JP2019202287A - 触媒層用インク及び燃料電池の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】アイオノマーが担体の細孔内に存在する触媒層の形成が可能な触媒層用インクを提供する。【解決手段】アイオノマー、触媒、細孔を有する担体及び溶媒を含む触媒層用インクを製造する方法は、前記触媒層用インク中の前記アイオノマーが、酸性の官能基又はその前駆体を有するポリマーであり、前記アイオノマーの材料を、前記触媒、前記担体及び前記溶媒と混合し、混合物を得るステップと、前記混合物中で前記材料を反応させて前記アイオノマーを生成することで、前記触媒層用インクを得るステップと、を含む。【選択図】図2
Description
本発明は、触媒層用インク及び燃料電池の製造方法に関する。
固体高分子電解質型の燃料電池は、イオン伝導性を有する固体高分子膜である電解質膜を2つの電極間に有する。この燃料電池では、アノードである一方の電極において、燃料として供給された水素ガスがプロトンと電子に分離する反応が生じる。プロトンは電解質膜を経由して他方の電極へ移動し、電子は外部回路を経由して他方の電極へ移動する。この電子の移動により外部回路では電流が発生する。一方、カソードである他方の電極では、酸素ガスが供給され、電解質膜から移動してきたプロトンと外部回路から移動してきた電子が酸素ガスと反応して水が生成される。
各電極には、水素ガス又は酸素ガスの反応が生じる触媒層が設けられている。触媒層では、メソポーラスカーボン等の細孔を有する担体によって、白金等の触媒粒子が担持されている。触媒作用を高めるため、触媒粒子は、通常は電解質膜と同類の電解質によって被覆されている。このような触媒層内で使用する電解質を、以下、アイオノマーという。
一般的に、触媒粒子の粒子径は担体の細孔の内径より小さいため、触媒粒子は、担体の外表面だけでなく細孔内部にも担持されている。よって、細孔内部の触媒粒子もアイオノマーによって被覆されると、触媒利用率が向上する(例えば、特許文献1参照。)。
アイオノマーは、一般に繰り返し構造を有するポリマーを主鎖として、酸性の官能基を有する。例えば、代表的なアイオノマーの1つであるナフィオン(Nafion、登録商標)は、ポリテトラフルオロエチレンユニットを主鎖として、パーフルオロエーテルスルホン酸ユニットを側鎖として有する。
アイオノマーは、主鎖のポリマーが繰り返し構造を有するため、結晶化しやすい。アイオノマー、触媒及び担体を水、アルコール等の親水性溶媒と混合して触媒層用インクを調製したとき、各アイオノマー内の結晶化部を中心に分子同士が凝集して、酸性の官能基が外側に配列したコロイドが形成されやすい。その結果、アイオノマーが担体の細孔内部に浸入することが難しくなる。このような触媒層用インクを使用して形成された触媒層は、細孔内部の触媒粒子がアイオノマーによって被覆されにくくなるため、触媒利用率が低下する。
本発明は、アイオノマーが担体の細孔内に存在する触媒層の形成が可能な触媒層用インクを提供することを目的とする。
本発明に係る触媒層用インクの製造方法は、アイオノマー、触媒、細孔を有する担体及び溶媒を含む触媒層用インクを製造する方法であって、前記触媒層用インク中の前記アイオノマーが、酸性の官能基又はその前駆体を有するポリマーであり、前記アイオノマーの材料を、前記触媒、前記担体及び前記溶媒と混合し、混合物を得るステップと、前記混合物中で前記材料を反応させて前記アイオノマーを生成することで、前記触媒層用インクを得るステップと、を含む触媒層用インクの製造方法。
本発明に係る燃料電池の製造方法は、電解質膜の両面に触媒層を有する燃料電池の製造方法であって、アイオノマー、触媒、細孔を有する担体及び溶媒を含む触媒層用インクを調製するステップと、前記触媒層用インクを前記電解質膜の両面に塗布して前記触媒層を形成するステップと、を含み、前記触媒層用インク中の前記アイオノマーが、酸性の官能基又はその前駆体を有するポリマーであり、前記触媒層用インクを調製するステップは、前記アイオノマーの材料を、前記触媒、前記担体及び前記溶媒と混合し、混合物を得るステップと、前記混合物中で前記材料を反応させて前記アイオノマーを生成することで、前記触媒層用インクを得るステップと、を含む。
本発明によれば、アイオノマーが担体の細孔内に存在する触媒層の形成が可能な触媒層用インクを提供することができる。
本発明の製造方法は、燃料電池の触媒層の形成に用いられる触媒層用インク及び燃料電池の製造方法である。
以下、本発明の触媒層用インク及び燃料電池の製造方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。以下に説明する構成は、本発明の一実施態様としての一例(代表例)であり、本発明は以下に説明する構成に限定されない。
以下、本発明の触媒層用インク及び燃料電池の製造方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。以下に説明する構成は、本発明の一実施態様としての一例(代表例)であり、本発明は以下に説明する構成に限定されない。
(燃料電池)
本発明の製造方法によって製造される燃料電池は、単セル構造を有する燃料電池であってもよいし、スタック構造を有する燃料電池であってもよい。
図1は、燃料電池の基本単位である燃料電池セルの構成例を示している。
本発明の製造方法によって製造される燃料電池は、単セル構造を有する燃料電池であってもよいし、スタック構造を有する燃料電池であってもよい。
図1は、燃料電池の基本単位である燃料電池セルの構成例を示している。
図1に示す燃料電池セル10は、水素ガスと酸素ガスの供給を受けて発電する固体高分子電解質型燃料電池である。燃料電池セル10は、図1に示すように、2つのセパレータ3と、2つのセパレータ3間に設けられた膜電極接合体4とを有する。セパレータ3は、燃料電池セル10に供給されるガスを膜電極接合体4へ流す流路を有する。燃料電池セル10がスタック構造である場合、セパレータ3は、隣り合うセル間を電気的に接続する。
膜電極接合体4は、図1に示すように、電解質膜1と、2つの電極2と、を有する。
膜電極接合体4は、図1に示すように、電解質膜1と、2つの電極2と、を有する。
電解質膜1は、プロトン供与性の固体高分子電解質の膜である。電解質膜1には、後述する電極2において使用可能な電解質と同様の電解質を使用することができる。
2つの電極2は、電解質膜1の両面にそれぞれ設けられる。一方の電極2はアノードであり、燃料極とも呼ばれる。他方の電極2はカソードであり、空気極とも呼ばれる。アノードである電極2では、セパレータ3を介して供給された水素ガス(H2)から電子(e−)とプロトン(H+)を生成する反応が生じる。電子は外部回路を経由してカソードである電極2へ移動する。この電子の移動により外部回路では電流が発生する。プロトンは電解質膜1を経由してカソードである電極2へ移動する。カソードである電極2では、セパレータ3を介して酸素ガス(O2)が供給され、外部回路から移動してきた電子により酸素イオン(O2−)が生成される。酸素イオンは、電解質膜1から移動してきたプロトン(2H+)と結合して、水(H2O)になる。
各電極2は、図1に示すように、触媒層21とガス拡散層22を有する。ガス拡散層22は、各電極2に供給された水素ガス又は酸素ガスを電極2に均一に拡散する目的で、必要に応じて設けることができる。ガス拡散層22としては、例えばカーボン繊維等の導電性、ガス透過性及びガス拡散性を有する多孔性繊維シート、発砲金属、エキスパンドメタル等の多孔性の金属板を用いることができる。
(触媒層)
触媒層21は、電解質膜1に隣接して設けられる。触媒層21は、触媒、担体及びアイオノマーを含み、触媒によって上述した水素ガス及び酸素ガスの反応を促進する。触媒層21では、粒子状の触媒が担体に担持され、アイオノマーによって担体及び触媒が被覆されている。担体及び触媒は、少なくとも一部がアイオノマーによって被覆されていればよいが、触媒利用率の向上の観点からは、被覆される領域が大きいほど好ましい。ガスとの反応性を高める観点からは、触媒を被覆するアイオノマーの層は薄い方が好ましい。
触媒層21は、電解質膜1に隣接して設けられる。触媒層21は、触媒、担体及びアイオノマーを含み、触媒によって上述した水素ガス及び酸素ガスの反応を促進する。触媒層21では、粒子状の触媒が担体に担持され、アイオノマーによって担体及び触媒が被覆されている。担体及び触媒は、少なくとも一部がアイオノマーによって被覆されていればよいが、触媒利用率の向上の観点からは、被覆される領域が大きいほど好ましい。ガスとの反応性を高める観点からは、触媒を被覆するアイオノマーの層は薄い方が好ましい。
(触媒)
触媒としては、水素ガス又は酸素ガスの触媒作用を有するのであれば特に限定されないが、例えば白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、タングステン(W)、鉛(Pb)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、ガリウム(Ga)及びアルミニウム(Al)等の金属、これら金属の混合物、合金等が挙げられる。なかでも、触媒活性、一酸化炭素等に対する耐被毒性、耐熱性等を向上させる観点から、白金、白金を含む混合物又は合金が好ましい。触媒が合金からなる場合、合金の組成は、合金化する金属の種類にもよるが、例えば白金の含有量を30〜90原子%とし、その他の金属の含有量を10〜70原子%とすることができる。
触媒としては、水素ガス又は酸素ガスの触媒作用を有するのであれば特に限定されないが、例えば白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、タングステン(W)、鉛(Pb)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、ガリウム(Ga)及びアルミニウム(Al)等の金属、これら金属の混合物、合金等が挙げられる。なかでも、触媒活性、一酸化炭素等に対する耐被毒性、耐熱性等を向上させる観点から、白金、白金を含む混合物又は合金が好ましい。触媒が合金からなる場合、合金の組成は、合金化する金属の種類にもよるが、例えば白金の含有量を30〜90原子%とし、その他の金属の含有量を10〜70原子%とすることができる。
触媒の平均粒子径は、特に限定されないが、触媒利用率及び担体での担持性の向上の観点からは、好ましくは1〜30nm、より好ましくは1〜20nmである。
触媒の平均粒子径は、X線回折における触媒粒子の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径として求めることができる。また、触媒の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)又は走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)より観察したn個の触媒粒子の粒子径の平均値として求めることもできる。nは、例えば200〜300とすることができる。
触媒の平均粒子径は、X線回折における触媒粒子の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径として求めることができる。また、触媒の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)又は走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)より観察したn個の触媒粒子の粒子径の平均値として求めることもできる。nは、例えば200〜300とすることができる。
(担体)
担体としては、細孔を有する導電性の多孔性金属化合物を用いることができる。多孔性金属化合物としては、例えばメソポーラスカーボンが挙げられる。メソポーラスカーボンとしては、例えばケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、バルカン(登録商標)等のカーボンブラック、複数層のグラフェンシートが積層されてメソポーラスが形成された構造を有するカーボン等が挙げられる。また、多孔性金属化合物としては、例えばPtブラック、Pdブラック、フラクタル状に析出させたPt金属、Ti、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W等の酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、炭窒化物等が挙げられる。なかでも、分散性が良好で表面積が大きく、触媒の担持量が多い場合でも高温での粒子成長が少ない観点からは、メソポーラスカーボンが好ましい。
担体としては、細孔を有する導電性の多孔性金属化合物を用いることができる。多孔性金属化合物としては、例えばメソポーラスカーボンが挙げられる。メソポーラスカーボンとしては、例えばケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、バルカン(登録商標)等のカーボンブラック、複数層のグラフェンシートが積層されてメソポーラスが形成された構造を有するカーボン等が挙げられる。また、多孔性金属化合物としては、例えばPtブラック、Pdブラック、フラクタル状に析出させたPt金属、Ti、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W等の酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、炭窒化物等が挙げられる。なかでも、分散性が良好で表面積が大きく、触媒の担持量が多い場合でも高温での粒子成長が少ない観点からは、メソポーラスカーボンが好ましい。
担体の平均粒径は、特に限定されないが、触媒粒子の担持性を高める観点からは、10〜100nmが好ましい。
担体の平均粒径は、触媒の平均粒子径と同様にして、TEM又はSEMにより求めることができる。
担体の平均粒径は、触媒の平均粒子径と同様にして、TEM又はSEMにより求めることができる。
担体の細孔の平均孔径は、特に限定されないが、触媒粒子を細孔内にも担持する観点からは、2〜20nmが好ましい。
担体のBET比表面積は、多くの触媒粒子を担持する観点から、50m2/g以上が好ましく、500m2/g以上がより好ましく、700m2/g以上がさらに好ましい。一方、担体のBET比表面積は、均一に触媒粒子を担持する観点から、1500m2/g以下が好ましく、1300m2/g以下がより好ましく、1000m2/g以下がさらに好ましい。したがって、担体のBET比表面積は、50〜1500m2/gが好ましく、500〜1300m2/gがより好ましく、700〜1000m2/gがさらに好ましい。
上記担体のBET比表面積は、窒素吸着法により測定される。
上記担体のBET比表面積は、窒素吸着法により測定される。
担体に担持された触媒の質量は、触媒と担体を合わせた質量(100質量%)に対して、通常1〜99質量%とすることができ、触媒活性及び担持性の向上の観点からは、10〜90質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましい。
(アイオノマー)
アイオノマーは、触媒層21中で使用するプロトン供与性の固体高分子電解質である。アイオノマーは、繰り返し構造を有するポリマーを主鎖として、酸性の官能基を有する。酸性の官能基としては、酸性を示す官能基であれば特に限定されず、例えばスルホン酸基、リン酸基、カルボン酸基等が挙げられ、なかでもプロトン伝導性の観点から、スルホン酸基が好ましい。アイオノマーによるプロトン伝導のメカニズムとしては、酸性の官能基によって親水性のコアが形成され、コア内に水分子が局在したクラスターのネットワークが形成されて、この親水性のネットワークをプロトンが移動するモデルが提唱されている。
アイオノマーは、触媒層21中で使用するプロトン供与性の固体高分子電解質である。アイオノマーは、繰り返し構造を有するポリマーを主鎖として、酸性の官能基を有する。酸性の官能基としては、酸性を示す官能基であれば特に限定されず、例えばスルホン酸基、リン酸基、カルボン酸基等が挙げられ、なかでもプロトン伝導性の観点から、スルホン酸基が好ましい。アイオノマーによるプロトン伝導のメカニズムとしては、酸性の官能基によって親水性のコアが形成され、コア内に水分子が局在したクラスターのネットワークが形成されて、この親水性のネットワークをプロトンが移動するモデルが提唱されている。
触媒層21に使用できるアイオノマーとしては、例えば酸性の官能基を有するフッ素系ポリマー、炭化水素系ポリマー等のイオン交換性ポリマーが挙げられる。触媒層21に使用するアイオノマーは、電解質膜1で使用される電解質と同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。
酸性の官能基を有するフッ素系ポリマーとしては、パーフルオロスルホン酸ポリマー等が挙げられる。パーフルオロスルホン酸ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ユニットと、パーフルオロスルホン酸ユニットとを有する。パーフルオロスルホン酸ポリマーとしては、市販品も使用することができる。使用できる市販品としては、例えばナフィオン(Nafion:登録商標、DuPont社製)、アクイヴィオン(Aquivion:登録商標、Solvay社製)、フレミオン(Flemion:登録商標、旭硝子社製)、アシプレックス(Aciplex:登録商標、旭化成社製)等が挙げられる。
以下は、パーフルオロスルホン酸ポリマーの例示化合物(1)〜(3)であるが、これらに限定されない。例示化合物(1)及び(2)は、それぞれナフィオン(登録商標)及びアクイヴィオン(登録商標)である。例示化合物(3)は、3M社が提案するアイオノマーである。
酸性の官能基を有する炭化水素系ポリマーとしては、例えば酸性の官能基を有する芳香族ポリマー、脂肪族ポリマー等が挙げられる。
酸性の官能基を有する芳香族ポリマーとしては、例えばスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(SPEEK)、スルホン化ポリエーテルスルホン(SPES)、スルホン化ポリフェニルスルホン(SPPSU)、スルホン化ポリイミド、スルホン化ポリエーテルイミド、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリスチレン等が挙げられる。
以下は、酸性の官能基を有する芳香族ポリマーの例示化合物(11)〜(13)であるが、これらに限定されない。例示化合物(11)はSPEEK、例示化合物(12)はSPES、例示化合物(13)はスルホン化ポリエーテルイミドである。
酸性の官能基を有する脂肪族ポリマーとしては、例えばポリビニルスルホン酸、ポリビニルリン酸等が挙げられる。
アイオノマーのイオン交換容量(IEC:Ion Exchange Capacity)は、プロトン伝導性の向上の観点からは、0.6meq/g以上であることが好ましく、0.9meq/g以上がより好ましく、1.2meq/g以上がさらに好ましい。また、アイオノマーのイオン交換容量は、給水時の寸法安定性の観点からは、3meq/g以下であることが好ましく、2.5meq/g以下がより好ましく、2meq/g以下がさらに好ましい。よって、アイオノマーのイオン交換容量は、0.6〜3meq/gが好ましく、0.9〜2.5meq/gがより好ましく、1.2〜2meq/gがさらに好ましい。
担体がメソポーラスカーボンである場合、アイオノマー(I)に対する担体(C)の質量比(I/C)は、イオン伝導性を高める観点から、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.2以上であり、さらに好ましくは0.3以上である。一方、質量比(I/C)は、触媒を被覆するアイオノマーの厚みを抑えて、触媒活性を高める観点から、好ましくは2以下であり、より好ましくは1.5以下であり、さらに好ましくは1.1以下である。したがって、質量比としては、0.1〜2が好ましく、0.2〜1.5がより好ましく、0.3〜1.1がさらに好ましい。
触媒層21の厚みは、特に限定されないが、触媒層21の触媒性能及び触媒層21の形成性の観点から、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上がより好ましい。一方、ガス拡散性の観点からは、触媒層21の厚みは、50μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。したがって、触媒層21の厚みは、0.1〜50μmが好ましく、1〜20μmがより好ましい。
上述した燃料電池セル10の触媒層21は、触媒層用インクを調製するステップと、調製した触媒層用インクを電解質膜1の両面に塗布して触媒層21を形成するステップと、を経て形成することができる。
(触媒層用インクの製造方法)
触媒層用インクを調製するステップでは、細孔を有する担体、触媒及び溶媒を含む触媒層用インク中でアイオノマーを生成する。本実施形態において、触媒層用インクを調製するステップは、アイオノマーの材料を触媒、担体及び溶媒と混合し、混合物を得るステップと、混合物中で材料を反応させてアイオノマーを生成することで、触媒層用インクを得るステップと、を含む。
触媒層用インクを調製するステップでは、細孔を有する担体、触媒及び溶媒を含む触媒層用インク中でアイオノマーを生成する。本実施形態において、触媒層用インクを調製するステップは、アイオノマーの材料を触媒、担体及び溶媒と混合し、混合物を得るステップと、混合物中で材料を反応させてアイオノマーを生成することで、触媒層用インクを得るステップと、を含む。
(混合物を得るステップ)
触媒層用インクの溶媒としては、通常、水、アルコール等のプロトン性極性溶媒が使用され得る。例えば、担体としてメソポーラスカーボンを使用し、触媒として白金を使用する場合、メソポーラスカーボンを純水中に分散させ、この分散液中に硝酸を添加する。さらに、ジニトロジアミン白金塩水溶液を添加した後、エタノールを添加して加熱することにより還元する。これにより、外表面及び細孔の内部に白金粒子を担持したメソポーラスカーボンの分散液が得られる。得られた分散液にアイオノマーの材料を混合することにより、混合物が得られる。
触媒層用インクの溶媒としては、通常、水、アルコール等のプロトン性極性溶媒が使用され得る。例えば、担体としてメソポーラスカーボンを使用し、触媒として白金を使用する場合、メソポーラスカーボンを純水中に分散させ、この分散液中に硝酸を添加する。さらに、ジニトロジアミン白金塩水溶液を添加した後、エタノールを添加して加熱することにより還元する。これにより、外表面及び細孔の内部に白金粒子を担持したメソポーラスカーボンの分散液が得られる。得られた分散液にアイオノマーの材料を混合することにより、混合物が得られる。
(アイオノマーを生成するステップ)
得られた混合物中で、アイオノマーの材料を反応させてアイオノマーを生成する。アイオノマーの材料を複数回に分けて混合し、反応させてもよい。
アイオノマーは、ポリマーが疎水性を示し、酸性の官能基が親水性を示す。したがって、水、アルコール等の親水性溶媒中においてアイオノマー分子は凝集し、各アイオノマー分子のポリマーが配向して結晶化した疎水性部分の周囲に親水性部分が配列して、例えば直径10nm前後の比較的大きなコロイドが形成される傾向がある。コロイドのサイズが大きいために、アイオノマーは、溶媒中で担体の細孔の内部まで浸入することが難しく、担体の外表面を被覆するにとどまる傾向にある。
得られた混合物中で、アイオノマーの材料を反応させてアイオノマーを生成する。アイオノマーの材料を複数回に分けて混合し、反応させてもよい。
アイオノマーは、ポリマーが疎水性を示し、酸性の官能基が親水性を示す。したがって、水、アルコール等の親水性溶媒中においてアイオノマー分子は凝集し、各アイオノマー分子のポリマーが配向して結晶化した疎水性部分の周囲に親水性部分が配列して、例えば直径10nm前後の比較的大きなコロイドが形成される傾向がある。コロイドのサイズが大きいために、アイオノマーは、溶媒中で担体の細孔の内部まで浸入することが難しく、担体の外表面を被覆するにとどまる傾向にある。
これに対し、アイオノマーの材料は、ポリマーではなくモノマーであり、細孔の内径よりもサイズが小さい。そのため、触媒層用インク中で担体の細孔内に材料を浸入させた後、材料を反応させることにより、担体の細孔内部でアイオノマーを生成することができる。すなわち、触媒層用インク中のアイオノマーは、担体の外表面だけでなく細孔内部にも存在する。このような触媒層用インクを用いて形成された触媒層では、担体の外表面だけでなく細孔内部に担持された触媒もアイオノマーによって被覆される。担体の外表面に担持された触媒に加えて細孔内部の触媒の触媒作用も得られるため、触媒利用率が向上する。
触媒層用インク中のアイオノマーは、電解質として使用可能な酸性の官能基を有するポリマーであってもよいし、酸性の官能基の前駆体を有するポリマーであってもよい。前駆体としては、例えば−SO2F、−SO2Cl等のハロゲン化した酸性の官能基、−SO3Na、−SO3(NH4)等の酸性の官能基を金属等によって保護した保護基等が挙げられる。アイオノマーが酸性の官能基の前駆体を有するポリマーである場合、ケン化等のプロトン化の操作を行って酸性の官能基に変換することにより、アイオノマーを電解質として使用することが可能になる。
アイオノマーが、パーフルオロスルホン酸ポリマーである場合、例えばモノマーとしてテトラフルオロエチレンを使用して重合反応させることにより、テトラフルオロエチレンに由来する繰り返し構造を有するポリマー、すなわちポリテトラフルオロエチレンを生成する。さらに、パーフルオロスルホン酸前駆体を混合してこのポリテトラフルオロエチレンと反応させて、ポリテトラフルオロエチレンユニットと、パーフルオロスルホン酸前駆体のユニットとを有するパーフルオロスルホン酸ポリマーを生成する。なお、パーフルオロスルホン酸ポリマーの反応工程はこれに限定されず、目的のパーフルオロスルホン酸ポリマーに最適な反応工程により生成すればよい。
アイオノマーが、酸性の官能基を有する芳香族ポリマーである場合、酸性の官能基又はその前駆体を有する芳香族ビニルモノマーの重合反応、芳香族ビニルモノマーと酸性の官能基又はその前駆体を有するビニルモノマーの重合反応、ビニルモノマーと酸性の官能基又はその前駆体を有する芳香族ビニルモノマーの重合反応等によって、触媒層用インク中に酸性の官能基又はその前駆体を有する芳香族ポリマーを生成する。使用できる芳香族ビニルモノマーは、目的の芳香族ポリマーの設計に応じて適宜選択することができ、例えばスチレン、メチルスチレン、ベンゾフェノン、4,4′−ジフルオロベンゾフェノン、4,4′−ジクロロジフェニルスルホン、ヒドロキノン等が挙げられる。反応工程は上記に限定されず、例えば4,4′−ジフルオロベンゾフェノンとヒドロキノンを炭酸カリウムの存在下で重合反応させてPEEKを生成した後、硫酸と混合して所定温度で所定時間撹拌することにより、PEEKをスルホン化反応させて、上記例示化合物(11)のSPEEKを生成することができる。
アイオノマーが、酸性の官能基を有する脂肪族ポリマーである場合、酸性の官能基又はその前駆体を有する脂肪族ビニルモノマーの重合反応、酸性の官能基又はその前駆体を有する脂肪族ビニルモノマーと脂肪族ビニルモノマーとの重合反応等によって、触媒層用インク中に酸性の官能基又はその前駆体を有する脂肪族ポリマーを生成する。使用できる脂肪族ビニルモノマーは、目的の脂肪族ポリマーの設計に応じて適宜選択することができ、例えばアクリロニトリル等のアクリル系ビニルモノマー、エチレン、プロピレン等のオレフィン等が挙げられる。
重合反応には、重合開始剤を使用できる。使用できる重合開始剤としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、4,4′−アゾビス4−シアノ吉草酸及びその塩、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩等のアゾ系化合物、パーオキシド化合物等が挙げられる。
以上のようにして製造された触媒層用インクは、触媒層用インク中のアイオノマーが担体の細孔内部でも生成されるため、担体の外表面だけでなく細孔内部にもアイオノマーを存在させることができる。このような触媒層用インクを用いて触媒層を形成することにより、担体の外表面だけでなく細孔内に位置する触媒粒子もアイオノマーで被覆された触媒層を得ることができる。
図2は、アイオノマーが細孔の内部まで浸入した担体の一例を示す。
図2に示すように、触媒11は担体12の外表面及び細孔内に担持されている。アイオノマー13は、担体12の外表面だけでなく細孔の内部にも存在して、担体12及び触媒11を被覆している。アイオノマー13によって、外表面だけでなく細孔内に担持された触媒11へのイオン伝導が可能であり、触媒利用率が向上する。
図2に示すように、触媒11は担体12の外表面及び細孔内に担持されている。アイオノマー13は、担体12の外表面だけでなく細孔の内部にも存在して、担体12及び触媒11を被覆している。アイオノマー13によって、外表面だけでなく細孔内に担持された触媒11へのイオン伝導が可能であり、触媒利用率が向上する。
図3は、アイオノマーによって外表面のみが被覆された担体の例を示す。
図3に示すように、担体12の細孔よりもサイズが大きいアイオノマー13は、担体12の細孔の内部に浸入できず、細孔内に担持された触媒11へのイオン伝導率が下がる。触媒作用は、アイオノマー13によって被覆された担体12の外表面に存在する触媒11によるところとなり、図2に示す例と比べて触媒利用率が低下する。
図3に示すように、担体12の細孔よりもサイズが大きいアイオノマー13は、担体12の細孔の内部に浸入できず、細孔内に担持された触媒11へのイオン伝導率が下がる。触媒作用は、アイオノマー13によって被覆された担体12の外表面に存在する触媒11によるところとなり、図2に示す例と比べて触媒利用率が低下する。
(燃料電池の製造方法)
上述した燃料電池セル10は、触媒層用インクを調製するステップと、電解質膜1の両面に触媒層用インクを塗布して触媒層21を形成するステップと、を経て製造され得る。触媒層用インクを調製するステップでは、上述のように、触媒層用インク中でアイオノマーを生成する。
上述した燃料電池セル10は、触媒層用インクを調製するステップと、電解質膜1の両面に触媒層用インクを塗布して触媒層21を形成するステップと、を経て製造され得る。触媒層用インクを調製するステップでは、上述のように、触媒層用インク中でアイオノマーを生成する。
次いで、形成した触媒層21をカーボン繊維シート等で挟み、熱圧着することで、ガス拡散層22を形成する。これにより、電解質膜1及び電極2の膜電極接合体4が得られる。膜電極接合体4の各電極2側の面を、2枚のセパレータ3で挟むことにより、燃料電池セル10が得られる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、本発明の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
10・・・燃料電池セル、4・・・膜電極接合体、1・・・電解質膜、2・・・電極、21・・・触媒層、22・・・ガス拡散層、3・・・セパレータ
Claims (5)
- アイオノマー、触媒、細孔を有する担体及び溶媒を含む触媒層用インクを製造する方法であって、
前記触媒層用インク中の前記アイオノマーが、酸性の官能基又はその前駆体を有するポリマーであり、
前記アイオノマーの材料を、前記触媒、前記担体及び前記溶媒と混合し、混合物を得るステップと、
前記混合物中で前記材料を反応させて前記アイオノマーを生成することで、前記触媒層用インクを得るステップと、
を含む触媒層用インクの製造方法。 - 前記触媒層用インク中の前記アイオノマーが、テトラフルオロエチレンに由来する繰り返し構造を有するポリマーユニットと、パーフルオロスルホン酸又はその前駆体のユニットと、を有するパーフルオロスルホン酸ポリマーである、
請求項1に記載の触媒層用インクの製造方法。 - 前記触媒層用インク中の前記アイオノマーが、酸性の官能基又はその前駆体を有する炭化水素系ポリマーである、
請求項1に記載の触媒層用インクの製造方法。 - 前記触媒層用インク中の前記アイオノマーが、前記担体の細孔内に存在する、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の触媒層用インクの製造方法。 - 電解質膜(1)の両面に触媒層(21)を有する燃料電池の製造方法であって、
アイオノマー、触媒、細孔を有する担体及び溶媒を含む触媒層用インクを調製するステップと、
前記触媒層用インクを前記電解質膜の両面に塗布して前記触媒層を形成するステップと、を含み、
前記触媒層用インク中の前記アイオノマーが、酸性の官能基又はその前駆体を有するポリマーであり、
前記触媒層用インクを調製するステップは、
前記アイオノマーの材料を、前記触媒、前記担体及び前記溶媒と混合し、混合物を得るステップと、
前記混合物中で前記材料を反応させて前記アイオノマーを生成することで、前記触媒層用インクを得るステップと、
を含む燃料電池の製造方法。
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