この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
図1は、この発明の実施の形態における測定装置および測定システムを模式的に示す図である。図2は、図1中の測定装置および測定システムの構成を示すブロック図である。
図1および図2を参照して、まず、本実施の形態における測定装置10および測定システム100の全体構成について説明する。測定装置10は、工作機械上において、ワークの3次元形状を測定するための装置である。
工作機械は、コンピュータによる数値制御によって、ワーク加工のための各種動作が自動化されたNC(Numerically Control)工作機械である。
なお、図1中では、工作機械として立形マシニングセンタが想定されているが、これに限られず、たとえば、横形マシニングセンタであってもよいし、旋削機能とミーリング機能とを有する複合加工機であってもよい。
測定装置10は、測定プローブ21と、電力供給部30と、第1通信部41と、第2通信部46とを有する。
測定プローブ21は、取り付けアダプタ26を有する。取り付けアダプタ26は、測定プローブ21を工作機械の主軸61に取り付けるためのアダプタである。取り付けアダプタ26は、たとえば、主軸61により面拘束されるシャンク部と、シャンク部の後端に接続され、主軸61の回転軸方向に引き込まれるプルボルトとから構成されている。
ワークWは、工作機械のテーブル62に載置されている。主軸61を加工エリア200内で移動させることによって、ワークWに対する測定プローブ21の3次元的に位置関係を自在に変化させることができる。これに限られず、たとえば、主軸61の移動と、テーブル62の移動とによって、ワークWに対する測定プローブ21の3次元的に位置関係を変化させる構成であってもよい。
測定プローブ21は、光切断法によりワークWの3次元形状を測定する。測定プローブ21は、放射装置22と、受光装置23と、記憶部(メモリ)24とを有する。
放射装置22は、レーザ光源を含む。放射装置22は、レーザ光をワークWに向けて放射する。放射装置22は、スリット状のレーザ光LをワークWに向けて放射する。受光装置23は、COMSイメージセンサを含む。受光装置23は、ワークWにより反射されたレーザ光Lを受光する。
記憶部24は、測定プローブ21のセットアップ情報や、測定プローブ21の現在の状態を示すステータス情報などを記憶する。
電力供給部30は、測定プローブ21に設けられている。電力供給部30は、測定プローブ21と一体に設けられている。電力供給部30は、測定プローブ21(放射装置22,受光装置23,記憶部24)に対して電力を供給する。電力供給部30は、第1通信部41および第2通信部46に対して電力を供給する。
電力供給部30は、第1蓄電部31および第2蓄電部36を有する。第1蓄電部31および第2蓄電部36は、繰り返し充電可能な二次電池から構成されている。
第1通信部41および第2通信部46は、測定プローブ21に設けられている。第1通信部41および第2通信部46は、測定プローブ21と一体に設けられている。第1通信部41および第2通信部46は、後述する制御装置51と信号を通信する。
測定装置10は、測定プローブ21、電力供給部30、第1通信部41および第2通信部46が一体となったユニットである。
測定システム100は、上記の測定装置10に加えて、制御装置51と、表示装置57と、第1中継部42と、第2中継部47とを有する。
制御装置51は、測定装置10を制御する。制御装置51は、工作機械に備え付けられ、工作機械における各種動作を制御するための制御盤である。
表示装置57は、測定プローブ21の動作状態や、測定プローブ21による測定条件の設定などを表示する。表示装置57は、工作機械に備え付けられ、工作機械のオペレータによる指令を受け付ける操作盤56と一体に設けられている。操作盤56と一体に設けられた表示装置57に限られず、測定装置10の専用となる表示装置が用いられてもよい。
第1中継部42および第2中継部47は、工作機械の加工エリア200内に設けられている。第1中継部42は、第1通信部41および制御装置51の間の通信を中継する。第2中継部47は、第2通信部46および制御装置51の間の通信を中継する。第1通信部41および第2通信部46は、それぞれ、第1中継部42および第2中継部47と無線方式により通信する。第1中継部42および第2中継部47は、制御装置51と有線方式により通信する。
続いて、第1通信部41および第2通信部46について詳細に説明する。第1通信部41は、第1通信手段により信号を通信する。第2通信部46は、第2通信手段により信号を通信する。
第2通信部46における第2通信手段は、第1通信部41における第1通信手段とは異なる通信手段である。第2通信部46における第2通信手段は、第1通信部41における第1通信手段よりも、高い信頼性を有する。
より具体的には、第2通信手段による信号の通信遅延量は、第1通信手段による信号の通信遅延量よりも小さい。第2通信手段による信号の通信は、測定プローブ21および制御装置51の間における送受信の同時性(リアルタイム性)を保証している一方で、第1通信手段による信号の通信は、このような同時性を保証していない。
第2通信手段の消費電力量は、第1通信手段の消費電力量よりも小さい。互いに等しい通信条件下で、第2通信手段の消費電力量は、第1通信手段の消費電力量よりも小さくなる。
第1通信部41における第1通信手段は、Wi−Fi(登録商標)である。第2通信部46における第2通信手段は、光無線通信である。
なお、第1通信手段としてのWi−Fiにおいて、マルチパスフェージング(マルチパスによって起きる受信レベルの変動)を解消しつつ、通信の高速化を実現するためのMIMO(Multiple Input Multiple Output)が採用された場合に、その消費電力量が顕著に増大する。
本発明において、第1通信手段および第2通信手段の間で信頼性の優劣を決定する指標は、上記の通信遅延量および消費電力量に限定されない。たとえば、外部からの電波によって生じる通信の干渉に対して、第2通信手段が、第1通信手段よりも大きい耐性を有してもよい。
第1通信手段がWi−Fiである場合に、第1中継部42は、第1通信部41からの電波を受けるとともに、制御装置51に向けて信号を送信するWi−Fi送受信機である。第2通信手段が光無線通信である場合に、第2中継部47は、第2通信部46からの光(たとえば、赤外線)を受けるとともに、制御装置51に向けて信号を送信する光送受信機である。
第2通信部46における第2通信手段は、光無線通信に限られず、たとえば、有線方式のイーサネット(Ethernet:登録商標)であってもよい。
第1通信部41は、測定プローブ21における測定に関する情報を含む第1種の信号を通信する。第1種の信号は、測定プローブ21における測定に関する情報として、測定プローブ21の動作を制御する制御データと、測定プローブ21にて取得された測定データとを含む。
測定プローブ21の動作を制御する制御データは、操作盤56より入力されるオペレータからの指令に基づいて、制御装置51から測定プローブ21に向けて送信される。測定プローブ21の動作を制御する制御データとしては、たとえば、測定プローブ21固有の校正ファイルや、放射装置22におけるレーザ光の放射のオン/オフ動作、受光装置23における受光のオン/オフ動作などが挙げられる。
測定プローブ21にて取得された測定データは、測定プローブ21から制御装置51に向けて送信される。測定プローブ21にて取得された測定データとしては、たとえば、受光装置23にて得られたワークからの反射光の画像情報が挙げられる。
第2通信部46は、電力供給部30における電力供給に関する情報を含む第2種の信号を通信する。
第2種の信号は、電力供給部30における電力供給に関する情報として、第1蓄電部31の蓄電量(残容量)、使用履歴(充放電の回数)、電圧、または、放電電流を含んでいる。第2種の信号は、第1蓄電部31の温度、または、シリアル番号などをさらに含んでもよい。
第2種の信号は、第1蓄電部31の上記情報と同様の、第2蓄電部36の各種情報をさらに含んでもよい。
第2種の信号は、測定プローブ21にて測定データが取得されたタイミングに関する情報をさらに含む。第2種の信号は、たとえば、測定プローブ21にて測定データを取得したタイミングを伝える同期信号を含んでもよい。
制御装置51は、第1通信部41から、測定プローブ21にて取得された測定データを含む第1種の信号を受信し、第2通信部46から、測定プローブ21にて測定データが取得されたタイミングに関する情報を含む第2種の信号を受信する。制御装置51は、測定プローブ21にて取得された測定データと、その測定データが取得された各タイミングにおける測定プローブ21の位置情報とを対応付けることによって、ワークの表面形状の3次元的な座標を算出する。
本実施の形態では、電力供給部30における電力供給に関する情報を含む第2種の信号を通信する第2通信部46が、測定プローブ21における測定に関する情報を含む第1種の信号を通信する第1通信部41とは別に設けられている。この際、第2通信部46における第2通信手段としての光無線通信は、第1通信部41における第1通信手段としてのWi−Fiよりも高い信頼性を有するため、電力供給部30における電力供給に関する情報をより確実に制御装置51に伝送することができる。これにより、後述するように、電力供給部30における電力供給能力が不十分となった場合の対応を適宜採ることが可能となるため、測定プローブ21による測定の継続性を確保することができる。
また、本実施の形態では、第1通信部41が、大容量の通信に対応可能なWi−Fiにより、測定プローブ21における測定に関する情報(測定プローブ21の動作を制御する制御データ,測定プローブ21にて取得された測定データ)を含む第1種の信号を通信する。これにより、ワークの3次元形状の測定時に、測定プローブ21および制御装置51間のデータ通信量が大きくなった場合であっても、必要なデータ通信をより確実に実行することができる。
また、本実施の形態では、第2通信部46が、同時性(リアルタイム性)が保証された光無線通信により、測定プローブ21にて測定データが取得されたタイミングに関する情報を含む第2種の信号を通信する。これにより、測定プローブ21にて取得された測定データと、その測定データが取得された各タイミングにおける測定プローブ21の位置情報とを高精度に対応付けることが可能となるため、ワークの3次元形状の測定精度を向上させることができる。
続いて、電力供給部30(第1蓄電部31,第2蓄電部36)について詳細に説明する。図3は、通常時における電力供給部からの電力供給の流れを示すブロック図である。図4は、電力供給能力が不十分となった場合の電力供給部からの電力供給の流れを示すブロック図である。
図3および図4を参照して、第1蓄電部31は、測定プローブ21に対して着脱可能に設けられている。第2蓄電部36は、第1蓄電部31とは別に設けられている。第2蓄電部36は、測定プローブ21から取り外すことが前提となっていない固定式である。第2蓄電部36の充電容量は、第1蓄電部31の充電容量よりも小さくてもよい。
図2および図3を参照して、第1蓄電部31における蓄電量が不足していない場合、第1蓄電部31は、測定プローブ21(放射装置22、受光装置23および記憶部24)に対して電力を供給する。第1蓄電部31は、第1通信部41および第2通信部46に対して電力を供給する。
第1蓄電部31は、第2蓄電部36に対して電力を供給する。第2蓄電部36は、第1蓄電部31からの電力供給を受けて充電される。
図2および図4を参照して、制御装置51は、第2通信部46により、電力供給部30における電力供給に関する情報を含む第2種の信号を受信する。
制御装置51は、第2種の信号に基づいて、電力供給部30における電力供給能力が不足していると判断した場合に、第1通信部41および第2通信部46のうちの第2通信部46にのみ電力を供給するように電力供給部30を制御する。より具体的には、制御装置51は、第2種の信号に基づいて、第1蓄電部31における蓄電量が不足していると判断した場合に、第1通信部41および第2通信部46のうちの第2通信部46にのみ電力を供給するように第2蓄電部36を制御する。
ワークの3次元形状の測定中に第1蓄電部31における蓄電量が不足した場合に、第2蓄電部36は、第2通信部46に対して電力を供給する。第2蓄電部36は、記憶部24に対して電力を供給する。
図5は、ワークの3次元形状の測定中に第1蓄電部における蓄電量が不足した場合の測定の流れを示すフローチャート図である。
図2および図5を参照して、制御装置51は、ワークの3次元形状の測定プログラムを開始する(S101)。測定プローブ21は、第1通信部41により制御装置51からの制御データを受信することにより、測定プログラムに従って動作する。
測定プローブ21が測定プログラムに従って動作する間、第2通信部46は、制御装置51に向けて電力供給部30における電力供給に関する情報を送信する(S102)。
制御装置51は、受信した電力供給部30における電力供給に関する情報に基づいて、第1蓄電部31における蓄電量が所定値以下であるかどうかを判断する(S103)。制御装置51が、第1蓄電部31における蓄電量が所定値以下でないと判断した場合、S102のステップに戻る。制御装置51が、第1蓄電部31における蓄電量が所定値以下であると判断した場合、続いて説明するS104のステップに進む。
制御装置51は、工作機械の動作を停止させる(S104)。制御装置51は、測定プローブ21における消費電力の低減のための動作モードを実行する(S105)。
S105のステップにおいて、制御装置51は、第1通信部41における信号の通信の中断と、放射装置22におけるレーザ光の出力の休止と、受光装置23への電力供給の休止とを実行する。
すなわち、本実施の形態では、測定プローブ21によるワークの3次元形状の測定を中断する。この間、第1通信部41による測定プローブ21における測定に関する情報の通信と、第2通信部46による測定プローブ21にて測定データが取得されたタイミングに関する情報の通信とを中断する。第2通信部46は、電力供給部30における電力供給に関する情報の通信を続行する。
制御装置51は、加工エリア200を開閉するドアのロックを解除する。制御装置51は、表示装置57に第1蓄電部31の交換を示すポップアップを表示する(S106)。第1蓄電部31の交換をオペレータに知らせる報知手段は、表示装置57に限られず、たとえば、工作機械に備え付けられたシグナルライトを点灯させてもよいし、シグナル音を発生させてもよい。
第1蓄電部31を交換する(S107)。具体的には、オペレータが、ドアを開き、測定プローブ21から第1蓄電部31を取り外す。オペレータは、別に用意された充電済みの第1蓄電部31を測定プローブ21に取り付ける。
制御装置51は、測定プログラムを再開させる(S108)。具体的には、オペレータが操作盤56上の操作ボタンを押下するなどして、測定プログラムを再開させる。
なお、本実施の形態では、オペレータの手作業によって第1蓄電部31を交換する場合を説明したが、本発明は、これに限られない。たとえば、工作機械上に蓄電部の交換ステーションを設置することにより、制御装置51からの指令に基づいて第1蓄電部31を自動的に交換する構成としてもよい。
本実施の形態では、S103のステップにおいて、第1蓄電部31における蓄電量が所定値以下であると判断された場合に、第2蓄電部36が、第2通信部46および記憶部24に対して電力を供給する。
これにより、第1蓄電部31の交換を可能としつつ、この間、第2蓄電部36から第2通信部46への電力供給によって、第2通信部46が、電力供給部30における電力供給に関する情報を通信し続けることができる。また、第2蓄電部36から記憶部24への電力供給によって、記憶部24に記憶された各種の情報が失われることを防止できる。
オペレータが第1蓄電部31の蓄電量(残容量)を定期的に管理する場合、管理状態の良し悪しは、オペレータに大きく依存する。また、ワークの3次元形状の測定の途中で、電力供給部30における電力供給能力がなくなると、記憶部24に記憶された各種の情報が失われる。このため、電力供給部30の電力供給能力が回復した後も測定を継続することができず、それまでに得られた測定データが無駄になってしまう。これに対して、本実施の形態では、測定プローブ21における第1蓄電部31の蓄電量(残容量)を容易に管理することができるという効果と、電力供給部30における電力供給能力が回復した後にワークの3次元形状の測定を継続することができるという効果とが奏される。
また、本実施の形態では、S105のステップにおいて、制御装置51が、測定プローブ21における消費電力の低減のための動作モードを実行する。これにより、第1蓄電部31の交換時における第2蓄電部36の蓄電量の減りを抑制することができる。
なお、S105のステップにおいて、制御装置51は、第1通信部41および/または第2通信部46における信号の通信の一部の中断と、放射装置22におけるレーザ光の出力の低減とを実行してもよい。この場合、測定プローブ21によるワークの3次元形状の測定が続行されることになるが、第1蓄電部31を交換するまでの電力消費を極力抑えることができる。
図6は、電力供給部の変形例を示す図である。図6を参照して、本変形例では、電力供給部30が、第1蓄電部31および第2蓄電部36に替わって、受電部72および電流センサ74を有する。
工作機械の主軸61には、給電部71が設けられている。受電部72は、給電部71と対をなして非接触給電機構を構成している。測定プローブ21が主軸61に装着されると、受電部72が、給電部71に対して近接して位置決めされる。このとき、給電部71から受電部72に対して電力が供給される。
電流センサ74は、給電部71から受電部72に供給される電流値を検出する。たとえば、給電部71および受電部72の相互の位置関係がずれていたり、給電部71および受電部72の間に切屑等の異物が介在する場合に、電流センサ74で検出される電流値が低くなる。
第2通信部46は、電力供給部30における電力供給に関する情報として、電流センサ74にて検出された電流値を含む第2種の信号を通信する。制御装置51は、その第2種の信号に基づいて、電力供給部30における電力供給能力が不足していると判断した場合に、第1通信部41および第2通信部46のうちの第2通信部46にのみ電力を供給するように電力供給部30を制御する。
このような構成においては、図5中のS107に対応するステップにて、給電部71および受電部72の相互の位置関係を修正したり、給電部71および受電部72の間の異物を取り除いたりする。これにより、電力供給部30における電力供給能力を回復させることができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。