発明の詳細な説明
1. 処置の方法
本発明は、その必要がある対象に化合物1、化合物2もしくは化合物3、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物もしくはプロドラッグの少なくとも1つを含む組成物の治療有効量を投与する段階であって、細胞増殖性障害が処置される、段階により、その必要がある対象において細胞増殖性障害を処置するための方法を提供する。細胞増殖性障害は、がん、前がん状態または非がん状態、疾患もしくは障害であり得る。本発明は、細胞増殖性障害の処置に有用な医薬の調製のための、本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物の使用をさらに提供する。
本発明はまた、その必要がある対象に化合物1、化合物2もしくは化合物3、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物もしくはプロドラッグの少なくとも1つを含む組成物の治療有効量を投与する段階であって、細胞増殖性障害が処置される、段階により、その必要がある対象において細胞増殖性障害に対して保護する方法を提供する。細胞増殖性障害は、がん、前がん状態または非がん状態、疾患もしくは障害であり得る。本発明はまた、細胞増殖性障害の予防に有用な医薬の調製のための、本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物の使用をさらに提供する。
本明細書において用いられる場合、「その必要がある対象」とは、細胞増殖性障害を有する対象、または細胞増殖性障害を発達させる危険性が集団全体に対して増大している対象である。その必要がある対象は、前がん状態を有しうる。好ましくは、その必要がある対象は、がんを有する。「対象」は、哺乳動物を含む。哺乳動物は、例えば、任意の哺乳動物、例えば、ヒト、霊長類、鳥類、マウス、ラット、家禽、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ラクダ、ヒツジまたはブタであり得る。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
本明細書において用いられる場合、「細胞増殖性障害」という用語は、細胞の未調節もしくは異常な増殖、またはこの両方が、がん性であってもがん性でなくてもよい望ましくない状態または疾患をもたらしうる状態をいう。本発明の例示的な細胞増殖性障害は、細胞分裂が調節されない種々の状態を包含する。例示的な細胞増殖性障害としては、新生物、良性腫瘍、悪性腫瘍、前がん状態、インサイチュ腫瘍、被包性腫瘍、転移性腫瘍、液体腫瘍、固形腫瘍、免疫学的腫瘍、血液学的腫瘍、がん、がん腫、白血病、リンパ腫、肉腫、および急速に分裂する細胞が挙げられるが、これらに限定されることはない。「急速に分裂する細胞」という用語は、本明細書において用いられる場合、同じ組織内の隣接または近接する細胞の間で予測または観察されるものを超える速度、またはより大きい速度で分裂する、任意の細胞と定義される。細胞増殖性障害は、前がんまたは前がん状態を含む。細胞増殖性障害は、がんを含む。細胞増殖性障害は、非がん状態または障害を含む。好ましくは、本明細書において提供される方法は、がんの症状を処置または軽減するために用いられる。「がん」という用語は、固形腫瘍、ならびに血液学的腫瘍および/または悪性疾患を含む。「前がん細胞(precancer cell)」または「前がん細胞(precancerous cell)」とは、前がんまたは前がん状態である細胞増殖性障害を示す細胞である。「がん細胞(cancer cell)」または「がん細胞(cancerous cell)」とは、がんである細胞増殖性障害を示す細胞である。再現性のある任意の測定手段を用いて、がん細胞または前がん細胞を同定しうる。がん細胞または前がん細胞は、組織サンプル(例えば、生検サンプル)の組織学的分類または悪性度分類によって同定することができる。がん細胞または前がん細胞は、適切な分子マーカーの使用によって同定することができる。
例示的な非がん性状態または障害としては、慢性関節リウマチ; 炎症; 自己免疫疾患; リンパ増殖状態; 先端巨大症; リウマチ様脊椎炎; 変形性関節症; 痛風、他の関節炎状態; 敗血症; 敗血症性ショック; 内毒素ショック; グラム陰性敗血症; トキシックショック症候群; 喘息; 成人呼吸促進症候群; 慢性閉塞性肺疾患; 慢性肺炎症; 炎症性腸疾患; クローン病; 皮膚関連過剰増殖性障害、乾癬; 湿疹; アトピー性皮膚炎; 色素過剰障害、眼関連過剰増殖性障害、加齢黄斑変性症、潰瘍性大腸炎; 膵臓線維症; 肝臓線維症; 急性および慢性の直腸疾患; 過敏性腸症候群; ピレシス(pyresis); 再狭窄; 大脳マラリア; 脳卒中および虚血性損傷; 神経性外傷; アルツハイマー病; ハンティングトン病; パーキンソン病; 急性および慢性の疼痛; アレルギー性鼻炎; アレルギー性結膜炎; 慢性心不全; 急性冠状脈症候群; 悪質液; マラリア; らい病; リーシュマニア病; ライム病; ライター症候群; 急性滑膜炎; 筋肉の退化、滑液包炎; 腱炎; 腱滑膜炎; ヘルニア様、破裂、もしくは脱出した椎間円板症候群; 大理石骨病; 血栓症; 再狭窄; 珪肺症; 肺筋肉異常増殖; 骨吸収疾患、例えば骨粗鬆症; 対宿主性移植片反応; 繊維脂肪過形成; 脊髄小脳失調症1型; CLOVES症候群; 道化師様魚鱗癬; 巨指症症候群; プロテウス症候群(ヴィーデマン症候群); レオパード(LEOPARD)症候群; 全身性硬化症; 多発性硬化症; 狼瘡; 線維筋痛症; AIDSおよび他のウイルス性疾患、例えば帯状疱疹、単純疱疹IもしくはII、インフルエンザウイルスおよびサイトメガロウイルス; 真性糖尿病; 片側過形成多発性脂肪腫症症候群; 巨大脳髄症; 稀な低血糖症、クリッペル-トレノネイ(Klippel-Trenaunay)症候群; 過誤腫; カウデン(Cowden)症候群; または過成長-高血糖症が挙げられるが、これらに限定されることはない。
例示的ながんとしては、副腎皮質がん腫、AIDS関連がん、AIDS関連リンパ腫、肛門がん、肛門直腸がん、肛門管のがん、肛門扁平上皮がん、血管肉腫、虫垂がん、小児期の小脳がん、小児期の大脳神経膠星状細胞腫、基底細胞がん、皮膚がん(非黒色腫)、胆管がん、肝臓外総胆管がん、肝臓内総胆管がん、膀胱がん(bladder cancer)、膀胱がん(urinary bladder cancer)、骨および関節のがん、骨肉腫および悪性線維性組織球腫、脳がん(brain cancer)、脳腫瘍、脳幹神経膠腫、小脳神経膠星状細胞腫、神経膠星状細胞腫、小脳神経膠星状細胞腫/悪性神経膠腫、脳室上衣細胞腫、髄芽細胞腫、テント上方未分化神経外胚葉性腫瘍、視路および視床下部性神経膠腫、乳がん、気管支腺腫/カルチノイド、類がん腫、胃腸、神経系がん、神経系リンパ腫、中枢神経系がん、中枢神経系リンパ腫、子宮頸がん、小児期のがん、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、結腸がん、結腸直腸がん、皮膚T細胞リンパ腫、リンパ様新生物、菌状息肉腫、セザリー(Seziary)症候群、子宮内膜がん、食道がん、頭蓋外生殖細胞腫瘍、肝臓外生殖細胞腫瘍、肝臓外総胆管がん、眼のがん、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、胆嚢がん、胃(gastric(stomach))がん、胃腸類がん腫、胃腸間質腫瘍(GIST)、生殖細胞腫瘍、卵巣生殖細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍神経膠腫、頭頚部がん、頭頚部扁平上皮がん、肝細胞(肝臓)がん、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、眼内黒色腫、眼のがん、ランゲルハンス島細胞腫瘍(内分泌膵臓)、カポージ肉腫、腎臓がん、直腸がん、腎臓がん、咽頭がん、急性リンパ芽球性白血病、T細胞リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、ヘアリーセル白血病、唇および口腔のがん、肝臓がん、肺がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、肺扁平上皮がん、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、髄芽細胞腫、黒色腫、眼内(眼)黒色腫、メルケル細胞がん腫、悪性中皮腫、中皮腫、転移性扁平(squamous)頚部がん、口腔がん、舌のがん、多発性内分泌腫瘍症候群、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、慢性骨髄増殖性障害、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、口のがん、口腔がん、口腔咽頭がん、卵巣がん、卵巣上皮がん、境界悪性卵巣腫瘍、膵臓がん、島細胞膵臓がん、膵内分泌腫瘍、副鼻腔および鼻腔のがん、副甲状腺がん、胆管がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、松果体芽細胞腫およびテント上方未分化神経外胚葉性腫瘍、下垂体腫瘍、下垂体腺腫、形質細胞新生物/多発性骨髄腫、胸膜肺芽細胞腫、前立腺がん、直腸がん、腎盤および尿管、移行細胞がん、網膜芽細胞腫、横文筋肉腫、唾液腺がん、ユーイングファミリーの肉腫腫瘍、カポージ肉腫、軟組織肉腫、子宮がん、子宮肉腫、皮膚がん(非黒色腫)、皮膚がん(黒色腫)、メルケル細胞皮膚がん腫、小腸がん、軟組織肉腫、扁平上皮がん、胃がん、テント上方未分化神経外胚葉性腫瘍、精巣がん、咽喉がん、胸腺腫、胸腺腫および胸腺がん腫、甲状腺がん、腎盤および尿管ならびに他の泌尿器の移行細胞がん、妊娠性絨毛腫瘍、尿道がん、子宮内膜子宮がん、子宮肉腫、子宮体がん、膣がん、外陰部がん、ならびにウィルムス腫瘍が挙げられるが、これらに限定されることはない。
「血液学的系の細胞増殖性障害」とは、血液学的系の細胞が関与する細胞増殖性障害である。血液学的系の細胞増殖性障害としては、リンパ腫、白血病、骨髄様新生物、肥満細胞新生物、脊髄形成異常症、良性単クローン性高ガンマグロブリン血症、リンパ腫様肉芽腫症、リンパ腫様丘疹症、真性赤血球増加症、慢性骨髄性白血病、原因不明骨髄様化生、および本態性血小板減少症が挙げられうる。血液学的系の細胞増殖性障害としては、血液学的系の細胞の過形成、形成異常症、および化生が挙げられうる。好ましくは、本発明の組成物は、本発明の血液学的がんまたは本発明の血液学的細胞増殖性障害からなる群より選択されるがんを処置するために用いられうる。本発明の血液学的がんとしては、多発性骨髄腫、リンパ腫(ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、小児期のリンパ腫、ならびにリンパ球起源および皮膚起源のリンパ腫を含む)、白血病(小児期の白血病、ヘアリーセル白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、および肥満細胞性白血病を含む)、骨髄様新生物ならびに肥満細胞新生物が挙げられうる。
「肺の細胞増殖性障害」とは、肺の細胞が関与する細胞増殖性障害である。肺の細胞増殖性障害としては、肺細胞に影響を与える全ての形態の細胞増殖性障害が挙げられうる。肺の細胞増殖性障害としては、肺がん、肺の前がんまたは前がん状態、肺の良性増殖および病巣、ならびに肺の悪性増殖または病巣、ならびに肺以外の身体内の組織および器官の転移性病変が挙げられうる。好ましくは、本発明の組成物は、肺がんまたは肺の細胞増殖性障害を処置するために用いられうる。肺がんとしては、全ての形態の肺のがんが挙げられうる。肺がんとしては、悪性肺新生物、上皮内がん、定型類がん腫、および非定型類がん腫が挙げられうる。肺がんとしては、小細胞肺がん(「SCLC」)、非小細胞肺がん(「NSCLC」)、扁平上皮がん、腺がん、小細胞がん、大細胞がん、腺扁平上皮がん(adenosquamous cell carcinoma)、および中皮腫が挙げられうる。肺がんとしては、「瘢痕がん」、気管支原生がん腫、巨細胞がん、紡錘体細胞がん、および大細胞神経内分泌がん腫が挙げられうる。肺がんとしては、組織学的および超微細構造的異質性(例えば、混合した細胞型)を有する肺新生物が挙げられうる。
肺の細胞増殖性障害としては、肺細胞に影響を与える全ての形態の細胞増殖性障害が挙げられうる。肺の細胞増殖性障害としては、肺がん、肺の前がん状態が挙げられうる。肺の細胞増殖性障害としては、肺の過形成、化生、および形成異常症が挙げられうる。肺の細胞増殖性障害としては、アスベスト誘導性過形成、扁平上皮化生、および良性反応性中皮化生が挙げられうる。肺の細胞増殖性障害としては、円柱上皮の重層扁平上皮での置き換え、および粘膜形成異常症が挙げられうる。吸入される損傷性環境因子(例えば、煙草の煙およびアスベスト)に曝露された個体は、肺の細胞増殖性障害を発達させる危険性が上昇しうる。患者が肺の細胞増殖性障害を発達させやすくしうる、以前の肺疾患としては、慢性間質性肺疾患、壊死性肺疾患、強皮症、リウマチ様疾患、サルコイドーシス、間質性肺臓炎、結核、反復する肺炎、特発性肺線維症、肉芽腫症、石綿沈着症、線維化肺胞炎、およびホジキン病が挙げられうる。
「結腸の細胞増殖性障害」とは、結腸の細胞が関与する細胞増殖性障害である。好ましくは、結腸の細胞増殖性障害は、結腸がんである。好ましくは、本発明の組成物は、結腸がんまたは結腸の細胞増殖性障害を処置するために用いられうる。結腸がんとしては、結腸の全ての形態のがんが挙げられうる。結腸がんとしては、散在性および遺伝性の結腸がんが挙げられうる。結腸がんとしては、悪性結腸新生物、上皮内がん、定型類がん腫、および非定型類がん腫が挙げられうる。結腸がんとしては、腺がん、扁平上皮がん、および腺扁平上皮がんが挙げられうる。結腸がんは、遺伝性非ポリポーシス結腸直腸がん、家族性腺腫性ポリポーシス、ガードナー症候群、ポイツ−ジェガーズ症候群、ターコット症候群および若年性ポリポーシスからなる群より選択される遺伝性症候群に関連しうる。結腸がんは、遺伝性非ポリポーシス結腸直腸がん、家族性腺腫性ポリポーシス、ガードナー症候群、ポイツ−ジェガーズ症候群、ターコット症候群および若年性ポリポーシスからなる群より選択される遺伝性症候群により引き起こされうる。
結腸の細胞増殖性障害としては、結腸細胞に影響を与える全ての形態の細胞増殖性障害が挙げられうる。結腸の細胞増殖性障害としては、結腸がん、結腸の前がん状態、結腸の腺腫様ポリープおよび結腸の異時性病巣が挙げられうる。結腸の細胞増殖性障害としては、腺腫が挙げられうる。結腸の細胞増殖性障害は、結腸の過形成、化生、および形成異常症により特徴付けられうる。個体に結腸の細胞増殖性障害を発達させやすくしうる、以前の結腸疾患としては、以前の結腸がんが挙げられうる。個体に結腸の細胞増殖性障害を発達させやすくしうる現在の疾患としては、クローン病および潰瘍性大腸炎が挙げられうる。結腸の細胞増殖性障害は、p53、ras、FAPおよびDCCからなる群より選択される遺伝子の変異に関連しうる。個体は、p53、ras、FAPおよびDCCからなる群より選択される遺伝子の変異の存在に起因して、結腸の細胞増殖性障害を発達させる危険性が増大しうる。
「膵臓の細胞増殖性障害」とは、膵臓の細胞が関与する細胞増殖性障害である。膵臓の細胞増殖性障害としては、膵臓細胞に影響を与える全ての形態の細胞増殖性障害が挙げられうる。膵臓の細胞増殖性障害としては、膵臓がん、膵臓の前がんまたは前がん状態、膵臓の過形成、および膵臓の形成異常、膵臓の良性の増殖または病巣、ならびに膵臓の悪性の増殖または病巣、ならびに膵臓以外の身体内の組織および器官の転移性病変が挙げられうる。膵臓がんとしては、膵臓の全ての形態のがんが挙げられる。膵臓がんとしては、管の腺がん、腺扁平上皮がん、多型巨細胞がん、粘液性腺がん、破骨細胞様巨細胞がん、粘液性嚢胞腺がん、小葉がん、未分類大細胞がん、小細胞がん、膵臓芽細胞腫、乳頭新生物、粘液性嚢胞腺腫、乳頭状嚢胞状新生物、および漿液性嚢胞腺腫が挙げられうる。膵臓がんとしてはまた、組織学的および超微細構造的異質性(例えば、混合した細胞型)を有する膵臓新生物が挙げられうる。
「前立腺の細胞増殖性障害」とは、前立腺の細胞が関与する細胞増殖性障害である。前立腺の細胞増殖性障害としては、前立腺細胞に影響を与える全ての形態の細胞増殖性障害が挙げられうる。前立腺の細胞増殖性障害としては、前立腺がん、前立腺の前がんまたは前がん状態、前立腺の良性の増殖または病巣、および前立腺の悪性の増殖または病巣、ならびに前立腺以外の身体の組織および器官における転移性病変が挙げられうる。前立腺の細胞増殖性障害としては、前立腺の過形成、化生、および形成異常症が挙げられうる。
「皮膚の細胞増殖性障害」とは、皮膚の細胞が関与する細胞増殖性障害である。皮膚の細胞増殖性障害としては、皮膚細胞に影響を与える全ての形態の細胞増殖性障害が挙げられうる。皮膚の細胞増殖性障害としては、皮膚の前がんまたは前がん状態、皮膚の良性の増殖または病巣、黒色腫、悪性黒色腫および皮膚の他の悪性の増殖または病巣、ならびに皮膚以外の身体の組織および器官における転移性病変が挙げられうる。皮膚の細胞増殖性障害としては、皮膚の過形成、化生、および形成異常症が挙げられうる。
「卵巣の細胞増殖性障害」とは、卵巣の細胞が関与する細胞増殖性障害である。卵巣の細胞増殖性障害としては、卵巣の細胞に影響を与える全ての形態の細胞増殖性障害が挙げられうる。卵巣の細胞増殖性障害としては、卵巣の前がんまたは前がん状態、卵巣の良性の増殖または病巣、卵巣がん、卵巣の悪性の増殖または病巣、ならびに卵巣以外の身体の組織および器官における転移性病変が挙げられうる。皮膚の細胞増殖性障害としては、卵巣の細胞の過形成、化生、および形成異常症が挙げられうる。
「乳房の細胞増殖性障害」とは、乳房の細胞が関与する細胞増殖性障害である。乳房の細胞増殖性障害としては、乳房細胞に影響を与える全ての形態の細胞増殖性障害が挙げられうる。乳房の細胞増殖性障害としては、乳がん、乳房の前がんまたは前がん状態、乳房の良性の増殖または病巣、および乳房の悪性の増殖または病巣、ならびに乳房以外の身体の組織および器官における転移性病変が挙げられうる。乳房の細胞増殖性障害としては、乳房の過形成、化生、および形成異常症が挙げられうる。
乳房の細胞増殖性障害は、乳房の前がん状態でありうる。本発明の組成物は、乳房の前がん状態を処置するために用いられうる。乳房の前がん状態としては、乳房の非定型過形成、上皮内腺管がん(DCIS)、腺管内がん、上皮内小葉がん(LCIS)、小葉新生物、および病期0または悪性分類度0の乳房の増殖または病巣(例えば、病期0または悪性分類度0の乳がん、あるいは上皮内がん)が挙げられうる。乳房の前がん状態は、American Joint Committee on Cancer (AJCC)により認容されたTNM分類スキームにしたがって病期分類され得、ここで原発性腫瘍(T)は、T0またはTisの病期に割り当てられ、そして限局性リンパ節(N)は、N0の病期に割り当てられ、そして遠隔転移(M)は、M0の病期に割り当てられている。
乳房の細胞増殖性障害は、乳がんでありうる。好ましくは、本発明の組成物は、乳がんを処置するために用いられうる。乳がんとしては、乳房の全ての形態のがんが挙げられる。乳がんとしては、原発性上皮乳がんが挙げられうる。乳がんとしては、乳房が他の腫瘍(例えば、リンパ腫、肉腫または黒色腫)に関与しているがんが挙げられうる。乳がんとしては、乳房のがん腫、乳房の腺管がん、乳房の小葉がん、乳房の未分化がん腫、乳房の葉状嚢肉腫、乳房の血管肉腫、および乳房の原発性リンパ腫が挙げられうる。乳がんとしては、病期I、病期II、病期IIIA、病期IIIB、病期IIICおよび病期IVの乳がんが挙げられうる。乳房の腺管がんとしては、浸潤性がん種、優勢な腺管内成分を有する浸潤性上皮内がん、炎症性乳がん、および乳房の腺管がんが挙げられ得、組織学的型は、コメド、ムチン(コロイド)、髄質、リンパ球浸潤を伴う髄質、乳頭状、硬性、および管状からなる群より選択される。乳房の腺管がんとしては、優勢なインサイチュ成分を伴う浸潤性小葉がん、浸潤性(invasive)小葉がん、および浸潤性(infiltrating)小葉がんが挙げられうる。乳がんとしては、パジェット病、乳房外パジェット病、腺管内がんを伴うパジェット病、および浸潤性腺管がんを伴うパジェット病が挙げられうる。乳がんとしては、組織学的および超微細構造的異質性(例えば、混合した細胞型)を有する乳房新生物が挙げられうる。乳がんは、基底様(basal-like)、管腔A (luminal A)、管腔B (luminal B)、ERBB2/Her2+または正常乳房様の分子サブタイプとして分類されうる。
好ましくは、本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物は、乳がんを処置するために用いられうる。処置されるべき乳がんとしては、家族性乳がんが挙げられうる。処置されるべき乳がんとしては、散在性乳がんが挙げられうる。処置されるべき乳がんは、雄性対象に生じうる。処置されるべき乳がんは、雌性対象に生じうる。処置されるべき乳がんは、月経前の雌性対象または閉経後の雌性対象に生じうる。処置されるべき乳がんは、30歳以上の対象、または30歳未満の対象に生じうる。処置されるべき乳がんは、50歳以上の対象、または50歳未満の対象に生じている。処置されるべき乳がんは、70歳以上の対象、または70歳未満の対象に生じうる。
処置されるべき乳がんは、BRCA1、BRCA2、またはp53における家族性変異または偶発突然変異を同定するために分類されうる。処置されるべき乳がんは、HER2/neu遺伝子増幅を有する、HER2/neuを過剰発現する、または低レベル、中間レベルもしくは高レベルのHER2/neu発現を有すると分類されうる。処置されるべき乳がんは、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、ヒト上皮増殖因子受容体-2、Ki-67、CA15-3、CA 27-29、およびc-Metからなる群より選択されるマーカーに関して分類されうる。処置されるべき乳がんは、ERが未知、ERに富むまたはERが乏しいと分類されうる。処置されるべき乳がんは、ER陰性またはER陽性と分類されうる。乳がんのER分類は、再現性のある任意の手段によって実施されうる。乳がんのER分類は、Onkologie 27: 175-179 (2004)に記載されるように実施されうる。処置されるべき乳がんは、PRが未知、PRに富むまたはPRが乏しいと分類されうる。処置されるべき乳がんは、PR陰性またはPR陽性と分類されうる。処置されるべき乳がんは、受容体陽性または受容体陰性と分類されうる。処置されるべき乳がんは、CA 15-3もしくはCA 27-29、またはこれらの両方の上昇した血中レベルと関連付けられると分類されうる。
処置されるべき乳がんとしては、乳房の極限性腫瘍が挙げられうる。処置されるべき乳がんとしては、陰性センチネルリンパ節(SLN)生検に関連する乳房の腫瘍が挙げられうる。処置されるべき乳がんとしては、陽性センチネルリンパ節(SLN)生検に関連する乳房の腫瘍が挙げられうる。処置されるべき乳がんとしては、1つまたはそれ以上の陽性腋窩リンパ節に関連する乳房の腫瘍が挙げられ得、ここでこの腋窩リンパ節は、任意の適用可能な方法により病期分類されている。処置されるべき乳がんとしては、結節陰性状態(例えば、結節陰性)または結節陽性状態(例えば、結節陽性)を有すると分類された乳房の腫瘍が挙げられうる。処置されるべき乳がんとしては、身体内の他の位置に転移した乳房の腫瘍が挙げられうる。処置されるべき乳がんは、骨、肺、肝臓、または脳からなる群より選択される位置に転移したと分類されうる。処置されるべき乳がんは、転移性、限局性、局所的(regional)、局所的(local-regional)、局所的に進行した、遠隔、多中心性、両側性、同側性、反対側性、新たに診断された、再発性、および手術不能からなる群より選択される特徴にしたがって、分類されうる。
本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物は、乳がんを発達させる危険性が集団全体に対して増大している対象において、乳房の細胞増殖性障害を処置または予防するため、あるいは乳がんを処置または予防するために、用いられうる。乳がんを発達させる危険性が集団全体に対して増大している対象は、乳がんの家族病歴または個人病歴を有する雌性対象である。乳がんを発達させる危険性が集団全体に対して増大している対象は、BRCA1もしくはBRCA2、またはこれらの両方に生殖細胞系または偶発突然変異を有する雌性対象である。乳がんを発達させる危険性が集団全体に対して増大している対象は、乳がんの家族病歴を有し、BRCA1もしくはBRCA2、またはこれらの両方に生殖細胞系または偶発突然変異を有する、雌性対象である。乳がんを発達させる危険性が集団全体に対して増大している対象は、30歳より高齢、40歳より高齢、50歳より高齢、60歳より高齢、70歳より高齢、80歳より高齢、または90歳より高齢の女性である。乳がんを発達させる危険性が集団全体に対して増大している対象は、乳房の非定型過形成、上皮内腺管がん(DCIS)、腺管内がん、上皮内小葉がん(LCIS)、小葉新生物、または病期0の乳房の増殖もしくは病巣(例えば、病期0または悪性分類度0の乳がんまたは上皮内がん)を有する対象である。
処置されるべき乳がんは、Scarff-Bloom-Richardsonシステムにしたがって組織学的に悪性度分類され得、ここで乳房腫瘍は、1、2、または3の有糸分裂計数評点; 1、2、または3の核多形態性評点; 1、2、または3の細管形成評点; および3〜9の合計Scarff-Bloom-Richardson評点を割り当てられている。処置されるべき乳がんは、悪性分類度1、悪性分類度1〜2、悪性分類度2、悪性分類度2〜3、または悪性分類度3からなる群より選択される、International Consensus Panel on the Treatment of Breast Cancerにしたがう腫瘍悪性分類度を割り当てられうる。
処置されるべきがんは、American Joint Committee on Cancer (AJCC) TNM分類システムにしたがって、病期分類され得、ここで腫瘍(T)は、TX、T1、T1mic、T1a、T1b、T1c、T2、T3、T4、T4a、T4b、T4c、またはT4dの病期を割り当てられており; そして限局性リンパ節(N)は、NX、N0、N1、N2、N2a、N2b、N3、N3a、N3b、またはN3cの病期を割り当てられており; そして遠隔転移(M)は、MX、M0、またはM1の病期を割り当てられうる。処置されるべきがんは、American Joint Committee on Cancer (AJCC)分類にしたがって、病期I、病期IIA、病期IIB、病期IIIA、病期IIIB、病期IIIC、または病期IVとして病期分類されうる。処置されるべきがんは、AJCC分類にしたがって、悪性分類度GX (例えば、悪性分類度が割り当てられ得ない)、悪性分類度1、悪性分類度2、悪性分類度3または悪性分類度4として、悪性分類度を割り当てられうる。処置されるべきがんは、AJCC病理学的分類(pN)にしたがって、pNX、pN0、PN0(I-)、PN0(I+)、PN0(mol-)、PN0(mol+)、PN1、PN1(mi)、PN1a、PN1b、PN1c、pN2、pN2a、pN2b、pN3、pN3a、pN3b、またはpN3cの病期を分類されうる。
処置されるべきがんとしては、直径が約2センチメートル以下であると測定された腫瘍が挙げられうる。処置されるべきがんとしては、直径が約2センチメートル〜約5センチメートルであると測定された腫瘍が挙げられうる。処置されるべきがんとしては、直径が約3センチメートル以上であると測定された腫瘍が挙げられうる。処置されるべきがんとしては、直径が5センチメートル超であると測定された腫瘍が挙げられうる。処置されるべきがんは、顕微鏡外観によって、高分化、中分化、低分化、または未分化と分類されうる。処置されるべきがんは、顕微鏡外観によって、有糸分裂計数(例えば、細胞分裂の量)または核多形態性(例えば、細胞の変化)に関して分類されうる。処置されるべきがんは、顕微鏡外観によって、壊死の領域(例えば、死滅または変性している細胞の領域)に関連すると分類されうる。処置されるべきがんは、異常な核型を有する、異常な数の染色体を有する、または外観が異常である染色体を1つもしくはそれ以上有するとして分類されうる。処置されるべきがんは、異数体、三倍体、もしくは四倍体であるとして、または変化した倍数性を有するとして分類されうる。処置されるべきがんは、染色体転座、または染色体全体の欠失もしくは重複、または染色体の一部分の欠失、重複もしくは増幅の領域を有するとして分類されうる。
処置されるべきがんは、DNAサイトメトリー、フローサイトメトリー、または画像サイトメトリーにより評価されうる。処置されるべきがんは、細胞の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%が、細胞分裂の合成段階(例えば、細胞分裂のS期)にあると分類されうる。処置されるべきがんは、低いS期割合または高いS期割合を有すると分類されうる。
本明細書において用いられる場合、「正常細胞」とは、「細胞増殖性障害」の一部として分類され得ない細胞である。正常細胞は、望ましくない状態または疾患の発達をもたらしうる、調節されない増殖または異常な増殖、あるいはこれらの両方を欠く。好ましくは、正常細胞は、正常に機能する細胞周期チェックポイント制御機構を有する。
本明細書において用いられる場合、「細胞を接触させる」とは、化合物または他の物質組成物(composition of matter)が細胞と直接接触しているか、あるいは細胞に所望の生物学的影響を誘導するために十分に接近している状態をいう。
本明細書において用いられる場合、「候補化合物」とは、その化合物が、研究者または医師により求められる所望の生物学的応答または医学的応答を、細胞、組織、系、動物またはヒトにおいて惹起する見込みがあるか否かを決定する目的で、1つもしくはそれ以上のインビトロまたはインビボでの生物学的アッセイ法において試験されたか、または試験される予定である、本発明の化合物をいう。候補化合物は、本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物である。この生物学的応答または医学的応答は、がんの処置でありうる。この生物学的応答または医学的応答は、細胞増殖性障害の処置または予防でありうる。インビトロまたはインビボでの生物学的アッセイ法としては、酵素活性アッセイ法、電気泳動移動度シフトアッセイ法、レポーター遺伝子アッセイ法、インビトロ細胞生存性アッセイ法、および本明細書において記述されるアッセイ法が挙げられるが、これらに限定されることはない。
本明細書において用いられる場合、「単剤療法」とは、単一の活性化合物または治療化合物を、その必要がある対象に投与することをいう。好ましくは、単剤療法は、治療有効量の活性化合物の投与を伴う。例えば、がんの単剤療法は、本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、類似体もしくは誘導体のうちの1つを、がんの処置の必要がある対象に対して用いる。単剤療法は、複数の活性化合物の組み合わせが、好ましくはこの組み合わせの各成分が治療有効量で存在する状態で、投与される併用療法と対照を成しうる。1つの局面において、本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物を用いる単剤療法は、所望の生物学的効果の誘導において併用療法よりも有効である。
本明細書において用いられる場合、「処置」または「処置する」とは、疾患、状態、または障害と闘う目的での、患者の管理および医療を記述しており、疾患、状態もしくは障害の症状もしくは合併症を軽減するため、または疾患、状態もしくは障害を排除するための、本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物の投与を含む。
本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物はまた、疾患、状態または障害を予防するために用いることができる。本明細書において用いられる場合、「予防」または「予防する」とは、疾患、状態または障害の症状または合併症の発生を低減または排除することを記述している。
本明細書において用いられる場合、「軽減する」という用語は、障害の兆候または症状の重症度が減らされるプロセスを記述することが意図される。重要なことには、兆候または症状は、排除されることなく軽減されうる。好ましい態様において、本発明の薬学的組成物の投与は、兆候または症状の排除をもたらすが、しかし排除は必要とされない。有効な投与量は兆候または症状の重症度を減らすものと予想される。例えば、複数の場所で起こりうる、がんのような障害の兆候または症状は、がんの重症度が複数の場所の少なくとも1つのなかで減少されるなら、軽減される。
本明細書において用いられる場合、「重篤度」という用語は、がんが前がん状態または良性状態から悪性状態へと変換する可能性を記述することが意図される。あるいは、またはさらに、重篤度とは、がんの病期(例えば、TNMシステム(International Union Against Cancer (UICC)およびAmerican Joint Committee on Cancer (AJCC)により認容された)にしたがうか、または当技術分野において認識された他の方法による)を記述することが意図される。がんの病期とは、原発性腫瘍の位置、腫瘍サイズ、腫瘍の数、およびリンパ節関与(リンパ節へのがんの広がり)などの要因に基づく、がんの重篤度の程度をいう。あるいは、またはさらに、重篤度とは、当技術分野において認識された方法による腫瘍の悪性度分類を記述することが意図される(National Cancer Institute, www.cancer.govを参照のこと)。腫瘍の悪性度分類とは、がん細胞が顕微鏡下でいかに異常に見えるか、ならびに腫瘍がいかに速く増殖し、広がりやすいかの観点で、がん細胞を分類するために用いられるシステムである。腫瘍の悪性度分類を決定する際に、多くの要因が考慮され、細胞の構造および増殖パターンが挙げられる。腫瘍の悪性度分類を決定するために用いられる具体的な要因は、がんの型ごとに変わる。重篤度はまた、分化とも呼ばれる、組織学的悪性度分類を記述し、これは、いかに多くの腫瘍細胞が、同じ組織型の正常細胞に類似するかをいう(National Cancer Institute, www.cancer.govを参照のこと)。さらに、重篤度は、核の悪性度分類を記述し、これは、腫瘍細胞中の核のサイズおよび形状、ならびに分裂している腫瘍細胞の割合をいう(National Cancer Institute, www.cancer.govを参照のこと)。
本発明の別の局面において、重篤度は、腫瘍が増殖因子を分泌した程度、細胞外マトリックスを分解した程度、血管新生した程度、近接組織への接着を失った程度、または転移した程度を記述する。さらに、重篤度は、原発性腫瘍が転移した位置の数を記述する。最後に、重篤度としては、種々の型および位置の腫瘍を処置する困難性が挙げられる。例えば、手術不可能な腫瘍、複数の身体系へのより大きいアクセスを有するがん(血液学的腫瘍および免疫学的腫瘍)、ならびに従来の処置に対してほとんど抵抗性であるがんは、最も重篤であるとみなされる。これらの状況において、対象の生存の見込みの延長および/または疼痛の減少、がん性細胞の割合の減少または1つの系への細胞の制限、ならびにがんの病期/腫瘍の悪性度分布/組織学的悪性度分布/核の悪性度分布の改善は、がんの兆候または症状を軽減するとみなされる。
本明細書において用いられる場合、「症状」という用語は、疾患、疾病、障害、または身体内で正しくない何かの指標として定義される。症状は、その症状を経験している個体により知覚および注目されるが、他者によっては容易には注目されないかもしれない。他者とは、非健康管理人員として定義される。
本明細書において用いられる場合、「兆候」という用語もまた、身体内で正しくない何かの指標として定義される。しかし、兆候は、医師、看護士、または他の健康管理人員により見られうる事項として定義される。
がんとは、ほとんどあらゆる兆候または症状を引きおこしうる疾患の群である。兆候および症状は、そのがんが何であるか、そのがんのサイズ、およびそのがんが近隣の器官または構造体にいかに影響を与えるかに依存する。がんが広がる(転移する)場合、症状は、身体の異なる部分で見られうる。
がんが増殖するにつれて、がんは、近隣の器官、血管、および神経を押し始める。この圧力は、がんの何らかの兆候および症状を引き起こす。がんが脳の特定の部分のような、重大な領域にある場合、最も小さい腫瘍でさえも、初期症状を引き起こしうる。
しかし、時に、がんは、がんが非常に大きく増殖するまでいかなる症状をも引き起こさない場所で始まる。例えば、膵臓がんは、通常、体外から触知できる大きさまでは成長しない。膵臓がんのなかには、それらが近隣の神経の周囲で増殖し始めるまで(これにより背部痛が起こる)、症状を引き起こさないものがある。胆管の周りで増殖し、これによって胆汁の流れを遮断し、黄疸として知られる皮膚の黄色化をもたらすものもある。膵臓がんがこれらの兆候または症状を引き起こすまでに、膵臓がんは通常、進行した病期に達している。
がんは、熱、疲労または体重損失のような、症状を引き起こすこともある。これは、がん細胞が身体エネルギーの供給物質および放出物質の多くを使い果たして、身体の代謝を変化させることに起因しうる。または、がんは、これらの症状をもたらすように免疫系を反応させうる。
時に、がん細胞は、通常はがんから生じると考えられない症状を引き起こす物質を、血流中に放出する。例えば、膵臓のいくつかのがんは、血餅を脚の静脈に発達させる物質を放出しうる。いくつかの肺がんは、神経および筋肉に影響を与える血中カルシウムレベルに影響を与えて、衰弱および眩暈感を引き起こす、ホルモン様物質を作出する。
がんは、種々のサブタイプのがん細胞が存在する場合に起こる数種の一般的な兆候または症状を提示する。がんを有するほとんどのヒトは、その疾患を有するある時点で、体重を損失する。説明のつかない(意図されない) 10ポンドまたはそれ以上の体重損失は、がん、特に、膵臓、胃、食道または肺のがんの最初の兆候でありうる。
熱は、がんにおいて非常に一般的であるが、進行した疾患においてより頻繁に見られる。がんを有するほぼ全ての患者は、ある時点で、特に、がんまたはその処置が免疫系に影響を与え、身体が感染症と戦うことをより困難にする場合に、熱を有する。さほど頻繁ではないが、熱は、白血病またはリンパ腫のような、がんの初期兆候でありうる。
疲労は、がんの進行に伴う重要な症状でありうる。とはいえ、疲労は、白血病を有するなど、がんにおいて、またはがんが血液の持続的損失を引き起こしている場合、例えばいくつかの結腸がんまたは胃がんなどで、初期に起こることもある。
疼痛は、骨がんまたは精巣がんのような、いくつかのがんに伴う、初期症状でありうる。しかし、最も頻繁には、疼痛は、進行した疾患の症状である。
皮膚のがん(次節を参照のこと)と一緒に、いくつかの内部がんは、目に見える皮膚兆候を引き起こしうる。これらの変化としては、暗色に見える皮膚(色素過剰症)、黄色に見える皮膚(黄疸)もしくは赤色に見える皮膚(紅斑); かゆみ; または過剰な育毛が挙げられる。
あるいは、またはさらに、がんのサブタイプは、特異的な兆候または症状を提示する。排便習慣または膀胱機能の変化は、がんの指標でありうる。長期間の便秘、下痢、または便のサイズの変化は、結腸がんの兆候でありうる。排尿時の疼痛、尿中の血液、および膀胱機能の変化(頻度が高いまたは頻度が低い排尿のような)は、膀胱がんまたは前立腺がんに関連しうる。
皮膚状態の変化または新たな皮膚状態の出現は、がんの指標でありうる。皮膚がんは、出血し、治癒しないびらんのように見えうる。口内の長期にわたるびらんは、特に喫煙する患者、噛み煙草を嗜む患者、またはアルコールを頻繁に飲む患者においては、口腔がんである可能性がある。陰茎または膣のびらんは、感染または初期がんのいずれかの兆候でありうる。
異常な出血または排泄は、がんの指標でありうる。異常出血は、初期がんまたは進行がんのいずれかで起こりうる。痰中の血液(粘液分泌過多)は、肺がんの兆候でありうる。糞便中の血液(または暗色もしくは黒色の糞便)は、結腸がんまたは直腸がんの兆候でありうる。子宮頸部または子宮内膜(子宮の内層)のがんは、膣の出血を引き起こしうる。尿中の血液は、膀胱がんまたは腎臓がんの兆候でありうる。乳頭からの血液の混じった分泌物は、乳がんの兆候でありうる。
乳房および身体の他の部分の肥大またはしこりは、がんの存在の指標でありうる。多くのがんは、主として乳房、精巣、リンパ節(腺)および身体の軟部組織では、皮膚を通して触知されうる。しこりまたは肥大は、がんの初期兆候または後期兆候でありうる。任意のしこりまたは肥大は、その形成が新しい場合、またはサイズが成長した場合に特に、がんの指標でありうる。
消化不良または嚥下困難は、がんの指標でありうる。これらの症状は一般に、他の原因を有するが、消化不良または嚥下の問題は、食道、胃または咽頭(咽喉)のがんの兆候でありうる。
最近のいぼまたはほくろの変化は、がんの指標でありうる。色、サイズもしくは形状を変化させる、またはその明確な境界線を失う、任意のいぼ、ほくろまたはそばかすは、がんの潜在的発達を示す。例えば、皮膚病変は、黒色腫でありうる。
持続性の咳または嗄声は、がんの指標でありうる。治まらない咳は、肺がんの兆候でありうる。嗄声は、喉頭(larynx(voice box))または甲状腺のがんの兆候でありうる。
上に列挙された兆候および症状は、がんにおいてより一般的に見られるものであるが、さほど一般的ではなく本明細書で列挙されない、他の多くのものが存在する。しかしながら、当技術分野において認識されているがんの全ての兆候および症状が、本発明により企図および包含される。
がんの処置は、腫瘍のサイズの低減をもたらしうる。腫瘍のサイズの低減は、「腫瘍退縮」ともいわれうる。好ましくは、処置後、腫瘍サイズは、処置前のそのサイズに対して5%またはそれ以上だけ低減し; より好ましくは、腫瘍サイズは、10%またはそれ以上だけ低減; より好ましくは、20%またはそれ以上だけ低減し; より好ましくは、30%またはそれ以上だけ低減し; より好ましくは、40%またはそれ以上だけ低減し; なおより好ましくは、50%またはそれ以上だけ低減し; 最も好ましくは、75%またはそれ以上を超えるだけ低減する。腫瘍のサイズは、再現性のある任意の測定手段によって測定されうる。腫瘍のサイズは、腫瘍の直径として測定されうる。
がんの処置は、腫瘍体積の低減をもたらしうる。好ましくは、処置後、腫瘍体積は、処置前のそのサイズに対して5%またはそれ以上だけ低減し; より好ましくは、腫瘍体積は、10%またはそれ以上だけ低減し; より好ましくは、20%またはそれ以上だけ低減し; より好ましくは、30%またはそれ以上だけ低減し; より好ましくは、40%またはそれ以上だけ低減し; なおより好ましくは、50%またはそれ以上だけ低減し; 最も好ましくは、75%またはそれ以上を超えるだけ低減する。腫瘍体積は、再現性のある任意の測定手段により測定されうる。
がんの処置は、腫瘍の数の減少をもたらす。好ましくは、処置後、腫瘍の数は、処置前の数に対して5%またはそれ以上だけ低減し; より好ましくは、腫瘍の数は、10%またはそれ以上だけ低減し; より好ましくは、20%またはそれ以上だけ低減し; より好ましくは、30%またはそれ以上だけ低減し; より好ましくは、40%またはそれ以上だけ低減し; なおより好ましくは、50%またはそれ以上だけ低減し; 最も好ましくは、75%を超えるだけ低減する。腫瘍の数は、再現性のある任意の測定手段により測定されうる。腫瘍の数は、裸眼または特定の倍率で見える腫瘍を計数することにより測定されうる。好ましくは、特定の倍率は、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、または50倍である。
がんの処置は、原発性腫瘍部位から離れた他の組織または器官における転移性病変の数の減少をもたらしうる。好ましくは、処置後、転移性病変の数は、処置前の数に対して、5%またはそれ以上だけ低減し; より好ましくは、転移性病変の数は、10%またはそれ以上だけ低減し; より好ましくは、20%またはそれ以上だけ低減し; より好ましくは、30%またはそれ以上だけ低減し; より好ましくは、40%またはそれ以上だけ低減し; なおより好ましくは、50%またはそれ以上だけ低減し; 最も好ましくは、75%を超えるだけ低減する。転移性病変の数は、再現性のある任意の測定手段により測定されうる。転移性病変の数は、裸眼または特定の倍率で見える転移性病変を計数することにより測定されうる。好ましくは、特定の倍率は、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、または50倍である。
がんの処置は、担体のみを受けた集団と比べて、処置された対象の集団の平均生存時間の増加をもたらしうる。好ましくは、平均生存時間は、30日超だけ; より好ましくは、60日超だけ; より好ましくは、90日超だけ; 最も好ましくは、120日超だけ増加する。集団の平均生存時間の増加は、再現性のある任意の手段により測定されうる。集団の平均生存時間の増加は、例えば、ある集団について、活性化合物による処置開始後の平均生存の長さを計算することにより測定されうる。集団の平均生存時間の増加はまた、例えば、ある集団について、活性化合物による処置1回目の完了後の平均生存の長さを計算することにより測定されうる。
がんの処置は、処置されない対象の集団と比べて、処置された対象の集団の平均生存時間の増加をもたらしうる。好ましくは、平均生存時間は、30日超だけ; より好ましくは、60日超だけ; より好ましくは、90日超だけ; 最も好ましくは、120日超だけ増加する。集団の平均生存時間の増加は、再現性のある任意の手段により測定されうる。集団の平均生存時間の増加は、例えば、ある集団について、活性化合物による処置開始後の平均生存の長さを計算することにより測定されうる。集団の平均生存時間の増加はまた、例えば、ある集団について、活性化合物による処置1回目の完了後の平均生存の長さを計算することにより測定されうる。
がんの処置は、本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、類似体もしくは誘導体ではない薬物での単剤療法を受けた集団と比べて、処置された対象の集団の平均生存時間の増加をもたらしうる。好ましくは、平均生存時間は、30日超だけ; より好ましくは、60日超だけ; より好ましくは、90日超だけ; 最も好ましくは、120日超だけ増加する。集団の平均生存時間の増加は、再現性のある任意の手段により測定されうる。集団の平均生存時間の増加は、例えば、ある集団について、活性化合物による処置開始後の平均生存の長さを計算することにより測定されうる。集団の平均生存時間の増加はまた、例えば、ある集団について、活性化合物による処置1回目の完了後の平均生存の長さを計算することにより測定されうる。
がんの処置は、担体のみを受けた集団と比べて、処置された対象の集団の死亡率の低下をもたらしうる。がんの処置は、処置されない集団と比べて、処置された対象の集団の死亡率の低下をもたらしうる。がんの処置は、本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、類似体もしくは誘導体ではない薬物での単剤療法を受けた集団と比べて、処置された対象の集団の死亡率の低下をもたらしうる。好ましくは、死亡率は、2%超だけ; より好ましくは、5%超だけ; より好ましくは、10%超だけ; 最も好ましくは、25%超だけ低下する。処置された対象の集団の死亡率の低下は、再現性のある任意の手段により測定されうる。集団の死亡率の低下は、例えば、ある集団について、活性化合物による処置開始後の単位時間あたりの疾患関連死の平均数を計算することにより測定されうる。集団の死亡率の低下はまた、例えば、ある集団について、活性化合物による処置1回目の完了後の単位時間あたりの疾患関連死の平均数を計算することにより測定されうる。
がんの処置は、腫瘍増殖率の低下をもたらしうる。好ましくは、処置後、腫瘍増殖率は、処置前の数に対して、少なくとも5%だけ低減し; より好ましくは、腫瘍増殖率は、少なくとも10%だけ低減し; より好ましくは、少なくとも20%だけ低減し; より好ましくは、少なくとも30%だけ低減し; より好ましくは、少なくとも40%だけ低減し; より好ましくは、少なくとも50%だけ低減し; なおより好ましくは、少なくとも50%だけ低減し; 最も好ましくは、少なくとも75%だけ低減する。腫瘍増殖率は、再現性のある任意の測定手段により測定されうる。腫瘍増殖率は、単位時間あたりの腫瘍直径の変化にしたがって測定されうる。
がんの処置は、腫瘍再増殖の減少をもたらしうる。好ましくは、処置後、腫瘍再増殖は、5%未満であり; より好ましくは、腫瘍再増殖は、10%未満; より好ましくは、20%未満; より好ましくは、30%未満; より好ましくは、40%未満; より好ましくは、50%未満; なおより好ましくは、50%未満; 最も好ましくは、75%未満である。腫瘍再増殖は、再現性のある任意の測定手段により測定されうる。腫瘍再増殖は、例えば、処置後の以前の腫瘍収縮後の腫瘍の直径の増加を測定することにより測定される。腫瘍再増殖の減少は、処置を止めた後に腫瘍が再発し損なうことにより示される。
細胞増殖性障害の処置または予防は、細胞増殖の速度の低減をもたらしうる。好ましくは、処置後、細胞増殖の速度は、少なくとも5%だけ; より好ましくは、少なくとも10%だけ; より好ましくは、少なくとも20%だけ; より好ましくは、少なくとも30%だけ; より好ましくは、少なくとも40%だけ; より好ましくは、少なくとも50%だけ; なおより好ましくは、少なくとも50%だけ; 最も好ましくは、少なくとも75%だけ低減する。細胞増殖の速度は、再現性のある任意の測定手段により測定されうる。細胞増殖の速度は、例えば、単位時間あたりの組織サンプル中の分裂細胞の数を測定することにより測定される。
細胞増殖性障害の処置または予防は、増殖細胞の比率の低減をもたらしうる。好ましくは、処置後、増殖細胞の比率は、少なくとも5%だけ; より好ましくは、少なくとも10%だけ; より好ましくは、少なくとも20%だけ; より好ましくは、少なくとも30%だけ; より好ましくは、少なくとも40%だけ; より好ましくは、少なくとも50%だけ; なおより好ましくは、少なくとも50%だけ; 最も好ましくは、少なくとも75%だけ低減する。増殖細胞の比率は、再現性のある任意の測定手段により測定されうる。好ましくは、増殖細胞の比率は、例えば、組織サンプル中の非分裂細胞の数に対する分裂細胞の数を定量することにより測定される。増殖細胞の比率は、有糸分裂指数と等価でありうる。
細胞増殖性障害の処置または予防は、細胞増殖の領域または区域のサイズの減少をもたらしうる。好ましくは、処置後、細胞増殖の領域または区域のサイズは、処置前のそのサイズに対して、少なくとも5%だけ低減し; より好ましくは、少なくとも10%だけ低減し; より好ましくは、少なくとも20%だけ低減し; より好ましくは、少なくとも30%だけ低減し; より好ましくは、少なくとも40%だけ低減し; より好ましくは、少なくとも50%だけ低減し; なおより好ましくは、少なくとも50%だけ低減し; 最も好ましくは、少なくとも75%だけ低減する。細胞増殖の領域または区域のサイズは、再現性のある任意の測定手段により測定されうる。細胞増殖の領域または区域のサイズは、細胞増殖の領域または区域の直径または幅として測定されうる。
細胞増殖性障害の処置または予防は、異常な外観または形態を有する細胞の数または比率の減少をもたらしうる。好ましくは、処置後、異常な形態を有する細胞の数は、処置前のそのサイズに対して、少なくとも5%だけ低減し; より好ましくは、少なくとも10%だけ低減し; より好ましくは、少なくとも20%だけ低減し; より好ましくは、少なくとも30%だけ低減し; より好ましくは、少なくとも40%だけ低減し; より好ましくは、少なくとも50%だけ低減し; なおより好ましくは、少なくとも50%だけ低減し; 最も好ましくは、少なくとも75%だけ低減する。異常な細胞の外観または形態は、再現性のある任意の測定手段により測定されうる。異常な細胞の形態は、顕微鏡検査法により、例えば、倒立組織培養顕微鏡を用いて測定されうる。異常な細胞の形態は、核の多形態性の形態を取りうる。
本明細書において用いられる場合、「選択的に」という用語は、ある集団において、別の集団におけるよりも頻繁に起こる傾向があることを意味する。比較される集団は、細胞集団でありうる。好ましくは、本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物は、がん細胞または前がん細胞に対して選択的に作用するが、正常細胞には作用しない。好ましくは、本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物は、1つの分子標的(例えば、標的キナーゼ)を調節するように選択的に作用するが、別の分子標的(例えば、非標的キナーゼ)を有意に調節しない。本発明はまた、キナーゼのような、酵素の活性を選択的に阻害するための方法を提供する。好ましくは、ある事象が集団Bと比較して集団Aにおいて2倍超の頻度で起こる場合、この事象は、集団Bに対して集団Aにおいて選択的に起こっている。ある事象が集団Aにおいて5倍超の頻度で起こる場合、この事象は選択的に起こっている。ある事象が、集団Bと比較して集団Aにおいて10倍超; より好ましくは、50倍超; なおより好ましくは、100倍超の頻度で; 最も好ましくは、集団Aにおいて1000倍超の頻度で起こる場合、この事象は選択的に起こっている。例えば、細胞死が、正常細胞と比較してがん細胞において2倍超の頻度で起こる場合、がん細胞において選択的に起こるといわれる。
本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物は、分子標的(例えば、標的キナーゼ)の活性を調節することができる。調節するとは、分子標的の活性を刺激することまたは阻害することをいう。好ましくは、本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物は、それが、該化合物の存在のみを欠く以外には同じ条件下での分子標的の活性に対して、分子標的の活性を少なくとも2倍だけ刺激または阻害する場合、分子標的の活性を調節する。より好ましくは、本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物は、それが、該化合物の存在のみを欠く以外には同じ条件下での分子標的の活性に対して、分子標的の活性を少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍だけ刺激または阻害する場合、分子標的の活性を調節する。分子標的の活性は、再現性のある任意の手段により測定されうる。分子標的の活性は、インビトロで測定されてもまたはインビボで測定されてもよい。例えば、分子標的の活性は、酵素活性アッセイ法またはDNA結合アッセイ法によりインビトロで測定されてもよく、あるいは分子標的の活性は、レポーター遺伝子の発現についてアッセイすることによりインビボで測定されてもよい。
本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物は、この化合物の添加が、該化合物の存在のみを欠く以外には同じ条件下での分子標的の活性に対して、分子標的の活性を10%を超えるだけ刺激または阻害しない場合、分子標的の活性を有意に調節しない。
本明細書において用いられる場合、「アイソザイム選択的」という用語は、酵素の第2アイソフォームと比べて酵素の第1アイソフォームの選択的阻害または刺激(例えば、キナーゼアイソザイムβと比べてキナーゼアイソザイムαの選択的阻害または刺激)を意味する。好ましくは、本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物は、生物学的効果を達成するために必要とされる投与量において、最低4倍の差、好ましくは10倍の差、より好ましくは50倍の差を示す。好ましくは、本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物は、阻害の範囲全体にわたってこの差を示し、その差は関心対象の分子標的についてIC50、すなわち、50%阻害で例示される。
本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物を、その必要がある対象または細胞に投与することにより、関心対象のキナーゼの活性の調節(すなわち、刺激または阻害)をもたらすことができる。
本発明は、本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物の生物学的活性を評価する方法を提供する。1つの方法において、酵素活性に基づくアッセイ法を利用することができる。1つの特定の酵素活性アッセイ法において、酵素活性はキナーゼ由来である。本明細書において用いられる場合、「キナーゼ」とは、タンパク質およびペプチド中のSer/ThrまたはTyrの側鎖上のヒドロキシル基へのATP由来のγ-リン酸の移動を触媒し、種々の重要な細胞機能、おそらく最も顕著には、シグナル伝達、分化および増殖の制御に密接に関与する、酵素の大きなクラスをいう。人体には約2000種の異なるプロテインキナーゼが存在すると推定されており、これらはそれぞれ特定のタンパク質/ペプチド基質をリン酸化するが、それらは全て高度に保存されたポケット内の同じ第2の基質ATPに結合する。既知のがん遺伝子産物の約50%がプロテインチロシンキナーゼ(PTK)であり、そのキナーゼ活性は細胞形質転換をもたらすことが示されている。好ましくは、アッセイされるキナーゼはチロシンキナーゼである。
本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物により引き起こされる酵素活性の変化は、開示されたアッセイ法において測定することができる。酵素活性の変化は、ある種の基質のリン酸化の程度の変化によって特徴付けることができる。本明細書において用いられる場合、「リン酸化」は、タンパク質および有機分子を含む、基質へのリン酸基の付加をいい、タンパク質の生物学的活性を調節する際に重要な役割を果たす。好ましくは、アッセイおよび測定されるリン酸化は、チロシン残基へのリン酸基の付加を伴う。基質はペプチドまたはタンパク質でありうる。
いくつかのアッセイ法において、免疫学的試薬、例えば、抗体および抗原が利用される。いくつかのアッセイ法での酵素活性の測定において蛍光を利用することができる。本明細書において用いられる場合、「蛍光」とは、同じ分子によってより高エネルギーの入射光子を吸収する結果として分子が光子を放出するプロセスをいう。開示された化合物の生物学的活性を評価するための具体的な方法は、実施例に記述されている。
本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物を、その必要がある対象または細胞に投与することにより、細胞内標的(例えば、基質)の活性の調節(すなわち、刺激または阻害)がもたらされる。Gab-1、Grb-2、Shc、FRS2α、SHP2およびc-Cblのようなアダプタータンパク質、ならびにRas、Src、PI3K、PLC-γ、STATs、ERK1、ERK2およびFAKのようなシグナル伝達物質を含むが、これらに限定されない、いくつかの細胞内標的を本発明の化合物によって調節することができる。
活性化とは、物質組成物(例えば、タンパク質または核酸)を、所望の生物学的機能を実行するのに適した状態に置くことをいう。活性化されうる物質組成物はまた、活性化されていない状態を有する。活性化された物質組成物は、阻害的もしくは刺激的な生物学的機能、またはその両方を有しうる。
上昇とは、物質組成物(例えば、タンパク質または核酸)の所望の生物学的活性の増加をいう。上昇は、物質組成物の濃度の増加によって起こりうる。
本明細書において用いられる場合、「細胞周期チェックポイント経路」とは、細胞周期チェックポイントの調節に関与する生化学的経路をいう。細胞周期チェックポイント経路は、細胞周期チェックポイントを含む1つまたは複数の機能に、刺激的もしくは阻害的効果、またはその両方を及ぼしうる。細胞周期チェックポイント経路は、細胞周期チェックポイントの調節に寄与する少なくとも2つの物質組成物、好ましくはタンパク質から構成されている。細胞周期チェックポイント経路は、細胞周期チェックポイント経路の1つまたは複数のメンバーの活性化によって活性化されうる。好ましくは、細胞周期チェックポイント経路は、生化学的シグナル伝達経路である。
本明細書において用いられる場合、「細胞周期チェックポイント調節因子」とは、細胞周期チェックポイントの調節において、少なくとも部分的に、機能しうる物質組成物をいう。細胞周期チェックポイント調節因子は、細胞周期チェックポイントを含む1つまたは複数の機能に、刺激的もしくは阻害的効果、またはその両方を及ぼしうる。細胞周期チェックポイント調節因子は、タンパク質であっても、タンパク質でなくてもよい。
がんまたは細胞増殖性障害の処置は細胞死をもたらすことができ、好ましくは、細胞死は集団中の細胞数の少なくとも10%の減少をもたらす。より好ましくは、細胞死は、少なくとも20%の減少; より好ましくは、少なくとも30%の減少; より好ましくは、少なくとも40%の減少; より好ましくは、少なくとも50%の減少; 最も好ましくは、少なくとも75%の減少を意味する。集団中の細胞数は、再現性のある任意の手段により測定されうる。集団中のいくつかの細胞は、蛍光活性化細胞選別(FACS)、免疫蛍光顕微鏡法および光学顕微鏡法により測定することができる。細胞死を測定する方法は、Li et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 100(5): 2674-8, 2003に示される通りである。1つの局面において、細胞死はアポトーシスにより起こる。
好ましくは、有効量の本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物は、正常細胞に対して有意に細胞傷害性ではない。治療有効量の化合物の投与が正常細胞の10%超で細胞死を誘導しない場合、化合物の治療有効量は正常細胞に対して有意に細胞傷害性ではない。治療有効量の化合物の投与が正常細胞の10%超で細胞死を誘導しない場合、化合物の治療有効量は正常細胞の生存性に有意に影響しない。1つの局面において、細胞死はアポトーシスにより起こる。
細胞を本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物と接触させることにより、がん細胞において細胞死を選択的に誘導または活性化することができる。その必要がある対象に、本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物を投与することにより、がん細胞において細胞死を選択的に誘導または活性化することができる。細胞を本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物と接触させることにより、細胞増殖性障害の影響を受けた1つまたは複数の細胞において細胞死を選択的に誘導することができる。好ましくは、その必要がある対象に、本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物を投与することにより、細胞増殖性障害の影響を受けた1つまたは複数の細胞において細胞死が選択的に誘導される。
本発明は、本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物を、その必要がある対象に投与することによってがんを処置または予防する方法に関し、ここで本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物の投与は、以下のうちの1つまたは複数をもたらす: 細胞周期のG1期および/またはS期の細胞の蓄積、正常細胞での有意な量の細胞死を伴わないがん細胞での細胞死による細胞毒性、動物における少なくとも2の治療指数での抗腫瘍活性、ならびに細胞周期チェックポイントの活性化。本明細書において用いられる場合、「治療指数」は、最大許容用量を有効用量で割ったものである。
当業者は、本明細書において論じられる既知の技法または同等の技法の詳細な説明についての一般的な文献テキストを参照することができる。これらのテキストには、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Inc. (2005); Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2000); Coligan et al., Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, N.Y.; Enna et al., Current Protocols in Pharmacology, John Wiley & Sons, N.Y.; Fingl et al., The Pharmacological Basis of Therapeutics (1975), Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PA, 18th edition (1990)が含まれる。もちろん、これらのテキストは、本発明の局面を作出または使用する際にも参照することができる。
本明細書において用いられる場合、「併用療法」または「共治療(co-therapy)」は、本発明の少なくとも2つの化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物の、本発明のこれらの少なくとも2つの化合物の共作用から得られる有利な効果を提供することを意図した特定の処置計画の一部としての、投与を含む。組み合わせの有利な効果としては、本発明のこれらの少なくとも2つの化合物の組み合わせから生じる薬物動態学的または薬力学的な共作用が挙げられるが、これらに限定されることはない。本発明のこれらの少なくとも2つの化合物を組み合わせて投与することは、典型的には、規定された期間(通常、選択された組み合わせに依って数分間、数時間、数日間または数週間)にわたり行われる。「併用療法」は、本発明の組み合わせを付随的に任意にもたらす別の単剤療法の一部としての、本発明のこれらの化合物のうちの2つまたはそれ以上の投与を包含することを意図されうるが、一般には意図されない。
「併用療法」は、各治療剤が異なる時点で投与される、これらの治療剤の連続的な様式での投与、およびこれらの治療剤、または治療剤のうちの少なくとも2つの、実質的に同時の様式での投与を包含することが意図される。本明細書において用いられる実質的に同時の様式は、互いに1時間以内の少なくとも2つの治療剤の投与である。実質的に同時の投与は、例えば、一定比の各治療剤を有する1つの組成物を、または別々のカプセル中でこれらの治療剤の各々について、対象に投与することにより達成することができる。本明細書において用いられる連続的方法は、少なくとも2つの治療剤のうちの一方を、少なくとも2つの治療剤のもう一方の投与から1時間後よりも後に投与することである。好ましくは、連続投与の場合、少なくとも2つの治療剤のうちの1つは、他の治療剤の投与から少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間、少なくとも96時間または少なくとも1週間後に投与される。各治療剤の連続的または実質的に同時の投与は、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、および粘膜組織を通しての直接の吸収を含むが、これらに限定されない、任意の適切な経路によって行うことができる。これらの治療剤は、同じ経路によって投与されても異なる投与によって投与されてもよい。例えば、選択される組み合わせの第1の治療剤は、静脈内注射によって投与されうるが、一方でこの組み合わせの他の治療剤は、経口投与されうる。あるいは、例えば、全ての治療剤が経口投与されうるか、または全ての治療剤が静脈内注射により投与されうる。治療剤が投与される順序は、厳密に重大ではない。
「併用療法」はまた、上記のような本発明の少なくとも2つの化合物の、他の生物学的に活性な成分および非薬物療法(例えば、外科手術または放射線処置)とさらに組み合わせての投与を包含する。この併用療法が非薬物処置をさらに含む場合、この非薬物処置は、この治療剤と非薬物処置との組み合わせの共作用からの有利な効果が達成される限り、任意の適切な時点で行われうる。例えば、適切な症例において、この有利な効果は、この非薬物処置が一時的に、おそらく、数日間または数週間でさえ、治療剤の投与から除かれる場合に、依然として達成される。
本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、類似体もしくは誘導体、あるいは本発明の少なくとも2つの化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物の組み合わせは、さらなる化学療法剤と組み合わせてさらに投与されうる。さらなる化学療法剤(抗新生物剤または抗増殖剤ともいわれる)は、アルキル化剤; 抗生物質; 抗代謝剤; 解毒剤; インターフェロン; ポリクローナルもしくはモノクローナル抗体; EGFR阻害剤; FGFR阻害剤、HER2阻害剤; ヒストンデアセチラーゼ阻害剤; ホルモン; 有糸分裂阻害剤; MTOR阻害剤; 多種キナーゼ阻害剤; セリン/スレオニンキナーゼ阻害剤; チロシンキナーゼ阻害剤; VEGF/VEGFR阻害剤; タキサンもしくはタキサン誘導体、アロマターゼ阻害剤、アントラサイクリン、微小管標的薬物、トポイソメラーゼ毒薬物、分子標的もしくは酵素の阻害剤(例えば、キナーゼ阻害剤)、シチジン類似体薬物またはwww.cancer.org/docroot/cdg/cdg_0.aspに列挙される任意の化学療法剤、抗新生物剤もしくは抗増殖剤であり得る。
例示的なアルキル化剤としては、シクロホスファミド(シトキサン(Cytoxan); ネオサール(Neosar)); クロラムブシル(ロイケラン(Leukeran)); メルファラン(アルケラン); カルムスチン(BiCNU); ブスルファン(ブスルフェックス(Busulfex)); ロムスチン(CeeNU); ダカルバジン(DTIC-Dome); オキサリプラチン(エロキサチン(Eloxatin)); カルムスチン(グリアデル(Gliadel)); イフォスファミド(イフェックス(Ifex)); メクロレタミン(ムスタルゲン(Mustargen)); ブスルファン(ミレラン(Myleran)); カルボプラチン(パラプラチン); シスプラチン(CDDP; プラチノール(Platinol)); テモゾロミド(テモダール); チオテパ(チオプレックス(Thioplex)); ベンダムスチン(トレアンダ(Treanda)); またはストレプトゾシン(ザノサール(Zanosar))が挙げられるが、これらに限定されることはない。
例示的な抗生物質としては、ドキソルビシン(アドリアマイシン); ドキソルビシンリポソーマル(ドキシル(Doxil)); ミトキサントロン(ノバントロン); ブレオマイシン(ブレノキサン(Blenoxane)); ダウノルビシン(セルビジン(Cerubidine)); ダウノルビシンリポソーマル(ダウノキソーム(DaunoXome)); ダクチノマイシン(コスメゲン); エピルビシン(エレンス(Ellence)); イダルビシン(イダマイシン); プリカマイシン(ミトラシン(Mithracin)); マイトマイシン(ムタマイシン(Mutamycin)); ペントスタチン(ニペント(Nipent)); またはバルルビシン(valrubicin)(バルスター(Valstar))が挙げられるが、これらに限定されることはない。
例示的な抗代謝剤としては、フルオロウラシル(アドルシル(Adrucil)); カペシタビン(ゼローダ); ヒドロキシ尿素(ハイドレア); メルカプトプリン(プリネトール(Purinethol)); ペメトレキセド(アリムタ); フルダラビン(フルダラ); ネララビン(nelarabine) (アラノン(Arranon)); クラドリビン(クラドリビンノバプラス(Cladribine Novaplus)); クロファラビン(clofarabine) (クロラル(Clolar)); シタラビン(サイトサー-U (Cytosar-U)); デシタビン(ダコゲン(Dacogen)); シタラビンリポソーマル(デポシット(DepoCyt)); ヒドロキシ尿素(ドロキシア(Droxia)); プララトレキセート(pralatrexate) (フォロチン(Folotyn)); フロクスウリジン(FUDR); ゲムシタビン(ジェムザール); クラドリビン(ロイスタチン); フルダラビン(オフォルタ(Oforta)); メトトレキセート(MTX; リウマトレックス(Rheumatrex)); メトトレキセート(トレキサル(Trexall)); チオグアニン(タブロイド(Tabloid)); TS-1またはシタラビン(タラビンPFS (Tarabine PFS))が挙げられるが、これらに限定されることはない。
例示的な解毒剤としては、アミホスチン(エチオール(Ethyol))またはメスナ(メスネックス(Mesnex))が挙げられるが、これらに限定されることはない。
例示的なインターフェロンとしては、インターフェロンα-2b (イントロンA)またはインターフェロンα-2a (ロフェロン-A (Roferon-A))が挙げられるが、これらに限定されることはない。
例示的なポリクローナルまたはモノクローナル抗体としては、トラスツズマブ(ハーセプチン); オファツムマブ(ofatumumab) (アルゼラ(Arzerra)); ベバシズマブ(bevacizumab) (アバスチン(Avastin)); リツキシマブ(リツキサン); セツキシマブ(エルビタックス(Erbitux)); パニツムマブ(panitumumab) (ベクチビックス(Vectibix)); トシツモマブ(tositumomab)/ヨウ素131トシツモマブ(ベキサール(Bexxar)); アレムツズマブ(alemtuzumab) (カンパス(Campath)); イブリツモマブ(ibritumomab) (ゼバリン(Zevalin); In-111; Y-90ゼバリン); ゲムツズマブ(マイロターグ); エクリズマブ(eculizumab) (ソリリス(Soliris))オルデノスマブ(ordenosumab); ニボルマブ(オプジーボ); ペンブロリズマブ(キートルーダ(Keytruda)); イピリムマブ(ヤーボイ(Yervoy)); ピディリズマブ; アテゾリズマブが挙げられるが、これらに限定されることはない。
例示的なEGFR阻害剤としては、ゲフィチニブ(イレッサ); ラパチニブ(lapatinib) (チケルブ(Tykerb)); セツキシマブ(エルビタックス); エルロチニブ(erlotinib) (タルセバ(Tarceva)); パニツムマブ(ベクチビックス); PKI-166; カネルチニブ(canertinib) (CI-1033); マツズマブ(matuzumab) (Emd7200)またはEKB-569が挙げられるが、これらに限定されることはない。
例示的なHER2阻害剤としては、トラスツズマブ(ハーセプチン); ラパチニブ(チケルブ)またはAC-480が挙げられるが、これらに限定されることはない。
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤としては、ボリノスタット(vorinostat) (ゾリンザ(Zolinza))が挙げられるが、これに限定されることはない。
例示的なホルモンとしては、タモキシフェン(ソルタモックス(Soltamox); ノルバデックス); ラロキシフェン(エビスタ(Evista)); メゲストロール(メガセ(Megace)); ロイプロリド(ルプロン(Lupron); ルプロンデポー; エリガード(Eligard); ビアデュール(Viadur)); フルベストラント(fulvestrant) (ファスロデックス(Faslodex)); レトロゾール(フェマーラ); トリプトレリン(トレルスター(Trelstar) LA; トレルスターデポー); エキセメスタン(アロマシン); ゴセレリン(ゾラデックス); ビカルタミド(カソデックス); アナストロゾール(アリミデックス); フルオキシメステロン(アンドロキシ(Androxy); ハロテスチン(Halotestin)); メドロキシプロゲステロン(プロベラ(Provera); デポ-プロベラ); エストラムスチン(Emcyt); フルタミド(ユーレキシン(Eulexin)); トレミフェン(フェアストン); デガレリックス(degarelix) (フィルマゴン(Firmagon)); ニルタミド(ニランドロン(Nilandron)); アバレリックス(abarelix) (プレナキシス(Plenaxis)); またはテストラクトン(テスラク(Teslac))が挙げられるが、これらに限定されることはない。
例示的な有糸分裂阻害剤としては、パクリタキセル(タキソール; オンキソール(Onxol); アブラキサン(Abraxane)); ドセタキセル(タキソテール); ビンクリスチン(オンコビン; ビンカサル(Vincasar) PFS); ビンブラスチン(ベルバン(Velban)); エトポシド(トポサル(Toposar); エトポホス(Etopophos); ベプシド); テニポシド(ブモン(Vumon)); イキサベピロン(ixabepilone) (イキセムプラ(Ixempra)); ノコダゾール; エポチロン(epothilone); ビノレルビン(ナベルビン); カンプトテシン(CPT); イリノテカン(カンプトサール(Camptosar)); トポテカン(ハイカムチン); アムサクリンまたはラメラリンD (lamellarin D) (LAM-D)が挙げられるが、これらに限定されることはない。
例示的なMTOR阻害剤としては、エベロリムス(everolimus) (アフィニトール(Afinitor))もしくはテムシロリムス(temsirolimus) (トリセル(Torisel)); ラパミューン(rapamune)、リダホロリムス(ridaforolimus); またはAP23573が挙げられるが、これらに限定されることはない。
例示的な多種キナーゼ阻害剤としては、ソラフェニブ(sorafenib) (ネクサバール(Nexavar)); スニチニブ(sunitinib) (ステント(Sutent)); BIBW 2992; E7080; Zd6474; PKC-412; モテサニブ(motesanib); またはAP24534が挙げられるが、これらに限定されることはない。
例示的なセリン/スレオニンキナーゼ阻害剤としては、ルボキシスタウリン(ruboxistaurin); エリル/ファスジル塩酸塩(eril/easudil hydrochloride); フラボピリドール(flavopiridol); セリシクリブ(seliciclib) (CYC202; ロスコビトリン(Roscovitrine)); SNS-032 (BMS-387032); Pkc412; ブリオスタチン(bryostatin); KAI-9803; SF1126; VX-680; Azd1152; Arry-142886 (AZD-6244); SCIO-469; GW681323; CC-401; CEP-1347またはPD 332991が挙げられるが、これらに限定されることはない。
例示的なチロシンキナーゼ阻害剤としては、エルロチニブ(タルセバ); ゲフィチニブ(イレッサ); イマチニブ(グリベック); ソラフェニブ(ネキサバル); スニチニブ(ステント); トラスツズマブ(ハーセプチン); ベバシズマブ(アバスチン); リツキシマブ(リツキサン); ラパチニブ(チケルブ); セツキシマブ(エルビタックス); パニツムマブ(ベクチビックス); エベロリムス(アフィニトール); アレムツズマブ(カンパス); ゲムツズマブ(マイロターグ); テムシロリムス(トリセル); パゾパニブ(pazopanib) (ボトリエント(Votrient)); ダサチニブ(dasatinib) (スプリセル(Sprycel)); ニロチニブ(nilotinib) (タシグナ(Tasigna)); バタラニブ(vatalanib) (Ptk787; ZK222584); CEP-701; SU5614; MLN518; XL999; VX-322; Azd0530; BMS-354825; SKI-606 CP-690; AG-490; WHI-P154; WHI-P131; AC-220; またはAMG888が挙げられるが、これらに限定されることはない。
例示的なVEGF/VEGFR阻害剤としては、ベバシズマブ(アバスチン); ソラフェニブ(ネキサバル); スニチニブ(ステント); ラニビズマブ(ranibizumab); ペガプタニブ(pegaptanib); またはバンデチニブ(vandetinib)が挙げられるが、これらに限定されることはない。
例示的な微小管標的薬物としては、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロンおよびナベルビンが挙げられるが、これらに限定されることはない。
例示的なトポイソメラーゼ毒薬物としては、テニポシド、エトポシド、アドリアマイシン、カンプトテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、ミトキサントロン、アムサクリン、エピルビシンおよびイダルビシンが挙げられるが、これらに限定されることはない。
例示的なタキサンまたはタキサン誘導体としては、パクリタキセルおよびドセタキソール(docetaxol)が挙げられるが、これらに限定されることはない。
例示的な一般的な化学療法剤、抗新生物剤、抗増殖剤としては、アルトレタミン(ヘキサレン(Hexalen)); イソトレチノイン(アクタン(Accutane); アムネステーム(Amnesteem); クララビス(Claravis); ソトレット(Sotret)); トレチノイン(ベサノイド); アザシチジン(ビダザ(Vidaza)); ボルテゾミブ(bortezomib) (ベルケイド(Velcade))アスパラギナーゼ(エルスパー(Elspar)); レバミゾール(エルガミソル(Ergamisol)); ミトーテン(リソドレン(Lysodren)); プロカルバジン(マチュレーン(Matulane)); ペグアスパラガーゼ(pegaspargase) (オンキャスパー(Oncaspar)); デニロイキンディフティトックス(denileukin diftitox) (オンタク(Ontak)); ポルフィマー(フォトフリン); アルデスロイキン(aldesleukin) (プロロイキン(Proleukin)); レナリドミド(lenalidomide) (レブリミド(Revlimid)); ベキサロテン(bexarotene) (タルグレチン(Targretin)); サリドマイド(サロミド(Thalomid)); テムシロリムス(トリセル); 三酸化ヒ素(トリセノックス); ベルテポルフィン(verteporfin) (ビスジン(Visudyne)); ミモシン(mimosine) (ロイセノール(Leucenol)); (1 Mテガフール - 0.4 M 5-クロロ-2,4-ジヒドロキシピリミジン - 1 Mオキソン酸カリウム(potassium oxonate))またはロバスタチンが挙げられるが、これらに限定されることはない。
別の局面において、さらなる化学療法剤は、G-CSF (顆粒球コロニー刺激因子)のようなサイトカインでありうる。別の局面において、本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、類似体もしくは誘導体は、放射線治療と組み合わせて投与されうる。放射線治療はまた、多剤療法の一部として、本発明の化合物および本明細書において記述される別の化学療法剤と組み合わせて投与することができる。なお別の局面において、本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、類似体もしくは誘導体は、限定されるものではないが、CMF (シクロホスファミド、メトトレキセートおよび5-フルオロウラシル)、CAF (シクロホスファミド、アドリアマイシンおよび5-フルオロウラシル)、AC (アドリアマイシンおよびシクロホスファミド)、FEC (5-フルオロウラシル、エピルビシン、およびシクロホスファミド)、ACTもしくはATC (アドリアマイシン、シクロホスファミド、およびパクリタキセル)、リツキシマブ、ゼローダ(カペシタビン)、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、TS-1 (モル比1:0.4:1のテガフール、ギメスタット(gimestat)およびオタスタットカリウム(otastat potassium))、カンプトテシン-11 (CPT-11、イリノテカンもしくはカンプトサール(商標))またはCMFP (シクロホスファミド、メトトレキセート、5-フルオロウラシルおよびプレドニゾン)のような標準的な化学療法の組み合わせと組み合わせて投与されうる。
好ましい態様において、本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物は、受容体キナーゼまたは非受容体キナーゼのような、酵素の阻害剤とともに投与されうる。本発明の受容体キナーゼおよび非受容体キナーゼは、例えば、チロシンキナーゼまたはセリン/スレオニンキナーゼである。本発明のキナーゼ阻害剤は、低分子、ポリ核酸、ポリペプチド、または抗体である。
例示的なキナーゼ阻害剤としては、BIBW 2992 (EGFRおよびErb2を標的化する)、セツキシマブ(Cetuximab)/エルビタックス(Erb1を標的化する)、イマチニブ/グリベック(Gleevic) (Bcr-Ablを標的化する)、トラスツズマブ(Erb2を標的化する)、ゲフィチニブ/イレッサ(EGFRを標的化する)、ラニビズマブ(VEGFを標的化する)、ペガプタニブ(VEGFを標的化する)、エルロチニブ/タルセバ(Erb1を標的化する)、ニロチニブ(Bcr-Ablを標的化する)、ラパチニブ(Erb1およびErb2/Her2を標的化する)、GW-572016/ラパチニブジトシレート(HER2/Erb2を標的化する)、パニツムマブ/ベクチビックス(EGFRを標的化する)、バンデチニブ(RET/VEGFRを標的化する)、E7080 (RETおよびVEGFRを含む複数の標的)、ハーセプチン(HER2/Erb2を標的化する)、PKI-166 (EGFRを標的化する)、カネルチニブ/CI-1033 (EGFRを標的化する)、スニチニブ/SU-11464/ステント(EGFRおよびFLT3を標的化する)、マツズマブ/Emd7200 (EGFRを標的化する)、EKB-569 (EGFRを標的化する)、Zd6474 (EGFRおよびVEGFRを標的化する)、PKC-412 (VEGRおよびFLT3を標的化する)、バタラニブ/Ptk787/ZK222584 (VEGRを標的化する)、CEP-701 (FLT3を標的化する)、SU5614 (FLT3を標的化する)、MLN518 (FLT3を標的化する)、XL999 (FLT3を標的化する)、VX-322 (FLT3を標的化する)、Azd0530 (SRCを標的化する)、BMS-354825 (SRCを標的化する)、SKI-606 (SRCを標的化する)、CP-690 (JAKを標的化する)、AG-490 (JAKを標的化する)、WHI-P154 (JAKを標的化する)、WHI-P131 (JAKを標的化する)、ソラフェニブ/ネキサバル(RAFキナーゼ、VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3、PDGFR-β、KIT、FLT-3、およびRETを標的化する)、ダサチニブ/スプリセル(BCR/ABLおよびSrc)、AC-220 (Flt3を標的化する)、AC-480 (全てのHERタンパク質、「panHER」を標的化する)、モテサニブジホスフェート(VEGF1〜3、PDGFRおよびc-kitを標的化する)、デノスマブ(Denosumab) (RANKLを標的化し、SRCを阻害する)、AMG888 (HER3を標的化する)、ならびにAP24534 (Flt3を含む複数の標的)が挙げられるが、これらに限定されることはない。
例示的なセリン/スレオニンキナーゼ阻害剤としては、ラパミューン(mTOR/FRAP1を標的化する)、デフォロリムス(Deforolimus) (mTORを標的化する)、セルチカン(Certican)/エベロリムス(mTOR/FRAP1を標的化する)、AP23573 (mTOR/FRAP1を標的化する)、エリル/ファスジル塩酸塩(RHOを標的化する)、フラボピリドール(CDKを標的化する)、セリシクリブ/CYC202/ロスコビトリン(CDKを標的化する)、SNS-032/BMS-387032 (CDKを標的化する)、ルボキシスタウリン(PKCを標的化する)、Pkc412 (PKCを標的化する)、ブリオスタチン(PKCを標的化する)、KAI-9803 (PKCを標的化する)、SF1126 (PI3Kを標的化する)、VX-680 (オーロラキナーゼを標的化する)、Azd1152 (オーロラキナーゼを標的化する)、Arry-142886/AZD-6244 (MAP/MEKを標的化する)、SCIO-469 (MAP/MEKを標的化する)、GW681323 (MAP/MEKを標的化する)、CC-401 (JNKを標的化する)、CEP-1347 (JNKを標的化する)、およびPD 332991 (CDKを標的化する)が挙げられるが、これらに限定されることはない。
特定の態様において、本発明の化合物(化合物1、2もしくは3、または薬学的に許容されるそれらの塩、溶媒和物、水和物もしくはプロドラッグ)は、細胞増殖性障害の処置においてFGFRまたはFGFR2阻害剤と組み合わせることができる。いくつかの態様において、FGFRまたはFGFR2阻害剤は、化合物4、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物もしくはプロドラッグである。いくつかの態様において、化合物1もしくは3、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物もしくはプロドラッグは、化合物4、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物もしくはプロドラッグと組み合わせることができる。いくつかの態様において、化合物1、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物もしくはプロドラッグは、化合物4、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物もしくはプロドラッグと組み合わせることができる。いくつかの態様において、化合物3、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物もしくはプロドラッグは、化合物4、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物もしくはプロドラッグと組み合わせることができる。いくつかの態様において、化合物2、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物もしくはプロドラッグは、化合物4、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物もしくはプロドラッグと組み合わせることができる。
FGFR2は、アミノ酸配列がメンバー間でかつ進化を通じて高度に保存されている線維芽細胞成長因子受容体ファミリーのメンバーである。FGFRファミリーメンバーは、それらのリガンド親和性および組織分布が互いに異なる。完全長の代表的なタンパク質は、3つの免疫グロブリン様ドメイン、単一の疎水性膜貫通セグメントおよび細胞質チロシンキナーゼドメインから構成される細胞外領域からなる。タンパク質の細胞外部分は線維芽細胞成長因子と相互作用し、下流シグナルを設定し、最終的に有糸分裂誘発および分化に影響を及ぼす。
FGFR2遺伝子の活性(発現)の変化は、ある種のがんと関連している。変化した遺伝子発現は、細胞増殖、細胞運動、および成長している腫瘍に栄養を与える新しい血管の発生のような、いくつかのがん関連事象を増強しうる。FGFR2遺伝子は、ある種のタイプの胃がんにおいて異常に活性であり(過剰発現され)、この増幅は、標準的な臨床方法に対する応答および予後の不良と関連している。前立腺がんを有する患者においてもFGFR2の異常発現が見られる。米国で乳がんを有する女性の60%超が、同様にこの遺伝子に少なくとも1つの変異を保有している。
2. 本発明の化合物
本発明は、化合物1、化合物2および化合物3、これらの化合物を作出するための合成方法、これらの化合物の少なくとも1つを含有する薬学的組成物、ならびにこれらの化合物のさまざまな用途を提供する。
化合物1
(3-(3-(4-(1-アミノシクロブチル)フェニル)-5-フェニル-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-イル)ピリジン-2-アミン)、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物もしくはプロドラッグ。
化合物2
3-(3-(4-(1-アミノシクロブチル)フェニル)-5-(3-モルホリノフェニル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-イル)ピリジン-2-アミン、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物もしくはプロドラッグ。
化合物3
N-(1-(3-(3-(4-(1-アミノシクロブチル)フェニル)-2-(2-アミノピリジン-3-イル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-イル)フェニル)ピペリジン-4-イル)-N-メチルアセトアミド、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物もしくはプロドラッグ。
本発明はまた、化合物4、この化合物を作出するための合成方法、この化合物を含有する薬学的組成物、およびこの化合物のさまざまな用途を提供する。
化合物4
((R)-6-(2-フルオロフェニル)-N-(3-(2-((2-メトキシエチル)アミノ)エチル)フェニル)-5,6-ジヒドロベンゾ[h]キナゾリン-2-アミン)、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物もしくはプロドラッグ。
3. 定義
本明細書において用いられる場合、「アルキル」、「C1、C2、C3、C4、C5もしくはC6アルキル」または「C1〜C6アルキル」は、C1、C2、C3、C4、C5またはC6の、直鎖(線状)飽和脂肪族炭化水素基、およびC3、C4、C5またはC6の、分枝鎖飽和脂肪族炭化水素基を含むよう意図される。例えば、C1〜C6アルキルは、C1、C2、C3、C4、C5およびC6アルキル基を含むよう意図される。アルキルの例としては、限定されるものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、s-ペンチルまたはn-ヘキシルのような、1個〜6個の炭素原子を有する部分が挙げられる。
ある種の態様において、直鎖または分枝鎖アルキルは、6個またはそれ以下の炭素原子(例えば、直鎖の場合C1〜C6、分枝鎖の場合C3〜C6)を有し、別の態様において、直鎖または分枝鎖アルキルは、4個またはそれ以下の炭素原子を有する。
「ヘテロアルキル」基とは、1個またはそれ以上の炭化水素主鎖炭素原子を置き換えている酸素原子、窒素原子、硫黄原子またはリン原子を有する、上記定義のアルキル基である。
本明細書において用いられる場合、「シクロアルキル」、「C3、C4、C5、C6、C7もしくはC8シクロアルキル」または「C3〜C8シクロアルキル」という用語は、3個〜8個の炭素原子をその環構造中に有する炭化水素環を含むよう意図される。1つの態様において、シクロアルキル基は、環構造中に5個または6個の炭素を有する。
「置換(された)アルキル」という用語は、炭化水素主鎖の1個またはそれ以上の炭素上の1個またはそれ以上の水素原子を置き換えている置換基を有する、アルキル部分をいう。このような置換基は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分を含むことができる。シクロアルキルは、例えば上記の置換基で、さらに置換することができる。「アルキルアリール」部分または「アラルキル」部分は、アリールで置換されたアルキル(例えば、フェニルメチル(ベンジル))である。
炭素の数が他に特定されない限り、「低級アルキル」はその主鎖構造中に、1個〜6個、または別の態様においては1個〜4個の炭素原子を有する、上記定義のアルキル基を含む。「低級アルケニル」および「低級アルキニル」は、例えば、2個〜6個または2個〜4個の炭素原子の鎖長を有する。
本明細書において用いられる場合、「アルキルリンカー」は、C1、C2、C3、C4、C5またはC6直鎖(線状)飽和脂肪族炭化水素基、およびC3、C4、C5またはC6分枝鎖飽和脂肪族炭化水素基を含むよう意図される。例えば、C1〜C6アルキルリンカーは、C1、C2、C3、C4、C5およびC6アルキルリンカー基を含むよう意図される。アルキルリンカーの例としては、限定されるものではないが、メチル(-CH2-)、エチル(-CH2CH2-)、n-プロピル(-CH2CH2CH2-)、i-プロピル(-CHCH3CH2-)、n-ブチル(-CH2CH2CH2CH2-)、s-ブチル(-CHCH3CH2CH2-)、i-ブチル(-C(CH3)2CH2-)、n-ペンチル(-CH2CH2CH2CH2CH2-)、s-ペンチル(-CHCH3CH2CH2CH2-)またはn-ヘキシル(-CH2CH2CH2CH2CH2CH2-)のような、1個〜6個の炭素原子を有する部分が挙げられる。
「アルケニル」は、長さおよび可能な置換が上記アルキルと類似であるが、少なくとも1つの二重結合を含む、不飽和脂肪族基を含む。例えば、「アルケニル」という用語は、直鎖アルケニル基(例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル)、分枝鎖アルケニル基、シクロアルケニル(例えば、脂環式)基(例えば、シクロプロペニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル)、アルキルまたはアルケニルで置換されたシクロアルケニル基、およびシクロアルキルまたはシクロアルケニルで置換されたアルケニル基を含む。ある種の態様において、直鎖または分枝鎖アルケニル基は、その主鎖中に6個またはそれ以下の炭素原子(例えば、直鎖の場合C2〜C6、分枝鎖の場合C3〜C6)を有する。同様に、シクロアルケニル基は、その環構造中に5個〜8個の炭素原子を有することができ、1つの態様において、シクロアルケニル基は、環構造中に5個または6個の炭素を有する。「C2〜C6」という用語は、2個〜6個の炭素原子を含むアルケニル基を含む。「C3〜C6」という用語は、3個〜6個の炭素原子を含むアルケニル基を含む。
「ヘテロアルケニル」は、1個またはそれ以上の炭化水素主鎖炭素を置き換えている酸素原子、窒素原子、硫黄原子またはリン原子を有する、本明細書において定義の、アルケニル基を含む。
「置換(された)アルケニル」という用語は、1個またはそれ以上の炭化水素主鎖炭素原子上の1個またはそれ以上の水素原子を置き換えている置換基を有する、アルケニル部分をいう。このような置換基は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分を含むことができる。
「アルキニル」は、長さおよび可能な置換が上記アルキルと類似であるが、少なくとも1個の三重結合を含む、不飽和脂肪族基を含む。例えば、「アルキニル」は、直鎖アルキニル基(例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル)、分枝鎖アルキニル基、およびシクロアルキルまたはシクロアルケニルで置換されたアルキニル基を含む。ある種の態様において、直鎖または分枝鎖アルキニル基は、その主鎖中に6個またはそれ以下の炭素原子(例えば、直鎖の場合C2〜C6、分枝鎖の場合C3〜C6)を有する。「C2〜C6」という用語は、2個〜6個の炭素原子を含むアルキニル基を含む。「C3〜C6」という用語は、3個〜6個の炭素原子を含むアルキニル基を含む。
「ヘテロアルキニル」は、1個またはそれ以上の炭化水素主鎖炭素を置き換えている酸素原子、窒素原子、硫黄原子またはリン原子を有する、本明細書において定義の、アルキニル基を含む。
「置換(された)アルキニル」という用語は、1個またはそれ以上の炭化水素主鎖炭素原子上の1個またはそれ以上の水素原子を置き換えている置換基を有する、アルキニル部分をいう。このような置換基は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分を含むことができる。
「アリール」は、少なくとも1個の芳香族環を有する「共役」系または多環式系を含めて、芳香族性を有する基を含む。例としては、フェニル、ベンジルなどが挙げられる。
「ヘテロアリール」基は、環構造中に1個〜4個のヘテロ原子を有する、上記定義の、アリール基であり、「アリール複素環」または「ヘテロ芳香族」ともいわれうる。本明細書において用いられる場合、「ヘテロアリール」という用語は、炭素原子、ならびに窒素、酸素および硫黄からなる群より独立して選択される1個またはそれ以上のヘテロ原子、例えば、1個または1個〜2個または1個〜3個または1個〜4個または1個〜5個または1個〜6個のヘテロ原子からなる安定な5員、6員もしくは7員単環式、または7員、8員、9員、10員、11員もしくは12員二環式芳香族複素環式環を含むよう意図される。この窒素原子は、置換されても置換されなくてもよい(すなわち、NまたはNRであり、ここでRは、Hまたは定義されるような他の置換基である)。窒素ヘテロ原子および硫黄ヘテロ原子は、任意で酸化されてもよい(すなわち、N→OおよびS(O)p、ここでp = 1または2)。芳香族複素環中のS原子およびO原子の総数は、1以下であることに留意されるべきである。
ヘテロアリール基の例としては、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジンなどが挙げられる。
さらに、「アリール」および「ヘテロアリール」という用語は、多環式アリール基およびヘテロアリール基、例えば、三環式、二環式、例えば、ナフタレン、ベンゾオキサゾール、ベンゾジオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、メチレンジオキシフェニル、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、インドール、ベンゾフラン、プリン、ベンゾフラン、デアザプリン、インドリジンを含む。
多環式芳香族環の場合、環の全てが芳香族であってもよい(例えば、キノリン)が、環のうちの1つだけでも芳香族である必要がある(例えば、2,3-ジヒドロインドール)。第二の環はまた、縮合されても架橋されてもよい。
アリール芳香族環またはヘテロアリール芳香族環は、1つまたはそれ以上の環位置において、上記のような置換基、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル(akynyl)、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アラルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分で置換することができる。アリール基はまた、多環式系(例えば、テトラリン、メチレンジオキシフェニル)を形成するように芳香族ではない脂環式環または複素環式環と縮合または架橋することもできる。
本明細書において用いられる場合、「炭素環」または「炭素環式環」は、いずれかのものが飽和、不飽和、または芳香族でありうる特定の数の炭素を有する任意の安定な単環式、二環式または三環式の環を含むよう意図される。例えば、C3〜C14炭素環は、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個または14個の炭素原子を有する、単環式、二環式または三環式の環を含むよう意図される。炭素環の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロブテニル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘプテニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、アダマンチル、シクロオクチル、シクロオクテニル、シクロオクタジエニル、フルオレニル、フェニル、ナフチル、インダニル、アダマンチルおよびテトラヒドロナフチルが挙げられるが、これらに限定されることはない。例えば、[3.3.0]ビシクロオクタン、[4.3.0]ビシクロノナン、[4.4.0]ビシクロデカンおよび[2.2.2]ビシクロオクタンを含めて、架橋環も炭素環の定義に含まれる。架橋環は、1個またはそれ以上の炭素原子が2個の非隣接炭素原子をつなぐ場合に、生じる。1つの態様において、架橋環は、1個または2個の炭素原子である。架橋は常に、単環式環を三環式環に転換させることに留意されたい。環が架橋される場合、その環について記載される置換基は架橋上に存在することもある。縮合(例えば、ナフチル、テトラヒドロナフチル)環およびスピロ環も含まれる。
本明細書において用いられる場合、「複素環」は、少なくとも1個の環ヘテロ原子(例えば、N、OまたはS)を含む、任意の環構造(飽和または部分不飽和)を含む。複素環の例としては、モルホリン、ピロリジン、テトラヒドロチオフェン、ピペリジン、ピペラジンおよびテトラヒドロフランが挙げられるが、これらに限定されることはない。
複素環式基の例としては、アクリジニル、アゾシニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサゾリニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾテトラゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイミダゾリニル、カルバゾリル、4H-カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3-b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H-インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H-インドリル、イサチノイル(isatinoyl)、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾール5(4H)-オン、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキシインドリル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4-ピペリドニル、ピペロニル(piperonyl)、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H-ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H-キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、6H-1,2,5-チアジアジニル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル、トリアジニル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,2,5-トリアゾリル、1,3,4-トリアゾリルおよびキサンテニルが挙げられるが、これらに限定されることはない。
「置換(された)」という用語は、本明細書において用いられる場合、指定された原子上のいずれか1個またはそれ以上の水素原子が、指定された原子の通常の原子価を超えず、置換によって安定な化合物が得られるならば、示された基から選択されたもので置き換えられることを意味する。置換基がケト(すなわち、=O)である場合、原子上の2個の水素原子が置き換えられる。ケト置換基は、芳香族部分には存在しない。環二重結合は、本明細書において用いられる場合、2個の隣接環原子の間に形成される二重結合(例えば、C=C、C=NまたはN=N)である。「安定な化合物」および「安定な構造」とは、反応混合物からの有用な純度への単離、および有効な治療剤への処方を切り抜けるのに十分に頑強な化合物を示すよう意図される。
置換基への結合が環中の2個の原子を結ぶ結合を横切ることが示されている場合、そのような置換基は環中の任意の原子に結合していてもよい。置換基が所定の式の化合物の残部に結合するのに介する原子を示さずに、そのような置換基が列挙される場合、そのような置換基は、そのような式中の任意の原子を介して結合されうる。置換基および/または変数の組み合わせが許容されるが、そのような組み合わせが安定な化合物をもたらす場合にのみ許容される。
任意の変数(例えば、R1)が化合物のいずれかの構成要素または式において2回以上現れる場合、各出現時のその定義は、他のすべての出現時のその定義とは無関係である。したがって、例えば、ある基が0〜2個のR1部分で置換されていることが示されている場合、その基は2個までのR1部分で置換されていてもよく、各出現時のR1はR1の定義とは無関係に選択される。同様に、置換基および/または変数の組み合わせが許容されるが、そのような組み合わせが安定な化合物をもたらす場合にのみ許容される。
「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」という用語は、-OHまたは-O-を有する基を含む。
本明細書において用いられる場合、「ハロ」または「ハロゲン」とは、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードをいう。「過ハロゲン化」という用語は一般に、全ての水素原子がハロゲン原子によって置き換えられている部分をいう。
「カルボニル」または「カルボキシ」という用語は、二重結合で酸素原子に結合されている炭素を含む、化合物および部分を含む。カルボニルを含む部分の例としては、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、アミド、エステル、無水物などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
「アシル」は、アシル基(-C(O)-)またはカルボニル基を含んだ部分を含む。「置換(された)アシル」は、水素原子のうちの1個またはそれ以上が、例えば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分により置き換えられている、アシル基を含む。
「アロイル」は、カルボニル基に結合したアリール部分またはヘテロ芳香族部分を有する部分を含む。アロイル基の例としては、フェニルカルボキシ、ナフチルカルボキシなどが挙げられる。
「アルコキシアルキル」、「アルキルアミノアルキル」および「チオアルコキシアルキル」は、酸素原子、窒素原子または硫黄原子が、1個またはそれ以上の炭化水素主鎖炭素原子を置き換えている、上記の、アルキル基を含む。
「アルコキシ」または「アルコキシル」という用語は、酸素原子に共有結合している、置換および非置換アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基を含む。アルコキシ基またはアルコキシル基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基およびペントキシ基が挙げられるが、これらに限定されることはない。置換されたアルコキシ基の例としては、ハロゲン化アルコキシ基が挙げられる。アルコキシ基は、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリールのような基、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分で置換することができる。ハロゲンで置換されたアルコキシ基の例としては、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロメトキシ、ジクロロメトキシおよびトリクロロメトキシが挙げられるが、これらに限定されることはない。
「エーテル」または「アルコキシ」という用語は、2個の炭素原子またはヘテロ原子に結合した酸素を含んだ、化合物または部分を含む。例えば、この用語は「アルコキシアルキル」を含み、これは、アルキル基に共有結合した酸素原子に共有結合している、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基をいう。
「エステル」という用語は、カルボニル基の炭素に結合している酸素原子に結合した炭素またはヘテロ原子を含んだ、化合物または部分を含む。「エステル」という用語は、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニルなどのような、アルコキシカルボキシ基を含む。
「チオアルキル」という用語は、硫黄原子と結合したアルキル基を含んだ、化合物または部分を含む。チオアルキル基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、カルボキシ酸(carboxyacid)、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリールのような基、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分で置換することができる。
「チオカルボニル」または「チオカルボキシ」という用語は、二重結合で硫黄原子に結合した炭素を含んだ、化合物および部分を含む。
「チオエーテル」という用語は、2個の炭素原子またはヘテロ原子に結合した硫黄原子を含んだ部分を含む。チオエーテルの例としては、アルクチオアルキル(alkthioalkyl)、アルクチオアルケニル(alkthioalkenyl)およびアルクチオアルキニル(alkthioalkynyl)が挙げられるが、これらに限定されることはない。「アルクチオアルキル」という用語は、アルキル基に結合した硫黄原子に結合した、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を有する部分を含む。同様に、用語「アルクチオアルケニル」とは、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基が、アルケニル基に共有結合した硫黄原子に結合している部分をいい、「アルクチオアルキニル」とは、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基が、アルキニル基に共有結合した硫黄原子に結合している部分をいう。
本明細書において用いられる場合、「アミン」または「アミノ」は、窒素原子が少なくとも1個の炭素またはヘテロ原子に共有結合している、部分を含む。「アルキルアミノ」は、窒素が少なくとも1個のアルキル基に結合している化合物の群を含む。アルキルアミノ基の例としては、ベンジルアミノ、メチルアミノ、エチルアミノ、フェネチルアミノなどが挙げられる。「ジアルキルアミノ」は、窒素原子が少なくとも2個のさらなるアルキル基に結合している基を含む。ジアルキルアミノ基の例としては、ジメチルアミノおよびジエチルアミノが挙げられるが、これらに限定されることはない。「アリールアミノ」および「ジアリールアミノ」は、窒素がそれぞれ、少なくとも1個または2個のアリール基に結合している基を含む。「アルキルアリールアミノ」、「アルキルアミノアリール」または「アリールアミノアルキル」とは、少なくとも1個のアルキル基および少なくとも1個のアリール基に結合しているアミノ基をいう。「アルクアミノアルキル(Alkaminoalkyl)」とは、同様にアルキル基に結合している窒素原子に結合した、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基をいう。「アシルアミノ」は、窒素がアシル基に結合している基を含む。アシルアミノの例としては、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルバモイル基およびウレイド基が挙げられるが、これらに限定されることはない。
「アミド」または「アミノカルボキシ」という用語は、カルボニル基またはチオカルボニル基の炭素に結合している窒素原子を含んだ、化合物または部分を含む。この用語は「アルクアミノカルボキシ(alkaminocarboxy)」基を含み、これは、カルボニル基またはチオカルボニル基の炭素に結合しているアミノ基に結合した、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を含む。これはまた、「アリールアミノカルボキシ」基を含み、これは、カルボニル基またはチオカルボニル基の炭素に結合しているアミノ基に結合した、アリール部分またはヘテロアリール部分を含む。「アルキルアミノカルボキシ」、「アルケニルアミノカルボキシ」、「アルキニルアミノカルボキシ」および「アリールアミノカルボキシ」という用語は、アルキル部分、アルケニル部分、アルキニル部分およびアリール部分が、それぞれ、窒素原子に結合しており、この窒素原子が順に、カルボニル基の炭素に結合している、部分を含む。アミドは、直鎖アルキル、分枝鎖アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたは複素環のような置換基で置換することができる。アミド基上の置換基がさらに置換されてもよい。
窒素を含む本発明の化合物は、酸化剤(例えば、3-クロロペルオキシ安息香酸(m-CPBA)および/または過酸化水素)で処理して、本発明の他の化合物を得ることによりN-オキシドに転換することができる。したがって、示され、主張される全ての窒素含有化合物は、原子価および構造によって許容される場合、示される通りの化合物と、そのN-オキシド誘導体(これはN→OまたはN+-O-と表すことができる)との両方を含むものとみなされる。さらに、他の例において、本発明の化合物中の窒素は、N-ヒドロキシ化合物またはN-アルコキシ化合物に転換することができる。例えば、N-ヒドロキシ化合物は、m-CPBAのような酸化剤による親アミドの酸化によって調製することができる。示され、主張される全ての窒素含有化合物はまた、原子価および構造によって許容される場合、示される通りの化合物と、そのN-ヒドロキシ誘導体(すなわち、N-OH)およびN-アルコキシ誘導体(すなわち、N-OR、式中でRは置換または非置換C1〜C6アルキル、C1〜C6アルケニル、C1〜C6アルキニル、3員〜14員炭素環または3員〜14員複素環)との両方を網羅するものとみなされる。
本明細書において、化合物の構造式は、いくつかの場合において便宜上、ある種の異性体を表すが、本発明は、幾何異性体、キラル炭素に基づく光学異性体、立体異性体、互変異性体などのような、全ての異性体を含む。さらに、結晶多型が、式により表される化合物に存在してもよい。任意の結晶形態、結晶形態混合物、またはその無水物もしくは水和物も本発明の範囲に含まれることに留意されたい。さらに、本発明の化合物のインビボでの分解により生成される、いわゆる代謝産物が、本発明の範囲に含まれる。
「異性」とは、同一の分子式を有するが、しかしその原子の結合の順序が異なり、または空間内でのその原子の配置が異なる、化合物を意味する。空間内でのその原子の配置が異なる異性体は、「立体異性体」と称される。互いに鏡像ではない立体異性体は「ジアステレオ異性体」と称され、互いに重ね合わせることができない鏡像である立体異性体は「鏡像異性体」または時に光学異性体と称される。逆対掌性の個々の鏡像異性形態の等量を含んだ混合物は、「ラセミ混合物」と称される。
4つの同一でない置換基に結合した炭素原子は、「キラル中心」と称される。
「キラル異性体」とは、少なくとも1個のキラル中心を有する化合物を意味する。2個以上のキラル中心を有する化合物は、個々のジアステレオマーとして、または「ジアステレオマー混合物」と称されるジアステレオマーの混合物として存在しうる。1個のキラル中心が存在する場合、立体異性体は、そのキラル中心の絶対配置(RまたはS)により特徴付けられうる。絶対配置とは、キラル中心に結合した置換基の空間における配置をいう。対象としているキラル中心に結合した置換基は、Cahn、IngoldおよびPrelogの順序付け規則(Cahn et al., Angew. Chem. Inter. Edit. 1966, 5, 385; errata 511; Cahn et al., Angew. Chem. 1966, 78, 413; Cahn and Ingold, J. Chem. Soc. 1951 (London), 612; Cahn et al., Experientia 1956, 12, 81; Cahn, J. Chem. Educ. 1964, 41, 116)にしたがって順位付けされる。
「幾何異性体」とは、その存在が二重結合周囲での回転の妨害に起因するジアステレオマーを意味する。これらの立体配置は、Cahn-Ingold-Prelog則にしたがって、その基が分子内の二重結合の同じ側または反対側にあることを示す接頭語シスおよびトランス、またはZおよびEによりその名称が区別される。
さらに、本発明において論じられる構造および他の化合物は、その全てのアトロプ異性体を含む。「アトロプ異性体」とは、2つの異性体の原子が空間中で異なる配置にある、立体異性体の一種である。アトロプ異性体は、中心結合周囲での大きな基の回転の妨害によって引き起こされる、回転の制限の存在に起因する。そのようなアトロプ異性体は典型的には、混合物として存在するが、クロマトグラフィー技術の近年の進歩の結果として、選択の場合には、2つのアトロプ異性体の混合物を分離することが可能になっている。
「互変異性体」は、平衡状態で存在する2個またはそれ以上の構造異性体のうちの1つであり、1つの異性形態から別の異性形態へ容易に転換される。この転換は、隣接する共役二重結合の切り替えを伴う水素原子の形式的な移動をもたらす。互変異性体は、溶液中で互変異性セットの混合物として存在する。固体形態では、通常、一方の互変異性体が優勢である。互変異性が可能である溶液中では、互変異性体の化学平衡に達する。互変異性体の正確な比率は、温度、溶媒およびpHを含む、いくつかの要因に依存する。互変異性化によって相互転換可能な互変異性体の概念は、互変異性と呼ばれる。
可能なさまざまなタイプの互変異性のうち、2つが一般的に観察される。ケト-エノール互変異性では、電子と水素原子の同時シフトが起こる。環と鎖との互変異性は、糖鎖分子中のアルデヒド基(-CHO)が同じ分子中のヒドロキシ基(-OH)のうちの1つと反応して、グルコースにより示されるような環状(環形状)の形を与える結果として、生じる。
一般的な互変異性の対は、ケトン-エノール、アミド-ニトリル、ラクタム-ラクチム、複素環式環におけるアミド-イミド酸互変異性(例えば、グアニン、チミンおよびシトシンのような核酸塩基における)、アミン-エナミンならびにエナミン-エナミンである。
本発明の化合物は、異なる互変異性体として描かれうることが理解されるべきである。また、化合物が互変異性形態を有する場合、全ての互変異性形態が本発明の範囲に含まれることが意図され、化合物の命名はいかなる互変異性体の形態も排除しないことも理解されるべきである。
「結晶多型」、「多型」または「結晶形態」という用語は、化合物(またはその塩もしくは溶媒和物)が異なる結晶充填配置で結晶化でき、これらの全てが同じ元素組成を有する、結晶構造を意味する。異なる結晶形態は通常、異なるX線回折パターン、赤外線スペクトル、融点、密度硬度、結晶の形状、光学的および電気的特性、安定性ならびに溶解性を有する。再結晶化溶媒、結晶化の速度、保存温度および他の要因が、1つの結晶形態を優勢にしうる。化合物の結晶多型は、異なる条件下での結晶化により調製することができる。
さらに、本出願の化合物、例えば、これらの化合物の塩は、水和もしくは非水和(無水)形態で、または他の溶媒分子を有する溶媒和物として存在することができる。水和物の非限定的な例としては、一水和物、二水和物などが挙げられる。溶媒和物の非限定的な例としては、エタノール溶媒和物、アセトン溶媒和物などが挙げられる。
「溶媒和物」とは、化学量論量または非化学量論量のいずれかの溶媒を含む、溶媒付加形態を意味する。いくつかの化合物は、一定モル比の溶媒分子を結晶性固相に捕捉し、これによって溶媒和物を形成する傾向を有する。溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は水和物であり; 溶媒がアルコールである場合、形成される溶媒和物はアルコール和物である。水和物は1分子またはそれ以上の分子の水と、1分子の物質との組み合わせにより形成され、ここでこの水はそのH2Oとしての分子状態を保持する。
本明細書において用いられる場合、「類似体」という用語は、別のものと構造的に類似しているが、しかし組成が(1つの原子の異なる元素の原子による置き換えでもしくは特定の官能基の存在で、または1つの官能基の別の官能基による置き換えなどで)わずかに異なる化合物をいう。したがって、類似体は、参照化合物と、機能および外観が類似または同等であるが、しかし構造または起源が類似または同等でない、化合物である。
本明細書において定義される場合、「誘導体」という用語は、共通のコア構造を有し、本明細書において記述のさまざまな基で置換されている、化合物をいう。
「生物学的等価体(bioisostere)」という用語は、原子または原子団の、別の、広範には類似の、原子または原子団での交換から生じる化合物をいう。生物学的等価体交換の目的は、親化合物と類似の生物学的特性を有する新たな化合物を作出することである。生物学的等価体交換は、物理化学的または位相的に基づくものであってもよい。カルボン酸の生物学的等価体の例としては、アシルスルホンイミド、テトラゾール、スルホネートおよびホスホネートが挙げられるが、これらに限定されることはない。例えば、Patani and LaVoie, Chem. Rev. 96, 3147-3176, 1996を参照されたい。
本発明は、本発明の化合物中に存在する原子の全ての同位体を含むよう意図される。同位体は、同じ原子番号を有するが異なる質量数を有する原子を含む。一般例としてかつ非限定的に、水素の同位体は三重水素および重水素を含み、炭素の同位体はC-13およびC-14を含む。
4. 本発明の化合物の合成
本発明の化合物は種々の方法で、市販の出発材料、文献において公知の化合物を用いて、または容易に調製された中間体から、当業者に公知であるか、本明細書の教示に照らして当業者には明らかであると考えられるかのいずれかの、標準的な合成の方法および手順を利用することによって、調製することができる。有機分子の調製ならびに官能基の変換および操作のための標準的な合成の方法および手順は、関連する科学文献から、または当技術分野における標準的な教科書から得ることができる。いずれか1つのまたはいくつかの情報源に限定されないが、参照により本明細書に組み入れられる、Smith, M. B., March, J., March’s Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure, 5th edition, John Wiley & Sons: New York, 2001; およびGreene, T.W., Wuts, P.G. M., Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd edition, John Wiley & Sons: New York, 1999のような古典的なテキストが、当業者に公知である有機合成の有用なかつ広く認められた参考書である。以下の合成方法の記述は、本発明の化合物の調製のための一般的な手順を例示するためにデザインされているが、これに限定されるものではない。
記述の全体を通して、組成物が特定の成分を有する、含む(including)、または含む(comprising)ように記述される場合、これらの組成物はまた、列挙される成分から本質的になるか、または列挙される成分からなることが企図される。同様に、方法またはプロセスが特定のプロセス段階を有する、含む(including)、または含む(comprising)ように記述される場合、プロセスはまた、列挙されたプロセッシング段階から本質的になるか、または列挙されたプロセッシング段階からなる。さらに、段階の順序またはある種の動作を実施するための順序は、本発明が実施可能なままである限り、重要ではないことが理解されるべきである。さらに、2つまたはそれ以上の段階または動作が同時に行われてもよい。
本発明の合成プロセスは、多種多様の官能基を許容することができ、それゆえさまざまな置換された出発材料を用いることができる。これらのプロセスは一般に、所望の最終化合物を、そのプロセス全体の終了の時点でまたは間近で提供するが、場合によっては、この化合物を薬学的に許容されるその塩、エステルまたはプロドラッグにさらに転換することが望ましいこともある。
本発明は、化合物1、化合物2および化合物3の合成のための方法を提供する。本発明はまた、以下のスキームによるおよび実施例に示される通りの化合物1、化合物2および化合物3の詳細な合成方法を提供する。
化合物1は、市販の出発材料または文献の手順を用いて調製できる出発材料から、以下の手順によって調製されうる。これらの手順は、化合物1、2および3の調製を示す。
一般手順A
イミダゾ-ピリジン形成のための1つの一般的な手順は以下に記述されている。
スキーム1-1: イミダゾ-ピリジン形成
段階1. 3-ニトロ-N-フェニルピリジン-2-アミン(スキーム1-1に示される構造3)の合成
2-クロロ-3-ニトロピリジン1を丸底フラスコ中のジオキサン(10 mL/mmol)に溶解した。アニリン(スキーム1-1に示される構造2)を添加し(1.1当量)、ジイソプロピルエチルアミン(3当量)を添加した。反応混合物を4〜36時間、適切な温度に加熱した。室温に冷却後、溶媒を減圧下で除去した。残留物を酢酸エチル(20 mL/mmol)に溶解し、水および塩水(それぞれ20 mL/mmol)で洗浄した。有機相を分離し、Na2SO4で乾燥させた。ろ過後、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物(赤色から褐色の固体)をそれ以上精製することなく次の段階に持ち込んだ。
段階2. 3-(3-フェニル-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-イル)ピリジン-2-アミン(スキーム1-1に示される構造5)の合成
3-ニトロ-N-フェニルピリジン-2-アミン(スキーム1-1に示される構造3)を丸底フラスコ中のジメチルスルホキシド(8 mL/mmol)およびメタノール(1.5 mL/mmol)に溶解した。2-アミノニコチンアルデヒド(スキーム1-1に示される構造4) (1.1当量)を添加し、Na2S2O4 (85%, 2.5当量)を添加した。反応混合物を15〜36時間100℃に加熱した。室温に冷却後、反応混合物をジクロロメタン(20 mL/mmol)で希釈し、水および塩水で洗浄した。有機相を分離し、Na2SO4で乾燥させた。ろ過後、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール; 60分かけて0〜20%のメタノール)により精製して、黄色から褐色の固体を得た。
一般手順A-1
R
2-アミノ-置換イミダゾピリジン形成のための1つの一般的な手順は以下に記述されている。
スキーム1-2: ピリジン上のアミノ置換を用いたイミダゾールピリジン形成
段階1. 3-ニトロ-N-フェニルピリジン-2-アミン(スキーム1-2に示される構造3)の合成
2-クロロ-3-ニトロピリジン(スキーム1-2に示される構造1)を丸底フラスコ中のジオキサン(10 mL/mmol)に溶解した。アニリン(スキーム1-2に示される構造2)を添加し(1.1当量)、ジイソプロピルエチルアミン(3当量)を添加した。反応混合物を4〜36時間、適切な温度に加熱した。室温に冷却後、溶媒を減圧下で除去した。残留物を酢酸エチル(20 mL/mmol)に溶解し、水および塩水(それぞれ20 mL/mmol)で洗浄した。有機相を分離し、Na2SO4で乾燥させた。ろ過後、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物(赤色から褐色の固体)をそれ以上精製することなく次の段階に持ち込んだ。
段階1-1. N1-アルキル/アリール-3-ニトロ-N2-フェニルピリジン-2,6-ジアミン(スキーム1-2に示される構造3b)の合成
中間体(スキーム1-2に示される構造3a) (1当量)を丸底フラスコ中のジオキサン(5 mL/mmol)に溶解した。アルキル(Alky)/アリールアミン(2当量)を添加し、ジイソプロピルアミン(2.5当量)を添加した。反応混合物を油浴中で80℃に24時間加熱した。室温に冷却後、溶媒を減圧下で除去した。残留物を酢酸エチル(10 mL/mmol)に溶解し、水および塩水(それぞれ5 mL/mmol)で洗浄した。有機相を分離し、Na2SO4で乾燥させた。ろ過後、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物(スキーム1-2に示される構造3b)をそれ以上精製することなく次の段階に持ち込んだ。
段階2. 3-(3-フェニル-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-イル)ピリジン-2-アミン(スキーム1-2に示される構造5)の合成
3-ニトロ-N-フェニルピリジン-2-アミン(スキーム1-2に示される構造3)を丸底フラスコ中のジメチルスルホキシド(8 mL/mmol)およびメタノール(1.5 mL/mmol)に溶解した。2-アミノニコチンアルデヒド4 (1.1当量)を添加し、Na2S2O4 (85%, 2.5当量)を添加した。反応混合物を15〜36時間100℃に加熱した。室温に冷却後、反応混合物をジクロロメタン(20 mL/mmol)で希釈し、水および塩水で洗浄した。有機相を分離し、Na2SO4で乾燥させた。ろ過後、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール; 60分かけて0〜20%のメタノール)により精製して、黄色から褐色の固体を得た。
一般手順B
BOC基の脱保護のための1つの一般的な手順は以下に記述されている。
スキーム2: BOC-基の脱保護
カルバメート(スキーム2に示される構造6) (1当量)をメタノールに溶解した。HCl (20当量、ジオキサン中4 M)を添加し、室温で2〜4時間撹拌した。減圧下での溶液の濃縮により、脱保護したアミン(スキーム2に示される構造7)を塩酸塩として得、これをそれ以上精製することなく次の段階に用いた。
一般手順C
スズキカップリングの一般的な手順は以下のスキーム8およびスキーム9に記述されている。
スキーム8: スズキカップリング
有機ハロゲン化物(スキーム8に示される構造22) (1当量)、CsCO3 (1当量)、Pd(PPh3)4 (0.1当量)およびアリールボロン酸(2当量)をDMFに溶解した。窒素で10分間脱気した後、反応混合物をマイクロ波中で15分間150℃に加熱した。反応混合物をBakerboundろ過カラムに通してろ過し、溶媒を事前に除去することなく逆相分取HPLC (水0.05 M TFA / ACN 0.05 M TFA 0〜100% ACN)により精製するか、または溶媒を減圧下で除去し、粗生成物(スキーム8に示される構造14)をシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン中0〜20%のメタノール)により精製するかした。
一般手順D
スキーム9: スズキカップリング
有機ハロゲン化物(スキーム9に示される構造15) (1当量)をエタノールおよびトルエン、それぞれ10 mL/mmolの混合物に懸濁させた。NaHCO
3飽和溶液を添加した(3 mL/mmol)。反応混合物を窒素で30分間脱気した。その後、これを窒素下で終夜100℃に加熱した。室温に冷却した後、これをジクロロメタン(20 mL/mmol)および水(10 mL/mmol)で希釈した。有機相を分離し、塩水(10 mL/mmol)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させた。ろ過後、溶媒を真空中で除去した。粗残留物(スキーム9に示される構造16)をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル中3〜20%のメタノール)により精製した。
一般手順E
スキーム11: ネギシカップリング
中間体(スキーム11に示される構造19) (1当量)をテトラヒドロフラン10 mL/mmolに溶解した。不活性雰囲気条件下で、アルキル/アリール亜鉛ハロゲン化物(1.5当量)、Pd(PtBu
3)
2 (0.1当量)およびカリウムtert-ブトキシド(1当量)を添加した。反応混合物を窒素で30分間脱気した。その後、これをマイクロ波中で15分間100℃に加熱した。室温に冷却した後、反応混合物を、セライトを通してろ過した。これをジクロロメタン(20 mL/mmol)および水(20 mL/mmol)で希釈した。エチレンジアミン四酢酸(EDTA) (1当量)を添加した。有機相を分離し、塩水(10 mL/mmol)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させた。ろ過後、溶媒を減圧下で除去した。粗残留物20をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル中3〜20%のメタノール)により精製した。
置換5,6-ジヒドロ-6-フェニルベンゾ[f]イソキノリン-2-アミン化合物の合成
本発明は、化合物4の合成のための方法を提供する。本発明はまた、実施例に示される以下のスキームによる化合物4の合成のための詳細な方法を提供する。
化合物4は、市販の出発材料または文献の手順を用いて調製できる出発材料から、以下の手順によって調製されうる。これらの手順は、化合物4の調製を示す。
一般手順1
段階1. グアニジン形成
1 MのDIPEAの無水DMF溶液を調製する(溶液A)。溶液Aを用いて0.5 Mの1-H-ピラゾール-1-カルボキサミジン塩酸塩溶液を調製する。0.25 Mのアミンの無水DMF溶液も調製する。アミン溶液800 μL (200 μmol, 1.0当量)を2ドラムバイアルに分注する。1-H-ピラゾール-1-カルボキサミジン塩酸塩溶液400 μL (200 μmol, 1.0当量)をバイアルに分注する。DIPEA正味(neat) 80 μL (2.3当量)を分注する。バイアルをキャップし、ボルテックスする。100℃で12〜24時間振盪する。出発アミンが消失しているか見る。アミンがまだ存在する場合には、加熱を続ける。溶媒を乾燥/油状になるまで蒸発させる。乾燥アセトン(1 mL)を用いて共沸を行い、次いで再び蒸発させることにより、残りの水分を除去した。
段階2. 環化(ピリミジン形成)
200プルーフのEtOH中で(E)-2-((ジメチルアミノ)メチレン)-4-フェニル-3,4-ジヒドロナフタレン-1(2H)-オンまたは(E)-4-(3,4-ジクロロフェニル)-2-((ジメチルアミノ)メチレン)-3,4-ジヒドロナフタレン-1(2H)-オンのいずれかの0.1 M溶液を調製する。EtOH 2000 μLを前段階からの残留物に分注する。(E)-2-((ジメチルアミノ)メチレン)-4-フェニル-3,4-ジヒドロナフタレン-1(2H)-オンまたは(E)-4-(3,4-ジクロロフェニル)-2-((ジメチルアミノ)メチレン)-3,4-ジヒドロナフタレン-1(2H)-オンのいずれか2000 μL (200 μmol, 1.0当量)を段階1からの残留物に分注する。ナトリウムエトキシドのエタノール溶液(Aldrich, 21重量%)を各バイアル75 μL, 200 μmolに分注する。80℃で72時間振盪する。溶媒を乾燥/油状になるまで蒸発させる。水2000 μLおよび酢酸エチル2000 μLを分注する。70℃で1時間振盪させて、溶解させる。上部の有機層1200 μLを新しいバイアルに移す。酢酸エチル2000 μLを分注する。上部の有機層2300 μLを新しいバイアルに移す。合わせた有機物を蒸発乾固させ、質量トリガー分画(mass triggered fractionation)を用いる分取LC/UV/MSシステムでの逆相クロマトグラフィーによってサンプルを精製した。調節剤として0.1% TFAを用いアセトニトリル/水勾配で化合物をHPLCカラム(Maccel 120-10-C18 SH 10 μm 20 mmID×50 mm)から88 ml/分で溶出させた。
一般手順2
本発明の化合物は、以下に示される一般手順によって好都合に調製することもできる。
段階1: (R)-2-((ジメチルアミノ)メチレン)-4-(2-フルオロフェニル)-3,4-ジヒドロナフタレン-1(2H)-オン
(R)-4-(2-フルオロフェニル)-3,4-ジヒドロナフタレン-1(2H)-オン(8.0 g, 33.33 mmol)のN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(80 mL)溶液を100℃で40時間加熱した。反応混合物を室温に冷却した後に、ヘキサン(50 mL)を添加した。生成物をろ過によって集め、高真空下で終夜乾燥させて、表題化合物を黄色針状晶(6.95 g, 収率70%)として得た。
段階2: (R)-2-(3-(6-(2-フルオロフェニル)-5,6-ジヒドロベンゾ[h]キナゾリン-2-イルアミノ)フェニル)エタノール
(R)-2-((ジメチルアミノ)メチレン)-4-(2-フルオロフェニル)-3,4-ジヒドロナフタレン-1(2H)-オン(4.20 g, 14.24 mmol)および1-(3-(2-ヒドロキシエチル)フェニル)グアニジン塩酸塩(6.17 g, 28.47 mmol)のエタノール(40 mL)混合物にナトリウムエトキシド(エタノール中21% w/w) (9.60 mL, 25.62 mmol)を添加した。混合物を80℃で24時間加熱し、まだ熱いうちにろ過した。固体をアセトン(50 mL)で洗浄した。ろ液を濃縮乾固して粗生成物を得た。粗生成物をエタノール(20 mL)に80℃で溶解した。2時間かけて室温に冷却した後、生成物を沈殿させた。固体をろ過によって集め、次いで別のフラスコ中のアセトン(30 mL)に溶解した。このアセトン溶液に、水120 mLをゆっくり添加し、得られた懸濁液を室温で30分間撹拌し、ろ過した。固体を高真空下50℃で24時間乾燥して、表題化合物を黄色固体として得た(3.78 g, 収率65%)。
段階3: メタンスルホン酸(R)-3-(6-(2-フルオロフェニル)-5,6-ジヒドロベンゾ[h]キナゾリン-2-イルアミノ)フェネチル
(R)-2-(3-(6-(2-フルオロフェニル)-5,6-ジヒドロベンゾ[h]キナゾリン-2-イルアミノ)フェニル)エタノール(4.59 g, 11.17 mmol)のジクロロメタン(50 mL)溶液に、トリエチルアミン(2.33 mL, 16.75 mmol)および塩化メタンスルホニル(0.95 mL, 12.28 mmol)を添加した。混合物を室温で1時間撹拌し、水(60 mL×3)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、表題化合物を黄色固体(5.37 g, 収率98%)として得た。
段階4: (R)-6-(2-フルオロフェニル)-N-(3-(2-(4-(2-メトキシエチル)ピペラジン-1-イル)エチル)フェニル)-5,6-ジヒドロベンゾ[h]キナゾリン-2-アミン
メタンスルホン酸(R)-3-(6-(2-フルオロフェニル)-5,6-ジヒドロベンゾ[h]キナゾリン-2-イルアミノ)フェネチル(5.37 g, 11.00 mmol)、1-(2-メトキシエチル)ピペラジン(3.32 mL, 22.34 mmol)およびトリエチルアミン(1.5 mL, 11.17 mmol)のN,N-ジメチルアセトアミド(30 mL)溶液を90℃で20時間加熱した。室温に冷却後、撹拌しながら水(200 mL)を添加した。懸濁液を15分間撹拌し、ろ過した。固体をジクロロメタン(200 mL)に取り入れ、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。生成物をシリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィー(120 gシリカゲルカラム、80分かけて、メタノール-ジクロロメタン中0〜10%の7 N NH
3)により精製して、表題化合物を黄色固体(5.50 g, 収率93%)として得た。
段階5: (R)-6-(2-フルオロフェニル)-N-(3-(2-(4-(2-メトキシエチル)ピペラジン-1-イル)エチル)フェニル)-5,6-ジヒドロベンゾ[h]キナゾリン-2-アミン塩酸塩。
(R)-6-(2-フルオロフェニル)-N-(3-(2-(4-(2-メトキシエチル)ピペラジン-1-イル)エチル)フェニル)-5,6-ジヒドロベンゾ[h]キナゾリン-2-アミン(5.5 g, 10.22 mmol)の溶液をジクロロメタン(30 mL)および酢酸エチル(20 mL)の混合溶媒に溶解した。この溶液に、撹拌しながら、酢酸エチル(30 mL)中の2.5 M HClをゆっくり添加した。添加後、懸濁液を室温で10分間撹拌し、次いでジエチルエーテル(300 mL)を添加した。生成物をろ過によって回収し、60℃で24時間乾燥して、最終生成物6.2 g (約93%)を黄色固体として得た。この塩の純度は、HPLC短時間法(2.5分の運転)によりUV 254 nmで100%であり、HPLC長時間法(20分の運転)によりUV254で92%であることが判明した。この塩は、本明細書において開示された実施例に示されるようにさらに精製された。
5. 薬学的組成物
本発明はまた、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤または担体と組み合わせて、本明細書において記述される少なくとも1つの化合物を含む薬学的組成物を提供する。
「薬学的組成物」とは、本発明の化合物を含有する、対象への投与に適した形態の処方物である。1つの態様において、薬学的組成物は、バルク形態または単位投与量形態である。単位投与量形態は、例えば、カプセル、IVバッグ、錠剤、エアロゾル吸入器またはバイアルの単一ポンプを含む、種々の形態のいずれかである。単位用量の組成物中の活性成分(例えば、本開示の化合物またはその塩、水和物、溶媒和物もしくは異性体)の量は、有効量であり、関与する特定の処置によって変化する。当業者は、患者の年齢および状態に依って、投与量に対する慣用的な変更を行うことが時に必要であることを理解するであろう。投与量はまた、投与経路に依るであろう。経口、肺、直腸、非経口、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、吸入、頬、舌下、胸膜腔内、鞘内、鼻腔内などを含めて、種々の経路が企図される。本発明の化合物の局所投与または経皮投与のための剤形は、粉末、スプレイ、軟膏剤、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチおよび吸入剤を含む。1つの態様において、活性成分は、滅菌条件下で薬学的に許容される担体と混合され、必要とされる任意の防腐剤、緩衝液または噴射剤と混合される。
本明細書において用いられる場合、「薬学的に許容される」という語句は、合理的な医療判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴わずに、合理的な利益/危険比に合う、ヒトおよび動物の組織と接触させて用いるのに適した、化合物、材料、組成物、担体、および/または剤形をいう。
「薬学的に許容される賦形剤」とは、一般的に安全であり、非毒性であり、生物学的にも他の点でも望ましくないことがない、薬学的組成物を調製する際に有用な賦形剤を意味し、獣医学用途およびヒト医薬用途のために許容される賦形剤を含む。「薬学的に許容される賦形剤」とは、本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる場合、1つのこのような賦形剤と、2つ以上のこのような賦形剤との両方を含む。
本発明の薬学的組成物は、その意図した投与経路に合うように処方される。投与経路の例としては非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(局所)および経粘膜の投与が挙げられる。非経口、皮内または皮下の用途に用いられる溶液または懸濁物は、以下の成分を含有することができる: 注射用水、生理食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒のような滅菌希釈剤; ベンジルアルコールまたはメチルパラベンのような抗菌剤; アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムのような酸化防止剤; エチレンジアミン四酢酸のようなキレート剤; 酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩のような緩衝液、および塩化ナトリウムまたはデキストロースのような、張度の調整用の薬剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムのような、酸または塩基を用いて調整することができる。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチックから作製された、アンプル、使い捨て注射器または多用量バイアルに収容することができる。
本発明の化合物または薬学的組成物は、化学療法処置のために現在用いられている周知の方法の多くで、対象に投与することができる。例えば、がんの処置の場合、本発明の化合物は、腫瘍に直接注入され、血流もしくは体腔に注射され、または経口摂取され、またはパッチを用い皮膚を通して貼付されうる。選択される用量は、有効な処置を構築するために十分であるべきだが、しかし許容されない副作用を引き起こすほど高くすべきではない。疾患状態(例えば、がん、前がんなど)の状態および患者の健康状態は、好ましくは、処置後の合理的な期間中およびその期間にわたって、綿密に監視されるべきである。
「治療有効量」という用語は、本明細書において用いられる場合、同定された疾患もしくは状態を処置、軽減もしくは予防するための、または検出可能な治療効果もしくは阻害効果を示すための医薬品(pharmaceutical agent)の量をいう。効果は、当技術分野において公知の任意のアッセイ法により検出することができる。対象に的確な有効量は、対象の体重、サイズおよび健康状態; 状態の性質および程度; ならびに投与のために選択された治療用物質または治療用物質の組み合わせに依るであろう。所与の状況に対する治療有効量は、臨床医の技能および判断の範囲内である日常の実験によって判定することができる。好ましい局面において、処置される疾患または状態は、がんである。別の局面において、処置される疾患または状態は、細胞増殖性障害である。
任意の化合物について、治療有効量は、最初に例えば新生物細胞の、細胞培養アッセイ法または動物モデル、通常はラット、マウス、ウサギ、イヌもしくはブタのいずれかにおいて推定することができる。動物モデルはまた、適切な濃度範囲および投与経路を判定するために用いられうる。次いで、そのような情報を用いて、ヒトでの投与に有用な用量および経路を判定することができる。治療/予防の効力および毒性は、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順、例えば、ED50 (集団の50%において治療的に有効な用量)およびLD50 (集団の50%に対して致命的な用量)によって判定されうる。毒性と治療効果との用量比が治療指数であり、これは比LD50/ED50として表すことができる。大きな治療指数を示す薬学的組成物が好ましい。投与量はこの範囲内で、利用される剤形、患者の感受性、および投与経路に依って変化しうる。
投与量および投与は、十分なレベルの活性薬剤を提供するように、または所望の効果を維持するように調節される。考慮されうる要因には、疾患状態の重症度、対象の一般的健康状態、対象の年齢、体重および性別、食事、投与の回数および頻度、薬物の組み合わせ、反応感受性、ならびに治療に対する寛容/応答が含まれる。長時間作用性の薬学的組成物は、特定の処方物の半減期およびクリアランス速度に依って、3〜4日ごとに、毎週、または2週間ごとに1回投与されうる。
本発明の活性化合物を含有する薬学的組成物は、一般的に公知である様式で、例えば、従来の混合、溶解、顆粒化、糖剤作製、湿式粉砕、乳化、カプセル化、捕捉、または凍結乾燥のプロセスによって製造されうる。薬学的組成物は、薬学的に使用できる調製物への活性化合物の加工処理を容易にする賦形剤および/または補助成分を含む1つまたは複数の薬学的に許容される担体を用い従来の様式で処方されうる。もちろん、適切な処方物は、選択される投与経路に依存する。
注射可能な用途に適した薬学的組成物は、滅菌水溶液(水溶性の場合)または滅菌分散液および注射可能な滅菌溶液または滅菌分散液の即時調製用の滅菌粉末を含む。静脈内投与の場合、適当な担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL (商標) (BASF, Parsippany, N.J.)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。いかなる場合でも、この組成物は無菌でなければならず、容易に注射できる程度に流動性とするべきである。これは製造および保存の条件下で安定でなければならず、これは細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。この担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびその適当な混合物を含む溶媒または分散媒とすることができる。その適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によりおよび界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用からの保護はさまざまな抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどにより達成することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖類、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、塩化ナトリウムを組成物の中に含めることが好ましいであろう。注射可能な組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物の中に含めることにより実現することができる。
注射可能な滅菌溶液は、必要とされる量の活性化合物を適切な溶媒中に、必要に応じて、上記に列挙した成分の一つまたは組み合わせとともに組み入れ、続けてろ過滅菌を行うことによって調製することができる。一般に、分散液は活性化合物を、基本的な分散媒および上記に列挙したものから必要とされるその他の成分を含む滅菌媒体の中に組み入れることによって調製される。注射可能な滅菌溶液の調製用の滅菌粉末の場合、調製の方法は、活性成分に加えて所望とされる付加的な任意の成分の粉末を予め滅菌ろ過したその溶液からもたらす真空乾燥法および凍結乾燥法である。
経口用組成物は一般に、不活性希釈剤または食用の薬学的に許容される担体を含む。それらはゼラチンカプセルの中に封入され、または錠剤に圧縮されることができる。治療的な経口投与を目的に、活性化合物を賦形剤とともに組み入れて、錠剤、トローチ、またはカプセルの形態で使用することができる。経口用組成物はうがい薬として用いるために液体担体を使用して調製することもでき、この場合、液体担体中の化合物は経口的に適用され、かつうがいされ(swished)、かつ喀出されまたは嚥下される。薬学的に適合する結合剤および/または補助物質を、組成物の一部として含めることができる。この錠剤、丸剤、カプセル、トローチなどは、以下の成分のいずれかまたは似通った性質の化合物を含むことができる: 微結晶性セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチンのような結合剤; でんぷんもしくはラクトースのような賦形剤、アルギン酸、Primogel、もしくはとうもろこしでんぷんのような崩壊剤; ステアリン酸マグネシウムもしくはSterotesのような滑沢剤; コロイド状二酸化ケイ素のような流動促進剤; スクロースもしくはサッカリンのような甘味剤; またはペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ風味のような香料添加剤。
吸入による投与の場合、化合物は、適した噴射剤、例えば、二酸化炭素のようなガスを含有する加圧容器もしくは分注機、または噴霧器からエアロゾルスプレイの形態で送達される。
全身投与を経粘膜的なまたは経皮的な手段によるものとすることもできる。経粘膜投与または経皮投与の場合、浸透される障壁に適した浸透剤が処方物の中に用いられる。そのような浸透剤は一般に当技術分野において公知であり、例えば、経粘膜投与の場合、界面活性剤、胆汁塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は鼻腔用スプレイまたは坐剤の使用により達成することができる。経皮投与の場合、活性化合物は当技術分野において一般に公知であるように軟膏剤、膏薬、ゲル、またはクリームの中に処方される。
活性化合物はインプラントおよびマイクロカプセル化した送達系を含めて、制御放出処方物のような、体内からの迅速除去から化合物を防御できる薬学的に許容される担体とともに調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸のような、生体分解・生体適合性高分子を用いることができる。そのような処方物の調製方法は当業者には明らかであろう。その材料はAlza社およびNova Pharmaceuticals社から商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体によって感染細胞を標的とするリポソームを含めて)を薬学的に許容される担体として用いることもできる。これらは当業者に公知の方法により、例えば、米国特許第4,522,811号に記述されているように、調製することができる。
投与の容易さおよび投与量の均一性のために、経口用組成物または非経口用組成物を投与量単位形態で処方することが特に有利である。投与量単位形態とは、本明細書において用いられる場合、処置される対象のために単一投与量として適した、物理的に不連続な単位をいい、各単位は、所望の治療効果を生じると計算された所定量の活性化合物を、必要とされる薬学的担体に関連して含有する。本発明の投与量単位形態の仕様は、活性化合物の独特の特徴および達成されたい特定の治療効果により決定され、それらに直接依存する。
治療用途において、本発明により用いられる薬学的組成物の投与量は、選択された投与量に影響を与える他の要因のなかでも特に、薬剤、レシピエント患者の年齢、体重、および臨床状態、ならびにその治療を施す医師または開業医の経験および判断に依って変化する。一般に、用量は、腫瘍の増殖の緩徐化、および好ましくは退縮をもたらすのに、また好ましくは、がんの完全な退縮を引き起こすのに十分とすべきである。投与量は約0.01 mg/kg/日〜約5000 mg/kg/日に及ぶことができる。好ましい局面において、投与量は約1 mg/kg/日〜約1000 mg/kg/日に及ぶことができる。1つの局面において、用量は約0.1 mg/日〜約50 g/日; 約0.1 mg/日〜約25 g/日; 約0.1 mg/日〜約10 g/日; 約0.1 mg〜約3 g/日; または約0.1 mg〜約1 g/日の範囲内であり、単一用量、分割用量、または連続用量である(この用量は、kg単位の患者体重、m2単位の体表面積、および年単位の年齢について調整されうる)。医薬品の有効量は、医師または他の権限のある観察者が気付くような、客観的に同定可能な改善をもたらす量である。例えば、患者における腫瘍の退縮は、腫瘍の直径に関連して測定されうる。腫瘍の直径の減少は退縮を示す。退縮は、処置を止めた後に腫瘍が再発しないことでも示される。本明細書において用いられる場合、「投与量有効様式」という用語は、対象または細胞において所望の生物学的効果を生じるための活性化合物の量をいう。
薬学的組成物は、投与のための使用説明書とともに容器、パックまたは分注機に含めることができる。
本発明の化合物は、さらに塩を形成することが可能である。これらの形態の全てもまた、主張する本発明の範囲内であると企図される。
本明細書において用いられる場合、「薬学的に許容される塩」とは、親化合物がその酸性塩または塩基性塩を作出することにより修飾されている、本発明の化合物の誘導体をいう。薬学的に許容される塩の例としては、アミン、アルカリのような塩基性残基の鉱酸塩もしくは有機酸塩、またはカルボン酸のような酸性残基の有機塩などが挙げられるが、これらに限定されることはない。薬学的に許容される塩は、例えば非毒性の無機酸または有機酸から形成された、親化合物の従来の非毒性の塩または第四級アンモニウム塩を含む。例えば、そのような従来の非毒性塩は、2-アセトキシ安息香酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重炭酸、炭酸、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、1,2-エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、グリコリアルサニリン(glycollyarsanilic)酸、ヘキシルレゾルシン酸、ヒドラバミン(hydrabamic)酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフトエ酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリル硫酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ナプシル(napsylic)酸、硝酸、シュウ酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、リン酸、ポリガラクツロン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、スバセチン(subacetic)酸、コハク酸、スルファミン酸、スルファニル酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、および一般に存在するアミン酸、例えば、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、アルギニンなどから選択される無機酸および有機酸から導出される塩を含むが、これらに限定されることはない。
薬学的に許容される塩の他の例としては、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、ピルビン酸、マロン酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、ショウノウスルホン酸、4-メチルビシクロ-[2.2.2]-オクタ-2-エン-1-カルボン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、ムコン酸などが挙げられる。本発明はまた、親化合物に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、もしくはアルミニウムイオンにより置き換えられる場合; またはエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N-メチルグルカミンなどのような有機塩基と配位する場合のいずれかに形成される塩を包含する。
薬学的に許容される塩に対する全ての言及は、同じ塩の、本明細書において定義される溶媒付加形態(溶媒和物)または結晶形態(多型)を含むことが理解されるべきである。
本発明の化合物はまた、エステル、例えば、薬学的に許容されるエステルとして調製することができる。例えば、化合物中のカルボン酸官能基は、その対応するエステル、例えば、メチルエステル、エチルエステルまたは他のエステルに転換することができる。また、化合物中のアルコール基は、その対応するエステル、例えば、酢酸エステル、プロピオン酸エステルまたは他のエステルに転換することができる。
本発明の化合物はまた、プロドラッグ、例えば、薬学的に許容されるプロドラッグとして調製することができる。「プロ-ドラッグ」および「プロドラッグ」という用語は、本明細書において互換的に用いられ、インビボで活性な親薬物を放出する任意の化合物をいう。プロドラッグは、薬剤の多数の所望の性質(例えば、溶解性、生物学的利用能、製造など)を増強することが公知であるので、本発明の化合物は、プロドラッグの形態で送達することができる。したがって、本発明は、本願主張の化合物のプロドラッグ、それらを送達する方法、およびそれらを含有する組成物を網羅することが意図される。「プロドラッグ」は、そのようなプロドラッグが対象に投与される場合に、本発明の活性親薬物をインビボで放出する、任意の共有結合された担体を含むことが意図される。本発明におけるプロドラッグは、その化合物に存在する官能基を、慣用的な操作でまたはインビボでのいずれかで、修飾が切断されて親化合物になるような様式で修飾することによって調製される。プロドラッグは、ヒドロキシ基、アミノ基、スルフヒドリル基、カルボキシ基またはカルボニル基がインビボで切断されて、それぞれ、遊離ヒドロキシル基、遊離アミノ基、遊離スルフヒドリル基、遊離カルボキシ基または遊離カルボニル基を形成しうる任意の基に結合された、本発明の化合物を含む。
プロドラッグの例としては、本発明の化合物の、ヒドロキシ官能基のエステル(例えば、アセテート、ジアルキルアミノアセテート、ホルメート、ホスフェート、スルフェートおよび安息香酸誘導体)ならびにカルバメート(例えば、N,N-ジメチルアミノカルボニル)、カルボキシル官能基のエステル(例えば、エチルエステル、モルホリノエタノールエステル)、アミノ官能基のN-アシル誘導体(例えば、N-アセチル) N-マンニッヒ塩基、シッフ塩基およびエナミノン、ケトン官能基およびアルデヒド官能基のオキシム、アセタール、ケタールおよびエノールエステルなどが挙げられるが、これらに限定されることはなく、Bundegaard, H., Design of Prodrugs, p1-92, Elesevier, New York-Oxford (1985)を参照されたい。
化合物、または薬学的に許容されるその塩、エステルもしくはプロドラッグは、経口、経鼻、経皮、肺、吸入、頬、舌下、腹腔内、皮下、筋肉内、静脈内、直腸、胸膜腔内、鞘内および非経口で投与される。1つの態様において、この化合物は、経口投与される。当業者は、特定の投与経路の利点を認識するであろう。
化合物を利用する投薬計画は、患者のタイプ、種、年齢、体重、性別および医学的状態; 処置される状態の重症度; 投与経路; 患者の腎機能および肝機能; ならびに採用される特定の化合物またはその塩を含む種々の要因によって選択される。通常の技能を有する医師または獣医師は、状態を予防するか、状態に対抗するか、または状態の進行を食い止めるために必要とされる、薬物の有効量を容易に判定および処方することができる。
投薬計画は、本発明の化合物の連日投与(例えば24時間毎)でありうる。投薬計画は、連続した日数、例えば、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間または少なくとも7日間の連続した日数にわたる連日投与でありうる。投薬は、1日に2回以上、例えば、1日(24時間あたり) 2回、3回または4回でありうる。投薬計画は、連日投与に引き続く、少なくとも1日、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、または少なくとも6日間の投与なしでありうる。例えば、本発明の化合物は24時間の間に少なくとも1回投与されて、次に本発明の化合物は少なくとも6日間投与されず、次に本発明の化合物は、その必要がある対象に投与される。
投薬計画は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、または少なくとも3週間の連日投与を含むことができる。好ましくは、投薬計画は、1日に約50 mg〜約100 mgの投与を含むことができる。より好ましくは、投薬計画は、1日に約60 mgの投与を含むことができる。
投薬計画は、1週間に1回の投与を含むことができる。具体的には、1週間に1回投与する。より具体的には、組成物は24時間のあいだに少なくとも1回投与されて、少なくとも6日間にわたり投与されず、それから、該少なくとも6日間に続く24時間のあいだに少なくとも1回投与される。好ましくは、投薬計画は週1日、約250 mg〜約250 mgの投与を含むことができる。より好ましくは、投薬計画は週1日、約300 mgの投与を含むことができる。
投薬計画は、少なくとも1週間にわたる連日投与、少なくとも1週間にわたる投与停止、その後の少なくともさらにもう1週間にわたる連日投与を含むことができる。例えば、本発明の化合物は少なくとも1週間にわたって連日投与されて、本発明の化合物は第二の1週間にわたって投与されず、その後、本発明の化合物は少なくとも第三の1週間にわたって連日投与される。好ましくは、投薬計画は、1日約150 mg〜約250 mgの投与を含むことができる。より好ましくは、投薬計画は、1日約200 mgの投与を含むことができる。
本発明の開示の化合物の処方および投与のための技法は、Remington: the Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, Mack Publishing Co., Easton, PA (1995)において見出すことができる。1つの態様において、本明細書において記述される化合物、および薬学的に許容されるその塩は、薬学的調製物中で、薬学的に許容される担体または希釈剤と組み合わせて用いられる。適当な薬学的に許容される担体は、不活性な固体の増量剤または希釈剤、および滅菌水溶液または有機溶液を含む。化合物は、そのような薬学的組成物中に、本明細書において記述される範囲の所望の投与量を提供するために十分な量で存在するであろう。
本明細書において用いられる全ての百分率および比率は、他に示されない限り、重量による。本発明の他の特徴および利点は、さまざまな実施例から明らかである。提供される実施例は、本発明を実践する際に有用な、さまざまな成分および方法論を説明する。実施例は、主張する本発明を限定しない。本開示に基づいて、当業者は、本発明を実践するのに有用な他の成分および方法論を同定および採用することができる。
6.
実施例
実施例1: 3-(3-(4-(1-アミノシクロブチル)フェニル)-5-フェニル-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-イル)ピリジン-2-アミン(化合物1)塩酸塩の合成
3-(3-(4-(1-アミノシクロブチル)フェニル)-5-フェニル-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-イル)ピリジン-2-アミン塩酸塩は一般手順A、引き続き一般手順DおよびBにしたがって合成された。
段階1: カルバミン酸tert-ブチル(1-(4-((6-クロロ-3-ニトロピリジン-2-イル)アミノ)フェニル)シクロブチル)
0℃に冷却した2,6-ジクロロ-3-ニトロピリジン(5.11 g)のDMA (50 ml)およびトリエチルアミン(5 ml)溶液に、カルバミン酸tert-ブチル(1-(4-アミノフェニル)シクロブチル) (6.3 g)のDMA (25 ml)溶液を20分かけて滴下した。反応物を1時間0℃で撹拌させ、その後、ゆっくりと室温に加温させ、終夜反応させた。完了時に、反応物を水(250 mL)で希釈し、酢酸エチル(2×200 ml)で抽出した。有機物を合わせ、飽和重炭酸ナトリウム溶液(1×200 ml)、水(1×200 ml)および塩水(1×100 ml)で洗浄した。有機物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン中15%の酢酸エチル)により精製して、生成物をオレンジ色の固体(5.05 g, 50%)として得た。
段階2: カルバミン酸tert-ブチル(1-(4-(2-(2-アミノピリジン-3-イル)-5-クロロ-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イル)フェニル)シクロブチル)
カルバミン酸tert-ブチル(1-(4-((6-クロロ-3-ニトロピリジン-2-イル)アミノ)フェニル)シクロブチル) (5.0 g)の無水DMSO (60 ml)および無水メタノール(10 ml)溶液に、2-アミノニコチンアルデヒド(1.53 g)、続いてNa
2S
2O
4 (6.25 g)を添加した。反応混合物を2日間100℃に加熱した。反応の完了時に、水(250 ml)を添加し、反応物を室温で1日間撹拌させた。反応物をジクロロメタン(2×200 ml)で抽出した。2回目の抽出時に、水層および有機層から大量の黄色固体が析出した。固体をろ別し、生成物であることが分かった。生成物を有機層と合わせ、減圧下で乾燥して、生成物を黄色固体として得た(3.1 g, 52%)。
段階3: カルバミン酸tert-ブチル(1-(4-(2-(2-アミノピリジン-3-イル)-5-フェニル-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イル)フェニル)シクロブチル)
カルバミン酸tert-ブチル(1-(4-(2-(2-アミノピリジン-3-イル)-5-クロロ-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イル)フェニル)シクロブチル) (20 g)のトルエン(200 mL)およびエタノール(200 mL)懸濁液に、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(150 mL)およびフェニルボロン酸(9.9 g)を添加した。反応物を5分間脱気し、Pd (PPh
3)
4 (1.0 g)を添加した。反応物を再び5分間脱気し、次いで100℃に2日間またはLCMSにより反応が完了するまで加熱した。反応混合物を室温に冷却し、ジクロロメタン(250 ml×3)および水(100 mL)を反応物に添加した。有機物を飽和重炭酸ナトリウム(1×250 mL)および水(1×250 mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン中10〜100%の酢酸エチル)により精製して、いくらかの不純物を含む生成物を得た。固体を酢酸エチルで再結晶化して、オフホワイト色の固体(7.2 g)を得た。
段階4: 3-(3-(4-(1-アミノシクロブチル)フェニル)-5-フェニル-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-イル)ピリジン-2-アミン塩酸塩
カルバミン酸tert-ブチル(1-(4-(2-(2-アミノピリジン-3-イル)-5-フェニル-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イル)フェニル)シクロブチル) (4.1 g)のジクロロメタン(100 mL)溶液に、ジオキサン(20 mL)中4.0 MのHClをゆっくり添加した。反応物を室温で2.5時間撹拌させた。反応の完了時に、エーテル(50 mL)を懸濁液に添加し、固体をろ過して生成物(4.032 g)を白色固体として得た。
カルバミン酸tert-ブチル(1-(4-アミノフェニル)シクロブチル)の合成、構成要素2、例えば21、一般手順A:
段階1: (1-(4-(((ベンジルオキシ)アルボニル)アミノ)フェニル)シクロブチル)カルバミン酸のCbz保護
4-(1-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)シクロブチル)安息香酸(15 g)のトルエン(75 ml)およびトリエチルアミン(14.36 ml, 2当量)溶液に、ジフェニルホスホリルアジド(12.22 ml, 1.1当量)を添加した。反応物を100℃に加熱し、2時間、または激しい泡立ちが止まるまで反応させた。ベンジルアルコール(26.6 ml, 5当量)を添加し、100℃で2時間反応を進行させた。反応物を室温に冷却し、氷浴上に置いて冷却した。反応物から白色固体が沈殿した後、室温に加温し、終夜撹拌させた。反応物にエーテル(200 ml)を添加し、生成物をろ過して白色固体13.1 gを得た。
段階2: カルバミン酸tert-ブチル(1-(4-アミノフェニル)シクロブチル); 一般手順Aの中間体2
cbz保護4-(1-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)シクロブチル)安息香酸(9.545 g)の酢酸エチル(125 mL)およびメタノール(125 mL)懸濁液を、溶解するまで加熱した。溶液を室温に冷却し、10% Pd/C (1.1 g)を添加した。フラスコを水素で満たし、室温で終夜反応させた。完了時に、反応物をセライトパッドでろ過し、セライトをメタノール(2×100 mL)で洗浄した。有機物を減圧下で濃縮し、生成物を無色の油状物(6.3 g, 100%)として得、これをさらに精製することなく使用した。LCMS: 263 [M+H]。
実施例2: 3-(3-(4-(1-アミノシクロブチル)フェニル)-5-(3-モルホリノフェニル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-イル)ピリジン-2-アミンの合成
段階1: カルバミン酸tert-ブチル(1-(4-((6-クロロ-3-ニトロピリジン-2-イル)アミノ)フェニル)シクロブチル)
0℃に冷却した2,6-ジクロロ-3-ニトロピリジン(5.11 g)のDMA (50 ml)およびトリエチルアミン(5 ml)溶液に、カルバミン酸tert-ブチル(1-(4-アミノフェニル)シクロブチル) (6.3 g)のDMA (25 ml)溶液を20分かけて滴下した。反応物を1時間0℃で撹拌させ、その後、ゆっくりと室温に加温させ、終夜反応させた。完了時に、反応物を水(250 mL)で希釈し、酢酸エチル(2×200 ml)で抽出した。有機物を合わせ、飽和重炭酸ナトリウム溶液(1×200 ml)、水(1×200 ml)および塩水(1×100 ml)で洗浄した。有機物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン中15%の酢酸エチル)により精製して、生成物をオレンジ色の固体(5.05 g, 50%)として得た。
段階2: カルバミン酸tert-ブチル(1-(4-(2-(2-アミノピリジン-3-イル)-5-クロロ-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イル)フェニル)シクロブチル)
カルバミン酸tert-ブチル(1-(4-((6-クロロ-3-ニトロピリジン-2-イル)アミノ)フェニル)シクロブチル) (5.0 g)の無水DMSO (60 ml)および無水メタノール(10 ml)溶液に、2-アミノニコチンアルデヒド(1.53 g)、続いてNa
2S
2O
4 (6.25 g)を添加した。反応混合物を2日間100℃に加熱した。反応の完了時に、水(250 ml)を添加し、反応物を室温で1日間撹拌させた。反応物をジクロロメタン(2×200 ml)で抽出した。2回目の抽出時に、水層および有機層から大量の黄色固体が析出した。固体をろ別し、生成物であることが分かった。生成物を有機層と合わせ、減圧下で乾燥して、生成物を黄色固体として得た(3.1 g, 52%)。
段階3: カルバミン酸tert-ブチル(1-(4-(2-(2-アミノピリジン-3-イル)-5-(3-モルホリノフェニル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イル)フェニル)シクロブチル)
カルバミン酸tert-ブチル(1-(4-(2-(2-アミノピリジン-3-イル)-5-クロロ-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イル)フェニル)シクロブチル) (1当量)を、それぞれ10 mL/mmolのエタノールおよびトルエンの混合物に懸濁させた。NaHCO3飽和溶液を添加した(3 mL/mmol)。反応混合物を窒素で30分間脱気した。Pd(PPh3)4 (0.05当量)およびボロン酸(1.1当量)を反応混合物に添加した。その後、それを窒素下で終夜100℃に加熱した。それを、室温に冷却した後、ジクロロメタン(20 mL/mmol)および水(10 mL/mmol)で希釈した。有機相を分離し、塩水(10 mL/mmol)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。ろ過後、溶媒を真空で除去した。粗残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル中3〜20%のメタノール)により精製した。
段階4: 3-{3-[4-(1-アミノシクロブチル)フェニル]-5-(3-モルホリン-4-イルフェニル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-イル}ピリジン-2-アミン
カルバミン酸塩(1当量)をメタノールに溶解した。HCl (20当量, ジオキサン中4 M)を添加し、室温で2〜4時間撹拌した。減圧下での溶液の濃縮により、脱保護されたアミン(スキーム2に示される構造7)を塩酸塩として得、これをさらに精製することなく次の段階に使用した。
実施例3: N-[1-(3-{3-[4-(1-アミノシクロブチル)フェニル]-2-(2-アミノピリジン-3-イル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-イル}フェニル)ピペリジン-4-イル]-N-メチルアセトアミド三塩酸塩(化合物3)の合成
段階1: N-メチル-N-{1-[3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ピペリジン-4-イル}アセトアミドの合成
N-[1-(3-ブロモフェニル)ピペリジン-4-イル]-N-メチルアセトアミド(68 mg, 0.217 mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(66 mg, 0.260 mmol)、Pd(dppf)Cl
2・DCM (9 mg, 0.0109 mmol)および酢酸カリウム(64 mg, 0.651 mmol)のジオキサン(3 mL)混合物を窒素下80℃で13時間加熱した。室温に冷却した後、混合物をEtOAcで希釈し、セライトパッドでろ過した。合わせたろ液および洗浄液を濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/AcOEt = 35:65→0:100)により精製してN-メチル-N-(1-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)ピペリジン-4-イル)アセトアミド(61 mg, 78%)を白色固体として得た。
段階2: カップリング
カルバミン酸tert-ブチル(1-{4-[2-(2-アミノピリジン-3-イル)-5-クロロ-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イル]フェニル}シクロブチル) (56 mg, 0.113 mmol)、N-メチル-N-{1-[3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ピペリジン-4-イル}アセトアミド(61 mg, 0.170 mmol)、ビス(ジ-tert-ブチル(4-ジメチルアミノフェニル)ホスフィン)ジクロロパラジウム(II) (8 mg, 0.0113 mmol)および2 M Na2CO3 aq. (0.062 mL, 0.124 mmol)のDMF (2.5 mL)混合物をマイクロ波(1時間160℃)で処理した。混合物をAcOEtで希釈し、次に水(×3)、塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いでろ過した。ろ液を濃縮し、残留物を分取薄層クロマトグラフィー(AcOEt/MeOH = 20:1)により精製し、分取薄層クロマトグラフィー(CH2Cl2/MeOH = 20:1×2)によりさらに精製して、カルバミン酸tert-ブチル(1-(4-(2-(2-アミノピリジン-3-イル)-5-(3-(4-(N-メチルアセトアミド)ピペリジン-1-イル)フェニル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イル)フェニル)シクロブチル) (14 mg, 18%)を黄色固体として得た。
段落3: 脱保護
MeOH (1 mL)中のカルバミン酸tert-ブチル(1-(4-(2-(2-アミノピリジン-3-イル)-5-(3-(4-(N-メチルアセトアミド)ピペリジン-1-イル)フェニル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イル)フェニル)シクロブチル) (14 mg, 0.0204 mmol)に、4 N HCl-ジオキサン(3 mL)を添加し、室温で14時間撹拌した。混合物を濃縮して、N-[1-(3-{3-[4-(1-アミノシクロブチル)フェニル]-2-(2-アミノピリジン-3-イル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-イル}フェニル)ピペリジン-4-イル]-N-メチルアセトアミド三塩酸塩(19 mg, 定量的)を淡黄色固体として得た。
実施例4: (R)-6-(2-フルオロフェニル)-N-(3-(2-(2-メトキシエチルアミノ)エチル)フェニル)-5,6-ジヒドロベンゾ[h]キナゾリン-2-アミン(化合物4)塩酸塩
一般手順6に記述されているようにメタンスルホン酸(R)-4-(6-(2-フルオロフェニル)-5,6-ジヒドロベンゾ[h]キナゾリン-2-イルアミノ)フェネチル、2-メトキシエタンアミンおよびトリエチルアミンを用いることにより化合物を合成して、所望の生成物を得た。M.p. = 173〜175℃。
実施例5: 不活性型AKTαスクリーニングアッセイ法:
AKT1活性は、GSK3由来ビオチン化ペプチド基質、クロスタイド(ビオチン-GRPRTSSFAEG)およびAlphaScreen(商標) (Amplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay)技術を用いてアッセイした。AKT1活性化は、活性化キナーゼPDK1およびMAPKAPK2、脂質小胞およびATPの添加によって達成された。ペプチドリン酸化の程度は、ホスホ-AKT基質抗体およびプロテインAに結合したアクセプタビーズ、およびペプチド上のビオチンに結合するストレプトアビジンに結合したドナービーズを用いて判定された。ドナービーズの励起により周囲酸素が励起された一重項酸素に転換され、アクセプタビーズに近接してアクセプタビーズと反応し、シグナル増幅を生じた。
試験阻害剤および対照((S)-1-((5-(3-メチル-1H-インダゾール-5-イル)ピリジン-3-イル)オキシ)-3-フェニルプロパン-2-アミン、1-(1-(4-(7-フェニル-1H-イミダゾ[4,5-g]キノキサリン-6-イル)ベンジル)ピペリジン-4-イル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2(3H)-オンおよび8-(4-(1-アミノシクロブチル)フェニル)-9-フェニル-[1,2,4]トリアゾロ[3,4-f][1,6]ナフチリジン-3(2H)-オン)を10% DMSO中で所望の終濃度の10倍に調製し、2.5 μLの容量で反応プレート(Corning 96-ウェル半領域の固相白色非結合表面プレート)の各ウェルに添加した。全長不活性型AKT1をアッセイ緩衝液(50 mM Tris, pH 8.0、0.02 mg/mL BSA、10 mM MgCl2、1 mM EGTA、10%グリセロール、0.2 mM Na3VO4、1 mM DTT、0.1 mM β-グリセロリン酸および0.2 mM NaF)中で希釈し、反応25 μL中8 nM (AKT1)の終濃度に向けて容量17.5 μLで各ウェルに添加した。室温で20分のプレインキュベーションの後、60 nMビオチン化クロスタイド、0.1 nM PDK1、0.7 nM MK2、5.5 μM DOPS、5.5 μM DOPC、0.5 μM PtdIns(3,4,5)P3および50 μM ATPの終濃度に向けてビオチン化クロスタイド、PDK1、MAPKAPK2、DOPS/DOPC、PtdIns(3,4,5)P3およびATPを含有するアッセイ緩衝液中で希釈された活性化混合物5 μLの添加によりキナーゼ反応を開始した。プレートを室温で30分間インキュベートし、その後、10 mM EDTA、500 ng/ウェルのAlphaScreen(商標)ストレプトアビジンドナービーズおよびプロテインAアクセプタビーズの両方、ならびに最終希釈350分の1のホスホ-AKT基質抗体の終濃度に向けてEDTA、AlphaScreen(商標)ストレプトアビジンドナービーズおよびプロテインAアクセプタビーズ、ならびにホスホ-AKT基質抗体を含有するアッセイ緩衝液中で調製された停止/検出混合物10 μLの添加により暗所中で停止させた。アッセイプレートを暗所中、室温で90分間インキュベートし、プレートをPerkin Elmer Envision Multilabelプレートリーダー(励起波長: 640 nm、発光波長: 570 nm)で読み取った。
反応:
2.5 μL 10% DMSO中10×AKT阻害剤
17.5 μL 不活性型AKTまたはブランク用緩衝液
室温で20分のプレインキュベーション
5 μL 反応混合物(5×ATP、5×基質、5×PDK1、5×MK2および5×脂質小胞混合物)
室温で30分のインキュベーション
10 μL 検出緩衝液
室温で90分のインキュベーション
検出(励起: 640 nm、発光: 570 nm)
Envision機器設定:
機器: Perkin Elmer Envision
プレート: 96ウェル
プログラム名:
励起: Ex Top
鏡: General Dual - Slot 2
励起フィルタ: CFP430 Ex. Slot 2
発光フィルタ: Emission 579 -Em slot 2
2次発光フィルタ: なし
測定高さ(mm): 3.8
励起光(%): 1
検出器ゲイン: 1
2次検出器ゲイン: 0
# フラッシュ: 10
# フラッシュ/AD (Flashed/AD): 1
参照シグナル: 383722
ADゲイン: 4
参照励起(%): 100
実施例6: 不活性型AKT HTRFアッセイ法:
CisBio KinEASE(商標) HTRFアッセイ技術を用いてAKT1活性をアッセイした。この技術では、独自のビオチン化ペプチド基質(STKS3)、ストレプトアビジン標識XL665抗体、およびSTK抗体-Eu3+-クリプテートを利用する。AKT1活性化は、活性化キナーゼPDK1およびMAPKAPK2、脂質小胞、ならびにATPの添加によって達成された。STKS3ビオチン化ペプチドリン酸化の程度は、ホスホ-STK抗体-Eu3+-クリプテートおよびストレプトアビジン標識XL665抗体を用いて測定した。XL665は、SKS3リン酸化レベルに比例するTR-FRETシグナルを生じるEu3+-クリプテートによって刺激された。
試験阻害剤および対照((S)-1-((5-(3-メチル-1H-インダゾール-5-イル)ピリジン-3-イル)オキシ)-3-フェニルプロパン-2-アミン、1-(1-(4-(7-フェニル-1H-イミダゾ[4,5-g]キノキサリン-6-イル)ベンジル)ピペリジン-4-イル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2(3H)-オン、および8-(4-(1-アミノシクロブチル)フェニル)-9-フェニル-[1,2,4]トリアゾロ[3,4-f][1,6]ナフチリジン-3(2H)-オン)を10% DMSO中で所望の終濃度の10倍に調製し、2.5 μlの容量で反応プレート(Corning 96-ウェル半領域の固相黒色非結合表面プレート)の各ウェルに添加した。全長不活性型AKT1、AKT2およびAKT3をアッセイ緩衝液(50 mM Tris, pH 8.0、0.02 mg/ml BSA、10 mM MgCl2、1 mM EGTA、10%グリセロール、0.2 mM Na3VO4および1 mM DTT)中で希釈し、反応25 μl中8 nM (AKT1)、20 nM (AKT2)または3 nM (AKT3)の終濃度に向けて容量17.5 μlで各ウェルに添加した。室温で20分のプレインキュベーションの後、150 nMビオチン化STKS3, 1 nM (AKT1), 2.5 nM (AKT2)もしくは0.4 nM (AKT3)、PDK1, 0.8 nM (AKT1), 2 nM (AKT2)もしくは0.3 nM (AKT3)、MK2、5.5 μM DOPS、5.5 μM DOPC、0.5 μM PtdIns(3,4,5)P3および50 μM ATPの終濃度に向けてビオチン化STKS3、PDK1、MAPKAPK2、DOPS/DOPC、PtdIns(3,4,5)P3およびATPを含有するアッセイ緩衝液中で希釈された活性化混合物5 μlの添加によりキナーゼ反応を開始した。プレートを室温で30分間インキュベートし、その後、それぞれ192分の1および500分の1の希釈率で、ホスホ-STK抗体-Eu3+-クリプテートおよびストレプトアビジン標識XL665抗体を含有するHTRF検出緩衝液25 μlの添加により停止させた。ホスホ-STK抗体-Eu3+-クリプテートおよびストレプトアビジン標識XL665抗体の最終アッセイ希釈率は、それぞれ384分の1および1,000分の1であった。アッセイプレートを室温で60分間インキュベートし、プレートをPerkin Elmer Envision Multilabelプレートリーダー(励起: 320 nm、発光I: 665 nm、発光II: 615 nm)で読み取った。
反応:
2.5 μl 10% DMSO中10×AKT阻害剤
17.5 μl 不活性型AKTまたはブランク用緩衝液
室温で20分のプレインキュベーション
5 μl 反応混合物(5×ATP、5×基質、5×PDK1、5×MK2および5×脂質小胞混合物)
室温で30分のインキュベーション
25 μl 検出緩衝液
室温で60分のインキュベーション
検出(励起: 320 nm、発光I: 665 nm、発光II: 615 nm)
実施例7: MTSアッセイ法
細胞増殖分析
細胞生存は、MTSアッセイ法によって判定した。簡単に説明すると、細胞を96ウェルプレートに1ウェルあたり細胞2,000〜15,000個でプレーティングし、完全増殖培地中で24時間培養した後、さまざまな薬物および薬物の組み合わせで72時間処理した。MTSおよびPMS試薬を添加し、4時間インキュベートした後、490 nmでマイクロプレートリーダーを用い細胞生存の評価を行った。データを未処理対照に対して標準化し、Microsoft Excelで分析した。
表1は、化合物1、化合物2および化合物3の物理的特性を示す。
表2は、化合物1、化合物2および化合物3のAKTキナーゼ阻害活性を示す。
表3は、化合物1のMTS活性を示す。
組み合わせ研究のために、細胞を終夜1ウェルあたり最適数の細胞で96ウェル組織培養プレートに播種し、その後、化合物1の連続希釈液と化合物4の連続希釈液とで処理した。両方の薬剤の開始濃度は、単一薬剤のGI50に基づいて判定された。処理した細胞を5% CO2中37℃で72時間インキュベートした。
20対1の比率のMTS (3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル(sulfphenyl))-2Hテトラゾリウム))試薬(18.4 mg/ml)およびPMS (フェナジンメトサルフェート) (0.92 mg/ml)の混合物30マイクロリットルを各ウェルに添加し、プレートを5% CO2中37℃で4時間インキュベートした。吸光度は、マイクロプレート(micromicroplate)リーダーを用いて490 nMで測定した。
組み合わせ研究のために、Chou-Talalay法を用いて組み合わせ指数(CI)を判定した。相乗的: CI≦0.85; 相加的: CI≧0.85および≦1.2; ならびに拮抗的: CI≧1.2。
卵巣、子宮内膜、CRC、膀胱、三重陰性乳がん、CNS、リンパ腫/白血病、肺、および前立腺の13種のがんタイプに相当する45種の細胞株を化合物1および化合物4の組み合わせについて試験した。化合物1および化合物4は組み合わせ可能であり、相乗的24% (11/45); 相加的62% (28/45); および拮抗的わずか13% (6/45)を示す。卵巣がんおよび子宮内膜がんは、それぞれ50% (3/6)および67% (4/6)の高い相乗作用率を有する。さらに、三重陰性乳がん細胞株では33% (2/6)の相乗作用がある。
結果を表4に示す。
実施例8: プロテウス症候群
本発明の化合物は、単独でまたは組み合わせで、プロテウス症候群の処置において利用することができる。
図1は、さまざまな投与量の化合物1および血清の存在下でのプロテウス細胞の生存性を示す。細胞をプレーティングし、終夜付着させた。化合物1を含有する標準培地を細胞に再補充し、次いで細胞を72時間後に収集した。プロテウス症候群患者由来の変異陽性および変異陰性の細胞株(図1では75.2 pos 1、pos 2、neg 1、neg 2; 53.3 pos 1、pos 2、neg 1、neg 2と称する)。1および2は実験を指す(同じ細胞株を2回試験した)。F6B posおよびH4A陰性は、患者134.3細胞株由来の単一細胞クローンである。PromegaのCellTiterGlo細胞生存アッセイ法を用いて生存性を測定した。各データ点は3ウェル(技術的複製)の平均であり、各線は生物学的複製である。変異陰性細胞は全て、2.5 μMまで高い生存性を有する。
図2は、さまざまな投与量の化合物1および低血清の存在下でのプロテウス細胞の生存性を示す。細胞をプレーティングし、終夜付着させた。細胞を洗浄し、24時間0.5%血清培地を細胞に再補充した。次いで、細胞を洗浄し、化合物1を含有する0.5%培地を細胞に再補充し、72時間後に細胞を収集した。
図3は、さまざまな投与量の化合物1および血清の存在下でのPIK3CA細胞の生存性を示す。細胞をプレーティングし、終夜付着させた。化合物1を含有する標準培地を細胞に再補充し、次いで細胞を72時間後に収集した。PIK3CA患者由来の変異陽性細胞株(図3では109.3 posおよび110.3 posと称する)ならびに非OG対照個体由来の変異陰性細胞株(図3では95.1 negおよび95.2 negと称する)。変異陽性細胞は、1.25 uMまでは、感受性がより高い。
図4は、さまざまな投与量の化合物1および低血清の存在下でのPIK3CA細胞の生存性を示す。細胞をプレーティングし、終夜付着させた。細胞を洗浄し、24時間0.5%血清培地を細胞に再補充した。次いで、細胞を洗浄し、化合物1を含有する0.5%培地を細胞に再補充し、72時間後に細胞を収集した。結果から、変異陽性細胞は対照細胞よりも感受性が高いことが示される。
図5Aおよび5Bは、さまざまな投与量の化合物1 (図5A)またはエベロリムス(図5B)および血清の存在下または非存在下でのプロテウス単細胞クローン(A6B AKT1 p.E17K陽性細胞およびE8F9A変異陰性細胞)の生存性を示す。細胞をプレーティングし、終夜付着させた。細胞を洗浄し、24時間0.5%血清培地を細胞に再補充した。次いで、細胞を洗浄し、化合物1またはエベロリムスを含有する標準培地または0.5%培地を細胞に再補充し、72時間後に収集した。結果から、変異陽性細胞は対照細胞よりも感受性が高いことが示される。
図6は、さまざまな投与量の化合物1および血清の存在下または非存在下での、プロテウス単細胞クローン(A6B AKT1 p.E17K陽性細胞およびE8F9A変異陰性細胞)におけるAKT1のリン酸化状態を示す。細胞をプレーティングし、終夜付着させた。細胞を洗浄し、24時間0.5%血清培地を細胞に再補充した。次いで、細胞を洗浄し、化合物1を含有する標準培地または0.5%培地を24時間細胞に再補充した。次いで、細胞溶解物をAKT1リン酸化状態について分析した。結果から、用量の増加に伴うリン酸化の減少が示される; しかしながら野生型細胞は、最初に血清の非存在下で最小のpAKTシグナルを有する。
図7Aおよび7Bは、さまざまな投与量の化合物1および血清の存在下(図7B)または非存在下(図7A)での、プロテウス単細胞クローン(A6B AKT1 p.E17K陽性細胞およびE8F9A変異陰性細胞)におけるS6のリン酸化状態を示す。細胞をプレーティングし、終夜付着させた。細胞を洗浄し、24時間0.5%血清培地を細胞に再補充した。次いで、細胞を洗浄し、化合物1を含有する標準培地または0.5%培地を24時間細胞に再補充した。次いで、細胞溶解物をS6リン酸化状態について分析した。結果から、化合物1は、無血清培地中で増殖した細胞においてpS6レベルに影響を及ぼすように思われず、正常培地中で増殖した細胞においてわずかな影響しか有しないことが示される。
図8Aおよび8Bは、さまざまな投与量の化合物1および血清の存在下(図8A)または非存在下(図8B)での、異なるAKT1 p.E17Kを有する単一患者由来の4つの異なるプロテウス細胞株におけるAKT1のリン酸化状態を示す。細胞をプレーティングし、終夜付着させた。細胞を洗浄し、24時間0.5%血清培地を細胞に再補充した。次いで、細胞を洗浄し、化合物1を含有する標準培地または0.5%培地を24時間細胞に再補充した。次いで、細胞溶解物をAKT1リン酸化状態について分析した。結果から、高レベルのAKT1 p.E17Kを有する細胞株において特に明らかである、用量の増加に伴うリン酸化の減少が示される。
図9Aおよび9Bは、さまざまな投与量の化合物1および血清の存在下(図9B)または非存在下(図9A)での、異なるAKT1 p.E17Kを有する単一患者由来の4つの異なるプロテウス細胞株におけるS6のリン酸化状態を示す。細胞をプレーティングし、終夜付着させた。細胞を洗浄し、24時間0.5%血清培地を細胞に再補充した。次いで、細胞を洗浄し、化合物1を含有する標準培地または0.5%培地を24時間細胞に再補充した。次いで、細胞溶解物をS6リン酸化状態について分析した。結果から、これらの細胞株でのpS6に対する化合物1の特異的効果は全く示されない。
図10は、さまざまな投与量の化合物1および血清の存在下または非存在下での、PIK3CA p.H1047R変異を有する患者から得た細胞(PS109.3)または対照細胞(PS95.2)のAKT1のリン酸化状態を示す。細胞をプレーティングし、終夜付着させた。細胞を洗浄し、24時間0.5%血清培地を細胞に再補充した。次いで、細胞を洗浄し、化合物1を含有する標準培地または0.5%培地を24時間細胞に再補充した。次いで、細胞溶解物をAKTリン酸化状態について分析した。結果から、用量の増加に伴うリン酸化の減少が示される。
図11Aおよび11Bは、さまざまな投与量の化合物1および血清の存在下(図11B)または非存在下(図11A)での、PIK3CA p.H1047R変異を有する患者から得た細胞(PS109.3)または対照細胞(PS95.2)のS6のリン酸化状態を示す。細胞をプレーティングし、終夜付着させた。細胞を洗浄し、24時間0.5%血清培地を細胞に再補充した。次いで、細胞を洗浄し、化合物1を含有する標準培地または0.5%培地を24時間細胞に再補充した。次いで、細胞溶解物をS6リン酸化状態について分析した。結果から、化合物1は、血清有りでも無しでも変異陽性細胞に対して適度な影響を有することが示される。
図12は、さまざまな投与量の化合物1および血清の存在下または非存在下での、PIK3CA p.H1047L変異を有する患者から得た細胞(PS129.3, G5A)または対照細胞(PS75.1)のAKT1のリン酸化状態を示す。細胞をプレーティングし、終夜付着させた。細胞を洗浄し、24時間0.5%血清培地を細胞に再補充した。次いで、細胞を洗浄し、化合物1を含有する標準培地または0.5%培地を24時間細胞に再補充した。次いで、細胞溶解物をAKTリン酸化状態について分析した。結果から、p.H105R変異細胞と同じプロファイルが示される。
図13Aおよび13Bは、さまざまな投与量の化合物1および血清の存在下(図13B)または非存在下(図13A)での、PIK3CA p.H1047L変異を有する患者から得た細胞(PS129.3, G5A)または対照細胞(PS75.1)のS6のリン酸化状態を示す。細胞をプレーティングし、終夜付着させた。細胞を洗浄し、24時間0.5%血清培地を細胞に再補充した。次いで、細胞を洗浄し、化合物1を含有する標準培地または0.5%培地を24時間細胞に再補充した。次いで、細胞溶解物をS6リン酸化状態について分析した。結果から、化合物1は、血清有りでも無しでも変異陽性細胞に対して適度な影響を有することが示される。
図14A、14B、14Cおよび14Dは、125 nMの化合物1および血清の存在下(図14Cおよび14D)または非存在下(図14Aおよび14B)での、プロテウス単細胞クローン(F6B AKT1 p.E17K陽性細胞およびH4A変異陰性細胞)におけるAKT1のリン酸化状態を示す。細胞をプレーティングし、終夜付着させた。細胞を洗浄し、24時間0.5%血清培地を細胞に再補充した。次いで、細胞を洗浄し、125 nMの化合物1を含有する標準培地または0.5%血清培地を細胞に再補充した。表示した時点で細胞を収集し、AKT1リン酸化状態について溶解物を分析した。
図15は、さまざまな投与量のエベロリムスおよび血清の存在下または非存在下での、プロテウス単細胞クローン(F6B AKT1 p.E17K陽性細胞およびH4A変異陰性細胞)におけるAKT1のリン酸化状態を示す。細胞をプレーティングし、終夜付着させた。細胞を洗浄し、24時間0.5%血清培地を細胞に再補充した。次いで、細胞を洗浄し、さまざまな投与量のエベロリムスを含有する標準培地または0.5%血清培地を細胞に再補充した。細胞溶解物をAKT1リン酸化状態について分析した。結果から、エベロリムスは無血清条件で変異細胞においてpAKT/AKT比を低下させるが、無血清条件で増殖された変異細胞においてまたは変異陰性細胞においてその比に影響を与えないかまたはその比を増加させることが示される。
図16Aおよび16Bは、さまざまな投与量のエベロリムスおよび血清の存在下(図16B)または非存在下(図16A)での、プロテウス単細胞クローン(F6B AKT1 p.E17K陽性細胞およびH4A変異陰性細胞)におけるS6のリン酸化状態を示す。細胞をプレーティングし、終夜付着させた。細胞を洗浄し、24時間0.5%血清培地を細胞に再補充した。次いで、細胞を洗浄し、さまざまな投与量のエベロリムスを含有する標準培地または0.5%血清培地を細胞に再補充した。細胞溶解物をS6リン酸化状態について分析した。結果から、エベロリムスは変異陽性および変異陰性のプロテウス単細胞クローンの両方においてpS6レベルを大きく低下させることが示される。
図17は、さまざまな投与量の化合物1による処理後のKU-19-19 (E17K)変異膀胱がん細胞およびAN3CA子宮内膜がん細胞におけるAKTのリン酸化を示す。具体的には、さまざまな投与量の化合物1を含む標準培地を細胞に2時間補充した。タンパク質を以下の抗体: pAKT(T473) (CST#4060); pAKT(S308) (CST#2965); AKT1 (CST#2967); AKT(pan) (CST#2920); pPRAS40(T246) (CST#2997)で検出した。結果から、化合物1はKU-19-19細胞およびAN3CA細胞においてpAKTおよびpPRAS40 (40 kDaのリン酸化プロリンリッチAKT基質)を阻害することが示される。
図18は、さまざまな投与量の化合物1、MK-2206 (アロステリックAKT阻害剤)およびGDC0068 (選択のATP競合性pan-AKT阻害剤)による処理後のKU-19-19 (E17K)変異膀胱がん細胞におけるAKTのリン酸化を示す。具体的には、さまざまな投与量の化合物1を含む標準培地を細胞に2時間補充した。タンパク質を以下の抗体: pAKT(T473) (CST#4060); AKT(pan) (CST#2920); pPRAS40(T246) (CST#2997); pERK (T202/Y204) (CST#4370)で検出した。結果から、GDC0068ではなく、化合物1およびMK-2206はKU-19-19細胞においてpAKTおよびpPRAS40を阻害することが示される。
実施例9: 用量漸増試験
進行性固形腫瘍または再発性悪性リンパ腫を有する対象82人を、用量漸増試験において化合物1で処置した。重度に前処置されたリンパ腫対象での1つの部分的応答を含めて、進行性腫瘍で単剤活性の予備的シグナルが観察された。部分的応答、軽度の応答および安定した疾患を含めて、全体の疾患制御率は、34.1%であった。関連のあるバイオマーカーの発現レベルの低減は、処置後に認められた。
がん患者における管理可能な安全性プロファイルは、前臨床モデルと、および他のAKT阻害剤と一致して定義された。患者における薬物曝露は、用量依存的に増加することが示された。連続投薬(連日60ミリグラム)、間欠投薬(1週間おきに連日200ミリグラム)および毎週投薬(週1回300ミリグラム)のスケジュールについて、最大許容用量(MTD)および推奨される第2相用量が確立された。