JP2019518081A - 環境侵襲によるヒト皮膚バリアダメージを軽減するためのナンキョクコメススキ抽出物の使用 - Google Patents

環境侵襲によるヒト皮膚バリアダメージを軽減するためのナンキョクコメススキ抽出物の使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、環境侵襲により引き起こされるヒト皮膚バリアダメージを軽減するための、ならびに損なわれたバリア機能に関連する障害を予防および/または寛解するためのナンキョクコメススキ(EDA)抽出物の使用に関する。

Description

本発明は、化粧品または皮膚科学の分野に関する。より詳細には、本発明は、環境侵襲により引き起こされるヒト皮膚バリアダメージを軽減するための、ならびに関連する障害を予防および/または寛解するためのナンキョクコメススキ(Deschampsia antarctica)(EDA)抽出物の治療用または化粧用の使用に関する。
大気汚染は、世界的に懸念が高まっているものである。特に都市部において、長年にわたり大気汚染レベルが上昇し、それが皮膚に大きな影響を及ぼしている。また、気候のアンバランスも皮膚に悪影響を及ぼすことが知られている。
皮膚は、表面からに体深部に向かって、表皮、真皮、皮下組織の3つの重ねられた層から構成されている。
表皮は上皮であり、これは通常、形態学的および組織学的な基準に従って4つの層に分けることができ、これらの層は最深層から最外層に向かって、基底層、有棘層(深表皮を形成)、顆粒層(表面表皮)、角質層(corneal layer)(または角質層(stratum corneum))である。表皮は外部環境と接触している。
皮膚、主に表皮の上層は、外部からの攻撃、特に化学的な攻撃、機械的な攻撃、または感染性の攻撃に対するバリアとなっており、それゆえに、環境要因(気候、紫外線、汚染物質など)および/または生体異物(例えば、微生物など)に対する防御反応の多くがそこで起こることになる。この特性は、バリア機能とも言われ、表皮の最表面層、すなわち角質層(角層とも称される)によって主にもたらされる。
したがって、外部からの攻撃、例えば、刺激物(洗剤、酸、塩基、酸化剤、還元剤、濃縮溶剤、有毒ガス、または煙)、機械的ストレス(摩擦、衝撃、摩耗、表面の断裂、ダストまたは他の粒子の放出、剃毛または脱毛)、気候のアンバランス(低温、高温、風、乾燥、放射)、もしくは生体異物(有害微生物、アレルゲン)があるか、または内部からの攻撃(例えば、心理的ストレス)があると、皮膚バリアに好ましくない変化が生じ得る。例えば、都市汚染が皮膚バリア機能に及ぼす影響について報告されており(Pan TL, Wang PW, Aljuffali IA, Huang CT, Lee CW, Fang JY.The impact of urban particulate pollution on skin barrier function and the subsequent drug absorption.J Dermatol Sci. 2015 Apr;78(1):51-60)、あるいは、全般的に皮膚の健康に関して報告されている(Mancebo SE, Wang SQ.Recognizing the impact of ambient air pollution on skin health.J Eur Acad Dermatol Venereol. 2015 Dec;29(12):2326-32)。特に、アトピー性皮膚炎(AD)の場合について、Ahnは、周囲のたばこの煙、粒子状物体などの種々の大気汚染が、皮膚に酸化ストレスを誘発できるために、どのようにADの発症または悪化のリスク因子として働き、皮膚バリア機能不全または免疫調節異常を招くのかについて概説している(Ahn K. The role of air pollutants in atopic dermatitis.J Allergy Clin Immunol. 2014 Nov;134(5):993-9; discussion 1000)。
皮膚バリアにおけるこの好ましくない変化によって、特に、皮膚の不快感、感覚現象、詳細には不快な現象がもたらされ得るか、または同様に、特にわずかな水分喪失により測定できる皮膚の乾燥がもたらされ得る。その場合、皮膚の不快感を、例えば、ひりひり感、圧迫感、こわばり感、炎症および/またはかゆみといった症状のうちのいくつかを伴って感じることがある。これらの皮膚の不快感は、特に手、足、顔および頭皮などの身体の最も露出される領域で発生頻度が高い。
角質層の機能のうちの1つは、表皮に含まれている水分を吸収し、保持することであり、その構造および/またはその機能のいかなる障害も、皮膚の水和に変化をもたらすことで、経表皮の水分喪失を増加させる場合がある。そして、過剰な乾燥皮膚は、皮膚バリア機能の低下と、アトピー性皮膚炎などの皮膚バリア障害の発生とをもたらし、バリア特性を低下させ、環境ストレスからのダメージを増加させるという悪循環に陥ることがある。
皮膚バリア不全は、様々な原因が関与し得る複雑な状態であることが知られているが、保湿剤または軟化剤が最もよく使用される治療剤であり、これらは乾燥皮膚の悪循環を断ち、皮膚の滑らかさを維持することが幾分かはできるものである。
しかしながら、化粧品および製薬市場では、皮膚バリア機能を高め、環境侵襲および乾燥に対する保護を促す新規な解決法が依然として必要とされている。
ナンキョクコメススキ(Deschampsia antarctica Desv.)(イネ科)は、南極に自生する唯一の天然イネ科植物である。主に、南極半島とその沖合の島に分布している。この植物は、極めて厳しい気候の中で生存するため、この植物由来の耐凍性の遺伝子を探索することを目的に科学者の関心を惹きつけている。さらに、ナンキョクコメススキは、その酵素系の保護に起因して、日光に過剰に曝される状況で光阻害を起こすことがないという特別な能力を有するが、これは種々の作用剤(抗酸化剤、「リフォールディング」調整剤、デヒドリンなど)によって機能するものである(Perez-Torres E, Garcia A, Dinamarca J, Alberdi M, Gutierrez A, Gidekel M, Ivanov AG, Huner NPA, Corcuera LJ, Bravo L. The role of photochemical quenching and antioxidants in photoprotection of Deschampsia antarctica. Funct Plant Biol 2004, 31: 731-741)。
国際公開第2009064480A1号には、ナンキョクコメススキ(EDA)抽出物の抗腫瘍性作用が開示されており、この抽出物は癌患者を治療するための錠剤およびペレット剤の組成物に製剤化することができる。
国際公開第2010086464A1号には、UVAおよびUVBの放射に対する皮膚の光防護用の新規作用剤として、EDAを使用することが報告されている。国際公開第2011009977A2号には、皮膚病変の予防に、特に、紫外線放射への暴露に起因する非黒色腫性皮膚癌の予防にEDAを使用することが提案されている。さらに最近では、国際公開第2013084193A2号が、紫外線放射によって誘発される光老化および癌の予防における抽出物の治療効果に関して示している。
上述の先行技術文献では、EDAが持つ皮膚に対しての有益な作用が、主に、その抗酸化作用、抗炎症作用および光防御作用によるものであることを前提としている。しかし、発明者らの知る限りでは、損なわれたバリア機能に関連する障害を引き起こすかまたは悪化させる可能性がある、UV放射とは無関係の環境侵襲に対しての、皮膚保護剤としてのEDAの性能については、どの先行技術文献も開示していない。
環境侵襲により引き起こされる皮膚へのダメージを軽減するための、ならびに関連する皮膚バリア障害を予防および/または寛解するための新規な解決法が必要とされている。
本発明の目的は、これらの必要性を満たすことである。
本発明は、環境侵襲の影響により生じ得るヒト皮膚バリアへのダメージを軽減するための、ナンキョクコメススキ(EDA)抽出物の新規な使用に関するものであることから、本発明は上述の必要性に対処するものである。詳細には、本発明の発明者らは特に、EDAが、皮膚乾燥、浸透ストレスおよび熱ストレス、ならびに種々の一般的な大気汚染に対するヒト皮膚細胞の顕著な保護作用を示すことを見出した。
本発明の文脈において、気候のアンバランスまたは汚染物質などの環境侵襲の影響を受けるか、または受ける可能性があり、このため皮膚の不快感または皮膚の乾燥を呈する傾向にある健康な皮膚に適用するものとして、EDAを使用することができる。他の特定の場合には、皮膚バリアにおいて病的不全の臨床症状が既に見られる場合に、EDAを皮膚に適用することができる。
したがって、本発明の一態様は、環境侵襲により引き起こされるヒト皮膚バリアダメージを軽減するための、EDAの非治療用途または化粧用途に関する。
別の態様によると、本発明は、ヒト皮膚バリア障害および関連する症状の寛解および/または予防に使用するためのEDAに関する。
別の態様によると、本発明は、環境侵襲により引き起こされるヒト皮膚バリアダメージを軽減すること、ならびに/または皮膚バリア障害および関連する症状を予防および/もしくは寛解することを目的した組成物の調製に、EDAを使用することに関する。
別の態様によると、本発明は、環境侵襲により引き起こされるヒト皮膚バリアダメージを軽減するための方法であって、それを必要とする対象にEDAの有効量を投与することを含む方法に関する。
別の態様によると、本発明は、ヒト皮膚バリア障害および関連する症状を寛解および/または予防するための方法であって、それを必要とする対象にEDAの有効量を投与することを含む方法に関する。
本発明のさらなる態様は、環境侵襲により引き起こされるヒト皮膚バリアダメージを軽減すること、ならびに/または皮膚バリア障害および関連する症状の治療および/もしくは寛解に使用することを目的とした組成物であって、生理学的に許容される媒体中にEDAの有効量を含む組成物に関する。
これらの態様およびその好ましい実施形態は、さらに特許請求の範囲においても定義される。
EDAでの前処理が脱水に起因する皮膚線維芽細胞の細胞死に及ぼす影響に関して、実施例1で得られた結果を示す。 EDAでの前処理が高浸透圧ショック(スクロース0.3M)に起因する皮膚線維芽細胞の細胞死及ぼす影響に関して、実施例1で得られた結果を示す。 EDAでの前処理が、続いてたばこの煙に曝される皮膚線維芽細胞の細胞生存率に及ぼす影響に関して、実施例3で得られた結果を示す。 EDAでの前処理が、続いてたばこの煙に曝される皮膚線維芽細胞の細胞生存率に及ぼす影響に関して、実施例3で使用される6ウェルプレートを示す。 EDAでの前処理が、続いてたばこの煙に曝される皮膚線維芽細胞の細胞形態に及ぼす影響に関して、実施例3で得られた結果を示す(A:たばこの煙に曝された細胞、B:EDAで前処理され、たばこの煙に曝された細胞)。 EDAでの前処理が、続いてたばこの煙に曝されるケラチノサイト(細胞株HaCaT)の細胞生存率に及ぼす影響に関して、実施例3で得られた結果を示す。 Cd(II)への暴露が皮膚線維芽細胞の細胞死に及ぼす影響に関して、実施例4で得られた結果を示す。 EDAでの前処理が、Cd(III)への暴露に起因する皮膚線維芽細胞の細胞死に及ぼす影響に関して、実施例4で得られた結果を示す。 Cr(III)およびCr(VI)への暴露が皮膚線維芽細胞の細胞死に及ぼす影響に関して、実施例4で得られた結果を示す。
皮膚は外部環境と接しており、過酷であることが多い外界環境からの防御の第一線であり、半透性の表皮バリアが水分の逃げと感染性物質または有害物質の侵入との両方を防いでいる。
多くの人が皮膚バリアに欠陥を持つ遺伝的素質を有する。同様に、気候の状態や大気汚染への暴露などの外的要因によって皮膚バリア機能が損なわれ、その結果、皮膚バリア障害を引き起こすか、または悪化させる場合がある。実際のところ、皮膚バリアのダメージに関連するこれらの障害の真の原因は正確には分かっていないが、遺伝的要因(家系特有)と環境的要因との両方によって引き起こされる可能性がある。特に、環境侵襲(汚染、受動喫煙など)によって、過去数年間にわたって皮膚バリア不全(乾燥皮膚、アトピー性皮膚など)のケースが著しく増加するようになり、都市部に住む人々がこの疾患にかかり易いと考えられている。
医師と消費者の両者は、気候アンバランス(例えば、低温、高温、風)および化学的大気汚染物質(例えば、煙、重金属、多環芳香族炭化水素(PAH)、揮発性有機化合物(VOC)、酸化物、粒子状物質(PM)およびオゾン(O))が皮膚に及ぼし得るダメージの影響について一層懸念しており、それゆえに、これらの侵襲物から皮膚を保護するために、効果的に皮膚を保護する方法が必要とされている。
皮膚バリア機能の障害によって、角質層の完全性が変化し、その結果として経表皮の水分喪失が増えることが多い。したがって、バリア機能障害と皮膚の乾燥とは密接に相関している。
皮膚バリア障害は、一般的に、皮膚、あるいはより詳細には表皮、特に角質層が正常のバリア機能を示していない状態として定義され得る。皮膚の変質は、単に、健康的ではあるが病的状態とみなされている皮膚における軽微の審美的変化および/または皮膚不快感もしくは皮膚乾燥を知覚することである場合がある。皮膚バリア障害の具体的な例として、乾燥皮膚、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎などがある。
乾燥皮膚は、乾皮症とも呼ばれ、極めて一般的な皮膚の異常である。乾燥皮膚は、ざらざらとしており、鱗屑で覆われているように見え、本質的には緊縮性および/または張力を知覚することで現れるものである。
乾燥皮膚は、実際には落屑障害を伴い、この落屑の重症度に応じて種々の段階がある。皮膚がわずかに乾燥している場合、鱗屑が豊富にあるが、肉眼にはあまり見ることができず、剥離が角質細胞毎に起きている。この障害が悪化した場合に、かなりとびとびではあるが肉眼に見えてくるようになり、こうした斑は数百の角質細胞を含む場合があるため、鱗屑として知られる多少大きい班を現すようになる。
皮膚の乾燥を患う皮膚は、一般的に以下の症状、つまりざらざらおよびかさかさする症状、ならびに柔軟性および弾力性も低下している症状を示している。起点となる乾燥の出現、ならびにしわおよび小じわの形成を明らかにした研究もあり、現に、視覚的に乾燥皮膚はこうしたしわおよび小じわをより顕著にする。
さらに、知覚上の観点からは、皮膚乾燥は緊縮性および/またはかゆみを知覚することによって特徴付けられる。明らかに、これらの発現は、不快感またはさらに痛みの源となるだけでなく、非審美的な外観の源にもなる。
この乾燥の原因には、体質性タイプまたは後天性タイプがあり得る。後天性の乾燥皮膚の場合には、化学物質、厳しい気候状態、日光、またはその他特定の治療上の処置(例えばレチノイド)への暴露などの外部パラメータの関与が決定因子となる。これらの外部の影響下では、表皮が直ちにかつ局所的に乾燥する場合がある。このことは、任意のタイプの表皮に関わり得るものである。
現に、皮膚は、環境的因子、心理的因子およびホルモン因子によって乾燥する傾向があると知られている。特に、汚染は、工業化と大気中への大量の化合物の放出とにより、世界的に懸念が高まっているものである。これらの有毒成分は、皮膚表面に付着し、角質層の完全性を乱す。これは、水和の減少などの多くのダメージをもたらす。寒気または風などの気候状態も皮膚乾燥を促進するとして知られている。
ますます増加している危険な環境的因子の観点から、現在では、皮膚は十分に保湿し、皮膚の萎れや乾燥を招くことになる水分喪失を被らないことが重要である。したがって、皮膚の乾燥を治療および予防することは、治療上の観点だけでなく、審美的観点からも必要不可欠になっている。
アトピー性皮膚炎(AD)は、アトピー性湿疹とも称され、皮膚が乾燥し、容易に刺激され、アレルゲンに反応し易く、典型的にはうろこ状であり、肥厚していることが多く、通例赤色であり、時折滲出性であり、感染していることが多く、とりわけかゆみを伴う皮膚の慢性疾患である。工業先進国では、小児期の有病率は人口の15パーセント〜30パーセントであり、成人の有病率は人口の2パーセント〜10パーセントである。アトピーは、強い遺伝的要素を示すように思われるが、他の皮膚バリア障害に関するように、アトピーの発症にも環境侵襲が重要な役割を果たすと考えられている。
本発明の発明者らは、ヒト皮膚バリア機能を高めるために、より詳細にはUV放射由来ではない環境侵襲および皮膚乾燥に対する皮膚保護剤として、ナンキョクコメススキ(EDA)の抽出物を有益に用いることができることを見出した。
有利なことには、EDAは、太陽からまたは人口光源からのUV放射(例えば、UVA放射およびUVB放射)を含まない環境侵襲であって、ヒト皮膚バリア機能に影響を及ぼし、皮膚乾燥をもたらし得る環境侵襲に対する保護を提供する。これらの要因としては、大気汚染、特に化学的大気汚染物質(例えば、煙(たばこの煙など)、重金属(ヒ素、カドミウム、クロムなど)、多環芳香族炭化水素(PAH)、揮発性有機化合物(VOC)、酸化物、粒子状物質(PM)およびオゾン(O))への暴露およびUV放射以外の気候状態(浸透圧ショック、低空気湿度、環境上の熱ストレスなど)が挙げられる。
本発明におけるEDAは、天然環境から得られる植物から抽出しても、制御された環境で栽培された植物から抽出してもよい。主として、この植物は南極大陸で天然に生長するが、南極大陸は保護のための厳しい規制に制約される領域であり、それを私的に利用すること、したがって商業目的のためにそこでナンキョクコメススキを収穫することは不可能である。このため、その天然の生息地以外で栽培することによって、この植物を得ることが必要になる。
ナンキョクコメススキの抽出物を得る様々な方法が当該技術分野で知られている。例えば、ナンキョクコメススキの抽出物は、本発明者らによって先に確立された、水性の方法を利用する手順によって得ることができる。これは、汚染問題と抽出物から除去することが困難な残渣とを生じさせる有機溶剤を使用しない。したがって、好ましい実施形態によると、抽出物はナンキョクコメススキの水性抽出物である。このように、EDAはナンキョクコメススキから抽出された物質を表す。
特定の実施形態では、この植物から得られる乾燥緑葉(HVS、スペイン語の略語による)をパーコレーターに導入するが、パーコレーターでは水または水性溶媒が、温度と抽出時間を制御した条件下で循環している。続いて、本質的に水性であるこれらの抽出物を安定化させ、真空下で乾燥させる。得られた粉末を粉砕し、ふるいにかける。
さらに特定の実施形態では、HVSを、溶媒/HVSの比を約11/1〜60/1として、約2時間〜7時間の間、水または水性溶媒が約30℃〜100℃の温度で循環しているパーコレーターに導入する。液体を採取し、好ましくは約10〜0.45μmのフィルタで濾過した後に、0回〜6回濃縮する。次に、得られた液体を凍結乾燥するか、またはマルトデキストリンもしくはデンプンなどの賦形剤を添加することによって乾燥させ、真空下(約50mbar〜300mbar)で約30℃〜90℃にて乾燥させてもよい。得られた粉末を粉砕し、ふるいにかける。
本発明の文脈では、以下の用語は下記に詳細に示す意味を有する。
本発明の目的のために、「有効量」という表現は、期待された効果、すなわち化粧効果または治療効果が観察されるのに必要な最小量を示すことを意図するものであり、化粧効果または治療効果を得るのに必要な有効量は、必要に応じて、同一であり得るかまたは異なり得ることが理解されるべきである。
用語「対象」は、本明細書で使用される場合、皮膚バリアダメージまたは皮膚バリア障害を患う任意のヒトを表す。したがって、EDAまたはその組成物で処置される皮膚はヒトの皮膚である。
本発明の目的のために、用語「化粧」は、主に審美的効果および/または快適さを与えることを目的とした、使用または組成物などを示すことを意図するものである。
本発明の目的のために、用語「治療」は、病的状態を表すものとして認識される、皮膚の、特に表皮の障害に関して予防効果または治癒的効果を与えることを目的とした、使用または組成物などを示すことを意図するものである。
本発明により提供される使用、方法および組成物は、治療用および/または化粧用であり得る。さらに、規定の枠組みに応じて、本発明によるEDAは、「薬用化粧品」、すなわち化粧品と医薬品の組み合わせ、あるいはより詳細には、医学的利点または薬剤様利点を有すると認識されている少なくとも1つの生物学的に活性な成分を備えた化粧品、という分類下での組成物の調製を対象とすることができる。
本発明のEDAまたはその組成物は、一般的に、ヒトの皮膚および/または頭皮の一般的症状を改良すること、特に環境侵襲によって引き起こされるヒト皮膚バリアダメージを軽減すること、ならびにヒト皮膚バリア障害および関連する症状を予防および/または寛解することを目的とすることができる。
特定の実施形態では、EDAまたはその組成物は、UV放射由来ではない環境侵襲の影響を受けたヒトの皮膚の不快感、不快な現象、または皮膚の乾燥を予防および/または低減することを目的としている。
別の特定の実施形態では、EDAまたはその組成物は、ヒト皮膚バリア障害であって、乾燥皮膚、アトピー性皮膚炎および接触性皮膚炎などから選択される皮膚バリア障害と、関連する症状とを予防および/または寛解することを目的としている。
ヒト皮膚バリア障害に関連する症状は、特にUV放射以外の環境侵襲の作用と皮膚(特に表皮)の脱水とに起因した、皮膚の外観のあらゆる変容(例えば、ざらざらやかさかさした外観および柔軟性の低減)だけでなく、かゆみおよび/または緊縮性などの、引き起こされた知覚または皮膚の不快感を意味することが意図される。いかなる目に見える症候も感知できるとは限らず、これらの知覚は個人個人により感じるものである。
本発明のEDAまたはその組成物は、特に、皮膚の乾燥および/または皮膚の乾燥の状態、特に表皮の乾燥の状態に関連する皮膚障害、より詳細には角質層の水和障害を予防および/または寛解することを目的とすることができる。
本発明のEDAまたはその組成物は、特に、皮膚の張性および/または硬さおよび/または弾力性および/または柔軟性の改善を目的とすることができる。
本発明のEDAまたはその組成物は、特に、皮膚および/もしくは頭皮の細胞の浸透圧バランスを回復および/もしくは向上すること、ならびに/または皮膚および/もしくは頭皮の細胞を浸透圧ショックから保護することを目的とすることができる。
本発明のEDAまたはその組成物は、特に敏感肌を治療することを目的とすることができる。
本発明の組成物は、顔、首、襟足、手、足、頭皮、または任意の他の局所領域に、局所的に適用することができる。したがって、本発明は、有利なことには、必要であるかまたは所望である時にはいつでも、その局所用の適用方法によって、極めて局所的かつ選択的な「穏やかな」治療を行うことができるようにする。
本発明によると、「生理学的に許容される媒体」は、限定されるものではないが、水性溶液、水アルコール溶液、油中水乳剤、水中油乳剤、マイクロエマルション、水性ゲル、無水ゲル、血清、または小胞分散系を意味する。「生理学的に許容される」とは、記載の組成物または化合物が、過度の毒性、不適合性、不安定性およびアレルギー反応などを有することなしに、ヒトの頭皮、髪、毛髪と皮膚に接触した状態での使用に適していることを意味する。
本発明の組成物は、クリーム、ローション、ミルクまたはクリーム軟膏、ジェル、乳液、分散液、溶液、懸濁液、洗剤、ファンデーション、無水調製物(スティック、特にリップクリーム、ボディオイル、バスオイル)、シャワージェルおよびバスジェル、シャンプーおよび頭皮トリートメントローション、皮膚または髪のケア用クリームまたはローション、化粧落とし用ローションまたはクリーム、日焼け止め用ローション、日焼け止め用ミルクまたはクリーム、人工的日焼け用ローション、人工的日焼け用クリームまたはミルク、フォーム、ジェルまたはローション、メイクアップ、肌「エッセンス」、セラム、付着性または吸収性物質、経皮性パッチ、または粉末、軟化用ローション、軟化用ミルクまたはクリーム、スプレー、ボディおよびバス用のオイル、ファンデーション色ベース、ポマード、乳濁液、コロイド、コンパクト懸濁物または固体懸濁物、スプレー可能または刷掃可能な(brossable)薬剤、顔用または身体用パウダー、ムース、肌コンディショナー、保湿剤、ヘアスプレー、石鹸、身体用角質除去剤、収斂剤などの任意の生薬の形態であってもよい。本発明の組成物として、化粧品、パーソナルケア製品、薬用化粧品、医薬品(薬剤)が挙げられる。フォーム形状の組成物、または加圧された噴霧剤を同様に含むエアロゾル用の組成物の形態での組成物を考慮することもできる。
本発明の組成物において、皮膚のバリア機能を補助、改善、または回復し、特に皮膚の水和を高める活性を有するとして既に知られている産物を組み込むことが可能である。したがって、特定の実施形態によると、本発明の組成物は、保湿剤、湿潤剤、密封剤、落屑剤、皮膚バリア機能に作用する作用剤、UVフィルタ、細胞恒常性を調整する作用剤、塗膜形成要素、アクアポリン発現を調整する作用剤、抗老化剤、抗しわ剤、抗酸化剤、抗炎症剤、脱色剤または色素沈着促進剤、セルフタンニング剤、抗糖化剤、NO合成酵素阻害剤、経皮もしくは表皮の高分子合成を刺激するおよび/またはその分解を防止する作用剤、線維芽細胞および/もしくはケラチノサイトの増殖を刺激するかまたはケラチノサイトの分化を刺激する作用剤、抗汚染剤および/または抗ラジカル剤、微小循環に作用する作用剤、妊娠線予防剤、細胞のエネルギー代謝に作用する作用剤、抗にきび剤、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの追加の活性成分をさらに含むことができる。
これらの作用剤の非限定的な例として、ベタイン、グリセロール、Actimoist Bio2(登録商標)(アクティブ・オーガニックス社)、AquaCacteen(登録商標)(ミベールAGコスメティック社)、Aquaphyline(登録商標)(シラブ(Silab)社)、AquaregulK(登録商標)(ソラビア(Solabia)社)、Carciline(登録商標)(グリーンテック社)、Codiavelane(登録商標)(バイオテックマリン社)、Dermaflux(登録商標)(アーチ・ケミカルズ社)、Hydra’Flow(登録商標)(ソチボ(Sochibo)社)、Hydromoist L(登録商標)(シムライズ社)、RenovHyal(登録商標)(ソリアンス(Soliance)社)、Seamoss(登録商標)(バイオテックマリン社)、Essenskin(登録商標)(セデルマ(Sederma)社)およびMoist24(登録商標)(セデルマ(Sederma)社)がある。
以下の実施例は、EDAでの前処理が、線維芽細胞およびケラチノサイト(バリア機能の生成および維持に不可欠な2つの種類の細胞(Varkey M, Ding J, Tredget EE.Superficial dermal fibroblasts enhance basement membrane and epidermal barrier formation in tissue-engineered skin: implications for treatment of skin basement membrane disorders. Tissue Eng Part A. 2014 Feb;20(3-4):540-52、Lee SH, Jeong SK, Ahn SK. An Update of the Defensive Barrier Function of Skin. Yonsei Medical Journal 2006. 47: 293-306))を、様々な環境侵襲から保護することを説明するものである。これらの実施例は、単に、本発明の特定の実施形態を説明するものであり、何ら制限するものとしてみなされるべきではない。
実施例1−脱水および高浸透圧ショックに対するEDA前処理の保護作用
本実験の目的は、ヒト線維芽細胞におけるナンキョクコメススキ抽出物での前処理が、空気中の水分の欠如または高浸透圧ショックのいずれかに起因して生じる脱水に対して及ぼし得る保護作用を評価することであり、細胞の生存における変化を測定することである。
材料および方法:
−評価した産物:
ナンキョクコメススキ抽出物(EDA):線維芽細胞を用いた実験では、マルトデキストリンで乾燥させたEDA(バッチ番号160215)を用いた。この産物をダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)に濃度10mg/ml(EDA2.1mg/mlに相当)で溶解し、磁気攪拌機で30分間攪拌し、0.2μmの無菌酢酸セルロースフィルタ(Minisart、ザルトリウス社)で濾過した。
−培地および試薬:
フェノールレッドフリーDMEM培地(ダルベッコ変法イーグル培地)(シグマ社)。DMEM培地(シグマ社)。ペニシリン−ストレプトマイシン(シグマ社)。グルタミン(シグマ社)。ウシ胎児血清(シグマ社)。0.25%トリプシン−エチレンジアミンテトラアセテート(EDTA)(シグマ社)。リン酸緩衝食塩水(PBS)。ハンクス液 (以下ハンクスとする)(シグマ社)。スクロース(シグマ社)。グルタルアルデヒド(シグマ社)。クリスタルバイオレット(シグマ社)。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)(シグマ社)。
−線維芽細胞培養:
使用した細胞は、健康な任意の様々なドナーから得られ、かつ液体Nで保存した耳後部皮膚弁の外側部分から単離したヒト皮膚線維芽細胞である。実験では、2mMのグルタミン、50μg/mlのペニシリン、50U/mlのストレプトマイシン、10%のウシ胎児血清が補充されたDMEMを含む培養フラスコで、7%のCOと93%の加湿空気の雰囲気で37℃に保たれているHeraeusオーブン内にて、約90%のコンフルエンスに到達するまで増殖させた細胞を用いた。その後、トリプシン処理により新規処理を行った。実験のために、10個の細胞/mlの初期密度で、平底の96ウェルプレート(ヌンク(Nunc)社)に播種した9回〜11回処理の細胞をそれぞれ使用し、コンフルエンスに到達するまでインキュベータで増殖させた。
−産物での処理:
EDAでの前処理:上述の通りに調製した1ウェル当たり100μlのEDA溶液(または完全DMEMの適切な希釈液)を各プレートの半数に添加し、プレートをインキュベータで約24時間インキュベートした。
脱水:前処理後にプレートをハンクスで2回洗浄し、培地を除去するか、または1ウェル当たり100μlのフェノールレッドフリーのDMEM溶液(対照)を加え、プレートを水分がない状態でインキュベータ内で37℃にて90分間インキュベートした。
高浸透圧ショック:前処理後にプレートをハンクスで2回洗浄し、1ウェル当たり100μlの0.3MスクロースのDMEM溶液(容量オスモル濃度:600mosM)、または1ウェル当たり100μlのフェノールレッドフリーDMEM溶液(対照、容量オスモル濃度:300mosM)を添加し、それらを37℃、7%のCO、93%の加湿空気のインキュベータで6時間インキュベートした。
−細胞生存率の測定:
プレートをハンクスで2回洗浄した。これらを100μlの0.25%グルタルアルデヒドのハンクス溶液で室温にて15分間固定化した。プレートを水で1回洗浄した。これらを2%エタノール溶液中の0.2%クリスタルバイオレット溶液で、37℃にて15分間染色した。プレートを水で洗浄し、細胞を100μlの1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)で溶解した。プレートをプレート攪拌機で慎重に攪拌し、BMG Fluostar Optima分光光度計で550nmの吸光度を読み取った。
−統計解析:
統計解析を各実験に対して行い、各ウェルの値を独立した値とみなし、ExcelまたはGraph Pad Prismを用いたスチューデントのt検定によって有意性を判定した。
結果:
−脱水により引き起こされる細胞死に対するEDA前処理の作用:
以下の表は、異なるドナー由来の線維芽細胞を用いて行った2つの異なる実験結果を示し、図1は両実験の生存率の平均を示している。
Figure 2019518081
Figure 2019518081
これらから分かるように、EDAでの前処理は、脱水により誘発される細胞死に対して有意な保護作用を有する。
−高浸透圧ショックにより引き起こされる細胞死に対するEDA前処理の作用:
以下の表は、異なるドナー由来の線維芽細胞を用いて行った2つの異なる実験結果を示し、図2は両実験の生存率の平均を示している。
Figure 2019518081
Figure 2019518081
これらから分かるように、EDAでの前処理は、高浸透圧ショックにより誘発される細胞死から有意に保護することができる。
結論:
上述の結果により、EDAでの前処理は、脱水および高浸透圧ショックから保護することができることが分かる。
実施例2−環境上の熱ストレスに対するEDA前処理の保護作用
本実験の目的は、不死化ヒトケラチノサイト細胞株HaCaTにおけるナンキョクコメススキ抽出物での前処理が、熱ストレス(低温または高温)対して及ぼし得る保護作用を評価することであり、第一に生存率に関して、第二にミトコンドリア電位に対するその働きに関して、該保護作用を評価することである。
材料および方法:
−評価した産物:
凍結乾燥ナンキョクコメススキ抽出物(EDA)、バッチ番号13E04。この産物を標準緩衝液(以下を参照)に1mg/mlの濃度で直接溶解し、この溶液からの100μlを適用した。
デンプンで乾燥させたナンキョクコメススキ抽出物(EDA)、バッチ番号200314。EDA含有量0.25gEDA/g(産物)。この産物を標準緩衝液に濃度10mg/ml(EDA2.5mg/mlに相当)で懸濁し、磁気攪拌機で30分間攪拌し、0.2μmの無菌酢酸セルロースフィルタ(Minisart、ザルトリウス社)で濾過した。この溶液からの100μlを適用した。
−培地および試薬:
RPMI1640培地(シグマ社)。ペニシリン−ストレプトマイシン(シグマ社)。グルタミン(シグマ社)。ウシ胎児血清(シグマ社)。0.25%トリプシン−EDTA(シグマ社)。リン酸緩衝食塩水(PBS)。評価用標準緩衝液(NaClの80mM、KClの75ml、D−グルコース25mM、(4−(3−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)25mM、pH7.4)。テトラメチルローダミンメチルエステル過塩素酸塩(TMRM)(シグマ社)。カルボニルシアニドm−クロロフェニルヒドラゾン(CCCP)(シグマ社)。グルタルアルデヒド(シグマ社)。クリスタルバイオレット(シグマ社)。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)(シグマ社)。
−細胞培養:
使用した細胞は、不死化ヒトケラチノサイト細胞株HaCaTである。細胞を、蛍光専用の平底のプラスチック96ウェルプレート(ヌンク社)において、2mMのグルタミン、50μg/mlのペニシリン、50U/mlのストレプトマイシン、10%のウシ胎児血清が補充されたRPMIで、5%のCOと95%の加湿空気の雰囲気で37℃に保たれているHeraeusオーブン内にて培養した。細胞を100%コンフルエンスまで増殖した後に処理した。A列とH列は通常、細胞を入れないままとした。
−産物での処理:
熱ストレス実験:培地を除去し、プレートを標準緩衝液100μlで1回洗浄した。100μlのEDA溶液を添加し、プレートを、細胞培養に適した条件下でオーブン内にて37℃で1時間インキュベートした。1つの実験に3つのプレートを用いて、1つは熱的攻撃のない対照用であり、別の1つは低温の熱的攻撃用であり、最後の1つは高温の熱的攻撃用であり、各プレートの半数は対照用に使用され、残りの半数はEDAでの前処理用に使用される。
熱的攻撃:培地を除去し(+/−産物)、プレートを100μlの標準緩衝液で2回洗浄し、1ウェル当たり100μlの標準緩衝液をウェル全体に添加した。対照プレートをインキュベートせず(すなわち、通常条件下のオーブンに保持し)、「低温」プレートをフリーザー内で−20℃または−35℃にて40分間保管し、「高温」プレートをオーブン内で45℃にて2時間、または42℃にて45分間もしくは60分間インキュベートした。標準緩衝液を除去し、プレートを1つのウェル当たり調整済標準緩衝液2×100μlで洗浄し、1つのウェル当たり100μlの調整済標準緩衝液を適用し、プレートを37℃で15分間順応させて、ミトコンドリア電位、続いて細胞生存率を測定した。
−ミトコンドリア電位の測定:
Huangにより説明されたプロトコルに従って行った(Huang SG.Development of a High Throughput Screening Assay for Mitochondrial Membrane Potential in Living Cells. J Biomol Screen 2002, 7: 383-9):プレートを標準緩衝液で2回洗浄し、1つのウェル当たり100μlの標準緩衝液をプレート全体に添加し、1つのウェル当たり10μlのTMRM(1.65μMの標準緩衝溶液からであり、0.8mMのDMSO溶液から即時調製されている)をプレート全体に添加し、1つのウェル当たり10μlのCCCP(0.12mMの標準緩衝溶液からであり、10mMのDMSO溶液から即時調製されている)を対応するウェル(プレートの通常半数)に添加した。このプレートを上述した条件下で15分間インキュベートした。インキュベーションが終了してから、プレートを1ウェル当たり160μlのPBSで4回洗浄した。1ウェル当たり100μlのPBSを添加し、プレートを下側読み取りのBMG Fluostar Optima蛍光リーダーで、530nmの励起フィルタおよび590nmの放射フィルタを用いて読み取った。
−細胞生存率の測定:
プレートをPBSで2回洗浄した。これらを100μlの0.25%グルタルアルデヒド溶液で室温にて15分間固定化した。これらを2%エタノール溶液中の0.2%クリスタルバイオレット溶液で、37℃にて10分間染色した。プレートを水で洗浄し、細胞を1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)で溶解した。プレートをプレート攪拌機で慎重に攪拌し、BMG Fluostar Optima分光光度計で540nmの吸光度を読み取った。
−統計解析:
統計解析を各実験に対して行い、各ウェルの値を独立した値とみなし、ExcelまたはGraph Pad Prismを用いたスチューデントのt検定によって有意性を判定した。
結果
−低温熱ストレス:
a)細胞の生存:
2つの実験からの結果を次の表に示す:
Figure 2019518081
Figure 2019518081
これらから分かるように、低温の熱ストレスは、所定の条件下で細胞生存率の低減をもたらしておらず、EDAの明らかな増殖性効果が確かに観察されている。
より厳しい条件(凍結が生じていた条件)下では、細胞生存率への影響がさらにより有意であり、EDAの保護作用が明確に観察されている:
Figure 2019518081
b)ミトコンドリア電位および補正したミトコンドリア電位:
前述の結果に鑑みて、生存細胞のミトコンドリア電位だけではなく、補正したミトコンドリア電位も計算することを決めたが、後者が生物現象をより表すことができると考慮したためである。以下の表は−20℃の実験で得られた結果を示す:
Figure 2019518081
Figure 2019518081
これらから分かるように、低温によって明らかにミトコンドリア膜電位が減少するが、その減少分はEDAにより回復しており、補正したミトコンドリア電位の場合には、低温によって同様に著しい減少が引き起こされるが、EDAにより明らかな保護傾向が示されている。
さらに過酷な条件でミトコンドリア電位を測定することは不可能である。
−高温熱ストレス:
a)細胞の生存:
結果を次の表に示す:
Figure 2019518081
Figure 2019518081
これらから分かるように、高温(45℃、2時間)によって細胞生存率が著しく減少するが、その減少分はEDAでの前処理により回復している。
細胞生存率のより軽微な減少が穏やかな条件(42℃、45分)で観察されているが、前述した場合と同様にその減少分はEDAでの前処理により回復している。
Figure 2019518081
Figure 2019518081
EDAの作用は、わずかに厳しい条件(42℃、60分)においても同様である:
Figure 2019518081
b)ミトコンドリア電位および補正したミトコンドリア電位:
最初の評価条件(45℃、2時間)では、対照群および評価群でミトコンドリア電位を信頼性高く検出することが不可能である。
より穏やかな条件(42℃、45分)では、EDAは高温によって引き起こされる熱ストレスからミトコンドリア電位を保護する顕著な傾向を持つことが観察されている:
Figure 2019518081
Figure 2019518081
この作用は、わずかに厳しい条件(42℃、60分)においても同様であるが、さらに顕著になっている:
Figure 2019518081
結論:
上述の結果により、EDAでの前処理は、低温および高温の熱ストレスの影響から保護することができることが分かる。
実施例3−環境上の汚染(たばこの煙)に対するEDA前処理の保護作用
本実験の目的は、ヒト線維芽細胞または形質転換ケラチノサイトにおけるナンキョクコメススキ抽出物での前処理が、たばこの煙によって引き起こされる汚染などの環境汚染に対して及ぼし得る保護作用を評価することであり、細胞の生存に対する該保護作用を評価することである。
材料および方法:
−評価した産物:
ナンキョクコメススキ抽出物(EDA):線維芽細胞を用いた実験では、デンプンで乾燥させたEDA(バッチ番号150414)を用いた。EDA含有量0.25gEDA/g(産物)。この産物を完全DMEM培地に濃度10mg/ml(EDA2.5mg/mlに相当)で懸濁し、磁気攪拌機で30分間攪拌し、0.2μmの無菌酢酸セルロースフィルタ(Minisart、ザルトリウス社)で濾過した。ケラチノサイトを用いた実験では、マルトデキストリンに吸着したEDA、バッチ番号160215(乾燥緑葉バッチ番号241114)を用いた。この産物をDMEM培地に濃度10mg/ml(EDA2.1mg/mlに相当)で溶解し、磁気攪拌機で30分間攪拌し、0.2μmの無菌酢酸セルロースフィルタ(Minisart、ザルトリウス社)で濾過した。
Lambらの2012の文献(Lamb DJ, Parker N, Ulrich K, Walsh R, Yeadon M, Evans SM.Characterization of a Mouse Model of Cigarette Smoke Extract-Induced Lung Inflammation.J Pulmon Resp Med 2012, 2:125)に若干変更を伴って即時調製されたたばこ抽出物(CSC):フィルタ付きの巻きたばこ(デュカドス (Ducados)ブランド)を蠕動ポンプの末端に接続し、ポンプを作動させ、巻きたばこに火をつけ、煙を蠕動ポンプにより吸い込み、フェノールレッドフリーDMEM培地(5%CSC)の20mlの入った試験管内で煙を泡にするか、または15ml(50%CSC)中の7.5本の巻きたばこ。各巻きたばこは平均7分間持続した。
−培地および試薬:
フェノールレッドフリーDMEM培地(シグマ社)。DMEM培地(シグマ社)。ペニシリン−ストレプトマイシン(シグマ社)。グルタミン(シグマ社)。ウシ胎児血清(シグマ社)。0.25%トリプシン−EDTA(シグマ社)。リン酸緩衝食塩水(PBS)。ハンクス液 (以下ハンクスとする)(シグマ社)。グルタルアルデヒド(シグマ社)。クリスタルバイオレット(シグマ社)。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)(シグマ社)。
−線維芽細胞培養:
使用した細胞は、健康な任意の様々なドナーから得られ、かつ液体Nで保存した耳後部皮膚弁の外側部分から単離したヒト皮膚線維芽細胞である。実験では、2mMのグルタミン、50μg/mlのペニシリン、50U/mlのストレプトマイシン、10%のウシ胎児血清が補充されたDMEMを含む培養フラスコで、7%のCOと93%の加湿空気の雰囲気で37℃に保たれているHeraeusオーブン内にて、約90%のコンフルエンスに到達するまで増殖した細胞を用いた。その後、トリプシン処理により新規処理を行った。実験のために、10個の細胞/mlの初期密度で、平底の6ウェルまたは96ウェルプレート(ヌンク(Nunc)社)に播種した3回〜6回処理の細胞をそれぞれ使用し、コンフルエンスに到達するまでインキュベータで増殖させた。
−ケラチノサイト細胞培養:
使用された細胞は、不死化ヒトケラチノサイト細胞株HaCaTである。細胞を、平底のプラスチック96ウェルプレート(ヌンク社)において、2mMのグルタミン、50μg/mlのペニシリン、50U/mlのストレプトマイシン、10%のウシ胎児血清が補充されたDMEMで、5%のCOと95%の加湿空気の雰囲気で37℃に保たれているHeraeusオーブン内にて培養した。実験のために、10個の細胞/mlの初期密度で、平底の96ウェルプレート(ヌンク(Nunc)社)に播種した細胞をそれぞれ使用し、コンフルエンスに到達するまでインキュベータで増殖させた。
−産物での処理:
EDAでの前処理:線維芽細胞を用いた実験とケラチノサイトを用いた実験の両方で、上述の通りに調製した1ウェル当たり100μlのEDA溶液を各プレートの半数に添加し、プレートをインキュベータで約20時間インキュベートした。
CSCでの処理:線維芽細胞を用いた実験では、前処理の後にプレートをハンクスで2回洗浄し、上述の通りに調製した1ウェル当たり100μlの5%CSC溶液、または1ウェル当たり100μlのフェノールレッドフリーDMEM溶液を添加し、プレートをインキュベータで3.5時間インキュベートした。
ケラチノサイトを用いた実験では、前処理の後にプレートをハンクスで2回洗浄し、上述の通りに調製した1ウェル当たり100μlの50%CSC溶液、または1ウェル当たり100μlのフェノールレッドフリーDMEM溶液を添加し、プレートをインキュベータで20時間インキュベートした。
示されている量は96ウェルプレート用である。6ウェルプレート(線維芽細胞の場合のみ)に対しては、同じ方法を用いて、量を30倍した。
−細胞生存率の測定:
96ウェルプレートをハンクスで2回洗浄した。これらを100μlの0.25%グルタルアルデヒドのハンクス溶液で室温にて15分間固定化した。プレートを水で1回洗浄した。これらを2%エタノール溶液中の0.2%クリスタルバイオレット溶液で、37℃にて15分間染色した。プレートを水で洗浄し、細胞を100μlの1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)で溶解した。それをプレート攪拌機で慎重に攪拌し、BMG Fluostar Optima分光光度計で550nmの吸光度を読み取った。
同様の方法を6ウェルプレートに用いて、量を30倍にする。この場合、固定化され、染色された細胞を溶解せず、かかる細胞の写真を撮った。また、顕微鏡写真を、FK接眼レンズアダプタによってオリンパスIMT−311倒立顕微鏡に連結されたオリンパスOM−2カメラで撮影し、顕微鏡写真L.A 400 ASA Kodakカラープラスフィルムロール用のアダプタを用いた。
−統計解析:
統計解析を各実験に対して行い、各ウェルの値を独立した値とみなし、ExcelまたはGraph Pad Prismを用いたスチューデントのt検定によって有意性を判定した。
結果:
a)線維芽細胞を用いた実験:
以下の表は、3つの異なる実験の結果を示す。
Figure 2019518081
Figure 2019518081
Figure 2019518081
これらから分かるように、たばこの煙(5%CSC)での処理によって、線維芽細胞の平均生存率が32%低減し、この低減分はEDAで前処理した場合に18%まで下がり、すなわち、たばこの煙によって誘発される死亡率を44%低減させている。
図3は、実験のうちの1つの結果を一例として示している(異なる群間の差異は有意である(p<0.01))。
同じ効果を6ウェルプレートで観察することができる(図4)。
図5は細胞形態における差異を示しており、たばこの煙での処理(A)は、細胞数の減少(より低い密度)に加えて、細胞の極めて乱れた配列、ならびに非紡錘形、異常形の細胞、一部はギザギザ状端の細胞をもたらすことが示されている一方で、EDAで前処理した後にたばこの煙で処理した細胞(B)は、線維芽細胞の特徴的な紡錘形と、同様に線維芽細胞に特徴的な緻密な構成とを示している。
b)ケラチノサイトを用いた実験:
以下の表は、2つの異なる実験の結果を示す。
Figure 2019518081
Figure 2019518081
これらから分かるように、たばこの煙(50%CSC)での処理によって、ケラチノサイトの平均生存率が28%低減し、この低減分はEDAで前処理した場合に6%まで下がり、すなわち、たばこの煙によって誘発される死亡率を79%低減させている。
図6は、実験のうちの1つの結果を一例として示している(異なる群間の差異は有意である(p<0.01))。
結論:
上述の結果により、EDAでの前処理は、たばこの煙による汚染の影響から保護することができることが分かる。
実施例4−環境上の汚染(ヒ素、カドミウム、クロム)に対するEDA前処理の保護作用
本実験の目的は、ヒト線維芽細胞におけるナンキョクコメススキ抽出物での前処理が、ヒ素、カドミウム、またはクロムによって引き起こされる汚染などの環境汚染に対して及ぼし得る保護作用を評価することであり、細胞の生存に対する該保護作用を評価することである。
材料および方法:
−評価した産物:
ナンキョクコメススキ抽出物(EDA):線維芽細胞を用いた実験では、凍結乾燥されたEDAバッチ番号051214を用いた。この産物を完全DMEM培地に濃度5mg/mlで溶解し、磁気攪拌機で30分間攪拌し、0.2μmの無菌酢酸セルロースフィルタ(Minisart、ザルトリウス社)で濾過した。
Cd(II):最終濃度0.3mMで、塩化カドミウム(CdCl)をフェノールレッドフリーDMEM培地に溶解し、0.2μmの無菌酢酸セルロースフィルタ(Minisart、ザルトリウス社)で濾過した。結果のセクションで示される希釈液を、フェノールレッドフリーDMEM培地を用いてこの溶液から調製した。
Cr(VI)およびCr(III):最終濃度0.5mMで、三酸化クロム(CrO)および塩化クロム(CrCl)をフェノールレッドフリーDMEM培地に別々に溶解し、両方の溶液の同量を混合し、0.2μmの無菌酢酸セルロースフィルタ(Minisart、ザルトリウス社)で濾過した。結果のセクションで示される希釈液を、フェノールレッドフリーDMEM培地を用いてこの溶液から調製した。
As(III):最終濃度9mMで、亜ヒ酸ナトリウム (NaAsO)をフェノールレッドフリーDMEM培地に溶解し、0.2μmの無菌酢酸セルロースフィルタ(Minisart、ザルトリウス社)で濾過した。
−培地および試薬:
フェノールレッドフリーDMEM培地(シグマ社)。DMEM培地(シグマ社)。ペニシリン−ストレプトマイシン(シグマ社)。グルタミン(シグマ社)。ウシ胎児血清(シグマ社)。0.25%トリプシン−EDTA(シグマ社)。リン酸緩衝食塩水(PBS)。ハンクス液 (以下ハンクスとする)(シグマ社)。グルタルアルデヒド(シグマ社)。クリスタルバイオレット(シグマ社)。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)(シグマ社)。
−線維芽細胞培養:
使用した細胞は、健康な任意の様々なドナーから得られ、かつ液体Nで保存した耳後部皮膚弁の外側部分から単離したヒト皮膚線維芽細胞である。実験では、2mMのグルタミン、50μg/mlのペニシリン、50U/mlのストレプトマイシン、10%のウシ胎児血清が補充されたDMEMを含む培養フラスコで、7%のCOと93%の加湿空気の雰囲気で37℃に保たれているHeraeusオーブン内にて、約90%のコンフルエンスに到達するまで増殖した細胞を用いた。その後、トリプシン処理により新規処理を行った。実験のために、10個の細胞/mlの初期密度で、平底の96ウェルプレート(ヌンク(Nunc)社)に播種した9回〜11回処理の細胞をそれぞれ使用し、コンフルエンスに到達するまでインキュベータで増殖させた。
−産物での処理:
EDAでの前処理:上述の通りに調製した1ウェル当たり100μlのEDA溶液(または完全DMEMの適切な希釈液)を各プレートの半数に添加し、プレートをインキュベータで約24時間インキュベートした。
金属での処理:前処理の後にプレートをハンクスで2回洗浄し、上述の通りに調製した、結果セクションで示される濃度での1ウェル当たり100μlの金属含有溶液、または1ウェル当たり100μlのフェノールレッドフリーDMEM溶液を添加し、プレートをインキュベータで24時間インキュベートした。
−細胞生存率の測定:
プレートをハンクスで2回洗浄した。これらを100μlの0.25%グルタルアルデヒドのハンクス溶液で室温にて15分間固定化した。プレートを水で1回洗浄した。これらを2%エタノール溶液中の0.2%クリスタルバイオレット溶液で、37℃にて15分間染色した。プレートを水で洗浄し、細胞を100μlの1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)で溶解した。それをプレート攪拌機で慎重に攪拌し、BMG Fluostar Optima分光光度計で550nmの吸光度を読み取った。
−統計解析:
統計解析を各実験に対して行い、各ウェルの値を独立した値とみなし、ExcelまたはGraph Pad Prismを用いたスチューデントのt検定によって有意性を判定した。
結果:
−Cd(II)への暴露に関するEDAでの前処理の作用:
約50%の死亡率をもたらすCd(II)の作用濃度をまず決定した。結果を図7に示す:
これから分かるように、Cd(II)は3μMの濃度で約50%の死亡率をもたらす。
以下の表および図8は、EDAの異なる濃度での前処理およびそれに続く3μMのCd(II)への暴露の作用を示している。
Figure 2019518081
これらから分かるように、EDAでの前処理は、評価した濃度全てにおいて、続く塩化カドミウムへの暴露に対して有意に保護している。
−Cr(III)およびCr(VI)への暴露に対するEDAでの前処理の作用:
Cr(III)およびCr(VI)の作用濃度を、これらの金属の異なる濃度に対する線維芽細胞の生存を検討することによってまず決定した。結果を図9に示す:
これらから分かるように、約50%の生存を6μMで達成したため、この濃度を保護の実験のために選択した。
以下の表は、EDAでの前処理(5mg/ml)とそれに続くCr(III)+Cr(VI)への暴露から構成される実験の結果を示す:
Figure 2019518081
これらから分かるように、EDAでの前処理は、三酸化クロムおよび塩化クロムへの複合暴露によって引き起こされる攻撃に対して有意な保護作用を有している。
−As(III)への暴露に関するEDAでの前処理の作用:
以下の表は、EDAでの前処理(5mg/ml)が、続く9mMの亜ヒ酸ナトリウム(9mMのNaAsO)への暴露によって引き起こされる攻撃に対して及ぼす影響について検討する3つの実験の結果を示す。
Figure 2019518081
Figure 2019518081
Figure 2019518081
これらから分かるように、EDAでの前処理は、亜ヒ酸ナトリウムへの暴露によって引き起こされる攻撃に対して有意な保護作用を有している。
結論:
上述の結果により、EDAでの前処理は、ヒ素、カドミウム、またはクロムの汚染の影響から保護することができることが分かる。

Claims (8)

  1. UV放射由来ではない環境侵襲により引き起こされるヒト皮膚バリアダメージを軽減するためのナンキョクコメススキ(Deschampsia antarctica)(EDA)の抽出物の化粧用使用。
  2. 前記抽出物が、化学的大気汚染物質とUV放射以外の気候状態とにより誘発される皮膚の不快感および皮膚のダメージを予防および/または低減する、請求項1に記載の使用。
  3. 前記化学的大気汚染物質が、煙および重金属からなる群から選択される、請求項2に記載の使用。
  4. 前記気候状態が、浸透圧ショック、低空気湿度および環境上の熱ストレスからなる群から選択される、請求項2に記載の使用。
  5. ヒト皮膚バリア障害および関連する症状の寛解および/または予防に使用するためのナンキョクコメススキ(EDA)の抽出物。
  6. 前記ヒト皮膚バリア障害が、乾燥皮膚、アトピー性皮膚炎および接触性皮膚炎から選択される、請求項5に記載の使用のためのEDA。
  7. 前記ヒト皮膚バリア障害が、化学的大気汚染物質およびUV放射以外の気候状態からなる群から選択される環境侵襲によって悪化している、請求項5に記載の使用のためのEDA。
  8. ヒト皮膚バリア障害および関連する症状の治療および/または予防に使用するための組成物であって、生理学的に許容される媒体中にナンキョクコメススキ(EDA)の抽出物の有効量を含む、組成物。
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