JP2020007625A - β型チタン合金及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】部分的に高硬度の表面部位を形成することができるβ型チタン合金及びその製造方法を提供する。【解決手段】本β型チタン合金の製造方法は、β型チタン合金母材を熱処理してその一部位の表面側から順に浸酸素層5及び硬化層6が形成されているβ型チタン合金1を作製する製造方法であって、β型チタン合金母材を下記式(1)で表される温度HT(℃)で熱処理する第1熱処理工程と、第1熱処理工程で熱処理されたβ型チタン合金母材の一部位を酸化雰囲気下で局所加熱する第2熱処理工程と、第2熱処理工程で熱処理されたβ型チタン合金母材を120時間以上熱処理してβ型チタン合金を得る第3熱処理工程と、この順に実施することを特徴とする。200≦HT≦βT−70(1)(式中、βTは、前記β型チタン合金のβ変態点(℃)を示す)【選択図】図1

Description

本発明は、β型チタン合金及びその製造方法に関する。詳しくは、部分的に高硬度の表面部位を形成することができるβ型チタン合金及びその製造方法に関する。
チタン合金は、軽量、高強度及び高耐食性等の優れた特性と、地球環境に優しいリサイクル性とを兼ね備えた実用金属として注目されている。
このようなチタン合金は、摺動部材等の機械部品や、医療及び食品用の刃物等に使用されている。これら用途における摩耗に対する対策として、チタン合金の必要な部分に良好な耐摩耗性を付与するための手段が求められている。チタン合金のより具体的な耐摩耗性の付与手段として、複数種類の熱処理を順次行うことによって、必要な箇所を部分的に硬質化することができる手段を提案している(特許文献1を参照。)。
特開2015−190032号公報
特許文献1に示すβ型チタン合金及びその製造方法は、チタン合金の一部位を硬質化することが可能であるが、該当部位の表面をより硬質化させて耐摩耗性を高めることが求められている。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、部分的に高硬度の表面部位を形成することができるβ型チタン合金及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は以下のとおりである。
1.β型チタン合金母材を熱処理してその一部位の表面側から順に浸酸素層及び硬化層が形成されているβ型チタン合金を作製する製造方法であって、前記β型チタン合金母材を下記式(1)で表される温度H(℃)で熱処理する第1熱処理工程と、前記第1熱処理工程で前記熱処理された前記β型チタン合金母材の前記一部位を酸化雰囲気下で局所加熱する第2熱処理工程と、前記第2熱処理工程で熱処理された前記β型チタン合金母材を120時間以上熱処理して前記β型チタン合金を得る第3熱処理工程と、この順に実施することを特徴とするβ型チタン合金の製造方法。
200≦H≦β−70 (1)
(式中、βは、前記β型チタン合金のβ変態点(℃)を示す)
2.前記第2熱処理工程の前記局所加熱の間において、前記一部位に不活性ガスを継続して吹き付け、前記局所加熱の終了時に前記吹きつけを停止する前記1.記載のβ型チタン合金の製造方法。
3.前記第1熱処理工程は、前記熱処理後に前記β型チタン合金母材の表面に形成された酸化皮膜の除去を行う前記1.又は2.に記載のβ型チタン合金の製造方法。
4.前記浸酸素層、前記硬化層、及びβ型チタン合金母材を熱処理した熱処理後母材の各々の酸素量は、前記浸酸素層が最も酸素量が多く、順次低くなる前記1.乃至3.のいずれかに記載のβ型チタン合金の製造方法。
5.β型チタン合金母材を熱処理して得られた熱処理後母材と、前記熱処理後母材の一部位の表面側から順次に形成された浸酸素層及び硬化層と、を備えるβ型チタン合金であって、前記浸酸素層、前記硬化層及び前記熱処理後母材の各々に含まれる酸素量は、前記浸酸素層が最も酸素量が多く、順次低くなることを特徴とするβ型チタン合金。
6.前記β型チタン合金母材は、22質量%のV、4質量%のAl及び残部のTiからなるTi-22V-4Alであり、前記浸酸素層は、前記硬化層及び前記熱処理後母材よりもバナジウム量が低くなっている前記5.に記載のβ型チタン合金。
7.前記一部位は、前記熱処理後母材の先端側に位置している前記5.又は前記6.に記載のβ型チタン合金。
本発明のβ型チタン合金の製造方法によれば、構造体としての靱性を保ち被削性に優れ、且つ、浸酸素層を有することにより該当部位の表面がより硬質化しており、優れた耐摩耗性を有する。また、一部位に浸酸素層及び硬化層を有することにより一部位の変形を抑制することができる。これらの層の形成によって靱性と耐摩耗性の両方の特性が要求される各種分野(機械部品、食品加工機器、調理器具、医療器具、工具等)で好適に使用することができる。
前記第2熱処理工程の前記局所加熱の間において、前記一部位に不活性ガスを継続して吹き付け、前記局所加熱の終了時に前記吹きつけを停止する場合は、該当部位の表面を局所加熱の期間に限り不活性ガスにより冷却することで第3熱処理工程により浸酸素層及び硬化層となる準硬化層を容易に形成することができ、優れた耐摩耗性を備えた浸酸素層及び硬化層を得ることができる。
前記第1熱処理工程は、前記熱処理後に前記β型チタン合金母材の表面に形成された酸化皮膜の除去を行う場合は、酸化皮膜の除去により第2熱処理工程による母材への酸素の進入を用意にして、浸酸素層層の形成を容易にすることができる。
前記浸酸素層、前記硬化層、及びβ型チタン合金母材を熱処理した熱処理後母材の各々の酸素の元素量は、前記浸酸素層が最も酸素量が多く、この順に低くなる場合は、耐摩耗性に優れる浸酸素層を備え、他の部位は十分な靱性を得ることができる。
本発明のβ型チタン合金によれば、前記浸酸素層、前記硬化層及び前記熱処理後母材の各々に含まれる酸素の元素量は、前記浸酸素層が最も酸素量が多く、順次低くなることで、耐摩耗性に優れる浸酸素層を備え、他の部位は十分な靱性を得ることができる。
また、前記β型チタン合金母材は、22質量%のV、4質量%のAl及び残部のTiからなるTi-22V-4Alであり、前記浸酸素層は、前記硬化層及び前記熱処理後母材よりもバナジウム量が低くなっている場合は、第1熱処理工程により、α相の析出が十分にされており、優れた耐摩耗性を備えた硬化層を得ることができる。
前記一部位は、前記熱処理後母材の先端側に位置している場合は、刃物の刃先等の高硬度が必要な箇所に浸酸素層及び硬化層を形成して硬度を高めることができ、多くの用途に適したβ型チタン合金とすることができる。
本β型チタン合金の一部位の硬化面周辺を説明するための模式断面図である。 第2熱処理工程の例を示す模式図である。 ドリルビットの例を示す斜視図である。 本ドリルビットの図2に示すG−Gから刃先部までの部分拡大断面図である。 図4の先端側の部分拡大断面図である。 作製したドリルビットの先端側を軸方向に切断した画像である。 図6の先端側の部分拡大図である。 硬化面から深部への酸素量の変化を示すグラフである。 硬化面から深部へのバナジウム量の変化を示すグラフである。 ドリルビットの浸酸素層と硬化層の断面におけるO、Ti、V、Alの変化を示す分析画像である。 ドリルビットの熱処理後母材の断面におけるO、Ti、V、Alの変化を示す分析画像である。
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
本β型チタン合金の製造方法は、β型チタン合金母材に対して第1熱処理工程、第2熱処理工程及び第3熱処理工程を順に実施して一部位の表面側から順に浸酸素層及び硬化層が形成されているβ型チタン合金を作製することを特徴とする。
作製されたβ型チタン合金1は、β型チタン合金母材を熱処理して得られた熱処理後母材11と、前記熱処理後母材11の一部位2の表面である硬化面21側から順次に形成された浸酸素層5及び硬化層6と、を備える(図1を参照)。また、一部位2の表面に酸化被覆層4が形成されていてもよい。この場合、一部位2の表面から順に、酸化被覆層4、浸酸素層5及び硬化層6が形成されている。
前記一部位は、β型チタン合金に対して任意に設定された部位であり、表面の硬度が熱処理後母材11よりも高硬度となる耐摩耗性を付与させる部位である。前記一部位は、1箇所でもよいし2以上の箇所であってもよい。また、前記一部位の具体的な場所の例として、前記熱処理後母材の先端側を挙げることができる。前記熱処理後母材の先端側は、刃物の刃先等の高硬度が必要になることが多い。
前記β型チタン合金母材(以下、母材と略す。)は、その結晶構造がβ相のチタン合金であれば良く、例えば、Al、C、Ga、N、O、Sn、Mo、V、Nb、Ta、Ru、Cr、Fe、Mn、Cu、Co、Si、Zr、Hf、Ni及びW等の1種、又は2種以上を含有し、残部がTi及び不可避的な不純物からなる合金とすることができる。また、本母材は、β相にα相が混在しているnearβ型チタン合金も含まれる。
より具体的なβ型チタン合金としては、Ti-V-Al系、Ti-V-Cr-Al系、Ti-Mo-V-Fe-Al系、Ti-Al-V-Cr-Mo-Zr系、Ti-Mo-Zr系、Ti-Mo-Zr-Al系、Ti-Fe系、Ti-Fe-Al系、Ti-Mo-Zr-Sn系、Ti-V-Zr-Al-Sn系、Ti-V-Cr-Al-Sn系、Ti-Al-V-Fe系、Ti-Mo-Nb-Al-Si系、Ti-Fe-Cr-Al系、Ti-Mo-Zr-Fe系、Ti-Mo系、Ti-Nb-Zr-Ta系、T-Nb系、Ti-V-Mo-Cr-Al系、Ti-V-Mo-Cr-Fe-Al系及びTi-Al-Sn-Cr-Mo-Zr-Fe系等の2元系以上のβ型チタン合金を挙げることができる。
また、前記2元系以上のβ型チタン合金のより具体的なものとしては、例えば、22質量%のV、4質量%のAl及び残部のTiからなるTi-22V-4Al(以下、質量%の記載を省略する)、Ti-15V-6Cr-4Al、Ti-13V-11Cr-3Al、Ti-8Mo-8V-2Fe-3Al、Ti-3Al-8V-6Cr-4Mo-4Zr、Ti-15Mo-5Zr、Ti-15Mo-5Zr-3Al、Ti-2〜15Fe(例えば、Ti-4Fe、Ti-4.5Fe、T-5Feを例示することができる。)、Ti-2〜15Fe-1〜10Al(例えば、Ti-4Fe-1Al、Ti-5Fe-1Alを例示することができる。)、Ti-11.5Mo-6Zr-4.5Sn、Ti-11V-11Zr-2Al-2Sn、Ti-15V-3Cr-3Al-3Sn、Ti-1Al-8V-5Fe、Ti-15Mo-2.7Nb-3Al-0.2Si、Ti-4.3Fe-7.1Cr-3Al、Ti-12Mo-6Zr-2Fe、Ti-15Mo、Ti-35Nb-7Zr-5Ta、Ti-45Nb、及びTi-5Al-5V-5Mo-3Cr等を挙げることができる。また、nearβ型チタン合金として、Ti-10V-2Fe-3Al、Ti-5V-5Mo-1Cr-1Fe-5Al、及びTi-5Al-2Sn-2Cr-4Mo-4Zr-1Fe等を挙げることができる。
前記β型チタン合金のうち、スズ原子を成分として含まないβ型チタン合金がより好ましい。このようなβ型チタン合金は、Al、C、Ga、N、O、Mo、V、Nb、Ta、Ru、Cr、Fe、Mn、Cu、Co、Si、Zr、Hf、Ni、W等の1種又は2種以上を含有し、残部がTi及び不可避的な不純物からなり、Ti-V-Al系、Ti-V-Cr-Al系、Ti-Mo-V-Fe-Al系、Ti-Al-V-Cr-Mo-Zr系、Ti-Mo-Zr系、Ti-Mo-Zr-Al系、Ti-Fe系、Ti-Fe-Al系、Ti-Al-V-Fe系、Ti-Mo-Nb-Al-Si系、Ti-Fe-Cr-Al系、Ti-Mo-Zr-Fe系、Ti-Mo系、Ti-Nb-Zr-Ta系、T-Nb系及びTi-V-Mo-Cr-Fe-Al系を挙げることができる。
また、前記β型チタン合金のより具体的なものとしては、例えば、Ti-22V-4Al、Ti-15V-6Cr-4Al、Ti-13V-11Cr-3Al、Ti-8Mo-8V-2Fe-3Al、Ti-3Al-8V-6Cr-4Mo-4Zr、Ti-15Mo-5Zr、Ti-15Mo-5Zr-3Al、Ti-2〜15Fe、Ti-2〜15Fe-1〜10Al、Ti-1Al-8V-5Fe、Ti-15Mo-2.7Nb-3Al-0.2Si、Ti-4.3Fe-7.1Cr-3Al、Ti-12Mo-6Zr-2Fe、Ti-15Mo、Ti-35Nb-7Zr-5Ta、Ti-45Nb、Ti-10V-2Fe-3Al及びTi-5V-5Mo-1Cr-1Fe-5Alを挙げることができる。これらのうち、Ti-22V-4Al(β変態点:730℃)、Ti-15V-6Cr-4Al(β変態点:730℃)、Ti-4Fe(β変態点:830℃)、Ti-5Fe 、Ti-4Fe-1Al、Ti-5Fe-1Al、又はTi-15Mo-5Zr-3Alが特に好例として挙げることができる。
母材の市販品の例として大同特殊鋼株式会社製DAT51(Ti-22V-4Al)JIS80種、株式会社神戸製鋼所製KS15-5-3(Ti-15Mo-5Zr-3Al)、新日鉄住金株式会社製SSAT-2041CF(Ti-20V-4Al-1Sn)等を挙げることができる。
熱処理される母材は、通常板形状等の偏平な形状を挙げることができるが特に限定されず、必要となるβ型チタン合金製品の物品形状に応じて適宜選択されることができる。母材の大きさは特に限定されず、例えば、作製するβ型チタン合金が包丁の刃である場合、母材の厚さは、0.5〜5.0mm程度とすることができる。また、摺動部材である場合の母材の厚さは、少なくとも1mm以上とすることができる。但し、各前記母材の厚さは当該厚さに限定されるものではなく、任意厚さの母材を使用することができる。
(第1熱処理工程)
第1熱処理工程は、母材を温度Hに加熱後、冷却する熱処理である溶体化を行い、熱処理された母材(以下、第1熱処理母材とする)を得る工程である。
前記熱処理は、母材全体を加熱する全体加熱であればよく、例えば低周波加熱炉等、ガス炉、電気炉等を挙げることができる。
前記熱処理の温度H(℃)は、下記式(1)を満たす温度である。
200≦H≦β−70 (1)
(式中、βは、前記β型チタン合金のβ変態点(℃)を示す)
β変態点とは、それ以上の温度で熱処理を行うと母材の結晶構造がβ単相となる温度である。本発明の第1熱処理工程では、熱処理温度Hが前記式(1)を満たすように(具体的には、β型チタン合金のβ変態点βよりも大幅に低い温度で)熱処理を行う。
通常の溶体化は融点直下となるβ変態点以上の温度で行うが、第1熱処理工程は、前記式(1)に示すβ変態点以下の温度で行うことによって、α相が全体に均等に析出し、母材の結晶構造を、β相(体心立方晶)にα相(最密立方晶)が混在した結晶構造にすることができ、通常の溶体化よりも硬度を高めたチタン合金を得ることができる。
熱処理温度Hがβ−70℃よりも高い場合、α相の析出比率が少なくなるため、第3熱処理工程での熱処理後で構造体としての靱性を保つことに寄与するα相が第1熱処理工程で得られにくく、β単相(又はそれに近い結晶構造)が第1熱処理工程で得られるおそれがある。一方、熱処理温度Hが200℃よりも低い場合、上記熱処理による効果が得られないおそれがある。そのため、熱処理温度Hは上記式(1)とする。また、熱処理温度Hの上限値はβ−80℃が好ましく、Hの下限値は500℃がより好ましい。このような温度範囲で第1熱処理工程を行うと、例えば母材のビッカース硬さが230HVのとき、230〜350HVの第1熱処理母材を得ることができる。
第1熱処理工程の熱処理時間は特に限定されず、熱処理される母材の厚さ、種類等に応じて適宜設定することができる。一般的には、母材の厚さや種類にかかわらず、15分(0.25時間)以上とすることが好ましく、1時間以上がより好ましく、3時間以上がさらに好ましく、24時間以上が特に好ましい。また、熱処理時間の上限は特に問わない。
第1熱処理工程の熱処理雰囲気は特に限定されず、酸化雰囲気(大気雰囲気も含む)、不活性ガス雰囲気下(例えばアルゴン等の希ガス雰囲気下を例示することができる)及び真空下等を挙げることができる。また、酸化雰囲気下で第1熱処理工程を行い、第1熱処理母材の表面に酸化皮膜が形成された場合、形成された酸化皮膜を除去することが好ましい。
熱処理後の母材の冷却方法は特に問わず、例えば母材を水中や油中に投入して冷却する液冷等を挙げることができる。
(第2熱処理工程)
第2熱処理工程は、第1熱処理工程で得られた第1熱処理母材の一部位を酸化雰囲気下で局所加熱した母材(以下、第2熱処理母材とする)を得る工程である。局所加熱によって一部位2に限定して加熱し、その後冷却することにより、前記一部位2が、第3熱処理工程により表面側から順に浸酸素層5及び硬化層6となるβ単相からなる準硬化層となる。このとき、表面に酸化被覆層4が形成されていてもよい。
なお、当該局所加熱の加熱温度は限定的ではないが、当該局所加熱によって第1熱処理母材の一部位は1000℃以上(好ましくは、1300℃以上)にまで加熱されるものと推定される。
局所加熱の具体的な加熱手段として、例えば、レーザ加熱、高周波誘導加熱、ガスバーナー加熱及び電子ビーム加熱等を用いることができる。これら加熱手段のうち、レーザ加熱、高周波誘導加熱及びガスバーナー加熱からなる群から選ばれた少なくとも1種を好例として挙げることができる。
前記レーザ加熱の種類として、COレーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ、UVレーザ、半導体レーザ、ファイバレーザ、LDレーザ及びLD励起固体レーザ熱等を例示することができる。具体的に、局所加熱として半導体レーザによる加熱を行う場合の条件の例として、出力50〜1000Wのレーザトーチ91を、第1熱処理母材に対する移動速度6mm/sとして第1熱処理母材12の一部位2表面を溶解させることなく移動させながら加熱させることを挙げることができる(図2を参照。)。
前記高周波誘導加熱は、交流電源による高周波電流の誘導加熱で加熱することができればよく、具体的な種類は特に問わず、市販品を使用することができる。
前記ガスバーナー加熱は、燃料ガスとしてメタン、エタン、プロパン及びブタン等の炭化水素系ガスを空気と混合して燃焼させて加熱することができればよく、具体的な種類は特に問わず、市販品を使用することができる。
電子ビーム加熱は、真空中で高密度に収束させた電子ビームを対象物に照射して加熱することができればよく、具体的な種類は特に問わず、市販品を使用することができる。
第2熱処理工程の熱処理時には、前記局所加熱の間において、一部位2にノズル93等から不活性ガスを継続して吹き付けを行い、加熱部位以外を冷却することができる(図2を参照。)。また、前記局所加熱の終了時に吹きつけを停止することが好ましい。この局所加熱の間に限った吹き付けにより、第2熱処理母材の準硬化層の結晶粒の粗大化の防止とβ単相形成がより得られて浸酸素層5及び硬化層6の形成が容易となる。吹き付けに用いる不活性ガスは、例えばアルゴン等の希ガス及び窒素等を挙げることができる。
前記不活性ガスの吹き付け量は特に限定されないが、例えば、アルゴンガスを吹き付ける場合、口径φ6mmのノズルから10〜40L/分(より好ましくは20〜35L/分)の条件を挙げることができる。
通常、チタンはその表面が酸素とすぐに反応してTiOとなり、酸素進入を妨げる酸化被覆層となるため、酸素が母材の深層に進入しにくい。そこで、不活性ガスを加熱部位に吹きかけることで加熱部位付近の酸素分圧を下げて、表面の酸化被覆層の形成を抑制、又は形成された酸化被覆層の厚みが厚くなることを抑制することにより、酸素が母材のより深層に進入し易くすることができる。
そして、酸素が母材に進入した場合、化合してTiOを形成せず酸素がチタン合金中に固溶した(つまり浸酸素層が形成された)状態になる。また、単に雰囲気中の酸素分圧を下げる場合は、酸素の侵入は時間がかかる上、結晶粒の粗大化の問題があるが、不活性ガスの吹きつけを行う本方法は、短時間処理で浸酸素層が厚く形成することができ、結晶粒の粗大化も抑えられると考えられる。
(第3熱処理工程)
第2熱処理工程で得られた第2熱処理母材の一部位2を120時間以上熱処理して浸酸素層5及び硬化層6が形成されているβ型チタン合金1を得る工程である。当該第3熱処理工程の熱処理により、第2熱処理工程で得られた準硬化層(β単相)の硬化が促進(時効硬化ともいう。)されて、酸素が固溶している浸酸素層5、及び残部の硬化層6となる。一方、α相とβ相の2相を含む第2熱処理母材は、上記熱処理による硬化の進行は起きず熱処理後母材11となる。
そのため、構造体としての靱性を保ちつつ、優れた耐摩耗性を有するβ型チタン合金(具体的には、軟らかい熱処理後母材11と硬くて厚い浸酸素層5及び硬化層6を組み合わせたβ型チタン合金)が好適に得られる。なお、当該第3熱処理工程の示すような熱処理は、一般的に時効処理とも呼ばれている。
前記熱処理の加熱手段は、第1熱処理工程と同様に母材全体を加熱する全体加熱が可能な手段であればよく、例えば低周波加熱炉等、ガス炉、電気炉等を挙げることができる。また、第1熱処理工程と同じ加熱手段を用いてもよいし、異なる加熱手段を用いてもよい。
第3熱処理工程における熱処理の温度は、200〜500℃が好ましく、200〜450℃がより好ましい。
熱処理の時間は120時間以上とすることができる。第3熱処理工程の熱処理時間が当該範囲であることにより、浸酸素層5の硬さが400HV以上になり、耐摩耗性が向上する。なお、当該熱処理の時間の上限は、特に限定はないが、硬さが下がる過時効となる時間を上限とすることが好ましく、当該時間は例えば1000時間程度とすることができる。
第3熱処理工程における雰囲気は、酸化雰囲気(大気雰囲気も含む)、不活性ガス雰囲気下(例えばアルゴン等の希ガス雰囲気下を例示することができる)及び真空下等を挙げることができる。
(酸化被覆層)
前記製造方法により形成された酸化被覆層4は、一部位2の表層に形成されており、チタンが酸化して形成された主にTiOからなる酸化層である。酸化被覆層4の厚さは用途に応じて適宜設定されるが、例えば20μm以下、好ましくは5μm以下とすることができる。前記厚みに抑えることにより、酸化被覆層4が剥離することなく、耐摩耗性を維持することができる。
(浸酸素層)
浸酸素層5は、表面、又は酸化被覆層4の深層側に形成された、β相の結晶構造に酸素を固溶させたチタン合金の層である。
浸酸素層5の硬度は用途に応じて適宜設定されるが、通常500〜850HV(より好ましくは更に好ましくは550〜800HV)とすることができる。浸酸素層5の厚みは、5〜100μm(更に好ましくは10〜70μm、特に好ましくは10〜50μm)を挙げることができる。
(硬化層)
前記製造方法により形成された硬化層6は、浸酸素層5の深層側に形成された、結晶構造がβ相からなるチタン合金の層である。硬化層6の硬度は適宜設定されるが、通常400〜550HVとすることができる。硬化層6の厚さは用途に応じて適宜設定されるが、例えば30μm〜3.5mmを挙げることができる。
一部位2に負荷がかかり、酸化被覆層4や浸酸素層5に面力が加わった場合、浸酸素層5が、靱性が高い熱処理後母材11上に直接形成されていると、熱処理後母材11に前記面力により変形して各層の境界に力が加わり、浸酸素層5が熱処理後母材11から剥離したり、酸化被膜層4が浸酸素層5から剥離したりしやすくなる。一方、本チタン合金は、浸酸素層5が熱処理後母材11より高硬度の硬化層6上に形成されているため、面力が加わっても硬化層6が変形しにくく、その上に形成されている浸酸素層5及び酸化被膜層4の剥離を防止することができる。
(熱処理後母材)
β型チタン合金1の熱処理後母材11は、結晶構造がβ相(体心立方晶)にα相(最密立方晶)が混在したチタン合金の層である。
熱処理後母材11の硬度は適宜設定されるが、通常ビッカース硬さが200〜380HV(より好ましくは230〜350HV)とすることができる。
浸酸素層5及び硬化層6と、熱処理後母材11との各々に含まれる酸素量は、浸酸素層5が最も酸素量が多く、この順に低くなる。
浸酸素層5及び硬化層6に固溶する酸素の割合は適宜選択することができ、例えば、浸酸素層5は酸素原子を3〜8質量%含み、硬化層6は酸素原子を1.0〜5質量%含むものとすることができる。また、好例として、浸酸素層5は酸素原子を4〜6.9質量%(特に好ましくは、4.4〜6.6質量%)含み、硬化層6は酸素原子を1.8〜4.4質量%(特に好ましくは、2.0〜4.4質量%)含むものとすることができる。
また、β型チタン合金母材はTi-22V-4Alであるとき、前記浸酸素層5は、前記硬化層6及び前記熱処理後母材11よりもバナジウムの元素量が低くすることができる。このときの浸酸素層5はバナジウム原子を21〜23質量%含み、硬化層6はバナジウム原子を21.5〜25質量%含むものとすることができる。また、好例として、浸酸素層5はバナジウム原子を21.5〜22.5質量%(特に好ましくは、21.8〜22.2質量%)含み、硬化層6はバナジウム原子を21.8〜24質量%(特に好ましくは、22〜23質量%)含むものとすることができる。
本β型チタン合金は、一部位2の表面に任意の表面処理膜を備えていてもよい。この場合、一部位2の表面から順に、表面処理膜、浸酸素層5及び硬化層6が形成されている。表面処理膜は用途に応じて適宜選択され、陽極酸化被膜の他、PVDやCVDによって蒸着されたダイヤモンドライクカーボン(DLC)、TiN、TiC等を例示することができる。
本β型チタン合金は靱性と耐摩耗性の両方の特性が要求される各種分野で使用することができる。
β型チタン合金を備える物品としては、特に限定されず、一般的に金属を使用する物品に対して当該βチタン合金を使用することができる。具体的なβ型チタン合金を有する物品としては、機械部品、食品加工機器、調理器具、医療器具、工具等が挙げられる。
前記機械部品としては、自動車部品、航空機部品等に用いられる摺動部材等が挙げられる。自動車部品としては、エンジン部品、コンロッド及びバルブ等が挙げられる。航空機部品としては、エンジン部品が挙げられる。摺動部材は、摺動により接触する部分を硬化面21としたβチタン合金であって、例えば、ベアリング、ベアリングボール、ローラ、コンプレッサ用ベーン、ガスタービン翼及びカムローラ等が挙げられる。
前記食品加工機器としては、食品を加工する刃先等を硬化面21としたβチタン合金を用いた機器であって、肉用スライサー、野菜用切断機及びミキサー等が挙げられる。
前記調理器具としては、刃先等を硬化面21としたβチタン合金を用いた器具であって、包丁、調理バサミ、串、鍋及びフライパン等が挙げられる。
前記医療器具としては、刃先等を硬化面21としたβチタン合金を用いた器具であって、メス、ハサミ、注射針及びドリルビット等が挙げられる。
前記工具としては、刃先等を硬化面21としたβチタン合金を用いた道具であり、各種切削工具(バイト、フライス及びドリルビット等)などが挙げられる。
前記ドリルビット7は、軸部71、及び前記軸部71の先端に有する一部位2である刃先部75を備える(図3〜5を参照。)。ドリルビット7は、人体との親和性が望まれる医療用及び歯科用として好適に使用することができる。
一部位2は、前記軸部71の前記刃先部75から所定範囲の延設部73を含むことができる。延設部73は、浸酸素層5と熱処理後母材11との境界が切削を行う場所から離れて、刃先部75の浸酸素層5が前記境界から欠けにくくなり、ドリルビット7の耐久性を向上させることができる。延設部73が形成されている刃先部75からの長さ(延設長)は、例えば0.3〜12mm(より好ましくは1〜7mm)とすることができる。
また、ドリルビット等の刃先部を有する食品加工機器、調理器具、医療器具及び工具の用途においては、刃先部が磨耗したときに刃先部を再形成して再利用する需要がある。
β型チタン合金を有する前記用途の各物品(又はβ型チタン合金を有する物品中のβ型チタン合金部分)は、母材を加工して刃先部の形状を再形成した後、本β型チタン合金の製造方法の第2熱処理工程及び第3熱処理工程をこの順に実施することにより、硬化面に浸酸素層及び硬化層を形成され、高硬度の刃先等を再形成することができる。実施する第2熱処理工程及び第3熱処理工程は、本β型チタン合金を作製するときの第2熱処理工程及び第3熱処理工程と同じ条件であってもよいし、異なる条件であってもよい。
(実施例1)
本実施例1として、医療用又は歯科用に用いるためのドリルビットを作製した。ドリルビット7はβ型チタン合金Ti-22V-4Alを母材として熱処理をして作製されたドリルビットであり、図3〜5に示すように、略丸棒形状の軸部71と、軸部71の先端側に設けられる前記一部位2となる刃先部75とを備える。また、刃先部75には、軸部71の軸心上に位置する鋭端部76を備えている。更に、延設部73の延設長は、刃先部75の末端から約2mmとした。
このようなドリルビット7は、次に示すように作製した。
(1)母材形成工程
始めに、β型チタン合金Ti-22V-4Al(大同特殊鋼株式会社製DAT51)の丸棒材(直径約2mm)を加工して、軸部71と刃先部75の形状を形成した母材を作製した。
(2)第1熱処理工程
その後、第1熱処理工程として母材に対して約650℃の大気雰囲気の低周波加熱炉により0.5時間加熱することにより熱処理を行い、第1熱処理母材を得た。熱処理が完了した第1熱処理母材は、水没させて室温となるまで冷却した、また、熱処理に伴って表面に形成された酸化膜を、ショットブラストを用いて除去した。前記ショットブラストは、ノズル径がφ8mm、圧力が0.5MPaの条件で、粒度がJIS R6001に準拠したF46のアルミナ粒を用いた。また、ショットブラスト後、アセトンにより洗浄した。
(3)第2熱処理工程
次いで、第2熱処理工程として第1熱処理母材の一部位2である刃先部75及び延設部73までの範囲をレーザ照射して熱処理を行い、第2熱処理母材を得た。第2熱処理工程の熱処理は、720Wの半導体レーザ(LDL160-1000、レーザライン社製)を、表面温度が1000℃以上になるように、焦点距離が100mm、デフォーカスが15mm、スポット径が1mm、傾斜角度θが10度の条件で移動速度6mm/sで照射することで行った。また、レーザを照射している間、一部位2の表面に向けたノズル93からアルゴンガスを20L/分でレーザ照射部に吹きつけた。レーザ照射終了後、直ちにアルゴンガスの吹きつけを停止し、室温となるまで自然徐冷を行った。
(4)第3熱処理工程
その後、第3熱処理工程として第2熱処理母材を大気雰囲気の低周波加熱炉により約300℃、120時間加熱する熱処理を行い、β型チタン合金を得た。熱処理が完了した後は、室温となるまで自然徐冷を行った。
作製したβ型チタン合金であるドリルビット7を縦断した画像を図6及び図7に示す。図6及び図7に示すドリルビット7の先端から2mmの範囲の一部位2である刃先部75及び延設部73の硬化面21から順に形成された酸化被覆層4、浸酸素層5及び硬化層6は、それぞれ熱処理後母材11と異なる色彩を示し、その厚みは酸化被覆層4が約5μm、浸酸素層5が約40μmであった。また、一部位2の残部は全て硬化層6となっていた。
作成したドリルビット7において、酸化被覆層4表面と、浸酸素層5、硬化層6及び熱処理後母材11とのビッカース硬さを計測した。
酸化被覆層4(刃先部75)の表面のビッカース硬さは、約590HVであり、人骨に対して穿孔可能であることがわかる。また、表面から30μmの位置まで研磨して、浸酸素層5を露出させた後計測したところ、ビッカース硬さが約500〜約520HVであった。
更に、熱処理後母材11のビッカース硬さは、表面から0.5mmの位置で計測したところ約240HVであった。また、熱処理後母材11は、β相にα相が混在した結晶構造であり、穿孔によって破断することがない靱性を備えている。
このようなドリルビット7は、β型チタン合金の母材を熱処理して作製されており、超硬チップ等の小片等を接合していないため、前記小片等が接合箇所から脱落することがなく、手術等の用途に適している。また、チタン合金を用いることにより人体との相互作用が少ない。
更に、ドリルビット7を用いて、エポキシ樹脂とガラス短繊維からなる厚さ6mmの加圧整形板である皮質骨シート(SAW3401-04、株式会社アヴィス社製)に穴開けを5箇所行った後、刃先部75の観察を行ったところ、酸化被覆層4の剥離も見られず良好であった。一方、比較例として同形状のSUS420J2製ドリルビットを用いて同様の穴開けを行った後、刃先部75の観察を行ったところ、刃の大部分が欠ける等の磨耗が見られた。
作製したドリルビット7の浸酸素層5及び硬化層6との酸素量等の違いを確認するため、定量分析を行った。この定量分析は、電子プローブマイクロアナライザー(JXA-8530、日本電子製)を用い、線分析及び面分析を行った。ドリルビット7の硬化面21(実施例)、及び熱処理後母材11表面(比較例)から100μmまでの各々の酸素量変化及びバナジウム量を示す線分析グラフを図8及び図9に示す。また、ドリルビット7表面(図面上方)から深部(図面下方)におけるO、Ti、V、Alの変化を示す面分析グラフを図10及び図11に示す。
図8に示すとおり、実施例における酸素量は、浸酸素層5に相当する表面からの深さ5μm、10μmにおいてはそれぞれ6.6質量%、6.9質量%となっており、硬化層6に相当する深さ50μm以上の3.9〜2.7質量%、及び熱処理後母材11に相当する深さ55μm以上の2.7質量%以下に対して著しく大きな酸素が固溶した層が形成されていることがわかる。
一方、第2熱処理工程を行っていない比較例は、酸素量は深さにかかわらず大きな変化がなく、1.4〜1.8質量%の範囲内である。
このように、第2熱処理工程の有無により、酸素量が大きく変化したのは、第2熱処理工程により、一部位2の表層の結晶構造がβ相単体となり、酸化膜が形成されやすくなったためだと考えられる。
面分析の計測結果の画像を確認したところ、実施例において表層の酸化被覆層4(図10における上方)から深層の熱処理後母材11(図10における下方)に掛けて減少していることがわかる。一方、比較例の酸素量は図11に示すように、場所にかかわらず大きな変化がないことがわかる。
バナジウム量について図9に示すように、表層の21.8質量%から深層(100μm)の23質量%に掛けて漸次増加している。一方、比較例のバナジウム量は図10に示すように、図10に示すように、場所にかかわらず大きな変化がないことがわかる。
このような違いは第1熱処理工程でα相が析出するため、その影響により第2熱処理工程で残ったβ相の部分にバナジウムが集まっていると考えられる。
このように、酸素量が硬化層6より固溶により増えている浸酸素層5により、一部位2の硬度を高めつつ、酸化被覆層4及び浸酸素層5が硬化層6を介して靱性を備える熱処理後母材11に形成されているため、酸化被覆層4及び浸酸素層5が剥離しにくいβ型チタン合金とすることができる。また、このようなβ型チタン合金を用いるドリルビットは、刃先部75の硬度を高めつつ、靱性を備える熱処理後母材11により軸部71の靱性を高めることができるため、切削が容易で強靱なドリルビットとすることができる。
また、酸化被覆層4及び浸酸素層5と、熱処理後母材11との境界が、切削を行う刃先部75から離れており、切削中に切削対象と直接接触しない延設部73に位置しているため酸化被覆層4や浸酸素層5が境界から欠けにくくなるため、ドリルビットの耐久性を向上させることができる。
(実施例2)
次いで、前記実施例1のドリルビット7の刃先部75を研磨して酸化被覆層4及び浸酸素層5を全て除去した後、刃先部75の形状を加工して再形成した。その後、実施例1と同じ条件で第2熱処理工程及び第3熱処理工程を順次行い、酸化被覆層4、浸酸素層5及び硬化層6を再形成したドリルビット7’を作製した。このように刃先部75を再形成したドリルビット7’は、酸化被覆層4のビッカース硬さを測定したところ約590HVであり、第1熱処理工程を再実施することなくドリルビット7として再利用できることが分かった。
尚、本発明においては、以上に示した実施形態に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した態様とすることができる。本β型チタン合金及びその製造方法の実施例はドリルビット7であるがこれに限られず、包丁、メス、鋏、食品用カッター等の任意の刃物であってもよいし、機械部品等であってもよい。また、ドリルビット7は、鋭端部76の有無を問わない。
1;β型チタン合金、11;熱処理後母材、2;一部位、21;硬化面、4;酸化被覆層、5;浸酸素層、6;硬化層、
7;ドリルビット、71;軸部、72;排出溝、73;延設部、75;刃先部、76;鋭端部。

Claims (7)

  1. β型チタン合金母材を熱処理してその一部位の表面側から順に浸酸素層及び硬化層が形成されているβ型チタン合金を作製する製造方法であって、前記β型チタン合金母材を下記式(1)で表される温度H(℃)で熱処理する第1熱処理工程と、
    前記第1熱処理工程で前記熱処理された前記β型チタン合金母材の前記一部位を酸化雰囲気下で局所加熱する第2熱処理工程と、
    前記第2熱処理工程で熱処理された前記β型チタン合金母材を120時間以上熱処理して前記β型チタン合金を得る第3熱処理工程と、この順に実施することを特徴とするβ型チタン合金の製造方法。
    200≦H≦β−70 (1)
    (式中、βは、前記β型チタン合金のβ変態点(℃)を示す)
  2. 前記第2熱処理工程の前記局所加熱の間において、前記一部位に不活性ガスを継続して吹き付け、前記局所加熱の終了時に前記吹きつけを停止する請求項1記載のβ型チタン合金の製造方法。
  3. 前記第1熱処理工程は、前記熱処理後に前記β型チタン合金母材の表面に形成された酸化皮膜の除去を行う請求項1又は2に記載のβ型チタン合金の製造方法。
  4. 前記浸酸素層、前記硬化層、及びβ型チタン合金母材を熱処理した熱処理後母材の各々の酸素量は、前記浸酸素層が最も酸素量が多く、順次低くなる請求項1乃至3のいずれかに記載のβ型チタン合金の製造方法。
  5. β型チタン合金母材を熱処理して得られた熱処理後母材と、前記熱処理後母材の一部位の表面側から順次に形成された浸酸素層及び硬化層と、を備えるβ型チタン合金であって、
    前記浸酸素層、前記硬化層及び前記熱処理後母材の各々に含まれる酸素量は、前記浸酸素層が最も酸素量が多く、順次低くなることを特徴とするβ型チタン合金。
  6. 前記β型チタン合金母材は、22質量%のV、4質量%のAl及び残部のTiからなるTi-22V-4Alであり、
    前記浸酸素層は、前記硬化層及び前記熱処理後母材よりもバナジウム量が低くなっている請求項5に記載のβ型チタン合金。
  7. 前記一部位は、前記熱処理後母材の先端側に位置している請求項5又は6に記載のβ型チタン合金。
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