以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
[実施例1]
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
図1は、本実施例の画像形成装置100の概略断面図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を用いてフルカラー画像を形成することが可能な、中間転写方式を採用したタンデム型の複合機(複写機、プリンタ、ファクシミリ装置の機能を有する。)である。
画像形成装置100は、複数の画像形成部(画像形成ユニット)として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の画像を形成する第1、第2、第3、第4の画像形成部UY、UM、UC、UKを有する。各画像形成部UY、UM、UC、UKにおける同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、いずれかの色用の要素であることを示す符号の末尾のY、M、C、Kを省略して総括的に説明することがある。画像形成部Uは、後述する感光ドラム1、帯電ローラ2、露光装置3、現像装置4、一次転写ローラ5、ドラムクリーニング装置6などを有して構成される。図2は、代表して1つの画像形成部Uを示す概略断面図である。
画像形成部Uは、像担持体としての回転可能なドラム型(円筒形)の感光体(電子写真感光体)である感光ドラム1を有する。感光ドラム1は、図中矢印R1方向(時計回り)に所定の周速度で回転駆動される。回転する感光ドラム1の表面は、帯電手段としてのローラ型の帯電部材である帯電ローラ2によって、所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に一様に帯電処理される。帯電処理された感光ドラム1の表面は、露光手段としての露光装置(レーザースキャナ)3によって走査露光され、感光ドラム1上に静電像(静電潜像)が形成される。露光装置3は、各画像形成部Uに対応する色の画像情報(画像信号)に基づいて、感光ドラム1上にレーザー光を照射し、電荷を中和して静電像を形成する。感光ドラム1上に形成された静電像は、現像手段としての現像装置4によって現像剤としてのトナーが供給されて現像(可視化)され、感光ドラム1上にトナー像(現像剤像)が形成される。本実施例では、一様に帯電処理された後に露光されることで電位の絶対値が低下した感光ドラム1上の露光部(イメージ部)に、感光ドラム1の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーが付着する。
4個の感光ドラム1に対向するように、無端状のベルトで構成された回転可能な中間転写体である中間転写ベルト7が配置されている。中間転写ベルト7は、複数の張架ローラ(支持ローラ)に架け渡されて張架されている。中間転写ベルト7は、複数の張架ローラのうちの一つである駆動ローラが回転駆動されることで、図中矢印R2方向(反時計回り)に所定の周速度(表面の移動速度)で回転(周回移動)する。なお、本実施例では、複数の張架ローラのうち、中間転写ベルト7を挟んで後述する二次転写外ローラ8に対向する二次転写内ローラ9が駆動ローラを兼ねる。中間転写ベルト7の内周面側には、各感光ドラム1に対応して、一次転写手段としてのローラ型の一次転写部材である一次転写ローラ5が配置されている。一次転写ローラ5は、中間転写ベルト7を介して感光ドラム1に向けて付勢され、感光ドラム1と中間転写ベルト7とが接触する一次転写部(一次転写ニップ)T1を形成する。上述のように感光ドラム1上に形成されたトナー像は、一次転写部T1において、一次転写ローラ5により付与される所定の加圧力及び静電的負荷バイアスによって、回転している中間転写ベルト7上に一次転写される。一次転写工程時に、一次転写ローラ5には、一次転写電源(高圧電源回路)E1により、トナーの正規の帯電極性(現像時の帯電極性)とは逆極性(本実施例では正極性)の一次転写バイアス(一次転写電圧)が印加される。例えば、フルカラー画像の形成時には、各感光ドラム1上に形成されたY、M、C、Kの各色のトナー像が、各一次転写部T1において、中間転写ベルト7上に重ね合わされるようにして順次一次転写される。
中間転写ベルト7の外周面側において、複数の張架ローラのうちの一つである二次転写内ローラ9に対向する位置には、二次転写手段としてのローラ型の二次転写部材である二次転写外ローラ8が配置されている。二次転写外ローラ8は、中間転写ベルト7を介して二次転写内ローラ9に向けて付勢され、中間転写ベルト7と二次転写外ローラ8とが接触する二次転写部(二次転写ニップ)T2を形成する。上述のように中間転写ベルト7上に形成されたトナー像は、二次転写部T2において、二次転写外ローラ8により付与される所定の加圧力と静電的負荷バイアスによって、紙などの記録材(記録媒体、シート)P上に二次転写される。記録材Pは、二次転写部T2において、中間転写ベルト7と二次転写外ローラ8とに挟持されて搬送される。二次転写工程時に、二次転写外ローラ8には、二次転写電源(高圧電源回路)E2(図3)により、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の二次転写バイアス(二次転写電圧)が印加される。記録材Pは、記録材収容部10から、給送ローラ11などによって1枚ずつ送り出され、レジストローラ対12まで搬送される。この記録材Pは、レジストローラ対12によって、中間転写ベルト7上のトナー像とタイミングが合わされて二次転写部T2へと搬送される。レジストローラ対12によって搬送される記録材Pは、ガイド部材などで構成される搬送路13を通って二次転写部T2へと搬送される。
トナー像が転写された記録材Pは、定着手段としての定着装置15へと搬送される。定着装置15は、未定着のトナー像を担持した記録材Pを加熱及び加圧することで、トナー像を記録材Pに定着(溶融、固着)させる。トナー像が定着された記録材Pは、排出ローラ対などにより画像形成装置100の装置本体110の外部へと排出(出力)される。
また、一次転写工程時に中間転写ベルト7上に転写されずに感光ドラム1上に残留したトナー(一次転写残トナー)は、感光体クリーニング手段としてのドラムクリーニング装置6により感光ドラム1上から除去されて回収される。また、二次転写工程時に記録材Pに転写されずに中間転写ベルト7上に残留したトナー(二次転写残トナー)は、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置14により中間転写ベルト7上から除去されて回収される。ベルトクリーニング装置14は、中間転写ベルト7の回転方向において、二次転写部T2より下流かつ一次転写部T1(最上流の一次転写部T1Y)より上流に配置されている。
ここで、中間転写ベルト7としては、ポリイミドあるいはポリアミドなどの各種樹脂材料又はその化合物や各種ゴムなどに、カーボンブラックなどの帯電防止剤を適当量含有させた材料で形成されたものが用いられる。また、本実施例では、一次転写ローラ5は、芯金(基材)と、芯金の周囲に形成された弾性層と、を有して構成されている。本実施例では、一次転写ローラ5の弾性層は、イオン導電性の発泡スポンジ、具体的には、例えばイオン導電性のNBR(ニトリルゴム)とヒドリンゴムとを含む発泡スポンジ単層で構成されている。また、本実施例では、二次転写内ローラ9は、芯金(基材)と、芯金の周囲にEPDMなどのゴムで形成された弾性層と、を有して構成されている。また、本実施例では、二次転写外ローラ8は、芯金(基材)と、芯金の周囲にNBRやEPDMなどのゴムで形成された弾性層と、を有して構成されている。二次転写外ローラ8には二次転写電源E2が接続されており、二次転写電源E2から二次転写外ローラ8へ印加するバイアスは可変となっている。また、本実施例では、二次転写内ローラ9は電気的に接地(グランドに接続)されている。
なお、本実施例では、中間転写ベルト7を挟持するように対向配置されるローラのうち、中間転写ベルト7の外周面側に配置され、中間転写ベルト7を介して二次転写内ローラ9に当接する二次転写外ローラ(外ローラ)に、バイアスが印加される。そして、本実施例では、中間転写ベルト7の内周面側に配置された二次転写内ローラ(内ローラ)は接地されている。別法として、中間転写ベルト7の内周面側に配置された内ローラにバイアスが印加され、外周面側に配置された外ローラが接地された構成としてもよい。この場合、内ローラに印加されるバイアスの極性は、本実施例において二次転写外ローラ(外ローラ)8に印加されるバイアスの極性とは逆極性とすればよい。
また、本実施例では、中間転写ベルト7、中間転写ベルト7の張架ローラ、一次転写ローラ5、ベルトクリーニング装置14などは、一体的に画像形成装置100の装置本体110に対して着脱可能な中間転写ユニット120を構成する。
また、画像形成装置100は、中間転写ベルト7上に形成された基準トナー像(パッチ)を検知するためのセンサユニット130を有する。センサユニット130は、検知手段としての光学センサで構成されたパッチセンサ20を有する。センサユニット130は、中間転写ベルト7の回転方向において、一次転写部T1(最下流の一次転写部T1Y)より下流かつ二次転写部T2より上流の検知位置で中間転写ベルト7上の基準トナー像を検知できる位置に配置されている。
2.制御態様
図3は、本実施例の画像形成装置100の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。制御部50は、演算処理を行う中心的素子である制御手段としてのCPU51、記憶手段としてのRAM52、ROM53などのメモリ(記憶媒体)などを有して構成される。書き換え可能なメモリであるRAM52には、制御部50に入力された情報、検知された情報、演算結果などが格納され、ROM53には制御プログラム、予め求められたデータテーブルなどが格納されている。CPU51とメモリとは互いにデータの転送や読込みが可能となっている。また、制御部50には、プリント枚数を計数(カウント)する計数手段としてのカウンタ54が設けられている。CPU51は、カウンタ54の計数結果(カウント値)を読み込んで制御に用いることができる。
制御部50には、画像形成装置100に設けられた画像読取り装置(図示せず)やパーソナルコンピュータなどの外部装置200が接続されている。また、制御部50には、画像形成装置100に設けられた操作部(操作パネル)30が接続されている。操作部30は、制御部50の制御によりユーザーやサービス担当者などの操作者に各種情報を表示する表示部と、操作者が画像形成に関する各種設定などを制御部50に入力するための入力部と、を有して構成される。また、制御部50には、一次転写電源E1や二次転写電源E2などが接続されている。また、制御部50には、環境センサ40が接続されている。本実施例では、環境センサ40は、画像形成装置100が設置されている環境(画像形成装置100の周囲の環境)の温度及び湿度を検知する。環境センサ40により検知された温度及び湿度の情報は、制御部50に入力される。環境センサ40は、画像形成装置100の内部又は外部の少なくとも一方の温度又は湿度の少なくとも一方を検知する環境検知手段の一例である。
制御部50は、画像読み取り装置や外部装置200からの画像情報、操作部30や外部装置200からの制御指令に基づき、画像形成装置100の各部を統括的に制御して、画像形成動作を実行させる。また、制御部50は、所定のタイミングで基準トナー像を中間転写ベルト7に形成し、この基準トナー像をパッチセンサ20で検知するテストモードを実行させる。本実施例では、制御部50は、テストモードとして、画像濃度補正、色ずれ(位置ずれ、色レジ)補正、後述する中間転写ユニット120のメンテナンス時期の判定を行うテストモードを実行させることができるようになっている。
ここで、画像形成装置100は、一の開始指示(プリント指示)により開始される、単一又は複数の記録材Pに画像を形成して出力する一連の動作であるジョブ(プリント動作)を実行する。ジョブは、一般に、画像形成工程、前回転工程、複数の記録材Pに画像を形成する場合の紙間工程、及び後回転工程を有する。画像形成工程は、実際に記録材Pに形成して出力する画像の静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の一次転写、二次転写、定着を行う期間であり、画像形成時(画像形成期間)とはこの期間のことをいう。より詳細には、これら静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の一次転写、二次転写、定着の各工程を行う位置で、画像形成時のタイミングは異なる。前回転工程は、開始指示が入力されてから実際に画像を形成し始めるまでの、画像形成工程の前の準備動作を行う期間である。紙間工程は、複数の記録材Pに対する画像形成を連続して行う際(連続画像形成)の記録材Pと記録材Pとの間に対応する期間である。後回転工程は、画像形成工程の後の整理動作(準備動作)を行う期間である。非画像形成時(非画像形成期間)とは、画像形成時以外の期間であって、上記前回転工程、紙間工程、後回転工程、更には画像形成装置100の電源投入時又はスリープ状態からの復帰時の準備動作である前多回転工程などが含まれる。本実施例では、非画像形成時にテストモードが実行される。
3.パッチセンサ
本実施例では、センサユニット130には、中間転写ベルト7の表面の移動方向(搬送方向)と略直交する方向(幅方向)に略等間隔で複数のパッチセンサ20が配置されている。各パッチセンサ20は、中間転写ベルト7の幅方向における対応する位置の中間転写ベルト7上に形成される基準トナー像を検知する。本実施例では、このパッチセンサ20の検知結果に基づいて、画像濃度補正、色ずれ補正、及び中間転写ユニット120のメンテナンス時期の判定が行われる。
図4は、パッチセンサ20の概略構成図である。本実施例では、パッチセンサ20は、光学センサで構成されている。パッチセンサ20は、筐体21の内部に、光源22(本実施例ではLED光源)と、受光部23(本実施例ではフォトダイオード)と、を有する。光源22は、中間転写ベルト7の表面又は中間転写ベルト7上の基準トナー像tに光を照射する。受光部23は、中間転写ベルト7の表面又は基準トナー像tから反射される光を受光する。本実施例では、センサユニット130は、中間転写ベルト7に対して略垂直方向に設置されており、中間転写ベルト7と各パッチセンサ20との間の距離を一定に保つように構成されている。
4.色ずれ量の検知
次に、本実施例と特に関連する副走査方向(中間転写ベルト7の搬送方向)における色ずれ量の検知について説明する。ここでは、中間転写ベルト7の幅方向における1つのパッチセンサ20を例に説明する。
図5(a)は、色ずれ補正用の複数の基準トナー像tからなるテストパターン60の一部を模式的に示している。該テストパターン60は、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナーで形成された基準トナー像t1、t2、t3、t4を有して構成される。図5では、各基準トナー像tは、中間転写ベルト7の幅方向と略平行に伸びる直線状の画像で表されており、また各色の基準トナー像tはそれぞれ複数(図示の例では2個)形成されている。しかし、基準トナー像tの具体的の形状や数は図示のものに限定されず、各画像形成部Uで形成される画像の中間転写ベルト7上における位置(検知タイミング)に関する情報を十分な精度で取得できるものであればよい。
本実施例では、色ずれ補正は、概略、次のようにして行われる。つまり、各色の色ずれ補正用の基準トナー像tをパッチセンサ20で検知する。そして、基準色であるイエローの基準トナー像tに対する他の色の基準トナー像tの位置ずれ量(色ずれ量)を算出して、その位置ずれ量(色ずれ量)を低減するように各色の画像形成タイミングを補正する。
更に説明すると、色ずれ補正制御では、まず、各感光ドラム1の表面に、各色の色ずれ補正用の基準トナー像tの静電像が形成される。各感光ドラム1上に形成された基準トナー像tの静電像は、現像装置4によって基準トナー像tとして現像される。各感光ドラム1上に形成された基準トナー像tは、中間転写ベルト7上に転写される。中間転写ベルト7上に転写された各基準トナー像tは、パッチセンサ20で検知される。パッチセンサ20で検知された各基準トナー像tの位置(検知タイミング)に関する情報は、制御部50に入力されて、CPU51で処理される。CPU51は、イエローの基準トナー像の検知タイミングを基準として、他の色の基準トナー像のそれぞれの検知タイミングまでの差分を求める。また、CPU51は、各差分に中間転写ベルト7の搬送速度を乗算することで、イエローの基準トナー像と各色の基準トナー像との間の距離を求める。そして、CPU51は、この距離に基づいて色ずれ補正量を算出し、出力画像にフィードバックする。つまり、上記イエローの基準トナー像と各色の基準トナー像との間の距離と、予め設定された所定の目標値と、の差分を求め、その差分を低減するように後続の画像形成時の各色の画像形成タイミングを補正する。なお、物理的な距離を求めずに、検知タイミングの差分を用いて、画像形成タイミングを調整してもよい。
5.中間転写ベルトのスリップ
前述のように、本実施例では、一次転写ローラ5の弾性層は、イオン導電性の発泡スポンジ、具体的には、例えばイオン導電性のNBR(ニトリルゴム)とヒドリンゴムとを含む発泡スポンジ単層で構成されている。このような一次転写ローラ5を長時間使用していると、NBRやヒドリンゴムから添加剤などの成分(ここでは、単に「汚れ」ともいう。)が染み出すことがある。そして、この汚れが、中間転写ベルト7の内周面に付着したり、中間転写ベルト7を介して二次転写内ローラ9(本実施例では駆動ローラを兼ねる)の表面(周面)に付着したりする。このように汚れが中間転写ベルト7の内周面や二次転写内ローラ9の表面に付着すると、中間転写ベルト7の内周面や二次転写内ローラ9の表面の摩擦係数μが低下する。これにより、二次転写内ローラ9と中間転写ベルト7との間でスリップ(以下、単に「スリップ」ともいう。)が発生することがある。このスリップは、二次転写外ローラ8に印加する二次転写バイアスの絶対値が小さいほど発生しやすい。これは中間転写ベルト7と二次転写内ローラ9との間の静電付着力が低下するためである。
図6は、使用初期の中間転写ベルト7と150k枚のプリントに使用した中間転写ベルト7とに関する、二次転写バイアスと、イエロートナー像に対するブラックトナー像の色ずれ量と、の関係を示すグラフ図である。図6から、次のことがわかる。つまり、使用初期の中間転写ベルト7では、二次転写バイアスが変化しても色ずれ量はほぼ変化しない。これに対し、150k枚のプリントに使用した中間転写ベルト7では、二次転写バイアスが小さいほど色ずれ量が大きくなる。また、二次転写バイアスの絶対値がある値(例えば800V)以上の場合は、150k枚のプリント後の中間転写ベルト7でも、二次転写バイアスの変化に対する色ずれ量の変化は比較的小さい。しかし、二次転写バイアスの絶対値がその値より小さい場合には、150k枚のプリント後の中間転写ベルト7では、二次転写バイアスの変化に対して色ずれ量が大きく変化するようになる。
ここで、色ずれ補正を実行する際には、二次転写部T2に記録材Pを搬送しない。そのため、色ずれ補正を実行する際には、二次転写外ローラ8や記録材Pの搬送路13がトナーで汚れるのを防ぐために、画像形成時(二次転写時)よりも二次転写バイアスの絶対値を小さくすることが多い。即ち、色ずれ補正用のパッチが二次転写部T2を通過する際は、二次転写外ローラ8に印加するバイアスの絶対値を二次転写時よりも小さくしている。この場合、図6に示すように、中間転写ベルト7の繰り返し使用量が増加した際には、色ずれ補正時と画像形成時(二次転写時)とでの色ずれ量に差が生じることにより、出力画像において色ずれが発生しやすくなる。つまり、例えば、色ずれ補正時の二次転写バイアスの絶対値が800Vより小さく、画像形成時(二次転写時)の二次転写バイアスの絶対値が800V以上である場合を考える。この場合には、中間転写ベルト7の繰り返し使用量が増加した際には、色ずれ補正時と画像形成時(二次転写時)とでの色ずれ量に差が生じることにより、出力画像において色ずれが発生しやすくなる。
そこで、本実施例では、プリント枚数が所定枚数以上になった場合に、テストモードとして、中間転写ユニット120のメンテナンス時期を判定するモード(以下、単に「メンテナンス時期判定モード」ともいう。)を実行する。メンテナンス時期判定モードでは、一次転写ローラ5から染み出した成分によるスリップ量を検知する。そして、スリップ量が予め設定された閾値以上になった場合には、中間転写ユニット120のメンテナンスを行う時期が到来したことを報知することで、ユーザーやサービス担当者などの操作者にそのメンテナンスを促す。中間転写ユニット120のメンテナンスとしては、中間転写ユニット120の交換、中間転写ベルト7の交換や清掃、複数の張架ローラのうちの少なくとも1つの交換や清掃が挙げられる。この張架ローラのうちの少なくとも1つは、典型的には、二次転写内ローラ9である。中間転写ユニット120のメンテナンスは、これらのうち少なくとも1つを含むものであってよい。ただし、典型的には、中間転写ユニット120のメンテナンスは、中間転写ベルト7の交換、中間転写ベルト7の清掃、二次転写内ローラ9の交換、及び、二次転写内ローラ9の清掃、のうちの少なくとも1つを含む。中間転写ユニット120のメンテナンス時期として、中間転写ユニット120、中間転写ベルト7、あるいは張架ローラの交換時期に関する情報を報知する場合、この交換時期はいわゆる寿命時期と見ることができる。
6.メンテナンス時期判定モード
図7は、本実施例におけるメンテナンス時期判定モードの手順を示すフローチャート図である。
CPU51は、操作者による操作部30や外部装置200からの指示によりジョブの情報が入力されると、画像形成動作を開始させる(S101)。次に、CPU51は、カウンタ54によるプリント枚数のカウント値を確認し、下記式(1)で表されるメンテナンス時期判定モード実行枚数Cに達したか否かを判断する(S102)。このカウンタ54によるプリント枚数のカウント値は、現在装置本体110に装着されている中間転写ユニット120の中間転写ベルト7を使用して行ったプリント枚数に相当するものである。プリント枚数の単位は千枚(k枚)とする。カウンタ54は、1枚のプリントが行われるごとに、プリント枚数を積算して記憶する。
C=100+10*N ・・・(1)
上記式(1)において、RAM52でNの値が指定されていない場合、Nを初期値(N=0)とする。つまり、本実施例では、プリント枚数が100k枚以上になった場合に、メンテナンス時期判定モードが実行される。ここで、100k枚としているのは、本実施例における中間転写ベルト7は、使用されている条件によってはプリント枚数が100k枚以上になるとスリップに起因する色ずれが発生する可能性があるからである。ただし、本実施例における中間転写ベルト7は、使用されている条件によっては150k枚程度のプリント枚数まではスリップが発生することなく使用することができる。スリップに起因する色ずれが懸念されるプリント枚数は、画像形成装置100や中間転写ユニット120の構成によって異なるため、メンテナンス時期判定モードを実行するか否かを判断する閾値は適宜変更することができる。
CPU51は、S102でプリント枚数が枚数Cに達していないと判断した場合は、メンテナンス時期判定モードを実行させずに画像形成装置100の動作を終了させる。一方、CPU51は、S102でプリント枚数が枚数Cに達したと判断した場合は、RAM52に格納されているフラグnの値に応じて二次転写電源E2から二次転写外ローラ8に印加するバイアスの値を設定する(S103)。初めは、フラグnはn=0であるため、CPU51は、二次転写電源E2から二次転写外ローラ8に印加するバイアスを第1の二次転写バイアスV0に設定する。次に、CPU51は、二次転写外ローラ8に第1の二次転写バイアスV0を印加した状態で、前述の副走査方向の色ずれ量を検知するためのものと同様のテストパターンの検知を実行する(S104)。つまり、中間転写ベルト7上に図5を参照して説明したものと同様のテストパターン60を形成し、各色の基準トナー像tをパッチセンサ20で検知する。そして、CPU51は、イエローの基準トナー像の検知タイミングを基準として、ブラックの基準トナー像の検知タイミングまでの差分を求める。また、CPU51は、該差分に中間転写ベルト7の搬送速度を乗算することで、イエローの基準トナー像とブラックの基準トナー像との間の距離である間隔L0(図5(b))を算出する(S105)。なお、第1の二次転写バイアスV0は、中間転写ベルト7への最初の基準トナー像の転写が開始する時より前から、パッチセンサ20による最後の基準トナー像の検知が終了する時より後までの間、二次転写外ローラ8に印加されていればよい。後述する第2の二次転写バイアスについても同様である。また、メンテナンス時期判定モードでは、イエローの基準トナー像とブラックの基準トナー像の検知結果を用いるため、イエローの基準トナー像及びブラックの基準トナー像のみを形成してもよい。次に、CPU51は、第1の二次転写バイアスV0と、第1の二次転写バイアスV0を印加した状態で取得した間隔L0と、をRAM52に格納する(S106)。
次に、CPU51は、RAM52に格納されているフラグnがn=1であるか否かを判断する(S107)。CPU51は、S107でフラグnがn=1ではないと判断した場合は、フラグnをn=n+1(本実施例ではn=0+1)に更新してRAM52に格納し(S108)、処理をS103へ戻す。その後、CPU51は、上述と同様にS103〜S106の処理を実行する。このとき、S104で、フラグnがn=1であるため、二次転写電源E2から二次転写外ローラ8に印加するバイアスは、第2の二次転写バイアスV1に設定される。これにより、S106で、第2の二次転写バイアスV1と、第2の二次転写バイアスを印加した状態で取得した間隔L1(図5(b))と、がRAM52に格納される。
次に、CPU51は、RAM52に格納されているV0、V1、L0、L1に基づいて、下記式(2)により傾きSを算出する(S109)。下記式(2)は、第1、第2の二次転写バイアス間での二次転写バイアスの変化に対する、中間転写ベルト7の回転方向におけるイエローの基準トナー像とブラックの基準トナー像との間隔の変化の傾きSを表す。
|L1−L0|/|V1−V0|=S ・・・(2)
次に、CPU51は、傾きSが予め設定された所定の閾値以上であるか否かを判断する(S110)。本実施例では、傾きSの閾値を0.042としている。この閾値は、本実施例の構成において、予め実験などにより求められた実際にスリップに起因する色ずれが発生する際の傾きSの値より小さい値としている。これにより、スリップに起因する色ずれが発生する前の適切なタイミングで、中間転写ユニット120のメンテナス時期に関する情報を報知することができる。
CPU51は、S110で傾きSが閾値である0.042以上であると判断した場合は、中間転写ユニット120のメンテナンス時期に関する情報の報知を行い(S111)、画像形成装置100の動作を終了させる。この場合は、スリップに起因する色ずれが発生する可能性があるからである。中間転写ユニット120のメンテナンス時期に関する情報の報知方法としては、例えば、操作部30の表示部や外部装置200の表示部に、操作者に中間転写ユニット120のメンテナンスを促す表示を行うことができる。
一方、CPU51は、S110で傾きSが閾値である0.042未満であると判断した場合は、n=0、N=N+1をRAM52に格納して(S112)、画像形成装置100の動作を終了させる。この場合は、スリップに起因する色ずれが発生する可能性がないか又はその可能性が十分に低いからである。ここで、N=N+1とすることで、メンテナンス時期判定モードを実行するタイミングを、プリント枚数110k枚、120k枚と、プリント枚数100k枚以上の10k枚ごととすることができる。また、n=0とすることで、次回メンテナンス時期判定モードを実行したときに、上述と同様にしてV0、V1、L0、L1を取得することが可能となる。なお、Nは、中間転写ユニット120のメンテナンスが行われると初期値(N=0)にリセットされる。
本実施例では、一例として、第1の二次転写バイアスV0は+750V、第2の二次転写バイアスV1は画像形成時(二次転写時)の二次転写バイアスと同等の+900Vとした。ただし、第1、第2の二次転写バイアスの値はこれに限定されるものではなく、スリップに起因する色ずれが発生する可能性があるか否かを判断するのに十分な精度で傾きSを求めることができるように設定すればよい。第1の二次転写バイアスV0は、0V(すなわち、バイアスを印加しない)であってもよく、またその絶対値が第2の二次転写バイアスの絶対値よりも小さければ第2の二次転写バイアスとは逆極性であってもよい。また、メンテナンス時期判定モードにおける第1の二次転写バイアスと第2の二次転写バイアスとの印加順序も、本実施例における順序に限定されるものではない。また、本実施例では、傾きSに基づいて中間転写ユニット120のメンテンス時期を判定したが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。第1、第2の二次転写バイアスをそれぞれ印加した状態で取得した、異なる画像形成部Uで形成された基準トナー像間の中間転写ベルト7の回転方向における間隔に関する情報に基づいて、中間転写ユニット120のメンテナンス時期を判定できればよい。
また、本実施例では、メンテナンス時期判定モードでは、中間転写ベルト7の回転方向において最上流と最下流にそれぞれ配置された画像形成部Uで形成された基準トナー像を用いた。これにより、スリップの発生程度をより精度よく検知することができる。ただし、本発明は斯かる態様に限定されるものではなく、異なる任意の画像形成部Uで形成された基準トナー像を用いて、メンテナンス時期判定モードを実行することができる。
また、メンテナンス時期判定モードにおけるテストパターンの形成及び検知の少なくとも一部(例えば第1の二次転写バイアスを印加した状態で行うテストパターンの形成及び検知)を、色ずれ補正制御と兼用してもよい。
また、本実施例では、中間転写ユニット120の使用量と相関する使用量指標値としてプリント枚数を用いたが、中間転写ユニット120、特に、中間転写ベルト7もしくは二次転写内ローラ9の使用量と相関する任意の値を用いることができる。例えば、プリント枚数の他、中間転写ベルト7の駆動時間(回転時間)や回転回数、張架ローラのうちの少なくとも1つ(典型的には二次転写内ローラ9)の駆動時間(回転時間)や回転回数などが挙げられる。
また、本実施例では、中間転写ベルト7の幅方向における1つのパッチセンサ20を用いる場合を例に説明したが、複数のパッチセンサ20を用いてもよい。その場合、例えば複数のパッチセンサ20を用いた基準トナー像間の間隔の検知結果の平均値を求めるなどして、検知精度を向上させることが考えられる。
このように、本実施例の画像形成装置100は、中間転写ベルト7の外周面に接触して中間転写ベルト7から記録材Pにトナー像を転写させる二次転写部T2を形成する二次転写外ローラ8を有する。また、本実施例の画像形成装置100は、中間転写ベルト7を介して二次転写外ローラ8と対向され、中間転写ベルト7の内周面に接触して二次転写部T2を形成する二次転写内ローラ9であって、中間転写ベルト7を駆動する二次転写内ローラ9を有する。また、本実施例の画像形成装置100は、二次転写外ローラ8又は二次転写内ローラ9を介して二次転写部T2にバイアスを印加する印加手段(二次転写電源)E2を有する。また、本実施例の画像形成装置は、中間転写ベルト上のトナー像を検知する検知手段(パッチセンサ)20と、制御手段(CPU)51と、を有する。本実施例では、制御手段51は、中間転写ベルト7もしくは二次転写内ローラ9のメンテナンス時期に関する情報を報知するための処理を実行する。該処理では、次のような第1の検知動作と、第2の検知動作と、を行う。第1の検知動作では、二次転写部T2に第1のバイアスを印加した状態で、第1、第2の像担持体1Y、1Kから中間転写ベルト7にそれぞれ第1、第2の基準トナー像t1、t4を転写し、第1、第2の基準トナー像をそれぞれ検知手段20により検知する。第2の検知動作では、二次転写部T2に第2のバイアスを印加した状態で、第1、第2の像担持体1Y、1Kから中間転写ベルト7にそれぞれ第1、第2の基準トナー像t1、t4を転写し、第1、第2の基準トナー像をそれぞれ検知手段20により検知する。第2のバイアスは、第1のバイアスよりも絶対値が大きいバイアスである。そして、該処理では、第1、第2の検知動作でそれぞれ取得した検知結果に基づいて、中間転写ベルト7もしくは二次転写内ローラ9のメンテナンス時期に関する情報を報知するための処理を実行する。
本実施例では、制御手段51は、第1、第2の検知動作でそれぞれ取得した検知結果から、中間転写ベルト7の回転方向における第1の基準トナー像t1と第2の基準トナー像t4との間隔に関する情報をそれぞれ取得する。そして、制御手段51は、該情報に基づいて、上記メンテナンス時期に関する情報を報知するための処理を実行する。特に、本実施例では、制御手段51は、第1の検知動作で取得した上記間隔に関する情報と、第2の検知動作で取得した上記間隔に関する情報と、の差分と相関する指標値が所定の閾値以上になった場合に、上記メンテナンス時期に関する情報を報知する。ここで、第1の検知動作における上記間隔をL0、第2の検知動作における上記間隔をL1、第1のバイアスをV0、第2のバイアスをV1とする。このとき、特に、本実施例では、制御手段51は、上記指標値としての、次式、|L1−L0|/|V1−V0|=Sで表される傾きSの値が所定の閾値以上になった場合に、上記メンテナンス時期に関する情報を報知する。また、本実施例では、制御手段51は、中間転写ベルト7もしくは二次転写内ローラ9の使用量と相関する使用量指標値が所定値以上になった場合に、上記処理を実行する。また、本実施例では、制御手段51は、使用量指標値が所定値以上になった後、使用量指標値に関し所定の間隔ごとに上記処理を実行する。
以上説明したように、本実施例では、複数の二次転写バイアスのそれぞれを印加した状態で取得した異なる画像形成部Uで中間転写ベルト7上に形成した基準トナー像の間隔に関する情報に基づいて、スリップに起因する色ずれの発生を検知する。そして、スリップに起因する色ずれが許容範囲を超えて発生している場合には、操作者に中間転写ユニット120のメンテナンス時期に関する情報を報知する。これにより、スリップに起因する色ずれの発生を抑制することができる。
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
実施例1では、メンテナンス時期判定モードを実行するタイミングは、プリント枚数100k枚、110k枚と、プリント枚数100k枚以上の10k枚ごとであった。しかし、この場合、スリップに起因する色ずれの発生の懸念の程度にかかわらず、10k枚ごとにメンテナンス時期判定モードが実行される。実施例1で説明した傾きSの値が実施例1における閾値(0.042)より十分に小さい状態では、スリップは発生していない。一方、実施例1で説明した傾きSの値が実施例1における閾値(0.042)に近い状態では、色ずれが問題にならない程度にスリップが発生している可能性がある。そのため、実施例1のように傾きSの閾値を固定値とした場合には、必要以上にメンテナンス時期判定モードを実行してしまったり、画像形成装置100の使用されている条件によってはスリップに起因する色ずれが発生してしまったりする可能性がある。
そこで、本実施例では、傾きSの値に応じて、メンテナンス時期判定モードを実行するタイミングを決定する。これにより、スリップに起因する色ずれが発生する時期をより精度よく予測して、より適切なタイミングで中間転写ユニット120のメンテナンス時期に関する情報を報知することを可能とする。
図8は、本実施例におけるメンテナンス時期判定モードの手順を示すフローチャート図である。図8のS201〜S211の処理は、実施例1における図7のS101〜S111の処理と同様であるため説明を省略する。
CPU51は、S210において、S209で算出した傾きSが閾値(0.042)未満であると判断した場合は、n=0をRAM52に格納する(S212)。n=0とすることで、次回メンテナンス時期判定モードを実行したときに、V0、V1、L0、L1を取得することが可能となる。次に、CPU51は、S209で算出した傾きSに応じて下記のように設定された定数をNに加算し、算出したNをRAM52に格納して(S213)、画像形成装置100の動作を終了させる。
S≦0.015: N=N+3
0.015<S≦0.03: N=N+2
0.03<S≦0.04: N=N+1
0.04<S: N=N+0.5
なお、Nは、中間転写ユニット120のメンテナンスが行われると初期値(N=0)にリセットされる。また、本実施例では、傾きSに応じてNに加算する定数を変更したが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。実施例1で説明したのと同様、第1、第2の二次転写バイアスをそれぞれ印加した状態で取得した、異なる画像形成部Uで形成された基準トナー像間の中間転写ベルト7の回転方向における間隔に関する情報に応じて、Nに加算する定数を変更できればよい。
このように、本実施例では、制御手段51は、使用量指標値が所定値以上になった後、使用量指標値に関し所定の間隔ごとに上記処理を実行する。また、本実施例では、制御手段51は、上記所定の間隔を、第1の検知動作で取得した検知結果と、第2の検知動作で取得した検知結果と、に基づいて変更する。特に、本実施例では、第1の検知動作で取得した基準トナー像t1、t4間の間隔に関する情報と、第2の検知動作で取得した該間隔に関する情報と、の差分と相関する指標値に基づいて変更する。より詳細には、該指標値が示す該差分が第1の値の場合よりも、該指標値が示す該差分が第1の値より大きい第2の値の場合の方が小さくなるように変更する。
以上のように、本実施例では、複数の二次転写バイアスのそれぞれを印加した状態で取得した異なる画像形成部で中間転写ベルト上に形成した基準トナー像の間隔に関する情報に応じて、メンテナンス時期判定モードを実行する時期(間隔、頻度)を変更する。これにより、必要以上にメンテナンス時期判定モードを実行することで画像形成装置100の生産性が低下することを抑制することができる。また、これにより、より確実にスリップに起因する色ずれが発生する前に、操作者に中間転写ユニット120のメンテナンス時期に関する情報を報知することができる。
[実施例3]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
実施例1では、メンテナンス時期判定モードを実行するタイミングは、画像形成装置100が設置されている環境によらず、プリント枚数に基づいて設定されていた。しかし、一次転写ローラ5からの添加剤などの成分の染み出し量は、画像形成装置100が設置されている環境が乾燥している場合の方が、つまり絶対水分量が小さい環境の方が多い。これは、絶対水分量が小さい環境の方が、一次転写バイアスの設定値が大きいからである。そのため、一次転写ローラ5からの添加剤などの成分の染み出し量が少ない環境でのプリント枚数が多くても、一次転写ローラ5から染み出した成分によるスリップに起因する色ずれは発生しにくく、メンテナンス時期判定モードを実行しなくてもよい場合がある。
そこで、本実施例では、画像形成装置100が設置されている環境に基づいて、メンテナンス時期判定モードを実行するタイミングを決定する。これにより、スリップに起因する色ずれが発生する時期をより精度よく予測して、より適切なタイミングで中間転写ユニット120のメンテナンス時期に関する情報を報知することを可能とする。
図9は、本実施例における中間転写ベルト7のメンテナンス時期判定モードの手順を示すフローチャート図である。
CPU51は、操作者による操作部30や外部装置200からの指示によりジョブの情報が入力されると、画像形成動作を開始させる(S101)。次に、CPU51は、カウンタ54による絶対水分量が12.2g/m3以下の環境でのプリント枚数のカウント値を確認し、下記式(1)で表されるメンテナンス時期判定モード実行枚数Cに達したか否かを判断する(S302)。このカウンタ54によるプリント枚数のカウント値は、現在装置本体110に装着されている中間転写ユニット120の中間転写ベルト7を使用して絶対水分量が12.2g/m3以下の環境で行ったプリント枚数に相当するものである。プリント枚数の単位は千枚(k枚)とする。CPU51は、ジョブを実行する際に、環境センサ40による画像形成装置100が設置されている環境の温度及び湿度の検知結果に基づいて、環境の絶対水分量を求める。また、カウンタ54は、1枚のプリントが行われるごとに、プリント枚数を積算して記憶する。特に、本実施例では、カウンタ54は、上述のようにして求められた環境の絶対水分量が12.2g/m3以下で行われたプリント枚数を積算して記憶することが可能となっている。
C=100+10*N ・・・(1)
上記式(1)において、RAM52でNの値が指定されていない場合、Nを初期値(N=0)とする。つまり、本実施例では、絶対水分量12.2g/m3以下の環境でのプリント枚数が100k枚以上になった場合に、メンテナンス時期判定モードが実行される。ここで、100k枚としているのは、本実施例における中間転写ベルト7は、絶対水分量12.2g/m3以下の環境でのプリント枚数が100k枚以上になるとスリップに起因して色ずれが発生する可能性があるからである。実施例1の場合と同様、スリップに起因する色ずれが懸念されるプリント枚数は、画像形成装置100や中間転写ユニット120の構成によって異なるため、メンテナンス時期判定モードを実行するか否かを判断する閾値は適宜変更することができる。
CPU51は、S302でプリント枚数が枚数Cに達していないと判断した場合は、メンテナンス時期判定モードを実行させずに画像形成装置100の動作を終了させる。一方、CPU51は、S302でプリント枚数が枚数Cに達したと判断した場合は、メンテナンス時期判定モードを実行するべく処理をS303へと進める。図9のS303〜S312の処理は、実施例1における図7のS103〜S112の処理と同様であるため説明を省略する。
なお、本実施例では、環境の情報として画像形成装置100が設置されている環境の絶対水分量に基づいてメンテナンス時期判定モードの実行の要否を判断したが、環境の情報として画像形成装置100の内部の絶対水分量を用いてもよい。また、温度又は湿度の少なくとも一方とスリップに起因する色ずれの発生のしやすさ(あるいは発生のしにくさ)との間に十分な相関がある場合には、環境の情報として温度又は湿度の少なくとも一方を用いることができる。また、前述のように、環境の違いによるスリップに起因する色ずれの発生のしやすさ(あるいはしにくさ)は、一次転写バイアスの設定値と関係があるものと考えられる。したがって、一次転写バイアスの設定値に基づいてメンテナンス時期判定モードの実行の要否を判断することもできる。この場合、例えば、本実施例における図9のS302の処理において、絶対値が所定値より大きい条件で行ったプリント枚数が所定枚数に達したと判断した場合に、メンテナンス時期判定モードを実行するようにすることができる。
また、本実施例では、実施例1と同様の制御に環境の検知結果を考慮したプリント枚数のカウント値を用いる場合を例として説明したが、実施例2と同様の制御に環境の検知結果を考慮したプリント枚数のカウント値を用いてもよい。
このように、本実施例では、制御手段51は、所定の環境での中間転写ベルト7もしくは二次転写内ローラ9の使用量と相関する使用量指標値が所定値以上になった場合に、メンテナンス時期に関する情報を報知するための処理を実行する。
以上説明したように、本実施例では、画像形成装置100が設置されている環境に基づいて、メンテナンス時期判定モードを実行する時期を判断する。これにより、画像形成装置100が設置されている環境に応じて、効率よくメンテナンス時期判定モードを実行して、操作者に中間転写ユニット120のメンテナンス時期に関する情報を報知することができる。