JP2020001597A - 車両の制動制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】オリフィス径が拡大された制動アクチュエータにおいても、急制動時に後輪の制動力が過剰になることを防止し、車両の走行安定性を確保することが可能な車両の制動制御装置を提供する。【解決手段】EBD制御の実行条件は、制動時に以下の3つの条件が全て成立する条件である。車体減速度Gxが、制動圧の時間変化率である昇圧速度dPmcと相関を有する閾値であって第1昇圧速度範囲における値が当該第1昇圧速度範囲よりも低い昇圧速度範囲における値よりも高くされた車体減速度閾値以下となる条件。後輪加速度dVwrが、第2昇圧速度範囲における値が当該第2昇圧速度範囲よりも低い昇圧速度範囲における値よりも高く設定された後輪加速度閾値以下となる条件。前輪加速度dVwfが、第3昇圧速度範囲における値が当該第3昇圧速度範囲よりも低い昇圧速度範囲における値よりも低く設定された前輪加速度閾値以下となる条件。【選択図】図10

Description

本発明は、制動時に後輪の制動力が過剰となったとき後輪の制動力の増加を制限する制御である制動力配分制御を行う車両の制動制御装置に関する。
一般に、アンチスキッド(ABS)制御が可能な車両の制動制御装置の多くは、前輪と後輪の制動力配分及び左輪と右輪の制動力配分を制御するEBD(電子式制動力配分システム:Electronic Brake force Distribution)を実装している。このEBDを用いた制御(以下、「EBD制御」と称呼する。)は、例えば、制動時に車体減速度が所定の閾値を超えると、後輪用ブレーキの制動圧の増加を制限する。EBD制御を実行可能な車両の制動制御装置の一つ(以下、「従来装置」とも称呼される。)は、ブレーキ操作が行われ、ブレーキスイッチがONすると、ブレーキスイッチがONしてから所定期間が経過するまでは無条件にEBD制御を禁止し、所定時間経過後は、急制動と判定されるときは緩制動と判定されるときよりもEBD制御の開始判定に使用する閾値の初期値を小さい値に設定する(例えば、特許文献1を参照。)。これにより、急制動時のEBD制御は緩制動時のEBD制御に比べて早期に開始される。
特開2001−114083号公報
ところで、近年、運転者によるブレーキペダルの操作に対する制動力の応答を向上させるため、制動装置の油圧回路内の制動アクチュエータのオリフィス径を拡大することにより油圧回路の流路抵抗が小さくされる傾向にある。このような制動装置を備えた車両において急制動が行われると、制動アクチュエータの制動圧(油圧)の昇圧速度(制動圧の時間変化率)が極めて高くなる。
一方、後輪用ブレーキの制動圧は、例えば、車体減速度及び車輪加速度と相関を有している。従って、後輪用ブレーキの制動圧が後輪用ブレーキの制動圧の増加を制限する(制動圧を保持する)ための保持制動圧に達するときの車体減速度及び車輪加速度を、それぞれ車体減速度及び車輪加速度の閾値に設定することができる。つまり、車体減速度及び車輪加速度がそれぞれ設定された閾値を超えたときEBDが作動するように構成された制動制御装置が考えられる。ところが、このように構成された制動制御装置を備え、制動アクチュエータのオリフィス径が拡大された車両において急制動が行われたとき、車体減速度及び車輪加速度がそれぞれ設定された閾値を超えてEBDが作動するときには、既に保持制動圧が目標とする保持制動圧を超過してしまうことがあることが判明した。その結果、後輪の制動力が過剰となって後輪に発生し得る横力が小さくなるので、走行安定性の確保が困難となる虞がある。
本発明は上記課題に対処するために為されたものである。即ち、本発明の目的の一つは、オリフィス径が拡大された(流路抵抗が小さくされた)制動アクチュエータにおいても、急制動時に後輪の制動力が過剰になることを防止し、車両の走行安定性を確保することが可能な車両の制動制御装置を提供することにある。
そこで、本発明の車両の制動制御装置(以下、「本発明装置」とも称呼する。)は、左右の前輪(WFL,WFR)及び左右の後輪(WRL,WRR)の各車輪に設けられた制動アクチュエータ(70)に、制動力の要求値である制動要求値の増大に応じて増大する油圧を加えることにより、前記左右の前輪の制動力(Fbf)と前記左右の後輪の制動力(Fbr)との配分比が所定の配分比となるように当該左右の前輪の制動力と当該左右の後輪の制動力とを変更可能に構成された制動装置(40)を備える車両に適用される。
本発明装置は、制動圧センサ(116)と、回転速度センサ(112)と、制動制御部(110)と、を備える。前記制動圧センサは、前記制動装置の制動圧(Pmc)を検出する。前記回転速度センサは、前記車輪の回転速度(NP)をそれぞれ検出する。前記制動制御部は、前記検出された回転速度に基づいて前記左右の前輪の車輪加速度である前輪加速度(dVwf)及び前記左右の後輪の車輪加速度である後輪加速度(dVwr)を算出する。前記制動制御部は、前記左右の後輪の制動力が後輪制動力閾値(Fbrth)を超えたと推定できる特定条件が成立したか否かを判定し、前記特定条件が成立したと判定したとき、前記制動要求値の増大に応じて前記左右の前輪の制動アクチュエータに加えられる前記油圧を増大させることにより当該左右の前輪の制動力を増大させ且つ前記左右の後輪の制動アクチュエータに加えられる前記油圧を保持させることにより当該左右の後輪の制動力を一定値に維持させる配分比調整制動を前記制動装置に行わせる。
配分比調整制動(EBD制御)の実行条件(即ち、特定条件)は、例えば、車両の車体減速度、後輪加速度及び前輪加速度がそれぞれ所定の閾値を超えたときに成立する。車体減速度は、例えば、車両に備えられた加速度センサから取得されてもよいし、各車輪の回転速度から推定される車体速度に基づいて算出されてもよい。
更に、後輪制動力閾値とは、前輪制動力を横軸とし後輪制動力を縦軸とした座標平面において、前輪制動力及び後輪制動力を、比例関係を維持しながら増大させる制御の軌跡(直線)と、前輪の制動スリップ率と後輪の制動スリップ率とが等しくなるように前輪制動力及び後輪制動力を配分しながら増大させた場合の軌跡(曲線)と、の交点である(図3を参照。)。後輪制動力が上記交点における制動力よりも大きくなることは、後輪の制動スリップ率が前輪のスリップ率よりも大きくなることを意味する。従って、後輪制動力が後輪制動力閾値より大きくなると、後輪が発生し得る横力が低下し、走行安定性能が低下する虞がある。
しかし、例えば、制動時に車体減速度が所定の車体減速度閾値を超えると、後輪用制動アクチュエータの油圧が所定の油圧となったとき、当該後輪用制動アクチュエータの油圧の増加を制限することにより、後輪制動力を後輪制動力閾値以下に維持させることができる。後輪用制動アクチュエータの油圧は、例えば、車体減速度及び後輪加速度から推定され、車体減速度及び後輪加速度のそれぞれに対し、後輪用制動アクチュエータの油圧の増加を制限するための(EBD制御を実行するための)閾値が設定される。ところが、昇圧速度が高いときには、後輪用制動アクチュエータの油圧がEBD制御を実行するのに十分な油圧に達したにもかかわらず、車体減速度及び後輪加速度が想定される車体減速度及び後輪加速度まで低下しないことが考えられる。
そこで、本発明装置における前記特定条件は、前記車両の制動時に、以下の3つの条件が全て成立する条件として設定される。
(第1条件)車体減速度(Gx)が、前記制動圧の時間変化率である昇圧速度(dPmc)と相関を有する閾値であって第1昇圧速度範囲(dPmc≧dPmc1)における値が当該第1昇圧速度範囲よりも低い昇圧速度範囲(dPmc<dPmc1)における値よりも高く設定された車体減速度閾値(Gxth)以下となる。
(第2条件)前記後輪加速度が、前記昇圧速度と相関を有する閾値であって、第2昇圧速度範囲(dPmc≧dPmc2)における値が当該第2昇圧速度範囲よりも低い昇圧速度範囲(dPmc<dPmc2)における値よりも高く設定された後輪加速度閾値(dVwrth)以下となる。
(第3条件)前記前輪加速度が、前記昇圧速度と相関を有する閾値であって、第3昇圧速度範囲(dPmc≧dPmc3)における値が当該第3昇圧速度範囲よりも低い昇圧速度範囲(dPmc<dPmc3)における値よりも低く設定された前輪加速度閾値(dVwfth)以下となる。
このように、第1条件によれば、車体減速度閾値は、第1昇圧速度範囲における値が当該第1昇圧速度範囲よりも低い昇圧速度範囲における値よりも高く設定されている。従って、昇圧速度が高いときに車体減速度が「想定される車体減速度まで」低下しなくとも、想定される車体減速度より高い車体減速度にて第1条件が成立するようになっている。更に、第2条件によれば、後輪加速度閾値は、第2昇圧速度範囲における値が当該第2昇圧速度範囲よりも低い昇圧速度範囲における値よりも高く設定されている。従って、昇圧速度が高いときに後輪加速度が「想定される後輪加速度まで」低下しなくとも、想定される後輪加速度より高い後輪加速度にて第2条件が成立するようになっている。
反対に、前輪においては、昇圧速度が高いとき前輪荷重が増大する前に制動力が増加するので、前輪加速度は、前輪用制動アクチュエータの油圧が比較的低い段階で所定の前輪加速度閾値まで低下することが考えられる。この場合、後輪制動アクチュエータの油圧が想定より低い圧力にて制限されることが考えられる。その結果、制動力が低下して制動距離が長くなってしまう虞がある。
しかし、第3条件によれば、前輪加速度閾値は、第3昇圧速度範囲における値が当該第3昇圧速度範囲よりも低い昇圧速度範囲における値よりも低く設定されている。従って、昇圧速度が高いときには、想定される前輪加速度より低い前輪加速度にて第3条件が成立するようになっている。従って、後輪制動アクチュエータの油圧が想定より低い油圧に制限されてしまうことを防止することができる。
このように、上記第1条件、第2条件及び第3条件が全て成立するとき、左右の後輪の制動力が後輪制動力閾値を超えたと推定することにより、昇圧速度が高いとき(例えば、急制動時)に後輪の制動力が過剰になることを防止することができる。つまり、上記の構成によれば、オリフィス径が拡大された(流路抵抗が小さくされた)制動アクチュエータにおいても、急制動時に後輪の制動力が過剰になることを防止し、車両の走行安定性を確保することが可能な車両の制動制御装置を提供することができる。
上記説明においては、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いた名称及び/又は符号を括弧書きで添えている。しかしながら、本発明の各構成要素は、前記名称及び/又は符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の実施形態に係る車両の制動制御装置の概略構成図である。 図2は、図1に示した制動装置が有する制動スリップ率と制動力との関係を説明するための図である。 図3は、図1に示した制動装置における前輪の制動力と後輪の制動力の配分比を説明するための図である。 図4は、EBD作動時の後輪用ホイールシリンダ油圧の、制動圧の昇圧速度に対する変化を説明するための図である。 図5(A)は、従来装置における昇圧速度とロック圧到達時の車体減速度との関係、図5(B)は、従来装置における昇圧速度とEBD作動時の後輪加速度との関係、図5(C)は、従来装置における昇圧速度とEBD作動時の前輪加速度との関係、をそれぞれ説明するための図である。 図6は、図1に示した制動制御装置が実行するEBDの作動時の油圧と、昇圧速度と、の関係を説明するための図である。 図7は、図1に示した制動制御装置の昇圧速度及び車体速度と、車体減速度閾値と、の関係を規定したルックアップテーブルである。 図8は、図1に示した制動制御装置の昇圧速度及び車体速度と、後輪加速度閾値と、の関係を規定したルックアップテーブルである。 図9は、図1に示した制動制御装置の昇圧速度及び車体速度と、前輪加速度閾値と、の関係を規定したルックアップテーブルである。 図10は、図1に示した制動制御装置のブレーキECUのCPUが実行する「EBD制御ルーチン」を示したフローチャートである。 図11は、本発明の第2実施形態に係る車両の制動制御装置の後輪加速度及び前輪加速度と、車体減速度閾値と、の関係を規定したルックアップテーブルである。
<第1実施形態>
(構成)
本発明の第1実施形態に係る車両の制動制御装置(以下、「第1装置」とも称呼される。)は、図1に示したように、車両10に適用される。
車両10は、車両10の駆動力を発生する駆動装置20、駆動力伝達機構30、制動装置40、エンジンECU100、ブレーキECU110及び車輪W(WFL、WFR、WRL及びWRR)等を備えている。
以下、車輪毎に設けられる要素については、その符号の末尾に、左前輪を表す添字FL、右前輪を表す添字FR、左後輪を表す添字RL及び右後輪を表す添字RRをそれぞれ付す。但し、車輪毎に設けられる要素について車輪位置を特定しない場合、それらの添字は省略される。
駆動装置20は、図示しない内燃機関(エンジン)本体及び変速機等を含んでいる。駆動装置20は、駆動力伝達機構30を介して車両10の前輪(左前輪WFL及び右前輪WFR)を駆動する駆動力を発生する。
駆動力伝達機構30は、プロペラシャフト31、ディファレンシャルギア32、左前輪車軸33L及び右前輪車軸33R等を含んでいる。駆動装置20が発生する駆動力はプロペラシャフト31に伝達される。プロペラシャフト31の駆動力は、ディファレンシャルギア32を介して左前輪車軸33L及び右前輪車軸33Rへそれぞれ伝達され、これにより左前輪WFL及び右前輪WFRが回転駆動される。
制動装置40は、ブレーキペダル41、マスタシリンダユニット50、動力液圧発生装置60、ブレーキユニット70及び液圧制御弁装置80等を含んでいる。
マスタシリンダユニット50は、図示しないマスタシリンダ、レギュレータ及びリザーバ等を含んでおり、例えば、特開2013−49292号公報及び特開2013−256253号公報等に記載された周知のマスタシリンダユニットである。
動力液圧発生装置60は、図示しないポンプ、アキュムレータ及びモータを含む動力源であり、例えば、特開2013−49292号公報及び特開2013−256253号公報等に記載された周知の動力液圧発生装置である。
ブレーキユニット70(70FL、70FR、70RL及び70RR)は、ホイールシリンダ71及びブレーキディスク72を含み、各車輪にそれぞれ設けられる。ブレーキユニット70は、「制動アクチュエータ」とも称呼される。
ホイールシリンダ71FL、71FR、71RL及び71RRは、液圧制御弁装置80から供給される作動液の液圧によりブレーキディスク72FL、72FR、72RL及び72RRのそれぞれにブレーキパッドを押し付ける。ブレーキディスク72FL、72FR、72RL及び72RRは、それぞれ車輪WFL、WFR、WRL及びWRRとともに回転する。これにより、ホイールシリンダ71は車輪Wに制動力を付与することができる。
液圧制御弁装置80は、各ホイールシリンダ71FL、71FR、71RL及び71RRにそれぞれ接続される図示しない4つの個別流路と、各個別流路を連通する主流路と、主流路とマスタシリンダとを接続するマスタ流路と、主流路とレギュレータとを接続するレギュレータ流路と、主流路と動力液圧発生装置60とを接続するアキュムレータ流路とを備える。マスタ流路、レギュレータ流路及びアキュムレータ流路は、主流路に対してそれぞれ並列に接続される。
各個別流路には、その途中にABS保持弁がそれぞれ設けられる。ABS保持弁は、連通位置及び遮断位置の何れか一方を択一的に選択する常開式の2位置電磁弁である。各個別流路には、リザーバと接続する減圧用個別流路がそれぞれ接続される。各減圧用個別流路にはその途中にそれぞれABS減圧弁が設けられている。ABS減圧弁は、連通位置及び遮断位置の何れか一方を択一的に選択する常閉式の2位置電磁弁である。
ABS保持弁およびABS減圧弁は、車輪がロックしてスリップした場合に、ホイールシリンダ圧を下げて車輪のロックを防止するアンチスキッド制動及び配分比調整制動の実行時などにおいて制御される。
エンジンECU100は、後述するブレーキECU110とCAN(Controller Area Network) 通信により情報交換可能に接続されている。ECUは、エレクトロニックコントロールユニットの略称であり、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM(又は不揮発性メモリ)及びインタフェースI/F等を含むマイクロコンピュータを主要構成部品として有する電子制御回路である。CPUは、メモリ(ROM)に格納されたインストラクション(ルーチン)を実行することにより後述する各種機能を実現する。
エンジンECU100は、アクセル開度センサ111等と電気的に接続され、これらセンサからの出力信号を受信するようになっている。アクセル開度センサ111は、運転者により操作可能に設けられたアクセルペダル111aの操作量APを表す出力信号を発生するようになっている。エンジンECU100は、アクセル開度センサ111等からの信号に基づいて駆動装置20に駆動力を発生させる。
ブレーキECU110は、回転速度センサ112(112FL,112FR,112RL,及び112RR)、操舵角センサ113、ヨーレートセンサ114、加速度センサ115及びマスタシリンダ圧センサ116等と電気的に接続され、これらセンサからの出力信号を受信するようになっている。回転速度センサ112FL,112FR,112RL及び112RRは、左前輪WFL、右前輪WFR、左後輪WRL及び右後輪WRRのそれぞれの回転速度に応じた信号NP(NPfl、NPfr、NPrl及びNPrr)を発生するようになっている。ブレーキECU110のCPUは、回転速度センサ112からの信号NPに基づいて車輪速度Vwfl、Vwfr、Vwrl及びVwrrを演算する。
操舵角センサ113は、運転者により操作可能に設けられたステアリングホイール113aの操舵角Stを表す出力信号を発生するようになっている。ヨーレートセンサ114は、車両10のヨーレートYrを表す出力信号を発生するようになっている。加速度センサ115は、車両10の加減速度Gxを表す出力信号を発生するようになっている。なお、操舵角センサ113及びヨーレートセンサ114は車両10の左旋回方向を正としてそれぞれ操舵角St及びヨーレートYrを検出するようになっている。
前述したように、マスタシリンダ圧センサ116は、レギュレータ流路の上流側に設けられ、マスタシリンダユニット50から液圧制御弁装置80に供給される作動液の液圧をマスタシリンダ圧Pmcとして検出する。マスタシリンダ圧Pmcは、車両の運転者によるブレーキペダル41の踏込み量を反映した値であり、以下、「制動要求値Pmc」とも称呼される。
ところで、図2に示したように、車輪の制動力は、制動スリップ率SLが主にタイヤの特性により決定される所定の制動スリップ率(以下、「理想スリップ率」とも称呼される。)SLi以下であるときには、制動スリップ率SLが高くなるほど増大し、制動スリップ率SLが理想スリップ率SLiより高いときには、制動スリップ率SLが高くなるほど低下する。ブレーキECU110は、各車輪の車輪速度Vwfl、Vwfr、Vwrl及びVwrrに基づいて各車輪の制動スリップ率SLを演算し、各車輪について当技術分野において公知のアンチスキッド制動(以下、「ABS制御」とも称呼される。)を実行する。
ABS制御は、例えば、各車輪の制動スリップ率SLが理想スリップ率SLiに近付くように、制動装置40により各車輪の作動液圧が調整されることにより行われる。より具体的に述べると、ブレーキECU110は、先ず、各車輪のそれぞれの制動スリップ率SLを算出する。
制動スリップ率SLは車体速度Vbに対する車体速度Vbと車輪速度Vwの偏差の割合にて定義される。通常、車体速度Vbには、各車輪の車輪速度Vwに基づいて推定される推定車体速度Vxが用いられる。従って、制動スリップ率SLは次式に従って算出される。

SL=(Vx−Vw)/Vx …(1)

推定車体速度Vxは、例えば、4つの車輪の車輪速度Vwi(Vwfl、Vwfr、Vwrl及びVwrr)のうち最も高い車輪速度Vwiが所定のサンプリング時間毎に選択されることにより得られる。
算出された制動スリップ率SLが理想スリップ率SLiよりも大きいスリップ率閾値SLthを超えた特定車輪がある場合、ブレーキECU110は特定車輪の制動力を特定車輪のブレーキユニット70に加えられる油圧を低下させることにより低下させる。このとき、ブレーキECU110は、特定車輪のスリップ率SLを、理想スリップ率SLiを含む微小範囲であるSL1からSL2の範囲内に入るように低下させる(図2を参照。)。このように作動液圧が調整されている期間がABS制御の実行期間である。以下、制動スリップ率SLは単に「スリップ率SL」と、前輪の制動スリップ率SLfは単に「前輪スリップ率SLf」と、後輪の制動スリップ率SLrは単に「後輪スリップ率SLr」とも称呼される。
(作動)
次に、第1装置の作動について説明する。図3に示したように、曲線C1は前輪の制動力Fbfと後輪の制動力Fbrとが理想配分比に従って変化した場合におけるそれらの関係を示している。「理想配分比」とは、前輪スリップ率SLfと後輪スリップ率SLrとが等しくなるような前輪の制動力Fbfと後輪の制動力Fbrとの配分比である。直線L1は、前輪の制動力Fbf及び後輪の制動力Fbrの合計(以下、「制動要求値」と称呼する。)が小さい場合、前輪の制動力Fbfと後輪の制動力Fbrとは比例関係を維持しながら変化するように調整される。
この制動要求値が大きくなると、曲線C1と直線L1とは点P1にて交差する。より具体的に述べると、ブレーキ操作が行われることにより制動要求値が増大していくと、前輪の制動力Fbf及び後輪の制動力Fbrは図3の原点Oから直線L1に沿って増加していく。この例において、前輪の制動力Fbf及び後輪の制動力Fbrが点P1に相当する値に至るまでは、後輪の制動力Fbrが「前輪の制動力Fbfと理想配分比とによって決まる後輪の制動力」よりも小さい。即ち、後輪スリップ率SLrは前輪スリップ率SLfよりも低い(SLr<SLf)。前輪の制動力Fbf及び後輪の制動力Fbrが点P1に相当する値になると、前輪スリップ率SLfと後輪スリップ率SLrとは互いに等しくなる。しかし、前輪の制動力Fbf及び後輪の制動力Fbrが直線L1に沿って更に増大して点P1に相当する値を超えると、後輪スリップ率SLrは前輪スリップ率SLfよりも大きくなる(SLr>SLf)。この点P1に対応する後輪の制動力Fbrは「後輪制動力閾値Fbrth」と称呼される。
後輪スリップ率SLrが前輪スリップ率SLfよりも大きくなると、後輪が発生可能な横力が不足するので、車両10の走行安定性能が低下する。そこで、第1装置は、後輪スリップ率SLrが前輪スリップ率SLfより大きくなったとき、配分比調整制動の実行条件が成立したと判定し、以下に述べるように配分比調整制動(EBD制御)を実行する。
即ち、第1装置は、後輪の制動力Fbrが後輪制動力閾値Fbrthを超えたと推定できる特定条件が成立したと判定すると、後輪用のABS保持弁を遮断位置に変更する。後輪用のABS減圧弁は、ABS制御が開始されるまでは遮断位置に維持される。この結果、後輪用ホイールシリンダ71RL及び71RRの油圧が保持されるので、直線L2により示されるように、前輪の制動力Fbfが更に増加しても、後輪の制動力Fbrは後輪制動力閾値Fbrthに維持され、図示した差ΔFが拡大する。
従って、この制御によれば、後輪スリップ率SLrが常に前輪スリップ率SLf以下となるように、前輪の制動力Fbf及び後輪の制動力Fbrが制御される。その結果、制動中の後輪の横力が確保されるので、車両10の走行安定性能が確保される。ところで、EBD制御時に保持される後輪用ホイールシリンダ71RL及び71RRの油圧(以下、「ロック圧」とも称呼される。)は、後輪の制動力Fbrが後輪制動力閾値Fbrthと一致するときの油圧として、実験及びシミュレーション等により定められる。後輪用ホイールシリンダ71RL及び71RRの油圧は直接検出されないので、第1装置は、当該油圧がロック圧を超えたか否かを、以下の3つのパラメータの全てがそれぞれの閾値を超えたか否かにより判定するようになっている。つまり、上記特定条件は、以下の3つの条件が全て成立する条件である。
<EBD実行のための条件>
(1)車体減速度Gxが所定の車体減速度閾値Gxth以下である。
(2)後輪の車輪加速度(後輪加速度)dVwrが所定の閾値dVwrth以下である。
(3)前輪の車輪加速度(前輪加速度)dVwfが所定の閾値dVwfth以下である。
次に、上記3つの条件について図4乃至図9を参照しながら、より具体的に説明する。図4に示したグラフの横軸は、マスタシリンダ圧Pmcの時間変化率(マスタシリンダ圧Pmcの微分値)dPmc(MPa/s)である。従って、横軸は、ブレーキペダル41の踏込み速度に対応している。以下、マスタシリンダ圧Pmcの時間変化率dPmcは「昇圧速度dPmc」とも称呼される。一方、このグラフの縦軸は、EBD作動時の後輪用ホイールシリンダ71RL及び71RRの油圧Pwcr(MPa)である。
急制動でない通常のブレーキペダル41の操作において、ロック圧が目標ロック圧Pwc1となるように、EBD実行条件の上記車体減速度閾値Gxth、dVwfth及びdVwrthが所定の車体減速度閾値Gxth0 、dVwfth0 及びdVwrth0 にそれぞれ設定された場合について考える。この場合、ロック圧(即ち、EBD制御が作動するときの後輪用ホイールシリンダ71RL及び71RRの油圧)Pwcroは、実線L3から理解されるように、昇圧速度dPmcが比較的低い範囲(即ち、急制動ではない範囲)においては、目標ロック圧Pwc1と一致している。一方、昇圧速度dPmcが比較的高い範囲(即ち、急制動を含む範囲)においては、ロック圧Pwcroは目標ロック圧Pwc1より高くなり、昇圧速度dPmcの増加とともに増大する。
このように、昇圧速度dPmcが高い範囲においてロック圧Pwcroが増大するのは、以下に説明するように、上記特定条件成立のための3条件が成立するタイミングが遅延するからである。
図5(A)に示したグラフの横軸は昇圧速度dPmc(MPa/s)、縦軸は後輪用ホイールシリンダ71RL及び71RRの油圧がロック圧Pwcroに相当する油圧に到達したときの車体減速度(以下、「ロック圧到達時減速度」と称呼する。)Gxro(m/s2) である。図5(A)のグラフには、実際のロック圧到達時減速度Gxroが複数プロットされている。
図5(A)から理解されるように、ロック圧到達時減速度Gxroは、昇圧速度dPmcが増加するほど増大する(その大きさが減少する)傾向がある。そのため、昇圧速度dPmcが比較的高い範囲においては、ロック圧到達時減速度Gxroは、従来設定されていた車体減速度閾値Gxth0 より高く(その大きさが小さく)なってしまう。従って、この場合、昇圧速度dPmcが比較的高い範囲においては、後輪用ホイールシリンダ71RL及び71RRの油圧が目標ロック圧Pwc1に達しても車体減速度Gxが車体減速度閾値Gxth0 を超えない(下回らない)ことがある。
図5(B)に示したグラフの横軸は昇圧速度dPmc(MPa/s)、縦軸は後輪用ホイールシリンダ71RL及び71RRの油圧がロック圧Pwcroに相当する油圧に到達した結果、EBDが作動するときの後輪加速度(以下、「EBD作動時後輪加速度」と称呼する。)dVwrebd(rad/s2)である。図5(B)のグラフには、実際のEBD作動時後輪加速度dVwrebd が複数プロットされている。
図5(B)から理解されるように、EBD作動時後輪加速度dVwrebd は、昇圧速度dPmcが増加するほど増大する(その大きさが減少する)傾向がある。そのため、昇圧速度dPmcが比較的高い範囲においては、EBD作動時後輪加速度dVwrebd は、従来設定されていた後輪加速度閾値dVwrth0 より高く(その大きさが小さく)なってしまう。従って、この場合、昇圧速度dPmcが比較的高い範囲においては、後輪用ホイールシリンダ71RL及び71RRの油圧が目標ロック圧Pwc1に達しても後輪加速度dVwrが後輪加速度閾値dVwrth0 を超えない(下回らない)ことがある。
図5(C)に示したグラフの横軸は昇圧速度dPmc(MPa/s)、縦軸は後輪用ホイールシリンダ71RL及び71RRの油圧がロック圧Pwcroに相当する油圧に到達した結果、EBDが作動するときの前輪加速度(以下、「EBD作動時前輪加速度」と称呼する。)dVwfebd(rad/s2)である。図5(C)のグラフには、実際のEBD作動時前輪加速度dVwfebd が複数プロットされている。
図5(C)から理解されるように、EBD作動時前輪加速度dVwfebd は、昇圧速度dPmcが増加するほど減少する(その大きさが増大する)傾向がある。そのため、昇圧速度dPmcが比較的高い範囲においては、EBD作動時前輪加速度dVwfebd は、従来設定されていた前輪加速度閾値dVwfth0 に対してその大きさが過大な値となってしまう。従って、この場合、昇圧速度dPmcが比較的高い範囲においては、後輪用ホイールシリンダ71RL及び71RRの油圧が目標ロック圧Pwc1に達する前に前輪加速度dVwfが前輪加速度閾値dVwfth0 を超えている(下回っている)ことが想定される。
以上の結果を踏まえ、第1装置における車体減速度閾値Gxth、後輪加速度閾値dVwrth及び前輪加速度閾値dVwfthは、次のように設定される。
<車体減速度閾値>
図5(A)に実線L4にて表したように、昇圧速度dPmcが昇圧速度dPmc1よりも低い低昇圧速度範囲において、車体減速度閾値Gxthは昇圧速度dPmcの増加とともに一定の傾きで増加し、昇圧速度dPmcが昇圧速度dPmc1以上の高昇圧速度範囲(以下、「第1昇圧速度範囲」とも称呼する。)において一定値となるように設定される。つまり、車体減速度閾値Gxthの第1昇圧速度範囲における値は、少なくとも当該第1昇圧速度範囲より低い昇圧速度範囲における値よりも高く(その大きさが小さく)設定される。車体減速度Gxが、このように設定された車体減速度閾値Gxth以下となる条件は「第1条件」と称呼される。
<後輪加速度閾値>
図5(B)に実線L5にて表したように、昇圧速度dPmcが昇圧速度dPmc2よりも低い低昇圧速度範囲において、後輪加速度閾値dVwrthは昇圧速度dPmcの増加とともに一定の傾きで増加し、昇圧速度dPmcが昇圧速度dPmc2以上の高昇圧速度範囲(以下、「第2昇圧速度範囲」とも称呼する。)において一定値となるように設定される。つまり、後輪加速度閾値dVwrthの第2昇圧速度範囲における値は、少なくとも当該第2昇圧速度範囲より低い昇圧速度範囲における値よりも高く(その大きさが小さく)設定される。後輪加速度dVwrが、このように設定された後輪加速度閾値dVwrth以下となる条件は「第2条件」と称呼される。
<前輪加速度閾値>
図5(C)に実線L6にて表したように、昇圧速度dPmcが昇圧速度dPmc3よりも低い低昇圧速度範囲において、前輪加速度閾値dVwfthは一定の値であり、昇圧速度dPmcが昇圧速度dPmc3以上の高昇圧速度範囲(以下、「第3昇圧速度範囲」とも称呼する。)において昇圧速度dPmcの増加とともに一定の傾きで減少するように設定される。つまり、前輪加速度閾値dVwfthの第3昇圧速度範囲における値は、少なくとも当該第3昇圧速度範囲より低い昇圧速度範囲における値よりも低く(その大きさが大きく)設定される。前輪加速度dVwfが、このように設定された前輪加速度閾値dVwfth以下となる条件は「第3条件」と称呼される。
このようにして、第1装置は、車体減速度閾値Gxthを図5(A)にて実線L4により表したGxth、後輪加速度閾値dVwrthを図5(B)にて実線L5により表したdVwrth、前輪加速度閾値dVwfthを図5(C)にて実線L6により表したdVwfthにそれぞれ設定する。その結果、図6に示したように、全昇圧速度dPmcの範囲において、目標ロック圧Pwc1付近にてEBD制御が実行される。
ところで、仮に車体速度Vxが高いときに後輪の制動力Fbrが過剰となった場合(即ち、後輪の制動力Fbrが理想配分比の曲線C1を超えた場合)、車体速度Vxが低いときに比べて、走行安定性能が低下した状態にて走行する距離が長くなる。従って、車体速度Vxが高いほど早期にEBD制御が実行されることが好ましい。つまり、車体速度Vxが高いほどロック圧Pwcroが低くなるように設定することが好ましい。そこで、第1装置は、車体速度Vxが高いほど車体減速度閾値Gxth、後輪加速度閾値dVwrth及び前輪加速度閾値dVwfthがそれぞれ高くなるように(それらの大きさが大きくなるように)設定する。
従って、車体減速度閾値Gxthは、図7に示したような昇圧速度dPmc及び車体速度Vxの関数となる。図7から理解されるように、車体減速度閾値Gxthは、昇圧速度dPmcがdPmc1未満の範囲においては昇圧速度dPmcの増加に対し線形的に増大する。昇圧速度dPmcがdPmc1以上の範囲(第1昇圧速度範囲)においては一定値となり、特に車体速度Vxが極めて低い場合、車体減速度閾値GxthはGx1となる。なお、車体速度Vxが極めて低い場合、昇圧速度dPmcが低いときの車体減速度閾値GxthはGx0に外挿される。車体速度Vxが高いほど車体減速度閾値Gxthは高く(その大きさが小さく)設定される。車体速度Vxが極めて高く昇圧速度dPmcが低いときの車体減速度閾値GxthはGx2に外挿される。
後輪加速度閾値dVwrthは、図8に示したような昇圧速度dPmc及び車体速度Vxの関数となる。図8から理解されるように、後輪加速度閾値dVwrthは、昇圧速度dPmcがdPmc2未満の範囲においては昇圧速度dPmcの増加に対し線形的に増大する。昇圧速度dPmcがdPmc2以上の範囲(第2昇圧速度範囲)においては一定値となり、特に車体速度Vxが極めて低い場合、後輪加速度閾値dVwrthはdVwr1となる。なお、車体速度Vxが極めて低い場合、昇圧速度dPmcが低いときの後輪加速度閾値dVwrthはdVwr0に外挿される。車体速度Vxが高いほど後輪加速度閾値dVwrthは高く(その大きさが小さく)設定される。車体速度Vxが極めて高く昇圧速度dPmcが低いときの後輪加速度閾値dVwrthはdVwr2に外挿される。
前輪加速度閾値dVwfthは、図9に示したような昇圧速度dPmc及び車体速度Vxの関数となる。図9から理解されるように、前輪加速度閾値dVwfthは、昇圧速度dPmcがdPmc3未満の範囲においては一定値となり、特に車体速度Vxが極めて低い場合、dVwfth0となる。昇圧速度dPmcがdPmc3以上の範囲(第3昇圧速度範囲)においては昇圧速度dPmcの増加に対し線形的に減少する。車体速度Vxが極めて低い場合、昇圧速度dPmcが高いときの前輪加速度閾値dVwfthはdVwf1に外挿される。車体速度Vxが高いほど前輪加速度閾値dVwfthは高く(その大きさが小さく)設定される。車体速度Vxが極めて高く昇圧速度dPmcが低いときの前輪加速度閾値dVwfthはdVwf2に外挿される。
(実際の作動)
以下、第1装置の実際の作動について、図10を参照しながら説明する。ブレーキECU110のCPU(以下、単に「CPU」と称呼する。)は、一定時間が経過する毎に図10にフローチャートにより示したEBD制御ルーチンを実行するようになっている。
CPUは所定の時点にてステップ1000から処理を開始してステップ1010に進み、車両10が制動中であるか否かを判定する。より具体的には、車両10が制動中であるか否かは、例えば、マスタシリンダ圧Pmcが所定の閾値Pmcth以上であるか否かにより判定される。
マスタシリンダ圧Pmcが所定の閾値Pmcth以上である場合(即ち、制動中である場合)、CPUはステップ1010にて「Yes」と判定してステップ1020に進み、車体速度Vxを推定する。更に、CPUは、ステップ1020にて車体減速度Gxを取得するとともに前輪加速度dVwf及び後輪加速度dVwrを演算する。
より具体的に述べると、制動時には、前後左右の4つの車輪Wの車輪速度Vwiのうち最も高い車輪速度を有する車輪の制動スリップ率が低いので、車体速度に近いと推定される。従って、CPUは、制動時の車体速度を、例えば、車輪速度Vwi(Vwfl、Vwfr、Vwrl及びVwrr)のうち最も高い車輪速度Vwiを所定のサンプリング時間毎に選択することにより取得する(推定する)。
昇圧速度dPmcは、マスタシリンダ圧Pmcの時間微分値である。従って、CPUは、昇圧速度dPmcを、今回取得されたマスタシリンダ圧Pmcと1サンプリング周期前に取得されたマスタシリンダ圧Pmcとの差分をサンプリング周期で除することにより取得する。
前輪加速度dVwfは、左前輪WFLの車輪速度Vwfl及び右前輪WFRの車輪速度Vwfrの平均値Vwfの時間微分値である。従って、CPUは、前輪加速度dVwfを、今回演算された平均値Vwfと1サンプリング周期前に演算された平均値Vwfとの差分をサンプリング周期で除することにより取得する。後輪の車輪加速度(後輪加速度)dVwrは、左後輪WRLの車輪速度Vwrl及び右後輪WRRの車輪速度Vwrrの平均値Vwrの時間微分値である。従って、CPUは、後輪加速度dVwrを、今回演算された平均値Vwrと1サンプリング周期前に演算された平均値Vwrとの差分をサンプリング周期で除することにより取得する。
次いで、CPUはステップ1030に進み、車体減速度閾値Gxth、後輪加速度閾値dVwrth及び前輪加速度閾値dVwfthを取得する。より具体的に述べると、CPUは、図7に示した昇圧速度dPmc及び推定車体速度Vxと、車体減速度閾値Gxthとの関係を規定したルックアップテーブルMapGxth(dPmc,Vx) に実際の昇圧速度dPmc及び推定車体速度Vxを適用することにより、車体減速度閾値Gxthを算出する。なお、このルックアップテーブルテーブル及び以下に述べるルックアップテーブルは、予め実験及びシミュレーション等により定められ、ブレーキECU110内のROMに格納されている。
更に、CPUは、図8に示した昇圧速度dPmc及び推定車体速度Vxと、後輪加速度閾値dVwrthとの関係を規定したルックアップテーブルMapdVwrth(dPmc,Vx)に実際の昇圧速度dPmc及び推定車体速度Vxを適用することにより、後輪加速度閾値dVwrthを算出する。加えて、CPUは、図9に示した昇圧速度dPmc及び推定車体速度Vxと、前輪加速度閾値dVwfthとの関係を規定したルックアップテーブルMapdVwfth(dPmc,Vx)に実際の昇圧速度dPmc及び推定車体速度Vxを適用することにより、前輪加速度閾値dVwfthを算出する。
次いで、CPUはステップ1040に進み、車体減速度Gxが車体減速度閾値Gxth以下であるか否かを判定する。車体減速度Gxが車体減速度閾値Gxth以下である場合、CPUはステップ1040にて「Yes」と判定してステップ1050に進み、後輪加速度dVwrが後輪加速度閾値dVwrth以下であるか否かを判定する。
後輪加速度dVwrが後輪加速度閾値dVwrth以下である場合、CPUはステップ1050にて「Yes」と判定してステップ1060に進み、前輪加速度dVwfが前輪加速度閾値dVwfth以下であるか否かを判定する。前輪加速度dVwfが前輪加速度閾値dVwfth以下である場合、CPUはステップ1060にて「Yes」と判定してステップ1070に進む。このとき、前述の3つの条件は全て成立している。つまり、EBD実行条件が成立する。そこで、CPUは、ステップ1070にて後輪WRの制動圧を現時点の制動圧に保持し(ABS保持弁を遮断位置に変更し)、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
一方、車体減速度Gxが車体減速度閾値Gxthより大きい場合、CPUはステップ1040にて「No」と判定してステップ1095に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。即ち、この場合、EBDは実行されない。後輪加速度dVwrが後輪加速度閾値dVwrthより大きい場合、CPUはステップ1050にて「No」と判定してステップ1095に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。即ち、この場合もEBDは実行されない。前輪加速度dVwfが前輪加速度閾値dVwfthより大きい場合、CPUはステップ1060にて「No」と判定してステップ1095に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。即ち、この場合もEBDは実行されない。なお、制動中でない場合、CPUはステップ1010にて「No」と判定してステップ1095に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
以上、説明したように、本制御装置は、左右の後輪WRL,WRRの制動力Fbrが後輪制動力閾値Fbrthを超えたと推定できる特定条件が成立したか否かを判定し、上記特定条件が成立したと判定したとき、配分比調整制動(EBD制御)を制動装置に行わせる制動制御部(ブレーキECU)110を備える。
上記特定条件は、車両10の制動時に、以下の3つの条件が全て成立する条件である。
(1)第1条件:車体減速度Gxが、昇圧速度dPmc(マスタシリンダ圧Pmcの時間変化率)と相関を有する閾値であって第1昇圧速度範囲(dPmc≧dPmc1)における値が当該第1昇圧速度範囲よりも低い昇圧速度範囲(dPmc<dPmc1)における値よりも高く設定された車体減速度閾値Gxth以下となる。
(2)第2条件:後輪加速度dVwrが、昇圧速度dPmcと相関を有する閾値であって第2昇圧速度範囲(dPmc≧dPmc2)における値が当該第2昇圧速度範囲よりも低い昇圧速度範囲(dPmc<dPmc2)における値よりも高く設定された後輪加速度閾値dVwrth以下となる。
(3)第3条件:前輪加速度dVwfが、昇圧速度dPmcと相関を有する閾値であって第3昇圧速度範囲(dPmc≧dPmc3)における値が当該第3昇圧速度範囲よりも低い昇圧速度範囲(dPmc<dPmc3)における値よりも低く設定された前輪加速度閾値dVwfth以下となる。
これによれば、運転者の操作フィーリング向上のためオリフィス径が拡大された制動アクチュエータにおいても、急制動時(昇圧速度が高いとき)に後輪の制動力が過剰になることを防止し、車両の走行安定性を確保することが可能となる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る制動制御装置(以下、「第2装置」とも称呼する。)について説明する。第2装置は、EBD実行条件として、車体減速度閾値Gxthを、前輪加速度dVwf及び後輪加速度dVwrと相関を有する値として設定する点において第1制動制御装置と異なっている。以下、第2装置について説明する。
図8及び図9から理解されるように、第1装置において昇圧速度dPmcが比較的低い昇圧速度範囲においては、後輪加速度閾値dVwrthは低く設定される。つまり、後輪加速度閾値dVwrthの大きさ|dVwrth|は大きく設定される。その一方、前輪加速度閾値dVwfthは高く設定される。つまり、前輪加速度閾値dVwfthの大きさ|dVwfth|は小さく設定される。反対に、昇圧速度dPmcが比較的高い昇圧速度範囲においては、後輪加速度閾値dVwrthは高く設定される。つまり、後輪加速度閾値dVwrthの大きさ|dVwrth|は小さく設定される。その一方、前輪加速度閾値dVwfthは低く設定される。つまり、前輪加速度閾値dVwfthの大きさ|dVwfth|は大きく設定される。
従って、後輪加速度dVwrの大きさ|dVwr|が小さく且つ前輪加速度dVwfの大きさ|dVwf|が大きいとき、昇圧速度dPmcは比較的高いと推定できる。反対に、後輪加速度dVwrの大きさ|dVwr|が大きく且つ前輪加速度dVwfの大きさ|dVwf|が小さいとき、昇圧速度dPmcは比較的低いと推定できる。
図11に示したように、X軸に後輪加速度の大きさ|dVwr|をとり、Y軸に前輪加速度の大きさ|dVwf|をとったとき、例えば、図中の点P2は、後輪加速度の大きさ|dVwr|が小さく且つ前輪加速度の大きさ|dVwf|が大きい点である。従って、点P2において、昇圧速度dPmcは比較的高い。これに対し、図中の点P3は、後輪加速度|dVwr|が大きく且つ前輪加速度の大きさ|dVwf|が小さい点である。従って、点P3において、昇圧速度dPmcは比較的低い。
ところで、図7から理解されるように、車体減速度閾値Gxthは、昇圧速度dPmcが低昇圧速度範囲にあるとき低く設定され、昇圧速度dPmcが高昇圧速度範囲にあるとき高く設定されている。よって、図11の点P2においては、車体減速度閾値Gxthは比較的高い値Gxaに設定され、点P3においては、車体減速度閾値Gxthは比較的低い値Gxbに設定される。
第2装置のCPUは、図10のステップ1020に代わる図示しないステップ1020Aにて推定車体速度Vx、前輪加速度dVwf及び後輪加速度dVwrを演算する。即ち、昇圧速度dPmcは演算しない。更に、第2装置のCPUは、図10のステップ1030に代わる図示しないステップ1030Aにて、図11に示した「後輪加速度の大きさ|dVwr|及び前輪加速度の大きさ|dVwf|と、車体減速度閾値Gxthと、の関係を規定したルックアップテーブルMapGxth(|dVwr|,|dVwf|)」に、実際の後輪加速度の大きさ|dVwr|及び実際の前輪加速度の大きさ|dVwf|を適用することにより、車体減速度閾値Gxthを演算する。
更に、第2装置のCPUは、図10のステップ1040乃至ステップ1060に代わる図示しないステップ1040Aにて、車体減速度Gxが算出された車体減速度閾値Gxth以下であるか否かを判定するようになっている。このように、第2装置は、昇圧速度dPmcを用いず、後輪加速度dVwr及び前輪加速度dVwfから車体減速度閾値Gxthを算出することができる。
<変形例>
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、以下に述べるように、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
上記実施形態においては、車両10が制動中であるか否かの判定は、マスタシリンダ圧Pmcが所定値Pmth1 以上であるか否かをもって判定していたが、ブレーキペダル踏込み量BPが所定の踏込み量閾値BPth以上であるか否かをもって制動中であると判定してもよい。
上記実施形態においては、図10のステップ1040乃至ステップ1060において、第1条件の成否の判定、第2条件の成否の判定、第3条件の成否の判定、の順に実行されていた。しかし、第1条件の成否の判定、第2条件の成否の判定及び第3条件の成否の判定は、必ずしも上記の順番にて実行されなくてもよいし、並列に(同時に)実行されてもよい。
上記実施形態においては、制動中であるときには車体減速度Gx、後輪加速度dVwr及び前輪加速度dVwfが図7乃至図9に示されるそれぞれの閾値に従ってEBD制御実行条件が成立するか否かを判定していた。しかし、昇圧速度dPmcが比較的低いときには、車体減速度閾値Gxth、後輪加速度閾値dVwrth及び前輪加速度閾値dVwfthは、昇圧速度dPmcに依存せず、車体速度Vxのみに依存する。そこで、昇圧速度dPmcが所定の昇圧速度閾値dPmcth以上であるときは、図7乃至図9に示されるそれぞれの閾値に従ってEBD制御実行条件が成立するか否かを判定してもよい。一方、昇圧速度dPmcが所定の昇圧速度閾値dPmcth未満であるときは、車体速度Vxにのみ依存する車体減速度閾値Gxth(Vx)、後輪加速度閾値dVwrth(Vx)及び前輪加速度閾値dVwfth(Vx)に従ってEBD制御実行条件が成立するか否かを判定してもよい。
上記実施形態において、車体減速度Gxは、加速度センサ115により検出された信号に基づいて取得されていたが、推定された車体速度Vxが時間微分されることにより取得されてもよい。
上記実施形態において、駆動装置20は一般的な車両の内燃機関及び変速装置を含む構成であったが、駆動装置は、電動機及び変速装置の組合せ、並びに、内燃機関、電動機及び変速装置の組合せであるハイブリッド駆動装置により構成されてもよい。
10…車両、40…制動装置、70…制動アクチュエータ、70RL,70RR…後輪の制動アクチュエータ、110…制動制御部(ブレーキECU)、112…回転速度センサ、116…制動圧センサ、WFL…左前輪、WFR…右前輪、WRL…左後輪、WRR…右後輪。

Claims (1)

  1. 左右の前輪及び左右の後輪の各車輪に設けられた制動アクチュエータに、制動力の要求値である制動要求値の増大に応じて増大する油圧を加えることにより、前記左右の前輪の制動力と前記左右の後輪の制動力との配分比が所定の配分比となるように当該左右の前輪の制動力と当該左右の後輪の制動力とを変更可能に構成された制動装置を備える車両に適用され、
    前記制動装置の制動圧を検出する制動圧センサと、
    前記車輪の回転速度をそれぞれ検出する回転速度センサと、
    前記検出された回転速度に基づいて前記左右の前輪の車輪加速度である前輪加速度及び前記左右の後輪の車輪加速度である後輪加速度を算出し、
    前記左右の後輪の制動力が後輪制動力閾値を超えたと推定できる特定条件が成立したか否かを判定し、前記特定条件が成立したと判定したとき、前記制動要求値の増大に応じて前記左右の前輪の制動アクチュエータに加えられる前記油圧を増大させることにより当該左右の前輪の制動力を増大させ且つ前記左右の後輪の制動アクチュエータに加えられる前記油圧を保持させることにより当該左右の後輪の制動力を一定値に維持させる配分比調整制動を前記制動装置に行わせる制動制御部と、
    を備えた車両の制動制御装置において、
    前記特定条件は、前記車両の制動時に、
    車体減速度が、前記制動圧の時間変化率である昇圧速度と相関を有する閾値であって第1昇圧速度範囲における値が当該第1昇圧速度範囲よりも低い昇圧速度範囲における値よりも高く設定された車体減速度閾値以下となる第1条件、
    前記後輪加速度が、前記昇圧速度と相関を有する閾値であって第2昇圧速度範囲における値が当該第2昇圧速度範囲よりも低い昇圧速度範囲における値よりも高く設定された後輪加速度閾値以下となる第2条件、及び
    前記前輪加速度が、前記昇圧速度と相関を有する閾値であって第3昇圧速度範囲における値が当該第3昇圧速度範囲よりも低い昇圧速度範囲における値よりも低く設定された前輪加速度閾値以下となる第3条件、
    が全て成立する条件である、
    制動制御装置。

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