以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)として、本発明に係る監視装置を含んで構成される監視システム1について、図面に基づいて説明する。
図1は実施形態に係る監視システム1の概略の構成を示す模式図である。監視システム1は監視装置2と監視センタ3とを含んで構成される。監視装置2と監視センタ3とは通信可能に接続される。
監視装置2は、監視対象である監視領域4が設定される場所、建物等に設置され、監視領域4の移動物体(人物、車両など)を追尾撮影する。監視装置2は物体検知部5、撮像部6及び制御部7を含んで構成され、これらのうち少なくとも物体検知部5及び撮像部6は監視領域4を臨む位置に設置される。例えば、監視領域4は屋外に設定され、物体検知部5及び撮像部6は建物の外壁面や、監視領域4に隣接して立設されたポール等に設置される。一方、制御部7は監視領域4内の所定箇所や監視領域4の近傍などに設置され、例えば、LANなどを介して物体検知部5及び撮像部6と接続される。制御部7は物体検知部5及び撮像部6に近接した場所に設置することもできるし、物体検知部5及び撮像部6は屋外に設置して制御部7は屋内に設置するというように、物体検知部5及び撮像部6から分離した位置に置くこともできる。また、制御部7の各機能は、物体検知部5や撮像部6に備えるようにしてもよい。
監視領域4は、例えば監視装置2を中心とした半径数十メートル〔m〕(例えば20mなど)の半円状に設定される。このように設定された監視領域4においては、汎用のカメラではカメラから離れた位置で検知した物体の解像度がそれほど高くなく物体の情報を十分に得られないため、適切にズーム制御をする必要が生じてくる。なお、監視領域はこの例に限定されるものではなく警備のプランニングにより適宜定められる。
物体検知部5は監視領域4内で移動物体を検知し、当該移動物体の位置を含む検知結果を出力する。また、物体検知部5は制御部7に後述のトラッキング情報を送信する。
撮像部6は制御部7からのカメラ制御コマンドに従ってカメラ制御を行い、監視領域4の移動物体の動きを追いながら撮影する。
制御部7は移動物体のトラッキング情報に基づき、撮像部6への制御指示としてカメラ制御コマンドを生成する。
監視センタ3は警備会社などが運営する施設であり、通常、1又は複数のコンピュータで構成されるセンタ装置が設置されている。また、監視センタ3は、1又は複数の監視装置2とネットワークを介して接続される。監視センタ3では、センタ装置により例えば、各種機器を制御し、監視装置2から受信した異常信号を記録するとともに、異常の情報や撮像部6で撮像された撮影画像をディスプレイに表示し、監視員が監視領域を監視している。
図2は監視装置2の概略の構成を示すブロック図である。以下、図2に示す監視装置2の構成を説明する。
物体検知部5はエリアセンサ装置を含み、例えば、ビーム状の探査信号を用い所定の周期で監視領域4に対する空間走査を行い、光路上にある物体(人物、車両など)にて反射した反射光を受光することで、監視領域4内に存在する物体の位置を検出する。また、物体検知部5は複数時刻における位置の検知結果を用いて、物体の移動速度や移動方向を算出することができる。
物体検知部5は通信手段51、記憶手段52、検知手段53、追跡手段54、制御手段55を備える。
通信手段51は制御部7と接続され、制御部7から出力される警備開始信号及び警備解除信号を受信して制御手段55に当該信号を入力する。また、通信手段51は、検知手段53にて監視領域4における移動物体の存在が判定されると、自己のアドレス情報を含む検出信号を制御部7に送信する。例えば、検出信号として、トラッキング情報が制御部7に送信される。
記憶手段52はHDD(Hard Disk Drive)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などで構成される記憶装置であり、各種設定情報や、物体検知部5を動作させるためのプログラムなどを記憶する。例えば、記憶手段52には物体検知部5自身を特定するためのアドレス情報が記憶される。また、記憶手段52には、物体検知部5にて監視すべき範囲として設定された監視領域4を示す監視領域情報と、検知手段53にて生成された基準データと、検知手段53にて取得された過去所定周期分の測定データ及び移動物体(侵入物体)のトラッキング情報とが記憶される。
ここで、基準データは、移動物体を検出する物体抽出処理において、監視領域4に新規に出現した移動物体を抽出するために現在の測定データと比較されるデータである。具体的には、基準データは、検知手段53による走査開始後から現在までの何れかの過去時点で取得された測定データから生成される。例えば、監視領域4に移動物体が存在しない状態における走査で取得された植栽や外壁などの既設物が基準データとして用いられる。基準データは例えば、角度(方向)に距離を対応付けたテーブルの形式で記憶することができる。
トラッキング情報は、監視領域4に新規に出現した移動物体を複数周期に渡り追跡するトラッキング処理に用いられる情報であり、移動物体の検知位置や大きさ、形状などからなる。また、トラッキング情報は評価手段74が移動物体の動きに関する事象を評価する際にも用いられる。トラッキング情報は、移動物体同士を区別する識別子(物体ID)と、移動物体(物体ID)ごとに当該物体が監視領域に初めて出現した位置、大きさ及び形状と、現在までの各周期における位置、大きさ及び形状とが時系列に対応づけられている。また、トラッキング情報には移動物体の種別情報(周囲監視対象であるか否かや、車両、人物等の物体種類)や移動物体を最初に検知してからの経過時間(追跡時間)を対応付けてもよい。
検知手段53は基本的に監視領域4を周期的に走査して、監視領域4に存在する物体を検知するとともに当該物体の位置を算出する手段である。本実施形態では検知手段53はレーザセンサを用いて構成され、探査信号としてレーザ光を出射する。例えば、レーザセンサは、監視領域4における検知対象にレーザ光が照射されるように、レーザ光の出射方向が水平または一定の俯角を有するように設置される。
具体的には検知手段53は、レーザセンサを中心として監視領域4を臨む水平方向の角度範囲に対して所定周期(例えば60ミリ秒)で走査を繰り返す。検知手段53による測距は、走査角度範囲内にて所定の角度ステップ(例えば0.25゜)ごとに飛行時間法(TOF法:Time of Flight)を用いて行われる。すなわち、レーザパルスの出射から受光までに要する時間を計測し、当該時間と光速度とからレーザを反射した物体までの距離が算定される。
検知手段53による測定データは走査角(方位)と距離とで表され、レーザセンサを視点とした物体上のレーザ光反射点の位置が当該測定データで与えられる。具体的には、測定データは、レーザ光の送受信の角度(方向)と反射点までの距離とを対応付けた複数の測定点データの集まりからなる情報である。なお、所定時間内に反射光が返って来ない場合には、レーザ光の照射可能な距離内に物体がないと考えることができ、検知手段53は距離として所定の擬似データ(例えば、監視領域4の外周までの距離値、レーザ光による有効測定距離以上の適当な値等)を設定する。
また、検知手段53は、現在の測定データと基準データとを比較して監視領域4に出現した移動物体を検出する。具体的には、現在の測定データから得られる走査角度ごとの距離値と基準データに記憶された角度ごとの距離値との差分を、対応する角度ごとに算出して、距離値が変化した角度における現在の測定データの測定点を検出点とする。そして、検出点群のうち、同一の被測定物により距離値が変化したと考えられる近接する検出点を測距データとしてグループ化し、移動物体として検知する。また、この移動物体の大きさとして、グループ化された検出点のうち両端点の角度と距離とから両端点間の実空間上での長さ、すなわち、現在における移動物体の幅を算出する。また、この移動物体の形状として、グループ化された検出点における距離のばらつきにより、現在における移動物体の直線性を算出する。具体的には、距離のばらつきが大きくなるのは、物体表面に凹凸がある場合などであることから、距離のばらつきが大きい場合には直線性が低い形状とする。
なお、検知手段53はレーザセンサに限定されず、超音波センサなど、物体の位置を検知可能な種々のセンサを用いて構成することができる。また、後述する移動物体の種別の判定を無線タグを用いて行う場合には、検知手段53として、レーザセンサや超音波センサなどの監視領域4を周期的に走査して物体を検知するセンサに加えて、無線タグの信号を受信するタグリーダ装置が設定される。
タグリーダ装置は例えば、無線タグへ質問信号を発し、無線タグからの応答信号及びそれに含まれる識別情報により無線タグを検知・識別し、またその位置を取得する。例えば、タグリーダ装置は無線タグの位置情報として、当該装置から見た無線タグが存在する方位を検出する。そのための構成の一例として、タグリーダ装置はそれぞれ比較的狭いビーム幅(例えば10゜)の指向性を有し互いにビーム方向をずらして配置された複数のアンテナを備え、それら複数のアンテナを切り替えて質問信号の送出及び応答信号の受信を行う。当該送受信が全方位(360゜)にて順次行われるようにタグリーダ装置は指向性を切り替え、所定周期(例えば200ミリ秒)ごとに全方向に対する無線タグの読み取りを完了する。
また、タグリーダ装置は質問信号の送出から応答信号の受信までの時間差に基づいて無線タグまでの距離を求め、方位と当該距離とで二次元座標上の位置を決定する構成とすることもできる。また、監視領域4の複数位置にタグリーダ装置を設置し、それぞれのタグリーダ装置で検知した無線タグの方位から、三角測量の原理で二次元座標上の位置を決定する構成も可能である。
追跡手段54は、前回周期及び現周期で検出された移動物体間の対応付けを行ってトラッキング情報を生成・更新し、これを用いて移動物体を追跡する。当該対応付けは、距離と大きさなどにより行う。すなわち、両周期で検出された物体間の距離が閾値以内で、かつ大きさの変動が閾値以内である場合に、両周期における移動物体が同一の物体として対応付けられる。
制御手段55はCPU(Central Processing Unit)、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータ及びその周辺回路で構成され、マイクロコンピュータが記憶手段52からプログラムを読み出して実行することで物体検知部5を制御する。
制御手段55は、通信手段51を介して制御部7から警備開始信号が入力されると検知手段53に駆動信号を出力し、検知手段53の駆動を開始させる。これにより、検知手段53におけるレーザ光の出射や、レーザ光の走査角を変化させる走査鏡の駆動などが開始される。一方、制御手段55は、制御部7から警備解除信号が入力されると検知手段53に駆動停止信号を出力し、その時点での走査が終了すると検知手段53の駆動を停止させる。これにより、レーザ光の出射や走査鏡の駆動などが停止される。
撮像部6は、移動物体を追尾撮影するために撮影方向を変更可能である。また撮像部6は、監視装置2から距離が遠い物体などについて十分な解像度の物体像を得るために、ズーム制御が可能である。つまり、本実施形態の撮像部6はパン、チルト及びズーム(PTZ)の制御が可能なカメラ(PTZカメラ)を用いて構成され、物体検知部5で検知した移動物体のトラッキング情報に基づく制御部7の指示により、移動物体が画角内に収まるようにPTZ制御を行い移動物体を撮像する。なお、撮像部6のカメラは、上述のように物体検知部5のレーザセンサと共に監視領域4を臨む位置に設置される。ここで、撮像部6は物体検知部5と同じ位置に設置することもできるし、また、物体検知部5に対し上下方向にずれた位置や、その他、物体検知部5近傍の別の場所に設置されてもよい。
撮像部6はカメラ駆動手段61、撮像手段62、通信手段63、記憶手段64、動体検知手段65を備える。
カメラ駆動手段61は、カメラの撮影方向(パン、チルト)を変化させる駆動機構、及びカメラのズームレンズを駆動し画角を変化させる駆動機構を含み、制御部7からの制御指示に基づいてそれら駆動機構を動作させ、パン、チルトの制御やズーム制御を行う。
撮像手段62は例えば撮像素子を用いたカメラで構成され、監視領域や移動物体を撮影する。なお、撮像手段62は1フレームの画像を撮影する動作を周期的に繰り返し、複数フレームからなる動画を撮影することができる。
通信手段63は制御部7からのカメラ制御信号を受信する。また、通信手段63は撮像手段62による撮影画像を、制御部7を介して監視センタ3に送信する。
記憶手段64はHDD、ROM、RAMなどで構成される記憶装置であり、撮影画像を記憶する。また、記憶手段64はカメラのホームポジション(移動物体を追尾撮影していないときの撮影方向及びズーム倍率)を記憶する。
動体検知手段65は撮影画像のフレーム間での差分処理により画像の変化領域を求め、当該変化領域に基づいて、撮影領域内で動いている物体像を検知する。
制御部7は物体検知部5及び撮像部6と通信可能に接続され、それらに制御信号を出力し、またそれらから検知信号や撮影画像が入力される。また、制御部7は遠隔の監視センタ3と通信可能に接続され、監視センタ3から監視装置2に対する制御信号を受信して動作したり、監視領域4に関し検知された異常信号や撮影画像を監視センタ3へ送信したりする。例えば、制御部7と監視センタ3との間の通信は、インターネット等の広域ネットワーク(WAN)上に構築された仮想専用ネットワーク(VPN)を介して行うことができる。
また、例えば、監視装置2に備えた操作部にて利用者が監視領域4の監視を開始又は解除するための操作を行ったり、監視センタ3から監視の開始又は解除の指示を受信したりすることにより、制御部7は監視領域4の監視状態を開始又は解除に設定し、警備開始信号又は警備解除信号を物体検知部5に送信する。
制御部7は通信手段71、記憶手段72、カメラ制御手段73、評価手段74、種別判定手段75及び追尾撮影対象設定手段76を含んで構成される。制御部7はCPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータ及びその周辺回路で構成され、マイクロコンピュータが記憶手段72からプログラムを読み出して実行することで記憶手段72、カメラ制御手段73、評価手段74、種別判定手段75、追尾撮影対象設定手段76などとして機能する。
通信手段71は、監視装置2内における物体検知部5及び撮像部6と制御部7との間の通信、並びに監視センタ3との通信を行う。例えば、通信手段71は、物体検知部5へ警備開始信号又は警備解除信号を送信する。また、監視センタ3に対しては、監視領域4に関し異常が検知された際に生成される異常信号や、撮影画像を送信する。
記憶手段72はHDD、ROM、RAMなどで構成される記憶装置であり、各種設定情報や、制御部7を動作させるためのプログラムなどを記憶する。例えば、記憶手段72は物体のトラッキング情報を蓄積する。また、物体検知部5と撮像部6との相対位置も記憶手段72に予め記憶される。
さらに記憶手段72は、種別判定手段75が判定する周囲監視対象に関し、その特徴を示す情報を予め記憶する。本実施形態では、周囲監視対象は、監視領域にて警護・見守りなどの対象とされる人物であり、例えば、事前に登録されたユーザや、所定の属性(女性や子どもなど)をもつ人物である。これに対応して、記憶手段72は監視領域内の移動物体が周囲監視対象である人物であるか否かを判定するための情報として例えば、当該人物が帯同するRFID(Radio Frequency IDentification)タグなどの無線タグの識別情報や、当該人物の顔画像を記憶する。
カメラ制御手段73は物体のトラッキング情報から得られる検知位置や移動速度に基づいて、撮像部6に制御指示(PTZの制御量やその速度)を与える信号を生成する。カメラ制御手段73についてはさらに後述する。
評価手段74は、周囲監視対象以外の追尾物体について監視領域に侵入した侵入物体として異常判定したり、トラッキング情報に基づいて追尾物体の挙動を評価して異常判定したりし、異常発生を監視センタ3へ通報する。
種別判定手段75は、物体検知部5で検知した移動物体ごとに、当該移動物体の種別を判定する。本実施形態では種別判定手段75は特に移動物体の種別として、周囲監視対象であるか否かを判定する。当該判定により、検知された移動物体は、周囲監視対象とそれ以外の物体との2種類に分類される。周囲監視対象以外の物体は、それ自身が監視対象となる物体であるのに対し、周囲監視対象はその周囲の監視の重要性が高い物体である。例えば、周囲監視対象としてVIPなどの警護が必要な人物を想定することができ、一方、周囲監視対象以外の物体として不審者(又は不審移動物体)が想定される。
種別判定手段75は、周囲監視対象が帯同する無線タグや、撮像部6が撮影した人物の顔画像を用いて種別判定を行う。例えば、無線タグを用いる場合には、タグリーダ装置が無線タグからの受信信号に基づいて、無線タグの位置及び識別情報を取得し、種別判定手段75はレーザセンサが検知した移動物体の位置に、記憶手段72に識別情報が登録された無線タグが検知された場合には、当該移動物体を周囲監視対象と判定し、一方、移動物体の位置に無線タグが検知されない場合には当該移動物体は周囲監視対象ではないと判定する。また、顔画像を用いる場合には、種別判定手段75は撮像部6から得た顔画像を記憶手段72に登録された顔画像と照合して顔認証を行い、認証されれば周囲監視対象と判定し、認証されなければ周囲監視対象ではないと判定する。
また、種別判定手段75は、画像認識などにより人物の像から移動物体の属性を判定し、女性や子供を周囲監視対象として識別してもよい。
なお、種別判定手段75は周囲監視対象か否かの判定に加えて、例えば、移動物体の大きさや移動速度により移動物体が人物か車両かなど、他の種別判定を行ってもよい。
追尾撮影対象設定手段76は、検知した移動物体の種別に基づいて追尾撮影対象にする物体を設定する。追尾撮影対象設定手段76は、物体検知部5により移動物体が1つだけ検知された場合には、種別判定手段75により判定された種別によらず当該移動物体を追尾撮影対象に設定し、一方、移動物体が複数検知された場合には周囲監視対象である移動物体を優先して追尾撮影対象に設定する。
また、追尾撮影対象設定手段76は、移動物体の種別と他の判断基準とを組み合わせて追尾撮影対象を設定することもできる。例えば、周囲監視対象である移動物体が複数存在する場合には、他の判断基準によりそれら複数の移動物体のうちから追尾撮影対象を選択することができる。
例えば、記憶手段72に予め登録される周囲監視対象に関して、追尾撮影対象として設定する際の優先度(撮影優先度)を予め定めておき、当該撮影優先度を考慮に入れて追尾撮影対象を選択することができる。
また、それら複数の移動物体又は周囲監視対象のうち最も新しく、又は古く検知した物体を優先して追尾撮影対象に設定することもできる。
さて、カメラ制御手段73は移動物体の位置に応じて撮影方向の制御及びズーム制御を行い、撮影方向(パン、チルト)の制御では、基本的には物体が画角の中央に写るようにし、ズーム制御では所定の大きさで物体が写るようにする。ズーム制御は検知物体の位置(物体までの距離)に基づいて行い、基本的に、物体が撮像部6から遠ざかるとズーム倍率を上げてズームインするように制御し、一方、撮像部6に近づくとズーム倍率を下げてズームアウトするように制御する。なお、ズーム制御においては物体の移動速度も考慮することができる。具体的には、高速の物体ほどズームアウトして撮影することができる。
ここで、カメラ制御手段73は、追尾撮影する移動物体が周囲監視対象以外である場合には撮影制御を基本撮影モードにて行い、追尾撮影する移動物体が周囲監視対象である場合には撮影制御を周囲撮影モードにて行う。
基本撮影モードでは、例えば、移動物体の特徴(例えば人物の場合は顔、表情、服装、挙動といった特徴、車両の場合はナンバープレートや搭乗者の顔など)の情報を取得可能なようにズーム制御を行う。
一方、周囲撮影モードでは、追尾する移動物体そのものよりもその周囲の監視に重点を置くため、基本撮影モードに比べて撮影範囲を拡大する。これにより、周囲監視対象の周囲の状況変化を画像上で速やかに把握することが可能になり、例えば、VIPへの不審者の接近といった周囲監視対象に迫る脅威等を監視センタ3などにていち早く察知することができる。
図3は周囲撮影モードでの撮影範囲を拡大する制御を説明する模式図である。図3は監視領域4にて追尾撮影対象とされた移動物体100に対する撮像部6の撮影範囲(画角)を矩形で示しており、移動物体100を中心に置いた破線の矩形102が基本撮影モードでの画角を表しており、当該画角は移動物体100の検知位置、特に距離に基づいて設定される。これに対し、移動物体100を中心に置いた実線の矩形104が周囲撮影モードでの画角を表しており、矩形102より大きく設定される。当該設定とするためにカメラ制御手段73は、移動物体の検知位置に基づいて設定するズーム倍率を、周囲撮影モードでは基本撮影モードに比べて小さくする。なお、撮影方向は基本撮影モードと同様、移動物体100を画角の中心に捉える設定とすることができる。
これにより追尾撮影対象とする移動物体100が周囲監視対象である場合に周囲撮影モードとすることで、周囲監視対象に接近する他の移動物体106は矩形102の画角より前に矩形104の画角内に捉えられ、上述のように周囲監視対象への不審者の接近等を画像にて早期に確認することが可能となる。
また、周囲撮影モードでは、画角は拡大せず、周囲監視対象を画角内に収めつつ撮影方向を変化させて撮影範囲を拡大してもよい。つまり、周囲撮影モードでの撮影範囲は、撮影方向を変えて撮影される複数の画像を合わせた撮影範囲で定義し、当該複数の画像を合わせた撮影範囲が基本撮影モードより拡大するように制御することもできる。
例えば、カメラ制御手段73は周囲撮影モードにて、基本撮影モードと同じズーム倍率で、基本撮影モードの撮影方向からずれた複数の撮影方向を比較的短時間の間隔で順次撮影する。図4は周囲撮影モードにて撮影方向を制御して撮影範囲を拡大する例を説明する模式図である。この例では、移動物体100を画角110の中央にて撮影する動作と移動物体100が画角110の中央以外(図4では四隅)にて撮影する動作とが交互となるように撮影方向を制御する。具体的には、移動物体100の位置を基準にして撮影方向を時刻t1〜t8に示す画角110となるように変化させる。時刻t1では、移動物体100が画角110の中心に位置するように撮影方向を設定し、時刻t2では、撮影方向を時刻t1の位置から右下にずらして移動物体100を画角110の左上に捉える。次に、時刻t3にて一旦、移動物体100が画角110の中心となる位置に撮影方向を戻して撮影した後、時刻t4では撮影方向を時刻t3の位置から左下にずらして移動物体100を画角110の右上に捉える。続く時刻t5では再び、移動物体100を画角110の中心にて撮影した後、時刻t6では撮影方向を左上にずらして移動物体100を画角110の右下に捉え、また、時刻t7にて移動物体100を中心に撮影した後、時刻t8では撮影方向を右上にずらして移動物体100を画角110の左下に捉える。
この制御では、時刻t1〜t8の動作を1周期として、これを繰り返すことができる。また、より単純な制御として、図4に示す8時刻のうち時刻t2,t4,t6,t8の動作だけを順次行うこともできる。また、当該制御中に移動物体100は移動し得、これに対応して各時刻の撮影方向は移動物体100の最新の位置を基準にして設定することができる。
カメラ制御手段73は、物体検知部5により周囲監視対象の移動物体である追尾物体の検知位置を基準点とする所定範囲内にて周囲監視対象ではない移動物体である近傍物体が検知された場合に、撮影方向及びズーム倍率の少なくとも一方を制御して追尾物体及び近傍物体の双方を撮影範囲内に捉える双方撮影制御を行うこともできる。
例えば、双方撮影制御として、追尾物体及び近傍物体の両方の検知位置の中間位置が画角の中央となるように撮影方向を制御し、両物体が画角内となるズーム倍率を設定する。近傍物体を検知する上記所定範囲は、周囲撮影モードの拡大された画角(角度Φとする)の2倍未満の画角にて撮影される範囲とすることができる。この場合、基本的に、近傍物体と当該画角の中心に位置する追尾物体との距離はΦ未満となるので、双方撮影制御では、周囲撮影モードの拡大された画角Φよりズームアップした状態で両物体を撮影することが可能になる。
なお、周囲撮影モードにおいて、上記所定範囲を周囲撮影モードの拡大された画角よりさらに大きく設定して近傍物体を検知し双方撮影制御を行うことで、周囲監視対象へ接近する不審者といった警戒事象などを、双方撮影制御を行わない場合よりも早く画像にて把握することができる。
また、双方撮影制御として、追尾物体と近傍物体とのいずれか一方が画角の中央となるように撮影方向を制御し、他方の物体が画角内となるようにズーム倍率を制御してもよい。
カメラ制御手段73は、近傍物体が検知されると、双方撮影制御に先立って、当該近傍物体を所定以上の大きさにクローズアップ撮影する制御を行ってもよい。この制御では、近傍物体の特徴情報を取得することを目的とするため、基本撮影モードにおけるズーム倍率と同等かそれより高倍率で制御することが好ましい。また、図5の模式図に示すように、画角(矩形104)で追尾する周囲監視対象の移動物体100の検知位置から所定範囲内にて近傍物体112が検知されると(時刻t1)、追尾撮影対象を一旦、周囲監視対象から近傍物体に切り替えて(時刻t2)、矩形114で示す画角内に写る近傍物体の画像から当該近傍物体の特徴情報を取得し、しかる後、時刻t3にて矩形116で示す撮影範囲を設定する双方撮影制御を行うようにしてもよい。
図6は監視装置2のカメラ制御の一例の概略のフロー図である。物体検知部5において移動物体が検知されると(ステップS1)、種別判定手段75は当該移動物体が周囲監視対象であるか否かを判定し、追尾撮影対象設定手段76は当該種別に基づいて追尾撮影対象にする物体を設定する(ステップS2)。
追尾撮影対象に設定した移動物体が周囲監視対象である場合(ステップS3にて「Yes」の場合)、カメラ制御手段73は周囲撮影モードに設定する(ステップS4)。周囲撮影モードではカメラ制御手段73は、基本撮影モードにて検知位置に基づいて設定されるズーム倍率よりも低倍率でズーム制御をするなどし、当該カメラ制御に基づいて撮像部6は追尾対象の移動物体を含む周囲の状況を撮影する(ステップS5)。また、カメラ制御手段73は、周囲監視対象から所定範囲内に他の移動物体の存在が検知された場合(ステップS6にて「Yes」の場合)、当該移動物体を近傍物体として双方撮影制御を行う(ステップS7)。具体的には周囲監視対象と近傍物体とが撮影範囲内に収まるようにPTZ制御を行う。一方、近傍物体が検知されない場合には(ステップS6にて「No」の場合)、双方撮影制御を行われず、撮像部6は周囲監視対象をその検知位置に応じて追尾撮影する。
また、ステップS2にて周囲監視対象以外の移動物体が追尾対象に設定された場合には(ステップS3にて「No」の場合)、カメラ制御手段73は基本撮影モードに設定する(ステップS8)。基本撮影モードではカメラ制御手段73は、検知位置に基づくPTZ制御を行い、当該カメラ制御に基づいて撮像部6は移動物体を追尾撮影する(ステップS9)。
なお、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更され得る。