JP2019199422A - イソシアネートの製造方法 - Google Patents

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信寿 三宅
櫻井 雄介
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Masaaki Shinohata
雅亮 篠畑
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Abstract

【課題】副反応を抑制し、連続的にイソシアネートを製造するイソシアネートの製造方法を提供する。【解決手段】イソシアネートの製造方法は、カルバメートの熱分解によってイソシアネートを製造する方法であって、カルバメートと、高沸点のアルコールである化合物(A)とを含む混合液を、熱分解反応器に連続的に導入して、カルバメートの熱分解反応を行う熱分解工程と、前記化合物(A)よりも標準沸点が低い低沸点分解生成物を、前記熱分解反応器から気体状で連続的に抜き出す低沸点分解生成物回収工程と、前記低沸点分解生成物回収工程で気体状で回収されなかった液相成分を高沸点成分として前記熱分解反応器から連続的に抜き出す高沸点成分回収工程と、を含む方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、イソシアネートの製造方法に関する。
イソシアネートは、ポリウレタンフォーム、塗料、接着剤等の製造原料として広く用いられている。イソシアネートの主な工業的製造方法は、アミン化合物とホスゲンとの反応(ホスゲン法)であり、全世界の生産量のほぼ全量がホスゲン法により生産されている。しかしながら、ホスゲン法には多くの問題がある。
第1に、原料としてホスゲンを大量に使用することである。ホスゲンは極めて毒性が高く、従業者への暴露を防ぐためにその取扱いには特別の注意を要し、廃棄物を除去するための特別の装置が必要である。
第2に、ホスゲン法においては、腐食性の高い塩化水素が大量に副生するため、塩化水素を除去するためのプロセスが必要となる。さらに、製造されたイソシアネートには多くの場合、加水分解性塩素が含有されることになる。このため、ホスゲン法で製造されたイソシアネートを使用すると、ポリウレタン製品の耐候性、耐熱性に悪影響を及ぼす場合がある。
このような背景から、ホスゲンを使用しないイソシアネート化合物の製造方法が望まれている。ホスゲンを使用しないイソシアネート化合物の製造方法の一つとして、カルバミン酸エステルの熱分解による方法が提案されている。カルバミン酸エステルの熱分解によってイソシアネートとヒドロキシ化合物とが得られることは公知である(例えば、非特許文献1参照)。その基本反応は下記一般式(1)によって例示される。
Figure 2019199422
一般式(1)中、Rは、a価の有機残基である。R’は、1価の有機残基である。aは、1以上の整数である。
特許文献1には、フラスコ中、不活性溶媒存在下でカルバメートを熱分解してイソシアネートを製造する方法が開示されている。また、特許文献2には、芳香族ヒドロキシ化合物と炭酸誘導体との存在下でカルバメートを熱分解し、イソシアネートを製造する方法が開示されている。
一方、カルバミン酸エステルの熱分解反応において、カルバミン酸エステルの好ましくない熱変性反応や、該熱分解によって生成するイソシアネートの縮合反応等、種々の不可逆な副反応を併発しやすい(例えば、非特許文献1、2参照)。
これらの副反応は、目的とするイソシアネートの収率や選択率の低下を招くばかりでなく、特にポリイソシアネートの製造においては、ポリマー状固形物が析出し、反応器を閉塞させる等、長期操業が困難となる場合があった。
特開2003−252846号公報 特開2012−233014号公報
Berchte der Deutechen ChemischenGesellschaft,第3巻,653頁,1870年. Journal of American Chemical Society,第81巻,2138頁,1959年.
上記特許文献1の方法では、反応器にカルバメートを供給して、生成するイソシアネートを抜出しながら熱分解を行う方法を開示しているが、副反応によって生成する高沸点成分を抜き出す機構がないために、長時間に亘って連続的にイソシアネートを製造することは困難である。
また、上記特許文献2の方法では、カルバメートの熱分解によって生成するイソシアネートを低沸点分解生成物として連続的に抜き出すものの、生成するイソシアネートとヒドロキシ化合物との反応によって生じるカルバメートは反応器底部に落下し、反応器底部にて副反応によって高沸点成分を生じるために、イソシアネートの収率が低下する傾向がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、副反応を抑制し、連続的にイソシアネートを製造するイソシアネートの製造方法を提供する。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
本発明の第1態様に係るイソシアネートの製造方法は、カルバメートの熱分解によってイソシアネートを製造する方法であって、カルバメートと、下記一般式(S1)で表される化合物、下記一般式(S2)で表される化合物、及び下記一般式(S3)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(A)とを含む混合液を、熱分解反応器に連続的に導入して、カルバメートの熱分解反応を行う熱分解工程と、前記化合物(A)よりも標準沸点が低い低沸点分解生成物を、前記熱分解反応器から気体状で連続的に抜き出す低沸点分解生成物回収工程と、前記低沸点分解生成物回収工程で気体状で回収されなかった液相成分を高沸点成分として前記熱分解反応器から連続的に抜き出す高沸点成分回収工程と、を含む方法である。
Figure 2019199422
(一般式(S1)中、R401、R402、R403はそれぞれ独立に、炭素数1以上60以下で飽和又は不飽和の直鎖状若しくは分岐鎖状の炭化水素基であり、R401、R402又はR403がメチレン基を有する場合、前記メチレン基は、酸素原子、アリーレン基、シクロアルキレン基又はNH基で置換されていてもよく、R401、R402又はR403がCH基を有する場合、前記CH基は窒素原子で置換されていてもよく、R401、R402又はR403を構成する1又は複数の水素原子はハロゲン原子又はヒドロキシ基で置換されていてもよく、R401、R402又はR403は互いに結合して単環又は多環を形成していてもよい。)
Figure 2019199422
(一般式(S2)中、R404、R405はそれぞれ独立に、炭素数1以上60以下で飽和又は不飽和の直鎖状若しくは分岐鎖状の炭化水素基であり、R404又はR405がメチレン基を有する場合、前記メチレン基は、酸素原子、アリーレン基、シクロアルキレン基又はNH基で置換されていてもよく、R404又はR405がCH基を有する場合、前記CH基は窒素原子で置換されていてもよく、R404又はR405を構成する1又は複数の水素原子はハロゲン原子又はヒドロキシ基で置換されていてもよく、R404又はR405は互いに結合して単環又は多環を形成していてもよい。)
Figure 2019199422
(一般式(S3)中、R406は、炭素数1以上60以下で飽和又は不飽和の直鎖状若しくは分岐鎖状の炭化水素基であり、R406がメチレン基を有する場合、前記メチレン基は酸素原子、アリーレン基、シクロアルキレン基又はNH基で置換されていてもよく、R406がCH基を有する場合、前記CH基は窒素原子で置換されていてもよく、R406を構成する1又は複数の水素原子はハロゲン原子又はヒドロキシ基で置換されていてもよく、前記分岐鎖は互いに結合して環を形成していてもよい。)
上記第1態様に係るイソシアネートの製造方法において、前記混合液が不活性溶媒を更に含み、前記低沸点分解生成物回収工程において、前記低沸点分解生成物と前記不活性溶媒とを、前記熱分解反応器から気体状で連続的に抜き出し、前記不活性溶媒は、熱分解反応条件下において実質的に不活性であり、且つ、その標準沸点が、化合物(A)の標準沸点よりも低く、熱分解によって生成するイソシアネート及びヒドロキシ化合物の標準沸点の間にあってもよい。
上記第1態様に係るイソシアネートの製造方法において、前記カルバメートが、アミノ酸エステル由来のカルバメートであってもよい。
上記第1態様に係るイソシアネートの製造方法において、前記熱分解反応器が管型反応器であってもよい。
上記第1態様に係るイソシアネートの製造方法において、前記低沸点分解生成物が前記イソシアネートを含み、前記低沸点分解生成物が気体状で蒸留塔に供給され、前記蒸留塔にて前記イソシアネートを分離する分離工程を更に含んでもよい。
上記第1態様に係るイソシアネートの製造方法において、熱分解反応条件下で、実質的に不活性であり、且つ、気体状態の搬送剤を前記熱分解反応器に導入し、気体状成分を前記熱分解反応器より搬出させてもよい。
上記態様のイソシアネートの製造方法によれば、副反応を抑制し、連続的にイソシアネートを製造することができる。
実施例1で用いたイソシアネートの製造装置の構造を示す模式図である。 実施例2で用いたイソシアネートの製造装置の構造を示す模式図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の本実施形態に限定するものではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
≪イソシアネートの製造方法≫
本実施形態のイソシアネートの製造方法は、カルバメートを熱分解して、イソシアネートを製造する方法である。
本実施形態のイソシアネートの製造方法は、熱分解工程と、低沸点分解生成物回収工程と、高沸点成分回収工程とを含む方法である。
熱分解工程では、カルバメートと、下記一般式(S1)で表される化合物(以下、「化合物(S1)」という場合がある。)、下記一般式(S2)で表される化合物(以下、「化合物(S2)」という場合がある。)、及び下記一般式(S3)で表される化合物(以下、「化合物(S3)」という場合がある。)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(A)とを含む混合液を、熱分解反応器に連続的に導入して、カルバメートの熱分解反応を行う。
低沸点分解生成物回収工程では、前記化合物(A)よりも標準沸点が低い低沸点分解生成物を、前記熱分解反応器から気体状で連続的に抜き出す。
高沸点成分回収工程では、前記低沸点分解生成物回収工程で気体状で回収されなかった液相成分を高沸点成分として前記熱分解反応器から連続的に抜き出す。
Figure 2019199422
(一般式(S1)中、R401、R402、R403はそれぞれ独立に、炭素数1以上60以下で飽和又は不飽和の直鎖状若しくは分岐鎖状の炭化水素基であり、R401、R402又はR403がメチレン基を有する場合、前記メチレン基は、酸素原子、アリーレン基、シクロアルキレン基又はNH基で置換されていてもよく、R401、R402又はR403がCH基を有する場合、前記CH基は窒素原子で置換されていてもよく、R401、R402又はR403を構成する1又は複数の水素原子はハロゲン原子又はヒドロキシ基で置換されていてもよく、R401、R402又はR403は互いに結合して単環又は多環を形成していてもよい。)
Figure 2019199422
(一般式(S2)中、R404、R405はそれぞれ独立に、炭素数1以上60以下で飽和又は不飽和の直鎖状若しくは分岐鎖状の炭化水素基であり、R404又はR405がメチレン基を有する場合、前記メチレン基は、酸素原子、アリーレン基、シクロアルキレン基又はNH基で置換されていてもよく、R404又はR405がCH基を有する場合、前記CH基は窒素原子で置換されていてもよく、R404又はR405を構成する1又は複数の水素原子はハロゲン原子又はヒドロキシ基で置換されていてもよく、R404又はR405は互いに結合して単環又は多環を形成していてもよい。)
Figure 2019199422
(一般式(S3)中、R406は、炭素数1以上60以下で飽和又は不飽和の直鎖状若しくは分岐鎖状の炭化水素基であり、R406がメチレン基を有する場合、前記メチレン基は酸素原子、アリーレン基、シクロアルキレン基又はNH基で置換されていてもよく、R406がCH基を有する場合、前記CH基は窒素原子で置換されていてもよく、R406を構成する1又は複数の水素原子はハロゲン原子又はヒドロキシ基で置換されていてもよく、前記分岐鎖は互いに結合して環を形成していてもよい。)
本実施形態の製造方法によれば、副反応を抑制し、連続的にイソシアネートを製造することができる。
以下、各工程について、それぞれ説明する。
[熱分解工程]
本工程は、カルバメートと、化合物(A)とを含む混合液を熱分解反応器に連続的に導入して熱分解反応を付することによって、イソシアネートを得る工程である。この熱分解反応は、カルバメートからイソシアネートとヒドロキシ化合物(好ましくは、芳香族ヒドロキシ化合物)とを生成させる反応である。本工程は、液相で行うことが好ましい。
また、混合液は、不活性溶媒を更に含んでもよい。不活性溶媒は、熱分解反応条件下において実質的に不活性であり、且つ、その標準沸点が、化合物(A)の標準沸点よりも低く、熱分解によって生成するイソシアネート及びヒドロキシ化合物の標準沸点の間にある。すなわち、混合液中において、各成分の標準沸点は、ヒドロキシ化合物、不活性溶媒、イソシアネート、及び化合物(A)の順に高くなる。
なお、本明細書において、「実質的に不活性」とは、カルバメートの熱分解が行われる条件下において、カルバメート、及び、熱分解生成物であるイソシアネート、ヒドロキシ化合物と反応しない、若しくは、反応した場合でもカルバメートの熱分解に対して大きな影響を及ぼさないという意味である。
本工程で使用されるカルバメートは、後述する製造方法により得られるカルバメートであることが好ましい。
また、本工程で使用される不活性溶媒及び化合物(A)についても後述する。
混合液中におけるカルバメートの含有量は、混合液の総質量に対して、通常、1質量%以上50質量%以下であり、3質量%以上40質量%以下が好ましく、5質量%以上30質量%以下がより好ましい。
カルバメートの含有量が上記下限値以上であることにより、イソシアネートの空時収率がより向上し、工業的に実施する場合には有利となる傾向がある。また、上記上限値以下であることにより、熱分解時に副反応がより抑制される傾向にある。
反応温度は、通常100℃以上300℃以下の範囲であり、反応速度を高めるためには高温が好ましいが、カルバメート及び生成物であるイソシアネートのうち少なくともいずれか一方の化合物による副反応をより抑制する観点から、150℃以上250℃以下の範囲が好ましい。
反応温度を一定にするために、上記熱分解反応器に公知の冷却装置及び加熱装置を設置してもよい。
また、反応圧力は、用いる化合物の種類や反応温度によって異なるが、減圧、常圧及び加圧のいずれであってもよく、通常1Pa以上1×10Pa以下の範囲で行われる。
反応時間(滞留時間)に、特に制限はなく、通常0.001時間以上100時間以下が好ましく、0.005時間以上50時間以下がより好ましく、0.01時間以上10時間以下がさらに好ましい。
熱分解反応器の形式に、特に制限はないが、気相成分を効率よく回収するために、公知の蒸留装置を使用することが好ましく、蒸発缶、連続多段蒸留塔、充填塔、薄膜蒸発器及び流下膜蒸発器からなる群より選ばれる少なくとも1つの反応器から構成されることがより好ましい。
これらの他にも、例えば、蒸留塔、多段蒸留塔、多管式反応器、内部に支持体を備えた反応器、強制循環反応器、落膜蒸発器及び落滴蒸発器のいずれかを含む反応器を用いる方式、並びに、これらを組み合わせた方式等、公知の種々の方法が用いられる。
化合物(A)よりも低い標準沸点を有する低沸点分解生成物を素早く反応系から除去する観点からは、充填塔又は管型反応器が好ましく、管型反応器がより好ましく、管型薄膜蒸発器、管型流下膜蒸発器等の管型反応器を用いる方法がさらに好ましい。また、これら反応器の内部構造としては、生成する低沸点分解生成物を気相にすみやかに移動させられる気−液接触面積の大きな構造が好ましい。
充填塔を用いる場合、充填塔が備える固体充填材としては、蒸留塔や吸収塔に一般的に使用されている充填材を適宜使用できる。好ましい固体充填材として具体的には、例えば、ラシヒリング、レッシングリング、スパイラルリング、ボールリング、インターロックスサドル、ステッドマンパッキング、マクマホンパッキング、ディクソンパッキング、ヘリックスパッキング、コイルパッキング、ヒートパイプパッキング等が挙げられる。
固体充填材の材質は、磁製、金属製等特に限定されない。中でも、固体充填材の材質としては、熱伝導性の高い材質が好ましい。
熱分解反応器及びラインの材質は、カルバメートやその生成物であるヒドロキシ化合物、イソシアネート等に悪影響を及ぼさない公知のものを適宜選択して用いることができるが、例えば、SUS304、SUS316、SUS316L等が安価であり、好ましく使用できる。
本工程において、触媒は必ずしも必要ではないが、反応温度を低下させる目的や、反応を早期に完結させるために、触媒を使用することができる。
触媒の使用量は、カルバメートの質量に対して0.01質量%以上30質量%以下が好ましく、0.5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
触媒としては、例えば、ルイス酸及びルイス酸を生成する遷移金属化合物、有機スズ化合物、銅族金属を含む化合物、鉛を含む化合物、亜鉛を含む化合物、鉄族金属を含む化合物、アミン類等が挙げられる。
ルイス酸及びルイス酸を生成する遷移金属化合物として具体的には、例えば、AlX、TiX、TiX、VOX、VX、ZnX、FeX、SnX等が挙げられる。ここで、「X」は、ハロゲン、アセトキシ基、アルコキシ基又はアリーロキシ基である。
有機スズ化合物として具体的には、例えば、(CHSnOCOCH、(C)SnOCOC、BuSnOCOCH、PhSnOCOCH、BuSn(OCOCH、BuSn(OCOC1123(ジラウリン酸ジブチルスズ)、PhSnOCH、(CSnOPh、BuSn(OCH、BuSn(OC、BuSn(OPh)、PhSn(CH、(CSnOH、PhSnOH、BuSnO、(C17SnO、BuSnCl、BuSnO(OH)、オクチル酸スズ等が挙げられる。ここで、「Bu」はブチル基、「Ph」はフェニル基である。
銅族金属を含む化合物として具体的には、例えば、CuCl、CuCl、CuBr、CuBr、CuI、CuI、Cu(OAc)、Cu(acac)、オレフィン酸銅、BuCu、(CHO)Cu、AgNO、AgBr、ピクリン酸銀、AgCClO等が挙げられる。ここで、「acac」はアセチルアセトンキレート配位子である。
鉛を含む化合物として具体的には、例えば、オクチル酸鉛等が挙げられる。
亜鉛を含む化合物として具体的には、例えば、Zn(acac)等が挙げられる。
鉄族金属を含む化合物として具体的には、例えば、Fe(C10)(CO)、Fe(CO)、Fe(C)(CO)、Co(メシチレン)(PEtPh)、CoC(CO)、フェロセン等が挙げられる。
アミン類として具体的には、例えば、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
中でも、触媒としては、ジラウリン酸ジブチルスズ、オクチル酸鉛又はオクチル酸スズが好ましい。これらの触媒は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
[低沸点分解生成物回収工程]
本工程は、カルバメートの熱分解反応によって生成する低沸点分解生成物を熱分解反応器から気体状で連続的に抜き出す工程である。ここでいう「低沸点分解生成物」とは、カルバメートの熱分解反応によって生成するイソシアネート及びヒドロキシ化合物のうち、化合物(A)よりも標準沸点が低い化合物を指す。低沸点分解生成物としては、ヒドロキシ化合物及びイソシアネートのうち少なくとも一方が好ましく、ヒドロキシ化合物及びイソシアネートが好ましい。また、混合液が不活性溶媒を含む場合には、本工程において、低沸点分解生成物と不活性溶媒とを熱分解反応器から気体状で連続的に抜き出す。
これらの成分を気体状態で回収するために、使用する化合物やカルバメートの熱分解反応によって生成する化合物に応じて、該工程をおこなうための温度、圧力等の条件を設定することが好ましい。
また、低沸点分解生成物の回収を速やかに行うために、熱分解反応器に搬送剤を導入し、搬送剤を含む気体状成分を熱分解反応器より搬出させることもできる。ここでいう「搬送剤」とは、熱分解反応条件下で、実質的に不活性であり、且つ、気体状態であるものを指す。
このような搬送剤として具体的には、例えば、不活性ガス、炭化水素ガス類等が挙げられる。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、炭酸ガス、メタン、エタン、プロパン等が挙げられる。中でも、搬送剤としては、窒素等の不活性ガスが好ましい。
同様な効果を奏するものとして、低沸点の有機溶媒類を用いてもよい。低沸点の有機溶媒類としては、例えば、ハロゲン化炭化水素類、低級炭化水素類、エーテル類等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素類としては、例えば、ジクロルメタン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられる。低級炭化水素類としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン等が挙げられる。エーテル類としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。
これらの搬送剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの搬送剤は、予め加熱して用いることが好ましい。
熱分解反応器より回収された気体状の低沸点分解生成物、又は、低沸点分解生成物及び不活性溶媒は、そのままの状態で冷却器に導入し、一部又は全部を液状で回収してもよい。また、気体状態で、又は、冷却器に導入して液状とした状態で、蒸留塔に供給して精製分離を行ってもよい。
[高沸点成分回収工程]
本工程では、前記低沸点分解生成物回収工程で気体状で回収されなかった液相成分を高沸点成分として反応器から連続的に抜き出し回収する。上記低沸点分解生成物回収工程で、熱分解反応器に供給される化合物(A)よりも標準沸点が低い低沸点分解生成物、又は、低沸点分解生成物及び不活性溶媒が気体状で回収される。そのため、本工程で回収される高沸点成分は、前記低沸点分解生成物回収工程で気体状で回収されなかった液相成分であり、熱分解反応に供給される化合物(A)と標準沸点が同じか、化合物(A)よりも標準沸点が高い成分であると解される。高沸点成分には、カルバメートの熱分解によって生成するイソシアネートとカルバメートとによる副反応生成物、イソシアネートによる副反応生成物、カルバメートによる副反応生成物、これらの副反応生成物がさらに反応して生成する化合物等が含まれる場合が多い。これらの化合物は上記低沸点分解生成物回収工程で気体状で回収されない場合が多い一方、反応器の表面に付着して閉塞等を引き起こす原因となる場合が多い。そのため、熱分解反応に供給される化合物(A)とともに熱分解反応器から液相成分として連続的に回収することによって、反応器表面への付着を防止する効果を奏する。
以上に示した、熱分解工程、低沸点分解生成物回収工程及び高沸点成分回収工程は、複数の装置を用いて各工程を個別に行ってもよく、1つの装置を用いて同時に行ってもよい。
[その他工程]
本実施形態のイソシアネートの製造方法は、上記熱分解工程、上記低沸点分解生成物回収工程及び上記高沸点成分回収工程に加えて、例えば、分離工程、カルバメート製造工程等を更に含んでもよい。
(分離工程)
分離工程では、上記低沸点分解生成物回収工程で回収された低沸点分解生成物に含まれるイソシアネートを分離精製する。具体的には、上記低沸点分解生成物回収工程で回収された低沸点分解生成物を気体状で、蒸留塔に供給し、イソシアネートと、ヒドロキシ化合物とを分離し、高精製度のイソシアネートを得る。蒸留条件、蒸留装置等は、イソシアネート及びヒドロキシ化合物等の種類等に応じて、公知の条件及び装置から適宜選択することができる。
(カルバメート製造工程)
熱分解工程で使用されるカルバメートは、以下に示す方法を用いて製造することが好ましい。また、得られるイソシアネートの品質や収率の観点から、低沸点分解生成物としてヒドロキシル化合物を、高沸点分解生成物としてイソシアネートを与えるアミノ酸エステル由来のカルバメートであることが好ましい。
本工程では、炭酸エステルと、アミン化合物とを反応させて、炭酸エステル及びアミン化合物の反応生成物であるカルバメートと、炭酸エステルの反応副生成物であるヒドロキシ化合物と、炭酸エステルとを含有する反応混合物を得る。
炭酸エステルとアミン化合物との反応は、反応溶媒中で行ってもよい。また、アミン化合物のアミノ基のモル量に対して過剰量使用される炭酸エステルは、該反応における溶媒として好適に使用される。
炭酸エステルとアミン化合物との反応条件は、反応させる化合物によって異なるが、アミン化合物のアミノ基のモル量に対する炭酸エステルのモル量は、化学量論比で、1倍以上とすることができ、反応速度を高め、反応を早期に完結させる観点から、アミン化合物のアミノ基のモル量に対する炭酸エステルのモル量は過剰量が好ましく、1倍以上1000倍以下の範囲がより好ましく、反応器の大きさを考慮すると、1.1倍以上50倍以下の範囲がさらに好ましく、1.5倍以上10倍以下の範囲が特に好ましい。
反応温度は、通常、0℃以上150℃以下の範囲とすることができ、反応速度を高めるためには高温が好ましいが、一方で、高温では好ましくない反応も起こる場合があるので、10℃以上100℃以下の範囲が好ましい。反応温度を一定にするために、上記反応器に公知の冷却装置及び加熱装置を設置してもよい。
また、反応圧力は、用いる化合物の種類や反応温度によって異なるが、減圧、常圧及び加圧のいずれであってもよく、通常20Pa以上1×10Pa以下の範囲で行われる。反応時間(連続法の場合は滞留時間)に、特に制限はなく通常0.001時間以上50時間以下が好ましく、0.01時間以上20時間以下がより好ましく、0.1時間以上10時間以下がさらに好ましい。また、反応液を採取し、例えば、液体クロマトグラフィーによって所望する量のカルバメートが生成していることを確認して反応を終了することができる。
炭酸エステルとアミン化合物との反応において、触媒を使用してもよく、使用しなくてもよい。触媒を使用しない場合には、触媒に由来する金属成分の影響によるカルバメートの熱変性を防止できる。
触媒を使用する場合には、反応を短時間で完結でき、反応温度を低くすることができる。
特に、使用する化合物が無機酸又は有機酸との塩を形成している場合には、塩基性化合物を用いることができる。
塩基性化合物としては、無機塩基であってもよく、有機塩基であってもよい。無機塩基としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア等が挙げられる。有機塩基としては、例えば、アミン、フォスファゼン等が挙げられる。中でも、塩基性化合物としては、アミンが好ましく、脂肪族アミンがより好ましく、第2級脂肪族アミン又は第3級脂肪族アミンがさらに好ましい。
塩基性化合物の使用量は、使用する化合物によって適宜選択されるが、塩を形成しているアミン化合物のアミノ基のモル量に対する塩基性化合物のモル量が化学量論比で、0.001倍以上が好ましく、0.01倍以上100倍以下の範囲がより好ましい。
炭酸エステルとアミン化合物との反応において使用される反応器は、公知の槽型反応器、塔型反応器、蒸留塔が使用できる。反応器及びラインの材質は、出発物質や反応物質に悪影響を及ぼさなければ、公知のものを適宜選択して使用することができるが、SUS304、SUS316、SUS316L等が安価であり、好ましく使用できる。
<各原料及び反応生成物>
以下、本実施形態の製造方法において用いられる各原料及び反応生成物について説明する。
[カルバメート]
本実施形態の製造方法で用いられるカルバメートは、下記一般式(2)で表されるカルバメート(以下、「カルバメート(2)」と称する場合がある)が好ましい。なお、ここでいう「カルバメート」は、上記「カルバメート製造工程」により得られるカルバメートに限定されず、本実施形態の製造方法に使用することができる、あらゆるカルバメートを包含する。
Figure 2019199422
一般式(2)中、n21は、1以上の整数である。R21はn21価の有機基である。R22はヒドロキシ化合物から1つのヒドロキシ基を除いた残基である。
(n21)
一般式(2)中、製造の容易性や取り扱いの容易性を考慮すると、n21は、1以上5以下の整数が好ましく、2又は3がより好ましく、3がさらに好ましい。
(R21
一般式(2)中、R21としては、炭素数3以上85以下の有機基が好ましく、炭素数3以上30以下の有機基がより好ましい。R21における有機基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合してなる基である。具体的なR21としては、例えば、環式炭化水素基、非環式炭化水素基、非環式炭化水素基と1種以上の環式基とが結合した基、及び、これらの基が特定の非金属原子と共有結合している基等が挙げられる。前記環式基としては、例えば、環式炭化水素基、ヘテロ環基、ヘテロ環式スピロ基、ヘテロ架橋環基等が挙げられる。前記環式炭化水素基としては、例えば、単環式炭化水素基、縮合多環式炭化水素基、架橋環式炭化水素基、スピロ炭化水素基、環集合炭化水素基、側鎖のある環式炭化水素基等が挙げられる。前記非金属原子としては、例えば、炭素、酸素、窒素、硫黄、ケイ素等が挙げられる。
(R22
一般式(2)中、R22としては、ヒドロキシ化合物から1つのヒドロキシ基を除いた残基であり、炭素数1以上20以下の1価の脂肪族炭化水素基、又は、炭素数6以上20以下の1価の芳香族炭化水素基が好ましい。炭素数1以上20以下の1価の脂肪族炭化水素基及び炭素数6以上20以下の1価の芳香族炭化水素基は置換基を有してもよい。
22における炭素数1以上20以下の1価の脂肪族炭化水素基は、鎖状でもよく、環状であってもよい。
鎖状の脂肪族炭化水素基としては、例えば、直鎖状のアルキル基、分岐鎖状のアルキル基等が挙げられる。直鎖状のアルキル基の炭素数は1以上5以下が好ましく、1以上4以下がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。直鎖状のアルキル基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。分岐鎖状のアルキル基の炭素数は3以上10以下が好ましく、3以上5以下がより好ましい。分岐鎖状のアルキル基として具体的には、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、2,2−ジメチルブチル基等が挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基(すなわち、脂環式炭化水素基)としては、単環式であってもよく、多環式であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基として具体的には、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基として具体的には、例えば、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
また、R22における芳香族炭化水素基としては、炭素数6以上20以下が好ましく、炭素数6以上12以下がより好ましい。R22を炭素数21以上の芳香族炭化水素基とすることもできるが、カルバメートの熱分解反応によって生成するイソシアネートとの分離を容易にするという観点から、R22を構成する炭素数は20以下が好ましい。
22における芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基(各異性体)、エチルフェニル基(各異性体)、プロピルフェニル基(各異性体)、ブチルフェニル基(各異性体)、ペンチルフェニル基(各異性体)、ヘキシルフェニル基(各異性体)、ジメチルフェニル基(各異性体)、メチルエチルフェニル基(各異性体)、メチルプロピルフェニル基(各異性体)、メチルブチルフェニル基(各異性体)、メチルペンチルフェニル基(各異性体)、ジエチルフェニル基(各異性体)、エチルプロピルフェニル基(各異性体)、エチルブチルフェニル基(各異性体)、ジプロピルフェニル基(各異性体)、トリメチルフェニル基(各異性体)、トリエチルフェニル基(各異性体)、ナフチル基(各異性体)等が挙げられる。
1.1官能のカルバメート
カルバメート(2)において、n21が1である1官能のカルバメート(すなわち、一分子中に1個のカルバメート基を有する化合物)である場合、好ましいカルバメート(2)としては、例えば、下記一般式(2−1a)で表されるカルバメート(以下、「カルバメート(2−1a)」と称する場合がある)、下記一般式(2−1b)で表されるカルバメート(以下、「カルバメート(2−1b)」と称する場合がある)が挙げられる。
なお、これらの化合物は、好ましいカルバメート(2)の一例に過ぎず、好ましいカルバメート(2)はこれに限定されない。
Figure 2019199422
一般式(2−1a)中、R211は炭素数3以上85以下の炭化水素基である。R212は上記R22と同じである。
Figure 2019199422
一般式(2−1b)中、X211は、酸素原子又は第2級アミノ基(−NH−)である。R213は上記R22と同じである。R214は水素原子、炭素数1以上10以下の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素基である。前記炭素数1以上10以下の脂肪族炭化水素基及び前記炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素基は、硫黄原子、酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。R215は炭素数1以上10以下の1価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上10以下の1価の芳香族炭化水素基である。
なお、上記カルバメート(2−1b)は、α−アミノ酸骨格を有するカルバメートである。
α−アミノ酸では、α炭素へのアミノ基やカルボキシル基等の結合様式が立体的に2通り可能で、それぞれ、D型、L型の光学異性体として区別される。上記カルバメート(3−1b)の製造に使用されるアミノ酸(及びアミノ酸骨核を有する化合物)は、D型でもよく、L型でもよく、その混合物やラセミ体であってもよい。工業的に安価に入手できる多くのアミノ酸は、発酵で生産されるアミノ酸で、L型であることがほとんどであるが、それらは好ましく使用できる。本明細書中では、立体配置を示していないが、D型及びL型のいずれかを示している。
(R211
211は炭素数3以上85以下の炭化水素基である。R211における炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。R211における炭化水素基としては、上記R21において例示された炭化水素基と同様のものが挙げられる。
(R214及びR215
214及びR215における炭素数1以上10以下の1価の脂肪族炭化水素基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基等が挙げられる。R214及びR215における炭素数6以上10以下の1価の芳香族炭化水素基として具体的には、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジエチルフェニル基等が挙げられる。また、R214における炭素数1以上10以下の脂肪族炭化水素基及び炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素基は、硫黄原子、酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。なお、硫黄原子又は酸素原子を含む場合には、炭素数1以上10以下の脂肪族炭化水素基及び炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素基を構成する炭素原子が酸素原子又は酸素原子に置換されている。
(X211
211は酸素原子又は第2級アミノ基(−NH−)である。X211が酸素原子である場合、隣り合うカルボニル基とエステル結合を形成する。また、X211が第2級アミノ基(−NH−)である場合、隣り合うカルボニル基とアミド結合を形成する。
中でも、1官能のカルバメートとしては、カルバメート(2−1b)が好ましい。
好ましいカルバメート(2−1b)としては、例えば、下記式(2−1b−1)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 2019199422
2.2官能のカルバメート
カルバメート(2)において、n21が2である2官能のカルバメート(すなわち、一分子中に2個のカルバメート基を有する化合物)である場合、好ましいカルバメート(2)としては、例えば、下記一般式(2−2a)で表されるカルバメート(以下、「カルバメート(2−2a)」と称する場合がある)、下記一般式(2−2b)で表されるカルバメート(以下、「カルバメート(2−2b)」と称する場合がある)、下記一般式(2−2c)で表されるカルバメート(以下、「カルバメート(2−2c)」と称する場合がある)、下記一般式(2−2d)で表されるカルバメート(以下、「カルバメート(2−2d)」と称する場合がある)等が挙げられる。
なお、これらの化合物は、好ましいカルバメート(2)の一例に過ぎず、好ましいカルバメート(2)はこれに限定されない。
Figure 2019199422
一般式(2−2a)中、R221は上記R211と同じである。R222は上記R22と同じである。
Figure 2019199422
一般式(2−2b)中、X221は上記X211と同じである。R223は上記R22と同じである。R224は上記R214と同じである。R225は炭素数1以上10以下の2価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上10以下の2価の芳香族炭化水素基である。
Figure 2019199422
一般式(2−2c)中、X222は上記X211と同じである。R226及びR227はそれぞれ、上記R22と同じである。Y221は炭素数1以上5以下のポリアルキレン鎖である。R228は上記R215と同じである。
Figure 2019199422
一般式(2−2d)中、X223は上記X211と同じである。R229及びR230はそれぞれ、上記R22と同じである。Y222は上記Y221と同じである。R231は上記R214と同じである。
(R225
225における炭素数1以上10以下の2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。R225における炭素数6以上10以下の2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ナフタレン−ジイル基等が挙げられる。
(Y221
221及びY222はそれぞれ独立に、炭素数1以上5以下のポリアルキレン鎖である。すなわち、Y221及びY222は、下記一般式(II)で表される2価の基である。
−(CHn221− (II)
一般式(II)中、n221は1以上5以下の整数である。
炭素数1以上5以下のポリアルキレン鎖としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等が挙げられる。
好ましいカルバメート(2−2a)、カルバメート(2−2b)、カルバメート(2−2c)及びカルバメート(2−2d)として具体的には、例えば、炭素数4以上30以下の脂肪族ジカルバメート、炭素数8以上30以下の脂環族ジカルバメート、炭素数8以上30以下の芳香族基を含有するジカルバメート等が挙げられる。
炭素数4以上30以下の脂肪族ジカルバメートとして具体的には、例えば、1,5−ペンタメチレンジ(カルバミン酸メチルエステル)、1,6−ヘキサメチレンジ(カルバミン酸メチルエステル)、リジンエチルエステルジ(カルバミン酸メチルエステル)、1,5−ペンタメチレンジ(カルバミン酸エチルエステル)、1,6−ヘキサメチレンジ(カルバミン酸エチルエステル)、リジンエチルエステルジ(カルバミン酸エチルエステル)、1,5−ペンタメチレンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、1,6−ヘキサメチレンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、リジンエチルエステルジ(カルバミン酸フェニルエステル)、エチル−2,6−ビス((フェノキシカルボニル)アミノ)へキソネート等が挙げられる。
炭素数8以上30以下の脂環族ジカルバメートとして具体的には、例えば、イソホロンジ(カルバミン酸メチルエステル)、1,3−ビス((カルバミン酸メチルエステル)メチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジ(カルバミン酸メチルエステル)、水添テトラメチルキシリレンジ(カルバミン酸メチルエステル)、ノルボルネンジ(カルバミン酸メチルエステル)、イソホロンジ(カルバミン酸エチルエステル)、1,3−ビス((カルバミン酸エチルエステル)エチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジ(カルバミン酸エチルエステル)、水添テトラエチルキシリレンジ(カルバミン酸エチルエステル)、ノルボルネンジ(カルバミン酸エチルエステル)、イソホロンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、1,3−ビス((カルバミン酸フェニルエステル)フェニル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、水添テトラフェニルキシリレンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、ノルボルネンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、3−(フェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステル等が挙げられる。
炭素数8以上30以下の芳香族基を含有するジカルバメートとして具体的には、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジ(カルバミン酸メチルエステル)、2,6−トリレンジ(カルバミン酸メチルエステル)、キシリレンジ(カルバミン酸メチルエステル)、テトラメチルキシリレンジ(カルバミン酸メチルエステル)、ナフタレンジ(カルバミン酸メチルエステル)、4,4’−ジフェニルメタンジ(カルバミン酸エチルエステル)、2,6−トリレンジ(カルバミン酸エチルエステル)、キシリレンジ(カルバミン酸エチルエステル)、テトラエチルキシリレンジ(カルバミン酸エチルエステル)、ナフタレンジ(カルバミン酸エチルエステル)、4,4’−ジフェニルメタンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、2,6−トリレンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、キシリレンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、テトラフェニルキシリレンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、ナフタレンジ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)等が挙げられる。
なお、上記例示した化合物に構造異性体が存在する場合は、その構造異性体も好ましいカルバメート(2)の例示に含まれる。
また、これら化合物は、好ましいカルバメート(2)の一例に過ぎず、好ましいカルバメート(2)はこれに限定されない。
3.3官能のカルバメート
カルバメート(2)において、n31が3である3官能のカルバメート(すなわち、一分子中に3個のカルバメート基を有する化合物)である場合、好ましいカルバメート(2)としては、例えば、下記一般式(2−3a)で表されるカルバメート(以下、「カルバメート(2−3c)」と称する場合がある)、下記一般式(2−3a)で表されるカルバメート(以下、「カルバメート(2−3b)」と称する場合がある)、下記一般式(2−3c)で表されるカルバメート(以下、「カルバメート(2−3c)」と称する場合がある)等が挙げられる。
なお、これらの化合物は、好ましいカルバメート(2)の一例に過ぎず、好ましいカルバメート(2)はこれらに限定されない。
Figure 2019199422
一般式(2−3a)中、X251は上記X211と同じである。R251は上記R22と同じである。R252は上記R214と同じである。R253は炭素数1以上10以下の3価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上10以下の3価の芳香族炭化水素基である。
Figure 2019199422
一般式(2−3b)中、n251、n252及びn253はそれぞれ独立に、1以上4以下の整数である。n254、n255及びn256はそれぞれ独立に、0以上5以下の整数である。m251、m225及びm253はそれぞれ独立に、0又は1である。R254、R255及びR256はそれぞれ独立に、上記R22と同じである。
Figure 2019199422
一般式(2−3c)中、複数存在するY251はそれぞれ独立に、単結合、又は、エステル基及びエーテル基からなる群より選択される1種以上を含んでもよい炭素数1以上20以下の2価の炭化水素基である。複数存在するR258は上記R22と同じである。複数存在するY251及びR258は、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。R257は、水素原子又は炭素数1以上12以下の1価の炭化水素基である。炭素数1以上20以下の2価の炭化水素基及び炭素数1以上20以下の炭化水素基は置換基を有してもよい。
(R253
253は炭素数1以上10以下の3価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上10以下の3価の芳香族炭化水素基である。
253における炭素数1以上10以下の3価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メタントリイル基、エタントリイル、プロパントリイル基等が挙げられる。R253における炭素数6以上10以下の3価の芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基等が挙げられる。
(Y251
好ましいY251としては、例えば、炭素数1以上20以下の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数6以上20以下の2価の芳香族炭化水素基、炭素数2以上20以下であって脂肪族炭化水素基と脂肪族炭化水素基とがエステル基を介して結合した2価の基、炭素数2以上20以下であって脂肪族炭化水素基と脂肪族炭化水素基とがエーテル基を介して結合した2価の基、炭素数7以上20以下であって脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とがエステル基を介して結合した2価の基、炭素数7以上20以下であって脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とがエーテル基を介して結合した2価の基、炭素数14以上20以下であって芳香族炭化水素基と芳香族炭化水素基とがエステル基を介して結合した2価の基、炭素数14以上20以下であって芳香族炭化水素基と芳香族炭化水素基とがエーテル基を介して結合した2価の基が挙げられる。
(R257
257としては、炭素数1以上10以下の脂肪族炭化水素基、又は、炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素基が好ましい。R257における炭素数1以上10以下の脂肪族炭化水素基及び炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素基としては、上記R214及びR215において例示されたものと同様のものが挙げられる。
好ましいカルバメート(2−3b)としては、例えば、下記一般式(2−3b−1)で表される化合物(以下、「化合物(2−3b−1)」と称する場合がある)等が挙げられる。
Figure 2019199422
(一般式(2−3b−1)中、複数存在するR259は上記R22と同じである。n257は2以上4以下の整数である。)
好ましい化合物(2−3b−1)としては、例えば、以下に示すもの等が挙げられる。
・一般式(2−3b−1)中、n257=2
2、2−(カルバミン酸メチルエステル)エチル−2,6−ジ(カルバミン酸メチルエステル)ヘキサノエート(一般式(2−3b−1)中、R259がメチル基)
2−(カルバミン酸エチルエステル)エチル−2,6−ジ(カルバミン酸エチルエステル)ヘキサノエート(一般式(2−3b−1)中、R259がエチル基)
2−(カルバミン酸ブチルエステル)エチル−2,6−ジ(カルバミン酸ブチルエステル)ヘキサノエート(一般式(2−3b−1)中、R259がブチル基)
2−(カルバミン酸フェニルエステル)エチル−2,6−ジ(カルバミン酸フェニルエステル)ヘキサノエート(一般式(2−3b−1)中、R259がフェニル基)
2−(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)エチル−2,6−ジ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)ヘキサノエート(一般式(2−3b−1)中、R259がジメチルフェニル基)
好ましいカルバメート(2−3c)としては、例えば、Y251が炭素数1以上20以下の2価の脂肪族炭化水素基である化合物、Y251が炭素数6以上20以下の2価の芳香族炭化水素基である化合物等が挙げられる。
251が炭素数1以上20以下の2価の脂肪族炭化水素基である化合物として具体的には、例えば、1,8−ジ(カルバミン酸メチルエステル)−4−(カルバミン酸メチルエステル)メチルオクタン、1,8−ジ(カルバミン酸エチルエステル)4−(カルバミン酸エチルエステル)メチルオクタン、2−(カルバミン酸エチルエステル)エチル−2,5−ジ(カルバミン酸エチルエステル)ペンタノエート、2−(カルバミン酸メチルエステル)エチル−2,5−ジ(カルバミン酸メチルエステル)ペンタノエート、2−(カルバミン酸メチルエステル)エチル−2,6−ジ(カルバミン酸メチルエステル)ヘキサノエート、2−(カルバミン酸エチルエステル)エチル−2,6−ジ(カルバミン酸エチルエステル)ヘキサノエート、ビス(2−(カルバミン酸エチルエステル)エチル)−2−(カルバミン酸エチルエステル)ペンタンジオエート、ビス(2−(カルバミン酸メチルエステル)エチル)−2−(カルバミン酸メチルエステル)ペンタンジオエート、ビス(2−(カルバミン酸ブチルエステル)エチル)−2−(カルバミン酸ブチルエステル)ペンタンジオエート、1,3,5−トリ(カルバミン酸メチルエステル)ベンゼン、1,3,5−トリ(カルバミン酸エチルエステル)ベンゼン等が挙げられる。
251が炭素数6以上20以下の2価の芳香族炭化水素基である化合物として具体的には、例えば、1,8−ジ(カルバミン酸フェニルエステル)4−(カルバミン酸フェニルエステル)メチルオクタン、2−(カルバミン酸フェニルエステル)エチル−2,5−ジ(カルバミン酸フェニルエステル)ペンタノエート、2−(カルバミン酸フェニルエステル)エチル−2,6−ジ(カルバミン酸フェニルエステル)ヘキサノエート、ビス(2−(カルバミン酸フェニル)エチル)−2−(カルバミン酸フェニル)ペンタンジオエート、1,3,5−トリ(カルバミン酸フェニルエステル)ベンゼン等が挙げられる。
[不活性溶媒]
本実施形態の製造方法において用いられる不活性溶媒は、反応条件下において実施的に不活性であり、標準沸点が化合物(A)よりも低く、且つ、生成するイソシアネート及びヒドロキシル化合物の標準沸点の間にあるものであれば特に限定されない。
このような不活性溶媒としては、例えば、脂肪族類、脂環族類、置換基を有していてもよい芳香族類、非置換の炭化水素類又はこれらの混合物類等が挙げられる。
また、エーテル、ケトン、エステル等の酸素原子を有していてもよい化合物類であってもよく、チオエーテル、スルホキシド、スルホン等の硫黄原子を有していてもよい化合物類であってもよい。
不活性溶媒として具体的には、例えば、アルカン類、芳香族炭化水素及びアルキル置換芳香族炭化水素類、ニトロ基又はハロゲンによって置換された芳香族化合物類、多環炭化水素化合物類、脂環族炭化水素類、ケトン類、エステル類、エーテル及びチオエーテル類、スルホキシド類、スルホン類、シリコン油等が挙げられる。
アルカン類としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、n−ヘキサデカン、n−オクタデカン、エイコサン、スクアラン等が挙げられる。
芳香族炭化水素及びアルキル置換芳香族炭化水素類としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリエチルベンゼン、クメン、ジイソプロピルベンゼン、ジブチルベンゼン、ナフタレン、低級アルキル置換ナフタレン、ドデシルベンゼン等が挙げられる。
ニトロ基又はハロゲンによって置換された芳香族化合物類としては、例えば、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、ブロムベンゼン、ジブロムベンゼン、クロルナフタレン、ブロムナフタレン、ニトロベンゼン、ニトロナフタレン等が挙げられる。
多環炭化水素化合物類としては、例えば、ジフェニル、置換ジフェニル、ジフェニルメタン、ターフェニル、アントラセン、フェナントレン、ベンジルトルエン、ベンジルトルエンの異性体、トリフェニルメタン等が挙げられる。
脂環族炭化水素類としては、例えば、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等が挙げられる。
ケトン類としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトフェノン等が挙げられる。
エステル類としては、例えば、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート等が挙げられる。
エーテル及びチオエーテル類としては、例えば、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルフィド等が挙げられる。
スルホキシド類としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド等が挙げられる。
スルホン類としては、例えば、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジフェニルスルホン、スルホラン等が挙げられる。
中でも、不活性溶媒としては、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、ブロムベンゼン、ジブロムベンゼン、クロルナフタレン、ブロムナフタレン、ニトロベンゼン、ニトロナフタレン等のニトロ基又はハロゲンによって置換された芳香族化合物類が好ましく、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン等ハロゲンによって置換されたベンゼンがより好ましい。
[化合物(A)]
本実施形態の製造方法で用いられる化合物(A)は、下記一般式(S1)で表される化合物(以下、「化合物(S1)」という場合がある。)、下記一般式(S2)で表される化合物(以下、「化合物(S2)」という場合がある。)、及び下記一般式(S3)で表される化合物(以下、「化合物(S3)」という場合がある。)からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
Figure 2019199422
(一般式(S1)中、R401、R402、R403はそれぞれ独立に、炭素数1以上60以下で飽和又は不飽和の直鎖状若しくは分岐鎖状の炭化水素基であり、R401、R402又はR403がメチレン基を有する場合、前記メチレン基は、酸素原子、アリーレン基、シクロアルキレン基又はNH基で置換されていてもよく、R401、R402又はR403がCH基を有する場合、前記CH基は窒素原子で置換されていてもよく、R401、R402又はR403を構成する1又は複数の水素原子はハロゲン原子又はヒドロキシ基で置換されていてもよく、R401、R402又はR403は互いに結合して単環又は多環を形成していてもよい。)
Figure 2019199422
(一般式(S2)中、R404、R405はそれぞれ独立に、炭素数1以上60以下で飽和又は不飽和の直鎖状若しくは分岐鎖状の炭化水素基であり、R404又はR405がメチレン基を有する場合、前記メチレン基は、酸素原子、アリーレン基、シクロアルキレン基又はNH基で置換されていてもよく、R404又はR405がCH基を有する場合、前記CH基は窒素原子で置換されていてもよく、R404又はR405を構成する1又は複数の水素原子はハロゲン原子又はヒドロキシ基で置換されていてもよく、R404又はR405は互いに結合して単環又は多環を形成していてもよい。)
Figure 2019199422
(一般式(S3)中、R406は、炭素数1以上60以下で飽和又は不飽和の直鎖状若しくは分岐鎖状の炭化水素基であり、R406がメチレン基を有する場合、前記メチレン基は酸素原子、アリーレン基、シクロアルキレン基又はNH基で置換されていてもよく、R406がCH基を有する場合、前記CH基は窒素原子で置換されていてもよく、R406を構成する1又は複数の水素原子はハロゲン原子又はヒドロキシ基で置換されていてもよく、前記分岐鎖は互いに結合して環を形成していてもよい。)
化合物(S1)は第三級アルコールであり、化合物(S2)は第二級アルコールであり、化合物(S3)は第一級アルコールであるといえる。
本実施形態の製造方法で用いられる化合物(A)は、1分子中にヒドロキシ基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数が1個であるヒドロキシ基、ヒドロキシ基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数が2個であるヒドロキシ基、ヒドロキシ基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数が3個であるヒドロキシ基のいずれか1種を1又は複数個有していてもよいし、2種以上を1又は複数個有していてもよい。
本明細書において、化合物(A)が1分子中に複数個のヒドロキシ基を有している場合、ヒドロキシ基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数が最も多いヒドロキシ基に基づいて、当該化合物(A)を第一級アルコール、第二級アルコール、第三級アルコールのいずれかに分類するものとする。例えば、化合物(A)が1分子中にヒドロキシ基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数が1個であるヒドロキシ基とヒドロキシ基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数が2個であるヒドロキシ基を有している場合、当該化合物(A)は第二級アルコールであるものとする。
化合物(A)の標準沸点は、カルバメートの熱分解によって生成するイソシアネートの標準沸点よりも高い必要がある。化合物(A)は、沸点が高くなる傾向があることから、1級アルコールよりも2級アルコール又は3級アルコールであることが好ましく、3級アルコールであることが更に好ましい。
本実施形態の製造方法において、カルバメートの熱分解によってイソシアネート及びヒドロキシ化合物が生成される。化合物(A)もヒドロキシ化合物であるということができる。しかしながら、化合物(A)は、少なくとも、標準沸点が、カルバメートの熱分解によって生成するイソシアネートの標準沸点よりも高い点において、カルバメートの熱分解によって生成されるヒドロキシ化合物とは異なる。
化合物(A)の標準沸点は、カルバメートの熱分解によって生成するヒドロキシ化合物の標準沸点に対して、例えば10℃以上高く、30℃以上高いことがより好ましく、50℃以上高いことが更に好ましい。また、化合物(A)の標準沸点は、カルバメートの熱分解によって生成するイソシアネートの標準沸点に対して、例えば10℃以上高く、30℃以上高いことがより好ましく、50℃以上高いことが更に好ましい。化合物(A)の標準沸点が上記範囲にあることにより、副反応により生成する高沸点成分を効率よく抜き出し、長時間に亘って連続的にイソシアネートを製造することができる。
上記一般式(S1)で表される具体的な化合物としては、例えば、下記化学式(S1−1)〜(S1−14)で表される化合物等が挙げられるがこれらに限定されない。
Figure 2019199422
上記一般式(S2)で表される具体的な化合物としては、例えば、下記化学式(S2−1)〜(S2−28)で表される化合物等が挙げられるがこれらに限定されない。
Figure 2019199422
Figure 2019199422
Figure 2019199422
上記一般式(S3)で表される具体的な化合物としては、例えば、下記化学式(S3−1)〜(S3−10)、下記一般式(S3−11)〜(S3−13)で表される化合物等が挙げられるがこれらに限定されない。
Figure 2019199422
Figure 2019199422
(一般式(S3−11)中、nは1以上20以下の整数を表す。)
Figure 2019199422
(一般式(S3−12)中、nは1以上20以下の整数を表す。)
Figure 2019199422
(一般式(S3−13)中、x、y、zはそれぞれ独立に0以上20以下の整数を表し、x+y+zは0以上20以下の整数であり、Rは−(CH−、−(CH−、−(CH−のいずれかを表す。下記化学式(S3−13−1)で表される繰り返し単位、下記化学式(S3−13−2)で表される繰り返し単位及び下記化学式(S3−13−3)で表される繰り返し単位は、それぞれランダムに含まれていてもブロック状に含まれていてもよく、下記化学式(S3−13−1)で表される繰り返し単位の合計がxであり、下記化学式(S3−13−2)で表される繰り返し単位の合計がyであり、下記化学式(S3−13−3)で表される繰り返し単位の合計がzである。)
Figure 2019199422
[炭酸エステル]
カルバメートの製造に用いられる炭酸エステルとしては、下記一般式(3)で表わされる化合物(以下、「化合物(3)」と称する場合がある)が好ましい。
Figure 2019199422
一般式(3)中、複数存在するR31は、それぞれ独立に、炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基、又は、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基である。複数存在するR31は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。中でも、複数存在するR31は、同一であることが好ましい。
(R31
31における炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基及び炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基としては、上記R22において例示されたものと同様のものが挙げられる。
化合物(3)として好ましいものとしては、例えば、下記一般式(3−1)で表される炭酸ジアリール(以下、「炭酸ジアリール(3−1)」と称する場合がある)等が挙げられる。なお、この化合物は、好ましい化合物(3)の一例に過ぎず、好ましい化合物(3)はこれに限定されない。
Figure 2019199422
一般式(3−1)中、複数存在するR311はそれぞれ独立に、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基である。
(R311
一般式(3−1)中、R311としては、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基であり、炭素数6以上12以下の芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数6以上8以下の芳香族炭化水素基がより好ましい。このようなR811として具体的には、上記R22において炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基として例示されたものと同様のものが挙げられる。
炭酸ジアリール(3−1)で好ましいものとしては、R311が炭素数6以上8以下の芳香族炭化水素基である炭酸ジアリール等が挙げられる。このような炭酸ジアリール(3−1)として具体的には、例えば、炭酸ジフェニル、炭酸ジ(メチルフェニル)(各異性体)、炭酸ジ(ジエチルフェニル)(各異性体)、炭酸ジ(メチルエチルフェニル)(各異性体)等が挙げられる。
なお、これら化合物は、好ましい炭酸ジアリール(3−1)の一例に過ぎず、好ましい炭酸ジアリール(3−1)はこれに限定されない。
また、炭酸エステルは、金属原子を含有していてもよい。炭酸エステルの質量に対する金属原子の含有量は、0.001ppm以上100,000ppm以下の範囲が好ましく、0.001ppm以上50,000ppm以下の範囲がより好ましく、0.002ppm以上30,000ppm以下の範囲がさらに好ましい。
また、該金属原子は、金属イオンとして存在していてもよく、金属原子単体として存在していてもよい。中でも、金属原子としては、2価以上4価以下の原子価をとりうる金属原子が好ましく、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、スズ、銅及びチタンからなる群より選ばれる1種以上の金属がより好ましい。
炭酸エステルの製造方法としては、公知の方法を用いることができる。中でも、国際公開第2009/139061号(参考文献1)に記載されている、スズ−酸素−炭素結合を有する有機スズ化合物と二酸化炭素とを反応させて脂肪族炭酸エステルを製造し、該脂肪族炭酸エステルと芳香族ヒドロキシ化合物とから芳香族炭酸エステル(すなわち、炭酸ジアリール)を製造する方法が好ましい。また、上記炭酸エステルは、例えば国際公開第2009/139061号(参考文献1)に記載の製造装置を用いて製造できる。
[アミン化合物]
カルバメートの製造に用いられるアミン化合物としては、上記カルバメートのカルバメート基がアミノ基に置換されたものが好ましい。すなわち、上記一般式(2)で表されるカルバメート、上記一般式(2−1a)で表されるカルバメート、上記一般式(2−1b)で表されるカルバメート、上記一般式(2−2a)で表されるカルバメート、上記一般式(2−2b)で表されるカルバメート、上記一般式(2−2c)で表されるカルバメート、上記一般式(2−2d)で表されるカルバメート、上記一般式(2−3a)で表されるカルバメート、上記一般式(2−3b)で表されるカルバメート、上記一般式(2−3c)で表されるカルバメート、又は、上記一般式(2−3b−1)で表されるカルバメートにおいて、カルバメート基がアミノ基(−NH)に置換されたものが好ましい。
[イソシアネート]
本実施形態の製造方法により得られるイソシアネートは、上記カルバメートのカルバメート基がイソシアネート基に置換されたものであり、中でも、上記一般式(2)で表されるカルバメート、上記一般式(2−1a)で表されるカルバメート、上記一般式(2−1b)で表されるカルバメート、上記一般式(2−2a)で表されるカルバメート、上記一般式(2−2b)で表されるカルバメート、上記一般式(2−2c)で表されるカルバメート、上記一般式(2−2d)で表されるカルバメート、上記一般式(2−3a)で表されるカルバメート、上記一般式(2−3b)で表されるカルバメート、上記一般式(2−3c)で表されるカルバメート、又は、上記一般式(2−3b−1)で表されるカルバメートにおいて、カルバメート基がイソシアネート基(−NCO)に置換されたものが好ましい。すなわち、下記一般式(2)’で表される化合物、下記一般式(2−1a)’で表される化合物、下記一般式(2−1b)’で表される化合物、下記一般式(2−2a)’で表される化合物、下記一般式(2−2b)’で表される化合物、下記一般式(2−2c)’で表される化合物、下記一般式(2−2d)’で表される化合物、下記一般式(2−3a)’で表される化合物、下記一般式(2−3b)’で表される化合物、下記一般式(2−3c)’で表される化合物、又は、一般式(2−3b−1)’で表される化合物が好ましい。
Figure 2019199422
Figure 2019199422
Figure 2019199422
一般式(2)’中、n21及びR21はそれぞれ、上記一般式(2)におけるn21及びR21と同じである。
一般式(2−1a)’中、R211は、上記一般式(2−1a)におけるR211と同じである。
一般式(2−1b)’中、X211、R214及びR215はそれぞれ、上記一般式(2−1b)におけるX211、R214及びR215と同じである。
一般式(2−2a)’中、R221は、上記一般式(2−2a)におけるR221と同じである。
一般式(2−2b)’中、X221、R224及びR225はそれぞれ、一般式(2−2b)におけるX221、R224及びR225と同じである。
一般式(2−2c)’中、X222、Y221及びR228はそれぞれ、一般式(2−2c)におけるX222、Y221及びR228と同じである。
一般式(2−2d)’中、X223、Y222及びR231はそれぞれ、一般式(2−2d)におけるX223、Y222及びR231と同じである。
一般式(2−3a)’中、X251、R252及びR253はそれぞれ、一般式(2−3a)におけるX251、R252及びR253と同じである。
一般式(2−3b)’中、n251、n252、n253、n254、n255、n256、m251、m252及びm253はそれぞれ、一般式(2−3b)におけるn251、n252、n253、n254、n255、n256、m251、m252及びm253と同じである。
一般式(2−3c)’中、R257及び複数存在するY251はそれぞれ、上記一般式(2−3c)におけるR257及びY251と同じである。
一般式(2−3b−1)’中、n357は上記一般式(2−3b−1)におけるn257と同じである。
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
[実施例1]
(混合液を調製する工程)
3−(フェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステル20kgとトリエチルベンゼン20kgと1,3−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン60kgを、大気圧窒素下で、120℃に加温した撹拌槽で混合し、均一溶液とした。
(カルバメートの熱分解)
上述の「混合液を調製する工程」で得た混合液を、図1に示すイソシアネートの製造装置1Aの貯槽101に投入した。熱媒ジャケットを具備する反応器100に1,3−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼンとトリエチルベンゼンを投入し、熱媒ジャケットを通過する熱媒の温度を270℃とし、内部の圧力を調整しながら、充填層108の上部に具備するライン16、凝縮器115、貯槽103、ライン17を経由してトリエチルベンゼンが還流する状態を形成させた。
ここに、貯槽101からライン10を経由して反応器100に上記混合液を1kg/hrで供給し、3−(フェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステルの熱分解をおこなった。熱分解で生成したフェノールとトリエチルベンゼンを含む混合液を、充填層108の上部に具備するライン16、凝縮器115を経由して貯槽103に回収し、熱分解で生成したイソホロンジイソシアネートとトリエチルベンゼンを含む混合液を、充填層107の上部に具備するライン14、凝縮器114を経由して貯槽104に回収した。一方、反応器100内部における液面が一定となるように、ライン11を経由して反応器100の底部より反応液を抜出し、貯槽102に回収した。貯槽104に回収したイソホロンジイソシアネートの収率80%であった。また、上記運転を200時間継続しておこなうことができた。
[実施例2]
(混合液を調製する工程)
N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ジカルバミン酸ジフェニルエステル30kgとベンジルトルエン30kgとトリフェニルメタノール40kgを、大気圧窒素下で、150℃に加温した撹拌槽で混合し、均一溶液とした。
(カルバメートの熱分解)
上述の「混合液を調製する工程」で得た混合液を、図2に示すイソシアネートの製造装置2Aの貯槽201に投入した。蒸留塔210にベンジルトルエンを投入しリボイラー206の温度を200℃とし、内部の圧力を調整しながら、蒸留塔210の上部に具備するライン23、凝縮器205、貯槽203、ライン24を経由してベンジルトルエンが還流する状態を形成させた。
ここに、貯槽201からライン20を経由して、あらかじめ250℃に加熱したフォーリングフィルム型反応器200に上記混合液を1kg/hrで供給し、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ジカルバミン酸ジフェニルエステルの熱分解をおこなった。熱分解で生成したフェノールと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとベンジルトルエンを含む気体を、ライン22を経由して蒸留塔210に供給した。一方、副生物を含むトリフェニルメタノールをフォーリングフィルム型反応器底部からライン21を経由して貯槽202に回収した。ライン22を経て回収した気体成分は蒸留塔210で蒸留分離し、ライン23、凝縮器205を経由して、フェノールとベンジルトルエンを含む混合液を貯槽203に回収した。一方、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとベンジルトルエンを含む混合液を、ライン27を経由して貯槽204に回収した。貯槽204に回収した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの収率は79%であった。また、上記運転を200時間継続しておこなうことができた。
[実施例3]
(混合液を調製する工程)
下記式(2−1b−3)で表される化合物20kgとトリエチルベンゼン20kgとトリフェニルメタノール60kgを、大気圧窒素下で、150℃に加温した撹拌槽で混合し、均一溶液とした。
Figure 2019199422
(カルバメートの熱分解)
上述の「混合液を調製する工程」で得た混合液を、図2に示すイソシアネートの製造装置2Aの貯槽201に投入した。蒸留塔210にトリエチルベンゼンを投入しリボイラー206の温度を200℃とし、内部の圧力を調整しながら、蒸留塔210の上部に具備するライン23、凝縮器205、貯槽203、ライン24を経由してトリエチルベンゼンが還流する状態を形成させた。
ここに、貯槽201からライン20を経由して、あらかじめ250℃に加熱したフォーリングフィルム型反応器200に上記混合液を1kg/hrで供給し、上記式(2−1b−3)で表される化合物の熱分解をおこなった。熱分解で生成した2−イソシアナトプロピオン酸メチルとトリエチルベンゼンを含む気体を、ライン22を経由して蒸留塔210に供給した。一方、副生物を含むトリフェニルメタノールをフォーリングフィルム型反応器底部からライン21を経由して貯槽202に回収した。ライン22を経て回収した気体成分は蒸留塔210で蒸留分離し、ライン23、凝縮器205を経由して、フェノールとトリエチルベンゼンを含む混合液を貯槽203に回収した。一方、2−イソシアナトプロピオン酸メチルとトリエチルベンゼンを含む混合液を、ライン27を経由して貯槽204に回収した。貯槽204に回収した2−イソシアナトプロピオン酸メチルの収率は75%であった。また、上記運転を200時間継続しておこなうことができた。
[比較例1]
(混合液を調製する工程)
3−(フェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステル50kgとトリエチルベンゼン50kgを、大気圧窒素下で、120℃に加温した撹拌槽で混合し、均一溶液とした。
(カルバメートの熱分解)
上述の「混合液を調製する工程」で得た混合液を、図1に示すイソシアネートの製造装置1Aの貯槽101に投入し、熱媒ジャケットを具備する反応器100にトリエチルベンゼンを投入してトリエチルベンゼンが還流する状態を形成させ、貯槽101からライン10を経由して反応器100に上記混合液を0.4kg/hrで供給した以外は実施例1の「カルバメートの熱分解」と同様の方法をおこない、熱分解で生成したイソホロンジイソシアネートとトリエチルベンゼンとを含む混合液を貯槽104に回収した。貯槽104に回収したイソホロンジイソシアネートの収率は15%であった。また、上記運転を2日間継続したところ、ライン11が閉塞し運転継続が困難となった。
[比較例2]
(混合液を調製する工程)
N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ジカルバミン酸ジフェニルエステル30kgとベンジルトルエン30kgを、大気圧窒素下で、150℃に加温した撹拌槽で混合し、均一溶液とした。
(カルバメートの熱分解)
上述の「混合液を調製する工程」で得た混合液を、図2に示すイソシアネートの製造装置2Aの貯槽201に投入し、蒸留塔210にベンジルトルエンを投入してベンジルトルエンが還流する状態を形成させ、貯槽201からライン20を経由して、あらかじめ250℃に加熱したフォーリングフィルム型反応器200に上記混合液を0.3kg/hrで供給し、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ジカルバミン酸ジフェニルエステルの熱分解をおこなった以外は実施例2の「カルバメートの熱分解」と同様の方法をおこない、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとベンジルトルエンとを含む混合液を、ライン27を経由して貯槽204に回収した。貯槽204に回収した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの収率は15%であった。また、上記運転を2日間継続したところ、ライン21が閉塞し運転継続が困難となった。
[比較例3]
(混合液を調製する工程)
上記式(2−1b−3)で表される化合物50kgとトリエチルベンゼン50kgを、大気圧窒素下で、150℃に加温した撹拌槽で混合し、均一溶液とした。
(カルバメートの熱分解)
上述の「混合液を調製する工程」で得た混合液を、図2に示すイソシアネートの製造装置2Aの貯槽201に投入し、蒸留塔210にトリエチルベンゼンを投入してトリエチルベンゼンが還流する状態を形成させ、貯槽201からライン20を経由して、あらかじめ250℃に加熱したフォーリングフィルム型反応器200に上記混合液を0.3kg/hrで供給し、上記式(2−1b−3)で表される化合物の熱分解をおこなった以外は実施例3の「カルバメートの熱分解」と同様の方法をおこない、2−イソシアナトプロピオン酸メチルとトリエチルベンゼンとを含む混合液を、ライン27を経由して貯槽204に回収した。貯槽204に回収した2−イソシアナトプロピオン酸メチルの収率は15%であった。また、上記運転を2日間継続したところ、ライン21が閉塞し運転継続が困難となった。
本実施形態のイソシアネートの製造方法によれば、副反応を抑制し、連続的にイソシアネートを製造することができる。
100:反応器、
101、102、103、104、105:貯槽
106、107、108:充填層
109、110、111、112、116:送液ポンプ
113、114、115:凝縮器
10、11、12、13、14、15、16、17:ライン
1A:イソシアネートの製造装置
200:フォーリングフィルム型反応器
201、202、203、204:貯槽
205:凝縮器
206:リボイラー
207、208、209:送液ポンプ
20、21、22、23、24、25、26、27:ライン
2A:イソシアネートの製造装置

Claims (7)

  1. カルバメートの熱分解によってイソシアネートを製造する方法であって、
    カルバメートと、下記一般式(S1)で表される化合物、下記一般式(S2)で表される化合物、及び下記一般式(S3)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(A)とを含む混合液を、熱分解反応器に連続的に導入して、カルバメートの熱分解反応を行う熱分解工程と、
    前記化合物(A)よりも標準沸点が低い低沸点分解生成物を、前記熱分解反応器から気体状で連続的に抜き出す低沸点分解生成物回収工程と、
    前記低沸点分解生成物回収工程で気体状で回収されなかった液相成分を高沸点成分として前記熱分解反応器から連続的に抜き出す高沸点成分回収工程と、
    を含むイソシアネートの製造方法。
    Figure 2019199422
    (一般式(S1)中、R401、R402、R403はそれぞれ独立に、炭素数1以上60以下で飽和又は不飽和の直鎖状若しくは分岐鎖状の炭化水素基であり、R401、R402又はR403がメチレン基を有する場合、前記メチレン基は、酸素原子、アリーレン基、シクロアルキレン基又はNH基で置換されていてもよく、R401、R402又はR403がCH基を有する場合、前記CH基は窒素原子で置換されていてもよく、R401、R402又はR403を構成する1又は複数の水素原子はハロゲン原子又はヒドロキシ基で置換されていてもよく、R401、R402又はR403は互いに結合して単環又は多環を形成していてもよい。)
    Figure 2019199422
    (一般式(S2)中、R404、R405はそれぞれ独立に、炭素数1以上60以下で飽和又は不飽和の直鎖状若しくは分岐鎖状の炭化水素基であり、R404又はR405がメチレン基を有する場合、前記メチレン基は、酸素原子、アリーレン基、シクロアルキレン基又はNH基で置換されていてもよく、R404又はR405がCH基を有する場合、前記CH基は窒素原子で置換されていてもよく、R404又はR405を構成する1又は複数の水素原子はハロゲン原子又はヒドロキシ基で置換されていてもよく、R404又はR405は互いに結合して単環又は多環を形成していてもよい。)
    Figure 2019199422
    (一般式(S3)中、R406は、炭素数1以上60以下で飽和又は不飽和の直鎖状若しくは分岐鎖状の炭化水素基であり、R406がメチレン基を有する場合、前記メチレン基は酸素原子、アリーレン基、シクロアルキレン基又はNH基で置換されていてもよく、R406がCH基を有する場合、前記CH基は窒素原子で置換されていてもよく、R406を構成する1又は複数の水素原子はハロゲン原子又はヒドロキシ基で置換されていてもよく、前記分岐鎖は互いに結合して環を形成していてもよい。)
  2. 前記化合物(A)が、前記一般式(S1)で表される化合物である請求項1に記載のイソシアネートの製造方法。
  3. 前記混合液が不活性溶媒を更に含み、
    前記低沸点分解生成物回収工程において、前記低沸点分解生成物と前記不活性溶媒とを、前記熱分解反応器から気体状で連続的に抜き出し、
    前記不活性溶媒は、熱分解反応条件下において実質的に不活性であり、且つ、その標準沸点が、前記化合物(A)の標準沸点よりも低く、熱分解によって生成するイソシアネート及びヒドロキシ化合物の標準沸点の間にある請求項1又は2に記載のイソシアネートの製造方法。
  4. 前記カルバメートが、下記式(2)で表される化合物である請求項1〜3のいずれか一項に記載のイソシアネートの製造方法。
    Figure 2019199422
    (一般式(2)中、n21は、1以上の整数であり、R21はn21価の有機基であり、R22はヒドロキシ化合物から1つのヒドロキシ基を除いた残基である。)
  5. 前記熱分解反応器が管型反応器である請求項1〜4のいずれか一項に記載のイソシアネートの製造方法。
  6. 前記低沸点分解生成物が前記イソシアネートを含み、前記低沸点分解生成物が気体状で蒸留塔に供給され、前記蒸留塔にて前記イソシアネートを分離する分離工程を更に含む請求項1〜5のいずれか一項に記載のイソシアネートの製造方法。
  7. 熱分解反応条件下で、実質的に不活性であり、且つ、気体状態の搬送剤を前記熱分解反応器に導入し、気体状成分を前記熱分解反応器より搬出させる請求項1〜6のいずれか一項に記載のイソシアネートの製造方法。
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