は、スケール対策が必要とされる各種部材であってよい。スケール付着防止層が形成される部材の具体例として、配管、熱交換器、蒸発器、凝縮器、及び船底等が挙げられる。一実施形態において、部材は、温泉設備で使用される配管及び熱交換器等の部材であってよい。温泉設備で使用される部材は、様々なpHを有する温泉水と接触するため、スケール付着防止性に加えて、優れた耐酸性及び耐アルカリ性と、優れた耐熱性とを有することが好ましい。これに対し、上記実施形態のスケール付着防止材の硬化物は、優れた耐酸性及び耐アルカリ性を有し、かつ優れた耐熱性を有する。そのため、上記硬化物から形成されるコーティング層によって、温泉設備等での使用時に性能低下や劣化が生じ難い部材を提供することが可能となる。
特に限定されないが、部材は、スケール付着防止材を容易に塗工できる表面形状及び表面特性を有することが好ましい。一実施形態において、上記部材は、無機材料から構成される無機部材であることが好ましい。
無機部材の構成材料は、例えば、鋼材、銅材、鉛材、鉄材、チタン材、ステンレス材、マグネシウム材、アルミ材、及びタングステン材からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。さらに、上記鋼材は、炭素鋼、銅鋼、鉄鋼、クロム鋼、ニッケル鋼、ステンレス鋼、マンガン鋼、及びモリブデン鋼からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
一実施形態において、無機部材は、表面がめっき処理された部材でもよい。めっき処理に用いる材料の具体的として、例えば、亜鉛めっき、銅めっき、アルミニウムめっき、クロムめっき、ニッケルめっき、スズめっき、及びコバルトめっきからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
本実施形態によれば、このような無機部材に対し、コーティング層における無機粒子が配位結合するため、優れた密着性が発現する。そのため、コーティング層による効果を長期間にわったって維持することが容易となり、不具合なく部材を長期的に使用することが可能となる。
(コーティング層)
一実施形態において、上記コーティング層は、上記部材の表面に剥離性スケール付着防止材(樹脂組成物)を塗布し、次いで塗膜を硬化させることによって形成することができる。部材へのスケール付着防止材の塗工は、当技術分野で公知の方法に従って実施することができる。また、上記剥離性スケール付着防止材は、加熱によって硬化物を形成できるため、塗工膜の硬化は、塗工膜を加熱することによって実施することができる。
塗工膜の硬化時の加熱温度及び加熱時間は、スケール付着防止材の構成成分に応じて適宜調整することができる。一実施形態において硬化時の加熱温度は10〜500℃が好ましく、15〜400℃がより好ましく、20〜300℃がさらに好ましい。また、硬化時の加熱時間は、0.1〜7200分が好ましく、0.3〜4320分がより好ましく、0.5〜1440分がさらに好ましい。
フラン樹脂を含む塗工膜の硬化性は、例えば、加熱後に得られた硬化膜の試験片を90℃に保持した熱水中に2時間浸漬した後、熱水の着色の有無によって判断することができる。目視によって熱水の着色が確認できなければ、硬化性が良好であり、硬化膜はコーティング層として十分に機能するとみなすことができる。硬化時の加熱温度及び加熱時間を上記範囲内に調整することによって、効率良く、良好なコーティング層を形成することが可能である。
一実施形態において、上記コーティング層の膜厚は、1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。一方、上記膜厚は、1000μm以下であることが好ましく、750μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらに好ましい。
コーティング層の膜厚が1μm以上である場合、塗工時に巻き込んだ空気が分散し易く、界面のボイドを低減することができる。そのため、部材に対するコーティング層の密着性を向上させることが容易である。また、コーティング層の膜厚が1000μm以下である場合、塗工膜の硬化を均一に促進できる。そのため、耐酸性及び耐アルカリ性に優れ、かつスケール付着防止性に優れるコーティング層を提供することが容易である。
コーティング層の膜厚は、当技術分野で公知の方法にしたがって測定することができる。例えば、JIS−H−8401で規格化された方法を用いることが好ましい。例えば、コーティング層形成前の部材自体の厚さと、コーティング層形成後の部材の厚さとの差を算出し、膜厚とすることができる。
一実施形態において、配管にコーティング層を形成した場合、先ず、配管について、その厚さを10〜90°毎に等間隔で4〜36箇所で測定する。次に、コーティング層形成後の配管について、上記配管の測定箇所と同じ箇所でその膜厚を測定する。次に、上記4〜36の測定箇所におけるコーティング層形成前後での膜厚の差をそれぞれ算出し、コーティング層の膜厚とする。さらに、4〜36の測定箇所での上記コーティング層の膜厚の平均値を求め、コーティング層の膜厚とすることができる。すなわち、一実施形態において、コーティング層の膜厚は、配管に形成されたコーティング層の膜厚であってよく、上述のように4〜36の測定箇所における膜厚の平均値は上記範囲内であることが好ましい。
上記コーティング層の耐熱性は、例えば、コーティング層を形成するスケール付着防止材の硬化物の熱重量分析によって評価することができる。熱重量分析は、JIS−K−7120で規格化された方法に従って実施することができる。一実施形態において、スケール付着防止材の硬化物を、昇温速度10℃/minで加熱する熱重量分析において、昇温開始時の重量を基準として重量減少率が5%となる温度を耐熱温度と見なすことができる。
上記耐熱温度は、200℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましく、300℃以上であることがさらに好ましい。上記硬化物の耐熱温度が200℃以上である場合、コーティング層によって部材の耐熱性を高めることが容易となり、耐熱性が必要とされる幅広い用途での部材の使用が可能となる。
上記コーティング層の密着性は、例えば、コーティング層を形成するスケール付着防止材の硬化物(硬化膜)に対するクロスカット試験によって評価することができる。クロスカット試験は、例えば、JIS−K−5600で規格化された方法に従って実施することができる。
一実施形態において、クロスカット試験では、先ず、基材上の硬化膜に対し、切れ込み工具及びガイドのある等間隔スペーサーを用いて平行に1mm幅、10本の切れ込みを入れる。さらに、それら10本の線と90°に交わるように平行に2mm幅、10本の切れ込みを入れて、1mmの四方マスを100個作製する。なお、切れ込み工具及び等間隔スペーサーは、JIS−K−5600で規格化されたものであれば特に制限はされない。例えば、切れ込み工具としてカッター、等間隔スペーサーとしてクロスカット試験カッターガイドSuper Cutter Guide No.315(太佑機材株式会社製)などを使用することができる。
次に、幅25mm当り10Nの付着強さを有する透明感圧付着テープを上記サンプルの上に貼り付け、1.5kg/cmの荷重で押し付けた後、90°方向に剥離し、テープに付着した四方マスの数を調査する。なお、透明感圧付着テープは、例えばセロテープ(登録商標)などが挙げられる。
一実施形態において、上記硬化膜に対するクロスカット試験での100マス中の剥離数は、10マス以下であることが好ましく、5マス以下であることがより好ましく、3マス以下であることがさらに好ましい。上記剥離数が10マス以下である場合、部材とコーティング層との密着性に優れるため、長期間にわたってコーティング層による効果を維持することが容易となる。
(プライマー層)
一実施形態において、上記剥離性スケール付着防止層を有する無機部材は、上記剥離性スケール付着防止層と上記無機部材との間に、さらにプライマー層を有してもよい。プライマー層は、上記無機部材、及び上記コーティング層(剥離性スケール付着防止材の硬化物)の各々に対して、優れた密着性が得られる材料から形成されることが好ましい。また、優れた耐熱性が得られる材料から形成されることがより好ましい。
特に限定されないが、プライマー層は、硬化性樹脂と無機粒子とを含有するプライマー層形成材から構成されることが好ましい。
プライマーの膜厚は、特に限定されないが、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることがさらに好ましい。一方、上記膜厚は、100μm以下である好ましく、95μm以下であることがより好ましく、90μm以下であることがさらに好ましい。
上記膜厚が0.1μm以上である場合、塗工時に巻き込んだ空気が分散し易く、界面のボイドを低減することができる。そのため、部材に対するプライマー層の密着性を向上させることが容易である。また、膜厚が100μm以下である場合、プライマー層を形成する樹脂が硬化する前に、部材との界面まで粒子が沈降しやすくなり、部材に対するプライマー層の密着性を向上させることが容易になる。
プライマー層の膜厚は、例えば、JIS−H−8401で規格化された方法等、公知の方法にしたがって測定することができる。代表的に、プライマー層形成前の部材自体の厚さと、プライマー層形成後の部材の厚さとの差を算出し、膜厚とすることができる。一実施形態において、配管に形成したプライマー層の膜厚は、先に説明したコーティング層の膜厚と同様にして測定した、4〜36の測定箇所での上記プライマー層の膜厚の平均値であってよい。膜厚の平均値は上記範囲内であることが好ましい。
(プライマー層形成材)
プライマー層を形成する材料(以下、プライマー層形成材という)は、上記コーティング層を形成する剥離性スケール付着防止材の組成と異なる樹脂組成物である。プライマー形成材は、少なくとも上記コーティング層に対して優れた密着性を発現できれば特に限定されないが、耐熱性の観点から、熱硬化性樹脂を含有することが好ましい。熱硬化性樹脂の具体例として、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、及びジアリルフタレート樹脂が挙げられる。これらの1種を単独で使用しても、又は2種以上を組合せて使用してもよい。
一実施形態において、上記コーティング層は、フラン樹脂と無機粒子と、必要に応じて硬化剤を含む剥離性スケール付着防止材の硬化物から形成されることが好ましい。このようなコーティング層を有する部材では、フェノール樹脂と無機粒子とを含むプライマー層形成材を用いてなるプライマー層が好ましい。このようなプライマー層とコーティング層との組合せによれば、無機部材との密着性に加えて、コーティング層との密着性についても容易に向上させることができる。
以下、プライマー層形成材の一例として、フェノール樹脂と無機粒子とを含むプライマー層形成材の構成についてより具体的に説明する。
(フェノール樹脂)
上記実施形態のプライマー層形成材において、フェノール樹脂は、特に限定されず、当技術分野において公知のものを用いることができる。例えば、フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを出発物質とする樹脂を含んでよい。具体例として、フェノール樹脂は、合成時に使用する触媒の種類によって、レゾール型フェノール樹脂と、ノボラック型フェノール樹脂とに大別される。これらの樹脂は、単独で使用されても、又は2種以上の組合せで使用されてもよい。
レゾール型フェノール樹脂としては、特に限定されず、当技術分野において公知のものを用いることができる。レゾール型フェノール樹脂は、触媒として、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、及びアルカリ土類金属の水酸化物、又はアンモニア、及びアミン等のアルカリ化合物を使用し、フェノール類とアルデヒド類とを反応させて得られる樹脂であってよい。上記触媒は、単独で使用しても、2種以上を組合せて使用してもよい。
レゾール型フェノール樹脂の合成に使用できるフェノール類の具体例として、フェノール、各種クレゾール、各種エチルフェノール、各種キシレノール、各種ブチルフェノール、各種オクチルフェノール、各種ノニルフェノール、各種フェニルフェノール、各種シクロヘキシルフェノール、カテコール、レゾシノール、及びハイドロキノン等が挙げられる。ここで「各種」の用語は、フェノール化合物におけるオルト−、メタ−、及びパラ−といった位置異性体の全てを含むことを意味する。これらのフェノール類の1種を単独で使用しても、又は2種以上を組合せて使用してもよい。
レゾール型フェノール樹脂の合成に使用できるアルデヒド類の具体例として、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラホルムアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ジヒドロキシベンズアルデヒド、ヒドロキシメチルベンズアルデヒド、グリオキザール、クロトンアルデヒド、及びグルタルアルデヒド等が挙げられる。これらアルデヒド類は、単独で使用されても、又は2種以上の組合せで使用されてもよい。
ノボラック型フェノール樹脂としては、特に限定されず、当技術分野において公知のものを用いることができる。ノボラック型フェノール樹脂は、触媒として、塩酸、及び硫酸等の無機酸、又は酢酸、及びシュウ酸等の有機酸を使用し、フェノール類とアルデヒド類とを反応させて得られる樹脂であってよい。上記触媒は、単独で使用しても、2種以上を組合せて使用してもよい。
ノボラック型フェノール樹脂の合成に使用できるフェノール類及びアルデヒド類の具体例は、先にレゾール型フェノール樹脂の合成に使用できるフェノール類及びアルデヒド類と同様である。
(プライマー層形成材における粒子)
プライマー層形成材における粒子は、硬化性樹脂用フィラーとして公知の材料であってよいが、無機粒子であることが好ましい。プライマー層が無機粒子を含むことによって、部材に対する密着性を容易に向上させることができる。上記無機粒子は、特に限定されないが、剥離性スケール付着防止材で使用可能な無機粒子として例示したものと同様であってよい。具体例として、黒鉛、タルク、珪石、マイカ、ガラスビーズ、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、及び炭化ケイ素等が挙げられる。これらの1種を単独で使用しても、又は2種以上を組合せて使用してもよい。一実施形態において、黒鉛が好ましく、なかでも燐片状黒鉛がより好ましい。
無機粒子の添加量は、特に限定されないが、フェノール樹脂100質量部に対して1〜100質量部であることが好ましく、5〜95質量部であることがより好ましく、10〜90質量部であることがより好ましい。1質量部以上であることにより、無機部材と配位結合を形成しやすいため、無機部材に対する密着性が向上し、100質量部以下であることにより、樹脂硬化物の前駆体である樹脂組成物の相対量が多くなり、粒子と無機部材の間に流れ込むため、界面のボイドが低減し、プライマーの無機部材に対する密着性を容易に向上させることができる。
また、特に限定されないが、無機粒子の平均粒径は、0.01μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましく、0.1μm以上であることがさらに好ましい。一方、上記平均粒径は、300μm以下であることが好ましく、275μm以下であることがより好ましく、250μm以下であることがさらに好ましい。無機粒子の平均粒径が0.01μm以上である場合、部材との配位結合を形成しやすいため、無機部材に対する密着性の向上が容易である。また、平均粒径が250μm以下である場合、無機粒子の分散性が向上し、無機部材とプライマー層との界面のボイドが低減するため、無機部材に対する密着性の向上が容易である。
無機粒子の平均粒径は、走査型顕微鏡による画像処理、レーザー回折法、遠心沈降法、及び電気的検知法等の種々の方法によって測定することができる。本明細書で記載する無機粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡による観測で得られたSEM画像を解析することによって得た平均一次粒径である。
より具体的には、平均粒径は、以下の手順に従って得た値である。先ず、無機粒子のSEM画像において、無作為に複数個(例えば20個)の無機粒子を選択し、選択した無機粒子についてSEMで表示される縮尺を基準として粒径を計測する。粒径の計測は、無機粒子の最長径及びその垂直二等分線について実施する。次いで、各無機粒子について、最長径及びその垂直二等分線の値の積の平方根を求める。さらに、得られた複数の値の平均値を求め、平均粒径として規定する。
(その他の成分)
上記プライマー層形成材は、フェノール樹脂等の硬化性樹脂及び無機粒子に加えて、さらに溶剤を含んでもよい。溶剤を含むプライマー層形成材は、プライマー層を形成するためのプライマー組成物として好適に使用することができる。溶剤の具体例として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系有機溶剤、トルエン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素溶剤、及びこれらの混合物が挙げられる。
上記プライマー層形成材は、フェノール樹脂等の硬化性樹脂、無機粒子、及び溶剤に加えて、これら成分による効果を損なわない範囲で、さらに他の成分を含んでもよい。例えば、上記成分に、消泡剤、増粘剤、分散剤、及び湿潤剤等をさらに加えてもよい。
プライマー層は、上記無機部材の表面にプライマー層形成材を塗工し、次いで塗工膜を硬化させることによって形成することができる。無機部材へのプライマー層形成材の塗工は、当技術分野で公知の方法に従って実施することができる。また、塗工膜の硬化は、塗工膜を加熱することによって実施することができる。
塗工膜の硬化時の加熱温度及び加熱時間は、プライマー層形成材の構成成分に応じて適宜調整することができる。一実施形態において、硬化時の加熱温度は10〜500℃が好ましく、15〜400℃がより好ましく、20〜300℃がさらに好ましい。また、硬化時の加熱時間は、0.1〜7200分が好ましく、0.3〜4320分がより好ましく、0.5〜1440分がさらに好ましい。硬化時の加熱温度及び加熱時間を上記範囲内に調整した場合、プライマー層を効率良く形成することができ、引き続き、スケール付着防止材の硬化物から形成されるスケール付着防止層を形成することが容易となる。
一実施形態において、スケール付着防止層を有する無機部材は、無機部材の表面に剥離性スケール付着防止層を有する。他の実施形態において、スケール付着防止層を有する無機部材は、無機部材の表面に、プライマー層と剥離性スケール付着防止層とを順に有する。これらの構造体を製造するために、上記実施形態の剥離性スケール付着防止材を好適に使用することができる。また、上記実施形態の剥離性スケール付着防止材との組合せにおいて、上記実施形態のプライマー層形成材を好適に使用することができる。したがって、一実施形態において、スケール付着防止用コーティング層を形成する材料として、上記実施形態のスケール付着防止材と、上記実施形態のプライマー層形成材とを有するスケール付着防止用コーティング剤セットを構成し、好適に使用することができる。
上記コーティング剤セットにおいて、上記剥離性スケール付着防止材は、例えば、フラン樹脂、黒鉛、溶剤、及び必要に応じて各種添加剤を含む組成物として調製されることが好ましい。一実施形態において、上記組成物を構成するフラン樹脂は、フルフリルアルコール又はフルフラール等のフラン環含有化合物を含むことが好ましい。フルフリルアルコール又はフルフラールは、加熱時にフラン樹脂を構成することができる一方で、加熱前は溶剤としても機能し得るため、スケール付着防止材の粘度を容易に調整することができる。また、上記プライマー層形成材は、フェノール樹脂、無機粒子、溶剤、及び必要に応じて各種添加剤を含むプライマー組成物として調製されることが好ましい。
以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではなく、種々な実施形態を含む。
<剥離性スケール付着防止材の調製>
表1に示す配合に従って、剥離性スケール付着防止層を形成するための剥離性スケール付着防止材(コーティングワニス)1A〜8A、及び1B〜5Bを調製した。具体的には、樹脂100質量部に対し、表1に示す添加量に従ってその他の材料を加えて混合した。さらに、この混合物をポリプロピレン容器に入れ、ミックスローターバリアブルVMR−5R(株式会社アズワン製、商品名)を用いてに3時間混合し、それぞれのコーティングワニスを得た。
使用した材料は、以下のとおりである。
(樹脂)
a1:ヒタフランVF−303(日立化成株式会社製の製品名。全重量を基準として、フルフリルアルコール単独縮合型のフラン樹脂を72%、フルフリルアルコールを16%、及びフルフラールを17%含む混合物である)
a2:エピコート1001(物質名:エポキシ樹脂、三菱ケミカル株式会社製)
a3:メチルトリメトキシシラン(物質名:シリコーン樹脂、東京化成株式会社製)
(無機粒子)
b1:X−100(物質名:鱗片状黒鉛、平均粒径:60μm、伊藤黒鉛株式会社製)
b2:XD100(物質名:鱗片状黒鉛、平均粒径:250μm、伊藤黒鉛株式会社製)
b3:CNP7(物質名:鱗片状黒鉛、平均粒径:7μm、伊藤黒鉛株式会社製)
b4:C40M(物質名:マイカ、平均粒径250μm、株式会社セイシン企業)
b5:高純度アルミナボール(平均粒径:500μm、富士フイルム和光純薬株式会社製)
b6:トスパール145(物質名:シリコーン粒子、平均粒径4μm、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)
なお、各粒子の平均粒径は、以下の方法により求めた値である。先ず、SEM装置(日本電子株式会社製、装置名JSM−6010PLUS/LA)で得たSEM画像において、無作為に20個の粒子を選択した。次に、選択した粒子についてSEMで表示される縮尺を基準として粒径の最長径及びその垂直二等分線をそれぞれ測定した。さらに、それらの測定値の積の平方根の値の平均値を求め、平均粒径の値とした。
(硬化剤)
c1:塩酸(12mol/l、富士フイルム和光純薬株式会社製)
c2:A−3(物質名:パラトルエンスルホン酸、日立化成株式会社製)
c3:臭化アンモニウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)
c4:DMP−30(物質名:2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、株式会社スリーボンド製)
(溶剤)
d1:フルフリルアルコール(東京化成株式会社製)
d2:メチルエチルケトン(富士フイルム和光純薬株式会社製)
d3:脱イオン水
Figure 2020015879
<プライマー層形成材の調製>
表2に示す配合に従って、プライマー層を形成するためのプライマー形成材(プライマーワニス)1A、2A、及び1B、2Bをそれぞれ調製した。具体的には、樹脂100質量部に対し、表2に示す添加量に従ってその他の材料を加えて混合した。さらに、この混合物をポリプロピレン容器に入れ、ミックスローターバリアブルVMR−5R(株式会社アズワン製、商品名)を用いてに3時間混合し、それぞれのプライマーワニスを得た。
使用した材料は、以下のとおりである。
(樹脂)
A1:液状レゾール型フェノール樹脂LR−306(リグナイト株式会社製)
(無機粒子)
B1:酸化亜鉛(平均粒径:0.02μm、富士フイルム和光純薬株式会社製)
B2:XD100(物質名:鱗片状黒鉛、平均粒径:250μm、伊藤黒鉛株式会社製)
B3:エポスターMA1010(物質名:アクリル無機粒子、平均粒径:10μm、株式会社日揮触媒製)
(硬化剤)
C1:炭酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)
Figure 2020015879
(実施例1〜10、比較例1〜8)
1.スケール付着防止層(コーティング層)の形成
先に調製した剥離性スケール付着防止層形成用のコーティングワニスを使用して、表3及び表4に示すコーティング層を形成した。実施例8及び9については、先に調製したプライマーワニス1A及び1Bを使用してプライマー層を形成した後に、コーティング層を形成した。また、比較例7及び8は、コーティング層なしの基材とした。
部材として使用した基材は以下のとおりである。
(基材)
S1:トタン板(構成:炭素鋼上に亜鉛めっき、株式会社久宝金属製作所製)
S2:ステンレス板(株式会社岩田製作所製)
S3:S10ルームミラー#350(PETフィルム、東レ株式会社製)
(コーティング層の形成)
具体的には、上記基材S1〜S3を2cm角及び5cm角にそれぞれ切り出した後、アプリケータ(ベーカーアプリケーターYBA−4、ヨシミツ精機株式会社製)を用いてコーティングワニスを塗工し、次いで塗工膜を加熱することによって、基材上に硬化膜から形成されるコーティング層を形成した。さらに、2cm角の基材については、裏面にも同様にしてコーティングワニスを塗工した。次いで塗工膜を加熱することによって、基材の両面にコーティング層を形成した。
なお、実施例8及び9については、上記基材S2を5cm角に切り出した後、アプリケータを用いてプライマーワニスを塗工し、塗工膜を加熱することによって、プライマー層を得た。次いで、プライマー層を有する各基材について、プライマー層の上に更にコーティングワニスを塗工した。
サンプル作製時の硬化条件は表3及び4に示したとおりであり、それぞれ十分に硬化反応が進行していることを確認した。具体的には、フラン樹脂を含有する硬化物については、硬化物を90℃の熱水に入れて2時間加熱した後に熱水が着色していないことを確認した。また、エポキシ樹脂を含有する硬化物については、反応前後でIRスペクトルを測定し、反応後のエポキシ基のピーク強度が90%以上低下していることを確認した。さらに、シリコーン樹脂を含む硬化物については、反応前後でIRスペクトルを測定し、反応後のシラノール基のピーク強度が90%以上低下していることを確認した。後述のコーティング層についても同様にして確認した。
2.剥離性スケール付着防止層の各種評価
実施例1〜9及び比較例1〜7で形成したコーティング層に対して、以下に示す方法に従い、各種特性を評価した。それぞれの評価結果を表3及び4に示す。
(1)剥離性(半年後の膜残存量の測定)
コーティング層の剥離性は、剥離試験後の膜残存量から評価することができる。具体的には、コーティング層の膜厚t1と、コーティング層表面に一定時間にわたって流体のせん断応力を加えた剥離試験後の膜残存量(コーティング層の膜厚)t2とを測定し、下式によって求めた膜残存率を求めることができる。
膜残存率(%)=t2/t1×100
膜厚の測定は、株式会社テクロック製の定圧厚さ測定器を使用し、水平な装置の台に上記基材S2を設置し、0点補正後のプローブを定圧で基材の上に押し当てることによって実施した。次に、同様にして、プライマー塗工後についても膜厚を測定し、基材の膜厚との差を算出することによって、プライマーの膜厚を求めた。更に、同様にして、コーティングワニス塗工後の膜厚を測定し、プライマー付きの基材の膜厚との差を算出することによって、コーティング層の膜厚を求めた。測定を複数回実施し、それらの平均値を求め膜厚とした。
上記膜残膜率(%)が100未満であれば、せん断応力によって、コーティング層の少なくとも一部が剥離したと評価できる。剥離試験は、以下のようにして実施した。
先ず、実施例1〜10及び比較例1〜7のコーティング層のサンプルを、図6に示すように、ホルダー40を使用してビーカー50の中に固定した。サンプルは、無機部材10上のコーティング層22(20)がビーカー50の中心部側になる向きで固定した。
次いで、ビーカーの中に25℃の脱イオン水を400mL入れて、サンプルを水中に浸漬させ、撹拌を開始した。撹拌は、撹拌機(新東科学株式会社製、装置名BL600)を使用し、1400rpmで、4320時間実施した。図6において、符号60は脱イオン水、70は撹拌機(撹拌棒)を示す。上記剥離試験後にサンプルを取り出し、ノギスを用いて膜厚を測定した。膜厚は、サンプルにおける各辺の中央部分4箇所について測定して得た値の平均値である。
本実施形態による剥離性スケール付着防止層は、スケールの付着後に、流体のせん断応力によって、コーティング層表面の少なくとも一部が剥離することを特徴とする。しかし、実際には、スケールの付着にばらつきがあると、スケール付着後のコーティング層の膜厚にも影響するため、剥離性を正確に評価することは難しい。そのため、剥離試験では、後述するスケール付着試験で使用するような試験水ではなく、脱イオン水を使用した。
スケール成分を含む試験水を使用した場合は、コーティング層表面にスケールが付着するため、脱イオン水を使用した場合よりも、コーティング層表面の剥離は生じやすくなると考えられる。そのため、脱イオン水を使用した剥離試験において、コーティング層表面の剥離が確認できれば、スケール成分を含む流体を用いた場合に少なくとも同等以上の剥離が生じることを確認できたことになる。
(2)スケール付着試験(スケール付着防止性)
珪酸ナトリウム溶液(55%水溶液、富士フイルム和光純薬株式会社製)66.4g質量部、純水933.6質量部を加えて混合し、1.0mol/Lの珪酸ナトリウム水溶液1000質量部を得た。また、塩化マグネシウム六水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)21.0質量部、純水 979.0質量部を加え、0.1mol/Lの塩化マグネシウム水溶液1000質量部を得た。
上述のように調製した珪酸ナトリウム水溶液100.0質量部及び塩化マグネシウム水溶液100.0質量部と、純水300.0質量部とを混合することによって、珪酸ナトリウム0.2mol/L 、及び塩化マグネシウム0.02mol/Lの水溶液を得た。この水溶液に、塩酸(1mol/L、富士フイルム和光純薬株式会社製)50.0質量部及び純水50.0質量部を加えて得た0.5mol/Lの塩酸溶液をさらに滴下し、pH紙を用いてpHを8に調整し、試験液を得た。
オートクレーブに上記試験液を80mL入れ、基材をS1にした各コーティング層を上記試験液に浸漬して、100℃で、100時間加熱した。試験中は、5時間毎にオートクレーブ中の試験液を撹拌機(新東科学株式会社製、装置名BL600)で1時間撹拌した。浸漬後のサンプルを取り出し、25℃で24時間乾燥させた。
次に、コーティング層の表面をデジタルカメラで撮影し、その画像をカラーコピー機で紙に印刷した。先ず、印刷した画像において、コーティング層(塗工膜)部分のハサミで切断し、その重量を測定した。次いで、直径5mm以上のスケール部分をハサミで切断し、その切断したスケール部分の合計重量を測定した。各測定値から以下の式に従い、スケール付着率(面積比)を算出した。
=S/S×100
式中、Sはスケール付着率(%)、Sはスケール部分の重量(g)、Sは塗工膜部分の重量(g)を示す。
(3)耐熱性試験
剥離性スケール付着防止コーティング層(剥離性スケール付着防止材の硬化物)をスパチュラで掻き取り粉状にし、大気圧下、100℃で30分間乾燥した。得られた乾燥後の硬化物をデシケータ中に移し、25℃まで冷却して、サンプルとして使用した。一方、測定装置としては、DTG−60H(株式会社島津製作所製)を用いた。
先ず、水分等を除去するため、白金製のパンを200℃、3時間、大気雰囲気で乾燥させた。
次に、測定前にサンプルの質量を測定し、上記のように空焼きした6mmΦの白金製のパンに試料を約10mgのサンプルを詰めた。その後、窒素雰囲気下(ガス流量:150ml/分)で、昇温速度10℃/分で30℃から500℃まで昇温し、0.5秒毎に質量を測定した。質量が5質量%減少した時点での温度を耐熱温度とした。
なお、質量減少率は以下の式によって算出される。質量減少率は,次の式によって算出し、百分率で表す。
=(m―m)/m×100
式中、mは質量減少率(%)、mは終了温度の質量(mg)、mは加熱前の質量(mg)を示す。
(4)密着性試験
基材をS2にした各コーティング層を、温度23℃,相対湿度50%で16時間保管した。クロスカット試験カッターガイドSuper Cutter Guide No.315を用いて、各コーティング層に対し、平行に1mm幅で、10本の切れ込みを入れ、さらに、それら10本の線と90°に交わるように平行に2mm幅で、10本の切れ込みを入れた。次に、セロハンテープをコーティング層の上に貼り付け、1.5kg/cmの荷重で押し付けた後、90°方向に剥離し、剥離したマス(1mm四方マス)の数を数えた。
Figure 2020015879
Figure 2020015879
上記表3及び表4に示した結果から、本発明による剥離性スケール防止材の硬化物(コーティング層)は、耐熱性、及び部材との密着性に優れることが分かる。また、コーティング層なしの基材(比較例7及び8)との対比から、コーティング層によってスケール付着防止性を改善できることも分かる。実施例1〜10については、流体によるせん断応力によるコーティング層の剥離性も確認されていることから、コーティング層表面の少なくとも一部が剥離することによって、スケールの付着防止効果が得られると考えられる。
これに対し、硬化性樹脂と無機粒子とが共存しない材料では、無機部材だけでなく、有機部材に対しても塗工不可となった(比較例1及び6)。表には示していないが、基材S2に対し表2に示したプライマーワニス1B及び2Bを用いてプライマー層の形成を行った場合も、塗工不可であった。また、無機粒子の配合量が特定の範囲内でなければ、塗工不可となるか、又は無機部材との密着性が低下し、良好なスケール付着防止性を得ることが困難である(比較例2〜5)。
以上のことから、本発明によれば、硬化性樹脂と特定量の無機粒子との組合せによって、密着性及び耐熱性に優れ、かつ優れたスケール付着防止層を形成可能な材料を実現できることが分かる。
本開示の剥離性スケール防止材によれば、スケールの付着を効果的に抑制できるコーティング層を形成できるため、メンテナンスに要するコストと手間を低減することができる。また、上記コーティング層は、無機部材との密着性にも優れるため、優れたスケール付着防止性を長期間にわたって維持することが容易となり、部材の長寿命化が可能となる。また、上記コーティング層は耐熱性にも優れるため、温泉地などの配管、温泉バイナリー発電用の配管、蒸発器、凝縮器、及び下水道配管等の部材にも適用可能である。
10:無機部材
12:炭素鋼からなる部材、12a:鉄酸化物、12b:及び鉄水酸化物
20:コーティング層、20a:コーティング層の一部
22:剥離性スケール付着防止コーティング層(スケール付着防止材の硬化物)
22a:熱硬化性樹脂、22b:無機粒子
30:プライマー層
40:ホルダー
50:ビーカー
60:脱イオン水
70:攪拌機(撹拌棒)

Claims (8)

  1. 硬化性樹脂と、前記硬化性樹脂100質量部に対して10〜500質量部の無機粒子とを含む、剥離性スケール付着防止材。
  2. 前記硬化性樹脂が熱硬化性樹脂である、請求項1に記載の剥離性スケール付着防止材。
  3. 前記熱硬化性樹脂が、フラン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、及びジアリルフタレート樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項2に記載の剥離性スケール付着防止材。
  4. 前記無機粒子の平均粒径が、5〜300μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の剥離性スケール付着防止材。
  5. 更に硬化剤を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の剥離性スケール付着防止材。
  6. 剥離性スケール付着防止層を有する無機部材であって、前記剥離性スケール付着防止層が請求項1〜5のいずれか1項に記載の剥離性スケール付着防止材の硬化物から形成される無機部材。
  7. 前記剥離性スケール付着防止層の膜厚が10〜1000μmである、請求項6に記載の無機部材。
  8. 無機部材表面へのスケールの付着を防止する方法であって、無機部材表面のスケール付着防止層面に付着したスケールを、該スケールと共に前記スケール付着防止層の少なくとも一部を剥離することにより除去することを含む、スケール付着防止方法。
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