発明の詳細な説明
本発明は、新規のピロロキノリニル−ピロリジン−2,5−ジオン化合物、上記化合物を作製するための合成法、これらを含有する薬学的組成物、および化合物の様々な使用を提供する。
1.ピロロキノリニル−ピロリジン−2,5−ジオン化合物
本発明は、部分的に、式Ia、Ib、IcまたはIdの化合物、および式Ia、Ib、IcもしくはIdの化合物、
またはその薬学的に受容可能な塩もしくはエステルを調製する方法を提供し、式中、
R1およびR2は、独立に、水素または−OR3であり、
R3は、独立に、水素またはグルクロニドであり、
X1、X2およびX3は、−CH2−、−CH(OH)−、および−C(O)−からなる群から選択され、X1、X2またはX3の1つのみは、−CH2−と異なってもよいが、
ただし、X1=X2=X3=−CH2−である場合、R1は、R2と異なる。
ラセミ混合物の結晶形態、および個々の異性体の結晶形態を含む、混合された、または純粋なもしくは実質的に純粋な形態の、本発明の化合物の全ての形態が想定される。本発明は非常に特に、特定の活性を有する単離した光学異性体を包含する。ラセミ体は、物理的方法、例えば、ジアステレオマー誘導体の分離または結晶化、キラルカラムクロマトグラフィーまたは超臨界流体クロマトグラフィーによる分離によって分割することができる。個々の光学異性体は、ラセミ化合物から従来の方法、例えば、光学活性な酸または塩基との塩の形成、それに続く結晶化によって得ることができる。
本発明の特定の化合物は、互変異性形態で存在し得る。化合物の全てのこのような互変異性形態は、特に明記しない限り、本発明の範囲内であるとみなされる。
さらに、結晶の多型性が、存在し得るがこれらだけに限定されない。しかし、任意の結晶形は、単一もしくは結晶形混合物、または無水もしくは水和した結晶形でよい。
用語「結晶の多型」または「多型」または「結晶形」とは、化合物(またはその塩もしくは溶媒和物)が異なる結晶充填配置で結晶化し得、これらの全てが同じ元素組成を有する、結晶構造を意味する。異なる結晶形は通常、異なるX線回折パターン、赤外線スペクトル、融点、密度、結晶の形状、光学的性質、電気的性質、安定性および溶解度を有する。結晶化溶媒、結晶化速度、保存温度、および他の要因が、1つの結晶形を優勢にし得る。化合物の結晶の多型は、異なる条件下での結晶化により調製され得る。
さらに、本発明の化合物(例えば、化合物の塩)は、水和形態もしくは非水和(無水)形態のいずれかで、または他の溶媒分子との溶媒和物として、存在し得る。水和物の非限定的な例としては、一水和物、二水和物などが挙げられる。溶媒和物の非限定的な例としては、エタノール溶媒和物、アセトン溶媒和物などが挙げられる。
本明細書中で使用される場合、「アルキル」、「C1、C2、C3、C4、C5またはC6アルキル」または「C1〜C6アルキル」は、C1、C2、C3、C4、C5またはC6の、直鎖(線状)飽和脂肪族炭化水素基、およびC3、C4、C5またはC6の、分枝鎖飽和脂肪族炭化水素基を包含することを意図される。例えば、C1〜C6アルキルは、C1、C2、C3、C4、C5およびC6のアルキル基を包含することを意図される。アルキルの例としては、1個〜6個の炭素原子を有する部分が挙げられ、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、s−ペンチルまたはn−ヘキシルであるが、これらに限定されない。
特定の実施形態において、直鎖または分枝鎖のアルキルは、6個以下の炭素原子を有し(例えば、直鎖についてはC1〜C6、分枝鎖についてはC3〜C6)、そして別の実施形態において、直鎖または分枝鎖のアルキルは、4個以下の炭素原子を有する。
「ヘテロアルキル」基とは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子またはリン原子が、1個以上の炭化水素骨格炭素原子を置き換わっている、上で定義されたようなアルキル基である。
本明細書中で使用される場合、用語「シクロアルキル」、「C3、C4、C5、C6、C7もしくはC8のシクロアルキル」または「C3〜C8シクロアルキル」は、3個〜8個の炭素原子をその環構造内に有する、炭化水素環を包含することを意図される。1つの実施形態において、シクロアルキル基は、その環構造中に5個または6個の炭素を有する。
用語「置換(された)アルキル」とは、置換基が、その炭化水素骨格の1個以上の炭素上の1個以上の水素原子と置き換わっている、アルキル部分をいう。このような置換基としては、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノが挙げられる)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドが挙げられる)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分が挙げられ得る。シクロアルキルは、例えば上記置換基で、さらに置換され得る。「アルキルアリール」部分または「アラルキル」部分は、アリールで置換されたアルキル(例えば、フェニルメチル(ベンジル))である。
炭素の数が他に特定されない限り、「低級アルキル」とは、その骨格構造中に、1個〜6個、または別の実施形態においては、1個〜4個の炭素原子を有する、上で定義されたようなアルキル基を包含する.「低級アルケニル」および「低級アルキニル」は、例えば、2個〜6個、または2個〜4個の炭素原子の鎖長を有する。
「アルケニル」とは、長さおよび可能な置換が上記アルキルと類似であるが、少なくとも1つの二重結合を含む、不飽和脂肪族基を包含する。例えば、用語「アルケニル」は、直鎖アルケニル基(例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル)、分枝鎖アルケニル基、シクロアルケニル(例えば、脂環式)基(例えば、シクロプロペニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル)、アルキルまたはアルケニルで置換されたシクロアルケニル基、およびシクロアルキルまたはシクロアルケニルで置換されたアルケニル基を包含する。特定の実施形態において、直鎖または分枝鎖のアルケニル基は、その骨格中に6個以下の炭素原子を有する(例えば、直鎖についてはC2〜C6、分枝鎖についてはC3〜C6)。同様に、シクロアルケニル基は、その環構造中に4個〜8個の炭素原子を有し得、そして1つの実施形態において、シクロアルケニル基は、その環構造中に5個または6個の炭素原子を有する。用語「C2〜C6」は、2個〜6個の炭素原子を含むアルケニル基を包含する。用語「C3〜C6」は、3個〜6個の炭素原子を含むアルケニル基を包含する。
「ヘテロアルケニル」とは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子またはリン原子が、1個以上の炭化水素骨格炭素と置き換わっている、上で定義されたようなアルケニル基を包含する。
用語「置換(された)アルケニル」とは、置換基が、1個以上の炭化水素骨格炭素原子上の1個以上の水素原子と置き換わっている、アルケニル部分をいう。このような置換基としては、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノが挙げられる)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドが挙げられる)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分が挙げられ得る。
「アルキニル」とは、長さおよび可能な置換が上記アルキルと類似であるが、少なくとも1個の三重結合を含む、不飽和脂肪族基を包含する。例えば、「アルキニル」は、直鎖アルキニル基(例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル)、分枝鎖アルキニル基、およびシクロアルキルまたはシクロアルケニルで置換されたアルキニル基を包含する。特定の実施形態において、直鎖または分枝鎖のアルキニル基は、その骨格中に6個以下の炭素原子を有する(例えば、直鎖についてはC2〜C6、分枝鎖についてはC3〜C6)。用語「C2〜C6」は、2個〜6個の炭素原子を含むアルキニル基を包含する。用語「C3〜C6」は、3個〜6個の炭素原子を含むアルキニル基を包含する。
「ヘテロアルキニル」は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子またはリン原子が、1個以上の炭化水素骨格炭素と置き換わっている、本明細書中で定義されるようなアルキニル基を包含する。
用語「置換(された)アルキニル」とは、置換基が、1個以上の炭化水素骨格炭素原子上の1個以上の水素原子と置き換わっている、アルキニル部分をいう。このような置換基としては、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノが挙げられる)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドが挙げられる)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分が挙げられ得る。
「アリール」とは、芳香族性を有する(「共役」を含む)基、または少なくとも1個の芳香環を有する多環式系を包含する。例としては、フェニル、ベンジルなどが挙げられる。
「ヘテロアリール」基とは、その環構造中に1個〜4個のヘテロ原子を有する、上で定義されたようなアリール基であり、そして「アリール複素環」または「ヘテロ芳香族」ともまた称され得る。本明細書中で使用される場合、用語「ヘテロアリール」は、安定な5員、6員、または7員の単環式、あるいは7員、8員、9員、10員、11員または12員の二環式の芳香族複素環式環を包含することを意図され、炭素原子と、1個以上のヘテロ原子(例えば、1個、または1個〜2個、または1個〜3個、または1個〜4個、または1個〜5個、または1個〜6個のヘテロ原子、あるいは1個、2個、3個、4個、5個、または6個のヘテロ原子(このヘテロ原子は、窒素、酸素および硫黄からなる群より独立して選択される))からなる。この窒素原子は、置換されていても置換されていなくてもよい(すなわち、NまたはNRであり、ここでRは、Hまたは定義されるような他の置換基である)。窒素ヘテロ原子および硫黄ヘテロ原子は、必要に応じて酸化され得る(すなわち、N→OおよびS(O)pであり、ここでpは1または2である)。芳香族複素環中のS原子およびO原子の総数は、1以下であることに留意されるべきである。
ヘテロアリール基の例としては、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジンなどが挙げられる。
さらに、用語「アリール」および「ヘテロアリール」は、多環式のアリール基およびヘテロアリール基(例えば、三環式、二環式(例えば、ナフタレン、ベンゾオキサゾール、ベンゾジオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、メチレンジオキシフェニル、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、インドール、ベンゾフラン、プリン、ベンゾフラン、デアザプリン、インドリジン))を包含する。
多環式芳香環の場合、これらの環のうちの1つが芳香族であるだけでよいが(例えば、2,3−ジヒドロインドール)これらの環の全てが芳香族であってもよい(例えば、キノリン)。第二の環はまた、縮合していても橋架けしていてもよい。
アリール芳香環またはヘテロアリール芳香環は、1つ以上の環位置において、上記のような置換基(例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル(akynyl)、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アラルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノが挙げられる)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドが挙げられる)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分)で置換され得る。アリール基はまた、多環式系を形成するように、脂環式環または複素環式環(この脂環式環または複素環式環は芳香族ではない)と縮合または橋架けし得る(例えば、テトラリン、メチレンジオキシフェニル)。
本明細書中で使用される場合、「炭素環」または「炭素環式環」は、特定された数の炭素を有する、任意の安定な単環式、二環式または三環式の環(これらのいずれかは、飽和、不飽和、または芳香族であり得る)を包含することを意図される。例えば、C3〜C14炭素環は、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個または14個の炭素原子を有する、単環式、二環式または三環式の環を包含することを意図される。炭素環の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロブテニル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘプテニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、アダマンチル、シクロオクチル、シクロオクテニル、シクロオクタジエニル、フルオレニル、フェニル、ナフチル、インダニル、アダマンチル、およびテトラヒドロナフチルが挙げられるが、これらに限定されない。有橋環もまた、炭素環の定義に含まれ、例えば、[3.3.0]ビシクロオクタン、[4.3.0]ビシクロノナン、[4.4.0]ビシクロデカンおよび[2.2.2]ビシクロオクタンが挙げられる。有橋環は、1個以上の炭素原子が2個の隣接しない炭素原子を繋ぐ場合に、生じる。1つの実施形態において、有橋環は、1個または2個の炭素原子である。橋は常に、単環式環を三環式環に転換させることに留意のこと。環が橋架けされる場合、その環について記載される置換基は、その橋にもまた存在し得る。縮合環(例えば、ナフチル、テトラヒドロナフチル)およびスピロ環もまた、含まれる。
本明細書中で使用される場合、「複素環」は、少なくとも1個の環ヘテロ原子(例えば、N、OまたはS)を含む、任意の環構造(飽和または部分不飽和)を包含する。複素環の例としては、モルホリン、ピロリジン、テトラヒドロチオフェン、ピペリジン、ピペラジン、およびテトラヒドロフランが挙げられるが、これらに限定されない。
複素環式基の例としては、アクリジニル、アゾシニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサゾリニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾテトラゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイミダゾリニル、カルバゾリル、4aH−カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3−b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H−インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H−インドリル、イサチノイル(isatinoyl)、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾール5(4H)−オン、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキシインドリル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4−ピペリドニル、ピペロニル(piperonyl)、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H−ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H−キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、6H−1,2,5−チアジアジニル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル、トリアジニル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,2,5−トリアゾリル、1,3,4−トリアゾリルおよびキサンテニルが挙げられるが、これらに限定されない。
用語「置換(された)」とは、本明細書中で使用される場合、指定される原子上のいずれか1個以上の水素原子が、示される基から選択されるもので置き換えられるが、ただし、その指定された原子の通常の原子価を超えず、そしてその置換が安定な化合物をもたらすことを意味する。置換基がケト(すなわち、=O)である場合、その原子上の2個の水素原子が置き換えられる。ケト置換基は、芳香族部分には存在しない。環二重結合とは、本明細書中で使用される場合、2個の隣接する環原子間に形成される二重結合(例えば、C=C、C=NまたはN=N)である。「安定な化合物」および「安定な構造」とは、反応混合物からの有用な程度の純度への単離、および有効な治療剤への製剤に耐えるのに充分に頑丈な化合物を指すことを意図される。
ある置換基への結合が、環内の2個の原子を接続する結合を横切るように示される場合、このような置換基は、この環内の任意の原子に結合し得る。置換基が所定の式の化合物の残りの部分に結合するのに介する原子を示さずに、その置換基が列挙される場合、このような置換基は、そのような式中の任意の原子を介して結合し得る。置換基および/または可変物の組み合わせが可能であるが、このような組み合わせが安定な化合物をもたらす場合にのみである。
任意の可変物(例えば、R1)がある化合物についての任意の構成要素または式中に1回より多く現れる場合、各々におけるその定義は、他のいずれにおける定義とも無関係である。従って、例えば、ある基が0個〜2個のR1部分で置換されると示される場合、その基は必要に応じて、2個までのR1部分で置換され得、そして各々のR1は、R1の定義とは無関係に選択される。また、置換基および/または可変物の組み合わせが可能であるが、このような組み合わせが安定な化合物をもたらす場合にのみである。
用語「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」は、−OHまたは−O−を有する基を包含する。
本明細書中で使用される場合、「ハロ」または「ハロゲン」とは、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードをいう。用語「過ハロゲン化」とは一般に、全ての水素原子がハロゲン原子で置き換えられている部分をいう。
用語「カルボニル」または「カルボキシ」は、二重結合で酸素原子に接続されている炭素を含む、化合物および部分を包含する。カルボニルを含む部分の例としては、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、アミド、エステル、無水物などが挙げられるが、これらに限定されない。
「アシル」とは、アシル基(−C(O)−)またはカルボニル基を含む部分を包含する。「置換(された)アシル」とは、水素原子のうちの1個以上が、例えば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノが挙げられる)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドが挙げられる)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分により置き換えられている、アシル基を包含する。
「アロイル」とは、カルボニル基に結合したアリール部分またはヘテロ芳香族部分を有する部分を包含する。アロイル基の例としては、フェニルカルボキシ、ナフチルカルボキシなどが挙げられる。
「アルコキシアルキル」、「アルキルアミノアルキル」および「チオアルコキシアルキル」は、酸素原子、窒素原子または硫黄原子が、1個以上の炭化水素骨格炭素原子と置き換わっている、上記のようなアルキル基を包含する。
用語「アルコキシ」または「アルコキシル」は、酸素原子に共有結合している、置換および非置換の、アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基を包含する。アルコキシ基またはアルコキシル基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基およびペントキシ基が挙げられるが、これらに限定されない。置換されたアルコキシ基の例としては、ハロゲン化アルコキシ基が挙げられる。これらのアルコキシ基は、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノが挙げられる)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドが挙げられる)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリールなどの基、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分で置換され得る。ハロゲンで置換されたアルコキシ基の例としては、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロメトキシ、ジクロロメトキシおよびトリクロロメトキシが挙げられるが、これらに限定されない。
用語「エーテル」または「アルコキシ」は、2個の炭素原子またはヘテロ原子に結合した1個の酸素原子を含む、化合物または部分を包含する。例えば、この用語は、「アルコキシアルキル」を包含し、これは、アルキル基に共有結合した酸素原子に共有結合している、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基をいう。
用語「エステル」は、カルボニル基の炭素に結合している酸素原子に結合した炭素またはヘテロ原子を含む、化合物または部分を包含する。用語「エステル」は、アルコキシカルボキシ基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニルなど)を包含する。
用語「チオアルキル」は、硫黄原子と結合したアルキル基を含む、化合物または部分を包含する。チオアルキル基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、カルボキシ酸(carboxyacid)、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノが挙げられる)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドが挙げられる)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分などの基で置換され得る。
用語「チオカルボニル」または「チオカルボキシ」は、二重結合で硫黄原子に結合した炭素を含む、化合物または部分を包含する。
用語「チオエーテル」は、2個の炭素原子またはヘテロ原子に結合した硫黄原子を含む部分を包含する。チオエーテルの例としては、アルカチオアルキル(alkthioalkyl)、アルカチオアルケニルおよびアルカチオアルケニルが挙げられるが、これらに限定されない。用語「アルカチオアルキル」は、アルキル基に結合した硫黄原子に結合した、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を有する部分を包含する。同様に、用語「アルカチオアルケニル」とは、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基が、アルケニル基に共有結合した硫黄原子に結合している部分をいい、そして「アルカチオアルキニル」とはとは、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基が、アルキニル基に共有結合した硫黄原子に結合している部分をいう。
本明細書中で使用される場合、「アミン」または「アミノ」は、窒素原子が少なくとも1個の炭素またはヘテロ原子に共有結合している、部分を包含する。「アルキルアミノ」は、窒素が少なくとも1個のアルキル基に結合している化合物の群を包含する。アルキルアミノ基の例としては、ベンジルアミノ、メチルアミノ、エチルアミノ、フェネチルアミノなどが挙げられる。「ジアルキルアミノ」は、窒素原子が少なくとも2個のさらなるアルキル基に結合している基を包含する。ジアルキルアミノ基の例としては、ジメチルアミノおよびジエチルアミノが挙げられるが、これらに限定されない。「アリールアミノ」および「ジアリールアミノ」は、窒素がそれぞれ少なくとも1個または2個のアリール基に結合している基を包含する。「アルキルアリールアミノ」、「アルキルアミノアリール」または「アリールアミノアルキル」とは、少なくとも1個のアルキル基および少なくとも1個のアリール基に結合しているアミノ基をいう。「アルカアミノアルキル」とは、アルキル基にもまた結合している窒素原子に結合している、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基をいう。「アシルアミノ」は、窒素がアシル基に結合している基を包含する。アシルアミノの例としては、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルバモイル基およびウレイド基が挙げられるが、これらに限定されない。
用語「アミド」または「アミノカルボキシ」は、カルボニル基またはチオカルボニル基の炭素に結合している窒素原子を含む、化合物または部分を包含する。この用語は、「アルカアミノカルボキシ」基を包含し、これは、カルボニル基またはチオカルボニル基の炭素に結合しているアミノ基に結合した、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を含む。これはまた、「アリールアミノカルボキシ」基を包含し、これは、カルボニル基またはチオカルボニル基の炭素に結合しているアミノ基に結合した、アリール部分またはヘテロアリール部分を包含する。用語「アルキルアミノカルボキシ」、「アルケニルアミノカルボキシ」、「アルキニルアミノカルボキシ」および「アリールアミノカルボキシ」は、それぞれアルキル部分、アルケニル部分、アルキニル部分およびアリール部分が、窒素原子に結合しており、この窒素原子が次に、カルボニル基の炭素に結合している、部分を包含する。アミドは、直鎖アルキル、分枝鎖アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたは複素環などの置換基で置換され得る。アミド基の置換基は、さらに置換され得る。
本明細書中で使用される場合、「アルキルリンカー」は、C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖(線状)の飽和脂肪族炭化水素基、およびC3、C4、C5またはC6の分枝鎖飽和脂肪族炭化水素基を包含することを意図される。例えば、C1〜C6アルキルリンカーは、C1、C2、C3、C4、C5およびC6のアルキルリンカー基を包含することを意図される。アルキルリンカーの例としては、1個〜6個の炭素原子を有する部分が挙げられ、例えば、メチル(−CH2−)、エチル(−CH2CH2−)、n−プロピル(−CH2CH2CH2−)、i−プロピル(−CHCH3CH2−)、n−ブチル(−CH2CH2CH2CH2−)、s−ブチル(−CHCH3CH2CH2−)、i−ブチル(−C(CH3)2CH2−)、n−ペンチル(−CH2CH2CH2CH2CH2−)、s−ペンチル(−CHCH3CH2CH2CH2−)またはn−ヘキシル(−CH2CH2CH2CH2CH2CH2−)であるが、これらに限定されない。
窒素を含む本発明の化合物は、酸化剤(例えば、3−クロロペルオキシ安息香酸(m−CPBA)および/または過酸化水素)で処理して、本発明の他の化合物を得ることによって、N−オキシドに転換され得る。従って、示され、特許請求される全ての窒素含有化合物は、原子価および構造により許容される場合、示されるとおりの化合物と、そのN−オキシド誘導体(これは、N→OまたはN+−O−と図示され得る)との両方を包含するとみなされる。さらに、他の例において、本発明の化合物の窒素原子は、N−ヒドロキシ化合物またはN−アルコキシ化合物に転換され得る。例えば、N−ヒドロキシ化合物は、酸化剤(例えば、m−CPBA)による親アミドの酸化によって、調製され得る。示され、特許請求される全ての窒素含有化合物はまた、原子価および構造が許容する場合、示されるとおりの化合物と、そのN−ヒドロキシ誘導体(すなわち、N−OH)およびN−アルコキシ誘導体(すなわち、N−ORであり、ここでRは、置換または非置換の、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルケニル、C1〜C6アルキニル、3員〜14員炭素環または3員〜14員複素環)との両方を網羅するとみなされる。
本明細書において、化合物の構造式は、いくつかの場合において、簡便のために特定の異性体を表すが、本発明は、全ての異性体(例えば、幾何異性体、不斉炭素に基づく光学異性体、立体異性体、互変異性体など)を包含する。さらに、結晶多型が、式により表される化合物について存在し得る。任意の結晶形、結晶形混合物、またはその無水物もしくは水和物が、本発明の範囲内に含まれることが留意される。さらに、本発明の化合物のインビボでの分解により生成される、いわゆる代謝産物は、本発明の範囲内に含まれる。
「異性」とは、同じ分子式を有するが、その原子の結合の順序、または空間内でのその原子の配置が異なる、化合物を意味する。空間内でのその原子の配置が異なる異性体は、「立体異性体」と称される。互いの鏡像ではない立体異性体は、「ジアステレオマー」と称され、そして互いの重なり合わない鏡像である立体異性体は、「エナンチオマー」または時々光学異性体と称される。逆のキラリティーの個々のエナンチオマー形態を等しい量で含む混合物は、「ラセミ混合物」と称される。
4つの同じでない置換基に結合している炭素は、「キラル中心」と称される。
「キラル異性体」とは、少なくとも1個のキラル中心を有する化合物を意味する。1個より多いキラル中心を有する化合物は、個々のジアステレオマーとして、またはジアステレオマーの混合物(「ジアステレオマー混合物」と称される)としてのいずれかで存在し得る。1個のキラル中心が存在する場合、立体異性体は、そのキラル中心の絶対配置(RまたはS)により特徴付けられ得る。絶対配置とは、キラル中心に結合している置換基の空間中での配置をいう。問題のキラル中心に結合している置換基は、Cahn、IngoldおよびPrelogの順位則(Cahnら,Angew.Chem.Inter.Edit.1966,5,385;errata 511;Cahnら,Angew.Chem.1966,78,413;CahnおよびIngold,J.Chem.Soc.1951(London),612;Cahnら,Experientia 1956,12,81;Cahn,J.Chem.Educ.1964,41,116)に従って、順番を付けられる。
「幾何異性体」とは、二重結合での周りでの妨げられた回転の存在に起因するジアステレオマーを意味する。これらの配置は、接頭語シスおよびトランス、またはZおよびEによって、その名称により区別され、これらは、Cahn−Ingold−Prelog則に従って、それらの基がその分子の二重結合の同じ側にあるか反対側にあるかを示す。
さらに、本発明において議論される構造および他の化合物は、その全てのアトロプ異性体を包含する。「アトロプ異性体」とは、2つの異性体の原子が空間中で異なる配置にある、立体異性体の型である。アトロプ異性体は、中心結合の周りでの大きい基の回転の障害によって引き起こされる、制限された回転の存在に起因する。このようなアトロプ異性体は代表的に、混合物として存在するが、クロマトグラフィー技術の近年の進歩の結果として、選択された場合において、2つのアトロプ異性体の混合物を分離することが可能になっている。
「互変異性体」とは、平衡状態で存在する2個以上の構造異性体のうちの1つであり、そして1つの異性形態から別の異性形態へと容易に転換する。この転換は、水素原子の形式的な移動をもたらし、隣接する共役二重結合の切り替えを伴う。互変異性体は、溶液中で互変異性セットの混合物として存在する。固体形態では、通常、一方の互変異性体が優勢である。互変異性が可能である溶液中では、互変異性体の化学平衡に達する。互変異性体の正確な比は、数個の要因(温度、溶媒およびpHが挙げられる)に依存する。互変異性化により相互転換可能な互変異性体の概念は、互変異性と呼ばれる。
可能な互変異性の種々の型のうちで、2つのものが一般的に観察される。ケト−エノール互変異性において、電子と水素原子との同時の移動が起こる。環と鎖との互変異性は、糖鎖分子中のアルデヒド基(−CHO)が同じ分子中のヒドロキシル基(−OH)のうちの1つと反応して、グルコースにより示されるような環状(環形状)の形を与える結果として、生じる。
一般的な互変異性の対は、ケトン−エノール、アミド−ニトリル、ラクタム−ラクチム、複素環式環におけるアミド−イミド酸互変異性(例えば、グアニン、チミンおよびシトシンなどの核酸塩基における)、アミン−エナミン、ならびにエナミン−エナミンである。
本発明の化合物は、様々な互変異性体として図示され得ることが理解されるべきである。化合物が互変異性形態を有する場合、全ての互変異性形態が本発明の範囲内に含まれることが意図され、そしてそれらの化合物の命名は、いずれの互変異性形態も除外しないこともまた、理解されるべきである。
用語「結晶の多型」、「多型」または「結晶形」とは、化合物(またはその塩もしくは溶媒和物)が異なる結晶充填配置で結晶化し得、これらの全てが同じ元素組成を有する、結晶構造を意味する。異なる結晶形は通常、異なるX線回折パターン、赤外線スペクトル、融点、密度、硬度、結晶の形状、光学的性質、電気的性質、安定性および溶解度を有する。結晶化溶媒、結晶化速度、保存温度、および他の要因が、1つの結晶形を優勢にし得る。化合物の結晶の多型は、異なる条件下での結晶化により調製され得る。
さらに、本発明の化合物(例えば、これらの化合物の塩)は、水和形態もしくは非水和(無水)形態のいずれかで、または他の溶媒分子との溶媒和物として、存在し得る。水和物の非限定低的な例としては、一水和物、二水和物などが挙げられる。溶媒和物の非限定的な例としては、エタノール溶媒和物、アセトン溶媒和物などが挙げられる。
「溶媒和物」とは、化学量論量または非化学量論量のいずれかの溶媒を含む、溶媒付加形態を意味する。いくつかの化合物は、一定モル比の溶媒分子を結晶性固相に捕捉し、これによって溶媒和物を形成する傾向を有する。その溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は水和物であり、その溶媒がアルコールである場合、形成される溶媒和物はアルコール和物である。水和物は、1個以上の水分子と、1個の物質分子との組み合わせにより形成され、ここでこの水は、そのH2Oとしての分子状態を保持する。
本明細書中で使用される場合、用語「アナログ」とは、別のものと構造的に類似であるが、組成が(1つの原子の異なる元素の原子による置き換えの場合、または特定の官能基が存在する場合、あるいは1個の官能基の別の官能基による置き換えの場合と同様に)わずかに異なる化合物をいう。従って、アナログとは、参照化合物に対して、機能および外観が類似または匹敵するが、構造または起源が類似も匹敵もしない、化合物である。
本明細書中で定義される場合、用語「誘導体」とは、共通のコア構造を有し、そして本明細書中に記載されるような種々の基で置換されている、化合物をいう。例えば、式Iaにより表される全ての化合物は、置換されたピロロキノリニル−ピロリジン−2,5−ジオン化合物であり、そして式Iaを共通コアとして有する。
用語「バイオ等量式(bioisostere)」とは、原子または原子団の、別の、広範に類似の原子または原子団との交換から生じる化合物をいう。バイオ等量交換の目的は、親化合物と類似の生物学的性質を有する新たな化合物を作製することである。バイオ等量交換は、生理化学ベースであっても位相幾何学ベースであってもよい。カルボン酸のバイオ等量式の例としては、アシルスルホンイミド、テトラゾール、スルホネートおよびホスホネートが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、PataniおよびLaVoie,Chem.Rev.96,3147−3176,1996を参照のこと。
本発明は、本発明の化合物中に存在する原子の全ての同位体を含むことを意図される。同位体としては、同じ原子番号を有するが異なる質量数を有する原子が挙げられる。一般例として限定ではなく、水素の同位体としては、トリチウムおよびジュウテリウムが挙げられ、そして炭素の同位体としては、C−13およびC−14が挙げられる。
(2.ピロロキノリニル−ピロリジン−2,5−ジオン化合物の合成)
本発明は、式Ia、Ib、Ic、またはIdの化合物の合成のための方法を提供する。本発明はまた、以下のスキームおよび実施例に従う、本発明の種々の開示化合物の合成のための詳細な方法を提供する。
本明細書全体にわたって、組成物が、特定の成分を有するか、含むか、または含有するように記載される場合、これらの組成物はまた、記載される成分から本質的になるか、または記載される成分からなることが想定される。同様に、方法またはプロセスが、特定のプロセス工程を有するか、含むか、または包含するように記載される場合、これらのプロセスはまた、記載されるプロセス工程から本質的になるか、または記載されるプロセス工程からなる。さらに、工程の順序または特定の作用を行う順序は、本発明が実行可能なままである限り、重要でないことが理解されるべきである。さらに、2つ以上の工程または操作は、同時に行われてもよい。
本発明の合成プロセスは、広範な種々の官能基を許容し得、従って、種々の置換された出発物質が使用され得る。これらのプロセスは一般に、所望の最終化合物を、そのプロセス全体の終了時またはその近くで提供するが、特定の例において、この化合物を、その薬学的に受容可能な塩、エステルまたはプロドラッグにさらに転換することが望ましくあり得る。
本発明の化合物は、種々の方法で、市販の出発物質、文献で公知である化合物を使用して、当業者に公知であるかまたは本明細書の教示を考慮して当業者に明らかになるかのいずれかの、標準的な合成方法および手順を使用することによって、調製され得る。有機分子の調製ならびに官能基の転換および操作のための標準的な合成方法および手順は、関連する科学文献から、または当該分野における標準的な教科書から、得られ得る。いずれの1個または数個の源にも限定されないが、古典的な教科書(例えば、Smith,M.B.,March,J.,March’s Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms,and Structure,第5版,John Wiley & Sons:New York,2001;およびGreene,T.W.,Wuts,P.G.M.,Protective Groups in Organic Synthesis,第3版,John Wiley & Sons:New York,1999(本明細書中に参考として援用される))が、当業者に公知である有機合成の、有用な認識された参考書である。以下の合成方法の説明は、本発明の化合物の調製のための一般手順を説明するために設計されているのであり、限定するためではない。
本発明の化合物は、当業者によく知られている種々の方法によって好都合に調製され得る。式Ia、Ib、IcまたはIdを有する本発明の化合物は、下記のスキームおよび実施例によって、市販の出発物質、または文献の手順を使用して調製され得る出発物質から調製され得る。これらの手順は、本発明の代表的な化合物の調製を示す。表1に示す下記の化合物は、実施例において以下で詳細に記載されているように合成され得る。
スキーム1:保護されたヒドロキシ基を担持する市販のインドール酢酸(例えば、V)を、適切な溶媒(例えば、テトラヒドロフラン)中で、1,1’−カルボニルジイミダゾールで処理し、次いで水酸化アンモニウムによって処理して、一級アミドVIを生じさせる。次いで、この中間体を、塩基(例えば、カリウムtert−ブトキシド)の存在下で非プロトン性溶媒(例えば、テトラヒドロフラン)中での、三環式ケトエステルVIIとの環化反応において使用する。次いで、このように得られたマレイミドを、プロトン性溶媒(例えば、メタノール)中で室温と溶媒の沸点との間の温度、典型的には還流温度にて、剤(例えば、マグネシウム金属)で還元する。還元生成物IX(ラセミ)は、相対的トランス立体配置を示す。保護基(R1またはR2がヒドロキシ基であり、ベンジル基などで保護されているとき)は、標準的脱保護条件(例えば、水素雰囲気中の10%Pd/C)を使用して除去され、Xが得られる。エナンチオマーの対は、逆相キラルHPLCによって分離することができる。
スキーム2:ピロロキノリンの酸化によって形成される化合物の調製(例えば、X1が、CH(OH)であるとき)
室温と溶媒の沸点との間の温度、典型的には還流温度での、適切な溶媒(例えば、四塩化炭素)中での、臭素の源としてN−ブロモスクシンアミド、およびラジカル開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを使用したVIIのラジカル開始ベンジル位臭素化によって、ブロミドXIが得られる。ブロミドは、0℃と100℃の間の温度、典型的には0℃で、極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド)中の試薬(例えば、酢酸銀)を使用した置換反応によってアセテート中間体XIIに変換される。次いで、この中間体を、上記と同様の手順において使用する。三環式ケトエステルXIIと適切に置換されたインドール−3−アセトアミドVIとのカップリングによって、中間体XIIIが得られる。ここで使用される条件下で、アセテート基が除去され、アルコールを遊離する。上記のようにマグネシウム金属による二重結合の還元によって、トランス相対立体配置を有するラセミ中間体XIVが得られる。
スキーム3:グルクロニド共役体XVIIを、スキーム3に記載されているように合成する。三フッ化ホウ素ジエチルエーテラートによるトリ−O−アセチル−α−D−グルクロン酸メチルエステルトリクロロアセトイミデート(trichlororacetimidate)の活性化、およびXVとのカップリングによって、アセチル保護されたグリコシドXVIが得られる。標準的条件(例えば、テトラヒドロフラン中の水酸化ナトリウム水溶液)下での保護基の除去によって、グルクロニドXVIIが得られる。
スキーム4:溶媒(例えば、DMF)中のNaHによるエステルXXIIIの環化による環状アミドXXIVの混合物の調製
(3.処置の方法)
本発明は、細胞増殖性障害の処置を必要とする被験体において、細胞増殖性障害を処置する方法を提供し、この方法は、このような処置を必要とする被験体に、治療有効量の本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物を投与することによって処置する方法である。この細胞増殖性障害は、がんまたは前がん状態であり得る。本発明は、細胞増殖性障害の処置に有用な医薬の調製のための、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物の使用をさらに提供する。
本発明はまた、細胞増殖性障害に対する保護を必要とする被験体において、細胞増殖性障害に対して保護する方法を提供し、この方法は、治療有効量の本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物を、このような処置を必要とする被験体に投与することによって保護する方法である。この細胞増殖性障害は、がんまたは前がん状態であり得る。本発明はまた、細胞増殖性障害の予防に有用な医薬の調製のための、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物の使用を提供する。
本明細書中で使用される場合、「それを必要とする被験体」とは、細胞増殖性障害を有する被験体、または細胞増殖性障害を発達させる危険性が集団全体と比較して増大している被験体である。それを必要とする被験体は、前がん状態を有し得る。好ましくは、それを必要とする被験体は、がんを有する。「被験体」は、哺乳動物を包含する。哺乳動物は、例えば、任意の哺乳動物(例えば、ヒト、霊長類、鳥類、マウス、ラット、家禽、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ラクダ、ヒツジまたはブタ)であり得る。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
本明細書中で使用される場合、用語「細胞増殖性障害」とは、細胞の制御されない増殖もしくは異常な増殖、またはこれらの両方が、望ましくない状態または疾患(これは、がん性であってもがん性でなくても良い)をもたらし得る状態をいう。本発明の例示的な細胞増殖性障害は、細胞分裂が調節されない種々の状態を包含する。例示的な細胞増殖性障害としては、新生物、良性腫瘍、悪性腫瘍、前がん状態、インサイチュ腫瘍、被包性腫瘍、転移性腫瘍、液体腫瘍、固形腫瘍、免疫学的腫瘍、血液学的腫瘍、がん、癌腫、白血病、リンパ腫、肉腫、および急速に分裂する細胞が挙げられるが、これらに限定されない。用語「急速に分裂する細胞」とは、本明細書中で使用される場合、同じ組織内の隣接または近接する細胞の間で予測または観察されるものを超える速度、またはより大きい速度で分裂する、任意の細胞と定義される。細胞増殖性障害は、前がんまたは前がん状態を包含する。細胞増殖性障害は、がんを包含する。好ましくは、本明細書中で提供される方法は、がんの症状を処置または軽減するために使用される。用語「がん」は、固形腫瘍、ならびに血液学的腫瘍および/または悪性疾患を包含する。「前がん細胞(precancer cell)」または「前がん細胞(precancerous cell)」とは、前がんまたは前がん状態である細胞増殖性障害を示す細胞である。「がん細胞(cancer cell)」または「がん細胞(cancerous cell)」とは、がんである細胞増殖性障害を示す細胞である。再現性のある任意の測定方法を使用して、がん細胞または前がん細胞を同定し得る。がん細胞または前がん細胞は、組織サンプル(例えば、生検サンプル)の組織学的型決定または悪性度分類によって、同定され得る。がん細胞または前がん細胞は、適切な分子マーカーの使用によって、同定され得る。
例示的な非がん性状態または障害としては、慢性関節リウマチ;炎症;自己免疫疾患;リンパ増殖状態;先端巨大症;リウマチ様脊椎炎;変形性関節症;痛風、他の関節炎状態;敗血症;敗血症性ショック;内毒素ショック;グラム陰性敗血症;トキシックショック症候群;喘息;成人呼吸促進症候群;慢性閉塞性肺疾患;慢性肺炎症;炎症性腸疾患;クローン病;乾癬;湿疹;潰瘍性大腸炎;膵臓線維症;肝臓線維症;急性および慢性の直腸疾患;過敏性腸症候群;ピレシス(pyresis);再狭窄;大脳マラリア;脳卒中および虚血性損傷;神経性外傷;アルツハイマー病;ハンティングトン病;パーキンソン病;急性および慢性の疼痛;アレルギー性鼻炎;アレルギー性結膜炎;慢性心不全;急性冠状脈症候群;悪質液;マラリア;らい病;リーシュマニア病;ライム病;ライター症候群;急性滑膜炎;筋肉の退化、滑液包炎;腱炎;腱滑膜炎;ヘルニア様、破裂、または脱出した椎間円板症候群;大理石骨病;血栓症;再狭窄;珪肺症;肺筋肉異常増殖;骨吸収疾患(例えば、骨粗鬆症);対宿主性移植片反応;多発性硬化症;狼瘡;線維筋痛症;AIDSおよび他のウイルス性疾患(例えば、帯状疱疹、単純疱疹IまたはII、インフルエンザウイルスおよびサイトメガロウイルス);ならびに真性糖尿病が挙げられるが、これらに限定されない。
例示的ながんとしては、副腎皮質癌腫、AIDS関連がん、AIDS関連リンパ腫、肛門がん、肛門直腸がん、肛門管のがん、虫垂がん、小児期の小脳がん、小児期の大脳神経膠星状細胞腫、基底細胞癌、皮膚がん(非黒色腫)、胆管がん、肝臓外総胆管がん、肝臓内総胆管がん、膀胱がん(bladder cancer)、膀胱がん(urinary bladder cancer)、骨および関節のがん、骨肉腫および悪性線維性組織球腫、脳がん(brain cancer)、脳腫瘍、脳幹神経膠腫、小脳神経膠星状細胞腫、大脳神経膠星状細胞腫(cerebral astrocytoma)/悪性神経膠腫、脳室上衣細胞腫、髄芽細胞腫、テント上方未分化神経外胚葉性腫瘍、視路および視床下部性神経膠腫、乳がん、気管支腺腫/カルチノイド、類癌腫、胃腸、神経系がん、神経系リンパ腫、中枢神経系がん、中枢神経系リンパ腫、子宮頸がん、小児期のがん、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、結腸がん、結腸直腸がん、皮膚T細胞リンパ腫、リンパ様新生物、菌状息肉腫、セザリー(Seziary)症候群、子宮内膜がん、食道がん、頭蓋外生殖細胞腫瘍、肝臓外生殖細胞腫瘍、肝臓外総胆管がん、眼のがん、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、胆嚢がん、胃(gastric(stomach))がん、胃腸類癌腫、胃腸間質腫瘍(GIST)、生殖細胞腫瘍、卵巣生殖細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍神経膠腫、頭部および頚部のがん、肝細胞(肝臓)がん、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、眼内黒色腫、眼のがん、ランゲルハンス島細胞腫瘍(内分泌膵臓)、カポージ肉腫、腎臓がん、直腸がん、腎臓がん、咽頭がん、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、ヘアリーセル白血病、唇および口腔のがん、肝臓がん、肺がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、髄芽細胞腫、黒色腫、眼内(眼)黒色腫、メルケル細胞癌腫、悪性中皮腫、中皮腫、転移性扁平(squamous)頚部がん、口腔がん、舌のがん、多発性内分泌腫瘍症候群、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、慢性骨髄増殖性障害、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、口のがん、口腔がん、口腔咽頭がん、卵巣がん、卵巣上皮がん、境界悪性卵巣腫瘍、膵臓がん、島細胞膵臓がん、副鼻腔および鼻腔のがん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、松果体芽細胞腫およびテント上方未分化神経外胚葉性腫瘍、下垂体腫瘍、形質細胞新生物/多発性骨髄腫、胸膜肺芽細胞腫、前立腺がん、直腸がん、腎盤および尿管、移行細胞がん、網膜芽細胞腫、横文筋肉腫、唾液腺がん、ユーイングファミリーの肉腫腫瘍、カポージ肉腫、軟組織肉腫、子宮がん、子宮肉腫、皮膚がん(非黒色腫)、皮膚がん(黒色腫)、メルケル細胞皮膚癌腫、小腸がん、軟組織肉腫、扁平上皮癌、胃がん、テント上方未分化神経外胚葉性腫瘍、精巣がん、咽喉がん、胸腺腫、胸腺腫および胸腺癌腫、甲状腺がん、腎盤および尿管ならびに他の泌尿器の移行細胞がん、妊娠性絨毛腫瘍、尿道がん、子宮内膜子宮がん、子宮肉腫、子宮体がん、膣がん、外陰部がん、ならびにウィルムス腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。
「血液学的系の細胞増殖性障害」とは、血液学的系の細胞が関与する細胞増殖性障害である。血液学的系の細胞増殖性障害としては、リンパ腫、白血病、骨髄様新生物、肥満細胞新生物、脊髄形成異常症、良性単クローン性高ガンマグロブリン血症、リンパ腫様肉芽腫症、リンパ腫様丘疹症、真性赤血球増加症、慢性骨髄性白血病、原因不明骨髄様化生、および本態性血小板減少症が挙げられ得る。血液学的系の細胞増殖性障害としては、血液学的系の細胞の過形成、形成異常症、および化生が挙げられ得る。好ましくは、本発明の組成物は、本発明の血液学的がんまたは本発明の血液学的細胞増殖性障害からなる群より選択されるがんを処置するために使用され得る。本発明の血液学的がんとしては、多発性骨髄腫、リンパ腫(ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、小児期のリンパ腫、ならびにリンパ球起源および皮膚起源のリンパ腫を含む)、白血病(小児期の白血病、ヘアリーセル白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、および肥満細胞性白血病を含む)、骨髄様新生物ならびに肥満細胞新生物が挙げられ得る。
「肺の細胞増殖性障害」とは、肺の細胞が関与する細胞増殖性障害である。肺の細胞増殖性障害としては、肺細胞に影響を与える全ての型の細胞増殖性障害が挙げられ得る。肺の細胞増殖性障害としては、肺がん、肺の前がんまたは前がん状態、肺の良性増殖および病巣、ならびに肺の悪性増殖または病巣、ならびに肺以外の身体内の組織および器官の転移性病巣が挙げられ得る。好ましくは、本発明の組成物は、肺がんまたは肺の細胞増殖性障害を処置するために使用され得る。肺がんとしては、全ての形態の肺のがんが挙げられ得る。肺がんとしては、悪性肺新生物、上皮内癌、定型類癌腫、および非定型類癌腫が挙げられ得る。肺がんとしては、小細胞肺がん(「SCLC」)、非小細胞肺がん(「NSCLC」)、非扁平非小細胞肺がん、扁平非小細胞肺がん、扁平上皮癌、非扁平上皮癌、腺癌、小細胞癌、大細胞癌、腺扁平上皮癌(adenosquamous cell carcinoma)、および中皮腫が挙げられ得る。肺がんとしては、「瘢痕癌」、気管支原生癌腫、巨細胞癌、紡錘体細胞癌、および大細胞神経内分泌癌腫が挙げられ得る。肺がんとしては、組織学的および超微細構造異質性(例えば、混合した細胞型)を有する肺新生物が挙げられ得る。
肺の細胞増殖性障害としては、肺細胞に影響を与える全ての型の細胞増殖性障害が挙げられ得る。肺の細胞増殖性障害としては、肺がん、肺の前がん状態が挙げられ得る。肺の細胞増殖性障害としては、肺の過形成、化生、および形成異常症が挙げられ得る。肺の細胞増殖性障害としては、アスベスト誘導性過形成、扁平上皮化生、および良性反応性中皮化生が挙げられ得る。肺の細胞増殖性障害としては、円柱上皮の重層扁平上皮での置き換え、および粘膜形成異常症が挙げられ得る。吸入される損傷性環境因子(例えば、煙草の煙およびアスベスト)に曝露された個体は、肺の細胞増殖性障害を発達させる危険性が上昇し得る。患者が肺の細胞増殖性障害を発達させやすくし得る、以前の肺疾患としては、慢性間質性肺疾患、壊死性肺疾患、強皮症、リウマチ様疾患、サルコイドーシス、間質性肺臓炎、結核、反復する肺炎、特発性肺線維症、肉芽腫症、石綿沈着症、線維化肺胞炎、およびホジキン病が挙げられ得る。
「結腸の細胞増殖性障害」とは、結腸の細胞が関与する細胞増殖性障害である。好ましくは、結腸の細胞増殖性障害は、結腸がんである。好ましくは、本発明の組成物は、結腸がんまたは結腸の細胞増殖性障害を処置するために使用され得る。結腸がんとしては、結腸の全ての形態のがんが挙げられ得る。結腸がんとしては、散在性および遺伝性の結腸がんが挙げられ得る。結腸がんとしては、悪性結腸新生物、上皮内癌、定型類癌腫、および非定型類癌腫が挙げられ得る。結腸がんとしては、腺癌、扁平上皮癌、および腺扁平上皮癌が挙げられ得る。結腸がんは、遺伝性非ポリポーシス結腸直腸がん、家族性腺腫性ポリポーシス、ガードナー症候群、ポイツ−ジェガーズ症候群、ターコット症候群および若年性ポリポーシスからなる群より選択される遺伝性症候群に関連し得る。結腸がんは、遺伝性非ポリポーシス結腸直腸がん、家族性腺腫性ポリポーシス、ガードナー症候群、ポイツ−ジェガーズ症候群、ターコット症候群および若年性ポリポーシスからなる群より選択される遺伝性症候群により引き起こされ得る。
結腸の細胞増殖性障害としては、結腸細胞に影響を与える全ての型の細胞増殖性障害が挙げられ得る。結腸の細胞増殖性障害としては、結腸がん、結腸の前がん状態、結腸の腺腫様ポリープおよび結腸の異時性病巣が挙げられ得る。結腸の細胞増殖性障害としては、腺腫が挙げられ得る。結腸の細胞増殖性障害は、結腸の過形成、化生、および形成異常症により特徴付けられ得る。個体に結腸の細胞増殖性障害を発達させやすくし得る、以前の結腸疾患としては、以前の結腸がんが挙げられ得る。個体に結腸の細胞増殖性障害を発達させやすくし得る現在の疾患としては、クローン病および潰瘍性大腸炎が挙げられ得る。結腸の細胞増殖性障害は、p53、ras、FAPおよびDCCからなる群より選択される遺伝子の変異に関連し得る。個体は、p53、ras、FAPおよびDCCからなる群より選択される遺伝子の変異の存在に起因して、結腸の細胞増殖性障害を発達させる危険性が増大し得る。
「膵臓の細胞増殖性障害」とは、膵臓の細胞が関与する細胞増殖性障害である。膵臓の細胞増殖性障害としては、膵臓細胞に影響を与える全ての形態の細胞増殖性障害が挙げられ得る。膵臓の細胞増殖性障害としては、膵臓がん、膵臓の前がんまたは前がん状態、膵臓の過形成、および膵臓の形成異常、膵臓の良性の増殖または病巣、ならびに膵臓の悪性の増殖または病巣、ならびに膵臓以外の身体内の組織および器官の転移性病巣が挙げられ得る。膵臓がんとしては、膵臓の全ての形態のがんが挙げられる。膵臓がんとしては、管の腺癌、腺扁平上皮癌、多型巨細胞癌、粘液性腺癌、破骨細胞様巨細胞癌、粘液性嚢胞腺癌、小葉癌、未分類大細胞癌、小細胞癌、膵臓芽細胞腫、乳頭新生物、粘液性嚢胞腺腫、乳頭状嚢胞状新生物、および漿液性嚢胞腺腫が挙げられ得る。膵臓がんとしてはまた、組織学的および超微細構造異質性(例えば、混合した細胞型)を有する膵臓新生物が挙げられ得る。
「前立腺の細胞増殖性障害」とは、前立腺の細胞が関与する細胞増殖性障害である。前立腺の細胞増殖性障害としては、前立腺細胞に影響を与える全ての形態の細胞増殖性障害が挙げられ得る。前立腺の細胞増殖性障害としては、前立腺がん、前立腺の前がんまたは前がん状態、前立腺の良性の増殖または病巣、および前立腺の悪性の増殖または病巣、ならびに前立腺以外の身体の組織および器官における転移性病巣が挙げられ得る。前立腺の細胞増殖性障害としては、前立腺の過形成、化生、および形成異常症が挙げられ得る。
「皮膚の細胞増殖性障害」とは、皮膚の細胞が関与する細胞増殖性障害である。皮膚の細胞増殖性障害としては、皮膚細胞に影響を与える全ての形態の細胞増殖性障害が挙げられ得る。皮膚の細胞増殖性障害としては、皮膚の前がんまたは前がん状態、皮膚の良性の増殖または病巣、黒色腫、悪性黒色腫および皮膚の他の悪性の増殖または病巣、ならびに皮膚以外の身体の組織および器官における転移性病巣が挙げられ得る。皮膚の細胞増殖性障害としては、皮膚の過形成、化生、および形成異常症が挙げられ得る。
「卵巣の細胞増殖性障害」とは、卵巣の細胞が関与する細胞増殖性障害である。卵巣の細胞増殖性障害としては、卵巣の細胞に影響を与える全ての形態の細胞増殖性障害が挙げられ得る。卵巣の細胞増殖性障害としては、卵巣の前がんまたは前がん状態、卵巣の良性の増殖または病巣、卵巣がん、卵巣の悪性の増殖または病巣、ならびに卵巣以外の身体の組織および器官における転移性病巣が挙げられ得る。皮膚の細胞増殖性障害としては、卵巣の細胞の過形成、化生、および形成異常症が挙げられ得る。
「乳房の細胞増殖性障害」とは、乳房の細胞が関与する細胞増殖性障害である。乳房の細胞増殖性障害としては、乳房細胞に影響を与える全ての形態の細胞増殖性障害が挙げられ得る。乳房の細胞増殖性障害としては、乳がん、乳房の前がんまたは前がん状態、乳房の良性の増殖または病巣、および乳房の悪性の増殖または病巣、ならびに乳房以外の身体の組織および器官における転移性病巣が挙げられ得る。乳房の細胞増殖性障害としては、乳房の過形成、化生、および形成異常症が挙げられ得る。
乳房の細胞増殖性障害は、乳房の前がん状態であり得る。本発明の組成物は、乳房の前がん状態を処置するために使用され得る。乳房の前がん状態としては、乳房の非定型過形成、上皮内腺管癌(DCIS)、腺管内癌、上皮内小葉癌(LCIS)、小葉新生物、および病期0または悪性分類度0の乳房の増殖または病巣(例えば、病期0または悪性分類度0の乳がん、あるいは上皮内癌)が挙げられ得る。乳房の前がん状態は、American Joint Committee on Cancer (AJCC)により認容されたTNM分類スキームに従って病期分類され得、ここで原発性腫瘍(T)は、T0またはTisの病期に割り当てられ、そして限局性リンパ節(N)は、N0の病期に割り当てられ、そして遠隔転移(M)は、M0の病期に割り当てられている。
乳房の細胞増殖性障害は、乳がんであり得る。好ましくは、本発明の組成物は、乳がんを処置するために使用され得る。乳がんとしては、乳房の全ての形態のがんが挙げられる。乳がんとしては、原発性上皮乳がんが挙げられ得る。乳がんとしては、乳房が他の腫瘍(例えば、リンパ腫、肉腫または黒色腫)に関与しているがんが挙げられ得る。乳がんとしては、乳房の癌腫、乳房の腺管癌、乳房の小葉癌、乳房の未分化癌腫、乳房の葉状嚢肉腫、乳房の血管肉腫、および乳房の原発性リンパ腫が挙げられ得る。乳がんとしては、病期I、病期II、病期IIIA、病期IIIB、病期IIICおよび病期IVの乳がんが挙げられ得る。乳房の腺管癌としては、浸潤性癌種、優勢な腺管内成分を有する浸潤性上皮内癌、炎症性乳がん、および乳房の腺管癌が挙げられ得、組織学的型は、コメド、ムチン(コロイド)、髄質、リンパ球浸潤を伴う髄質、乳頭状、硬性、および管状からなる群より選択される。乳房の腺管癌としては、優勢なインサイチュ成分を伴う浸潤性小葉癌、浸潤性(invasive)小葉癌、および浸潤性(infiltrating)小葉癌が挙げられ得る。乳がんとしては、パジェット病、腺管内癌を伴うパジェット病、および浸潤性腺管癌を伴うパジェット病が挙げられ得る。乳がんとしては、組織学的および超微細構造異質性(例えば、混合した細胞型)を有する乳房新生物が挙げられ得る。
好ましくは、本発明の化合物は、乳がんを処置するために使用され得る。処置されるべき乳がんとしては、家族性乳がんが挙げられ得る。処置されるべき乳がんとしては、散在性乳がんが挙げられ得る。処置されるべき乳がんは、雄性被験体に生じ得る。処置されるべき乳がんは、雌性被験体に生じ得る。処置されるべき乳がんは、月経前の雌性被験体または閉経後の雌性被験体に生じ得る。処置されるべき乳がんは、30歳以上の被験体、または30歳未満の被験体に生じ得る。処置されるべき乳がんは、50歳以上の被験体、または50歳未満の被験体に生じている。処置されるべき乳がんは、70歳以上の被験体、または70歳未満の被験体に生じ得る。
処置されるべき乳がんは、BRCA1、BRCA2、またはp53における家族性変異または自然突然変異を同定するために、型を決定され得る。処置されるべき乳がんは、HER2/neu遺伝子増幅を有するか、HER2/neuを過剰発現するか、または低レベル、中間レベルもしくは高レベルのHER2/neu発現を有すると、型を決定され得る。処置されるべき乳がんは、エストロゲンレセプター(ER)、プロゲステロンレセプター(PR)、ヒト上皮増殖因子レセプター−2、Ki−67、CA15−3、CA 27−29、およびc−Metからなる群より選択されるマーカーのために、型を決定され得る。処置されるべき乳がんは、ERが未知、ERに富むまたはERが乏しいと、型を決定され得る。処置されるべき乳がんは、ER陰性またはER陽性と、型を決定され得る。乳がんのER型決定は、再現性のある任意の手段によって実施され得る。乳がんのER型決定は、Onkologie 27:175−179(2004)に記載されるように実施され得る。処置されるべき乳がんは、PRが未知、PRに富むまたはPRが乏しいと、型を決定され得る。処置されるべき乳がんは、PR陰性またはPR陽性と、型を決定され得る。処置されるべき乳がんは、レセプター陽性またはレセプター陰性と、型を決定され得る。処置されるべき乳がんは、CA 15−3もしくはCA 27−29、またはこれらの両方の上昇した血中レベルと関連付けられると、型を決定され得る。
処置されるべき乳がんとしては、乳房の極限性腫瘍が挙げられ得る。処置されるべき乳がんとしては、陰性センチネルリンパ節(SLN)生検に関連する乳房の腫瘍が挙げられ得る。処置されるべき乳がんとしては、陽性センチネルリンパ節(SLN)生検に関連する乳房の腫瘍が挙げられ得る。処置されるべき乳がんとしては、1つ以上の陽性腋窩リンパ節に関連する乳房の腫瘍が挙げられ得、ここでこの腋窩リンパ節は、任意の適用可能な方法により病期分類されている。処置されるべき乳がんとしては、結節陰性状態(例えば、結節陰性)または結節陽性状態(例えば、結節陽性)を有すると、型を決定された乳房の腫瘍が挙げられ得る。処置されるべき乳がんとしては、身体内の他の位置に転移した乳房の腫瘍が挙げられ得る。処置されるべき乳がんは、骨、肺、肝臓、または脳からなる群より選択される位置に転移したと分類され得る。処置されるべき乳がんは、転移性、限局性、局所的(regional)、局所的(local−regional)、局所的に進行した、遠隔、多中心性、両側性、同側性、反対側性、新たに診断された、再発性、および手術不能からなる群より選択される特徴に従って、分類され得る。
本発明の化合物は、乳がんを発達させる危険性が集団全体と比較して増大している被験体において、乳房の細胞増殖性障害を処置または予防するため、あるいは乳がんを処置または予防するために、使用され得る。乳がんを発達させる危険性が集団全体と比較して増大している被験体は、乳がんの家族病歴または個人病歴を有する雌性被験体である。乳がんを発達させる危険性が集団全体と比較して増大している被験体は、BRCA1もしくはBRCA2、またはこれらの両方に生殖細胞系または自然突然変異を有する雌性被験体である。乳がんを発達させる危険性が集団全体と比較して増大している被験体は、乳がんの家族病歴を有し、BRCA1もしくはBRCA2、またはこれらの両方に生殖細胞系または自然突然変異を有する、雌性被験体である。乳がんを発達させる危険性が集団全体と比較して増大している被験体は、30歳より高齢、40歳より高齢、50歳より高齢、60歳より高齢、70歳より高齢、80歳より高齢、または90歳より高齢の女性である。乳がんを発達させる危険性が集団全体と比較して増大している被験体は、乳房の非定型過形成、上皮内腺管癌(DCIS)、腺管内癌、上皮内小葉癌(LCIS)、小葉新生物、または病期0の乳房の増殖もしくは病巣(例えば、病期0または悪性分類度0の乳がんまたは上皮内癌)を有する被験体である。
処置されるべき乳がんは、Scarff−Bloom−Richardsonシステムに従って組織学的に悪性度分類され得、ここで乳房腫瘍は、1、2、または3の有糸分裂計数評点;1、2、または3の核多形態性評点;1、2、または3の細管形成評点;および3〜9の合計Scarff−Bloom−Richardson評点を割り当てられている。処置されるべき乳がんは、悪性分類度1、悪性分類度1−2、悪性分類度2、悪性分類度2−3、または悪性分類度3からなる群より選択される、International Consensus Panel on the Treatment of Breast Cancerに従う腫瘍悪性分類度を割り当てられ得る。
処置されるべきがんは、American Joint Committee on Cancer(AJCC)TNM分類システムに従って、病期分類され得、ここで腫瘍(T)は、TX、T1、T1mic、T1a、T1b、T1c、T2、T3、T4、T4a、T4b、T4c、またはT4dの病期を割り当てられており;そして限局性リンパ節(N)は、NX、N0、N1、N2、N2a、N2b、N3、N3a、N3b、またはN3cの病期を割り当てられており;そして遠隔転移(M)は、MX、M0、またはM1の病期を割り当てられ得る。処置されるべきがんは、American Joint Committee on Cancer(AJCC)分類に従って、病期I、病期IIA、病期IIB、病期IIIA、病期IIIB、病期IIIC、または病期IVとして病期分類され得る。処置されるべきがんは、AJCC分類に従って、悪性分類度GX(例えば、悪性分類度が割り当てられ得ない)、悪性分類度1、悪性分類度2、悪性分類度3または悪性分類度4として、悪性分類度を割り当てられ得る。処置されるべきがんは、AJCC病理学的分類(pN)に従って、pNX、pN0、PN0(I−)、PN0(I+)、PN0(mol−)、PN0(mol+)、PN1、PN1(mi)、PN1a、PN1b、PN1c、pN2、pN2a、pN2b、pN3、pN3a、pN3b、またはpN3cの病期を分類され得る。
処置されるべきがんとしては、直径が約2センチメートル以下であることが決定された腫瘍が挙げられ得る。処置されるべきがんとしては、直径が約2センチメートル〜約5センチメートルであることが決定された腫瘍が挙げられ得る。処置されるべきがんとしては、直径が約3センチメートル以上であることが決定された腫瘍が挙げられ得る。処置されるべきがんとしては、直径が約5センチメートル超であることが決定された腫瘍が挙げられ得る。処置されるべきがんは、顕微鏡による外観によって、充分に分化した、中程度に分化した、乏しく分化した、または未分化と分類され得る。処置されるべきがんは、顕微鏡による外観によって、有糸分裂計数(例えば、細胞分裂の量)または核多形態性(例えば、細胞の変化)に関して分類され得る。処置されるべきがんは、顕微鏡による外観によって、壊死の領域(例えば、死滅または変性している細胞の領域)に関連すると分類され得る。処置されるべきがんは、異常な核型を有する、異常な数の染色体を有する、または外観が異常である染色体を1つ以上有するとして分類され得る。処置されるべきがんは、異数体、三倍体、もしくは四倍体であるとして、または変化した倍数性を有するとして分類され得る。処置されるべきがんは、染色体転座、または染色体全体の欠失もしくは重複、または染色体の一部分の欠失、重複もしくは増幅の領域を有するとして分類され得る。
処置されるべきがんは、DNAサイトメトリー、フローサイトメトリー、または画像サイトメトリーにより評価され得る。処置されるべきがんは、細胞の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%が、細胞分裂の合成段階(例えば、細胞分裂のS期)にあると、型を決定され得る。処置されるべきがんは、低いS期割合または高いS期割合を有すると、型を決定され得る。
本明細書中で使用される場合、「正常細胞」とは、「細胞増殖性障害」の一部として分類され得ない細胞である。正常細胞は、望ましくない状態または疾患の発達をもたらし得る、調節されない増殖または異常な増殖、あるいはこれらの両方を欠く。好ましくは、正常細胞は、正常に機能する細胞周期チェックポイント制御機構を有する。
本明細書中で使用される場合、「細胞を接触させる」とは、化合物または他の組成物が細胞と直接接触しているか、あるいは細胞に所望の生物学的影響を誘導するのに充分に接近している状態をいう。
本明細書中で使用される場合、「単剤療法」とは、単一の活性化合物または治療化合物を、それを必要とする被験体に投与することをいう。好ましくは、単剤療法は、治療有効量の活性化合物の投与を包含する。例えば、がんの単剤療法は、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、アナログもしくは誘導体のうちの1つを、がんの処置を必要とする被験体に対して用いる。単剤療法は、併用療法と対照を成し得る。併用療法において、複数の活性化合物の組み合わせが、好ましくはこの組み合わせの各成分が治療有効量で存在する状態で、投与される。1つの局面において、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物を用いる単剤療法は、所望の生物学的効果の誘導において、併用療法より有効である。
本明細書中で使用される場合、「処置」または「処置する」とは、疾患、状態、または障害と闘う目的での、患者の管理および医療をいい、疾患、状態または障害の症状または合併症を軽減するため、あるいは疾患、状態または障害を排除するための、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物の投与を包含する。
本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物はまた、疾患、状態または障害を予防するために使用され得る。本明細書中で使用される場合、「予防」または「予防する」とは、疾患、状態または障害の症状または合併症の発生を減少または排除することをいう。
本明細書中で使用される場合、用語「軽減する」とは、障害の徴候または症状の重篤度が低下するプロセスを記載することを意味する。重要なことには、徴候または症状は、排除されずに軽減され得る。好ましい実施形態において、本発明の薬学的組成物の投与は、徴候または症状の排除をもたらすが、排除は必要とはされない。有効投薬量は、徴候または症状の重篤度を低下させることを期待される。例えば、複数の位置で起こり得る、がんなどの障害の徴候または症状は、そのがんの重篤度が複数の位置のうちの少なくとも1つにおいて低下する場合に、軽減される。
本明細書中で使用される場合、用語「重篤度」とは、がんが前がん(または良性)状態から悪性状態へと変換する可能性を記載することを意味する。あるいは、またはさらに、重篤度とは、がんの病期(例えば、TNMシステム(International Union Against Cancer(UICC)およびAmerican Joint Committee on Cancer(AJCC)により認容された)に従うか、または当該分野において認識された他の方法による)を記載することを意味する。がんの病期とは、原発性腫瘍の位置、腫瘍サイズ、腫瘍の数、およびリンパ節関与(リンパ節へのがんの広がり)などの要因に基づく、がんの重篤度の程度をいう。あるいは、またはさらに、重篤度とは、当該分野において認識された方法による腫瘍の悪性度分類を記載することを意味する(National Cancer Institute,www.cancer.govを参照のこと)。腫瘍の悪性度分類とは、がん細胞が顕微鏡下でいかに異常に見えるか、ならびに腫瘍がいかに速く増殖し、広がりやすいかの観点で、がん細胞を分類するために使用されるシステムである。腫瘍の悪性度分類を決定する際に、多くの要因が考慮され、細胞の構造および増殖パターンが挙げられる。腫瘍の悪性度分類を決定するために使用される具体的な要因は、がんの型ごとに変わる。重篤度はまた、組織学的悪性度分類(分化とも呼ばれる)を記載し、これは、腫瘍細胞が、同じ組織型の正常細胞にどれほど類似するかをいう(National Cancer Institute,www.cancer.govを参照のこと)。さらに、重篤度は、核の悪性度分類を記載し、これは、腫瘍細胞中の核のサイズおよび形状、ならびに分裂している腫瘍細胞の百分率をいう(National Cancer Institute,www.cancer.govを参照のこと)。
本発明の別の局面において、重篤度は、腫瘍が増殖因子を分泌した程度、細胞外マトリックスを分解した程度、血管新生した程度、近接組織への接着を失った程度、または転移した程度を記載する。さらに、重篤度は、原発性腫瘍が転移した位置の数を記載する。最後に、重篤度としては、種々の型および位置の腫瘍を処置する困難性が挙げられる。例えば、手術不可能な腫瘍、複数の身体系へのより大きいアクセスを有するがん(血液学的腫瘍および免疫学的腫瘍)、ならびに従来の処置に対してほとんど抵抗性であるがんは、最も重篤であるとみなされる。これらの状況において、被験体の生存の見込みの延長および/または疼痛の減少、がん性細胞の割合の減少または1つの系への細胞の制限、ならびにがんの病期/腫瘍の悪性度分類/組織学的悪性度分類/核の悪性度分類の改善は、がんの徴候または症状を軽減するとみなされる。
本明細書中で使用される場合、用語「症状」とは、疾患、疾病、傷害、または身体内で正しくない何かの指標として定義される。症状は、その症状を経験している個体により知覚されるかまたは気付かれるが、他者によっては容易には気付かれないかもしれない。他者とは、非健康管理人員として定義される。
本明細書中で使用される場合、用語「徴候」もまた、身体内で正しくない何かの指標として定義される。しかし、徴候は、医師、看護師、または他の健康管理専門家により見られ得る事項として定義される。
がんとは、ほとんどあらゆる徴候または症状を引きおこし得る疾患の群である。徴候および症状は、そのがんが何であるか、そのがんのサイズ、およびそのがんが近隣の器官または構造体にいかに影響を与えるかに依存する。がんが広がる(転移する)場合、症状は、身体の異なる部分で見られ得る。
がんが増殖するにつれて、このがんは、近隣の器官、血管、および神経を押し始める。この圧力は、がんの何らかの徴候および症状を引き起こす。このがんが重大な領域(例えば、脳の特定の部分)にある場合、最も小さい腫瘍でさえも、初期症状を引き起こし得る。
しかし、時々、がんは、がんが非常に大きく増殖するまでいかなる症状をも引き起こさない位置で始まる。例えば、膵臓がんは、通常、体外から知覚されるほど充分に大きくは増殖しない。いくつかの膵臓がんは、それらが近隣の神経の周囲で増殖し始めるまで(これにより背部痛が起こる)、症状を引き起こさない。他のものは、総胆管の周りで増殖し、これは、胆汁の流れを遮断し、そして皮膚の黄色化(黄疸として公知)をもたらす。膵臓がんがこれらの徴候または症状を引き起こすまでに、膵臓がんは通常、進行した病期に達する。
がんはまた、熱、疲労、または体重損失などの症状を引き起こし得る。これは、がん細胞が身体エネルギーの供給物質および放出物質の多くを使い果たして、身体の代謝を変化させることに起因し得る。または、がんは、これらの症状を引き起こす様式で免疫系を反応させ得る。
時々、がん細胞は、通常はがんから生じると考えられない症状を引き起こす物質を、血流中に放出する。例えば、膵臓のいくつかのがんは、血餅を脚の静脈に発達させる物質を放出し得る。いくつかの肺がんは、神経および筋肉に影響を与える血中カルシウムレベルに影響を与えて、衰弱および眩暈感を引き起こす、ホルモン様物質を作製する。
がんは、がん細胞の種々の亜型が存在する場合に起こる数種の一般的な徴候または症状をもたらす。がんを有するほとんどのヒトは、その疾患を有するいずれかの時点で、体重を損失する。説明されない(意図されない)10ポンド以上の体重損失は、がん(特に、膵臓、胃、食道、または肺のがん)の最初の徴候であり得る。
熱は、がんにおいて非常に一般的であるが、進行した疾患においてより頻繁に見られる。ほぼ全てのがん患者は、いずれかの時点で熱を有する(特に、そのがんまたはその処置が免疫系に影響を与え、そして身体が感染症と戦うことをより困難にする場合)。さほど頻繁ではないが、熱は、がん(例えば、白血病またはリンパ腫)の初期徴候であり得る。
疲労は、がんの進行に伴う重要な症状であり得る。これは初期に起こり得るけれども、白血病を伴うようながんにおいて、またはがんが血液の持続的損失を引き起こす場合、例えば、いくつかの結腸がんまた肺癌において起こり得る。
疼痛は、骨がんまたは精巣がんなどのいくつかのがんに伴う、初期症状であり得る。しかし、最も頻繁には、疼痛は、進行した疾患の症状である。
皮膚のがん(次の節を参照のこと)と一緒に、いくつかの内部がんは、目に見える皮膚徴候を引き起こし得る。これらの変化としては、暗色に見える皮膚(色素過剰症)、黄色(黄疸)、または赤色(紅斑);かゆみ;または過剰な毛の成長が挙げられる。
あるいは、またはさらに、がんの亜型は、特異的な徴候または症状をもたらす。腸の習慣または膀胱機能の変化は、がんの指標であり得る。長期間の便秘症、下痢、または便のサイズの変化は、結腸がんの徴候であり得る。排尿時の疼痛、尿中の血液、および膀胱機能の変化(例えば、より頻度が高い排尿、またはより頻度が低い排尿)は、膀胱がんまたは前立腺がんに関連し得る。
皮膚状態の変化、または新たな皮膚状態の出現は、がんの指標であり得る。皮膚がんは、出血し得、そして治癒しないびらんのように見える。口内の長期にわたるびらんは、口腔がんであり得、特に、喫煙する患者、噛み煙草を嗜む患者、またはアルコールを頻繁に飲む患者においてである。陰茎または膣のびらんは、感染または初期がんのいずれかの徴候であり得る。
通常でない出血または排泄は、がんの指標であり得る。通常でない出血は、初期がんまたは進行したがんのいずれかで起こり得る。痰中の血液(粘液分泌過多)は、肺癌の徴候であり得る。糞便中の血液(または暗色もしくは黒色の糞便)は、結腸がんまたは直腸がんの徴候であり得る。子宮頚部または子宮内膜(子宮の内層)のがんは、膣の出血を引き起こし得る。尿中の血液は、膀胱がんまたは腎臓がんの徴候であり得る。乳頭からの血液の混じった分泌物は、乳がんの徴候であり得る。
乳房または身体の他の部分の肥大または塊は、がんの存在の指標であり得る。多くのがんは、皮膚(主として乳房、精巣、リンパ節(腺)、および身体の軟部組織)を通して知覚され得る。塊または肥大は、がんの初期徴候または後期兆候であり得る。任意の塊または肥大は、その形成が新しい場合、またはサイズが成長した場合に特に、がんの指標であり得る。
消化障害または困難な嚥下は、がんの指標であり得る。これらの症状は一般に、他の原因を有するが、消化障害または嚥下の問題は、食道、胃、または咽頭(咽喉)のがんの徴候であり得る。
いぼおよび母斑の最近の変化は、がんの指標であり得る。色、サイズ、または形状を変化させる、あるいはその境界線を失う、任意のいぼ、母斑または雀斑は、がんの潜在的発達を示す。例えば、皮膚の病巣は、黒色腫であり得る。
持続性の咳または嗄声は、がんの指標であり得る。治まらない咳は、肺がんの徴候であり得る。嗄声は、喉頭(larynx(voice box))または甲状腺のがんの徴候であり得る。
上に列挙された徴候および症状は、がんにおいてより一般的に見られるものであるが、さほど一般的ではなく本明細書中に列挙されない、他の多くのものが存在する。しかし、当該分野において認識されているがんの全ての徴候および症状が、本発明により想定および包含される。
がんの処置は、腫瘍のサイズの減少をもたらし得る。腫瘍のサイズの減少はまた、「腫瘍後退」とも称され得る。好ましくは、処置後、腫瘍サイズは、処置前のそのサイズに対して、5%以上減少し;より好ましくは、腫瘍サイズは、10%以上減少;より好ましくは、20%以上減少;より好ましくは、30%以上減少;より好ましくは、40%以上減少;なおより好ましくは、50%以上減少;そして最も好ましくは、75%以上より大きく減少する。腫瘍のサイズは、再現性のある任意の測定手段によって測定され得る。腫瘍のサイズは、その腫瘍の直径として測定され得る。
がんの処置は、腫瘍の体積の減少をもたらし得る。好ましくは、処置後、腫瘍の体積は、処置前のそのサイズに対して5%以上減少し;より好ましくは、腫瘍の体積は、10%以上減少し;より好ましくは、20%以上減少し;より好ましくは、30%以上減少し;より好ましくは、40%以上減少し;なおより好ましくは、50%以上減少し;そして最も好ましくは、75%以上より大きく減少する。腫瘍の体積は、再現性のある任意の測定手段により測定され得る。
がんの処置は、腫瘍の数の減少をもたらす。好ましくは、処置後、腫瘍の数は、処置前の数に対して5%以上減少し;より好ましくは、腫瘍の数は、10%以上減少し;より好ましくは、20%以上減少し;より好ましくは、30%以上減少し;より好ましくは、40%以上減少し;なおより好ましくは、50%以上減少し;そして最も好ましくは、75%より大きく減少する。腫瘍の数は、再現性のある任意の測定手段により測定され得る。腫瘍の数は、裸眼または特定の倍率で見える腫瘍の数を計数することにより、測定され得る。好ましくは、特定の倍率は、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、または50倍である。
がんの処置は、原発性腫瘍から離れた他の組織または器官における、転移性病巣の数の減少をもたらし得る。好ましくは、処置後、転移性病巣の数は、処置前の数に対して、5%以上減少し;より好ましくは、転移性病巣の数は、10%以上減少し;より好ましくは、20%以上減少し;より好ましくは、30%以上減少し;より好ましくは、40%以上減少し;なおより好ましくは、50%以上減少し;そして最も好ましくは、75%より大きく減少する。転移性病巣の数は、再現性のある任意の測定手段により測定され得る。転移性病巣の数は、裸眼または特定の倍率で見える転移性病巣の数を計数することにより、測定され得る。好ましくは、特定の倍率は、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、または50倍である。
がんの処置は、キャリアだけを受けた集団と比較して、処置された被験体の集団の平均生存時間の増大をもたらし得る。好ましくは、平均生存時間は、30日より長く;より好ましくは、60日より長く;より好ましくは、90日より長く;そして最も好ましくは、120日より長く増大する。集団の平均生存時間の増大は、再現性のある任意の手段により測定され得る。集団の平均生存時間の増大は、例えば、ある集団について、活性化合物での処置の開始後の平均生存長さを計算することによって、測定され得る。集団の平均生存時間の増大はまた、例えば、ある集団について、活性化合物での処置の1回目の完了後の平均生存長さを計算することによって、測定され得る。
がんの処置は、処置されない被験体の集団と比較して、処置された集団の集団の平均生存時間の増大をもたらし得る。好ましくは、平均生存時間は、30日より長く;より好ましくは、60日より長く;より好ましくは、90日より長く;そして最も好ましくは、120日より長く増大する。集団の平均生存時間の増大は、再現性のある任意の手段により測定され得る。集団の平均生存時間の増大は、例えば、ある集団について、活性化合物での処置の開始後の平均生存長さを計算することによって、測定され得る。集団の平均生存時間の増大はまた、例えば、ある集団について、活性化合物での処置の1回目の完了後の平均生存長さを計算することによって、測定され得る。
がんの処置は、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、アナログもしくは誘導体ではない薬物での単剤療法を受けた集団と比較して、処置された被験体の集団の平均生存時間の増大をもたらし得る。好ましくは、平均生存時間は、30日より長く;より好ましくは、60日より長く;より好ましくは、90日より長く;そして最も好ましくは、120日より長く増大する。集団の平均生存時間の増大は、再現性のある任意の手段により測定され得る。集団の平均生存時間の増大は、例えば、ある集団について、活性化合物での処置の開始後の平均生存長さを計算することによって、測定され得る。集団の平均生存時間の増大はまた、例えば、ある集団について、活性化合物での処置の1回目の完了後の平均生存長さを計算することによって、測定され得る。
がんの処置は、キャリアだけを受けた集団と比較して、処置された被験体の集団の死亡率の低下をもたらし得る。がんの処置は、処置されない集団と比較して、処置された被験体の集団の死亡率の低下をもたらし得る。がんの処置は、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、アナログもしくは誘導体ではない薬物での単剤療法を受けた集団と比較して、処置された被験体の集団の死亡率の低下をもたらし得る。好ましくは、死亡率は、2%より大きく;より好ましくは、5%より大きく;より好ましくは、10%より大きく;そして最も好ましくは、25%より大きく低下する。処置された被験体の集団の死亡率の低下は、再現性のある任意の手段により測定され得る。集団の死亡率の低下は、例えば、ある集団について、活性化合物での処置の開始後の単位時間あたりの疾患関連死の平均数を計算することによって、測定され得る。集団の死亡率の低下は、例えば、ある集団について、活性化合物での処置の1回目の完了後の単位時間あたりの疾患関連死の平均数を計算することによって、測定され得る。
がんの処置は、腫瘍増殖率の低下をもたらし得る。好ましくは、処置後、腫瘍増殖率は、処置前の数に対して、少なくとも5%減少し;より好ましくは、腫瘍増殖率は、少なくとも10%減少し;より好ましくは、少なくとも20%減少し;より好ましくは、少なくとも30%減少し;より好ましくは、少なくとも40%減少し;より好ましくは、少なくとも50%減少し;なおより好ましくは、少なくとも50%減少し;そして最も好ましくは、少なくとも75%減少する。腫瘍増殖率は、再現性のある任意の測定手段により測定され得る。腫瘍増殖率は、単位時間あたりの腫瘍直径の変化に従って測定され得る。
がんの処置は、腫瘍再増殖の減少をもたらし得る。好ましくは、処置後、腫瘍再増殖は、5%未満であり;より好ましくは、腫瘍再増殖は、10%未満;より好ましくは、20%未満;より好ましくは、30%未満;より好ましくは、40%未満;より好ましくは、50%未満;なおより好ましくは、50%未満;そして最も好ましくは、75%未満である。腫瘍再増殖は、再現性のある任意の測定手段により測定され得る。腫瘍再増殖は、例えば、処置後の以前の腫瘍収縮後の腫瘍の直径の増加を測定することによって、測定される。腫瘍再増殖の減少は、処置を止めた後に腫瘍が再発し損なうことによって、示される。
細胞増殖性障害の処置または予防は、細胞増殖の割合の減少をもたらし得る。好ましくは、処置後、細胞増殖の割合は、少なくとも5%;より好ましくは、少なくとも10%;より好ましくは、少なくとも20%;より好ましくは、少なくとも30%;より好ましくは、少なくとも40%;より好ましくは、少なくとも50%;なおより好ましくは、少なくとも50%;そして最も好ましくは、少なくとも75%減少する。細胞増殖の割合は、再現性のある任意の測定手段により測定され得る。細胞増殖の割合は、例えば、単位時間あたりに組織サンプル中で分裂する細胞の数を測定することによって、測定される。
細胞増殖性障害の処置または予防は、増殖する細胞の割合の減少をもたらし得る。好ましくは、処置後、増殖する細胞の割合は、少なくとも5%;より好ましくは、少なくとも10%;より好ましくは、少なくとも20%;より好ましくは、少なくとも30%;より好ましくは、少なくとも40%;より好ましくは、少なくとも50%;なおより好ましくは、少なくとも50%;そして最も好ましくは、少なくとも75%減少する。増殖する細胞の割合は、再現性のある任意の測定手段により測定され得る。好ましくは、増殖する細胞の割合は、例えば、組織サンプル中の分裂しない細胞の数に対する分裂する細胞の数を定量することによって、測定される。増殖する細胞の割合は、有糸分裂指数と等価であり得る。
細胞増殖性障害の処置または予防は、細胞増殖の領域またはゾーンのサイズの減少をもたらし得る。好ましくは、処置後、細胞増殖の領域またはゾーンのサイズは、処置前のそのサイズに対して、少なくとも5%減少し;より好ましくは、少なくとも10%減少し;より好ましくは、少なくとも20%減少し;より好ましくは、少なくとも30%減少し;より好ましくは、少なくとも40%減少し;より好ましくは、少なくとも50%減少し;なおより好ましくは、少なくとも50%減少し;そして最も好ましくは、少なくとも75%減少する。細胞増殖の領域またはゾーンのサイズは、再現性のある任意の測定手段により測定され得る。細胞増殖の領域またはゾーンのサイズは、細胞増殖の領域またはゾーンの直径または幅として測定され得る。
細胞増殖性障害の処置または予防は、異常な外観または形態を有する細胞の数または割合の減少をもたらし得る。好ましくは、処置後、異常な形態を有する細胞の数は、処置前のそのサイズに対して、少なくとも5%減少し;より好ましくは、少なくとも10%減少し;より好ましくは、少なくとも20%減少し;より好ましくは、少なくとも30%減少し;より好ましくは、少なくとも40%減少し;より好ましくは、少なくとも50%減少し;なおより好ましくは、少なくとも50%減少し;そして最も好ましくは、少なくとも75%減少する。異常な細胞の外観または形態は、再現性のある任意の測定手段により測定され得る。異常な細胞の形態は、顕微鏡検査法により、例えば、反転組織培養物顕微鏡を使用して、測定され得る。異常な細胞の形態は、核の多形態性の形態を取り得る。
本明細書中で使用される場合、用語「選択的に」とは、ある集団において、別の集団においてよりも高い頻度で起こる傾向があることを意味する。比較される集団は、細胞集団であり得る。好ましくは、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物は、がん細胞または前がん細胞に対して選択的に作用するが、正常細胞には作用しない。好ましくは、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物は、1つの分子標的(例えば、標的キナーゼ)を調節するように選択的に働くが、別の分子標的(例えば、非標的キナーゼ)を有意に調節しない。本発明はまた、酵素(例えば、キナーゼ)の活性を選択的に阻害する方法を提供する。好ましくは、ある事象が集団Bと比較して集団Aにおいて2倍より高い頻度で起こる場合、この事象は、集団Bに対して集団Aにおいて選択的に起こる。ある事象が集団Aにおいて5倍より高い頻度で起こる場合、この事象は選択的に起こる。ある事象が集団Bと比較して集団Aにおいて10倍より高い頻度;より好ましくは、50倍より高い頻度;なおより好ましくは、100倍より高い頻度;そして最も好ましくは、集団Aにおいて1000倍より高い頻度で起こる場合、この事象は選択的に起こる。例えば、細胞死は、正常細胞と比較してがん細胞において2倍より高い頻度で起こる場合、がん細胞において選択的に起こるといわれる。
本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物は、分子標的(例えば、標的キナーゼ)の活性を調節し得る。調節とは、分子標的の活性の刺激または阻害をいう。好ましくは、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物は、この化合物の存在を欠いていることのみを除いて同じ条件下での分子標的の活性と比較して、この化合物が分子標的の活性を少なくとも2倍刺激または阻害する場合、分子標的の活性を調節する。より好ましくは、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物は、この化合物の存在を欠いていることのみを除いて同じ条件下での分子標的の活性と比較して、この化合物が分子標的の活性を少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍刺激または阻害する場合、分子標的の活性を調節する。分子標的の活性は、再現性のある任意の手段により測定され得る。分子標的の活性は、インビトロで測定されてもインビボで測定されてもよい。例えば、分子標的の活性は、酵素活性アッセイまたはDNA結合アッセイによりインビトロで測定され得るか、あるいは分子標的の活性は、レポーター遺伝子の発現についてアッセイすることによりインビボで測定され得る。
本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物は、この化合物の存在を欠いていることのみを除いて同じ条件下での分子標的の活性と比較して、この化合物の添加が分子標的の活性を10%より大きく刺激も阻害もしない場合、分子標的の活性を有意に調節しない。
本明細書中で使用される場合、用語「アイソザイム選択的」とは、ある酵素の第二のアイソフォームと比較して、ある酵素の第一のアイソフォームの優先的な阻害または刺激(例えば、キナーゼアイソザイムβと比較してキナーゼアイソザイムαの優先的な阻害または刺激)を意味する。好ましくは、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物は、生物学的効果を達成するために必要とされる投薬量において、最低4倍の差、好ましくは10倍の差、より好ましくは50倍の差を示す。好ましくは、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物は、阻害の範囲にわたってこの差を示し、そしてこの差は、目的の分子標的についてのIC50(すなわち、50%阻害)で例示される。
本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物を、それを必要とする被験体または細胞に投与することにより、目的のキナーゼの活性の調節(すなわち、刺激または阻害)がもたらされ得る。
本発明は、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物の生物学的活性を評価する方法を提供する。1つの方法において、酵素活性に基づくアッセイが利用され得る。1つの特定の酵素活性アッセイにおいて、酵素活性は、キナーゼに由来する。本明細書中で使用される場合、「キナーゼ」とは、ATP由来のγ−リン酸が、タンパク質およびペプチドのSer/ThrまたはTyrの側鎖上のヒドロキシル基に移動するのを触媒し、種々の重要な細胞機能(おそらく最も顕著には、シグナル伝達、分化、および増殖)の制御に密接に関与する、酵素の大きいクラスをいう。人体において、約2,000種の異なるプロテインキナーゼが推定されており、そしてこれらの各々は特定のタンパク質/ペプチド基質をリン酸化するが、これらは全て、同じ第二の基質ATPに、高度に保存されたポケット内で結合する。公知のがん遺伝子産物のうちの約50%が、プロテインチロシンキナーゼ(PTK)であり、そしてそれらのキナーゼ活性は、細胞の形質転換をもたらすことが示されてきました。好ましくは、アッセイされるキナーゼはチロシンキナーゼである。
本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物により引き起こされる、酵素活性の変化は、本開示のアッセイにおいて測定され得る。この酵素活性の変化は、特定の基質のリン酸化の程度の変化によって特徴付けられ得る。本明細書中で使用される場合、「リン酸化」とは、基質(タンパク質および有機分子が挙げられる)へのリン酸基の付加をいい、そしてタンパク質の生物学的活性を調節する際に重要な役割を果たす。好ましくは、アッセイおよび測定されるリン酸化は、チロシン残基へのリン酸基の付加を包含する。上記基質は、ペプチドまたはタンパク質であり得る。
いくつかのアッセイにおいて、免疫学的試薬(例えば、抗体および抗原)が使用される。蛍光が、いくつかのアッセイにおいて酵素活性を測定する際に利用され得る。本明細書中で使用される場合、「蛍光」とは、同じ分子によってより高エネルギーの入射光子を吸収する結果として、分子が光子を放出するプロセスをいう。本開示の化合物の生物学的活性を評価する具体的な方法は、実施例に記載されている。
本明細書中で使用される場合、c−Metの活性とは、c−Metによりもたらされる任意の生物学的機能または活性をいう。例えば、c−Metの機能としては、下流の標的タンパク質のリン酸化が挙げられる。c−Metの他の機能としては、自己リン酸化、アダプタータンパク質(例えば、Gab−1、Grb−2、Shc、SHP2およびc−Cbl)の結合、ならびにシグナル伝達物質(例えば、Ras、Src、PI3K、PLC−γ、STATs、ERK1、ERK2およびFAK)の活性化が挙げられる。
本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物を、それを必要とする被験体または細胞に投与することにより、細胞内標的(例えば、基質)の活性の調節(すなわち、刺激または阻害)がもたらされる。数個の細胞内標的(アダプタータンパク質(例えば、Gab−1、Grb−2、Shc、SHP2およびc−Cbl)、ならびにシグナル伝達物質(例えば、Ras、Src、PI3K、PLC−γ、STATs、ERK1、ERK2およびFAK)が挙げられるが、これらに限定されない)が、本発明の化合物によって調節され得る。
活性化とは、組成物(例えば、タンパク質または核酸)を、所望の生物学的機能を実現するのに適切な状態にすることをいう。活性化され得る組成物はまた、不活性化状態を有する。活性化された組成物は、阻害的生物学的機能または刺激的生物学的機能、あるいはこれらの両方を有し得る。
上昇とは、組成物(例えば、タンパク質または核酸)の所望の生物学的活性の増大をいう。上昇は、組成物の濃度の増加により起こり得る。
本明細書中で使用される場合、「細胞周期チェックポイント経路」とは、細胞周期チェックポイントの調節に関与する生化学的経路をいう。細胞周期チェックポイント経路は、刺激効果または阻害効果、あるいはその両方を、細胞周期チェックポイントを含む1つ以上の機能に対して有し得る。細胞周期チェックポイント経路は、少なくとも2つの組成物(好ましくは、タンパク質)からなり、これらの両方が、細胞周期チェックポイントの調節に寄与する。細胞周期チェックポイント経路は、細胞周期チェックポイント経路の1つ以上のメンバーの活性化により、活性化され得る。好ましくは、細胞周期チェックポイント経路は、生化学的シグナル伝達経路である。
本明細書中で使用される場合、「細胞周期チェックポイント調節因子」とは、少なくとも部分的に、細胞周期チェックポイントの調節において機能し得る組成物をいう。細胞周期チェックポイント調節因子は、刺激効果または阻害効果、あるいはその両方を、細胞周期チェックポイントを含む1つ以上の機能に対して有し得る。細胞周期チェックポイント調節因子は、タンパク質であってもタンパク質でなくてもよい。
がんまたは細胞増殖性障害の処置は、細胞死をもたらし得、そして好ましくは、細胞死は、その集団における細胞数の少なくとも10%の減少をもたらす。より好ましくは、細胞死とは、少なくとも20%の減少;より好ましくは、少なくとも30%の減少;より好ましくは、少なくとも40%の減少;より好ましくは、少なくとも50%の減少;最も好ましくは、少なくとも75%の減少を意味する。集団における細胞数は、再現性のある任意の手段により測定され得る。集団における細胞数は、蛍光細胞分析分離(FACS)、免疫蛍光顕微鏡検査法および光学顕微鏡法により測定され得る。細胞死を測定する方法は、Liら,Proc Natl Acad Sci U S A.100(5):2674−8,2003に示されている。1つの局面において、細胞死は、アポトーシスにより起こる。
好ましくは、有効量の本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物は、正常細胞に対して有意に細胞傷害性ではない。治療有効量の化合物は、治療有効量での化合物の投与が10%より多くの正常細胞に細胞死を誘導しない場合、正常細胞に対して有意に細胞傷害性ではない。治療有効量の化合物は、治療有効量での化合物の投与が10%より多くの正常細胞に細胞死を誘導しない場合、正常細胞の生存能力に有意な影響を与えない。1つの局面において、細胞死は、アポトーシスにより起こる。
細胞を、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物と接触させることにより、細胞死が、がん細胞において選択的に誘導または活性化され得る。本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物を、それを必要とする被験体に投与することにより、細胞死が、がん細胞において選択的に誘導または活性化され得る。細胞を、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物と接触させることにより、細胞死が、細胞増殖性障害により影響を受けた1つ以上の細胞において選択的に誘導され得る。好ましくは、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物を、それを必要とする被験体に投与することにより、細胞死が、細胞増殖性障害により影響を受けた1つ以上の細胞において選択的に誘導される。
本発明は、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物を、がんの処置または予防を必要とする被験体に投与することによってがんを処置または予防する方法に関し、ここで本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物の投与は、以下のうちの1つ以上をもたらす:細胞周期のG1期および/またはS期の細胞の蓄積、正常細胞の細胞死が有意な量でない、がん細胞における細胞死を介する細胞毒、動物における少なくとも2の治療指数での抗腫瘍活性、および細胞周期チェックポイントの活性化。本明細書中で使用される場合、「治療指数」とは、最大許容用量を有効用量で割ったものである。
当業者は、本明細書中で議論される公知の技術または等価な技術の詳細な説明について、一般的な参考書を参照し得る。これらの教科書としては、Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Inc.(2005);Sambrookら,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(第3版),Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,New York(2000);Coliganら,Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,N.Y.;Ennaら,Current Protocols in Pharmacology,John Wiley & Sons,N.Y.;Finglら,The Pharmacological Basis of Therapeutics(1975),Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PA,第18版(1990)が挙げられる。これらの教科書は、もちろん、本発明の局面を作製または使用する際にもまた参照され得る。
本明細書中で使用される場合、「併用療法」または「共治療(co−therapy)」は、複数の治療剤の共作用から得られる有利な効果を提供することを意図して、特定の処置計画の一部として、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物、および少なくとも第二の剤の投与を包含する。組み合わせの有利な効果としては、治療剤の組み合わせから生じる薬物動態学的または薬力学的な共作用が挙げられるが、これらに限定されない。これらの治療剤を組み合わせて投与することは、代表的に、規定された期間(通常、選択された組み合わせに依存して、数分間、数時間、数日間または数週間)にわたって行われる。「併用療法」は、本発明の組み合わせを付随的に任意にもたらす別の単剤療法の一部としての、これらの治療剤のうちの2種以上の投与を包含することを意図され得るが、一般には意図されない。
「併用療法」は、これらの治療剤を逐次的な様式で投与すること(ここで各治療剤は、異なる時点で投与される)、およびこれらの治療剤、またはこれらの治療剤の少なくとも2種を、実質的に同時の様式で投与することを包含することを意図される。実質的に同時の投与は、例えば、一定の比の各治療剤を有する1つのカプセル剤、またはこれらの治療剤の各々について1つずつのカプセルを複数、被験体に投与することにより、達成され得る。各治療剤の逐次的または実質的に同時の投与は、適切な経路(経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、および粘膜組織を通しての直接の吸収が挙げられるが、これらに限定されない)により行われ得る。これらの治療剤は、同じ経路によって投与されても異なる投与によって投与されてもよい。例えば、選択される組み合わせの第一の治療剤は、静脈内注射により投与され得、一方で、この組み合わせの他の治療剤は、経口投与され得る。あるいは、例えば、全ての治療剤が経口投与され得るか、または全ての治療剤が静脈内注射により投与され得る。治療剤が投与される順序は、厳密に重大ではない。
「併用療法」はまた、上記のような治療剤の、他の生物学的に活性な成分および非薬物療法(例えば、外科手術または放射線処置)とさらに組み合わせての投与を包含する。この併用療法が非薬物処置をさらに含む場合、この非薬物処置は、この治療剤と非薬物処置との組み合わせの共作用からの有利な効果が達成される限り、任意の適切な時点で行われ得る。例えば、適切な症例において、この有利な効果は、この非薬物処置が一時的に(おそらく、数日間または数週間でさえ)治療剤の投与から除かれる場合に、依然として達成される。
本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、アナログもしくは誘導体は、第二の化学療法剤と組み合わせて投与され得る。この第二の化学療法剤(抗新生物剤または抗増殖剤ともまた称される)は、アルキル化剤;抗生物質;代謝拮抗物質;解毒剤;インターフェロン;ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体;EGFRインヒビター;HER2インヒビター;ヒストンデアセチラーゼインヒビター;ホルモン;有糸分裂インヒビター;MTORインヒビター;マルチキナーゼインヒビター(multi−kinase inhibitor);セリン/トレオニンキナーゼインヒビター;チロシンキナーゼインヒビター;VEGF/VEGFRインヒビター;タキサンまたはタキサン誘導体、アロマターゼインヒビター、アントラサイクリン、微小管標的薬物、トポイソメラーゼ毒薬、分子標的または酵素のインヒビター(例えば、キナーゼインヒビター)、シチジンアナログ薬物、あるいはwww.cancer.org/docroot/cdg/cdg_0.aspに列挙される任意の化学療法剤、抗腫瘍剤または抗増殖剤であり得る。
例示的なアルキル化剤としては、シクロホスファミド(シトキサン(Cytoxan);ネオサール(Neosar));クロラムブシル(ロイケラン(Leukeran));メルファラン(アルケラン);カルムスチン(BiCNU);ブスルファン(ブスルフェックス(Busulfex));ロムスチン(CeeNU);ダカルバジン(DTIC−Dome);オキサリプラチン(エロキサチン(Eloxatin));カルムスチン(グリアデル(Gliadel));イフォスファミド(イフェックス(Ifex));メクロレタミン(ムスタルゲン(Mustargen));ブスルファン(ミレラン(Myleran));カルボプラチン(パラプラチン);シスプラチン(CDDP;プラチノール(Platinol));テモゾロミド(テモダール);チオテパ(チオプレックス(Thioplex));ベンダムスチン(トレアンダ(Treanda));またはストレプトゾシン(ザノサール(Zanosar))が挙げられるが、これらに限定されない。
例示的な抗生物質としては、ドキソルビシン(アドリアマイシン);ドキソルビシンリポソーム(ドキシル(Doxil));ミトキサントロン(ノバントロン);ブレオマイシン(ブレノキサン(Blenoxane));ダウノルビシン(セルビジン(Cerubidine));ダウノルビシンリポソーム(ダウノキソーム(DaunoXome));ダクチノマイシン(コスメゲン);エピルビシン(エレンス(Ellence));イダルビシン(イダマイシン);プリカマイシン(ミトラシン(Mithracin));マイトマイシン(ムタマイシン(Mutamycin));ペントスタチン(ニペント(Nipent));またはバルルビシン(valrubicin)(バルスター(Valstar))が挙げられるが、これらに限定されない。
例示的な代謝拮抗物質としては、フルオロウラシル(アヅルシル(Adrucil));カペシタビン(ゼローダ);ヒドロキシ尿素(ハイドレア);メルカプトプリン(プリネトール(Purinethol));ペメトレキセド(アリムタ);フルダラビン(フルダラ);ネララビン(nelarabine)(アラノン(Arranon));クラドリビン(クラドリビンノバプラス(Cladribine Novaplus));クロファラビン(clofarabine)(クロラル(Clolar));シタラビン(シトサール−U(Cytosar−U));デシタビン(ダコゲン(Dacogen));シタラビンリポソーム(デポシット(DepoCyt));ヒドロキシ尿素(ドロキサ(Droxia));プララトレキサート(pralatrexate)(フォロチン(Folotyn));フロクスウリジン(FUDR);ゲムシタビン(ジェムザール);クラドリビン(ロイスタチン);フルダラビン(オフォルタ(Oforta));メトトレキサート(MTX;レウマトレックス(Rheumatrex));メトトレキサート(トレキサル(Trexall));チオグアニン(タブロイド(Tabloid));TS−1またはシタラビン(タラビンPFS(Tarabine PFS))が挙げられるが、これらに限定されない。
例示的な解毒剤としては、アミホスチン(エチオール(Ethyol))またはメスナ(メスネックス(Mesnex))が挙げられるが、これらに限定されない。
例示的なインターフェロンとしては、インターフェロンα−2b(イントロンA)またはインターフェロンα−2a(ロフェロン−A(Roferon−A))が挙げられるが、これらに限定されない。
例示的なポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体としては、トラスツズマブ(ハーセプチン);オファツムマブ(ofatumumab)(アルゼラ(Arzerra));ベバシズマブ(bevacizumab)(アバスチン(Avastin));リツキシマブ(リツキサン);セツキシマブ(エルビタックス(Erbitux));パニツムマブ(panitumumab)(ベクチビックス(Vectibix));トシツモマブ(tositumomab)/ヨウ素131トシツモマブ(ベキサル(Bexxar));アレムツマブ(alemtuzumab)(カンパス(Campath));イブリツモマブ(ibritumomab)(ゼバリン(Zevalin);In−111;Y−90ゼバリン);ゲムツズマブ(マイロターグ);エクリツマブ(eculizumab)(ソリリス(Soliris))オルデノスマブ(ordenosumab)が挙げられるが、これらに限定されない。
例示的なEGFRインヒビターとしては、ゲフィチニブ(イレッサ);ラパチニブ(lapatinib)(チケルブ(Tykerb));セツキシマブ(エルビタックス);エルロチニブ(erlotinib)(タルセバ(Tarceva));パニツムマブ(ベクチビックス);PKI−166;カネルチニブ(canertinib)(CI−1033);マツズマブ(matuzumab)(Emd7200)またはEKB−569が挙げられるが、これらに限定されない。
例示的なHER2インヒビターとしては、トラスツズマブ(ハーセプチン);ラパチニブ(チケルブ)またはAC−480が挙げられるが、これらに限定されない。
ヒストンデアセチラーゼインヒビターとしては、ボリノスタット(vorinostat)(ゾリンザ(Zolinza))が挙げられるが、これに限定されない。
例示的なホルモンとしては、タモキシフェン(ソルタモックス(Soltamox);ノルバデックス);ラロキシフェン(エビスタ(Evista));メゲストロール(メガセ(Megace));ロイプロリド(ルプロン(Lupron);ルプロンデポー;エリガード(Eligard);ビアデュル(Viadur));フルベストラント(fulvestrant)(ファスロデックス(Faslodex));レトロゾール(フェマーラ);トリプトレリン(トレルスター(Trelstar)LA;トレルスターデポー);エキセメスタン(アロマシン);ゴセレリン(ゾラデックス);ビカルタミド(カソデックス);アナストロゾール(アリミデックス);フルオキシメステロン(アンドロキシ(Androxy);ハロテスチン(Halotestin));メドロキシプロゲステロン(プロベラ(Provera);デポ−プロベラ);エストラムスチン(Emcyt);フルタミド(ユーレキシン(Eulexin));トレミフェン(フェアストン);デガレリックス(degarelix)(フィルマゴン(Firmagon));ニルタミド(ニランドロン(Nilandron));アバレリックス(abarelix)(プレナキシス(Plenaxis));またはテストラクトン(テスラク(Teslac))が挙げられるが、これらに限定されない。
例示的な有糸分裂インヒビターとしては、パクリタキセル(タキソール;オンキソール(Onxol);アブラキサン(Abraxane));ドセタキセル(タキソテール);ビンクリスチン(オンコビン;ビンカサル(Vincasar)PFS);ビンブラスチン(ベルバン(Velban));エトポシド(トポサル(Toposar);エトポホス(Etopophos);ベプシド);テニポシド(ブモン(Vumon));イキサベピロン(ixabepilone)(イキセムプラ(Ixempra));ノコダゾール;エポチロン(epothilone);ビノレルビン(ナベルビン);カンプトテシン(CPT);イリノテカン(カンプトスター(Camptosar));トポテカン(ハイカムチン);アムサクリンまたはラメラリンD(lamellarin D)(LAM−D)が挙げられるが、これらに限定されない。
例示的なMTORインヒビターとしては、エベロリムス(everolimus)(アフィニトール(Afinitor))またはテムシロリムス(temsirolimus)(トリセル(Torisel));ラパミューン(rapamune)、リダホロリムス(ridaforolimus);またはAP23573が挙げられるが、これらに限定されない。
例示的なマルチキナーゼインヒビターとしては、ソラフェニブ(sorafenib)(ネキサバル(Nexavar));スニチニブ(sunitinib)(ステント(Sutent));BIBW 2992;E7080;Zd6474;PKC−412;モテサニブ(motesanib);またはAP24534が挙げられるが、これらに限定されない。
例示的なセリン/トレオニンキナーゼインヒビターとしては、ルボキシスタウリン(ruboxistaurin);エリル/ファスジル塩酸塩;フラボピリドール(flavopiridol);セリシクリブ(seliciclib)(CYC202;ロスコビトリン(Roscovitrine));SNS−032(BMS−387032);Pkc412;ブリオスタチン(bryostatin);KAI−9803;SF1126;VX−680;Azd1152;Arry−142886(AZD−6244);SCIO−469;GW681323;CC−401;CEP−1347またはPD 332991が挙げられるが、これらに限定されない。
例示的なチロシンキナーゼインヒビターとしては、エルロチニブ(タルセバ);ゲフィチニブ(イレッサ);イマチニブ(グリベック(Gleevec));ソラフェニブ(ネキサバル);スニチニブ(ステント);トラスツズマブ(ハーセプチン);ベバシズマブ(アバスチン);リタキシマブ(リツキサン);ラパチニブ(チケルブ);セツキシマブ(エルビタックス);パニツムマブ(ベクチビックス);エベロリムス(アフィニトール);アレムツマブ(カンパス);ゲムツズマブ(マイロターグ);テムシロリムス(トリセル);パゾパニブ(pazopanib)(ヴォトリエント(Votrient));ダサチニブ(dasatinib)(スプリセル(Sprycel));ニロチニブ(nilotinib)(タシグナ(Tasigna));バタラニブ(vatalanib)(Ptk787;ZK222584);CEP−701;SU5614;MLN518;XL999;VX−322;Azd0530;BMS−354825;SKI−606 CP−690;AG−490;WHI−P154;WHI−P131;AC−220;またはAMG888が挙げられるが、これらに限定されない。
例示的なVEGF/VEGFRインヒビターとしては、ベバシズマブ(アバスチン);ソラフェニブ(ネキサバル);スニチニブ(ステント);ラニビツマブ(ranibizumab);ペガプタニブ(pegaptanib);またはバンデチニブ(vandetinib)が挙げられるが、これらに限定されない。
例示的な微小管標的薬物としては、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロンおよびナベルビンが挙げられるが、これらに限定されない。
例示的なトポイソメラーゼ毒薬としては、テニポシド、エトポシド、アドリアマイシン、カンプトテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、ミトキサントロン、アムサクリン、エピルビシンおよびイダルビシンが挙げられるが、これらに限定されない。
例示的なタキサンまたはタキサン誘導体としては、パクリタキセルおよびドセタキソール(docetaxol)が挙げられるが、これらに限定されない。
例示的な一般的な化学療法剤、抗新生物剤、抗増殖剤としては、アルトレタミン(ヘキサレン(Hexalen));イソトレチノイン(アキュテイン(Accutane);アムネステーム(Amnesteem);クララビス(Claravis);ソトレト(Sotret));トレチノイン(ベサノイド);アザシチジン(ビダザ(Vidaza));ボルテゾニブ(bortezomib)(ベルカデ(Velcade))アスパラギナーゼ(エルスパル(Elspar));レバミゾール(エルガミソル(Ergamisol));ミトーテン(リソドレン(Lysodren));プロカルバジン(マツラネ(Matulane));ペガスパーガセ(pegaspargase)(オンカスパル(Oncaspar));デニロイキンジフチトクス(denileukin diftitox)(オンタク(Ontak));ポルフィマー(フォトフリン);アルデスロイキン(aldesleukin)(プロロイキン(Proleukin));レナリドミド(lenalidomide)(レブリミド(Revlimid));ベキサロテン(bexarotene)(タルグレチン(Targretin));サリドマイド(サロミド(Thalomid));テムシロリムス(トリセル);三酸化ヒ素(トリセノックス);ベルテポルフィン(verteporfin)(ビスジン(Visudyne));ミモシン(mimosine)(ロイセノール(Leucenol));(1M テガフール − 0.4 M 5−クロロ−2,4−ジヒドロキシピリミジン − 1 M オキソン酸カリウム(potassium oxonate))またはロバスタチンが挙げられるが、これらに限定されない。
別の局面において、第二の化学療法剤は、G−CSF(顆粒球コロニー刺激因子)などのサイトカインであり得る。別の局面において、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、アナログもしくは誘導体は、放射線治療と組み合わせて投与され得る。放射線治療はまた、多剤療法の一部として、本発明の化合物および本明細書中に記載される別の化学療法剤と組み合わせて投与され得る。なお別の局面において、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、アナログもしくは誘導体は、標準的な化学療法の組み合わせ(例えば、CMF(シクロホスファミド、メトトレキサートおよび5−フルオロウラシル)、CAF(シクロホスファミド、アドリアマイシンおよび5−フルオロウラシル)、AC(アドリアマイシンおよびシクロホスファミド)、FEC(5−フルオロウラシル、エピルビシン、およびシクロホスファミド)、ACTまたはATC(アドリアマイシン、シクロホスファミド、およびパクリタキセル)、リタキシマブ、ゼローダ(カペシタビン)、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、TS−1(1:0.4:1のモル比のテガフール、ギメスタット(gimestat)およびオタスタットカリウム(otastat potassium))、カンプトテシン−11(CPT−11、イリノテカンまたはカンプトスター(商標))あるいはCMFP(シクロホスファミド、メトトレキサート、5−フルオロウラシルおよびプレドニゾン)であるがこれらに限定されない)と組み合わせて投与され得る。
好ましい実施形態において、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、多型もしくは溶媒和物は、酵素(例えば、レセプターキナーゼまたは非レセプターキナーゼ)の阻害剤と一緒に投与され得る。本発明のレセプターキナーゼまたは非レセプターキナーゼは、例えば、チロシンキナーゼまたはセリン/スレオニンキナーゼである。本発明のキナーゼインヒビターは、低分子、ポリ核酸、ポリペプチド、または抗体である。
例示的なキナーゼインヒビターとしては、ベバシズマブ(VEGFを標的化する)、BIBW 2992(EGFRおよびErb2を標的化する)、セツキシマブ(Cetuximab)/エルビタックス(Erb1を標的化する)、イマチニブ/グリベック(Gleevic)(Bcr−Ablを標的化する)、トラスツズマブ(Erb2を標的化する)、ゲフィチニブ/イレッサ(EGFRを標的化する)、ラニビツマブ(VEGFを標的化する)、ペガプタニブ(VEGFを標的化する)、エルロチニブ/タルセバ(Erb1を標的化する)、ニロチニブ(Bcr−Ablを標的化する)、ラパチニブ(Erb1およびErb2/Her2を標的化する)、GW−572016/ラパチニブジトシレート(HER2/Erb2を標的化する)、パニツムマブ/ベクチビックス(EGFRを標的化する)、バンデチニブ(RET/VEGFRを標的化する)、E7080(RETおよびVEGFRを含む複数の標的)、ハーセプチン(HER2/Erb2を標的化する)、PKI−166(EGFRを標的化する)、カネルチニブ/CI−1033(EGFRを標的化する)、スニチニブ/SU−11464/ステント(EGFRおよびFLT3を標的化する)、マツズマブ/Emd7200(EGFRを標的化する)、EKB−569(EGFRを標的化する)、Zd6474(EGFRおよびVEGFRを標的化する)、PKC−412(VEGRおよびFLT3を標的化する)、バタラニブ/Ptk787/ZK222584(VEGRを標的化する)、CEP−701(FLT3を標的化する)、SU5614(FLT3を標的化する)、MLN518(FLT3を標的化する)、XL999(FLT3を標的化する)、VX−322(FLT3を標的化する)、Azd0530(SRCを標的化する)、BMS−354825(SRCを標的化する)、SKI−606(SRCを標的化する)、CP−690(JAKを標的化する)、AG−490(JAKを標的化する)、WHI−P154(JAKを標的化する)、WHI−P131(JAKを標的化する)、ソラフェニブ/ネキサバル(RAFキナーゼ、VEGFR−1、VEGFR−2、VEGFR−3、PDGFR−β、KIT、FLT−3、およびRETを標的化する)、ダサチニブ/スプリセル(BCR/ABLおよびSrc)、AC−220(Flt3を標的化する)、AC−480(全てのHERタンパク質、「panHER」を標的化する)、モテサニブジホスフェート(VEGF1−3、PDGFR、およびc−kitを標的化する)、デノスマブ(Denosumab)(RANKLを標的化し、SRCを阻害する)、AMG888(HER3を標的化する)、ならびにAP24534(Flt3を含む複数の標的)が挙げられるが、これらに限定されない。
例示的なセリン/スレオニンキナーゼインヒビターとしては、ラパミューン(mTOR/FRAP1を標的化する)、デフォロリムス(Deforolimus)(mTORを標的化する)、セルチカン(Certican)/エベロリムス(mTOR/FRAP1を標的化する)、AP23573(mTOR/FRAP1を標的化する)、エリル/ファスジル塩酸塩(RHOを標的化する)、フラボピリドール(CDKを標的化する)、セリシクリブ/CYC202/ロスコビトリン(CDKを標的化する)、SNS−032/BMS−387032(CDKを標的化する)、ルボキシスタウリン(PKCを標的化する)、Pkc412(PKCを標的化する)、ブリオスタチン(PKCを標的化する)、KAI−9803(PKCを標的化する)、SF1126(PI3Kを標的化する)、VX−680(オーロラキナーゼを標的化する)、Azd1152(オーロラキナーゼを標的化する)、Arry−142886/AZD−6244(MAP/MEKを標的化する)、SCIO−469(MAP/MEKを標的化する)、GW681323(MAP/MEKを標的化する)、CC−401(JNKを標的化する)、CEP−1347(JNKを標的化する)、およびPD 332991(CDKを標的化する)が挙げられるが、これらに限定されない。
(4.薬学的組成物)
本発明はまた、式Ia、Ib、Ic、またはIdの化合物を、少なくとも1種の薬学的に受容可能な賦形剤またはキャリアと組み合わせて含有する、薬学的組成物を提供する。
「薬学的組成物」とは、本発明の化合物を含有する、被験体への投与に適切な形態の処方物である。1つの実施形態において、この薬学的組成物は、バルク形態または単位剤形である。単位剤形は、種々の形態(例えば、カプセル、IVバッグ、錠剤、エアロゾル吸入器またはバイアルの単一ポンプが挙げられる)のいずれかである。単位用量の組成物中の活性成分(例えば、本開示の化合物またはその塩、水和物、溶媒和物もしくは異性体の処方物)の量は、有効量であり、そして関与する特定の処置に従って変わる。当業者は、患者の年齢および状態に依存して、この投薬量に対する慣用的な変更を行うことが時々必要であることを理解する。この投薬量はまた、投与経路に依存する。種々の経路が想定され、経口、肺、直腸、非経口、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、吸入、頬、舌下、胸膜腔内、鞘内、および鼻腔内などが挙げられる。本発明の化合物の局所投与または経皮投与のための剤形としては、散剤、スプレー、軟膏剤、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、液剤、パッチおよび吸入剤が挙げられる。1つの実施形態において、この活性化合物は、滅菌条件下で薬学的に受容可能なキャリアと混合され、そして必要とされる任意の防腐剤、緩衝剤または推進剤と混合される。
本明細書中で使用される場合、語句「薬学的に受容可能な」とは、妥当な医療判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴わずに、合理的な利益/危険比に合う、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適切な、化合物、物質、組成物、キャリア、および/または剤形をいう。
「薬学的に受容可能な賦形剤」とは、一般的に安全であり、非毒性であり、そして生物学的にも他の点でも望ましくないことがない、薬学的組成物を調製する際に有用な賦形剤を意味し、そして獣医学用途およびヒト医薬用途において受容可能な賦形剤が挙げられる。「薬学的に受容可能な賦形剤」とは、本明細書中および特許請求の範囲で使用される場合、1つのこのような賦形剤と、1つより多いこのような賦形剤との両方を包含する。
本発明の薬学的組成物は、その意図される投与経路に合うように製剤される。投与経路の例としては、非経口(例えば、静脈内、皮内、皮下)、経口(例えば、吸入)、経皮(局所)、および経粘膜投与が挙げられる。非経口用途、皮内用途、または皮下用途のために使用される溶液または懸濁物は、以下の成分を含有し得る:滅菌希釈剤(例えば、注射用水、生理食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒);抗菌剤(例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン);酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム);キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸);緩衝剤(例えば、アセテート、シトレートまたはホスフェート)、および張度を調整するための剤(例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース)。pHは、酸または塩基(例えば、塩酸または水酸化ナトリウム)を用いて調整され得る。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチックから作製された、アンプル、使い捨て注射器または多用量バイアルに収容され得る。
本発明の化合物または薬学的組成物は、化学療法処置のために現在使用されている周知の方法の多くで、被験体に投与され得る。例えば、がんの処置のためには、本発明の化合物は、腫瘍に直接注入され得るか、血流もしくは体腔に注射され得るか、または経口摂取され得るか、またはパッチを用いて皮膚を通して付けられ得る。選択される用量は、有効な処置を構築するのに充分であるべきであるが、認容不可能な副作用を引き起こすほど高いべきではない。疾患状態(例えば、がんおよび前がんなど)の状態および患者の健康状態は、好ましくは、処置後の合理的な期間中、およびその期間にわたって、綿密に監視されるべきである。
用語「治療有効量」とは、本明細書中で使用される場合、同定された疾患または状態を処置、軽減、または予防するため、あるいは検出可能な治療効果または阻害効果を示すための、薬剤の量をいう。この効果は、当該分野において公知である任意のアッセイ方法により検出され得る。被験体についての正確な有効量は、その被験体の体重、サイズおよび健康状態;その状態の性質および程度;ならびに投与のために選択された治療剤または治療剤の組み合わせに依存する。所定の状況のための治療有効量は、医師の技術および判断の範囲内である慣用的な実験によって、決定され得る。好ましい局面において、処置されるべき疾患または状態は、がんである。別の局面において、処置されるべき疾患または状態は、細胞増殖性障害である。
任意の化合物について、治療有効量は、最初に、(例えば新生物細胞の)細胞培養アッセイまたは動物モデル(通常、ラット、マウス、ウサギ、イヌ、もしくはブタ)のいずれかで推定され得る。動物モデルはまた、適切な濃度範囲および投与経路を決定するために使用され得る。次いで、このような情報は、ヒトにおける有用な用量および投与経路を決定するために使用され得る。治療/予防の効力および毒性は、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定され得る(例えば、ED50(集団の50%において治療的に有効な用量)およびLD50(集団の50%に対して致命的な用量))。毒性と治療効果との用量比は、治療指数であり、これは、比LD50/ED50として表され得る。大きい治療指数を示す薬学的組成物が好ましい。投薬量は、この範囲内で、使用される剤形、患者の重篤度、および投与経路に依存して変わり得る。
投薬量および投与は、充分なレベルの活性剤を提供するように、または所望の効果を維持するように、調節される。考慮され得る要因としては、疾患状態の重篤度、被験体の一般的健康状態、被験体の年齢、体重および性別、食事、投与の回数および頻度、薬物の組合せ、反応感受性、ならびに治療に対する許容/応答が挙げられる。長期間にわたり作用する薬学的組成物は、特定の処方物の半減期およびクリアランス速度に依存して、3〜4日ごと、毎週、または2週間ごとに1回、投与され得る。
本発明の活性化合物を含有する薬学的組成物は、一般的に公知である様式で(例えば、従来の混合、溶解、顆粒化、糖剤作製、湿式粉砕、乳化、カプセル化、捕捉、または凍結乾燥のプロセスによって)製造され得る。薬学的組成物は、従来の様式で、賦形剤および/または補助成分(活性化合物を薬学的に使用され得る調製物に加工するのを容易にするもの)を含有する1種以上の薬学的に受容可能なキャリアを使用して、製剤され得る。もちろん、適切な処方物は、選択される投与経路に依存する。
注射用途に対して適切な薬学的組成物としては、滅菌水溶液(水溶性である場合)または水性分散物、および滅菌粉末(滅菌注射可能な水溶液または水性分散物を即時調製するためのもの)が挙げられる。静脈内投与については、適切なキャリアとしては、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,N.J.)、またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、組成物は滅菌でなければならず、そして容易な注入性が存在する程度まで流動性であるべきである。組成物は、製造および保存の条件下で安定でなければならず、そして微生物(例えば、細菌および真菌)の汚染作用に対して保存されなければならない。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、ならびにこれらの適切な混合物を含有する、溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散物の場合には必要とされる粒径を維持することによって、および界面活性剤の使用によって、維持され得る。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、およびチメロサールなど)によって、達成され得る。多くの場合において、等張剤(例えば、糖、ポリアルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)、および塩化ナトリウム)を組成物中に含有させることが好ましい。注射可能な組成物の長期間の吸収は、この組成物に、吸収を遅延させる剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を含有させることによって、もたらされ得る。
滅菌注射可能溶液は、活性化合物を必要な量で適切な溶媒に単独でか、または必要に応じて上記成分の1つと、もしくは上記成分のある組み合わせと共に組み込み、その後、滅菌濾過することにより、調製され得る。一般に、分散物は、活性化合物を、塩基性分散媒および必要とされる他の成分(上記のものから)を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことにより、調製される。滅菌注射可能溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製の方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、これは、予め滅菌濾過された溶液から、活性成分および任意のさらなる所望の成分の粉末を与える。
経口組成物は一般に、不活性希釈剤または食用の薬学的に受容可能なキャリアを含有する。これらは、ゼラチンカプセルに含まれ得るか、または錠剤に圧縮され得る。経口治療投与の目的で、活性化合物は、賦形剤と一緒に組み込まれ得、そして錠剤、トローチ、またはカプセル剤の形態で使用され得る。経口組成物はまた、うがい薬として使用するために流体キャリアを使用して調製され得、ここでこの流体キャリア中の化合物は、口に入れられて口内で激しく動かされ(swished)、そして吐き出されるかまたは飲み込まれる。薬学的に適合可能な結合剤および/またはアジュバント物質が、この組成物の一部として含まれ得る。錠剤、丸剤、カプセル剤、およびトローチなどは、以下の成分または類似の性質の化合物のいずれかを含有し得る:結合剤(例えば、微結晶性セルロース、トラガカントガムまたはゼラチン);賦形剤(例えば、デンプンまたはラクトース)、崩壊剤(例えば、アルギン酸、プリモゲル(Primogel)、またはコーンスターチ);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはステロート(Sterotes));グライダント(例えば、コロイド状二酸化ケイ素);甘味剤(例えば、スクロースまたはサッカリン);あるいは矯味矯臭剤(例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジフレーバー)。
吸入による投与のために、化合物は、エアロゾルスプレーの形態で、加圧容器またはディスペンサー(適切な推進剤(例えば、二酸化炭素などの気体)を含む)あるいは噴霧器から送達される。
全身投与はまた、経粘膜手段または経皮手段による投与であり得る。経粘膜投与または経皮投与のために、浸透されるべき障壁に適切な浸透剤が、処方物中で使用される。このような浸透剤は当該分野において一般的に公知であり、そして例えば、経粘膜投与のためには、界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、経鼻スプレーまたは坐剤の使用により達成され得る。経皮投与のために、活性化合物は、当該分野において一般的に公知である軟膏剤(ointment)、軟膏剤(salve)、ゲル、またはクリームに製剤される。
活性化合物は、この化合物を身体からの迅速な排出に対して保護する薬学的に受容可能なキャリア(例えば、移植物および微小カプセル化送達システムが挙げられる、制御放出処方物)と一緒に調製され得る。生分解性の生体適合性ポリマー(例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸)が使用され得る。このような処方物の調製のための方法は、当業者に明らかである。これらの物質はまた、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.から市販で入手され得る。リポソーム懸濁物(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体に感染した細胞を標的化するリポソームが挙げられる)もまた、薬学的に受容可能なキャリアとして使用され得る。これらは、当業者に公知である方法(例えば、米国特許第4,522,811号に記載されるような)に従って調製され得る。
投与の容易さおよび投薬量の均一性のために、経口組成物または非経口組成物を投薬単位形態で製剤することが、特に有利である。投薬単位形態とは、本明細書中で使用される場合、処置されるべき被験体のために単一投薬量として適切な、物理的に不連続な単位をいい、各単位は、所望の治療効果を生じると計算された所定量の活性化合物を、必要とされる薬学的キャリアと一緒に含有する。本発明の投薬単位形態のについての詳細は、活性化合物の独特の特徴および達成されるべき特定の治療効果によって決定され、これらに直接依存する。
治療用途において、本発明に従って使用される薬学的組成物の投薬量は、選択された投薬量に影響を与える他の要因のうちでもとりわけ、剤、レシピエント患者の年齢、体重、および臨床状態、ならびにその治療を施す医師または開業医の経験および判断に依存して変わる。一般に、用量は、腫瘍の増殖を遅くし、そして好ましくは後退させるため、そしてまた好ましくは、がんの完全な後退を引き起こすのに充分であるべきである。投薬量は、約0.01mg/kg/日〜約5000mg/kg/日の範囲であり得る。好ましい局面において、用量は、約1mg/kg/日〜約1000mg/kg/日の範囲であり得る。ある局面において、用量は、約0.1mg/日〜約50g/日;約0.1mg/日〜約25g/日;約0.1mg/日〜約10g/日;約0.1mg〜約3g/日;または約0.1mg〜約1g/日の範囲であり、単一用量、分割用量または連続用量である(この用量は、患者の体重(kg)、体表面積(m2)、および年齢(歳)について調節され得る)。薬剤の有効量は、医師または他の権限のある観察者により気付かれるような、客観的に同定可能な改善を提供する量である。例えば、患者における腫瘍の後退は、腫瘍の直径に関連して測定され得る。腫瘍の直径の減少は、後退を示す。後退はまた、処置を止めた後に腫瘍が再発し損なうことによって、示される。本明細書中で使用される場合、用語「投薬有効様式」とは、被験体または細胞において所望の生物学的効果を生じるための活性化合物の量をいう。
これらの薬学的組成物は、投与のための指示書と一緒に、容器、パック、またはディスペンサーに含まれ得る。
本発明の化合物は、さらに塩を形成することが可能である。これらの形態の全てもまた、本願発明の範囲内であるとみなされる。
本明細書中で使用される場合、「薬学的に受容可能な塩」とは、親化合物がその酸性塩または塩基性塩を作製することにより修飾されている、本発明の化合物の誘導体をいう。薬学的に受容可能な塩の例としては、塩基性残基(例えば、アミン、アルカリ)の鉱酸塩または有機酸塩、あるいは酸性残基(例えば、カルボン酸)の有機塩などが挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に受容可能な塩としては、例えば非毒性の無機酸または有機酸から形成された、親化合物の従来の非毒性の塩または第四級アンモニウム塩が挙げられる。例えば、このような従来の非毒性塩としては、2−アセトキシ安息香酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重炭酸、炭酸、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、1,2−エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、グリコリアルサニリン酸(glycollyarsanilic acid)、ヘキシルレゾルシン酸、ヒドラバミン酸(hydrabamic acid)、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフトエ酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリル硫酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ナプシル酸(napsylic acid)、硝酸、シュウ酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、リン酸、ポリガラクツロン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、スバセチン酸(subacetic acid)、コハク酸、スルファミン酸、スルファニル酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、および一般に存在するアミン酸(例えば、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、アルギニンなど)から選択される無機酸および有機酸から誘導される塩が挙げられるが、これらに限定されない。
薬学的に受容可能な塩の他の例としては、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、ピルビン酸、マロン酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、ショウノウスルホン酸、4−メチルビシクロ−[2.2.2]−オクタ−2−エン−1−カルボン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、およびムコン酸などが挙げられる。本発明はまた、親化合物に存在する酸性プロトンが金属イオン(例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、またはアルミニウムイオン)により置き換えられる場合;あるいは有機塩基(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、およびN−メチルグルカミンなど)と配位する場合のいずれかに形成される塩を包含する。
薬学的に受容可能な塩に対する全ての言及は、同じ塩の、本明細書中で定義されるような溶媒付加形態(溶媒和物)または結晶形(多型)を包含することが理解されるべきである。
本発明の化合物はまた、エステル(例えば、薬学的に受容可能なエステル)として調製され得る。例えば、化合物中のカルボン酸官能基は、その対応するエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステルまたは他のエステル)に転換され得る。また、化合物中のアルコール基は、その対応するエステル(例えば、酢酸エステル、プロピオン酸エステルまたは他のエステル)に転換され得る。
本発明の化合物はまた、プロドラッグ(例えば、薬学的に受容可能なプロドラッグ)として調製され得る。用語「プロ−ドラッグ」および「プロドラッグ」は、本明細書中で交換可能に使用され、そしてインビボで活性な親薬物を放出する任意の化合物をいう。プロドラッグは、薬剤の多数の所望の性質(例えば、溶解度、バイオアベイラビリティ、製造など)を増強することが公知であるので、本発明の化合物は、プロドラッグの形態に誘導体化され得る。従って、本発明は、本願発明の化合物のプロドラッグ、これらを送達する方法、およびこれらを含有する組成物を包含することを意図される。「プロドラッグ」は、このようなプロドラッグが被験体に投与される場合に、本発明の活性親薬物をインビボで放出する、任意の共有結合したキャリアを含むことを意図される。本発明におけるプロドラッグは、その化合物に存在する官能基を、慣用的な操作によってかまたはインビボでのいずれかで、修飾が切断されて親化合物になるような様式で修飾することによって、調製される。プロドラッグとしては、ヒドロキシ基、アミノ基、スルフヒドリル基、カルボキシ基またはカルボニル基が、インビボで切断されてそれぞれ遊離ヒドロキシル基、遊離アミノ基、遊離スルフヒドリル基、遊離カルボキシ基または遊離カルボニル基を形成し得る任意の基に結合した、本発明の化合物が挙げられる。
プロドラッグの例としては、本発明の化合物における、ヒドロキシ官能基のエステル(例えば、アセテート、ジアルキルアミノアセテート、ホルメート、ホスフェート、スルフェートおよび安息香酸誘導体)ならびにカルバメート(例えば、N,N−ジメチルアミノカルボニル)、カルボキシル官能基のエステル(例えば、エチルエステル、モルホリノエタノールエステル)、アミノ官能基のN−アシル誘導体(例えば、N−アセチル)、N−マンニッヒ塩基、シッフ塩基およびエナミノン、ならびにケトン官能基およびアルデヒド官能基のオキシム、アセタール、ケタールおよびエノールエステルなどが挙げられるが、これらに限定されない。Bundegaard,H.,Design of Prodrugs,p1−92,Elesevier,New York−Oxford(1985)を参照のこと。
これらの化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、エステルもしくはプロドラッグは、経口、経鼻、経皮、肺、吸入、頬、舌下、腹腔内、皮下、筋肉内、静脈内、直腸、胸膜腔内、鞘内および非経口で、投与される。1つの実施形態において、この化合物は、経口投与される。当業者は、特定の投与経路の利点を認識する。
これらの化合物を利用する投薬計画は、種々の要因(患者の型、種、年齢、体重、性別および医学的状態;処置されるべき状態の重篤度;投与経路;患者の腎機能および肝機能;ならびに使用される特定の化合物またはその塩が挙げられる)に従って選択される。通常の知識を有する医師または獣医は、状態を予防するか、反撃するか、または進行を止めるために必要とされる、薬物の有効な量を容易に決定し得、そして処方し得る。
本発明の本開示の化合物の製剤および投与のための技術は、Remington:the Science and Practice of Pharmacy,第19版,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1995)に見出され得る。1つの実施形態において、本明細書中に記載される化合物、およびその薬学的に受容可能な塩は、薬学的調製物中で、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と組み合わせて使用される。適切な薬学的に受容可能なキャリアとしては、不活性な固体の充填材または希釈剤、および滅菌水溶液もしくは有機溶液が挙げられる。これらの化合物は、このような薬学的組成物中に、本明細書中に記載される範囲の所望の投薬量を提供するのに充分な量で存在する。
本明細書中で使用される全ての百分率および比は、他に示されない限り、重量による。本発明の他の特徴および利点は、様々な実施例から明らかである。与えられる実施例は、本発明を実施する際に有用な、様々な成分および方法論を説明する。これらの実施例は、本願発明を限定しない。本開示に基づいて、当業者は、本発明を実施するのに有用な他の成分および方法論を確認および使用し得る。
5.実施例
(実施例1)
(rac)−3−(5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)−4−(6−ヒドロキシ−1H−インドール−3−イル)ピロリジン−2,5−ジオン(1)の調製
工程1:5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)オキソ酢酸メチルエステルの調製
5,6−ジヒドロ−4H−ピロロキノリン(15g、95.5mmol)の無水テトラヒドロフラン(225mL)溶液に、0℃で塩化オキサリル(9.15mL)を30分に亘り滴下で添加した。混合物を0℃で2時間撹拌し、その後−78℃に冷却した。ナトリウムメトキシド(150mL、メタノール中0.5M)をゆっくりと加え、混合物を室温に温めた。混合物を酢酸エチル(600mL)で希釈し、水(100mL)および飽和塩化ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発乾固させた。残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1:1)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)オキソ酢酸メチルエステルを明赤色の固体(21.9g、94%)として得た。Mp:105〜108℃;1H NMR (CDCl3) 400 MHz δ: 8.30 (s, 1H), 8.14(d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.26 (m, 2H), 7.06 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 4.22 (t, J = 5.4 Hz, 2H), 3.94 (s, 3H), 3.0(t, J = 6.2 Hz, 2H), 2.25 (t, J = 5.9 Hz, 2H);LCMS[M+H]:244。
工程2:2−[6−(ベンジルオキシ)−1H−インドール−3−イル]アセトアミドの調製
6−ベンジルオキシインドール−酢酸(4.72g、16.7mmol)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液に、カルボニルジイミダゾール(2.85g、17.6mmol)を加えた。このように得られた溶液を、室温で1.5時間撹拌した。水酸化アンモニウム(14mL)を加え、反応物を室温で18時間撹拌させた。混合物を2分の1容量に濃縮し、このように得られた固体を濾過し、冷メタノールで洗浄し、2−[6−(ベンジルオキシ)−1H−インドール−3−イル]アセトアミド(4.7g、定量的)をオフホワイトの固体として得た。Mp:189〜192℃;1H NMR (DMS0−d6) 400 MHz δ: 10.65 (brs, 1H), 7.46 (d, J = 7.4 Hz, 2H), 7.37−7.35 (m, 2H), 7.31 (m, 1H), 7.26 (brs, 1H), 7.14 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 7.12 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 6.79 (m, 2H), 5.04 (s, 2H), 3.39 (s, 2H);LCMS[M+H]:281。
工程3:3−[6−(ベンジルオキシ)−1H−インドール−3−イル]−4−(5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)−1H−ピロール−2,5−ジオンの調製
5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)オキソ酢酸メチルエステル(1.04g、4.11mmol)および2−[6−(ベンジルオキシ)−1H−インドール−3−イル]アセトアミド(1g、3.57mmol)の無水テトラヒドロフラン(tetrahyrofuran)溶液に、0℃でカリウムtert−ブトキシド(8.46mL、THF中1M)の溶液を10分に亘り滴下で添加した。混合物を0℃で1.5時間撹拌した。濃塩酸(7.9mL)を加え、混合物を室温で1時間撹拌した。混合物を酢酸エチル(200mL)で希釈し、水(2×50mL)、飽和塩化ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。残渣を酢酸エチル/ヘキサン(10〜60%)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、3−(5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)−4(1H−インド−3−イル)ピロール−2,5−ジオンを紫色の固体(1.2g、80%)として得た。Mp:119〜122℃;1H NMR (CDCl3) 400 MHz δ: 8.38 (brs, 1H), 7.72 (s, 1H), 7.51(d, J = 2.3 Hz, 1H), 7.30−7.38 (m, 5H), 6.99 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 6.86(d, J = 2.3 Hz, 1H), 6.82 (d, J = 6.66 Hz, 1H), 6.85−6.70 (m, 2H), 6.58 (dd, Ja = 8.9 Hz, Jb = 2.3 Hz, 1H), 5.0 (s, 2H), 4.17 (t, J = 5.4 Hz, 2H), 2.96 (t, J = 5.8 Hz, 2H), 2.22(t, J = 5.8 Hz, 2H);LCMS[M+H]:474。
工程4:(rac)−trans−3−[6−(ベンジルオキシ)−1H−インドール−3−イル]−4−(5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)ピロリジン−2,5−ジオンの調製
3−(5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)−4(1H−インド−3−イル)ピロール−2,5−ジオン(7.26g、15.36mmol)の無水メタノール(200mL)溶液に、マグネシウム(7.3g、30.7mmol)を加えた。溶液を80℃に4時間加熱した。室温に冷却した後、メタノールを減圧下で除去し、混合物を10%HCl(50mL)で希釈し、ジクロロメタン(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発乾固させた。残渣を酢酸エチル/ヘキサン(10〜60%)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、(rac)−trans−3−[6−(ベンジルオキシ)−1H−インドール−3−イル]−4−(5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)ピロリジン−2,5−ジオンをオフホワイトの固体(575mg、8%)として得た。Mp:145〜148℃;1H NMR (DMSO−d6) 400 MHz δ: 8.70(brs, 1H), 8.0 (brs, 1H), 7.41−7.43 (m, 2H), 7.37 (t, J = 7.0 Hz, 2H), 7.31(d, J = 6.6 Hz, 1H), 6.94−6.97(m, 3H), 6.80−6.82 (m, 3H), 5.03 (s, 2H), 4.48 (d, J = 5.8 Hz, 2H), 4.03 (s, 2H), 2.94 (s, 2H), 2.16 (s, 2H);LCMS[M+H]:476。
工程5:(rac)−trans−3−(5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)−4−(6−ヒドロキシ−1H−インドール−3−イル)ピロリジン−2,5−ジオン(1)の調製
(rac)−trans−3−[6−(ベンジルオキシ)−1H−インドール−3−イル]−4−(5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)ピロリジン−2,5−ジオン(500mg、1.05mmol)および10%Pd/C(10mg)を、1気圧の水素下にてメタノール(200mL)中室温で24時間撹拌した。反応混合物をセライトのベッドを通して濾過し、濾液を蒸発乾固させた。残渣をジクロロメタン中の1〜7%メタノールで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、(rac)−trans−3−(5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)−4−(6−ヒドロキシ−1H−インドール−3−イル)ピロリジン−2,5−ジオン(117mg、28%)をオフホワイトの固体として得た。Mp:167〜170℃;1H NMR (DMSO−d6) 400 MHz δ: 11.50 (bs, 1H), 10.62 (s, 1H), 7.32 (s, 1H), 7.13−7.17 (m, 3H), 6.83−6.89 (m, 2H), 6.71 (d, J = 1.9Hz, 1H), 6.48−6.52 (m, 1H), 4.46 (d, J = 6.6Hz, 1H), 4.37 (d, J = 6.6Hz, 1H), 4.01 (s, 2H), 2.89 (s, 2H), 2.09 (s, 2H);LCMS[M+H]:386。
化合物1のキラル分離による化合物4および5の調製
1の混合物(350mg)を、IPA:ヘキサン(20:80)を移動相として使用して逆相キラルHPLC(Chiralpak AD−H)によって分離し、4(138mg)を紫色の固体として(保持時間=7.85分)、1H NMR (DMSO) 400 MHz δ: 11.50 (bs, 1H), 10.62 (s, 1H), 8.93 (s, 1H), 7.32 (s, 1H), 7.13−7.17 (m, 3H), 6.84−6.89 (m, 2H), 6.71 (d, 1H, J = 1.9Hz), 6.51 (dd, 1H, J = 1.9Hz, 2.3Hz), 4.46 (d, 1H, J = 6.6Hz), 4.37 (d, 1H, J = 6.6Hz), 4.08−4.10 (m, 2H), 2.88−2.91 (m, 2H), 2.08−2.11 (m, 2H).MS[M+H]386;Mp:170〜172℃;および5(157mg)を紫色の固体(保持時間=11.30分)として得た。1H NMR (DMSO) 400 MHz δ: 11.50 (bs, 1H), 10.62 (s, 1H), 8.9s (s, 1H), 7.32 (s, 1H), 7.13−7.17 (m, 3H), 6.84−6.89 (m, 2H), 6.71 (d, 1H, J = 1.9Hz), 6.51 (dd, 1H, J = 1.9Hz, 2.3Hz), 4.46 (d, 1H, J = 6.6Hz), 4.37 (d, 1H, J = 6.6Hz), 4.08−4.10 (m, 2H), 2.88−2.91 (m, 2H), 2.08−2.11 (m, 2H).MS[M+H]386;Mp:173〜175℃。
(実施例2)
(2S,3S,4S,5R)−6−((3−((rac)−trans−4−(5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)−2,5−ジオキソピロリジン−3−イル)−1H−インドール−6−イル)オキシ)−3,4,5−トリヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−カルボン酸の調製
工程1:(3R,4S,5S,6S)−2−((3−((rac)−trans−4−(5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)−2,5−ジオキソピロリジン−3−イル)−1H−インドール−6−イル)オキシ)−6−(メトキシカルボニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3,4,5−トリイルトリアセテートの調製
0℃に冷却した撹拌した(rac)−trans−3−(5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)−4−(6−ヒドロキシ−1H−インドール−3−イル)ピロリジン−2,5−ジオン(82mg、0.212mmol)および2,3,4−トリ−O−アセチル−α−D−グルクロン酸メチルエステルトリクロロアセトイミデート(112mg、0.234mmol)の乾燥ジクロロメタン溶液に、BF3:Et2O(60μL、0.53mmol)を滴下の態様で添加した。反応混合物を室温に温め、1時間後に、これを氷水のスラリー(50mL)中に注いだ。有機相を分離し、ジクロロメタン(3×10mL)で希釈し、ブラインで洗浄し、濃縮し、(3R,4S,5S,6S)−2−((3−((rac)−trans−4−(5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)−2,5−ジオキソピロリジン−3−イル)−1H−インドール−6−イル)オキシ)−6−(メトキシカルボニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3,4,5−トリイルトリアセテート(51mg、34%)を得て、これを次の工程において精製せずに直ちに使用した。
工程2:(2S,3S,4S,5R)−6−((3−((rac)−trans−4−(5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)−2,5−ジオキソピロリジン−3−イル)−1H−インドール−6−イル)オキシ)−3,4,5−トリヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−カルボン酸の調製
撹拌した(3R,4S,5S,6S)−2−((3−((rac)−trans−4−(5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)−2,5−ジオキソピロリジン−3−イル)−1H−インドール−6−イル)オキシ)−6−(メトキシカルボニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3,4,5−トリイルトリアセテート(51mg、0.07mmol)のテトラヒドロフラン(1mL)溶液に、1MのNaOH(5mL)を室温にて滴下で添加した。このように得られた溶液を1時間撹拌し、酢酸エチル(2mL)で希釈した。有機相を分離し、水相を10%HClでpH6に酸性化した。酸性溶液を−78℃に冷却し、凍結乾燥器上に一晩置き、(2S,3S,4S,5R)−6−((3−((rac)−trans−4−(5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)−2,5−ジオキソピロリジン−3−イル)−1H−インドール−6−イル)オキシ)−3,4,5−トリヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−カルボン酸(20mg、50%)を毛房状の白色の固体として得た。Mp:194〜196℃;1H NMR 400 MHz (DMSO−d6) δ: 11.53 (bs, 1H), 10.99 (bs, 1H), 7.34 (s, 1H), 7.26−7.29 (m, 2H), 7.17 (d, J = 7.4Hz, 1H), 7.03 (s, 1H), 6.84−6.90 (m, 2H), 6.72−6.76 (m, 1H), 5.36 (brs, 1H), 5.15 (brs, 1H), 4.48 (d, J = 6.6Hz, 1H), 4.44 (d, J = 6.6Hz, 1H), 4.10 (s, 2H), 2.89 (s, 2H), 2.11 (s, 2H);LCMS[M+H]:562。
(実施例3)
4および5を得るための(rac)−trans−3−[6−(ベンジルオキシ)−1H−インドール−3−イル]−4−(5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)ピロリジン−2,5−ジオンのエナンチオマーのキラル分離
(rac)−trans−3−[6−(ベンジルオキシ)−1H−インドール−3−イル]−4−(5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)ピロリジン−2,5−ジオンの混合物(350mg)を、イソプロパノール:ヘキサン(20:80)を移動相として使用して逆相キラルHPLC(Chiralpak AD−H)によって分離し、第1のエナンチオマー(保持時間=7.85分)(138mg)を紫色の固体として(Mp:170〜172℃)、1H NMR (DMSO−d6) 400 MHz δ: 11.50 (bs, 1H), 10.62 (s, 1H), 8.93 (s, 1H), 7.32 (s, 1H), 7.13−7.17 (m, 3H), 6.84−6.89 (m, 2H), 6.71 (d, J = 1.9Hz, 1H), 6.51 (dd, Ja = 2.3Hz, Jb =1.9Hz, 1H), 4.46 (d, J = 6.6Hz, 1H), 4.37 (d, J = 6.6Hz, 1H), 4.08−4.10 (m, 2H), 2.88−2.91 (m, 2H), 2.08−2.11 (m, 2H);LCMS[M+H]:386、および第2のエナンチオマー(保持時間=11.30分)(157mg)を紫色の固体として(Mp:173〜175℃)得た。1H NMR (DMSO−d6) 400 MHz δ: 11.50 (bs, 1H), 10.62 (s, 1H), 8.9s (s, 1H), 7.32 (s, 1H), 7.13−7.17 (m, 3H), 6.84−6.89 (m, 2H), 6.71 (d, J = 1.9Hz, 1H), 6.51 (dd, Ja = 2.3Hz, Jb =1.9Hz, 1H), 4.46 (d, J = 6.6Hz, 1H), 4.37 (d, J = 6.6Hz, 1H), 4.08−4.10 (m, 2H), 2.88−2.91 (m, 2H), 2.08−2.11 (m, 2H);LCMS[M+H]:386。
(実施例4)
(rac)−trans−3−(6−ヒドロキシ−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)−4−(1H−インドール−3−イル)ピロリジン−2,5−ジオン(3)の調製
工程1:メチル(6−ブロモ−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)(オキソ)アセテートの調製
5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)オキソ酢酸メチルエステル(2.86g、11.7mmol)の四塩化炭素(250mL)溶液に、N−ブロモスクシンイミド(3.13g、17.55mmol)およびアゾビスイソブチロニトリル(192mg、1.17mmol)を加えた。反応混合物を、85℃に事前加熱した油浴中に入れた。1.5時間後、混合物を室温に冷却し、水(50mL)で希釈し、ジクロロメタン(3×80mL)で抽出した。合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発乾固させた。残渣を酢酸エチル/ヘキサン(10〜60%)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、メチル(6−ブロモ−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)(オキソ)アセテートを黄色の固体(1.12g、29%)として得た。Mp:120〜122℃;1H NMR (CDCl3) 400 MHz δ: 8.4 (s, 1H), 8.27 (d, J =7.4 Hz, 1H), 7.29−7.31 (m, 2H), 5.62 (t, J = 3.1 Hz, 1H), 4.56−4.59 (m, 1H), 4.41−4.43 (m, 1H), 3.96 (s, 3H), 2.66−2.68 (m, 2H);LCMS[M+H]:323。
工程2:メチル[6−(アセチルオキシ)−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル](オキソ)アセテートの調製
エチル(6−ブロモ−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)(オキソ)アセテート(890mg、2.76mmol)のジメチルホルムアミジン(20mL)溶液に、0℃で酢酸銀(458mg、2.76mmol)を加えた。反応混合物を室温に温め、2時間撹拌した。混合物をセライトを通して濾過し、酢酸エチル(100mL)ですすいだ。濾液を水(100mL)で希釈し、酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発乾固させた。残渣を酢酸エチル/ヘキサン(10〜60%)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、メチル[6−(アセチルオキシ)−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル](オキソ)アセテートを黄色の固体(326mg、39%)として得た。Mp:165〜168℃;1H NMR (CDCl3) 400 MHz δ: 8.39 (s, 1H), 8.29 (d, J = 7.4 Hz, 1H), 7.31−7.36 (m, 2H), 6.22 (t, J = 3.5 Hz, 1H), 4.33−4.36 (m, 2H), 4.41−4.43 (m, 1H), 3.95 (s, 3H), 2.44−2.47 (m, 1H), 2.36−2.39(m, 1H);LCMS[M+H]:302。
工程3:3−(6−ヒドロキシ−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)−4−(1H−インドール−3−イル)−1H−ピロール−2,5−ジオンの調製
メチル[6−(アセチルオキシ)−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル](オキソ)アセテート(632mg、2.09mmol)およびインドール−3−アセトアミド(328mg、1.88mmol)の無水テトラヒドロフラン(25mL)溶液に、0℃でカリウムtert−ブトキシド(9.3mL、9.3mmol、THF中1M)の溶液を30分に亘り滴下で添加した。混合物を0℃で撹拌し、室温に温め、2時間撹拌した。濃塩酸(1mL)を加え、混合物を室温で1時間撹拌した。混合物を水(25mL)で希釈し、酢酸エチル(2×25mL)で抽出した。合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。残渣をメタノール/ジクロロメタン(1〜5%)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、3−(6−ヒドロキシ−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)−4−(1H−インドール−3−イル)−1H−ピロール−2,5−ジオンを明赤色の固体(293mg、36%)として得た。Mp:165〜168℃;1H NMR (DMSO−d6) 400 MHz δ: 11.62 (brs, 1H), 10.89 (brs, 1H), 7.85 (s, 1H), 7.65 (s, 1H), 7.38 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.96−6.94 (m, 3H), 6.71 (t, J = 7.4 Hz, 1H), 6.59 (d, J = 7.4 Hz, 1H), 6.49(d, J = 8.2 Hz, 1H), 5.41 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 4.89 (brs, 1H), 4.26 (s, 2H), 3.33 (s, 2H);LCMS[M+H]:384。
工程4:(rac)−trans−3−(6−ヒドロキシ−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)−4−(1H−インドール−3−イル)ピロリジン−2,5−ジオン(3)の調製
40mLの反応バイアル中の3−(6−ヒドロキシ−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)−4−(1H−インドール−3−イル)−1H−ピロール−2,5−ジオン(293mg、0.76mmol)の無水メタノール(15mL)溶液に、削状マグネシウム(300mg、15.2mmol)を加えた。混合物にキャップをし、80℃で油浴中にて加熱した。4時間後、反応物を室温に冷却し、メタノールを減圧下で除去した。混合物をジクロロメタン(20mL)で希釈し、10%HCl(20mL)で洗浄した。水層をジクロロメタン(3×20mL)で抽出し、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮乾燥した。残渣をメタノール/ジクロロメタン(1〜5%)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、(rac)−trans−3−(6−ヒドロキシ−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)−4−(1H−インドール−3−イル)ピロリジン−2,5−ジオンをオフホワイトの固体(42mg、14%)として得た。Mp:153〜155℃;1H NMR (DMSO−d6) 400 MHz δ: 11.54 (bs, 1H), 11.04 (bs, 1H), 7.42−7.35 (m, 4H), 7.26 (d, J = 7.8Hz, 1H), 7.04−7.08 (m, 2H), 6.98−6.93 (m, 2H), 5.34 (brs, 1H), 4.88 (brs, 1H), 4.55 (d, J = 6.6Hz, 1H), 4.49 (d, J = 6.6Hz, 1H), 4.13 (s, 2H), 2.10 (s, 2H);LCMS[M+H]:386。
(実施例5)
(3R,4R)−3−((S)−6−ヒドロキシ−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)−4−(1H−インドール−3−イル)ピロリジン−2,5−ジオン(10)および(3R,4R)−3−((R)−6−ヒドロキシ−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)−4−(1H−インドール−3−イル)ピロリジン−2,5−ジオン(11)のキラル分離
3のジアステレオマー混合物(9.1g)を、n−ヘキサン:エタノール(65:35、1mL/分)を移動相として使用して、順相キラルHPLC(Chiralpak AD−H、4.6×250mm)によって分離し、10(第1のエナンチオマー、保持時間=10.8分)(1.6g)を紫色の固体として、11(第2のエナンチオマー、保持時間=12.7分)(1.7mg)を紫色の固体として、12(第3のエナンチオマー、保持時間=17.2分)(1.8mg)を紫色の固体として、および13(第4のエナンチオマー、保持時間=23.8分)(1.7mg)を紫色の固体として得た。それぞれの単離した立体異性体のキラルHPLCクロマトグラムを、図1に示す。HPLCによって決定した10、11、12および13の立体異性体の化学的純度は、それぞれ、>98%、>98%、>95%および>95%であった。
(実施例6)
(3R,4R)−3−(1H−インドール−3−イル)−4−(6−オキソ−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)ピロリジン−2,5−ジオン(14)および(3S,4S)−3−(1H−インドール−3−イル)−4−(6−オキソ−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)ピロリジン−2,5−ジオン(8)の混合物の調製
(3R,4R)−3−(6−ヒドロキシ−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)−4−(1H−インドール−3−イル)ピロリジン−2,5−ジオン3(25mg)を、ジクロロメタンに溶解させた。この溶液に、41mg(1.5当量)のデスマーチン試薬を、撹拌しながら室温で加え、次いで混合物を15分間撹拌した。反応溶液を、希薄炭酸水素ナトリウム水溶液を加えることによって水層および有機層に分離させ、次いで、水層をジクロロメタンによる抽出に供した。合わせた有機層を水で洗浄し、次いで、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、次いで、濾液を減圧下で濃縮した。得られた残渣(固体)をエーテルで洗浄し、17mgの8を得た(収率:70%)。
(実施例7)
(3R,4R)−3−(1H−インドール−3−イル)−4−(6−オキソ−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)ピロリジン−2,5−ジオン(14)および(3S,4S)−3−(1H−インドール−3−イル)−4−(6−オキソ−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)ピロリジン−2,5−ジオン(15)を得るための(8)のキラル分離
混合物8(900mg)を、n−ヘキサン:テトラヒドロフラン(40:60、1mL/分)を移動相として使用して、順相キラルHPLC(Chiralpak IA、4.6×250mm)によって分離し、14(第1のエナンチオマー、保持時間=4.4分)(460mg)をオレンジ色の固体として、および15(第2のエナンチオマー、保持時間=6.0分)(420mg)をオレンジ色の固体として得た。それぞれの単離した立体異性体のキラルHPLCクロマトグラムを、図2に示す。HPLCによって決定したそれぞれの単離したエナンチオマーの化学的純度は、>98%であった。
(実施例8)
(3R,4R)−3−(1H−インドール−3−イル)−4−(4−オキソ−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)ピロリジン−2,5−ジオンおよび(3S,4S)−3−(1H−インドール−3−イル)−4−(4−オキソ−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)ピロリジン−2,5−ジオンの混合物(9)の合成
工程1:2(E)−メチル3−(1H−インドール−7−イル)アクリレートの合成
7−ブロモインドール(5.0g、25.5mmol)、アクリル酸メチル(4.6ml、51.1mmol)、トリフェニルホスフィン(0.55g、2.10mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(5.8ml、42.3mmol)、および酢酸パラジウム(II)(0.25g、1.11mmol)を、N,N−ジメチルホルムアミド(50ml)に加え、混合物を70℃で窒素流下にて18時間撹拌した。室温に冷却した後に、アクリル酸メチル(4.6ml、51.1mmol)、トリフェニルホスフィン(0.55g、2.10mmol)、および酢酸パラジウム(II)(0.25g、1.11mmol)を反応混合物に加え、混合物を75℃で窒素流下にて47時間撹拌した。室温に冷却した後に、アクリル酸メチル(7.0ml、77.7mmol)、トリフェニルホスフィン(0.88g、3.36mmol)、および酢酸パラジウム(II)(0.40g、1.78mmol)を反応混合物に加え、混合物を100℃で窒素流下にて95時間撹拌した。室温に冷却した後に、反応混合物を減圧下で濃縮した。得られた残渣に、ヘキサン/酢酸エチル混合溶液(1:1、300ml)を加え、有機層を水で洗浄した。得られた水層をヘキサン/酢酸エチル(1:1)混合溶液による抽出に供し、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、次いで減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン:酢酸エチル=6:1)によって精製し、2(E)−メチル3−(1H−インドール−7−イル)アクリレート(3.46g、67%)を淡黄茶色の固体として得た。ESI−MS:m/z202[M+H]+。1H−NMR (CDCl3) δ: 3.85 (3H, s), 6.52 (1H, d, J = 16.0 Hz), 6.62 (1H, dd, J = 2.9, 2.0 Hz), 7.16 (1H, t, J = 7.6 Hz), 7.28 (1H, t, J = 2.9 Hz), 7.43 (1H, d, J = 7.6 Hz), 7.71 (1H, d, J = 7.6 Hz), 8.04 (1H, d, J = 16.0 Hz), 8.59 (1H, br s)。
工程2:メチル3−(3−(2−メトキシ−2−オキソアセチル)−1H−インドール−7−イル)プロパノエートの合成
2(E)−メチル3−(1H−インドール−7−イル)アクリレート(1.0g、4.79mmol)を、メタノール(100ml)に溶解させた。この溶液に、5%パラジウム炭素(水分含有率:概ね50%、0.25g)を次いで加え、混合物を室温で水素雰囲気(1気圧)下にて2時間撹拌した。反応混合物を濾過し、不溶性物質を除去した。次いで、濾液を減圧下で濃縮した。得られた残渣を、テトラヒドロフラン(20ml)に溶解させた。この溶液に、塩化オキサリル(1.1ml、13.0mmol)を次いで氷で冷却しながら窒素流下にて滴下で添加した。得られた反応混合物を室温で1.5時間撹拌し、次いで減圧下で濃縮した。得られた残渣をテトラヒドロフラン(30ml)に溶解させた。この溶液に、メタノール(30ml)を次いで窒素流下にて室温で加えた。混合物を室温で一晩撹拌し、次いで、反応混合物を減圧下で濃縮した。得られた残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液;ジクロロメタン:メタノール=100:1)によって精製した。得られた固体をメタノールで洗浄し、メチル3−(3−(2−メトキシ−2−オキソアセチル)−1H−インドール−7−イル)プロパノエート(1.08g、75%)を茶色の粉末として得た。1H−NMR (CDCl3) δ: 2.78 (2H, t, J = 7.0 Hz), 3.20 (2H, t, J = 6.3 Hz), 3.67 (3H, s), 3.96 (3H, s), 7.11 (1H, d, J = 6.3 Hz), 7.25−7.31 (1H, m), 8.32 (1H, d, J = 8.2 Hz), 8.50 (1H, d, J = 3.1 Hz), 10.06 (1H, br s)。
工程3:メチル3−(3−(4−(1H−インドール−3−イル)−2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−イル)−1H−インドール−7−イル)プロパノエートの合成
メチル3−(3−(2−メトキシ−2−オキソアセチル)−1H−インドール−7−イル)プロパノエート(3.05g、10.5mmol)およびインドール−3−アセトアミド(1.9g、10.9mmol)を、テトラヒドロフラン(100ml)に溶解させた。この溶液に、カリウムtert−ブトキシドのテトラヒドロフラン溶液(1M、55ml、55mmol)を氷で冷却しながら窒素流下にて滴下で添加した。得られた反応混合物を室温で2時間撹拌した。次いで、テトラヒドロフラン(50ml)を加え、混合物を1時間さらに撹拌し、続いてテトラヒドロフラン(50ml)を加えた。得られた反応混合物を室温で3時間撹拌した。次いで、濃塩酸(90ml)を滴下で添加し、混合物を室温で一晩撹拌した。得られた反応混合物に、ジクロロメタンを加え、有機層を水で洗浄した。得られた水層をジクロロメタン/テトラヒドロフラン(1:1)混合溶液による抽出に供し、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、次いで減圧下で濃縮した。得られた残渣を、メタノール(500ml)に溶解させた。この溶液に、硫酸(1ml)を次いで滴下で添加し、混合物を室温で一晩撹拌した。得られた反応混合物を、減圧下で濃縮した。残渣に、ジクロロメタンを次いで加え、有機層を炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液で洗浄した。得られた水層をジクロロメタンによる抽出に供し、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、次いで減圧下で濃縮した。得られた残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液;ジクロロメタン:メタノール=50:1)によって精製した。必要に応じて、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン:酢酸エチル=5:1→4:1)によるさらなる精製を行って、メチル3−(3−(4−(1H−インドール−3−イル)−2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−イル)−1H−インドール−7−イル)プロパノエート(2.66g、61%)を得てもよい。ESI−MS:m/z414[M+H]+。1H−NMR (DMSO−D6) δ: 2.69 (2H, t, J = 7.8 Hz), 3.09 (2H, t, J = 7.8 Hz), 3.58 (3H, s), 6.56 (1H, t, J = 7.7 Hz), 6.61−6.69 (2H, m), 6.78−6.85 (2H, m), 6.98 (1H, tm, J = 7.7 Hz), 7.36 (1H, d, J = 7.7 Hz), 7.67−7.72 (2H, m), 10.90 (1H, s), 11.63 (1H, br d, J = 2.7 Hz), 11.71 (1H, br d, J = 2.3 Hz)。
4−クロロブチル3−(3−(4−(1H−インドール−3−イル)−2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−イル)−1H−インドール−7−イル)プロパノエート(0.223g、4.5%)を黒っぽい赤茶色の油としてまた得た。ESI−MS:m/z490、492[M+H]+。1H−NMR (DMSO−D6) δ: 1.59−1.74 (4H, m), 2.69 (2H, t, J = 7.6 Hz), 3.09 (2H, t, J = 7.6 Hz), 3.60 (2H, t, J = 6.3 Hz), 3.99−4.06 (2H, m), 6.56 (1H, dd, J = 7.8, 7.0 Hz), 6.61−6.70 (2H, m), 6.81 (2H, t, J = 7.8 Hz), 6.98 (1H, tm, J = 7.8 Hz), 7.36 (1H, d, J = 7.8 Hz), 7.68−7.72 (2H, m), 10.90 (1H, s), 11.64 (1H, br d, J = 2.0 Hz), 11.71 (1H, br d, J = 2.3 Hz)。
工程4:メチル3−(3−((3R,4R)−4−(1H−インドール−3−イル)−2,5−ジオキソピロリジン−3−イル)−1H−インドール−7−イル)プロパノエートおよびメチル3−(3−((3S,4S)−4−(1H−インドール−3−イル)−2,5−ジオキソピロリジン−3−イル)−1H−インドール−7−イル)プロパノエートの合成
メチル3−(3−(4−(1H−インドール−3−イル)−2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−イル)−1H−インドール−7−イル)プロパノエート(2.61g、6.31mmol)および化合物5(0.223g、0.476mmol)を、メタノール(360ml)に溶解させた。この溶液に、窒素流下にてマグネシウム(3.3g、136mmol)を加え、混合物を70℃(外部温度)で30分間撹拌した。室温に冷却した後に、さらなるマグネシウム(3.3g、136mmol)を反応混合物に加え、混合物を70℃(外部温度)で窒素流下にて30分間撹拌した。室温に冷却した後に、マグネシウム(1.9g、78.2mmol)を反応混合物に加え、混合物を70℃(外部温度)で窒素流下にて30分間撹拌した。室温に冷却した後に、マグネシウム(1.4g、57.6mmol)を反応混合物に加え、混合物を70℃(外部温度)で窒素流下にて30分間撹拌した。室温に冷却した後に、反応混合物を2Nの塩酸/ジクロロメタン混合物(500ml:500ml)中に注ぎ、混合物を室温で撹拌し、次いで水層および有機層に分離した。水層をジクロロメタンによる抽出に供し、合わせた有機層を飽和食塩水でさらに洗浄した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、次いで減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン:酢酸エチル=1:1→1:2)によって精製し、メチル3−(3−((3S,4S)−4−(1H−インドール−3−イル)−2,5−ジオキソピロリジン−3−イル)−1H−インドール−7−イル)プロパノエートおよびメチル3−(3−((3S,4S)−4−(1H−インドール−3−イル)−2,5−ジオキソピロリジン−3−イル)−1H−インドール−7−イル)プロパノエートの混合物(2.06g、73%)を薄茶色の油として得た。ESI−MS:m/z416[M+H]+。1H−NMR (DMSO−D6) δ: 2.69 (2H, t, J = 7.7 Hz), 3.08 (2H, t, J = 7.7 Hz), 3.59 (3H, s), 4.54 (2H, s), 6.86−7.00 (3H, m), 7.08 (1H, tm, J = 7.4 Hz), 7.25 (1H, dd, J = 6.8, 2.2 Hz), 7.33−7.43 (4H, m), 11.03 (1H, br d, J = 2.0 Hz), 11.10 (1H, br d, J = 2.0 Hz), 11.53 (1H, br s)。
工程5:(3R,4R)−3−(1H−インドール−3−イル)−4−(4−オキソ−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)ピロリジン−2,5−ジオンおよび(3S,4S)−3−(1H−インドール−3−イル)−4−(4−オキソ−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)ピロリジン−2,5−ジオンの混合物(9)の合成
メチル3−(3−((3S,4S)−4−(1H−インドール−3−イル)−2,5−ジオキソピロリジン−3−イル)−1H−インドール−7−イル)プロパノエートおよびメチル3−(3−((3S,4S)−4−(1H−インドール−3−イル)−2,5−ジオキソピロリジン−3−イル)−1H−インドール−7−イル)プロパノエート(2.31g、5.56mmol)の混合物を、N,N−ジメチルホルムアミド(107ml)に溶解させた。この溶液に、氷で冷却しながら窒素流下にて水素化ナトリウム(概ね63%油、0.54g、14.2mmol)をさらに加えた。混合物を室温で2時間撹拌し、得られた反応混合物を次いで氷上で冷却した。ヘキサン/酢酸エチル混合溶液(1:1、200ml)を加え、塩化アンモニウムの飽和水溶液(300ml)を続いて加えた。得られた混合物に、ヘキサン/酢酸エチル混合溶液(1:1、200ml)を加え、次いで混合物を水層および有機層に分離した。得られた有機層を水で洗浄し、水層をヘキサン/酢酸エチル(1:1)混合溶液による抽出に供した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムでさらに乾燥させ、次いで減圧下で濃縮した。得られた残渣をジクロロメタンを使用して凝固し、次いでジクロロメタン/エーテル(1:1)混合溶液で洗浄し、薄茶色の固体を得た。得られた固体をメタノール/ジクロロメタン混合溶液に溶解させ、次いでこの溶液を減圧下で濃縮した。得られた残渣をメタノールで洗浄し、(3R,4R)−3−(1H−インドール−3−イル)−4−(4−オキソ−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)ピロリジン−2,5−ジオンおよび(3S,4S)−3−(1H−インドール−3−イル)−4−(4−オキソ−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)ピロリジン−2,5−ジオンの混合物である9(0.98g、46%)を薄茶色の粉末として得た。FAB−MS:m/z384[M+H]+。1H−NMR (DMSO−D6) δ: 2.94 (2H, t, J = 7.3 Hz), 3.21 (2H, t, J = 7.3 Hz), 4.69 (1H, d, J = 7.8 Hz), 4.72 (1H, d, J = 7.8 Hz), 6.97 (1H, tm, J = 7.5 Hz), 7.08 (1H, tm, J = 7.5 Hz), 7.13−7.18 (2H, m), 7.32−7.39 (2H, m), 7.44 (1H, d, J = 2.2 Hz), 7.47 (1H, d, J = 8.2 Hz), 7.89 (1H, s), 11.06 (1H, br d, J = 2.2 Hz), 11.61 (1H, br s)。
(実施例9)
(3R,4R)−3−(1H−インドール−3−イル)−4−(4−オキソ−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)ピロリジン−2,5−ジオン(16)および(3S,4S)−3−(1H−インドール−3−イル)−4−(4−オキソ−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)ピロリジン−2,5−ジオン(17)の混合物のキラル分離
ラセミ混合物9(900mg)を、100%アセトニトリル(1mL/分)を移動相として使用して、順相キラルHPLC(Chiralpak IC、4.6×250mm)によって分離し、第1のエナンチオマー16(保持時間=4.9分)(410mg)を白色の固体として、および第2のエナンチオマー17(保持時間=5.8分)(400mg)を白色の固体として得た。それぞれの単離した立体異性体のキラルHPLCクロマトグラムを、図3に示す。HPLCによって決定したそれぞれの単離したエナンチオマーの化学的純度は、>98%であった。
(実施例10)
c−Met自己リン酸化阻害アッセイを、Journal of Biological Chemistry、286巻(23号)、20666〜20676頁(2010年6月10日)によって行った。
(実施例11)
細胞増殖分析
細胞生存を、MTSアッセイによって決定した。手短に言えば、細胞を96ウェルプレート中にウェル毎に2,000〜10,000個の細胞で蒔き、完全増殖培地中で24時間培養し、次いで様々な薬物および薬物の組合せで72時間処理した。MTSを加え、4時間インキュベートし、その後570nmでマイクロプレートリーダーを使用して細胞生存率を評価した。データを未処理対照で正規化し、分析した。表2は、本発明の化合物の生物活性を示す。