JP2020007944A - 動作タイミング調整機構 - Google Patents
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Abstract
【課題】必要押圧力が減少したときに、所望の動作が行われるようにする。【解決手段】動作タイミング調整機構90は、シャフト20と、作用部材40と、シャフト20及び作用部材40のうちの一方に凹設されてその最深部から軸線方向の両側に進むに従い浅くなる係合凹部38と、他方に係合して、前記一方に対して前記他方と共に軸線方向に相対変位をする係合体36と、係合体36を係合凹部38の底面に押圧することにより、係合体36を係合凹部38の最深部に保持しようとする保持力を生じさせる押圧部31〜34とを有する。そして、作用部材40に所望の動作をさせるのに必要な必要押圧力が所定値よりも高いときに、押圧力が加えられた場合には、保持力に抗して相対変位が生じることによりエネルギーが蓄積され、必要押圧力が減少したときに前記エネルギーにより作用部材40が相対変位を解消する方向に変位することにより所望の動作が行われる。【選択図】図2
Description
本発明は、所望の動作を行うための作用部材に当該動作を行わせるタイミングを調整する技術に関する。
内燃機関の吸排気用のバルブに用いられる可変リフト機構の中には、例えば、揺動部材と作用部材と駆動シャフトとを備えるものがある。揺動部材は、内燃機関の各気筒のカムとバルブとの間に介装されている。作用部材は、軸線方向に変位すると揺動部材に作用してバルブのリフト量を変更する。駆動シャフトは、作用部材を軸線方向に駆動する。この可変リフト機構では、カムが周期的に揺動部材を押圧してバルブを開くことにより、作用部材を軸線方向に駆動するのに必要な必要押圧力が周期的に変動する。
このため、特許文献1のシステムでは、回転角センサーなどを用いる事で、バルブが閉じて必要押圧力が下がったタイミングで駆動シャフトを軸線方向に駆動するようにしている。これにより、比較的パワーの小さなアクチュエータでも駆動シャフト及び作用部材を軸線方向に駆動できるようにしている。
しかしながら、このシステムでは、タイミングを計りながら高応答の制御を行う必要がある。また、複数の気筒のすべてのバルブが閉じている期間はわずかであり、そのタイミングで駆動シャフトをタイミングよく軸線方向に駆動することは実質的に困難である。
本発明は、上記事情等に鑑みてなされたものであり、作用部材に軸線方向への押圧力を加えることにより所望の動作を行わせる場合において、当該押圧力を加えるタイミングを制御しなくても、当該動作を行わせるのに必要な必要押圧力が減少したときに、当該動作が行われるようにすることを主たる目的とする。
本発明の動作タイミング調整機構は、シャフトと、前記シャフトに対してその軸線方向に相対変位可能に取り付けられている、所望の動作を行うための作用部材と、前記シャフト及び前記作用部材のうちの一方である第1部材に凹設されてその最深部から前記軸線方向の両側に進むに従い浅くなる係合凹部と、前記シャフト及び前記作用部材のうちの前記第1部材でない方である第2部材に係合して、前記第1部材に対して前記第2部材と共に前記軸線方向に相対変位をする係合体と、前記係合体を前記係合凹部の底面に押圧することにより、前記係合体を前記係合凹部の最深部に保持しようとする保持力を生じさせる押圧部と、を有する。
そして、前記作用部材に前記所望の動作をさせるのに必要な、前記作用部材に対する前記軸線方向への必要押圧力が所定値よりも高いときに、前記作用部材に前記軸線方向への押圧力が加えられた場合には、前記保持力に抗して前記相対変位が生じることによりエネルギーが蓄積される。そして、前記エネルギーの蓄積後に前記必要押圧力が減少したときに、蓄積された前記エネルギーにより前記作用部材が前記相対変位を解消する方向に変位することにより前記所望の動作が行われる。
本発明によれば、必要押圧力が変動する場合において、必要押圧力が所定値よりも高いときに作用部材に押圧力が加えられた場合には、前記相対変位が生じ、必要押圧力が減少したときに、作用部材が前記相対変位を解消する方向に変位することにより前記所望の動作が行われることとなる。そのため、作用部材に押圧力を加えるタイミングを制御しなくても、上記のとおりの機械的な仕組みにより、必要押圧力が減少したときに、前記所望の動作が行われるようにすることができる。
さらに、係合体を係合凹部の最深部に保持しようとする保持力により、作用部材をシャフトの所定位置に保持しようとする保持力が生じるため、作用部材を軸線方向に駆動しないとき等に、前記所定値よりも小さい押圧力が軸線方向に加わっても、作用部材が軸線方向に揺れ動くといったことがなく、シャフトに対する作用部材の基本位置を精度良く定めることができる。
次に本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。但し、本発明は実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することもできる。
[第1実施形態]
図1は、本実施形態の動作タイミング調整機構90を示している。動作タイミング調整機構90は、可変リフト機構50の一部を構成している。可変リフト機構50は、内燃機関のバルブ57をリフト量可変にリフトする。可変リフト機構50は、カムシャフト51とカム52と第1揺動部材54と第2揺動部材55とアクチュエータ10とシャフト20と調整機構30と作用部材40とを有する。そして、シャフト20と調整機構30と作用部材40とが、動作タイミング調整機構90を構成している。なお、以下では、図に合わせて、シャフト20の軸線方向の一方を「左」といい、他方を「右」という。また、シャフト20の周方向を「周方向」といい、周方向の一方を「リフト方向」といい、他方を「戻り方向」という。また、シャフト20の径方向を「径方向」という。
図1は、本実施形態の動作タイミング調整機構90を示している。動作タイミング調整機構90は、可変リフト機構50の一部を構成している。可変リフト機構50は、内燃機関のバルブ57をリフト量可変にリフトする。可変リフト機構50は、カムシャフト51とカム52と第1揺動部材54と第2揺動部材55とアクチュエータ10とシャフト20と調整機構30と作用部材40とを有する。そして、シャフト20と調整機構30と作用部材40とが、動作タイミング調整機構90を構成している。なお、以下では、図に合わせて、シャフト20の軸線方向の一方を「左」といい、他方を「右」という。また、シャフト20の周方向を「周方向」といい、周方向の一方を「リフト方向」といい、他方を「戻り方向」という。また、シャフト20の径方向を「径方向」という。
カムシャフト51は、内燃機関のシリンダヘッドに回転可能に取り付けられており、内燃機関の回転に従い回転する。詳しくは、カムシャフト51は、内燃機関が2回転する毎に1回転する。カム52は、カムシャフト51に突設されており、断面形状が円形のベース円52aと、ベース円52aから突出したノーズ52bとを有する。
第1揺動部材54は、シャフト20を中心として揺動可能に設けられると共にローラ53を備えており、ローラ53がカム52に押圧されることにより揺動する。第2揺動部材55は、バルブ57を押圧するノーズ部56を備えており、第1揺動部材54と共に揺動することによりバルブ57を押圧して開閉する。そのバルブ57には、バルブ57を閉じる方向に付勢するバルブスプリングが取り付けられている。
次に、動作タイミング調整機構90について説明する。シャフト20はアクチュエータ10により左右方向に駆動される。作用部材40はシャフト20に軸線方向及び周方向に相対変位可能に外嵌されている。作用部材40は、本実施形態では、外周面に第1ヘリカルスプライン44と第2ヘリカルスプライン45とを備えている。第1ヘリカルスプライン44は、作用部材40の左右中間部に設けられており、右方向に進むに従いリフト方向に旋回する側に捩じれている。また、第2ヘリカルスプライン45は、第1ヘリカルスプライン44の左右両側に設けられており、左方向に進むに従いリフト方向に旋回する側に捩じれている。
第1揺動部材54は、内周面に第1ヘリカルスプライン44と噛み合うヘリカルスプラインを備えており、第1ヘリカルスプライン44に外嵌されている。第2揺動部材55は、内周面に第2ヘリカルスプライン45と噛み合うヘリカルスプラインを備えており、第2ヘリカルスプライン45に外嵌されている。第1揺動部材54と作用部材40と第2揺動部材55とは、一緒に揺動する。シリンダヘッドには、第1揺動部材54及び第2揺動部材55のそれぞれに、左右両側から摺接するスラスト規制部が設けられている。それにより、第1揺動部材54及び第2揺動部材55は、揺動は許容されつつも、左右方向への変位が規制されている。
第1揺動部材54及び第2揺動部材55に対して作用部材40が左方向に変位した際には、第1揺動部材54に対して作用部材40が第1ヘリカルスプライン44により戻り方向に回動する。その作用部材40に対して、さらに第2揺動部材55が第2ヘリカルスプライン45により戻り方向に回動する。それにより、リフト量が減少する。
第1揺動部材54及び第2揺動部材55に対して作用部材40が右方向に変位した際には、第1揺動部材54に対して作用部材40が第1ヘリカルスプライン44によりリフト方向に回動する。その作用部材40に対して、さらに第2揺動部材55が第2ヘリカルスプライン45によりリフト方向に回動する。それにより、リフト量が増大する。
本実施形態では、以上のようなバルブ57のリフト量の減少及び増加が、本発明でいう「所望の動作」に該当する。
図1(b)は、図1(a)に示すIb−Ib線の断面図である。図2(a)は、その部分拡大図である。調整機構30は、係合凹部38と係合体36と押圧部31〜34とを有する。係合凹部38は、シャフト20の外周面に凹接された周方向に環状に延びる溝である。係合凹部38は、左右中央部が最深部になっており、最深部から軸線方向両側に進むに従い浅くなる断面V字状に設けられている。係合体36は複数あり、各係合体36は球体である。複数の係合体36は、係合凹部38に沿って周方向に並べて配されている。各係合体36は、押圧部31〜34を介して作用部材40と係合しており、シャフト20に対して作用部材40と共に左右方向に相対変位する。
押圧部31〜34は、弾性体31と変換機構32〜34とを有する。弾性体31は、左右方向に伸縮自在に構成されている。詳しくは、弾性体31は、コイルバネであってシャフト20に外嵌されている。その外側に作用部材40が配されている。弾性体31の右端は、作用部材40の右端に設けられたリテーナ41により保持されている。
変換機構32〜34は、弾性体31による左方への押圧力を径方向内側への力に代えて係合体36に伝える機構である。変換機構32〜34は、弾性体31と係合体36との間に介装されている押圧体32と、その左端面に形成された第1傾斜面33と、作用部材40の内周面に形成された第2傾斜面34とを有している。詳しくは、押圧体32は筒状の部材であって、シャフト20に外嵌されている。第1傾斜面33及び第2傾斜面34は、対向し合う環状の傾斜面であり、第1傾斜面33と第2傾斜面34との間の隙間は径方向外側に進むに従い狭くなる。この第1傾斜面33と第2傾斜面34とで係合体36を挟み込むことにより、係合体36を径方向内側に押圧している。この押圧力により、係合体を係合凹部38の底面に押圧している。この押圧力により、係合体36を係合凹部38の最深部に保持しようとする保持力が生じる。
次に、図2(a)〜(c)を参照しつつ、作用部材40を軸線方向に駆動するのに必要な必要押圧力が所定値よりも高いときに、シャフト20を左方に駆動した場合について説明する。なお、この必要押圧力は、各カム52が揺動部材54,55を介してバルブ57を周期的に押圧して開閉することにより、周期的に変動する。すなわち、バルブ57を開いている間は、バルブスプリングの付勢力等により必要押圧力が高くなり、バルブ57を閉じている間は、必要押圧力が低くなる。
必要押圧力が所定値よりも高いときにシャフト20を左方にアクチュエータ10で押圧した場合、図2(a)に示す状態から、まず、図2(b)に示すように、シャフト20のみが左方に変位する。そのため、作用部材40に対してシャフト20が左方に相対変位することとなる。それにより、係合体36が係合凹部38の最深部からその右方に相対変位する。そのため、係合体36が係合凹部38の底面に沿って径方向外側に押し出される。それにより、押圧体32が弾性体31の弾性力に抗して右方に押し返されて、弾性体31が圧縮される。それによりエネルギーが蓄積される。
なお、アクチュエータ10によるシャフト20の左右方向へのストロークは、係合凹部38の左右方向長さの半分よりも小さいため、係合体36が係合凹部38から出てしまうことはない。
その後、必要押圧力が下がると、弾性体31が変換機構32〜34を介して係合体36を径方向内側に押圧する力により生じる、係合体36が係合凹部38の最深部に戻ろうとする力により、図2(c)に示すように、係合体36及び作用部材40が左方に変位する。すなわち、相対変位により蓄積されたエネルギーにより、作用部材40及び係合体36が左方に変位する。そして、再び係合体36が係合凹部38の最深部に押し付けられるようになる。
図3は、必要押圧力が所定値よりも高いときにシャフト20を、上記とは反対に右方に駆動した場合を示している。この場合は、上記の場合と進行方向を左右逆に読み替えて同様である。但し、押圧体32については、図3(b)に示すように、上記と同様に右方に押し返されて、弾性体31が圧縮される。
図4は、係合体36を示す断面図である。詳しくは、図4の実線は、係合凹部38の最深部に配された状態の係合体36を示す断面図である。この時には、複数の係合体36は、相互間に若干の隙間を有して周方向に配される。他方、この位置からシャフト20に対して作用部材40及び係合体36が左方又は右方に最大限相対変位した際には、係合凹部38の底面に沿って各係合体36が径方向外側に押し出されることによって、係合体36どうしの間の隙間が拡大される。図4の破線は、このような場合において、全ての係合体36が隣り合う係合体36と互いに接触し合うように周方向に偏った場合を示している。係合体36の数は、このように偏った場合にも、周方向に半周以上に渡って配される数になっている。
図5(a)の実線は、右方を軸線方向プラスとしたときのシャフト20の軸線方向位置(シャフト位置)を示している。他方、図5(a)の破線は、作用部材40の軸線方向位置(作用部材位置)を示している。作用部材位置の大部分は、シャフト位置と重なっている。また、図5(b)は、右方を軸線方向プラスとしたときの必要押圧力を示している。詳しくは、図5(a)(b)は、いずれも横軸に時間を示し、縦軸に上記の各値を示している。
図5(a)(b)に示すように、必要押圧力が所定値fよりも小さい期間t1にシャフト位置が変動した場合には、それと一緒に作用部材位置も変動する(破線は実線に重なっている)。他方、必要押圧力が所定値fよりも大きい期間t2にシャフト位置が変動した場合には、作用部材位置はシャフト位置に遅れて変動する。
図6(a)の実線は、右方を軸線方向プラスとしたときの作用部材40に対するシャフト20の軸線方向の相対位置(シャフト相対位置)を示している。このシャフト相対位置の縦軸がゼロとなる位置は、係合体36が係合凹部38の最深部にくることになる位置(基本位置)である。また、図6(a)の破線は、弾性体31の軸線方向長さの変化量(弾性体長変化量)を示している。この弾性体長変化量が軸線方向マイナスになるときは、シャフト相対位置が基本位置であるときに比べて、弾性体31が圧縮されるときを示している。また、図6(b)は、右方を軸線方向プラスとしたときの作用部材40に加わる軸線方向への押圧力(作用部材押圧力)を示している。詳しくは、図6(a)(b)は、いずれも横軸に時間を示し、縦軸に上記の各値を示している。
図6(a)(b)の左側に示すように、シャフト相対位置が軸線方向プラスになると、弾性体長変化量はマイナスになり、作用部材押圧力は軸線方向プラスになる。他方、図6(a)(b)の右側に示すように、シャフト相対位置が軸線方向マイナスになっても、弾性体長変化量はマイナスになるが、このときは、上記とは逆に、作用部材押圧力は軸線方向マイナスになる。そして、シャフト相対位置が軸線方向プラスから軸線方向マイナスに転じる瞬間t3を境に、作用部材押圧力は軸線方向プラスから軸線方向マイナスに一気に転じる。そのため、シャフト相対位置をゼロ(基本位置)にしようとする保持力が働く。
図7(a)は、右方を軸線方向プラスとしたときのシャフト20の軸線方向の位置(シャフト位置)を示している。図7(b)〜(d)は、右方を軸線方向プラスとしたときの各作用部材40の軸線方向の位置(第1〜第3作用部材位置)を示している。図7(e)は、バルブ57のリフト量(バルブリフト)を示している。図7(f)は、アクチュエータ10がシャフト20に加える駆動力を示している。詳しくは、図7(a)〜(e)は、いずれも横軸に時間を示し、縦軸に上記の各値を示している。また、図7(a)〜(e)の実線は、本実施形態を示し、破線は、比較例1を示している。比較例1は、本実施形態においてシャフト20と作用部材40との軸線方向の相対変位を不能にした場合の例である。
図7(a)〜(e)に示すように、本実施形態では、第1〜第3の各作用部材位置は、それぞれに対応するバルブリフト期間に重なった場合にのみ、シャフト位置に遅れて変動する。また、バルブリフトの高さは、第1〜第3作用部材位置の変動により変動する。また、比較例1では、駆動力は、シャフト20が変位する期間t4においてバルブリフトが大きくなる期間に、一気に大きくなり、バルブリフトがなくなる期間に一気に小さくなるが、本実施形態では、動作タイミング調整機構90により、駆動力の揺れ幅が低減される。
図8(a)〜(e)は、比較例2での上記の各値を示している。比較例2は、比較例1からさらにバルブ57が閉じている期間にのみシャフト20を軸線方向に駆動するように制御した場合の例である。比較例2によっても、駆動力は低減されるが、第1〜第3作用部材位置の変動はシャフト位置の変動と一致することとなる。
本実施形態によれば、次の効果を得ることができる。必要押圧力が所定値よりも高いときにシャフト20が軸線方向に駆動された場合には、シャフト20に対する作用部材40の相対変位が生じ、必要押圧力が減少したときに、作用部材40がシャフト20に遅れて軸線方向に変位することとなる。そのため、シャフト20自体は、いつでも駆動することができる。そのため、シャフト20を駆動するタイミングを制御しなくても、上記のとおりの機械的な仕組みにより、必要押圧力が減少したときに、作用部材40を軸線方向に変位させることができる。
また、係合体36を係合凹部38の最深部に保持しようとする保持力により、作用部材40をシャフト20の所定位置に保持しようとする保持力が生じる。そのため、作用部材40を軸線方向に駆動しないとき等に、前記所定値よりも小さい軸線方向への押圧力が加わっても、作用部材40が軸線方向に揺れ動くといったことがなく、シャフト20に対する作用部材40の基本位置を精度良く定めることができる。
また、シャフト20に対して作用部材40が軸線方向に変位をする際には、球体である係合体36が回転することにより、シャフト20と作用部材40との間の摩擦が低減される。また、シャフト20に対して作用部材40が周方向に揺動する際にも、球体である係合体36が回転することにより、シャフト20と作用部材40との間の摩擦が低減される。
また、係合体36が周方向に必ず半周以上に渡って配されるので、作用部材40を確実に保持できる。また、このように複数の係合体36を、必ず半周以上に渡って配されるように設けることにより、保持器を廃止してコストを安くすることができる。
また、弾性体31は、左右方向に伸縮するので、径方向に伸縮する場合に比べて径方向にコンパクトになる。さらに、シャフト20に弾性体31が外嵌されることによっても、弾性体31が径方向にコンパクトになる。そして、このように弾性体31が径方向にコンパクトになることにより、その外側に配される作用部材40、第1揺動部材54,第2揺動部材55等の部材も径方向にコンパクトにできる。そのため、作用部材40等が回転する際の慣性質量を低減できる。
また、シャフト20が左右方向に駆動された場合には、各作用部材40は、基本的にはシャフト20と一緒に同方向に変位し、バルブ57が開かれた気筒に対応する作用部材40のみがシャフト20に遅れて同方向に変位することとなる。そのため、シャフト20自体は、安定してスムーズに左右方向に変位させることができる。
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態のものと同一の又は対応する部材等は同一の符号を付して、第1実施形態と異なる点のみを説明する。
次に本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態のものと同一の又は対応する部材等は同一の符号を付して、第1実施形態と異なる点のみを説明する。
図9は、本実施形態の動作タイミング調整機構90を適用したドグクラッチ60を示す断面図である。ドグクラッチ60は、第1ドグ部材61と、第2ドグ部材65とを有する。第1ドグ部材61は、第1シャフト62と、第1シャフト62の左端に設けられた第1ドグ63とを有する。第1ドグ63の左端面には、第1ドグ歯64が形成されている。第1ドグ部材61は、左右方向に変位可能に構成されている。本実施形態では、第1ドグ部材61が、動作タイミング調整機構90の作用部材40に該当する。
第2ドグ部材65は、第1シャフト62の左方において第1シャフト62と同一軸線上に設けられた第2シャフト68と、第2シャフト68の右端に設けられた第2ドグ67とを有する。第2ドグ67の右端面には、第1ドグ歯64と噛合可能な第2ドグ歯66が形成されている。
第1ドグ部材61(作用部材40)の右端部は、アクチュエータ軸15の左端に、左右方向に相対変位可能に外嵌されている。本実施形態では、そのアクチュエータ軸15が、動作タイミング調整機構90のシャフト20に該当する。第1ドグ部材61は、アクチュエータ軸15に対して回転するものであってもよいし、アクチュエータ軸15と一緒に回転するものであってもよい。そして、第1ドグ部材61とアクチュエータ軸15との間に調整機構30が設けられている。第1ドグ部材61の隣には、回転シャフト71が設けられており、第1ドグ部材61の回転力は、第1ドグ部材61に設けられている歯車73及び回転シャフト71に設けられている歯車72を介して、回転シャフト71に伝えられる。
次に、図10(a)〜(c)を参照しつつ、第1ドグ歯64を第2ドグ歯66に噛合させる際を説明する。まず、アクチュエータ軸15を左方に駆動することにより、第1ドグ部材61を左方に変位させる。それにより、図10(a)に示すように、第1ドグ歯64を第2ドグ歯66に摺接させる。このとき、第1ドグ歯64と第2ドグ歯66とが互いに噛合不能な相対回転位相になると、第1ドグ歯64を第2ドグ歯66に噛合させるのに必要な、第1ドグ部材61に対する左方への必要押圧力は、実質上無限大となる。そのため、この状態からアクチュエータ軸15をさらに左方に駆動しても、第1ドグ部材61は左方には変位せず、第1ドグ部材61に対してアクチュエータ軸15が左方に相対変位する。それにより、エネルギーが蓄えられる。
そして、図10(b)に示すように、第1ドグ歯64と第2ドグ歯66とが互いに噛合可能な相対回転位相になると、必要押圧力は所定値よりも小さくなる。そのため、このタイミングで、図10(c)に示すように、第1ドグ部材61が調整機構30により左方に変位する。それにより、第1ドグ歯64が第2ドグ歯66に噛合する。
図11は、第1ドグ歯64を第2ドグ歯66に噛合させる際の各値を示している。図11(a)は、第1ドグ部材61と第2ドグ部材65との回転方向の位相差(回転位相差)を示している。また、図11(b)は、左方を軸線方向プラスとしたときのアクチュエータ軸15の軸線方向の位置(アクチュエータ軸位置)を示している。また、図11(c)は、左方を軸線方向プラスとしたときの第1ドグ部材61の軸線方向の位置(第1ドグ部材位置)を示している。詳しくは、図11(a)〜(c)は、いずれも横軸に時間を示し、縦軸に上記の各値を示している。
図11(a)〜(c)に示すように、第1ドグ部材61と第2ドグ部材65とは、上記のとおり、所定の相対回転位相でしか噛合することができない。よって、噛合不能なタイミングt5で、アクチュエータ軸位置が変動した場合、第1ドグ部材位置はアクチュエータ軸位置と一緒には変動せず、噛合可能となったタイミングt6で変動する。それにより、第1ドグ歯64と第2ドグ歯66とが噛合する。
図12は、第1ドグ歯64と第2ドグ歯66との噛合を解除する際、すなわち、第1ドグ部材61と第2ドグ部材65とを分離する際の各値を示している。図12(a)は、第1ドグ部材61と第2ドグ部材65との間に加わる伝達トルクを示している。また、図12(b)は、分離に必要な荷重、すなわち、必要押圧力を示している。また、図12(c)は、左方を軸線方向プラスとしたときのアクチュエータ軸15の軸線方向の位置(アクチュエータ軸位置)を示している。また、図12(d)は、アクチュエータ10がアクチュエータ軸15に加える右方への駆動力を示している。また、図12(e)は、左方を軸線方向プラスとしたときの第1ドグ部材61の軸線方向の位置(第1ドグ部材位置)を示している。詳しくは、12(a)〜(e)は、いずれも横軸に時間を示し、縦軸に上記の各値を示している。
図12(a)〜(e)に示すように、内燃機関の回転に従い、伝達トルクは変動し、それに伴い、分離に必要な荷重も変動する。そのため、分離に必要な荷重が所定値fよりも高い期間t7に駆動力が加えられ、同期間t7にアクチュエータ軸位置が変動した場合には、第1ドグ部材位置は、アクチュエータ軸位置とは一緒に変動せず、分離に必要な荷重が下がった時t8に変動する。それにより、第1ドグ部材61と第2ドグ部材65とが分離されることとなる。
本実施形態では、以上に示したような第1ドグ歯64と第2ドグ歯66との噛合及びその解除が、本発明でいう「所望の動作」に該当する。本実施形態によれば、動作タイミング調整機構90を、ドグクラッチ60の第1ドグ部材61側に適用することができる。また、本実施形態では、アクチュエータ軸15と第1シャフト62との間に調整機構30を設けるので、第1ドグ63については、従来どおりの構成にすることができる。
[第3実施形態]
次に本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態では、第2実施形態のものと同一の又は対応する部材等は同一の符号を付して、第2実施形態と異なる点のみを説明する。
次に本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態では、第2実施形態のものと同一の又は対応する部材等は同一の符号を付して、第2実施形態と異なる点のみを説明する。
図13は、本実施形態の動作タイミング調整機構90を適用したドグクラッチ60を示す断面図である。本実施形態は、動作タイミング調整機構90を、ドグクラッチ60の第1ドグ部材61側に適用するのに代えて、第2ドグ部材65側に適用したものである。よって、アクチュエータ軸15と第1ドグ部材61との間には、調整機構30は設けられていない。そして、第1ドグ部材61ではなく、第2ドグ部材65が動作タイミング調整機構90の作用部材40を構成している。第2ドグ部材65(作用部材40)の左端は、その左方に配された挿入軸79の右端に、左右方向に相対変位可能に外嵌されている。本実施形態では、その挿入軸79が、動作タイミング調整機構90のシャフト20を構成している。そして、第2ドグ部材65と挿入軸79との間に調整機構30が設けられている。第2ドグ部材65の隣には、回転シャフト77が設けられている。回転シャフト77の回転力は、回転シャフト77に設けられている歯車76及び第2ドグ部材65に設けられている歯車75を介して、第2ドグ部材65に伝えられる。
次に、図14(a)〜(c)を参照しつつ、第1ドグ歯64を第2ドグ歯66に噛合させる際を説明する。まず、第1ドグ部材61を左方に駆動することにより、図14(a)に示すように、第1ドグ歯64を第2ドグ歯66に摺接させる。このとき、第1ドグ歯64と第2ドグ歯66とが互いに噛合不能な相対回転位相になると、第2ドグ歯66を第1ドグ歯64に噛合させるのに必要な、第2ドグ部材65に対する左方への必要押圧力は、実質上無限大となる。そのため、この状態から第1ドグ部材61をさらに左方に駆動させると、第2ドグ部材65は、第1ドグ部材61により左方に押されることにより、挿入軸79に対して左方に相対変位する。それにより、エネルギーが蓄えられる。
そして、図14(b)に示すように、第1ドグ歯64と第2ドグ歯66とが互いに噛合可能な相対回転位相になると、必要押圧力は所定値よりも小さくなる。そのため、このタイミングで、図14(c)に示すように、第2ドグ部材65が調整機構30により右方に変位する。それにより、第2ドグ歯66が第1ドグ歯64に噛合する。
本実施形態によれば、動作タイミング調整機構90をドグクラッチ60の第2ドグ部材65側に適用することができる。
[第4実施形態]
次に本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態のものと同一の又は対応する部材等は同一の符号を付して、第1実施形態と異なる点のみを説明する。
次に本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態のものと同一の又は対応する部材等は同一の符号を付して、第1実施形態と異なる点のみを説明する。
図15は、本実施形態の動作タイミング調整機構90を示す断面図である。本実施形態では、係合体36は球体ではなく棒状体である。また、押圧部31〜34は、変換機構32〜34を有しておらず、弾性体31のみからなる。弾性体31は、径方向に伸縮自在なコイルバネであり、係合体36を径方向内方に押圧している。本実施形態によっても、本発明を実施することができる。
[第5実施形態]
次に本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態では、第4実施形態のものと同一の又は対応する部材等は同一の符号を付して、第4実施形態と異なる点のみを説明する。
次に本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態では、第4実施形態のものと同一の又は対応する部材等は同一の符号を付して、第4実施形態と異なる点のみを説明する。
図16は、本実施形態の動作タイミング調整機構90を示す断面図である。本実施形態では、係合凹部38は、シャフト20の外周面にではなく、作用部材40の内周面に設けられている。そして、係合体36は、作用部材40にではなくシャフト20に係合しており、作用部材40に対してシャフト20と共に左右方向に相対変位する。弾性体31は、シャフト20と係合体36との間に取り付けられており、係合体36を径方向外方に押圧することにより、係合体36の先端部を係合凹部38の底面に押圧している。本実施形態によっても、本発明を実施することができる。
[その他の実施形態]
本実施形態は、次のように変更して実施することもできる。例えば、係合凹部38を環状に延びる溝ではなく、単なる凹部にしてもよい。
本実施形態は、次のように変更して実施することもできる。例えば、係合凹部38を環状に延びる溝ではなく、単なる凹部にしてもよい。
また、例えば、図1等に示す第1実施形態において、第1揺動部材54及び第2揺動部材55を設けるのに代えて、次のようにしてもよい。作用部材40を左右方向に変位可能な揺動部材と一体形成する。そして、当該揺動部材をカム52に当接する位置に変位させることにより、バルブ57を駆動する駆動状態に切り替え、当該揺動部材をカム52に当接しない位置に変位させることにより、バルブ57を駆動しない休止状態に切り替えるようにしてもよい。
また、例えば、図9等に示す第2実施形態において、アクチュエータ軸15と第1シャフト62との間に調整機構30を設けるのに代えて、次のようにしてもよい。第1シャフト62と第1ドグ63とを別体形成する。そして、第1シャフト62に対して第1ドグ63を周方向には一緒に回転する一方、軸線方向には相対変位が許容されるように係合させる。このような係合は、例えば、第1シャフト62及び第1ドグ63のうちの一方に軸線方向に延びる突条を設け、他方にそれに嵌合する溝を設けることにより実現できる。そして、第1シャフト62と第1ドグ63との間に、調整機構30を設けてもよい。また、同様に、図13等に示す第3実施形態において、挿入軸79と第1シャフト62との間に調整機構30を設けるのに代えて、第2シャフト68と第2ドグ67との間に、調整機構30を設けてもよい。
20…シャフト、30…調整機構、31〜34…押圧部、36…係合体、38…係合凹部、40…作用部材、90…動作タイミング調整機構。
Claims (9)
- シャフト(20)と、
前記シャフトに対してその軸線方向に相対変位可能に取り付けられている、所望の動作を行うための作用部材(40)と、
前記シャフト及び前記作用部材のうちの一方である第1部材に凹設されてその最深部から前記軸線方向の両側に進むに従い浅くなる係合凹部(38)と、
前記シャフト及び前記作用部材のうちの前記第1部材でない方である第2部材に係合して、前記第1部材に対して前記第2部材と共に前記軸線方向に相対変位をする係合体(36)と、
前記係合体を前記係合凹部の底面に押圧することにより、前記係合体を前記係合凹部の最深部に保持しようとする保持力を生じさせる押圧部(31〜34)と、を有し、
前記作用部材に前記所望の動作をさせるのに必要な、前記作用部材に対する前記軸線方向への必要押圧力が所定値よりも高いときに、前記作用部材に前記軸線方向への押圧力が加えられた場合には、前記保持力に抗して前記相対変位が生じることによりエネルギーが蓄積され、前記エネルギーの蓄積後に前記必要押圧力が減少したときに、蓄積された前記エネルギーにより前記作用部材が前記相対変位を解消する方向に変位することにより前記所望の動作が行われる、動作タイミング調整機構。 - 前記係合凹部は、前記シャフトの周方向に延びる溝であり、前記係合体は複数あり、各前記係合体は球体であり、複数の前記係合体は、前記係合凹部に沿って周方向に並べて配されている、請求項1に記載の動作タイミング調整機構。
- 前記シャフトに対して前記作用部材が前記周方向に相対回動するように構成されている請求項2に記載の動作タイミング調整機構。
- 各1つの前記係合凹部あたりの前記係合体の数は、前記相対変位が最大限行われ、且つ全ての前記係合体が隣り合う前記係合体と互いに接触し合うように偏った場合にも、前記係合体が前記周方向に半周以上に渡って配される数である請求項2又は3に記載の動作タイミング調整機構。
- 前記押圧部は、前記軸線方向に伸縮する弾性体(31)と、前記弾性体による前記軸線方向への押圧力を前記シャフトの径方向への押圧力に変えて前記係合体に伝える変換機構(32〜34)と、を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の動作タイミング調整機構。
- 前記弾性体は、前記シャフトに外嵌されている請求項5に記載の動作タイミング調整機構。
- 内燃機関の各気筒のカム(52)とバルブ(57)との間に介装される揺動部材(54,55)を備え、前記揺動部材により前記バルブを駆動する可変リフト機構に適用され、
前記作用部材は、前記軸線方向に変位することにより前記揺動部材に作用して前記バルブの駆動状態を変更するものであり、前記シャフトは、複数の前記作用部材を前記軸線方向に駆動するものであり、前記所望の動作は、前記駆動状態の変更である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の動作タイミング調整機構。 - 前記軸線方向に変位可能に設けられて端部に第1ドグ歯(64)を備える第1ドグ部材(61)と、前記第1ドグ部材と同一軸線上に設けられて端部に前記第1ドグ歯と噛合可能な第2ドグ歯(66)を備える第2ドグ部材(65)と、を有するドグクラッチ(60)に適用され、
前記作用部材は、前記第1ドグ部材であり、前記シャフトは、前記第1ドグを前記軸線方向に駆動するものであり、前記所望の動作は前記第1ドグ歯による第2ドグ歯との噛合である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の動作タイミング調整機構。 - 前記軸線方向に変位可能に設けられて端部に第1ドグ歯(64)を備える第1ドグ部材(61)と、前記第1ドグ部材と同一軸線上に設けられて端部に前記第1ドグ歯と噛合可能な第2ドグ歯(66)を備える第2ドグ部材(65)と、を有するドグクラッチ(60)に適用され、
前記作用部材は、前記第2ドグ部材であり、前記所望の動作は、前記第2ドグ歯による前記第1ドグ歯との噛合である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の動作タイミング調整機構。
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