[本開示の実施形態の概要]
まず本開示の実施形態の概要について説明する。本明細書の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示す。結晶学上の指数が負であることは、通常、数字の上に”−”(バー)を付すことによって表現されるが、本明細書では数字の前に負の符号を付すことによって結晶学上の負の指数を表現する。
(1)本開示に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造方法は以下の工程を備えている。基板載置面211を有するサセプタ210と、第1主面41と第1主面41の反対側の第2主面42とを有する炭化珪素単結晶基板10と、サセプタ210が配置される反応室とが準備される。第2主面42が基板載置面に対向するように炭化珪素単結晶基板10が基板載置面211に載置される。反応室201に、シランとアンモニアと水素とを含む混合ガスを供給することにより、第1主面41上に炭化珪素層20が形成される。第1主面41は、(0001)面または(0001)面に対して8°以下の角度で傾斜した面である。基板載置面211の面積は、697cm2以上1161cm2以下である。炭化珪素層20を形成する工程において、シランの流量を水素の流量で除した値を百分率表記した第1値をX軸とし、アンモニアの流量をsccmを単位として表記した第2値をY軸としたとき、第1値および第2値は、XY平面座標における、第1座標、第2座標、第3座標、第4座標、第5座標および第6座標に囲まれた六角形の領域内に属し、第1座標は、(0.104,0.02)であり、第2座標は、(0.157,0.04)であり、第3座標は、(0.358,0.09)であり、第4座標は、(0.104,0.65)であり、第5座標は、(0.157,1.09)であり、第6座標は、(0.358,2.72)である。炭化珪素層20を形成する工程後において、炭化珪素層20のキャリア濃度の平均値は、1×1015cm-3以上2×1016cm-3以下である。なお、流量の単位「sccm(standard cc/minute)」は、標準状態(0℃、101.3kPa)における流量「cc/分」を示す。
(2)本開示に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造方法は以下の工程を備えている。基板載置面211を有するサセプタ210と、第1主面41と第1主面41の反対側の第2主面42とを有する炭化珪素単結晶基板10と、サセプタ210が配置される反応室201とが準備される。第2主面42が基板載置面に対向するように炭化珪素単結晶基板10が基板載置面211に載置される。反応室201に、シランとアンモニアと水素とを含む混合ガスを供給することにより、第1主面41上に炭化珪素層20が形成される。第1主面41は、(0001)面または(0001)面に対して8°以下の角度で傾斜した面である。基板載置面211の面積は、697cm2以上1161cm2以下である。炭化珪素層20を形成する工程において、シランの流量を水素の流量で除した値を面積で除した値をcm−2を単位として表記した第1値をX軸とし、アンモニアの流量をsccmを単位として表記した第2値をY軸としたとき、第1値および第2値は、XY平面座標における、第1座標、第2座標、第3座標、第4座標、第5座標および第6座標に囲まれた六角形の領域内に属し、第1座標は、(1.12×10-6,0.02)であり、第2座標は、(1.69×10-6,0.04)であり、第3座標は、(3.86×10-6,0.09)であり、第4座標は、(1.12×10-6,0.65)であり、第5座標は、(1.69×10-6,1.09)であり、第6座標は、(3.86×10-6,2.72)である。炭化珪素層20を形成する工程後において、炭化珪素層20のキャリア濃度の平均値は、1×1015cm-3以上2×1016cm-3以下である。
(3)本開示に係る炭化珪素半導体装置の製造方法は以下の工程を備えている。上記(1)または(2)に記載の方法で炭化珪素エピタキシャル基板100の製造方法が準備される。炭化珪素エピタキシャル基板が加工される。炭化珪素半導体装置の製造方法。
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の一実施形態(以下「本実施形態」とも記す)について説明する。ただし本実施形態はこれらに限定されるものではない。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造装置200の構成について説明する。
図1に示されるように、製造装置200は、たとえばホットウォール方式の横型CVD(Chemical Vapor Deposition)装置である。製造装置200は、反応室201と、ガス供給部235と、制御部245と、発熱体203、石英管204、断熱材(図示せず)、誘導加熱コイル(図示せず)とを主に有している。
発熱体203は、たとえば筒状の形状を有しており、内部に反応室201を形成している。発熱体203は、たとえば黒鉛製である。断熱材は、発熱体203の外周を取り囲んでいる。断熱材は、石英管204の内周面に接するように石英管204の内部に設けられている。誘導加熱コイルは、たとえば石英管204の外周面に沿って巻回されている。誘導加熱コイルは、外部電源(図示せず)により、交流電流が供給可能に構成されている。これにより、発熱体203が誘導加熱される。結果として、反応室201が発熱体203により加熱される。
反応室201は、発熱体203の内壁面205に取り囲まれて形成された空間である。反応室201内には、炭化珪素単結晶基板10が配置される。反応室201は、炭化珪素単結晶基板10を加熱可能に構成されている。炭化珪素単結晶基板10の最大径は100mm以上である。反応室201には、炭化珪素単結晶基板10を保持するサセプタ210が設けられる。サセプタ210は、ステージ202上に配置される。ステージ202は、回転軸209によって自転可能に構成されている。ステージ202が回転することで、サセプタ210が回転可能である。
製造装置200は、ガス導入口207およびガス排気口208をさらに有している。ガス排気口208は、図示しない排気ポンプに接続されている。図1中の矢印は、ガスの流れを示している。ガスは、ガス導入口207から反応室201に導入され、ガス排気口208から排気される。反応室201内の圧力は、ガスの供給量と、ガスの排気量とのバランスによって調整される。
ガス供給部235は、反応室201に、シランとアンモニアと水素および炭素原子を含むガスとを含む混合ガスを供給可能に構成されている。具体的には、ガス供給部235は、第1ガス供給部231と、第2ガス供給部232と、第3ガス供給部233と、キャリアガス供給部234とを含んでもよい。
第1ガス供給部231は、炭素原子を含む第1ガスを供給可能に構成されている。第1ガス供給部231は、たとえば第1ガスが充填されたガスボンベである。第1ガスは、たとえばプロパン(C3H8)ガスである。第1ガスは、たとえばメタン(CH4)ガス、エタン(C2H6)ガス、アセチレン(C2H2)ガス等であってもよい。
第2ガス供給部232は、シランガスを含む第2ガスを供給可能に構成されている。第2ガス供給部232は、たとえば第2ガスが充填されたガスボンベである。第2ガスは、たとえばシラン(SiH4)ガスである。第2ガスは、シランガスと、シラン以外の他のガスとの混合ガスでもよい。
第3ガス供給部233は、アンモニアガスを含む第3ガスを供給可能に構成されている。第3ガス供給部233は、たとえば第3ガスが充填されたガスボンベである。第3ガスは、N(窒素原子)を含むドーピングガスである。アンモニアガスは、三重結合を有する窒素ガスに比べて熱分解されやすい。アンモニアガスを用いることにより、キャリア濃度の面内均一性の向上が期待できる。
キャリアガス供給部234は、たとえば水素などのキャリアガスを供給可能に構成されている。キャリアガス供給部234は、たとえば水素が充填されたガスボンベである。
制御部245は、ガス供給部235から反応室201に供給される混合ガスの流量を制御可能に構成されている。具体的には、制御部245は、第1ガス流量制御部241と、第2ガス流量制御部242と、第3ガス流量制御部243と、キャリアガス流量制御部244とを含んでいてもよい。各制御部は、たとえばMFC(Mass Flow Controller)であってもよい。制御部245は、ガス供給部235とガス導入口207との間に配置されている。言い換えれば、制御部245は、ガス供給部235とガス導入口207とを繋ぐ流路に配置されている。
反応室201の軸方向において、誘導加熱コイルの巻き密度を変化させてもよい。巻き密度[回/m]とは、装置の軸方向の単位長さあたりのコイルの周回数である。たとえば、上流側でアンモニアを効果的に熱分解させるために、流側の誘導加熱コイルの巻き密度は、下流側の誘導加熱コイルの巻き密度よりも高くてもよい。
図2は、図1のII−II線に沿った断面模式図である。図2に示されるように、発熱体203の内壁面205に囲まれた領域は、たとえば略長方形状である。炭化珪素単結晶基板10の径方向に沿った方向における発熱体203の内壁面205に囲まれた領域の幅は、炭化珪素単結晶基板10の径方向に対して垂直な沿った方向における発熱体203の内壁面205に囲まれた領域の幅よりも小さくてもよい。本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造装置200は、大型の反応室201を有する。具体的には、混合ガスの進行方向に対して垂直な平面における反応室201の断面積は、たとえば176cm2である。反応室201の断面積は、たとえば132cm2以上であってもよいし、150cm2以上であってもよい。反応室201の断面積は、たとえば220cm2以下であってもよいし、200cm2以下であってもよい。なお、反応室201の断面積は、発熱体203の内壁面205に囲まれた領域の面積である(図2参照)。
図3に示されるように、サセプタ210は、複数の基板を配置可能である。別の観点から言えば、サセプタ210は、バッチ式である。サセプタ210は、基板載置面211と、底面212と、側面215とを有する。基板載置面211は、基板が載置される面である。底面212は、基板載置面211とは反対側の面である。底面212は、ステージ202に搭載される面である。側面215は、基板載置面211および底面212の各々に連なっている。基板載置面211は、複数の基板載置部213と、頂面214と、中心216とを有している。頂面214に対して垂直な方向から見て、中心216は、回転軸209と重なる位置に配置される。複数の基板載置部213の各々は、凹部である。複数の基板載置部213の各々には、炭化珪素単結晶基板10が配置される。基板載置部213の数は、たとえば3である。複数の基板載置部213の各々は、中心216に対して回転対称の位置に配置されている。具体的には、基板載置部213は、中心216から見た場合に、0°、120°および240°の位置に配置されている。頂面214に対して垂直な方向から見て、複数の基板載置部213の各々は、略円形である。
本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造装置200は、大型のサセプタ210を有する。具体的には、サセプタ210の基板載置面211の面積は、たとえば929cm2である。この場合、基板載置面211の直径250の半分(半径)は、たとえば17.2cmである。サセプタ210の基板載置面211の面積は、たとえば697cm2以上であってもよいし、750cm2以上であってもよい。サセプタ210の基板載置面211の面積は、1161cm2以下であってもよいし、950cm2以下であってもよい。
次に、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法について説明する。
まず、炭化珪素単結晶基板10を準備する工程(S1:図4)が実施される。たとえば昇華法により、ポリタイプ4Hの炭化珪素単結晶が製造される。次に、たとえばワイヤーソーによって、炭化珪素単結晶をスライスすることにより、炭化珪素単結晶基板10が準備される(図4参照)。炭化珪素単結晶基板10は、第1主面41と、第1主面41と、第2主面42とを有している。第2主面42は、第1主面41の反対側の面である。当該炭化珪素単結晶のポリタイプは、たとえば4H−SiCである。4H−SiCは、電子移動度、絶縁破壊電界強度等において他のポリタイプより優れている。炭化珪素単結晶基板10は、たとえば窒素などのn型不純物を含んでいる。炭化珪素単結晶基板10の導電型は、たとえばn型である。
第1主面41は、(0001)面または(0001)面に対して8°以下の角度で傾斜した面である。第1主面41が(0001)面に対して傾斜している場合、傾斜方向(オフ方向)は、たとえば<11−20>方向である。(0001)面に対する傾斜角(オフ角)は、1°以上であってもよいし、2°以上であってもよい。オフ角は、7°以下であってもよいし、6°以下であってもよいし、4°以下であってもよい。第2主面42は、(000−1)面または(000−1)面に対して8°以下の角度で傾斜した面である。
炭化珪素単結晶基板10の第1主面41の最大径(直径)は、100mm以上である。直径は150mm以上でもよいし、200mm以上でもよいし、250mm以上でもよい。直径の上限は特に限定されないが、直径の上限はたとえば300mmであってもよい。
次に、炭化珪素単結晶基板をサセプタの基板載置面に載置する工程(S2:図4)が実施される。具体的には、図3に示すサセプタ210が準備される。炭化珪素単結晶基板10は、サセプタ210の基板載置部213に配置される。図3に示されるように、サセプタ210が3つの基板載置部213を有している場合、3枚の炭化珪素単結晶基板10が対応する基板載置部213内に配置される。
図5に示されるように、炭化珪素単結晶基板10の第2主面42がサセプタ210の基板載置部213に接するように、炭化珪素単結晶基板10が基板載置面211に載置される。基板載置面211に炭化珪素単結晶基板10が載置されたサセプタ210は、反応室201内に配置される。炭化珪素単結晶基板10は、反応室201内において基板載置面211に載置されてもよいし、反応室201外において基板載置面211に載置された後、反応室201内に配置されてもよい。
次に、炭化珪素単結晶基板上に炭化珪素層を形成する工程(S3:図4)が実施される。具体的には、上述した製造装置200を用いて、炭化珪素単結晶基板10上に炭化珪素層20がエピタキシャル成長によって形成される。たとえば反応室201の圧力が大気圧から1×10-6Pa程度に低減された後、炭化珪素単結晶基板10の昇温が開始される。昇温の途中において、キャリアガス供給部234からキャリアガスである水素(H2)ガスは反応室201に導入される。水素ガスの流量は、キャリアガス流量制御部244により調整される。
炭化珪素単結晶基板10の温度がたとえば1600℃程度になった後、反応室201に、原料ガス、ドーパントガスおよびキャリアガスが供給される。具体的には、反応室201に、シランとアンモニアと水素とプロパンとを含む混合ガスを供給することにより、それぞれのガスが熱分解され、炭化珪素単結晶基板10上に炭化珪素層20が形成される。混合ガスのC/Si比は、たとえば1.0であってもよい。
図6に示されるように、シランの流量を水素の流量で除した値を百分率表記した値(第1値)をX軸とし、アンモニアの流量をsccmを単位として表記した値(第2値)をY軸とする。第1値および第2値は、XY平面座標における、第1座標、第2座標、第3座標、第4座標、第5座標および第6座標に囲まれた六角形の領域(図6においてハッチングで示した領域)内に属する。第1座標は、(0.104,0.02)であり、第2座標は、(0.157,0.04)であり、第3座標は、(0.358,0.09)であり、第4座標は、(0.104,0.65)であり、第5座標は、(0.157,1.09)であり、第6座標は、(0.358,2.72)である。
たとえば、キャリアガス流量制御部244を用いて、反応室201に供給されるキャリアガス(水素)の流量が100slmとなるように調整される。第2ガス流量制御部242を用いて、反応室201に供給される第2ガス(シランガス)の流量が104sccmとなるように調整される。この場合、シランの流量を水素の流量で除した値を百分率表記した値は、0.104%である。第3ガス流量制御部243を用いて、第3ガス(アンモニアガス)の流量が0.02sccmとなるよう調整される。この場合、シランの流量を水素の流量で除した値を百分率表記した値(第1値)と、アンモニアの流量をsccmを単位として表記した値(第2値)とは、図6においてハッチングで示した領域内に属する。
上述のように、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法は、大型のサセプタ210を使用している。サセプタ210の基板載置面211の面積を考慮すると、シランの流量と、水素の流量と、アンモニアの流量とは、以下のように制御される。具体的には、図7に示されるように、シランの流量を水素の流量で除した値を基板載置面211の面積で除した値をcm−2を単位として表記した値(第1値)をX軸とし、アンモニアの流量をsccmを単位として表記した値(第2値)をY軸としたとき、第1値および第2値は、XY平面座標における、第1座標、第2座標、第3座標、第4座標、第5座標および第6座標に囲まれた六角形の領域(図7においてハッチングで示した領域)内に属する。第1座標は、(1.12×10-6,0.02)であり、第2座標は、(1.69×10-6,0.04)であり、第3座標は、(3.86×10-6,0.09)であり、第4座標は、(1.12×10-6,0.65)であり、第5座標は、(1.69×10-6,1.09)であり、第6座標は、(3.86×10-6,2.72)である。
たとえば、キャリアガス流量制御部244を用いて、反応室201に供給されるキャリアガス(水素)の流量が100slmとなるように調整される。第2ガス流量制御部242を用いて、反応室201に供給される第2ガス(シランガス)の流量が104sccmとなるように調整される。基板載置面211の面積は、たとえば929cm2である。この場合、シランの流量を水素の流量で除した値を基板載置面211の面積で除した値をcm−2を単位として表記した値(第1値)は、1.12×10-6である。第3ガス流量制御部243を用いて、第3ガス(アンモニアガス)の流量が0.02sccmとなるよう調整される。この場合、シランの流量を水素の流量で除した値を基板載置面211の面積で除した値をcm−2を単位として表記した値(第1値)と、アンモニアの流量をsccmを単位として表記した値(第2値)とは、図7においてハッチングで示した領域内に属する。
アンモニアの流量(sccm)は、0.02以上であってもよいし、0.04以上であってもよいし、0.09以上であってもよい。アンモニアの流量(sccm)は、たとえば2.72以下であってもよいし、1.09以下であってもよいし、0.65以下であってもよい。シランの流量を水素の流量で除した値を百分率表記した値(%)は、0.104以上であってもよいし、0.157以上であってもよい。シランの流量を水素の流量で除した値を百分率表記した値(%)は、たとえば0.358以下であってもよい。シランの流量は、たとえば100sccm以上500sccm以下である。水素の流量は、たとえば80slm以上150slm以下である。
炭化珪素層20の成長速度は、8μm/h以上であってもよいし、15μm/h以上であってもよいし、25μm/h以上であってもよいし、33μm/h以上であってもよい。炭化珪素層20の成長速度は、50μm/h以下であってもよい。炭化珪素層20の成長速度は、シランの流量に対する水素の流量により決定され得る。シランは原料ガスであるため、シランの流量が多い程、炭化珪素層20の成長速度は高くなる。一方、水素は、炭化珪素をエッチングする性質を有するため、水素の流量が多い程、炭化珪素層20の成長速度が低くなる。本実施形態においては、炭化珪素層20を高速で成長させることができる。具体的には、シランの流量を水素の流量で除した値を百分率表記した値は、0.104%以上である。
上述のように、シラン、プロパン、アンモニアおよび水素の混合ガスが反応室201に供給されることで、炭化珪素単結晶基板10上に炭化珪素層20が形成される。炭化珪素層20の厚みは、たとえば10μm以上である。なお、プロパンの代わりに、メタン(CH4)、エタン(C2H6)、アセチレン(C2H2)等が用いられてもよい。混合ガスが反応室201に供給されている間、炭化珪素単結晶基板10は、回転軸209の周りを回転していてもよい。以上により、炭化珪素単結晶基板10と、炭化珪素層20とを含む炭化珪素エピタキシャル基板100(図8参照)が製造される。炭化珪素層20は、炭化珪素単結晶基板10に接する第4主面44と、第4主面44と反対側の第3主面43とを有する。
上記方法で製造された炭化珪素エピタキシャル基板100によれば、炭化珪素層20のキャリア濃度の平均値をある濃度範囲に維持しながら、炭化珪素層20中のキャリア濃度の面内均一性を向上することができる。
具体的には、炭化珪素層20を形成する工程後において、炭化珪素層20のキャリア濃度の平均値は、1×1015cm-3以上2×1016cm-3以下である。キャリア濃度の面内均一性は、たとえば10%以下である。キャリア濃度の面内均一性は、キャリア濃度の最大値から最小値を引いた値を2で除した値をキャリア濃度の平均値で除した値の百分率表記である。キャリア濃度は、たとえば水銀プローブ方式のC(キャパシタンス)−V(電圧)測定装置により測定され得る。具体的には、炭化珪素層20の第3主面43に一方のプローブが配置され、炭化珪素単結晶基板10の第2主面42に他方のプローブが配置される。一方のプローブの面積は、たとえば0.01cm2である。一方のプローブと他方のプローブとの間に電圧が印加され、一方のプローブと他方のプローブとの間のキャパシタンスが測定される。縦軸を1/C2(キャパシタンスの二乗の逆数)とし、横軸をV(電圧)とし、測定データの直線の傾きから、キャリア濃度が求められる。キャリア濃度の測定深さは、印加電圧によって調整される。本実施形態においては、第3主面43から第2主面42に向かって10μm程度以内である炭化珪素層20の領域におけるキャリア濃度が測定される。
バッチ方式で同時に複数の炭化珪素エピタキシャル基板100を製造する場合には、複数の炭化珪素エピタキシャル基板100の各々間において、キャリア濃度のばらつきを低減することができる。具体的には、複数の炭化珪素エピタキシャル基板100の各々間において、キャリア濃度の平均値差は、たとえば3%以下である。
第3主面43の二乗平均平方根偏差(Sq)は、たとえば0.4nm以下である。二乗平均平方根偏差(Sq)は、二乗平均平方根粗さ(Rq)を3次元に拡張したパラメータである。二乗平均平方根偏差(Sq)は、たとえば白色干渉顕微鏡により測定可能である。二乗平均平方根偏差(Sq)の測定領域は、一辺が250μmの正方形領域とすることができる。
(第1変形例)
図9に示されるように、サセプタ210は、4枚の炭化珪素単結晶基板10を配置可能であってもよい。別の観点から言えば、サセプタ210の基板載置面211は、4つの基板載置部213と、頂面214と、中心216とを有している。4つの基板載置部213の各々は、中心216に対して回転対称の位置に配置されている。具体的には、基板載置部213は、中心216から見た場合に、0°、90°、180°および270°の位置に配置されている。
(第2変形例)
図10に示されるように、サセプタ210は、8枚の炭化珪素単結晶基板10を配置可能であってもよい。別の観点から言えば、サセプタ210の基板載置面211は、8つの基板載置部213と、頂面214と、中心216とを有している。8つの基板載置部213の各々は、中心216に対して回転対称の位置に配置されている。具体的には、基板載置部213は、中心216から見た場合に、0°、45°、90°、135°、180°、225°、270°および315°の位置に配置されている。150mmの直径を有する炭化珪素単結晶基板10を基板載置面211に8枚載置する場合、基板載置面211の直径250は、たとえば650mmである。この場合、基板載置面211の面積は、3318cm2である。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造装置200の構成について説明する。第2実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造装置200は、主にガス導入口207およびガス排気口208の位置が、第1実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造装置200と異なっており、他の構成については、第1実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造装置200と同様である。以下、第1実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造装置200と異なっている構成を中心に説明する。
図11に示されるように、製造装置200は、反応室201と、ガス供給部235と、制御部245と、発熱体203、石英管204、断熱材(図示せず)、誘導加熱コイル(図示せず)と、ガス導入口207と、ガス排気口208とを主に有している。
図11に示されるように、発熱体203には、ガス供給孔206が設けられている。ガス導入口207は、ガス供給孔206に繋がっている。ガス排気口208は、石英管204の一方端および他方端に設けられている。ガスは、ガス供給孔206を通して炭化珪素単結晶基板10の第1主面41に対して垂直な方向に沿って反応室201に導入される。図11中の矢印は、ガスの流れを示している。ガスは、反応室201に導入された後、石英管204の一方端側および他方端側に分かれ、石英管204の両側に設けられたガス排気口208の各々から排気される。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造装置200の構成について説明する。第3実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造装置200は、主に縦型CVD装置である構成において、第1実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造装置200と異なっており、他の構成については、第1実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造装置200と同様である。以下、第1実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造装置200と異なっている構成を中心に説明する。
図12に示されるように、製造装置200は、縦型CVD装置であってもよい。製造装置200は、反応室201と、ガス供給部235と、制御部245と、発熱体203、石英管204、断熱材(図示せず)、誘導加熱コイル(図示せず)と、ガス導入口207と、ガス排気口208とを主に有している。
図12に示されるように、発熱体203には、サセプタ210の側面215を取り囲むように設けられている。ガス導入口207は、サセプタ210に対して鉛直方向上方に配置されている。ガス排気口208は、サセプタ210に対して鉛直方向下方に配置されている。ガスは、ガス供給孔206を通して炭化珪素単結晶基板10の第1主面41に対して垂直な方向に沿って反応室201に導入される。図12中の矢印は、ガスの流れを示している。ガスは、反応室201に導入された後、炭化珪素単結晶基板10の第1主面41に対して垂直な方向に沿ってガス排気口208に向かって流れる。
次に、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造方法の作用効果について説明する。
炭化珪素半導体装置の製造に用いられる炭化珪素エピタキシャル基板100には、平均キャリア濃度を炭化珪素半導体装置として必要とされる一定の範囲に維持しつつ、キャリア濃度の良好な面内均一性および炭化珪素層20の表面の良好な平坦性を実現することが求められている。近年では、上記特性の実現に加え、炭化珪素層20の成長速度の高速化が求められている。
しかしながら、炭化珪素層20の成長速度を単に増加させると、炭化珪素層20の表面の平坦性が悪化する場合がある。また炭化珪素層20の表面の平坦性を良好に維持しようとすると、炭化珪素層20の平均キャリア濃度が、パワーデバイスとして必要とされる範囲を満たすことができない場合がある。つまり、炭化珪素層20の平均キャリア濃度を炭化珪素半導体装置として必要とされる一定の範囲に維持しつつ、炭化珪素層20の高速成長と、炭化珪素層20の表面の良好な平坦性と、キャリア濃度の良好な面内均一性とを実現することは非常に困難であった。
また大型の製造装置200を使用する場合、従来の小型の製造装置と同じ条件で炭化珪素エピタキシャル基板100を製造すると、平均キャリア濃度を炭化珪素半導体装置として必要とされる一定の範囲に維持しつつ、キャリア濃度の良好な面内均一性および炭化珪素層20の表面の良好な平坦性を実現することができない場合がある。なお、大型の製造装置200とは、たとえば基板載置面211の面積が697cm2以上のサセプタ210を収容可能な反応室201を有する製造装置200のことである。
発明者らは、大型の製造装置200を用いて、上記の要求を満たす炭化珪素エピタキシャル基板100を製造する方策について鋭意研究の結果、以下の知見を得て本開示の一態様を見出した。具体的には、原料ガスとしてシランを使用し、キャリアガスとして水素を使用し、ドーパントガスとしてアンモニアを使用した上で、シラン流量と、水素流量と、アンモニア流量とを一定の範囲内に制御することにより、上記の要求を満たす炭化珪素エピタキシャル基板100を実現可能であることを見出した。具体的には、シランの流量を水素の流量で除した値を百分率表記した第1値をX軸とし、アンモニアの流量をsccmを単位として表記した第2値をY軸としたとき、第1値および第2値が、XY平面座標における、第1座標、第2座標、第3座標、第4座標、第5座標および第6座標に囲まれた六角形の領域内に属するように、シランの流量と、水素の流量と、アンモニアの流量とが制御される。この場合、第1座標は、(0.104,0.02)であり、第2座標は、(0.157,0.04)であり、第3座標は、(0.358,0.09)であり、第4座標は、(0.104,0.65)であり、第5座標は、(0.157,1.09)であり、第6座標は、(0.358,2.72)である。
別の観点から言えば、シランの流量を水素の流量で除した値を基板載置面211の面積で除した値をcm−2を単位として表記した第1値をX軸とし、アンモニアの流量をsccmを単位として表記した第2値をY軸としたとき、第1値および第2値は、XY平面座標における、第1座標、第2座標、第3座標、第4座標、第5座標および第6座標に囲まれた六角形の領域内に属するように、シランの流量と、水素の流量と、アンモニアの流量とが制御される。この場合、第1座標は、(1.12×10-6,0.02)であり、第2座標は、(1.69×10-6,0.04)であり、第3座標は、(3.86×10-6,0.09)であり、第4座標は、(1.12×10-6,0.65)であり、第5座標は、(1.69×10-6,1.09)であり、第6座標は、(3.86×10-6,2.72)である。
以上のようにシランの流量と、水素の流量と、アンモニアの流量とが制御されることにより、大型の製造装置200を用いた場合において、炭化珪素層20の表面の平坦性およびキャリア濃度の面内均一性を向上しつつ、炭化珪素層20の高速成長を実現可能である。また複数の炭化珪素単結晶基板10の各々上に炭化珪素層20を同時成長させる場合(別の観点から言えば、バッチ処理する場合)において、複数の炭化珪素エピタキシャル基板100の各々間におけるキャリア濃度の面内均一性のばらつきを低減することが可能となる。
(炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、本実施形態に係る炭化珪素半導体装置300の製造方法について説明する。
本実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法は、エピタキシャル基板準備工程(S10:図13)と、基板加工工程(S20:図13)とを主に有する。
まず、エピタキシャル基板準備工程(S10:図13)が実施される。具体的には、前述した炭化珪素エピタキシャル基板100の製造方法によって、炭化珪素エピタキシャル基板100が準備される(図8参照)。
次に、基板加工工程(S20:図13)が実施される。具体的には、炭化珪素エピタキシャル基板100を加工することにより、炭化珪素半導体装置が製造される。「加工」には、たとえば、イオン注入、熱処理、エッチング、酸化膜形成、電極形成、ダイシング等の各種加工が含まれる。すなわち基板加工ステップは、イオン注入、熱処理、エッチング、酸化膜形成、電極形成およびダイシングのうち、少なくともいずれかの加工を含むものであってもよい。
以下では、炭化珪素半導体装置の一例としてのMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)の製造方法を説明する。基板加工工程(S20:図13)は、イオン注入工程(S21:図13)、酸化膜形成工程(S22:図13)、電極形成工程(S23:図13)およびダイシング工程(S24:図13)を含む。
まず、イオン注入工程(S21:図13)が実施される。開口部を有するマスク(図示せず)が形成された第3主面43に対して、たとえばアルミニウム(Al)等のp型不純物が注入される。これにより、p型の導電型を有するボディ領域132が形成される。次に、ボディ領域132内の所定位置に、たとえばリン(P)等のn型不純物が注入される。これにより、n型の導電型を有するソース領域133が形成される。次に、アルミニウム等のp型不純物がソース領域133内の所定位置に注入される。これにより、p型の導電型を有するコンタクト領域134が形成される(図14参照)。
炭化珪素層20において、ボディ領域132、ソース領域133およびコンタクト領域134以外の部分は、ドリフト領域131となる。ソース領域133は、ボディ領域132によってドリフト領域131から隔てられている。イオン注入は、炭化珪素エピタキシャル基板100を300℃以上600℃以下程度に加熱して行われてもよい。イオン注入の後、炭化珪素エピタキシャル基板100に対して活性化アニールが行われる。活性化アニールにより、炭化珪素層20に注入された不純物が活性化し、各領域においてキャリアが生成される。活性化アニールの雰囲気は、たとえばアルゴン(Ar)雰囲気でもよい。活性化アニールの温度は、たとえば1800℃程度でもよい。活性化アニールの時間は、たとえば30分程度でもよい。
次に、酸化膜形成工程(S22:図13)が実施される。たとえば炭化珪素エピタキシャル基板100が酸素を含む雰囲気中において加熱されることにより、第3主面43上に酸化膜136が形成される(図15参照)。酸化膜136は、たとえば二酸化珪素(SiO2)等から構成される。酸化膜136は、ゲート絶縁膜として機能する。熱酸化処理の温度は、たとえば1300℃程度でもよい。熱酸化処理の時間は、たとえば30分程度でもよい。
酸化膜136が形成された後、さらに窒素雰囲気中で熱処理が行なわれてもよい。たとえば、一酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(N2O)等の雰囲気中、1100℃程度で1時間程度、熱処理が実施されてもよい。さらにその後、アルゴン雰囲気中で熱処理が行なわれてもよい。たとえば、アルゴン雰囲気中、1100〜1500℃程度で、1時間程度、熱処理が行われてもよい。
次に、電極形成工程(S23:図13)が実施される。第1電極141は、酸化膜136上に形成される。第1電極141は、ゲート電極として機能する。第1電極141は、たとえばCVD法により形成される。第1電極141は、たとえば不純物を含有し導電性を有するポリシリコン等から構成される。第1電極141は、ソース領域133およびボディ領域132に対面する位置に形成される。
次に、第1電極141を覆う層間絶縁膜137が形成される。層間絶縁膜137は、たとえばCVD法により形成される。層間絶縁膜137は、たとえば二酸化珪素等から構成される。層間絶縁膜137は、第1電極141と酸化膜136とに接するように形成される。次に、所定位置の酸化膜136および層間絶縁膜137がエッチングによって除去される。これにより、ソース領域133およびコンタクト領域134が、酸化膜136から露出する。
たとえばスパッタリング法により当該露出部に第2電極142が形成される。第2電極142はソース電極として機能する。第2電極142は、たとえばチタン、アルミニウムおよびシリコン等から構成される。第2電極142が形成された後、第2電極142と炭化珪素エピタキシャル基板100が、たとえば900〜1100℃程度の温度で加熱される。これにより、第2電極142と炭化珪素エピタキシャル基板100とがオーミック接触するようになる。次に、第2電極142に接するように、配線層138が形成される。配線層138は、たとえばアルミニウムを含む材料から構成される。
次に、第2主面42に第3電極143が形成される。第3電極143は、ドレイン電極として機能する。第3電極143は、たとえばニッケルおよびシリコンを含む合金(たとえばNiSi等)から構成される。
次に、ダイシング工程(S24:図13)が実施される。たとえば炭化珪素エピタキシャル基板100がダイシングラインに沿ってダイシングされることにより、炭化珪素エピタキシャル基板100が複数の半導体チップに分割される。以上より、炭化珪素半導体装置300が製造される(図16参照)。
上記において、MOSFETを例示して、本開示に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を説明したが、本開示に係る製造方法はこれに限定されない。本開示に係る製造方法は、たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、SBD(Schottky Barrier Diode)、サイリスタ、GTO(Gate Turn Off thyristor)、PiNダイオード等の各種炭化珪素半導体装置に適用可能である。
(評価)
(サンプル準備)
図1〜図3に示されるバッチ方式の製造装置200を用いて、サンプル1〜10に係る炭化珪素エピタキシャル基板100が3枚同時に製造された。サセプタ210の基板載置面211の面積は、929cm2とした。反応室201の断面積は、176cm2とした。サンプル1〜7に係る炭化珪素エピタキシャル基板100は、実施例のサンプルである。サンプル8〜10に係る炭化珪素エピタキシャル基板100は、比較例のサンプルである。
表1に示されるように、サンプル1〜10に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造方法において、H2流量は134slmとし、SiH4流量を変化させることで、SiH4流量/H2流量を変化させた。サンプル1〜10に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造方法において、SiH4流量は、それぞれ140sccm、210sccm、480sccm、140sccm、210sccm、480sccm、210sccm、210sccm、270sccmおよび735sccmとした。サンプル1〜10に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造方法において、NH3流量は、それぞれ0.02sccm、0.04sccm、0.09sccm、0.65sccm、1.09sccm、2.72sccm、0.40sccm、9.00sccm、0.01sccmおよび1.00sccmとした。
サンプル1〜10に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造方法において、SiH4流量/H2流量は、それぞれ0.104%、0.157%、0.358%、0.104%、0.157%、0.358%、0.157%、0.157%、0.201%および0.549%とした。サンプル1〜10に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造方法において、SiH4流量/H2流量をサセプタ210の基板載置面211の面積で除した値は、1.12×10-6cm-2、1.69×10-6cm-2、3.86×10-6cm-2、1.12×10-6cm-2、1.69×10-6cm-2、3.86×10-6cm-2、1.69×10-6cm-2、1.69×10-6cm-2、2.17×10-6cm-2および5.90×10-6cm-2とした。
(測定)
サンプル1〜10に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の炭化珪素層20のキャリア濃度が水銀プローブ方式のC−V測定装置により測定された。第3主面43の中心から半径60mm以内の領域において、キャリア濃度が測定された。キャリア濃度の測定箇所は、第3主面43の中心を通り径方向に平行な直線と、当該直線に対して垂直な直線上において、ほぼ等間隔に配置された複数の位置である。具体的には、キャリア濃度の測定位置は、第3主面43の中心と、当該中心から径方向に10mm、20mm、30mm、40mm、50mmおよび60mm離れた位置である。キャリア濃度の測定箇所は、計25箇所である。キャリア濃度の面内均一性は、キャリア濃度の最大値から最小値を引いた値を2で除した値をキャリア濃度の平均値で除した値の百分率表記である。なお水銀側のプローブの面積は、0.01cm2である。
白色干渉顕微鏡を用いて、第3主面43の中央領域における二乗平均平方根偏差(Sq)が測定された。二乗平均平方根偏差の測定領域は、一辺が250μmの正方形領域である。二乗平均平方根偏差の測定位置は、第3主面43の中心と、当該中心から径方向に50mm離れた位置である。二乗平均平方根偏差の測定箇所は、計2箇所である。第3主面43の二乗平均平方根偏差(Sq)を、第3主面43のモフォロジーとした。
(結果)
図17および図18には、サンプル1〜10に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造条件が示されている。座標101〜110は、それぞれサンプル1〜10に係る炭化珪素エピタキシャル基板100の製造条件に対応している。
表2に示されるように、サンプル1〜10に係る炭化珪素エピタキシャル基板100(基板A)の炭化珪素層20中のキャリア濃度の面内均一性は、それぞれ9.2%、8.1%、7.8%、8.3%、5.9%、8.0%、7.9%、12.4%、20.2%および15.5%であった。またサンプル1〜10に係る炭化珪素エピタキシャル基板100(基板A)の炭化珪素層20の第3表面の二乗平均平方根偏差(Sq)(nm)は、それぞれ0.3、0.4、0.5、0.3、0.4、0.5、0.3、0.4、0.4および0.8であった。さらにサンプル1〜10に係る炭化珪素エピタキシャル基板100(基板A)の炭化珪素層20中の平均キャリア濃度(cm-3)は、それぞれ1×1015、1×1015、1×1015、2×1016、2×1016、2×1016、8×1015、6×1016、7×1014および8×1015であった。
表2に示されるように、サンプル1〜10に係る炭化珪素エピタキシャル基板100(基板B)の炭化珪素層20中のキャリア濃度の面内均一性は、それぞれ9.1%、8.0%、7.9%、8.3%、5.9%、7.9%、7.9%、12.7%、22.5%および16.8%であった。またサンプル1〜10に係る炭化珪素エピタキシャル基板100(基板B)の炭化珪素層20の第3表面の二乗平均平方根偏差(Sq)(nm)は、それぞれ0.3、0.4、0.5、0.3、0.4、0.5、0.3、0.4、0.4および1.0であった。さらにサンプル1〜10に係る炭化珪素エピタキシャル基板100(基板B)の炭化珪素層20中の平均キャリア濃度(cm-3)は、それぞれ1×1015、1×1015、1×1015、2×1016、2×1016、2×1016、8×1015、6×1016、7×1014および8×1015であった。
表2に示されるように、サンプル1〜10に係る炭化珪素エピタキシャル基板100(基板C)の炭化珪素層20中のキャリア濃度の面内均一性は、それぞれ9.2%、8.1%、7.4%、8.2%、5.5%、7.5%、7.3%、13.7%、21.5%および17.8%であった。またサンプル1〜10に係る炭化珪素エピタキシャル基板100(基板C)の炭化珪素層20の第3表面の二乗平均平方根偏差(Sq)(nm)は、それぞれ0.3、0.4、0.5、0.3、0.4、0.5、0.3、0.4、0.4および0.7であった。さらにサンプル1〜10に係る炭化珪素エピタキシャル基板100(基板C)の炭化珪素層20中の平均キャリア濃度(cm-3)は、それぞれ1×1015、1×1015、1×1015、2×1016、2×1016、2×1016、8×1015、6×1016、7×1014および8×1015であった。
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。