以下、本発明に係る弁の実施形態を図面に基づき説明する。なお、下記実施形態では、本発明に係る弁を従来と同様の自動車用冷却水(以下、単に「冷却水」と略称する。)の循環系に適用したものを例に説明する。
まず、この弁CVが適用される冷却水の循環回路について説明すると、図1に示すように、当該弁CVは、エンジンEG(具体的には、図示外のシリンダヘッド)の側部に配置され、該エンジンEGと暖房熱交換器HT(EGRクーラEC)、オイルクーラOC及びラジエータRDとの間に配置されている。そして、ウォータポンプWPによって加圧され導入通路L0を通じて当該弁CVに導かれた冷却水が、第1〜第3配管L1〜L3を介して暖房熱交換器HT、オイルクーラOC及びラジエータRD側へとそれぞれ分配されると共に、その各流量が制御されるようになっている。なお、この際、前記暖房熱交換器HTへと導かれた冷却水については、EGRクーラECへと導かれた後、エンジンEG側へと還流されるようになっている。
また、前記弁CVには、前記導入通路L0をバイパスして冷却水をスロットルチャンバーTCへと直接導くバイパス通路BLが設けられ、該バイパス通路BLをもって、エンジンEG側から導かれた冷却水を常時スロットルチャンバーTCへと供給可能となっている。そして、該スロットルチャンバーTCに供給された冷却水は、前記暖房熱交換器HTと同様、EGRクーラECへと導かれて、該EGRクーラECを通じてエンジンEG側へと還流される。図1中における符号WTは水温センサを示している。
なお、前記弁CVの配置については、上記エンジンEG直後の配置に限定されるものではなく、例えば図2に示すようなエンジンEG直前に配置してもよく、搭載対象の仕様に応じて適宜変更することができる。また、前記スロットルチャンバーTCへの分配については、後述するように冷却水の流量制御対象に該当しないことから、同図にも示すように、前記バイパス通路BLの有無についても、搭載対象の仕様に応じて適宜変更することができる。
続いて、前記弁CVの具体的な構成について説明すると、この弁CVは、図3、図14に示すように、後述の弁体3及び電動モータ4を収容する第1ハウジング11と後述する減速機構5を収容する第2ハウジング12とからなるハウジング1と、第1ハウジング11と第2ハウジング12とを隔成する第1ハウジング11の端壁11bに挿通配置され、該端壁11bに保持される軸受B1によって回転自在に支持された回転軸2と、該回転軸2の一端部に固定され、第1ハウジング11内にて回転自在に収容されたほぼ円筒状の弁体3と、第1ハウジング11内にて弁体3と並列に配置され、弁体3の駆動制御に供する電動モータ4と、該電動モータ4のモータ出力軸4cと回転軸2との間に介装され、電動モータ4の回転速度を減速して伝達する減速機構5と、から主として構成されている。
前記第1ハウジング11は、アルミニウム合金材料によって鋳造されてなるもので、幅方向一端側に偏倚して弁体3を収容するほぼ筒状の弁体収容部13が軸方向一端側に向けて開口形成されると共に、該弁体収容部13に隣接するかたちで、幅方向他端側に偏倚して電動モータ4を収容するほぼ筒状のモータ収容部14が軸方向他端側に向けて開口形成され、前記弁体収容部13の一端側開口の外周域に延設される第1フランジ部11aを介して図示外のエンジンの側部に図示外のボルトによって取付固定されている。なお、かかる取付の際、第1ハウジング11の第1フランジ部11aと前記エンジン側部との間には環状のシール部材SL1が介装され、該シール部材SL1によって弁体収容部13内が液密に保持される構成となっている。
前記弁体収容部13は、前記一端側開口が図示外のエンジン内部と連通して該エンジン内部からの冷却水を導入する主連通口である導入口10として構成され、該導入口10を通じて弁体3の内周側及び外周側にそれぞれ形成される内周側通路17及び外周側通路18に前記冷却水をそれぞれ導くようになっている。また、前記弁体収容部13の周壁には、所定の周方向位置に、前記第1〜第3配管L1〜L3との接続に供するほぼ円筒状の複数の連通口である第1〜第3排出口E1〜E3が、径方向に貫通形成されている。そして、この第1〜第3排出口E1〜E3のうち、暖房熱交換器HTと連通する中径状の第1排出口E1と、オイルクーラOCと連通する小径状の第2排出口E2とが弁体収容部13の軸方向において重合(径方向にほぼ対向)して配置されると共に、オイルクーラOCと連通する小径状の第2排出口E2と、ラジエータRDと連通する大径状の第3排出口E3とが弁体収容部13の軸方向に並列に隣接して配置され、第1、第2排出口E1,E2が導入口10側に、第3排出口E3が端壁11b側に、それぞれ偏倚して設けられている。
そして、前記第1〜第3排出口E1〜E3の内周側には、これら第1〜第3排出口E1〜E3を閉じる際に該各排出口E1〜E3と弁体3との間を液密にシールするシール手段が設けられている。このシール手段は、各排出口E1〜E3の内端側において進退移動可能に収容され、弁体3の外周面に摺接することにより各排出口E1〜E3と弁体3との間をシールするほぼ円筒状の第1〜第3シール部材S1〜S3と、各排出口E1〜E3の外端側において各配管L1〜L3の開口縁(第1配管L1についてはリテーナ部材16)に着座させるかたちで該各配管L1〜L3の開口縁と各シール部材S1〜S3の内側端面との間に所定の予圧をもって弾装され、該各シール部材S1〜S3を弁体3側へと付勢する第1〜第3コイルスプリングSP1〜SP3と、各排出口E1〜E3の内周面に切欠形成された凹部に収容されるかたちで各排出口E1〜E3の内周面と各シール部材S1〜S3の外周面との間に介装され、該各シール部材S1〜S3の外周面と摺接することによって各排出口E1〜E3と各シール部材S1〜S3との間をシールする周知のOリングSL2と、から構成されている。
前記各シール部材S1〜S3は、弁体3側となる一端側の内周縁に、後述の第1〜第3シール摺接部D1〜D3と摺接するほぼ円錐テーパ状に形成された第1〜第3弁体摺接部S1a〜S3aが設けられている一方、他端側には、各コイルスプリングSP1〜SP3の一端側の着座に供する平坦状の第1〜第3着座面S1b〜S3bが形成されている。かかる構成から、前記各弁体摺接部S1a〜S3aについては、前記各シール摺接面D1〜D3に対して、厚さ幅方向(径方向)の中間部(具体的には図6中の点F参照)のみが摺接する、いわゆる線接触をもって摺接するようになっている。
また、前記弁体収容部13の他端側には、図7、図8に示すように、内端側が外周側通路18に臨み、かつ外端側に第4配管L4が接続されることで冷却水をスロットルチャンバーTCへと導く第4排出口E4が貫通形成され、これによって、前記バイパス通路BL(図1参照)が構成されている。すなわち、かかる構成より、外周側通路18に導かれた冷却水を、後述する弁体3の回動位相にかかわらず常に第4配管L4を介してスロットルチャンバーTCへ分配することが可能となっている。
さらに、前記第3排出口E3の側部には、図3、図8、図9に示すように、例えば電気系失陥時など弁体3を駆動することができない非常時に弁体収容部13(外周側通路18)と第3排出口E3とを連通可能にするフェールセーフバルブ20が設けられていて、弁体3の不動状態であっても、ラジエータRDに対する冷却水の供給を確保することにより、エンジンEGのオーバーヒートを防ぐことが可能となっている。
前記フェールセーフバルブ20は、外周側通路18と第3配管L3とを連通するバルブ収容孔11cに収容され、内端側(外周側通路18側)からの冷却水の流入を許容するほぼ筒状の流路構成部材21と、該流路構成部材21の内周側に収容されるかたちで設けられ、冷却水温が所定温度を超えると内部に充填されたワックス(図示外)が膨張することによってロッド22aが流路構成部材21の外端側へと進出するように構成されたサーモエレメント22と、該サーモエレメント22のロッド22aの先端側に固定され、前記流路構成部材21の外端側に開口形成された流出孔21aの開閉に供する弁部材23と、該弁部材23と流路構成部材21との間に所定の予圧をもって弾装され、弁部材23を閉弁方向へと付勢するコイルスプリング24と、から主として構成されている。
かかる構成により、通常状態(冷却水温が所定温度未満)では、コイルスプリング24の付勢力をもって弁部材23のほぼ円錐テーパ状に形成された弁部23aが流出孔21aの外側孔縁に圧接することにより閉弁状態が維持される。一方、高温状態(冷却水温が所定温度以上)になると、前記サーモエレメント22内のワックスが膨張し前記コイルスプリング24の付勢力に抗してロッド22aと共に弁部材23が外端側へと進出移動することにより開弁され、図示外の流入孔と前記流出孔21aとが連通することとなって、外周側通路18に導かれた冷却水が第3配管L3を通じてラジエータRDへと供給されることとなる。
なお、かかる温度上昇のほか、冷却水の圧力が所定圧力を超えた場合にも、弁部材23がコイルスプリング24の付勢力に抗して押し退けられることで、前記図示外の流入孔と流出孔21aとが連通し、これによって弁CVの内部圧力が減少する結果、該弁CVの故障を回避することが可能となっている。
前記第2ハウジング12は、図3、図14に示すように、第1ハウジング11と対向する一端側が弁体収容部13とモータ収容部14とに跨って該両収容部13,14を覆うように開口する凹状に形成され、該一端側開口の外周域に延設される第2フランジ部12aを介して第1ハウジング11の他端側に複数のボルトBT1によって固定されることで、該第1ハウジング11の他端側との間に、減速機構5を収容する減速機構収容部15が形成されている。なお、前記第1、第2ハウジング11,12の接合に際しては、該接合面間に環状のシール部材SL3が介装されることによって、減速機構収容部15内が液密に保持されている。
前記回転軸2は、弁体収容部13の他端壁に相当する前記端壁11bに貫通形成された軸挿通孔11d内に収容配置される前記軸受B1によって回転自在に支持され、軸方向の一端部には弁体3が、他端部には後述する第2斜歯歯車HG2がそれぞれ一体回転可能に固定される。なお、この回転軸2の外周面と軸挿通孔11dの内端側開口縁との間には環状のシール部材SL4が介装されていて、該シール部材SL4によって、前記軸挿通孔11dと回転軸2との間の径方向隙間を通じた弁体収容部13側から減速機構収容部15への冷却水の流入が抑止されている。
前記弁体3は、所定の合成樹脂材料により一体に型成形され、図5、図10、図11に示すように、軸方向一端側が、第1ハウジング11の導入口10より導かれる冷却水の内周側通路17への流入に供する流入口3aとして開口形成される。一方、他端側は端壁3bによって閉塞されると共に、該端壁3bには、内周側通路17と外周側通路18とを連通可能にするほぼ円弧状の複数の連通口3cが周方向に沿って切欠形成されている。そして、この弁体3の軸心に相当する前記端壁3bの中央部には、前記回転軸2への取付に供するほぼ筒状の軸固定部3dが軸方向に沿って延設され、該軸固定部3dの内周側には、金属製のインサート部材3eが一体に成形されることで、該インサート部材3eを介して回転軸2に圧入固定されるようになっている。
また、前記弁体3は、各シール部材S1〜S3と摺接することにより閉弁時のシール作用に供するほぼ球面状のシール摺接部(後述する第1〜第3シール摺接部D1〜D3)が軸方向に直列に連接されてなる団子形状に構成され、周方向約180°の所定の角度範囲内で回動することにより前記各排出口E1〜E3の開閉が行われるようになっている。なお、当該回動に際し、この弁体3は、一端部に大径状に拡径形成された軸受部3gを介して、導入口10の内周側に嵌着保持される軸受B2により回転支持されている。
ここで、前記弁体3は、前記各シール摺接部D1〜D3の形成にあたって、一端側の第1軸方向領域X1と、他端側の第2軸方向領域X2、2つの軸方向領域に大別される。なお、この第1、第2軸方向領域X1,X2は、弁体3の軸方向ほぼ中間位置を境にほぼ均等に形成されている。そして、このいずれの軸方向領域X1,X2においても、少なくとも後述する第1〜第3開口部M1〜M3の孔縁が縦断面ほぼ球面状、すなわちほぼ同一の曲率を有する曲面状に形成されると共に、該曲率が弁体3の回転半径と同一となるように構成されている。
前記第1軸方向領域X1は、図11(b)に示すように、ほぼ半周に亘って設けられ、第1シール部材S1と摺接する第1シール摺接部D1と、残余のほぼ半周に亘って設けられ、第2シール部材S2と摺接する第2シール摺接部D2と、で構成される。そして、前記第1シール摺接部D1には、第1排出口E1とほぼ過不足なく重合する軸方向幅に設定された長孔形状の第1開口部M1が、周方向に沿って設けられている。同様に、前記第2シール摺接部D2には、第2排出口E2とほぼ過不足なく重合する軸方向幅に設定された長孔形状の第2開口部M2が、周方向に沿って設けられている。
ここで、本実施形態では、上述のように前記第1開口部M1と前記第2開口部M2とが前記第1軸方向領域X1における異なる周方向位置に弁体3の回転軸方向において重合するように設けられていることで、弁体3の軸方向の小型化が図られている。
前記第2軸方向領域X2は、図11(a)に示すように、半周以上に亘って設けられ、第3シール部材S3と摺接する第3シール摺接部D3と、残余の周方向領域に亘って設けられ、第3排出口E3とは対向せず前記第3シール部材S3によるシール作用に供しない非シール摺接部D4と、で構成される。そして、前記第3シール摺接部D3には、第3排出口E3とほぼ過不足なく重合する軸方向幅に設定された長孔形状の第3開口部M3が、周方向に沿って設けられている。
また、前記非シール摺接部D4には、平面視ほぼ矩形状の補助吸入口M4が、周方向に沿って設けられている。なお、この補助吸入口M4は、外周側通路18を流れる冷却水の内周側通路17への導入に供するもので、前記流入口3aに加えて当該補助吸入口M4によっても冷却水の内周側通路17への導入を可能とし、より多くの冷却水を内周側通路17内へと取り込んで各排出口E1〜E3から排出させることにより、冷却水の導入抵抗の低減化が図られている。加えて、この非シール摺接部D4はいわゆる不使用領域であることから、ほぼ球面状に形成される前記第1〜第3シール摺接部D1〜D3とは異なり、非球面状となる平坦状に形成され、これによって、弁体3の軽量化及び該弁体3を構成する材料の歩留まりの低減が図られている。
以上のようにして設けられる前記第1〜第3開口部M1〜M3の各形状及び周方向位置については、弁体3の回動に伴って図15に示した後述する第1〜第4状態の順に前1〜第3排出口E1〜E3との連通状態が切り替わるように設定されている。
また、前記弁体3の他端部における第3シール摺接部D3には、該弁体3の回動規制に供する1対の当接部3f,3fが設けられている。この当接部3f,3fは、図10、図11に示すように、前記弁体収容部13の他端側周壁に突設される回転規制部11eと当接可能に設けられ、該回転規制部11eと当接することで弁体3の回動範囲が前記所定角度範囲内に規制されるようになっている。なお、この当接部3f,3fは、前記弁体3の構成に伴い必然的に設けられるものであるから、該当接部3f,3fを利用することによって、前記回動規制用のストッパを別途設ける必要がなく、弁CVのコスト低減等に供される。
前記電動モータ4は、図13、図14に示すように、モータ本体4aが第1ハウジング11のモータ収容部14内に収容された状態でモータ本体4aの基端部に設けられたフランジ部4bを介して当該モータ収容部14の開口縁部に複数のボルトBT2によって取付固定され、モータ出力軸4cがモータ収容部14の一端側開口を通じて第2ハウジング12の減速機構収容部15内へと臨んでいる。なお、この電動モータ4は、車載の電子コントローラ(図示外)により駆動制御され、車両運転状態に応じて弁体3を回動制御することにより、前記ラジエータRD等に対する冷却水の適切な分配が実現される。
前記減速機構5は、2つのウォームギヤにより構成された駆動機構であって、図12〜図14に示すように、モータ出力軸4cと連係し、電動モータ4の回転を減速する第1ウォームギヤG1と、該第1ウォームギヤG1に接続され、この第1ウォームギヤG1を介して伝達される電動モータ4の回転をさらに減速して回転軸2に伝達する第2ウォームギヤG2と、から構成され、前記第2ウォームギヤG2は、前記第1ウォームギヤG1に対しほぼ直交するかたちで配置されている。
なお、本実施形態の駆動機構としては、前記2つのウォームギヤG1,G2により構成される減速機構5を例示して説明するが、本発明における駆動機構は少なくとも2つ以上のウォームギヤにより構成されていればよく、必要な減速比など装置の仕様等に応じて3つ以上のウォームギヤを設けることも可能である。また、当該駆動機構は、前記減速機構5のみならず、増速機構として構成してもよい。
前記第1ウォームギヤG1は、モータ出力軸4cの外周に一体的に設けられ、該モータ出力軸4cと一体回転する第1ねじ歯車WG1と、モータ回転軸4cとほぼ平行に前記第1ねじ歯車WG1と直交するかたちで設けられる回転軸19の一端側外周に一体的に設けられ、前記第1ねじ歯車WG1と噛合することにより該第1ねじ歯車WG1の回転を減速して出力する第1斜歯歯車HG1と、で構成されている。そして、この第1ウォームギヤG1は、前記第1ねじ歯車WG1が1条ねじによって構成されると共に、前記第1斜歯歯車HG1が14歯でもって構成されていて、減速比が1/14に設定されている。
前記第2ウォームギヤG2は、前記回転軸19の他端側外周に一体的に設けられ、前記第1斜歯歯車HG1と一体回転する第2ねじ歯車WG2と、該第2ねじ歯車WG2と直交するかたちで配置される回転軸2の他端側外周に一体回転可能に固定され、前記第2ねじ歯車WG2と噛合することで該第2ねじ歯車WG2の回転を減速して出力する第2斜歯歯車HG2と、で構成されている。そして、この第2ウォームギヤG2も、前記第1ウォームギヤG1と同様に、前記第2ねじ歯車WG2が1条ねじによって構成されると共に、前記第2斜歯歯車HG2が14歯でもって構成されていて、減速比が1/14に設定されている。
以下、前記弁CVの具体的な作動状態について、図15に基づいて説明する。なお、当該説明にあたって、図15では、弁体3の第1〜第3開口部M1〜M3については破線で示す一方、第1ハウジング11の第1〜第3排出口E1〜E3についてはハッチングを施して表示し、これら両者E1〜E3,M1〜M3が重合し連通した状態を塗り潰して表示することによって、便宜上、前記各排出口E1〜E3と前記各開口部M1〜M3の相対的な識別を図るものとする。
すなわち、前記弁CVは、車両の運転状態に基づいて演算及び出力される前記図示外の電子コントローラからの制御電流によって電動モータ4が駆動制御されることにより、前記車両運転状態に応じて前記排出口E1〜E3と前記各開口部M1〜M3との相対関係が以下の状態となるように、弁体3の回転位置(位相)が制御されることとなる。
図15(a)に示す第1状態では、第1〜第3開口部M1〜M3のいずれもが前記各排出口E1〜E3に対して非連通状態となる。これにより、当該第1状態では、暖房熱交換器HT、オイルクーラOC及びラジエータRDのいずれに対しても冷却水が供給されないこととなる。
前記第1状態の後、図15(b)に示す第2状態では、第1開口部M1のみが連通状態となり、第2、第3開口部M2,M3については非連通状態となる。これにより、当該第2状態では、かかる連通状態に基づいて、第1排出口E1から第1配管L1を通じて暖房熱交換器HTに対してのみ冷却水が供給され、第1排出口E1と第1開口部M1との重合量に基づいてその供給量が変化することとなる。
前記第2状態の後、図15(c)に示す第3状態では、第3開口部M3のみが非連通状態となり、第1、第2開口部M1,M2については連通状態となる。これにより、当該第3状態では、かかる連通状態に基づいて、第1、第2排出口E1,E2から第1、第2配管L1,L2を通じてそれぞれ暖房熱交換器HT及びオイルクーラOCに対して冷却水が供給され、第1、第2排出口E1〜E2と第1、第2開口部M1〜M2との重合量に基づいてその供給量が変化することとなる。
前記第3状態の後、図15(d)に示す第4状態では、第1〜第3開口部M1〜M3のいずれもが前記各排出口E1〜E3に対して連通状態となる。これにより、かかる第4状態では、暖房熱交換器HT、オイルクーラOC及びラジエータRDのいずれに対しても冷却水が供給され、第1〜第3排出口E1〜E3と第1〜第3開口部M1〜M3との重合量に基づいてその供給量が変化することとなる。
以下、本実施形態に係る前記弁CVの特徴的な作用効果について、図12〜図14、図16に基づいて説明する。なお、図12〜図14は本実施形態に係る弁CVの減速機構5を示し、図16は前記従来の弁100の減速機構105を示している。
すなわち、前記従来の弁100の減速機構105は、図16に示すように、電動モータ104の駆動軸に一体的に設けられた第1平歯車SG1と、該第1平歯車SG1と並列に設けられ、該第1平歯車SG1に噛合する第2平歯車SG2と、該第2平歯車SG2と直列に接続され、該第2平歯車SG2と一体回転する第3平歯車SG3と、該第3平歯車SG3と並列に設けられ、該第3平歯車SG3に噛合する第4平歯車SG4と、該第4平歯車SG4と直列に接続され、該第4平歯車SG4と一体回転する第5ねじ歯車WG5と、図示外の弁体の回転軸に一体的に設けられ、前記第5ねじ歯車WG5と直交するかたちで噛合する第6斜歯歯車HG6と、から構成されている。
かかる構成より、前記減速機構105の減速比としては、(第2平歯車SG2の歯数/第1平歯車SG1の歯数)×(第4平歯車SG4の歯数/第3平歯車SG3の歯数)×(第6斜歯歯車HG6の歯数/第5ねじ歯車WG5の歯数)により求められる。
かかる算出より、前記減速機構105の減速比を増大させる場合には、第1、第3平歯車SG1,SG3の歯数もしくは第5ねじ歯車WG5の歯数を減らす、又は第2、第4平歯車SG2,SG4の歯数もしくは第6斜歯歯車HG6の歯数を増やすことが考えられる。ここで、前記各歯車SG1,SG3,WG5の歯数を減らす方策については、平歯車の最少歯数は3歯程度が限界であること、さらに、ねじ歯車WG5は1条ねじで構成されていることが多く条数を減らす手段は採り難いため、減速比の増大に有効な方策としては、前記各歯車SG2,SG4,HG6の歯数を増やすこととなる。
そうすると、例えば出力歯車である第6斜歯歯車HG6の歯数を増やす場合、該第6斜歯歯車HG6の大径化によって第4平歯車SG4の位置変更の必要性が生じ、該第4平歯車SG4の移動は第1〜第3平歯車SG1〜SG3の移動を招来してしまう結果、前記各歯車SG1〜SG4の投影面積が比較的大きく拡大してしまう問題があった。なお、前記各歯車SG2,SG4,HG6の歯数の増大にあたって、該各歯車SG2,SG4,HG6の外径を変更しないで行うことも考えられるが、この場合、各歯の大きさが小さくなり、歯元に作用する応力が増大してしまうことが懸念される。
これに対して、本実施形態に係る弁CVの減速機構5は、図12〜図14に示すように、前記第1、第2ウォームギヤG1,G2からなる2つのウォームギヤで構成されており、該減速機構5の減速比は、(第1斜歯歯車HG1の歯数/第1ねじ歯車WG1の歯数)×(第2斜歯歯車HG2の歯数/第2ねじ歯車WG2の歯数)により求められる。すると、前記第1、第2ねじ歯車WG1,WG2はいずれも1条ねじで構成されたものであるから、減速比を増大させるには、第1、第2斜歯歯車HG1,HG2の歯数を増大させることとなる。
しかし、前記減速機構5では、2つのウォームギヤを使用することで、第1斜歯歯車HG1と第2斜歯歯車HG2とは直交するかたちで配置されることになる。すなわち一方(第2斜歯歯車HG2)は投影面たる第1ハウジング11の端壁11bに対して平行に配置され、他方(第1斜歯歯車HG1)は前記端壁11bに対してほぼ直角に交差するかたちで配置される。このため、例えば出力歯車である第2斜歯歯車HG2の歯数増大に伴う大径化を招来した場合、第1斜歯歯車HG1の位置変更は必要になるものの、該位置変更が投影面積に与える影響は比較的少ないものとなる。
このように、本実施形態に係る弁CVによれば、前記減速機構5を、2つのウォームギヤである第1、第2ウォームギヤG1,G2により構成したことで、当該減速機構5の投影面積の増大を抑制しつつ、減速比を増大させることが可能となって、該減速比増大に伴う弁CVの大型化を抑制することができる。
しかも、前記減速機構5を、上述のような複数のウォームギヤG1,G2でもって構成することで、前記減速比算出式において分母となる第1、第2ねじ歯車WG1,WG2の歯数を「1」に設定することが可能となり、より大きな減速比を得ることができるメリットがある。
また、本実施形態に係る弁CVでは、前記第1、第2ウォームギヤG1,G2の直交配置に基づき弁体3と電動モータ4とをほぼ平行に配置したことから、該両者3,4が非平行に配置される場合に比べて、弁CVの径方向(弁体3の径方向)の小型化を図ることができる。
加えて、上述の平行配置にあたって、弁体3と電動モータ4とを回転軸2の軸方向における減速機構5の設置位置に対して同じ側(第1ハウジング11側)に配置したことから、該両者3,4を相互に異なる側に配置する場合に比べて、弁CVの軸方向の小型化を図ることができる。
本発明は、前記実施形態に係る構成に限定されるものではなく、例えば第1〜第3排出口E1〜E3の大きさや第1〜第3開口部M1〜M3の形状、数量及び配置(周方向位置)、冷却水の通流方向(導入口10から第1〜第3排出口E1〜E3)等は勿論、前記第1、第2ウォームギヤG1,G2の数量や歯数、位置(配置)など、前記本発明の作用効果を奏し得る形態であれば、仕様等に応じて自由に変更することができる。
また、前記実施形態では、前記弁CVの適用の一例として、冷却水の循環系への適用を例示して説明したが、当該弁CVは、冷却水のみならず、例えば潤滑油など様々な流体について適用可能であることは言うまでもない。