JP2019217696A - 改質された木質シート、その製造方法、及び改質剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、ある程度の厚みを有していても高い柔軟性(例えば耐折性)及び加工性(例えば加工自由度)を有する木質シートを提供する。また、この様な木質シートを製造できる方法を提供する。【解決手段】水酸基を有する化合物と酸又はアルカリとの組み合わせからなる改質剤により改質された木質シート。【選択図】なし
Description
本発明は、改質された木質シート、木質シートの製造方法、及び改質剤に関する。
天然木をスライス等することにより薄板状に加工した天然木板は、建物、車両、家具、電機製品等の装飾に用いられている。ただし、その薄さから破損しやすいため、強化繊維や樹脂等で裏打ちするなど、補強された状態で市販されることが多い。しかしながら、強化繊維や樹脂等での裏打ちでは、柔軟性や加工性を高めるには限界があり、また、手間と費用を要する。
また、天然木板の使用においては、寸法の継時変化と腐食が解決すべき大きな課題となっている。天然木は豊富に水を含んでおり、乾燥が進むにつれてその寸法が継時的に変化(例えば、変形や収縮)する。このため、例えば、建物の壁面、車両の内装、家具や電気製品の表面に使用された天然木板は、乾燥することによりその寸法が変化し、ひび割れや、剥がれ落ち等が発生することがある。また、天然木板の腐食も木材中の水分が要因となり生じるものである。例えば、十分な乾燥を施していない場合、天然木板がそもそも有する水分により腐食が生じる。また、空気中の湿度が高い場合は、天然木板がその湿気を吸い込むことにより、それに伴って腐食が進行する。また、木材中の含水率が上昇すると、木を食料とする菌(例えば、木材腐朽菌)や虫(例えば、シロアリやキクイムシ)の生育や繁殖が活発になり、腐食がより進行する。特に、天然木板の風合いや手触り感を生かすためには、その表面に保護層を設けないことが考えられるが、この場合は乾燥、吸湿、虫食いによる影響も大きく、上述した問題が生じやすい。
さらに、天然木板が解決すべき課題として、木材中の空隙の存在がある。木材中には導管や師管等の組織の存在による空隙、木材の細胞内や細胞間の水分が乾燥することによる空隙等が存在する。この様な木材中の空隙においては、木質成分であるセルロースやリグニン等が外気との接触等により変質することから、さらに寸法の継時変化(つまり、継時収縮)が顕著となる。また、天然木板の吸湿が腐食の原因となることは上述した通りであるが、吸湿は、木材中に存在するリグニンやセルロース等が有する水酸基等の親水性基と空気中の水分との親和性により促進すると考えられる。したがって、木材中の空隙が増えることにより空気と木材の接触面積が増え、これに伴って木材中の親水性基と空気中の水分との親和性により吸湿が生じ、その結果、木材の腐食がより進行することが考えられる。
上述した通り、天然木板が解決すべき課題は、木材中の水分と空隙を要因とする寸法の継時変化及び腐食である。これを解決する手段として、木材のアセチル化処理が知られているが、高温・高圧に対応する設備が必要であり、無水酢酸の取扱いに所定の安全対策が求められるなど、手間と費用を要し、また、アセチル化処理では柔軟性や加工性の向上は得られない。また、その他の手段としては、ポリエチレングリコールとヒドロキシセルロース等の樹脂を天然木板に含浸させる技術が知られている(特許文献1)。本技術は、木材中の水分が樹脂により置換・除去されること、木材の空隙が樹脂の充填により補強されること、樹脂により木材(特に親水性基)がコーティング(ブロック)されることに基づいたものである。これにより、柔軟性や加工性を有するシート状の木材が得られている。また、樹脂により木材の空隙が充填されているため、虫食いも防止されていると考えられる。
しかし、複数種の樹脂含浸が必要なこと、蒸気圧1.3kPaの樹脂に限ること、実質的には厚さ0.15〜0.17mmの天然木板の処理に限られること等から、改質の程度には制限があった。したがって、本発明の目的は、ある程度の厚みを有していても高い柔軟性(例えば耐折性)及び加工性(例えば加工自由度)を有する木質シートを提供することである。また、この様な木質シートを製造できる方法を提供することである。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、天然木板を特定の条件下で改質させたところ、該木材が極めて高い柔軟性及び加工性を備えるものとなったことを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
すなわち、本発明は、水酸基を有する化合物と酸又はアルカリとの組み合わせからなる改質剤により改質された木質シートを提供する。
水酸基を有する化合物は、グリセリン、アルキレングリコール、多糖類、及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
本発明の木質シートの厚さは0.05〜4mmであることが好ましい。
本発明の木質シートの比重は0.2〜1.5g/cm3であることが好ましい。
本発明の木質シートは、耐折性試験におけるマンドレルの直径が20mm以下であることが好ましい。
[耐折性試験]
温度:25℃、折り曲げ時間:1秒間、折り曲げ角度:180°の条件で、直径の異なる複数のマンドレルを用意し、その直径が最も大きいものに試験片を巻き付け、その巻き付け部分に折れ目が生じるか否かを目視で観察する。次に試験片に折れ目が生じるまでマンドレルの直径を小さなものに変えていく。前記工程を経て、試験片に折れ目が生じないマンドレルの最大の直径を測定する。
[耐折性試験]
温度:25℃、折り曲げ時間:1秒間、折り曲げ角度:180°の条件で、直径の異なる複数のマンドレルを用意し、その直径が最も大きいものに試験片を巻き付け、その巻き付け部分に折れ目が生じるか否かを目視で観察する。次に試験片に折れ目が生じるまでマンドレルの直径を小さなものに変えていく。前記工程を経て、試験片に折れ目が生じないマンドレルの最大の直径を測定する。
なお、本発明では、水酸基を有する化合物と酸又はアルカリとの組み合わせからなる改質剤に天然木板を浸漬することにより改質する木質シートの製造方法についても説明する。
また、本発明では、水酸基を有する化合物と酸又はアルカリとを含む天然木板の改質剤についても説明する。
本発明による木質シートは、天然木板の柔軟性が低く、破壊されやすいという欠点を克服し、ある程度の厚みを有していても柔軟性(耐折性)が高いという効果を奏する。さらに、加工性(加工自由度)が高く、建物、車両、家具、電機製品等の装飾に限られない、広い分野に応用することが可能である。また、強化繊維や樹脂等での裏打ちを行わない場合であっても、高い耐折性備える。また、木質シートの表面に印刷層や表面保護層等の層が無い場合は、天然木板の風合いや手触り感を備えるため、ヒーリング効果等も有する。また、本発明の改質剤は、天然木板を改質することにより高い柔軟性(耐折性)及び加工性(加工自由度)を有する木質シートを与える。
本発明の木質シートは、水酸基を有する化合物と酸又はアルカリとの組み合わせからなる改質剤により改質されたものであることを特徴とする。具体的には、本発明の木質シートは、原料となる天然木板が、水酸基を有する化合物と酸又はアルカリとの組み合わせからなる改質剤により改質されたものである。また、本発明の木質シートは、水酸基を有する化合物と酸又はアルカリとの組み合わせからなる改質剤に天然木板を浸漬することにより改質して得られるものであってもよい。なお、本発明の木質シートは、水酸基を有する化合物と酸又はアルカリとの組み合わせからなる改質剤に天然木板を浸漬し、加熱することにより改質して得られるものであることが好ましい。
原料となる天然木板は、単板であっても合板であっても良く、また、寄木細工のように単板を複雑に組み合わせたものであっても良い。また、天然木としては、例えば、タモ(Japanese Ash)、ホワイトカシモア(White Sycamore)、マホガニー(Mahogany)、ゼブラ(Zebrano)、マコーレ(Makore)、ローズウッド(Rosewood)、チーク(Teak)、カリン(Padauk)、コクタン(Ebony)、バーズアイメイプル(Birdseye Maple)、アニグレ(Anigre)、シルキーオーク(Silky Oak)、ホワイトオーク(White Oak)、ウォールナット(Walnut)、アメリカンチェリー(American Cherry)、シラカバ(Birch)、アッシュ(White Ash)、カーリーメイプル(Curly Maple)、ハードメイプル(Hard Maple)、ヒノキ(Hinoki)、ケヤキ(Zelkowa)、ナラ(Japanese Oak)、ビーチ(White Beech)、キリ(Kiri)、ベイマツ(Oregon Pine)、ブビンガ(Bubinga)、クルミ(Japanese nut)、タケ(Bamboo)、サクラ(Cherry)、カバ(Japanese Cherry)、スギ(Cedar)、シナ(Shina)、ウエンジ(Wenge)、サベリ(Sapele)、オバンコール(Ovangkol)、レオ(Paldao)、アフロモシア(Afromosia)、ヤクスギ(Yaku Cedar)、ムビンギ(Mubingi)、アガチス(Agathis)、イエローパイン(Yellow Pine)、レッドオーク(Red Oak)、アンデスチーク(Andes Teak)、ケバンス(Kembangs)、ブナ(Fagus)、バルサ(Balsa)等が挙げられる。
天然木板の厚さは特に限定されないが、例えば、0.05〜10mmが好ましく、より好ましくは0.1〜4mm、さらに好ましくは0.2〜1mmである。厚みが上記範囲内であることにより、得られる木質シートが柔軟性を有する傾向がある。本発明では天然木板が0.2mmを超える厚みであっても得られる木質シートが高い柔軟性を有する点で有効であり、さらに、0.6mmを超える厚みであっても得られる木質シートが柔軟性を有するとともに高い強度を有する点で有効である。
天然木板の比重は特に限定されないが、例えば、0.2〜1.0g/cm3が好ましく、より好ましくは0.3〜0.8/cm3、さらに好ましくは0.35〜0.7g/cm3、特に好ましくは0.4〜0.5g/cm3である。天然木板の比重が小さい場合は木材中の空隙が広いことになるため、水酸基を有する化合物が含侵しやすく、得られる木質シートが柔軟性を有することが一般的に考えられる。しかし、本発明では天然木板の比重が0.4g/cm3を超えるものであっても得られる木質シートが柔軟性を有する点で有効である。
改質剤は、水酸基を有する化合物と酸又はアルカリとの組み合わせからなることを特徴とする。つまり、水酸基を有する化合物を含む改質剤と、酸又はアルカリを含む改質剤とを組み合わせて使用しても良いし、水酸基を有する化合物と酸又はアルカリとを含む改質剤を使用しても良いが、操作の簡便性、取り扱い性の観点からは、水酸基を有する化合物と酸又はアルカリとを含む改質剤を使用することが好ましい。つまり、改質剤は、水酸基を有する化合物と酸又はアルカリとを含む天然木板の改質剤であってもよい。なお、水酸基を有する化合物を含む改質剤と、酸又はアルカリを含む改質剤とを組み合わせて使用する場合としては、(1)水酸基を有する化合物を含む改質剤を使用し、その後、酸又はアルカリを含む改質剤を使用する場合や、(2)酸又はアルカリを含む改質剤を使用し、その後、水酸基を有する化合物を含む改質剤を使用する場合が挙げられる。前記の(1)及び(2)の場合、改質剤の使用工程の間に水洗工程や乾燥工程を含んでいてもよい。水酸基を有する化合物を含む改質剤と、酸又はアルカリを含む改質剤とを組み合わせて使用する場合は、前記の(2)が好ましく、さらに好ましくは、(2)において改質剤の使用工程の間に水洗工程が含まれないことが好ましい。
改質剤は水酸基を有する化合物や酸又はアルカリ以外にも、さらに、溶媒や添加剤を含んでいても良い。水酸基を有する化合物としては特に限定されないものの、例えば、グリセリン、アルキレングリコール、多糖類、及びこれらの誘導体が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
グリセリンの誘導体としては、分子中にグリセリン単位を含み、且つ水酸基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、ポリグリセリン;モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等のグリセリン脂肪酸エステル(ただし、水酸基を1つ以上有するものに限る);モノグリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリンアルキルエーテル等のグリセリンアルキルエーテル(ただし、水酸基を1つ以上有するものに限る)が挙げられる。この中でも、木質シートに柔軟性及び加工性を与える観点からは、グリセリン、ポリグリセリンが好ましい。
アルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールが挙げられる。この中でも、木質シートに柔軟性及び加工性を与える観点からは、エチレングリコールが好ましい。
アルキレングリコールの誘導体としては、分子中にアルキレングリコール単位を含み、且つ水酸基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、ポリアルキレングリコール;モノアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル等のアルキレングリコール脂肪酸エステル(ただし、水酸基を1つ以上有するものに限る);モノアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル等のアルキレングリコールアルキルエーテル(ただし、水酸基を1つ以上有するものに限る)が挙げられる。この中でも、木質シートに柔軟性を与える観点からは、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコールが好ましい。
多糖類及びこれらの誘導体としては、例えば、デンプン(アミロース、アミロペクチン)、グリコーゲン、セルロース、キチン、キトサン、アガロース、カラギーナン、ヘパリン、ヒアルロン酸、ペクチン、キシログルカン、アルギン酸、及びこれらのエステル化体又はエーテル化体(ただし、水酸基を1つ以上有するものに限る)が挙げられる。この中でも、木質シートに柔軟性を与える観点からは、セルロース、アミロースが好ましい。
水酸基を有する化合物の含有量は特に限定されないが、例えば、改質剤全量(100重量%)に対して10〜98重量%であることが好ましく、より好ましくは30〜90重量%、さらに好ましくは40〜80重量%、特に好ましくは50〜75重量%である。
酸又はアルカリとしては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、スルホン酸等の強酸;酢酸、シュウ酸等のカルボン酸、炭酸、フッ化水素酸等の弱酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の強アルカリ;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム等の酢酸とアルカリ金属又はアルカリ土類金属との塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等の炭酸とアルカリ金属又はアルカリ土類金属との塩、アンモニアが挙げられる。この中でも、得られる木質シートや製造段階における操作の安全性(例えば、水酸化ナトリウム等の強アルカリと比較した安全性)の観点からは、酢酸又は炭酸とアルカリ金属又はアルカリ土類金属との塩がより好ましく、炭酸とアルカリ金属との塩(炭酸アルカリ金属塩)が特に好ましい。なお、酸又はアルカリは水溶液の状態で使用してもよい。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
酸又はアルカリの含有量は特に限定されないが、例えば、改質剤(100重量%)に対して0.1〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜40重量%、さらに好ましくは1〜30重量%、特に好ましくは3〜20重量%である。
改質剤に含まれていても良い溶媒としては、改質に悪影響を及ぼすものでなければ特に限定されないが、例えば、水;トリフルオロトルエン、フルオロベンゼン、フルオロヘキサン等のフッ素系溶媒;芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン等)や脂肪族炭化水素(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等)等の炭化水素系溶媒;1,2−ジオキサン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;塩化メチル、ジクロロメタン、トリクロロメタン(クロロホルム)、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエチレン、1−クロロブタン等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。なお、改質剤に後述の酸又はアルカリが含まれる場合は、水を含むことが好ましい。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
溶媒の含有量は特に限定されないが、例えば、改質剤(100重量%)に対して95重量%以下(例えば1〜95重量%)であることが好ましく、より好ましくは80重量%以下(例えば3〜80重量%)、さらに好ましくは50重量%以下(例えば5〜50重量%)、特に好ましくは30重量%(例えば10〜30重量%)である。
改質剤に含まれていても良い添加剤としては、改質に悪影響を及ぼすものでなければ特に限定されないが、例えば、香料、着色料、防腐剤、酸化防止剤、酸化防止助剤、紫外線吸収剤、保湿剤、pH調整剤等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の木質シートが、水酸基を有する化合物と酸又はアルカリとの組み合わせからなる改質剤に天然木板を浸漬し、加熱することにより改質して得られるものである場合、その加熱温度は室温(例えば、25℃)以上であれば特に限定されないが、例えば30〜250℃が好ましく、50〜200℃がより好ましく、80〜150℃がさらに好ましく、90〜120℃が特に好ましい。また、加熱時間は、加熱温度及び圧力に応じて適宜調整することができ、例えば、0.1〜20時間が好ましく、0.2〜10時間がより好ましく、0.3〜5時間がさらに好ましい。なお、加熱処理は、常圧又は加圧下で行うことができ、加圧下で加熱する場合には、通常0.1〜10MPa程度(好ましくは0.15〜8MPa、特に好ましくは0.5〜8MPa)である。
改質後の木質シートは、必要に応じて水洗、乾燥させることにより最終目的物として得ることができる。乾燥における温度は特に限定されないが、例えば20〜100℃である。また、乾燥時間は特に限定されないが、例えば、0.1〜100時間が好ましい。
木質シートは耐折性に優れており、耐折性試験におけるマンドレルの直径が20mm以下であることが好ましく、より好ましくは10mm以下、さらに好ましくは5mm以下である。なお、耐折性試験は実施例に記載の方法で測定できる。また、「マンドレルの直径」とは、木質シートに折れ目が生じるまでマンドレルの直径を小さなものに変えていった場合に、折れ目が生じないマンドレルの最大の直径を意味する。つまり、「マンドレルの直径が16mmである」ということは、マンドレルの直径が16mmである場合は木質シートに折れ目が生じなかったが、マンドレルの直径が12mmである場合は木質シートに折れ目が生じたことを意味する。
木質シートの厚さは特に限定されないが、例えば、0.05〜10mmが好ましく、より好ましくは0.1〜4mm、さらに好ましくは0.2〜1mmである。厚みが上記範囲内であることにより、木質シートの柔軟性及び加工性が高くなる傾向がある。また、比較的厚み(例えば、0.2mm、好ましくは0.6mmを超える厚み)がある場合は高い強度をも有する。したがって、この様な厚みを有する木質シートは、曲面を有する建物の壁面や、ドアトリム、インストルメントパネル、ピラーカバー等の車両部材への適用等の、柔軟性だけでなく構造部材に求められるレベルの強度も必要とされる場面において特に有用である。
木質シートの比重は特に限定されないが、例えば、0.2〜1.5g/cm3が好ましく、より好ましくは0.3〜1.3/cm3、さらに好ましくは0.5〜1.2g/cm3、特に好ましくは0.8〜1.1g/cm3である。比重が上記範囲内であることにより、木質シートの柔軟性、加工性、及び強度が高くなる傾向がある。
本発明の木質シートは、和紙、洋紙、合成紙、寒冷紗、不織布、帆布、ピッグスキン、合成樹脂シート等の裏打材を用いて補強を行ってもよい。なお、これらの裏打材を貼付するには、通常の方法によりなされればよい。裏打材を用いることにより、寸法安定性、耐折性等の向上が図られる。ただし、本発明の木質シートは裏打材による裏打ちを施さない場合であっても高い耐折性を具備する。
本発明の木質シートは、その柔軟性等を損なわない限り、表面(裏打材の反対の面)に印刷層や表面保護層等の層を有していても良い。これらの層の形成には、必要に応じて印刷インキ等を含む熱又は光硬化性樹脂組成物を塗布して乾燥させることにより形成される。
前記組成物としては、本発明の木質シートの特性に影響がない限り特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2、6−ナフレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエステル樹脂、イソフタル酸共重合ポリエステル樹脂、スポログリコール共重合ポリエステル樹脂、フルオレン共重合ポリエステル樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー)、ポリメチルペンテン、脂環式オレフィン共重合樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエーテル、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステル、ポリ塩化ビニル、シクロオレフィンポリマー、ポリアクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルスチレン共重合体等を含む組成物が挙げられる。また、漆等の天然樹脂塗料も前記組成物として例示される。
前記組成物の塗布は、硬化後の層の厚さが、例えば、0.01〜2mm(好ましくは0.02〜1mm、より好ましくは0.05〜0.5mm)となるようにグラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方法により行うことができる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(実施例1)
グリセリン(健栄製薬株式会社製)100gと炭酸ナトリウム(カネヨ石鹸株式会社製)の飽和水溶液50gの混合液に、ヒノキ板(縦9cm、横5cm、厚さ0.7mm)を100℃で30分間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、水洗及び乾燥(室温、72時間放置)を行い、木質シートを得た。重量は3.3g、比重は1.0g/cm3、色は茶色であった。
グリセリン(健栄製薬株式会社製)100gと炭酸ナトリウム(カネヨ石鹸株式会社製)の飽和水溶液50gの混合液に、ヒノキ板(縦9cm、横5cm、厚さ0.7mm)を100℃で30分間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、水洗及び乾燥(室温、72時間放置)を行い、木質シートを得た。重量は3.3g、比重は1.0g/cm3、色は茶色であった。
(実施例2)
炭酸ナトリウム(カネヨ石鹸株式会社製)の飽和水溶液100gに、ヒノキ板(縦9cm、横5cm、厚さ0.7mm)を100℃で30分間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、水洗及び乾燥(室温、72時間放置)を行った。その後、グリセリン(健栄製薬株式会社製)100gにて100℃で30分間加熱し、加熱終了後、室温まで冷却し、水洗及び乾燥(室温、72時間放置)を行い、木質シートを得た。重量は4.0g、比重は1.3g/cm3、色は茶色であった。
炭酸ナトリウム(カネヨ石鹸株式会社製)の飽和水溶液100gに、ヒノキ板(縦9cm、横5cm、厚さ0.7mm)を100℃で30分間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、水洗及び乾燥(室温、72時間放置)を行った。その後、グリセリン(健栄製薬株式会社製)100gにて100℃で30分間加熱し、加熱終了後、室温まで冷却し、水洗及び乾燥(室温、72時間放置)を行い、木質シートを得た。重量は4.0g、比重は1.3g/cm3、色は茶色であった。
(比較例1)
グリセリン(健栄製薬株式会社製)100gと水50gの混合液に、ヒノキ板(縦9cm、横5cm、厚さ0.7mm)を100℃で30分間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、水洗及び乾燥(室温、72時間放置)を行い、木質シートを得た。重量は4.2g、比重は1.3g/cm3、色は濃い黄色であった。
グリセリン(健栄製薬株式会社製)100gと水50gの混合液に、ヒノキ板(縦9cm、横5cm、厚さ0.7mm)を100℃で30分間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、水洗及び乾燥(室温、72時間放置)を行い、木質シートを得た。重量は4.2g、比重は1.3g/cm3、色は濃い黄色であった。
(比較例2)
炭酸ナトリウム(カネヨ石鹸株式会社製)の飽和水溶液100gに、ヒノキ板(縦9cm、横5cm、厚さ0.7mm)を100℃で30分間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、水洗及び乾燥(室温、72時間放置)を行い、木質シートを得た。重量は1.7g、比重は0.54g/cm3、色は薄黄色であった。
炭酸ナトリウム(カネヨ石鹸株式会社製)の飽和水溶液100gに、ヒノキ板(縦9cm、横5cm、厚さ0.7mm)を100℃で30分間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却し、水洗及び乾燥(室温、72時間放置)を行い、木質シートを得た。重量は1.7g、比重は0.54g/cm3、色は薄黄色であった。
[耐折性試験1]
実施例1、2、比較例1、2にて得られた木質シートと、比較例3として何も処理を施していないヒノキ板(比重は0.41g/cm3)を1×9cm角に裁断して試験片(それぞれ、図1、5、9、13、16)とし、耐折性を以下の方法に基づいて判定した。なお、温度は25℃、折り曲げ時間は1秒間、折り曲げ方向は折線が木目に対して垂直に入る方向、折り曲げ角度は180°(折り曲げた試験片が平行となる状態)であった。
(耐折性の判定方法)
[1]直径の異なる複数のマンドレルを用意し、その直径が最も大きいものに試験片を巻き付け、その巻き付け部分に折れ目が生じるか否かを目視で観察する。
[2]試験片に折れ目が生じるまでマンドレルの直径を小さなものに変えていく。
[3]試験片に折れ目が生じないマンドレルの最大の直径を記録する。
実施例1、2、比較例1、2にて得られた木質シートと、比較例3として何も処理を施していないヒノキ板(比重は0.41g/cm3)を1×9cm角に裁断して試験片(それぞれ、図1、5、9、13、16)とし、耐折性を以下の方法に基づいて判定した。なお、温度は25℃、折り曲げ時間は1秒間、折り曲げ方向は折線が木目に対して垂直に入る方向、折り曲げ角度は180°(折り曲げた試験片が平行となる状態)であった。
(耐折性の判定方法)
[1]直径の異なる複数のマンドレルを用意し、その直径が最も大きいものに試験片を巻き付け、その巻き付け部分に折れ目が生じるか否かを目視で観察する。
[2]試験片に折れ目が生じるまでマンドレルの直径を小さなものに変えていく。
[3]試験片に折れ目が生じないマンドレルの最大の直径を記録する。
この結果、実施例1の試験片は直径4mmのマンドレルでは折れ目が生じなかったが、直径3mmのマンドレルでは折れ目が生じた。つまり、耐折性試験におけるマンドレルの直径は4mmであった。また、実施例2の試験片は直径20mmのマンドレルでは折れ目が生じなかったが、直径16mmのマンドレルでは折れ目が生じた。つまり、耐折性試験におけるマンドレルの直径は20mmであった。その一方で、比較例1〜3の試験片は、直径32mmのマンドレルでも折れ目が付いた。なお、本実施例では、2、3、4、5、6、8、10、12、13、16、20、25、32mmのマンドレルを使用した。
[耐折性試験2]
上記の実施例1、2、比較例1〜3に係る試験片を手により折線が木目に対して垂直に入る方向に曲げ、「折れ」又は「割れ」が認められるか否かを確認した。その結果、実施例1の試験片は非常に柔軟であり、「折れ」及び「割れ」は認められなかった(図2、3)。実施例2の試験片は柔軟であったが、曲げ幅を大きくすると「折れ」が認められた(図6、7)。比較例1の試験片は柔軟性を有するものの、ある程度曲げることにより「割れ」が認められた(図10、11)。比較例2の試験片は柔軟性に劣る(硬くなる)とともに脆くなり、ほぼ曲がることなく「割れ」が認められた(図14、15)。比較例3は対照実験として行ったものであって、通常の天然木としての柔軟性を有しており、「割れ」が認められた(図17、18)。なお、「折れ」と「割れ」は以下の基準で判断した。
a)見た目の違い:「割れ」及び「折れ」は双方とも折線(直線とは限らない)が認められるが、「割れ」では木質繊維が破断したことにより生じる「ささくれ」が目視で確認できるのに対して(図11、15、18を参照)、「折れ」ではそれが目視では確認できなかった(図7を参照)。
b)物性の違い:試験の後、試験片の一方の端を開放すると、「折れ」では形状の復元性が認められるが(図8を参照)、「割れ」ではそのような復元性がほとんど認められなかった(図12、15、19を参照)。
上記の実施例1、2、比較例1〜3に係る試験片を手により折線が木目に対して垂直に入る方向に曲げ、「折れ」又は「割れ」が認められるか否かを確認した。その結果、実施例1の試験片は非常に柔軟であり、「折れ」及び「割れ」は認められなかった(図2、3)。実施例2の試験片は柔軟であったが、曲げ幅を大きくすると「折れ」が認められた(図6、7)。比較例1の試験片は柔軟性を有するものの、ある程度曲げることにより「割れ」が認められた(図10、11)。比較例2の試験片は柔軟性に劣る(硬くなる)とともに脆くなり、ほぼ曲がることなく「割れ」が認められた(図14、15)。比較例3は対照実験として行ったものであって、通常の天然木としての柔軟性を有しており、「割れ」が認められた(図17、18)。なお、「折れ」と「割れ」は以下の基準で判断した。
a)見た目の違い:「割れ」及び「折れ」は双方とも折線(直線とは限らない)が認められるが、「割れ」では木質繊維が破断したことにより生じる「ささくれ」が目視で確認できるのに対して(図11、15、18を参照)、「折れ」ではそれが目視では確認できなかった(図7を参照)。
b)物性の違い:試験の後、試験片の一方の端を開放すると、「折れ」では形状の復元性が認められるが(図8を参照)、「割れ」ではそのような復元性がほとんど認められなかった(図12、15、19を参照)。
以上の結果をまとめる。アルカリ処理後に洗浄・乾燥させて得られる木質シートが、原料木材(ヒノキ板)よりも脆くなった(比較例2と3とを参照)。木材中のリグニンやセルロース等の木質成分がアルカリ処理により分解され、木材としての強度が低下することに起因すると推察される。また、グリセリン処理後に洗浄・乾燥させて得られる木質シートにある程度の柔軟性は見られたものの、所望とする程度の曲げ特性ではなかった(比較例1)。しかしながら、驚くべきことにグリセリン処理とアルカリ処理とを併用し、洗浄・乾燥させた木質シートは、所望とする柔軟性だけでなく、木材として脆弱化することなく十分な強度を備えるものであることが明らかとなった(実施例1、2)。なお、アルカリ処理とグリセリン処理を同時に行った場合(実施例1)は、アルカリ処理後にグリセリン処理を逐次行った場合(実施例2)に比べて、より高い柔軟性(耐折性)及び強度を有することが認められた。一方、アルカリ処理とグリセリン処理を同時に行った場合(実施例1)は、曲げ試験後に形状の復元性は弱い(塑性変形性が強い)一方、当該処理を逐次行った場合(実施例2)は、同時に行った場合(実施例1)に比べて強い形状の復元性(弾性変形性)を有することが認められた。
実施例1、2において、比較例2にて示されるアルカリ処理による木材の脆弱化が見られず、かえって高い柔軟性と強度を有していることの理由は明らかではないが、[1]アルカリを介してグリセリンとリグニンやセルロースとの反応が生じて架橋され、これによって木材の柔軟性や強度が向上したこと、[2][1]とは逆に、グリセリンの存在により木材における特定部位のリグニンやセルロースがアルカリを介して加水分解され、これによって木材の柔軟性や強度が向上したこと(グリセリンが存在しない場合は木材全体に亘って加水分解が生じるため脆弱化する)、[3]比較的厚みのある木材であっても、アルカリとグリセリンとが相溶することによって木材の内部に浸透することができ、その結果、柔軟性が向上したこと、[4]アルカリの存在によって木材中の空隙部が広がり、グリセリンが木材の内部に入り込むことが容易となることから、柔軟性が向上したこと、[5]木材の空隙における乾燥・固化したセルロースやリグニン又はその分解物が、アルカリとグリセリンとの相溶物によって効率的に溶出し、柔軟性が向上したこと等が考えられる。この様に、本願の木質シートは高い柔軟性と強度を有することから、高い加工性を発揮することが明らかになった。
耐折性試験2の後、実施例1の試験片の一方の端を開放すると、元の形状(試験前の形状)にある程度戻ったものの、曲げ状態と比較すると復元性は弱いことが分かった。つまり、弾性変形性(物体が外力を受けて変形した後、外力を取り去った際に変形状態が元に戻る性質)は弱く、両端が付くほど曲げても「折れ」及び「割れ」は認められず(降伏点には至らず)、全体として塑性変形性(物体が外力を受けて変形した後、外力を取り去っても変形状態から戻らない性質)が強いと考えられる(図3、4)。また、「割れ」が認められる比較例1〜3の試験片では、程度の差はあるものの、弾性変形性も塑性変形性も比較的弱く、早めに降伏点に至ることが分かった。その一方で、実施例2は、深く曲げると「折れ」が認められるため、一見すると比較例1〜3と同様、降伏点に至っていると思われたが、驚くべきことに試験片の一方の端を開放すると予想外に大きく復元した(図7、8)。したがって、実施例2の試験片の降伏は見掛けのみ又はごく部分的に過ぎず、強い弾性変形性を有する一方、塑性変形性は弱いと考えられる。
実施例1と実施例2の特性の差は、アルカリ処理とグリセリン処理を同時に行うか逐次に行うかに起因すると推察される。つまり、得られる木質シートの弾性変形性が弱くなり、塑性変形性が強くなるという特定は、アルカリ処理とグリセリン処理とが同時に実施されることに起因すると推察され、また、得られる木質シートの弾性変形性が強くなり、塑性変形性が弱くなるという特性は、アルカリ処理後にグリセリン処理が実施されることに起因すると推察される。これらの理由は明らかではないが、実施例1よりも実施例2の木質シートの方が重いこと、つまり、実施例1では試験片(木材)の空隙における乾燥・固化したセルロースやリグニン又はその分解物が効率的に溶出している可能性があることが上記の特性の差の一因であると考えられる。
塑性変形性は通常の天然木が有しない特性である。この特性を備える木質シートはプラスチック(特に熱可塑性樹脂)の様に、必要に応じて熱や応力等をかけることにより、様々な形状に成形・加工できる可能性を有する。そのため、該木質シートの成形品は、環境に優しい木質成形品として石油系プラスチック成形品の代替品として期待される。また、石油系プラスチック成形品では得られない(木材特有の)性質を有した新たな木質成形品、通常の木材の加工では困難な形状を有する木質成形品、通常の木材加工品よりも割れに強い(脆性が低い)木質成形品等の種々の用途が期待できる。
本発明による木質シートは、柔軟性(例えば耐折性)、加工性(例えば加工自由度)が高いという特徴を有する。このため、床材、内外装壁材、内外装下地材、天井材、窓枠、幅木等の建物(建材)、ドアトリム、インストルメントパネル、ピラーカバー等の車両(車両の部材)、家具(家具の表層材)、家電(家電の筐体や表層など)等の装飾に使用することができる。また、その他にも、コップ、瓶、漆器、弁当箱等の食器類、箱、樽、曲げわっぱ等の容器類、ギター、ピアノ等の楽器等の構成部材として用いることもできる。
Claims (7)
- 水酸基を有する化合物と酸又はアルカリとの組み合わせからなる改質剤により改質された木質シート。
- 水酸基を有する化合物が、グリセリン、アルキレングリコール、多糖類、及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1つである請求項1に記載の木質シート。
- 厚さが0.05〜4mmである請求項1又は2に記載の木質シート。
- 比重が0.2〜1.5g/cm3である請求項1〜3のいずれか1つに記載の木質シート。
- 下記の耐折性試験におけるマンドレルの直径が20mm以下である請求項1〜4のいずれか1つに記載の木質シート。
[耐折性試験]
温度:25℃、折り曲げ時間:1秒間、折り曲げ角度:180°の条件で、直径の異なる複数のマンドレルを用意し、その直径が最も大きいものに試験片を巻き付け、その巻き付け部分に折れ目が生じるか否かを目視で観察する。次に試験片に折れ目が生じるまでマンドレルの直径を小さなものに変えていく。前記工程を経て、試験片に折れ目が生じないマンドレルの最大の直径を測定する。 - 水酸基を有する化合物と酸又はアルカリとの組み合わせからなる改質剤に天然木板を浸漬することにより改質する木質シートの製造方法。
- 水酸基を有する化合物と酸又はアルカリとを含む天然木板の改質剤。
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