JP6971130B2 - 触感計測装置 - Google Patents
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Description
しかしながら、官能評価では、評価者間の差や、評価時における評価者の身体的及び精神的な状況の差などにより評価結果が左右され易いため、定量的な評価が難しいという側面がある。
特許文献2には、皮膚性状検出センサを用いた皮膚触感評価方法が開示されている。この方法では、ピン状の接触子の先端部で測定対象(皮膚触感モデル)を押圧したときの接触圧が測定されると共に、接触子の共振振動数の変化値が測定される。
例えば、特許文献1の手法は、毛髪に特化した評価手法であるため、人の肌や物品の表面のような幅広面を評価対象とすることはできない。
また、特許文献2の手法は、少なくともピン状の接触子を共振振動させる必要があるため、据置型装置を用いており、評価対象が制限されてしまう。
本発明は、任意の対象面の触感を評価することができる技術を提供することを課題とする。
本発明は、手指の指紋ピッチに対応する線幅でその延在方向に交わる方向に沿って対象面に線として接触させて用いられる接触部と、前記接触部に連接しており前記接触部から得られる振動を伝搬する振動伝搬部と、前記振動伝搬部に設けられ前記振動を検知する振動センサと、を備える触感計測装置である。
本装置1は、接触部15、振動伝搬部20、及び振動センサ25を少なくとも備えている。
ここで「対象面」とは、触感計測の対象とされる面(表面)を意味し、人肌の表面や物体の表面などが例示される。対象面は平面であってもよいし曲面であってもよく、接触部15を接触させて摺動させることができれば、その形状や材質などは何ら制限されない。
そして、人の触覚には指紋が重要な役割を果たしており、指紋の凹凸が物体表面を触ることで生じる振動を増幅し、人はその振動に基づいて触感を得ることが知られている。接触部15の線幅をこのような手指の指紋ピッチに対応する線幅とすることで、指紋の凹凸が対象面に沿って摺動した際に生じる振動と近似する振動を接触部15で生じさせることができる。即ち、触感を得るときに手指で受ける振動と近似する振動を取得することができ、ひいては、その振動に基づいて触感を高精度に評価することができる。
振動伝搬部20の形状及び材質は、接触部15から得られる振動を少なくとも振動センサ25で検知できるように伝搬することができれば何ら限定されない。図1及び図2の例では、振動伝搬部20は振動センサ25のみならず把持部30にも振動を伝搬するよう構成されているが、振動伝搬部20は把持部30には振動を伝搬不可能に構成されていてもよい。
また、図1及び図2の例では、振動伝搬部20と接触部15とは間接的に連なっている。具体的には、接触部15は線状体である接触子10の一部であり、接触子10と振動伝搬部20の一端部とが直接接続されている。但し、振動伝搬部20と接触部15とは直接的に連なっていてもよい。例えば、振動伝搬部20の一端部が接触部15とされてもよい。
また、振動センサ25は、振動を検知可能であれば、その具体的構成は限定されない。振動センサ25は、例えば、圧電体、ひずみゲージ、加速度センサ、電磁誘導効果を用いたセンサなどで実現可能である。
図1に示されるように、触感計測を行うにあたり、ユーザ(計測者)は、把持部30を把持しながら接触部15を対象面(図1では腕表面)に接触させて、接触部15の延在方向と交差する方向かつ接触部15から把持部30に向かう方向に本装置1を摺動させる。
このとき、本装置1は、上述したとおり、接触部15で得られる振動を振動センサ25で検知して、その検知信号を出力する。この出力された振動検知信号に基づいて触感に関わる情報が取得される。
更に、本実施形態では把持部30も振動伝搬部20の一部となっており、把持部30にも振動が伝搬され得る。これにより、ユーザは、把持部30を介して振動を感じながら、触感計測を行うことができる。
これにより、振動伝搬部20における屈曲部から把持部30側を対象面に対して平行にして接触部15を摺動させることができるため、安定操作が可能となる。更に、ユーザにとってL字形状により接触部15と対象面との接触箇所を視認し易くなるため、操作性が向上する。但し、本実施形態では、図2に示されるように、振動伝搬部20は略直角に一箇所で屈曲しているが、屈曲角度及び屈曲部の数はそのような例に限定されない。
第一検出部33により検出される押し付け力はこのような振動伝搬部20の歪み以外を用いても検出可能である。例えば、第一検出部33は把持部30にかかる荷重を当該押し付け力として検出してもよい。また、第一検出部33の設置位置は検出すべき情報に応じて任意の位置に設けられれば良い。
接触部15で得られる振動は、このような押し付け力の違いに影響され得る。触感計測時に第一検出部33により押し付け力を検出することにより、その数値をユーザに提示するなどして計測ごとの条件を合わせることができる。
本装置1の摺動速度は慣性センサ以外でも検出され得る。例えば、モーションキャプチャ技術が利用可能である。一例として、本装置1の任意の箇所にマーカを付しておき、計測時に本装置1の動きを撮像することで、その画像中のマーカの動きの解析から摺動速度を算出することもできる。本装置1の摺動速度の検出手法は何ら制限されない。
接触部15で得られる信号は、計測時の摺動速度の違いにも影響され得る。触感計測時に第二検出部35により摺動速度を検出することにより、その数値をユーザに提示するなどして計測ごとの条件を合わせることができる。
振動センサ25、第一検出部33及び第二検出部35から出力される振動検知信号、押し付け力信号及び摺動速度信号は、AD変換器(図示せず)や各種フィルタなどを介して、汎用又は専用のコンピュータ(情報処理装置)(図示せず)に取り込まれる。
そのため、当該コンピュータは、触感の違いを明確化するべく、振動情報を処理して、振動の統計情報や周波数情報を抽出し出力してもよい。振動の統計情報としては、例えば、振幅値(振動の大きさ)の平均、標準偏差、又は分散が算出されてもよい。また、周波数情報は、振動情報(振動の時系列データ)に既知の周波数解析を適用することにより算出可能である。
このように本装置1で得られる振動検知信号によれば、「すべすべ感」、「さらさら感」、「滑らかさ」、「しっとり感」といった対象面の触感を定量的に評価することができる。
上述の触感計測装置1は、図1及び図2に示されるような構成に限定されず、本実施形態の概要として述べた内容を逸脱しない範囲で各種変更可能である。
図4は、変形例に係る触感計測装置40の構成を示す図である。以下、変形例に係る触感計測装置40について、上述の触感計測装置1と相違する点を中心に説明する。
図5は、実施例に係る触感計測装置50を示す上方斜視図であり、図6は、実施例に係る触感計測装置50を示す下方斜視図である。
触感計測装置50は、平板状の振動伝搬部20の基端部に把持部30が設けられており、振動伝搬部20の先端部に接触子10が設けられている点において、上述の触感計測装置1と同様である。なお、振動伝搬部20は、厚さ1mmのポリスチレン板により形成された。
このように、接触部15は、一以上のループをなす一本の線状体の一部とされてもよい。ここでの「一ループ」とは、回転軸又は螺旋軸回りに180度以上360度以下の範囲で延在している環状体を意味する。これによれば、ループ13がサスペンション機能を実現し、対象面に対して接触部15を程よい押し付け力で接触させることができるため、振動感度を向上させることができる。
また、接触部15は、0.2mmの太さ(線幅)を持ち、曲率半径約5mmで湾曲している。これにより、接触部15の形状を対象面に振れている状態の指紋の形状に近似させることができるため、人が対象面から触感を得るときに生じる振動と近似する振動を得ることができる。
このように線状体の接触子10を管53を介して振動伝搬部20に接続することで、接触子10を振動伝搬部20にしっかりと固定できるだけでなく、接触子10が損傷した場合に容易に接触子10を取り換えることができる。
接触子10をしっかりと固定しかつ振動を適切に伝達するために、管53の長さは5mm以上3cm以下とされることが好ましい。
一方で、触感計測装置50には、触感計測装置1と異なり、第二検出部35及び撮像部37は設けられなかった。
(試験例1)
触感計測装置50を用いて、肌状態の異なる20代の2名の被験者の小鼻の肌感触が計測された。計測は、被験者の頭部を固定した状態で触感計測装置50の接触部15で小鼻を50回程度、上から下へ片道でなぞる方法により行われた。
触感計測装置50により計測された情報はPCのモニタ上にリアルタイムに表示され、計測者は、ひずみセンサ55で検知されそのモニタに表示された力覚(押し付け力)波形を確認して押し付け力を一定としながら触感計測装置50を操作した。
官能評価の結果、被験者の一人が官能評価スコア「1」(滑らかな肌を実感できる)と評価され、他の一人が官能評価スコア「4」(ややざらざら)と評価された。
図7(a)及び図7(b)には、約50回のなぞりのうち肌状態に変化をきたしていない初期7回の結果が示されている。振動センサ25から出力される電気信号のサンプリング周期は1000Hzに設定され、ひずみセンサ55から出力される電気信号のサンプリング周期は100Hzに設定された。
各グラフの右側の縦軸は、振動センサ25から得られた振動のみなし数値を示し、左側の縦軸は、ひずみセンサ55から得られた歪み情報をグラム単位に変換した押し付け力(力覚)を示し、横軸は時間を示している。
図7(a)及び図7(b)によれば、肌が滑らかでなくなるほど大きい振動振幅が現れ振動振幅のばらつきが大きくなることが視認できる。また、図8(a)及び図8(b)においても、肌が滑らかでなくなるほど高い周波数のパワーが大きくなり周波数のばらつきも大きくなることが視認できる。
このような結果から、触感計測装置50で肌表面を計測した情報、具体的には振動振幅及び周波数分布によって、肌の触感の違いを評価できることが確認された。
触感計測装置50を用いて、1名の被験者の小鼻の肌感触が計測された。試験例2では、被験者に3週間洗顔料を連用しながら、その被験者の、洗顔料の使用直前、連用2日後、及び連用21日後において触感計測装置50を用いて計測が行われた。この計測と同時に、当該被験者の、洗顔料の使用直前、連用2日後、連用7日後・連用14日後、及び連用21日後において、専門パネルが角栓に着目した「肌の滑らかさ」に関する官能評価を行った。官能評価の結果は上述の試験例1と同様に5段階スコアで示された。
図9の棒グラフは、触感計測装置50により計測された振動情報から得られた3摺動における振動振幅の積算値の平均を示す。図9の折れ線グラフは、触感の官能評価スコアを評価時ごとに示す。
図9によれば、触感の官能評価スコアが洗顔料の連用期間に応じて低下、即ち滑らかさが増していることから、振動振幅の平均積算値が洗顔料の連用期間に応じて低下していることとの相関を示している。
このような結果から、同一被験者に対する洗顔料の連用による肌の触感の変化についても、触感計測装置50で肌表面を計測した情報によっての違いを評価できることが確認された。
10 接触子
13 ループ
15、45 接触部
20 振動伝搬部
25 振動センサ
30 把持部
33 第一検出部
35 第二検出部
37 撮像部
55 ひずみセンサ
Claims (8)
- 手指の指紋ピッチに対応する線幅でその延在方向に交わる方向に沿って対象面に線として接触させて用いられる接触部と、
前記接触部に連接しており前記接触部から得られる振動を伝搬する振動伝搬部と、
前記振動伝搬部に設けられ前記振動を検知する振動センサと、
を備え、
前記接触部は、曲率半径1mm以上20mm以下で凸の弧状に湾曲しており、70GPa以上300GPa以下のヤング率を有し、0.5mm以下の線幅を有する、
触感計測装置。 - 前記振動伝搬部に接続される把持部を更に備え、
前記接触部は、前記把持部へ向かう方向に対して交差する方向に延在している、
請求項1に記載の触感計測装置。 - 前記把持部は、前記振動伝搬部における前記接触部が設けられている端部とは異なる端部に設けられており、
前記振動センサは、前記接触部と前記把持部との間に設けられている、
請求項2に記載の触感計測装置。 - 前記振動伝搬部は、前記把持部よりも前記接触部に近い位置で屈曲するL字形状を有する、
請求項2又は3に記載の触感計測装置。 - 前記接触部は、一以上のループをなす一本の線状体の一部である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の触感計測装置。 - 前記振動伝搬部は、平板状に形成されており、
前記振動センサは、前記振動伝搬部の幅広面に沿って設けられる圧電フィルムである、
請求項1から5のいずれか一項に記載の触感計測装置。 - 計測時における対象面への前記接触部の押し付け力を検出する第一検出部と、
計測時における摺動速度を検出する第二検出部と、
を更に備える請求項1から6のいずれか一項に記載の触感計測装置。 - 計測時における対象面の前記接触部との接触箇所を撮像する撮像部
を更に備える請求項1から7のいずれか一項に記載の触感計測装置。
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