JP2019204046A - 吸音体 - Google Patents
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Abstract
Description
更に、本発明者らは、シート状の立体編物を複数組み合わせて立体形状を構成し、その内部に、立体編物で覆われた中空部を形成することによって、特に低音域(100〜1000Hz)において、より優れた吸音効果(残響抑制効果)を発揮する吸音体とし得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
(吸音体1Aの構成)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る吸音体1Aの全体構成を示す図であり、図1(a)は、吸音体1Aの斜視図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A線断面図である。本実施形態の吸音体1Aは、室内の天井から吊したり、床面に載置して用いられるものであり、図1に示すように、6枚のシート状の立体編物11〜16を、15cm×15cmの立方体状に縫製又は接着して形成したものである。吸音体1Aの内部には、立体編物11〜16によって覆われた中空部19が形成されている。
また、各立体編物11〜16によって吸収しきれなかった音は、中空部19内の空気に伝搬するため、その一部は、共鳴効果によって中空部19内で打ち消される(つまり、吸音効果が発揮される)。
本実施形態の立体編物11〜16は、それぞれ同一の構成であるため、以下、代表して立体編物11の構成について説明する。図2は、本実施形態の立体編物11の構成を説明する斜視図である。
立体編物11は、互いに離間して配置された一対の前側基布11a及び後側基布11bと、前側基布11aと後側基布11bの間を往復して両者を結合する連結糸11cとから編成されるダブルラッシェル立体基布である。
なお、合成繊維加工糸を用いることにより、立体編物11の通気度を低くすることができる。一方、合成繊維モノフィラメント糸を用いることにより、立体編物11の厚さを確保することができる。
図3に示すように、本実施形態の立体編物11の吸音率は、600Hzあたりから徐々に上昇し、1000Hzを超えたあたりから急激に上昇し、6300Hzで約85%の吸音率となっている。従って、本実施形態の立体編物11によれば、生活騒音の音域(600〜2000Hz)の音を吸収することができる。
また、接着剤としては、例えば、アクリル樹脂系接着剤、α−オレフィン系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤およびホットメルト接着剤等を用いることができる。これらの中でも、短時間で接着できる、加工性に優れる、溶剤を使用しない、という観点から、ホットメルト接着剤が好適である。
また、ホットメルト接着剤の形態としては、例えは、粉末(パウダー)、液体、ゲル等が挙げられるが、取扱性に優れる観点から、特に、粉末(パウダー)が好適である。
また、立体編物11〜16は、通気性を維持しながら固定されていればよく、例えば、タッカーやバノックで固定してもよい。
次に、本実施形態の吸音体1Aの製造方法について説明する。
製造方法の概略を説明すると、先ず、立体編物11〜16の基材を製造し、次に、得られた基材を裁断して、立体編物11〜16を得る。そして、立体編物11〜16が立方体の各面となるように縫製する。
立体編物11〜16の基材は、編機(ダブルラッシェル機)を用いて製造される。図4は、立体編物のダブルラッシェル地を編成するために使用する、複列の編み針列を有する編機100の構成を示す図である。ここで、符号L1〜L6は、編み糸を導糸するガイド(筬)を示し、符号103は、フロント側針床のトリックプレートを示し、符号104は、バック側針床のトリックプレートを示している。また、符号101は、フロント針であり、符号102は、バック針であり、符号105は、釜間を示している。
裁断工程では、立体編物11〜16の基材を裁断して、所定サイズ(例えば、15cm×15cm)の正方形状の立体編物11〜16を得る。
縫製工程では、立体編物11〜16が立方体の各面となるように縫製され、立方体状の吸音体1Aが得られる。
また、各立体編物11〜16によって吸収しきれなかった音は、立体編物11〜16によって囲まれた中空部19内の空気に伝搬するため、その一部は、共鳴効果によって中空部19内で打ち消される(つまり、吸音効果が発揮される)。そして、この結果、低音域(100〜1000Hz)の音が吸収される。
次に、吸音体1Aの具体的な実施例を示す。なお、本発明の吸音体は、本実施例に限定されるものではない。
編機として、カールマイヤー社製のダブルラッシェル機 RD6DPLM/8・RD6DPLM/12−3(22ゲージ/2.54cm、釜間距離10mm)を使用して、立体編物11〜16の基材を製造した。
なお、立体編物11〜16の基材は、仕上がり厚みを10mm±1.0mmとした。
以下の地糸S1〜S5を使用し、上述の編成方法に従って、立体編物11〜16の基材を製造した。
S1:ポリエステルマルチフィラメント糸(220デシテックス)
S2:ポリエステルマルチフィラメント糸(220デシテックス)
S3:ポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメント糸(200デシテックス)
S4:ポリエステルマルチフィラメント糸(220デシテックス)
S5:ポリエステルマルチフィラメント糸(220デシテックス)
得られた基材を15cm×15cmに裁断して立体編物11〜16を製造し、立体編物11〜16が立方体の各面となるように縫製し、本実施例の吸音体1Aを得た。
本実施例の吸音体1Aに対して、温度16.5℃、湿度42%RHの残響室内で、JIS A 1409:1998に規定される「残響室法吸音率の試験方法」に従って吸音率及び残響時間を測定した。
図6は、1〜3個の吸音体1Aを残響室の天井から水糸で吊り下げ、吸音率を測定した結果を示すグラフである。また、図7は、0〜3個の吸音体1Aを残響室の天井から水糸で吊り下げ、残響時間を測定した結果を示すグラフである。なお、図6及び7の測定における、吸音体1Aの吊り下げ位置は、JIS 1409Aに規定される「残響室吸音試験方法(個別吸音体)」に従って、各吸音体1Aを測定マイクより1m以上離し、使用状態で均等配置している。
また、図7に示すように、吸音体1Aの数を増やすと(つまり、吸音力(等価吸音面積)が増えると)、残響時間が低減する(つまり、音の響きが整えられる)ことが分かった。また、この効果は、特に250〜1000Hzの低周波数の生活騒音帯域で顕著であることから、吸音体1Aは、住宅等の屋内において、音の響きを調えたい場合に有効であることが分かった。
なお、本実施例の吸音体1Aは、ポリエステルから形成されているため、燃焼したとしても有毒ガスが発生することはなく、環境に優しいものとなっている。
(吸音体1Bの構成)
図8は、本発明の第2の実施形態に係る吸音体1Bの全体構成を示す図であり、図8(a)は、吸音体1Bの斜視図であり、図8(b)は、図8(a)のB−B線断面図である。本実施形態の吸音体1Bも、第1の実施形態の吸音体1Aと同様、室内の天井から吊したり、床面に載置して用いられるものである。図8に示すように、本実施形態の吸音体1Bは、全体として円柱状(例えば、直径:約20cm、高さ:約130cm)の形状を呈しており、中空円筒状の立体編物40と、立体編物40の2つの開口部に取り付けられる円形状の立体編物20、30から形成されている点で、第1の実施形態の吸音体1Aと異なる。
また、各立体編物20、30、40によって吸収しきれなかった音は、中空部50内の空気に伝搬するため、その一部は、共鳴効果によって中空部50内で打ち消される(つまり、吸音効果が発揮される)。
図9は、本実施形態の立体編物20、30、40の構成を説明する図であり、図9(a)は、立体編物20、30の斜視図であり、図9(b)は、立体編物40の展開図(平面に延ばした状態)を示している。なお、本実施形態の立体編物20、30は、それぞれ同一の形状及び構成であるため、図9(a)においては、両者を共通の図面で示している。
なお、第1立体編物21、31、41の前側基布21a、31a、41a、後側基布21b、31b、41b及び連結糸21c、31c、41cの構成、並びに、第2立体編物22、32、42の前側基布22a、32a、42a、後側基布22b、32b、42b及び連結糸22c、32c、42cの構成は、第1の実施形態の立体編物11の前側基布11a、後側基布11b及び連結糸11cと同様であるため、説明を省略する。
図10に示すように、本実施形態の第1立体編物21、31、41及び第2立体編物22、32、42の吸音率は、300Hzあたりから徐々に上昇し、800Hzを超えたあたりから急激に上昇し、4000〜6300Hzで約100%の吸音率となっている。このように、本実施形態の第1立体編物21、31、41及び第2立体編物22、32、42によれば、生活騒音の音域(600〜2000Hz)の音を吸収することができる。
次に、本実施形態の吸音体1Bの製造方法について説明する。
製造方法の概略を説明すると、先ず、第1立体編物21、31、41の基材(つまり、立体編物X)及び第2立体編物22、32、42の基材(つまり、立体編物Y)を製造し、次に、得られた立体編物X及び立体編物Yを所定の形状に裁断し、第1立体編物21、31、41及び第2立体編物22、32、42を得る。次いで、第1立体編物21と第2立体編物22、第1立体編物31と第2立体編物32、第1立体編物41と第2立体編物42をそれぞれ重ねて接着し、立体編物20、30、40を得る。そして、立体編物40を湾曲させて円筒状となるように縫製し、その両端に立体編物20、30を取り付けて縫製する。
立体編物Xの製造工程では、編機(ダブルラッシェル機)を用いて、立体編物Xを製造する。図11は、本実施形態の立体編物Xを編成するために使用する編機100Mの構成を示す図であり、ガイドL6に地糸SX6が通糸される点で、第1の実施形態の編機100(図4)と異なる。
立体編物Yの製造工程では、図11に示す編機(ダブルラッシェル機)100Mと同様の編機を用いて、立体編物Yを製造する。
立体編物Yを製造する場合、ガイドL1、L2には、地糸SY1、SY2が通糸され、地糸SY1、SY2によって前側基布Y2(22a、32a、42a)が形成される。ガイドL5、L6には、地糸SY5、SY6が通糸され、地糸SY5、SY6によって後側基布Y4(22b、32b、42b)が形成される。また、ガイドL3、L4には、前側基布Y2と後側基布Y4とを連結する連結糸Y6(22c、32c、42c)の地糸SY3、SY4が通糸され、地糸SY3、SY4によって前側基布Y2と後側基布Y4との間に間隙が形成される。
裁断工程では、立体編物X及び立体編物Yを所定の形状に裁断して、所定サイズの第1立体編物21、31、41及び第2立体編物22、32、42を得る。
接着工程では、第1立体編物21、31、41の上面(第2立体編物22、32、42に対向する面)に接着剤を付与し、第2立体編物22、32、42を接着剤が塗布された第1立体編物21、31、41上に重ね、第1立体編物21、31、41及び第2立体編物22、32、42が変形してつぶれる程度のニップ圧力を加える。そして、約48時間室温にて放置して接着剤を硬化させ、直径:約18cmの円形の立体編物20、30と、幅:約63cm、長さ:130cmの矩形の立体編物40を得る。
縫製工程では、立体編物40を湾曲させて、外径:約20cm、高さ:約130cmの円筒状となるように縫製し、その両端に立体編物20、30をそれぞれ嵌め込んで縫製する。
また、各立体編物20、30、40によって吸収しきれなかった音は、立体編物20、30、40によって囲まれた中空部50内の空気に伝搬するため、その一部は、共鳴効果によって中空部50内で打ち消される(つまり、吸音効果が発揮される)。そして、この結果、低音域(100〜1000Hz)の音が吸収される。
次に、吸音体1Bの具体的な実施例を示す。なお、本発明の吸音体は、本実施例に限定されるものではない。
編機として、カールマイヤー社製のダブルラッシェル機 RD6DPLM/8・RD6DPLM/12−3(22ゲージ/2.54cm、釜間距離10mm)を使用して、以下の立体編物X、Yを製造した。
なお、立体編物X、Yは、仕上がり厚みを10mm±1.0mmとした。
以下の地糸SX1〜SX6を使用して、上記の編成方法に従って、立体編物Xを製造した。
SX1:綿(スパン糸:30番手)
SX2:綿(スパン糸:30番手)
SX3:ポリエステルモノフィラメント糸(220デシテックス)
SX4:ポリエステル加工糸(167デシテックス、フィラメントカウント48本)
SX5:綿(スパン糸:30番手)
SX6:綿(スパン糸:30番手)
以下の地糸SY1〜SY6を使用して、上記の編成方法に従って、立体編物Yを製造した。
SY1:ポリエステル加工糸(220デシテックス、フィラメントカウント72本)
SY2:ポリエステル加工糸(220デシテックス、フィラメントカウント72本)
SY3:ポリエステルモノフィラメント糸(220デシテックス)
SY4:ポリエステル加工糸(167デシテックス、フィラメントカウント48本)
SY5:ポリエステルレギュラー糸(167デシテックス、フィラメントカウント48本)
SY6:ポリエステルレギュラー糸(167デシテックス、フィラメントカウント48本)
得られた立体編物X及び立体編物Yを所定の形状に裁断して、所定サイズの第1立体編物21、31、41及び第2立体編物22、32、42を製作し、第1立体編物21、31、41及び第2立体編物22、32、42をそれぞれ接着して、直径:約18cmの円形の立体編物20、30と、幅:約63cm、長さ:130cmの矩形の立体編物40を得た。
本実施例の吸音体1Bに対して、温度10.2℃、湿度49%RHの残響室内で、JIS A 1409:1998に規定される「残響室法吸音率の試験方法」に従って吸音率及び残響時間を測定した。
図14は、1〜3個の吸音体1Bを残響室の床上に自立させて、吸音率を測定した結果を示すグラフである。また、図19は、0〜3個の吸音体1Bを残響室の床上に自立させて、残響時間を測定した結果を示すグラフである。なお、図14及び17の測定における、吸音体1Bの自立位置は、JIS 1409Aに規定される「残響室吸音試験方法(個別吸音体)」に従って、各吸音体1Bを測定マイクより1m以上離し、使用状態で均等配置している。
また、図15に示すように、吸音体1Bの数を増やすと(つまり、吸音力(等価吸音面積)が増えると)、全周波数帯域で残響時間が低減する(つまり、音の高低に拘わらず音の響きが抑えられる)ことが分かった。また、この効果は、特に250〜1000Hzの低周波数の生活騒音帯域で顕著であることから、吸音体1Bは、住宅等の屋内において、音の響きを調えたい場合に有効であることが分かった。
なお、本実施例の吸音体1Bは、綿及びポリエステルから形成されているため、燃焼したとしても有毒ガスが発生することはなく、環境に優しいものとなっている。
11、12、13、14、15、16、20、30、40 立体編物
11a、21a、31a、41a、22a、32a、42a 前側基布
11b、21b、31b、41b、22b、32b、42b 後側基布
11c、21c、31c、41c、22c、32c、42c 連結糸
19、50 中空部
21、31、41 第1立体編物
22、32、42 第2立体編物
X、Y 立体編物
X2、Y2 前側基布
X4、Y4 後側基布
X6、Y6 連結糸
100 編機
101 フロント針
102 バック針
103、104 トリックプレート
105 釜間
L1、L2、L3、L4、L5、L6 ガイド
S1、S2、S3、S4、S5 地糸
SX1、SX2、SX3、SX4、SX5、SX6 地糸
SY1、SY2、SY3、SY4、SY5、SY6 地糸
Claims (9)
- 互いに離間して配置された一対の基布と、該基布間を往復して両者を結合する連結糸とから編成されたシート状の立体編物を複数組み合わせて、所定の立体形状に形成された吸音体であって、
前記立体編物は、所定の通気度を有し、
前記所定の立体形状は、内部に、前記立体編物で覆われた中空部を有している
ことを特徴とする吸音体。 - 前記所定の通気度が10〜70cm3/cm2/secであることを特徴とする請求項1に記載の吸音体。
- 前記所定の立体形状が、立方体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の吸音体。
- 前記所定の立体形状が、円柱であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の吸音体。
- 前記立体編物が、第1の通気度を有する第1立体編物と、前記第1の通気度よりも低い第2の通気度を有し前記第1立体編物に積層される第2立体編物と、からなることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の吸音体。
- 前記第1の通気度が20〜30cm3/cm2/secであり、前記第2の通気度が10〜20cm3/cm2/secであることを特徴とする請求項5に記載の吸音体。
- 前記立体編物の厚さが、10〜20mmであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の吸音体。
- 前記吸音体が、少なくとも600〜2000Hzの音域に吸収帯域を有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の吸音体。
- 前記吸音体が、少なくとも100〜1000Hzの音域の残響を抑制することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の吸音体。
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