JP2019537554A - 可視波長帯に向けて遠くから伸びる超長波長吸収を有する、フォトクロミック多環縮合ナフトピラン - Google Patents

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Abstract

本発明は、可視波長帯に向けて遠くから伸びる、閉環体の超長波長吸収を有する、フォトクロミック多環縮合ナフトピラン、並びに、全ての種類のプラスチック、特に眼科領域目的、及び好ましくは車両運転手用眼鏡での、それらの使用に関する。

Description

本発明は、可視波長帯に向けて遠くから伸びる、閉環体の超長波長吸収を有する、フォトクロミックポリ縮合ナフトピラン、及び、全ての種類のプラスチック、特に眼科領域目的、好ましくは運転用眼鏡での、その使用に関する。本発明の化合物は更に、非常に高い性能と共に、非常に良好な寿命を有する。
特定の波長の光、特に日光照射時に、可逆的に色を変化させる様々な種類の染料が、長く知られている。この理由は、これらの染料分子が光エネルギーにより励起状態(「開環体」)に転換され、エネルギー供給が停止した際に、染料分子は再び離れ、基底状態に戻ることである。これらのフォトクロミック染料としては、異なる基本系及び置換基を有する、先行技術で既に記載されている様々なピラン系が挙げられる。
ピラン、特にナフトピラン及びこれらに由来するより大型の環系は現在、最も研究されているフォトクロミック化合物の種類である。最初の特許は早くも1966年に出願されている(米国特許第3,567,605号)ものの、1990年代までは、眼鏡での使用に好適と思われる化合物は開発されなかった。ピランの好適な化合物の種類は、励起形態で、黄色から赤色の、様々な減光色を有する、2,2−ジアリール−2H−ナフト[1,2−b]ピラン、又は3,3−ジアリール−3H−ナフト[2,1−b]ピランの化合物である。
このより大型の環系により長波長吸収を有し、赤、紫、及び青色の減光色をもたらす、これらの基本系に由来する縮合ナフトピランには、大きな関心が向けられている。この目的は、典型的には、オルト位に追加のブリッジを有するベンゼン環(本発明の化合物において、以下、R及びR置換基によるブリッジ)を使用して達成される。
以下の本発明の化合物におけるように、金属ブリッジが存在する場合、結果は、ナフトピランに縮合した五員環となる。ブリッジング炭素原子(「インデノナフトピラン」)については欧州特許出願公開第0792468号明細書及び同第0906366号明細書、並びに、ブリッジング酸素原子については欧州特許出願公開第0946536号明細書に、例を見出すことができる。
欧州特許出願公開第2457915号明細書、同第2471794号明細書、同第2684886号明細書、同第2788340号明細書、及び同第2872517号明細書は、少なくとも1つの更なる環系が、コアのインデノナフトピラン構造、ただし、本発明の以下の式(I)の化合物とは対照的に、R及びR10置換基間のC−C結合、即ち、コア構造内の別の箇所に縮合している化合物について開示している。しかし、この箇所への縮合は、本発明の以下の式(I)の化合物と比較して、最長波長吸収帯の明らかに小さい深色移動をもたらす。
中でも、欧州特許出願公開第0912908号明細書に詳述されている化合物は、2つの更なる環系がコアのインデノナフトピラン構造、即ち、本発明の以下の式(I)の化合物と同じ位置に縮合した化合物である。しかし、本発明の式(I)の化合物と比較すると、記載された縮合(ベンゾフロ、ベンゾチエノ、及びインドーロ)の効果は、閉環体の最長波長吸収帯の、明らかに小さい深色移動である。
対照的に、二原子ブリッジが存在する場合、結果は、ナフトピランに縮合した六員環となる。2つの炭素原子で構成されるブリッジを有する化合物は、欧州特許出願公開第1119560号明細書に記載されている(同第2829537号又は同第3010924号もまた、参照のこと)。
欧州特許出願公開第1097156号明細書は、同2178883号明細書及び同第2760869号明細書と同様に、炭素原子及び酸素原子で構成される二原子ブリッジを有する化合物について記載している。
しかし、先行技術にて今日まで入手可能な様々なフォトクロミック染料は、紫又は青の可視波長帯まで十分に伸びる、閉環体の長波吸収を示さない。後者により可能になるであろうことは、このようなフォトクロミック染料で構成された眼鏡が、励起(有色)形態への遷移のためにあらゆる、又はほとんどあらゆる紫外線をもはや必要としないこと、そしてこれに関して、それ故、このような眼鏡の減光が、例えば、完全に紫外線を吸収する自動車のフロントガラスの後ろで、達成可能であることである。
したがって、本発明の目的は、紫又は青色の可視波長まで十分に伸びる、閉環体の一波吸収を特徴とするフォトクロミック染料を提供することである。
この目的は、特許請求の範囲で特徴付けられる発明の要旨により達成される。
より詳細には、一般式(I)、(II)、及び(III)
で示されるフォトクロミックポリ縮合ナフトピラン
[式中、R、R、R、R、R、R、及びR10基はそれぞれ独立して、
水素原子;(C−C18)−アルキル基;1つ以上のヘテロ原子(例えばO又はS)を有し得る(C−C)−シクロアルキル基;(C−C18)−チオアルキル基;(C−C18)−アルコキシ基;ヒドロキシル基;トリフルオロエチル基;臭素;塩素;フッ素;非置換の、一置換の、又は二置換の、フェニル基、フェノキシ基、ベンジル基、ベンジルオキシ基、ナフチル基、又はナフトキシ基
からなる群αから選択される置換基を表し、
これらの置換基は更に、
水素原子、(C−C)−アルキル基、(C−C)−シクロアルキル基、(C−C)−チオアルキル基、(C−C)−アルコキシ基、フェニル基、ベンジル基、又はナフチル基からなる群βから選択されてよく、
nは1〜4の整数を表し、
又は、R及びR基は炭素原子と共にこれらの基に結合し、任意に、群βからの1つ以上の置換基を有し、1〜3個の芳香族又は芳香族複素環系が縮合し得る、三〜八員環の一環式炭素又は複素環を形成し(環系は群βから選択される1つ以上の置換基により更に置換されてよい、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、ピリジン、キノリン、フラン、チオフェン、ピロール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、及びカルバゾールから独立して選択される)、
又は、2つの隣接したR基は、置換基が群βから選択され得る置換基である、非置換、一置換、又は二置換であり得る縮合ベンゼン環を形成し、
又は、2つの隣接したR基は、五員環の二重結合を介して縮合した、1,1−ジメチルインデン又はベンゾフラン環系を形成し、
又は、2つの隣接したR基は、複素環式六員環の二重結合を介して2H−クロメン又は1H−イソクロメン環系を形成し、
及びR基はそれぞれ独立して、水素、(C−C18)−アルキル基、フェニル基、ベンジル基、又はナフチル基から選択される置換基を表し、
mは1〜4、好ましくは1又は2、より好ましくは2の整数を表し、
又は、2つの隣接した−CR−部分は、置換基が群βから選択され得る置換基である、非置換、一置換、又は二置換であり得る縮合ベンゼン環を形成し、
基は、水素、(C−C18)−アルキル基、フェニル基、ベンジル基、又はナフチル基から選択される置換基を表し、
式(I)のX’は、−SO−、−CH−、−C(CH−、−C(C−、−C(C−、−O−CH−、−CH−O−、−CH−CH−、−C(CH−CH−、又は−CH−C(CH−から選択され、
式(II)又は(III)のXは、−O−、−S−、−SO−、−N(C−C)−アルキル−、−NC−、−CH−、−C(CH−、−C(C−、−C(C−、−O−CH−、−CH−O−、−O−(C=O)−、−(C=O)−O−、−CH−CH−、−C(CH−CH−、又は−CH−C(CH−から選択され、
Y及びZは、−O−、−S−、−SO−、−N(C−C)−アルキル−、−NC−、−CH−、−C(CH−、−C(C−、又は−C(C−から独立して選択され、ここで、Y又はZは、場合によりそれぞれ隣接したCR部位と共に、非置換、一置換、又は二置換であり得る縮合ベンゼン環を形成し得、置換基は更に、群βから選択されてもよく、又は、Y又はZは、それぞれ隣接したCR部位と共に、群βから選択される1つ以上の置換基により更に置換され得る、縮合ナフタレン、9,9−ジメチルフルオレン、又はジベンゾフラン環系を形成し得、
式中、B及びB’は、以下の群a)及びb)のうち1つから独立して選択され、
a)は一、二、及び三置換アリール基であり、アリール基はフェニル、ナフチル、又はフェナンスリルであり、及び、
b)非置換、一置換、及び二置換ヘテロアリール基であり、ヘテロアリール基は、ピリジル、フラニル、チエニル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、1,2,3,4−テトラヒドロカルバゾリル、又はジュロリジニルであり、
a)及びb)のアリール及びヘテロアリール基の置換基は、群β又は−(O−CHR13−CH−OR14部位から選択され、式中、R13は水素又はメチル基を表し、R14は水素又は(C−C)−アルキル基を表し、qは1〜50の整数を表し、
又は、a)及びb)の置換基は、アミノ、モノ−(C−C18)−アルキルアミノ、ジ−(C−C18)−アルキルアミノ、フェニル環での非置換、一置換、又は二置換フェネテニル、非置換、一置換、又は二置換(フェニルイミノ)メチレン、非置換、一置換、又は二置換(フェニルメメチレン)イミノ、及び非置換、一置換、又は二置換モノ及びジフェニルアミノ、ピペリジニル、3,5−ジメチルピペリジニル、N−置換ピペラジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、インドリニル、モルホリニル、2,6−ジメチルモルホリニル、チオモルフォリニル、アザシクロヘプチル、アザシクロオクチル、非置換、一置換、又は二置換フェノチアジニル、非置換、一置換、又は二置換フェノキサジニル、非置換、一置換、二置換、又は三置換9,10−ジヒドロアクリジニル、非置換、一置換、又は二置換1,2,3,4−テトラヒドロキノリニル、非置換、一置換、又は二置換2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾオキサジニル、非置換、一置換、又は二置換1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリニル、非置換、一置換、又は二置換フェナジニル、非置換、一置換、又は二置換カルバゾリル、非置換、一置換、又は二置換1,2,3,4−テトラヒドロカルバゾリル、並びに非置換、一置換、又は二置換10,11−ジヒドロジベンゾ[b,f]アゼピニルからなる群Χから選択され、置換基は更に、群βから独立して選択されてよく、
又は、a)及びb)のアリール及びヘテロアリール基の、2つの直接隣接した置換基は、V−(CR1112−W部位を構成し、式中、pは1〜3の整数を表し、R11及びR12基はそれぞれ独立して、βから選択される置換基を表し、V及びWは−O−、−S−、−N(C−C)−アルキル−、−NC−、−CH−、−C(CH−、−C(C−、又は−C(C−から独立して選択され、
又は、2つ以上の隣接したCR1112部位は、非置換、一置換、又は二置換であり得る縮合ベンゼン環の一部であり(置換基は更に群βから選択されてよい)、
又は、V及び/又はWは、それぞれ隣接したCR1112部位と共に、非置換、一置換、又は二置換であり得る縮合ベンゼン環を形成する(置換基は更に群βから選択されてよい)]が提供される。
2つの更なる環系が、コアのインデノナフトピラン構造のR置換基に隣接したベンゼン環のC−C結合に縮合していることが、本発明の化合物の特徴である。結果的に、これらのフォトクロミック染料の閉環体の最長波長吸収帯は、紫又は青色の可視波長まで十分に伸びる、このような深色移動を受ける。励起(カバー)形態への遷移に関して、本発明の化合物は、先行技術で入手可能な従来のフォトクロミック染料とは対照的に、結果として、例えば、あらゆる紫外線をもはや必要とせず、又はほとんど必要とせず、それ故、完全に紫外線を吸収する自動車フロントガラスの後であっても減光する必要がない。それ故、例えば、完全に紫外線を吸収するフロントガラスを通して太陽が直接輝く場合に、閉じた車の中でさえも著しく減光する運転用眼鏡を実装することが可能である。
本発明の化合物はそれ故、優れた紫外線硬化適合性が注目に値し、言い換えれば、例えば、紫外線反応開始剤を用いるアクリレートモノマーマトリックスに導入された際に、本発明の化合物は、激しい紫外線により引き起こされる、マトリックスのフリーラジカル重合に、損傷なく耐える。更に、本発明の化合物は、非常に高い性能と共に、非常に良好な寿命を有する。これらは全ての種類のプラスチックで使用することができる。
本発明の化合物の分子構造は、感光性ピラン単位(置換基B及びB’を有する)を含有する、コアのインデノナフトピラン構造(各場合において、式は置換基R、R、R、R、及びR10を有する)をベースにしている。光の励起により、ピラン単位の酸素と、B及びB’を有する炭素原子との間で結合が可逆的に破壊され、有色のメロシアニン系が生じるため、この構造は、フォトクロミック特性を担う。
既に上で説明したとおり、本発明は、コアのインデノナフトピラン構造への複数縮合の場合に、本発明のフォロクロミック化合物の閉環体の最長波長吸収帯が、紫又は青色の可視波長まで十分伸びるほど遠くに、深色移動することができるという驚きの発見に基づいている。問題となるこの状態は、二通りで達成可能であった。
まず、少なくとも2つの更なる環系(X’及びR置換基)の、R置換基に隣接したベンゼン環のC−C結合への縮合を有する式(I)の化合物。欧州特許出願公開第0912908号明細書の先行技術と比較して、次の式からなる化合物の化合物におけるX’は具体的に、−SO−、−CH−、−C(CH−、−C(C−、−C(C−、−O−CH−、−CH−O−、−CH−CH−、−C(CH−CH−、又は−CH−C(CH−から選択され、閉環体の最長波長吸収帯が明らかに深色移動する。
次に、R及びR10置換基環のC−C結合に、少なくとも1つの環系(Y及びZ、並びにR及びR置換基を有する)の更なる縮合を有する、式(II)及び(III)の化合物を提供する。これらのポリ縮合インデノナフトピランは、閉環体の極めて長波長、及び極度の吸収帯を有する。
可視波長帯まで十分伸びる、本発明の化合物の閉環体の長波長吸収は自然に、これらのフォトクロミック染料の初期黄色を伴う。使用において、この初期の色を隠すために、先行技術において既知の紫又は青色の恒久性染料を所望により添加し、本発明の化合物と共に、中性の初期灰色を生じさせることが可能である。
欧州特許出願公開第0912908号明細書の先行技術と比較しての、閉環体(非励起状態)の本発明の化合物の吸収スペクトル(400〜480nm)を示す図面である。 本発明の化合物の合成スキームを示す図面である。
本発明の一実施形態において、R、R、R、R、R、R、及びR10基は、水素原子、(C−C)−アルキル基、又は(C−C)−シクロアルキル基からそれぞれ独立して選択される。
本発明の更なる実施形態において、式(I)のX’は、−CH−、−C(CH−、−C(C−、−C(C−、−O−CH−、又は−CH−O−から選択される。
本発明の別の実施形態において、式(II)又は(III)のXは、−O−、−S−、−CH−、−C(CH−、−C(C−、−C(C−、−O−CH−、−CH−O−、−CH−CH−、−C(CH−CH−、又は−CH−C(CH−から選択される。
本発明の更なる実施形態において、Y及びZは−O−、−CH−、−C(CH−、−C(C−、又は−C(C−から独立して選択され、Y又はZは場合により更に、それぞれ隣接したCR部位と共に、非置換、一置換、又は二置換であり得る縮合ベンゼン環を形成し得、置換基は更に、群βから選択されてよい。
基は、(C−C18)−アルキル基、フェニル基、又はベンジル基であるのが好ましい。
本発明の好ましい実施形態において、B及びB’は、前記の群a)から独立して選択される。
上記に関係なく、本発明の一実施形態において、本発明のフォトクロミックポリ縮合ナフトピランは、一般式(I)を有する。
本発明の化合物のスペクトル及びフォトクロミック特性を測定するために、各場合において、350ppmのフォトクロミック染料をアクリレートモノマーマトリックスに溶解させ、重合開始剤の添加後、温度プログラムを使用して熱重合した。
試験片のフォトクロミック減光特性(「開環体の飽和吸収」;表1を参照のこと)をこのように作製し、その後DIN EN ISO 8980−3に従い確認した。
図1は、欧州特許出願公開第0912908号明細書の先行技術と比較しての、閉環体(非励起状態)の本発明の化合物の吸収スペクトル(400〜480nm)を示す。
図1に示す化合物の分子構造を、下表1に詳述する。本発明の化合物1及び2は以下の式(IV)により記載され、本発明の化合物3は以下の式(VI)により記載され、本発明の化合物4は以下の式(V)により記載される。
本発明の化合物の閉環体の最長波長吸収帯は、先行技術と比較して著しく長波長に移動する。結果的に、本発明の化合物は、完全に紫外線を吸収する自動車のフロントガラスの後であっても、依然として良好な減光を受ける(表1を参照のこと)。
これを定量化するために、減光特性の測定を、上流ロングパスフィルタを用いずに一度(「標準」)、及びロングパスフィルタを用いて一度実施した(表1を参照のこと)。使用したロングパスフィルタ(GG400;Schott製)は、励起光の紫外線成分を完全に吸収し、これにより、自動車のフロントガラスの後における良好なシミュレーションが達成される。
表1:開環体(励起状態)の飽和吸収の比較:
DIN EN ISO 8980−3の標準測定対GG400フィルタを用いる測定(An=アニシル、即ち4−メトキシフェニル基)
標準測定(GG400フィルタなし)とGG400フィルタを用いる測定との、飽和吸収の差は、有意なパラメータである。この差が小さければ小さいほど、減光のために必要とされる400nm未満の紫外線は少なくなり、フォトクロミック染料がより一層、運転用眼鏡に使用するのに好適となる。本発明の化合物は全て、先行技術の化合物と比較して、明らかに小さい差の値を有し、実質的に、減光のために400nm未満の紫外線を必要としない。
本発明の化合物の合成(図2に従った合成スキームを参照のこと)のために、適切に置換されたメチリデン無水コハク酸を、第一工程で、適切に置換された芳香族系を用いるフリーデル−クラフツ反応(工程(i))に通す。得られる中間体の−COOH基を次に保護し、この中間体を適切に置換アリールグリニャール化合物を用いるマイケル付加(工程(ii))に通す。カルボン酸保護基を除去した後、リン酸を用いる分子内環化により、対応して置換されたナフトール誘導体が形成する(工程(iii))。その後、これらを、適切に置換された2−プロピン−1−オール誘導体と工程(iv)で反応させ、本発明の化合物を得る。
本発明の化合物は、フォトクロミック特性が重要である任意の種類及び形態のプラスチック材料又はプラスチック物品で使用することができる。ここでは、本発明に従った1種類の染料、又はこのような染料の混合物を使用することが可能である。例えば、本発明のフォトクロミックナフトピラン染料は、レンズ、特に眼科領域レンズ、全ての種類の眼鏡、例えばスキーゴーグル、サングラス、オートバイ用ゴーグル、保護ヘルメットのバイザーなど、特に運転用眼鏡用のレンズに使用することができる。更に、本発明のフォトクロミックナフトピランはまた、例えば、窓、保護用ブラインド、カバー、屋根などの、自動車及び生活空間での直射日光保護として使用することができる。
このようなフォトクロミック物品の製造のために、既に国際公開第99/15518号に明記されているように、先行技術に記載されている各種方法により、本発明のフォトクロミックナフトピランをポリマー材料、例えば有機プラスチック材料に適用、又は埋め込むことができる。
ここで、バルク着色法と呼ばれるものと、表面着色法と呼ばれるもので、区別を付ける。バルク着色法は、例えば、フォトクロミック化合物を、例えば、重合前にモノマー材料に添加することにより、プラスチック材料に、本発明に従ったフォトクロミック化合物を溶解又は分散させることを含む。フォトクロミック物品を製造する更なる方法は、プラスチック材料を、本発明又は他の発明に従ったフォトクロミック染料の熱溶液に、例えば熱移動法により浸漬させることにより、プラスチック材料に、フォトクロミック化合物を浸透させることである。フォトクロミック化合物は、例えば、ポリマーフィルムの一部として、例えば、プラスチック材料の複数の隣接層間の別個の層の形態でもまた提供されることができる。更に、プラスチック材料の表面に存在するコーティングの一部として、フォトクロミック化合物を適用することもまた、可能である。表現「浸透」とは、例えば、フォトクロミック化合物の、ポリマーマトリックスへの溶媒補助移動、蒸気相移動、又は、この種の他の表面拡散操作による、フォトクロミック化合物の、プラスチック材料への移動を意味するものとして理解されなければならない。有利には、このようなフォトクロミック物品、例えば眼鏡は、標準的なバルク着色を用いて製造可能であるだけでなく、表面着色を用いてもまた、同様に製造可能であり、後者の異型は、驚くほどに低い移動を達成することができる。例えば、反射防止コーティングの場合において、減圧下にて逆拡散が低くなる結果、層の剥離、及び同様の欠陥が著しく低下するため、これは特に、後続の仕上げ層の場合に有利である。
概して、本発明のフォトクロミックナフトピランに基づいて、任意の適合度(化学的見地から、及び色に関して)の着色剤、即ち染料を、審美的形質及び医療又はファッション面の両方を満たすために、プラスチック材料に適用する、又はプラスチック材料に埋め込むことが可能である。具体的に選択される染料はしたがって、意図される効果及び必要条件に応じて変化し得る。

Claims (11)

  1. 式(I)、(II)、及び(III):
    で示されるフォトクロミックポリ縮合ナフトピラン
    [式中、R、R、R、R、R、R、及びR10基はそれぞれ独立して、
    水素原子;(C−C18)−アルキル基;1つ以上のヘテロ原子(例えばO又はS)を有し得る(C−C)−シクロアルキル基;(C−C18)−チオアルキル基;(C−C18)−アルコキシ基;ヒドロキシル基;トリフルオロエチル基;臭素;塩素;フッ素;非置換の、一置換の、又は二置換の、フェニル基、フェノキシ基、ベンジル基、ベンジルオキシ基、ナフチル基、又はナフトキシ基
    からなる群αから選択される置換基を表し、
    これらの置換基は更に、
    水素原子、(C−C)−アルキル基、(C−C)−シクロアルキル基、(C−C)−チオアルキル基、(C−C)−アルコキシ基、フェニル基、ベンジル基、又はナフチル基からなる群βから選択されてよく、
    nは1〜4の整数を表し、
    又は、R及びR基は炭素原子と共にこれらの基に結合し、任意に、群βからの1つ以上の置換基を有し、1〜3個の芳香族又は芳香族複素環系が縮合し得る、三〜八員環の一環式炭素又は複素環を形成し(環系は群βから選択される1つ以上の置換基により更に置換されてよい、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、ピリジン、キノリン、フラン、チオフェン、ピロール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、及びカルバゾールから独立して選択される)、
    又は、2つの隣接したR基は、置換基が群βから選択され得る置換基である、非置換、一置換、又は二置換であり得る縮合ベンゼン環を形成し、
    又は、2つの隣接したR基は、五員環の二重結合を介して縮合した、1,1−ジメチルインデン又はベンゾフラン環系を形成し、
    又は、2つの隣接したR基は、複素環式六員環の二重結合を介して2H−クロメン又は1H−イソクロメン環系を形成し、
    及びR基はそれぞれ独立して、水素、(C−C18)−アルキル基、フェニル基、ベンジル基、又はナフチル基から選択される置換基を表し、
    mは1〜4、好ましくは1又は2、より好ましくは2の整数を表し、
    又は、2つの隣接した−CR−部分は、置換基が群βから選択され得る置換基である、非置換、一置換、又は二置換であり得る縮合ベンゼン環を形成し、
    基は、水素、(C−C18)−アルキル基、フェニル基、ベンジル基、又はナフチル基から選択される置換基を表し、
    式(I)のX’は、−SO−、−CH−、−C(CH−、−C(C−、−C(C−、−O−CH−、−CH−O−、−CH−CH−、−C(CH−CH−、又は−CH−C(CH−から選択され、
    式(II)又は(III)のXは、−O−、−S−、−SO−、−N(C−C)−アルキル−、−NC−、−CH−、−C(CH−、−C(C−、−C(C−、−O−CH−、−CH−O−、−O−(C=O)−、−(C=O)−O−、−CH−CH−、−C(CH−CH−、又は−CH−C(CH−から選択され、
    Y及びZは、−O−、−S−、−SO−、−N(C−C)−アルキル−、−NC−、−CH−、−C(CH−、−C(C−、又は−C(C−から独立して選択され、ここで、Y又はZは、場合によりそれぞれ隣接したCR部位と共に、非置換、一置換、又は二置換であり得る縮合ベンゼン環を形成し得、置換基は更に、群βから選択されてもよく、又は、Y又はZは、それぞれ隣接したCR部位と共に、群βから選択される1つ以上の置換基により更に置換され得る、縮合ナフタレン、9,9−ジメチルフルオレン、又はジベンゾフラン環系を形成し得、
    式中、B及びB’は、以下の群a)及びb)のうち1つから独立して選択され、
    a)は一、二、及び三置換アリール基であり、アリール基はフェニル、ナフチル、又はフェナンスリルであり、及び、
    b)非置換、一置換、及び二置換ヘテロアリール基であり、ヘテロアリール基は、ピリジル、フラニル、チエニル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、1,2,3,4−テトラヒドロカルバゾリル、又はジュロリジニルであり、
    a)及びb)のアリール及びヘテロアリール基の置換基は、群β又は−(O−CHR13−CH−OR14部位から選択され、式中、R13は水素又はメチル基を表し、R14は水素又は(C−C)−アルキル基を表し、qは1〜50の整数を表し、
    又は、a)及びb)の置換基は、アミノ、モノ−(C−C18)−アルキルアミノ、ジ−(C−C18)−アルキルアミノ、フェニル環での非置換、一置換、又は二置換フェネテニル、非置換、一置換、又は二置換(フェニルイミノ)メチレン、非置換、一置換、又は二置換(フェニルメメチレン)イミノ、及び非置換、一置換、又は二置換モノ及びジフェニルアミノ、ピペリジニル、3,5−ジメチルピペリジニル、N−置換ピペラジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、インドリニル、モルホリニル、2,6−ジメチルモルホリニル、チオモルフォリニル、アザシクロヘプチル、アザシクロオクチル、非置換、一置換、又は二置換フェノチアジニル、非置換、一置換、又は二置換フェノキサジニル、非置換、一置換、二置換、又は三置換9,10−ジヒドロアクリジニル、非置換、一置換、又は二置換1,2,3,4−テトラヒドロキノリニル、非置換、一置換、又は二置換2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾオキサジニル、非置換、一置換、又は二置換1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリニル、非置換、一置換、又は二置換フェナジニル、非置換、一置換、又は二置換カルバゾリル、非置換、一置換、又は二置換1,2,3,4−テトラヒドロカルバゾリル、並びに非置換、一置換、又は二置換10,11−ジヒドロジベンゾ[b,f]アゼピニルからなる群Χから選択され、置換基は更に、 群βから独立して選択されてよく、
    又は、a)及びb)のアリール及びヘテロアリール基の、2つの直接隣接した置換基は、V−(CR1112−W部位を構成し、式中、pは1〜3の整数を表し、R11及びR12基はそれぞれ独立して、βから選択される置換基を表し、V及びWは−O−、−S−、−N(C−C)−アルキル−、−NC−、−CH−、−C(CH−、−C(C−、又は−C(C−から独立して選択され、
    又は、2つ以上の隣接したCR1112部位は、非置換、一置換、又は二置換であり得る縮合ベンゼン環の一部であり(置換基は更に群βから選択されてよい)、
    又は、V及び/又はWは、それぞれ隣接したCR1112部位と共に、非置換、一置換、又は二置換であり得る縮合ベンゼン環を形成する(置換基は更に群βから選択されてよい)]。
  2. 、R、R、R、R、R、及びR10基は、水素原子、(C−C)−アルキル基、又は(C−C)−シクロアルキル基からそれぞれ独立して選択される、請求項1に記載のフォトクロミックポリ縮合ナフトピラン。
  3. 前記式(I)のX’は−CH−、−C(CH−、−C(C−、−C(C−、−O−CH−、又は−CH−O−から選択される、請求項1又は2に記載のフォトクロミックポリ縮合ナフトピラン。
  4. 前記式(II)又は(III)のXは、−O−、−S−、−CH−、−C(CH−、−C(C−、−C(C−、−O−CH−、−CH−O−、−CH−CH−、−C(CH−CH−、又は−CH−C(CH−から選択される、請求項1又は2に記載のフォトクロミックポリ縮合ナフトピラン。
  5. Y及びZは−O−、−CH−、−C(CH−、−C(C−、又は−C(C−から独立して選択され、ここで、Y又はZは、場合によりそれぞれ隣接したCR部位と共に、非置換、一置換、又は二置換であり得る縮合ベンゼン環を形成し得、置換基は更に、群βから選択されてよい、請求項1、2、又は4に記載のフォトクロミックポリ縮合ナフトピラン。
  6. 前記R基は、(C−C18)−アルキル基、フェニル基、又はベンジル基である、請求項1、2、又は3に記載のフォトクロミックポリ縮合ナフトピラン。
  7. 前記B及びB’基は、前記の群a)から独立して選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載のフォトクロミックポリ縮合ナフトピラン。
  8. 前記一般式(I)を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のフォトクロミックポリ縮合ナフトピラン。
  9. 前記一般式(IV)、(V)、又は(VI)[式中、X’及びXは前記のとおりである。]を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のフォトクロミックポリ縮合ナフトピラン。
  10. プラスチック材料中、及びプラスチック材料上における、請求項1〜9のいずれか一項に記載のフォトクロミックポリ縮合ナフトピランの使用。
  11. 前記プラスチック材料は、眼科用レンズであり、とりわけ運転用眼鏡用の眼科用レンズである、請求項10に記載の使用。
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