JP2019210335A - プリプレグ - Google Patents

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遼平 渡
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厚仁 新井
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篤希 杉本
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Abstract

【課題】本発明の課題は、脱オートクレーブ成形において、炭素繊維強化複合材料中のボイドの発生を抑制し、優れた面外強度性を発現する炭素繊維強化複合材料を提供することである。【解決手段】下記構成要素[A]〜[C]を含むプリプレグであって、構成要素[B]及び[C]を含むエポキシ樹脂組成物は各周波数3.14rad/sで測定した30℃粘度が1.0×105Pa・s以上、最低粘度が110℃以上、吸水試験により算出されるプリプレグの吸水率WPUが1〜15%であり、エポキシ樹脂組成物の硬化物がクロスニコル状態での偏光顕微鏡観察にて干渉模様を示す樹脂領域を含むプリプレグ。[A]:炭素繊維[B]:エポキシ樹脂[C]:[B]の硬化剤【選択図】なし

Description

本発明は、炭素繊維強化複合材料内に発生するボイド(空孔)の発生を抑制し、優れた層間靱性、引張強度を兼ね備えた炭素繊維強化複合材料を提供でき、かつオートクレーブを使用することなく、真空ポンプとオーブンのみで成形できるプリプレグ、該プリプレグを用いた炭素繊維強化複合材料に関するものである。
従来、炭素繊維、ガラス繊維などの強化繊維と、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂からなる繊維強化複合材料は、軽量でありながら、強度や剛性などの力学特性や耐熱性、また耐食性に優れているため、航空・宇宙、自動車、鉄道車両、船舶、土木建築およびスポーツ用品などの数多くの分野に応用されてきた。特に、高性能が要求される用途では、連続した強化繊維を用いた繊維強化複合材料が用いられ、強化繊維としては比強度、比弾性率に優れた炭素繊維が、そしてマトリックス樹脂としては熱硬化性樹脂、中でも特に炭素繊維との接着性に優れたエポキシ樹脂が多く用いられている。
炭素繊維強化複合材料は、炭素繊維とマトリックス樹脂を必須の構成要素とする不均一材料であり、そのため炭素繊維の配列方向の物性とそれ以外の方向の物性に大きな差が存在する。例えば、炭素繊維層間破壊の進行し難さを示す層間靱性は、炭素繊維の強度を向上させるのみでは、抜本的な改良に結びつかないことが知られている。特に、熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とする炭素繊維強化複合材料は、マトリックス樹脂の低い靭性を反映し、炭素繊維の配列方向以外からの応力に対し、破壊され易い性質を持っている。そのため、航空機構造材のように高い強度と信頼性を必要とする用途に向けては、繊維方向強度を確保しつつ、層間靭性を始めとする炭素繊維の配列方向以外からの応力に対応することができる複合材料物性の改良を目的に、種々の技術が提案されている。
近年、航空機構造材への炭素繊維強化複合材料の適用部位が拡大していることに加えて、発電効率やエネルギー変換効率の向上を目指した風車ブレードや各種タービンへの炭素繊維強化複合材料の適用も進んでおり、肉厚な部材、また3次元的な曲面形状を有する部材への適用検討が進められている。このような肉厚部材、あるいは曲面部材に引っ張りや圧縮の応力が負荷された場合、プリプレグ繊維層間への面外方向への引き剥がし応力が発生し、層間に開口モードによる亀裂が生じ、その亀裂の進展により部材全体の強度、剛性が低下し、全体破壊に到る場合がある。この応力に対抗するための、開口モード、すなわちモードIでの層間靱性が必要になる。高いモードI層間靱性を有する炭素繊維強化複合材料を得るには、マトリックス樹脂には高い靱性が必要となる。
マトリックス樹脂の靱性を改良するため、マトリックス樹脂にゴム成分を配合する方法(特許文献1参照)、熱可塑性樹脂を配合する方法(特許文献2参照)が知られていた。また、インターリーフと呼ばれる一種の接着層ないしは衝撃吸収層を層間に挿入する方法(特許文献3参照)、および粒子により層間を強化(特許文献4参照)する方法が提案されている。
また、力学物性低下の要因として、炭素繊維強化複合材料内部に介在するボイドの存在が挙げられる。ボイドを含む炭素繊維強化複合材料に力学的な負荷が加わると、クラックや剥離などの損傷が容易に発生し易く、これが力学強度、および剛性を低下させる。そのため、古くからこのボイドを抑制する材料/成形技術について検討が多く行われてきた。
炭素繊維強化複合材料の製造方法の中でもボイドの発生を特に抑制可能な成形法として、オートクレーブ成形法がある。この成形法では圧力を加えながら樹脂を加熱硬化することができるため、ボイドのサイズを小さくでき、あるいはマトリックス樹脂に含まれる揮発成分の気化を抑制することができるため、ボイドの発生量を大幅に抑制することが可能である。ただし、オートクレーブ成形法においては、高い圧力に耐え得る圧力容器(オートクレーブ)の導入に多額の初期投資が必要であり、製造数の少ない航空・宇宙用途向け部材の技術としては高コストとなる主要因であった。そこで、オートクレーブ等の高価な加圧設備を使用しない、真空ポンプとオーブンのみを用いた脱オートクレーブ成形法が提案されている(特許文献5参照)。上記の課題に対し、強化繊維にマトリックス樹脂を部分的に含浸させた部分含浸プリプレグを使用すると、プリプレグ内部の強化繊維の未含浸部が空気の流路となり、積層の際に閉じ込められる空気やプリプレグからの揮発成分がプリプレグ外に放出されることにより、脱オートクレーブ成形においても低ボイドの繊維強化複合材料を製造できることが報告されている(特許文献6参照)。ただし、これらの部分含浸プリプレグを用いる場合、硬化過程において未含浸繊維部へ樹脂を流入させる必要があり、マトリックス樹脂の粘度を樹脂フロー性が高い範囲にする必要がある。それらの手段により、脱オートクレーブ成形においてもボイドの発生を抑制することができるものの、前述した従来のマトリックス樹脂の高靱性化手段であるゴム成分を配合する、熱可塑性樹脂を配合する等の方法では、樹脂粘度が高くなるために、脱オートクレーブ成形における最適な粘度範囲とすることができず、硬化完了後も未含浸繊維部が残り、成形後にボイドが残りやすい材料となっている。従って、脱オートクレーブ成形では、優れた層間靱性を有する炭素繊維強化複合材料はこれまでは得られなかった。
特開2001−139662号公報 特開平7−278412号公報 特開昭60−231738号公報 特公平6−94515号公報 米国特許第6139942号明細書 米国特許第6391436号明細書
本発明の課題は、かかる背景技術に鑑み、脱オートクレーブ成形において、炭素繊維強化複合材料中のボイドの発生を抑制し、優れた面外強度性を発現する炭素繊維強化複合材料を提供することである。
本発明は、かかる課題を解決するために次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明のプリプレグは、下記構成要素[A]〜[C]を含むプリプレグであって、構成要素[B]及び[C]を含むエポキシ樹脂組成物は各周波数3.14rad/sで測定した30℃粘度が1.0×10Pa・s以上、最低粘度が110℃以上、吸水試験により算出されるプリプレグの吸水率WPUが1〜15%であり、エポキシ樹脂組成物の硬化物がクロスニコル状態での偏光顕微鏡観察にて干渉模様を示す樹脂領域を含むプリプレグ。
[A]:炭素繊維
[B]:エポキシ樹脂
[C]:[B]の硬化剤
本発明によれば、エポキシ樹脂[B]及び硬化剤[C]を含むエポキシ樹脂組成物の30℃および最低粘度を最適化し、プリプレグの炭素繊維[A]中における未含浸繊維の割合の間接的なパラメータであるWPUを1〜15%とし、エポキシ樹脂組成物の硬化物がクロスニコル状態での偏光顕微鏡観察に干渉模様を示すことにより、モードI層間靱性に優れ、ボイド率の少ない炭素繊維強化複合材料を得ることが出来る。
モードI層間靭性(GIC)の測定を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
本発明の構成要素[A]である炭素繊維としては、繊維の形態や配列については限定されず、例えば、一方向に引き揃えられた長繊維、単一のトウ、織物、ニット、不織布、マットおよび組紐などの繊維構造物が用いられる。2種類以上の炭素繊維や、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、PBO繊維、高強力ポリエチレン繊維、アルミナ繊維および炭化ケイ素繊維などの他の強化繊維と組み合わせて用いても構わない。
炭素繊維としては、具体的にはアクリル系、ピッチ系およびレーヨン系等の炭素繊維が挙げられ、特に引張強度の高いアクリル系の炭素繊維が好ましく用いられる。
かかるアクリル系の炭素繊維は、例えば、次に述べる工程を経て製造することができる。アクリロニトリルを主成分とするモノマーから得られるポリアクリロニトリルを含む紡糸原液を、湿式紡糸法、乾湿式紡糸法、乾式紡糸法、または溶融紡糸法により紡糸する。紡糸後の凝固糸は、製糸工程を経て、プリカーサーとし、続いて耐炎化および炭化などの工程を経て炭素繊維を得ることができる。
炭素繊維の形態としては、有撚糸、解撚糸および無撚糸等を使用することができるが、有撚糸の場合は炭素繊維を構成するフィラメントの配向が平行ではないため、得られる炭素繊維強化複合材料の力学特性の低下の原因となることから、炭素繊維強化複合材料の成形性と強度特性のバランスが良い解撚糸または無撚糸が好ましく用いられる。
本発明で用いる炭素繊維は、引張弾性率が200〜440GPaの範囲であることが好ましい。炭素繊維の引張弾性率は、炭素繊維を構成する黒鉛構造の結晶度に影響され、結晶度が高いほど弾性率は向上する。この範囲であると炭素繊維強化複合材料に剛性、強度のすべてが高いレベルでバランスするために好ましい。より好ましい弾性率は、230〜400GPaの範囲内であり、さらに好ましくは260〜370GPaの範囲内である。炭素繊維の引張伸度は、0.8〜3.0%の範囲であることが好ましい。炭素繊維の引張伸度が低いと繊維強化複合材料としたときに十分な引張強度や耐衝撃性を発現できない場合がある。また、引張伸度が3%を超えると炭素繊維の引張弾性率は低下する傾向にある。より好ましい炭素繊維の引張伸度は、1.0〜2.5%であり、さらに好ましくは1.2〜2.3%の範囲である。ここで、炭素繊維の引張弾性率、引張伸度は、JIS R7601−2006に従い測定された値である。
炭素繊維の市販品としては、“トレカ(登録商標)”T800S−24K、“トレカ(登録商標)”T300−3K、“トレカ(登録商標)”T700S−12K、および“トレカ(登録商標)”T1100G−24K(以上東レ(株)製)などが挙げられる。
本発明において用いられる炭素繊維は、単繊維繊度が0.2〜2.0dtexであることが好ましく、より好ましくは0.4〜1.8dtexである。単繊維繊度が0.2dtex未満では、撚糸時においてガイドローラーとの接触による炭素繊維の損傷が起こり易くなることがあり、またエポキシ樹脂組成物の含浸処理工程においても同様の損傷が起こることがある。単繊維繊度が2.0dtexを超えると炭素繊維にエポキシ樹脂組成物が充分に含浸されないことがあり、結果として耐疲労性が低下することがある。
本発明において用いられる炭素繊維は、一つの繊維束中のフィラメント数が2500〜50000本の範囲であることが好ましい。フィラメント数が2500本を下回ると繊維配列が蛇行しやすく強度低下の原因となりやすい。また、フィラメント数が50000本を上回るとプリプレグ作製時あるいは成形時に樹脂含浸が難しいことがある。フィラメント数は、より好ましくは2800〜40000本の範囲である。
炭素繊維は、繊維束として集束させるため、サイジング剤が用いられることがある。炭素繊維のサイジング剤としては、エポキシ基、水酸基、アクリレート基、メタクリレート基、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するサイジング剤が好ましく用いられる。炭素繊維表面の官能基と、樹脂硬化物のポリマーネットワーク中の官能基との間で化学結合、あるいは水素結合などの相互作用を生じ、炭素繊維と樹脂硬化物との接着性を高めるからである。
サイジング剤の炭素繊維への付着量は、組み合わせるマトリックス樹脂により異なるが、炭素繊維に対して0.01〜5.00質量%が好ましく用いられる。付着量が0.01質量%よりも少ないと、サイジング剤としての機能が得られないことが多く、また付着量が5.00質量%を超えると、マトリックス樹脂の耐熱性などの機械物性を損なうことがある。
本発明において用いられる炭素繊維は、一つの繊維束中のフィラメント数が2500〜50000本の範囲であることが好ましい。フィラメント数が2500本を下回ると繊維配列が蛇行しやすく強度低下の原因となりやすい。また、フィラメント数が50000本を上回るとプリプレグ作製時あるいは成形時に樹脂含浸が難しいことがある。フィラメント数は、より好ましくは2800〜40000本の範囲である。
炭素繊維は、繊維束として集束させるため、サイジング剤が用いられることがある。炭素繊維のサイジング剤としては、エポキシ基、水酸基、アクリレート基、メタクリレート基、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基からなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するサイジング剤が好ましく用いられる。炭素繊維表面の官能基と、樹脂硬化物のポリマーネットワーク中の官能基との間で化学結合、あるいは水素結合などの相互作用を生じ、炭素繊維と樹脂硬化物との接着性を高めるからである。
サイジング剤の炭素繊維への付着量は、組み合わせるマトリックス樹脂により異なるが、炭素繊維に対して0.01〜5.00質量%が好ましく用いられる。付着量が0.01質量%よりも少ないと、サイジング剤としての機能が得られないことが多く、また付着量が5.00質量%を超えると、マトリックス樹脂の耐熱性などの機械物性を損なうことがある。
本発明の炭素繊維強化複合材料は、エポキシ樹脂組成物の硬化物が高次構造を有することで、驚くべきことに優れたモードI層間靱性を発現する。これは、炭素繊維強化複合材料内にクラックが進展する際、エポキシ樹脂組成物の硬化物中に存在する高次構造を崩すのにエネルギーを多く必要とするためと考えられる。
ここで言う高次構造とは、エポキシ樹脂組成物の硬化後又は半硬化後に分子が配向配列している状態を意味し、例えば、硬化物中に結晶構造又は液晶構造が存在する状態を意味する。このような結晶構造又は液晶構造の形成は、以下に挙げる手法により確認することが可能である。
分子が配向配列し、高次構造を形成することに起因して、光学的異方性が生じる。光学的異方性を有する構造のサイズが可視光波長オーダー同等以上の場合には、クロスニコル状態での偏光顕微鏡にて干渉模様(明視野)が観察され、本発明で定義する高次構造の形成を確認することができる。高次構造を形成していない、もしくは形成された高次構造のサイズが可視光波長オーダーより小さい場合には、光学的異方性を有しないため暗視野が観察される。液晶構造の場合には、形成する液晶相の種類によって観察される干渉模様が多岐に渡ることが知られている。観察される干渉模様の具体例としては、高次構造がネマチック相構造の場合には、シュリーレン組織、糸状組織、砂状組織、ドロプレット組織が挙げられ、スメクチック相構造の場合には、バトネ組織、フォーカルコニックファン組織、オイリーストリーク組織などが挙げられる。
本発明のプリプレグまたは炭素繊維強化複合材料において、構成要素[B]および[C]を含むエポキシ樹脂組成物の硬化物における高次構造形成の有無は、以下の手法により確認できる。偏光顕微鏡観察は、透過法により行われる。可視光を透過させるために、プリプレグ1プライを硬化させた試験片、もしくは、炭素繊維強化複合材料を繊維方向に削り10μm程度に薄膜化させた試験片を作製する。試験片について、構成要素[A]を除く、エポキシ樹脂組成物の硬化物の偏光顕微鏡観察を行い、上記干渉模様の有無で高次構造形成の有無を確認することができる。
高次構造が結晶構造や液晶構造の中の特にスメクチック相構造の場合には、X線回折においては一般的には回折角度2θ≦10°の領域に高次構造に由来したピークが観測される。本発明では、構成要素[B]あるいは[C]中、または[B]、[C]両方中に存在するメソゲン構造(ビフェニル基、ターフェニル基、ターフェニル類縁基、アントラセン基、これらがアゾメチン基、又はエステル基で接続された基等)に基づく周期構造(高次構造)にあたり、回折角度2θ=1.0〜6.0°の範囲にピークを有することで、樹脂靱性の向上する傾向がある。X線回折によって観測されるピークの回折角度2θの範囲は、1.0〜6.0°であることが重要であり、好ましくは2.0〜4.0°である。厚さ1mmで成形した炭素繊維強化複合材料を用いて、長さ30mm、幅10mmの測定試料を用意する。用意された測定試料について、広角X線回折装置を用いて、次の条件により測定を行う。
・X線源:CuKα線(管電圧45kV、管電流40mA)
・検出器:ゴニオメーター+モノクロメーター+シンチレーションカウンター
・走査範囲:2θ=1〜90°
・走査モード:ステップスキャン、ステップ単位0.1°、計数時間40秒。
X線回折の測定は、炭素繊維強化複合材料内の炭素繊維軸に対して平行(0°)、垂直(90°)、45°に対して行う。
エポキシ樹脂組成物の硬化物の高次構造は構成要素[A]の炭素繊維に対していずれの方向を向いても良いが、炭素繊維軸に対して垂直な方向のみ周期構造を有する場合、炭素繊維由来の強いピークにより、X線回折ではエポキシ樹脂組成物由来のピークが観測できないことがある。その場合、炭素繊維を除いたエポキシ樹脂組成物の硬化板にてX線回折により測定を行うことで、周期構造の有無の確認できる。別の確認手法としては、放射光の利用も有効である。ビーム径を数μm程度まで絞りこむことにより、構成要素[A]を除いた、構成要素[B]および[C]を含むエポキシ樹脂組成物の硬化物のみの測定が可能となり、高次構造形成の有無を確認することが可能となる。
X線回折によって観測される回折角度2θ=1.0°〜6.0°に由来する高次構造を、硬化後にエポキシ樹脂組成物が有する範囲において本発明の炭素繊維強化複合材料の成形条件は特に限定されないが、成形温度が高すぎると、使用する装置や副資材に高い耐熱性が必要となり、炭素繊維強化複合材料の製造コストが高額となる。また、成形温度が低すぎると、構成要素[B][C]の反応に長時間を要し、これも製造コストの増加をまねく恐れがある。成形に用いる最高温度は、100〜220℃が好ましく、120〜200℃がさらに好ましい。
構成要素[B]のエポキシ樹脂は、本発明のプリプレグおよび炭素繊維強化複合材料中のエポキシ樹脂組成物の硬化物が高次構造を有するために、メソゲン構造を有して液晶性を示す、いわゆる液晶性エポキシ樹脂が好ましい。メソゲン構造(ビフェニル基、ターフェニル基、ターフェニル類縁基、アントラセン基、これらがアゾメチン基、又はエステル基で接続された基等)を有することで、その構造に由来する高次構造(周期構造ともいう)が形成される。
構成要素[B]のメソゲン構造としては、下記一般式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。
Figure 2019210335
一般式(1)中Q、Q、Qはそれぞれ群(I)より選択される1種の構造を含む。一般式(1)中のR、Rはそれぞれ炭素数1〜6のアルキレン基を示す。一般式(1)中のZは各々独立に、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜8の脂肪族アルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、又はアセチル基を示す。nは各々独立に0〜4の整数を示す。一般式(1)および群(I)中のY、Y、Yはそれぞれ群(II)より選択される少なくとも1種の単結合又は2価の基からなる連結基を示す。
Figure 2019210335
Figure 2019210335
群(I)におけるZは、各々独立に、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜4の脂肪族アルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、又はアセチル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、又は塩素原子であることがより好ましく、メチル基又はエチル基であることが更に好ましい。群(I)におけるnは、各々独立に、0〜2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。
構成要素[B]中のメソゲン構造は、割合が多い方が硬化後に樹脂は高次構造を形成し易いが、多過ぎるとエポキシ樹脂組成物の粘度が高くなり、ハンドリング性が低下する。そのため、一般式(1)中のメソゲン構造の数は2つが特に好ましい。
一般式(1)中のQ、Q、Qがベンゼン環を含むと、構成要素[B]の構造が剛直になるため高次構造形成し易くなり、靱性向上に有利となるため好ましい。また、一般式(1)中のQ、Q、Qが脂環式炭化水素を含むと、軟化点が低くなりハンドリング性が向上するため、これも好ましい態様となる。構成要素[B]のエポキシ樹脂は、1種類単独で用いても良く、2種類以上を併用しても良い。
構成要素[B]は公知の方法により製造することができ、特許第4619770号公報、特開2005−206814、特開2010−241797、特開2011−98952号公報、特開2011−74366号公報、Journal of Polymer Science: Part A:Polymer Chemistry,Vol.42,3631(2004)等に記載の製造方法を参照することができる。
構成要素[B]の具体例としては、1,4−ビス{4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}シクロヘキサン、1−{3−メチル−4−(オキシラニルメトキシ)フェニル−4−{4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}シクロヘキサン、1,4−ビス{4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}−1−シクロヘキセン、1−{3−メチル−4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}−4−{4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}−1−シクロヘキセン、1−{2−メチル−4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}−4−{4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}−1−シクロヘキセン、1−{3−エチル−4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}−4−{4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}−1−シクロヘキセン、1−{2−エチル−4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}−4−{4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}−1−シクロヘキセン、1−{3−n−プロピル−4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}−4−{4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}−1−シクロヘキセン、1−{3−イソプロピル−4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}−4−{4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}−1−シクロヘキセン、1,4−ビス{4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}−2−シクロヘキセン、1−{3−メチル−4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}−4−{4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}−2−シクロヘキセン、1,4−ビス{4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}−2,5−シクロヘキサジエン、1−{3−メチル−4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}−4−{4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}−2,5−シクロヘキサジエン、1,4−ビス{4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}−1,5−シクロヘキサジエン、1−{3−メチル−4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}−4−{4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}−1,5−シクロヘキサジエン、1,4−ビス{4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}−1,4−シクロヘキサジエン、1−{3−メチル−4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}−4−{4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}−1,4−シクロヘキサジエン、1,4−ビス{4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}−1,3−シクロヘキサジエン、1−{3−メチル−4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}−4−{4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}−1,3−シクロヘキサジエン、1,4−ビス{4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}ベンゼン、1−{3−メチル−4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}−4−{4−(オキシラニルメトキシ)フェニル}ベンゼン、1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート}、1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)−2−メチルベンゾエート}、1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3−メチルベンゾエート}、1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3,5−ジメチルベンゾエート}、1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)−2,6−ジメチルベンゾエート}、2−メチル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート}、2−メトキシ−1,4−フェニレン−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、2−メチル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)−2−メチルベンゾエート}、2−メチル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3−メチルベンゾエート}、2−メチル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3,5−ジメチルベンゾエート}、2−メチル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)−2,6−ジメチルベンゾエート}、2,6−ジメチル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート}、2,6−ジメチル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3−メチルベンゾエート}、2,6−ジメチル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3,5−ジメチルベンゾエート}、2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート}、2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)−2,6−ジメチルベンゾエート}、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート}、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3−メチルベンゾエート}、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3,5−ジメチルベンゾエート}、2−メチル−1,4−フェニレン−ビス{4−(3−オキサ−5,6−エポキシヘキシルオキシ)ベンゾエート}、1−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル−4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート、1−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル 1−(2,3−エポキシプロポキシ)−2−メチルベンゾエート、4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル−4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3−メチルベンゾエート、1−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル−4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3−エチルベンゾエート、1−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル−4−(2,3−エポキシプロポキシ)−2−イソプロピルベンゾエート、1−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル−4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3,5−ジメチルベンゾエート、1,4−ビス{4−(3−オキサ−5,6−エポキシヘキシルオキシ)フェニル}−1−シクロヘキセン、1−{4−(3−オキサ−5,6−エポキシヘキシルオキシ)−3−メチルフェニル}−4−{4−(3−オキサ−5,6−エポキシヘキシルオキシ)フェニル}−1−シクロヘキセン、1,4−ビス{4−(5−メチル−3−オキサ−5,6−エポキシヘキシルオキシ)フェニル}−1−シクロヘキセン、1−{4−(5−メチル−3−オキサ−5,6−エポキシヘキシルオキシ)−3−メチルフェニル}−4−{4−(5−メチル−3−オキサ−5,6−エポキシヘキシルオキシ)フェニル}−1−シクロヘキセン、1,4−ビス{4−(4−メチル−4,5−エポキシペンチルオキシ)フェニル}−1−シクロヘキセン、1,4−ビス{4−(3−オキサ−5,6−エポキシヘキシルオキシ)フェニル}ベンゼン、1−{4−(3−オキサ−5,6−エポキシヘキシルオキシ)−3−メチルフェニル}−4−{4−(3−オキサ−5,6−エポキシヘキシルオキシ)フェニル}ベンゼン、1,4−ビス{4−(5−メチル−3−オキサ−5,6−エポキシヘキシルオキシ)フェニル}ベンゼン、1−{4−(5−メチル−3−オキサ−5,6−エポキシヘキシルオキシ)−3−メチルフェニル}−4−{4−(5−メチル−3−オキサ−5,6−エポキシヘキシルオキシ)フェニル}ベンゼン、1,4−ビス{4−(4−メチル−4,5−エポキシペンチルオキシ)フェニル}ベンゼン、1,4−ビス{4−(3−オキサ−5,6−エポキシヘキシルオキシ)フェニル}シクロヘキサン、1−{4−(3−オキサ−5,6−エポキシヘキシルオキシ)−3−メチルフェニル}−4−{4−(3−オキサ−5,6−エポキシヘキシルオキシ)フェニル}シクロヘキサン、1,4−ビス{4−(5−メチル−3−オキサ−5,6−エポキシヘキシルオキシ)フェニル}シクロヘキサン、1−{4−(5−メチル−3−オキサ−5,6−エポキシヘキシルオキシ)−3−メチルフェニル}−4−{4−(5−メチル−3−オキサ−5,6−エポキシヘキシルオキシ)フェニル}シクロヘキサン、1,4−ビス{4−(4−メチル−4,5−エポキシペンチルオキシ)フェニル}シクロヘキサンなどが挙げられ、中でも、硬化後の高次構造の形成、ハンドリング性、原料の入手容易性から、1−(3−メチル−4−オキシラニルメトキシフェニル)−4−(4−オキシラニルメトキシフェニル)−1−シクロヘキセン、2−メチル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート}、4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート、4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3−メチルベンゾエートが特に好ましい。
構成要素[B]のエポキシ樹脂は、その一部が硬化剤等により部分的に重合したプレポリマーを含んでもよい。構成要素[B]の中でも、一般式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂は一般に結晶化し易く、強化繊維に含浸させるためには高温を必要とするものが多い。構成要素[B]のエポキシ樹脂の少なくとも一部を重合させたプレポリマーを含むことは、結晶化が抑制される傾向にあるためハンドリング性が良くなり、好ましい態様である。
構成要素[B]のエポキシ樹脂を部分的に重合する方法としては、三級アミン類やイミダゾール類といったアニオン重合触媒や、三フッ化ホウ素−アミン錯体等のルイス酸といったカチオン重合触媒により重合させても良いし、エポキシ樹脂と反応可能な官能基を有するプレポリマー化剤を用いてもよい。構成要素[B]のエポキシ樹脂を部分的に重合する場合、製造するプレポリマーの分子量を制御し易いことから、プレポリマー化剤を用いた方法が好ましい。プレポリマーの分子量が大き過ぎると、炭素繊維強化複合材料内の樹脂の架橋密度が下がり、耐熱性や力学特性を損なう恐れがある。
構成要素[B]のエポキシ樹脂を部分的に重合するプレポリマー化剤としては、エポキシ樹脂と反応可能な活性水素を2〜4個有する化合物であれば特に限定されない。例えば、フェノール化合物、アミン化合物、アミド化合物、スルフィド化合物、酸無水物が挙げられる。ここで、活性水素とは有機化合物において窒素、酸素、硫黄と結合していて、反応性の高い水素原子をいう。活性水素が1個の場合、プレポリマーを用いたエポキシ樹脂硬化物の架橋密度が低下するため、耐熱性や力学特性が低くなる恐れがある。活性水素基が5個以上になると、構成要素[B]のエポキシ樹脂をプレポリマー化する際に反応の制御が困難となり、ゲル化する恐れがある。プレポリマー化剤として、2〜3個の活性水素を有するフェノール化合物は、プレポリマー化反応中のゲル化抑制と、プレポリマーの貯蔵安定性から特に好適である。
2〜3個の活性水素を有するフェノール化合物の中でも、ベンゼン環を1〜2個有するフェノール化合物は、構成要素[B]のエポキシ樹脂のプレポリマーの構造が剛直になるため高次構造形成し易くなり、靱性向上する傾向があることに加えて、構成要素[B]のエポキシ樹脂のプレポリマー、構成要素[B]、硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物の粘度を低く抑えることができ、ハンドリング性が良くなるため好適である。
2〜3個の活性水素を有するフェノール化合物としては、例えば、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールG、ビスフェノールZ、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン及びこれらの誘導体が挙げられる。誘導体としては、ベンゼン環に炭素数1〜8のアルキル基等が置換した化合物が挙げられる。これらのフェノール化合物は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
構成要素[B]に含まれるプレポリマーの分子量は特に制限されない。エポキシ樹脂組成物の流動性の観点から、数平均分子量は15000以下であることが好ましく、10000以下であることが好ましく、350〜5000であることがさらに好ましい。本発明の数平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー、SEC:size exclusion chromatographyともいう)により、標準ポリスチレンを用いた換算分子量を示す。また、本願のプリプレグ、炭素繊維強化複合材料に含まれる構成要素[B]全体の数平均分子量は、10000以下であることが好ましく、5000以下であることが好ましく、250〜3500であることがさらに好ましい。ここでいう数平均分子量は、構成要素[B]のモノマーとプレポリマーの分子量差が大きく、GPCでのピークが2本以上に分かれる場合は、構成要素[B]に由来するすべてのピークから測定された値をいう。
構成要素[B]のエポキシ樹脂を部分的に重合してプレポリマー化する方法としては、特に制限はないが、例えば、合成溶媒中に構成要素[B]、上記プレポリマー化剤を溶解し、熱をかけながら撹持して合成することができる。プレポリマー化反応時にゲル化をしない範囲において、触媒を用いても良い。溶媒を使用せずに合成することは可能であるが、構成要素[B]は融点が高く、無溶媒ではプレポリマー化反応に高温を必要とするため、安全性の観点から合成溶媒を使用した合成法が好ましい。
構成要素[B]がプレポリマーを含むと結晶化が抑制される傾向にあるためハンドリング性が良くなるが、含有量が多すぎると、構成要素[B]と構成要素[C]の硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物の溶融粘度が高くなり過ぎてしまい、構成要素[A]である炭素繊維への含浸が難しくなる恐れがある。構成要素[B]がプレポリマーを含む場合、その含有量は構成要素[B]中のエポキシ樹脂とプレポリマーの合計100質量部に対して、好ましくは80質量部以下、より好ましくは5〜60質量部の範囲である。前述のGPCあるいはHPLC(High performance Liquid chromatography)測定におけるエポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂由来ピークの面積に占めるプレポリマー由来のピーク面積の割合(プレポリマー由来のピーク面積/エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂由来のピーク面積)では、好ましくは0.80以下であり、より好ましくは0.05〜0.60の範囲である。本発明のプリプレグのうち、少なくとも構成要素[B]と構成要素[C]を含み、構成要素[A]を除く他の全ての成分を、以下では「樹脂組成物」と呼称する。また、樹脂組成物は、特に区別して説明する場合、「構成要素[A]を除く他の全ての成分からなる樹脂組成物」と呼称することもある。本発明の樹脂組成物は、後述するとおり、例えば構成要素[B]に分散可能な熱可塑性樹脂やフィラーを含む場合もある。
構成要素[B]と構成要素[C]を含むエポキシ樹脂組成物としては、180℃未満の温度で結晶相から液晶相あるいは等方性液体に転移するものが好ましい。結晶相から液晶相あるいは等方性液体に転移する温度が180℃未満であることにより、炭素繊維強化複合材料を成形する際に樹脂の流動性が向上し、炭素繊維への含浸性が向上するため、ボイド等の欠陥が少ない炭素繊維強化複合材料を得やすくなる。
本発明においては、液晶性を示さないエポキシ樹脂や、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂、エポキシ樹脂と熱硬化性樹脂の共重合体等を含んでも良い。上記の熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂およびポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂組成物や化合物は、単独で用いてもよいし適宜配合して用いてもよい。少なくとも液晶性を示さないエポキシ樹脂や熱硬化性樹脂を配合することは、樹脂の流動性と硬化後の耐熱性を兼ね備えるものとする。
一般式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂以外の構成要素[B]として用いられるエポキシ樹脂のうち、2官能のエポキシ樹脂としては、フェノールを前駆体とするグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましく用いられる。このようなエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ヒダントイン型およびレゾルシノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
液晶性を示さないエポキシ樹脂のうち、3官能以上のグリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えば、ジアミノジフェニルメタン型、ジアミノジフェニルスルホン型、アミノフェノール型、メタキシレンジアミン型、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン型、イソシアヌレート型等のエポキシ樹脂が挙げられる。中でも物性のバランスが良いことから、ジアミノジフェニルメタン型とアミノフェノール型のエポキシ樹脂が特に好ましく用いられる。
また、3官能以上のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型およびテトラフェニロールエタン型等のエポキシ樹脂が挙げられる。
構成要素[B]および[C]を含むエポキシ樹脂組成物が、一般式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂や熱硬化性樹脂を含有する場合、その配合量は、構成要素[B]の全エポキシ樹脂(一般式(1)で表されるエポキシ樹脂、それ以外のエポキシ樹脂を含む)、エポキシ樹脂のプレポリマー、熱硬化性樹脂の合計100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましい。
次に、本発明の構成要素[C]である構成要素[B]の硬化剤について説明する。本発明の構成要素[C]の硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤であり、エポキシ基と反応し得る活性基を有する化合物である。硬化剤としては、具体的には、例えば、ジシアンジアミド、芳香族ポリアミン、アミノ安息香酸エステル類、各種酸無水物、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ポリフェノール化合物、イミダゾール誘導体、脂肪族アミン、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物のようなカルボン酸無水物、カルボン酸アミド、有機酸ヒドラジド、ポリメルカプタンおよび三フッ化ホウ素エチルアミン錯体のようなルイス酸錯体などが挙げられる。これらの硬化剤は、単独で使用しても複数を併用してもよい。
芳香族ポリアミンを硬化剤として用いることにより、耐熱性の良好なエポキシ樹脂硬化物が得られるため好ましい。芳香族ポリアミンの中でも、ジアミノジフェニルスルホンの各種異性体は、耐熱性の良好な繊維強複合材料を得るため特に好ましい硬化剤である。
また、ジシアンジアミドと尿素化合物、例えば、3,4−ジクロロフェニル−1,1−ジメチルウレアとの組合せ、あるいはイミダゾール類を硬化剤として用いることにより、比較的低温で硬化しながら高い耐熱耐水性が得られる。酸無水物を用いてエポキシ樹脂を硬化することは、アミン化合物硬化に比べ吸水率の低い硬化物を与える。その他、これらの硬化剤を潜在化したもの、例えば、マイクロカプセル化したものを用いることにより、プリプレグの保存安定性、特にタック性やドレープ性が室温放置しても変化しにくい。
硬化剤の添加量の最適値は、エポキシ樹脂と硬化剤の種類により異なる。例えば、芳香族ポリアミン硬化剤では、化学量論的に当量となるように添加することが好ましいが、エポキシ樹脂のエポキシ基量に対する芳香族アミン硬化剤の活性水素量の比を0.7〜1.0とすることにより、当量で用いた場合より高弾性率樹脂が得られることがあり、好ましい態様である。一方、エポキシ樹脂のエポキシ基量に対する芳香族ポリアミン硬化剤の活性水素量の比を1.0〜1.6とすると、硬化速度の向上に加えて、高伸度樹脂が得られることがあり、これも好ましい態様である。したがって、エポキシ樹脂のエポキシ基量に対する硬化剤の活性水素量の比は、0.7〜1.6の範囲が好ましい。
芳香族ポリアミン硬化剤の市販品としては、セイカキュアS(和歌山精化工業(株)製)、MDA−220(三井化学(株)製)、“jERキュア(登録商標)”W(ジャパンエポキシレジン(株)製)、および3,3’−DAS(三井化学ファイン(株)製)、“Lonzacure(登録商標)”M−DEA(Lonza(株)製)、“Lonzacure(登録商標)”M−DIPA(Lonza(株)製)、“Lonzacure(登録商標)”M−MIPA(Lonza(株)製)および“Lonzacure(登録商標)”DETDA80(Lonza(株)製)などが挙げられる。
ジシアンジアミドの市販品としては、DICY−7、DICY−15(以上、三菱化学(株)製)などが挙げられる。ジシアンジアミドの誘導体は、ジシアンジアミドに各種化合物を結合させたものであり、エポキシ樹脂との反応物、ビニル化合物やアクリル化合物との反応物などが挙げられる。
各硬化剤は、硬化促進剤や、その他のエポキシ樹脂の硬化剤と組み合わせて用いても良い。組み合わせる硬化促進剤としては、ウレア類、イミダゾール類、ルイス酸触媒などが挙げられる。
かかるウレア化合物としては、例えば、N,N−ジメチル−N’−(3,4−ジクロロフェニル)ウレア、トルエンビス(ジメチルウレア)、4,4’−メチレンビス(フェニルジメチルウレア)、3−フェニル−1,1−ジメチルウレアなどを使用することができる。かかるウレア化合物の市販品としては、DCMU99(保土ヶ谷化学(株)製)、“Omicure(登録商標)”24、52、94(以上CVC SpecialtyChemicals,Inc.製)などが挙げられる。
イミダゾール類の市販品としては、2MZ、2PZ、2E4MZ(以上、四国化成(株)製)などが挙げられる。ルイス酸触媒としては、三フッ化ホウ素・ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素・モノエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素・トリエタノールアミン錯体、三塩化ホウ素・オクチルアミン錯体などの、ハロゲン化ホウ素と塩基の錯体が挙げられる。
有機酸ヒドラジド化合物としては、硬化促進性と保存安定性から3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボジヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、および、イソフタル酸ジヒドラジド等を好ましく挙げることができる。これらの有機酸ヒドラジド化合物は、必要に応じて2種類以上を混合して配合して使用してもよい。有機酸ヒドラジド化合物の市販品としては、2,6−ナフタレンジカルボジヒドラジド((株)日本ファインケム製)、イソフタル酸ジヒドラジド(大塚化学(株)製)などが挙げられる。
また、これらエポキシ樹脂と硬化剤、あるいはそれらの一部を予備反応させた物を組成物中に配合することもできる。この方法は、粘度調節や保存安定性向上に有効な場合がある。
本発明においては、上記の構成要素[B][C]を含むエポキシ樹脂組成物に、熱可塑性樹脂を混合または溶解させて用いることもできる。熱可塑性樹脂を用いることで、得られるプリプレグのタック性の制御、炭素繊維強化複合材料を成形する時のエポキシ樹脂組成物の流動性の制御することができるため、好ましく用いられる。このような熱可塑性樹脂としては、一般に、主鎖に、炭素−炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、チオエーテル結合、スルホン結合およびカルボニル結合からなる群から選ばれた結合を有する熱可塑性樹脂であることが好ましい。また、この熱可塑性樹脂は、部分的に架橋構造を有していても差し支えなく、結晶性を有していても非晶性であってもよい。特に、ポリアミド、ポリカーボナート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フェニルトリメチルインダン構造を有するポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアラミド、ポリエーテルニトリルおよびポリベンズイミダゾールからなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂が、上記のエポキシ樹脂組成物に含まれるいずれかのエポキシ樹脂に混合または溶解していることが好適である。
中でも、良好な耐熱性を得るためには、熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)が少なくとも150℃以上であり、170℃以上であることが好ましい。配合する熱可塑性樹脂のガラス転移温度が、150℃未満であると、成形体として用いた時に熱による変形を起こしやすくなる場合がある。さらに、この熱可塑性樹脂の末端官能基としては、水酸基、カルボキシル基、チオール基、酸無水物などのものがカチオン重合性化合物と反応することができ、好ましく用いられる。具体的には、ポリエーテルスルホンの市販品である“スミカエクセル(登録商標)”PES3600P、“スミカエクセル(登録商標)”PES5003P、“スミカエクセル(登録商標)”PES5200P、“スミカエクセル(登録商標)”PES7600P(以上、住友化学(株)製)、Virantage(登録商標)”VW−10200RFP、“Virantage(登録商標)”VW−10700RFP(以上、ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製)などを使用することができ、また、特表2004-506789号公報に記載されるようなポリエーテルスルホンとポリエーテルエーテルスルホンの共重合体オリゴマー、さらにポリエーテルイミドの市販品である“ウルテム(登録商標)”1000、“ウルテム(登録商標)”1010、“ウルテム(登録商標)”1040(以上、ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製)などが挙げられる。オリゴマーとは10個から100個程度の有限個のモノマーが結合した比較的分子量が低い重合体を指す。
また、本発明においては、上記の構成要素[B][C]を含むエポキシ樹脂組成物に、さらにエラストマーを配合してもよい。かかるエラストマーは、硬化後のエポキシマトリックス相内に微細なエラストマー相を形成させる目的で配合される。これにより、樹脂硬化物への応力負荷時に生じる平面歪みを、エラストマー相の破壊空隙化(キャビテーション)により解消することができ、エポキシマトリックス相の塑性変形が誘発される結果、大きなエネルギー吸収を引き起こし、炭素繊維強化複合材料としての更なる層間靭性の向上に繋がる。
エラストマーとは、ガラス転移温度が20℃より低いドメインを有するポリマー材料のことであり、液状ゴム、固形ゴム、架橋ゴム粒子、コアシェルゴム粒子、熱可塑性エラストマー、ガラス転移温度が20℃より低いブロックを有するブロック共重合体などが挙げられる。中でも、エラストマーとしては、ガラス転移温度が20℃以下のブロックを含むブロック共重合体およびゴム粒子から選ばれたものが好ましい。これにより、エポキシ樹脂へのエラストマーの相溶を最小限に抑えつつ、微細なエラストマー相を導入できることから、耐熱性や弾性率の低下を抑えつつ、炭素繊維強化複合材料としての層間靭性を大きく向上させることができる。
ゴム粒子としては、架橋ゴム粒子、および架橋ゴム粒子の表面に異種ポリマーをグラフト重合したコアシェルゴム粒子が、取り扱い性等の観点から好ましく用いられる。かかるゴム粒子の一次粒子径は、50〜300nmの範囲にあることが好ましく、特に80〜200nmの範囲にあることが好ましい。また、かかるゴム粒子は使用するエポキシ樹脂との親和性が良好であり、樹脂調製や成形硬化の際に二次凝集を生じないものであることが好ましい。
架橋ゴム粒子の市販品としては、カルボキシル変性のブタジエン−アクリロニトリル共重合体の架橋物からなるFX501P(日本合成ゴム工業(株)製)、アクリルゴム微粒子からなるCX−MNシリーズ(日本触媒(株)製)、YR−500シリーズ(新日鐵住金化学(株)製)等を使用することができる。
コアシェルゴム粒子の市販品としては、例えば、ブタジエン・メタクリル酸アルキル・スチレン共重合物からなる“パラロイド(登録商標)”EXL−2655((株)クレハ製)、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体からなる“スタフィロイド(登録商標)”AC−3355、TR−2122(武田薬品工業(株)製)、アクリル酸ブチル・メタクリル酸メチル共重合物からなる“PARALOID(登録商標)”EXL−2611、EXL−3387(Rohm&Haas社製)、“カネエース(登録商標)”MXシリーズ(カネカ(株)製)等を使用することができる。
本発明においては、本発明のエポキシ樹脂組成物に熱可塑性樹脂粒子を配合することも好適である。熱可塑性樹脂粒子を配合することにより、炭素繊維強化複合材料としたときに、エポキシ樹脂組成物の靱性が向上し耐衝撃性が向上する。
本発明で用いられる熱可塑性樹脂粒子の素材としては、エポキシ樹脂組成物に混合または溶解して用い得る熱可塑性樹脂として、先に例示した各種の熱可塑性樹脂と同様のものを用いることができる。炭素繊維強化複合材料とした時に安定した接着強度や耐衝撃性を与える観点から、粒子中で形態を保持するものであることが好ましい。中でも、ポリアミドは最も好ましく、ポリアミドの中でも、ポリアミド12、ポリアミド11、ポリアミド6、ポリアミド66やポリアミド6/12共重合体、特開平1−104624号公報の実施例1記載のエポキシ化合物においてセミIPN(高分子相互侵入網目構造)化されたポリアミド(セミIPNポリアミド)などを好適に用いることができる。この熱可塑性樹脂粒子の形状としては、球状粒子でも非球状粒子でも、また多孔質粒子でもよいが、球状が、樹脂の流動特性を低下させないため粘弾性に優れ、また応力集中の起点がなく、高い耐衝撃性を与えるという点で好ましい態様である。
ポリアミド粒子の市販品としては、SP−500、SP−10、TR−1、TR−2、842P−48、842P−80(以上、東レ(株)製)、“オルガソール(登録商標)”1002D、2001UD、2001EXD、2002D、3202D、3501D,3502D、(以上、アルケマ(株)製)、“グリルアミド(登録商標)”TR90(エムザベルケ(株)社製)、“TROGAMID(登録商標)”CX7323、CX9701、CX9704、(デグサ(株)社製)等を使用することができる。これらのポリアミド粒子は、単独で使用しても複数を併用してもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、カップリング剤や、熱硬化性樹脂粒子、エポキシ樹脂に溶解可能な熱可塑性樹脂、あるいはシリカゲル、カーボンブラック、クレー、カーボンナノチューブ、金属粉体といった無機フィラー等を配合することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物の30℃における粘度は、プリプレグの取扱性の観点から、1.0×10Pa・s以上でなければならない。30℃における粘度が低すぎると、プリプレグの作製に必要とされる樹脂フィルムが作製され得ない。また、30℃における粘度が低すぎると、保管時にエポキシ樹脂組成物がプリプレグ中の繊維未含浸部に沈み込みやすくなり、タック性が失われることに加え、揮発分除去のための未含浸部の連続性が確保し辛く、揮発分を効率的に除去することが困難であり、脱オートクレーブ成形の際に、炭素繊維強化複合材料中に多数のボイドが発生する恐れがある。
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物の最低粘度は110℃以上に存在し、0.1〜15Pa・sが好ましく、0.3〜10Pa・sがより好ましい。最低粘度が低すぎると、エポキシ樹脂のフローが多くなりすぎるために、プリプレグの硬化の際に樹脂がプリプレグから流出してしまう。また、得られる炭素繊維複合材料において目的の樹脂比率が達成されえない。最低粘度が高すぎると、マトリックス樹脂中から放出される水蒸気、および積層時に閉じ込められた空気を硬化中に成形パネル外部に除去することを可能にする樹脂粘度を確保することが可能でなくなり、また成形中の未含浸繊維部へのエポキシ樹脂組成物の含浸が十分でなく、未含浸繊維部が空隙となり、得られる炭素繊維強化複合材料中に多くのボイドが形成される。
ここで、30℃における粘度および最低粘度は以下の方法によって測定される。すなわち、測定はパラレルプレートを使用した動的粘弾性測定装置(ARES,TA Instrumetns製)を使用し、温度を2℃/分の速度で昇温させながら、周波数0.5Hz、およびプレート間隔1mmで、温度は30℃から180℃の範囲までで行われる。ここでいうエポキシ樹脂組成物の30℃粘度および最低粘度は、上記粘度測定から得られる30℃の時の複素粘度η、および測定温度範囲における最も低いηを示す。
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物の軟化点は硬化温度以下にあることが好ましく、より好ましくは90℃以下であることが望ましい。軟化点が硬化温度以下にあることにより、室温保管時の繊維未含浸部へのエポキシ樹脂組成物の沈み込みを防ぐことができ、成形時に揮発分除去のための未含浸部の連続性が確保され、炭素繊維強化複合材料中のボイドが形成されにくくなる。加えて、未含浸部の連続性が保持されることにより、炭素繊維の拘束が少なくなり、ドレープ性が確保されやすくなる。軟化点か硬化温度以上であると、マトリックス樹脂の流動性が低く、成形過程における未含浸繊維領域への樹脂の流入が起こらず、未含浸繊維が成形体中に残存し、得られる炭素繊維強化複合材料中に多くのボイドが形成されやすくなる。ここでいう軟化点とは、エポキシ樹脂組成物の粘度測定より得られる複素粘度の変化曲線に対する2つの直線部を延長した交点の温度とする。複素粘度の最初に急激に低下する前の直線部を高温側に延長して、1本目の直線を引く。複素粘度が最初に急激に低下した後の中間部の直線部を低温側に延長して、2本目の直線を引く。両線の交点における垂直線を横座標の温度軸に引き、その温度を軟化点として求める。
本発明の構成要素[B]および[C]を含むエポキシ樹脂組成物の軟化点は、液晶転移に由来することが好ましい。曲面形状を有するような繊維強化複合材料を成形する際、プリプレグが剛直である場合に、成形型の曲面形状にプリプレグが追従しない場合がある。エポキシ樹脂組成物の軟化点がガラス転移点に由来する場合、ガラス状態のプリプレグは剛直であり、ドレープ性に劣る。一方、エポキシ樹脂組成物の軟化点が液晶の転移点に由来する場合、プリプレグ中の液晶状態のエポキシ樹脂組成物は曲面形状に沿わせるような変形に対して追従性に優れるために、ガラス状態のプリプレグに対し、ドレープ性に優れる。
軟化点が液晶転移由来であることは、以下の手法により確認出来る。偏光顕微鏡観察は透過法により行われる。可視光を透過させるために、エポキシ樹脂層を数十mg程度のごく少量、ガラスプレート上に広げる。温度可変のホットプレート上にエポキシ樹脂組成物をのせたガラスプレートを置き、偏光顕微鏡で観察をしながら、25℃から180℃まで2℃/minで昇温する。液晶構造形成する場合、分子が配向配列し、高次構造を形成することに起因して、光学的異方性が生じる。光学的異方性を有する構造のサイズが可視光波長オーダー同等以上の場合には、クロスニコル状態での偏光顕微鏡にて干渉模様(明視野)が観察され、本発明で定義する高次構造の形成を確認することができる。高次構造を形成していない、もしくは形成された高次構造のサイズが可視光波長オーダーより小さい場合には、光学的異方性を有しないため暗視野が観察される。液晶構造の場合には、形成する液晶相の種類によって観察される干渉模様が多岐に渡ることが知られている。観察される干渉模様の具体例としては、高次構造がネマチック相構造の場合には、シュリーレン組織、糸状組織、砂状組織、ドロプレット組織が挙げられ、スメクチック相構造の場合には、バトネ組織、フォーカルコニックファン組織、オイリーストリーク組織などが挙げられる。
本発明のプリプレグの製造方法は、様々な公知の方法で製造することができる。例えば、エポキシ樹脂のフィルムをシート状に配列した炭素繊維シートの表面に重ね、加圧/加熱含浸するホットメルト法である。例えば、本発明のエポキシ樹脂組成物を離型紙上に、リバースロールコーターあるいは、ナイフコーターなどを使用して塗布し、フィルムを作製し、次いで、エポキシ樹脂組成物フィルムを炭素繊維の両面に重ねて、加熱及び加圧によって含浸させることにより製造され得る。また、この製造方法において、未含浸部の連続性をより高めるためには、熱可塑性樹脂を配置した側のエポキシ樹脂組成物の炭素繊維層への含浸を抑制することが重要である。これを実現する手段として、熱可塑性樹脂を配置したエポキシ樹脂フィルムの粘度を、エポキシ樹脂組成物のみを含むエポキシ樹脂フィルムの粘度よりも高く設定することも有効である。別の手段としては、含浸プロセスを2段階に分け、エポキシ樹脂組成物のみを含むエポキシ樹脂フィルムをまず高温で含浸し、その後熱可塑性樹脂を含むエポキシ樹脂フィルムを低温で含浸することも有効である。さらにはこれらの手順を組み合わせることも有効である。
本発明のプリプレグは、シート状の炭素繊維の一方の面のみにマトリックス樹脂が被覆されたプリプレグは、好ましい形態である。一方の面がマトリックス樹脂で含浸されていない炭素繊維を含むことで脱気パスの機能を果たす。特にオーブン等の低圧力下で加熱成形する際に、得られる炭素繊維強化複合材料中のボイドを低減させる効果がある。
本発明のプリプレグは、エポキシ樹脂組成物が炭素繊維中の一部に含浸された形態が好ましい。プリプレグ中の繊維への樹脂の含浸の度合いは、吸水試験により算出されるプリプレグの吸水率WPUが1〜15%であることが好ましく、3〜15%がより好ましく、5〜12%がさらに好ましい。本発明のWPUとは、吸水試験により算出されるプリプレグの吸水率であり、構成要素[B]および[C]を含むエポキシ樹脂組成物が、構成要素[A]の炭素繊維に含浸した度合いを表す指標である。WPUが低すぎる場合、マトリックス樹脂中から放出される水蒸気および積層時に閉じ込められた空気を硬化中に成形パネル外部に除去するための繊維未含浸部が流路としての機能を失い、ボイドが発生しやすくなる。またWPUが高すぎる場合、プリプレグを積層する際に、プリプレグが面外方向に割れてしまい、プリプレグの取り扱い性が悪くなる。
本発明のプリプレグの吸水率WPUの測定は以下のように行われる。まず、一方向に炭素繊維を配列した100mm×100mmのプリプレグを準備し、質量を計測する。そのときの質量をW1とする。用意したプリプレグの両面から薄板のアルミ板で、プリプレグが5mm突出するように把持する。このとき突出したプリプレグは繊維方向が5mm、繊維に直交する面が100mmとなる。アルミ板をクランプで把持する。5mmの突出部を23℃の温度の水に、5分間浸漬する。浸漬後、プリプレグを取り出し、プリプレグ表層の水をすべて取り除き、吸水したプリプレグの質量を測定する。このときの質量をW2とする。吸水率WPUは以下の式で計算される。
WPU(%)= (W2−W1)/W1×100
本発明の炭素繊維強化複合材料は、前記プリプレグ、あるいはその積層体を加熱硬化させることにより作製できる。本発明のプリプレグは真空圧成形に好適なものであるが、オートクレーブ成形、およびプレス成形においても同様にボイドが発生し難いプリプレグとして活用が期待できる。
本発明のプリプレグをオーブンで加熱して硬化させる場合は、例えば以下の成形法を用いることでボイドの少ない炭素繊維強化複合材料を得ることが可能である。単層のプリプレグまたは複数枚のプリプレグを積層して得られる積層体を、内部の真空度が11kPa以下の袋に包んで20〜70℃の温度に保ち揮発分を除去し、真空度を11kPa以下に維持したまま硬化温度まで昇温する。ここで、揮発分の除去は、真空度が好ましくは0.1kPa〜11kPa、より好ましくは0.1kPa〜7kPaである条件で行うことが好ましい。真空度が高いほど揮発分の除去を短時間で実施することが可能となる。11kPaより高いと、プリプレグ中における揮発分の除去が十分できず、得られる炭素繊維強化複合材料中に多数のボイドが発生する恐れがある。また、成形時には未含浸部に樹脂が充填される必要があるが、そのためには樹脂の粘度を低下させることが効果的である。例えば樹脂の硬化開始温度(80℃〜130℃)にて長時間保持し、未含浸部に樹脂を充填させた後、樹脂の硬化温度(130℃〜200℃)とし、樹脂を硬化させるのが良い。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、組成比の単位「部」は、特に注釈のない限り質量部を意味する。また、各種特性(物性)の測定は、特に注釈のない限り温度23℃、相対湿度50%の環境下で行った。
<実施例および比較例で用いられた原材料>
(1)構成要素[A]
・炭素繊維1
“トレカ(登録商標)”T800G−24K−31E(フィラメント数24,000本、引張強度5.9GPa、引張弾性率294GPa、引張伸度2.0%の炭素繊維、東レ(株)製)。
(2)構成要素[B]
・エポキシ樹脂1
化合物名:4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート、特許第5471975号公報参照、エポキシ当量:213g/eq)を200℃に加熱融解し、そこへプレポリマー化剤としてレゾルシノール(水酸基当量:55g/eq)をエポキシ当量数:水酸基当量数が100:25になるように加え、窒素雰囲気下、200℃で3時間加熱することでエポキシ樹脂2を得た。プレポリマーの含有量は、4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエートとそのプレポリマーの合計100質量部に対して53質量部であり、JIS K7236に従いエポキシ当量を測定したところ320g/eqであった。
・エポキシ樹脂2
化合物名:4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート、特許第5471975号公報参照、エポキシ当量:213g/eq)を200℃に加熱融解し、そこへプレポリマー化剤としてビスフェノールF(水酸基当量:100g/eq)を、エポキシ当量数:水酸基当量数が100:15になるように加え、窒素雰囲気下、200℃で3時間加熱することでエポキシ樹脂3を得た。プレポリマーの含有量は、4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエートとそのプレポリマーの合計100質量部に対して38質量部であり、JIS K7236に従いエポキシ当量を測定したところ309g/eqであった。
・エポキシ樹脂3
化合物名:2−メチル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート}、特開2010−241797号公報参照、エポキシ当量:245g/eq)を200℃に加熱融解し、そこへプレポリマー化剤としてレゾルシノール(水酸基当量:55g/eq)をエポキシ当量数:水酸基当量数が100:25になるように加え、窒素雰囲気下、200℃で3時間加熱することでエポキシ樹脂1を得た。プレポリマーの含有量は、2−メチル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエートとそのプレポリマーの合計100質量部に対して53質量部であり、JIS K7236に従いエポキシ当量を測定したところ353g/eqであった。
・“エピクロン(登録商標)”830(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、DIC(株)製)
・“jER(登録商標)”604(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、三菱化学(株)製)
・“jER”(登録商標)828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製)。
(3)構成要素[C]
・3,3’−DAS(3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、三井化学ファイン(株)製)
・“Lonzacure(登録商標)”DETDA80(ジエチルトルエンジアミン Lonza(株)製)。
(4)その他成分
・“スミカエクセル(登録商標)”PES5003P(ポリエーテルスルホン、住友化学(株)製)。
<各種評価法>
(5)エポキシ樹脂組成物の調製
ニーダー中に、表1,2に示す配合比で、硬化剤、硬化促進剤以外の成分を所定量加え、混練しつつ、160℃まで昇温し、160℃1時間混練することで、透明な粘調液を得た。混練しつつ80℃まで降温させた後、硬化剤、硬化促進剤を所定量添加し、さらに混練し、エポキシ樹脂組成物を得た。
(6)エポキシ樹脂組成物の軟化点近傍の偏光顕微鏡による観察
(5)で作製したエポキシ樹脂組成物を前述した方法により、偏光顕微鏡(キーエンス(株)製;VHX−5000、偏光フィルター付き)を用いて観察する。干渉模様が観察され、高次構造形成が確認された場合を「A」とした。
(7)プリプレグの作製
(実施例1〜4、6〜8、比較例1〜5)
エポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて離型紙上に塗布して、樹脂目付が52g/mの樹脂フィルムを2枚作製した。次に、シート状に一方向に配列させた構成要素[A]の炭素繊維に、樹脂フィルム2枚を炭素繊維の両面から重ね、加熱ローラにより樹脂を炭素繊維に含浸させ、炭素繊維の目付が190g/m、エポキシ樹脂組成物の質量分率が35%の一方向プリプレグを得た。ここで、表1中には、最終的なプリプレグ中におけるエポキシ樹脂組成物の組成割合を記載してある。ここで、プリプレグを含浸させるときの加熱ロールの表面温度は、実施例1、4、7、8は120℃、実施例2は110℃、実施例3、比較例3、4、5は130℃、比較例1は90℃、実施例6、比較例2は140℃で実施した。
(実施例5)
エポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを使用して離型紙上に塗布し、1枚の104g/mの樹脂フィルムを作製した。次に、シート状に一方向に配列された構成要素[A]の炭素繊維の一方向に重ね、加熱ローラにより樹脂を炭素繊維に含浸させ、炭素繊維の目付が190g/m、エポキシ樹脂組成物の質量分率が35%の一方向プリプレグを得た。ここでプリプレグを含浸させるときの加熱ロールの表面温度は130℃で実施した。
(8)WPUの測定
前述の手法に従い、100mm×100mmのプリプレグを用意し、吸水率WPUを評価した。実施例7、8および比較例5に関しては、温度23℃、相対湿度50%の環境下にて72時間静置した後にもWPUを測定した。
(9)偏光顕微鏡による観察
(7)で作製した一方向プリプレグ1プライを幅50mm、長さ50mmにカットし、プリプレグが幅80mm以上となるように繊維間隔を手で広げた後、オーブンにて150℃4時間、180℃2時間の条件で硬化し、観察用の炭素繊維強化複合材料の試験体を得た。試験体における構成要素[A]を除くエポキシ樹脂組成物の硬化物を偏光顕微鏡(キーエンス(株)製;VHX−5000、偏光フィルター付き)により観察を行った。干渉模様が観察され、高次構造形成が確認された場合を「A」、干渉模様が観察されず、高次構造が確認できなかった場合を「B」とした。
(10)X線回折による回折角度2θの測定
(7)で作製した一方向プリプレグを厚さ約1mmとなるように積層した後、25℃、真空度3kPaで揮発分の除去した後、1.5℃/分の速度で110℃の温度まで昇温し、真空度を3kPaに維持したまま180分間保持し、その後1.5℃/分の速度で180℃の温度まで昇温して120分間保持してプリプレグを硬化させ、積層体を作製した。成形した炭素繊維強化複合材料を用いて、長さ40mm、幅10mmにカットし、試験片を得た。測定は以下の条件により、炭素繊維強化複合材料内の炭素繊維軸に対して平行(0°)、垂直(90°)、45°に対して行った。実施例7、8および比較例5に関しては、温度23℃、相対湿度50%の環境下にて72時間静置した一方向プリプレグを用いた。
・装置:X’ PertPro(スペクトリス(株)PANalytical事業部製)
・X線源:CuKα線(管電圧45kV、管電流40mA)
・検出器:ゴニオメーター+モノクロメーター+シンチレーションカウンター
・走査範囲:2θ=1〜90°
・走査モード:ステップスキャン、ステップ単位0.1°、計数時間40秒。
1〜10°範囲における回折角度2θのピークを表1,2,3に記載した。また、ピークを有さない場合は「B」と記載した。
(11)炭素繊維強化複合材料のボイド率測定
縦300mm×横150mmのプリプレグを一方向に16枚積層し、プリプレグ積層体とした後、25℃、真空度3kPaで3時間放置し、揮発分を除去した。その後、真空度を3kPaに維持したまま1.5℃/分の速度で110℃の温度まで昇温して180分間保持し、さらに1.5℃/分の速度で180℃の温度まで昇温して120分間保持し、樹脂を硬化させることにより、炭素繊維強化複合材料を得た。この炭素繊維強化複合材料から縦10mm×横10mmサンプル片を3個切り出し、その断面を研磨後、炭素繊維強化複合材料の上下面が視野内に収まるように50倍のレンズを用いて光学顕微鏡で観察し、画像を取得した。取得画像から、ボイド領域と総断面積の割合を算出することにより各画像のボイド率を算出し、同様の作業を各サンプルにつき3箇所、合計9箇所実施し、その平均値を各評価水準のボイド率とした。実施例7、8および比較例5に関しては、温度23℃、相対湿度50%の環境下にて72時間静置した一方向プリプレグを用いた。
(12)モードI層間靭性(GIC)試験用複合材料製平板の作製とGIC測定
JIS K7086(1993)に準じ、次の(a)〜(e)の操作によりGIC試験用複合材料製平板を作製した。実施例7、8および比較例5に関しては、温度23℃、相対湿度50%の環境下にて72時間静置した一方向プリプレグを用いた。
(a)(7)で作製した一方向プリプレグを、繊維方向を揃えて20ply積層した。ただし、積層中央面(10ply目と11ply目の間)に、繊維配列方向と直角に、幅40mm、厚み50μmのフッ素樹脂製フィルムをはさんだ。
(b)積層したプリプレグを25℃、真空度3kPaで揮発分の除去した後、1.5℃/分の速度で110℃の温度まで昇温し、真空度を3kPaに維持したまま180分間保持し、その後1.5℃/分の速度で180℃の温度まで昇温して120分間保持してプリプレグを硬化させ、積層体を作製した。
(c)(b)で得た一方向炭素繊維強化複合材料を、幅20mm、長さ195mmにカットした。繊維方向は、試験片の長さ側と平行になるようにカットした。
(d)JIS K7086(1993)に記載のピン負荷用ブロック(長さ25mm、アルミ製)では試験時に接着部が剥がれてしまったため、代わりにトライアングル状グリップを使用した(図1)。試験片端(フッ素樹脂製フィルムを挟んだ側)から4mmの位置に幅方向両端に1mm長さのノッチを入れ、トライアングル状グリップを引っかけた。試験はトライアングル状の治具をインストロン万能試験機(インストロン社製)のクロスヘッドで引っ張ることで試験片に荷重を与えた。
(e)亀裂進展を観察しやすくするため、試験片の両側面に白色塗料を塗った。
作製した複合材料製平板を用いて、以下の手順により、GIC測定を行った。JIS K7086(1993)附属書1に従い、インストロン万能試験機(インストロン社製)を用いて試験を行った。クロスヘッドスピードは、亀裂進展が20mmに到達するまでは0.5mm/分、20mm到達後は1mm/分とした。試験は亀裂が100mm進展するまで行い、試験中に取得した荷重−変位線図の面積からGICを算出した。
(13)炭素繊維強化複合材料の圧縮強度
(7)で作製した一方向プリプレグを、繊維方向を揃えて8ply積層し、25℃、真空度3kPaで揮発分の除去した後、1.5℃/分の速度で110℃の温度まで昇温し、真空度を3kPaに維持したまま180分間保持し、その後1.5℃/分の速度で180℃の温度まで昇温して120分間保持してプリプレグを硬化させ、積層体を作製した。この積層体を用い、炭素繊維強化複合材料の圧縮強度をSACMA SRM IR−94に従って測定した。実施例7、8および比較例5に関しては、温度23℃、相対湿度50%の環境下にて72時間静置した一方向プリプレグを用いた。
(実施例1〜5および比較例1、2)
実施例1〜5および比較例1、2を比較することにより、軟化点を適切な温度に有し、WPUを適当な範囲とすることで、プリプレグのハンドリング性に優れ、オートクレーブで成形したものと同程度にボイド率が少なく、層間靱性に優れたCFRPパネルを得た。比較例1は炭素繊維へエポキシ樹脂組成物がほとんど含浸しておらず、樹脂未含浸な炭素繊維間で剥がれてしまうためプリプレグのハンドリング性が悪く、炭素繊維複合材料を作製することが困難であった。比較例2はWPUが低く、連続的な脱気パスが確保できておらず、ボイドが多数発生した。
(実施例1〜3および比較例3、4)
実施例1〜3ならびに比較例3,4を比較することにより、最低粘度を示すときの樹脂温度を適切な範囲とすることで、オートクレーブで成形したものと同程度にボイド率の低い、層間靱性に優れるCFRPパネルを得ることが出来る。比較例3は最低粘度温度が低いため、成形時の樹脂フローが十分に起こらず未含浸繊維部がボイドになったと考えられる。比較例4は樹脂硬化物が高次構造を形成しないために、モードI層間靱性GICが低い。
(実施例7、8および比較例5)
実施例7、8および比較例5を比較することにより、30℃粘度、軟化点を適切な範囲とすることで、炭素繊維複合材料のボイド率を抑制できることがわかる。実施例7、8は、プリプレグを72時間、温度23℃、湿度50%条件下で放置しても、樹脂の沈み込みが発生しない、あるいは小さく、未含浸繊維の連続層により成形時に通気パスを確保できるため、ボイドの発生量が少ない。
Figure 2019210335
Figure 2019210335

Claims (6)

  1. 下記構成要素[A]〜[C]を含むプリプレグであって、構成要素[B]及び[C]を含むエポキシ樹脂組成物は各周波数3.14rad/sで測定した30℃粘度が1.0×10Pa・s以上、最低粘度が110℃以上、吸水試験により算出されるプリプレグの吸水率WPUが1〜15%であり、エポキシ樹脂組成物の硬化物がクロスニコル状態での偏光顕微鏡観察にて干渉模様を示す樹脂領域を含むプリプレグ。
    [A]:炭素繊維
    [B]:エポキシ樹脂
    [C]:[B]の硬化剤
  2. エポキシ樹脂組成物の硬化物が、広角X線回折によって、観察される回折角度2θ=1.0°〜6.0°に由来する高次構造を有する請求項1に記載のプリプレグ。
  3. エポキシ樹脂組成物の軟化点が硬化開始温度以下に存在する、請求項1または2に記載のプリプレグ。
  4. エポキシ樹脂組成物の軟化点が90℃以下に存在する、請求項3に記載のプリプレグ。
  5. 軟化点が液晶相転移に由来する請求項3または4に記載のプリプレグ。
  6. プリプレグの少なくとも一方の面がエポキシ樹脂組成物で被覆されている、請求項1〜5のいずれかに記載のプリプレグ。
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