JP2019218377A - 間葉系幹細胞の細胞老化抑制剤、間葉系幹細胞の細胞老化抑制用皮膚外用組成物、間葉系幹細胞の細胞老化抑制用機能性飲食品、及び間葉系幹細胞の細胞老化抑制方法 - Google Patents

間葉系幹細胞の細胞老化抑制剤、間葉系幹細胞の細胞老化抑制用皮膚外用組成物、間葉系幹細胞の細胞老化抑制用機能性飲食品、及び間葉系幹細胞の細胞老化抑制方法 Download PDF

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Abstract

【課題】間葉系幹細胞の細胞老化を効果的に抑制可能な新規な間葉系幹細胞の細胞老化抑制剤、並びにその間葉系幹細胞の細胞老化抑制剤を用いた間葉系幹細胞の細胞老化抑制用皮膚外用組成物、間葉系幹細胞の細胞老化抑制用機能性飲食品、及び間葉系幹細胞の細胞老化抑制方法を提供する。【解決手段】アスタキサンチン及びニコチン酸トコフェロールを有効成分として含有する間葉系幹細胞の細胞老化抑制剤、並びにその間葉系幹細胞の細胞老化抑制剤を用いた間葉系幹細胞の細胞老化抑制用皮膚外用組成物、間葉系幹細胞の細胞老化抑制用機能性飲食品、及び間葉系幹細胞の細胞老化抑制方法。【選択図】なし

Description

本開示は、幹細胞の細胞老化抑制剤、幹細胞の細胞老化抑制用皮膚外用組成物、幹細胞の細胞老化抑制用機能性飲食品、及び幹細胞の細胞老化抑制方法に関する。
細胞老化(cellular senescence)とは、細胞に不可逆的な細胞周期の停止が起こる現象である。例えば、細胞分裂に伴うDNA複製エラーの蓄積、酸化ストレス、放射線、がん遺伝子の活性化等によりDNAに損傷が生じると、DNA損傷応答(DDR;DNA Damage Response)が活性化される。このDNA損傷応答により、細胞分裂に関与するサイクリンキナーゼの阻害因子であるp16INK4a、p21CIP1、p53等の発現が亢進し、細胞周期の停止が引き起こされる。DNAの損傷の程度が小さければ細胞は再び細胞周期を復帰させ増殖するが、損傷の程度が大きいと細胞周期が不可逆的に停止し、細胞老化へと至る。細胞老化を起こした細胞(老化細胞)は、老化関連酸性β-ガラクトシダーゼ(SA β-Gal;Senescence Associated β-Galactosidase)活性が向上することが知られている。
老化細胞は、単に細胞周期を停止しているだけでなく、炎症性サイトカイン、炎症性ケモカイン、及びMMP(Matrix MetalloProteinase)のほか、IGF(Insulin-like Growth Factor)に結合して細胞老化を誘引するIGFBP(IGF Binding Protein)−4、IGFBP−7などを分泌し、周囲環境に悪影響を与えることが知られている。このような現象は、SASP(Senescence-Associated Secretory Phenotype)とも称される。
ところで、幹細胞は、細胞分裂により同一の細胞を産生する自己複製能と、様々な細胞に分化する多分化能とを併せ持つ細胞である。受精卵が代表的な幹細胞であるが、成人の組織にも組織幹細胞が存在し、組織の恒常性維持に寄与している。例えば、皮膚組織の真皮層には間葉系幹細胞が存在しており、真皮層に豊富に含まれるコラーゲン等の細胞外マトリクスを産生する線維芽細胞へと分化する。
近年、幹細胞も細胞老化を起こすことが明らかとなり、組織の再生を担う幹細胞の細胞老化が個体老化の本質であるという考え(ステムセルエイジング)が提唱されるに至っている。
また、間葉系幹細胞等の幹細胞は、細胞療法に用いるバイオツールとしても注目されている。幹細胞は、骨髄、脂肪組織等から採取することができるものの、細胞療法を実施するために充分な数の幹細胞を直接採取することは困難である。そのため、採取した幹細胞をin vitroで培養し、増殖させる必要がある。しかし、幹細胞の継代を繰り返すと、幹細胞の細胞老化が引き起こされ、細胞療法の治療効果が低減することがある。
このような背景から、近年、幹細胞の細胞老化を抑制するための技術が盛んに研究されている。
例えば、特許文献1には、N−アセチルシステインの存在下で、ATM(Ataxia Telangiectasia Mutated)ホモ欠損マウス由来の造血幹細胞を培養することにより、造血幹細胞内の活性酸素量が低下し、自己複製能が回復することが示されている。
特許文献2には、抗酸化剤及びFGF(Fibroblast Growth Factor)−2の存在下で間葉系幹細胞を培養することにより、間葉系幹細胞の細胞増殖が亢進し、また、間葉系幹細胞の分化潜在能力が高まることが示されている。
特許文献3には、リゾホスファチジン酸(LPA;LysoPhosphatidic Acid)受容体アンタゴニストの存在下で幹細胞を培養することにより、幹細胞の機能を保持したまま、分裂回数が向上することが示されている。
国際公開第2005/121320号 特開2015−77074号公報 特開2015−84649号公報
しかし、特許文献1で使用されているN−アセチルシステインについて本発明者らが確認したところ、正常ヒト幹細胞の細胞老化が抑制され難いことが判明した。
また、特許文献2で使用されているFGF−2は安定性に劣り、また、皮膚外用組成物等への応用が困難であると考えられる。
また、特許文献3で使用されているLPA受容体アンタゴニストは、広範な機能を有する脂質メディエーターを阻害するものであるため、細胞老化抑制以外の悪影響が懸念される。
本開示は、上記事情に鑑み、幹細胞の細胞老化を効果的に抑制可能な新規な幹細胞の細胞老化抑制剤を提供することを課題とする。また、本開示は、その幹細胞の細胞老化抑制剤を用いた幹細胞の細胞老化抑制用皮膚外用組成物、幹細胞の細胞老化抑制用機能性飲食品、及び幹細胞の細胞老化抑制方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> アスタキサンチンを有効成分として含有する幹細胞の細胞老化抑制剤。
<2> 幹細胞が間葉系幹細胞である<1>に記載の幹細胞の細胞老化抑制剤。
<3> さらに、トコフェロール類を有効成分として含有する<1>又は<2>に記載の幹細胞の細胞老化抑制剤。
<4> トコフェロール類がニコチン酸トコフェロールを含む<3>に記載の幹細胞の細胞老化抑制剤。
<5> p16、p21、γH2AX、IGFBP−4、及びIGFBP−7からなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質の発現を抑制する<1>〜<4>のいずれか1つに記載の幹細胞の細胞老化抑制剤。
<6> p16及びp21のタンパク質の発現を抑制する<5>に記載の幹細胞の細胞老化抑制剤。
<7> <1>〜<6>のいずれか1つに記載の幹細胞の細胞老化抑制剤を含有する幹細胞の細胞老化抑制用皮膚外用組成物。
<8> <1>〜<6>のいずれか1つに記載の幹細胞の細胞老化抑制剤を含有する幹細胞の細胞老化抑制用機能性飲食品。
<9> <1>〜<6>のいずれか1つに記載の幹細胞の細胞老化抑制剤の存在下で幹細胞を培養することを含む幹細胞の細胞老化抑制方法。
本開示によれば、幹細胞の細胞老化を効果的に抑制可能な新規な幹細胞の細胞老化抑制剤を提供することができる。また、本開示によれば、その幹細胞の細胞老化抑制剤を用いた幹細胞の細胞老化抑制用皮膚外用組成物、幹細胞の細胞老化抑制用機能性飲食品、及び幹細胞の細胞老化抑制方法を提供することができる。
図1は、過酸化水素によって幹細胞に酸化ストレスを与えた後、アスタキサンチン単独、又はアスタキサンチン及びニコチン酸トコフェロールの組み合わせを適用した場合のγH2AXの発現量を、免疫染色法により可視化し、顕微鏡画像の核中蛍光量を定量した結果を示す図である。 図2は、過酸化水素によって幹細胞に酸化ストレスを与えた後、アスタキサンチン単独、又はアスタキサンチン及びニコチン酸トコフェロールの組み合わせを適用した場合の、細胞増殖率の測定結果を示す図である。 図3は、ニコチン酸トコフェロールを適用し、幹細胞の継代を繰り返した場合のp16の発現量を、ウェスタンブロッティングにより測定した結果を示す図である。
以下、本開示の幹細胞の細胞老化抑制剤、幹細胞の細胞老化抑制用皮膚外用組成物、幹細胞の細胞老化抑制用機能性飲食品、及び幹細胞の細胞老化抑制方法について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において各成分の濃度又は含有率は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計の濃度又は含有率を意味する。
<幹細胞の細胞老化抑制剤>
本開示の幹細胞の細胞老化抑制剤(以下、単に「細胞老化抑制剤」ともいう。)は、アスタキサンチンを有効成分として含有する。本開示の細胞老化抑制剤によれば、幹細胞の細胞老化を効果的に抑制することができる。すなわち、本開示によれば、幹細胞の細胞老化を抑制するためのアスタキサンチンの使用もまた提供される。
上述したとおり、細胞老化には、酸化ストレスが関与することが知られている。酸化ストレスの関与は、例えば、培養細胞を過酸化水素で処理すると細胞老化が促進されることからも示唆されている(Chen, Q.M. et al., Biochem. J., 332, pp.43-50 (1998))。
一方、アスタキサンチン等のカロテノイド類は、活性酸素又はフリーラジカルのうち、一重項酸素及び脂質ラジカルに対しては強い消去能を有するものの、スーパーオキシドアニオンラジカル、過酸化水素、及びヒドロキシラジカルの消去能は殆ど有しないことが知られている(眞岡孝至、食品・臨床栄養、第2巻、3頁−14頁(2007))。
しかし、本発明者らの実験によって、過酸化水素によって幹細胞に酸化ストレスを与えた場合の細胞老化が、アスタキサンチンによって抑制されることが明らかとなった。アスタキサンチンがこのような細胞老化抑制効果を奏することは驚くべきことである。
細胞老化の抑制対象となる幹細胞の種類は特に制限されない。幹細胞としては、体性幹細胞(間葉系幹細胞、肺幹細胞、骨髄幹細胞、上皮幹細胞、神経幹細胞、肝幹細胞、膵幹細胞、造血幹細胞、筋幹細胞、生殖幹細胞、毛母幹細胞、毛包幹細胞、色素幹細胞等)、胚性幹細胞(embryonic stem cell;ES細胞)、人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell;iPS細胞)などが挙げられる。ある実施態様では、細胞老化の抑制対象となる幹細胞は間葉系幹細胞である。
本開示の細胞老化抑制剤を後述する皮膚外用組成物又は機能性飲食品に適用する場合、細胞老化の抑制対象となる幹細胞はヒトの幹細胞であることが好ましい。
一方、本開示の細胞老化抑制剤を後述する細胞老化抑制方法に適用する場合、細胞老化の抑制対象となる幹細胞の由来は特に制限されない。幹細胞の由来生物としては、ヒト、マウス、ラット、ウサギ等の哺乳動物が挙げられる。培養した幹細胞を細胞療法に用いる場合には、幹細胞は、治療対象のヒト(患者)由来の幹細胞であることが好ましい。
本開示の細胞老化抑制剤による細胞老化抑制効果は、公知の分子マーカーにより確認することができる。
本開示の細胞老化抑制剤としては、p16、p21、γH2AX、IGFBP−4、及びIGFBP−7からなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質の発現を抑制するものが好ましい。p16及びp21は、細胞分裂に関与するサイクリンキナーゼの阻害因子として知られている。γH2AXは、ヒストンH2AXのアミノ酸配列の139番目のセリン残基がリン酸化されたものであり、細胞老化を引き起こすDNA損傷の分子マーカーとして知られている。IGFBP−4及びIGFBP−7は、IGFに結合し、細胞老化を誘引することが知られている。特に、本開示の細胞老化抑制剤としては、p16及びp21のタンパク質の発現を抑制するものがより好ましい。細胞老化の経路のうちp16が関与する経路とp21が関与する経路との両者を抑制することにより、幹細胞の細胞老化をより効果的に抑制することができる。
(アスタキサンチン)
本開示の細胞老化抑制剤は、アスタキサンチンを有効成分として含有する。
アスタキサンチンは、化学名:3,3’−ジヒドロキシ−β,β−カロテン−4,4’−ジオンで表される化合物である。アスタキサンチンは、3位及び3’位のヒドロキシ基の立体配置により、(3R,3’R)体、(3R,3’S)体、及び(3S,3’S)体の3種の異性体が存在し、さらに分子内の共役二重結合の存在によりシス体及びトランス体の異性体も存在する。本開示の細胞老化抑制剤に含有されるアスタキサンチンは、これら異性体のいずれであってもよく、複数種の異性体の混合物であってもよい。
また、アスタキサンチンは、3位及び3’位のヒドロキシ基の少なくとも一方が脂肪酸等とエステルを形成したエステル体であってもよく、複数種のエステル体の混合物であってもよい。
本開示では、特に断らない限り、アスタキサンチンのエステル体を含めて「アスタキサンチン」と総称する。
アスタキサンチンは、植物類、藻類、甲殻類、バクテリア等の天然物から精製して得られるものであってもよく、合成により得られるものであってもよい。アスタキサンチンは、Enzo Life Sciences社等から市販品を入手することもできる。
また、アスタキサンチンは、アスタキサンチンを含有する天然物からの抽出物として、本開示の細胞老化抑制剤中に含有されていてもよい。アスタキサンチンを含有する抽出物としては、ヘマトコッカス藻抽出物、オキアミ抽出物、ファフィア酵母抽出物等が挙げられる。これらの中でも、アスタキサンチンの安定性等の観点から、ヘマトコッカス藻抽出物が好ましい。
ヘマトコッカス藻抽出物の原料としては、具体的には、ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis)、ヘマトコッカス・ラキュストリス(Haematococcus lacustris)、ヘマトコッカス・カペンシス(Haematococcus capensis)、ヘマトコッカス・ドロエバケンシス(Haematococcus droebakensis)、ヘマトコッカス・ジンバビエンシス(Haematococcus zimbabwiensis)等が挙げられる。
ヘマトコッカス藻抽出物は、上記の原料を、必要に応じて細胞壁を破砕して、アセトン、エーテル、クロロホルム、アルコール等の有機溶剤、又は超臨界二酸化炭素等の抽出媒体を加えて抽出することによって得ることができる。
また、ヘマトコッカス藻抽出物は、市販品を用いることもできる。ヘマトコッカス藻抽出物の市販品としては、富士フイルム(株)のASTOTS(登録商標)−SS、ASTOTS(登録商標)−S、ASTOTS(登録商標)−10OS、ASTOTS(登録商標)−5OS、ASTOTS(登録商標)−10O、ASTOTS(登録商標)−5O、ASTOTS(登録商標)−2.0PW、ASTOTS(登録商標)−3.0MB等;アスタリール(株)のアスタリール(登録商標)オイル50F、アスタリール(登録商標)オイル5F、アスタリール(登録商標)パウダー20F等;東洋酵素化学(株)のBioAstin(登録商標) SCE7、BioAstin(登録商標) SCE10等;Algatechnologies社のAsta Pure;などが挙げられる。
ヘマトコッカス藻抽出物中のアスタキサチンの色素純分としての含有率は、例えば、0.001質量%〜60質量%であることが好ましく、0.01質量%〜50質量%であることがより好ましい。
また、ヘマトコッカス藻抽出物中のアスタキサチンの合計に占めるエステル体の割合は、例えば、50モル%以上であることが好ましく、75モル%以上であることがより好ましく、90%モル以上であることがさらに好ましい。
(トコフェロール類)
本開示の細胞老化抑制剤は、さらに、トコフェロール類を有効成分として含有していてもよい。本開示の細胞老化抑制剤がトコフェロール類を含有することにより、幹細胞の細胞老化をより効果的に抑制することができる傾向にある。
トコフェロール類としては、特に制限されず、トコフェロール;酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、リノール酸トコフェロール、オレイン酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール等のトコフェロール誘導体;トコトリエノール;酢酸トコトリエノール等のトコトリエノール誘導体;などが挙げられる。本開示の細胞老化抑制剤は、トコフェロール類を1種単独で含有していてもよく、2種以上を組み合わせて含有していてもよい。
本開示の細胞老化抑制剤は、これらのトコフェロール類の中でも、ニコチン酸トコフェロールを含有することが好ましい。ニコチン酸トコフェロールは、細胞老化の経路のうちp16が関与する経路を抑制する効果に優れている。一方、アスタキサンチンは、細胞老化の経路のうちp21が関与する経路を抑制する効果に優れている。このため、本開示の細胞老化抑制剤がアスタキサンチンとニコチン酸トコフェロールとの両者を含有することにより、幹細胞の細胞老化をより効果的に抑制することができる。
アスタキサンチンの含有量に対するトコフェロール類(好ましくはニコチン酸トコフェロール)の含有量の割合(トコフェロール類の含有量/アスタキサンチンの含有量)は特に制限されず、例えば、質量基準で0.0001〜10000であることが好ましく、0.001〜1000であることがより好ましい。
(その他の成分)
本開示の細胞老化抑制剤は、必要に応じて、アスタキサンチン及びトコフェロール類以外のその他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、公知の抗酸化剤(アスコルビン酸及びその誘導体等)などが挙げられる。
<幹細胞の細胞老化抑制用皮膚外用組成物>
本開示の幹細胞の細胞老化抑制用皮膚外用組成物(以下、単に「皮膚外用組成物」ともいう。)は、本開示の細胞老化抑制剤を含有する。
本開示の皮膚外用組成物中における細胞老化抑制剤の含有率は、幹細胞の細胞老化抑制効果が奏される限り特に制限されない。本開示の皮膚外用組成物中におけるアスタキサンチンの含有率は、例えば、0.000001質量%〜0.2質量%であることが好ましく、0.000005質量%〜0.1質量%であることがより好ましく、0.00001質量%〜0.05質量%であることがさらに好ましい。
本開示の皮膚外用組成物は、本開示の細胞老化抑制剤を含有することにより、幹細胞の細胞老化抑制効果を発揮する。
例えば、本開示の皮膚外用組成物を顔等の皮膚に適用し、皮膚に存在する間葉系幹細胞の細胞老化を抑制することで、皮膚の老化に伴うシワ、たるみ等の改善を期待し得る。
この点について本発明者らは以下のように考えている。
一般的な皮膚科学においては、ケラチノサイト等の表皮細胞に着目した細胞老化抑制の研究が進められている。これに対し、本発明者らは、幹細胞に着目した細胞老化抑制の研究を進めた結果、驚くべきことに、幹細胞の細胞老化を抑制することが表皮細胞の細胞老化を抑制することよりも効果的であることを見出した。幹細胞は、表皮細胞よりもターンオーバーの遅い細胞であることから、幹細胞の細胞老化を抑制することで、より効果的に皮膚の老化を抑制できるものと考えられる。
また、本開示の皮膚外用組成物を頭皮に適用し、頭皮に存在する毛母幹細胞、毛包幹細胞等の細胞老化を抑制することで、脱毛又は薄毛の治療又は予防も期待し得る。
本開示の皮膚外用組成物は、細胞老化抑制剤以外に、皮膚外用組成物に通常用いられる添加成分を適宜含有することができる。このような添加成分としては、油剤、溶剤、界面活性剤、乳化剤、増粘剤、紫外線吸収剤、美白剤、保湿剤、エモリエント剤、ビタミン類、pH調整剤、防腐剤、香料、着色剤等が挙げられる。
本開示の皮膚外用組成物の形態は特に制限されず、液状、ジェル状、クリーム状等が挙げられる。
本開示の皮膚外用組成物は、化粧料、経皮医薬品、経皮医薬部外品等の用途に適用することができる。化粧料としては、化粧水、美容液、乳液、ローション、クリーム等のスキンケア化粧料が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
<幹細胞の細胞老化抑制用機能性飲食品>
本開示の幹細胞の細胞老化抑制用機能性飲食品(以下、単に「機能性飲食品」ともいう。)は、本開示の細胞老化抑制剤を含有する。ここで、「機能性飲食品」とは、含有される成分に特有の機能に基づいて、生体における所望の生理学的作用を期待し得る飲食品を意味する。
本開示の機能性飲食品中における細胞老化抑制剤の含有率は、幹細胞の細胞老化抑制効果が奏される限り特に制限されない。本開示の機能性飲食品中におけるアスタキサンチンの含有率は、例えば、0.000001質量%〜0.5質量%であることが好ましく、0.000005質量%〜0.2質量%であることがより好ましく、0.00001質量%〜0.1質量%であることがさらに好ましい。
本開示の機能性飲食品は、本開示の細胞老化抑制剤を含有することにより、幹細胞の細胞老化抑制効果を発揮する。本開示の機能性飲食品を摂取することにより、各種組織の恒常性維持の効果を期待し得る。
本開示の機能性飲食品は、細胞老化抑制剤以外に、機能性飲食品に通常用いられる添加成分を適宜含有することができる。このような添加成分としては、蛋白質、オリゴペプチド、アミノ酸、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類、乳化剤、甘味料、香料、着色剤等が挙げられる。
本開示の機能性飲食品の形態は特に制限されず、栄養食、半消化態栄養食、自然流動食、ドリンク剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
<幹細胞の細胞老化抑制方法>
本開示の幹細胞の細胞老化抑制方法(以下、単に「細胞老化抑制方法」ともいう。)は、本開示の細胞老化抑制剤の存在下で幹細胞を培養することを含む。例えば、本開示の細胞老化抑制剤を含有する培地中で幹細胞を培養することにより、幹細胞の細胞老化を効果的に抑制することができる。本開示の細胞老化抑制方法によれば、幹細胞の細胞老化による機能低下を抑制しながら、幹細胞をin vitroで増殖させることが可能となる。
幹細胞としては、体性幹細胞(間葉系幹細胞、肺幹細胞、骨髄幹細胞、上皮幹細胞、神経幹細胞、肝幹細胞、膵幹細胞、造血幹細胞、筋幹細胞、生殖幹細胞、毛母幹細胞、毛包幹細胞、色素幹細胞等)、胚性幹細胞(embryonic stem cell;ES細胞)、人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell;iPS細胞)などが挙げられる。
幹細胞の由来生物としては、ヒト、マウス、ラット、ウサギ等の哺乳動物が挙げられる。培養した幹細胞を細胞療法に用いる場合には、幹細胞は、治療対象のヒト(患者)由来の幹細胞であることが好ましい。
幹細胞を培養する際の培地中における細胞老化抑制剤の含有率は、幹細胞の細胞老化抑制効果が奏される限り特に制限されない。培地中におけるアスタキサンチンの含有率は、例えば、0.00001質量ppm〜10質量ppmであることが好ましく、0.0001質量ppm〜5質量ppmであることがより好ましく、0.0005質量ppm〜0.1質量ppmであることがさらに好ましい。
幹細胞を培養する培地は特に制限されず、幹細胞の種類に応じて、既知の基本培地に必要に応じて添加剤を加えたものを用いることができる。基本培地としては、DMEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium)、EMEM(Eagle's Minimum Essential Medium)、MEMα(Minimum Essential Medium Alpha modification)、RPMI 1640(Roswell Park Memorial Institute 1640)培地、HamF12(Ham's F12)培地等が挙げられる。添加剤としては、血清(ウシ胎仔血清等)、アミノ酸(L−グルタミン酸等)、抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシン等)などが挙げられる。
幹細胞の培養条件は特に制限されず、37℃かつ5v/v% CO等の公知の培養条件を採用することができる。
以下、本発明の実施形態をさらに具体的に説明する。但し、本発明の実施形態は、その主旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例及び参考例において、幹細胞としては、ヒト間葉系幹細胞(Lonza社)を使用した。また、培地としては、間葉系幹細胞用培地(Mesenchymal Stem Cell Basal Medium、Lonza社)を使用した。
以下の説明中、濃度に関する「M」はモル濃度を表し、1M=1mol/Lである。
また、以下の説明中、「ELISA」は酵素結合免疫吸着アッセイ(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)を意味し、「PBS」はリン酸緩衝液(Phosphate Buffered Saline)を意味し、「BSA」はウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin)を意味し、「SDS」はドデシル硫酸ナトリウム(Sodium Dodecyl Sulfate)を意味し、「PVDF」はポリフッ化ビニリデン(PolyVinylidene DiFluoride)を意味する。
<実施例1>
実施例1では、過酸化水素によって幹細胞に酸化ストレスを与えた場合の各被験物質による細胞老化抑制効果を、IGFBP−7を分子マーカーとして評価した。使用した被験物質を下記表1に示す。
まず、ヒト間葉系幹細胞を2500個/cmの細胞密度で48ウェルプレートに播種し、間葉系幹細胞用培地中で培養した。細胞を播種した翌日に、1mM 過酸化水素を添加した間葉系幹細胞用培地に培地交換し、30分間培養した。次いで、間葉系幹細胞用培地にて1回洗浄した後、各被験物質を添加した間葉系幹細胞用培地に培地交換し、培養を継続した。その間、2日〜3日毎に培地交換を行った。培養5日目に間葉系幹細胞用培地に培地交換して24時間培養した後、培地を回収した。
次いで、回収した培地中のIGFBP−7の濃度をELISAキット(R&D Systems社)により測定した。さらに、細胞増殖測定用キット(Cell Counting Kit-8、(株)同仁化学研究所)を用いて細胞増殖率を測定し、細胞増殖率の測定値によってIGFBP−7の濃度の測定値を補正した。そして、被験物質を適用しないコントロールに対するIGFBP−7の抑制率を算出した。
なお、各被験物質の適用濃度としては、細胞増殖率が10%以上抑制されない濃度を上限とし、IGFBP−7の抑制率が最も高かった濃度を採用した。
IGFBP−7の抑制率を算出する手順の詳細は、下記(1)〜(4)のとおりである。
(1)各被験物質について同条件のサンプルを5つ以上(すなわち、n≧5)調製した後、回収した培地中のIGFBP−7の濃度を測定する。
(2)上記(1)の測定結果のうち、最高値及び最低値をそれぞれ1点ずつ除き、残りのサンプル(3サンプル以上)の値を採用する。
(3)上記(2)で採用された各サンプルのIGFBP−7の濃度を細胞増殖率の測定値で補正し、コントロールに対するIGFBP−7の抑制率を下記式に従って算出する。なお、抑制率が0%未満の場合は、IGFBP−7の分泌が促進されたこと、すなわち細胞老化が促進されたことを意味する。
IGFBP−7の抑制率(%)={(細胞増殖率による補正後のコントロールの値)−(細胞増殖率による補正後のサンプルの値)}/(細胞増殖率による補正後のコントロールの値)×100
(4)上記(1)及び(2)を各被験物質について3回繰り返し、上記(3)によって算出されたIGFBP−7の抑制率(3サンプル×3回以上)を算術平均する。
各被験物質を適用した場合のIGFBP−7の抑制率を下記表2に示す。
表2に示すとおり、アスタキサンチンは、他の被験物質と比較して適用濃度が顕著に低いにも関わらず、IGFBP−7の抑制率が最も高かった。この結果から、アスタキサンチンは、他の被験物質と比較して細胞老化抑制効果が顕著に優れることが分かる。
<実施例2>
実施例2では、過酸化水素によって幹細胞に酸化ストレスを与えた場合のアスタキサンチン単独、又はアスタキサンチン及びニコチン酸トコフェロールの組み合わせによる細胞老化抑制効果を、γH2AXを分子マーカーとして評価した。
まず、ヒト間葉系幹細胞を5000個/cmの細胞密度で35mmマルチウェルガラスボトムディッシュ(ウェルサイズ:9.5mm、カバーガラス厚:0.15mm〜0.18mm、ポリ−L−リシンコート)に播種し、間葉系幹細胞用培地中で培養した。細胞を播種した翌日に、1mM 過酸化水素を添加した間葉系幹細胞用培地に培地交換し、30分間培養した。次いで、間葉系幹細胞用培地にて1回洗浄した後、0.002質量ppm アスタキサンチン、又は0.0005質量ppm アスタキサンチン及び0.05質量ppm ニコチン酸トコフェロールを添加した間葉系幹細胞用培地に培地交換し、培養を継続した。6時間培養後、PBSにて2回洗浄した。
次いで、4w/v% パラホルムアルデヒド含有PBSで15分間処理することにより細胞を固定し、PBSで1回洗浄した。0.2v/v% Triton-X 100含有PBSで15分間処理して膜透過処理を行った後、PBSで1回洗浄した。1w/v% BSA含有PBSで1時間処理することによりブロッキングを行い、PBSで1回洗浄した。次いで、抗γH2AXウサギポリクローナル抗体(Abcam社)を500倍希釈した溶液を添加して、4℃で終夜反応させた。さらに、0.05v/v% Tween 20含有PBS(T−PBS)で3回洗浄した後、緑色蛍光色素で標識されたヤギ抗ウサギIgG抗体(Abcam社)を250倍希釈した溶液で1時間反応させた。その後、T−PBSで2回洗浄し、顕微鏡観察した。細胞内のγH2AXは、細胞核の緑色蛍光強度を測定することにより定量した。
γH2AXの発現量の定量結果を図1に示す。図1は、過酸化水素によって酸化ストレスを与えない場合のγH2AXの発現量を1とした相対値で示したものである。図1に示すとおり、過酸化水素によって酸化ストレスを与えることで、細胞内のγH2AXの発現量は約2.5倍に増加した。しかし、0.002質量ppm アスタキサンチンを適用した場合には、γH2AXの発現量が約30%減少し、0.0005質量ppm アスタキサンチン及び0.05質量ppm ニコチン酸トコフェロールを適用した場合には、γH2AXの発現量が約53%減少した。
なお、アスタキサンチン及びニコチン酸トコフェロールの組み合わせ以外の2種の被験物質の組み合わせについても、上記と同様にして細胞老化抑制効果を評価した。その結果、アスタキサンチン及びニコチン酸トコフェロールの組み合わせが最も有効であることが確認された。
<実施例3>
実施例3では、過酸化水素によって幹細胞に酸化ストレスを与えた場合のアスタキサンチン単独、又はアスタキサンチン及びニコチン酸トコフェロールの組み合わせによる細胞老化抑制効果を、p21を分子マーカーとして評価した。
まず、ヒト間葉系幹細胞を2500個/cmの細胞密度で6ウェルプレートに播種し、間葉系幹細胞用培地中で培養した。細胞を播種した翌日に、1mM 過酸化水素を添加した間葉系幹細胞用培地に培地交換し、30分間培養した。次いで、間葉系幹細胞用培地にて1回洗浄した後、0.002質量ppm アスタキサンチン、又は0.0005質量ppm アスタキサンチン及び0.1質量ppm ニコチン酸トコフェロールを添加した間葉系幹細胞用培地に培地交換し、培養を継続した。その間、2日〜3日毎に培地交換を行った。4日間〜5日間の培養後、細胞を回収して可溶化し、ウェスタンブロッティングに供した。
各レーンにつき20μgのタンパク質をSDS−ポリアクリルアミドゲルに展開した後、タンパク質をPVDF膜に転写した。転写後のPVDF膜は、ブロッキング剤(Blocking One、ナカライテスク(株))で1時間処理することによりブロッキングを行った後、T−PBSで洗浄した。次いで、抗p21ウサギモノクローナル抗体(Abcam社)を500倍希釈した溶液を添加して、4℃で終夜反応させた。また、内部標準として、抗β−アクチンマウスモノクローナル抗体(Sigma-Aldrich社)を20000倍希釈した溶液を添加して、室温で1時間反応させた。T−PBSで3回洗浄した後、それぞれ2次抗体に反応させた。p21のバンドの濃さを画像解析し、β−アクチンのバンドの濃さにて補正した。
その結果、被験物質を適用しなかった場合と比較して、0.002質量ppm アスタキサンチンを適用した場合には、p21の発現量が約33%減少し、0.0005質量ppm アスタキサンチン及び0.1質量ppm ニコチン酸トコフェロールを適用した場合には、p21の発現量が約38%減少したことが確認された。
<実施例4>
実施例4では、過酸化水素によって幹細胞に酸化ストレスを与えた場合におけるアスタキサンチン単独、又はアスタキサンチン及びニコチン酸トコフェロールの組み合わせによる細胞老化抑制効果を、細胞増殖率により評価した。
まず、ヒト間葉系幹細胞を2500個/cmの細胞密度で48ウェルプレートに播種し、間葉系幹細胞用培地中で培養した。細胞を播種した翌日に、1mM 過酸化水素を添加した間葉系幹細胞用培地に培地交換し、30分間培養した。次いで、間葉系幹細胞用培地にて1回洗浄した後、0.002質量ppm アスタキサンチン、又は0.002質量ppm アスタキサンチン及び0.05質量ppm ニコチン酸トコフェロールを添加した間葉系幹細胞用培地に培地交換し、培養を継続した。その間、2日〜3日毎に培地交換を行った。4日間の培養後、細胞増殖測定用キット(Cell Counting Kit-8、(株)同仁化学研究所)を用いて細胞増殖率を測定した。
細胞増殖率の測定結果を図2に示す。図2は、被験物質を適用していない場合の細胞増殖率を1とした相対値で示したものである。図2に示すとおり、0.002質量ppm アスタキサンチンを適用した場合には、細胞増殖率が約11%亢進し、0.002質量ppm アスタキサンチン及び0.05質量ppm ニコチン酸トコフェロールを適用した場合には、細胞増殖率が約19%亢進した。この結果は、実施例3においてp21の発現量が減少した結果と整合するものであった。
<参考例1>
参考例1では、幹細胞の継代を繰り返した場合のニコチン酸トコフェロールによる細胞老化抑制効果を、p16を分子マーカーとして評価した。
まず、6継代目〜8継代目のヒト間葉系幹細胞を2500個/cmの細胞密度で6ウェルプレートに播種し、間葉系幹細胞用培地中で培養した。細胞を播種した翌日に、0.1質量ppm又は0.3質量ppm ニコチン酸トコフェロールを添加した間葉系幹細胞用培地に培地交換し、6日間培養した。その間、2日〜3日毎に培地交換を行った。培養後、細胞を回収して可溶化し、ウェスタンブロッティングに供した。
各レーンにつき20μgのタンパク質をSDS−ポリアクリルアミドゲルに展開した後、タンパク質をPVDF膜に転写した。転写後のPVDF膜は、ブロッキング剤(Blocking One、ナカライテスク(株))で1時間処理することによりブロッキングを行った後、T−PBSで洗浄した。次いで、抗p16ウサギモノクローナル抗体(Abcam社)を1000倍希釈した溶液を添加して、4℃で終夜反応させた。また、内部標準として、抗β−アクチンマウスモノクローナル抗体(Sigma-Aldrich社)を20000倍希釈した溶液を添加して、室温で1時間反応させた。T−PBSで3回洗浄した後、それぞれ2次抗体に反応させた。p16のバンドの濃さを画像解析し、β−アクチンのバンドの濃さにて補正した。
p16のウェスタンブロッティングの結果を図3に示す。図3は、被験物質を適用しなかった場合のp16の発現量を1とした相対値で示したものである。図3に示すとおり、被験物質を適用しなかった場合と比較して、0.1質量ppm ニコチン酸トコフェロールを適用した場合には、p16の発現量が約14%減少し、0.3質量ppm ニコチン酸トコフェロールを適用した場合には、p16の発現量が約27%減少した。
<参考例2>
参考例2では、幹細胞の継代を繰り返した場合のニコチン酸トコフェロールによる細胞老化抑制効果を、IGFBP−4を分子マーカーとして評価した。
まず、6継代目〜8継代目のヒト間葉系幹細胞を2500個/cmの細胞密度で48ウェルプレートに播種し、間葉系幹細胞用培地中で培養した。細胞を播種した翌日に、0.1質量ppm又は0.3質量ppm ニコチン酸トコフェロールを添加した間葉系幹細胞用培地に培地交換し、培養を継続した。その間、2日〜3日毎に培地交換を行った。培養5日目に間葉系幹細胞用培地に培地交換して24時間培養した後、培地を回収した。
回収した培地中のIGFBP−4の含有率をELISAキット(R&D Systems社)により測定した。さらに、細胞増殖測定用キット(Cell Counting Kit-8、(株)同仁化学研究所)を用いて細胞増殖率を測定し、細胞増殖率の測定値によってIGFBP−4の濃度の測定値を補正した。
その結果、被験物質を適用しなかった場合と比較して、0.1質量ppm ニコチン酸トコフェロールを適用した場合には、IGFBP−4の発現量が約10%減少し、0.3質量ppm ニコチン酸トコフェロールを適用した場合には、IGFBP−4の発現量が約13%減少したことが確認された。

Claims (7)

  1. アスタキサンチン及びニコチン酸トコフェロールを有効成分として含有する間葉系幹細胞の細胞老化抑制剤。
  2. アスタキサンチンの含有量とニコチン酸トコフェロールの含有量との比(ニコチン酸トコフェロールの含有量/アスタキサンチンの含有量)が質量基準で0.001〜1000である請求項1に記載の間葉系幹細胞の細胞老化抑制剤。
  3. p16、p21、γH2AX、IGFBP−4、及びIGFBP−7からなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質の発現を抑制する請求項1又は請求項2に記載の間葉系幹細胞の細胞老化抑制剤。
  4. p16及びp21のタンパク質の発現を抑制する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の間葉系幹細胞の細胞老化抑制剤。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の間葉系幹細胞の細胞老化抑制剤を含有する間葉系幹細胞の細胞老化抑制用皮膚外用組成物。
  6. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の間葉系幹細胞の細胞老化抑制剤を含有する間葉系幹細胞の細胞老化抑制用機能性飲食品。
  7. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の間葉系幹細胞の細胞老化抑制剤の存在下で間葉系幹細胞を培養することを含む間葉系幹細胞の細胞老化抑制方法。但し、人間を治療する方法を除く。
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