JP2019218446A - 水性インク、インクカートリッジ、記録装置、及び記録方法 - Google Patents

水性インク、インクカートリッジ、記録装置、及び記録方法 Download PDF

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嘉郎 山下
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Abstract

【課題】赤外吸収能の経時劣化が抑制された水性インクを提供する。【解決手段】水性媒体と、スクアリリウム骨格を有する化合物と樹脂とを含有する赤外線吸収性粒子と、ジアルキルスルホコハク酸塩と、赤色アゾ顔料と、を含む水性インク。【選択図】なし

Description

本発明は、水性インク、インクカートリッジ、記録装置、及び記録方法に関する。
特許文献1には、少なくとも色材、水、水溶性有機溶剤、及び800〜1200nmに最大吸収波長を持つ近赤外線吸収剤を含み、該近赤外線吸収剤が樹脂微粒子に吸着又は内包されて、近赤外線吸収剤含有樹脂微粒子の状態で分散していることを特徴とする水性インクジェット記録用インクが開示されている。
特許文献2には、水と、有機顔料と、近赤外線吸収色素を分散させる高分子分散剤と、700nm以上1500nm以下に吸収極大波長を有する水不溶性の近赤外線吸収色素とを含有するインク組成物が開示されている。
特開2013−189596号公報 特開2014−47302号公報
従来から、水に対して不溶又は難溶な赤外線吸収剤を水性媒体に分散させるため、前記赤外線吸収剤及び樹脂の双方を含有する赤外線吸収性粒子に粒子化して水性媒体に分散させた水性インクとすることが試されている。
一方で、例えば水性インクを用いて低浸透性又は非浸透性の記録媒体に画像を形成する場合、記録媒体に対する水性インクの接触角を適切な範囲に調整することが求められる場合がある。そして、接触角の調整方法としては、例えば、水性インクにジアルキルスルホコハク酸塩を含有させる方法が挙げられる。
しかし、前記赤外線吸収剤としてスクアリリウム骨格を有する化合物を用いつつ、着色剤として赤色顔料を用い、接触角の調整のためジアルキルスルホコハク酸塩を含有させた水性インクは、経時的に水性インクの赤外吸収能が劣化することがあった。
本発明の課題は、水性媒体と、スクアリリウム骨格を有する化合物と樹脂とを含有する赤外線吸収性粒子と、ジアルキルスルホコハク酸塩と、ピグメントレッド122と、からなる水性インクに比較して、赤外吸収能の経時劣化が抑制された水性インクを提供することである。
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
<1>
水性媒体と、
スクアリリウム骨格を有する化合物と樹脂とを含有する赤外線吸収性粒子と、
ジアルキルスルホコハク酸塩と、
赤色アゾ顔料と、
を含む水性インク。
<2>
前記スクアリリウム骨格を有する化合物は、下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種である<1>に記載の水性インク。
一般式(1)中、R1a、R1b、R1c、及びR1dは、それぞれ独立に、アリール基又はアルキル基を表す。
一般式(2)中、R2a、R2b、R2c、及びR2dはそれぞれ独立にアルキル基を表し、R2aとR2b及びR2cとR2dはそれぞれ独立に、互いに連結して環を形成していてもよい。
<3>
前記樹脂は、ポリエステル樹脂である<1>又は<2>に記載の水性インク。
<4>
前記赤色アゾ顔料の含有量は、前記ジアルキルスルホコハク酸塩の含有量の10倍以上500倍以下である<1>〜<3>のいずれか1つに記載の水性インク。
<5>
さらにノニオン性界面活性剤を含む<1>〜<4>のいずれか1つに記載の水性インク。
<6>
前記ノニオン性界面活性剤100質量部に対する前記ジアルキルスルホコハク酸塩の含有量は、0.5質量部以上20質量部以下である<5>に記載の水性インク。
<7>
前記赤色アゾ顔料の含有量は、前記ノニオン性界面活性剤の含有量の0.5倍以上30倍以下である<5>又は<6>に記載の水性インク。
<8>
前記赤外線吸収性粒子100質量部に対する、前記赤色アゾ顔料の含有量は、20質量部以上1000質量部以下である<1>〜<7>のいずれか1つに記載の水性インク。
<9>
前記樹脂100質量部に対する、前記スクアリリウム骨格を有する化合物の含有量は、0.5質量部以50質量部以下である<1>〜<8>のいずれか1つに記載の水性インク。
<10>
前記赤外線吸収性粒子の体積平均粒径は、10nm以上300nm以下である<1>〜<9>のいずれか1つに記載の水性インク。
<11>
前記赤外線吸収性粒子の含有量は、水性インク全体に対し、0.1質量%以上20質量%以下である<1>〜<10>のいずれか1つに記載の水性インク。
<12>
前記赤色アゾ顔料は、ナフトールAS系顔料である<1>〜<11>のいずれか1つに記載の水性インク。
<13>
前記赤色アゾ顔料は、ピグメントレッド269である<12>に記載の水性インク。
<14>
水性媒体と、スクアリリウム骨格を有する化合物と樹脂とを含有する赤外線吸収性粒子と、ジアルキルスルホコハク酸塩と、赤色顔料と、を含み、
60℃の環境下で14日間経過することによる前記赤外線吸収性粒子における赤外線吸光係数の低下率が5%以下である水性インク。
<15>
<1>〜<14>のいずれか1つに記載の水性インクを収容したインクカートリッジ。
<16>
<1>〜<14>のいずれか1つに記載の水性インクを収容し、前記水性インクを記録媒体に付与するインク付与手段と、
前記記録媒体に付与された前記水性インクに赤外線を照射する赤外線照射手段と、
を備える記録装置。
<17>
<1>〜<14>のいずれか1つに記載の水性インクを記録媒体に付与するインク付与工程と、
前記記録媒体に付与された前記水性インクに赤外線を照射する赤外線照射工程と、
を有する記録方法。
<18>
前記記録媒体は、低浸透性又は非浸透性である<17>に記載の記録方法。
<19>
前記インク付与工程は、インクジェット方式により水性インクを記録媒体に吐出する工程である<17>又は<18>に記載の記録方法。
<1>、<2>、<3>、<12>、又は<13>に係る発明によれば、水性媒体と、スクアリリウム骨格を有する化合物と樹脂とを含有する赤外線吸収性粒子と、ジアルキルスルホコハク酸塩と、ピグメントレッド122と、からなる水性インクに比較して、赤外吸収能の経時劣化が抑制された水性インクが提供される。
<4>に係る発明によれば、前記ジアルキルスルホコハク酸塩の含有量に対して赤色アゾ顔料の含有量が10倍未満である水性インクに比較して、赤外吸収能の経時劣化がより抑制された水性インクが提供される。
<5>、<6>、又は<7>に係る発明によれば、ノニオン性界面活性剤を含まない水性インクに比較して、低浸透性又は非浸透性の記録媒体への画像形成に適した表面張力を有する水性インクが提供される。
<8>に係る発明によれば、前記赤外線吸収性粒子100質量部に対する前記赤色アゾ顔料の含有量が20質量部未満である水性インクに比較して、赤外吸収能の経時劣化がより抑制された水性インクが提供される。
<9>に係る発明によれば、前記樹脂100質量部に対する前記スクアリリウム骨格を有する化合物の含有量が50質量部を超える水性インクに比較して、赤外吸収剤の凝集または析出が抑制された水性インクが提供される。
<10>に係る発明によれば、赤外線吸収性粒子の体積平均粒径が300nmを超える水性インクに比較して、インクジェット方式の打滴特性に優れた水性インクが提供される。
<11>に係る発明によれば、水性インク全体に対する赤外線吸収性粒子の含有量が0.1質量%未満である水性インクに比較して、赤外線吸収能の高い水性インクが提供される。
<14>に係る発明によれば、水性媒体と、スクアリリウム骨格を有する化合物と樹脂とを含有する赤外線吸収性粒子と、ジアルキルスルホコハク酸塩と、赤色顔料と、を含み、前記赤外線吸光係数の低下率が5%を超える水性インクに比較して、赤外吸収能の経時劣化が抑制された水性インクが提供される。
<15>、<16>、又は<17>に係る発明によれば、水性媒体と、スクアリリウム骨格を有する化合物と樹脂とを含有する赤外線吸収性粒子と、ジアルキルスルホコハク酸塩と、ピグメントレッド122と、からなる水性インクを適用した場合に比較して、赤外吸収能の経時劣化が抑制された水性インクを適用したインクカートリッジ、記録装置、又は記録方法が提供される。
<18>に係る発明によれば、記録媒体が低浸透性又は非浸透性であっても、水性媒体と、スクアリリウム骨格を有する化合物と樹脂とを含有する赤外線吸収性粒子と、ジアルキルスルホコハク酸塩と、ピグメントレッド122と、からなる水性インクを適用した場合に比較して、赤外吸収能の経時劣化が抑制された水性インクを適用した記録方法が提供される。
<19>に係る発明によれば、インク付与工程がインクジェット方式により水性インクを記録媒体に吐出する工程であっても、水性媒体と、スクアリリウム骨格を有する化合物と樹脂とを含有する赤外線吸収性粒子と、ジアルキルスルホコハク酸塩と、ピグメントレッド122と、からなる水性インクを適用した場合に比較して、赤外吸収能の経時劣化が抑制された水性インクを適用した記録方法が提供される。
本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
以下に、発明の実施形態を説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
本開示においてアルキルは、鎖式炭化水素のみならず環式炭化水素をも含む。
本開示において「水性媒体」とは、水、又は、水とその他の溶媒との混合溶媒であって、水を主たる溶媒とする混合溶媒を意味する。本開示において「主たる溶媒」とは、混合溶媒を構成する全溶媒のうち最も質量の多い溶媒を指す。
本開示において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
[水性インク]
<第1の態様>
第1の態様に係る水性インクは、水性媒体と、スクアリリウム骨格を有する化合物と樹脂とを含有する赤外線吸収性粒子(以下「粒子」ともいう)と、ジアルキルスルホコハク酸塩と、赤色アゾ顔料と、を含む。
第1の態様に係る水性インクは、上記構成であることにより、赤外吸収能の経時劣化が抑制される。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
従来から、水に対して不溶又は難溶な性質を有する有機化合物を水性媒体に含有させるために、前記有機化合物と樹脂との双方を含有する粒子に粒子化して水性媒体に分散させた粒子分散液を用いた水性インクの技術が知られている。なお、この有機化合物としては、例えば赤外線吸収剤等が挙げられる。
また、上記水性インクを用いて低浸透性又は非浸透性の記録媒体に画像を形成する場合、記録媒体に対する水性インクの接触角を適切な範囲に調整することが求められる場合がある。そして、この接触角を調整する方法としては、例えば、水性インクにジアルキルスルホコハク酸塩を含有させる方法が挙げられる。
しかし、粒子中の赤外線吸収剤としてスクアリリウム骨格を有する化合物を用いつつ、着色剤として赤色顔料を用い、接触角の調整のためジアルキルスルホコハク酸塩を水性インクに含有させると、時間とともに水性インクの赤外吸収能が劣化することがある。特に、赤色顔料としてピグメントレッド122等のキナクリドン顔料などを用いた場合に、上記赤外吸収能の経時劣化が起こりやすい。そして、赤外吸収能の経時劣化が起こると、画像の定着性の低下等に繋がることがある。
上記赤外吸収能の経時低下が起こる理由は定かでは無いが、水性媒体側に存在するジアルキルスルホコハク酸塩が、粒子内に進入することで引き起こされていると考えられる。具体的には、例えば、粒子内に進入したジアルキルスルホコハク酸塩が赤外線吸収剤と相互作用することで、粒子内における赤外線吸収剤の分散状態が変わる(例えば、粒子内において赤外線吸収剤が偏在する)と考えられる。そして、その結果、粒子の赤外線吸収能が低下し、水性インク全体における赤外吸収能の経時劣化が引き起こされるものと推測される。
これに対し、第1の態様に係る水性インクは、赤外線吸収剤としてスクアリリウム骨格を有する化合物を用い、接触角の調整のためジアルキルスルホコハク酸塩を含有させ、かつ、着色剤として赤色アゾ顔料を用いている。そのため、赤色アゾ顔料がジアルキルスルホコハク酸塩に作用することで、ジアルキルスルホコハク酸塩が粒子に吸着しにくくなるものと考えられる。それにより、ジアルキルスルホコハク酸塩が粒子内に進入することが起こりにくくなり、粒子内における赤外線吸収剤の分散状態が変わることによる赤外線吸収能の低下が抑制され、水性インクにおける赤外吸収能の経時劣化も抑制されると推測される。
以上により、第1の態様では赤外吸収能の経時劣化が抑制されると推測される。
また、その結果、第1の態様に係る水性インクでは、赤外吸収能の経時劣化に伴う画像の定着性の低下が抑制される。
<第2の態様>
第2の態様に係る水性インクは、水性媒体と、スクアリリウム骨格を有する化合物と樹脂とを含有する赤外線吸収性粒子(以下「粒子」ともいう)と、ジアルキルスルホコハク酸塩と、赤色顔料と、を含み、60℃の環境下で14日間経過することによる前記粒子における赤外線吸光係数の低下率(以下「赤外線吸収低下率」ともいう)が5%以下である。
第2の態様に係る水性インクは、上記構成であることにより、赤外吸収能の経時劣化が抑制される。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
前記の通り、水に対して不溶又は難溶な性質を有する赤外線吸収剤を水性媒体に含有させるため、赤外線吸収剤と樹脂との双方を含有する粒子に粒子化して水性媒体に分散させた粒子分散液を用いた水性インクの技術が知られている。
また、水性インクを用いて低浸透性又は非浸透性の記録媒体に画像を形成する場合、例えばジアルキルスルホコハク酸塩の添加等により、記録媒体に対する水性インクの接触角を適切な範囲に調整することが求められる場合がある。
しかし、粒子中の赤外線吸収剤としてスクアリリウム骨格を有する化合物を用いつつ、ジアルキルスルホコハク酸塩及び赤色顔料を含有させた水性インクにおいては、時間とともに水性インクの赤外吸収能が劣化することがある。そして、赤外吸収能の経時劣化が起こると、画像の定着性の低下等に繋がることがある。
上記赤外吸収能の経時劣化は、前記の通り、ジアルキルスルホコハク酸塩が粒子内に進入して赤外線吸収剤と相互作用することで、粒子内における赤外線吸収剤の分散状態が変わり、粒子の赤外線吸収能が低下することで起こると考えられる。
これに対し、第2の態様に係る水性インクは、赤外線吸収剤としてスクアリリウム骨格を有する化合物を用い、ジアルキルスルホコハク酸塩及び赤色顔料を含有し、かつ、水性インクにおける赤外線吸収低下率が前記範囲である。そして、赤外線吸収低下率が前記範囲である水性インクでは、粒子内における赤外線吸収剤の分散状態が経時的に変化しにくいため、赤外吸収能の経時劣化が抑制されると考えられる。
以上により、第2の態様では赤外吸収能の経時劣化が抑制されると推測される。
また、その結果、第2の態様に係る水性インクでは、赤外吸収能の経時劣化に伴う画像の定着性の低下が抑制される。
ここで、上記赤外線吸収低下率は、以下のようにして測定される。
具体的には、測定対象の水性インクについて波長818nmにおける吸光係数(初期)を求めた後、60℃の環境下で14日間経過した後の水性インクについて波長818nmにおける吸光係数(経過後)を求め、それらの値から吸光係数の低下率を算出する。
水性インクにおける上記吸光係数は、測定装置として分光光度計(日立製作所製、型番:U−4100)を用い、水性インクを希釈し、光路長10mmの石英セルを用い、スキャンスピード500nm/minの条件で測定した結果から算出する。
以下、第1の態様及び第2の態様の総称として、「本実施形態」という場合がある。
なお、本実施形態において、粒子の分散状態は、液体粒子が分散した乳化でもよく、固体粒子が分散した懸濁でもよく、分散安定性の観点からは、固体粒子が分散した懸濁が好ましい。即ち、本実施形態に係る水性インクは、粒子が液体状態で水性媒体に分散した乳化液(エマルジョン)でもよく、粒子が固体状態で水性媒体に分散した懸濁液(サスペンジョン)でもよく、粒子の分散安定性の観点からは、懸濁液であることが好ましい。
以下、本実施形態に係る水性インクの成分、組成、製造方法などについて詳細に説明する。
(スクアリリウム骨格を有する化合物)
スクアリリウム骨格を有する化合物としては、例えば、チオピラン系スクアリリウム化合物(すなわち、チオピラン骨格及びスクアリリウム骨格を有する化合物)、ペリミジン系スクアリリウム化合物(すなわち、ペリミジン骨格及びスクアリリウム骨格を有する化合物)、フラボン系スクアリリウム化合物(すなわち、フラボン骨格及びスクアリリウム骨格を有する化合物)等が挙げられる。
これらの中でも、スクアリリウム骨格を有する化合物としては、チオピラン系スクアリリウム化合物及びペリミジン系スクアリリウム化合物が好ましく、後述する一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物がより好ましい。
スクアリリウム骨格を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
−チオピラン系スクアリリウム化合物−
チオピラン系スクアリリウム化合物としては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
一般式(1)中、R1a、R1b、R1c、及びR1dは、それぞれ独立に、アリール基又はアルキル基を表す。
1a、R1b、R1c、及びR1dで表されるアルキル基としては、炭素数1以上12以下のアルキル基が好ましく、炭素数1以上10以下のアルキル基がより好ましく、炭素数3以上6以下のアルキル基が更に好ましく、炭素数4以上6以下のアルキル基が更に好ましい。
1a、R1b、R1c、及びR1dで表されるアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれのアルキル基であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基(2−メチルプロピル基)、sec−ブチル基(1−メチルプロピル基)、tert−ブチル基(1,1−ジメチルエチル基)、n−ペンチル基、イソペンチル基(3−メチルブチル基)、ネオペンチル基(2,2−ジメチルプロピル基)、tert−ペンチル基(1,1−ジメチルプロピル基)、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、2−エチルヘキシル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基、n−ウンデシル基、イソウンデシル基、n−ドデシル基、イソドデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びビシクロ[2,2,2]オクチル基等が挙げられる。
1a、R1b、R1c、及びR1dで表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、及びアルキル置換フェニル基等が挙げられる。
アルキル置換フェニル基においては、フェニル基に1個のアルキル基が置換していても、複数個のアルキル基が置換していてもよいが、アルキル基が1個だけ置換したアルキル置換フェニル基がより好ましい。
この置換基としてのアルキル基としては、炭素数1以上10以下のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基等が挙げられる。
アリール基の具体例としては、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基(特に4−tert−ブチルフェニル基)、3−メチルフェニル基、及び2−メチルフェニル基等が挙げられ、中でもフェニル基が好ましい。
1a、R1b、R1c、及びR1dで表されるアルキル基及びアリール基は、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素)で置換されていてもよい。
一般式(I)で表される化合物は、水性インクにおける赤外吸収能低下抑制の観点から、R1a、R1b、R1c、及びR1dで表される基のうちの少なくとも1つが分岐鎖状のアルキル基であることが好ましく、下記一般式(1a)で表される化合物であることがより好ましい。
一般式(1a)中、Rは一般式(1a−R)で表される基を表し、R、R、及びRはそれぞれ独立にアルキル基を表す。一般式(1a−R)中、Rは水素又はメチル基を表し、nは0以上3以下の整数を表す。
一般式(1a)中、Rは、一般式(1a−R)で表される基を表す。
一般式(1a−R)で表される基の総炭素数は6以下が好ましく、5以下がより好ましく、4以下が更に好ましく、4が特に好ましい。総炭素数の下限は3である。
一般式(1a−R)中、Rは、水素又はメチル基を表す。Rは、メチル基であることが好ましい。
一般式(1a−R)中、nは、0以上3以下の整数を表す。nは、0以上2以下の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、0が更に好ましい。
一般式(1a−R)で表される基の具体例としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、3−メチルブチル基(3−メチルブタン−1−イル基)、2,2−ジメチルプロピル基(2,2−ジメチルプロパン−1−イル基)、4−メチルペンチル基(4−メチルペンタン−1−イル基)、3,3−ジメチルブチル基(3,3−ジメチルブタン−1−イル基)、4,4−ジメチルペンチル基(4,4−ジメチルペンタン−1−イル基)が挙げられる。これらの中でも、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基がより好ましく、tert−ブチル基が更に好ましい。
一般式(1a)中、R、R、及びRは、それぞれ独立にアルキル基を表す。R、R、及びRは少なくとも1つが一般式(1a−R)で表される基であることが好ましく、R、R、及びRの全てが一般式(1a−R)で表される基であることがより好ましい。
、R、及びRのうち1つが一般式(1a−R)で表される基である場合、R、R、及びRのいずれが一般式(1a−R)で表される基であってもよい。R、R、及びRのうち2つが一般式(1a−R)で表される基である場合、R、R、及びRのいずれが一般式(1a−R)で表される基であってもよい。
、R、R、及びRのうち2つ以上が一般式(1a−R)で表される基である場合、複数ある一般式(1a−R)で表される基の構造は同じであっても異なっていてもよい。
、R及びRの少なくとも1つが一般式(1a−R)で表される基である場合における好ましい構造は、Rについて前述したとおりである。
、R及びRの少なくとも1つが一般式(1a−R)で表される基以外である場合におけるアルキル基は、直鎖状、分岐状、及び環状の何れの構造であってもよい。この場合のアルキル基は分岐数が多い方が好ましく、炭素鎖は短い方が好ましい。炭素数としては、1以上10以下が好ましく、2以上8以下がより好ましく、3以上6以下が更に好ましい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、sec−ブチル基、2−メチルブタン−2−イル基、3−メチルブタン−2−イル基、3,3−ジメチルブタン−2−イル基、3−ペンチル基、2−メチルペンタン−3−イル基、3−メチルペンタン−3−イル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、2−メチルブタン−2−イル基、3−メチルペンタン−3−イル基が好ましい。
以下に、一般式(1)で表される化合物の具体例(化合物(1−a−1)〜(1−a−10))を示す。
一般式(1)で表される化合物は、例えば下記の反応スキームに従って合成される。
(1)R1a、R1b、R1c及びR1dが全て同じ基の化合物
まず、不活性雰囲気下且つ冷却下、有機マグネシウムハロゲン化物(グリニャール試薬、例えば塩化エチルマグネシウム等)の有機溶剤(例えばテトラヒドロフラン等)溶液に出発物質1を滴下して作用させる。その後、反応を完結させるため室温(例えば20℃乃至25℃。本説明において以下同じ)又はそれ以上の温度に戻してもよい。次いで冷却下、ギ酸誘導体(例えばギ酸エチル等)を滴下して作用させる。その後、反応を完結させるため室温又はそれ以上の温度に戻してもよい。反応の終わった混合物から有機物を抽出し、分離した有機層から中間体Aを得る。
次いで、溶媒(例えばシクロヘキサン等)に中間体Aと酸化試薬(例えば酸化マンガン等)とを加え、加熱還流して反応させる。反応中に生じる水を除去してもよい。反応混合物の有機層から中間体Bを得る。中間体Bを得る際に精製を行ってもよい。
次いで、中間体Bに対し付加環化反応を行う。例えば、溶媒(例えばエタノール等)に一硫化水素ナトリウムn水和物を加え、冷却下、中間体Bを滴下する。その後、室温で反応させ、反応液から溶媒を除去した後、飽和するまで食塩を加え、分液して有機相を回収し、有機相から中間体Cを得る。中間体Cを得る際に精製を行ってもよい。
次いで、不活性雰囲気下、溶媒(例えば無水テトラヒドロフラン等)と中間体Cとを混合し、グリニャール試薬(例えば臭化メチルマグネシウム等)を滴下する。滴下終了後、反応液を加熱して還流させ、次いで冷却下、臭化アンモニウムを滴下する。分離した有機層を乾燥し濃縮して、中間体Dを得る。
次いで、不活性雰囲気下、中間体D及びスクアリン酸を溶媒(例えばシクロヘキサンとイソブタノールとの混合溶媒等)に分散し、塩基性化合物(例えばピリジン等)を加えて加熱還流させ、化合物(1)−Aが得られる。反応中に生じる水を除去してもよい。また、精製や単離、濃縮等を実施してもよい。
(2)R1aとR1dが同じ基且つR1bとR1cが同じ基の化合物(R1aとR1bは異なる基)
上記(1)の反応スキームにおける中間体Aを得る過程を、下記の過程に変更する。
不活性雰囲気下且つ冷却下、グリニャール試薬(例えば臭化エチルマグネシウム等)の有機溶剤(例えばテトラヒドロフラン等)溶液に、出発物質1を滴下し、さらに添加物質2を滴下し反応させる。反応後の溶液に、冷却下で強酸(例えば塩酸等)を加え、次いで室温下でエーテルを加え、有機層から中間体A’を得る。中間体A’を得る際に精製を行ってもよい。
(3)R1aとR1bが同じ基且つR1cとR1dが同じ基の化合物(R1aとR1cは異なる基)
上記(1)の反応スキームにおける中間体Dとして、Rの構造が異なる化合物を2種類準備し、この2種の化合物とスクアリン酸とを反応させて、一般式(1)で表される化合物を得る。
1a〜R1dのうち3つが同じ基の化合物、2つが同じ基で残りの2つがそれぞれ異なる基の化合物、4つとも異なる基の化合物も、上記反応スキームに準じて合成し得る。
−ペリミジン系スクアリリウム化合物−
ペリミジン系スクアリリウム化合物としては、例えば、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
一般式(2)中、R2a、R2b、R2c、及びR2dはそれぞれ独立にアルキル基を表す。R2aとR2b及びR2cとR2dはそれぞれ独立に連結して環を形成していてもよい。
2a、R2b、R2c、及びR2dで表されるアルキル基としては、炭素数1以上12以下のアルキル基が好ましく、炭素数2以上8以下のアルキル基がより好ましい。
2a、R2b、R2c、及びR2dで表されるアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれのアルキル基であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基、n−ウンデシル基、イソウンデシル基、n−ドデシル基、イソドデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びビシクロ[2,2,2]オクチル基等が挙げられる。
また、R2aとR2bが連結して環を形成する場合、またR2cとR2dが連結して環を形成する場合には、形成される環は5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、6員環がより好ましい。
なお、形成される環は置換基を有していてもよく、置換基の例としてはアルキル基が挙げられる。
2cとR2dとを連結する部分の基は、炭素数が3以上6以下のアルキル基であることが好ましい。
互いに連結して環を形成する場合の、その形成される環構造としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、3,5−ジメチルシクロヘキサン、3,5−ジエチルシクロヘキサン、3,5−ジイソプロピルシクロヘキサン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、及び3,3,5,5−テトラメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
2a、R2b、R2c、及びR2dで表されるアルキル基(R2aとR2b及びR2cとR2dが連結して形成される環を含む)は、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素)で置換されていてもよい。
以下に、一般式(2)で表される化合物の具体例(化合物(2−b−1)〜(2−b−7))を示す。
また、一般式(2)で表される化合物のうち、一般式(2)においてR2aとR2b及びR2cとR2dが連結して環を形成した化合物の例として、例えば下記一般式(2a)で表される化合物が挙げられる。
一般式(2a)中、R2e、R2f、R2g、及びR2hは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
以下に、一般式(2a)で表される化合物の具体例(化合物(2−c−1)〜(2−c−5))、及び一般式(2)においてR2aとR2b及びR2cとR2dが連結して環を形成した化合物の他の具体例(化合物(2−c−6)〜(2−c−7))を示す。
一般式(2)で表される化合物は、例えば、特開2010−077261号公報、特開2010−186014号公報、特開2011−039359号公報等に記載の合成方法により合成し得る。
−スクアリリウム骨格を有する化合物の特性−
スクアリリウム骨格を有する化合物の、テトラヒドロフラン溶液における最大吸収波長(λmax)は、波長760nm以上1200nm以下であることが好ましく、波長780nm以上1100nm以下であることがより好ましく、波長800nm以上1000nm以下であることが更に好ましい。
スクアリリウム骨格を有する化合物の、テトラヒドロフラン溶液における最大吸収波長(λmax)でのモル吸光係数(εmax)は、1×10Lmol−1cm−1以上6×10Lmol−1cm−1以下が好ましく、2×10Lmol−1cm−1以上6×10Lmol−1cm−1以下がより好ましく、2.5×10Lmol−1cm−1以上6×10Lmol−1cm−1以下が更に好ましい。
粒子中におけるスクアリリウム骨格を有する化合物の含有量は、樹脂100質量部に対し、0.5質量部以上50質量部以下が好ましく、0.5質量部以上25質量部以下がより好ましく、1質量部以上10質量部以下がさらに好ましく、1質量部以上5質量部以下が特に好ましい。樹脂100質量部に対するスクアリリウム骨格を有する化合物の含有量が上記範囲であることにより、上記範囲よりも多い場合に比べて赤外吸収剤の凝集または析出が抑制され、上記範囲よりも少ない場合に比べて初期における粒子の赤外線吸収能が高くなる。
(樹脂)
樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレア樹脂、アクリル樹脂、及びポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらの中でも、赤外線吸収剤であるスクアリリウム骨格を有する化合物との相溶性が良好である観点から、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、及びポリウレタン樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂がより好ましい。樹脂としてポリエステル樹脂を用いることで、粒子中においてスクアリリウム骨格を有する化合物が良好に分散された状態で存在し、効率よく赤外線の吸収性能が発揮されるため、赤外線の吸収性能により優れると推測される。樹脂は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
−ポリエステル樹脂−
ポリエステル樹脂は、一般的に、ジカルボン酸とジオールとの脱水縮合により合成される。
ポリエステル樹脂は、分子構造中に下記一般式(F1)で表される単位を含有することが好ましい。
一般式(F1)中、Rf1及びRf2はそれぞれ独立に水素、メチル基、又はエチル基を表し、Rf3及びRf4はメチル基を表し、p及びqはそれぞれ独立に0又は1を表す。
一般式(F1)で表される単位をポリエステル樹脂の分子構造中に含ませる方法としては、ポリエステル樹脂のモノマーとして、前記一般式(F1)で表される単位を有するモノマーを重合(脱水縮合)する方法が挙げられる。
なお、一般的にポリエステル樹脂は、ジカルボン酸とジオールとの脱水縮合により合成されるが、一般式(F1)で表される単位は、通常、ジオール成分として重合(脱水縮合)させることでポリエステル樹脂の分子構造中に含ませられる。
一般式(F1)で表される単位となる構造を有するモノマーであるジオールとしては、例えば、ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)、ビスフェノールB(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン)、ビスフェノールC(2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン)、ビスフェノールE(1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン)、ビスフェノールF(ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン)、並びにこれらのエチレンオキシド付加物及びプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。
一般式(F1)で表される単位としては、さらに下記一般式(F2)で表される単位であることが好ましい。
つまり、前記ジオールとして、ビスフェノールA、並びにそのエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの少なくとも一方の付加物が、より好適に用いられる。
ポリエステル樹脂中における一般式(F2)で表される単位の含有量は、重合(脱水縮合)に用いる割合(質量比)の調整によって制御し得る。
ポリエステル樹脂は、水性媒体への分散性の観点から、解離性基を有することが好ましい。解離性基としては、アニオン性基が好ましく、カルボキシ基及びスルホン酸基が特に好ましい。ポリエステル樹脂への解離性基の導入は、例えば、スルホン酸基を有するジカルボン酸又はジオールを脱水縮合の原料とすることにより行う。
スルホン酸基を有するジカルボン酸としては、例えば、3−スルホフタル酸、4−スルホフタル酸、4−スルホイソフタル酸、5−スルホイソフタル酸、2−スルホテレフタル酸、スルホコハク酸、4−スルホ−1,8−ナフタレンジカルボン酸、7−スルホ−1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,4−ジ(2−ヒドロキシ)エチルオキシカルボニルベンゼンスルホン酸、及びこれらの塩等が挙げられる。これらジカルボン酸は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
その他のジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ジメチルマロン酸、アジピン酸、ピメリン酸、α,α−ジメチルコハク酸、アセトンジカルボン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2−ブチルテレフタル酸、テトラクロロテレフタル酸、アセチレンジカルボン酸、ポリ(エチレンテレフタレート)ジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ω−ポリ(エチレンオキシド)ジカルボン酸、p−キシリレンジカルボン酸等が挙げられる。これらジカルボン酸は、アルキルエステル、酸塩化物又は酸無水物の形態で脱水縮合に供してもよい。これらジカルボン酸は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分として分子構造中に芳香環を有するジカルボン酸化合物が重合(縮合)された重合体であることが好ましい。ジカルボン酸由来の構成単位中に芳香環が含まれることで、スクアリリウム骨格を有する化合物との親和性がより高められるものと考えられ、スクアリリウム骨格を有する化合物の析出をより抑制し易くなる。
解離性基を有するジオールとしては、例えば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、2,5,6−トリメトキシ−3,4−ジヒドロキシヘキサン酸、2,3−ジヒドロキシ−4,5−ジメトキシペンタン酸、2,4−ジ(2−ヒドロキシ)エチルオキシカルボニルベンゼンスルホン酸、及びこれらの塩等が挙げられる。解離性基を有するジオールは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
解離性基を有しないジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリエステルポリオール、4,4'−ジヒドロキシフェニルスルホン等が挙げられる。解離性基を有しないジオールは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
以下に、分子構造中に一般式(F1)で表される単位を含有するポリエステル樹脂の具体例を、ポリマーの構成単位となるジカルボン酸、ジオールで例示する。尚、括弧( )内には共重合成分の組成比の一例(モル比)を示す。
・P01:テレフタル酸/イソフタル酸/ビスフェノールAエチレンオキシド2mol付加物/エチレングリコール(50/50/50/50)
・P02:テレフタル酸/ビスフェノールAプロピレンオキシド2mol付加物(100/100)
・P03:テレフタル酸/イソフタル酸/ビスフェノールAエチレンオキシド2mol付加物(70/30/100)
・P04:テレフタル酸/5−スルホイソフタル酸/ビスフェノールAエチレンオキシド2mol付加物/エチレングリコール(95/5/50/50)
・P05:テレフタル酸/イソフタル酸/ビスフェノールAエチレンオキシド2mol付加物/ビスフェノールAプロピレンオキシド2mol付加物(50/50/50/50)
・P06:テレフタル酸/イソフタル酸/ビスフェノールAエチレンオキシド2mol付加物/ビスフェノールAエチレンオキシド3mol付加物/ネオペンチルグリコール(50/50/20/40/40)
・P07:イソフタル酸/ビスフェノールAエチレンオキシド2mol付加物/シクロヘキサンジメタノール(100/50/50)
・P08:テレフタル酸/ビスフェノールAプロピレンオキシド2mol付加物/ネオペンチルグリコール(100/80/20)
・P09:テレフタル酸/イソフタル酸/ビスフェノールAプロピレンオキシド2mol付加物/ネオペンチルグリコール(50/50/35/65)
・P10:テレフタル酸/イソフタル酸/ビスフェノールAエチレンオキシド2mol付加物/ビスフェノールAプロピレンオキシド2mol付加物/エチレングリコール(50/50/25/25/50)
・P101:テレフタル酸/イソフタル酸/ビスフェノールAエチレンオキシド2mol付加物/エチレングリコール/グリセリン(50/50/50/45/5)
・P102:テレフタル酸/ビスフェノールAプロピレンオキシド2mol付加物/グリセリン(100/95/5)
・P103:テレフタル酸/イソフタル酸/ビスフェノールAエチレンオキシド2mol付加物/グリセリン(70/30/95/5)
・P104:テレフタル酸/5−スルホイソフタル酸/ビスフェノールAエチレンオキシド2mol付加物/エチレングリコール/グリセリン(95/5/50/45/5)
・P105:テレフタル酸/イソフタル酸/ビスフェノールAエチレンオキシド2mol付加物/ビスフェノールAプロピレンオキシド2mol付加物/グリセリン(50/50/50/45/5)
・P106:イソフタル酸/トリメリット酸/ビスフェノールAエチレンオキシド2mol付加物/シクロヘキサンジメタノール(98/2/50/50)
・P107:テレフタル酸/トリメリット酸/ビスフェノールAプロピレンオキシド2mol付加物/ネオペンチルグリコール(98/2/80/20)
・P108:テレフタル酸/イソフタル酸/トリメリット酸/ビスフェノールAプロピレンオキシド2mol付加物/ネオペンチルグリコール(50/48/2/35/65)
・P109:テレフタル酸/イソフタル酸/トリメリット酸/ビスフェノールAエチレンオキシド2mol付加物/ビスフェノールAプロピレンオキシド2mol付加物/エチレングリコール(50/48/2/25/25/50)
・P110:ドデセニルコハク酸/フマル酸/トリメリット酸/ビスフェノールAプロピレンオキシド2mol付加物/ネオペンチルグリコール(41/58/2/80/20)
・P111:テレフタル酸/トリメリット酸/エチレングリコール/ビスフェノールAエチレンオキシド2mol付加物(95/5/10/90)
・P112:テレフタル酸/トリメリット酸/エチレングリコール/グリセリン/ビスフェノールAプロピレンオキシド2mol付加物(97/3/40/10/50)
・P113:テレフタル酸/イソフタル酸/トリメリット酸/ドデセニルコハク酸/ビスフェノールAエチレンオキシド2mol付加物/ビスフェノールAプロピレンオキシド2mol付加物(45/45/8/2/50/50)
・P114:テレフタル酸/トリメリット酸/ビスフェノールAエチレンオキシド2mol付加物/ビスフェノールAプロピレンオキシド2mol付加物(97/3/50/50)
・P115:テレフタル酸/イソフタル酸/エチレングリコール/グリセリン/ビスフェノールAプロピレンオキシド2mol付加物(70/30/40/10/50)
−ポリウレタン樹脂−
ポリウレタン樹脂は、一般的に、ジオールとジイソシアネートとの重付加反応により合成される。
ポリウレタン樹脂は、水性媒体への分散性の観点から、解離性基を有することが好ましい。解離性基としては、アニオン性基が好ましく、カルボキシ基及びスルホン酸基が特に好ましい。ポリウレタン樹脂への解離性基の導入は、例えば、解離性基を有するジオールを重付加反応の原料とすることにより行う。
解離性基を有するジオール及び解離性基を有しないジオールとしては、例えば、ポリエステル樹脂の原料として前述した化合物が挙げられる。解離性基を有するジオール及び解離性基を有しないジオールは、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ジイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート,1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート,m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'−ジメチルビフェニレンジイソシアネート、4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)等が挙げられる。ジイソシアネートは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
−ポリアミド樹脂−
ポリアミド樹脂は、一般的に、ジアミンとジカルボン酸との重縮合、アミノカルボン酸の重縮合、ラクタム類の開環重合、又はこれらの組合せにより合成される。
ポリアミド樹脂は、水性媒体への分散性の観点から、解離性基を有することが好ましい。解離性基としては、アニオン性基が好ましく、カルボキシ基及びスルホン酸基が特に好ましい。ポリアミド樹脂への解離性基の導入は、例えば、スルホン酸基を有するジカルボン酸を重縮合の原料とすることにより行う。
ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,2−プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,3‘−ジアミノジフェニルスルホン、キシリレンジアミン等が挙げられる。ジアミンは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
スルホン酸基を有するジカルボン酸、その他のジカルボン酸としては、例えば、ポリエステル樹脂の原料として前述した化合物が挙げられる。ジカルボン酸は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アミノカルボン酸としては、例えば、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、ω−アミノヘキサン酸、ω−アミノデカン酸、ω−アミノウンデカン酸、アントラニル酸等が挙げられる。アミノカルボン酸は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ラクタム類としては、例えば、ε−カプロラクタム、アゼチジノン、ピロリドン等が挙げられる。ラクタム類は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
−ポリウレア樹脂−
ポリウレア樹脂は、一般的に、ジアミンとジイソシアネートとの重付加反応、ジアミンと尿素との脱アンモニア反応、又はこれら反応の組合せにより合成される。
ポリウレア樹脂は、水性媒体への分散性の観点から、解離性基を有することが好ましい。解離性基としては、アニオン性基が好ましく、カルボキシ基及びスルホン酸基が特に好ましい。ポリウレア樹脂への解離性基の導入は、例えば、ポリマー末端のイソシアネートに解離性基を有するアルコール又はアミン等を付加することにより行う。
ジアミンとしては、ポリアミド樹脂の原料として前述した化合物が挙げられる。ジアミンは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ジイソシアネートとしては、ポリウレタン樹脂の原料として前述した化合物が挙げられる。ジイソシアネートは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリウレア樹脂に解離性基を導入するための化合物としては、例えば、1−アミノシクロヘキサンカルボン酸、12−アミノドデカン酸、6−アミノヘキサン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノ−1−プロパンスルホン酸等が挙げられる。これら化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
−ポリカーボネート樹脂−
ポリカーボネート樹脂は、一般的に、ジオールとホスゲン又は炭酸エステル誘導体との反応により合成される。
ポリカーボネート樹脂は、水性媒体への分散性の観点から、解離性基を有することが好ましい。解離性基としては、アニオン性基が好ましく、カルボキシ基及びスルホン酸基が特に好ましい。ポリカーボネート樹脂への解離性基の導入は、例えば、解離性基を有するジオールを重縮合の原料とすることにより行う。
解離性基を有するジオール、解離性基を有しないジオールとしては、ポリウレタン樹脂の原料として前述した化合物が挙げられる。ジオールは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
炭酸エステル誘導体としては、例えば、ジフェニルカーボネート等の芳香族エステルが挙げられる。炭酸エステル誘導体は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリマーは、例えば、ポリマーの酸価、ガラス転移温度、有機溶剤への溶解性、又は特定赤外線吸収剤に対する親和性等を制御する観点から、モノマー種を選択して合成される。
−樹脂の特性−
樹脂の分子量は、重量平均分子量として1000以上20万以下が好ましく、1500以上10万以下がより好ましく、2000以上5万以下が更に好ましい。
重量平均分子量が1000以上であることにより、後述する水溶性成分の含有割合が低減され、スクアリリウム骨格を有する化合物の分散に適する。一方、重量平均分子量が20万以下であることにより、有機溶剤に対する溶解性に優れかつ有機溶剤に溶解したポリマー溶液の粘度が抑えられるので、水性インクを製造する際において水性媒体への分散が容易になり、よって、粒子の分散安定性に優れる。
ポリマーの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography:GPC)によって測定し、ポリスチレン換算で算出する。
樹脂のガラス転移温度は、40℃以上150℃以下が好ましい。ガラス転移温度が40℃以上であることにより、樹脂を含むインクを用いて形成した画像の引っかき耐性やブロッキング耐性に優れ、ガラス転移温度が150℃以下であることにより、ポリマーを含むインクを用いて形成した画像の耐擦性に優れる。この観点から、ポリマーのガラス転移温度は、60℃以上140℃以下がより好ましく、70℃以上130℃以下が更に好ましい。
特に、樹脂が、分子構造中に一般式(F1)で表される単位を含有するポリエステル樹脂(以下「特定ポリエステル樹脂」ともいう)である場合、ガラス転移温度Tgが60℃以上85℃以下であり、かつ軟化温度Tmが130℃以上160℃以下であることが好ましい。特定ポリエステル樹脂が、上記ガラス転移温度Tg及び上記軟化温度Tmの両方の条件を満たすことで、水性インクを用いて画像を形成した際に、強度に優れた画像を形成し得る。
特定ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgは、60℃以上85℃以下が好ましく、65℃以上84℃以下がより好ましく、70℃以上84℃以下がさらに好ましい。
また、特定ポリエステル樹脂の軟化温度Tmは、130℃以上160℃以下が好ましく、135℃以上155℃以下がより好ましく、140℃以上150℃以下がさらに好ましい。
軟化温度Tmが160℃以下であることで、樹脂加熱時又は溶剤溶解時の粘度が高くなり過ぎることが抑制され、特定ポリエステル樹脂を含んだ粒子の作製が行ない易くなる。またその他、部分的なゲル化の発生が抑制され、粒子化プロセスにおける粗大粉や不溶物の増加が抑制されて、水性インクとして実使用し易くなる。
ここで、樹脂のガラス転移温度Tgは、ASTM D3418に準拠して、示差走査熱量計(島津製作所製:DSC−60A)を用いて得られる。昇温速度10℃/minで昇温し、200℃で5分間維持し、200℃から0℃まで液体窒素を用いて−10℃/分で降温し、0℃で5分間維持し、再度0℃から200℃まで10℃/分で昇温をおこなう。2度目の昇温時の吸熱曲線から解析をおこない、Tg以下のベースラインの延長線と、Tg近傍の吸熱カーブの接線の交点の温度をいう。
また、樹脂の軟化温度Tmは、フローテスター(島津製作所製:CFT−500C)を用い、荷重10kgf/cm、ノズルの直径1mm、ノズルの長さ1mm、予熱80℃で5分間、昇温速度6℃/分とし、試料量1gを測定記録したとき、フローテスターのプランジャ降下量−温度曲線におけるS字曲線の高さの1/2における温度(1/2流出温度)を軟化温度とする。
なお、これらの測定は、水性インクの状態から粒子を取り出し(例えば、乾燥によって水性媒体を揮発させる等の方法によって粒子を取り出し)、得られた粒子を用いて行う。
樹脂のガラス転移温度Tgは、例えば、樹脂の原料であるモノマーの組成の調整、可塑剤や相溶性の高い材料などの可塑効果を持つ材料の添加等によって制御される。
また、樹脂の軟化温度Tmは、例えば、ガラス転移温度Tg、樹脂の分子量、分子量分布、可塑剤や相溶性の高い材料などの可塑効果を持つ材料の添加、架橋剤の添加等によって制御される。
(その他成分)
粒子は、スクアリリウム骨格を有する化合物及び樹脂の他に、その他成分を含有してもよい。
粒子に含有されるその他成分としては、例えば、スクアリリウム骨格を有する化合物以外の赤外線吸収剤(すなわち、赤外線吸収能を有する化合物)、紫外線吸収剤(すなわち、紫外線吸収能を有する化合物)等が挙げられる。
スクアリリウム骨格を有する化合物以外の赤外線吸収剤としては、例えば、シアニン系化合物、アミニウム系化合物、クロコニウム系色素、ナフタロシアニン系色素、シアニン系色素等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等が挙げられる。
なお、粒子がスクアリリウム骨格を有する化合物以外の赤外線吸収剤を含有する場合、赤外線吸収剤全体に対するスクアリリウム骨格を有する化合物の含有量は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
(赤外線吸収性粒子の特性)
粒子の体積平均粒径は、10nm以上300nm以下であることが好ましく、10nm以上200nm以下であることがより好ましく、15nm以上150nm以下であることがさらに好ましい。粒子の体積平均粒径が上記範囲であることにより、上記範囲よりも大きい場合に比べてインクジェット方式の打滴特性に優れ、上記範囲よりも小さい場合に比べて粒子の分散安定性に優れる。
なお、粒子の体積平均粒径は、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−500(堀場製作所)を用いて、水性インク又は水性インクにする前の赤外線吸収性粒子の水性分散体(固形分濃度約15質量%)に分散している粒子の体積基準のメジアン径(nm)として算出された値とする。
水性インク全体に対する粒子の含有量は、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、0.5質量%以上15質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上10質量%以下がさらに好ましい。水性インク全体に対する粒子の含有量が上記範囲であることにより、上記範囲よりも多い場合に比べてインクジェット方式の打滴特性に優れ、上記範囲よりも少ない場合に比べて赤外吸収能が高い水性インクが得られやすくなる。
<ジアルキルスルホコハク酸塩>
ジアルキルスルホコハク酸塩は、スルホコハク酸塩のジアルキルエステルであればよく、特に限定されるものではない。
ジアルキルスルホコハク酸塩が有するアルキル基は、炭素数2以上16以下のアルキル基が挙げられ、4以上14以下が好ましく、6以上12以下がより好ましい。上記アルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、分岐状が好ましい。上記アルキル基の具体例としては、例えば、1,3−ジメチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、8−メチルノニル基等が挙げられる。ジアルキルスルホコハク酸塩が有する2つのアルキル基は、同じであってもよく、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
また、ジアルキルスルホコハク酸塩は、ナトリウム塩でもよく、カリウム塩でもよいが、ナトリウム塩が好ましい。
ジアルキルスルホコハク酸塩は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水性インク全体に対するジアルキルスルホコハク酸塩の含有量は、水性インクの記録媒体に対する接触角が目的の範囲となればよく、特に限定されないが、例えば0.005質量%以上2質量%以下が挙げられ、0.01質量%以上1質量%以下が好ましく、0.01質量%以上0.5質量%以下がより好ましい。
また、水性インクが後述するノニオン性界面活性剤を含む場合、ノニオン性界面活性剤100質量部に対するジアルキルスルホコハク酸塩の含有量は、0.5質量部以上20質量部以下が好ましく、0.5質量部以上15質量部以下がより好ましく、1質量部以上10質量部以下がさらに好ましい。
<着色剤>
(赤色顔料)
第1の態様に係る水性インクは、着色剤である赤色顔料として少なくとも赤色アゾ顔料を含み、必要に応じて赤色アゾ顔料以外の着色剤を含んでもよい。
また、第2の態様に係る水性インクは、着色剤として少なくとも赤色顔料を含み、必要に応じて赤色顔料以外の着色剤を含んでもよい。また、第2の態様に係る水性インクは、赤色顔料として、赤色アゾ顔料、赤色アントラキノン顔料、赤色ペリレン顔料、及び赤色ジケトピロロピロール顔料から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、赤色アゾ顔料を含むことがより好ましい。
第1の態様に係る水性インク及び第2の態様に係る水性インクでは、着色剤全体に対する赤色顔料の割合が、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
また、第1の態様に係る水性インク及び第2の態様に係る水性インクでは、赤色顔料全体に対する赤色アゾ顔料の割合が、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
赤色アゾ顔料としては、例えば、ピグメントレッド30、ピグメントレッド48:1、ピグメントレッド53:1、ピグメントレッド57:1、ピグメントレッド112、ピグメントレッド114、ピグメントレッド119、ピグメントレッド146、ピグメントレッド150、ピグメントレッド163、ピグメントレッド166、ピグメントレッド170、ピグメントレッド176、ピグメントレッド183、ピグメントレッド187、ピグメントレッド188、ピグメントレッド208、ピグメントレッド221、ピグメントレッド253、ピグメントレッド268、ピグメントレッド269等が挙げられる。
赤色アゾ顔料は、1種のみ用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
赤色アゾ顔料としては、これらの中でも、ナフトールAS系顔料(すなわち、3−ヒドロキシ−2−ナフトアニリド骨格を有する顔料)が好ましく、その中でも特にピグメントレッド269がより好ましい。ナフトールAS系顔料としては、例えば、ピグメントレッド30、ピグメントレッド112、ピグメントレッド114、ピグメントレッド146、ピグメントレッド163、ピグメントレッド166、ピグメントレッド170、ピグメントレッド176、ピグメントレッド183、ピグメントレッド187、ピグメントレッド188、ピグメントレッド208、ピグメントレッド221、ピグメントレッド268、ピグメントレッド269等が挙げられる。
赤色アゾ顔料以外の赤色顔料としては、例えば、赤色アントラキノン顔料(例えば、ピグメントレッド168、ピグメントレッド177等)、赤色ペリレン顔料(例えば、ピグメントレッド149、ピグメントレッド179等)、赤色ジケトピロロピロール顔料(例えば、ピグメントレッド254、ピグメントレッド255等)が挙げられる。
水性インク全体に対する赤色アゾ顔料の含有量は、目的とする水性インクの色に応じて調整され、特に限定されるものではなく、例えば0.5質量%以上25質量%以下が挙げられ、0.5質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましい。
また、水性インク全体に対する赤色顔料の含有量は、目的とする水性インクの色に応じて調整され、特に限定されるものではなく、例えば0.5質量%以上25質量%以下が挙げられ、0.5質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましい。
赤色アゾ顔料の含有量は、水性インクにおける赤外吸収能の経時劣化抑制の観点から、ジアルキルスルホコハク酸塩の含有量の10倍以上500倍以下が好ましく、15倍以上500倍以下がより好ましく、20倍以上300倍以下がさらに好ましい。
また、赤色顔料の含有量は、水性インクにおける赤外吸収能の経時劣化抑制の観点から、ジアルキルスルホコハク酸塩の含有量の10倍以上500倍以下が好ましく、15倍以上500倍以下がより好ましく、20倍以上300倍以下がさらに好ましい。
粒子100質量部に対する赤色アゾ顔料の含有量は、水性インクにおける赤外吸収能の経時劣化抑制の観点から、20質量部以上1000質量部以下が好ましく、25質量部以上500質量部以下がより好ましく、40質量部以上400質量部以下がさらに好ましい。
また、粒子100質量部に対する赤色顔料の含有量は、水性インクにおける赤外吸収能の経時劣化抑制の観点から、20質量部以上1000質量部以下が好ましく、25質量部以上500質量部以下がより好ましく、40質量部以上400質量部以下がさらに好ましい。
水性インクが後述するノニオン性界面活性剤を含む場合、赤色アゾ顔料の含有量は、ノニオン性界面活性剤の0.5倍以上30倍以下が好ましく、0.5倍以上20倍以下がより好ましく、1倍以上15倍以下がさらに好ましい。
また、水性インクが後述するノニオン性界面活性剤を含む場合、赤色顔料の含有量は、ノニオン性界面活性剤の0.5倍以上30倍以下が好ましく、0.5倍以上20倍以下がより好ましく、1倍以上15倍以下がさらに好ましい。
赤色アゾ顔料の体積平均粒径は、例えば、10nm以上200nm以下の範囲が挙げられる。
また、赤色顔料の体積平均粒径は、例えば、10nm以上200nm以下の範囲が挙げられる。
(その他の着色剤)
赤色顔料以外の顔料としては、例えば、緑色、茶色、白色等の特定色顔料;金色、銀色等の金属光沢顔料;無色又は淡色の体質顔料;プラスチックピグメント;シリカ、アルミナ、又はポリマービード等の表面に染料又は顔料を固着させた粒子;染料の不溶レーキ化物;着色エマルジョン;着色ラテックス;などが挙げられる。
また、顔料として、樹脂により被覆された所謂マイクロカプセル顔料も挙げられる。市販のマイクロカプセル顔料としては、DIC社製、東洋インキ社製がある。さらに、顔料として、高分子化合物を顔料に物理的に吸着又は化学的に結合させた、樹脂分散型顔料も挙げられる。
なお、赤色顔料以外の着色剤として、染料を用いてもよい。染料を用いる場合は、染料を高分子分散剤(例えば、本開示の特定ポリエステル樹脂)と共に粒子化し、該粒子を水性インクに含ませることが好ましい。
着色剤として顔料を使用する場合は、併せて顔料分散剤を用いることが好ましい。顔料分散剤としては、公知のあらゆる、高分子分散剤、界面活性剤等が挙げられる。顔料分散剤は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。顔料分散剤の含有量は、顔料の種類及び顔料分散剤の種類により異なるため一概には言えないが、顔料の含有量に対して0.1質量%以上100質量%以下がよい。
顔料として、水に自己分散する顔料(以下「自己分散型顔料」という。)を用いてもよい。自己分散型顔料とは、顔料表面に親水性基を有し、顔料分散剤が存在しなくとも水に分散する顔料のことを指す。自己分散型顔料としては、例えば、顔料に対して、カップリング剤処理、ポリマーグラフト処理、プラズマ処理、酸化処理、還元処理等の表面改質処理を施すことにより得られる、公知のあらゆる自己分散型顔料が挙げられる。
<水性媒体>
水性媒体は、水、又は、水を主たる溶媒とする混合溶媒である。混合溶媒は、例えば、水と水溶性有機溶剤との混合物である。
水としては、不純物の混入又は微生物の発生を抑制する観点から、蒸留水、イオン交換水、限外濾過水などの精製水が好ましい。
水溶性有機溶剤としては、アルコール、多価アルコール、多価アルコール誘導体、含窒素溶剤、含硫黄溶剤などが挙げられる。水性インクに含まれる水溶性有機溶剤は、例えば、水性インクの製造過程において一般式(1)で表される化合物又は特定ポリマーの溶解に用いた有機溶剤の残存物である。
水の含有量は、水性インクの全質量に対して、40質量%以上85質量%以下が好ましく、50質量%以上80質量%以下がより好ましい。
水溶性有機溶剤の含有量は、水性インクの全質量に対して、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
<ノニオン性界面活性剤>
水性インクは、必要に応じてその他の成分としてノニオン性界面活性剤を含んでもよい。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、アセチレングリコール、アセチレングリコールのポリオキシエチレン付加物等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水性インク全体に対するノニオン性界面活性剤の含有量は、目的とする水性インクの表面張力に応じて調整され、特に限定されるものではなく、例えば0.01質量%以上10質量%以下が挙げられ、0.05質量%以上7質量%以下が好ましく、0.1質量%以上5質量%以下がより好ましい。
<その他成分>
水性インクは、必要に応じて、その他成分を含んでもよい。その他成分としては、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩及びノニオン性界面活性剤以外の界面活性剤、中和剤、分散安定剤、スクアリリウム骨格を有する化合物以外の赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、ポリマー、浸透剤、粘度調整剤、pH調整剤、pH緩衝剤、酸化防止剤、防腐剤、防カビ剤等が挙げられる。
<水性インクの製造方法>
水性インクの製造方法としては、例えば、赤外線吸収性粒子が水性媒体に分散した分散液を製造後、前記分散液、ジアルキルスルホコハク酸塩、赤色顔料、及び必要に応じてその他成分(すなわち、水性インクに含まれるその他成分)を混合する方法が挙げられる。
上記赤外線吸収性粒子が水性媒体に分散した分散液の製造方法としては、例えば、転相乳化法によりスクアリリウム骨格を有する化合物及び樹脂を含有する赤外線吸収性粒子を得る方法のほか、含浸法により樹脂の粒子にスクアリリウム骨格を有する化合物を含浸させて赤外線吸収性粒子を得る方法等が挙げられ、これらの中でも転相乳化法が好ましい。
転相乳化法は、有機溶剤にスクアリリウム骨格を有する化合物及び樹脂が溶解した溶液を調製し、該溶液に中和剤を加えて樹脂を中和した後、水を徐々に混合して、スクアリリウム骨格を有する化合物と樹脂とを双方を含有する赤外線吸収性粒子に粒子化して分散状態にする方法である。ここでの分散状態は、液体粒子が分散した乳化でもよく、固体粒子が分散した懸濁でもよく、分散安定性の観点からは、固体粒子が分散した懸濁が好ましい。有機溶剤は、該有機溶剤の水に対する溶解度が10質量%以下である場合、又は、該有機溶剤の蒸気圧が水より大きい場合には、粒子の分散安定性の観点から除去されることが好ましい。中和は、必須の工程ではないが、樹脂が未中和の解離性基を有する場合、分散液のpH調製等の観点から、行うことが好ましい。
含浸法は、樹脂の粒子が分散した分散液を調製し、該分散液と、有機溶剤にスクアリリウム骨格を有する化合物が溶解した溶液と、を混合した後、有機溶剤を徐々に除去してスクアリリウム骨格を有する化合物を樹脂の粒子に含浸させ、赤外線吸収性粒子が分散した分散液とする方法である。樹脂の粒子は、液体粒子でもよく固体粒子でもよく、分散安定性の観点からは、固体粒子が好ましい。樹脂の粒子が分散した分散液は、例えば、樹脂が溶解した溶液を調製し、該溶液に中和剤を加えて中和した後、水を徐々に混合しながら有機溶剤を除去することにより調製する。
転相乳化法及び含浸法に用いる有機溶剤は、スクアリリウム骨格を有する化合物の溶解性及び樹脂の溶解性に基づいて選択する。具体的には、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤;クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤;ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;などが挙げられる。これらの有機溶剤は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
有機溶剤の使用量としては、樹脂100質量部に対し、10質量部以上2000質量部以下が好ましく、100質量部以上1000質量部以下がより好ましい。有機溶剤の使用量が樹脂100質量部に対し10質量部以上であると、粒子の分散が安定し、有機溶剤の使用量が樹脂100質量部に対し2000質量部以下であると、有機溶剤を除去する工程が不要又は短時間となる。
転相乳化法及び含浸法に用いる中和剤としては、樹脂がアニオン性基を有する場合、有機塩基、無機アルカリが挙げられる。有機塩基としては、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等が挙げられる。無機アルカリとしては、アルカリ金属の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等)、炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等)、アンモニアなどが挙げられる。
中和剤の添加量は、粒子の分散安定性の観点から、水性インクのpHが後述の範囲となる添加量が好ましい。
転相乳化法及び含浸法における樹脂の使用量としては、スクアリリウム骨格を有する化合物100質量部に対し、500質量部以上15000質量部以下が好ましく、1000質量部以上12000質量部以下がより好ましい。樹脂の使用量がスクアリリウム骨格を有する化合物100質量部に対し500質量部以上であると、スクアリリウム骨格を有する化合物の分散が安定し、樹脂の使用量がスクアリリウム骨格を有する化合物100質量部に対し15000質量部以下であると、水性インクの赤外線吸収効率がよい。
転相乳化法及び含浸法において、スクアリリウム骨格を有する化合物以外の有機化合物も用いて、該有機化合物を、スクアリリウム骨格を有する化合物及び樹脂と共に粒子化し、三者を含有する粒子を形成してもよい。共に粒子化する有機化合物としては、例えば、染料、スクアリリウム骨格を有する化合物以外の赤外線吸収能を有する化合物(例えば、クロコニウム系色素、ナフタロシアニン系色素、シアニン系色素、アミニウム系色素等)、紫外線吸収能を有する化合物(例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等)などが挙げられる。
<水性インクの特性>
水性インクのpHは、スクアリリウム骨格を有する化合物の分解を抑制し、経時的な劣下を抑制する観点から、10.5以下が好ましく、10.0以下がより好ましく、9.5以下が更に好ましく、9.0以下が更に好ましい。一方、粒子を安定的に分散させる観点からは、水性インクのpHは、5.0以上が好ましく、5.5以上がより好ましく、6.0以上が更に好ましく、6.5以上が特に好ましい。
水性インクのpHは、温度23±1℃、相対湿度55±5%の環境下で測定する。
水性インクの粘度は、1mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、1.5mPa・s以上20mPa・s以下がより好ましい。水性インクの粘度は、TV−20形粘度計(東機産業)を測定装置として用い、温度23±1℃、せん断速度750s−1の条件で測定する。
(表面張力)
水性インクの表面張力は、20mN/m以上40mN/m以下であることが好ましく、20mN/m以上35mN/m以下であることがより好ましく、22mN/m以上33mN/m以下であることがさらに好ましく、24mN/m以上30mN/m以下であることが特に好ましい。
水性インクの表面張力が上記範囲であることにより、上記範囲より高い場合に比べて記録媒体上での濡れ性が良好となり、低浸透性又は非浸透性の記録媒体に画像を形成することが容易となる。また、水性インクの表面張力が上記範囲であることにより、上記範囲より低い場合に比べて記録装置の吐出部に対する濡れ性が低くなり、画像を形成する際の吐出安定性が良好となる。
水性インクの表面張力は、ウィルヘルミー型表面張力計を用いて、温度23±1℃、相対湿度55±5%の環境下で測定する。
(接触角)
滴下後100msにおけるOKトップコート+(王子製紙製、以下「接触角測定対象物」ともいう)に対する水性インクの接触角は、22°以上32°以下であることが好ましく、25°以上29°以下であることがより好ましく、25°以上28°以下であることがさらに好ましい。
水性インクの接触角が上記範囲であることにより、上記範囲より大きい場合に比べて記録媒体上での濡れ性が良好となり、低浸透性又は非浸透性の記録媒体に画像を形成することが容易となる。また、水性インクの接触角が上記範囲であることにより、上記範囲より小さい場合に比べて記録装置の吐出部に対する濡れ性が低くなり、インクの溢れ出しが抑制され、画像を形成する際の吐出安定性が良好となる。
水性インクの接触角は、動的接触角試験機 1100DAT(Fibro System AB社製)を用い、23℃、55%RHの環境において測定する。具体的には、接触角測定対象物に水性インクを2μl滴下し、インク滴が接触角測定対象物に接触した時点より100msec経過した時点で、インク滴を撮像する。そして、撮像した画像から、インク滴が接触角測定対象物と接触した面の直径およびインク滴の高さを解析し、接触角と求める。
(赤外線吸収低下率)
第2の態様に係る水性インクの赤外線吸収低下率は、5%以下である。
また、第1の態様に係る水性インクの赤外線吸収低下率は、5%以下であることが好ましい。
水性インクの赤外線吸収低下率は、4%以下であることがより好ましく、3%以下であることが特に好ましい。
<インクカートリッジ>
本実施形態に係るインクカートリッジは、前述の本実施形態に係る水性インクを収容したカートリッジである。インクカートリッジは、例えば、インクジェット方式の記録装置に着脱される形態で提供される。
<記録装置、記録方法>
本実施形態に係る記録装置は、前述の本実施形態に係る水性インクを収容し、該水性インクを記録媒体に付与するインク付与手段と、記録媒体に付与された水性インクに赤外線を照射する赤外線照射手段と、を備える。上記記録装置により、本実施形態に係る水性インクを記録媒体に付与するインク付与工程と、記録媒体に付与された水性インクに赤外線を照射する赤外線照射工程とを有する記録方法が実現される。
本実施形態におけるインク付与手段としては、例えば、インクジェット方式によりインクを吐出する吐出手段;ロール、スプレー、スポンジ等による塗布手段;オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、凸版印刷等による印刷手段;が挙げられる。
本実施形態におけるインク付与手段は、インクジェット方式によりインクを吐出する吐出手段が好適である。インクジェット方式を適用した記録装置及び記録方法は、本実施形態に係る水性インクを用いることにより、吐出安定性に優れる。
本実施形態に係る記録装置は、記録媒体に付与された水性インクを乾燥させる乾燥手段として、赤外線照射手段を備える。本実施形態に係る記録装置は、前記乾燥手段として、赤外線照射手段のほかに、加熱ロール、加熱ドラム、加熱ベルト等の接触式加熱手段;発熱体及び送風機からなる温風送風手段;これらの組合せ;を備えていてもよい。
記録媒体としては、例えば、紙;樹脂でコートされた紙;樹脂、金属、ガラス、セラミックス、シリコン、ゴム等を材料とするフィルム及び板;が挙げられる。
記録媒体は、浸透性の記録媒体でもよく、低浸透性の記録媒体でもよく、非浸透性の記録媒体でもよい。
ここで、浸透性の記録媒体とは、動的走査吸液計で測定した接触時間500ms以内におけるインクの最大吸液量が15ml/mを超える記録媒体を意味する。浸透性の記録媒体の具体例としては、例えば、普通紙等が挙げられる。
また、低浸透性の記録媒体とは、動的走査吸液計で測定した接触時間500ms以内におけるインクの最大吸液量が3ml/m以上15ml/m以下の範囲である記録媒体を意味する。低浸透性の記録媒体の具体例としては、例えば、コート紙、アート紙、及びキャスト紙等の塗工紙が挙げられる。
また、非浸透性の記録媒体とは、動的走査吸液計で測定した接触時間500ms以内におけるインクの最大吸液量が3ml/m未満である記録媒体を意味する。非浸透性の記録媒体の具体例としては、例えば、樹脂、金属、ガラス、セラミックス、シリコン、ゴム等を材料とするフィルム、板等が挙げられる。
本実施形態に係る記録装置は、本実施形態に係る水性インクを収容し、記録装置に着脱されるようカートリッジ化されたインクカートリッジを備えていてもよい。
以下、本実施形態に係る記録装置及び記録方法の一例について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る記録装置の一例を示す概略構成図である。図1に示す記録装置12は、インクジェット方式の記録装置である。
図1に示す記録装置12は、筐体14の内部に、画像記録前の記録媒体Pを収容する容器16と、駆動ロール24及び従動ロール26に支持された無端状の搬送ベルト28と、インク付与手段の一例であるインク吐出ヘッド(インク吐出ヘッド30Y、30M、30C、30K。総称するときは、インク吐出ヘッド30という。)と、赤外線照射装置(赤外線照射装置60Y、60M、60C、60K。総称するときは、赤外線照射装置60という。)と、画像記録後の記録媒体Pを収容する容器40とを備える。
容器16と搬送ベルト28との間は、画像記録前の記録媒体Pが搬送される搬送経路22であり、搬送経路22には、記録媒体Pを容器16から1枚ずつ取り出すロール18と、記録媒体Pを搬送する複数のロール対20とが配置されている。搬送ベルト28の上流側には、帯電ロール32が配置されている。帯電ロール32は、従動ロール26との間で搬送ベルト28及び記録媒体Pを挟みつつ従動し、接地された従動ロール26との間に電位差を生じさせ、記録媒体Pに電荷を与えて搬送ベルト28に静電吸着させる。
インク吐出ヘッド30は、搬送ベルト28の平坦部分に対向して、搬送ベルト28の上方に配置されている。インク吐出ヘッド30と搬送ベルト28とが対向した領域が、インク吐出ヘッド30からインク滴が吐出される領域である。
インク吐出ヘッド30Y、30M、30C、30Kはそれぞれ、Y(イエロー)色の画像を記録するヘッド、M(マゼンタ)色の画像を記録するヘッド、C(シアン)色の画像を記録するヘッド、K(ブラック)色の画像を記録するヘッドである。インク吐出ヘッド30Y、30M、30C、30Kは、例えばこの順に、搬送ベルト28の上流側から下流側に並べられている。インク吐出ヘッド30Y、30M、30C、30Kはそれぞれ、記録装置12に着脱される各色のインクカートリッジ31Y、31M、31C、31Kと供給管(不図示)を通じて連結され、インクカートリッジから各色のインクがインク吐出ヘッドへ供給される。
インク吐出ヘッド30としては、例えば、有効な記録領域(インクを吐出するノズルの配置領域)が記録媒体Pの幅(記録媒体Pの搬送方向と直交する方向の長さ)以上とされた長尺状のヘッド;記録媒体Pの幅よりも短尺状のヘッドであって、記録媒体Pの幅方向に移動してインクを吐出するキャリッジ方式のヘッド;が挙げられる。
インク吐出ヘッド30が採用するインクジェット方式としては、ピエゾ素子の振動圧力を利用するピエゾ方式;静電誘引力を利用してインクを吐出する電荷制御方式;電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出する音響インクジェット方式;インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット方式;などが挙げられる。
インク吐出ヘッド30は、例えば、インク滴量10pL以上15pL以下の範囲でインク滴を吐出する低解像度用の記録ヘッド(例えば600dpiの記録ヘッド)、インク滴量10pL未満の範囲でインク滴を吐出する高解像度用の記録ヘッド(例えば1200dpiの記録ヘッド)である。dpiは「dots per inch」を意味する。
記録装置12は、4つのインク吐出ヘッドを備える形態に限られない。記録装置12は、YMCKに中間色を加えた4つ以上のインク吐出ヘッドを備える形態;1つのインク吐出ヘッドを備え1色のみの画像を記録する形態;であってもよい。
インク吐出ヘッド30の下流側には、搬送ベルト28の上方に、各色のインク吐出ヘッドごとに赤外線照射装置60Y、60M、60C、60Kが配置されている。赤外線照射装置60(赤外線照射手段の一例)は、記録媒体P上のインクに赤外線を照射してインクの乾燥を行う。
赤外線照射装置60の光源としては、例えば、発光ダイオード、半導体レーザ、面発光型半導体レーザ、ハロゲンランプ、キセノンランプが挙げられる。
赤外線照射装置60としては、例えば、有効な赤外線照射領域(赤外線を照射する光源の配置領域)がインク吐出ヘッド30による記録領域の幅以上とされた長尺状の赤外線照射装置;インク吐出ヘッド30による記録領域の幅よりも短尺状の赤外線照射装置であって、記録媒体Pの幅方向に移動して赤外線を照射するキャリッジ方式の赤外線照射装置;が挙げられる。
赤外線照射装置60の照射条件は、インクの赤外線吸収性能、インク中の水分量などに応じて設定する。照射条件としては、記録媒体P上に付与されたインク中の水分量を10質量%以下に乾燥させる照射条件が好ましい。具体的には、例えば、中心波長が700nm以上1200nm以下(好ましくは780nm以上980nm以下)、照射強度が0.1J/cm以上10J/cm以下(好ましくは1J/cm以上5J/cm以下)、照射時間が0.1ミリ秒以上10秒以下(好ましくは10ミリ秒以上100ミリ秒以下)である。
記録装置12は、各色のインク吐出ヘッドごとに赤外線照射装置を備える形態に限られず、最下流のインク吐出ヘッドの下流側に1つのみ赤外線照射装置を備える形態であってもよい。
記録装置12は、赤外線照射装置60と共に、インクの乾燥手段として接触式加熱手段及び温風送風手段の少なくともいずれかを備えていてもよい。接触式加熱手段又は温風送風手段は、例えば、記録媒体の表面温度を50℃以上120℃以下の範囲に上昇させる条件で乾燥を行う。
赤外線照射装置60の下流側には、駆動ロール24と対向して剥離板34が配置されている。剥離板34は、記録媒体Pを搬送ベルト28から剥離させる。
搬送ベルト28と容器40との間は、画像記録後の記録媒体Pが搬送される搬送経路36であり、搬送経路36には、記録媒体Pを搬送する複数のロール対38が配置されている。
記録装置12の動作について説明する。
画像記録前の記録媒体Pは、容器16からロール18で1枚ずつ取り出され、複数のロール対20によって搬送ベルト28へ搬送される。
次いで、記録媒体Pは、帯電ロール32によって搬送ベルト28に静電吸着され、搬送ベルト28の回転によってインク吐出ヘッド30の下方へ搬送される。
次いで、記録媒体P上に、インク吐出ヘッド30からインクが吐出され、画像が記録される。
次いで、記録媒体P上のインクに赤外線照射装置60から赤外線が照射され、インクが赤外線吸収によって発熱し、インク温度が上昇し、インクが乾燥する。
次いで、インクが乾燥し画像が固定化された記録媒体Pは、剥離板34によって搬送ベルト28から剥離され、複数のロール対38によって容器40に搬送される。
本実施形態に係る記録装置は、インク付与手段から記録媒体にインクを直接付与する形態に限られず、インク付与手段から中間転写体にインクを付与した後、中間転写体上のインクを記録媒体に転写する形態であってもよい。
本実施形態に係る記録装置は、図1に示す記録装置12を一例とする枚葉機に限られず、輪転機でもよい。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り「部」及び「%」はすべて質量基準である。
[スクアリリウム骨格を有する化合物の合成]
<化合物(1−a−1)の合成>
下記の反応スキームに従って化合物(1−a−1)を合成した。
三口フラスコにDean−Starkトラップ、還流冷却管、撹拌シール及び撹拌棒を設置し、反応容器とした。反応容器に2,2,8,8−テトラメチル−3,6−ノナジイン−5−オールとシクロヘキサンを入れた。酸化マンガン(IV)の粉末を加え、スリーワンモータで撹拌し、加熱還流させた。反応中にできた水を共沸蒸留により除去した。薄層クロマトグラフィーで2,2,8,8−テトラメチル−3,6−ノナジイン−5−オールの残存がないことを確認した。反応混合物を放冷後、減圧濾過し、黄色の濾液(F1)を得た。濾別した固体を別の容器に移して酢酸エチルを添加し、超音波分散して濾過する作業を4回繰り返し、酢酸エチル抽出液(F2)を得た。酢酸エチル抽出液(F2)と濾液(F1)とを混合し、ロータリーエバポレータ、次いで真空ポンプで濃縮し、オレンジ色の液体を得た。オレンジ色の液体を減圧蒸留し、淡黄色液体(中間体1)を得た。
三口フラスコに温度計及び滴下ロートを設置し、反応容器とした。エタノールに一硫化水素ナトリウムn水和物を加え、室温(20℃)下で溶解するまで撹拌した後、氷水で冷却した。内温が5℃になったところで、中間体1とエタノールの混合液を少しずつ滴下した。滴下により液が黄色からオレンジ色に変化した。発熱により内温が上昇するため、滴下量を調整しながら、内温5℃以上7℃以下の範囲で滴下した。その後、氷水バスを外し、室温(20℃)下で自然昇温させながら撹拌した。反応液に水を投入し、ロータリーエバポレータでエタノールを除去した。その後、飽和するまで食塩を加え、酢酸エチルで分液して有機相を回収した。有機相を飽和塩化アンモニウムで2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後、減圧濃縮し、茶色の液体を回収した。茶色の液体を減圧蒸留した。200℃から留分が出始めるが、初留は目的とする成分の純度が低いので、蒸気量が増えたところで本留とした。黄色液体(中間体2)が蒸留された。
三口フラスコに撹拌棒と中間体2とを入れ、窒素導入管及び還流冷却器を付け、窒素置換した。窒素雰囲気下、無水テトラヒドロフランを注射器で加え、室温(20℃)下で撹拌しながら臭化メチルマグネシウムの1Mテトラヒドロフラン溶液を注射器で滴下した。滴下終了後、この反応液を加熱撹拌し、還流させた。窒素雰囲気下、反応液を放冷後、氷水浴にて冷却しながら、臭化アンモニウムを水に溶かした溶液を滴下した。反応混合物をさらに室温(20℃)にて撹拌した後、n−ヘキサンを加え、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後、n−ヘキサン/テトラヒドロフラン溶液を注射筒で取出し、無機層を酢酸エチルで洗浄し抽出液を得た。n−ヘキサン/テトラヒドロフラン溶液と無機層からの抽出液とを混合し、減圧濃縮後真空乾燥し、中間体3を得た。
窒素雰囲気下、中間体3及びスクアリン酸を、シクロヘキサンとイソブタノールとの混合溶媒に分散し、ピリジンを加えて加熱還流させた。その後、イソブタノールを追加し、反応混合物をさらに加熱還流させた。反応中に生じた水を共沸蒸留により除去した。反応混合物を放冷後、減圧濾過し、難溶物を除去した。濾液をロータリーエバポレータで濃縮した。残渣にメタノールを添加し、40℃に加熱後、−10℃に冷却した。濾過にて結晶を得て、これを真空乾燥し、化合物(1−a−1)を得た。
[樹脂の合成]
<ポリエステル樹脂P05の合成>
・テレフタル酸ジメチル97.1部
・イソフタル酸ジメチル97.1部
・ビスフェノールAエチレンオキシド2mol付加物158.2部
・ビスフェノールAプロピレンオキシド2mol付加物172.2部
撹拌機及び蒸留管を装着した三口フラスコに、上記の原料モノマーと、縮合触媒として酢酸カルシウム0.1部及び酸化アンチモン(III)0.1部を入れ、窒素気流下、生成するメタノール及びエチレングリコールを留去しつつ昇温し、150℃に保ちながら30分間撹拌し、さらに190℃に保ちながら1時間撹拌した。次いで、温度を150℃に下げ、撹拌下、ポンプにより反応系内を徐々に減圧し、反応系内の圧力を10Pa以上40Pa以下の範囲に保ちながら、エチレングリコールを留去しつつ反応系内を昇温し、250℃でさらに3時間反応させた。生成物をそのまま取り出して冷却し、ポリエステル樹脂P05を462部得た。
ポリエステル樹脂P05は、重量平均分子量(Mw)18,000、酸価13mgKOH/g、ガラス転移温度Tg60℃であった。
[赤外線吸収性粒子の製造]
<粒子AD−1の製造>
化合物(1−a−1)であるスクアリリウム化合物0.3部をフラスコに入れた。そこに、テトラヒドロフラン14部を加え、撹拌子を入れて撹拌した。次いで、10部のポリエステル樹脂P05を加え、さらにメチルエチルケトン25部を加えて撹拌し、混合した。次いで、水酸化ナトリウムの10質量%水溶液を、ポリエステル樹脂P05に含まれる全カルボキシ基の0.75当量(中和度75%)、撹拌しながら加えた。次いで、撹拌を続けながら水130部を徐々に添加し、水を混合した。混合液が均一に近い状態になった後、フラスコに蒸留管と減圧ポンプを付け、40℃以上50℃以下となるように混合液を加熱して撹拌しながら減圧し、有機溶剤と水の一部を留去した。有機溶剤を水に置換しながら濃縮する操作を、材料から換算した固形分濃度が12質量%を超えないように水の添加量を調節しながら、有機溶剤臭が無くなるまで繰り返した。濃縮液を230メッシュのナイロンメッシュで濾過し、粒子AD−1の分散液を得た。
この分散液について、下記「−収率の測定−」に記載の方法によって、固形分量を測定し、収率を求めた。測定した固形分量に基づいて、この分散液に水を添加して固形分濃度を15.25質量%に調整した。
−収率の測定−
粒子AD−1の分散液の一部を大気圧下50℃で4時間加熱して乾燥させ、固形分量(質量)を測定し、下記の式に従って収率を求めた。
〔式〕:粒子AD−1の分散液の固形分量÷(粒子AD−1の製造に用いたスクアリリウム骨格を有する化合物量+粒子AD−1の製造に用いたポリエステル樹脂の固形分量+粒子AD−1の製造過程で中和に用いた水酸化ナトリウムの質量)×100
粒子AD−1の製造に用いた化合物(1−a−1)の量及びポリエステル樹脂量から換算すると、樹脂100質量部に対するスクアリリウム骨格を有する化合物の含有量は1.7質量部であった。
また、粒子AD−1の体積平均粒径を前述の方法で測定したところ、68nmであった。
[実施例1]
<水性インクの調製>
下記の組成になるようにマゼンタインクを調液した。調液後1μmフィルターで粗大粒子を除去し、マゼンタインク1を調製した。
・ピグメントレッド269(赤色アゾ顔料、体積平均粒径:140nm)・・・5質量%
・顔料分散剤(化合物名:スチレン−メタクリル酸ブチル−メタクリル酸共重合体)・・・0.5質量%
・粒子AD−1の分散液(固形分濃度:15.25質量%)・・・30質量%(固形分:4.6質量%)
・プロピレングリコール・・・16質量%
・プロピレングリコールモノブチルエーテル・・・5質量%
・ノニオン性界面活性剤1(日信化学工業株式会社製、オルフィンE1010)・・・1質量%
・ノニオン性界面活性剤2(日信化学工業株式会社製、オルフィンE1004)・・・0.5質量%
・ジアルキルスルホコハク酸塩(花王製、化合物名:ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム)・・・0.05質量%
・純水・・・合計が100質量%となるように添加
[実施例2〜3]
ジアルキルスルホコハク酸塩の含有量を0.5質量%に変更した以外は、実施例1と同様にしてマゼンタインク2を得た。
ジアルキルスルホコハク酸塩の含有量を0.01質量%に変更した以外は、実施例1と同様にしてマゼンタインク3を得た。
[比較例1]
ピグメントレッド269の代わりにピグメントレッド122(赤色キナクリドン顔料)を、含有量が5質量%となるように添加した以外は、実施例1と同様にしてマゼンタインクC1を得た。
[測定、評価]
得られたマゼンタインクについて、前述の方法により、表面張力、OKトップコート+紙に対する接触角、赤外線吸光係数低下率(すなわち、上記赤外線吸収低下率)、粘度、pHをそれぞれ求めた。結果を表1に示す。
<グラム吸光係数>
得られたマゼンタインクについて、波長820nmにおけるグラム吸光係数(初期)を求めた。測定装置としては分光光度計(日立製作所製、型番:U−4100)を用いた。
次に、マゼンタインクを25℃の環境下で6ヶ月保管した後、上記と同じ方法で波長820nmにおけるグラム吸光係数(保管後)を求め、下記式により吸光係数維持率を求めた。結果を表2に示す。
式 : 吸光係数維持率(%) = (グラム吸光係数(保管後)/グラム吸光係数(初期))×100
<初期の印字試験(初期乾燥性評価)>
製造直後(1時間以内)のマゼンタインクを、エプソン社製インクジェットプリンターPX−1004のカートリッジに詰め替え、特菱アート両面N(三菱製紙)にインクジェットプリンターPX−1004で印字したところ、全てのマゼンタインクにおいて、吐出不良がなく良好な印字が行えた。
次いで、得られた画像について、中心波長810nm、照射強度3J/cm、照射時間200ミリ秒の条件で赤外線照射を行い、下記基準により評価した。
(評価基準)
A:インク乾燥不足による画像こすれのない画像が得られた
B:インク乾燥不足による画像こすれが生じた。
<保管後の印字試験(保管後乾燥性評価)>
得られたマゼンタインクを、製造後25℃の環境下で6ヶ月保管した後、上記初期の印字試験と同じ方法で印字を行ったところ、全てのマゼンタインクにおいて、吐出不良がなく良好な印字が行えた。
次いで、得られた画像について、中心波長810nm、照射強度3J/cm、照射時間200ミリ秒の条件で赤外線照射を行い、下記基準により評価した。
(評価基準)
A:インク乾燥不足による画像こすれのない画像が得られた
B:インク乾燥不足による画像こすれが生じた。
12 記録装置
14 筐体
16 容器
18 ロール
20 ロール対
22 搬送経路
24 駆動ロール
26 従動ロール
28 搬送ベルト
30Y,30M,30C,30K インク吐出ヘッド(インク付与手段の一例)
31Y,31M,31C,31K インクカートリッジ
32 帯電ロール
34 剥離板
36 搬送経路
38 ロール対
40 容器
60Y,60M,60C,60K 赤外線照射装置(赤外線照射手段の一例)
P 記録媒体

Claims (19)

  1. 水性媒体と、
    スクアリリウム骨格を有する化合物と樹脂とを含有する赤外線吸収性粒子と、
    ジアルキルスルホコハク酸塩と、
    赤色アゾ顔料と、
    を含む水性インク。
  2. 前記スクアリリウム骨格を有する化合物は、下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の水性インク。

    (一般式(1)中、R1a、R1b、R1c、及びR1dは、それぞれ独立に、アリール基又はアルキル基を表す。)

    (一般式(2)中、R2a、R2b、R2c、及びR2dはそれぞれ独立にアルキル基を表し、R2aとR2b及びR2cとR2dはそれぞれ独立に、互いに連結して環を形成していてもよい。)
  3. 前記樹脂は、ポリエステル樹脂である請求項1又は請求項2に記載の水性インク。
  4. 前記赤色アゾ顔料の含有量は、前記ジアルキルスルホコハク酸塩の含有量の10倍以上500倍以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の水性インク。
  5. さらにノニオン性界面活性剤を含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の水性インク。
  6. 前記ノニオン性界面活性剤100質量部に対する前記ジアルキルスルホコハク酸塩の含有量は、0.5質量部以上20質量部以下である請求項5に記載の水性インク。
  7. 前記赤色アゾ顔料の含有量は、前記ノニオン性界面活性剤の含有量の0.5倍以上30倍以下である請求項5又は請求項6に記載の水性インク。
  8. 前記赤外線吸収性粒子100質量部に対する、前記赤色アゾ顔料の含有量は、20質量部以上1000質量部以下である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の水性インク。
  9. 前記樹脂100質量部に対する、前記スクアリリウム骨格を有する化合物の含有量は、0.5質量部以上50質量部以下である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の水性インク。
  10. 前記赤外線吸収性粒子の体積平均粒径は、10nm以上300nm以下である請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の水性インク。
  11. 前記赤外線吸収性粒子の含有量は、水性インク全体に対し、0.1質量%以上20質量%以下である請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の水性インク。
  12. 前記赤色アゾ顔料は、ナフトールAS系顔料である請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の水性インク。
  13. 前記赤色アゾ顔料は、ピグメントレッド269である請求項12に記載の水性インク。
  14. 水性媒体と、スクアリリウム骨格を有する化合物と樹脂とを含有する赤外線吸収性粒子と、ジアルキルスルホコハク酸塩と、赤色顔料と、を含み、
    60℃の環境下で14日間経過することによる前記赤外線吸収性粒子における赤外線吸光係数の低下率が5%以下である水性インク。
  15. 請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載の水性インクを収容したインクカートリッジ。
  16. 請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載の水性インクを収容し、前記水性インクを記録媒体に付与するインク付与手段と、
    前記記録媒体に付与された前記水性インクに赤外線を照射する赤外線照射手段と、
    を備える記録装置。
  17. 請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載の水性インクを記録媒体に付与するインク付与工程と、
    前記記録媒体に付与された前記水性インクに赤外線を照射する赤外線照射工程と、
    を有する記録方法。
  18. 前記記録媒体は、低浸透性又は非浸透性である請求項17に記載の記録方法。
  19. 前記インク付与工程は、インクジェット方式により水性インクを記録媒体に吐出する工程である請求項17又は請求項18に記載の記録方法。
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