以下、図面を参照して本発明の基板液処理方法、記憶媒体および基板液処理装置の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面に示されている構成には、図示と理解のしやすさの便宜上、サイズ及び縮尺等が実物のそれらから変更されている部分が含まれ得る。
図1は、本実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。以下では、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
図1に示すように、基板処理システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3と、を備えている。搬入出ステーション2および処理ステーション3は、互いに隣接されて設けられている。
搬入出ステーション2は、キャリア載置部11と、搬送部12と、を備えている。キャリア載置部11には、複数枚の基板、本実施形態では半導体ウエハ(以下、ウエハWと記す)を水平状態で収容する複数のキャリアCが載置される。
搬送部12は、キャリア載置部11に隣接して設けられている。搬送部12は、その内部に設けられた基板搬送装置13および受渡部14を備えている。基板搬送装置13は、ウエハWを保持するウエハ保持機構を備えている。また、基板搬送装置13は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心として旋回可能になっている。基板搬送装置13は、ウエハ保持機構を用いてキャリアCと受渡部14との間でウエハWの搬送を行う。
処理ステーション3は、搬送部12に隣接して設けられている。処理ステーション3は、搬送部15と、複数の処理ユニット16と、を備えている。複数の処理ユニット16は、搬送部15の両側に並べて設けられている。
搬送部15は、内部に基板搬送装置17を備えている。基板搬送装置17は、ウエハWを保持するウエハ保持機構を備えている。基板搬送装置17は、水平方向および鉛直方向への移動、並びに鉛直軸を中心として旋回可能になっている。また、基板搬送装置17は、ウエハ保持機構を用いて受渡部14と処理ユニット16との間でウエハWの搬送を行う。
処理ユニット16は、基板搬送装置17によって搬送されるウエハWに対して所定の基板液処理を行う。
また、基板処理システム1は、制御装置4を備えている。制御装置4は、例えばコンピュータであり、制御部18と記憶部19とを備えている。記憶部19には、基板処理システム1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納されている。制御部18は、記憶部19に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、処理ユニット16を含む基板処理システム1の動作を制御する。
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されている。このプログラムは、記憶媒体から制御装置4の記憶部19にインストールされていてもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、例えば、ハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
次に、図2を用いて、本実施の形態における処理ユニット16(基板液処理装置)について説明する。この処理ユニット16は、ウエハWに処理液を供給してウエハWを液処理するように構成されている。
図2に示すように、処理ユニット16は、ウエハWを液処理する液処理空間20と、液処理空間20内のウエハWの表面に処理液を供給する処理液供給部40と、液処理空間20の雰囲気を排気する排気部30と、を備えている。このうち液処理空間20は、チャンバ21内に設けられた回収カップ26の内側に形成された空間であって、液処理されるウエハWが配置される空間である。
より具体的には、本実施の形態による処理ユニット16は、チャンバ21と、基板保持部22と、回収カップ26と、を更に備えている。チャンバ21内には、基板保持部22と、基板保持部22の周囲に設けられた回収カップ26とが収容されている。
チャンバ21の天井部には、FFU(Fan Filter Unit)23が設けられている。FFU23は、清浄な空気をチャンバ21内に吐出して、液処理空間20を含むチャンバ21内にダウンフローを形成する。
基板保持部22は、ウエハWを水平に保持している。基板保持部22は、バキュームチャックタイプであってもよく、メカニカルチャックタイプであってもよい。
基板保持部22は、支柱部24を介して、液処理空間20内に配置されたウエハWを回転させる回転駆動部25に連結されている。支柱部24は、鉛直方向に延在する部材である。支柱部24の基端部は、回転駆動部25によって回転可能に支持されている。支柱部24の先端部において基板保持部22が水平に支持されている。回転駆動部25は、支柱部24を鉛直軸まわりに回転させる。これにより、支柱部24に支持された基板保持部22が回転し、基板保持部22に保持されたウエハWが回転する。
回収カップ26は、基板保持部22を取り囲むように配置されている。回収カップ26は、基板保持部22の回転によってウエハWから飛散する処理液やリンス液を捕集する。回収カップ26の底部には、排液口27が形成されており、回収カップ26によって捕集された処理液やリンス液は、かかる排液口27から処理ユニット16の外部へ排出される。また、回収カップ26の底部には、FFU23から供給される気体を処理ユニット16の外部へ排出する排気口28が形成されている。
排気口28には、上述した排気部30が接続されている。排気部30は、排気口28から処理ユニット16の外部に延びる排気管31と、排気管31に設けられた排気駆動部32と、を備えている。排気駆動部32は、例えば真空ポンプやエジェクタで構成することができる。
処理液供給部40は、液処理空間20内のウエハWの表面に処理液を供給する。本実施の形態においては、処理液供給部40は、ノズル41と、ノズル41に処理液供給ライン42を介して接続された処理液供給源43と、処理液供給ライン42に設けられた処理液バルブ44と、を有している。処理液供給源43から処理液供給ライン42を介してノズル41に処理液が供給され、ノズル41からウエハWの表面に向けて処理液が吐出される。図2に示す例では、ノズル41は、ウエハWの上方において、ウエハWの中心から偏心した位置に配置されているが、ウエハWの中心上に配置されていてもよい。処理液バルブ44は、ノズル41への処理液の供給と停止を切り替えるように構成されている。処理液バルブ44は、更に、処理液の供給量を調整可能になっていてもよい。処理液の例としては、例えば、エッチング液、洗浄用の薬液、めっき液、絶縁膜の前駆体を含む液等が挙げられる。処理液の温度は、室温よりも高くなっている。
また、本実施の形態による処理ユニット16は、液処理空間20内のウエハWの表面にリンス液を供給するリンス液供給部50と、液処理空間20に高湿度気体を供給する高湿度気体供給部60と、液処理空間20に低湿度気体を供給する低湿度気体供給部70と、を更に備えている。
リンス液供給部50は、液処理空間20内のウエハWの表面にリンス液を供給する。本実施の形態においては、リンス液供給部50は、ノズル51と、ノズル51にリンス液供給ライン52を介して接続されたリンス液供給源53と、リンス液供給ライン52に設けられたリンス液バルブ54と、を有している。リンス液供給源53からリンス液供給ライン52を介してノズル51にリンス液が供給され、ノズル51からウエハWの表面に向けてリンス液が吐出される。本実施の形態では、リンス液供給部50のノズル51は、処理液供給部40のノズル41と兼用(一体化)されている。また、リンス液供給ライン52は、処理液供給ライン42を介してノズル51(ノズル41)に接続されており、リンス液は、リンス液供給ライン52から処理液供給ライン42を通ってノズル51に供給される。リンス液バルブ54は、ノズル51へのリンス液の供給と停止を切り替えるように構成されている。リンス液バルブ54は、更に、リンス液の供給量を調整可能になっていてもよい。リンス液の例としては、例えば、純水(DIW)などが挙げられる。
高湿度気体供給部60は、液処理空間20内に高湿度気体を供給することで、液処理空間20の湿度を高める(液処理空間20を加湿する)ように構成されている。本実施の形態においては、高湿度気体供給部60は、給気口61と、給気口61に高湿度気体ライン62を介して接続された高湿度気体供給源63と、高湿度気体ライン62に設けられた高湿度気体バルブ64と、を有している。高湿度気体供給源63から高湿度気体ライン62を介して給気口61に高湿度気体が供給され、給気口61から液処理空間20に高湿度気体が供給される。高湿度気体バルブ64は、給気口61への高湿度気体の供給と停止を切り替えるように構成されている。高湿度気体バルブ64は、更に、高湿度気体の供給量を調整可能になっていてもよい。高湿度気体は、FFU23から供給される清浄な空気よりも湿度が高い気体であって、酸化作用を有していない気体であれば特に限られることはないが、例えば、水蒸気や、高湿度の空気であってもよい。高湿度の空気である場合には、ウエハWに供給される処理液と同程度の温度であることが好ましい。ウエハWの表面に形成されるパターンを形成する金属材料が劣化して、パターンによって構成されるデバイスの特性が劣化する可能性を低減できるからである。
低湿度気体供給部70は、液処理空間20内に低湿度気体を供給することで、液処理空間20の湿度を低下させるように構成されている。本実施の形態においては、低湿度気体供給部70は、給気口71と、給気口71に低湿度気体ライン72を介して接続された低湿度気体供給源73と、低湿度気体ライン72に設けられた低湿度気体バルブ74と、を有している。低湿度気体供給源73から低湿度気体ライン72を介して給気口71に低湿度気体が供給され、給気口71から液処理空間20に低湿度気体が供給される。本実施の形態では、低湿度気体供給部70の給気口71は、高湿度気体供給部60の給気口61と兼用(一体化)されている。また、低湿度気体ライン72は、高湿度気体ライン62を介して給気口71に接続されており、低湿度気体は、低湿度気体ライン72から高湿度気体ライン62を通って給気口71に供給される。低湿度気体バルブ74は、給気口71への低湿度気体の供給と停止を切り替えるように構成されている。低湿度気体バルブ74は、更に、低湿度気体の供給量を調整可能になっていてもよい。低湿度気体は、上述した高湿度気体よりも湿度が低い気体であって、酸化作用を有していない気体であれば特に限られることはないが、例えば、FFU23から供給される清浄な空気と同様な空気であってもよく、または、FFU23からの空気よりも湿度が低い低湿度の空気や不活性ガス(例えば、窒素ガス)であってもよい。
本実施の形態による処理ユニット16は、図2に示すように、液処理空間20を開放可能に上方から閉塞する上カバー80と、ウエハWの周囲に、ウエハWの表面に供給された処理液を堰き止める堰部85と、を更に備えている。
上カバー80は、円板状に形成された天板81と、天板81の周縁部から下方に延びる側壁部82と、を有している。側壁部82の下端部82aは、回収カップ26の内周端部26aに当接または近接するように形成されている。
側壁部82には、連結部83を介して昇降駆動部84が連結されている。この昇降駆動部84によって上カバー80が昇降可能になっている。すなわち、上カバー80は、液処理空間20を閉塞する閉塞位置と、液処理空間20を開放する開放位置と、ウエハWの搬入出時に位置付けられる退避位置と、に位置付けられる。
閉塞位置は、後述する図4等に示すように、上カバー80が最も下降した位置である。上カバー80が閉塞位置に位置付けられた場合、上カバー80の側壁部82の下端部82aが、回収カップ26の内周端部26a(先端部)に当接または近接する。ここで、閉塞とは、回収カップ26の内周端部26aに、側壁部82の下端部82aが隙間なく当接して液処理空間20が密閉されることに限られることはなく、内周端部26aと側壁部82の下端部82aとの間に形成された隙間から液処理空間20内に気体が流入した場合であっても、その流入する気体によって生じる液処理空間20内の気流が、ウエハWの回転によって生じる気流を除き、実質的に無視できる程度に小さい場合を含む概念として用いている。
開放位置は、後述する図10に示すように、閉塞位置と退避位置との間にある位置である。上カバー80が開放位置に位置付けられた場合、上カバー80の側壁部82の下端部82aは、回収カップ26の内周端部26aから離間し、側壁部82の下端部82aと内周端部26aとの間の開口から、液処理空間20内に、FFU23からの清浄な空気が流入する。
退避位置は、後述する図3に示すように、上カバー80が最も上昇した位置である。上カバー80が退避位置に位置付けられた(退避された)場合、上カバー80の側壁部82の下端部82aと回収カップ26の内周端部26aとの間の開口が、開放位置に位置付けられた場合の開口よりも大きく形成される。そして、この退避位置における開口を介して、液処理空間20に対してウエハWが搬入されたり、搬出されたりする。
上述したノズル41(51)および給気口61(71)は、上カバー80の天板81に設けられている。図2に示す例では、ノズル41は、天板81から下方に突出するように配置され、このノズル41に、上述した処理液供給ライン42が接続されている。給気口61は、天板81に設けられた開口部として構成されており、この給気口61に、上述した高湿度気体ライン62が接続されている。上カバー80の昇降に、処理液供給ライン42および高湿度気体ライン62が追従可能に構成されている。
図2に示すように、堰部85は、上カバー80に取り付けられている。より具体的には、堰部85は、複数(例えば、図6に示すように2つ)の堰支持部86を介して、上カバー80の天板81に取り付けられている。このため、堰部85は、上カバー80と一体に昇降する。堰部85は、リング状の平面形状を有しており、ウエハWの外周縁をウエハWの外周側から覆い、ウエハWの表面に処理液を堰き止めることができるように形成されている。堰部85の内周面は、ウエハWの外周縁に当接していることに限られることはなく、ウエハWの表面に処理液を堰き止めることができれば、堰部85の内周面とウエハWの外周縁との間には隙間が形成されていてもよい。堰支持部86は、上下方向に延びる棒状に形成されており、堰支持部86同士は離間している。
上述した回転駆動部25、処理液供給部40、リンス液供給部50、排気部30、高湿度気体供給部60および低湿度気体供給部70は、上述した制御装置4により制御される。すなわち、制御装置4の制御部18が、回転駆動部25、処理液供給部40の処理液バルブ44、リンス液供給部50のリンス液バルブ54、排気駆動部32、高湿度気体供給部60の高湿度気体バルブ64および低湿度気体供給部70の低湿度気体バルブ74を制御する。
より具体的には、制御部18は、少なくとも液処理空間20内のウエハWの表面の全体に処理液供給部40から供給される処理液の液膜が形成されている間、液処理空間20の雰囲気の排気を停止するように、処理液供給部40および排気部30を制御する。ここで、「排気を停止する」とは、厳密に排気を停止する場合に限られることはなく、実質的に排気を停止するという意味で用いている。後述する液処理工程における処理液の温度の均一性を許容範囲内に収めることができれば、液処理空間20の雰囲気をわずかに排気してもよい。このため、「排気を停止する」という記載には、わずかに排気を行う場合をも含む概念として用いている。
また、制御部18は、ウエハWを第1回転数で回転させながらウエハWの表面に処理液を供給し、その後、ウエハWを第2回転数で回転させながらウエハWの表面に処理液を供給するように、回転駆動部25および処理液供給部40を制御する。第2回転数は、第1回転数よりも小さい回転数に設定される。
また、制御部18は、液処理空間20内のウエハWの表面にリンス液供給部50からリンス液を供給している間、液処理空間20の雰囲気を排気するように、リンス液供給部50および排気部30を制御する。
上記のように構成された基板処理システム1における基板液処理方法について説明する。以下に示す基板液処理方法の一連の工程は、制御装置4の制御部18が基板処理システム1の各機能部品の動作を制御することにより実行される。
[搬入工程]
まず、搬入工程として、図3に示すように、ウエハWを液処理する液処理空間20に、ウエハWが搬入される。搬入工程においては、排気駆動部32は駆動されて液処理空間20の雰囲気が排気口28に排気される。また、搬入工程と、後述する液処理工程と、リンス処理工程と、乾燥工程とが行われている間、FFU23から清浄な空気がチャンバ21内に吐出される。吐出された清浄な空気は、液処理空間20を通過して、上述した排気口28に排気されるとともに、排気口28とは別にチャンバ21に設けられた排気口(図示せず)から排気される。
搬入工程においては、搬入出ステーション2の基板搬送装置13が、キャリア載置部11に載置されたキャリアCからウエハWを取り出し、取り出したウエハWを受渡部14に載置する。受渡部14に載置されたウエハWは、処理ステーション3の基板搬送装置17によって受渡部14から取り出されて、処理ユニット16へ搬入される。
ウエハWを処理ユニット16へ搬入する際、図3に示すように、上カバー80が退避位置に位置付けられる。このことにより、上カバー80の側壁部82の下端部82aと、回収カップ26の内周端部26a(先端部)との間の開口から、ウエハWが液処理空間20に搬入される。搬入されたウエハWは、基板保持部22に受け渡されて、基板保持部22に水平に保持される。
[液処理工程]
搬入工程の後、液処理工程として、液処理空間20内のウエハWの表面に処理液が供給されてウエハWが液処理される。
まず、昇降駆動部84が駆動されて、図4に示すように、上カバー80が退避位置から下降し、閉塞位置に位置付けられる。このことにより、液処理空間20が上カバー80によって上方から閉塞される。また、上カバー80に取り付けられている堰部85が、ウエハWの外周側に配置される。
続いて、図5に示すように、液処理空間20の排気を停止するとともに液処理空間20の湿度が高められる。
より具体的には、排気駆動部32を停止する。このことにより、液処理空間20の雰囲気の排気が停止する。この間、液処理空間20内に気流が実質的に存在しなくなり、液処理空間20が実質的に無風状態になる。
また、高湿度気体供給部60の高湿度気体バルブ64を開く。このことにより、高湿度気体供給源63から高湿度気体ライン62および給気口61を通って液処理空間20に高湿度気体が供給され、液処理空間20の湿度が高められる。この際、液処理空間20に供給される高湿度気体の流速は小さいことが好ましい。例えば、給気口61に流速低減部材としてのブレイクフィルターなどを設けることで、給気口61を高湿度気体の流速を低減させるように構成してもよく、または高湿度気体ライン62における高湿度気体の流速を小さくするようにしてもよい。このことにより、液処理空間20内の気体の流速が実質的に存在しない状態を維持することができる。
次に、回転駆動部25が駆動されて、ウエハWを回転させる。
続いて、処理液供給部40の処理液バルブ44を開く。このことにより、処理液供給源43から処理液供給ライン42を通ってノズル41に高温(室温以上の温度、以下同じ)の処理液が供給され、ノズル41からウエハWの表面に処理液が吐出される。このようにして、ウエハWの表面に高温の処理液が供給される。
ここで、液処理工程においては、まず、ウエハWを第1回転数で回転させながらウエハWの表面に処理液が供給され、その後、ウエハWの回転数を第1回転数よりも小さい第2回転数で回転させながらウエハWの表面に処理液が供給される。すなわち、図6(a)に示すように、ウエハWの表面に処理液を吐出開始した直後では、ウエハWの表面に吐出された処理液は、中心から外周縁に向かって広がっていく。この間、ウエハWを比較的高い第1回転数(例えば、1000rpm)で回転させて、処理液の広がりを促進させてウエハWの表面の全体を処理液で速やかに被膜させて液膜LPを形成する。図6(b)に示すように、処理液がウエハWの外周縁(または堰部85)に達した後、ウエハWの回転数を第2回転数(例えば、200rpm)に下げる。このことにより、処理液が遠心力によって振り切られることを防止し、外周縁における液膜LPの厚さを確保する。なお、処理液がウエハWの外周縁に達したか否かは、ノズル41からの処理液の流量とウエハWの直径とに基づいて理論的または実験的に求めてもよい。また、図6においては、図面を簡略化するために、ノズル41が、ウエハWの中心上に配置されている場合における処理液の様子を示している。
図7に示すように、ウエハWの表面に供給された処理液は、ウエハWの外周縁の外周側に配置された堰部85によって堰き止められる。このことにより、ウエハWの表面に形成される処理液の液膜LPの厚さが増大する。この液膜LPの液面が堰部85の上縁に達すると、処理液は堰部85からオーバーフローし、排液口27から排出される。
ウエハWの表面の全体に処理液の液膜LPが形成されている間、上述したように、液処理空間20の雰囲気の排気を停止している。このことにより、液膜LPから処理液が揮発することが抑制されている。
すなわち、図8(a)に示すように、液膜LPの液面には、処理液の蒸気を含む比較的湿度が高い気体で構成された中間層Mが存在していると考えられる。この中間層Mは、液膜LPと、液処理空間20におけるウエハWの周囲の気相との間に形成されている。このような中間層Mで液膜LPが覆われているため、液膜LPから処理液が揮発し難くなっている。より具体的には、中間層Mは、気体の粘性によって液膜LPの液面に付着するように形成された薄い層である。中間層Mでは、ウエハWの回転に液膜LPとともに追従するように回転しており、中間層Mの気体の速度は、周囲の気相よりも大きくなっている。このような中間層Mを構成する湿度が高い気体は、粘性によって液膜LPの液面から離れ難くなっている。このことにより、中間層Mから周囲の気相への蒸気の移動は、気体の対流などの外力で移動するというよりは、拡散現象に支配されて移動する。このため、中間層M内の蒸気が、周囲の空気へ移動することが抑制され、中間層Mの湿度が、周囲の気相よりも高くなる。なお、ウエハWの回転数が大きいほど、中間層Mの厚みは小さくなる。
例えば、図8(b)に示すように、液処理空間20に存在する気流から中間層Mが圧力を受けると、中間層Mが薄くなり得る。この場合、この薄くなった部分において、液膜LPから処理液が揮発されやすくなる。揮発した部分では、気化熱によって処理液の温度が低下し、ウエハWの表面上の液膜LPに温度分布が発生してしまう。そうすると、ウエハWの表面での液処理の程度が異なるという問題が生じる。例えば、液処理としてウエハWのエッチング処理を行う場合には、ウエハWの表面に形成された高温のエッチング液(処理液)の液膜の温度分布によって、エッチング速度が不均一になってしまう。
これに対して本実施の形態では、液処理空間20内には実質的に気流が存在しない状態になっている。このことにより、中間層Mを構成する比較的湿度が高い気体が、液処理空間20に移動し難くなり、液膜LPの液面に滞留されやすくなる。このため、中間層Mの厚さが維持され、高温の液膜LPから処理液が揮発することが抑制される。この場合、ウエハWの表面上の液膜LPに温度分布が発生することが抑制される。また、液処理空間20内には上述したように実質的に気流が存在しないため、液膜LPと液処理空間20におけるウエハWの周囲の気相との間の熱伝達係数を小さくすることができる。このため、液膜LPを形成する処理液の温度が低下することが抑制される。
また、ウエハWの表面に処理液の液膜LPが形成されている間、上述したように、液処理空間20の湿度が高められている。この点においても、液膜LPからの処理液の揮発が抑制される。
ウエハWの回転数を第2回転数で維持しながら、所定時間、ウエハWの表面への処理液の吐出が継続される。このようにして、ウエハWが、高温の処理液によって液処理が行われる。
[リンス処理工程]
液処理工程の後、リンス処理工程として、液処理空間20内のウエハWの表面にリンス液が供給されて、ウエハWがリンス処理される。
より具体的には、まず、図9に示すように、処理液供給部40の処理液バルブ44を閉じるとともに、リンス液供給部50のリンス液バルブ54を開く。このことにより、ノズル41への処理液の供給が停止される。また、リンス液供給源53からリンス液供給ライン52および処理液供給ライン42を通ってノズル41にリンス液が供給され、ノズル41からウエハWの表面にリンス液が吐出される。このようにして、ウエハWの表面にリンス液が供給され、ウエハWの表面上の処理液の液膜LPが、リンス液に置換されて、ウエハWの表面の全体にリンス液の液膜LRが形成される。
ウエハWの表面の全体にリンス液の液膜LRが形成されると、昇降駆動部84が駆動されて、図10に示すように、上カバー80が閉塞位置から開放位置に位置付けられる。このことにより、液処理空間20が上方に開放される。この間、ノズル41からウエハWの表面にリンス液は吐出され続ける。
続いて、図10に示すように、液処理空間20の排気を開始するとともに液処理空間20の湿度を低下させる。
より具体的には、排気駆動部32を駆動する。このことにより、液処理空間20の雰囲気が排気口28に排気される。すなわち、FFU23からの清浄な空気が液処理空間20に流入して液処理空間20から排気口28に排気される。このため、液処理空間20内に排気口28に向かう気流が形成される。この気流によって、液処理工程において上カバー80の内面(天板81の下面および側壁部82の内周面)に付着した水滴は蒸発し、結露が解消される。
また、高湿度気体供給部60の高湿度気体バルブ64を閉じるとともに、低湿度気体供給部70の低湿度気体バルブ74を開く。このことにより、液処理空間20への高湿度気体の供給が停止される。また、低湿度気体供給源73から低湿度気体ライン72、高湿度気体ライン62および給気口61を通って液処理空間20に低湿度気体が供給され、液処理空間20の湿度を低下させる。この低湿度気体によっても、上述した水滴が蒸発し、結露が解消される。
[乾燥工程]
リンス処理工程の後、乾燥工程として、図11に示すように、液処理空間20内のウエハWを乾燥する。
より具体的には、リンス液供給部50のリンス液バルブ54を閉じる。このことにより、ノズル41およびウエハWへのリンス液の供給が停止される。ウエハWは回転し続けており、ウエハW上のリンス液は、遠心力によって振り切られ、ウエハWの表面からリンス液が除去される。
乾燥工程においては、低湿度気体供給部70からの低湿度気体の供給を停止してもよい。すなわち、低湿度気体供給部70の低湿度気体バルブ74を閉じて、液処理空間20への低湿度気体の供給を停止してもよい。
[搬出工程]
乾燥工程の後、搬出工程として、図12に示すように、液処理空間20からウエハWが搬出される。
より具体的には、まず、回転駆動部25を停止して、ウエハWの回転を止める。
続いて、昇降駆動部84が駆動されて、上カバー80が開放位置から上昇し、退避位置に位置付けられる。このことにより、上カバー80の側壁部82の下端部82aと、回収カップ26の内周端部26aとの間に、ウエハWを搬出するための開口が形成される。液処理空間20内で基板保持部22に保持されていたウエハWは、基板搬送装置17に受け渡されて、処理ユニット16から搬出される。搬出されたウエハWは、受渡部14に載置される。そして、受渡部14に載置された処理済のウエハWは、基板搬送装置13によってキャリア載置部11のキャリアCへ戻される。
このように本実施の形態によれば、ウエハWの表面の全体に処理液の液膜LPが形成されている間、液処理空間20の雰囲気の排気が停止されている。このことにより、液処理空間20内で気流を存在させなくすることができ、ウエハWの表面に形成された処理液の液膜LPから、処理液が揮発することを抑制できる。このため、ウエハWの表面上の液膜LPに温度分布が発生することを抑制でき、ウエハWの表面上の処理液の温度の均一性を高めることができる。また、ウエハW自体の温度の均一性をも高めることができる。この結果、ウエハWの液処理を均一化させることができ、デバイスの品質を向上させてデバイスの歩留まり低下を抑制することができる。
また、本実施の形態によれば、ウエハWに処理液を供給している間、液処理空間20に高湿度気体が供給される。このことにより、液処理空間20の湿度を高めることができ、ウエハWの表面に形成された処理液の液膜LPから、処理液が揮発することをより一層抑制することができる。このため、ウエハWの表面上の処理液の温度の均一性をより一層高めることができる。
また、本実施の形態によれば、ウエハWに処理液を供給している間、ウエハWを第1回転数で回転させて、その後にウエハWを、第1回転数よりも小さい第2回転数で回転させる。このことにより、処理液の液膜LPが形成されていないウエハWの表面に処理液を供給する際には、比較的高い第1回転数でウエハWを回転させることができる。このため、ウエハWの表面に供給された処理液の広がりを促進させることができ、ウエハWの表面の全体を処理液で速やかに被覆させて液膜LPを形成させることができる。この場合、ウエハWの液処理を不均一になることを抑制できる。一方、処理液の液膜LPが形成された後には、比較的小さい第2回転数でウエハWを回転させることができる。このことにより、ウエハWの表面に供給された処理液が、ウエハWの回転による遠心力によって振り切られることを防止でき、液膜LPの厚さを増大させることができる。このため、ウエハWの表面上の処理液の温度変化を抑制することができ、ウエハWの表面上の処理液の温度のより一層均一性を高めることができる。
また、本実施の形態によれば、ウエハWの表面の全体にリンス液の液膜LRが形成されている間、液処理空間20の雰囲気が排気されている。このことにより、リンス液のミストがウエハWに付着してパーティクルが形成されることを防止できる。
また、本実施の形態によれば、ウエハWにリンス液を供給している間、液処理空間20に低湿度気体が供給される。このことにより、液処理空間20の湿度を低減することができる。液処理空間20内に結露が生じていた場合には、この結露を解消させることができる。
また、本実施の形態によれば、ウエハWに処理液を供給している間、液処理空間20が上カバーによって上方から閉塞される。このことにより、ウエハWの表面に形成された処理液の液膜LPから、処理液が揮発することをより一層抑制できる。また、液処理空間20の湿度を容易に高めることができ、この点においても、処理液の揮発をより一層抑制することができる。
さらに、本実施の形態によれば、ウエハWに処理液を供給している間、ウエハWの表面に供給された処理液が、堰部85によって堰き止められる。このことにより、ウエハWの表面に形成される処理液の液膜LPの厚さを増大させることができる。このため、ウエハWの表面上の処理液の温度変化を抑制することができ、ウエハWの表面上に供給された処理液の温度の均一性をより一層高めることができる。また、堰部85の高さ寸法を変更することにより、ウエハWの表面上に形成される処理液の液膜LPの厚さを容易に変更することができ、仕様に応じたウエハWの液処理を容易に行うことができる。
なお、上述した本実施の形態においては、リンス液供給部50のノズル51が、処理液供給部40のノズル41と兼用され、リンス液供給ライン52が、処理液供給ライン42を介してノズル51(ノズル41)に接続されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、リンス液供給部50のノズル51は、処理液供給部40のノズル41と別体に形成されていてもよい。この場合、リンス液供給ライン52は、処理液供給ライン42を介することなくノズル51に接続されていてもよい。また、ノズル41、51は、ウエハWの上方の所定の位置に維持されて処理液やリンス液を吐出するようにしてもよいが、水平方向に移動しながら処理液やリンス液を吐出するように(いわゆるスキャンノズルとして)構成されていてもよい。
また、上述した本実施の形態においては、上カバー80を閉鎖位置に位置付けた後に、液処理空間20の雰囲気の排気を停止し、その後にウエハWの表面への処理液の供給を開始する例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、液処理空間20の雰囲気の排気を停止するタイミングは、ウエハWの表面の全体に処理液の液膜LPが形成される前であれば、任意である。この場合においても、ウエハWの表面の全体に処理液の液膜LPが形成されている間、液処理空間20の雰囲気の排気を停止することができる。液処理空間20への高湿度気体の供給を開始するタイミングも、ウエハWの表面の全体に処理液の液膜LPが形成される前であれば、任意である。また、液処理空間20の雰囲気の排気の停止と、液処理空間20への高湿度気体の供給の開始は、同時に行ってもよく、別々のタイミングで行ってもよい。
また、上述した本実施の形態においては、上カバー80を開放位置に位置付けた後に、液処理空間20の雰囲気の排気を開始する例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、液処理空間20の雰囲気の排気を開始するタイミングは、リンス液の供給を開始する後であれば、任意である。この場合においても、ウエハWの表面の全体に処理液の液膜LPが形成されている間、液処理空間20の雰囲気の排気を停止することができる。液処理空間20への低湿度気体の供給を開始するタイミングも、リンス液の供給を開始する後であれば、任意である。また、液処理空間20の雰囲気の排気の開始と、液処理空間20への低湿度気体の供給の開始は、同時に行ってもよく、別々のタイミングで行ってもよい。
さらに、上述した本実施の形態においては、処理液の温度が高温(室温以上の温度)である例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、処理液の温度が室温と同等であってもよい。処理液の温度が室温と同等であっても、処理液の揮発によりウエハWや処理液の温度低下の可能性があるが、液処理空間20の雰囲気の排気を停止することにより、ウエハWの表面に形成された処理液の液膜LPから、処理液が揮発することを抑制できる。このため、ウエハWの表面上の液膜LPに温度分布が発生することを抑制でき、ウエハWの表面上の処理液の温度の均一性を高めることができる。
本発明は上記実施の形態及び変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態及び変形例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。実施の形態及び変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる変形例にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
次に、本実施の形態を実施例により更に具体的に説明するが、本実施の形態は、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
本実施例では、処理液の代わりにDIW(純水)を用いて、ウエハWの表面の温度を計測した。より具体的には、ウエハWを200rpmで回転させながら、64℃のDIWをウエハWの中心に供給した。DIWの供給を続けながら、ウエハWの表面上にDIWの液膜を形成した。DIWの供給を開始してから100秒後に、ウエハWの表面の温度を多点計測した。その結果を、図13に示す。図13は、ウエハWの表面の温度分布を示すグラフである。図13の横軸はウエハWの半径を示し、縦軸は温度を示している。図13に実線で示す実施例は、DIWを供給している間、液処理空間20の排気を停止した場合の温度分布である。破線で示す比較例は、DIWを供給している間、液処理空間20の排気を行っている場合の温度分布である。
図13に示すように、ウエハWの中心から外周縁に向かって表面温度が徐々に低下するという温度分布が得られた。実施例でのウエハWの表面の温度範囲は8.1℃であり、比較例での温度範囲は10.7℃であった。このように、比較例よりも実施例の方が、温度範囲が小さいことが確認できた。このため、ウエハW自体の温度の均一性が高められるとともに、ウエハWの表面上の液膜の温度の均一性を高められることが確認できた。なお、図13では、ウエハWの中心で実施例と比較例とに微小な温度差が見られる。これは、比較例では液処理空間20の排気の影響を受けて温度がわずかに低くなっていることによるものと考えられる。図13に示すように、ウエハWの外周縁では実施例と比較例とで大きな温度差が生じていることから、ウエハWの中心での温度差の影響は、比較例よりも実施例の方で温度範囲が小さくなるという結果を左右するものではないと考える。