JP2019190729A - 廃棄物焼却装置及び廃棄物焼却方法 - Google Patents

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知広 傳田
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翔太 川崎
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Abstract

【課題】サーマルNOx、フューエルNOxの発生抑制を行なう廃棄物焼却装置及び方法を提供することを課題とする。【解決手段】乾燥火格子5a、燃焼火格子5b及び後燃焼火格子5cを有する廃棄物焼却炉1を備える廃棄物焼却装置において、廃棄物燃焼用の一次空気を乾燥火格子5aと燃焼火格子5bの下方から供給する一次空気供給手段8,9と、廃棄物焼却炉1の排ガスの一部を循環排ガスとして燃焼火格子5aと後燃焼火格子5bの下方から供給する火格子循環排ガス供給手段17,18,19,21とを具備し、一次空気供給手段8,9と火格子循環排ガス供給手段17,18,19,21は、燃焼火格子5bに対しては一次空気と循環排ガスを廃棄物の移動方向で交互の位置で供給するように設けられている。【選択図】図1

Description

本発明は、都市ごみ等の廃棄物を焼却する火格子式の廃棄物焼却炉を備える廃棄物焼却装置及び廃棄物焼却方法に関する。
都市ごみ等の廃棄物を焼却処理する焼却炉として、火格子式廃棄物焼却炉が広く用いられている。その代表的な焼却炉の構成の概要は、次のごとくである。
火格子式廃棄物焼却炉は、廃棄物を燃焼する燃焼室の下部に廃棄物の移動方向に配置され三段から成る火格子(乾燥火格子、燃焼火格子そして後燃焼火格子)を有し、後燃焼火格子の上方に位置する燃焼室の出口に二次燃焼室が連設されている。該燃焼室には乾燥火格子の上方に位置して廃棄物投入口が設けられている。そして後燃焼火格子の廃棄物の移動方向下流側下方には灰落下口が設けられている。通常、上記二次燃焼室は廃熱回収用の廃熱ボイラの一部でもあり、その入口近傍部分である。また、乾燥火格子、燃焼火格子そして後燃焼火格子それぞれの火格子下から燃焼用一次空気を吹き込む燃焼用一次空気吹込み機構が設けられている。
このような火格子式廃棄物焼却炉において、廃棄物投入口から燃焼室内に投入された廃棄物は、乾燥火格子上に堆積され、乾燥火格子の下からの空気と炉内の輻射熱により乾燥されると共に、昇温されて着火する。すなわち、上記乾燥火格子の直上方では、廃棄物の移動方向の上流側空間で乾燥領域が形成され、乾燥火格子の直上方の下流側空間から燃焼火格子の直上方の上流側空間にかけて燃焼開始領域が形成される。燃焼開始領域で着火して燃焼を開始した廃棄物は、乾燥火格子から燃焼火格子上に送られ、廃棄物が熱分解されて可燃性ガスが発生し、燃焼火格子の下から送られる燃焼用一次空気により可燃性ガスと固形分が燃焼し、燃焼火格子の直上方空間で主燃焼領域が形成される。そして、更に後燃焼火格子上で、固定炭素など未燃分が完全に燃焼し、該後燃焼火格子の直上方空間で後燃焼領域が形成される。しかる後、燃焼後に残った灰は、灰落下口より外部に排出される。
かくして、火格子式廃棄物焼却炉では、廃棄物は燃焼室にて乾燥火格子、燃焼火格子そして後燃焼火格子の三段の火格子の下から吹き込まれる燃焼用一次空気により燃焼する。さらに、燃焼室からの燃焼排ガスに含まれている可燃性ガスの未燃分は、二次燃焼室で二次燃焼用空気を受けて燃焼する。
従来の火格子式廃棄物焼却炉では、実際に焼却炉内に供給する空気量を廃棄物の燃焼に必要な理論空気量で除した比(空気比)は、通常、1.4〜1.5程度である。これは、一般燃料の燃焼に必要な空気比である1.0〜1.2に比べて大きくなっている。その理由は、廃棄物には、一般燃料としての液体燃料や気体燃料に比べて不燃分が多く、かつ不均質なため、空気の利用効率が低く、燃焼を行うには多量の空気が必要となるためである。しかし、単に供給空気を多くすると、空気比が大きくなるにしたがって排ガス量も多くなるので、これに伴ってより大きな排ガス処理設備が必要となる。
廃棄物焼却炉において空気比を小さくした状態で、支障なく廃棄物を燃焼することができれば、排ガス量は低減し、排ガス処理設備がコンパクトになり、その結果、廃棄物焼却施設全体が小型化して設備費を低減できる。これに加えて、排ガス処理のための薬剤使用量も低減するので、運転費を低減できる。さらには、排ガス量の低減により廃熱ボイラの熱回収率を向上できるので、熱回収できずに大気に捨てられる熱量を低減させ、これに伴って廃棄物焼却廃熱を利用する発電の効率を上げることができる。
このように、低空気比燃焼を行う利点は大きいが、一方で、空気比が1.3以下の低空気比燃焼では燃焼が不安定になるという問題が生じる。すなわち、低空気比で廃棄物を燃焼させると、燃焼が不安定となり、COの発生が増加したり、煤が大量に発生したりして排ガス中の有害物が増加するという問題が生じ、また、火炎温度が局所的に上昇してNOxが急増したり、廃棄物や灰が溶融して炉壁に付着してクリンカが発生したり、炉壁の耐火物の寿命が短くなるという問題点がある。
このような状況のもとで、空気比が1.3以下の低空気比で安定して燃焼することができる廃棄物焼却炉が検討されており、特許文献1に開示されている。この特許文献1では、廃棄物焼却炉から排出された排ガスを除塵した後、該排ガスと空気とを混合した高温ガスを燃焼室内に吹き込むことにより、以下の効果が得られるとしている。
即ち、低空気比のもとでも、高温ガスの顕熱により廃棄物の熱分解を促進すること、酸素を含んだ高温ガスの吹込みにより廃棄物の熱分解により発生した可燃性ガスの燃焼を促進すること、さらに高温ガスを燃焼室の側壁に設けたノズルから燃焼室内に吹き込み、この高温ガスの流れと、廃棄物から発生した可燃性ガスと燃焼ガスとの上昇流とを衝突させ、廃棄物層直上に流れの遅いよどみ領域を形成することにより、火炎が定在するためその火炎からの輻射熱により廃棄物の熱分解が促進され安定した燃焼が行われることなどの効果があり、高温ガスを燃焼室内に吹き込むことにより、低空気比燃焼操業下で廃棄物の燃焼を安定して行わせることができるとしている。
一方、廃棄物焼却炉では、廃棄物に含まれる窒素分や空気中の窒素が高温下で反応してNOxが発生する。廃棄物に含まれる窒素によるNOxがフューエルNOx、空気中の窒素によるNOxがサーマルNOxと称されている。焼却炉から排出される排ガスを煙突から大気中に排出する際に、排ガス中のNOx濃度を規制値以下にしなければならないため、排ガス処理系の脱硝装置でNOxを除去しているが、焼却炉内で発生するNOx量を抑制することが根本的な対策であり、これが要望されている。
発生するNOx量を抑制するために、特許文献1に開示された廃棄物焼却炉では、上述した空気と排ガスを混合した高温ガスの吹込みに加え、さらに、該高温ガスの吹込み位置の上方又はガス流れ方向下流側に、焼却炉からの排ガスの一部を循環排ガスとして吹き込むようになっている。
循環排ガスを高温ガスの吹込み位置の上方又はガス流れ方向下流側に吹き込むことにより、燃焼室内の高温ガスの吹込みによって安定化された燃焼領域の上方又はガス流れ方向下流側の火炎温度を低下させ、局所的な高温領域の発生を抑制し炉内温度を広範囲にわたって均一化させ、空気中の窒素が高温領域で反応して生成するサーマルNOxをより効果的に抑制する。
国際公開2004−092648号公報
特許文献1によれば、燃焼室側壁あるいは天井に設けられた孔から循環排ガスが炉内に
吹き込まれ、この循環排ガスが炉内ガスを攪拌して局所高温領域発生の抑制(炉内温度分布の均一化)が可能となるので、空気中の窒素に由来する温度依存性の高いサーマルNOxに対して発生抑制の効果がある、とされている。この効果を十分に発揮するためには、焼却炉から排出する排ガス量に対する循環排ガス供給量の比率である排ガス循環率を概ね10%以上又は20%以上で供給していた。排ガス循環率は高くするほど、NOx発生量はそれに応じて低減するが、排ガス循環率を高くすることにより問題が生じる。すなわち、廃棄物が燃焼する火炎温度が低下しすぎて、焼却炉の安定操業上必要である炉内温度を所定温度に維持することの指標としている焼却炉出口温度を所定温度(850℃程度)に保つことが困難になったり、廃棄物の安定的な燃焼に支障が生じ排ガス中の未燃分(CO、すすなど)の排出量が増加したり、廃棄物の燃焼が完全に行われず焼却灰中の未燃分比率(熱灼減量)が大きくなるという問題が生じる。また、排ガス循環率を高くすると、排ガス循環のためのファンの送風量やダクトを大きくすることとなり設備コストや運転コストが嵩む問題が生じる。
さらには、廃棄物焼却の際には、廃棄物中の窒素分から発生し、温度依存性よりも廃棄物が熱分解・ガス化する領域の酸素濃度への依存性が大きいフューエルNOxの発生を抑制する必要がある。廃棄物焼却炉ではフューエルNOxが発生する割合が大きいと言われている。特許文献1では、廃棄物中の窒素分に由来するフューエルNOx発生抑制には効果は限定的である。
本発明は、このような事情に鑑み、廃棄物焼却炉において、循環排ガスを燃焼室内へ供給することによりサーマルNOxの発生を抑制する際に、排ガス循環率を過大にすることを回避でき、さらに、フューエルNOxの発生をも抑制する廃棄物焼却装置及び廃棄物焼却方法を提供することを課題とする。
本発明は、上述の課題を解決するために、廃棄物焼却装置そして廃棄物焼却方法に関して次のように構成される。
[廃棄物焼却装置]
本発明の廃棄物焼却装置は、次のように構成される。
乾燥火格子、燃焼火格子及び後燃焼火格子を有する廃棄物焼却炉を備える廃棄物焼却装置において、
廃棄物燃焼用の一次空気を、乾燥火格子の下方から供給する乾燥火格子一次空気供給手段と燃焼火格子の下方から供給する燃焼火格子一次空気供給手段と、
廃棄物焼却炉の排ガスの一部を循環排ガスとして、燃焼火格子の下方から供給する燃焼火格子循環排ガス供給手段と、後燃焼火格子の下方から供給する後燃焼火格子循環排ガス供給手段とを具備し、
燃焼火格子一次空気供給手段と燃焼火格子循環排ガス供給手段は、一次空気と循環排ガスを燃焼火格子の廃棄物の移動方向で交互の位置で供給することを特徴とする廃棄物焼却装置。
本発明において、循環排ガスを廃棄物焼却炉の燃焼室の側壁又は天井に設けられた循環排ガス吹込口から供給する側壁・天井循環排ガス供給手段を具備することが好ましい。
本発明において、高温ガスを燃焼室の側壁又は天井に設けられた高温ガス吹込口から供給する高温ガス供給手段を具備することが好ましい。
また、本発明において、循環排ガスを廃棄物焼却炉の燃焼室の側壁又は天井に設けられ、高温ガス吹込口の上方又は高温ガス吹込口の炉内ガス流れ方向下流側に位置する循環排ガス吹込口から供給する側壁・天井循環排ガス供給手段を具備することが好ましい。
また、本発明において、後燃焼火格子の下方から供給する循環排ガス供給量を制御する後燃焼火格子循環排ガス供給制御手段を具備し、後燃焼火格子循環排ガス供給制御手段は、後燃焼火格子の下方から供給する循環排ガス供給量を、焼却炉から排出される焼却灰排出量1kg/hあたり5〜10Nm/hとするように後燃焼火格子循環排ガス供給手段を制御することが好ましい。循環排ガス供給量が5Nm/hより少ないとチャーの燃焼促進効果が低く、焼却炉出口において存在する未燃分量を十分に低減することができない。10Nm/hより多いと循環排ガス供給のための設備費用、運転費用が嵩み不適である。
[廃棄物焼却方法]
本発明の廃棄物焼却方法は、次のように構成される。
乾燥火格子、燃焼火格子及び後燃焼火格子を有する廃棄物焼却炉を備える廃棄物焼却装置による廃棄物焼却方法において、
廃棄物燃焼用の一次空気を、乾燥火格子一次空気供給手段で乾燥火格子の下方から供給し、燃焼火格子一次空気供給手段で燃焼火格子の下方から供給し、
廃棄物焼却炉の排ガスの一部を循環排ガスとして、燃焼火格子循環排ガス供給手段で燃焼火格子の下方から供給し、後燃焼火格子循環排ガス供給手段で後燃焼火格子の下方から供給し、
燃焼火格子一次空気供給手段と燃焼火格子循環排ガス供給手段により、一次空気と循環排ガスを、燃焼火格子の廃棄物の移動方向で交互の位置で供給することを特徴とする廃棄物焼却方法。
本発明において、側壁・天井循環排ガス供給手段で循環排ガスを廃棄物焼却炉の燃焼室の側壁又は天井に設けられた循環排ガス吹込口から供給することが好ましい。
本発明において、高温ガス供給手段で高温ガスを燃焼室の側壁又は天井に設けられた高温ガス吹込口から供給することが好ましい。
また、本発明において、側壁・天井循環排ガス供給手段で循環排ガスを廃棄物焼却炉の燃焼室の側壁又は天井に設けられ、高温ガス吹込口の上方又は高温ガス吹込口の炉内ガス流れ方向下流側に位置する循環排ガス吹込口から供給することが好ましい。
また、本発明において、後燃焼火格子循環排ガス供給制御手段で、後燃焼火格子の下方から供給する循環排ガス供給量を、焼却炉から排出される焼却灰排出量1kg/hあたり5〜10Nm/hとするように後燃焼火格子循環排ガス供給手段を制御することが好ましい。
本発明によれば、次のような効果を得る。
(A)循環排ガスを燃焼火格子の下方から供給することによる効果
一次空気と循環排ガスを燃焼火格子の下方から交互に供給することで以下の効果を得る。
<NOx発生抑制>
燃焼火格子の下方から一次空気と循環排ガスを交互に供給すると、その上部で起こる燃焼は濃淡燃焼となる。循環排ガスが供給される火格子上の廃棄物の上方では、局所空気比が1より小さいときの火炎(濃火炎)が形成され、一次空気が供給される火格子上の廃棄物の上方では、局所空気比が1より大きいときの火炎(淡火炎)が形成され、燃焼火格子上で濃火炎と淡火炎とが交互に存在する。
これによって、燃焼火格子の全てに一次空気を供給する場合に比べて、燃焼室内で火炎温度が平準化するため、局所高温場の発生を抑制することができ、サーマルNOxの発生を抑制することができる。
廃棄物が熱分解・ガス化するとき廃棄物中の窒素分の一部は揮発し,主にHCN,NHとして放出される.これらは酸化されてフューエルNOxに転換する。濃火炎では空気不足であるため、NOx生成量は少なく、NHやHCNが多く存在する。一方、淡火炎では空気過剰であるためNOxが多く存在する。濃火炎と淡火炎が交互に存在することにより、濃火炎側で発生したNHやHCNが淡火炎側で発生したNOxを還元する還元剤として働き、これによって、フューエルNOxの発生を抑制することができる。
<未燃分発生抑制>
循環排ガスには10〜30vol%の水蒸気が含まれる。循環排ガスを燃焼火格子の下方から供給して廃棄物の熱分解・ガス化が活発となっている領域に供給することにより、廃棄物の熱分解により発生した炭化水素系ガス(CHなど)が排ガス中の水蒸気により水蒸気改質され、よりCOやHになる。水蒸気改質が行われる条件は、温度が700〜1100℃で金属触媒(微量金属)が存在することであるが、廃棄物焼却炉の燃焼室内では廃棄物に金属が含まれておりこれらの条件が充足されている。水蒸気改質により生じたCOやHは炭化水素系ガスよりも可燃限界範囲が広く燃焼速度が速いので燃焼室内で燃焼が完了し、焼却炉出口において存在する未燃分(COやすすなど)の量を低減できる。
(B)循環排ガスを後燃焼火格子の下方から供給することによるチャー(固定炭素)の燃焼促進効果
後燃焼火格子では廃棄物中の固定炭素(チャー)が熾燃焼している。後燃焼火格子の下方から循環排ガスを供給することにより、排ガス中の水蒸気によりチャーがCOへと改質する。チャーが燃焼してCOとなる燃焼速度よりもCOが燃焼してCOとなる燃焼速度の方が大きいので、燃焼室内でチャーの燃焼が促進され、焼却炉出口において存在する未燃分(固定炭素未燃分)の量を低減できる。
(C)循環排ガスを廃棄物焼却炉の燃焼室の側壁又は天井から供給することによる効果
燃焼室内で廃棄物の熱分解、部分酸化により発生する可燃性ガスが燃焼する領域に循環排ガスを供給することにより、可燃性ガスの希釈や撹拌が行われて、可燃性ガスが安定してかつ領域で均一に燃焼するため、火炎温度が均一となり局所高温場が生じないので、サーマルNOx発生を抑制できる。
本発明の一実施形態としての廃棄物焼却装置の概要構成図である。 図1装置における火格子の部分のみを示す概要平面図である
[実施形態装置の構成]
以下、本発明の一実施形態の火格子式の廃棄物焼却装置の基本構成、各構成装置そして作用について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る廃棄物焼却装置を示す概要構成図である。以下、まず、本発明の一実施形態に係る廃棄物焼却装置の基本構成の概要を説明し、次いで各構成装置の詳細を説明し、さらに制御装置と制御方法の詳細を説明する。この実施形態において、燃焼室内での廃棄物の移動方向における燃焼室の上流側を前部、下流側を後部ということがある。
<火格子式焼却炉の基本構成>
図1に示す火格子式の廃棄物焼却炉1は、後述する高温ガスを側壁又は天井から吹き込むことにより低空気比燃焼を安定して行うことによって、火格子式廃棄物焼却炉設備をコンパクトにすることができ、設備費用、運転費用を大幅に低減できる。
本実施形態に係る廃棄物焼却炉1は、燃焼室2と、この燃焼室2での廃棄物の移動方向で該燃焼室2に対し上流側(図1にて左側)上方に配置され、廃棄物を燃焼室内に投入するための廃棄物投入口3と、燃焼室2での廃棄物の移動方向で燃焼室2に対し下流側(図1にて右側)の上方に連設される廃熱ボイラ4とを備える火格子式の焼却炉である。
燃焼室2の底部には、廃棄物を移動させながら燃焼させる火格子(ストーカ)5が設けられている。この火格子5は、廃棄物投入口3に近い方から、すなわち、上流側から乾燥火格子5a、燃焼火格子5b、後燃焼火格子5cの順に設けられている。乾燥火格子5a、燃焼火格子5b、後燃焼火格子5cのいずれも、図2に見られるように、廃棄物の移動方向で、複数段に分割されている。
乾燥火格子5aでは主として廃棄物の乾燥と着火が行われる。燃焼火格子5bでは主として廃棄物の熱分解、部分酸化が行われ、熱分解により発生した可燃性ガスと固形分の燃焼が行われる。後燃焼火格子5c上では、僅かに残った廃棄物中の未燃分が完全に燃焼される。完全に燃焼した後の燃焼灰は、灰落下口6より排出される。
このような本実施形態の焼却炉では、廃棄物投入口3から投入された廃棄物が層を形成し、この層が乾燥火格子5aと燃焼火格子5bの上に形成され、該廃棄物の燃焼により、燃焼室2内の空間には、火格子上の廃棄物層の直上の空間に、以下のように、乾燥領域、燃焼開始領域、主燃焼領域そして後燃焼領域の諸領域が形成される。
乾燥火格子5aの直上方で廃棄物投入口3の下方に対応して位置する、該乾燥火格子5aの廃棄物の移動方向の上流側範囲(前部)の上方の空間には乾燥領域が形成される。
乾燥火格子5aの下流側範囲(後部)から燃焼火格子5bの上流側範囲(前部)の上方の空間には燃焼開始領域が形成される。すなわち、乾燥火格子5aの廃棄物は、上流側範囲で乾燥され、下流側範囲で着火して、燃焼火格子5bの上流側範囲(前部)までの範囲で燃焼が開始する。
燃焼火格子5b上の廃棄物はここで熱分解そして部分酸化が行われ、可燃性ガスが発生し、その可燃性ガスと廃棄物の固形分(可燃分)が燃焼する。廃棄物はこの燃焼火格子5b上で実質的に殆んど燃焼される。こうして、上記燃焼火格子5bの上方に主燃焼領域が形成される。
しかる後、僅かに残った廃棄物中の固定炭素など未燃分が後燃焼火格子5c上で完全に燃焼される。この後燃焼火格子5cの上方の空間に後燃焼領域が形成される。
燃焼室2内で廃棄物が燃焼される場合、まず乾燥領域で廃棄物からの水分の蒸発が起こり、次いで燃焼開始領域で熱分解と部分酸化反応が起こり、可燃性ガスが生成し始める。このように、燃焼開始領域とは、廃棄物の熱分解、部分酸化により可燃性ガスが生成し始め、可燃性ガスと廃棄物の固形分の燃焼が始まる領域である。また、主燃焼領域とは、廃棄物の熱分解、部分酸化が盛んに行われ可燃性ガスが発生し、その可燃性ガスが火炎を伴って燃焼しているとともに廃棄物の固形分が燃焼する燃焼領域であり、火炎を伴う燃焼が完了する点(燃え切り点)までの領域である。燃え切り点より後の領域では、廃棄物中の固形未燃分(チャー)が燃焼するチャー燃焼領域(後燃焼領域)となる。
上記燃焼室2内の乾燥火格子5a、燃焼火格子5b及び後燃焼火格子5cの下部には、それぞれ風箱7a,7b,7cが設けられている。ブロワ8により供給される燃焼用の一次空気は、後述の一次燃焼空気供給手段としての燃焼用の一次空気供給管9とその分岐供給管9a,9bを通って上記各風箱7a,7bに供給され、各火格子5a,5bを通って上昇し燃焼室2内に供給される。なお、火格子の下方から供給される燃焼用の一次空気は、火格子5a,5b上の廃棄物の乾燥及び燃焼に使われるほか、火格子5a,5bの冷却作用、廃棄物の攪拌作用をも有する。
上記燃焼室2の下流側における出口には廃熱ボイラ4が連設され、廃熱ボイラ4の入口近傍が燃焼室2から排出されるガス中の未燃ガスを燃焼する二次燃焼領域10となっている。廃熱ボイラ4の一部である二次燃焼領域10内で二次燃焼用空気(二次空気)が吹込口26から吹き込まれ、未燃ガスが二次燃焼し、この二次燃焼の後に燃焼排ガスは廃熱ボイラ4で熱回収される。熱回収された後、廃熱ボイラ4から排出された燃焼排ガスは、減温塔11で冷却され、図示しない排ガス処理装置系で消石灰等の吹込みによる酸性ガスの中和と、活性炭によるダイオキシン類等有害物の吸着除去が行われ、さらに集塵装置12に送られ、中和反応生成物、有害物を吸着した活性炭、ダストなどが回収される。上記集塵装置12で除塵され、無害化された後の燃焼排ガスは、誘引ファン13により誘引され、煙突14から大気中に放出される。
このような基本構成である火格子式焼却炉において、本実施形態に係る廃棄物焼却炉1は、燃焼用の一次空気を乾燥火格子5aと燃焼火格子5bの下方から上記燃焼室2内に吹き込む乾燥火格子一次空気供給手段と燃焼火格子一次空気供給手段に加え、廃棄物焼却炉1から排出され減温塔11で冷却され集塵装置12で除塵された排ガスの一部を抜き出し循環排ガスとして燃焼火格子5bそして後燃焼火格子5cの下方から上記燃焼室2内に吹き込む燃焼火格子循環排ガス供給手段と後燃焼火格子循環排ガス供給手段と、側壁又は天井から高温ガスを燃焼室2内に吹き込む高温ガス供給手段と、二次燃焼用の二次空気を二次燃焼領域10内に吹き込む二次空気供給手段とを具備している。
上記燃焼火格子5bの下方へは、燃焼火格子循環排ガス供給手段から循環排ガスが供給されるとともに、既述のごとく燃焼火格子一次空気供給手段から一次空気も供給される。
燃焼火格子5bは、廃棄物の移動方向で、複数段に分割されており、図2に見られるように、燃焼火格子一次空気供給手段と燃焼火格子循環排ガス供給手段は、燃焼火格子5bに対して一次空気と循環排ガスを廃棄物の移動方向で該燃焼火格子5bの複数の段について奇数段Xには一次空気を、偶数段Yには循環排ガスを供給するように交互に各段へ供給するように設けられている。
<一次空気供給手段>
本実施形態では、廃棄物焼却炉1は、燃焼用空気となる一次空気を供給する一次空気供給手段として、乾燥火格子一次空気供給手段と燃焼火格子一次空気供給手段とを備えている。乾燥火格子一次空気供給手段は、空気供給源からの一次空気をブロワ8そして一次空気供給管9を経て、乾燥火格子5aの下方の風箱7aに分岐供給管9aから送り込むようになっており、該分岐供給管9aには、流量調整機構としてのダンパ16aが設けられている。乾燥火格子5aへの一次空気供給量の調整はダンパ16aによりなされる。燃焼火格子一次空気供給手段は、空気供給源からの一次空気をブロワ8そして一次空気供給管9を経て、燃焼火格子5bの下方の風箱7bに分岐供給管9bから送り込むようになっており、該分岐供給管9bには、流量調整機構としてのダンパ16bが設けられている。燃焼火格子5bへの一次空気供給量の調整はダンパ16bによりなされる。燃焼火格子5bでは、燃焼火格子一次空気供給手段と燃焼火格子循環排ガス供給手段が、一次空気と循環排ガスを廃棄物の移動方向で該燃焼火格子5bの複数の段について例えば奇数段には一次空気を、偶数段には循環排ガスを供給するように交互に各段へ供給するように設けられている。
<高温ガス供給手段>
本実施形態では、廃棄物焼却炉1は、高温ガスを上記燃焼室2の側壁から、紙面と直角な炉幅方向で内方に向け、斜め下方に、又は天井から下向きに吹き込む高温ガス吹込口15a,15bを有する高温ガス供給手段を備えている。この高温ガス供給手段により、高温ガス吹込口15a,15bから高温ガスが燃焼開始領域から主燃焼領域までの領域に向かって吹き込まれる。
高温ガス供給手段は、燃焼室2の外に設けられ高温ガスを供給する高温ガス供給源(図示せず)と、燃焼室2へ高温ガスを吹き込む高温ガス吹込口15a,15bと流量調整機構としてのダンパ(図示せず)と、高温ガス供給源から高温ガス吹込口15a,15bへ導く高温ガス供給管15とを有している。上記高温ガス供給源では、所定の温度範囲、酸素濃度範囲に調整された高温ガスが調製される。
高温ガス吹込口15a,15bは、燃焼室2の側壁又は天井に、乾燥火格子5aの廃棄物の移動方向下流側(後部)から燃焼火格子5bまでの火格子上の廃棄物層の直上領域に向かって高温ガスを吹き込むように設けられている。
高温ガス吹込口15a,15bは、燃焼室2の側壁に設けられる場合には高温ガスの噴出し方向が斜め下向きとなるように、燃焼室2の天井に設けられる場合には高温ガスの噴出し方向が下向きとなるように設けられている。かくして、高温ガス吹込口15a,15bから高温ガスが燃焼開始領域から主燃焼領域までの領域に向かって吹き込まれる。
上記高温ガス吹込口15a,15bは、炉幅方向(図1にて紙面に対して直角な方向)にも複数箇所に設けられていてもよいし、また、高温ガス吹込口15a,15bは、上記設定範囲内でそれぞれ炉長方向の複数位置に配置されてもよい。
<循環排ガス供給手段>
本実施形態では、廃棄物焼却炉1から排出され減温塔11で冷却され集塵装置12で除塵された排ガスの一部を抜き出し循環排ガスとして燃焼室2へ吹き込む循環排ガス供給手段が設けられている。循環排ガス供給手段は、循環排ガスを廃棄物焼却炉1の燃焼室2の側壁又は天井に設けられた循環排ガス吹出口22から供給する側壁・天井循環排ガス供給手段と、循環排ガスを燃焼火格子5bの下方から供給する燃焼火格子循環排ガス供給手段と、循環排ガスを後燃焼火格子5cの下方から供給する後燃焼火格子循環排ガス供給手段の三種の循環排ガス供給手段を有している。
集塵装置12の下流側で煙道Aから分岐された循環排ガス供給管17が設けられ、ブロワ18を経て、該循環排ガス供給管17が分岐供給管19、分岐供給管20と分岐供給管21とに分岐されている。分岐供給管19と分岐供給管19bとが、燃焼火格子5bの下部の風箱7bに接続されていて分岐供給管19bに設けられた流量調節機構としてのダンパ20bとで燃焼火格子循環排ガス供給手段を形成している。また、分岐供給管19cが後燃焼火格子5cの下部の風箱7cに接続されていて分岐供給管19cに設けられた流量調整機構としてのダンパ20cとで後燃焼火格子循環排ガス供給手段を形成している。上記循環排ガス供給管17とブロワ18は循環排ガス供給手段の一部をなしている。既述のごとく、燃焼火格子5bへは、該燃焼火格子5bの複数の段に対し、循環排ガスと一次空気とが交互をなして各段に供給されるようになっている。例えば、図2にて奇数段Xに一次空気を、偶数段Yに循環排ガスを供給する。
また、上記循環ガス供給管17からは、ブロワ18の後流位置にて、他の分岐供給管20が設けられ、該分岐供給管20が上記高温ガス供給手段の高温ガス供給源に接続されていて、循環排ガスの一部を高温ガス供給源に導き、高温空気と循環排ガスの一部とを混合して調製した高温ガスを高温ガス供給管15を経て高温ガス吹込口15a,15bから燃焼室2内へ吹き込んでいる。なお、循環排ガス供給管17からは、循環排ガスを後述の燃焼室2の天井又は側壁に設けられた循環排ガス吹込口22へ送る他の分岐供給管21が延びていて、側壁・天井循環排ガス供給手段の一部となっている。
≪側壁・天井循環排ガス供給手段≫
側壁・天井循環排ガス供給手段は、既述の循環排ガス供給管17からブロワ18の後流位置でさらに分岐された他の分岐供給管21でダンパ21aを経て、循環排ガスの一部を燃焼室2の側壁又は天井に設けられた循環排ガス吹込口22から燃焼室2へ吹き込むことで構成されている。該循環排ガス吹込口22は、既述の高温ガス吹込口15a,15bの位置の上方又は炉内ガス流れ方向下流側に設けられている。燃焼室2内の高温ガス吹込口15a,15bの上方又は炉内ガス流れ方向下流側の領域では廃棄物が熱分解して発生した熱分解ガスが燃焼しており、この廃棄物熱分解ガス燃焼領域に向け循環排ガス吹込口22から循環排ガスを吹き込むようになっている。
上記の循環排ガス吹込口22は、高温ガスの吹込みによって形成されたガスのよどみ領域の上方又はガス流れ方向下流側領域のガス温度分布及び酸素濃度分布を平均化するのが目的であるため、少なくとも一対を対向させ或いはガスの吹き込み方向が水平又は下向きとなるように設けることが必須ではない。
≪燃焼火格子循環排ガス供給手段≫
燃焼火格子循環排ガス供給手段は、循環排ガス供給管17からの分岐供給管19と分岐供給管19bからダンパ20bを経て燃焼火格子5bの下方へ循環排ガスを供給するように構成されている。燃焼火格子5bでは、燃焼火格子一次空気供給手段と燃焼火格子循環排ガス供給手段が、該燃焼火格子5bの複数の段に対し、循環排ガスと一次空気とが交互をなして各段に供給されるようになっている。例えば、図2にて奇数段Xに一次空気を、偶数段Yに循環排ガスを供給する。かくして、燃焼火格子5bの下方から燃焼火格子5b上の廃棄物層へ循環排ガスと一次空気とが廃棄物移動方向で交互に吹き込まれる。
≪後燃焼火格子循環排ガス供給手段≫
後燃焼火格子循環排ガス供給手段は、循環排ガス供給管17からの分岐供給管19と分岐供給管19cからダンパ20c、風箱7cを経て後燃焼火格子5cの下方へ循環排ガスを供給するように構成されている。後燃焼火格子5c上の熾燃焼状態の廃棄物へは、循環排ガスのみが供給され、ダンパ20cを調整して循環排ガス供給量を調整して、固定炭素の燃焼が促進される。
≪循環排ガスを後燃焼火格子の下方から供給することによるチャー(固定炭素)の燃焼促進効果≫
後燃焼火格子では廃棄物中の固定炭素(チャー)が熾燃焼している。後燃焼火格子の下方から循環排ガスを供給することにより、排ガス中の水蒸気によりチャーがCOへと改質する。チャーが燃焼してCOとなる燃焼速度よりもCOが燃焼してCOとなる燃焼速度の方が大きいので、燃焼室内でチャーの燃焼が促進され、焼却炉出口において存在する未燃分(固定炭素未燃分)の量を低減できる。
<二次空気供給手段>
本実施形態では、廃棄物焼却炉1は、二次燃焼領域10内へ二次燃焼用空気となる二次空気を供給する二次空気供給手段を備えている。二次空気供給手段は、空気供給源からの二次空気を二次空気供給管23、ブロワ24、供給量調整機構としてのダンパ25を経て、吹込口26から二次燃焼領域10内へ供給するようになっている。
なお、本発明において、上記燃焼用一次空気、高温ガスそして循環排ガスを供給するための管路等の構成は図示したものに限定されず、焼却炉の規模、形状、用途等により適宜選択され得る。
次に、このように構成される本実施形態の装置での廃棄物の燃焼状況の概要、一次空気の供給、高温ガス供給による燃焼安定化、循環排ガスと一次空気の交互の供給あるいは循環排ガスの供給によるNOx発生抑制について説明する。
[実施形態装置における作用]
<燃焼状況の概要>
先ず、廃棄物投入口3へ廃棄物を投入すると、落下する廃棄物は乾燥火格子5a上に堆積され、各火格子の動作により、燃焼火格子5b上そして後燃焼火格子5c上へと移動し、乾燥火格子5a上と燃焼火格子5b上に廃棄物の層を形成する。乾燥火格子5aは風箱7aを経て燃焼用の一次空気を受け、燃焼火格子5bは風箱7bを経て一次空気と循環排ガスの混合ガスを受け、また後燃焼火格子5cは風箱7cを経て循環排ガスを受けており、これにより各火格子の廃棄物は次のようにして乾燥そして燃焼される。
乾燥火格子5a上では主として廃棄物の乾燥と着火が行われる。すなわち、乾燥火格子5aの廃棄物は、該乾燥火格子5aの上流側範囲で乾燥され下流側範囲で着火して、燃焼火格子5bの上流側範囲(前部)までの範囲で燃焼が開始する。燃焼火格子5b上では主として廃棄物の熱分解、部分酸化が行われ、可燃性ガスが発生し可燃性ガスと廃棄物中の固形分の燃焼が行われる。燃焼火格子5b上において廃棄物の燃焼は実質的に完了する。後燃焼火格子5c上では、僅かに残った廃棄物中の固定炭素など未燃分を完全燃焼させる。完全燃焼した後の燃焼灰は、灰落下口6より排出される。このように廃棄物が燃焼している状態で、乾燥火格子5a、燃焼火格子5bそして後燃焼火格子5cの直上空間には、乾燥領域、燃焼開始領域、主燃焼領域そして後燃焼領域がそれぞれ形成される。
既述のごとく、燃焼室2の出口に、廃熱ボイラ4が連設されていて、廃熱ボイラ4の入口近傍が二次燃焼領域10となっている。したがって、燃焼室2内で発生した可燃性ガスの未燃分は、二次燃焼領域10に導かれ、そこで二次空気と混合・攪拌され、二次燃焼する。二次燃焼の後に燃焼排ガスは廃熱ボイラ4で熱回収される。熱回収された後、廃熱ボイラ4から排出された燃焼排ガスは、減温塔11で冷却され、消石灰等吹込みによる酸性ガスの中和と、活性炭によるダイオキシン類等有害物の吸着除去が行われ、さらに集塵装置12に送られ、中和反応生成物、有害物を吸着した活性炭、ダストなどが回収される。上記集塵装置12で除塵され、無害化された後の燃焼排ガスは、誘引ファン13により誘引され、煙突14から大気中に放出される。なお、上記集塵装置12としては、例えば、バグフィルタ方式、電気集塵方式等の集塵装置を用いることができる。
<一次空気の供給>
燃焼用一次空気は、ブロワ8から一次空気供給管9を通って乾燥火格子5a、燃焼火格子5bのそれぞれの下部に設けられた風箱7a,7bに供給された後、各火格子5a,5bを通って燃焼室2内に供給される。燃焼室2内に供給される一次空気の流量は、すなわち各風箱7a,7bに供給される流量は、各風箱に分岐して設けられたそれぞれの分岐供給管9a,9bに備える流量調節用のダンパ16a,16bにより調節される。燃焼火格子5bの廃棄物の移動方向における複数の段では、一次空気と循環排ガスが交互に各段へ供給される。燃焼用の一次空気としては、温度が常温〜200℃の範囲であり、空気を用いる。
<循環排ガスの供給>
循環排ガスが、集塵装置12の下流側で煙道Aから分岐された循環排ガス供給管17を通り、分岐供給管19,19bを通って燃焼火格子5bの下部に設けられた風箱7bに供給され、循環排ガスが、燃焼火格子5bの下方から燃焼火格子5b上の廃棄物層へ供給される。また、循環排ガスが、分岐供給管19,19cを通って後燃焼火格子5cの下部に設けられた風箱7cに供給され、後燃焼火格子5cの下方から後燃焼火格子5c上の廃棄物層へ供給される。さらに、循環排ガスが、循環排ガス供給管17を通り、分岐供給管21を通って燃焼室2の側壁に設けられた循環排ガス吹出口22から、燃焼室内へ供給される。
<燃焼火格子における一次空気と循環排ガスの交互位置での供給>
燃焼火格子5bの下方へは、燃焼火格子循環排ガス供給手段から循環排ガスが供給されるとともに、既述のごとく燃焼火格子一次空気供給手段から一次空気も供給される。燃焼火格子5bは、廃棄物の移動方向で複数段に分割されており、燃焼火格子一次空気供給手段と燃焼火格子循環排ガス供給手段により、一次空気と循環排ガスが、燃焼火格子5bの廃棄物の移動方向で交互をなして各段へ供給される。
<側壁又は天井からの循環排ガス供給によるNOx発生抑制>
循環排ガスを廃棄物焼却炉1の燃焼室2の側壁又は天井から供給することにより、燃焼室2内で廃棄物の熱分解、部分酸化により発生する可燃性ガスが燃焼する領域に循環排ガスを供給して、可燃性ガスの希釈や撹拌を行い、可燃性ガスが安定してかつ領域で均一に燃焼するため、火炎温度が均一となり局所高温場が生じないので、サーマルNOx発生が抑制される。
<一次空気と循環排ガスを燃焼火格子の下方から廃棄物移動方向で交互に供給することによる効果>
一次空気と循環排ガスを燃焼火格子の下方から廃棄物層へ廃棄物移動方向で交互に供給することで以下の効果を得る。
≪NOx発生抑制≫
燃焼火格子5bの下方から一次空気と循環排ガスを廃棄物移動方向で交互に供給すると、燃焼火格子5bの上部で起こる燃焼は濃淡燃焼となる。循環排ガスが供給される火格子上の廃棄物の上方では、局所空気比が1より小さいときの火炎(濃火炎)が形成され、一次空気が供給される火格子上の廃棄物の上方では、局所空気比が1より大きいときの火炎(淡火炎)が形成され、燃焼火格子上で濃火炎と淡火炎とが交互に存在する。
これによって、燃焼火格子5bの複数段の全てに一次空気のみを供給する場合に比べて、燃焼室2内で火炎温度が平準化するため、局所高温場の発生を抑制することができ、サーマルNOxの発生を抑制することができる。
廃棄物が熱分解・ガス化するとき廃棄物中の窒素分の一部は揮発し,主にHCN,NHとして放出される.これらは酸化されてフューエルNOxに転換する。濃火炎では空気不足であるため、NOx生成量は少なく、NHやHCNが多く存在する。一方、淡火炎では空気過剰であるためNOxが多く存在する。濃火炎と淡火炎が交互に存在することにより、濃火炎側で発生したNHやHCNが淡火炎側で発生したNOxを還元する還元剤として働き、これによって、フューエルNOxの発生を抑制することができる。
≪未燃分発生抑制≫
循環排ガスには10〜30vol%の水蒸気が含まれる。循環排ガスを燃焼火格子の下方から供給して廃棄物の熱分解・ガス化が活発となっている領域に供給することにより、廃棄物の熱分解により発生した炭化水素系ガス(CHなど)が排ガス中の水蒸気により水蒸気改質され、よりCOやHになる。水蒸気改質が行われる条件は、温度が700〜1100℃で金属触媒(微量金属)が存在することであるが、廃棄物焼却炉の燃焼室内では廃棄物に金属が含まれておりこれらの条件が充足されている。水蒸気改質により生じたCOやHは炭化水素系ガスよりも可燃限界範囲が広く燃焼速度が速いので燃焼室内で燃焼が完了し、焼却炉出口において存在する未燃分(COやすすなど)の量を低減できる。
<後燃焼火格子下方からの循環排ガス供給による未燃分発生抑制>
後燃焼火格子では廃棄物中の固定炭素(チャー)が熾燃焼している。後燃焼火格子の下方から循環排ガスを供給することにより、排ガス中の水蒸気によりチャーがCOへと改質する。チャーが燃焼してCO2となる燃焼速度よりもCOが燃焼してCO2となる燃焼速度の方が大きいので、燃焼室内でチャーの燃焼が促進され、焼却炉出口において存在する未未燃分(固定炭素未燃分)の量を低減できる。
後燃焼火格子5c上の焼却灰に循環排ガスを吹き込むことにより、焼却灰に含まれる鉛等の重金属類の無害化処理も行われる。無害化処理は、循環排ガスに含まれる二酸化炭素と焼却灰に含まれる鉛とが反応して炭酸化物化して難溶性化することにより、焼却灰からの鉛の溶出が抑制されることによりなされる。また、その際、循環排ガスに含まれる二酸化炭素と焼却灰に含まれる酸化カルシウムとが反応して炭酸カルシウムとなることにより、焼却灰は、pHが低下して、鉛が難溶性を示す難溶性領域となり、焼却灰からの鉛の溶出がさらに抑制される。
<高温ガス吹込みによる燃焼安定化>
図1に見られるように、高温ガスが、高温ガス吹込口15a,15bから、燃焼開始領域から主燃焼領域までの領域に向かって吹き込まれ、火格子上の廃棄物層に向かって下向き又は炉幅方向で内方に向け斜め下方に吹き込まれる。火炎が存在し可燃性ガスが多く存在する領域に高温ガスを吹き込むことが燃焼を安定させる上で好ましいため、可燃性ガスが多く存在する領域である燃焼開始領域から燃焼領域までの領域に上記高温ガスを吹き込む。
高温ガス吹込口15a,15bから、高温ガスを燃焼室2内の燃焼開始領域から燃焼領域までの領域に、かつ廃棄物層直上に向かって炉幅方向で内方に向け下向き又は斜め下方に吹き込むことにより、下向きに吹き込まれる高温ガスは、廃棄物の熱分解・部分酸化により生じた可燃性ガスと燃焼ガスとの上昇流と対向し、双方のガス流れが衝突し、廃棄物層直上に平面状の流れの遅いよどみ領域または上下方向に循環する循環領域が生じる。これらの領域はガス流れの速度が遅いため、可燃性ガスが燃焼する火炎が定在することになり、すなわち廃棄物層直上に平面状燃焼領域(平面火炎)が定在し、可燃性ガスが安定して燃焼される。その結果、低空気比燃焼においてもCO,NOx、ダイオキシン類等の有害物質の発生を抑制すると共に煤の生成を抑制することができる。このため、低空気比燃焼を支障なく行うことができる。
また、高温ガスの熱輻射と顕熱によって廃棄物が加熱され、熱分解・部分酸化が促進されることに加えて、廃棄物層の直上に平面状燃焼領域(平面火炎)が定在するので、この平面火炎からの熱輻射と顕熱によって廃棄物が加熱され、熱分解・部分酸化がさらに促進される。
このように、高温ガス吹き込みにより、燃焼室2内の廃棄物層直上付近に安定なよどみ領域又は循環領域を形成させることができ、平面状燃焼領域を定在させ、廃棄物焼却炉1の大きさにかかわらず、空気比が1.5以下の低空気比燃焼を行った場合においても、燃焼室2内の幅方向と長さ方向の全域に亘って燃焼の安定性が維持され、かつ、燃焼火格子5bの下方から酸素量を調整した混合ガスを吹き込むことにより、空気比が所定範囲の酸素雰囲気の下での廃棄物の熱分解・部分酸化を行うことにより、廃棄物に含まれる窒素が反応してフューエルNOxが発生することが抑制され、COやNOx等の有害ガスの発生量を低減できる廃棄物焼却装置及び廃棄物焼却方法が提供される。さらに、従来より低空気比で燃焼を行えるので焼却炉から排出される排ガス総量をさらに大幅に低減でき、また、廃熱の回収効率を向上できる廃棄物焼却装置及び廃棄物焼却方法が提供される。
<二次空気供給>
二次燃焼用空気がブロワ24により二次空気供給管23を経て吹込口26から二次燃焼領域10へ、ダンパ25により供給量を調整されて吹き込まれ、燃焼室2からの可燃ガスの未燃ガスが二次燃焼される。
1 廃棄物焼却炉
2 燃焼室
5a〜5c 火格子
5a 乾燥火格子
5b 燃焼火格子
5c 後燃焼火格子
8,9 一次空気供給手段
8 ブロワ
9 一次空気供給管
15 高温ガス供給手段(高温ガス供給管)
17,18,19,21 循環排ガス供給手段
17 循環排ガス供給管
18 ブロワ
19,19b,19c,21 分岐供給管

Claims (10)

  1. 乾燥火格子、燃焼火格子及び後燃焼火格子を有する廃棄物焼却炉を備える廃棄物焼却装置において、
    廃棄物燃焼用の一次空気を、乾燥火格子の下方から供給する乾燥火格子一次空気供給手段と燃焼火格子の下方から供給する燃焼火格子一次空気供給手段と、
    廃棄物焼却炉の排ガスの一部を循環排ガスとして、燃焼火格子の下方から供給する燃焼火格子循環排ガス供給手段と、後燃焼火格子の下方から供給する後燃焼火格子循環排ガス供給手段とを具備し、
    燃焼火格子一次空気供給手段と燃焼火格子循環排ガス供給手段は、一次空気と循環排ガスを燃焼火格子の廃棄物の移動方向で交互の位置で供給することを特徴とする廃棄物焼却装置。
  2. 循環排ガスを廃棄物焼却炉の燃焼室の側壁又は天井に設けられた循環排ガス吹込口から供給する側壁・天井循環排ガス供給手段を具備することとする請求項1に記載の廃棄物焼却装置。
  3. 高温ガスを燃焼室の側壁又は天井に設けられた高温ガス吹込口から供給する高温ガス供給手段を具備することとする請求項1に記載の廃棄物焼却装置。
  4. 循環排ガスを廃棄物焼却炉の燃焼室の側壁又は天井に設けられ、高温ガス吹込口の上方又は高温ガス吹込口の炉内ガス流れ方向下流側に位置する循環排ガス吹込口から供給する側壁・天井循環排ガス供給手段を具備することとする請求項3に記載の廃棄物焼却装置。
  5. 後燃焼火格子の下方から供給する循環排ガス供給量を制御する後燃焼火格子循環排ガス供給制御手段を具備し、
    後燃焼火格子循環排ガス供給制御手段は、後燃焼火格子の下方から供給する循環排ガス供給量を、焼却炉から排出される焼却灰排出量1kg/hあたり5〜10Nm/hとするように後燃焼火格子循環排ガス供給手段を制御することとする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の廃棄物焼却装置。
  6. 乾燥火格子、燃焼火格子及び後燃焼火格子を有する廃棄物焼却炉を備える廃棄物焼却装置による廃棄物焼却方法において、
    廃棄物燃焼用の一次空気を、乾燥火格子一次空気供給手段で乾燥火格子の下方から供給し、燃焼火格子一次空気供給手段で燃焼火格子の下方から供給し、
    廃棄物焼却炉の排ガスの一部を循環排ガスとして、燃焼火格子循環排ガス供給手段で燃焼火格子の下方から供給し、後燃焼火格子循環排ガス供給手段で後燃焼火格子の下方から供給し、
    燃焼火格子一次空気供給手段と燃焼火格子循環排ガス供給手段により、一次空気と循環排ガスを、燃焼火格子の廃棄物の移動方向で交互の位置で供給することを特徴とする廃棄物焼却方法。
  7. 側壁・天井循環排ガス供給手段で循環排ガスを廃棄物焼却炉の燃焼室の側壁又は天井に設けられた循環排ガス吹込口から供給することとする請求項6に記載の廃棄物焼却方法。
  8. 高温ガス供給手段で高温ガスを燃焼室の側壁又は天井に設けられた高温ガス吹込口から供給することとする請求項6に記載の廃棄物焼却方法。
  9. 側壁・天井循環排ガス供給手段で循環排ガスを廃棄物焼却炉の燃焼室の側壁又は天井に設けられ、高温ガス吹込口の上方又は高温ガス吹込口の炉内ガス流れ方向下流側に位置する循環排ガス吹込口から供給することとする請求項8に記載の廃棄物焼却方法。
  10. 後燃焼火格子循環排ガス供給制御手段で、後燃焼火格子の下方から供給する循環排ガス供給量を、焼却炉から排出される焼却灰排出量1kg/hあたり5〜10Nm/hとするように後燃焼火格子循環排ガス供給手段を制御することとする請求項6ないし請求項9のいずれかに記載の廃棄物焼却方法。
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