JP2019536062A - 敗血症又は敗血症性ショック(ss)患者に由来する血漿中の循環ヒストンh3及びh2bを検出する質量分析ベースの方法 - Google Patents

敗血症又は敗血症性ショック(ss)患者に由来する血漿中の循環ヒストンh3及びh2bを検出する質量分析ベースの方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、質量分析ベースの方法、特に多重反応モニタリング標的化質量分析(MRM−MS)に基づく、敗血症又は敗血症性ショック(SS)患者に由来する血漿中の循環ヒストンH3及びH2Bを検出する新規の方法を提案する。かかる方法は、内部標準を用いたヒストンの定量化を可能とし、強い特異度及び感度の値を示す。【選択図】なし

Description

本発明は医療分野、特に質量分析ベースの方法を用いることによる血漿バイオマーカーの検出に基づく疾患の診断/予後診断の分野に関する。特に、本発明は、敗血症又は敗血症性ショックを患うことが疑われる患者における敗血症又は敗血症性ショックの診断/予後診断のための、これらの患者に由来する血漿中の循環ヒストンH3及びH2Bを検出する質量分析ベースの方法に関する。
敗血症は、生化学的異常及び臓器機能不全の存在を伴う、重度の致死的な感染に対する宿主の全身性炎症反応として規定される。敗血症は、大きな医療問題であり、毎年世界中で何百万人もの人々が罹患している。その発生率は高齢化、免疫老化、及び結果として生じる免疫障害のために増大している。さらに、敗血症は、識別されず、迅速に治療されない場合に特に、大抵の集中治療室(ICU)において最も多い死亡原因となっている。その世界的な重要性、また公衆衛生上の懸念とみなされているにも関わらず(2011年には米国の総病院経費のうち200億ドル(5.2%)超に相当する)、敗血症に対する大衆の意識は低い。
敗血症性ショックは、特に深刻な循環異常、細胞異常及び代謝異常が敗血症単独よりも大きな死亡リスクを伴う、敗血症のサブセットと規定されるものとする。敗血症性ショックを有する患者は、適切な緊急輸液療法(volume resuscitation)にも関わらず、65mm Hg以上の平均動脈圧を維持するための昇圧剤を必要とし、血清ラクテートレベルが2mmol/L(>18mg/dL)を超えることによって臨床的に特定することができる。
敗血症の短期死亡率は、10%〜40%の範囲であり、敗血症性ショックでは30%〜60%と高いことが報告されている。早期目標指向療法及び可能な限り早期に患者に対して行われる適切な抗生物質治療がどちらも死亡率の低下に効果的であることが証明されているが、治療の改善にも関わらず、短期死亡率は依然として非常に高い。
敗血症過程と関連した循環ヒストンの存在が以前より研究されており、幾つかの研究から、血漿中の特定のヒストンの存在と、長期敗血症によって生じる症状との間に直接相関が示されている。循環ヒストンは、健常個体の血液中では低濃度で見られるが、重度の外傷、全身性炎症、敗血症又は組織損傷を患う患者においては、そのレベルは大きく増大する。注目すべきことに、ヒストンタンパク質は、興味深い細胞毒性能を示し、これが細菌細胞及び哺乳動物細胞に影響を及ぼし、敗血症の進行の悪化に寄与することが実証されている。
しかしながら、その病原性と関連した各ヒストンタイプの特定の濃度レベルに関して最終的な意見の一致は見られなかった。加えて、特定のヒストンレベル及び敗血症の進行のモニタリングに用いられるその能力、並びに治療の有効性との相関は、これまでに完全には明らかになっていない。これは、殆どの場合、循環ヒストンの存在を分析し、更には循環ヒストンのレベルを定量化する特異的かつ高感度の方法がないためである。
血漿中を循環する遊離ヒストンタンパク質を検出するイムノアッセイ(IA)が以前より用いられているが、IAによって得られる結果は、低い再現性、高い誤差範囲及び低い感度を示す。加えて、半定量的IAは、アッセイ間の低い一致、異なる専用抗体(各アッセイにおいて異なるエピトープを認識する)を用いるメーカーの異なるキットを使用する場合の再現性の違い、及び多様な交差反応性等の多くの欠陥を示す。さらに、誤った結果を生じ、臨床副作用を引き起こす可能性がある、抗試薬抗体及びアッセイされる生体サンプル中に存在する内因性自己抗体を含む様々な干渉がIAにおいて起こり得る。
したがって、現行のIAを、診断敗血症バイオマーカー及び予後敗血症バイオマーカーの検出の感度及び特異度が増大した他の方法又は技法に置き換える必要がある。
本発明の著者らは、現行のIA法を質量分析ベースの方法に置き換えることによって、敗血症の診断及び予後診断に関係するバイオマーカーの検出の感度及び特異度の顕著な改善が見られるという結論に達した。この点で、特異的な高度に標識したスパイクイン(Spike-In)ペプチドを用いる標的化質量分析(MS)が、血液循環ヒストンの同定及び定量化に効率的かつ高感度のアプローチとして本明細書で示される。したがって、上記質量分析ベースの方法を用いることにより、敗血症及び/又は敗血症性ショックのモニタリングが、高い感度及び特異度を有する新たな手頃なバイオマーカーによって大きな利益を得る。
この意味で、本発明では、質量分析ベースの方法、特に多重反応モニタリング標的化質量分析(MRM−MS)及び多重反応モニタリングアプローチに基づく、敗血症又は敗血症性ショック(SS)患者に由来する血漿中の循環ヒストンH3及びH2Bを検出する新規の方法を提案する。かかる方法は、内部標準を用いたヒストンの定量化を可能とし、強い特異度及び感度の値を示す。健常対照と比較される患者に由来する生体サンプルを用いることで、本発明者らの方法を更に検証し、さらに、敗血症性ショック患者の致命的転帰と相関する血漿ヒストンレベルの閾値を設定することが可能であった。このため、上記方法は、これらの循環ヒストンの存在を伴う病理におけるヒストンH3及びH2Bのレベルの質量分析ベースの定量化の導入(implantation)のための基準を設け、疾患の進行及び臨床的介入をモニタリングする最も有益なツールを提供することができた。
MRM−MSによるヒストンH2B及びH3の標的化タンパク質定量の概要を示す図である。遷移(重、300fmol及び内因性)に対応するシグナルからの積分ピーク面積を示すペプチドLLLPGELAK及びSTELLIRのクロマトグラム。標的化ペプチドのピーク面積を、標準として使用される安定したスパイクインペプチドのピーク面積と比較する。MS/MSスペクトルから導かれる配列特異的遷移も示す。 血漿中で検出されたヒストンH2B及びH3のレベルを示す箱ひげ図である。A)菌血症を有する敗血症性ショック患者に対する健常被験体におけるH2B及びH3のレベルを表す箱ひげ図;B)生存者及び非生存SS患者からのH2B及びH3のレベルを表す箱ひげ図。箱は四分位範囲を表し、線は中央値を表し、ひげは10パーセンタイル値及び90パーセンタイル値を表す。レベルは、血漿中のH2B又はH3のng/mLとして表される。 生存SS患者と非生存SS患者との識別のためのヒストンH2B(3A)及びH3(3B)の受信者動作特性(ROC)曲線を示す図である。H2B及びH3のレベルのMRM−MS定量化に基づくROC曲線。 A)LLLPGELAK及びB)STELLIRの全クロマトグラムにおいて観察される非特異的内因性多重反応モニタリング(MRM)シグナルを示す図である。矢印は、対象のペプチドに割り当てられたピークを示す。どちらのペプチドの溶出時点でも干渉ピークは見られなかった。 対照の非敗血症ICU(集中治療室(intense care unit))患者及び健常一般集団、敗血症患者及び敗血症性ショック患者に由来する血漿中の循環ヒストンH2Bのレベルを示す図である。箱ひげ図により4つの群におけるH2Bレベルを表す。箱は四分位範囲を表し、横線は中央値を表し、ひげは10パーセンタイル値及び90パーセンタイル値を表す。レベルは、H2Bのng/mLとして表される。 純粋標準タンパク質H3.1中のSTLLIRのナノLC−MRM−MSクロマトグラムにおける強度を示す図である。 純粋標準タンパク質H2B中のLLLPGELAKのナノLC−MRM−MSクロマトグラムにおける強度を示す図である。 ヒストンH2BのペプチドLLLPGELAKについての応答曲線を示す図である。軽ペプチドの濃度を0.012μg/mL〜60μg/mLで変化させ、重ペプチドシグナルに対して測定した。グラフから、様々な遷移について面積形式のMSスペクトルとペプチド濃度との間に線形回帰が示される。 H3のペプチドSTELLIRについての応答曲線を示す図である。軽ペプチドの濃度を0.012μg/mL〜60μg/mLで変化させ、重ペプチドシグナルに対して測定した。グラフから、様々な遷移について面積形式のMSスペクトルとペプチド濃度との間に線形回帰が示される。
敗血症及びSSの早期診断及び迅速な患者層別化は、特異的治療を適時に適当な方法で見直すことにより患者転帰を改善する可能性がある。これは、より深刻な病的状態への進行を起こしやすい患者を認識するための新たなバイオマーカーを必要とするICUの医師にとって課題である。敗血症及びSSの病態生理の複雑さ、並びにそれらの多くの疾病分類学的脅威が、臨床的バイオマーカーも生物学的バイオマーカーも有害転帰の予測に高度に正確であることが証明されていないことの理由である。
MRM−MSは、バイオマーカーの発見及びバイオマーカーの検証の両方についての潜在的方法論を提供する。加えて、この方法は、バイオマーカーの臨床検証に必要とされる感度、正確性及び高スループットをもたらし、種々の発見及び検証の方法を行う必要性をなくす。血漿は、診断アッセイのためのバイオマーカーの供給源であるが、この流体中に存在するタンパク質の広ダイナミックレンジ(1010)のために、プロテオミクス研究にとって厄介な生体マトリックスでもある。ペプチド1つ当たり単一の遷移のモニタリングが、血漿等の複雑混合物におけるペプチド定量化に十分に特異的であることが提唱されている。一方、古典的バイオマーカーは、敗血症患者の転帰の予測において一般的スコア以上の情報を追加するものではない。敗血症の診断を補完するCRP及びPCT、並びに予後バイオマーカーとしてのPCTの有用性にも関わらず、敗血症の更なる知識には、高感度、特異的かつ経済的に手頃であり得る新たなバイオマーカーの発見が必要とされる。
感染に対する非常に強力な免疫応答は、ネトーシス(NETosis)と呼ばれるプロセスによって感染と闘うためだけでなく、内皮損傷、並びに好中球及び他の免疫細胞のアポトーシスの結果としてもヒストンを血液中に放出し得る。全ヒストンタイプについて毒性が記載されているが、ヒストンタイプ及び血漿濃度を含む一部のデータは、この点で議論の余地がある。Abrams及び共同研究者は、リンカー(inter-linker)ヒストンH1、並びにコアヒストンH2A、H2B、H3及びH4の両方について同様の細胞毒性結果を得ているが、他の著者によりH3、H4及び場合によってはH2BについてH2Aよりも高い細胞毒性が見出されている。さらに、ヒストンは胸腺、脾臓及び血液を含むリンパ系コンパートメントにおける細胞のアポトーシスを媒介する。特に、H4がリンパ球アポトーシスを推進する主要ヒストンとして提唱されている。他の研究から、敗血症患者に由来する血漿中でヒストンH3及びヌクレオソームが特定されている。
ヒストンタイプに加えて、IAは、敗血症における循環ヒストンの種々のレベルをもたらしたが、以前の研究では、これまでに細胞毒性とみなされ得る厳密な濃度範囲を得ることができなかった。血漿サンプル中の循環ヒストンを定量化する高感度かつ特異的な方法を特定するために、H2B及びH3ヒストンのそれぞれの検出にLLLPGELAK及びSTELLIRスパイクイン(Spiked-In)ペプチドを用いるMRM−MSベースの方法を開発する。
本方法では、ICUにて最初の24時間以内に、敗血症エピソードに対して生存者及び非生存者の両方で有意な相関係数を有する患者の特定が可能となる。両方のヒストンの存在が臨床目的で用いられ、患者がICUに到着した際の第一トリアージ基準として用いられる血漿ヒストンH2B及びH3の特定の濃度範囲を初めて確立することができ、また敗血症性ショックの致命的転帰の有益な予後バイオマーカーとなる。
かかる方法論を提供し、ICUにて最初の24時間以内に、敗血症エピソードに対して生存者及び非生存者の両方で有意な相関係数を有する最良のペプチドを選択するために、純粋標準であるH2B_HUMAN及びH3_HUMANタンパク質の5600 TripleTOF質量分析計(SCIEX)を用いたナノLCMSMS−DIAによる分析を行った。かかる分析から、H2B_HUMANに対して合計29個のトリプシンペプチドを95%以上の統計的信頼度でBLASTにより特定することが可能であった。H3_HUMANの場合、この分析から18個のペプチドが95%以上の統計的信頼度で割り当てられた。
加えて、バイオインフォマティクスプログラムであるMRM Pilot(Sciex)及びSkyline(Macoss Lab,Department of Genome Sciences,UW,USA)を用い、開裂の失敗及び修飾の影響を受けやすいアミノ酸(M/W/Q/N)を有していたペプチドを切り捨てることにより、下流のMRM実験への使用に好適な候補のリストが以下のものに絞り込まれた。
「デクラスタリング電圧(Declustering Potential)」及び「衝突エネルギー」等の取得パラメーターを調整する過程で、また複雑なマトリックス中での標準タンパク質の分析中に、最も強力なペプチドがH3.1についてはSTELLIR、H2BについてはLLLPGELAKであることが決定され、これらが循環ヒストンH3及びH2B定量化のためのMRM−MS実験の候補として選ばれた。強度の違いが、各々の純粋標準タンパク質について図6及び図7に示されるナノLC−MRM−MSクロマトグラムにおいて説明される。
複雑なマトリックス中でのペプチドの高信頼性の相対定量化を達成するために、標的化プロテオミクスアッセイを、その特異度、線形範囲、精度及び再現性に関して分析的に特徴付ける必要がある。血液循環ヒストンの定量化については、特異度、線形範囲、精度及び再現性が必須条件であり、したがって、本発明者らの実験条件でヒストンH2BについてはペプチドLLLPGELAK、H3についてはペプチドSTELLIRの線形性を確認した。図8及び図9に、試験した各ペプチド濃度について様々な遷移を考慮した、ヒストンH2BのペプチドLLLPGELAK及びH3のペプチドSTELLIRのそれぞれの線形性を示す。
これにより、結果から、各ペプチドの検出濃度がアッセイの定量限界を上回り、アッセイの線形範囲内であることが実証される。実際に、ヒストンH2BのペプチドLLLPGELAK及びH3のペプチドSTELLIRは、良好な線形範囲、良好な感度及び特異度を示した。本発明の文脈(context)において「定量限界」が定量下限として理解され、定量的測定を行うことができる分析物の最低濃度を指すことに留意されたい。定量上限は、その値を超えればシグナルが線形性から外れる、分析物の最高濃度を説明する。これら2つの定量限界によりアッセイの線形範囲が規定される。
加えて、実施例に示されるように、内科ICUへの入院時にSSの臨床診断を受けた合計17人の患者を分析した。表1に患者の臨床的特性を示す。血液サンプルを上記ICU患者及び健常被験体からEDTAチューブに採取した。各サンプルを2500rpmで室温(RT)にて10分間遠心分離して血漿を分離した後、アリコートをMRM−MS実験において使用するまで−80℃で保管した。MRM実験を本明細書に含まれる実施例に記載のように行った。H2B及びH3ヒストンレベルを、LLPGELAK及びSTELLIRペプチドについて得られる平均比に基づいて予想した。H2B及びH3の最終濃度(ng/mL)を、標的化タンパク質の相対分子質量(Mr)値(H2B及びH3のそれぞれについてMr 13.906Da及び15.404Da)から推定した。
ヒストンH2Bについては、対照の健常被験体において見られた平均レベルは、204.48ng/mL(95%CI 25.31〜283.66)であり、患者では1736.91ng/mL(95%CI 555.34〜2918.47)まで増大した。観察される差は統計的に有意であり(p=0.014)、平均レベルが対照については23.50ng/mL(95%CI −3.97〜50.98)、患者については2040.79ng/mL(95%CI 756.58〜3325.01)であったヒストンH3でより高かった(p=0.004)(図2A)。
ヒストンのレベルは、両方の群において有意な相関係数で正に相関した(対照についてはスピアマン係数r=0.848、p=0.002、患者についてはr=0.827、p<0.0001)。
これらの生存患者については、ICUにて最初の24時間以内の両方のヒストンの平均レベルは、非生存者と比較して有意に低く(図2B)、値は非生存者において検出されたレベルと比較して最大5分の1であった。ヒストンH2Bについては、平均レベルは、生存者では607.00ng/mL(95%CI 204.20〜1009.82)、非生存者では3008.05ng/mL(95%CI 603.94〜5412.15)であり(p=0.046)、ヒストンH3のレベルに関して同じ比例差が観察され、観察された平均値は、生存者で740.70ng/mL(95%CI 311.16〜1170.23)、非生存者で3503.41ng/mL(95%CI 955.95〜6050.86)であった(p=0.036)。
加えて、実施例に示されるように、ヒストンH2B及びH3のレベルの診断力を評価するために行ったROC曲線分析から、それらの両方が敗血症性ショック症例と健常対照とを区別するのに有益なバイオマーカーとなり得ることが明らかとなった。各ヒストンについてのAUC(ROC曲線下面積)、標準誤差、信頼区間(CI)、最適濃度カットオフ値、感度及び特異度を表2に示す。
両方のヒストンについてのAUCは同様であるが、両方のバイオマーカーのレベルは健常対照と患者とで有意に異なり、ヒストンH3は、診断に関する感度及び特異度についてより高い値を示した。このバイオマーカーについては、最適カットオフ値としての濃度86.36ng/mLで、方法の感度及び特異度の値は、それぞれ94.1%及び90.0%であった。
さらに、敗血症性ショックの予後診断のバイオマーカーとしての血漿中のヒストンの潜在的使用を検討するために、各ヒストンについて対応するROC曲線を作成した。生存者と非生存者とを識別するために、症例のみを選択し、バイオマーカーのパラメーター:最適カットオフ値、感度及び特異度を算出した(図3)。この場合も、ヒストンH3は、予後診断についてヒストンH2Bよりも良好であると分類された。感度値は、同様のカットオフ値でヒストンH2B(感度=62.5%、特異度=88.9%、カットオフ値=1426.38ng/mL)よりもヒストンH3(感度=75.0%、特異度=88.9%、カットオフ値=1348.13ng/mL)について高かった。
したがって、本明細書に示される結果から、血液、血清又は血漿中のヒストンH2B及びH3の両方のレベルが、敗血症性ショック症例と健常対照とを区別し、生存者と非生存者とを識別するために有益なバイオマーカーとなり得ることが明らかである。
その結果として、本発明の第1の態様は、ヒト被験体における敗血症又は敗血症性ショックを診断又は検出する質量分析ベースの方法であって、被験体から単離された血液、血清又は血漿からなる1種以上の生体サンプル中の少なくとも循環ヒストンH3及び/又はH2Bのレベル又は濃度を、質量分析計を用いることによって測定する工程と、敗血症又は敗血症性ショックを患うことが疑われる被験体の1種以上の生体サンプルに由来する上記循環ヒストンのレベル又は濃度を基準値、又は正常被験体の血液、血清若しくは血漿からなる生体サンプルに由来する上記循環ヒストンのレベル若しくは濃度と比較する工程とを含み、正常被験体が敗血症又は敗血症性ショックを患わない健常被験体であり、少なくとも循環ヒストンH3及び/又はH2Bのレベル又は濃度の増大が敗血症又は敗血症性ショックを示唆する、質量分析ベースの方法に関する。
患者がICUに到着した際の第一トリアージ基準として使用され、また敗血症又は敗血症性ショックの有益な診断バイオマーカーとなる血漿ヒストンH2B及び/又はH3の特定の濃度範囲は、血漿中の循環ヒストンH2Bの濃度レベルが212.03ng/mlを上回り、及び/又は血漿中の循環ヒストンH3の濃度レベルが86.36ng/mlを上回る範囲であるのが好ましい。血漿中のH2B又はH3の濃度レベルが上記値のいずれかを超える場合、敗血症又は敗血症性ショックが示唆される。
質量分析計は、好ましくはクロマトグラフシステムを備え、より好ましくはナノLCクロマトグラフシステムを備える三連四重極型/線形イオントラップ質量分析計であるのが好ましい。本発明の第1の態様又はその好ましい実施形態のいずれかによるヒト被験体における敗血症又は敗血症性ショックを診断又は検出する質量分析ベースの方法において、循環ヒストンH3のレベル又は濃度は、配列番号1のペプチド(STELLIR)の量に相当するのが好ましい。この意味で、生体サンプル中の循環ヒストンH3のレベル又は濃度を測定するために、配列番号1の対象のペプチドのシグナル/スパイクインペプチドのシグナルの比率として理解される平均比を得る。同じ理由から、生体サンプル中の循環ヒストンH2Bのレベル又は濃度を測定するために、配列番号2(LLLPGELAK)の平均比を得る。より好ましくは、選択されるペプチド配列(H3についてはSTELLIR、H2BについてはLLLPGELAK)は、好ましくは本発明の第1の態様又はその好ましい実施形態のいずれかによる方法における循環ヒストンH3及び/又はH2Bの絶対的定量化のためのSpikeTides(商標)_TQ(Arg:13C6、15N4;Lys:Arg:13C6、15N2等の重同位体で標識される)(JPT Peptide Technologies,Berlin,Germany)として調製することができる。
本発明の第1の態様の別の好ましい実施形態では、ヒストンH3の基準値は86.36ng/mLであり、少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍又は少なくとも100倍の増大が敗血症又は敗血症性ショックを示唆する。
本発明の第1の態様の別の好ましい実施形態では、ヒストンH2Bの基準値は212.03ng/mLであり、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍又は少なくとも100倍の増大が敗血症性ショックを示唆する。
本発明の第1の態様又はその好ましい実施形態のいずれかの別の好ましい実施形態では、上記方法は、被験体から単離された血液、血清又は血漿からなる1種以上の生体サンプル中の少なくとも循環ヒストンH3及びH2Bのレベル又は濃度を、質量分析計を用いることによって測定する工程と、敗血症性ショックを患うことが疑われる被験体の1種以上の生体サンプルに由来する上記循環ヒストンのレベル又は濃度を基準値、又は正常被験体の血液、血清若しくは血漿からなる生体サンプルに由来する上記循環ヒストンのレベル若しくは濃度と比較する工程とを含み、正常被験体は敗血症性ショックを患わない健常被験体であり、少なくとも循環ヒストンH3及びH2Bのレベル又は濃度の増大が敗血症性ショックを示唆する。
本発明の第2の態様は、敗血症又は敗血症性ショックを患うヒト被験体における敗血症又は敗血症性ショックの臨床的進行を予測する(予後判定する)質量分析ベースの方法であって、被験体から単離された血液、血清又は血漿からなる1種以上の生体サンプル中の少なくとも循環ヒストンH3及び/又はH2Bのレベル又は濃度を、質量分析計を用いることによって測定する工程と、敗血症又は敗血症性ショックを患う被験体の1種以上の生体サンプルに由来する上記循環ヒストンのレベル又は濃度を基準値と比較する工程とを含み、少なくとも循環ヒストンH3及び/又はH2Bのレベル又は濃度の増大が負の臨床的進行を示唆し、臨床的進行が患者の全生存期間を指す、質量分析ベースの方法に関する。
本発明の文脈において、「全生存期間」(OS)は、疾患の診断日又は治療開始のいずれかからの疾患と診断された患者が生存している時間の長さとして理解される。
本発明の文脈において、「負の臨床的進行」は、治療に対して応答不良又は不応であり、死亡転帰を有する敗血症又は敗血症性ショックの最初の1週間にわたる臨床状態の負の日常的進行として理解される。
患者がICUに到着した際の第一トリアージ基準として使用され、また敗血症又は敗血症性ショックの有益な予後バイオマーカーとなる血漿ヒストンH2B及び/又はH3の特定の濃度範囲は、血漿中の循環ヒストンH2Bの濃度レベルが1426.38ng/mlを上回り、及び/又は血漿中の循環ヒストンH3の濃度レベルが1348.13ng/mlを上回る範囲であるのが好ましい。血漿中のH2B又はH3の濃度レベルが上記値のいずれかを超える場合、負の臨床的進行が示唆され、ここで、臨床的進行は患者の全生存期間を指す。
質量分析計は、クロマトグラフシステムを備え、より好ましくはナノLCクロマトグラフシステムを備える三連四重極型/線形イオントラップ質量分析計であるのが好ましい。本発明の第2の態様又はその好ましい実施形態のいずれかによる敗血症性ショックを患うヒト被験体における敗血症性ショックの臨床的進行を予測する(予後判定する)質量分析ベースの方法において、循環ヒストンH3のレベル又は濃度は、配列番号1のペプチド(STELLIR)の量に相当するのが好ましい。この意味で、生体サンプル中の循環ヒストンH3のレベル又は濃度を測定するために、配列番号1の平均比を得る。同じ理由から、生体サンプル中の循環ヒストンH2Bのレベル又は濃度を測定するために、配列番号2の平均比を得る。より好ましくは、選択されるペプチド配列(H3についてはSTELLIR、H2BについてはLLLPGELAK)は、好ましくは本発明の第1の態様又はその好ましい実施形態のいずれかによる方法における循環ヒストンH3及び/又はH2Bの絶対的定量化のためのSpikeTides(商標)_TQ(Arg:13C6、15N4;Lys:Arg:13C6、15N2等の重同位体で標識される)(JPT Peptide Technologies,Berlin,Germany)として調製することができる。
本発明の第2の態様の別の好ましい実施形態では、ヒストンH3の基準値は1348.13ng/mLであり、少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍又は少なくとも100倍の増大が負の臨床的進行を示唆する。
本発明の第1の態様の別の好ましい実施形態では、ヒストンH2Bの基準値は1426.38ng/mLであり、少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍又は少なくとも100倍の増大が負の臨床的進行を示唆する。
本発明の第2の態様又はその好ましい実施形態のいずれかの別の好ましい実施形態では、上記方法は、被験体から単離された血液、血清又は血漿からなる1種以上の生体サンプル中の少なくとも循環ヒストンH3及びH2Bのレベル又は濃度を、質量分析計を用いることによって測定する工程と、敗血症性ショックを患う被験体の1種以上の生体サンプルに由来する上記循環ヒストンのレベル又は濃度を対照値と比較する工程とを含み、少なくとも循環ヒストンH3及びH2Bのレベル又は濃度の増大が負の臨床的進行を示唆する。
本発明の第3の態様は、ヒト被験体における敗血症又は敗血症性ショックの診断又は検出、及び/又はヒト被験体における敗血症又は敗血症性ショックの臨床的進行の予測(予後判定)に好適なキット又はデバイスであって、配列番号1のペプチド及び/又は配列番号2のペプチドを含み、これらのペプチドが好ましくは少なくとも1種以上の重アミノ酸を用いて合成され、該ペプチドが好ましくはC末端アミノ酸残基中でタグにより標識される、キット又はデバイスに関する。
本発明の文脈において、「タグ」という用語は、非標識アミノ酸対応物と同じ生理化学的性質及び同じ化学的活性を有する、安定した同位体標識アミノ酸として理解される。タグは、MS実験より前にトリプシン又は他のプロテアーゼ処理中に切断される小さな化学修飾であってもよい。プロテオタイプ(proteotypic)ペプチドに連結したタグが標的化MS実験におけるペプチド定量化に用いられる。
本発明の文脈において、「重アミノ酸」という用語は、MSによって識別することができる重原子、例えば13C、15N、17O及び/又は34Sを含有するタグ中に組み込まれる同位体原子を指す。
本発明の文脈において、「少なくとも1種以上の重アミノ酸を用いて合成された」という用語は、配列番号1及び配列番号2に対応するスパイクインアミノ酸配列中の少なくとも1種以上の重原子13C、15N、17O及び/又は34Sを含有する「タグ」として理解される。
本発明の第3の態様の好ましい実施形態では、キットは配列番号1のペプチド及び配列番号2のペプチドを含み、これらのペプチドは、好ましくは少なくとも1種以上の重アミノ酸を用いて合成され、該ペプチドは、好ましくはC末端アミノ酸残基中でタグにより標識される。
本発明の第3の態様の別の好ましい実施形態では、キットは、同位体タグを有する配列番号1及び配列番号2に対応する(希釈又は凍結乾燥された)ペプチドの群を含み得る。キットは、キット内の材料を用いることができる方法を示す使用説明書も含み得る。
任意に(付加的に)、キットはトリプシン、キモトリプシン、ペプシン、パパインペプシン、パパイン、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(V8)プロテアーゼ、顎下腺(Submaxillaris)プロテアーゼ、ブロメライン、テルモリシン、アスパラギン酸エンドペプチダーゼ等の開裂酵素を含んでいてもよい。キットはまた、CNBr、酸等の化学試薬、又はタンパク質由来ポリペプチドの化学的生成のための他の化学試薬を含んでいてもよい。
任意に、トリプシンペプチドの形成を加速するためにマイクロ波分解(microwave-assisted digestion)をトリプシン処理中に用いてもよい(P Muralidhar Reddy, et al. Digestion Completeness of Microwave-Assisted and Conventional Trypsin-Catalyzed Reactions. Journal of the American Society for Mass Spectrometry. Volume 21, Issue 3, March 2010, Pages 421-424)。キットはトリプシン、並びに配列番号1及び配列番号2の最適分析のための特別なマイクロ波分解プロトコルを含み得る。
本発明の第4の態様は、ヒト被験体における敗血症性ショックを診断若しくは検出するため、又はヒト被験体における敗血症性ショックの臨床的進行を予測する(予後判定する)ための本発明の第3の態様又はその好ましい実施形態のいずれかに規定されるキットのin vitro使用に関する。
本発明の第5の態様は、製品をコンピュータ上で実行した場合に、敗血症性ショックを患う被験体の1種以上の生体サンプルに由来する循環ヒストンのレベル又は濃度を対照値と比較する工程と、SSを患うリスク又は被験体の負の臨床的進行のリスクを定める工程とを行うためのソフトウェアコード部分を含む、デジタルコンピュータの内部メモリに直接ロード可能なコンピュータプログラム製品に関する。
加えて、本明細書の実施例2に示されるように、本発明は、本発明の第6の態様において、敗血症と敗血症性ショックとの、これらの病理のいずれかを患うことが疑われるヒト被験体における鑑別診断の方法であって、被験体から単離された血液、血清又は血漿からなる1種以上の生体サンプル中の少なくとも循環ヒストンH3及び/又はH2Bのレベル又は濃度を、質量分析計を用いることによって測定する工程と、敗血症又は敗血症性ショックを患うことが疑われる被験体の1種以上の生体サンプルに由来する上記循環ヒストンのレベル又は濃度を基準値と比較する工程とを含み、少なくとも循環ヒストンH2Bのレベル又は濃度の増大が敗血症性ショックを示唆する、鑑別診断の方法にも関する。
本発明の第6の態様の好ましい実施形態では、循環ヒストンH3のレベル又は濃度は、配列番号1のペプチド(STELLIR)の量に相当する。この意味で、生体サンプル中の循環ヒストンH3のレベル又は濃度を測定するために、配列番号1の平均比を得る。同じ理由から、生体サンプル中の循環ヒストンH2Bのレベル又は濃度を測定するために、配列番号2の平均比を得る。より好ましくは、選択されるペプチド配列(H3についてはSTELLIR、H2BについてはLLLPGELAK)は、循環ヒストンH3及び/又はH2Bの絶対的定量化のためのSpikeTides(商標)_TQ(Arg:13C6、15N4;Lys:Arg:13C6、15N2等の重同位体で標識される)(JPT Peptide Technologies,Berlin,Germany)として調製することができる。
本発明の第6の態様の別の好ましい実施形態では、質量分析計は、クロマトグラフシステムを備え、より好ましくはナノLCクロマトグラフシステムを備える三連四重極型/線形イオントラップ質量分析計である。
本発明の第7の態様は、敗血症と敗血症性ショックとの、これらの病理のいずれかを患うことが疑われるヒト被験体における鑑別診断のための配列番号1のペプチド及び/又は配列番号2のペプチドを含むキットのin vitro使用であって、これらのペプチドが好ましくは少なくとも1種以上の重アミノ酸を用いて合成され、該ペプチドが好ましくはC末端アミノ酸残基中でタグにより標識される、キットのin vitro使用に関する。本発明の第3の態様の別の好ましい実施形態では、キットは、同位体タグを有する配列番号1及び配列番号2に対応する(希釈又は凍結乾燥された)ペプチドの群を含み得る。キットは、キット内の材料を用いることができる方法を示す使用説明書も含み得る。任意に(付加的に)、キットはトリプシン、キモトリプシン、ペプシン、パパインペプシン、パパイン、黄色ブドウ球菌(V8)プロテアーゼ、顎下腺プロテアーゼ、ブロメライン、テルモリシン、アスパラギン酸エンドペプチダーゼ等の開裂酵素を含んでいてもよい。キットはまた、CNBr、酸等の化学試薬、又はタンパク質由来ポリペプチドの化学的生成のための他の化学試薬を含んでいてもよい。
任意に、トリプシンペプチドの形成を加速するためにマイクロ波分解をトリプシン処理中に用いてもよい(P Muralidhar Reddy, et al. Digestion Completeness of Microwave-Assisted and Conventional Trypsin-Catalyzed Reactions. Journal of the American Society for Mass Spectrometry. Volume 21, Issue 3, March 2010, Pages 421-424)。キットはトリプシン、並びに配列番号1及び/又は配列番号2の最適分析のための特別なマイクロ波分解プロトコルを含み得る。
本発明の第8の態様は、製品をコンピュータ上で実行した場合に、敗血症性ショックを患う被験体の1種以上の生体サンプルに由来する循環ヒストンのレベル又は濃度を基準値と比較する工程と、敗血症と敗血症性ショックとの、これらの病理のいずれかを患うことが疑われるヒト被験体における鑑別診断をもたらす工程とを行うためのソフトウェアコード部分を含む、デジタルコンピュータの内部メモリに直接ロード可能なコンピュータプログラム製品に関する。
以下の実施例は、本発明を単に説明するものであり、本発明を限定するものではない。
材料及び方法
患者及び対照被験体の選択
Clinical University Hospital of Valencia(HCUV)(Valencia,Spain)の内科ICUへの入院時にSSの臨床診断を受け、続いて菌血症が確認された(48時間の微生物学的血液陽性培養)、合計17人の患者が本研究に参加した。除外基準は、i)余命が24時間未満の患者、ii)18歳〜85歳の年齢範囲外の患者、iii)活性な腫瘍形成過程を有するか又は抗酸化剤で治療された患者、iv)病棟又は別の病院に24時間を超えて入院している患者、v)外科患者、又は心肺機能蘇生後の状態の患者、又はウイルス感染が疑われる患者とし、妊婦、及び同意が得られなかった患者も除外した。患者及び対照は、HCUVのBiomedical Research Ethics Committee(CEIC)及びIBSP-CV Biobank(Biobank for Biomedical Research and Public Health in the Valencian Community,Spain)による認可の後に研究に登録された。
血液採取
血液サンプルをICU患者及び健常被験体からEDTAチューブに採取した。各サンプルを2500rpmで室温(RT)にて10分間遠心分離して血漿を分離した後、アリコートをMRM−MS実験において使用するまで−80℃で保管した。
スパイクインペプチドの線形性の評定
初めに、市販の精製ヒトヒストンH3及びH2B(EpiGex,Illkirch,France)をトリプシン処理し、5600 triple TOF(AB Sciex,Framingham,MA,USA)においてLC−MS/MS_DDAを用いて分析して、良好なシグナルを有するこれらの明確なペプチドを特定した。種々のフラグメント化スペクトル(MSMS)から、ペプチド前駆体及びフラグメントイオン質量をMRM−MSについて分析されるH3及びH2Bについて選択した。MRMパラメーターを5500 QTRAP機器(AB Sciex)においてMRM−PILOTソフトウェア(AB Sciex)によって最適化し、全ペプチドについてのデクラスタリング電圧(DP)、並びに各遷移についての滞留時間(DT)及び衝突エネルギー(CE)を決定した。その後、多数の検出可能な遷移、高い感度及び高い線形ダイナミックレンジを有するヒストン由来ペプチドを、MRM−MS実験を行うために選んだ。選択されたペプチド配列(H3についてはSTELLIR、H2BについてはLLLPGELAK)を、絶対的定量化のためのSpikeTides(商標)_TQ(Arg:13C6、15N4;Lys:Arg:13C6、15N2等の重同位体で標識される)(JPT Peptide Technologies,Berlin,Germany)として調製した。
サンプル調製
タンパク質含量を、ブラッドフォード法(Bio-Rad,Hercules,CA,USA)によって測定した。1μLの血漿(非除去)を、20μLの1:1重炭酸アンモニウム0.1/トリフルオロエタノール溶液で希釈した。各1μgのタンパク質含量について、300fmolの両方の重ペプチドを添加した。次いで、システイン残基を、10mM DL−ジチオトレイトールの添加によって56℃で30分間還元した。スルフヒドリル基を、14mMヨードアセトアミドにより暗所においてRTで30分間アルキル化した。過剰分を、100μLの最終容量の50mM重炭酸アンモニウム中の10mM DL−ジチオトレイトールにより30分にわたってRTで中和した。サンプルを、1μgのシークエンシンググレード修飾トリプシン(TCPK Trypsin、AB Sciex)によるトリプシン消化に37℃で一晩供した。反応を最終濃度1%のトリフルオロ酢酸(TFA)で停止した。サンプルを、speedvacを用いて乾燥させ、50μLのTFA(0.1%)に再懸濁した。ペプチドを濃縮し、ZipTip C18チップ(Merck Millipore,Darmstadt,Germany)を用いて精製した。最後に、サンプルを注射のために2%アセトニトリル(CAN)、0.1%ギ酸(FA)で希釈した。
MRM−MS
MRM実験を、Eksigent 1D+plusナノLCクロマトグラフシステムを備える5500 QTRAPハイブリッド三連四重極型/線形イオントラップ質量分析計(AB Sciex)で行った。トリプシン消化物(1μgのタンパク質及び300fmolの各スパイクインペプチド)をナノLCトラップカラム3μ C18−CL(Eksigent,Dublin,CA,USA)に注入した後、15cmの分析用ナノLCカラム3μ C18−CL(Eksigent)でRP−HPLCによって分離した。クロマトグラフィーを、溶媒A(0.1%FA)及び溶媒B(100%ACN、0.1%FA)を移動相として用い、300nl/分の流量の直線勾配(2%B→50%Bで70分間)を用いて行った。MRMデータをスプレー電圧2800V、カーテンガス:20psi、イオン源ガス:20psi、インターフェースヒーター温度(interface heater temperature)(IHT):150℃、DP:80、エントランス電位:10、イグジット電位(EXP):15、及び休止時間3msのポジティブモードで取得した。衝突エネルギー(CE)は、LLLPGELAK−LLLPGELA[K]及びSTELLIR−STELLI[R]のそれぞれについて26V及び23Vであった。遷移(STELLIR及びSTELLI[R]について9、LLLPGELAK及びLLLPGELA[K]について12)を、Q1及びQ3四重極の両方におけるユニット分解能、並びにそれぞれについて40msの滞留時間を用いてモニタリングした。データ分析を、Analyst(商標) 1.5.2及びMultiQuant(商標) 2.0.2ソフトウェア(AB Sciex)を用いて行った。全ての遷移についての面積比(軽/重)を算出し、平均面積比を統計分析に用いた。
H2B及びH3ヒストンレベルを算出するために、LLPGELAK及びSTELLIRについて得られた平均比を用いた。H2B及びH3の最終濃度(mg/mL)を、標的化タンパク質の相対分子質量(Mr)値(H2B及びH3のそれぞれについてMr 13.906Da及び15.404Da)から推定した。
統計分析
参加者の人口統計学的及び臨床的ベースライン特性を、年齢についてはスチューデントの検定、性別についてはカイ二乗検定を用いて群間で比較した。ヒストンH2B及びH3の濃度をスチューデントの検定、ANOVA及びマン−ホイットニーのU検定等のパラメトリック検定及びノンパラメトリック検定を用いて比較した。H2B及びH3レベル、急性生理及び慢性健康状況の評価(Acute Physiology and Chronic Health Evaluation)II(APACHE II)及び続発性臓器不全評価(Sequential Organ Failure Assessment;SOFA)スコア、ラクテート及びプロトロンビン時間の相関を、スピアマンの相関を用いて評定した。
SSの診断及び予後診断のバイオマーカーとしてのヒストンH2B及びH3のレベルの値を、受信者動作特性(ROC)曲線の分析によって得た。
0.05未満のp値を統計的に有意であるとみなした。全ての分析を、SPSS v.20(IBM Corporation,Armonk,NY,USA)を用いて行った。
実施例1.結果
コホートの概要
内科ICUへの入院時にSSの臨床診断を受けた合計17人の患者を分析した。年齢の中央値は67歳(37歳〜85歳)であり、男性患者が症例の67%を占めた。APACHE IIスコアの中央値は25(14〜44)であり、SOFAスコアの中央値は10(3〜19)であった。
表1に患者の臨床的特性を示す。
9人(53%)の生存者及び8人(47%)の非生存者であった。どちらの群も人口統計学的特性、チャールソン指数による入院時の併存症及び重症度に関して同様であったが、非生存者は、より高い平均APACHE IIスコアの傾向を有していた。感染源及び血液サンプル中で特定された微生物に関して両方の群間に差は見られず、多剤耐性及びグラム分析基準も考慮しなかった。
初期管理は、SS患者の両方の群で同様であった。生存者及び非生存者に、SSの認識後1時間以内の静脈内抗菌剤療法及び輸液による蘇生(配合禁忌(formal contraindication)の非存在下で血行動態を改善するための少なくとも20mL/kgの静脈内クリスタロイドの初回投与)を同レベルで行った。続いて、生存者群の全患者に決定的な血液培養結果に基づく「適切な」抗菌剤療法を行ったが、この値は非生存者については75%であった。臓器支持療法によると、全患者が最初に血管作用薬を必要とし(SS組み入れ基準を考慮する)、50%を超える患者集団を、両方の群の不応性状況に基づいてコルチコステロイドで治療した。輸液による蘇生後にラクテートレベルが10%超低下した患者の死亡率は、そうでない患者の83%に対して27%であり、ICU死亡率のオッズ比(OR)は、この代謝産物を排出する患者について0.4(IC 0.16〜1.06)であった。両方の患者群間にICU及び病院滞在日数の中央値に関する差は観察されなかった。
ICU滞在の1日目の患者の血液検査結果に関して、両方の群間に僅かな差が見られた。炎症性パラメーター(白血球数、C反応性タンパク質(CRP)及びプロカルシトニン(PCT)レベル)、並びに均一な臨床的低灌流を反映するラクテートの最初のレベルは同等であった。両方の群間で有意な差が療法の6時間後のラクテートレベル、プロトロンビン時間及び動脈酸素分圧対吸気酸素濃度(PaO2/FiO2)比に観察され、この場合も非生存者群におけるより悪い状況及びより進行した臓器機能不全が示された。
合計10人の健常対照を採用したが、症例よりも若く、男性である可能性が高かった。対照の年齢の中央値は42歳(20歳〜56歳)であり、男性の対照が70%を占めていた。
H2B及びH3のMRM分析
初めに、ヒストンペプチドの選択をアッセイし、スパイクイン調製及び後の血液サンプルにおけるMRM−MS測定に最良のペプチドを選んだ。精製H2B及びH3のそれぞれのトリプシン消化によって得られるペプチドLLLPGELAK及びSTELLIRが、LC−MS/MS実験において実験観察により選択された。このことは、同じタンパク質に由来する異なるペプチドがMS応答について大きく異なり、血漿サンプルにおいて干渉を生じ得ることから、MRMアッセイを設計するために重要な点である。選ばれた独自のペプチド配列は良好なクロマトグラフィーパラメーター、最適なイオン化効率及び高いMS/MS品質を示し、シグナルについて大きな濃度線形性を示した(データは示さない)。両方の配列をSS患者及び健常被験体の血漿サンプルのスパイキングに使用した。
図1に、血漿サンプル中のH2B及びH3を追跡する、最も強力な(先に規定したように)MRMシグナルを有するクロマトグラムを示す。1μgのタンパク質当たり300fmolのLLLPGELAK及びSTELLIRをスパイキングした血漿サンプルの分析にMultiquant(商標)(AB Sciex)を用いることで、ペプチドを良好なシグナル対ノイズ比で検出することができた。
どちらのペプチドの溶出時点でも干渉ピークは見られなかった(図4)。
SSの診断及び予後診断のための潜在的バイオマーカーとしての循環ヒストンH2B及びH3
ヒストンH2Bについては、対照において見られた平均レベルは、204.48ng/mL(95%CI 25.31〜283.66)であり、患者では1736.91ng/mL(95%CI 555.34〜2918.47)まで増大した。観察される差は統計的に有意であり(p=0.014)、平均レベルが対照については23.50ng/mL(95%CI −3.97〜50.98)、患者については2040.79ng/mL(95%CI 756.58〜3325.01)であったヒストンH3でより高かった(p=0.004)(図2)。
ヒストンのレベルは、両方の群において有意な相関係数で正に相関した(対照についてはスピアマン係数r=0.848、p=0.002、患者についてはr=0.827、p<0.0001)。
これらの生存患者については、ICUにて最初の24時間以内の両方のヒストンの平均レベルは、非生存者と比較して有意に低く(図2)、値は非生存者において検出されたレベルと比較して最大5分の1であった。ヒストンH2Bについては、平均レベルは、生存者では607.00ng/mL(95%CI 204.20〜1009.82)、非生存者では3008.50ng/mL(95%CI 603.94〜5412.15)であり(p=0.046)、ヒストンH3のレベルに関して同じ比例差が観察され、観察された平均値は、生存者で740.70ng/mL(95%CI 311.16〜1170.23)、非生存者で3503.41ng/mL(95%CI 955.95〜6050.86)であった(p=0.036)。
MRM−MS法によって検出されるヒストンH2B及びH3の特異度及び感度
ヒストンH2B及びH3のレベルの診断力を評価するために行ったROC曲線分析から、それらの両方が敗血症性ショック症例と健常対照とを区別するのに有益なバイオマーカーとなり得ることが明らかとなった。各ヒストンについてのAUC(ROC曲線下面積)、標準誤差、信頼区間(CI)、最適濃度カットオフ値、感度及び特異度を表2に示す。
両方のヒストンについてのAUCは同様であるが、両方のバイオマーカーのレベルは健常対照と患者とで有意に異なり、ヒストンH3は、診断に関する感度及び特異度についてより高い値を示した。このバイオマーカーについては、最適カットオフ値としての濃度86.36ng/mLで、方法の感度及び特異度の値は、それぞれ94.1%及び90.0%であった。
循環H2B及びH3、並びにそれらの患者の早期転帰予測の可能性
敗血症性ショックの予後診断のバイオマーカーとしての血漿中のヒストンの潜在的使用を検討するために、各ヒストンについて対応するROC曲線を作成した。生存者と非生存者とを識別するために、症例のみを選択し、バイオマーカーのパラメーター:最適カットオフ値、感度及び特異度を算出した(図3)。この場合も、ヒストンH3は、予後診断についてヒストンH2Bよりも良好であると分類された。感度値は、同様のカットオフ値でヒストンH2B(感度=62.5%、特異度=88.9%、カットオフ値=1426.38ng/mL)よりもヒストンH3(感度=75.0%、特異度=88.9%、カットオフ値=1348.13ng/mL)について高かった。
実施例2. 鑑別診断
以下の群間の分布を研究に含めて、合計40個のサンプルを分析した:感染病理を有しないICUで選択された11対照(対照非敗血症ICU患者)、健常一般集団からされた11対照、敗血症の8症例及び敗血症性ショックの10症例。
ヒストンH2Bについては、40個の血漿において見られた平均レベルは、以下の通りであった(表2)。
結果は、対照(ICU及び一般集団)、敗血症及び敗血症性ショック患者に由来する血漿中の循環ヒストンH2Bのレベルを示す図5に示される。箱ひげ図により4つの群におけるH2Bレベルを表す。箱は四分位範囲を表し、横線は中央値を表し、ひげは10パーセンタイル値及び90パーセンタイル値を表す。レベルは、H2Bのng/mLとして表される。
観察された差が統計的に有意であったかを評定するために、ANOVA検定(p<0.0001)を行った。事後検定(シェッフェ)から、これらの統計的差異が敗血症性ショックサンプルとICU対照群(p<0.0001)、一般集団対照群(p<0.0001)及び敗血症群(p=0.001)との間に見られたことが示される。

Claims (15)

  1. ヒト被験体における敗血症又は敗血症性ショックを診断又は検出する質量分析ベースの方法であって、前記被験体から単離された血液、血清又は血漿からなる1種以上の生体サンプル中の少なくとも循環ヒストンH3のレベル又は濃度を、質量分析計を用いることによって測定する工程と、前記敗血症又は敗血症性ショックを患うことが疑われる被験体の1種以上の生体サンプルに由来する前記循環ヒストンのレベル又は濃度を基準値、又は正常被験体の血液、血清若しくは血漿からなる生体サンプルに由来する前記循環ヒストンのレベル若しくは濃度と比較する工程とを含み、前記正常被験体が敗血症又は敗血症性ショックを患わない健常被験体であり、前記循環ヒストンH3のレベル又は濃度が配列番号1のペプチド(STELLIR)の量に相当し、前記生体サンプル中の前記循環ヒストンH3のレベル又は濃度を測定するために配列番号1の平均比を得て、少なくとも循環ヒストンH3のレベル又は濃度の増大が敗血症又は敗血症性ショックを示唆する、質量分析ベースの方法。
  2. 前記ヒストンH3の基準値が86.36ng/mLであり、少なくとも1.5倍の増大が敗血症又は敗血症性ショックを示唆する、請求項1に記載の質量分析ベースの方法。
  3. 前記被験体から単離された血液、血清又は血漿からなる1種以上の生体サンプル中の少なくとも循環ヒストンH2Bのレベル又は濃度を、質量分析計を用いることによって測定する工程と、前記敗血症又は敗血症性ショックを患うことが疑われる被験体の1種以上の生体サンプルに由来する前記循環ヒストンのレベル又は濃度を基準値、又は正常被験体の血液、血清若しくは血漿からなる生体サンプルに由来する前記循環ヒストンのレベル若しくは濃度と比較する工程とを更に含み、前記正常被験体が敗血症又は敗血症性ショックを患わない健常被験体であり、前記循環ヒストンH2Bのレベル又は濃度が配列番号2のペプチド(LLPGELAK)の量に相当し、前記生体サンプル中の前記循環ヒストンH2Bのレベル又は濃度を測定するために配列番号2の平均比を得て、少なくとも循環ヒストンH3及びH2Bのレベル又は濃度の増大が敗血症又は敗血症性ショックを示唆する、請求項1又は2に記載の質量分析ベースの方法。
  4. ヒストンH2Bの対照値が212.03ng/mLであり、少なくとも1.5倍の増大が敗血症又は敗血症性ショックを示唆する、請求項3に記載の質量分析ベースの方法。
  5. ヒト被験体における敗血症又は敗血症性ショックの臨床的進行を予測する(予後判定する)質量分析ベースの方法であって、前記被験体から単離された血液、血清又は血漿からなる1種以上の生体サンプル中の少なくとも循環ヒストンH3のレベル又は濃度を、質量分析計を用いることによって測定する工程と、前記敗血症又は敗血症性ショックを患うことが疑われる被験体の1種以上の生体サンプルに由来する前記循環ヒストンのレベル又は濃度を基準値と比較する工程とを含み、前記循環ヒストンH3のレベル又は濃度が配列番号1のペプチド(STELLIR)の量に相当し、前記生体サンプル中の前記循環ヒストンH3のレベル又は濃度を測定するために配列番号1の平均比を得て、少なくとも循環ヒストンH3のレベル又は濃度の増大が負の臨床的進行を示唆し、該臨床的進行が患者の全生存期間を指す、質量分析ベースの方法。
  6. 前記被験体から単離された血液、血清又は血漿からなる1種以上の生体サンプル中の少なくとも循環ヒストンH2Bのレベル又は濃度を、質量分析計を用いることによって測定する工程と、前記敗血症又は敗血症性ショックを患うことが疑われる被験体の1種以上の生体サンプルに由来する前記循環ヒストンのレベル又は濃度を基準値と比較する工程とを更に含み、前記循環ヒストンH2Bのレベル又は濃度が配列番号2のペプチド(LLPGELAK)の量に相当し、前記生体サンプル中の循環ヒストンH2Bのレベル又は濃度を測定するために配列番号2の平均比を得て、少なくとも循環ヒストンH3及びH2Bのレベル又は濃度の増大が負の臨床的進行を示唆し、該臨床的進行が患者の全生存期間を指す、請求項5に記載の質量分析ベースの方法。
  7. 前記ヒストンH3の基準値が1348.13ng/mLであり、少なくとも1.5倍の増大が負の臨床転帰を示唆する、請求項5又は6に記載の質量分析ベースの方法。
  8. 前記ヒストンH2Bの基準値が1426.38ng/mLであり、少なくとも1.5倍の増大が負の臨床転帰を示唆する、請求項5〜7のいずれか一項に記載の質量分析ベースの方法。
  9. 敗血症と敗血症性ショックとの、これらの病理のいずれかを患うことが疑われるヒト被験体における鑑別診断の方法であって、前記被験体から単離された血液、血清又は血漿からなる1種以上の生体サンプル中の少なくとも循環ヒストンH3及びH2Bのレベル又は濃度を、質量分析計を用いることによって測定する工程と、前記敗血症又は敗血症性ショックを患うことが疑われる被験体の1種以上の生体サンプルに由来する前記循環ヒストンのレベル又は濃度を基準値と比較する工程とを含み、少なくとも循環ヒストンH2Bのレベル又は濃度の増大が敗血症性ショックを示唆する、鑑別診断の方法。
  10. 前記循環ヒストンH2Bのレベル又は濃度が配列番号2のペプチド(LLPGELAK)の量に相当し、前記生体サンプル中の循環ヒストンH2Bのレベル又は濃度を測定するために配列番号2の平均比を得て、前記循環ヒストンH3のレベル又は濃度が配列番号1のペプチド(STELLIR)の量に相当し、前記生体サンプル中の前記循環ヒストンH3のレベル又は濃度を測定するために配列番号1の平均比を得る、請求項9に記載の鑑別診断の方法。
  11. ヒト被験体における敗血症又は敗血症性ショックを診断又は検出するための配列番号1のペプチド及び/又は配列番号2のペプチドを含むキットのin vitro使用であって、これらのペプチドが好ましくは少なくとも1種以上の重アミノ酸を用いて合成され、該ペプチドが好ましくはC末端アミノ酸残基中でタグにより標識される、キットのin vitro使用。
  12. ヒト被験体における敗血症又は敗血症性ショックを診断又は検出するための配列番号1のペプチド及び配列番号2のペプチドを含むキットのin vitro使用であって、これらのペプチドが好ましくは少なくとも1種以上の重アミノ酸を用いて合成され、該ペプチドが好ましくはC末端アミノ酸残基中でタグにより標識される、キットのin vitro使用。
  13. ヒト被験体における敗血症又は敗血症性ショックの臨床的進行を予測する(予後判定する)ための配列番号1のペプチド及び/又は配列番号2のペプチドを含むキットのin vitro使用であって、これらのペプチドが好ましくは少なくとも1種以上の重アミノ酸を用いて合成され、該ペプチドが好ましくはC末端アミノ酸残基中でタグにより標識される、キットのin vitro使用。
  14. ヒト被験体における敗血症又は敗血症性ショックの臨床的進行を予測する(予後判定する)ための配列番号1のペプチド及び配列番号2のペプチドを含むキットのin vitro使用であって、これらのペプチドが好ましくは少なくとも1種以上の重アミノ酸を用いて合成され、該ペプチドが好ましくはC末端アミノ酸残基中でタグにより標識される、キットのin vitro使用。
  15. 敗血症性ショックと敗血症との、これらの病理のいずれかを患うことが疑われるヒト被験体における鑑別診断のための請求項13又は14に記載のキットのin vitro使用。
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