JP2019206017A - 軽金属板材、及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】延性に優れた軽金属板材を提供する。【解決手段】アンビル上に載置されるコンテナの内部に1種以上の軽金属を含む前駆体を収容する工程、前記前駆体に熱間で垂直応力を負荷しながら、前記アンビルを押出方向に駆動し、前記アンビルの上面と前記コンテナの下端との間に形成される押出口から前記軽金属を含む板材を摩擦押出しする工程、により製造される軽金属板材。【選択図】図1

Description

本発明は、軽金属板材、及びその製造方法に関し、特に複数層が塑性変形を介して固相接合した軽金属複合板材とその製造方法に関する。
マグネシウム合金は、実用金属の中で最も比強度が高い構造材料として知られており、軽量化が求められている輸送機器、モバイル機器等への適用が検討されている。しかし、マグネシウム合金は、耐食性ならびに冷間成形性が悪いため、表面処理や成形工程数増大により製造コストが高いという問題がある。
これらを解決する手法として、マグネシウム合金に、耐食性および成形性の良好な純アルミニウムあるいはアルミニウム合金を被覆する方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、マグネシウム合金ビレットの表面をアルミニウムまたはその合金材で緊密な機械的接触により被覆したビレットを、400℃以下に加熱し、押出したことを特徴とするマグネシウム−アルミニウムクラッド材の製造方法が提案されている。
また、特許文献2には、芯材と、この芯材と押出ダイスとの間に被覆材を配置し、熱間押出法により芯材と被覆材を同時に押出すことにより、芯材に被覆材を被覆してなる被覆型複合材料の製造方法が提案されている。
特許文献1、2に記載されている製造方法は、得られる材の寸法・形状が限定され、これから薄板材を得るには、圧延工程が必須であるため、工程数が多くなる、圧延後に所望の被覆厚の板材を得ることが困難であるという問題がある。
また、非特許文献1には、摩擦押出しによる銅−アルミニウム複合薄板の成形方法が記載されている。非特許文献1に記載の成形方法は、板材(薄板)が少ない工程数で得られるものであるが、冷間押出(室温)による成形であるため、押出しに必要な圧力が高く、大型の装置が必要である。また、得られる薄板は極めて大きな加工硬化が引き起こされていると推測される。
特開平06−328270号公報 特開2010−247219号公報
中村 保、田中 繁一、平岩 正至、今泉 晴樹、富沢 康治;摩擦押出しによる銅−アルミニウム複合薄板の成形、日本機械学会論文集(C編)、61巻(1995年)、584号
本発明は、延性に優れた軽金属板材を提供することを課題とする。
1.アンビル上に載置されるコンテナの内部に1種以上の軽金属を含む前駆体を収容する工程、
前記前駆体に熱間で垂直応力を負荷しながら、前記アンビルを押出方向に駆動し、前記アンビルの上面と前記コンテナの下端との間に形成される押出口から前記軽金属を含む板材を摩擦押出しする工程、
により製造されることを特徴とする軽金属板材。
2.前記前駆体が、粉材であることを特徴とする1.に記載の軽金属板材。
3.前記前駆体が、板材であることを特徴とする1.に記載の軽金属板材。
4.異なる軽金属の積層体からなる軽金属複合板材であることを特徴とする3.に記載の軽金属板材。
5.マグネシウム合金からなる芯材の一面または両面が、純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる被覆材で被覆されている軽金属複合板材であることを特徴とする4.に記載の軽金属板材。
6.アンビル上に載置されるコンテナの内部に1種以上の軽金属を含む前駆体を収容する工程、
前記前駆体に熱間で垂直応力を負荷しながら、前記アンビルを押出方向に駆動し、前記アンビルの上面と前記コンテナの下端との間に形成される押出口から前記軽金属を含む板材を摩擦押出しする工程、
を有することを特徴とする、軽金属板材の製造方法。
7.前記前駆体が、粉材であることを特徴とする6.に記載の軽金属板材の製造方法。
8.前記前駆体が、板材であることを特徴とする6.に記載の軽金属板材の製造方法。
9.前記前駆体が、異なる軽金属からなる2枚以上の板材であり、
前記軽金属板材が、各層間が固相接合した異なる軽金属の積層体からなる軽金属複合板材であることを特徴とする8.に記載の軽金属板材の製造方法。
10.前記2枚以上の板材の厚さにより、得られる軽金属複合板材の複合比を調整することを特徴とする9.に記載の軽金属板材の製造方法。
11.前記アンビルが上面に凹凸を有し、得られる軽金属板材に前記凹凸を転写することを特徴とする6.〜10.のいずれかに記載の軽金属板材の製造方法。
本発明の製造方法は、熱間で押出すため、材料の再結晶により加工硬化を防ぐことができ、延性に優れた軽金属板材を得ることができる。本発明の製造方法は、表面が酸化被膜で覆われた前駆体を用いて、軽金属板材を得ることができる。本発明の製造方法は、熱間で押出すため、冷間での押出しと比較して小さな圧力で押出すことができるため、小型の装置で製造することができる。
本発明の製造方法は、原料である前駆体として粉材を用いることにより、切削屑等を固相再生して軽金属板材を製造することができる。本発明の製造方法による固相再生プロセスは、切削屑等の粉材を溶融する必要がないため、再生に必要なエネルギー量、二酸化炭素発生量を大幅に削減できる。また、前駆体として異なる2種以上の軽金属を用いることにより、各層間が塑性変形を介して固相接合により強固に接合している積層体である軽金属複合板材を得ることができる。また、押出口上縁となるコンテナ下端、押出口下縁となるアンビル上面の形状により、様々な二次元形状を有する軽金属板材を得ることができる。
本発明の軽金属板材の製造方法で使用する軽金属板材の成形装置の一実施態様の部分断面図。 本発明の製造方法において製造される軽金属板材の屈曲部の模式図。 実験1で得られた軽金属板材の0.2%耐力と引張強さの測定結果を示す図。 実験1で得られた軽金属板材の破断伸びの測定結果を示す図。 実験2で得られた軽金属板材の公称応力−公称ひずみの関係を示す図。 実験2で得られた軽金属板材の引張強さの測定結果を示す図。 実験2で得られた軽金属板材の均一伸びと破断伸びの測定結果を示す図。 実験3で得られた軽金属複合板材の屈曲部の断面画像。 実験3で得られた軽金属複合板材の接合部分の断面画像。 実験3で得られた軽金属複合板材の0.2%耐力と引張強さの測定結果を示す図。 実験3で得られた軽金属複合板材の応力−ひずみ曲線を示す図。 実験4と実験3で得られた各軽金属複合板材の屈曲部の断面画像。
本発明は、軽金属板材と、その製造方法に関する。
本発明の軽金属板材は、アンビル上に載置されるコンテナの内部に1種以上の軽金属を含む前駆体を収容する工程、この前駆体に熱間で垂直応力を負荷しながら、アンビルを押出方向に駆動し、アンビル上面とコンテナ下端の間に形成される押出口から軽金属を含む板材を摩擦押出しする工程、により製造されることを特徴とする。
本発明において、軽金属を含む前駆体とは、軽金属を80重量%以上含むことを意味する。前駆体は、軽金属以外に、セラミック、重金属等からなる粒子を含むことができる。軽金属以外の材料を含む前駆体を用いることにより、軽金属中に異種材料粒子が分散した複合材を得ることができる。均一な複合材を得る観点から、軽金属以外の材料からなる粒子の粒径は、JIS Z8801−1:2006に記載の目開き125μmの篩をパスする粒度であることが好ましい。
また、本発明において、軽金属とは、比重5.0以下の金属を意味し、例えば、アルミニウム、マグネシウム、チタン、ベリリウム、カルシウム等、及びこれらを主成分とする合金が挙げられる。なお、本発明において、主成分とするとは、70重量%以上含むことを意味する。
「製造方法」
本発明の軽金属板材の製造方法を、図面に基づいて説明する。
図1に、本発明の軽金属板材の製造方法で使用する成形装置の一実施態様の部分断面図を示す。
一実施態様である成形装置20は、コンテナ21、パンチ22、アンビル23を有する。また、一実施態様である成形装置20は、コンテナの加熱装置、アンビルの加熱装置、アンビルの駆動装置、パンチの加圧装置等を備える(いずれも図示せず)。
コンテナ21は、四角筒形状であり、その筒内部が軽金属を含む前駆体10を収容するための収容部である。コンテナ21は、アンビル23上に載置されるものであり、その下端には、アンビルに載置した際に隙間を形成するための凹部を備える。下記で詳述するが、コンテナ下端とアンビル上面との間に形成されるこの隙間が、軽金属板材1が押出される押出口24となる。
なお、押出口となる隙間は、コンテナ下端、アンビル上面のいずれか、または両方に凹部を設けることにより、形成することができる。
パンチ22は、コンテナ21内部に収容された前駆体10に、圧力を負荷するものである。
アンビル23は、その上面にコンテナ21が載置されるものであり、一方向に駆動する。この際、コンテナ21とパンチ22は駆動せず元の位置に留まる。アンビル24の駆動方向は、軽金属板材1の押出方向であり、本発明の製造方法により、軽金属板材1がいわゆる「固着摩擦」によりアンビル23上面に凝着した状態で押出口24から押出される。
まず、コンテナの収容部に軽金属を含む前駆体を収容する。前駆体として、組成が異なる2種以上の前駆体を収容することができる。前駆体の形状は、粉材、板材のいずれか、または両方を用いる。
この前駆体を加熱し、熱間でパンチにより垂直応力を負荷し、この加圧状態でアンビルを押出方向に駆動する。すると、アンビル上面との摩擦力により、前駆体はアンビル上面に凝着したまま押出口から押出され、軽金属板材となる。この際、アンビル上面と板材との過度な凝着を抑止するために、二硫化モリブデン等の潤滑剤をアンビル上面に塗布することもできる。なお、熱間とは、絶対温度(K)で融点の半分以上融点以下の温度を意味する。得られる軽金属板材の加工硬化を防ぐためには、押出し温度を高くし、再結晶化すればよい。ただし、押出し温度が高いと、加熱のためのエネルギー消費量が多くなり、また、複数の軽金属からなる前駆体を押出す場合、異種軽金属の界面での接合が弱くなる場合がある。そのため、本発明の製造方法では、押出し温度は低いほうが好ましく、具体的には、180℃以上350℃以下程度である。
本発明の製造方法は、熱間での押出しのため、冷間での押出しと比べて押出し圧力を小さくすることができる。さらに、本発明の製造方法において、軽金属板材は、押出し時に下面側はアンビルに凝着したままであり、押出し時に軽金属板材表面と成形装置内面とが擦れ合う面積が小さいため、小さな圧力で軽金属板材を押し出すことができる。具体的には、本発明の製造方法における押出し圧力は、130MPa以上350MPa以下であることが好ましく、160MPa以上320MPa以下であることがより好ましい。
本発明の製造方法において製造される軽金属板材の屈曲部の模式図を図2に示す。以下、収容部の幅と押出口の幅は同一であるとする。
摩擦押出しにより、一辺の長さd(dは、収容部の奥行き)の正四角形ABCDは、高さh(hは、押出口の高さ)、下辺xの平行四辺形A’B’C’D’にせん断変形する。せん断変形前後で体積は一定であるから、d=hxより、x=d/hである。そして、押出比(R)は、R=d/h、すなわち、収容部の奥行き(d)と押出口の高さ(h)の比となる。なお、本発明において押出比は、均一な板材が成形される条件であればよいが、5以上40以下程度である。
図2に示すように、本発明の製造方法により得られる軽金属板材は、摩擦押出し時のせん断変形により、前駆体の辺CD(長さd)が、軽金属板材の辺C’D’(長さx=R×d)に伸び、前駆体表面の酸化被膜が破壊される。そして、新たに生じた金属面同士が接触することにより原子間距離が近接し、強固な軽金属板材を得ることができる。すなわち、本発明の製造方法は、表面が酸化被膜に覆われた前駆体をそのまま用いることができる。
本発明の製造方法において、前駆体として2種以上の軽金属を用いた場合、2種以上の軽金属がその界面において固相接合した複合材を得ることができる。2種以上の軽金属としては、粉材のみ、板材のみ、粉材と板材の両方、を用いることができる。2種以上の軽金属として板材を用いる場合は、押出口の奥行方向に、板材が並ぶように収容する。板材をこのように収容した状態で押出すことにより、各層間が強固に固相接合した積層体からなる軽金属複合板材を製造することができる。この際、収容する板材の厚さにより、得られる軽金属複合板材の各層の複合比(膜厚比)を制御することができる。
2枚以上の板材を収容する場合において、収容する板材の枚数は特に制限されないが、4枚以上とすることによる性能の向上はほとんど期待できないため、2枚または3枚であることが好ましい。
さらに、本発明の製造方法において、押出しが進行して前駆体の量が減った場合、一旦、押出しを停止して収容部に新たな前駆体を収容し、その状態で押し出しを再開することにより、連続した長尺状の軽金属板材を製造することができる。異なる前駆体間の界面は、固相接合により強固に接合しているため、この界面での剥離や破壊は起こりにくい。
「軽金属板材」
本発明の軽金属板材は、上記製造方法により製造されるものである。本発明の軽金属板材、異なる軽金属の積層体である軽金属複合板材において、使用する軽金属の種類は特に制限されない。軽金属複合板材としては、例えば、成形性・耐食性に劣るマグネシウム合金を、成形性・耐食性に優れる純アルミニウム、アルミニウム合金、チタン合金のいずれかで被覆した軽金属複合板材が挙げられ、成形性とコストの点から、純アルミニウム、またはアルミニウム合金を被覆材とすることが好ましい。
本発明の軽金属板材は、上記製造方法により製造されていればよく、その形状は、扁平な直方体に限定されない。具体的には、押出比の最小値と最大値が5以上40以下である様々な形状とすることができる。
本発明の製造方法によると、押出口の上縁となるコンテナ下端は押出し方向に駆動しないため、軽金属板材の上側の断面形状は、押出口の上縁の形状と等しくなる。例えば、押出口の上縁の形状を上に凸の円弧状とすることにより、上部断面が上に凸の円弧状である軽金属板材を製造することができる。
さらに、本発明の製造方法によると、押出口の下縁であるアンビル上面は押出し方向に駆動し、軽金属板材がこのアンビル上面に凝着した状態で得られるため、軽金属板材の下面に、アンビル上面の形状を転写することができる。例えば、上面に円形の窪みを備えるアンビルを用いることにより、窪み形状が転写された円形の軽金属板材を製造することができる。
「実験1」
マグネシウム合金圧延材(AZX612:Al6%、Zn1%、Ca2%、Mg残部、厚さ2mm)から、切削屑を得た。この切削屑を粉材として、400MPaの圧力で室温圧粉成形してビレットを作成した。
コンテナ(収容部の幅36mm、奥行き10mm)内部に、このビレットを収容し、垂直応力240MPa、アンビル駆動速度20mm/min、押出し比20(押出口の高さ0.5mm)、押出し温度をそれぞれ300℃、350℃、400℃の条件下で、摩擦押出しを行い、幅36mmのマグネシウム合金の軽金属板材を製造した。なお、冷間(室温)での押出しも試みたが、使用した製造装置の最大圧力(400MPa)でも、板材を成形することができなかった。
得られた軽金属板材から、押出し方向(ED)と押出口幅方向(TD)にダンベル型の引張試験片(平行部長さ8〜10mm、平行部幅3〜4mm)を切り出し、0.2%耐力、引張強さ、破断伸びを測定した。また、切削屑を得た圧延材(厚さ2mm)についても同様にして測定した。結果を図3、4に示す。
「結果」
粉材である切削屑から、実用的な引張強さと破断伸びを有する板材が得られた。このことから、本発明の製造方法の、切削屑の固相再生プロセスとしての有効性が確認できた。本発明による切削屑の固相再生プロセスは、切削屑を溶融する必要がないため、再生に必要なエネルギー量、二酸化炭素発生量を大幅に削減できる。
「実験2」
コンテナ(収容部の幅36mm、奥行き4mm)内部に、純アルミニウムからなる板材を収容し、垂直応力360MPa、アンビル駆動速度20mm/min、押出し比8(開口部押出口の高さ0.5mm)の条件下で、熱間(300℃)、冷間(100℃)でそれぞれ摩擦押出しを行い、幅36mmの軽金属板材を製造した。
実験1と同様にして、得られた軽金属板材から、押出し方向(ED)にダンベル型の引張試験片を切り出し、公称応力−公称ひずみの関係、引張強さ、均一伸び、破断伸びを測定した。結果を図5〜7に示す。
「結果」
熱間の摩擦押出しで得られた本発明の軽金属板材は、冷間(100℃)の摩擦押出しで得られた軽金属板材と比較して、引張強さが小さく、伸びが大きく、延性に優れていることが確認できた。
「実験3」
コンテナ(収容部の幅36mm、奥行き10mm)内部に、マグネシウム合金からなる板材(AZX612:Al6%、Zn1%、Ca2%、Mg残部、厚さ8mm)と、純アルミニウム板材(厚さ2mm)とを、純アルミニウム板材が押出口側となるように収容し、垂直応力240MPa、アンビル駆動速度20mm/min、押出し温度300℃、押出し比20(押出口の高さ0.5mm)の条件下で、摩擦押出しを行い、マグネシウム合金と、純アルミニウムとの軽金属複合板材を製造した。
得られた軽金属複合板材の、屈曲部の断面画像を図8に、接合界面の断面画像を図9に示す。
屈曲部の断面画像から、摩擦押出しにより、屈曲部近傍でせん断変形が生じていることが確認できた。また、接合界面の断面画像から、マグネシウム合金約320μm、純アルミニウム約180μmで接合した軽金属複合板材が得られたことが確認できた。
得られた軽金属複合板材について、下記に示す各試験を行った。
・塩水噴霧試験
軽金属複合板材のマグネシウム合金面、純アルミニウム面のそれぞれについて、JIS Z2371に準拠し、塩水噴霧試験を24時間行った。
・V曲げ試験
V型の溝が上面に形成されたダイ上に、軽金属複合板材の純アルミニウム面を押出し方向(ED)が曲げ線と垂直となるように下側にして載置し、先端半径Rを有するパンチによるV曲げ成形を、半径Rが大きい順に実施した。また、厚さ0.5mmのマグネシウム合金(AZX612)からなる圧延材についても同様にして、圧延方向が曲げ線と垂直となるように実施した。
曲げ試験後に曲げ加工部分外側表面の割れを目視により確認し、割れが生じずに成形可能な半径Rの最小値と板厚tの関係(R/t)から成形性を求めた。なおR/tは小さいほど良好な曲げ成形性を示す。
・引張試験
実験1と同様にして、押出し方向(ED)にダンベル型の引張試験片を切り出し、0.2%耐力、引張強さ、公称応力と公称ひずみとの関係を測定した。また、厚さ0.5mmのマグネシウム合金(AZX612)からなる板材についても同様にして圧延方向にダンベル型の引張試験片を切り出し、測定した。結果を図10、11に示す。
「結果」
・塩水噴霧試験
塩水噴霧試験後に、マグネシウム合金面は、目視で容易に確認できるほど腐食が進行したのに対し、純アルミニウム面は腐食が認められなかった。このことから、本発明の製造方法により、異種軽金属が欠陥なく積層した軽金属複合板材が製造できることが確かめられた。
・V曲げ試験
本発明の軽金属複合板材は、最小R/tが2であり、マグネシウム合金(AZX612)は、最小R/tが4であった。
すなわち、本発明の軽金属複合板材は、同一の厚さを有するマグネシウム合金からなる板材と比較して、より尖った角形状への成形が可能であり、曲げ成形性が向上していることが確認できた。
また、軽金属複合板材は、V曲げ試験後も界面で剥離、破壊等が生じなかった。各前駆体の表面は、コンテナ内部に収容した際には酸化被膜で覆われていたが、押出し時のせん断変形により酸化被膜が分断され、新生面同士が接触することにより各材料同士が強固に接合していることが示唆された。
・引張試験
本発明の軽金属複合板材は、マグネシウム合金(AZX612)と比較して引張強さは約1割の低下が認められた。これは、純アルミニウムが、マグネシウム合金と比較して強度が劣るためであると考えられる。なお、得られる軽金属複合板材の引張強さは、各層の複合比で制御することが可能なため、前駆体として使用する板材の厚さにより任意に調整することができる。
「実験4」
実験3と同様にして、様々な複合比で軽金属複合板材(押出口の高さ0.5mm)を製造した。前駆体の厚さと、得られた軽金属複合板材の断面画像より測定した各層の厚さを下記表1に、上記実験3の結果と合わせて示す。また、各サンプルの屈曲部の断面画像を図12に示す。
(結果)
前駆体である板材の厚さにより、製造される軽金属複合板材の複合比を調整できることが確認できた。なお、純アルミニウムは、マグネシウム合金よりも変形抵抗が小さいため、得られた軽金属複合板材は、材料である前駆体と比較して、アルミニウムが厚く、マグネシウム合金が薄くなる傾向であった。
1 軽金属板材
10 前駆体

20 成形装置
21 コンテナ
22 パンチ
23 アンビル
24 押出口

Claims (11)

  1. アンビル上に載置されるコンテナの内部に1種以上の軽金属を含む前駆体を収容する工程、
    前記前駆体に熱間で垂直応力を負荷しながら、前記アンビルを押出方向に駆動し、前記アンビルの上面と前記コンテナの下端との間に形成される押出口から前記軽金属を含む板材を摩擦押出しする工程、
    により製造されることを特徴とする軽金属板材。
  2. 前記前駆体が、粉材であることを特徴とする請求項1に記載の軽金属板材。
  3. 前記前駆体が、板材であることを特徴とする請求項1に記載の軽金属板材。
  4. 異なる軽金属の積層体からなる軽金属複合板材であることを特徴とする請求項3に記載の軽金属板材。
  5. マグネシウム合金からなる芯材の一面または両面が、純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる被覆材で被覆されている軽金属複合板材であることを特徴とする請求項4に記載の軽金属板材。
  6. アンビル上に載置されるコンテナの内部に1種以上の軽金属を含む前駆体を収容する工程、
    前記前駆体に熱間で垂直応力を負荷しながら、前記アンビルを押出方向に駆動し、前記アンビルの上面と前記コンテナの下端との間に形成される押出口から前記軽金属を含む板材を摩擦押出しする工程、
    を有することを特徴とする、軽金属板材の製造方法。
  7. 前記前駆体が、粉材であることを特徴とする請求項6に記載の軽金属板材の製造方法。
  8. 前記前駆体が、板材であることを特徴とする請求項6に記載の軽金属板材の製造方法。
  9. 前記前駆体が、異なる軽金属からなる2枚以上の板材であり、
    前記軽金属板材が、各層間が固相接合した異なる軽金属の積層体からなる軽金属複合板材であることを特徴とする請求項8に記載の軽金属板材の製造方法。
  10. 前記2枚以上の板材の厚さにより、得られる軽金属複合板材の複合比を調整することを特徴とする請求項9に記載の軽金属板材の製造方法。
  11. 前記アンビルが上面に凹凸を有し、得られる軽金属板材に前記凹凸を転写することを特徴とする請求項6〜10のいずれかに記載の軽金属板材の製造方法。
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