JP2020007625A - β型チタン合金及びその製造方法 - Google Patents
β型チタン合金及びその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2020007625A JP2020007625A JP2018131883A JP2018131883A JP2020007625A JP 2020007625 A JP2020007625 A JP 2020007625A JP 2018131883 A JP2018131883 A JP 2018131883A JP 2018131883 A JP2018131883 A JP 2018131883A JP 2020007625 A JP2020007625 A JP 2020007625A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- titanium alloy
- heat treatment
- type titanium
- base material
- oxygen
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
Landscapes
- Solid-Phase Diffusion Into Metallic Material Surfaces (AREA)
Abstract
Description
このようなチタン合金は、摺動部材等の機械部品や、医療及び食品用の刃物等に使用されている。これら用途における摩耗に対する対策として、チタン合金の必要な部分に良好な耐摩耗性を付与するための手段が求められている。チタン合金のより具体的な耐摩耗性の付与手段として、複数種類の熱処理を順次行うことによって、必要な箇所を部分的に硬質化することができる手段を提案している(特許文献1を参照。)。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、部分的に高硬度の表面部位を形成することができるβ型チタン合金及びその製造方法を提供することを目的とする。
1.β型チタン合金母材を熱処理してその一部位の表面側から順に浸酸素層及び硬化層が形成されているβ型チタン合金を作製する製造方法であって、前記β型チタン合金母材を下記式(1)で表される温度HT(℃)で熱処理する第1熱処理工程と、前記第1熱処理工程で前記熱処理された前記β型チタン合金母材の前記一部位を酸化雰囲気下で局所加熱する第2熱処理工程と、前記第2熱処理工程で熱処理された前記β型チタン合金母材を120時間以上熱処理して前記β型チタン合金を得る第3熱処理工程と、この順に実施することを特徴とするβ型チタン合金の製造方法。
200≦HT≦βT−70 (1)
(式中、βTは、前記β型チタン合金のβ変態点(℃)を示す)
2.前記第2熱処理工程の前記局所加熱の間において、前記一部位に不活性ガスを継続して吹き付け、前記局所加熱の終了時に前記吹きつけを停止する前記1.記載のβ型チタン合金の製造方法。
3.前記第1熱処理工程は、前記熱処理後に前記β型チタン合金母材の表面に形成された酸化皮膜の除去を行う前記1.又は2.に記載のβ型チタン合金の製造方法。
4.前記浸酸素層、前記硬化層、及びβ型チタン合金母材を熱処理した熱処理後母材の各々の酸素量は、前記浸酸素層が最も酸素量が多く、順次低くなる前記1.乃至3.のいずれかに記載のβ型チタン合金の製造方法。
5.β型チタン合金母材を熱処理して得られた熱処理後母材と、前記熱処理後母材の一部位の表面側から順次に形成された浸酸素層及び硬化層と、を備えるβ型チタン合金であって、前記浸酸素層、前記硬化層及び前記熱処理後母材の各々に含まれる酸素量は、前記浸酸素層が最も酸素量が多く、順次低くなることを特徴とするβ型チタン合金。
6.前記β型チタン合金母材は、22質量%のV、4質量%のAl及び残部のTiからなるTi-22V-4Alであり、前記浸酸素層は、前記硬化層及び前記熱処理後母材よりもバナジウム量が低くなっている前記5.に記載のβ型チタン合金。
7.前記一部位は、前記熱処理後母材の先端側に位置している前記5.又は前記6.に記載のβ型チタン合金。
前記第1熱処理工程は、前記熱処理後に前記β型チタン合金母材の表面に形成された酸化皮膜の除去を行う場合は、酸化皮膜の除去により第2熱処理工程による母材への酸素の進入を用意にして、浸酸素層層の形成を容易にすることができる。
前記浸酸素層、前記硬化層、及びβ型チタン合金母材を熱処理した熱処理後母材の各々の酸素の元素量は、前記浸酸素層が最も酸素量が多く、この順に低くなる場合は、耐摩耗性に優れる浸酸素層を備え、他の部位は十分な靱性を得ることができる。
また、前記β型チタン合金母材は、22質量%のV、4質量%のAl及び残部のTiからなるTi-22V-4Alであり、前記浸酸素層は、前記硬化層及び前記熱処理後母材よりもバナジウム量が低くなっている場合は、第1熱処理工程により、α相の析出が十分にされており、優れた耐摩耗性を備えた硬化層を得ることができる。
前記一部位は、前記熱処理後母材の先端側に位置している場合は、刃物の刃先等の高硬度が必要な箇所に浸酸素層及び硬化層を形成して硬度を高めることができ、多くの用途に適したβ型チタン合金とすることができる。
作製されたβ型チタン合金1は、β型チタン合金母材を熱処理して得られた熱処理後母材11と、前記熱処理後母材11の一部位2の表面である硬化面21側から順次に形成された浸酸素層5及び硬化層6と、を備える(図1を参照)。また、一部位2の表面に酸化被覆層4が形成されていてもよい。この場合、一部位2の表面から順に、酸化被覆層4、浸酸素層5及び硬化層6が形成されている。
より具体的なβ型チタン合金としては、Ti-V-Al系、Ti-V-Cr-Al系、Ti-Mo-V-Fe-Al系、Ti-Al-V-Cr-Mo-Zr系、Ti-Mo-Zr系、Ti-Mo-Zr-Al系、Ti-Fe系、Ti-Fe-Al系、Ti-Mo-Zr-Sn系、Ti-V-Zr-Al-Sn系、Ti-V-Cr-Al-Sn系、Ti-Al-V-Fe系、Ti-Mo-Nb-Al-Si系、Ti-Fe-Cr-Al系、Ti-Mo-Zr-Fe系、Ti-Mo系、Ti-Nb-Zr-Ta系、T-Nb系、Ti-V-Mo-Cr-Al系、Ti-V-Mo-Cr-Fe-Al系及びTi-Al-Sn-Cr-Mo-Zr-Fe系等の2元系以上のβ型チタン合金を挙げることができる。
また、前記β型チタン合金のより具体的なものとしては、例えば、Ti-22V-4Al、Ti-15V-6Cr-4Al、Ti-13V-11Cr-3Al、Ti-8Mo-8V-2Fe-3Al、Ti-3Al-8V-6Cr-4Mo-4Zr、Ti-15Mo-5Zr、Ti-15Mo-5Zr-3Al、Ti-2〜15Fe、Ti-2〜15Fe-1〜10Al、Ti-1Al-8V-5Fe、Ti-15Mo-2.7Nb-3Al-0.2Si、Ti-4.3Fe-7.1Cr-3Al、Ti-12Mo-6Zr-2Fe、Ti-15Mo、Ti-35Nb-7Zr-5Ta、Ti-45Nb、Ti-10V-2Fe-3Al及びTi-5V-5Mo-1Cr-1Fe-5Alを挙げることができる。これらのうち、Ti-22V-4Al(β変態点:730℃)、Ti-15V-6Cr-4Al(β変態点:730℃)、Ti-4Fe(β変態点:830℃)、Ti-5Fe 、Ti-4Fe-1Al、Ti-5Fe-1Al、又はTi-15Mo-5Zr-3Alが特に好例として挙げることができる。
第1熱処理工程は、母材を温度HTに加熱後、冷却する熱処理である溶体化を行い、熱処理された母材(以下、第1熱処理母材とする)を得る工程である。
前記熱処理は、母材全体を加熱する全体加熱であればよく、例えば低周波加熱炉等、ガス炉、電気炉等を挙げることができる。
前記熱処理の温度HT(℃)は、下記式(1)を満たす温度である。
200≦HT≦βT−70 (1)
(式中、βTは、前記β型チタン合金のβ変態点(℃)を示す)
通常の溶体化は融点直下となるβ変態点以上の温度で行うが、第1熱処理工程は、前記式(1)に示すβ変態点以下の温度で行うことによって、α相が全体に均等に析出し、母材の結晶構造を、β相(体心立方晶)にα相(最密立方晶)が混在した結晶構造にすることができ、通常の溶体化よりも硬度を高めたチタン合金を得ることができる。
熱処理温度HTがβT−70℃よりも高い場合、α相の析出比率が少なくなるため、第3熱処理工程での熱処理後で構造体としての靱性を保つことに寄与するα相が第1熱処理工程で得られにくく、β単相(又はそれに近い結晶構造)が第1熱処理工程で得られるおそれがある。一方、熱処理温度HTが200℃よりも低い場合、上記熱処理による効果が得られないおそれがある。そのため、熱処理温度HTは上記式(1)とする。また、熱処理温度HTの上限値はβT−80℃が好ましく、HTの下限値は500℃がより好ましい。このような温度範囲で第1熱処理工程を行うと、例えば母材のビッカース硬さが230HVのとき、230〜350HVの第1熱処理母材を得ることができる。
第1熱処理工程の熱処理雰囲気は特に限定されず、酸化雰囲気(大気雰囲気も含む)、不活性ガス雰囲気下(例えばアルゴン等の希ガス雰囲気下を例示することができる)及び真空下等を挙げることができる。また、酸化雰囲気下で第1熱処理工程を行い、第1熱処理母材の表面に酸化皮膜が形成された場合、形成された酸化皮膜を除去することが好ましい。
熱処理後の母材の冷却方法は特に問わず、例えば母材を水中や油中に投入して冷却する液冷等を挙げることができる。
第2熱処理工程は、第1熱処理工程で得られた第1熱処理母材の一部位を酸化雰囲気下で局所加熱した母材(以下、第2熱処理母材とする)を得る工程である。局所加熱によって一部位2に限定して加熱し、その後冷却することにより、前記一部位2が、第3熱処理工程により表面側から順に浸酸素層5及び硬化層6となるβ単相からなる準硬化層となる。このとき、表面に酸化被覆層4が形成されていてもよい。
なお、当該局所加熱の加熱温度は限定的ではないが、当該局所加熱によって第1熱処理母材の一部位は1000℃以上(好ましくは、1300℃以上)にまで加熱されるものと推定される。
前記高周波誘導加熱は、交流電源による高周波電流の誘導加熱で加熱することができればよく、具体的な種類は特に問わず、市販品を使用することができる。
前記ガスバーナー加熱は、燃料ガスとしてメタン、エタン、プロパン及びブタン等の炭化水素系ガスを空気と混合して燃焼させて加熱することができればよく、具体的な種類は特に問わず、市販品を使用することができる。
電子ビーム加熱は、真空中で高密度に収束させた電子ビームを対象物に照射して加熱することができればよく、具体的な種類は特に問わず、市販品を使用することができる。
前記不活性ガスの吹き付け量は特に限定されないが、例えば、アルゴンガスを吹き付ける場合、口径φ6mmのノズルから10〜40L/分(より好ましくは20〜35L/分)の条件を挙げることができる。
通常、チタンはその表面が酸素とすぐに反応してTiO2となり、酸素進入を妨げる酸化被覆層となるため、酸素が母材の深層に進入しにくい。そこで、不活性ガスを加熱部位に吹きかけることで加熱部位付近の酸素分圧を下げて、表面の酸化被覆層の形成を抑制、又は形成された酸化被覆層の厚みが厚くなることを抑制することにより、酸素が母材のより深層に進入し易くすることができる。
そして、酸素が母材に進入した場合、化合してTiO2を形成せず酸素がチタン合金中に固溶した(つまり浸酸素層が形成された)状態になる。また、単に雰囲気中の酸素分圧を下げる場合は、酸素の侵入は時間がかかる上、結晶粒の粗大化の問題があるが、不活性ガスの吹きつけを行う本方法は、短時間処理で浸酸素層が厚く形成することができ、結晶粒の粗大化も抑えられると考えられる。
第2熱処理工程で得られた第2熱処理母材の一部位2を120時間以上熱処理して浸酸素層5及び硬化層6が形成されているβ型チタン合金1を得る工程である。当該第3熱処理工程の熱処理により、第2熱処理工程で得られた準硬化層(β単相)の硬化が促進(時効硬化ともいう。)されて、酸素が固溶している浸酸素層5、及び残部の硬化層6となる。一方、α相とβ相の2相を含む第2熱処理母材は、上記熱処理による硬化の進行は起きず熱処理後母材11となる。
そのため、構造体としての靱性を保ちつつ、優れた耐摩耗性を有するβ型チタン合金(具体的には、軟らかい熱処理後母材11と硬くて厚い浸酸素層5及び硬化層6を組み合わせたβ型チタン合金)が好適に得られる。なお、当該第3熱処理工程の示すような熱処理は、一般的に時効処理とも呼ばれている。
第3熱処理工程における熱処理の温度は、200〜500℃が好ましく、200〜450℃がより好ましい。
熱処理の時間は120時間以上とすることができる。第3熱処理工程の熱処理時間が当該範囲であることにより、浸酸素層5の硬さが400HV以上になり、耐摩耗性が向上する。なお、当該熱処理の時間の上限は、特に限定はないが、硬さが下がる過時効となる時間を上限とすることが好ましく、当該時間は例えば1000時間程度とすることができる。
前記製造方法により形成された酸化被覆層4は、一部位2の表層に形成されており、チタンが酸化して形成された主にTiO2からなる酸化層である。酸化被覆層4の厚さは用途に応じて適宜設定されるが、例えば20μm以下、好ましくは5μm以下とすることができる。前記厚みに抑えることにより、酸化被覆層4が剥離することなく、耐摩耗性を維持することができる。
浸酸素層5は、表面、又は酸化被覆層4の深層側に形成された、β相の結晶構造に酸素を固溶させたチタン合金の層である。
浸酸素層5の硬度は用途に応じて適宜設定されるが、通常500〜850HV(より好ましくは更に好ましくは550〜800HV)とすることができる。浸酸素層5の厚みは、5〜100μm(更に好ましくは10〜70μm、特に好ましくは10〜50μm)を挙げることができる。
前記製造方法により形成された硬化層6は、浸酸素層5の深層側に形成された、結晶構造がβ相からなるチタン合金の層である。硬化層6の硬度は適宜設定されるが、通常400〜550HVとすることができる。硬化層6の厚さは用途に応じて適宜設定されるが、例えば30μm〜3.5mmを挙げることができる。
一部位2に負荷がかかり、酸化被覆層4や浸酸素層5に面力が加わった場合、浸酸素層5が、靱性が高い熱処理後母材11上に直接形成されていると、熱処理後母材11に前記面力により変形して各層の境界に力が加わり、浸酸素層5が熱処理後母材11から剥離したり、酸化被膜層4が浸酸素層5から剥離したりしやすくなる。一方、本チタン合金は、浸酸素層5が熱処理後母材11より高硬度の硬化層6上に形成されているため、面力が加わっても硬化層6が変形しにくく、その上に形成されている浸酸素層5及び酸化被膜層4の剥離を防止することができる。
β型チタン合金1の熱処理後母材11は、結晶構造がβ相(体心立方晶)にα相(最密立方晶)が混在したチタン合金の層である。
熱処理後母材11の硬度は適宜設定されるが、通常ビッカース硬さが200〜380HV(より好ましくは230〜350HV)とすることができる。
浸酸素層5及び硬化層6に固溶する酸素の割合は適宜選択することができ、例えば、浸酸素層5は酸素原子を3〜8質量%含み、硬化層6は酸素原子を1.0〜5質量%含むものとすることができる。また、好例として、浸酸素層5は酸素原子を4〜6.9質量%(特に好ましくは、4.4〜6.6質量%)含み、硬化層6は酸素原子を1.8〜4.4質量%(特に好ましくは、2.0〜4.4質量%)含むものとすることができる。
β型チタン合金を備える物品としては、特に限定されず、一般的に金属を使用する物品に対して当該βチタン合金を使用することができる。具体的なβ型チタン合金を有する物品としては、機械部品、食品加工機器、調理器具、医療器具、工具等が挙げられる。
前記食品加工機器としては、食品を加工する刃先等を硬化面21としたβチタン合金を用いた機器であって、肉用スライサー、野菜用切断機及びミキサー等が挙げられる。
前記調理器具としては、刃先等を硬化面21としたβチタン合金を用いた器具であって、包丁、調理バサミ、串、鍋及びフライパン等が挙げられる。
前記医療器具としては、刃先等を硬化面21としたβチタン合金を用いた器具であって、メス、ハサミ、注射針及びドリルビット等が挙げられる。
前記ドリルビット7は、軸部71、及び前記軸部71の先端に有する一部位2である刃先部75を備える(図3〜5を参照。)。ドリルビット7は、人体との親和性が望まれる医療用及び歯科用として好適に使用することができる。
β型チタン合金を有する前記用途の各物品(又はβ型チタン合金を有する物品中のβ型チタン合金部分)は、母材を加工して刃先部の形状を再形成した後、本β型チタン合金の製造方法の第2熱処理工程及び第3熱処理工程をこの順に実施することにより、硬化面に浸酸素層及び硬化層を形成され、高硬度の刃先等を再形成することができる。実施する第2熱処理工程及び第3熱処理工程は、本β型チタン合金を作製するときの第2熱処理工程及び第3熱処理工程と同じ条件であってもよいし、異なる条件であってもよい。
本実施例1として、医療用又は歯科用に用いるためのドリルビットを作製した。ドリルビット7はβ型チタン合金Ti-22V-4Alを母材として熱処理をして作製されたドリルビットであり、図3〜5に示すように、略丸棒形状の軸部71と、軸部71の先端側に設けられる前記一部位2となる刃先部75とを備える。また、刃先部75には、軸部71の軸心上に位置する鋭端部76を備えている。更に、延設部73の延設長は、刃先部75の末端から約2mmとした。
(1)母材形成工程
始めに、β型チタン合金Ti-22V-4Al(大同特殊鋼株式会社製DAT51)の丸棒材(直径約2mm)を加工して、軸部71と刃先部75の形状を形成した母材を作製した。
(2)第1熱処理工程
その後、第1熱処理工程として母材に対して約650℃の大気雰囲気の低周波加熱炉により0.5時間加熱することにより熱処理を行い、第1熱処理母材を得た。熱処理が完了した第1熱処理母材は、水没させて室温となるまで冷却した、また、熱処理に伴って表面に形成された酸化膜を、ショットブラストを用いて除去した。前記ショットブラストは、ノズル径がφ8mm、圧力が0.5MPaの条件で、粒度がJIS R6001に準拠したF46のアルミナ粒を用いた。また、ショットブラスト後、アセトンにより洗浄した。
次いで、第2熱処理工程として第1熱処理母材の一部位2である刃先部75及び延設部73までの範囲をレーザ照射して熱処理を行い、第2熱処理母材を得た。第2熱処理工程の熱処理は、720Wの半導体レーザ(LDL160-1000、レーザライン社製)を、表面温度が1000℃以上になるように、焦点距離が100mm、デフォーカスが15mm、スポット径が1mm、傾斜角度θが10度の条件で移動速度6mm/sで照射することで行った。また、レーザを照射している間、一部位2の表面に向けたノズル93からアルゴンガスを20L/分でレーザ照射部に吹きつけた。レーザ照射終了後、直ちにアルゴンガスの吹きつけを停止し、室温となるまで自然徐冷を行った。
その後、第3熱処理工程として第2熱処理母材を大気雰囲気の低周波加熱炉により約300℃、120時間加熱する熱処理を行い、β型チタン合金を得た。熱処理が完了した後は、室温となるまで自然徐冷を行った。
酸化被覆層4(刃先部75)の表面のビッカース硬さは、約590HVであり、人骨に対して穿孔可能であることがわかる。また、表面から30μmの位置まで研磨して、浸酸素層5を露出させた後計測したところ、ビッカース硬さが約500〜約520HVであった。
更に、熱処理後母材11のビッカース硬さは、表面から0.5mmの位置で計測したところ約240HVであった。また、熱処理後母材11は、β相にα相が混在した結晶構造であり、穿孔によって破断することがない靱性を備えている。
更に、ドリルビット7を用いて、エポキシ樹脂とガラス短繊維からなる厚さ6mmの加圧整形板である皮質骨シート(SAW3401-04、株式会社アヴィス社製)に穴開けを5箇所行った後、刃先部75の観察を行ったところ、酸化被覆層4の剥離も見られず良好であった。一方、比較例として同形状のSUS420J2製ドリルビットを用いて同様の穴開けを行った後、刃先部75の観察を行ったところ、刃の大部分が欠ける等の磨耗が見られた。
一方、第2熱処理工程を行っていない比較例は、酸素量は深さにかかわらず大きな変化がなく、1.4〜1.8質量%の範囲内である。
このように、第2熱処理工程の有無により、酸素量が大きく変化したのは、第2熱処理工程により、一部位2の表層の結晶構造がβ相単体となり、酸化膜が形成されやすくなったためだと考えられる。
このような違いは第1熱処理工程でα相が析出するため、その影響により第2熱処理工程で残ったβ相の部分にバナジウムが集まっていると考えられる。
また、酸化被覆層4及び浸酸素層5と、熱処理後母材11との境界が、切削を行う刃先部75から離れており、切削中に切削対象と直接接触しない延設部73に位置しているため酸化被覆層4や浸酸素層5が境界から欠けにくくなるため、ドリルビットの耐久性を向上させることができる。
次いで、前記実施例1のドリルビット7の刃先部75を研磨して酸化被覆層4及び浸酸素層5を全て除去した後、刃先部75の形状を加工して再形成した。その後、実施例1と同じ条件で第2熱処理工程及び第3熱処理工程を順次行い、酸化被覆層4、浸酸素層5及び硬化層6を再形成したドリルビット7’を作製した。このように刃先部75を再形成したドリルビット7’は、酸化被覆層4のビッカース硬さを測定したところ約590HVであり、第1熱処理工程を再実施することなくドリルビット7として再利用できることが分かった。
7;ドリルビット、71;軸部、72;排出溝、73;延設部、75;刃先部、76;鋭端部。
Claims (7)
- β型チタン合金母材を熱処理してその一部位の表面側から順に浸酸素層及び硬化層が形成されているβ型チタン合金を作製する製造方法であって、前記β型チタン合金母材を下記式(1)で表される温度HT(℃)で熱処理する第1熱処理工程と、
前記第1熱処理工程で前記熱処理された前記β型チタン合金母材の前記一部位を酸化雰囲気下で局所加熱する第2熱処理工程と、
前記第2熱処理工程で熱処理された前記β型チタン合金母材を120時間以上熱処理して前記β型チタン合金を得る第3熱処理工程と、この順に実施することを特徴とするβ型チタン合金の製造方法。
200≦HT≦βT−70 (1)
(式中、βTは、前記β型チタン合金のβ変態点(℃)を示す) - 前記第2熱処理工程の前記局所加熱の間において、前記一部位に不活性ガスを継続して吹き付け、前記局所加熱の終了時に前記吹きつけを停止する請求項1記載のβ型チタン合金の製造方法。
- 前記第1熱処理工程は、前記熱処理後に前記β型チタン合金母材の表面に形成された酸化皮膜の除去を行う請求項1又は2に記載のβ型チタン合金の製造方法。
- 前記浸酸素層、前記硬化層、及びβ型チタン合金母材を熱処理した熱処理後母材の各々の酸素量は、前記浸酸素層が最も酸素量が多く、順次低くなる請求項1乃至3のいずれかに記載のβ型チタン合金の製造方法。
- β型チタン合金母材を熱処理して得られた熱処理後母材と、前記熱処理後母材の一部位の表面側から順次に形成された浸酸素層及び硬化層と、を備えるβ型チタン合金であって、
前記浸酸素層、前記硬化層及び前記熱処理後母材の各々に含まれる酸素量は、前記浸酸素層が最も酸素量が多く、順次低くなることを特徴とするβ型チタン合金。 - 前記β型チタン合金母材は、22質量%のV、4質量%のAl及び残部のTiからなるTi-22V-4Alであり、
前記浸酸素層は、前記硬化層及び前記熱処理後母材よりもバナジウム量が低くなっている請求項5に記載のβ型チタン合金。 - 前記一部位は、前記熱処理後母材の先端側に位置している請求項5又は6に記載のβ型チタン合金。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018131883A JP7107501B2 (ja) | 2018-07-11 | 2018-07-11 | β型チタン合金及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018131883A JP7107501B2 (ja) | 2018-07-11 | 2018-07-11 | β型チタン合金及びその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2020007625A true JP2020007625A (ja) | 2020-01-16 |
JP7107501B2 JP7107501B2 (ja) | 2022-07-27 |
Family
ID=69150890
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2018131883A Active JP7107501B2 (ja) | 2018-07-11 | 2018-07-11 | β型チタン合金及びその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP7107501B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN112191843A (zh) * | 2020-08-26 | 2021-01-08 | 东莞材料基因高等理工研究院 | 一种激光选区熔化制备Ti-1Al-8V-5Fe合金材料的方法 |
Citations (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH07143904A (ja) * | 1993-11-22 | 1995-06-06 | Daido Steel Co Ltd | スパイクピンとその製造方法 |
JP2005248256A (ja) * | 2004-03-04 | 2005-09-15 | Shimano Inc | ベータ型チタンの表面硬化処理方法およびベータ型チタン系部材、ベータ型チタンの表面硬化処理装置 |
WO2012108319A1 (ja) * | 2011-02-10 | 2012-08-16 | 新日本製鐵株式会社 | 疲労強度に優れた耐摩耗性チタン合金部材 |
JP2015190032A (ja) * | 2014-03-28 | 2015-11-02 | 地方独立行政法人大阪府立産業技術総合研究所 | β型チタン合金及びその製造方法 |
-
2018
- 2018-07-11 JP JP2018131883A patent/JP7107501B2/ja active Active
Patent Citations (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH07143904A (ja) * | 1993-11-22 | 1995-06-06 | Daido Steel Co Ltd | スパイクピンとその製造方法 |
JP2005248256A (ja) * | 2004-03-04 | 2005-09-15 | Shimano Inc | ベータ型チタンの表面硬化処理方法およびベータ型チタン系部材、ベータ型チタンの表面硬化処理装置 |
WO2012108319A1 (ja) * | 2011-02-10 | 2012-08-16 | 新日本製鐵株式会社 | 疲労強度に優れた耐摩耗性チタン合金部材 |
JP2015190032A (ja) * | 2014-03-28 | 2015-11-02 | 地方独立行政法人大阪府立産業技術総合研究所 | β型チタン合金及びその製造方法 |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN112191843A (zh) * | 2020-08-26 | 2021-01-08 | 东莞材料基因高等理工研究院 | 一种激光选区熔化制备Ti-1Al-8V-5Fe合金材料的方法 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP7107501B2 (ja) | 2022-07-27 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP0181713B1 (en) | Method for heat treating cast titanium articles | |
JP2020509152A (ja) | 粉末床溶融結合のための3d印刷可能硬質鉄系金属合金 | |
JP2006291344A (ja) | Ni基合金部材とその製造法及びタービンエンジン部品並びに溶接材料とその製造法 | |
JP5487376B2 (ja) | レーザクラッディング方法及び工具材 | |
JPS61213360A (ja) | 分散硬化された超合金からなる構造体部品の酸化‐及び腐食抵抗性を表面処理によつて高める方法 | |
CN108883469B (zh) | 硬质合金体的表面硬化 | |
US6814820B2 (en) | Heat treatment of titanium-alloy article having martensitic structure | |
US11542582B2 (en) | Method for producing a component of gamma—TiAl and component produced therefrom | |
JP7107501B2 (ja) | β型チタン合金及びその製造方法 | |
CN111979401A (zh) | 一种优化钛合金线性摩擦焊接头显微硬度的热处理方法 | |
JP5660587B2 (ja) | サーメット皮膜及び該皮膜を有する被覆金属体、サーメット皮膜の製造方法、及び被覆金属体の製造方法 | |
RU2550459C2 (ru) | СПОСОБ ПРОИЗВОДСТВА ДЕТАЛЕЙ, ПОЛУЧАЕМЫХ СПЕКАНИЕМ СПЛАВОВ Co-Cr-Мo, ИМЕЮЩИХ УЛУЧШЕННУЮ ПЛАСТИЧНОСТЬ ПРИ ВЫСОКИХ ТЕМПЕРАТУРАХ | |
CN115094413A (zh) | 基于激光熔覆钛合金粉末的高端纯钛刀具及其制备方法 | |
RU2729477C2 (ru) | Сплав с высокой стойкостью к окислению и применения для газовых турбин с использованием этого сплава | |
JP2017048410A (ja) | α+β型チタン合金の熱処理方法、及びその方法を用いて製造されたα+β型チタン合金製品 | |
US20110053752A1 (en) | Method of including features in an article manufactured from maraging stainless steel | |
JPWO2003091468A1 (ja) | チタン合金の鍛造方法並びにチタン合金鍛造材 | |
JP6296234B2 (ja) | β型チタン合金及びその製造方法 | |
US20090159162A1 (en) | Methods for improving mechanical properties of a beta processed titanium alloy article | |
CN114934247A (zh) | 一种适用于规则轮廓tc4钛合金的表面高频感应处理硬化方法 | |
US20090255609A1 (en) | Triple phase titanium fan and compressor blade and methods therefor | |
JPH06256886A (ja) | 耐摩耗性に優れたTi合金部材とその製造方法 | |
JP2005023339A (ja) | 傾斜複合材の製造方法 | |
EP1662019A1 (en) | Method of producing defect free deposited titanium alloys | |
RU2751039C1 (ru) | Сплав с высокой стойкостью к окислению и применения для газовых турбин с использованием этого сплава |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20210427 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20220121 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20220201 |
|
A601 | Written request for extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601 Effective date: 20220322 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20220601 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20220628 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20220705 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 7107501 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |