JP2019203886A - 触感評価方法および触感計測装置 - Google Patents

触感評価方法および触感計測装置 Download PDF

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Abstract

【課題】比較的周波数が高い振動の計測に基づいて客観的に触感を評価する技術に関する。【解決手段】指腹部を対象面に接触させる接触工程と、指腹部に対応する爪の加速度、および該爪の角速度のうちの少なくともいずれか一方を計測する計測工程と、計測工程で計測された計測データを取得するデータ取得工程と、計測データの時間変化を記録するデータ記録工程と、評価用データを用いて対象面を評価する評価工程と、を含み、評価用データが、データ記録工程で記録された計測データ、または該計測データに基づくデータである。【選択図】図1

Description

本発明は、触感を評価する技術に関する。
化粧品や洗顔料、シャンプー、洗剤、柔軟剤といった製品の効果を検証するために、それら製品を使用したヒトの肌や髪、物品(食器など)の触感が評価されている。ヒトの肌や髪そのものの性状や、物品(衣料品や日用品など)の使用感を評価するために触感評価が行われる場合もある。このような触感評価では、専門家が直接指で対象面に触れる官能評価が用いられるのが一般的であり、当該評価では、大まかな触感の違い(例えば、「重くひっかかる」と「なめらか」の違いや、「なめらか」と「するする滑る」の違い)に加え、細かな触感の違い(例えば、「さらさら」と「するする滑る」の違い)まで評価される。
しかし、このような官能評価では、評価者間の差や、評価時における評価者の身体的および精神的な状況の差などによって評価結果が左右され易いため、客観的な評価が難しいという側面がある。
そこで、触感を客観的に評価する手法が提案されている。例えば、特許文献1には、平滑面に圧電素子を接触させ、移動させることによって触感を評価する方法が開示されている。このような触感評価方法で得られるデータは、指で対象面に触れて感じられる触感に必ずしも対応するものとはならない。
一方、特許文献2には、指腹部を剛体面に押し付けたときの指先の左右の側端の位置と、押圧力と、剛体面の面内方向の接線力に基づいて指先の弾性体モデルのパラメータを算出しておき、被験者の指腹部を対象面に接触させたときの指先の左右の側端の位置と弾性体モデルパラメータから押圧力と接線力を算出することによって触感を評価する方法が開示されている。このような触感評価方法で得られるデータは、上述の特許文献1の触感評価方法とは異なり、指で対象面物に触れて感じられる触感に対応するものになる。
特開2016−122363号公報 特開2015−114169号公報
ところで、ヒトが触感を感じるメカニズムの全容は解明されていないが、皮膚内部にある触覚受容器が触感を感じるセンサの役割を担っていることが分かっている。触覚受容器には、マイスナー小体、メルケル小体、ルフィニ小体、およびパチニ小体が存在し、ヒトはこれらの触覚受容器で感知した刺激を総合的に判断して触感を感じていると考えられている。特に、パチニ小体は、高い周波数(100Hz〜500Hz)の振動に応答する触覚受容器であり、上述の細かな触感の違いを感じる際は、パチニ小体が支配的になると考えられる。
このような触覚受容器の構成を勘案すると、押圧力と接触力、すなわち、低い周波数の振動である力や変位に対応するデータを取得する特許文献2による触感評価方法では、細かな触感の違いまで評価することが困難であると考えられる。
また、上述の通り、ヒトは触覚受容器で感知した刺激を総合的に判断して触感を感じていることから、上述の大まかな触感の違いを評価する際にも、高い周波数の振動を考慮することが有効であると考えられる。
よって、本発明は、比較的周波数が高い振動の計測に基づいて客観的に触感を評価する技術に関する。
本発明は、指腹部を対象面に接触させる接触工程と、前記指腹部に対応する爪の加速度、および該爪の角速度のうちの少なくともいずれか一方を計測する計測工程と、前記計測工程で計測された計測データを取得するデータ取得工程と、前記計測データの時間変化を記録するデータ記録工程と、評価用データを用いて前記対象面を評価する評価工程と、を含み、前記評価用データが、前記データ記録工程で記録された前記計測データ、または該計測データに基づくデータである触感評価方法に関する。
本発明によれば、比較的周波数が高い振動の計測に基づいた客観的な触感評価に関する技術を提供することができる。
図1は、触感計測装置の概略構成図である。 図2(a)〜図2(c)は、化粧料を皮膚に塗布したときに他の触感計測装置で計測されたY軸方向の速度およびX軸回りの角速度の時間変化を示すグラフであり、図2(a)は化粧料Aを、図2(b)は化粧料Bを、図2(c)は化粧料Cをそれぞれ皮膚に塗布した場合のグラフである。 図3(a)〜図3(c)は、同一材料上で増速しながら指腹部をY軸方向に往復運動させた場合の触感計測装置による計測データまたは当該計測データの演算によって導出されるデータであり、図3(a)はY軸方向の加速度の時間変化を示すグラフであり、図3(b)はY軸方向の速度の時間変化を示すグラフであり、図3(c)は図3(a)で示した計測データと同時に計測されたX軸回りの角速度を対象とした短時間フーリエ変換によって得られたスペクトログラムである。 図4は、1秒ごとのY軸方向の平均速度(横軸)に対し、X軸回りの角速度の高速フーリエ変換で導出された周波数スペクトルを200Hz〜300Hzの周波数帯域で積分した積分値(縦軸)をプロットした図である。 図5(a)は、爪にセンシングユニットを装着した状態で、爪甲を通り、かつ指の長手方向に垂直な面で切断した端面図であり、図5(b)は、爪にセンシングユニットを装着した状態で指の中心を通り、かつ指の長手方向に平行な面で切断した端面図である。 図6は、本実施形態に係る触感評価方法を示すフローチャートである。 図7は、触感評価工程の変形例を示すフローチャートである。 図8(a)〜図8(c)は、上から、Y軸方向の加速度、X軸回りの角速度、およびZ軸回りの角速度の時間変化を示すグラフであり、図8(a)は人工皮革のみを、図8(b)は粉体(15μm)を塗布した人工皮革を、図8(c)は粉体(5μm)を塗布した人工皮革を対象面とした場合のグラフである。 図9(a)〜図9(c)は、計測データに遮断周波数0.5Hzのハイパスフィルタをかけたグラフであり、図9(a)は図8(a)で示した計測データを、図9(b)は図8(b)で示した計測データを、図9(c)は図8(c)で示した計測データを当該ハイパスフィルタの対象としたグラフである。 図10(a)〜図10(c)は、計測データに遮断周波数100Hzのハイパスフィルタをかけたグラフであり、図10(a)は図9(a)で示した計測データを、図10(b)は図9(b)で示した計測データを、図10(c)は図9(c)で示した計測データを当該ハイパスフィルタの対象としたグラフである。 図11(a)〜図11(c)は、短時間フーリエ変換によって得られたスペクトログラムであり、図11(a)は図9(a)で示した計測データを、図11(b)は図9(b)で示した計測データを、図11(c)は図9(c)で示した計測データを変換対象としたスペクトログラムである。 図12(a)〜図12(c)は、過量のスキンケアクリームを塗布した人工皮革をフォースプレートの上に配置し、当該人工皮革の表面を指腹部でタッピングしたときの計測データであり、図12(a)はフォースプレートで計測されたZ軸方向の力を、図12(b)は触感計測装置で計測されたZ軸方向の加速度を、図12(c)は触感計測装置で計測されたY軸回りの角速度を示すグラフである。 図13(a)〜図13(c)は、シリコーンパウダーを塗布した人工皮革をフォースプレート上に配置し、当該人工皮革の表面を指腹部でタッピングしたときの計測データであり、図13(a)はフォースプレートで計測されたZ軸方向の力を、図13(b)は触感計測装置で計測されたZ軸方向の加速度を、図13(c)は触感計測装置で計測されたY軸回りの角速度を示すグラフである。 図14は、シリコーンオイルを塗布した人工皮革をフォースプレート上に配置し、当該人工皮革の表面を指腹部で合計10回タッピングしたときの抜きのタイミングにおける計測データのピーク値の平均値を、評価対象となるシリコーンオイルの吸着感に係る官能評価値と対応づけてプロットした図である。 図14に係る検証実験における計測データを用いて、評価対象となるシリコーンオイルごとに、Y軸周りの角速度のピーク値の平均値をZ軸方向の加速度のピーク値の平均値に対応付けてプロットした図である。 図16(a)および図16(b)は、ヤング率の異なるスポンジの表面を指腹部でタッピングしたきに触感計測装置で計測されたZ軸方向の加速度を示すグラフである。 図17(a)は、横軸に官能評価値、縦軸にZ軸方向の加速度のピーク値の平均値をとり、化粧料ごとの結果をプロットした図であり、図17(b)は、横軸に官能評価値、縦軸にY軸回りの角速度のピーク値の平均値をとり、化粧料ごとの結果をプロットした図である。 図18(a)〜図18(d)は、上から、Z軸方向の加速度、X軸方向の加速度、およびY軸回りの角速度のタッピング時の時間変化を示すグラフであり、図18(a)は化学繊維製の表面が粗い生地を、図18(b)はフランネルを、図18(c)は化学繊維製の表面が平滑な生地を、図18(d)は木綿を対象面とした場合のグラフである。 図19(a)〜図19(d)は、図18(a)〜図18(d)で示した複数回のタッピングのうちの1回分のZ軸方向の加速度の時間変化を拡大したグラフであり、図19(a)は化学繊維製の表面が粗い生地を、図19(b)はフランネルを、図19(c)は化学繊維製の表面が平滑な生地を、図19(d)は木綿を対象面とした場合のグラフである。 図20(a)〜図20(d)は、短時間フーリエ変換によって得られたスペクトログラムであり、図20(a)は図18(a)で示した計測データを、図20(b)は図18(b)で示した計測データを、図20(c)は図18(c)で示した計測データを、図20(d)は図18(d)で示した計測データを変換対象としたスペクトログラムである。
以下、本発明の好ましい実施形態の例(以降、本実施形態と表記する)について説明する。なお、以下に挙げる実施形態は例示であり、本発明は以下の実施形態の構成に限定されない。
<触感計測装置の概要>
まず、図1を用いて、本実施形態に係る触感計測装置である触感計測装置1の概要について説明する。図1は、触感計測装置1の概略構成図である。
触感計測装置1は、加速度および角速度を計測する慣性センサ(図示省略)を有するセンシングユニット2と、センシングユニット2を爪21の表面に装着可能とするベース部材3と、演算装置10とを備えている。演算装置10は、センシングユニット2が装着された指20の指腹部22を、対象面30に接触させて摺動(例えば、指20の幅方向であるY軸方向に摺動)させたときの爪21の加速度(例えば、指20の幅方向であるY軸方向の加速度)および爪21の角速度(例えば、指20の長手方向であるX軸回りの角速度)で構成される計測データをセンシングユニット2から取得し、取得した当該計測データ、または取得した当該計測データを用いて演算した結果をディスプレイ、プリンタ等に出力する。
上述の通り、触感計測装置1では、慣性センサを有するセンシングユニット2を爪21の表面に装着することで、対象面30に接触させて摺動させたときに指腹部22から伝搬する振動を計測可能にしている。この振動は、加速度や角速度の変化として計測される。特に、触感計測装置1では、指20の軟部組織よりも硬質な爪21の表面にセンシングユニット2を装着するため、指腹部22からセンシングユニット2に伝搬する比較的周波数が高い振動を精度よく、すなわち、比較的周波数が高い振動が減衰の影響を受け難い状態で計測可能にしている。
なお、比較的周波数が高い振動を計測する意義、およびセンシングユニット2装着時の状態は後述する。
慣性センサには、一の方向の加速度、および当該一の方向とは異なる方向回りの角速度を少なくとも計測できるものを使用する。本実施形態では、当該一の方向をY軸方向とし、当該一の方向とは異なる方向をX軸としている。これにより、対象面30で指腹部22を摺動させた場合の触感を評価することが可能となる。したがって、3軸方向の加速度と各軸回りの角速度を計測できる公知の6軸慣性センサを使用することができる。特に、加速度および角速度のそれぞれを3軸で計測し、それぞれの成分を演算することにより、より正確な指20の加速度や角速度を演算によって導出し、後述する触感評価に用いることもできる。なお、本実施形態では、X軸とY軸のいずれにも垂直なZ軸回りの角速度も計測している。
また、慣性センサには、加速度と角速度に加えて方位を検出できるものを使用してもよい。これにより、指の移動方向の絶対的な向きを検出することができる。
また、慣性センサには、計測データを無線で送信できるBluetooth(登録商標)等の送信機能を備えた小型のマイコンシステムを含むものを使用することが好ましく、計測データを有線で送信できる機能を採用してもよい。これらの送信機能により、計測データをディスプレイ等でリアルタイムに表示させることができる。なお、当該送信機能は、慣性センサと別体で構成されていてもよい。
また、慣性センサには、計測データをリアルタイムに送信できる機能を備えず、計測データをメモリに記憶するものを使用してもよい。この場合には、記憶された計測データをメモリから読み出して使用すればよい。
また、計測データを取得する際のサンプリング周波数は、後述する触感評価工程で用いる周波数帯域によって適宜設定すればよく、本実施形態では1kHzを採用している。
また、後述する本実施形態に係る触感評価方法では、上述の触感計測装置1によって計測された計測データを用いて触感を評価しており、当該触感評価方法については、後述する。
なお、本発明における「触感の評価」とは、未評価の触感同士の相対的な評価に限らず、既存データと突き合わせた未評価の触感の評価など、未評価の触感同士の相対的な評価以外の触感評価も含む。
<比較的周波数が高い振動を計測する意義>
専門家による触感の官能評価はかなり鋭敏であり、当該評価では、後述する大まかな触感だけでなく、後述する細かな触感まで評価される。そして、この細かな触感は、比較的周波数が低い振動の計測だけでは客観的に評価することが困難となる。
したがって、触感計測装置1や本実施形態に係る触感評価方法の詳細を説明するのに先立ち、図2(a)〜図2(c)を用いて、比較的周波数が低い振動の計測では細かな触感を評価することが困難であること、すなわち、細かな触感を評価するにあたって比較的周波数が高い振動を計測する意義について説明する。
図2(a)〜図2(c)は、化粧料を皮膚に塗布したときに他の触感計測装置で計測されたY軸方向の速度およびX軸回りの角速度の時間変化を示すグラフであり、図2(a)は化粧料Aを、図2(b)は化粧料Bを、図2(c)は化粧料Cを、それぞれ皮膚に塗布した場合のグラフである。
上記他の触感計測装置の図示は省略するが、当該装置は、加速度(Y軸方向)および角速度(X軸回り)を計測する慣性センサ(本実施形態における慣性センサと同一のセンサ)が取り付けられたアタッチメントを、ヒトの指の第1関節と第2関節の間の指の背側(軟部組織)に装着させて用いられる。そして、当該装置は、対象となる化粧料を塗布した対象面に当該指に対応する指腹部を接触させ、対象面で当該指腹部を摺動(Y軸方向に往復)させたときの慣性センサによる計測データを取得し、記録する。このような他の触感計測装置は、比較的周波数が低い振動を計測することを目的とした装置であり、比較的低周波数が低い振動から比較的周波数が高い振動までサンプリングはできるものの、指腹部から慣性センサまでの距離が長いことや指の軟部組織に装着していることに起因した振動の減衰が生じる。そのため、当該装置には、比較的周波数が高い振動を計測するにあたってのS/N比を高められないという課題がある。なお、他の触感計測装置における各軸の位置関係については、図1で示した各軸の位置関係と同様である。
図2(a)で示す計測データが得られた試験では、化粧料として化粧料A(乳液)が使用された。同様に、図2(b)では、化粧料として化粧料B(日焼け止め)が使用され、図2(c)では、化粧料として化粧料C(おしろい)が使用された。
また、化粧料A、化粧料B、および化粧料Cのそれぞれを皮膚に塗布した場合の専門家による触感の官能評価の結果は、化粧料Aが「なめらかな」、化粧料Bが「重くひっかかる」、化粧料Cが「するする滑る」となった。
図2(a)の計測データを分析すると、触感が「なめらかな」と評価された化粧料Aを塗布した場合には、Y軸方向の速度(Y軸方向の加速度の積分によって導出)が正弦波状のなめらかな波形となる。この波形では、Y軸方向の速度が、指の移動方向が反転してから次に反転するまでの中間の時点(以下、「中間時」と表記する)でピークを示し、反転時にはゼロとなること、X軸回りの角速度も中間時でピークを示し、それ以外では概略一定であることが分かる。
同様に、図2(b)の計測データを分析すると、触感が「重くひっかかる」と評価された化粧料Bを塗布した場合には、Y軸方向の速度は中間時でピークを示し、反転時にゼロとなるが、小さい周期のノイズが乗った波形となることが分かる。さらに、X軸回りの角速度は、中間時でY軸方向の速度がピークとなるときに、鋭く大きなピークとなることが分かる。
図2(c)の計測データを分析すると、触感が「するする滑る」と評価された化粧料Cを塗布した場合には、Y軸方向の速度は、なめらかな触感の場合と同様に正弦波状のなめらかな波形となる。一方、X軸回りの角速度はY軸方向の速度よりも短い周期の波形となり、移動方向の反転時に、そのピークが鋭く大きくなることが分かる。化粧料Aを塗布した場合とは異なり、移動方向の反転時にX軸回りの角速度のピークが大きくなるのは、化粧料Cが化粧料Aよりもすべり易く、反転時に急激な速度変化が起き、慣性力が働き速度がゼロ付近でセンサ本体が外側方向に振れてしまうためと考えられる。
このように、触感が「なめらか」と評価された化粧料A(または、触感が「するする滑る」と評価された化粧料C)と、触感が「重くひっかかる」と評価された化粧料Bのような異質な触感の違い(大まかな触感の違いの一例)については、移動速度(Y軸方向の速度)を用いて評価できることが分かった。
さらに、化粧料Aと化粧料Cのような同質の触感であって比較的違いがある触感同士(大まかな触感の違いの一例)については、当該移動速度に加えて角速度(X軸回りの角速度)を用いて評価できることが分かった。なお、角速度を用いて触感を評価するにあたり、必ずしも移動速度を用いる必要はなく、角速度のみを用いて評価することもできるが、上述の計測データのように、移動方向(Y軸方向)の速度と対象面上の当該移動方向に対して垂直な方向回り(X軸回り)の角速度)には相関関係が少なくともあると考えられる。そのため、計測データを用いて触感を評価するにあたっては、移動速度と角速度を併せて用いる方が好ましい。これは後述する本実施形態に係る触感評価方法においても同様と考えられる。
一方、図示は省略するが、専門家による触感の官能評価の結果が「さらさら」と評価された化粧料Dを塗布した場合と、触感が「するする」と評価された化粧料Cを塗布した場合を比較した結果では、Y軸方向の速度、およびX軸回りの角速度の双方が同じ傾向となる計測データが得られた。この計測データから、比較的周波数が低い振動を計測することを目的とした上述の他の触感計測装置を用いた触感評価では、化粧料Cと化粧料Dのような同質の触感であって比較的違いがない触感同士(細かな触感の違いの一例)を評価することが困難であることが分かった。
そこで、本発明者は、皮膚内部にあり、触感を感じるセンサの役割を担っている触覚受容器のうちの、高い周波数(100Hz〜500Hz)の振動に応答するパチニ小体が上述の細かな触感の違いに対して支配的になると考え、細かな触感を評価するにあたり、比較的周波数が高い振動を計測する必要性を見出した。そして、この比較的周波数が高い振動は、被験者による能動的な動作(比較的周波数が低い振動)ではなく、能動的な動作によって得られる受動的な振動となる。なお、本発明における比較的周波数が高い振動とは、50Hz以上の振動としている。
また、他の触覚受容器としては、マイスナー小体、メルケル小体、およびルフィニ小体が存在することが知られ、ヒトは、これらすべての触感受容器の応答を総合的に判断して触感を感じていると考えられている。よって、上述の大まかな触感を評価する際にも比較的周波数が高い振動を考慮することが有効であると考えられる。
<被験者の能動的な動作を考慮する意義>
ヒトが触感を感じる際の能動的な動作(速度や角速度)には個人差がある。そして、この能動的な動作の違いは、受動的な振動の強度に影響を与える。そのため、より高い精度の触感評価を実現するには、この能動的な動作の違いを考慮する必要がある。
したがって、触感計測装置1や本実施形態に係る触感評価方法の詳細を説明するのに先立ち、図3(a)〜(c)および図4を用いて、被験者の能動的な動作と受動的な振動の強度の関係性、すなわち、より高い精度の触感評価を実現するにあたってこの能動的な動作を考慮する意義についても説明する。なお、被験者とは、触感計測装置1を装着した者を指す。
図3(a)〜図3(c)は、同一材料の対象面30上で増速しながら指腹部22をY軸方向に往復運動させた場合の触感計測装置1による計測データまたは当該計測データの演算によって導出されるデータであり、図3(a)はY軸方向の加速度(AY)の時間変化を示すグラフであり、図3(b)はY軸方向の速度(VY)の時間変化を示すグラフであり、図3(c)はX軸回りの角速度(GX)を対象とした短時間フーリエ変換によって得られたスペクトログラムである。
図4は、1秒(s)ごとのY軸方向の平均速度(横軸)に対し、X軸回りの角速度(GX)の高速フーリエ変換で導出された周波数スペクトルを200Hz〜300Hzの周波数帯域で積分した積分値(縦軸)をプロットした図である。
図3(a)には、同一材料の対象面上で増幅しながら指腹部22をY軸方向に往復運動させた場合のY軸方向の加速度(AY)が6区間に分けられて表示されている。具体的には、これらの区間は1secごとに実線で区切られており、左から14:16:55〜14:16:56の区間(以下、区間イと表記する)、14:16:56〜14:16:57の区間(以下、区間ロと表記する)、14:16:57〜14:16:58の区間(以下、区間ハと表記する)、14:16:58〜14:16:59の区間(以下、区間ニと表記する)、14:16:59〜14:17:00の区間(以下、区間ホと表記する)、14:17:00〜14:17:01の区間(以下、区間ヘと表記する)に分けられ、この順に加速度が増幅していることが分かる。
図3(b)には、図3(a)の時間経過に沿ったY軸方向の速度(VY)が示されている。この速度は、Y軸方向の加速度を積分することで導出され、当該速度のピークは、区間イ〜区間ヘの順に増幅していることが分かる。
図3(c)には、図3(a)で示した計測データと同時に計測されるX軸回りの角速度(GX)を短時間フーリエ変換することで得られたスペクトログラムが示されており、振動の強度が高いほど濃い色となっている。なお、この図では、短時間フーリエ変換の対象を、Y軸方向の加速度とせず、当該加速度よりも受動的な振動が計測され易いと考えられるX軸回りの角速度(GX)としている。
この図からは、区間イ〜区間ヘの順に50Hz〜500Hzの周波数帯域で色の濃いエリアが増えている(振動(X軸回りの角速度)の強度が高くなっている)ことが分かる。特に、50Hz〜300Hzの周波数帯域でその傾向が強くなっている。
さらに、図4には、上述の区間ロ〜区間ヘのそれぞれのY軸方向の平均速度(横軸)に対し、X軸回りの角速度(GX)の高速フーリエ変換で導出された周波数スペクトルを200Hz〜300Hzの周波数帯域で積分した積分値(縦軸)がプロットされ、これらのプロットを用いて導出された回帰直線が破線で示されている。具体的には、最も左のプロットは区間ロに対応する積分値であり、以降、左から順に、区間ハ、区間ニ、区間ホ、区間ヘに対応する積分値となる。
このように、図4からも、区間ロ〜区間ヘの順に振動(X軸回りの角速度)の強度が高くなっていることが分かる。
また、図4に示す通り、回帰直線から各プロットが逸脱しておらず(略回帰直線上に存在し)、その決定係数(R)は0.9952である。そのため、振動(X軸回りの角速度)の強度は、能動的な動作が支配的なY軸方向の速度(VY)と強い比例関係にあることが分かる。なお、当該回帰直線の式は、y=2274.3x−3760.5となる。
さらに、図示は省略するが、Y軸方向の加速度等の他の計測データによる受動的な振動(比較的周波数が高い振動)に関しても、X軸回りの角速度と同様に、Y軸方向の速度と比例関係となる。
また、能動的な動作を評価するデータ(図4の横軸に相当)には、指腹部22の動作方向であるY軸方向の速度(VY)を用いることがより好適ではあるが、Y軸方向の速度のもととなるY軸方向の加速度(AY)や、Y軸方向の速度から導 出されるY軸方向の移動距離を採用してもよい。さらに、能動的な動作を評価するデータには、Z軸回りの角速度(GZ)や、当該角速度から導出されるデータ(角加速度や回転量)を採用することもできる。
なお、能動的な動作を評価するデータを導出する際には、当該データのもととなるデータから受動的な振動(比較的周波数が高い振動)を除くことが好ましい。具体的には、下限が0.1Hz〜2.0Hzかつ上限が0.5Hz〜10Hzとなる(上限が下限より大きな組合せで定まる)範囲を通過帯域としたバンドパスフィルタを通すことが好ましい。
このように、ヒトが触感を感じる際の能動的な動作の違いが受動的な振動の強度に影響を与える、すなわち、より高い精度の触感評価を実現するにあたって能動的な動作の違いを考慮する必要性があることが分かった。
なお、図示は省略するが、指腹部22の往復運動の過程(1ストローク内)においても速度が変化し、当該変化によって振動の強度が変化することが確認されている。
また、図4から、区間ロ〜区間ヘの順に振動(X軸回りの角速度)の周波数帯域が変化(高い周波数帯域の振動が増加)しており、図示は省略するが、当該変化は、Y軸方向の加速度等の他の計測データによる受動的な振動に関しても同様となる。
以降の説明では、触感計測装置1および本実施形態に係る触感評価方法を具体的に説明する。
<センシングユニット装着時の状態>
まず、センシングユニット2の装着時の状態について図5(a)および図5(b)を用いて説明する図5(a)は、爪21にセンシングユニット2を装着した状態で、爪甲21aを通り、かつ指20の長手方向に垂直な面で切断した端面図であり、図5(b)は、爪21にセンシングユニット2を装着した状態で指20の中心を通り、かつ指20の長手方向に平行な面で切断した端面図である。
図5(a)および図5(b)に示す通り、センシングユニット2のユニット下面2aおよびベース部材3のベース上面3aが略平面で構成され、ベース上面3aに対してユニット下面2aが上部接着部4を介して取り付けられている。同様に、ベース部材3のベース下面3bは、爪甲21aの表面に対して下部接着部5を介して取り付けられる。
なお、ベース部材3の材質は、指の軟部組織よりも硬質な材質、すなわち、指の軟部組織よりも固有振動数が高く、比較的周波数が高い振動が減衰の影響を受け難い材質であれば、特に限定されない。例えば、ヤング率が0.1GPa以上の材質であることが好ましい。より好ましくは、ヤング率が10GPa以上の材質である。
また、本実施形態における上部接着部4および下部接着部5は、硬化時に指の軟部組織よりも硬質になる接着剤であれば、特に限定されない。例えば、硬化時にヤング率が0.1GPa以上となる接着剤であることが好ましい。より好ましくは、ヤング率が0.2GPa以上であり、ショアD硬度では50以上である。なお、接着剤の代わりに両面テープを用いてもよい。
なお、脱着の容易さを考慮して、爪甲21aへのベース下面3bへの取り付けは、上述の接着剤や両面テープを用いた取り付けとすることが好ましいが、ベース上面3aへのユニット下面2aの取り付けには、上述の接着剤や両面テープを用いた取り付けに限らず、より強固な接着を可能とする接着剤による固着や、ネジ止めによる固定等、本実施形態以外の方法を採用してもよい。
また、図5(a)に示す通り、ベース下面3bは、指20の長手方向に沿って爪甲21aの表面形状に対応して内側に湾曲した形状になっている。これにより、ベース下面3bは指20の幅方向に弧状をなすこととなる。同様に、ベース下面3bの指20の長手方向に垂直な断面が湾曲し、ベース下面3bの湾曲軸が指20の長手方向に延在することとなる。
図5(b)に示す通り、ベース下面3bは、指20の幅方向(爪甲21aに接する方向であって、指20の長手方向に対して垂直な方向)に沿って爪甲21aの表面形状に対応して内側に湾曲した形状になっている。これにより、ベース下面3bは指20の長手方向に弧状をなすこととなる。同様に、ベース下面3bの指20の長手方向の断面が湾曲し、ベース下面3bの湾曲軸が指20の幅方向に延在することとなる。
このように指20の長手方向および指20の幅方向の双方に沿ってベース下面3bを湾曲させることで、取り付け時の下部接着部5の厚みを均一に近づけ、指腹部22からセンシングユニット2に伝搬する比較的周波数が高い振動を減衰させ難くすることができる。なお、これらの湾曲形状は、必ずしも爪甲21aの表面形状に対応した形状とする必要はなく、ベース下面3bを平面としてもよいが、当該形状とすることで、ベース下面3bを平面にした場合と比較して下部接着部5の厚みを均一により近づけることができる。
なお、指20の長手方向および指20の幅方向の双方に沿ってベース下面3bを湾曲させる必要はなく、いずれか一方の方向に沿って湾曲させても取り付け時の下部接着部5の厚みを均一に近づけることができる。ただし、一般的に爪甲21aは指の長手方向よりも指の幅方向の曲率が大きいため、この場合には指20の長手方向に沿って湾曲させることが好ましい。
また、図5(b)に示す通り、本実施形態では、爪甲21aに加え、爪半月21bの表面に対してもベース下面3bを取り付けている。ただし、一般的に爪半月はできて間もない部分で爪の中でも比較的やわらかい部分であるため、少なくとも爪甲21aにベース下面3bを取り付けることが好ましい。特に、本実施形態では、爪甲21aの略全域に対してベース下面3bを取り付けることでより強固な取り付けを実現している。
さらに、本実施形態では、被験者に応じて長さにばらつきがある爪先21cの表面に対してベース下面3bを取り付けていない。爪21は遊離縁とも呼ばれ、指20の爪床(図示省略)から離れて遊離している先端部である。なお、爪先21cの少なくとも一部を含む爪21の表面にベース下面3bを取り付けるようにしてもよいが、本実施形態のようにすることで、ベース下面3bの取り付け位置のばらつきを抑えることができる。
よって、ベース部材3の指20の長手方向の長さは、ヒトの一般的な爪床の長さ前後であることが好ましい。より好ましくは、ヒトの一般的な爪甲の長さと同程度である。
<本実施形態に係る触感評価方法>
次に、図6を用いて、本実施形態に係る触感評価方法(以下、「本方法」と表記する場合がある)の詳細を説明する。図6は、本実施形態に係る触感評価方法を示すフローチャートである。
本方法で用いる化粧料には、化粧水、乳液や日焼け止めなどのようなベース化粧料(スキンケア品を含む)、洗浄料、ファンデーションのようなメイクアップ化粧料など、ヒトの皮膚に塗布、噴霧される様々な化粧料が含まれる。なお、必ずしもこのような化粧料を用いる必要はなく、化粧料を用いずに本方法を行ってもよい。
本方法では、上述の触感計測装置1が用いられ、対象面30には、ヒトの肌の表面またはヒトの肌を模して作成された面が用いられる。なお、対象面30は、平面であってもよいし、曲面であってもよく、ヒトの髪や物品(衣料品や日用品など)の表面を対象面30としてもよいが、化粧料を使用する場合には、ヒトの肌の表面またはヒトの肌を模して作成された面を対象面30として用いることが好ましい。
また、本方法では、触感計測装置1を必ずしも用いる必要はなく、非接触式の振動センサ等の非接触式のセンサを用いて爪21に伝搬する振動を計測してもよい。
図6に示す通り、本方法は、センシングユニット2を爪21に装着する工程(S01)と、対象面30に化粧料を塗布する工程(S03)と、指腹部22を対象面30に接触させ、指腹部22を対象面30に沿って摺動させる工程(S05)と、センシングユニット2(慣性センサ)から計測データを取得し、記録する工程(S07)と、計測データから補正用データを導出する工程(S09)と、比較的周波数が高い振動を抽出する工程(S11)と、評価用データ(計測データ)および補正用データを用いて対象面30の触感を評価する工程(S13)と、を含む。
なお、本方法で未評価の触感同士を相対的に評価する場合には、触感を評価する際に必要なデータをそれぞれの触感に対して導出しておく必要があるが、この場合の重複する工程の説明は省略する。
工程S01では、ベース下面3bの湾曲形状の曲率が異なる複数種類のベース部材3をあらかじめ準備しておき、被験者の爪甲21aの表面形状に合わせて選択してもよい。このようにすることで、取り付け時の下部接着部5の厚みを均一に近づけ、センシングユニット2に伝搬する比較的周波数が高い振動を減衰させ難くすることができる。
また、工程S01では、あらかじめセンシングユニット2をベース上面3aに取り付けたベース部材3を準備しておくことが好ましい。同様に、複数種類のベース部材3を用いる上述の場合にも、複数種類のベース部材3のそれぞれにセンシングユニット2をあらかじめ取り付けたものを準備しておくことが好ましい。
工程S03では、指腹部22を対象面30に接触させる前に対象面30に化粧料を塗布しておくだけでなく、化粧料を指腹部22に塗布した状態で当該指腹部22を対象面30に接触させるようにしてもよい。すなわち、結果として指腹部22と対象面30の間に化粧料が介在されればよい。
工程S05では、指腹部22を対象面30に接触させ、指腹部22を対象面30に沿って摺動させる。なお、当該工程では、指腹部22を対象面30に沿って摺動させるだけでなく、指腹部22を対象面30に対してタッピングしてもよい。すなわち、当該工程は、指腹部22を対象面30に接触させる工程であればよく、当該接触は、静的な接触ではなく、動的な接触と言える。
また、上述の通り、本実施形態では、ベース下面3bを爪先21cに取り付けていないため、爪先21cで対象面30を引っ掻くような動作における振動を計測することもできる。
工程S07では、工程S05の期間において計測データ(Y軸方向の加速度、X軸回りの角速度、およびZ軸回りの角速度)を連続的に取得し、記録する。このようにすることで、時間経過によって変化する触感の評価を可能とする計測データや、触感評価に適した時間の計測データを取得できる。
前者の計測データとしては、例えば、対象面30をヒトの肌として乳液を擦り込む際の計測データが挙げられる。当該計測データによれば、指腹部22と対象面30の間に介在する乳液が多く残っている序盤、乳液が対象面30にある程度浸透して介在する乳液が減少した中盤、乳液が肌にほぼ浸透して介在する乳液が略なくなった終盤のそれぞれにおける触感や、これらの触感の変化が評価可能となる。
また、後者の計測データとしては、例えば、対象面30を物品とした場合の計測データが挙げられる。当該計測データによれば、被験者が触感を評価するのに適した指腹部22の動作となっている期間における触感が評価可能となる。ここで、触感評価に適した指腹部22の動作とは、ヒトが触感を感じる際に無意識に調整する動作であり、当該動作は、一般的に、移動速度が一定であり、かつ移動方向を反転するときにはその加速度が一定になると考えられている。
なお、上述の通り、本実施形態では、工程S07において、指腹部22に対応する爪21の加速度(Y軸方向の加速度)、および爪21の角速度(X軸回りの角速度、Z軸回りの角速度)の双方を計測しているが、必要に応じてこれらのうちのいずれか一方を計測するようにしてもよい。すなわち、当該工程では、指腹部22に対応する爪21の加速度、および爪21の角速度のうちの少なくともいずれか一方を計測すればよい。
工程S09では、能動的な動作の違いによって生じる評価用データ(計測データ)の差による影響を補正(低減)するための補正用データを、記録された計測データに基づいて導出する。
ここで、補正用データとは、評価用データを正規化する(詳細は、後述)ためのデータである。本実施形態における補正用データは、Y軸方向の速度であり、Y軸方向の加速度を積分することで当該データを導出する。
この補正用データを導出する際には、上述の通り、当該データのもととなる計測データから受動的な振動(比較的周波数が高い振動)を除くことが好ましいため、本実施形態では、0.5Hz〜1.4Hzを通過帯域としたバンドパスフィルタを通している。なお、当該通過帯域は、下限が0.1Hz〜2.0Hzかつ上限が0.5Hz〜10Hzとなる(上限が下限より大きな組合せで定まる)範囲であることが好ましく、このバンドパスフィルタを通すことで、重力加速度による振動も除かれる。
また、上述の通り、能動的な動作を評価するデータには、Y軸方向の速度以外にも、Y軸方向の速度のもととなるY軸方向の加速度や、Y軸方向の速度から導出されるY軸方向の移動距離を採用することもできる。さらに、このようなY軸方向のデータに限らず、能動的な動作を評価するデータには、Z軸回りの角速度や、当該角速度から導出されるデータ(角加速度や回転量)を補正用データに採用することもできる。いずれのデータを補正用データに採用する場合にも、補正用データのもととなる計測データに対して上述のバンドパスフィルタを採用することが好ましい。
また、本実施形態における補正用データを導出するために用いられる計測データの範囲を計測した全範囲としているが、後述する時間帯を特定する変形例と同様に、時間帯を特定し、特定された時間帯を、補正用データを導出する範囲としてもよい。このようにすれば、補正用データの精度を高めることができる。特に、上述の通り、指腹部22の往復運動の過程(1ストローク内)においても能動的な動作が変化し、当該変化によって振動の強度が変化する。そのため、時間帯を特定する場合には、ストローク単位で特定することが好ましい。
工程S11では、遮断周波数を100Hzとしたハイパスフィルタを用いて、工程S07で記録された計測データから比較的周波数が高い振動の一部を抽出する。当該遮断周波数は、100Hzに限らず、比較的周波数が低い振動(本発明では、振動数が50Hz未満の振動)を除去し、比較的周波数が高い振動の少なくとも一部を抽出できる周波数(50Hz〜300Hz、より好ましくは50Hz〜200Hz)であれば、任意に設定してよい。
なお、工程S11では、工程S07で取得された計測データに対してハイパスフィルタをかけてもよく、この場合には、ハイパスフィルタがかけられた計測データが記録されることとなる。すなわち、工程S11は、工程S07によって記録される計測データに対してハイパスフィルタがかけられる工程とすればよい。
また、特段の説明がない限り、工程S11でハイパスフィルタがかけられた後のデータも、単に、計測データと表記する。
工程S13では、評価用データ(計測データ)および補正用データを用いて触感を評価する。具体的には、未評価の触感同士を相対的に評価する場合であれば、それぞれに対応する評価用データをそれぞれに対応する補正用データで正規化したデータ同士を比較して評価する。既存データと突き合わせて未評価の触感を評価する場合であれば、当該既存データと、評価用データを補正用データで正規化したデータとを比較して評価する。
ここで、本実施形態における補正用データを用いた評価用データの正規化とは、評価用データと補正用データ(Y軸方向の速度の平均値)とが比例関係にあると想定し、評価用データを、補正用データが特定の値(特定の速度)であった場合に想定されるデータに正規化する処理である。なお、補正用データによる正規化とは、本実施形態の方法に限らず、例えば、既存データと突き合わせて未評価の触感を評価する場合には、能動的な動作(補正用データ)の大きさに対応する複数種類の既存データから突き合わせる既存データを選択する指標として補正用データを用いる方法など、能動的な動作の違いによって生じる評価用データの差による影響を補正する方法であれば、いずれの方法を採用してもよい。
正規化した評価用データを比較するにあたっては、グラフ化など正規化した評価用データを加工したものを用いてもよいし、正規化した評価用データそのものを用いてもよい。
なお、評価用データを、補正用データを用いて正規化する必要は必ずしもなく、補正用データを用いずに(補正用データを導出することなく)、評価用データを用いて触感を評価するようにしてもよい。
また、工程S13で用いる計測データとしては、Y軸方向の加速度、X軸回りの角速度、およびZ軸回りの角速度のすべてを用いてもよいし、これらの一部を用いてもよい。ただし、上述の通り、指腹部22の移動方向(本実施形態では、Y軸方向)の速度(加速度)と対象面30上の当該移動方向と垂直な方向回り(本実施形態では、X軸回り)の角速度には相関関係があると考えられるため、これらの計測データを用いて触感を評価することが好ましい。さらに、指腹部22の動きには、手首の関節等による回転運動が加わるため、対象面30に対して垂直な方向回り(本実施形態ではZ軸回り)の角速度の計測も重要となる。
また、工程S13において、より客観的な触感評価や、より高い精度の触感評価を実現するには、計測データに高速フーリエ変換等の演算を行い、当該演算の結果を評価用データとして触感を評価することが好ましく、当該変形例は後述する。
<触感評価工程の変形例>
次に、図7を用いて、上述の触感評価工程(工程S13)の変形例(以下、「本変形例」と表記する場合がある)を説明する。図7は、触感評価工程の変形例を示すフローチャートである。
上述の通り、本変形は、上述の触感評価工程(工程S13)において、より客観的な触感評価や、より高い精度の触感評価を実現するための変形例であり、当該工程は、分析対象となる時間帯を特定する工程(S21)と、周波数成分を分析する工程(S23)、積分対象となる周波数帯域を特定する工程(S25)と、分析結果を積分する工程(S27)と、対象面30の触感を評価する工程(S29)と、を含む。
工程S21では、計測データから触感評価の対象(化粧料の有無や化粧料の種類で定義される組合せ)を考慮して工程S23における分析対象となる時間帯を特定する。
例えば、上述した対象面30をヒトの肌として乳液を擦り込む際の触感評価であれば、指腹部22と対象面30の間に介在する乳液が多い序盤、乳液が対象面30にある程度浸透して介在する乳液が減少した中盤、および乳液が肌にほぼ浸透して介在する乳液がなくなった終盤のうちの必要な時間帯を特定する。上述した対象面30を物品とした触感評価であれば、触感評価に適した指腹部22の動作となっている期間を特定する。このようにすることで、工程S13における触感評価の精度を高めることができる。
なお、工程S21における時間帯の特定とは、形式的に計測データが記録されている時間帯から指腹部22を対象面30に接触させてから当該触感評価が終了するまで時間帯(以下、「全時間帯」と表記する)を特定することではなく、上述の例のように、全時間帯から触感評価に寄与し得る一部の時間帯を特定することを指す。特定される一部の時間帯は、連続した時間帯であってもよいし、複数の連続した時間帯の集合であってもよい。
また、時間帯を特定するにあたっては、定量的な基準がなくてもよい。特定された時間帯に対する評価すべき時間帯(触感の評価に寄与する時間帯)の割合が、全時間帯に対する評価すべき時間帯の割合よりも高ければ、工程S13における触感評価の精度を高めることができる。
また、本変形例では、必ずしも工程S21を必要とせず、必要に応じて工程S21を行えばよい。工程S21を行う場合には、特定された時間帯に対応する計測データを用いて上述の補正用データを導出することが好ましい。工程S21を行わない場合には、以降の工程を上記した全時間帯に対して行えばよい。
工程S23では、工程S21で特定された時間帯の計測データに対し、離散フーリエ変換(本実施形態では、高速フーリエ変換)によって周波数成分を分析し、周波数スペクトルを導出する。高速フーリエ変換を行うにあたっては、窓関数を計測データに掛け合わせているが、当該窓関数は公知のものを使用しているため、説明を省略する。なお、本発明における周波数成分の分析とは、周波数成分ごとの振動の強度を導出することであり、当該分析を行える方法であれば、高速フーリエ変換に限らない。
工程S25では、工程S27における積分対象となる周波数帯域(200Hz〜250Hz)を特定する。なお、特定する周波数帯域は、この周波数帯域に限らず、あらかじめ定められた周波数帯域としてもよいし、上述した触感評価の対象や、被験者の触感の感じ方等の要因に基づいて、触感を評価するのに適した周波数帯域を逐次特定してもよい。特に、本発明で比較的周波数が高いとした50Hzからパチニ小体の応答周波数の上限とされる500Hzの範囲(より好ましくは、50Hz〜300Hz)内で周波数帯域を特定することが好ましく、当該範囲の全体を特定する周波数帯域とするようにしてもよい。さらに、特定する周波数帯域を複数設けてもよい。
また、上述の通り、能動的な動作の違いによって計測データの強度が高い周波数帯域が変化(高い周波数帯域の振動が増加)する。そのため、例えば、実験等により上述の補正用データの値に対応する周波数帯域をあらかじめ定めておき、導出された補正用データに対応する周波数帯域を特定する周波数帯域とする等、上述の補正用データを用いて特定する周波数帯域を補正するようにしてもよい。
また、本実施形態では、高速フーリエ変換後に周波数帯域を特定しているが、当該周波数帯域を通過帯域とするバンドパスフィルタを用いて高速フーリエ変換前に当該周波数帯域を特定するようにしてもよい。この場合は、工程S11のハイパスフィルタをかける工程を省略してもよく、工程S11と同様に、バンドパスフィルタは、工程S07によって記録される計測データに対して用いればよい。
また、本変形例では、必ずしも工程S25を必要とせず、必要に応じて工程S25を行えばよい。
工程S27では、工程S23で導出された周波数スペクトルのうちの工程S25で特定された周波数帯域の積分値を導出する。これにより、当該積分値が、積分対象となった周波数帯域における振動の強度を示す指標となる。なお、積分対象となる周波数帯域が複数種類ある場合には、それぞれの周波数帯域に対する積分値を導出すればよい。また、バンドパスフィルタを用いて高速フーリエ変換前に周波数帯域が特定された場合や、工程S25が行われなかった場合には、導出された周波数スペクトル全体の積分値を導出すればよい。
工程S29では、工程S27で導出された積分値(評価用データに相当)および補正用データを用いて触感を評価する。具体的には、未評価の触感同士を相対的に評価する場合であれば、それぞれに対応する積分値をそれぞれに対応する補正用データで正規化したデータ同士を比較して評価する。既存データと突き合わせて未評価の触感を評価する場合であれば、当該既存データと、積分値を補正用データで正規化したデータとを比較して評価する。
ここで、本変形例における補正用データを用いた評価用データの正規化とは、上述の本実施形態と同様に、評価用データと補正用データ(Y軸方向の速度の平均値)とが比例関係にあると想定し、評価用データが特定の値(特定の速度)であった場合に想定されるデータに正規化する処理である。なお、本変形例における正規化についても、同様に、能動的な動作の違いによって生じる評価用データの差による影響を補正する方法であれば、いずれの方法を採用してもよい。
なお、工程S29では、Y軸方向の加速度、X軸回りの角速度、およびZ軸回りの角速度のすべての計測データに対する積分値を用いてもよいし、これらの一部の計測データに対する積分値を用いてもよいが、上述の通り、指腹部22の移動方向(本実施形態では、Y軸方向)の速度(加速度)と対象面30上の当該移動方向と垂直な方向回り(本実施形態では、X軸回り)の角速度には相関関係があると考えられるため、これらの計測データに対する積分値を少なくとも用いて触感を評価することが好ましい。工程S21〜工程27では、工程S29で用いられる計測データに対応する処理を行えばよい。
また、工程S29では、(工程S25および工程S27を行うことなく、)工程S23で導出された周波数スペクトル(評価用データに相当)および補正用データを用いて触感を評価してもよい。具体的には、未評価の触感同士を相対的に評価する場合であれば、それぞれに対応する周波数スペクトルをそれぞれに対応する補正用データで正規化したデータ同士を比較して評価する。既存データと突き合わせて未評価の触感を評価する場合であれば、当該既存データと、周波数スペクトルを補正用データで正規化したデータとを比較して評価する。なお、この場合においても、能動的な動作の違いによって生じる評価用データの差による影響を補正する方法であれば、いずれの方法を採用してもよい。
また、積分値の導出も重要ではあるが、積分値を導出すると時間情報が失われる。また、上述の通り、パラメータ(本実施形態では、Y軸方向の加速度、X軸回りの角速度、およびZ軸回りの角速度)の変化によって周波数の強度に変化が生じる。そのため、各パラメータの変化と周波数スペクトルの変化(工程S25で特定される周波数帯域における変化に限らず、計測される全周波数帯域(本実施系形態では、0〜500Hz(サンプリング周波数1kHzの1/2)における変化としてもよい)の関連性を調べてもよい。
以下に実施例を挙げ、上述した比較的周波数が高い振動の計測によって細かな触感の評価が可能になる点を検証する。但し、以下の実施例の記載は、上述の内容に何ら限定を加えるものではない。なお、以下の実施例においても、上述の実施形態の説明で用いた符号を添えて説明する。
<他の実施形態>
上述の説明では、指腹部22を対象面30に沿って摺動させる触動作を挙げて本実施形態に係る触感評価方法を説明したが、上述の通り、本実施形態に係る触感評価方法では、指腹部22を対象面30に対してタッピングする触動作を採用することもできる。そして、触動作としてタッピングを採用した場合には、Z軸方向の動作成分を含む計測データ(Z軸方向の加速度(AZ)や、Y軸周りの角速度(GY))を計測することで、吸着感、硬軟感、粘弾性等の、指腹部22を対象面30に沿って摺動させる触動作で主に感じられる対象面30の表面性状に係る触感とは異なる触感を評価し易い。これにより、より高次元の触感評価が可能となる。以下、図12〜図16を用いて具体的に説明する。
なお、本実施形態におけるタッピングとは、対象面30から指腹部22が離間した状態からZ軸方向に沿って対象面30に向かって指腹部22を動作させ、指腹部22が対象面30に接触した後に再び指腹部22を対象面30から離間する方向に動作させる触動作である。
まず、図12(a)〜図12(c)、および図13(a)〜図13(c)を用いて、本実施形態の触感評価方法における触動作にタッピングを採用した場合のZ軸方向の加速度またはY軸回りの角速度と吸着感との関連性について説明する。
図12(a)〜図12(c)は、過量のスキンケアクリームを塗布した人工皮革をフォースプレート(図示省略)の上に配置し、当該人工皮革の表面を指腹部22でタッピングしたときの計測データであり、図12(a)はフォースプレートで計測されたZ軸方向の力を、図12(b)は触感計測装置1で計測されたZ軸方向の加速度を、図12(c)は触感計測装置1で計測されたY軸回りの角速度を示すグラフである。これにより、各図に示されるグラフの経時的な変化傾向を個別に把握することができる。
図13(a)〜図13(c)は、シリコーンパウダーを塗布した人工皮革をフォースプレート上に配置し、当該人工皮革の表面を指腹部22でタッピングしたときの計測データであり、図13(a)はフォースプレートで計測されたZ軸方向の力を、図13(b)は触感計測装置1で計測されたZ軸方向の加速度を、図13(c)は触感計測装置1で計測されたY軸回りの角速度を示すグラフである。
図12(a)には、過量のスキンケアクリームを塗布した人工皮革の表面を連続して2回タッピングしたときの当該人工皮革が固定されたフォースプレートによって計測されるZ軸方向の力(FZ)の変化が示されている。
なお、フォースプレートで計測されるZ軸方向の力は、下向きの力、すなわち、指腹部22がスキンケアクリームを塗布した人工皮革の表面に接触して当該人工皮革の表面が指腹部22によって押し込まれるときの力が、正の値で出力される。対して、上向きの力、すなわち、指腹部22が当該人工皮革の表面に接触した後に指腹部22が当該人工皮革の表面から離間(剥離)する方向に動作するときに当該人工皮革の表面が指腹部22によって引っ張られる力は、負の値で出力される。
具体的に見ると、図12(a)に示すタイミングT11でZ軸方向の力が正の値に振れ始め、その後のタイミングT12で当該力が正から負に変化している。さらに、タイミングT13でZ軸方向の力が負の値のピーク(剥離力に相当)をとり、その後のタイミングT14でZ軸方向の力が負の値から零になっている。
これにより、タイミングT11で1回目のタッピングに係る指腹部22の人工皮革の表面への接触が始まり、その後のタイミングT12で被験者が指腹部22を人工皮革の表面から離間させる方向に力を入れ始めていることが分かる。さらに、その後のタイミングT13で指腹部22の人工皮革の表面からの離間が始まり、タイミングT14で1回目のタッピングに係る指腹部22の人工皮革の表面への接触が終了していることが分かる。
なお、本検証実験では、図12(a)〜図12(c)に示す計測データの収集にあたり、各計測データのノイズ(例えば、タイミングT11よりも前のZ軸方向の力の微小な振動)を除去していないが、当該ノイズをハイパスフィルタ等で除去するようにしてもよい。
また、2回目のタッピングは、1回目のタッピングと同様の挙動となるため、説明を省略する。
図12(b)には、触感計測装置1によって図12(a)と同時並行で計測されるZ軸方向の加速度の変化が示されている。
なお、触感計測装置1で計測されるZ軸方向の加速度は、上向きの加速度、すなわち、指腹部22が人工皮革から離間する方向の加速度が、正の値で出力される。対して、下向きの加速度、すなわち、指腹部22が人工皮革に向かう方向の加速度が、負の値で出力される。
具体的に見ると、人工皮革の表面からの指腹部22の離間が始まったタイミングT13でZ軸方向の加速度が正の値に振れ始め、その後の1回目のタッピングに係る指腹部22の人工皮革の表面への接触が終了するタイミングT14で当該加速度が正の値のピーク(以下、単に「ピーク値」と表現する)をとっている。これは、スキンケアクリームが塗布された人工皮革の表面から指腹部22を引き剥がす際に剥離力が生じ、そこから解放される際に指腹部22が跳ね上がるように動くことに起因する。
図12(c)には、図12(b)と同様に、触感計測装置1によって図12(a)と同時並行で計測されるY軸周りの角速度の変化が示されている。
なお、触感計測装置1で計測されるY軸周りの加速度は、被験者から見て奥側に向かって回転する角速度、すなわち、指腹部22が人工皮革の表面に近づく方向の角速度が、正の値で出力される。対して、被験者から見て手前側に向かって回転する角速度、すなわち、指腹部22が人工皮革から離間する方向の角速度が、負の値で出力される。
具体的に見ると、タイミングT12からタイミングT13までの期間は、人工皮革に指が引っ張られている状態となるため、Y軸周りの角速度が正の値を示している。タイミングT13からは、人工皮革の表面からの指腹部22の離間が始まるため、Y軸周りの角速度が負の方向に振れ始め、その後の指腹部22の人工皮革の表面への接触が終了するタイミングT14で当該角速度が負の値のピーク(以下、単に「ピーク値」と表現する)をとっている。これも、上述のZ軸方向の加速度と同様に、スキンケアクリームが塗布された人工皮革の表面から指腹部22を引き剥が際に剥離力が生じ、そこから解放される際に指腹部22が跳ね上がるように動くことに起因する。
次に、図13(a)には、上述のスキンケアクリームと比較して粘着力が弱いシリコーンパウダーを塗布した人工皮革の表面を連続して2回タッピングしたときの当該人工皮革が固定されたフォースプレートによって計測されるZ軸方向の力の変化が示されている。なお、この検証実験においてフォースプレートで計測されるZ軸方向の力の正負は、図12(a)と同様である。
具体的に見ると、図13(a)に示すタイミングT21でZ軸方向の力が正の値に振れ始めている。その後、タイミングT22でZ軸方向の力が零になっている。
これにより、タイミングT21で、1回目のタッピングに係る指腹部22の人工皮革の表面への接触が始まり、タイミングT22で、当該タッピングに係る指腹部22の人工皮革の表面への接触が終了していることが分かる。
なお、本検証実験では、図13(a)〜図13(c)に示す計測データの収集にあたり、図12(a)〜図12(c)に示す計測データの収集と同様に、各計測データのノイズを除去していないが、当該ノイズをハイパスフィルタ等で除去するようにしてもよい。
また、2回目のタッピングは、1回目のタッピングと同様の挙動となるため、説明を省略する。
図13(b)には、触感計測装置1によって図13(a)と同時並行で計測されるZ軸方向の加速度の変化が示されている。なお、この検証実験において触感計測装置1で計測されるZ軸方向の加速度の正負は、図12(b)と同様である。
具体的に見ると、指腹部22の人工皮革の表面からの離間が終了するタイミングT22でZ軸方向の加速度が正の値のピークを取っているが、当該ピークは、図12(b)に示すピークよりも明らかに小さい。これは、スキンケアクリームと比較して塗布されたシリコーンパウダーの粘着力が弱く、シリコーンパウダーが塗布された人工皮革の表面に剥離力が殆ど生じないことに起因する。
図13(c)には、図13(b)と同様に、触感計測装置1によって図13(a)と同時並行で計測されるY軸周りの角速度の変化が示されている。なお、この検証実験において触感計測装置1で計測されるY軸周りの角速度の正負は、図12(c)と同様である。
具体的に見ると、指腹部22の人工皮革の表面からの離間が終了するタイミングT22で当該角速度が略零となっている。これは、上述のZ軸方向の加速度と同様に、スキンケアクリームと比較して塗布されたシリコーンパウダーの粘着力が弱く、シリコーンパウダーが塗布された人工皮革の表面に剥離力が殆ど生じないことに起因する。
このように、本実施形態に係る触感評価方法における触動作にタッピングを採用した場合には、タッピングによる指腹部22の対象面30への接触が終了するタイミング、すなわち、タッピングにおいて指腹部22が対象面30から離れる抜きのタイミングにおける、Z軸方向の加速度のピーク値またはY軸周りの角速度のピーク値を計測することにより、吸着感を評価できると考えられる。
続いて、図14を用いて、本実施形態の触感評価方法における触動作にタッピングを採用した場合の、Z軸方向の加速度(AZ)またはY軸回りの角速度(GY)と、専門家による官能評価によって決定される吸着感に係る官能評価値と、の関係性について説明する。
図14は、シリコーンオイルを塗布した人工皮革をフォースプレート上に配置し、当該人工皮革の表面を指腹部22で合計10回タッピングしたときの抜きのタイミングにおける計測データのピーク値の平均値を、評価対象となるシリコーンオイルの吸着感に係る官能評価値と対応づけてプロットした図である。なお、図14では、異なるパラメータを同軸で示すため、各平均値を任意単位としている。
図14に示す通り、この検証実験で用いられるシリコーンオイルには、粘度が異なる4種類を準備し、各シリコーンオイルの吸着感に係る官能評価値(0〜10の10段階評価)は、吸着感の小さいものから順に、0、2、6、10となった。そして、これらの官能評価値に対して、抜きのタイミングにおける計測データのピーク値の平均値は、図14に示す通りである。
具体的には、抜きのタイミングにおけるZ軸方向の加速度のピーク値の平均値、および抜きのタイミングにおけるY軸回りの角速度のピーク値の平均値のそれぞれが、官能評価値の増加に対応して大きくなっている。なお、フォースプレートによって計測されるZ軸方向の力(FZ)のピーク値についても同様に、官能評価値の増加に対応して大きくなっている。
このように、本実施形態に係る触感評価方法における触動作にタッピングを採用した場合には、抜きのタイミングにおける、Z軸方向の加速度のピーク値およびY軸周りの角速度のピーク値は、吸着感の官能評価値に対応していると言える。
以上の通り、本実施形態の触感評価方法における触動作にタッピングを採用した場合には、Z軸方向の動作成分を含む計測データ(Z軸方向の加速度(AZ)またはY軸回りの角速度(GY))の抜きのタイミングにおけるピーク値を計測することにより、タッピング対象となるものの吸着感を評価できる。すなわち、上述の工程S05において、触動作にタッピングを採用することで、上述の本実施形態に係る触感評価方法によって吸着感を評価することができると考えられる。
そして、タッピング動作が不均一な場合(例えば、接触する際の加速度が小さい時など)には、抜きの際のピークも小さくなる。そのため、この場合の工程S09で導出される補正用データとしては、接触するタイミング(タイミングT11)におけるZ軸方向の加速度(AZ)、もしくはZ軸方向の速度(VZ)を採用することができる。なお、Z軸方向の速度は、抜きのタイミングにおけるZ軸方向の加速度を積分することで導出できる。また、当該補正用データには、Z軸方向の加速度やZ軸方向の速度以外にも、接触するタイミングにおけるZ軸方向の移動距離を採用することもできる。さらに、このようなZ軸方向のデータに限らず、接触するタイミングにおけるY軸周りの角速度や、当該角速度から導出されるデータ(角加速度や回転量)を補正用データに採用することもできる。いずれのデータを補正用データに採用する場合にも、補正用データのもととなる計測データに対して周波数フィルタを採用することが好ましい。そして、この補正用データは、後述する硬軟感および粘弾性の評価においても採用することができる。
また、吸着感の評価を行うにあたり、抜きのタイミングにおける、Z軸方向の加速度のピーク値は、当該タイミングを含む連続した期間(例えば、始点をタイミングT13とし、終点をタイミングT14とする期間)におけるZ軸方向の加速度の積分値と相関関係がある。そのため、当該積分値を吸着感の評価に用いることもできると考えられ、抜きのタイミングを含む連続した期間におけるY軸周りの角速度の積分値も同様である。なお、当該ピーク値と相関関係があるデータは、このような積分値に限らない。
すなわち、本実施形態に係る触感評価方法における触動作にタッピングを採用して吸着感を評価するにあたっては、抜きのタイミングにおけるZ軸方向の動作成分を含む計測データ(Z軸方向の加速度またはY軸回りの角速度)または、当該計測データに基づいて導出されるデータ等の当該計測データと相関関係があるデータであれば、いずれのデータを用いてもよい。
また、図15は、図14に係る検証実験における計測データを用いて、評価対象となるシリコーンオイルごとに、Y軸周りの角速度のピーク値の平均値をZ軸方向の加速度のピーク値の平均値に対応付けてプロットした図である。
具体的には、図15に示す最も左側のプロットは、吸着感の官能評価値が0となったシリコーンオイルに対応するプロットとなり、そこから右側に向かって、順に、当該官能評価値が2、6、10となったシリコーンオイルに対応するプロットとなる。そして、図15には、これらのプロットを用いて導出された回帰直線が破線で示されている。
このように、各プロットは、回帰直線から逸脱しておらず(略回帰直線上に存在し)、その決定係数(R)は0.9989である。そのため、抜きのタイミングにおけるY軸周りの角速度のピーク値は、同タイミングにおけるZ軸方向の加速度(AZ)のピーク値と強い比例関係にあることが分かる。なお、当該回帰直線の式は、y=0.7248x+354.09となる。
次に、図16(a)および図16(b)を用いて、本実施形態の触感評価方法における触動作にタッピングを採用した場合のZ軸方向の加速度(AZ)と、硬軟感または粘弾性との関連性について説明する。図16(a)および図16(b)は、ヤング率の異なるスポンジの表面を指腹部22でタッピングしたきに触感計測装置1で計測されたZ軸方向の加速度を示すグラフである。これらのグラフでは、1回のタッピング動作によって指腹部22が対象となるものの表面に接触し始めてから、指腹部22が当該表面から離間し終えるまでの波形が計測されている。
図16(a)では、ヤング率が35kPaのスポンジが、図16(b)では、ヤング率が112kPaのスポンジが用いられ、各検証実験では、官能評価を行う専門家により、指腹部のZ軸方向の速度が略同一となるようにタッピングが行われている。その結果、図16(b)に示す波形のうちのピーク値が最大となる波形(タイミングT41にピークを持つ波形)のピーク値が、図16(a)に示す波形(タイミングT31にピークを持つ波形)のピーク値よりも大きくなっている。これは、図16(b)に係るスポンジのヤング率が、図16(a)に係るスポンジのヤング率よりも大きく、図16(b)に係るスポンジが、図16(a)に係るスポンジよりも硬いことに起因する。
すなわち、本実施形態の触感評価方法における触動作にタッピングを採用した場合のZ軸方向の加速度を計測し、計測した波形のうちのピーク値が最大となる波形を評価することで、タッピング対象の硬軟感を評価することができると考えられる。
上述の説明では、硬軟感の評価を行うにあたり、Z軸方向の加速度のピーク値を用いたが、これに限らない。例えば、図16(a)および図16(b)に破線で示される直線のように、ピーク値が最大となる波形に対する接線のうちの傾きの絶対値が最大となる接線の傾きの絶対値を用いてもよいし、当該波形の半価幅を用いてもよい。さらに、当該波形のピーク値と当該波形の半価幅の比のように、これらの値を複数組み合わせたものを用いてもよい。
すなわち、タッピングによって硬軟感を評価するにあたっては、計測されるZ軸方向の加速度の波形のうちのピーク値が最大となる波形を用いて導出される値であれば、いずれの値を用いてもよい。
なお、図16(a)に示す接線の傾きは、334G/secであり、図16(b)に示す接線の傾きは、1350G/secである。
計測データ(Z軸方向の加速度)の変化率(傾き)が大きくなるほど、計測データに高い周波数の振動が含まれると考えられ、特に、ピーク値が高いほど、この傾向が強い。
したがって、タッピングによって硬軟感を評価するにあたり、Z軸方向の加速度の計測データに対し、離散フーリエ変換(本実施形態では、高速フーリエ変換)によって周波数成分を分析して周波数スペクトルを導出し、当該周波数スペクトルを用いて硬軟感を評価することができると考えられる。なお、より定量的な評価を行うにあたっては、導出した周波数スペクトルを高い周波数の帯域で積分した積分値を用いてもよいし、ハイパスフィルタを用いて高周波成分を解析してもよい。
また、図16(b)では、タイミングT41をピークとする波形に続けて、指腹部22の跳ね返りによって生じるタイミングT42をピークとする正弦波状の波形が計測されている。一方、図16(a)には、同様の波形が計測されていない。これは、図16(b)に係るスポンジのヤング率が、図16(a)に係るスポンジのヤング率よりも大きく、図16(b)に係るスポンジが、図16(a)に係るスポンジよりも弾性が高いことに起因する。
すなわち、本実施形態の触感評価方法における触動作にタッピングを採用した場合のZ軸方向の加速度を計測し、計測した波形のうちのピーク値が最大となる波形に続く正弦波状の波形の有無を評価することで、タッピング対象の粘弾性を評価することができると考えられる。
なお、今回の検証実験とは異なり、比較対象の双方で、ピーク値が最大となる波形に続けてピーク値がより小さい正弦波状の波形が計測される場合には、後に計測される正弦波状の波形の高低差(後に計測される正弦波状の波形の開始地点における値と当該波形のピーク値との差)を比較することで、比較対象同士の粘弾性の高低を評価することができると考えられる。
また、上述した硬軟感の評価と同様に、粘弾性の評価においても、ピーク値が最大となる波形に続けて計測されるピーク値がより小さい正弦波状の波形に対する接線のうちの傾きの絶対値が最大となる接線の傾きの絶対値を用いてもよいし、正弦波状の波形の半価幅を用いてもよい。さらに、これらの値を複数組み合わせたものを用いてもよい。
すなわち、タッピングによって粘弾性を評価するにあたっては、計測されるZ軸方向の加速度の波形のうちのピーク値が最大となる波形に続けて計測される正弦波状の波形を用いて導出される値であれば、いずれの値を用いてもよい。
さらに、上述した硬軟感および粘弾性の評価には、吸着感の評価と同様に、Z軸方向の加速度に限らず、Y軸回りの角速度等、Z軸方向の動作成分を含む計測データを用いてもよいと考えられる。
また、上述の他の実施形態においては、上述の工程S11を適宜省略してよい。
<第1実施例>
対象面30には、人工皮革のみ、粉体(粒径15μm)を塗布した人工皮革、粉体(粒径5μm)を塗布した人工皮革3種類を用意した。
なお、人工皮革のみは、専門家による触感の官能評価の結果が「すこし引っかかる」と評価された。同様に、粉体(粒径15μm)を塗布した人工皮革は、「さらさら」と評価され、粉体(粒径5μm)を塗布した人工皮革は、「するする滑る」と評価された。
よって、人工皮革のみの触感と粉体を塗布した他の皮革の触感には、上述した異質な触感の違い(大まかな触感の違い)があると言える。一方、粉体(粒径15μm)を塗布した人工皮革と粉体(粒径5μm)を塗布した人工皮革には、上述した同質の触感であって比較的違いがない(細かな触感の違いしかない)と言える。
触感計測装置1における慣性センサ(センシングユニット2)には、3軸方向の加速度と各軸回りの角速度を計測できる市販のセンサを使用した。さらに、Bluetooth(登録商標)モジュールが組み込まれ、計測データを演算装置10に無線で送信可能な送信機を別体で設け、当該送信機と慣性センサとを有線で接続した。なお、計測データに影響を与え難くするため、送信機は手首に装着され、かつ送信機と慣性センサとを接続する線の長さを、送信機と慣性センサの距離よりも十分に長くした。
ベース部材3は、光硬化樹脂を用いて3Dプリンタにより作製し、慣性センサを当該ベース部材3の上面(ベース上面3a)に、つけ爪の接着等で使用されるシアノアクリレートを主成分とする接着剤を用いて取り付けた。
また、演算装置10には、慣性センサから送信される加速度と角速度を取得するアプリケーションを搭載したパーソナルコンピュータを用意した。
次に、慣性センサの取り付けと同様に、シアノアクリレートを主成分とする接着剤を用いて、慣性センサのY軸が、取り付けられる指20の幅方向であるY軸方向(慣性センサのX軸が取り付けられる指20の長手方向)となるように、上記ベース部材3の下面(ベース下面3b)を被験者の爪甲21aに取り付けた。
その後、慣性センサが装着された指20の指腹部22を対象面30に接触させ、接触させた状態で指20の幅方向(Y軸方向)に往復運動させた。
なお、慣性センサは以下のように設定した。
サンプリング周波数:1kHz
加速度の検出範囲:±4000mG
角速度の検出範囲:±500°/sec
上述の条件で計測した計測データを図8〜図10に示す。図8(a)〜図8(c)は、上から、Y軸方向の加速度(AY)、X軸回りの角速度(GX)、およびZ軸回りの角速度(GZ)の時間変化を示すグラフであり、図8(a)は人工皮革のみを、図8(b)は粉体(15μm)を塗布した人工皮革を、図8(c)は粉体(5μm)を塗布した人工皮革を対象面30とした場合のグラフである。なお、図8で示す計測データは、慣性センサから取得した生のデータであり、上述のハイパスフィルタが行われていない。
図9(a)〜図9(c)は、計測データに遮断周波数0.5Hzのハイパスフィルタをかけたグラフであり、図9(a)は図8(a)で示した計測データを、図9(b)は図8(b)で示した計測データを、図9(c)は図8(c)で示した計測データを当該ハイパスフィルタの対象としたグラフである。
図10(a)〜図10(c)は、計測データに遮断周波数100Hzのハイパスフィルタをかけたグラフであり、図10(a)は図9(a)で示した計測データを、図10(b)は図9(b)で示した計測データを、図10(c)は図9(c)で示した計測データを当該ハイパスフィルタの対象としたグラフである。
図8(a)〜図8(c)の各段を横に比較すると、図8(a)と図8(b)、および図8(a)と図8(c)のそれぞれの組合せには顕著な差があることが確認できる。具体的には、図8(a)における振動の強度(振幅)が、図8(b)および図8(c)のそれぞれにおける振動の強度よりも明らかに高い(大きい)。すなわち、上述の大まかな触感の違いについては、客観的に把握できている。
一方、図8(b)と図8(c)の組合せに若干の差は確認できるものの、当該組合せに顕著な差を確認することは必ずしも容易でないことが分かる。具体的には、図8(b)における振動の強度と図8(c)における振動の強度に顕著な差がない。
続いて、図9(a)〜図9(c)の各段を横に比較すると、図8(a)〜図8(c)と同様に、図9(a)と図9(b)、および図9(a)と図9(c)のそれぞれの組合せには顕著な差があることが確認できる。具体的には、図9(a)における振動の強度が、図9(b)および図9(c)のそれぞれにおける振動の強度よりも明らかに高い。
一方、図8(b)と図8(c)の組合せと同様に、図9(b)と図9(c)の組合せに若干の差は確認できるものの、図9(b)と図9(c)の組合せに顕著な差を確認することは必ずしも容易でないことが分かる。具体的には、図9(b)における振動の強度と図9(c)における振動の強度に顕著な差がない。これは、重力加速度による振動が除去されたものの、残存する比較的低い周波数の振動がノイズとなっているためと考えられる。
続いて、図10(a)〜図10(c)の各段を横に比較すると、図8(a)〜図8(c)と同様に、図10(a)と図10(b)、および図10(a)と図10(c)のそれぞれの組合せには顕著な差があることが確認できる。
さらに、図10(b)と図10(c)の組合せにも顕著な差が確認できることが分かる。具体的には、図10(b)における振動の強度が、図10(c)における振動の強度よりも明らかに高い。これは、比較的低い周波数が除去され、比較的周波数が高い振動を比較できるようになったことに起因すると考えられる。
このように、比較的周波数が高い振動を計測することで、上述の細かな触感の違いを客観的に把握できることが確認された。
次に、図9で示した計測データに対して短時間フーリエ変換を行った結果を図11(a)〜図11(c)に示す。図11(a)〜図11(c)は、短時間フーリエ変換によって得られたスペクトログラムであり、図11(a)は図9(a)で示した計測データを、図11(b)は図9(b)で示した計測データを、図11(c)は図9(c)で示した計測データを変換対象としたスペクトログラムである。なお、これらのスペクトログラムでは、振動の強度が色の濃淡で示されており、色が濃くなるほど振動の強度が高い。
図11(a)〜図11(c)の各段を横に比較すると、図11(c)、図11(b)、図11(a)の順に、振動の強度が高くなっていることが確認できる。具体的には、下側の点線と実線で示される周波数帯域(50Hz〜500Hz)における振動の強度に差があり、点線で示される周波数帯域(50Hz〜300Hz)における振動の強度に顕著な差がある。特に、一点鎖線で示される周波数帯域(200Hz〜250Hz)における振動の強度により顕著な差があることが分かる。
これにより、上述の変形例において積分対象の候補とした周波数帯域(50Hz〜500Hz、より好ましくは50Hz〜300Hz)と、積分対象とした周波数帯域(200Hz〜250Hz)の妥当性が確認された。
また、上述の触感計測装置1により、本発明における比較的周波数が高い振動(50Hz以上)を精度よく(上述の細かな触感の違いを客観的に把握できる程度に)計測できることが確認された。
<第2実施例>
次に、第2実施例では、官能評価を行う専門家を被験者とし、化粧料を塗布した当該被験者の頬を対象面30として、化粧料の吸着感を評価した。
化粧料には、互いに吸着感が異なる化粧料A、化粧料B、化粧料C、化粧料Dを用意した。
触感計測装置1には、第1実施例で用いたものと同様のものを用いるとともに、慣性センサの設定に関しても第1実施例と同様とした。
また、上記ベース部材3の下面(ベース下面3b)についても、第1実施例と同様に、被験者の爪甲21aへ取り付けた。
その後、対象面30に評価対象の化粧料を伸ばし、なじんだと判断した後、慣性センサが装着された指20の指腹部22を、対象面30に対してZ軸方向に10回タッピングした。
さらに、計測が終了した後には、各化粧料の吸着感を、0〜5の5段階で評価した。なお、この官能評価値は、吸着感の大きいほど大きな値となる。
上述の条件で計測した計測データを整理したデータを図17(a)および図17(b)に示す。図17(a)は、横軸に官能評価値、縦軸にZ軸方向の加速度(AZ)のピーク値の平均値をとり、化粧料ごとの結果をプロットした図であり、図17(b)は、横軸に官能評価値、縦軸にY軸回りの角速度(GY)のピーク値の平均値をとり、化粧料ごとの結果をプロットした図である。なお、各ピーク値は、上述の抜きのタイミングにおけるピーク値であり、各ピーク値の平均値とは、タッピングごとのピーク値の10回分の平均値である。
図17(a)に示す通り、官能評価値が大きくなるほど、すなわち、吸着感が大きくなるほど、Z軸方向の加速度のピークの平均値が大きくなった。
同様に、図17(b)に示す通り、Y軸回りの角速度のピーク値の平均値についても、吸着感の官能評価値が大きくなるほど、当該平均値が大きくなっていることが分かる。
このように、抜きのタイミングにおけるZ軸方向の加速度のピーク値、および抜きのタイミングにおけるY軸周りの角速度のピーク値のそれぞれは、官能評価値と相関関係がある。これにより、これらのピーク値を計測することで、吸着感を評価できることが確認された。
<第3実施例>
次に、第3実施例では、生地を対象面30として、生地の硬軟感および粘弾性を評価した。
生地には、互いに触質感が異なる4種類の生地、具体的には、化学繊維製の表面が粗い生地、フランネル、化学繊維製の表面が平滑な生地、および木綿を用意した。
この中では、フランネルが、他の生地よりも柔らかく、反発力も少ない(低弾性、高粘性)。そして、化学繊維製の表面が平滑な生地が、最も硬く感じられる(高弾性、低粘性)。
触感計測装置1には、第1実施例で用いたものと同様のものを用いるとともに、慣性センサの設定に関しても第1実施例と同様とした。
また、上記ベース部材3の下面(ベース下面3b)についても、第1実施例と同様に、被験者の爪甲21aへ取り付けた。
その後、各生地を順に対象面30とし、慣性センサが装着された指20の指腹部22を、対象面30に対してZ軸方向に7回ずつタッピングした。
上述の条件で計測した計測データを図18および図19に示す。図18(a)〜図18(d)は、上から、Z軸方向の加速度(AZ)、X軸方向の加速度(AX)、およびY軸回りの角速度(GY)のタッピング時の時間変化を示すグラフであり、図18(a)は化学繊維製の表面が粗い生地を、図18(b)はフランネルを、図18(c)は化学繊維製の表面が平滑な生地を、図18(d)は木綿を対象面30とした場合のグラフである。なお、図18で示す計測データは、慣性センサから取得した生のデータである。
図19(a)〜図19(d)は、図18(a)〜図18(d)で示した複数回のタッピングのうちの1回分のZ軸方向の加速度の時間変化を拡大したグラフであり、図19(a)は化学繊維製の表面が粗い生地を、図19(b)はフランネルを、図19(c)は化学繊維製の表面が平滑な生地を、図19(d)は木綿を対象面30とした場合のグラフである。
図19(a)〜図19(d)を比較すると、フランネルを除く生地を対象面30とした場合に計測された波形のうちのピーク値が最大となる波形のピーク値が、フランネルを対象面30とした場合の当該ピーク値よりも明らかに大きいことが分かる。
これにより、対象面30をタッピングした場合に計測されるZ軸方向の加速度の正弦波状の波形のうちのピーク値が最大となる波形のピーク値を計測することで、対象面30の硬軟感を評価できることが確認された。
さらに、フランネルを除く生地を対象面30とした場合に計測されたピーク値が最大となる波形に続く正弦波状の波形の高さ(後に計測される正弦波状の波形の開始地点における値と当該波形のピーク値との差)が、フランネルを対象面30とした場合の当該高さよりも明らかに高いことが分かる。
これにより、対象面30をタッピングした場合に計測されるZ軸方向の加速度において、正弦波状の波形のうちのピーク値が最大となる波形に続く正弦波状の波形の高さを計測することで、対象面30の粘弾性を評価できることが確認された。
次に、図18で示した計測データに対して短時間フーリエ変換を行った結果を図20(a)〜図20(d)に示す。図20(a)〜図20(d)は、短時間フーリエ変換によって得られたスペクトログラムであり、図20(a)は図18(a)で示した計測データを、図20(b)は図18(b)で示した計測データを、図20(c)は図18(c)で示した計測データを、図20(d)は図18(d)で示した計測データを変換対象としたスペクトログラムである。なお、これらのスペクトログラムでは、振動の強度が色の濃淡で示されており、色が濃くなるほど振動の強度が高い。
図20(a)〜図20(d)の各段を横に比較すると、図20(a)、図20(c)、および図20(d)が、図20(b)よりも振動の強度が高くなっていることが分かる。
これにより、Z軸方向の動作成分を含む計測データ(Z軸方向の加速度(AZ)またはY軸回りの角速度(GY))に対し、離散フーリエ変換によって周波数成分を分析して周波数スペクトルを導出し、当該周波数スペクトルを用いて硬軟感を評価できることが確認された。
1 触感計測装置
2 センシングユニット
2a ユニット下面
3 ベース部材
3a ベース上面
3b ベース下面
4 上部接着部
5 下部接着部
10 演算装置
20 指
21 爪
21a 爪甲
21b 爪半月
21c 爪先
22 指腹部
30 対象面

Claims (12)

  1. 指腹部を対象面に接触させる接触工程と、
    前記指腹部に対応する爪の加速度、および該爪の角速度のうちの少なくともいずれか一方を計測する計測工程と、
    前記計測工程で計測された計測データを取得するデータ取得工程と、
    前記計測データの時間変化を記録するデータ記録工程と、
    評価用データを用いて前記対象面を評価する評価工程と、を含み、
    前記評価用データが、前記データ記録工程で記録された前記計測データ、または該計測データに基づくデータである触感評価方法。
  2. 前記計測工程では、前記加速度および前記角速度の双方を計測する請求項1に記載の触感評価方法。
  3. 前記データ記録工程で記録された前記計測データの周波数成分を分析する分析工程を、さらに含み、
    前記評価工程では、前記周波数成分を前記評価用データとして前記対象面の触感を評価する請求項1又は2に記載の触感評価方法。
  4. 前記周波数成分の積分値を導出する積分工程を、さらに含み、
    前記評価工程では、前記積分工程で導出された積分値を前記評価用データとして前記対象面の触感を評価する請求項3に記載の触感評価方法。
  5. 前記積分工程では、特定の周波数帯域の積分値を導出する請求項4に記載の触感評価方法。
  6. 前記分析工程の前に、前記分析工程における分析対象となる時間帯を特定する時間帯特定工程を、さらに含む、請求項3乃至5のいずれか一項に記載の触感評価方法。
  7. 被験者の能動的な動作の違いによって生じる前記評価用データの差による影響を補正するための補正用データを、前記データ記録工程で記録された前記計測データに基づいて導出する補正用データ導出工程を、さらに含み、
    前記評価工程では、前記補正用データをさらに用いて前記対象面の触感を評価する請求項1乃至6のいずれか一項に記載の触感評価方法。
  8. 前記接触工程では、ヒトの肌またはヒトの肌を模して作成された面を前記対象面として用い、該対象面と前記指腹部の間に化粧料を介在させる請求項1乃至7のいずれか一項に記載の触感評価方法。
  9. 指の軟部組織よりも硬質であり下面を爪の表面に取り付け可能とするベース部材と、
    加速度および角速度のうちの少なくともいずれか一方を検出する検出手段を有し前記ベース部材の上面に取り付けられるセンシングユニットと、を備える触感計測装置。
  10. 前記検出手段は、加速度および角速度の双方を検出する請求項9に記載の触感計測装置。
  11. 前記ベース部材の前記下面が、取り付け時の指の長手方向に沿って内側に湾曲している請求項9又は10に記載の触感計測装置。
  12. 前記ベース部材の前記下面が、爪甲の表面形状に対応して湾曲している請求項11に記載の触感計測装置。
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