JP2020007601A - 抵抗体材料、抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲット、抵抗薄膜及び薄膜抵抗器、並びに抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法及び抵抗薄膜の製造方法 - Google Patents

抵抗体材料、抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲット、抵抗薄膜及び薄膜抵抗器、並びに抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法及び抵抗薄膜の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】抵抗薄膜に対する熱処理を比較的低い温度で施しても、比抵抗、高温安定性のいずれにも優れた抵抗薄膜及び抵抗薄膜を備えた薄膜抵抗器、抵抗薄膜の製造のための抵抗体材料、抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲット、並びに抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲット及び抵抗薄膜の製造方法の提供。【解決手段】抵抗体材料はCr、AlおよびYから選択される1種以上の添加元素を10〜60質量%含有し、残部がNiと不可避不純物からなるNi合金粉末に、平均粒径30μm以上200μm以下の純粋なSiO2からなるガラス粉末を3〜20質量%含有する混合粉末の焼結体からなる。【選択図】図2

Description

本発明は、電子部品としての薄膜抵抗器、薄膜抵抗器を得るために用いられる抵抗薄膜、抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲット及び抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲットとなる抵抗体材料、並びに抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲット及び抵抗薄膜の製造方法に関する。
チップ抵抗器、精密抵抗器、ネットワーク抵抗器、高圧抵抗器などの抵抗器、側温抵抗体、感温抵抗器などの温度センサならびにハイブリッドICとその複合モジュール製品などの電子部品には、抵抗薄膜を使用した薄膜抵抗器が用いられている。
近年、電気・電子製品の小型化、高集積化に伴い、薄膜抵抗器を小型化することが求められている。電子部品の小型化、高機能化に伴い、電子部品の使用環境は従来よりも高温化しており、薄膜抵抗器に用いる抵抗薄膜には、特に抵抗薄膜を構成する抵抗体材料の高い比抵抗、及び、高温に保持された状態における経時的抵抗変化率が小さいという高温安定性がより強く求められている。
薄膜抵抗器においては、多くの場合、抵抗薄膜を形成するための抵抗体材料として、Ta合金、TaN化合物およびNi−Cr系合金が用いられている。
このNi−Cr系合金を用いた抵抗薄膜は、金属の特性であるオーミック特性を有し、雰囲気温度の変化に対して抵抗値の変化が少なく、熱的安定性が高いという特徴を有するため、薄膜抵抗器に一般的に使用されている。
しかしながら、Ni−Cr系合金には、抵抗体材料としては比抵抗が低いという問題がある。この問題に対しては、例えば、次の特許文献1に、Ni−Cr系合金にTa、Al、Moを添加して比抵抗を高めた抵抗薄膜が提案されている。また更に、従来よりも低い温度で熱処理を施しても、薄膜抵抗の比抵抗を高める方法として、例えば、次の特許文献2に、Cr、AlおよびYから選択される1種以上の添加元素を含有するNi合金粉末に、SiO2(シリカ)を主成分とし、B、Mg、Ca、Ba、Al、Zrおよびこれらの酸化物から選択される1種以上を0〜90質量%含有するシリケート系ガラス粉末を添加する工程を有する抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法が提案されている。
特開2008−010604号公報 特開2011−119234号公報
特許文献1に提案されているNi−Cr系合金にTa、Al、Moを添加した抵抗薄膜や、特許文献2に提案されているCr、AlおよびYから選択される1種以上の添加元素を含有するNi合金粉末に、SiO2(シリカ)を主成分とし、B、Mg、Ca、Ba、Al、Zrおよびこれらの酸化物から選択される1種以上を含有するシリケート系ガラス粉末を添加して製造された抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲットを用いて形成した抵抗薄膜は、従来のNi−Cr合金による抵抗薄膜に比べて、高い比抵抗を得ることができる。
ところで、特許文献1に提案されているNi−Cr系合金にTa、Al、Moを添加した抵抗被膜は、所定の比抵抗及び抵抗変化率を得るために500℃を超える高温での熱処理が必要となる。
しかし、近年、所定の比抵抗及び高温安定性を得るための熱処理温度を低くすることが求められている。
しかるに、特許文献2に提案されている抵抗被膜は、特許文献1に提案されている抵抗被膜に比べて低い温度で熱処理を施しても、特許文献1に提案されているNi−Cr系合金にTa、Al、Moを添加した抵抗被膜と同様の高い比抵抗、優れた高温安定性が得られる。
しかし、近年、電子部品の小型化に伴い、特許文献2に提案されている抵抗薄膜と同様の比較的低い温度で熱処理を施した場合において、特許文献2に提案されている抵抗薄膜に比べて、更なる高抵抗、及び、更なる高温安定性を満たす抵抗被膜が求められている。
本発明はこのような問題を鑑みてなされたものであり、抵抗被膜に対する熱処理を比較的低い温度で施しても、従来の抵抗薄膜に比べて高い比抵抗、及び高温安定性を有する抵抗薄膜及び抵抗薄膜を備えた薄膜抵抗器、抵抗薄膜を製造するための薄膜抵抗体材料、抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲット、並びに抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲット及び抵抗薄膜の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、特許文献2に提案されている抵抗薄膜と同様、従来よりも抵抗被膜に対する熱処理を比較的低い温度で施した場合において、特許文献2に提案されている抵抗薄膜に比べて更なる高抵抗、及び、更なる高温安定性を有するNi−Cr合金を用いた抵抗薄膜について鋭意検討評価した。その結果、本発明者らは、Ni−Cr合金粉末に、B、Mg、Ca、Ba、Al、Zrおよびこれらの酸化物を含まない、平均粒径が所定範囲内の純粋なSiO2(シリカ)のみのガラス粉末を含有するNi−Cr系合金材料を用いて形成された抵抗薄膜とすることにより、SiO2(シリカ)を主成分とし、B、Mg、Ca、Ba、Al、Zrおよびこれらの酸化物を含有するシリケート系ガラス入りのNi−Cr系合金等に比べて高い比抵抗、及び高温安定性を有することを見出した。
すなわち、本発明による抵抗体材料は、Cr、AlおよびYから選択される1種以上の添加元素を10質量%以上60質量%以下含有し、残部がNiと不可避不純物からなるNi合金粉末に、平均粒径30μm以上200μm以下の純粋なSiO2からなるガラス粉末を3質量%以上20質量%以下含有する混合粉末の焼結体からなることを特徴とする。
また、本発明による抵抗体材料の1形態である、抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲットは、Cr、AlおよびYから選択される1種以上の添加元素を10質量%以上60質量%以下含有し、残部がNiと不可避不純物からなるNi合金粉末に、平均粒径30μm以上200μm以下の純粋なSiO2からなるガラス粉末を3質量%以上20質量%以下含有する混合粉末の焼結体からなることを特徴とする。
また、本発明による抵抗薄膜は、Cr、AlおよびYから選択される1種以上の添加元素を10質量%以上60質量%以下含有し、残部がNiと不可避不純物からなるNi合金粉末に、平均粒径30μm以上200μm以下の純粋なSiO2からなるガラス粉末を3質量%以上20質量%以下含有する混合粉末の焼結体を材料として形成された薄膜であって、比抵抗が525μΩ・cm以上1700μΩ・cm以下であり、155℃の温度を1000時間保持したときの経時的抵抗変化率が0.1%以下となることを特徴とする。
また、本発明による薄膜抵抗器は、絶縁性基板と、該絶縁材料基板上に形成された上記本発明の抵抗薄膜と、該絶縁材料基板上で該抵抗薄膜の両側に形成された電極とからなることを特徴とする。
また、本発明による抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法は、平均粒径30μm以上200μm以下の純粋なSiO2からなるガラス粉末と、Cr、AlおよびYから選択される1種以上の添加元素を10質量%以上60質量%以下含有し、残部がNiと不可避不純物からなる、平均粒径10μm以上200μm以下のNi合金粉末とを、前記ガラス粉末が3質量%以上20質量%以下となるように混合し、得られた混合粉末を所望の形状に成形し、得られた成形体を、真空または不活性雰囲気中にて、50kg/cm2以上の加圧下において、1100℃以上1400℃以下の温度で焼成して焼結体を作製することを特徴とする。
また、本発明による抵抗薄膜の製造方法は、上記本発明のスパッタリングターゲットを用いて、スパッタリング法により、絶縁材料基板上に薄膜を形成し、得られた薄膜を、大気中または不活性ガス雰囲気中において、200℃以上500℃以下の温度で、1時間以上10時間以下の熱処理を行うことを特徴とする。
なお、本発明における「平均粒径」とは、ガラス粉末、及びNi合金粉末のいずれの粉末も、レーザー回折法で測定した各粉末の粒度分布において、小径側から存在比率(体積基準)を積算したときに、その値が全粒径に亘った存在比率の積算値の半分の値となる粒径(D50)のことである。
また、スパッタリング法によって形成される抵抗薄膜の組成は、抵抗体材料であるスパッタリングターゲットの組成がスパッタリングによって対象基板上に形成されるため、スパッタリングターゲットの組成とほぼ同じになると考えることができる。
本発明によれば、抵抗被膜に対する熱処理を比較的低い温度で施しても、従来の抵抗薄膜に比べて高い比抵抗、及び高温安定性を有する抵抗薄膜及び抵抗薄膜を備えた薄膜抵抗器、抵抗薄膜を製造するための薄膜抵抗体材料、抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲット、並びに抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲット及び抵抗薄膜の製造方法が得られる。例えば、本発明の抵抗薄膜材料を抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲットとして用い、スパッタリング法により得られた抵抗薄膜を用いて構成される薄膜抵抗器は、抵抗被膜に対する熱処理を比較的低い温度で施しても、従来の抵抗薄膜に比べて高い比抵抗、及び高温安定性を有し、525μΩ・cm以上1700μΩ・cm以下という高い比抵抗、155℃の温度で1000時間保持した状態における経時的抵抗変化率が0.1%以下という高い高温安定性を得ることができる。
本発明が適用される薄膜抵抗器の概略図である。 本発明による抵抗体材料をなす焼結体における組織の状態を模式的に示す断面図である。 従来の抵抗体材料をなす焼結体における組織の状態を模式的に示す断面図である。
以下、本発明の実施形態について、具体的に説明する。
薄膜抵抗器には、各種特性が要求されるが、その中でも近年の電子部品の小型化に対する特性としては、高抵抗、優れた高温安定性という特性が特に要求され、Ni−Cr系合金を中心として、その改善のための様々な試みがなされてきている。
特許文献1に提案されているNi−Cr系合金にTa、AlおよびMoを添加した抵抗薄膜は、従来のNi−Cr系合金を用いた抵抗薄膜と比較して、高温安定性を維持したまま、抵抗および耐食性が改善されている。
また、特許文献2に提案されている抵抗薄膜は、電子部品用の薄膜抵抗器に用いられる抵抗体材料としては従来利用されていなかった、シリケート系ガラスをNi合金に所定量添加することにより、所望の特性を得るための熱処理温度を相対的に低下させている。
しかしながら、近年の電子部品の小型化に伴い、所定の比抵抗及び高温安定性を得るための熱処理温度を相対的に低下させた場合において、特許文献2に提案されている抵抗薄膜における改善効果以上の、十分な高抵抗、及び高温安定性が求められている。
本発明の実施形態の抵抗体材料は、Cr、AlおよびYから選択される1種以上の添加元素を10質量%以上60質量%以下含有し、残部がNiと不可避不純物からなるNi合金粉末に、平均粒径30μm以上200μm以下の純粋なSiO2からなるガラス粉末を3質量%以上20質量%以下含有する混合粉末の焼結体からなる。
なお、本発明における「抵抗体材料」とは、本発明の抵抗薄膜を形成するための材料を示し、上記の組成を有する混合粉末の焼結体からなるものであれば、その形態には特に制限されない。例えば、タブレットや、スパッタリングターゲットは、そのような抵抗体材料の形態の1つである。以下、本発明の実施形態に関して詳細に説明する。
(抵抗体材料)
本発明の実施形態の抵抗体材料は、NiをベースとしたNi合金粉末を用いて構成される。このNi合金粉末は、Cr、AlおよびYから選択される1種以上の添加元素を10質量%以上60質量%以下含有し、残部がNiと不可避不純物からなっている。
各添加元素を所定量含有させることにより、抵抗体材料としての特性を有した組成になっている。Crの含有は抵抗温度係数の絶対値の低減に特に効果がある。また、Alの含有は耐食性の向上に特に効果がある。また、Yの含有はNi合金とガラス粉末の密着性の向上に特に効果がある。これらの添加元素は、要求される特性に応じて必要量だけ添加されるものであるが、本発明の抵抗薄膜及び薄膜抵抗器における特性を具備するためには、すべての添加元素を一定量含有する必要があり、各添加元素の効果を発揮するためには、総量で10質量%以上含有させる必要がある。それぞれの特性をより効果的に発揮するためには、Crは20質量%以上含有させるのが好ましく、Alは10質量%以上含有させるのが好ましく、Yは0.3質量%以上含有させるのが好ましい。一方、これらの添加元素は過多になると成膜、加熱後の安定性が悪くなり、抵抗値など各種特性が大きくばらつき、再現性が悪くなってしまう場合がある。このため、これらの添加元素の含有量は、総量で60質量%以下とする必要がある。なお、添加元素の含有量の総量は、40質量%以上50質量%以下の範囲とするのがより好ましい。
本発明の実施形態の抵抗体材料は、このような組成のNi合金粉末に、平均粒径30μm以上200μm以下の純粋なSiO2からなるガラスを3質量%以上20質量%以下含有する混合粉末の焼結体からなる。
本発明者らは、特許文献2に記載の、Cr、AlおよびYから選択される1種以上の添加元素を含有するNi合金粉末に、SiO2(シリカ)を主成分とし、B、Mg、Ca、Ba、Al、Zrおよびこれらの酸化物から選択される1種以上を含有するシリケート系ガラス粉末を添加して形成された抵抗体材料をなす混合粉末の焼結体の断面の組織を調べた。その結果、図3に示すように、シリケート系ガラス粉末は溶融して凝集した状態となっているのに対し、Ni合金粉末は、ほとんど溶融せずに粉末の形状(図3では球状)を保ったまま、溶融して凝集したシリケート系ガラスに押されて集まった状態となっており、Ni合金粉末とシリケート系ガラス粉末とが混ざり合っていないことが確認された。
この原因に関し、本発明者らは、シリケート系ガラス粉末の軟化点がNi合金粉末の融点に比べて低すぎることにあると考えた。
そこで、本発明者らは、上記B等の添加元素を含有するシリケート系ガラス粉末の代わりに、シリケート系ガラスよりも軟化点の高い添加元素を含有しない純粋なSiOからなるガラス粉末をNi合金粉末に添加した混合粉末を準備し、準備した混合粉末を焼成して混合粉末の焼結体を作製し、作製した混合粉末の焼結体の断面の組織を調べた。
しかし、Ni合金粉末に添加する純粋なSiOからなるガラス粉末の平均粒径が特許文献2に記載されている10μm程度の場合、焼成して混合粉末の焼結体を作製し、作製した混合粉末の焼結体の断面の組織は、図3に示したのと同様、ガラス粉末が溶融して凝集した状態となり、Ni合金粉末と純粋なSiOからなるガラス粉末とが混ざり合っていないことが確認された。
この原因に関し、本発明者らは、純粋なSiOからなるガラス粉末の平均粒径が小さすぎて、速く溶融してしまうことにあると考えた。
そこで、本発明者らは、次に、平均粒径の異なる純粋なSiOからなるガラス粉末をNi合金粉末に添加した、数種類の混合粉末を準備し、夫々の混合粉末を焼成して混合粉末の焼結体を作製し、作製した夫々の混合粉末の焼結体の断面の組織を調べた。
その結果、本発明者らは、平均粒径30μm以上200μm以下の純粋なSiOからなるガラス粉末をNi合金粉末に添加した混合粉末を、焼成して作製した混合粉末の焼結体は、図2に示すように、純粋なSiOからなるガラス粉末の凝集がなく、Ni合金粉末が溶融して変形し、Ni合金粉末と純粋なSiOからなるガラス粉末とが適度に混ざり合った状態となることを見出した。
また、本発明者らは、平均粒径30μm以上200μm以下の純粋なSiO2からなるガラス粉末を、Ni合金粉末に含有させた混合粉末の焼結体からなる抵抗体材料を用いて抵抗薄膜を形成することにより、抵抗薄膜の抵抗値を上昇させることができ、かつ、高温時の抵抗値の変化率を低く抑えることができることを見出した。また、本発明の実施形態の抵抗薄膜は、抵抗値などの電気的特性の向上効果だけでなく、耐食性を向上させる効果も有していることが確認された。
また、本発明者らは、平均粒径30μm以上200μm以下の純粋なSiO2からなるガラス粉末は絶縁体であり、3質量%以上の含有量でその効果を得ることができることを見出した。含有量が20質量%を超えるとNi合金による導電性が十分に発揮されず、絶縁体となってしまい、抵抗体材料をスパッタリングターゲットの形態にしても、スパッタリングターゲットを用いたDCスパッタリングによる成膜ができなくなる場合があるため、好ましくない。なお、平均粒径30μm以上200μm以下の純粋なSiO2からなるガラス粉末の含有量は、5質量%以上10質量%以下とするのがより好ましい。
(抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲットの作製)
本発明の実施形態の抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲットの原材料には、平均粒径30μm以上200μm以下の純粋なSiO2からなるガラス粉末と、Cr、AlおよびYから選択される1種以上の添加元素を10質量%以上60質量%以下含有し、残部がNiと不可避不純物からなる平均粒径10μm以上200μm以下のNi合金粉末とを用いる。Ni合金粉末における上記添加元素の含有量の総量は40質量%以上50質量%以下とするのがより好ましい。
本発明の実施形態の抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲットの原材料に用いる純粋なSiO2からなるガラス粉末の平均粒径は、上述のとおり、30μm以上200μm以下であるが、100μm程度の粉末を用いることがより好ましい。純粋なSiO2からなるガラス粉末の平均粒径が30μm未満であると、Ni合金粉末と混合した混合粉末を焼成して混合粉末の焼結体を作製したときに、図3に示した状態と同様、SiO2ガラス粉末が凝集して、組成偏析が生じ、焼結密度が上がらず、作製した抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲットを用いたスパッタリングによって得られた抵抗薄膜が所望の特性を得られないか、スパッタリング自体ができない場合があるため好ましくない。
また、Ni合金粉末としては、平均粒径が10μm以上200μm以下の球状粉末を用いる。このような球状のNi合金粉末は、例えばアトマイズによって得ることができる。焼結を行う場合、通常は原料粉末の粒径は細かい方が望ましい。しかしながら、ホットプレスで焼結を行う場合は、その限りではない。ホットプレスを行う際に、カーボン型に原料粉末を充填するが、カーボン型にはつなぎ目に隙間が存在するため、原料粉末が細かすぎると隙間から原料粉末が漏れ出し、作業性が低下するためである。また、原料粉末が細かすぎると、原料粉末同士の摩擦力も増大し、プレスした際に原料粉末の移動が十分に行われず、焼結後の抵抗体材料(焼結体)の密度を十分に高くすることができない場合もあるため好ましくない。
これらの原材料を、平均粒径30μm以上200μm以下の純粋なSiO2からなるガラス粉末が3質量%以上20質量%以下(より好ましくは、5質量%以上10質量%以下)の範囲の所定量になるように混合して、原料粉末となる混合粉末を得る。得られた混合粉末をカーボン型に充填する等して所望形状に成形し、得られた成形体を、好ましくはホットプレス法によって焼結させることにより、混合粉末の焼結体を得ることができる。具体的な焼結条件としては、真空または不活性雰囲気中にて、50kg/cm2以上の加圧下において、1100℃以上1400℃以下の温度で、1時間以上5時間以下の焼成により焼結させる。なお、本発明におけるホットプレス法には、HIP(熱間静水圧プレス)法も含まれる。
焼結温度は、1000℃以上1300℃以下程度のNi合金の焼結温度に合わせて設定するのが好ましい。純粋なSiO2からなるガラスの軟化点が1600℃程度のため、上記範囲(1100℃以上1400℃以下)の温度で焼結を行うことにより、本発明の実施形態の抵抗体材料をなす混合粉末の焼結体の組織を、図2に示すような、ガラス粉末の凝集がなく、組成偏析のない状態にすることができる。
このようして得られた混合粉末の焼結体を必要に応じて寸法を調製することにより、本発明の実施形態の抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲットを得ることができる。スパッタリングを行うときは、スパッタ装置に取り付けるための部材であるバッキングプレートと呼ばれる銅製の板にボンディングするなどして、スパッタ装置等に取り付けて使用する。
(抵抗薄膜の作製)
本発明の実施形態の抵抗薄膜は、例えば、上記のようにして得られた本発明の実施形態の抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲットを使用して、スパッタリング法により成膜して得ることができる。このようなスパッタリングなどの方法により形成された抵抗薄膜は、抵抗体材料と実質的に同じ組成を得ることができる。このような抵抗薄膜を有する薄膜抵抗器用の基板としては、Al23、SiO2などの絶縁体基板を用いるのが望ましい。なお、抵抗薄膜の形成は、上記スパッタリング法のほか、本発明の実施形態の抵抗体材料を蒸着用タブレットに加工して、真空蒸着などの蒸着法により抵抗薄膜を成膜することも可能である。
スパッタリング法には各種方式が存在し、本発明の実施形態への適用に関して、特にその方式の種類による制限はないが、コスト面および量産性の観点からDCスパッタリング法を用いることが好ましい。スパッタリング条件は、スパッタリング装置にもよるが、例えば、ターゲットサイズ:φ75mm×3mmのスパッタリングターゲットを用いて、出力:200W(固定)のスパッタリング装置を用いる場合には、電圧:400〜600V、電流:0.3〜0.5A、Ar流量:15〜25SCCM、全圧力:0.4〜0.6Pa、TS距離(ターゲットから基板までの距離):85mmの条件で成膜することができる。
スパッタリング成膜を行った直後の薄膜は、抵抗温度係数が負に大きく、さらに高温における抵抗安定性が不十分な場合がある。この成膜直後の薄膜を、薄膜の組成に応じて、大気中または不活性ガス中において、200℃以上500℃以下の温度で、1時間以上10時間以下の熱処理を行うことにより、抵抗温度係数を小さくし、高温時の抵抗安定性を向上させた抵抗薄膜として完成させることができる。
本発明の実施形態の薄膜抵抗器は、図1に示すように、絶縁材料基板1と、絶縁材料基板1上に上述のようにして形成された本発明の実施形態の抵抗薄膜2と、絶縁材料基板1上で抵抗薄膜2の両側に形成された電極3とで構成される。電極3としては、Au電極のほかにAl、Ag、Cu、Ni、Crなどの電極を用いることができる。このように構成される薄膜抵抗器は、本発明の実施形態の抵抗薄膜に基づく特性を有するため、高抵抗で高温時の抵抗変化率を低く抑えた電子部品とすることができる。
以下、本発明をより具体的な実施例に基づき詳細に説明する。なお、本発明の範囲は実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
1.評価用焼結体の作製
Ni合金粉末として、Cr、Al、およびYを総量で40質量%添加(Cr:Al:Y=29.5:10.0:0.5(質量比))した平均粒径50μmのNi合金粉末を準備した。一方、純粋なSiO2ガラス粉末として、不純物量10ppm以下の平均粒径100μmのSiO2ガラス粉末を準備した。
この2種類の粉末を、SiO2ガラス粉末の添加量が5質量%となるように混合し、原料粉末とした。
この原料粉末を、所定の形状のカーボン型に装填し、雰囲気ホットプレス炉を用いてホットプレスを行い、所定の形状の成形体を得た。その後、成形体を、Arを2L/minで流す不活性雰囲気中で、200kg/cm2の圧力、1100℃の焼成温度、3時間の焼成時間という条件で焼成し、混合粉末の焼結体を得た。得られた混合粉末の焼結体を平面研削盤にて厚さを3.0mmに加工した後、ワイヤーカットを用いて直径75.0mmの円盤状の抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲットに加工した。得られたスパッタリングターゲットを、インジウム蝋材を使用して、銅バッキングプレートにボンディングしてスパッタリング用の試料を作製した。
2.焼結体の評価
得られた混合粉末の焼結体に対し、以下のように、密度、ガラス粉末の凝集の評価を行った。
密度の評価は、得られた混合粉末の焼結体(抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲット)の重量及び体積から密度を求め、理論密度との比率を算出することにより行った。
ガラス粉末の凝集の評価は、得られた混合粉末の焼結体の断面観察を行い、ガラス粉末凝集の有無を確認することにより行った。
混合粉末の焼結体の評価結果を、ガラス粉末の条件(含有量、添加物の有無、平均粒径)と共に表1に示す。
3.評価用抵抗薄膜器の作製
このようにして得られた抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲットを、スパッタリング装置に基板と距離が85mmとなるように装着し、5×10−4Paまで排気した後、純度99.999%以上のArガスを導入して、0.5Paの圧力に保持し、スパッタリングパワー200W、電圧500V、電流0.4Aで、膜厚が100nmとなるように、スパッタリングを行い、基板上に20mm×25mmの大きさの抵抗薄膜を成膜した。このときの基板にはAl23を使用した。
次に、スパッタリング装置から抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲットを取り外し、別途準備しておいたAu電極形成用スパッタリングターゲットをスパッタリング装置に装着し、抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲットによって得られた抵抗薄膜の両端に、膜厚が500nmのAu電極を、抵抗薄膜成膜時と同様のDCスパッタリング法により成膜した。その後、大気雰囲気中、300℃の温度で、3時間の熱処理を行い、本発明の実施例1の抵抗薄膜を用いた薄膜抵抗器を得た。
4.抵抗薄膜器の評価
得られた薄膜抵抗器について、以下のように、比抵抗、および高温安定性の評価を行った。
比抵抗は、室温において、四探針法による測定により得た。
高温安定性については、得られた薄膜抵抗器を155℃の恒温槽内に1000時間保持し、その前後において測定した抵抗値から抵抗変化率(155℃、1000時間)を算出することにより評価した。
抵抗薄膜器の評価結果を、ガラス粉末の条件(含有量、添加物の有無、平均粒径)と共に表1に示す。
(実施例2)
SiO2ガラス粉末の添加量を3質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、混合粉末の焼結体、及び薄膜抵抗器を得て、その特性についての測定を行った。ガラス粉末の条件(含有量、添加物の有無、平均粒径)と共に評価結果を表1に示す。
(実施例3)
SiO2ガラス粉末の平均粒径を30μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、混合粉末の焼結体、及び薄膜抵抗器を得て、その特性についての測定を行った。ガラス粉末の条件(含有量、添加物の有無、平均粒径)と共に評価結果を表1に示す。
(実施例4)
SiO2ガラス粉末の平均粒径を200μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、混合粉末の焼結体、及び薄膜抵抗器を得て、その特性についての測定を行った。ガラス粉末の条件(含有量、添加物の有無、平均粒径)と共に評価結果を表1に示す。
(実施例5)
SiO2ガラス粉末の添加量を7質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、混合粉末の焼結体、及び薄膜抵抗器を得て、その特性についての測定を行った。ガラス粉末の条件(含有量、添加物の有無、平均粒径)と共に評価結果を表1に示す。
(実施例6)
SiO2ガラス粉末の添加量を10質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、混合粉末の焼結体、及び薄膜抵抗器を得て、その特性についての測定を行った。ガラス粉末の条件(含有量、添加物の有無、平均粒径)と共に評価結果を表1に示す。
(実施例7)
SiO2ガラス粉末の添加量を15質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、混合粉末の焼結体、及び薄膜抵抗器を得て、その特性についての測定を行った。ガラス粉末の条件(含有量、添加物の有無、平均粒径)と共に評価結果を表1に示す。
(実施例8)
SiO2ガラス粉末の添加量を20質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、混合粉末の焼結体、及び薄膜抵抗器を得て、その特性についての測定を行った。ガラス粉末の条件(含有量、添加物の有無、平均粒径)と共に評価結果を表1に示す。
(実施例9)
SiO2ガラス粉末の平均粒径を200μmとしたこと以外は、実施例8と同様にして、混合粉末の焼結体、及び薄膜抵抗器を得て、その特性についての測定を行った。ガラス粉末の条件(含有量、添加物の有無、平均粒径)と共に評価結果を表1に示す。
(比較例1)
ガラス粉末として、SiO2ガラスに、B、Ba、Mg、Ca、Zr、およびAlを総量で50質量%添加(B:Ba:Mg:Ca:Zr:Al=2:18:5:18:5:2(質量比))した平均粒径3μmのSiO2系ガラス粉末を添加量が20質量%となるようにNi合金粉末との混合に使用したこと以外は、実施例1と同様にして、混合粉末の焼結体、及び薄膜抵抗器を得て、その特性についての測定を行った。ガラス粉末の条件(含有量、添加物の有無、平均粒径)と共に評価結果を表1に示す。
(比較例2)
SiO2系ガラス粉末の平均粒径を30μmとしたこと以外は、比較例1と同様にして、混合粉末の焼結体、及び薄膜抵抗器を得て、その特性についての測定を行った。ガラス粉末の条件(含有量、添加物の有無、平均粒径)と共に評価結果を表1に示す。
(比較例3)
SiO2系ガラス粉末の平均粒径を100μmとしたこと以外は、比較例1と同様にして、混合粉末の焼結体、及び薄膜抵抗器を得て、その特性についての測定を行った。ガラス粉末の条件(含有量、添加物の有無、平均粒径)と共に評価結果を表1に示す。
(比較例4)
SiO2系ガラス粉末の平均粒径を200μmとしたこと以外は、比較例1と同様にして、混合粉末の焼結体、及び薄膜抵抗器を得て、その特性についての測定を行った。ガラス粉末の条件(含有量、添加物の有無、平均粒径)と共に評価結果を表1に示す。
(比較例5)
SiO2ガラス粉末の平均粒径を3μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、混合粉末の焼結体、及び薄膜抵抗器を得て、その特性についての測定を行った。ガラス粉末の条件(含有量、添加物の有無、平均粒径)と共に評価結果を表1に示す。
(比較例6)
SiO2ガラス粉末の添加量を3質量%としたこと以外は、比較例5と同様にして、混合粉末の焼結体、及び薄膜抵抗器を得て、その特性についての測定を行った。ガラス粉末の条件(含有量、添加物の有無、平均粒径)と共に評価結果を表1に示す。
(比較例7)
SiO2ガラス粉末の添加量を7質量%としたこと以外は、比較例5と同様にして、混合粉末の焼結体、及び薄膜抵抗器を得て、その特性についての測定を行った。ガラス粉末の条件(含有量、添加物の有無、平均粒径)と共に評価結果を表1に示す。
(比較例8)
SiO2ガラス粉末の添加量を10質量%としたこと以外は、比較例5と同様にして、混合粉末の焼結体、及び薄膜抵抗器を得て、その特性についての測定を行った。ガラス粉末の条件(含有量、添加物の有無、平均粒径)と共に評価結果を表1に示す。
(比較例9)
SiO2ガラス粉末の添加量を15質量%としたこと以外は、比較例5と同様にして、混合粉末の焼結体、及び薄膜抵抗器を得て、その特性についての測定を行った。ガラス粉末の条件(含有量、添加物の有無、平均粒径)と共に評価結果を表1に示す。
(比較例10)
SiO2ガラス粉末の添加量を20質量%としたこと以外は、比較例5と同様にして、混合粉末の焼結体、及び薄膜抵抗器を得て、その特性についての測定を行った。ガラス粉末の条件(含有量、添加物の有無、平均粒径)と共に評価結果を表1に示す。
(比較例11)
SiO2ガラス粉末の添加量を30質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、混合粉末の焼結体(スパッタリングターゲット)を得た。しかしながら、このスパッタリングターゲットを用いて実施例1と同様に抵抗薄膜を成膜しようとしたところ、ターゲットの導電性が不十分であるため、成膜できなかった。ガラス粉末の条件(含有量、添加物の有無、平均粒径)と共に評価結果を表1に示す。なお、薄膜抵抗器は作製できなかったため、評価は「−」で示してある。
Figure 2020007601
表1に示すように、本発明の構成要件を具備する実施例1、2、4〜9の試料は、混合粉末の焼結体の密度比が95.4%以上と高く、ガラス粉末の凝集もなく、525μΩ・cm以上の比抵抗を容易に発揮することができ、155℃、1000時間の高温保管においても、抵抗変化率が0.09%以下と非常に安定していることが認められる結果となった。
また、本発明の構成要件を具備する試料であって、平均粒径が本発明の範囲の下限値となっているSiO2ガラス粉末を用いた実施例3の試料は、混合粉末の焼結体の密度比は94.5%と比較的低い値を示したが、ガラス粉末の凝集もなく、比抵抗が530μΩ・cm、抵抗変化率が0.07%と本発明で要求される特性(比抵抗:525μΩ・cm以上、抵抗変化率:0.1%以下)を満たすことが認められる結果となった。
これに対し、従来のB等の添加元素を含有し、かつ、ガラス粉末の平均粒径が本発明の範囲の下限値よりも小さいSiO系ガラスを用いた比較例1の試料は、ガラス粉末の凝集がなく、抵抗変化率が0.09%と本発明で要求される特性(0.1%以下)を満たしたが、密度比が93.7%までしか上がらず、比抵抗も386μΩ・cmと十分には高くすることができないことが認められる結果となった。
また、ガラス粉末の平均粒径が本発明の範囲内ではあるものの、従来のB等の添加元素を含有するSiO系ガラスを用いた比較例2〜4の試料は、ガラス粉末の凝集はなかったが、密度比が94.5%以下と高くはならず、比抵抗も407μΩ・cmと十分には高くすることができず、また、抵抗変化率も0.11%以上と本発明で要求される特性(0.1%以下)を満たさないことが認められる結果となった。
また、添加元素を含有しないSiOガラスを用いた場合であっても、ガラス粉末の平均粒径が本発明の範囲の下限値よりも小さい比較例5〜10の試料は、密度比が92.7%以下と低い値を示し、かつガラス粉末の凝集があり、抵抗変化率も0.22%以上と本発明で要求される特性(0.1%以下)が得られないことが認められる結果となった。比較例5〜10の試料において、ガラスの含有量を増やすことにより比抵抗を高くすることは可能であるが、それに伴い高温保管時の抵抗変化率も高くなってしまうため、薄膜抵抗器として好ましくない。
また、ガラス粉末の含有量のみを本発明の範囲よりも多く含有させた比較例11の試料は、Ni合金粉末の含有量が少なすぎてスパッタリングに必要な導電性を得ることができず、抵抗薄膜を形成することができないことが認められる結果となった。
本発明は、高温化した使用環境にある電子部品に用いる薄膜抵抗器を製造することが求められている分野に有用である。
1 アルミナ基板
2 抵抗薄膜
3 (Au)電極
ところで、特許文献1に提案されているNi−Cr系合金にTa、Al、Moを添加した抵抗膜は、所定の比抵抗及び抵抗変化率を得るために500℃を超える高温での熱処理が必要となる。
しかし、近年、所定の比抵抗及び高温安定性を得るための熱処理温度を低くすることが求められている。
しかるに、特許文献2に提案されている抵抗膜は、特許文献1に提案されている抵抗膜に比べて低い温度で熱処理を施しても、特許文献1に提案されているNi−Cr系合金にTa、Al、Moを添加した抵抗膜と同様の高い比抵抗、優れた高温安定性が得られる。
しかし、近年、電子部品の小型化に伴い、特許文献2に提案されている抵抗薄膜と同様の比較的低い温度で熱処理を施した場合において、特許文献2に提案されている抵抗薄膜に比べて、更なる高抵抗、及び、更なる高温安定性を満たす抵抗膜が求められている。
本発明はこのような問題を鑑みてなされたものであり、抵抗膜に対する熱処理を比較的低い温度で施しても、従来の抵抗薄膜に比べて高い比抵抗、及び高温安定性を有する抵抗薄膜及び抵抗薄膜を備えた薄膜抵抗器、抵抗薄膜を製造するための薄膜抵抗体材料、抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲット、並びに抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲット及び抵抗薄膜の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、特許文献2に提案されている抵抗薄膜と同様、従来よりも抵抗膜に対する熱処理を比較的低い温度で施した場合において、特許文献2に提案されている抵抗薄膜に比べて更なる高抵抗、及び、更なる高温安定性を有するNi−Cr合金を用いた抵抗薄膜について鋭意検討評価した。その結果、本発明者らは、Ni−Cr合金粉末に、B、Mg、Ca、Ba、Al、Zrおよびこれらの酸化物を含まない、平均粒径が所定範囲内の純粋なSiO2(シリカ)のみのガラス粉末を含有するNi−Cr系合金材料を用いて形成された抵抗薄膜とすることにより、SiO2(シリカ)を主成分とし、B、Mg、Ca、Ba、Al、Zrおよびこれらの酸化物を含有するシリケート系ガラス入りのNi−Cr系合金等に比べて高い比抵抗、及び高温安定性を有することを見出した。
また、本発明による薄膜抵抗器は、絶縁材料基板と、該絶縁材料基板上に形成された上記本発明の抵抗薄膜と、該絶縁材料基板上で該抵抗薄膜の両側に形成された電極とからなることを特徴とする。
本発明によれば、抵抗膜に対する熱処理を比較的低い温度で施しても、従来の抵抗薄膜に比べて高い比抵抗、及び高温安定性を有する抵抗薄膜及び抵抗薄膜を備えた薄膜抵抗器、抵抗薄膜を製造するための薄膜抵抗体材料、抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲット、並びに抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲット及び抵抗薄膜の製造方法が得られる。例えば、本発明の抵抗薄膜材料を抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲットとして用い、スパッタリング法により得られた抵抗薄膜を用いて構成される薄膜抵抗器は、抵抗膜に対する熱処理を比較的低い温度で施しても、従来の抵抗薄膜に比べて高い比抵抗、及び高温安定性を有し、525μΩ・cm以上1700μΩ・cm以下という高い比抵抗、155℃の温度で1000時間保持した状態における経時的抵抗変化率が0.1%以下という高い高温安定性を得ることができる。
(抵抗薄膜の作製)
本発明の実施形態の抵抗薄膜は、例えば、上記のようにして得られた本発明の実施形態の抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲットを使用して、スパッタリング法により成膜して得ることができる。このようなスパッタリングなどの方法により形成された抵抗薄膜は、抵抗体材料と実質的に同じ組成を得ることができる。このような抵抗薄膜を有する薄膜抵抗器用の基板としては、Al23、SiO2などの絶縁材料基板を用いるのが望ましい。なお、抵抗薄膜の形成は、上記スパッタリング法のほか、本発明の実施形態の抵抗体材料を蒸着用タブレットに加工して、真空蒸着などの蒸着法により抵抗薄膜を成膜することも可能である。
3.評価用薄膜抵抗器の作製
このようにして得られた抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲットを、スパッタリング装置に基板と距離が85mmとなるように装着し、5×10−4Paまで排気した後、純度99.999%以上のArガスを導入して、0.5Paの圧力に保持し、スパッタリングパワー200W、電圧500V、電流0.4Aで、膜厚が100nmとなるように、スパッタリングを行い、基板上に20mm×25mmの大きさの抵抗薄膜を成膜した。このときの基板にはAl23を使用した。
次に、スパッタリング装置から抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲットを取り外し、別途準備しておいたAu電極形成用スパッタリングターゲットをスパッタリング装置に装着し、抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲットによって得られた抵抗薄膜の両端に、膜厚が500nmのAu電極を、抵抗薄膜成膜時と同様のDCスパッタリング法により成膜した。その後、大気雰囲気中、300℃の温度で、3時間の熱処理を行い、本発明の実施例1の抵抗薄膜を用いた薄膜抵抗器を得た。
4.薄膜抵抗器の評価
得られた薄膜抵抗器について、以下のように、比抵抗、および高温安定性の評価を行った。
比抵抗は、室温において、四探針法による測定により得た。
高温安定性については、得られた薄膜抵抗器を155℃の恒温槽内に1000時間保持し、その前後において測定した抵抗値から抵抗変化率(155℃、1000時間)を算出することにより評価した。
薄膜抗器の評価結果を、ガラス粉末の条件(含有量、添加物の有無、平均粒径)と共に表1に示す。

Claims (6)

  1. Cr、AlおよびYから選択される1種以上の添加元素を10質量%以上60質量%以下含有し、残部がNiと不可避不純物からなるNi合金粉末に、平均粒径30μm以上200μm以下の純粋なSiO2からなるガラス粉末を3質量%以上20質量%以下含有する混合粉末の焼結体からなることを特徴とする、抵抗体材料。
  2. Cr、AlおよびYから選択される1種以上の添加元素を10質量%以上60質量%以下含有し、残部がNiと不可避不純物からなるNi合金粉末に、平均粒径30μm以上200μm以下の純粋なSiO2からなるガラス粉末を3質量%以上20質量%以下含有する混合粉末の焼結体からなることを特徴とする、抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲット。
  3. Cr、AlおよびYから選択される1種以上の添加元素を10質量%以上60質量%以下含有し、残部がNiと不可避不純物からなるNi合金粉末に、平均粒径30μm以上200μm以下の純粋なSiO2からなるガラス粉末を3質量%以上20質量%以下含有する混合粉末の焼結体を材料として形成された薄膜であって、比抵抗が525μΩ・cm以上1700μΩ・cm以下であり、155℃の温度を1000時間保持したときにおける経時的抵抗変化率が0.1%以下となることを特徴とする、抵抗薄膜。
  4. 絶縁性基板と、該絶縁材料基板上に形成された請求項3に記載の抵抗薄膜と、該絶縁材料基板上で該抵抗薄膜の両側に形成された電極とからなる、薄膜抵抗器。
  5. 平均粒径30μm以上200μm以下の純粋なSiO2からなるガラス粉末と、
    Cr、AlおよびYから選択される1種以上の添加元素を10質量%以上60質量%以下含有し、残部がNiと不可避不純物からなる、平均粒径10μm以上200μm以下のNi合金粉末とを、
    前記ガラス粉末が3質量%以上20質量%以下となるように混合し、得られた混合粉末を所望形状に成形し、得られた成形体を、真空または不活性雰囲気中にて、50kg/cm2以上の加圧下において、1100℃以上1400℃以下の温度で焼成して焼結体を作製することを特徴とする、抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法。
  6. 請求項5に記載のスパッタリングターゲットを用いて、スパッタリング法により、絶縁材料基板上に薄膜を形成し、得られた薄膜を、大気中または不活性ガス雰囲気中において、200℃以上500℃以下の温度で、1時間以上10時間以下の熱処理を行うことを特徴とする、抵抗薄膜の製造方法。
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