JP2019211165A - 放射パネル - Google Patents
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Abstract
Description
ところが対流方式は、快適性の面で不満を感じさせやすい。
その原因の一つは、空気を対流させた場合、室内空間に上下の温度分布差が発生し、暖まった空気は天井側にいきやすく、冷えた空気は床面に留まりやすいことにある。健康に良く、人が快適と感ずる頭寒足熱とは反対の状態となるため、どうしても不快に感じられてしまうのである。
不満を感じやすいもう一つの原因は、対流させた気流が人体に直接当たる、いわゆるドラフトと呼ばれている現象が生ずることにある。例えば冷房の効いた室内では、風速0.5mで体感温度は3℃低下するといわれている。このため炎天下の屋外から空調されている室内に入ったような場合、最初のうちは快適に感ずるものの、体が冷えた後はかえって寒さを感じてしまうのである。
また気流が直接体に当たり続けること自体、不快に感ずる人も少なくない。
輻射冷房について特許文献1は、「ちょうど洞窟の涼しさに匹敵し、部屋全体が均一に涼しく、不快な風の流れがないので快適な冷房である」とその快適性を謳っている(文献1の段落[0003]参照)。
その一方で、冷房時、輻射プレートの温度が空気中の露点温度よりも低くなると結露が生じ、結露水がしたたり落ちるという問題も指摘している(文献1の段落[0003]〜[0004]参照)。
そこで特許文献1は、輻射プレートの表面に吸放湿性に優れた布材を貼るという提案をしている(文献1の段落[0006][0008]参照)。輻射プレートが結露した場合には布材で吸湿をし、周囲湿度が低くなると吸湿した水分を放湿するという目論見である(文献1の段落[0005][0007][0009]参照)。
しかも吸湿と放湿とを繰り返す布材には、染みなどの変質が生じてしまうことも容易に予想される。
この点、特許文献2には、室内空間の空気を取り込んで空調空気を噴き出す空調機を天井に設置し、互いに対面させた透湿性を有する放射パネルと断熱パネルとの間に風路を形成する中空のケースを天井面に取り付け、空調機の空気噴出口に風路を連絡させるようにした放射空調システムが提案されている(文献2の段落[0025]〜[0029]、図1〜図2参照)。空調空気を風路に流通させることによって放射パネルの温度を制御し、これによって放射冷暖房を行う仕組みである。
このような放射空調システムでは、基本的には放射パネルに結露が生じない。
放射パネルの温度が空気中の露点温度よりも低くなった場合、空気中に含まれる水蒸気は液相に変化して結露しようとするわけであるが、このとき完全に液相に変化する前のハイグロスコピック状態と呼ばれる状態をしばらくの間維持する。その間に、放射パネルの裏面を流れる乾燥した空気との間で平衡作用が働くため、放射パネルの表面側の水蒸気はハイグロスコピック状態のまま放射パネルを通り抜け、裏面側の乾いた空気に吸収されて室内に流される。その結果、放射パネルに対する結露の発生を防止することができるわけである。
そこでこの出願の発明者は、使用環境にかかわらず、放射パネルに対する結露の発生を完全に防止するという課題の解決に向けて、鋭意研究開発を進めた。その途上、放射パネルの材料として、織布などのような通気性を有する材料を用いることに思い至った。
つぎの項目にしたがって説明する。
1.放射空調システム
(1)空調機
(2)放射パネルユニット
(a)パネル基体
(b)放射パネル
2.設置手順
(1)空調機の設置
(2)パネル基体の取り付け
(3)放射パネルの固定
3.作用効果
(1)結露の防止
(a)結露の原因
(b)本実施の形態の放射空調システム
(c)結露防止の原理
(2)シートの材料選定の自由度
(3)シートの変形の抑制
(4)シートの形状及び構造からもたらされる作用効果
(5)熱効率
(6)外観上の特長
4.変形例
(1)放射空調システムの設置場所
(2)放射空調システムの設置状態
(3)放射パネルの固定構造
(4)放射パネル形態
(5)側壁
(6)空気排出領域
(7)シートのチャック位置のバリエーション
(8)放射空調システムの別の構成例
(9)その他
図1に示すように、本実施の形態の放射空調システム11は、ともに天井面Cに設置された空調機51と放射パネルユニット101とからなる。
(1)空調機
天井面Cは折り上げ天井となっており、窪みC1を有している(図5、図6も参照)。この窪みC1に嵌り込むように、空調機51は取り付けられている(図7参照)。
空調機51は、横幅、奥行き、高さの順に寸法が小さくなる薄型形状のもので、背面に設けられた空気取込口52から室内Rの空気を取り込み、熱交換器53を介して、ブロワ54によって空気噴出口55から空調された空気を噴き出す。空気取込口52には、フィルタ56が着脱自在に取り付けられている。
天井面Cの窪みC1に嵌り込むように取り付けられた空調機51は、天井面Cと窪みC1との間の境界をなすエッジEに沿わせて、空気噴出口55を位置付けている。
放射パネルユニット101は、パネル基体111と放射パネル131とによって構成されている。
図2に示すように、パネル基体111は、矩形形状をした平板状の背面パネル112の両側部分から、壁部としての一対の側壁113を立ち上げた形状の樹脂製品である。一対の側壁113は、背面パネル112の長辺方向の両端部分から立ち上げられており、長辺に沿った直角方向に僅かに回り込んでいる。したがってその形状上、一対の側壁113の一端側の領域と他端側の領域、それに一面側の背面パネル112に対面する領域との三面が開放されている。説明の便宜上、一対の側壁113の一端側の領域を空気導入領域114、他端側の領域を空気排出領域115、そして背面パネル112に対面する領域を対面領域116と呼ぶ。対面領域116は、一対の側壁113の先端部を含む平面内の領域である。
ボス118は、空気排出領域115の側と、対面領域116の側とに開放されている。
ストッパ金具119のうち、左右に位置するものにはラッチ溝119aが、中央に位置するものにはラッチ孔119bがそれぞれ設けられている。
図3、図4に示すように、放射パネル131は、矩形形状をした枠体132に袋形状のシート141を被せることによって形成されている。
別の一例として、棒状部材133は樹脂によって成形されていたり、カーボンによって形成されていたりしてもよい。
このような枠体132は、パネル枠134と折返し枠135とを備えている。
パネル枠134は、その幅方向及び奥行き方向ともに、パネル基体111の幅方向及び奥行き方向よりも大きく、奥行き方向の後端側は、空調機51の下面の奥行き方向中央部にまで達する長さとなっている。
折返し枠135は、パネル枠134の後端部にヒンジ136で連結され、パネル枠134に対して回転自在である(図3参照)。折返し枠135は、パネル枠134の奥行き方向の後端部とともに、空調機51を完全に覆う大きさを有している。
このようなシート141は、繊維を素材として形成され、通気性と伸縮性とを有している。
そこでシート141の幅方向及び奥行き方向は枠体132よりも僅かに小さく形成されており、枠体132を収納した際、張られた状態を維持する。
袋形状というシート141の形状については、枠体132の幅方向を包み込む形状としてみたとき、エンドレス形状とみることもできる。両端が開放されたエンドレス形状の一端側を閉じた形状が袋形状になるからである。
表面繊維141Aは、放射パネル131が設置された際に室内R側に露出し、放射空調システム11の外観態様を決定づける。そこで表面繊維141Aの材料を選定するに際しては、美的観点が重要視される。
裏面繊維141Bの方は、空調機51の空気噴出口55から噴出した空気流が表面繊維141Aの裏側に導かれるに際して、空気流に極力抵抗を与えないようにするという観点からその材料が選定される。例えばメッシュ素材の繊維は、裏面繊維141Bへの使用に適している。
図3、図4に示されているように、表面繊維141Aは背面パネル112に対面する裏面側にまで回り込んでおり、裏面側で裏面繊維141Bと縫い合わされている。シート141は、放射パネル131をパネル基体111に装着した際、一対の側壁113と位置合わせされるように縫い合わせ部分SPを位置付けている。
図3、図4に示すように、枠体132には、放射パネル131を仮止めし、固定するための構造物として、一対の仮止め用フック137、三個のラッチ部材138、及び一対のマグネット139が設けられている。三個のラッチ部材138はそれぞれ、パネル基体111に設けられた三個のストッパ117にラッチされるもので、左右に位置するものはストッパ117のラッチ溝119aに嵌合するスタッド138aの形態、中央に位置するものはストッパ117のラッチ孔119bに嵌合するラッチピン138bの形態となっている。ラッチピン138bは、図示しない操作部を押し込むことによって拡径し、引っ張ることによって縮径する構造を備え、ラッチ孔119bに嵌合させた状態で操作部を押し込むことによってストッパ117との間でラッチ状態を保つ。
図7に示すように、空調機51には、その両側部分に放射パネル131を仮止めするためのレール57が設けられ、下面の後端部分に金属板58が取り付けられている。
一対の仮止め用フック137は、パネル枠134と折返し枠135とを回転自在に連結するヒンジ136に設けられている。これらの仮止め用フック137は、放射パネル131の両側部に設けられているレール57に嵌められ、放射パネル131を仮止めする(図9参照)。一対のレール57は、仮止め用フック137を完全にスライド移動自在にしているわけではなく、一定の遊びをもって仮止め用フック137を仮止めする図示しない構造を後端部分に有している。
三個のラッチ部材138は、枠体132の先端部分に位置する棒状部材133に取り付けられ、ストッパ117に固定される。
一対のマグネット139は、折返し枠135の後端部分に位置する棒状部材133に取り付けられ、空調機51の下面に取り付けられた金属板58に磁力で吸着する。
これらの構造物、つまり一対の仮止め用フック137、三個のラッチ部材138、及び一対のマグネット139の全部又は一部は、一例として、枠体132を収納するシート141に設けた切れ目(図示せず)を介して外部に露出している。別の一例としては、シート141に枠体132を収納した後、これらの構造物の全部又は一部を枠体132に取り付けるようにしてもよい。
放射空調システム11の設置手順について説明する。
まず図5に示すように、空調機51は折り上げ天井となった天井面Cに設けられた窪みC1に設置する。
予め窪みC1が設けられていればこれを利用し、窪みC1が設けられていなければ天井面Cを工事して窪みC1を作成する。
窪みC1の内部には、電気配線201や配管パイプ(図示せず)を通すための配線配管孔202を開け、電気配線201を出しておく。
これによって空調機51の取り付け作業が完了する。
図8に示すように、天井面Cに、パネル基体111を取り付ける。
パネル基体111は、天井面Cと窪みC1との間の境界をなすエッジEに空気導入領域114が位置付けられるように位置合わせされ、ねじ止めされる。つまりパネル基体111に形成された複数個の挿通孔121にねじ120を挿入し、これを締め付ける。これによってパネル基体111は、天井面Cに固定される。
このときパネル基体111の空気導入領域114は、天井面Cと窪みC1との間の境界をなすエッジEに沿って位置付けられる。その結果空調機51の空気噴出口55とパネル基体111の空気導入領域114とは位置合わせされ、互いに連絡する状態となる(図1も参照のこと)。
図9に示すように、放射パネル131を仮止めする。
放射パネル131に設けた一対の仮止め用フック137を空調機51のレール57に嵌め込み、奥までスライド移動させることで、一定の遊びをもって放射パネル131は仮止めされる。
仮止めされた状態の放射パネル131は、仮止め用フック137がヒンジ136に設けられているという構造上、パネル枠134も折返し枠135も位置が拘束されず、回転自在な状態となっている。
図10に示すように、放射パネル131のうちパネル枠134の部分を上方に回転させる。そしてストッパ117の位置にラッチ部材138を位置合わせし、放射パネル131を壁面Wの方向に移動させる。これによってストッパ金具119のラッチ溝119aにラッチ部材138のスタッド138aが嵌り込み、ラッチ孔119bにラッチピン138bが嵌り込む。そこで図示しない操作部を押し込むことでラッチピン138bが拡径し、ストッパ金具119との間でラッチ状態が保たれる。これによってパネル枠134が固定される。
その後図11に示すように、放射パネル131のうち折返し枠135を上方に回転させる。これによって空調機51の下面に設けられている金属板58にマグネット139が吸着し、折返し枠135が固定される。
空調機51を作動させると、空気噴出口55から空調空気が噴き出し、流路151を通って空気導入領域114から空気排出領域115に流れる。すると空調空気によって放射パネル131の温度が調整される。暖房時には暖められ、冷房時には冷やされる。これによって室内Rが放射空調される。
冷房時、本実施の形態の放射空調システム11は、いかなる環境であろうとも、放射パネル131に結露を生じさせることがない。
その理由を詳しく説明する。
空気中には水分が気体(水蒸気)として含まれている。
空気が限界まで水蒸気を含んだ状態は飽和状態と呼ばれ、このときの水蒸気量を飽和水蒸気量という。飽和水蒸気量は気温に依存して変動し、気温が高いほど多く、低いほど少なくなる。
そこで空気を冷やしていくと、気温が高いうちは水蒸気の形態だった水分はいずれ飽和し、液体に変化する。つまり気温の低下とともに飽和水蒸気量も少なくなるため、空気を冷やし続ければある時点で水蒸気が飽和し、液体に変わるわけである。
このときの温度を露点温度という。
露点温度は空気中に含まれる水蒸気量に応じて変動し、水蒸気量が多いほど高く、少ないほど低くなる。
より具体的な現象でいうと、露点温度を下回ることによって飽和した水蒸気は凝結し、物の表面に水滴となって付着する。これが結露と呼ばれる現象である。
このとき同じ温度を出発点として気温が下がっていったとしても、含んでいる水蒸気量が多いときよりも少ないときの方が、結露を生ずる温度が低くなる。例えば25℃の環境下で気温が下がりはじめたとき、飽和水蒸気量の50%の水蒸気を含む場合には約14℃で結露を生ずるのに対し、30%の水蒸気しか含まない場合に結露を生ずるのは、約6.5℃である。
本実施の形態の放射空調システム11においては、放射パネル131によって区画される裏面側、つまり空調機51が配置される流路151の側では、空調機51の冷房運転によって空気の乾燥が促され、乾いた空気が流通する。空気取込口52から空調機51に取り込まれた室内Rの空気は熱交換器53を通過する際に急速に冷やされ、空気中に含まれる水蒸気の一部が液化して除去されるからである。
したがって空調空気の流路151を通り抜ける空気は、冷房運転によって冷やされることで飽和水蒸気量が減少したとしても、乾燥によってその露点温度が低くなるために、放射パネル131の裏面に結露を生じさせない。より詳細には、シート141中の裏面繊維141Bにも、裏面側に回り込んでいる表面繊維141Aにも、結露は生じない。
その一方で放射パネル131の表面側は、冷房運転によって冷やされ、室内Rの空気を放射冷却する。このため放射パネル131の表面に位置するシート141、つまり表面繊維141Aは低温状態を維持するので、表面繊維141Aに接する空気は露点温度に近づいていくことになる。
このとき表面繊維141Aに接している空気が露点温度に達すると、その空気中に含まれている水蒸気が液体に変わろうとする。
これに対して本実施の形態では、シート141は通気性を有している。
このため空調空気の流路151を通り抜ける空気はシート141を通り抜け、室内R側に露出している表面繊維141Aの表側に漏れ出す。その結果、表面繊維141Aの表側では、乾燥した空気が層をなす状態になっている。
したがって乾燥した空気が層をなす表面繊維141Aの表側では、低下した表面繊維141Aの温度よりも空気の露点温度の方が低くなるため、結露が生じない。
以上の原理により、本実施の形態によれば、冷房時に、様々な環境において放射パネル131の表面に結露を生じさせないようにすることができる。
本実施の形態によれば、空調機51の空気噴出口55から噴き出された空調空気は空気排出領域115から室内Rに導き出される。つまりシート141を通過して室内Rに意図的に空調空気を導き出す必要がない。
このためシート141には、空調空気を通過させるための特性が求められない。
シート141に求められるのは、基本的には、空調空気の流路151を通り抜ける空気を室内R側に漏れ出させ、表面繊維141Aの表側で乾燥した空気の層を生成させる程度の通気性だけである。
したがって本実施の形態によれば、シートの材料選択の幅を広げることができる。
本実施の形態によれば、空気噴出口55から噴き出された空調空気が流路151を流れる方向に沿って放射パネル131のシート141が配置されている。そして流路151を流れる空気は空気排出領域115から排出されるため、流路151内の内圧が高まることもない。
このため放射空調システム11の作動時、放射パネル131のシート141を撓ませるような空気の流れや圧力の上昇が生じず、シート141に生ずる変形を極力抑制することができる。
シート141は、枠体132を収納する袋形状を有している。
このため枠体132への取り付けが容易で、放射パネル131の製造の容易化を図ることができる。
その一方で、空調空気がその流路151から室内Rに至る間に二枚のシート141を通ることになるため、室内R側のシート141に向かう空調空気に対して流路151側のシート141が抵抗となる。このとき抵抗が大きすぎると、シート141の室内Rに面する領域に乾いた空調空気の層を生成する動作に支障が生ずる。
そこで本実施の形態では、室内R側に露出する表面側の繊維素材(表面繊維141A)と背面パネル112に対面する裏面側の繊維素材(裏面繊維141B)との縫い合わせ構造を採用し、シート141を袋形状に形成するようにしている。こうすることで、裏面繊維141Bはシート141としての体をなすようなものである必要がなくなり、様々な素材や形態のものを自由に採用することが可能となる。本実施の形態では、裏面繊維141Bにメッシュ状の素材を用いることで、流路151から室内R側のシート141に向かう空調空気に対して裏面繊維141Bが与える抵抗の低減を図っている。
しかも表面繊維141Aと裏面繊維141Bとの縫い合わせ部分SPは、側壁113と位置合わせされている。これによって放射パネル131を下から見たとき、表面繊維141Aを透けて縫い合わせ部分SPが見えてしまうようなことを防止することができる。
パネル基体111は、断熱性材料によって形成されており、背面パネル112及び側壁113に断熱部を設けたのと等価な状態になっている。
これによって流路151を流れる空調空気の熱がパネル基体111に奪われず、効率よくシート141を加熱又は冷却することが可能になる。その結果、熱効率に優れた放射空調システム11を得ることができる。
しかもパネル基体111そのものが断熱材料によって成形されているので、断熱材を別途用意し、これをパネル基体111に取り付けるような煩雑さがなく、パネル基体111の部品コスト及び製造コストの低減と、製造の容易化とを図ることができる。
空調機51は室内Rの一面(天井面C)に設けられた窪みC1に収納され、パネル基体111は室内Rの一面に接合されている。これによって室内Rの中で、放射空調システム11を薄く小形に見せることができる。
しかも放射パネル131は空調機51をも覆っており、袋形状のシート141の開口する一辺はチャック143によって閉じられるので、外観上、放射空調システム11は、天井面C近くに配置された一枚の放射パネル131だけの形態に見える。このとき放射パネル131は、繊維素材のシート141のみが露出した状態になっているため、人の感覚や感性に馴染む優しい表情を見せる。
したがって室内Rに設置したときに邪魔になったり煩わしくなったりしない洗練された外観態様の放射空調システム11を得ることができる。
実施に際しては、各種の変形や変更が可能である。
例えば本実施の形態では、天井面Cに設置する放射空調システム11を示したが、実施に際しては、室内Rの異なる一面、例えば壁面W(図1参照)に設置するように構成してもよい。この場合、壁面Wに窪みを設けておき、この窪みに空調機51を収納するようにすれば、本実施の形態と同様に、壁面Wに放射パネル131が設置されているだけのように見えるフラットな形態の放射空調システム11を実現することができる。
また天井面Cを折り上げ天井とし、窪みC1に空調機51を収納する一例を示したが、これは必ずしも必須ではなく、平坦な天井面C又は壁面Wに空調機51を設置するようにしてもよい。このとき天井面C又は壁面Wから空調機51の空気噴出口55が離反しやすくなるが、天井面C又は壁面Wから浮かせて放射パネルユニット101を設置することで、その流路151の入口となる空気導入領域114を空気噴出口55に対面させることができる。
また本実施の形態では、一対の仮止め用フック137、三個のラッチ部材138、及び一対のマグネット139を利用し、空調機51とパネル基体111とに放射パネル131を固定するようにしているが、放射パネル131の固定については、様々な構造を採用することが可能である。
例えば、放射パネル131の重量にもよるが、マグネットのみによる固定構造を採用してもよい。
あるいはボス118の開放領域において、パネル基体111を含む平面と平行にスライド移動自在であり、空気排出領域115の側に押し出されるように付勢させてストッパ金具119を設けておき、さらにラッチ機構(図示せず)を設けるようにしてもよい。ラッチ機構は、非ラッチ状態から押し込むことによってストッパ金具119をラッチし、ラッチ状態から押し込むことによってストッパ金具119のラッチを解放する。こうすることで、ストッパ金具119の進退に応じて互いに嵌合するようにストッパ金具119とラッチ部材138とを形成しておけば、ストッパ金具119の押し込み操作によって両者を自由にラッチ及びラッチ解除することができる。
上記実施の形態では、放射パネル131として平板形状のものを例示したが、実施に際しては各種の形態のものが許容される。
例えば図12(a)に示すように、放射パネル131は、正面から見て両側方が垂れ下がったようなアーチ形の形状であってもよい。このとき放射パネル131の平面形状は、図12(b)に示すような矩形形状でも、図12(c)に示すような楕円形状でも、各種の形状が許容される。
また放射パネル131は、天井面Cに密接している必要はなく、図13に示すように、天井面Cから吊り下げられていてもよい。
上記実施の形態では、一対の側壁113は、背面パネル112の両側縁から立ち上がる形態を例示した。これに対して実施に際しては、側壁113は、必ずしも側縁から立ち上がるのではなく、中心側に寄った位置から立ち上がるような形態であってもよい。
また本実施の形態において一対の側壁113として実現されている壁部は、背面パネル112から空気導入領域114と空気排出領域115とを残して囲い状に立ち上がっていれば、あらゆる形態のものが許容される。
上記実施の形態では、空気導入領域114に対面する領域に空気排出領域115を設けた一例を示したが、実施に際しては、各種の変形や変更が許容される。例えば側壁113の一部に空気排出領域115を設けてもよいし、この場合、空気排出領域115は複数個所に分散されていてもよい。
シート141のチャック143の位置は、上記実施の形態のような例えば図14(a)に示すような位置のみならず、図14(b)のような一辺に寄った位置、図14(c)に示すような三辺を取り囲む位置、あるいは図14(d)に示すようなV字形状等、各種の実施の形態が許容される。
その他、あらゆる変形や変更が可能である。
51 空調機
52 空気取込口
53 熱交換器
54 ブロワ
55 空気噴出口
56 フィルタ
57 レール
58 金属板
101 放射パネルユニット
111 パネル基体
112 背面パネル
113 側壁
114 空気導入領域
115 空気排出領域
116 対面領域
117 ストッパ
118 ボス
119 スライダ
120 ねじ
121 挿通孔
131 放射パネル
132 枠体
133 棒状部材
134 パネル枠
135 折返し枠
136 ヒンジ
137 仮止め用フック
138 固定用フック
139 マグネット
141 シート
141A 表面繊維
141B 裏面繊維
142 開放縁
143 チャック
151 流路
C 天井面
C1 窪み
E エッジ
SP 縫い合わせ部分
W 壁面
そこでこの出願の発明者は、使用環境にかかわらず、放射パネルに対する結露の発生を完全に防止するという課題の解決に向けて、鋭意研究開発を進めた。その途上、放射パネルの材料として、織布などのような通気性を有する材料を用いることに思い至った。
Claims (6)
- 背面パネルとこの背面パネルから空気導入領域と空気排出領域とを残して囲い状に立ち上がる壁部とを備え、一面側の開放された対面領域を室内側に向けた状態で、室内の空気を取り込んで空調空気を噴き出す空調機の空気噴出口に前記空気導入領域を連絡させて設置されるパネル基体に対して、前記対面領域を含む仮想面内に取り付けられる枠体と、
前記枠体に張った状態で掛け渡されるエンドレス形状を有し、前記枠体を収納して取り付けられることによって、前記パネル基体と共に前記空気導入領域から前記空気排出領域に至る空調空気の流路を形成する繊維素材の通気性を有するシートと、
を備えることを特徴とする放射パネル。 - 前記エンドレス形状のシートは、室内側に露出する表面側の繊維素材と前記流路に面する裏面側の繊維素材との縫い合わせ構造を有している、
ことを特徴する請求項1に記載の放射パネル。 - 縫い合わせ部分は、前記側壁と対面する位置に位置合わせされている、
ことを特徴とする請求項2に記載の放射パネル。 - 前記背面側の繊維素材は、メッシュ状の素材である、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の放射パネル。 - 前記エンドレス形状のシートは、三辺が閉じられた袋形状を有している、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一に記載の放射パネル。 - 前記袋形状のシートの開口する一辺は、チャックによって開閉自在である、
ことを特徴とする請求項5に記載の放射パネル。
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