以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
<第1実施形態>
第1実施形態では、主撮像素子を用いた撮像面位相差方式による測距実行時に光学絞りに起因する光束のケラレが発生した場合に、複数の画像領域を持つ副撮像素子を用いて測距を行う撮像装置について説明する。
図1(a)は、第1実施形態に係る撮像装置1の外観斜視図である。撮像装置1は、具体的には、動画撮影機能を有する電子スチルカメラや静止画撮影機能を有するビデオカメラである。撮像装置1は、撮影レンズを含む主撮像光学系10(主光学ユニット)と、2つの撮影レンズを含む副撮像光学系20(副光学ユニット)と、を筐体の正面に有している。主撮像光学系10は、主に記録用の静止画や動画の撮像に使用される。副撮像光学系20は、主撮像光学系10による撮影を補助するための外測用AF(Auto Focus)や外測用AE(Auto Exposure)に使用される。
図1(b)は、第1実施形態に係る撮像装置2を搭載した自動車の外観斜視図である。撮像装置2は、所謂、車載カメラであり、主撮像光学系10Aと、副撮像光学系20Aと、を車体前面に有している。主撮像光学系10Aは、測距や対象物検知用画像の取得に使用される。副撮像光学系20Aは、外測用AFや外測用AEに使用される。
撮像装置1の主撮像光学系10と撮像装置2の主撮像光学系10Aの用途及び機能は同等であり、また、撮像装置1の副撮像光学系20と撮像装置2の副撮像光学系20Aの用途及び機能は同等であるため、以下、撮像装置1を例にして説明を続ける。
図2は、撮像装置1のブロック図である。撮像装置1は、主撮像光学系10、主撮像信号処理部11、主位相差処理部12、圧縮伸張部13、制御部14、発光部15、操作部16、画像表示部17及び画像記憶部18を備える。また、撮像装置1は、副撮像光学系20、副撮像信号処理部204及び副位相差処理部205を備える。図2中、破線の矢印は被写体からの反射光(入射光)を、一点鎖線の矢印は制御信号や演算処理後の演算値を、実線の矢印は画像信号の流れをそれぞれ表している。
主撮像光学系10は、第1の光学系としての主光学鏡筒101と、主撮像素子102を有する。主光学鏡筒101は、被写体からの光を主撮像素子102に集光するためのレンズと、焦点調節を行うフォーカス機構部1011と、光学結像の倍率を可変させるズーム機構部1012とを有する。また、主光学鏡筒101は、主撮像素子102に入射する光量を調整する絞り機構部1013と、シャッタ機構部1014とを有する。フォーカス機構部1011、ズーム機構部1012、絞り機構部1013及びシャッタ機構部1014は、制御部14からの制御信号に従って駆動される。
主撮像素子102は、後述する撮像画素(第1の撮像画素)、焦点検出画素(第2の撮像画素(位相差検出用の画素))からなる画素部、不図示のADコンバータにより構成されるXY読み出し方式のCMOS型イメージセンサ等を含む。主撮像素子102は、制御部14からの制御信号に従って露出、信号読み出し、リセット等の撮像動作を実行して画像信号を出力する。
副撮像光学系20は、光軸が略平行となるように所定の間隔で配置された第2の光学系としての副光学鏡筒201及び第3の光学系としての副光学鏡筒202と、副撮像素子203とを有する。副光学鏡筒201,202はそれぞれ、主光学鏡筒101と同様に、不図示のフォーカス機構部、ズーム機構部及び絞り機構部を内蔵している。副撮像光学系20は主に外測用AFや外測用AE処理に用いられるため、副撮像光学系20で得られる光学像から主撮像光学系10の撮像状態が把握できればよい。よって、副光学鏡筒201,202のフォーカス距離、ズーム設定による画角、絞り設定等は、AFやAE処理に適した条件にすればよく、必ずしも主光学鏡筒101で設定されている撮影条件と同じにする必要はない。
副光学鏡筒201,202で集光された被写体からの光はそれぞれ、副撮像素子203の面内に離間して照射される。副撮像素子203には、主撮像素子102と同様に、XY読み出し方式のCMOS型イメージセンサ等が用いられる。副撮像素子203は、制御部14からの制御信号に従って露出、信号読み出し、リセット等の撮像動作を実行して画像信号を出力する。副撮像素子203は、主撮像素子102とは異なり、焦点検出画素を備えていない。副撮像素子203は通常の撮像画素で副光学鏡筒201,202による各被写体像を撮像し、得られた撮像信号を用いて後述するように視差検出が行われる。
ここで、図3を参照して、副撮像素子203に照射される光の撮像領域について説明する。図3(a)は、副撮像光学系20を断面的に示す模式図である。図3(a)に示すように、被写体からの光は副光学鏡筒201,202でそれぞれ集光され、副撮像素子203の撮像面に互いに離間して照射される。図3(b)は、副撮像素子203の撮像面に照射される光(無限遠被写体像)の撮像領域を説明する平面図である。副光学鏡筒201,202から照射される被写体像は、副撮像素子203の像面に対して副光学鏡筒201の像に対応するイメージサークル301、副光学鏡筒202の像に対応するイメージサークル302の領域に被写体像を映し出す。副光学鏡筒201により集光された光が第1の撮像領域としてのイメージサークル301に結像することにより、イメージサークル301内に被写体像が映し出される。同様に、副光学鏡筒202により集光された光が第2の撮像領域としてのイメージサークル302に結像することにより、イメージサークル302内に被写体像が映し出される。このように、1つの撮像素子に2つの光学系によるイメージサークルを別々に映し出すことによって、1つの撮像素子の出力信号から被写体の視差信号を得ることができる。
なお、詳細は後述するが、副位相差処理部205は、イメージサークル301,302内の画像領域303,304の画像データを用いて視差信号を検出する。副撮像素子203から得られる画像データを用いた視差検出方法の詳細については後述する。また、第1実施形態では、2つの光学系に対して1つの副撮像素子を備える構成としているが、2つの光学系のそれぞれに撮像素子を配置し、各撮像素子からの出力(撮像画像)を用いて視差信号を得てもよい。また、撮像装置1を、主位相差処理部12と副位相差処理部205を個別に備える構成(図2)としているが、共通の位相差処理部として備える構成としてもよい。
図2を参照した撮像装置1のブロック構成の説明に戻る。主撮像信号処理部11は、制御部14の制御下で、主撮像素子102から取得した撮像信号の色補正処理、AE処理、ホワイトバランス処理、光学シェーディング処理等を行い、生成された画像信号と制御信号を制御部14へ出力する。制御部14は、制御部14内のRAMに主撮像信号処理部11から取得した画像信号と制御信号を一時的に記憶する。
主位相差処理部12は、主撮像素子102から異なる瞳面の撮像面位相差画像を取得し、取得した撮像面位相差画像の画像信号から公知の位相差検出処理を行うことにより、位相差信号を生成する。圧縮伸張部13は、制御部14の制御下で、主撮像信号処理部11から制御部14内のRAMに記憶された画像信号を取り出し、JPEG方式等の所定の静止画像データフォーマットで圧縮符号化処理を行う。また、圧縮伸張部13は、制御部14から供給された静止画像の符号化データの伸張復号化処理を行う。なお、圧縮伸張部13は、MPEG方式等により動画像の圧縮符号化/伸張復号化処理を行うことができるようになっていてもよい。
制御部14は、例えば、CPU、ROM、RAM等から構成されるマイクロコントローラであり、ROM等に格納されたプログラムをRAMに展開(実行)することにより、撮像装置1の各部を統括的に制御する。発光部15は、キセノン管を用いたストロボ装置やLED発光装置等であり、主撮像信号処理部11でのAE処理によって被写体の露出値が低いと判断された場合に被写体に対して光を照射する。操作部16は、例えば、シャッタレリーズボタン等の各種操作キーやレバー、ダイヤル等などから構成され、ユーザによる入力操作に応じた制御信号を制御部14へ出力する。
画像表示部17は、LCD等の表示デバイスや、これに対するインタフェース回路等で構成され、表示デバイスに表示させるための画像信号を制御部14から供給された画像信号に基づいて生成し、生成した画像信号を表示デバイスに供給する。これにより、表示デバイスに画像が表示される。画像記憶部18は、例えば、可搬型の半導体メモリ、光ディスク、HDD、磁気テープ等で構成され、圧縮伸張部13により符号化された画像データを制御部14から受け取って記憶する。また、画像記憶部18は、制御部14からの制御信号に従って指定されたデータを読み出し、制御部14へ出力する。
副撮像信号処理部204は、副撮像素子203から画像信号を取得して主撮像信号処理部11と同様の処理を行うことにより、副撮像素子203の撮像制御に必要なAE情報等を生成する。副位相差処理部205は、副撮像素子203で撮像された画像領域303,304の画像信号を用いて公知の位相差処理を行うことにより、副光学鏡筒201,202を通じて得られる撮像画像の視差を求める。視差検出方法の詳細については後述する。
図4(a)は、主撮像素子102の撮像画素(撮影画像(写真)を得るための画素)を説明する平面図である。図4(b)は、図4(a)に示す矢視A−Aでの断面図であり、撮像画素の近傍の構成を示している。主撮像素子102は、2×2の4画素のうち、対角に位置する2つの画素に緑(G)の分光感度を有する画素が配置され、他の2画素に赤(R)と青(B)の分光感度を有する画素を配置したベイヤー配列を有し、2行×2列の構造が繰り返し配置される。主撮像素子102では、ベイヤー配列の間に、後述する焦点検出画素が所定の規則に従って分散配置される。副撮像素子203での画素配列は、主撮像素子102の画素配列と同じである。但し、副撮像素子203は、焦点検出画素を備えていない。
各撮像画素は、概略、前面側から背面側へ向かって、オンチップマイクロレンズML、カラーフィルタCF、信号を伝達する信号線を形成するための配線層CL、光電変換部であるフォトダイオードPDが配置された構造を有する。ここでは、カラーフィルタCFとして、赤(R)のカラーフィルタCFRと緑(G)のカラーフィルタCFGを示している。図4(b)では、主撮像光学系10に対応する撮像光学系TLが撮像画素の前面に模式的に示されている。
撮像画素のオンチップマイクロレンズMLとフォトダイオードPDは、撮像光学系TLを通過した光束を可能な限り有効に取り込むように構成されている。つまり、撮像光学系TLの射出瞳EPとフォトダイオードPDはオンチップマイクロレンズMLにより共役関係にあり、且つ、フォトダイオードPDの有効面積は大面積に設計される。なお、図4(b)には画素CFRの入射光束を示しているが、緑(G)と青(B)のそれぞれの画素CFG,CFBも同一構造となっている。こうして、RGBのそれぞれの画素CFR,CFG,CFBに対応した射出瞳EPの径を大きくして被写体からの光束を効率よく取り込むことが可能な構成とすることで、画像信号のS/Nを向上させている。
図5(a)は、主撮像素子102での焦点検出画素の配置を説明する平面図である。図5(b)は、図5(a)に示す矢視B−Bでの断面図であり、焦点検出画素の近傍の構成を示している。なお、図5では、ベイヤー配列において赤(R)と青(B)の撮像画素が配置される位置に焦点検出画素SHA,SHBが配置された部分を例示している。オンチップマイクロレンズMLとカラーフィルタCFの構成は、図4(b)に示した撮像画素での構成と同じである。但し、焦点検出画素SHA,SHBは、それぞれ、白色(W)のカラーフィルタCFWを有する。
撮像素子で撮影レンズの水平方向(横方向)に瞳分割を行うために、配線層CLの開口部はオンチップマイクロレンズMLの中心線に対して一方向に偏倚している。具体的には、焦点検出画素SHAの開口部OPHAは右側に偏倚しており、撮像光学系TLの左側の射出瞳EPHAを通過した光束を受光する。同様に、焦点検出画素SHBの開口部OPHBは左側に偏倚しているため、撮像光学系の右側の射出瞳EPHBを通過した光束を受光する。ここで、焦点検出画素SHAを水平方向に規則的に配列した画素群により取得される被写体像をA像とし、焦点検出画素SHBを水平方向に規則的に配列した画素群により取得される被写体像をBとする。すると、A像とB像の相対位置を検出することにより、被写体像のピントずれ量(デフォーカス量)を検出することができる。なお、垂直方向(縦方向)のピントずれ量を検出したい場合、焦点検出画素SHAの開口部OPHAを上側に、焦点検出画素SHBの開口部OPHBを下側に偏倚させると共に開口部OPHA,OPHBの開口形状を90度回転させればよい。
図6は、主撮像素子102の画素配列を示す平面図であり、主撮像光学系10側から見たCMOS撮像素子センサの縦(Y方向)8行と横(X方向)8列の範囲を示している。カラーフィルタにはベイヤー配列が適用されており、偶数行の画素には左から順に緑(G)と青(B)のカラーフィルタが交互に配置され、奇偶数行の画素には左から順に赤(R)と緑(G)のカラーフィルタが交互に配置されている。
焦点検出画素SHA,SHBは、赤(R)又は青(B)のカラーフィルタが配置される位置にある撮像画素を置換する形で配置され、第1実施形態では所定の行間隔で配置されている。ここでは、焦点検出画素SHA,SHBのフォトダイオードPDは、撮像画素のフォトダイオードPDと比較すると、面積とX方向位置とで相違している(図5(b)参照)。なお、焦点検出画素SHA,SHBの配置密度や行間隔は、図6に示した画素配列に限定されるものではない。焦点検出画素SHA,SHBが配置された行からは、焦点検出画素SHA,SHBに対して周辺の撮像画素を用いて補間補正を行う等して、撮像信号を得ることができる。
次に、像ずれ量からデフォーカス量を算出するためのデフォーカス変換係数の求め方と光束のケラレによる基線長変化について説明する。図7(a)は、主撮像素子102の中央近傍の画素に対する入射光束が射出瞳面701の位置にある結像光学系の絞りによって限定されている様子を示す模式図である。主撮像素子102には、主光学鏡筒101内の撮影レンズのレンズ保持枠740や絞り機構部1013内の光学絞り741等の幾つかの構成部材によって制限された光束が入射する。図7(a)において、主撮像素子102の位置703,704は、デフォーカス量729を模式的に示すための主撮像素子102の位置を示しており、位置703は予定結像面位置を示している。破線705は光軸を、点706は主撮像素子102上での光軸位置を示している。光束707,708は、光学絞り741によって限定された光束の一例を示しており、光束709,720は光学絞り741による限定を受けてない光束を示している。光束723,724は、光束709,720の位相検出用光束を示しており、光束721,722は、光束707,708の位相検出用光束を示している。点727,728は、光束723,724の重心位置を示しており、点725,726は、光束721,722の重心位置を示している。
図7(b)は、主撮像素子102の中央部にある焦点検出画素SHA,SHBの射出瞳面701での光束のケラレによる重心位置の変化を説明する図である。瞳領域733は、主撮像素子102の中央の画素に対する限定された光束707,708の瞳領域を示している。また、瞳領域734は、主撮像素子102の中央の画素に対する限定されていない光束709,720の瞳領域を示している。像735は焦点検出画素SHA(図5参照)の像の入射角特性を、像736は焦点検出画素SHB(図5参照)の像の入射角特性を示している。
焦点検出画素SHA,SHBにはそれぞれ、瞳領域733,734で示した形状の内側を透過した光束が像735,736で図示した感度分布で入射する。なお、感度分布は濃淡で示されており、中心側で強く(濃)、外周側で弱く(淡)なっている。瞳領域733,734を示している円内を透過したそれぞれの位相検出用光束の分布重心を求めることにより、位相検出用光束が限定されている場合と限定されていない場合の重心間隔を求めることができる。そして、焦点検出画素SHA,SHBの感度分布情報と結像光学系の口径情報を予め測定や計算により求めて記憶しておくことで、像ずれ量からデフォーカス量を算出するためのデフォーカス変換係数を求めることができる。
図7(a)に示すデフォーカス量729を“DEF”、主撮像素子102の位置703(予定結像面位置)から射出瞳面701までの距離730を“L”とする。位相差検出用光束が限定されている場合の重心間隔(基線長(点725,726間距離))を“G1”、位相差検出用光束が限定されていない場合の重心間隔(基線長(点727,728間距離))を“G2”とする。像ずれ量731を“PRED1”とし、像ずれ量731をデフォーカス量に変換するデフォーカス変換係数を“K1”とする。また、像ずれ量732を“PRED2”とし、像ずれ量732をデフォーカス量に変換するデフォーカス変換係数を“K2”とする。
この場合、デフォーカス量は、“DEF=K1×PRED1=K2×PRED2”、によって求められる。また、デフォーカス変換係数K1,K2はそれぞれ、“K1=L/G1”、“K2=L/G2”、によって求められる。G1<G2であることからK1>K2となり、このことは、一般に、焦点検出に用いる光束が限定されているほどデフォーカス変換係数の値が大きくなることを意味している。
焦点検出位置が光軸近傍にない場合、射出瞳面701以外の位置にある絞りの射出瞳により、焦点検出用光束のケラレが発生する。また、結像光学系の絞り以外のレンズ保持枠に対応した射出瞳により、絞りの射出瞳よりF値が明るい場合であっても、焦点検出用光束のケラレは発生する。
なお、ここではレンズ保持枠と絞りで光束が制限される様子を説明した。これに限られず、主撮像素子102からズーム機構部1012やフォーカス機構部1011の各レンズ群による光学像が作る瞳までの距離(射出瞳距離)の変化によっても、光束が制限される位置は変化する。光束が制限される位置の変化によって基線長が変わり、デフォーカス変換係数は光束が制限される条件に応じて変化する。つまり、像ずれ量に対するデフォーカス量の敏感度は、光束が制限されることによって変わる。焦点検出時の撮影レンズの絞り設定値が大きくなると、デフォーカス変換係数の値が大きくなって像ずれ量に対するデフォーカス量の敏感度が高くなるため、主光学鏡筒101における各機構部の設定条件によっては主撮像素子102による焦点検出ができなくなる。
撮像装置1では、主撮像素子102からの出力信号を用いた焦点検出では精度が低くなってしまう場合又は焦点検出ができない場合に、副撮像素子203による焦点検出を行う。そこで、次に、副撮像光学系20での焦点検出方法について説明する。図8は、副撮像光学系20を用いた三角測量の原理を説明する図である。図8(a)は、副撮像光学系20と被写体Sとの位置関係を幾何学的に示す図である。図8(b)は、画像領域303,304上の被写体像の位置から視差Δを求める方法を説明する模式図である。
副撮像光学系20の画角内に被写体Sが存在する場合、被写体Sの光学像(被写体像)は、副光学鏡筒201を介して副撮像素子203の画像領域303に結像すると共に副光学鏡筒202を介して副撮像素子203の画像領域304に結像する。画像領域303に結像する被写体像の任意の点をsa、画像領域304に結像する被写体像において点saと対応する点をsbとすると、点saを画像領域303に写像したときの画素位置と画像領域304における点sbの画素位置とは視差Δだけ離れている。
副光学鏡筒201,202の焦点距離を“f”、副撮像光学系20(副光学鏡筒201,202の主点)から被写体Sまでの距離を“L”、副光学鏡筒201,202の光軸間距離を“D”とする。“L”が“f”よりも十分に大きな値であるとすると、L=D×f/Δ・・・(式1)、の関係が成り立つ。画像領域303,304から得られた画像から副位相差処理部205にて公知の位相差処理を行うことにより、視差Δを求めることができる。そして、“D”と“f”は既知であるから、求められた視差Δ、“D”及び“f”を上記の式1に当て嵌めることにより、距離Lを算出する、つまり、測距を行うことができる。
副撮像光学系20での測距は、副光学鏡筒201,202の機械的な構成によって基線長が規定されるために基線長は不変となるため、光学条件が変わることによる測距精度の信頼性の低下は起こり難い。また、副光学鏡筒201,202における絞り設定等の光学的な条件設定は、測距に適した条件とすることができる。
次に、撮像装置1での撮像動作について説明する。図9は、撮像装置1での撮像動作を説明するフローチャートである。図9のフローチャートにS番号で示す各処理(ステップ)は、制御部14が所定のプログラムを実行して、撮像装置1を構成する各部の動作を統括的に制御することによって実現される。
ユーザによる操作部16の操作や制御部14の制御命令により撮像動作が開始される。S501では制御部14は、主撮像光学系10の動作を開始させる。これにより、主光学鏡筒101は初期動作状態とされて、主撮像素子102による撮像取得動作が開始される。S502では制御部14は、操作部16からの指示、S501で得られた画像信号、主撮像信号処理部11でのAE演算結果等に基づいて、主撮像光学系10の撮影条件を決定する。制御部14は、撮影条件を決定すると、主光学鏡筒101内のズーム機構部1012や絞り機構部1013の駆動制御を行い、また、主撮像素子102に対して露出時間や信号増幅による感度調整等の露出制御を行う。
S503では制御部14は、操作部16からの指示に基づいて、撮影(画像記憶)を行うか否かを判定する。制御部14は、撮影を行うと判定した場合(S503でYES)、処理をS504へ進め、撮影を行わないと判定した場合(S503でNO)、処理をS506へ進める。S504では制御部14は、被写体に対する焦点検出動作を行う。S504では、主撮像光学系10による焦点調整動作又は副撮像光学系20での測距動作による焦点検出動作を行うが、その詳細については、図10のフローチャートを参照して後述する。なお、第1実施形態では、撮影(画像記憶)を行う際に焦点検出動作を行うとしているが、焦点検出動作は常時行うようにしてもよい。
S505では制御部14は、S504で取得した焦点検出結果に基づいて、主撮像光学系10により撮影を行い、所定の画像処理を経て生成された画像データを画像記憶部18に記憶する。S506では制御部14は、操作部16を通じて撮影終了の指示を受け付けたか否かを判定する。制御部14は、撮影終了の指示を受け付けていないと判定した場合(S506でNO)、処理をS502へ戻し、撮影終了の指示を受け付けたと判定した場合(S506でYES)、撮像装置1を待機状態として、操作部16を通じたユーザからの指示を待つ。
図10は、S504での焦点検出動作のフローチャートである。焦点検出動作を開始すると、S601では制御部14は、主撮像素子102を駆動させて画像信号を取得する。この画像信号には、撮像画素から出力される信号と焦点検出画素から出力される信号の両方を含む。S602では制御部14は、主光学鏡筒101内の絞り機構部1013の絞り設定値Fを取得する。S603では制御部14は、S602で取得した絞り設定値Fが予め定められた所定の絞り閾値Fth以上か否かを判定する。これは、図7を参照して説明したように、絞り径を小さく(つまり、F値を大きく)すると光束のケラレが発生し、主撮像素子102での焦点検出画素における基線長が短くなることでデフォーカス量の敏感度が高くなるからである。そこで、絞り設定値Fが主撮像素子102が有する焦点検出画素によるデフォーカス量の信頼度を保つことができなくなる下限値としての絞り閾値Fth以上か否かを判定する。制御部14は、絞り設定値Fが絞り閾値Fthより小さいと判定した場合(S603でNO)、処理をS604へ進め、絞り設定値Fが絞り閾値Fth以上であると判定した場合(S603でYES)、処理をS605へ進める。
S604では制御部14は、主位相差処理部12を動作させて、S601で取得した画像信号のうち焦点検出画素から出力された信号を用いて公知の位相差処理を行い、視差信号を得る。制御部14は、S604の後、処理をS610へ進める。
一方、S605では制御部14は、主撮像光学系10を通じた焦点検出は困難と判定し、副撮像光学系20を用いた焦点検出を行うために副撮像光学系20が動作中か否かを判定する。なお、撮像装置1では、電力消費を抑えるために副撮像光学系20を使用する必要がないときには副撮像光学系20を停止状態(スリープ状態)としている。副撮像光学系20を使用する必要がないときとは、主撮像光学系10での測距に支障が生じない条件に主撮像光学系10の状態が設定されているときである。そのため、S605の判定が必要となる。但し、撮像装置1は、副撮像光学系20を現実には使用していなくとも定常的に動作状態に維持される構成となっていてもよく、この場合にはS605の判定は不要となるため、S603の判定がNOとなった後にはS607へ処理が進められることになる。副撮像光学系20を常に動作状態とするか否かは、デフォルト設定又はユーザ設定に従う。制御部14は、副撮像光学系20が動作中であると判定した場合(S605でYES)、処理をS607へ進め、副撮像光学系20が動作中ではないと判定した場合(S605でNO)、処理をS606へ進める。
S606では制御部14は、副撮像光学系20の駆動を開始し、その後、処理をS607へ進める。S607では制御部14は、副撮像素子203から得られた画像信号に基づいて副撮像光学系20での撮像条件を設定する。続くS608では制御部14は、副撮像素子203による撮像を行って、図8を参照して説明した画像領域303,304の画像を取得する。S609では制御部14は、副位相差処理部205を動作させて、S608で取得した画像領域303,304の画像を用いて公知の位相差処理を行い、視差信号を得る。制御部14は、S609の後、処理をS610へ進める。
S610では制御部14は、S604又はS609での処理によって得られた視差信号に基づいてデフォーカス量を算出し、主撮像光学系10において合焦状態かを判定する。制御部14は、合焦と判定した場合(S610でYES)、処理をS611へ進め、合焦ではないと判定した場合(S610でNO)、処理をS612へ進める。S611では制御部14は、副撮像光学系20が駆動中の場合に駆動を停止して(スリープ状態として)、本処理を終了させる。これにより、処理はS505へ進められることになる。一方、S612では制御部14は、主光学鏡筒101内のフォーカス機構部1011を駆動し、再度、焦点検出動作を行うために処理をS601へ戻す。
以上の説明の通り、第1実施形態では、主撮像素子102での撮像面位相差方式による測距性能が主光学鏡筒101の制御状態に起因して低下した場合に、副撮像光学系20の複数の光学系による測距動作を用いた焦点検出動作へと切り替える。これにより、撮影画像を得るために最適な撮影条件を主撮像光学系10に適用しながら、適切な焦点検出を行うことが可能な撮像装置を実現することができる。
なお、上記説明では、主光学鏡筒101の制御状態に起因して主撮像素子102から出力される画像信号を用いた測距での性能が低下する例として、主光学鏡筒101内の絞り機構部1013の設定条件に応じて光束のケラレが発生する場合を取り上げた。これに限らず、ズーム機構部1012によるズーム位置可変やフォーカス機構部1011によるフォーカスレンズ移動に伴う射出瞳距離の変化に応じて、測距を行う光学系を切り換えてもよい。その場合、射出瞳距離が所定の閾値より小さい場合に主撮像光学系10を用いた測距を行い、射出瞳距離が所定の閾値以上の場合に副撮像光学系20を用いた測距を行うようにすればよい。
<第2実施形態>
第2実施形態では、主撮像素子102からの出力信号のノイズ状態に応じて、主撮像光学系10を用いた測距動作と副撮像光学系20を用いた測距動作とを切り替える撮像装置について説明する。なお、第2実施形態に係る撮像装置と第1実施形態で説明した撮像装置1とでは、制御部14が実行する制御の内容のみが異なっており、その他の構成は同じである。よって、以下、第2実施形態での特徴的な事項についてのみ説明を行う。
図5を参照して説明したように、主撮像素子102が備える焦点検出画素SHA,SHBはそれぞれ、配線層CLに形成された開口面積の小さい開口部OPHA,OPHBを通じて射出瞳EPHA,EPHBからの光束を受光する。焦点検出画素SHA,SHBは撮像画素よりも開口率が小さいために撮像画素よりも受光感度が低く、よって、焦点検出画素SHA,SHBから出力される画像信号では信号ノイズ比(SNR)の値が小さくなる。つまり、ノイズが多くなって、画像信号の質が低下する。特に低照度環境下では主撮像素子102では信号増幅動作によりSNRを上げるが、このとき、受光感度の低い焦点検出画素SHA,SHBから出力される画像信号ではノイズも増幅されてしまう。その結果、信号ばらつきが大きくなってしまうことで、測距精度の信頼性が低下してしまう。
この問題に対処するため、第2実施形態では、主撮像素子102のSNRに応じて副撮像光学系20を駆動させて測距を行う。これは、副撮像光学系20の基線長は副光学鏡筒201,202の機械的構成によって規定されるため、副撮像光学系20による焦点検出の方が主撮像光学系10による焦点検出よりも画像信号に重畳するノイズの影響が小さいからである。
図11は、第2実施形態に係る焦点検出動作のフローチャートである。図11のフローチャートに示す一連の処理は、図9のフローチャートのS504で実行可能な処理であり、図10のフローチャートに示す一連の処理に代えて実行される処理である。なお、図11のフローチャートにある各種の処理のうち、図10のフローチャートにある処理と同じものについては、その旨を記して重複する説明を省略する。
S701の処理は、S601の処理と同じであるため、説明を省略する。S702では制御部14は、主撮像素子102のSNRを取得する。具体的には、撮像信号の黒レベルを検出するために主撮像素子102に設けられている不図示の遮光画素OPBの出力標準偏差をS701で得られた画像信号から求めることで、主撮像素子102のSNRを求める。
S703では制御部14は、S702で取得した主撮像素子102のSNRが所定のSNR閾値SNRth以上であるか否かを判定する。具体的には、主撮像素子102のSNRが、主撮像素子102内の焦点検出画素SHA,SHBによるデフォーカス量の信頼度を確保することができる最小値であるSNR閾値SNRth以上かを判定する。制御部14は、主撮像素子102のSNRがSNR閾値SNRth以上であると判定した場合(S703でYES)、処理をS704へ進め、主撮像素子102の焦点検出画素SHA,SHBによる焦点検出処理を行う。一方、制御部14は、主撮像素子102のSNRがSNR閾値SNRthより小さいと判定した場合(S703でNO)、処理をS705へ進め、副撮像光学系20を用いた測距動作を行う。S704〜S712の処理は、S604〜S612の処理と同じであるため、説明を省略する。
このように第2実施形態では、主撮像素子102の画像信号のSNRが小さく(ノイズが多く)なって焦点検出画素SHA,SHBによる焦点検出の信頼性が低下する場合、機械的構成で基線長が規定される副撮像光学系20を用いて測距、焦点検出を行う。これにより、適切な焦点検出動作を行うことが可能となる。
なお、第2実施形態では、画像信号のSNR(ノイズの大小)に応じて測距手段を切り替える構成について説明した。しかし、これに限られず、主撮像素子102に掛けるゲインの値、主撮像素子102の測距範囲内の撮像画素からの出力信号の標準偏差、焦点検出画素SHA,SHBの各信号振幅比のいずれかに応じて測距手段を切り替えるようにしてもよい。主撮像素子102に掛けるゲインの値が所定の閾値より小さい場合には主撮像光学系10を用いた測距を行い、主撮像素子102に掛けるゲインの値が同閾値以上である場合に副撮像光学系20を用いた測距を行う。主撮像素子102の測距範囲内の撮像画素からの出力信号の標準偏差が所定の閾値より小さい場合には主撮像光学系10を用いた測距を行い、同標準偏差が同閾値以上である場合に副撮像光学系20を用いた測距を行う。焦点検出画素SHA,SHBの各信号振幅比が所定の閾値より小さい場合には主撮像光学系10を用いた測距を行い、同信号振幅比が同閾値以上である場合に副撮像光学系20を用いた測距を行う。
<第3実施形態>
第3実施形態では、主撮像素子の信号飽和状態に応じて主撮像光学系10を用いた測距動作から副撮像光学系20用いた測距動作へと切り替える撮像装置について説明する。なお、第3実施形態に係る撮像装置と第1実施形態で説明した撮像装置1とでは、主撮像素子の構造が異なっており、これに応じて制御部14が実行する制御の内容が異なるが、その他の構成は同じである。よって、以下、第3実施形態に係る特徴的な事項についてのみ説明を行う。
図12(a)は、第3実施形態での主撮像素子102Aにおける画素配列を説明する図である。図12(b)は、主撮像素子102Aを構成する画素1201の構造を説明する図である。第1実施形態での主撮像素子102は独立した撮像画素と焦点検出画素とを備える構造となっていたが、第3実施形態での主撮像素子102Aは撮像画素が焦点検出機能を兼ねる構成となる。
画素1201は、光学系の瞳の一部を受光する光電変換部1201L(第1の光電変換部)と、光電変換部1201Lとは異なる瞳の一部を受光する光電変換部1201R(第2の光電変換部)とを有する。同様に、画素1202は光電変換部1202L,1202Rを有し、画素1203は光電変換部1203L,1203Rを有し、画素1204は光電変換部1204L,1204Rを有する。その他の撮像画素については、説明を省略する。主撮像素子102Aにおける画素配列は、2次元画像を提供するために、画素1201をはじめとする複数の撮像画素が2次元アレイ状の配列となっている。
主撮像素子102Aを構成する複数の撮像画素の構造はどれも同じであるので、ここでは、画素1201を例にその構造について説明する。画素1201は、1つのマイクロレンズ121と、マイクロレンズ121下に設けられたフォトダイオード122,123(以下「PD122,123」と記す)を有する。また、画素1201は、PD122,123の各々の信号を読み出すトランジスタである転送スイッチ124,125と、PD122,123の信号のそれぞれを一時的に蓄積するフローティングディフュージョン126(以下「FD126」と記す)を有する。このように、画素1201は、光学系の異なる瞳領域をPD122,123で読み出すこと以外の構成は、第1実施形態での主撮像素子102での撮像画素と同じである。
図13は、撮影レンズの射出瞳から出た光束が主撮像素子102Aに入射する様子を示す模式図である。図13には、図12(a)に示す行1205の断面の一部である3つの撮像画素が示されている。1つの撮像画素は、1つのマイクロレンズ121とPD122,123に加えて、カラーフィルタ1302を有する。
中央のマイクロレンズ121を有する撮像画素に対して、撮影レンズの射出瞳1303から出た光束の中心を光軸1304とする。射出瞳1303から出た光は、光軸1304を中心として主撮像素子102Aに結像する。光線1307,1308は、撮影レンズの射出瞳の一部領域である瞳領域1305を通過する光の最外周の光線を表している。また、光線1309,1310は、撮影レンズの射出瞳の一部領域である瞳領域1306を通過する光の最外周の光線を表している。図13からわかるように、射出瞳1303から出る光束のうち、光軸1304を境にして、上側の光束はPD122に入射し、下側の光束はPD123に入射する。つまり、PD122,123はそれぞれ、撮影レンズの射出瞳1303の別の瞳領域1305,1306を通過した光を受光している。
図12(a)に示す画素1201,1202,1203,1204について、光軸1304を挟んで一方の射出瞳から出る光束を受光するPD122に対応するPD1201L,1202L,1203L,1204L,・・・から得られる像をA像とする。そして、その信号をA像信号と称呼する。また、光軸1304を挟んで他方の射出瞳から出る光束を受光するPD123に対応するPD1201R,1202R,1203R,1204R,・・・から得られる像をB像とする。そして、その信号をB像信号と称呼する。
光軸1304を中心に射出瞳1303を等分した瞳領域1305,1306から出る各光束をPD122,123で受光する。これにより、焦点状態の変化に応じて瞳領域1305,1306に対応するA像信号とB像信号の出力が現れる画素1201等のアドレス間隔に変化(位相差)が現れる。そこで、このアドレス間隔を検出する(位相差を検出する)ことにより、デフォーカス量を算出することができる。
図14は、主撮像素子102Aの画素回路構成を説明する等価回路図であり、ここでは、1つの画素1201について模式的に示している。画素1201の転送スイッチ124,125はそれぞれ転送パルスφTx1,φTx2によって駆動され、対応するPD122,123で発生した電荷をFD126へ転送する。FD126は、電荷を一時的に蓄積するバッファとしての役割を担う。FD126と、ソースフォロアとして機能する増幅MOSアンプ141と、垂直出力線143に接続された定電流源145とからフローティングディフュージョンアンプが構成される。垂直選択パルスφSELによって画素を選択する選択スイッチ142で選択された画素のFD126の信号電荷がフローティングディフュージョンアンプにより電圧に変換されて垂直出力線143に出力され、不図示の水平転送信号線を通して読み出される。FD126は、リセットパルスφRESを受けてリセットスイッチ144がオンすることでVDDによってリセットされる。
PD122,123はそれぞれ、対応する転送スイッチ124,125を持つが、FD126以降で信号読み出しに用いる回路を共有しており、これにより画素の縮小化を図ることができる。また、転送パルスφTx1,φTx2を提供する配線は、各行に配列された画素により共有されている。
図15は、主撮像素子102の駆動方法(駆動パターン)を説明するタイミングチャートであり、位相差情報と画像信号を読み出す動作の関係を示している。期間t151において、リセットパルスφRESと転送パルスφTx1,φTx2が同時に高電位Hに制御される。これにより、リセットスイッチ144と転送スイッチ124,125がオンとなり、PD122,123及びFD126の電位が初期電位VDDにリセットされる。その後、転送パルスφTx1,φTx2が低電位Lになると、PD122,123での電荷蓄積が開始される。
電荷蓄積開始から予め定められた所定時間が経過した後、期間t153において垂直選択パルスφSELが高電位Hとされて選択スイッチ142がオンすることで読み出し行が選択され、1行分の信号の読み出し動作が開始される。これと同時に、リセットパルスφRESが低電位LとされてFD126のリセットが解除される。期間t154では、φTNが高電位Hとされることで、FD126のリセット信号であるN信号が読み出されて記憶される。なお、不図示であるが、主撮像素子102では、φTN、φS1、φS2の制御に基づいて、FD126の電位が垂直出力線143を介して読み出され、それぞれの信号が記憶される。
次に、期間t155において、転送パルスφTx1とφS1が同時に高電位Hとされて転送スイッチ124がオンすることで、PD122の光信号(画像信号)とノイズ信号の加算信号である第1PD信号が読み出され、主撮像素子102内に記憶される。その後、リセットスイッチ144をオンしない状態で、期間t156において転送パルスφTx1、φTx2及びφS2が同時に高電位Hとされることで、転送スイッチ124,125がオンする。これにより、PD122,123のそれぞれの光信号とノイズ信号とが混合された加算信号である第2PD信号が読み出され、主撮像素子102内に記憶される。
なお、期間t155において転送パルスφTx1をオンしてPD122から第1PD信号をFD126に読み出しているので、期間t156では転送パルスφTx1はオフ状態でもよい。また、厳密には、期間t151の終了から期間t156の終了までが蓄積期間t152となる。転送パルスφTx2を高電位Hとして、PD123をリセットするタイミングは、期間t155と期間t156の時間差分だけ遅らせても良い。
上記の動作で読み出されたN信号、第1PD信号及び第2PD信号から、第1PD信号からノイズ信号を差分したA像信号と、第2PD信号からノイズ信号を差分した画像信号が主撮像素子102Aから出力される。第2PD信号からノイズ信号を差分した画像信号はPD122,123の信号を合成した信号であるので、この画像信号からA像信号を減算することでB像信号を生成することができる。主位相差処理部12は、こうして得られたA像信号とB像信号を用いて位相差信号を生成する。
主撮像素子102Aは、各画素を構成する複数(2つ)のフォトダイオードから瞳分割した信号を取得するため、フォトダイオードの構造によっては高輝度時に一方のフォトダイオードの信号が他方のフォトダイオードに漏れ出る等の現象が起り得る。この場合、瞳分割による信号を正確に読み出せなくなる可能性がある。つまり、被写体の輝度が一定のレベル以上の撮影環境では、主撮像素子102Aから取得した信号の信頼性が低下してしまい、焦点検出の演算精度が低下する可能性がある。
この問題に対処するため、第3実施形態では、主撮像素子102Aの面内において任意に設定された測距エリア内の画素のA像信号又は画像信号(A像信号とB像信号の加算信号)の出力値が一定以上のレベルになっている画素の数をカウントする。そして、カウントされた画素数の測距エリア内の全画素数に対する比率が予め定められた閾値以上となった場合に、主撮像光学系10による測距から副撮像光学系20による測距へ切り替えて、焦点検出を行う。
図16は、第3実施形態に係る撮像装置での焦点検出動作のフローチャートである。なお、第3実施形態に係る撮像装置での撮像動作は、図9に示した撮像装置1での撮像動作と同様に行われる。よって、図16のフローチャートに示す一連の処理は、図9のフローチャートのS504で実行可能な処理であり、図10のフローチャートに示す一連の処理に代えて実行される処理である。なお、図16のフローチャートにある各種の処理のうち、図10のフローチャートにある処理と同じものについては、その旨を記して重複する説明を省略する。
焦点検出動作が開始されると、S801では制御部14は、主撮像素子102を駆動させて、図15で説明した動作を行って画像信号を取得する。S802では制御部14は、主撮像素子102の面内に設定された測距エリア内の撮像画素数NPを算出する。撮像画素数NPを算出するのは、後に行われる測距エリア内の飽和画素カウント動作に対するカウント終了条件を定め、また、測距エリア内でのA像画素とB像画素の飽和画素比率を求めるためである。S803では制御部14は、測距エリア内画素から出力されるA像信号の出力レベルが一定の閾値を超えている場合にカウントするA像飽和カウントCAの値をゼロ(0)に設定する初期化処理を行う。また、S803では制御部14は、測距エリア内画素から出力される画像信号(A像信号とB像信号の加算信号)の出力レベルが一定の閾値を超えている場合にカウントする画像飽和カウントCIの値を(0)に設定する初期化処理を行う。
S804では制御部14は、測距エリア内での画素アドレスを指し示す“n”に初期値としてゼロ(0)を設定する。なお、“n”は0以上の整数値である。また、測距エリア内での画素アドレスとは、例えば、長方形の測距エリアにおける左上隅等の基準となる点を画素アドレス0として、測距エリア内の全ての画素アドレスを個別に指し示すものである。S805では制御部14は、S801で得た画像信号から主撮像素子102Aの測距エリア内の画素アドレスnのA像出力値SA(n)を検出する。
S806では制御部14は、S805で検出したA像出力値SA(n)が予め定められたA像出力閾値SAth以上か否かを判定する。制御部14は、A像出力値SA(n)がA像出力閾値SAth以上であると判定した場合(S806でYES)、処理をS807へ進め、A像出力値SA(n)がA像出力閾値SAthより小さいと判定した場合(S806でNO)、処理をS808へ進める。S807では制御部14は、A像飽和カウントCAの値を1だけインクリメントし、その後、処理をS808へ進める。
ここで、焦点検出動作の実行時に画像信号に対して閾値を設ける理由について説明する。図17(a)は、PD122,123の間での電荷漏れを説明する模式図であり、PD122,123のポテンシャルエネルギーの状態を模式的に示している。ここでは、PD122への入射光量が大きく、PD123への入射光量が小さい場合を想定している。PD122で発生して蓄積される電荷量が一定レベルを超えると、PD122で生じた電荷がPD122,123間のポテンシャル障壁を超えてPD123へ漏れ出す。
図17(b)は、主撮像素子102への入射光量と出力信号との関係を示す図である。PD122に蓄積される電荷が多くなると、PD122からPD123への漏れ出しが発生する。つまり、PD122の信号の一部がPD123の信号に混入し始める。A像出力閾値SAthは、混入が始まって信号の信頼性が損なわれ始めるレベルに設定される。なお、ここでは、PD122への入射光量がPD123への入射光量よりも相対的に大きい場合について説明した。これとは逆に、PD123への入射光量がPD122への入射光量よりも相対的に大きい場合には、画像信号SIに対して画像出力閾値SIthが設定される。なお、画像信号SIは、A像信号とB像信号の加算信号である。
A像出力閾値SAthと画像出力閾値SIthは、主位相差処理部12でのレベル判定処理において像信号レベルに応じて設定される。したがって、撮像装置のISO感度設定等により主撮像素子102のゲイン設定値が変更されると、制御部14はこれにA像出力閾値SAthと画像出力閾値SIthの値を変更する。
図17(a),(b)についての上記説明は、ISO感度設定が低い場合の説明である。これに対して、ISO感度設定が高く、主撮像素子102のゲイン設定値が大きい場合のA像出力閾値SAthと画像出力閾値SIthの関係は、図17(c)に示す通りとなる。即ち、主撮像素子102Aのゲイン設定値が大きい場合、少ない入射光量に対応する小さい信号を増幅して使用することになる。この場合、図17(a)で説明したような画素間での信号混入は発生しない。
しかし、画像信号SIが飽和するような信号レベルの場合には、主位相差処理部12でB像信号を正しく生成することができなくなる。具体的には、図17(c)に破線で示すグラフ線は、飽和していないレベルの画像信号SIからA像信号を減算してB像信号を算出したときのB像信号の変化を示しており、B像信号のレベルは入射光量の増加に従って増加している。これに対して、図17(c)に一点鎖線で示すグラフ線は、画像信号SIが飽和レベルにある場合のB像信号のレベル変化を示している。画像信号SIが飽和した時点で、飽和レベル(一定レベル)からA像信号のレベルが減算されるので、B像信号のレベルは入射光量が増加するにつれて減少する。その結果、B像信号の信頼性が低下する。このような問題の発生を回避するため、制御部14はA像出力閾値SAth及び画像出力閾値SIthを、低ISO感度設定時とは異なる値に設定することにより、信号の信頼性を確保することが可能となる。
図16のフローチャートの説明に戻る。S808では制御部14は、主撮像素子102Aの測距エリア内の画素アドレスnの画像信号出力値SI(n)を検出する。S809では制御部14は、S808で検出した画像信号出力値SI(n)が、図17を参照して説明した画像出力閾値SIth以上か否かを判定する。制御部14は、画像信号出力値SI(n)が画像出力閾値SIth以上であると判定した場合(S809でYES)、処理をS810へ進め、画像信号出力値SI(n)が画像出力閾値SIthより小さいと判定した場合(S809でNO)、処理をS811へ進める。
S810では制御部14は、画像飽和カウントCIの値を1だけインクリメントし、その後、処理をS811へ進める。S811では制御部14は、次の画素アドレスの画像信号レベルをチェックする(画素アドレスnの隣の画素を確認する)ために、画素アドレスnを1だけインクリメントする。S812では制御部14は、撮像画素数NPと画素アドレスnとを比較して、測距エリア内の全画素に対する飽和カウント動作(S805〜S810)が終了したか否か(NP>nが成り立つか否か)を判断する。制御部14は、NP<nであると判定した場合(S812でYES)、処理をS813へ進め、NP<nでない(n≦NPである)と判定した場合(S812でNO)、処理をS805へ戻す。
S813では制御部14は、最新のA像飽和カウントCAと画像飽和カウントCIを用いて、測距エリア内における飽和画素比率を算出する。具体的には、A像飽和カウント比率CRAは“CRA=CA/NP”により、画像飽和カウント比率CRIは“CRI=CI/NP”によりそれぞれ求められる。S814では制御部14は、S813で算出したA像飽和カウント比率CRA又は画像飽和カウント比率CRIが予め定められた所定の飽和カウント比率閾値Cth以上であるか否かを判定する。飽和カウント比率閾値Cthは、主撮像素子102Aによって求められるデフォーカス量の信頼度を保つことができる範囲の上限(デフォーカス量の信頼度が低下する範囲の下限)を表している。
A像飽和カウント比率CRA又は画像飽和カウント比率CRIが飽和カウント比率閾値Cthより小さい場合には、主撮像光学系10を用いて測距を行うことが可能である。よって、制御部14は、S814の判定がNOとなる場合には、処理をS815へ進める。S815では制御部14は、主位相差処理部12を動作させて、図15を参照して説明した撮像動作により得られたA像信号及びB像信号を用いた公知の位相差処理を行い、視差信号を得る。制御部14は、S815の後、処理をS821へ進める。
A像飽和カウント比率CRA又は画像飽和カウント比率CRIが飽和カウント比率閾値Cth以上の場合には、主撮像光学系10での焦点検出精度は低下している。そこで、制御部14は、S814の判定がYESとなる場合には、主撮像光学系10を用いた測距から副撮像光学系20を用いた測距へと切り替えるために、処理をS816へ進める。S816〜S823の処理は、S822の後に処理がS801へ戻される点を除いて、S604〜S612の処理(図10参照)と同じであるため、説明を省略する。
このように第3実施形態では、焦点検出と撮像を兼ねる画素構造を持つ主撮像素子102Aにおいて、主撮像光学系10を用いた測距の信頼性を担保できない状況となったときに副撮像光学系20を用いた測距に切り替える。これにより、主撮像光学系10に最適な撮影条件を適用しながら、適切な測距を行うことが可能になる。
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。更に、上述した各実施形態は本発明の一実施形態を示すものにすぎず、各実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
本発明は、上述した実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。