JP2020001979A - 石英ガラスルツボ - Google Patents
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Abstract
Description
この方法に用いられる石英ガラスルツボとしては、熱性に優れた天然シリカガラスにより形成された外側層と、高純度の合成シリカガラスにより形成された内側層とを有する2層構造の石英ガラスルツボが用いられるのが一般的である。
回転モールド法で成形される石英ガラスルツボの形状は、一般に高さ方向の寸法が要求寸法より高くなるように成形されており、高さが要求寸法になるように開口部の側壁を切断して要求寸法の石英ガラスルツボを製造する。
このため、石英ガラスルツボを構成する石英ガラスの粘度が低下し、石英ガラスルツボに変形が生じやすく、長時間その形状を維持できない虞がある。
また、シリコン単結晶の大口径化に伴い、使用される原料シリコン融液も増量し、石英ガラスルツボ自体のサイズも大きくなるため、石英ガラスルツボに対する重量負荷が大きくなり、しかも、原料シリコン融液の湯面振動も大きくなる虞がある。
前記鉱化元素は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、
バリウム、アルミニウムまたは、鉄から選択される元素であり、この鉱化元素偏在層を設けることにより、ルツボ外側層を結晶化して、ルツボの強度向上を図っている。
即ち、Li濃度が高い場合、結晶構造において、シリコン(Si)の位置に同型置換しAlが電荷拘束される割合が低下し、この部分が結晶化の起点となりやすいため、過剰な結晶化が誘発され、この場合も、ルツボが脆くなり、クラックの発生や湯漏れを招くおそれがある。
したがって、アルミニウムとリチウムの濃度を管理する必要があり、濃度の管理が煩雑なだけでなく、製造誤差を招来させる原因にもなる。
その結果、ルツボに生じるクラックを抑制でき、湯漏れを防止することができる。また、外側層の添加物質はイットリウムのみであるため、従来のように複数の元素を含有させる場合と比べて、管理が容易であり、製造誤差を抑制することができる。更に、外側層にイットリウムが添加されるため、外側層の外周面にコーティング層を設けた場合に比べて剥離の虞がないため、結晶化のムラを抑制でき、より均一な結晶化をなすことができる。
前記外側層が前記直胴部にのみ形成されているため、直胴部に変形、特にルツボ開口の変形を抑制できる。一方、底部の結晶化が抑制されるため、石英ガラスルツボを保持する保持部材の凹部底面の形状に、石英ガラスルツボの底面を前記形状に倣わせることができ、石英ガラスルツボ1を安定的に保持することができる。
このように、外側層におけるイットリウムの濃度が30wtppm未満の場合には、石英ガラスの粘性が低いため、好ましくは30wtppm以上である。
一方、イットリウムの濃度が100wtppmを超える場合には、失透し易く、石英ガラスの結晶化が急速に進むため、イットリウムの濃度は100wtppm以下が好ましい。
よって、前記外側層の結晶化、粘性を考慮した場合、イットリウムの濃度は30wtppm以上100wtppm以下であることが望ましい。
本発明にかかる石英ガラスルツボ1は、図1に示すように、上端6が開口を形成する直胴部7と、直胴部7の下端を閉塞する底部9とを有する、有底円筒状の形状を有している。
そしてイットリウムを含む天然シリカガラスとは、水晶等の天然質原料を溶融して製造されるシリカガラスの原料粉末に、例えばリン酸イットリウムを添加して製造した天然シリカガラスであり、外側層2におけるイットリウムの重量濃度は、後に詳述する実験によれば、30wtppm以上であることが好ましく、100wtppm以下であることが好ましい。
尚、添加物質としては、リン酸イットリウム以外にも硝酸イットリウムを用いることができる。
外側層2の厚さが0.5mm未満の場合は、石英ガラスの粘性が高くなり難い。一方、外側層2の厚さが3mmを超える場合、結晶化層(失透化層)が厚くなりすぎ、クラックが発生しやすい。
前記直胴部7と前記底部9の間の湾曲部8に、熱膨張の差に起因する応力が集中する。そのため、湾曲部8にイットリウムを含む外側層を形成すると、イットリウムの結晶化を促進作用により、前記応力に起因するクラックが発生する虞がある。
そのため、前記底部9にイットリウムを含む外側層を形成すると、イットリウムの結晶化を促進作用により、石英ガラスルツボ保持部材(図示せず)の凹部の底面と、石英ガラスルツボ1の底部がなじまない虞がある。
言い換えれば、石英ガラスルツボ1の底部の結晶化を抑制して、底部を変形させ、前記保持部材の凹部の底面の形状に倣わせるのが、石英ガラスルツボ1を安定的に保持する上で、好ましい。
回転モールド法における石英ガラスルツボの成形方法では、図3に示すようなルツボ製造装置10が用いられる。
このルツボ製造装置10は、ルツボ成形用モールド11を備えており、ルツボ成形用モールド11は、原料粉末層が形成される内側部材12と、内側部材12を保持する保持体14とを備えている。また、ルツボ成形用モールド11は、回転軸15を矢印方向に回転可能に構成されている。
第1原料供給ノズル20は、外側層2を形成するための原料、すなわちイットリウムが添加された天然シリカ紛を供給するためのノズルである。
また、第2原料供給ノズル21は、中間層3を形成するための原料、すなわち(イットリウムを含まない)天然シリカ紛を供給するためのノズルである。
更に、第3原料供給ノズル22は、内側層4を形成するための原料、すなわち合成シリカ紛または天然シリカ粉を供給するためのノズルである。
その後、同様にして、天然シリカ紛を第2原料供給ノズル21から供給し、更に合成シリカ紛または天然シリカ粉を第3原料供給ノズル22から供給する。
このとき、外側層2が直胴部7のみに形成されるように(図2参照)、イットリウムが添加された天然シリカ粉の供給を調節することが好ましい。
更に、天然シリカ粉に続いて供給された合成シリカ粉または天然シリカ粉は、前記吸引及び遠心力によって外側層2に押圧され、内側層4が形成される。
その後、内側部材12の貫通穴12aおよび通気路13を介して、シリカ粉成形体を外側方向に吸引する状態を維持しながら、アーク電極19に通電してアーク放電させて、シリカ粉成形体の内側から加熱溶融し、ガラス化する。
そして、これを冷却した後、上端部の切断等の形状加工を施すことにより、図1または図2に示した石英ガラスルツボ1が得られる。
この実験1では、石英ガラスルツボの外側層の原料として用いられる天然シリカ粉を用いた。まず、リン酸イットリウムを添加しない、イットリウムの濃度が0wtppm(比較例1)の前記天然シリカ粉をもちいて、上記した回転モールド法による石英ガラスルツボの製造方法によって、内側層2mm、中間層14mm、外側層2mmの外径18インチのルツボ形状サンプルを製作した。前記サンプルの直動部から110×50×6mmの評価片を切り出して評価を行った。
更に、比較例1と同様に、前記サンプルの直動部から110×50×6mmの評価片を切り出して評価を行った。
その結果を表2に示す。尚、点失透は、結晶化の起点となる核であるため、点失透の密度が高いことは、結晶化が促進されていることを示している。
次に、イットリウムの濃度と粘性の関係を検証する実験を行った。
この実験2においても、実験1と同様に、原料として、天然シリカ粉を用いた。そして、前記天然シリカ粉にリン酸イットリウムを添加し、イットリウムの濃度が0wtppm(添加しない:比較例1)と、10wtppm(実施例3)と、30wtppm(実施例4)と、100wtppm(実施例6)と、120wtppm(実施例5)の実験1で作成したルツボ形状サンプルの直動部から110×50×6mmの評価片を切り出した。
その後、1500℃における粘性を調べた。この測定はビームベンディング法を用いて行った。その結果を表3に示す。
次に、図1の外側層におけるイットリウムの濃度が0wtppm(添加しない)の石英ガラスルツボ(比較例1)と、外側層におけるイットリウムの濃度が30wtppmの石英ガラスルツボ(実施例4)と、外側層におけるイットリウムの濃度が100wtppmの石英ガラスルツボ(実施例6)と、外側層におけるイットリウムの濃度が120wtppmの石英ガラスルツボ(実施例7)をを用いてチョクラルスキー法によるシリコン単結晶の引き上げを行った。
また、イットリウムの濃度が100wtppmの石英ガラスルツボ(実施例6)では、
0.22mmであり、外側層2におけるイットリウムの濃度が120wtppmの石英ガラスルツボ(実施例7)では、0.23mmであった。
よって、外側層におけるイットリウムの濃度は、30wtppm以上の石英ガラスルツボであることが、より好ましいことが判明した。
また、本発明の実施形態に係る石英ガラスルツボは、石英ガラスの適度な結晶化をなし得、また石英ガラスの高い粘性を有する石英ガラスルツボを得ることができ、使用に耐えうる強度を有し、かつ、高温化における変形も十分に抑制されている。
しかしながら、例えば、合成シリカガラスにより形成された内側層を天然シリカガラスにより形成した石英ガラスルツボとしても良い。
また、合成シリカガラスにより形成された内側層を2層に分け、あるいはまた天然シリカガラスにより前記内側層の外側に形成された中間層を2層に分ける等して、3層以上を備える石英ガラスルツボとしても良い。
2 外側層
3 中間層
4 内側層
6 上端
7 直胴部
8 湾曲部
9 底部
10 ルツボ製造装置
11 ルツボ成形用モールド
12 内側部材
12a 貫通穴
13 通気路
14 保持体
15 回転軸
16 吸引部
17 排気路
18 減圧機構
19 アーク電極
20 第1原料供給ノズル
21 第2原料供給ノズル
22 第3原料供給ノズル
Claims (3)
- 上端が開口を形成する直胴部と前記直胴部の下端を閉塞する底部とを有する石英ガラスルツボであって、
合成または天然シリカガラスにより形成された内側層と、
天然シリカガラスにより前記内側層の外側に形成された中間層と、
前記中間層の外側に形成されたイットリウムを含有する天然シリカガラスにより形成された外側層と、
を含むことを特徴とする石英ガラスルツボ。 - 前記外側層は、前記直胴部にのみ形成されていることを特徴とする請求項1に記載の石英ガラスルツボ。
- 前記外側層におけるイットリウムの濃度は30wtppm以上100wtppm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の石英ガラスルツボ。
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