流体の正確な計量は透析において最も重要である。透析液の流れなどの大きな流体流れは、バランス調整システムによって搬送されることが多い。体外血流などの中規模の流体流れは、ホースローラーポンプによって搬送されることが多い。この点において最大約10%の流量誤差が認められている。
しかしながら、少量の活性薬剤溶液の計量、例えば、体外血液回路に入る抗凝血性溶液の計量に関して計量精度に対する要求が高まっている。この点において、流量誤差は、どの場合においても5%未満となるべきである。従来技術において、この目的のためにホースローラーポンプ又は注射器ポンプが使用されていることが多い。対照的に、従来技術において、膜ポンプは、望ましくない流量パルスが生じるのであまり使用されていない。
流量パルスは、実際の膜ポンプにおいて、理想的には膜ポンプの2つのチャンバの間に存在する膜が、その弾性、その変形、及びその初期張力によって圧力バランスに影響を与えることに起因している。静的な場合では、関係式PPNEU−PHYD=PMEMが空気圧式膜ポンプに適用される。流体圧力PHYDは、調整圧力PPNEUに比例して変動しないので、膜圧PMEMは、一定ではなく、ポンプの調整における干渉係数を表す。この干渉係数の影響は、流体圧力PHYD及び調整圧力PPNEUが低い場合に相対的に大きい。これは、例えば、膜ポンプを使用して小さな流量を生成する場合に当てはまる。
しかしながら、何よりも、抗凝固剤としてのクエン酸塩の投与において一定の流れを維持する必要がある。
一般的に、流れを滑らかにするために、ポンプの下流側で遮断及び/又は制限弁を使用することができる。しかしながら、この種類の公知の弁は、弁タペットの応答遅延及び非比例挙動などの動的摩擦効果(「スティックスリップ」("stick-slip")現象)が制御に応答して発生する可能性があるので、制限的にこのような用途にだけ適している。
この背景技術に対して、本発明の目的は、動的摩擦効果が起こらず、比例様式で調整することができる遮断弁を提供することである。
この背景技術に対して、本発明は、流体入口と、流体出口と、その間に配置された流体チャンバとを有する流体システムを有する弁ハウジングを有する遮断及び/又は制限弁に関する。流体チャンバは、遮断形状部を備え、隔膜の遮断形状部に対向する側によって境界付けされている。本発明による弁において、隔膜は、流体チャンバから離れた側でタペットに連結され、タペットの移動によって隔膜を遮断形状部上へ押し付けることができ、遮断形状部の近くで持ち上げることができるようになっている。この点において、本発明によると、タペットは、弁ハウジングの空間部内に自由に浮遊した状態で配置される。
タペットを自由に浮遊した状態で支持することは、タペットの移動の際、タペットの表面がシールなどの弁ハウジングの固定要素に沿って摺動せず、固定要素に対して擦れない、摩擦なしの支持であると理解されたい。
実施形態において、機械的ばねは、タペットと弁ハウジングとの間に配置され、機械的ばねは、自由に浮遊した状態のタペットのために軸受を形成可能であり、弁ハウジングに対してタペットに予荷重を与え、ゼロ位置において、隔膜を遮断形状部に向かって押し付けるようになっている。さらに、弁は、タペットに作用するアクチュエータを有することができ、アクチュエータは、タペットを機械的ばねの予荷重に抗してゼロ位置の範囲外に移動させることができ、結果として、隔膜を遮断形状部から解放することができるように構成されている。
代替実施形態において、機械的ばねは、タペットと弁ハウジングとの間に配置され、機械的ばねは、自由に浮遊した状態のタペットのための軸受を形成可能であり、弁ハウジングに対してタペットに予荷重を与え、ゼロ位置において、隔膜を遮断形状部から解除するようになっている。さらに、弁は、タペットに作用するアクチュエータを有することができ、アクチュエータは、タペットを機械的ばねの予荷重に抗してゼロ位置の外に移動させることができ、結果として、隔膜を遮断形状部に向かって押し付けることができるように構成されている。
実施形態において、機械ばねは、圧縮ばねとして作用するコイルばねであり、例えば、金属又はセラミックコイルばねである。
実施形態において、アクチュエータは、空気圧アクチュエータである。もしくは、機械的又は油圧アクチュエータを設けることもできる。
実施形態において、空気圧アクチュエータは、膨張チャンバに隣接するか又は膨張チャンバを取り囲むアクチュエータ膜を備える。膨張チャンバは、空気圧ラインの接続用のインタフェース部を有する。アクチュエータ膜は、アクチュエータをタペットに向かって押し付けることができ、結果としてアクチュエータの作動状態でタペットに作用することができるように配置及び構成されている。
実施形態において、タペットは、ピン形状であり、好ましくは、2つの反対側に配置された端部の間に配置された半径方向のフランジを有する。
実施形態において、タペットは、一端において隔膜に、他端においてアクチュエータ膜に連結されている。さらに、この実施形態において、機械的ばねは、フランジの隔膜に対向する側にてタペットに係合することができるようにされる。
代替実施形態において、タペットは一端において隔膜に連結される。さらに、この実施形態において、機械的ばねは、フランジの隔膜から離れた側においてタペットに係合し、フランジの隔膜に対向する側は、アクチュエータ膜のための支持面を形成することができるようにされる。
実施形態において、弁ハウジングは、互いに取り外し可能に固定される2つの部品を含み、第1の部品は、タペット用の空間部を画定し、第2の部品は、流体チャンバを画定し、隔膜は、2つの部品の間に配置されている。この点において同様に、隔膜は、実施形態において第1の部品から除去することができる。この実施形態における第1の部品は、流体経路と接触しておらず、結果的に流体による汚染から保護される再利用可能なユニットである。交換可能な隔膜及び交換可能な再利用可能なユニットである第2の部品のみが、流体と接触する。
隔膜及び/又はアクチュエータ膜は、例えば、円形シリコーンディスク又はシリコーンプレートとすることができる。
弁は、正確に1つの流体入口及び正確に1つの流体出口を有する双方向遮断及び/又は制限弁とすることができる。
上記の背景技術に対して、本発明は、さらに、本発明による少なくとも1つの遮断及び/又は制限弁を有する血液治療装置に関する。血液治療装置は、好ましくは透析装置である。
実施形態において、弁は、透析液回路又は体外血液回路に開口する計量ライン内に配置される。弁は、好ましくは、体外血液回路内へ開口する、ヘパリン又はクエン酸塩などの凝固抑制剤の溶液のための計量ライン内に配置される。
本発明のさらなる詳細及び利点は図で説明する実施形態から生じる。これらは図に示される。
図1は、全体的に参照番号1が付与された本発明による遮断及び/又は制限弁を示す。
弁は、再利用可能な部品(「再利用可能なユニット」)3と、これに取り外し可能に固定される使い捨て部品(「使い捨てユニット」)4とを含む弁ハウジング2を有する。使い捨てユニット4は、取り外し可能なピン5を使用して再利用可能なユニット3に固定されている。さらに、再利用可能なユニット3はインサート3aを備え、インサート3aは、機械プレート3bのカットアウト部(切り取り部)に配置され、閉鎖プレート3cによってカバーされている。
使い捨てユニット4は、流体入口6、流体出口7、及びその間に配置された流体チャンバ8を有する流体経路を備える。流体チャンバ内には遮断形状部9が形成され、カラーの様式で円形チャンバ入口開口部の周りに延在し、流体チャンバ8に突出するウェブである。流体流れは、矢印10で示されている。
流体チャンバ8は、シリコーンプレートの形態の隔膜11の遮断形状部9に対向する側によって境界付けされている。シリコーンプレートは、円形チャンバ入口開口部と同心に配置された流体チャンバ8の壁部の円形開口部をカバーする。
シリコーンプレート11は、インサート3aと機械プレートとの間で再利用可能なユニット3に取り外し可能に挿入され、再利用可能なユニット3のどの部位も流体経路と接触しないように、流体チャンバ8の全ての側面で使い捨てユニット4と同一平面で閉鎖する。このようにして、再利用可能なユニット3は、流体による汚染から保護され、交換可能なシリコーンプレート11及び交換可能で再利用可能なユニット4のみが流体と接触する。
シリコーンプレート11の後方で再利用可能なユニット3内に空間部が形成され、空間部の内部には、シリコーンプレート11をゆがませるためのピン状タペット12が配置されている。タペットは、流体チャンバに対向する端部領域14(「遮断側」)と流体チャンバから離れた端部領域19(「アクチュエータ側」)との間に半径方向円周フランジ18を備える。タペット12の中心軸は、チャンバ入口開口部の中心を通る。タペット12は、空間部内で中心軸に沿って直線的に往復移動することができ、この点において流体チャンバに向かって、及び流体チャンバから離れる方向に移動することができる。タペット12は、例えば、金属のコイルばね13によって空間部の壁部の間で自由に浮遊した状態に保持され、タペット12及びコイルばね13の軸は、互いに同心である。コイルばね13は、フランジ18の流体チャンバに対向する側でタペット12に係合し、その際に圧縮ばねとして作用する。コイルばねは、他端において使い捨てユニット3の突出部17上に位置する。フランジ18の流体チャンバ側に配置されたピン状タペット本体のセクションは、コイルばね13内に延在する。
タペット12の遮断側14は、保持フランジ16を備え、シリコーンプレート11の空間部側にはタペット12の遮断側14のための受け部15が成型されており、この受け部は、保持フランジ16に対応するアンダーカットを有する。このようにして、引張力及び圧縮力は、遮断形状部9と合致した領域においてタペット12からシリコーンプレート11に伝達できる。この構成により、一方で、流体チャンバの方向に向けられたタペット12の(閉鎖)移動で、シリコーンプレート11は遮断形状部9に向かって押し付けられ、これにより弁1の作動における流体流れの制限又は遮断が行われ、他方で、流体チャンバから離れるように向けられたタペット12の(開放)移動で、シリコーンプレート11は遮断形状部9の近くで持ち上げられ、これにより弁1の作動における流体流れの開放又は増大が行われる。
カバープレート3cとインサート3aとの間に狭持された円形シリコーンディスクの形態のアクチュエータ膜20は、シリコーンプレート11に対向する側の端部で空間部を境界付ける。シリコーンディスク20は、シリコーンプレート11と平行に配置され、シリコーンディスク20の中心は、タペット12の軸に位置する。
シリコーンディスク20もまた、タペット12に連結され、正確にはタペットのアクチュエータ側19に連結される。この目的のために、タペット12のアクチュエータ側19も、保持フランジ22を備え、同様にシリコーンディスク20の空間部側に受け部21が成型され、この受け部は、保持フランジ22に対応するアンダーカットを有する。従って、シリコーンディスク20からタペット12に圧縮力を伝達することができ、タペットをシリコーンディスク20の中心領域内に保持することができる。この配置により、空間部へ押し込まれるシリコーンディスク20の変形で、タペット12は、ばね13の圧縮力に抗するように差し向けられかつ流体チャンバの方向への(閉鎖)移動を行う。
膨張チャンバ23が、シリコーンディスク20とカバープレートとの間に形成されている。膨張チャンバ23内に流体圧力が生じると、シリコーンディスク20の風船形の拡大(従って、空間部へ押し込まれる変形)が生じる。接続部24は、制御システム、例えば空気圧制御システムへの接続のために閉鎖プレート3cに組み込まれている。さらに、空気圧接続部は、タペット12の軸に位置している。
膨張チャンバ23内に過剰な圧力が生じた場合、シリコーンディスク20は、タペット12を押圧し、ばね13から生じる圧縮力に抗してタペット12を流体チャンバ8の方向に移動させ、それによって、シリコーンプレート11は、遮断形状部9の方向に押圧され、これによって、流体経路の制限又は閉鎖が達成される。この過剰な圧力が降下した場合、ばね13は、タペット12を膨張チャンバ23に押し付け、それによって、シリコーンプレート11は、遮断形状部9から持ち上げられ、これによって、流体経路の開放又は拡大が達成される。ばね13は、タペット12を流体チャンバ8から持ち上げ、従って、シリコーンプレート11を遮断形状部9から持ち上げ、図2に示す弁は、ゼロ位置(制御システムの故障時、「無電流」に当てはまる)で開放される。
図2は、本発明による遮断及び/又は制限弁の別の実施形態を示し、同一の部品又は同等機能の部品は、図1の場合のように同じ参照番号によって示されている。
図1に示す弁に対する主たる相違は、図2に示す遮断及び/又は制限弁がゼロ位置(制御システムの故障時、「無電流」に当てはまる)で閉鎖される点である。
構造設計に関しては、図2の常閉弁は、機械的圧縮ばね13が、フランジ18の流体チャンバ側ではなく、流体チャンバから離れた側でタペットに作用する点で図1の常開弁とは異なる。従って、図2の実施形態において、圧縮ばね13の基部は、使い捨てユニット3の空間部内の突出部17ではなく、カバープレート3cに対して支持されている。対照的に、この場合、膨張チャンバ23及びアクチュエータ膜20を備える空気圧アクチュエータは、フランジ18のアクチュエータ側19ではなく、流体チャンバ側に作用する。従って、保持フランジ22とともにアクチュエータ側の特別な構成を不要とすることができる。
この場合の空気圧アクチュエータは、図1の実施形態の場合のシリコーンディスクを備えておらず、むしろタペット12を半径方向に取り囲み、フランジ18の流体チャンバ側で空間部内に配置される膨張式ホース20を備える。フランジの方向に開口するリング状の受け部25が、このホース20を収容するために、図1による実施形態において突出部17がばね13を支持するために配置される空間部の領域内に設けられている。
過剰な圧力がホース20によって取り囲まれた膨張チャンバ23で生じた場合、ホースは膨張してタペットのフランジを圧迫し、その結果、フランジは、ばね13から生じる圧縮力に抗して閉鎖プレート3cの方向に押圧され、それによって、シリコーンプレート11は、遮断形状部9から持ち上げられ、これによって、流体経路の開放又は拡大が達成される。この過剰な圧力が降下した場合、ばね13は、次に、タペット12を流体チャンバ8の方向に押圧し、これによって、流体経路の制限又は閉鎖が達成される。ばね13はタペット12を流体チャンバ8の方向に押圧し、従って、シリコーンプレート11を遮断形状部9の方に押圧するので、図2に示す弁は、ゼロ位置(制御システムの故障時、「無電流」に当てはまる)で閉鎖される。
制御システム、例えば空気圧制御システムのための膨張チャンバ23に対する接続部24は、ホース20に半径方向に係合する。
図2は、ゼロ位置の弁1を示しておらず、例示目的で、ホース20の膨張がないにもかかわらずタペット12がゼロ位置から持ち上げられている位置の弁1を示す(作動中には発生しない)。
両方の実施形態に関する本発明の中心的な態様は、タペット12が、空間部内で自由に浮遊するように配置され、タペット12の表面が、シールリングなどのシールリップに接触しないことである。圧縮ガスを利用する空気制御で非常に顕著である可能性のある、圧力増大に応じたタペットの遅延反応及び非比例挙動などの動的摩擦効果(スティックスリット現象)が回避される。本発明による弁1は、厳密に比例様式で空気圧的に調整することができる。この比例性により、2つの状態(閉鎖、開放)の間を区別するだけではなく、この弁が絞り機構の機能を引き受けることもできる。