JP2019534584A - デジタル電子回路のシングルイベントトランジェント又はグリッチを抑制するための方法及び回路構造 - Google Patents

デジタル電子回路のシングルイベントトランジェント又はグリッチを抑制するための方法及び回路構造 Download PDF

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Abstract

デジタル電子回路におけるシングルイベントトランジェント(SET)又はグリッチを抑制するための回路構造及び方法が提供される。回路には、デジタル電子回路の出力を受け取る第1入力と、デジタル電子回路の冗長又は複製出力を受け取る第2入力が含まれる。回路には、AND、OR、NAND及びNORゲートから選択される2つの異なる種類の2入力ゲートが4つのみ含まれる。4つの2入力ゲートは、最終回路出力が第1入力のみ又は第2入力のみの論理レベルの変化に影響されず、第1入力と第2入力の論理レベルが一致する場合、最終回路出力が第1入力と第2入力の論理レベルと等価であるように構成されている。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2016年9月12日出願の南アフリカ共和国特許仮出願第2016/06283号の優先権を主張し、参照により本明細書に援用する。
本発明は、デジタル電子回路におけるシングルイベントトランジェント(single event transients:SET)又はシングルイベントアップセット(single event upsets:SEU)を抑制するための方法及び回路構造に関する。本発明は、排他的ではないが、特にフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)及び特定用途向け集積回路(ASIC)などのシーケンシャル電子回路の一部を構成する組合せ回路における、SET及びSEUの軽減への適用に適する。
宇宙ベースのコンピューティング操作のためのフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)の使用が広く普及している。FPGAは、一般に、特定用途向け集積回路(ASIC)の対応品よりも計算速度が遅く、ASICほどの複雑な設計を扱えず、またASICよりも電力消費が大きい。しかしFPGAには、いくつかの重要な利点がある。それらは、市場に出るまでの時間が短いこと、デバイスを再プログラム可能なこと、エンジニアリングコストが低いこと等を含む。これらの特徴は、宇宙航空機用途に特に有利であるために、宇宙関連業界は、導入される最新のFPGAに対して放射線照射効果を積極的に評価してきた。FPGAは、宇宙ベースの電子装置に対する複数の利点を有する一方で、残念ながら一般的にシングルイベント効果(Single Event Effects:SEE)に対して敏感である。
SEEは、重イオン(宇宙線)又は陽子の衝撃の結果としての電離によって発生する。電離は、p−n接合に電流パルスを誘導する。シングルイベント効果には、シングルイベントラッチアップ(SEL)、シングルイベントゲートラプチャ(SEGR)、又はシングルイベントバーンアウト(SEB)などの回路に永久的な損傷を与えるもの、並びに回路に永久的な損傷は与えないシングルイベントトランジェント(SET)と称される「ソフトエラー」が含まれる。
SETは、電離によって荷電粒子が回路素子に電荷を堆積させることにより生じる。この堆積された電荷が、回路素子内の局所的電圧準位を上昇させ、これが双安定素子の状態を非破壊で変化させ得る。組合せ論理素子において、電荷は(典型的には数百ピコ秒で)リークして逃げていき、素子は正しい状態に戻るものである。ただし、SETによってクロックエッジで同期論理が妨害されると、一時的に間違った論理値がレジスタにラッチされる。そうしてこの間違った値が、回路の他の部分を介して伝搬する可能性がある。レジスタにラッチされたSETは、シングルイベントアップセット(SEU)と呼ばれる。
例えば衛星用コンピュータでは、SEUにより生じるビット反転は、重要データをランダムに変化させるか、プログラムデータをランダムに変化させるか、あるいはレジスタ値をランダムに変化させ得る。この変化は、ソフトウェアに意図しないコマンドを実行させて、結果としてソフトウェアを「クラッシュ」させ得る。
FPGAでのSEUは、ユーザ設計のフリップフロップ、FPGAコンフィグレーションメモリ、並びに任意のFPGAのレジスタやラッチや内部状態に影響を与える可能性がある。コンフィグレーションメモリのアップセットは、そのアップセットが設計の状態と操作の両方に影響するために、特に問題が多い。コンフィグレーションアップセットは、ルーティングリソース及び論理機能に混乱を与え、回路操作を変化させ得る。デバイスコンフィグレーションメモリでのシングルイベントアップセットの影響は、メモリ素子の改変にとどまらず、構成可能論理ブロック(CLB)内部、及び異なるCLB同士の間における相互接続において改変をもたらし、その結果意図したものとは全く異なる回路を出現させ得る。
フラッシュ型及びアンチフューズ型のFPGAはSETには鈍感なコンフィグレーションメモリを持っており、ユーザロジック内のいかなるSETも一時的にしか存在しない。ただし、揮発性メモリを持つFPGA、特にSRAM型FPGAでは、SETにより生じるエラーの主因は、コンフィグレーションメモリエラーによるものである。SRAM型FPGAのコンフィグレーションメモリエラーは消散しないで、パワーリセットによって新規のコンフィグレーションメモリがFPGAにロードされるか、計画的なコンフィグレーションメモリエラーリセットが起きるまで持続する。SEUが状態マシンなどの制御回路を狂わせてデバイスを不確定状態やテストモードや停止状態にするとき、SEUは、シングルイベント機能インタラプト(SEFI)となり得る。この回復には、リセットやパワーサイクルが必要となる。
上記より、宇宙ベース用途のFPGA、更にはASICをうまく展開するためには、何らかの種類のシングルイベントアップセットの軽減方式が不可欠であることが明らかである。シングルイベントアップセットの軽減は、安全が極めて重要な地上用途に対しても重要となり得る。
二重モジュール冗長性(Double Modular Redundancy:DMR)SEUによる軽減法は、組合せ回路の複製と複製回路出力の比較とに依存する。しかし、ほとんどのDMRソリューションは、通常、SEUの検出が可能なだけであり、それをマスクすることや修正することはできない。
軌道上のシーケンシャル回路のSEUエラーを修正するための最も一般的な軽減方式は、三重モジュール冗長性(TMR)にスクラビングを加えたものである。TMRは、投票回路(voting circuit)によって3つの信号の値を比較する空間的冗長性手法であって、出力は一致する2つの入力に等しい。すべてのシングルイベントアップセットは、スクラビングによって除去され、不良状態は、三重モジュール冗長性によって(実装に依存して)マスクされるか補正されるかのいずれかである。TMRは安全性が重要な用途において、シングルイベントアップセットに対するデジタル論理回路の耐性を上げるために活用されることが多い。一例としてTMRは、シーケンシャルデジタル論理回路に使用される、フォールトトレラントメモリ素子の設計に利用されることが多い。TMRの主要な不利な点は、面積のオーバーヘッドが大きすぎることである。組合せ回路の三重化と投票回路の追加を有する耐性設計は、元の設計に比べて4〜7倍の面積と電力消費となり得るので、その利用は信頼性が重要な用途に限定される。
宇宙及び軍用途の放射線耐性FPGAが入手可能である。しかしこれらは市販品に比べて何桁も高価になりがちである。さらに、放射線耐性のFPGAや不揮発性FPGAやASICSはコンフィグレーションメモリのシングルイベントアップセットの影響をマスクすることが可能であるが、重要な用途のためのユーザロジック回路では通常三重モジュール冗長性がさらに要求される。
出願人自身のPCT出願である国際公開第2011/121414号パンフレットには、SEUを軽減するための方法と回路が提示されている。これは、二重モジュール冗長性と、各出力ペア間の投票回路に基づくものであり、2つの出力が同一でない場合に投票回路はSEUの存在を示すことが可能である。投票回路出力のすべては、複数入力投票回路によって比較され、1つ又は複数の投票回路出力のいずれか1つがSEUの存在を示すと、そのシングルイベントアップセットの存在が消えるまで、状態メモリラッチ素子(フリップフロップなど)がすべて無効にされる。こうして、シングルイベントアップセットが続く間、回路が「フリーズ」される。この方法はSEUの軽減には効果的ではあるが、投票回路は、非常に多量の追加回路と複雑さを必要とし、二重モジュール冗長性は、未だ必要であり、かつ回路が「フリーズ」されている間は、僅かながら追加的な遅延が導入される。さらに、コンフィグレーションメモリエラーは、回路が所定の時間より長くフリーズのままでいることを検出し、かつその後コンフィグレーションメモリを再構成することで識別される。コンフィグレーションエラーの場合には、この待ち時間がより長い遅延時間を招く。
本出願人によるさらなるPCT出願である国際公開第2013057707号パンフレットには、デジタル電子回路におけるシングルイベントトランジェント(SET)又はグリッチ(glitch)を抑制するための回路構造が提示されている。これは多重化装置構成によるものであって、多重化装置入力は多重化装置出力の論理値と2つのサブ回路によって決定され、多重化装置出力が変化するときは常に、入力の1つの値の変化に鈍感なサブ回路の出力が選択されるようになっている。
いわゆるMuller C素子は、SETの抑制に使用され得る回路素子である。Muller C素子は、次式で定義される。

数1:Muller C素子論理式
ここで、xとxは、C素子への各入力であり、yは、その出力である。
上記のMuller C素子式の論理実装には、それぞれが2入力を必要とする5つの論理演算、すなわち2つのAND演算と3つのOR演算、を必要とする。出願人は、改善の余地があると考えている。
これまでの本発明の背景に関する議論は、本発明の理解に役立つことのみを意図するものである。上記の議論は、言及した事項のいかなるものも本出願の優先日時点における当分野での共通の一般的知識であることの承認又は認識ではないことを理解されたい。
本発明によれば、デジタル電子回路におけるシングルイベントトランジェント(SET)又はグリッチを抑制するための回路構造が提供され、これには、デジタル電子回路の出力を受け取る第1入力と、そのデジタル電子回路の冗長又は複製出力を受け取る第2入力と、AND、OR、NAND及びNORゲートから選択される2つの異なる種類の2入力ゲートの4つのみとが含まれる。この4つの2入力ゲートは、最終回路出力が第1入力のみ又は第2入力のみの論理レベルの変化には影響されず、第1入力と第2入力が一致する場合、最終回路出力が第1及び第2入力の論理レベルと等価となるように構成されている。
一実施形態では、4つの2入力ゲートは2つのANDゲートと2つのORゲートからなり、第1のANDゲートと第1のORゲートは、いずれも入力として第1入力と第2入力を受け取り、第1のORゲートは、出力として第1出力を有し、第1のANDゲートは、出力として第2出力を有し、第2のANDゲートは、入力として第1出力と回路の前記最終出力を受け取り、出力として第3出力を有し、第2のORゲートは、入力として第2出力と第3出力を有し、出力として最終出力を有する。
これに変わる特徴としては、4つの2入力ゲートが3つの反転ゲートと1つの非反転ゲートとを含む。
さらなる特徴として、3つの反転ゲートは、NANDゲートであり、非反転ゲートは、ORゲートである。ORゲートは、第1入力と第2入力を受け取り、第1出力を有し、第1のNANDゲートは、第1入力と第2入力を受け取り、第2出力を有し、第2のNANDゲートは、第1出力と最終回路出力を受け取り、第3出力を有し、第3のNANDゲートは、第2出力と第3出力を受け取り、出力として最終回路出力を有する。
さらなる代替する特徴として、3つの反転ゲートは、2つのNANDゲートと1つのNORゲートであり、非反転ゲートは、ORゲートであり、第1のNANDゲートとNORゲートは、いずれも入力として第1入力と最終回路出力とを受け取り、第1のNANDゲートは出力として第1出力を有し、NORゲートは、その出力として第2出力を有し、ORゲートは、入力として第2出力と反転された第2入力を受け取り、出力として第3出力を有し、第2のNANDゲートは、入力として第1出力と第3出力を受け取り、出力として最終回路出力を有する。
本発明は、デジタル電子回路におけるシングルイベントトランジェント(SET)又はグリッチを抑制するための方法へ範囲を拡張する。この方法は、第1入力としてデジタル電子回路の出力を受け取り、第2入力としてデジタル電子回路の冗長又は複製出力を受け取り、AND、OR、NAND及びNORゲートから選択される2つの異なる種類の2入力ゲートを4つのみ備える論理回路構造内へ前記第1入力と第2入力を入力する、ことを含む。前記4つの2入力ゲートは、最終回路出力が第1入力のみ又は第2入力のみの論理レベルの変化に影響されず、第1入力と第2入力の論理レベルが一致する場合、最終回路出力が第1入力と第2入力の論理レベルと等価となるように構成されている。
一実施形態においてこの方法は、第1入力と第2入力を第1のANDゲートに入力し、第1入力と第2入力を第1のORゲートに入力し、第1のORゲートの出力と最終回路出力を受け取り、かつそれらを第2のANDゲートに入力し、第2のANDゲートの出力と第1のORゲートの出力を受け取り、それらを第2のORゲートに入力し、第2のORゲートの出力を最終回路出力として受け取る、ステップとを含む。
代替実施形態においてこの方法は、第1入力と第2入力を第1のNANDゲートに入力し、第1入力と第2入力をORゲートに入力し、ORゲートの出力と最終回路出力を受け取り、それらを第2のNANDゲートに入力し、第2のNANDゲートの出力と第1のNANDゲートの出力を受け取り、それらを第3のNANDゲートに入力し、第3のNANDゲートの出力を最終回路出力として受け取る、ステップとを含む。
更なる代替実施形態においてこの方法は、第1入力と最終回路出力をNORゲートに入力し、第1入力と最終回路出力を第1のNANDゲートに入力し、第2入力を反転させ、NORゲートの出力と反転した第2入力とを受け取り、それらをORゲートへ入力し、第1のNANDゲートの出力とORゲートの出力を受け取り、それらを第2のNANDゲートに入力し、第2のNANDゲートの出力を最終回路出力として受け取る、ステップとを含む。
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を例示としてのみ説明する。
本発明によるC素子の第1の実施形態の概略表示である。 図1Aの回路構造における論理レベルの模擬的なタイミング図である。 本発明によるC素子の第2の実施形態の概略表示である。 本発明によるC素子の第3の実施形態の概略表示である。 実験検証に使用する第1のテスト回路の概略表示である。 実験検証に使用する第2のテスト回路の概略表示である。 実験検証に使用する第3のテスト回路の概略表示である。 実験検証に使用する第4のテスト回路の概略表示である。 実験検証に使用する第5のテスト回路の概略表示である。 実験検証に使用する第6のテスト回路の概略表示である。 実験検証に使用する第7のテスト回路の概略表示である。 デジタル電子回路におけるシングルイベントトランジェント(SET)又はグリッチを抑制する方法のフロー図である。
本発明の実施形態では、デジタル電子回路におけるシングルイベントトランジェント(SET)又はグリッチを抑制するための回路構造及び方法を記述する。回路構造は、一般的に2入力、1出力の構成であり、この出力は、2つの入力に関してSETを抑制した信号である。第1入力が先行するデジタル電子回路の出力を受け取り、第2入力が先行するデジタル電子回路の冗長又は複製出力を受け取る。
回路構造の構成要素には、AND、OR、NAND、及びNORゲートから選択される、合計で4つの2入力ゲートが含まれる。4つの2入力ゲートは、出力が第1入力のみ又は第2入力のみの論理レベルの変化に影響されないように構成されている。この出力は、第1入力と第2入力の論理レベルが一致するときは、第1入力と第2入力の論理レベルと等価である。上記の式1に示す論理式は、それぞれが2つの入力を必要とする5つの論理演算、すなわち2つのAND演算と3つのOR演算を必要とすることを強調する必要がある。
回路構造には、後で説明するように、4つの2入力ゲートの1つ又は複数の入力にフィードバック信号、及び4つの2入力ゲートの1つ又は複数の入力及び/又は出力のいずれかまたは両方に、1つ又は複数の1入力インバータすなわちNOTゲートが含まれ得る。
デジタル電子回路でのSET又はグリッチを抑制するように構成された構造を有する第1の実施形態の回路(100)を図1に示す。この回路(100)の端子には、第1入力(101)と第2入力(102)と最終回路出力(150)がある。第1入力(101)と第2入力(102)は、先行する回路又はサブ回路の出力と、その冗長又は複製インスタンスとをそれぞれ受け取るように構成されている。
この実施形態における4つの2入力ゲートは、2つのORゲート(111、112)と2つのANDゲート(121、122)からなっている。
第1のORゲート(111)と第1のANDゲート(121)はいずれも入力として回路の第1入力(101)と第2入力(102)を受け取る。第2のORゲート(112)は、入力の1つとして第1のANDゲート(121)の出力(141)を受け取る。
第2のANDゲート(122)は、入力の1つとして第1のORゲート(111)の出力(142)を受け取る。第2のANDゲート(122)はさらに、その第2入力として回路(100)の最終出力(150)のフィードバック信号を受け取る。第2のANDゲート(122)の出力(143)は、次に第2のORゲート(112)の第2入力として受け取られる。第2のORゲート(112)の出力(144)は回路(100)の最終出力(150)を生成する。
回路(100)は、次式で定義することができる。

数2:第1の実施形態の論理式
ここで、xとxは、それぞれ回路の第1入力と第2入力であり、yは、回路の出力である。この式から、それぞれが2つの入力を必要とする論理演算を4つだけ必要とすることが理解される。したがって、この論理式をハードウェアで実装するのに必要な2入力論理ゲートの数は、数1よりも20%低減される。これにより、電力消費量の低減及び物理的スペースの低減などのリソースの節約が可能である。
図1Bは、図1Aの回路構造における論理レベルの模擬的なタイミング図を示す。引き出し線1において、第1入力(101)に長さ200psのSETが誘導され、予想通り、信号142を論理1に変化させる。ただし、最終回路出力(150)は、論理0であるので、SETが第2のANDゲート(122)の出力で信号143にしみ出ることは防止される。こうして、最終回路出力(150)には、SETの影響が見られない。引き出し線3において、第2入力(102)にSETが誘起されるが、前と同様に出力は、一定のままである。引き出し線7と8で、第1入力(101)と第2入力(102)のいずれも論理1の状態において、再びSETが第1入力(101)と第2入力(102)のそれぞれに誘起されるが、最終回路出力(150)は、安定したままである。このように最終回路出力は、その時の出力論理レベルに関係なく、常に入力におけるSET起因の単一ビット反転には影響されないようになっている。
ここで、AND及びOR論理ゲートは、トランジスタ、通常は電界効果型トランジスタ(FET)、より具体的には相補型金属酸化物半導体(CMOS)FET構造によって内部実装されうることは、理解されるであろう。CMOS論理ゲートに関しては、非反転ORゲート及び非反転ANDゲートは、その典型的な実装には少なくとも6つのトランジスタを必要とする。これとは対照的に、NORゲート及びNANDゲートであるこれらの逆の対応品は、その実装に4つのトランジスタしか必要としない。したがって、反転ゲートの使用を最大化してそれによって、回路の全トランジスタ数を最小化し、かつゲート遅延時間を最小化する実施形態を実装することがより有利であり得る。
そのような回路を図2に示す。本発明のこの第2の実施形態では、回路(200)はやはり4つの2入力論理ゲートを含むが、その内の3つは反転AND(すなわちNAND)ゲート(221、222、223)であり、1つは非反転ORゲート(211)である。
この回路(200)の端子にもまた、第1入力(201)、第2入力(202)及び最終回路出力(250)がある。第1入力(201)と第2入力(202)は、先行する回路又はサブ回路の出力と、その冗長又は複製インスタンスとをそれぞれ受け取るように構成されている。
ORゲート(211)と第1のNANDゲート(221)はいずれも、入力として回路の第1入力(201)と第2入力(202)を受け取る。第2のNANDゲート(222)は、その入力の1つとしてORゲート(211)の出力(241)を、その第2入力として回路(200)の最終出力(250)のフィードバック信号を受け取る。
第3のNANDゲート(223)は、その入力の1つとして第1のNANDゲート(221)の出力(242)を受け取り、その第2入力として第2のNANDゲート(222)の出力(243)を受け取る。第3のNANDゲート(223)の出力(244)は、回路(200)の最終出力(250)を生成する。
回路(200)は、次式で定義することができる。

数3:第2の実施形態の論理式
ここで、xとxは、それぞれ回路の第1入力と第2入力であり、yは、回路の出力である。数3をド・モルガン(De Morgan)の定理を適用して変形することにより、数3は、数2と同じ結果となることが理解されるであろう。
さらに、第2の実施形態(200)の回路のトランジスタの総数は、第1の実施形態(100)の数よりも少ない。前述したように、非反転ゲートの実装には、少なくとも6つのトランジスタが必要であるが、反転した対応品では、4つのトランジスタしか必要としない。したがって、第1の実施形態の回路(100)が24のトランジスタを必要とするのに対し、第2の実施形態の回路(200)では18個である。
本発明の第3の実施形態を図3に示す。この回路(300)もまた4つの2入力論理ゲート、すなわち2つのNANDゲート(311、312)と1つのNORゲート(321)と1つのORゲート(322)を含む。したがって、2入力論理ゲートの3つは、反転ゲートであり、2入力論理ゲートの1つは、非反転ゲートである。
この回路(300)の端子にもまた、第1入力(301)、第2入力(302)及び最終回路出力(350)がある。第1入力(301)と第2入力(302)は、先行する回路又はサブ回路の出力とその冗長又は複製インスタンスをそれぞれ受け取るように構成されている。
NORゲート(321)と第1のNANDゲート(311)はいずれも、入力として回路の第1入力(301)と回路(300)の最終出力(350)のフィードバックを受け取る。第2入力(302)は、1入力NOTゲート(303)で反転される。この反転信号(341)は、NORゲート(321)の出力(342)と共にORゲート(322)への入力となる。
ORゲート(322)の出力(343)と、NANDゲート(311)の出力(344)が第2のNANDゲート(312)の2つの入力として提供される。この第2のNANDゲート(312)の出力が回路(300)の最終出力(350)を与える。
回路(300)は、次式で定義することができる。

数4:第3の実施形態の論理式
ここで、xとxは、それぞれ回路の第1入力と第2入力であり、yは、回路の出力である。数4をド・モルガン(De Morgan)の定理を適用して変形することにより、数4は、数2と同じ、従って数3とも同じ結果となることが理解されるであろう。
さらに、この実施形態には、追加のNOTゲート(303)が含まれるが、このNOTゲート(303)は、1入力ゲートである。したがって、この回路にも4つの2入力論理ゲートのみが含まれる。
本発明の回路構造は、SETを軽減するためにメモリ素子の出力に使用されてもよい。実施形態はさらに、二重モジュール冗長性形式でのSEU軽減のためにメモリ素子出力に使用されてもよい。それは両方のメモリ素子において論理値に変化がある場合にしか出力が変化しないからである。
実験結果
南アフリカ共和国のケープタウンにあるiThemba研究所のAライン散乱チャンバを利用したセパレートセクタサイクロトロン(SSC)施設において陽子ビームテストを行った。66MeVの単一陽子エネルギを使って、本発明の特定の実施形態のSET及びSEU抑制能力のテスト及び検証を行った。60MeVの上下での陽子エネルギの分布が空間的に等しいので、60Mevに近いエネルギはテスト目的に対しては有効であると考えられる。
被試験デバイス(DUT)として、PQ208パッケージにM1A3PE1500 Cortex−M1コアを有する、Microsemi(登録商標)社のProASIC3E FPGAデバイスを使用して、いくつかのシーケンシャル回路設計をテストした。回路は、Synplify Pro(登録商標)E−2010 FPGA合成ソフトウェアで合成された。すべての設計は、Microsemi(登録商標)Place and Route Designer V.91 SP3を用いてDUT上に物理的にマッピングした。
DUTのリソース、並びに制御及びモニタリングボードは、相互に自律的に動作しつつ、同じFPGA上に同時に複数の設計の実現を可能とした。これらの設計は、テスト回路1〜7の7つのサブ設計からなり、テスト回路1は、軽減なしの回路として構成し、テスト回路2〜7は、上記の第1の実施形態を使用した様々な軽減法の組合せ、並びに従来のTMR多数決回路で構成された。
図4〜図10に示すように各回路の実装は三重に合成され、各出力をコントローラボードで比較した。出力同士の違いをすべてSEUとしてカウントした。
テスト回路1(400)を対照テストとして使用した。これはSEU抑制回路を持たない直列接続された64個のシフトレジスタ回路(401)と、リセット信号(420)とラッチ信号(430)を有するラッチ(402)とから構成された。
テスト回路2(500)は、組合せ論理のSEU保護なしの、直列接続された64個のシフトレジスタ回路(501)で構成された。ただし、共通のリセット信号(520)とラッチ信号(530)を有するラッチ(502、503、504)にローカルTMRが付与され、かつ1つの多数決回路(505)を有する。
テスト回路3(600)は、組合せ論理のDMR保護(601)を有する、直列接続された64個のシフトレジスタ回路から構成された。テスト回路3(600)にはさらに、組合せ論理(601)と、共通のリセット信号(620)とラッチ信号(630)を持ち、かつ1つの多数決回路(605)を有する、ラッチ(602、603、604)に設けられたローカルTMRとの間に挿入された1つのSET抑制回路(610)が含まれた。
テスト回路4(700)は、組合せ論理(701)のDMR保護を有する、直列接続された64個のシフトレジスタ回路から構成された。SET抑制回路(710、711、712)が、共通のリセット(720)信号とラッチ信号(730)を有する各ラッチ(702、703、704)の前に挿入され、2つの多数決回路(705、706)を有するローカルTMRが次段のDMRユーザロジックの入力に対して設けられた。
テスト回路5(800)は、リセット信号(820、821、822)とラッチ信号(830、831、832)を三重化する変更を行った、テスト回路4(700)の複製である。
テスト回路6(900)は、完全な三重モジュール冗長性の実装形態である。
テスト回路7(1000)は、ラッチ(1002、1003)のDMR保護を有する、直列接続された64個のシフトレジスタ回路(図示せず)からなる。SEU抑制回路(1010)は、ラッチ(1002、1003)の後ろに挿入されている。
テストの間、各テスト回路の入力は、10kHzのチェッカーボードデータフォーマットでロードされた。
各テスト回路は、VHDLで記述され、組合せ設計では構造要素として使用された。そうして、完全な設計のVHDL生成のアルゴリズムは、C++言語でコード化された。このアルゴリズムは100%に近いDUTリソースを満たすテスト回路レプリカの数の特定に役立った。
下の表1は、テスト回路1〜7で行った陽子ビームテストの結果を示す。

表1:テスト回路1〜7での陽子ビームテストの結果
後続のテストにおいて、ビデオグラフィックアレイ(VGA)アルゴリズムのいくつかのバージョンもDUTに実装された。宇宙からの画像を撮影する衛星に搭載のカメラを含め、カメラは、VGA法を使用して写真を撮影し、表示することが多い。したがって、VGA法は、宇宙環境においては実際的な用途がある。
異なるテストの実装には、軽減法を持たないVGAコントローラを備える標準VGAと、メモリ要素のローカルTMRと従来型の多数決回路とを有するVGAコントローラを備えるVGA TMRと、テスト回路7のレイアウトと同様の、出力がSEUフィルタに接続されたメモリ要素のDMRを有するVGAコントローラを備えたVGA DMRと、が含まれる。
VGAコントローラは動作のために5つの入力を必要とする。すなわち、赤と緑と青(RGB)、並びにクロックとリセットである。テストの間、RGB信号は論理レベル「1」に維持された。VGAコントローラのクロックは、正常な動作をするためには25MHzでなければならない。これは別のコントロールボードで生成された。
下の表2は、VGAテスト回路で行った陽子ビームテストの結果を示す。

表2:VGAテスト回路で行った陽子ビームテストの結果
実験結果は、テスト回路に実装された様々な軽減方式に対して有望な結果を示した。
テスト回路1(400)は、すべてのテスト回路の中で最も高いビットあたりの断面積を示した。これは実際予想通りであり、テスト回路1は、一番近い競合相手に対して10倍のビット当たり断面積である。
テスト回路2(500)は、すべてのラッチがローカルTMRで保護されていたので、軽減設計のないテスト回路1(400)よりも低いビット当たり断面積であることが予想された。しかし、ユーザロジックが保護されていなかったために、実際には、SETのメモリ要素への伝播が予想された。テスト回路1(400)に比べると、結果として大部分のSEE効果は、ラッチ(502、503、504)に直接当たる粒子によることを示している。
テスト回路3(600)では、ユーザロジックは、SETに対して保護されていたが、この回路は、フィルタに影響するSETをまだ受けやすかった。ただし、DMRとSETフィルタ(610)の導入により、テスト回路2(500)に比べてビットあたりの断面積が実際に低下した。
テスト回路4(700)は完全なSETとSEUの保護を提供することが順当には期待されたが、共通のリセット信号とラッチ信号は保護されなかった。そしてこれが、同じFPGAバンクにあるユーザIOと共に唯一のエラー源であるために、SETは未だラッチ(702、703、704)に影響を及ぼすことが可能であった。にもかかわらずテスト回路4(700)は、テスト回路3(600)よりも実際に低いビットあたりの断面積を示した。
三重化された包括的なラッチとリセット信号を有するテスト回路5(800)を、グローバル信号上のエラーが断面積に重大な影響を与えるかどうかのテストに使用した。実際にテスト回路5(800)は、テスト回路4(700)に比べて66MeVで断面積が7倍の減少を示した。そして断面積の小さい唯一の完全なグローバルTMRであって、ビットあたりの断面積が2番目に小さかった。
テスト回路6(900)は、すべての設計の中で最小のビット当たりの断面積を示した。完全なグローバルTMRは最も強力な軽減方式であるので、この結果は予想された。ただし、完全なグローバルTMR設計は一般的に同一回路に対して最も大きなデバイスリソースを占める。その他のテスト回路のように、ユーザIOには保護がなされておらず、それが唯一の潜在的エラー源である。
テスト回路7(1000)はテスト回路5(800)及びテスト回路6(900)と同じような断面積を有する。これは、SEUフィルタ(1010)がTMRメモリ構成の多数決回路と同様の効果を有することから、予想されたものである。
VGAコントローラについては、非軽減設計よりもTMR実装がより良い性能を示した。VGA DMR実装が、陽子の照射下でVGR TMRと同様の性能を示し、非軽減コントローラよりもSEU断面積が10倍優れていた。ただし、この場合にも、ユーザロジックと共にグローバルクロック信号とクリア信号、及びFPGA IOは保護されていなかった。VGA DMRがVGA TMR実装と同様の断面積を有することは驚くことではない。SEU誘起粒子の観点からは、2つの回路に差はない。
したがって本発明は、実験結果から明らかなように、デジタル電子回路におけるSET又はグリッチを抑制するための回路構造を提供し、これは以前のMuller C実装よりも少ない論理ゲート数で実装される。
図11は、デジタル電子回路におけるSET又はグリッチを抑制する方法のフロー図である。第1入力としてデジタル電子回路の出力が取り込まれ(1102)、このデジタル電子回路の冗長又は複製出力が第2入力として取り込まれる(1104)。第1入力と第2入力が、AND、OR、NAND及びNORゲートから選択される2つの異なる種類の2入力ゲートを4つのみ備える論理回路構造へ入力される(1106)。4つの2入力ゲートは、最終回路出力が第1入力のみ又は第2入力のみの論理レベルの変化に影響されず、かつ最終回路出力は、第1入力と第2入力の論理レベルが一致するとき、第1入力と第2入力の論理レベルと等価であるように構成されている。
本明細書及び特許請求の範囲を通して、コンテンツが別途要求しない限り、「含む」又は「含んでいる」、「含まれた」などの変形は、記述された整数又は整数群を含み、他の任意の整数又は整数群を排除するものではないことは理解されるであろう。

Claims (9)

  1. デジタル電子回路におけるシングルイベントトランジェント(SET)又はグリッチを抑制するための回路構造であって、
    デジタル電子回路の出力を受け取る第1入力と、
    前記デジタル電子回路の冗長又は複製出力を受け取る第2入力と、
    AND、OR、NAND及びNORゲートから選択される2つの異なる種類の2入力ゲートを4つのみと、
    を備え、
    前記4つの2入力ゲートは、最終回路出力が前記第1入力のみ又は前記第2入力のみの論理レベルの変化には影響されず、前記第1入力と前記第2入力の前記論理レベルが一致する場合、前記最終回路出力が前記第1入力及び前記第2入力の前記論理レベルと等価となるように構成されている、
    回路構造。
  2. 前記4つの2入力ゲートは、2つのANDゲートと2つのORゲートからなり、
    第1のANDゲートと第1のORゲートとは、いずれも入力として前記第1入力と前記第2入力を受け取り、
    前記第1のORゲートは、出力として第1出力を有し、前記第1のANDゲートは、出力として第2出力を有し、
    第2のANDゲートは、入力として前記第1出力と前記回路の前記最終出力を受け取り、出力として第3出力を有し、
    第2のORゲートは、入力として前記第2出力と第3出力を有し、出力として前記最終出力を有する、
    請求項1に記載の回路構造。
  3. 前記4つの2入力ゲートは、3つの反転ゲートと1つの非反転ゲートとを含む、請求項1に記載の回路構造。
  4. 前記3つの反転ゲートは、NANDゲートであり、前記非反転ゲートは、ORゲートであり、
    前記ORゲートは、前記第1入力と前記第2入力を受け取り、第1出力を有し、
    第1のNANDゲートは、前記第1入力と前記第2入力を受け取り、第2出力を有し、
    第2のNANDゲートは、前記第1出力と前記最終回路出力を受け取り、第3出力を有し、
    第3のNANDゲートは、前記第2出力と前記第3出力を受け取り、出力として前記最終回路出力を有する、
    請求項3に記載の回路構造。
  5. 前記3つの反転ゲートは、2つのNANDゲートと1つのNORゲートであり、
    前記非反転ゲートは、ORゲートであり、
    第1のNANDゲートと前記NORゲートとは、いずれも入力として前記第1入力と最終回路出力とを受け取り、
    前記第1のNANDゲートは、出力として第1出力を有し、前記NORゲートは、出力として第2出力を有し、
    前記ORゲートは、入力として前記第2出力と反転された第2入力を受け取り、出力として第3出力を有し、
    第2のNANDゲートは、入力として前記第1出力と第3出力を有し、出力として前記最終回路出力を有する、
    請求項3に記載の回路構造。
  6. デジタル電子回路におけるシングルイベントトランジェント(SET)又はグリッチを抑制するための方法であって、
    第1入力としてデジタル電子回路の出力を受け取り、
    第2入力として前記デジタル電子回路の冗長又は複製出力を受け取り、
    AND、OR、NAND及びNORゲートから選択される2つの異なる種類の2入力ゲートを4つのみ備える論理回路構造に、前記第1入力と前記第2入力を入力する、
    ことを含み、
    前記4つの2入力ゲートは、最終回路出力が前記第1入力のみ又は前記第2入力のみの論理レベルの変化に影響されず、前記第1入力と前記第2入力の前記論理レベルが一致する場合、前記最終回路出力が前記第1入力と前記第2入力の論理レベルと等価となるように構成されている、
    方法。
  7. 2入力ゲートを4つのみ備える論理回路構造に前記第1入力と前記第2入力を入力するステップは、
    前記第1入力と前記第2入力を第1のANDゲートに入力し、
    前記第1入力と前記第2入力を第1のORゲートに入力し、
    前記第1のORゲートの出力と最終回路出力を受け取り、それらを第2のANDゲートに入力し、
    前記第2のANDゲートの出力と、前記第1のORゲートの出力を受け取り、かつそれらを第2のORゲートに入力し、
    前記第2のORゲートの出力を前記最終回路出力として受け取る、
    ことを含む、請求項6に記載の方法。
  8. 2入力ゲートを4つのみ備える論理回路構造に前記第1入力と前記第2入力を入力するステップは、
    前記第1入力と前記第2入力を第1のNANDゲートに入力し、
    前記第1入力と前記第2入力をORゲートに入力し、
    前記ORゲートの出力と最終回路出力を受け取り、かつそれらを第2のNANDゲートに入力し、
    前記第2のNANDゲートの出力と、前記第1のNANDゲートの出力を受け取り、それらを第3のNANDゲートに入力し、
    前記第3のNANDゲートの出力を前記最終回路出力として受け取る、
    ことを含む、請求項6に記載の方法。
  9. 2入力ゲートを4つのみ備える論理回路構造に前記第1入力と前記第2入力を入力するステップは、
    前記第1入力と前記最終回路出力をNORゲートに入力し、
    前記第1入力と前記最終回路出力を第1のNANDゲートに入力し、
    前記第2入力を反転させ、
    前記NORゲートの前記出力と前記反転した第2入力とを受け取り、それらをORゲートへ入力し、
    前記第1のNANDゲートの出力と前記ORゲートの出力を受け取り、それらを第2のNANDゲートに入力し、
    前記第2のNANDゲートの前記出力を前記最終回路出力として受け取る、
    ことを含む、請求項6に記載の方法。
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