以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る超音波診断装置1を図1のブロック図を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の構成例を示すブロック図である。図1に示されるように、超音波診断装置1は、超音波プローブ10、及び装置本体20を含む。装置本体20は、ネットワーク100を介して外部装置40と接続される。また、装置本体20は、モニタ50、及び入力装置60と接続される。
超音波プローブ10は、複数の超音波振動子(以下、単に素子ともいう)、素子に設けられる整合層、及び素子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。超音波プローブ10は、装置本体20と着脱自在に接続される。第1の実施形態に係る超音波プローブ10は、例えば第1の素子配列方向(エレベーション方向)と第2の素子配列方向(アジマス方向)とに沿って複数の超音波振動子が配列された2次元アレイプローブである。超音波プローブ10の詳細については、後述する。
図1に示される装置本体20は、超音波プローブ10が受信した反射波信号に基づいて超音波画像を生成する装置である。装置本体20は、図1に示すように、送信回路21、受信回路22、信号処理回路23、画像生成回路24、内部記憶回路25、画像メモリ26(シネメモリ)、画像データベース27、入力インタフェース28、通信インタフェース29、発振器30、分周器31、マルチプレクサ32、制御回路33、スイッチ34、スイッチ35、スイッチ36、プローブポートA、プローブポートB、プローブポートC、及びプローブポートDを含む。
送信回路21は、制御回路33の制御の下、所定の周期毎に超音波プローブ10に駆動信号(送信パルス)を供給するプロセッサである。送信回路21は、複数のチャンネルを介して超音波プローブ10が備える複数の超音波振動子に駆動信号を供給する。ここで、「チャンネル」とは、送信回路21が有する駆動信号生成の経路、或いは、装置本体20から超音波プローブ10に駆動信号を伝送する経路のことである。送信回路21は、チャンネル毎に、駆動信号生成のための回路群を有する。送信回路21は、例えば、チャンネル毎に、トリガ発生回路、遅延回路、及びパルサ回路等を有する。トリガ発生回路は、制御回路33から供給されるクロック信号に基づくレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。遅延回路は、超音波プローブ10から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な素子毎の送信遅延時間を、トリガ発生回路が発生する各レートパルスに対し与える。パルサ回路は、レートパルスに基づくタイミングで駆動信号を生成し、超音波プローブ10に供給する。遅延回路により各レートパルスに対し与える送信遅延時間を変化させることで、素子面からの送信方向が任意に調整可能となる。送信遅延時間は、後述する制御回路33のシステム制御機能331により算出される。
また、送信回路21は、制御回路33の制御の下、装置本体20に接続されるプローブの種類に応じて、駆動するチャンネル数を切り替える。
また、送信回路21は、パルサ回路により生成した駆動信号を、スイッチ34、並びに、スイッチ35又はスイッチ36を経由させて、超音波プローブ10に供給する。スイッチ34、並びに、スイッチ35又はスイッチ36を経由させて等長配線することにより、送信回路21からプローブポートA、プローブポートB、プローブポートC、及びプローブポートDまでの距離を略同じにすることが可能である。
受信回路22は、超音波プローブ10が受信した反射波信号に対して各種処理を施し、受信信号を生成するプロセッサである。受信回路22は、例えば、チャンネル毎に、アンプ回路、アナログ−デジタル(A/D)変換器、受信遅延回路、及び加算器等を有する。アンプ回路は、超音波プローブ10が受信した反射波信号をチャンネル毎に増幅してゲイン補正処理を行なう。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をデジタル信号に変換する。受信遅延回路は、デジタル信号に受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与える。加算器は、遅延時間が与えられた複数のデジタル信号を加算する。加算器の加算処理により、受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調された受信信号が発生する。
信号処理回路23は、受信回路22から受け取った受信信号に対して各種の信号処理を行うプロセッサである。信号処理回路23は、受信回路22から受け取った受信信号に対して包絡線検波処理、及び対数増幅処理等を施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。生成されたBモードデータは、2次元的な超音波走査線上のBモードRAWデータとして不図示のRAWデータメモリに記憶される。
また、信号処理回路23は、受信回路22から受け取った受信信号に対して周波数解析を施して血流信号を抽出し、血流信号から平均速度、分散、及びパワー等の情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。生成されたドプラデータは、2次元的な超音波走査線上のドプラRAWデータとして不図示のRAWデータメモリに記憶される。
また、信号処理回路23は、受信回路22から受け取った受信信号から血流信号を抽出し、抽出した血流信号からドプラ波形を示すドプラスペクトラム画像を表すドプラスペクトラム画像データを生成する。ドプラ波形は、例えば観察部位として設定された範囲における血流速度が時系列に沿ってプロットされた波形である。すなわち、ドプラ波形は、血流速度の時間的変化を表す。
画像生成回路24は、信号処理回路23により生成されたデータに基づき、各種超音波画像データを生成可能なプロセッサである。
画像生成回路24は、RAWデータメモリに記憶されたBモードRAWデータに基づいてBモード画像データを生成する。Bモード画像データに基づくBモード画像は、例えば被検体P内の構造物の形態を表す。Bモード画像データは、音波の集束などの超音波プローブの特性や超音波ビーム(例えば、送受信ビーム)の音場特性などが反映された画素値(輝度値)を有する。例えば、Bモード画像データにおいて、被走査領域において超音波のフォーカス付近では、非フォーカス部分よりも相対的に高輝度となる。
画像生成回路24は、RAWデータメモリに記憶されたドプラRAWデータに基づいて、移動体情報を表すドプラ画像データを生成する。ドプラ画像データは、速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又は、これらを組み合わせた画像データである。
例えば、画像生成回路24は、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。具体的には、画像生成回路24は、超音波プローブ10による超音波の走査形態に応じて座標変換を行うことで、表示用の超音波画像データを生成する。表示用の超音波画像データに基づく超音波画像は、例えば、モニタ50に表示される。モニタ50としては、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜利用可能である。モニタ50は、タッチ操作が行われる入力機能を有するタッチパネルであっても良い。
画像生成回路24は、生成した各種超音波画像データに対し、ダイナミックレンジ、輝度(ブライトネス)、コントラスト、γカーブ補正、及びRGB変換などの各種処理を実行してもよい。また、画像生成回路24は、生成した各種超音波画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディマーク等の付帯情報を付加してもよい。
また、画像生成回路24は、操作者(例えば、検査技師、術者等)が入力インタフェース28により各種指示を入力するためのユーザインタフェース(GUI:Graphical User Interface)を生成し、GUIをモニタ50に表示させてもよい。
内部記憶回路25は、例えば、磁気的若しくは光学的記録媒体、又は半導体メモリ等のプロセッサにより読み取り可能な記録媒体等を有する。内部記憶回路25は、第1の実施形態遅延量設定方法に関する制御プログラム、超音波送受信を実現するための制御プログラム、画像処理を行うための制御プログラム、及び表示処理を行なうための制御プログラム等を記憶している。また、内部記憶回路25は、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)、診断プロトコル、ボディマーク生成プログラム、及び映像化に用いるカラーデータの範囲を診断部位毎に予め設定する変換テーブル等のデータ群を記憶している。また、内部記憶回路25は、生体内の臓器の構造に関する解剖学図譜、例えば、アトラスを記憶してもよい。
また、内部記憶回路25は、入力インタフェース28を介して入力される記憶操作に従い、画像生成回路24で発生された2次元画像データ、ボリュームデータ、レンダリング画像データを記憶する。なお、内部記憶回路25は、入力インタフェース28を介して入力される記憶操作に従い、画像生成回路24で発生された2次元画像データ、ボリュームデータ、レンダリング画像データを、操作順番及び操作時間を含めて記憶してもよい。内部記憶回路25は、記憶しているデータを、通信インタフェース29を介して外部装置へ転送することも可能である。
また、内部記憶回路25は、制御情報を記憶している。制御情報は、例えば、制御信号としてのクロック信号を制御するための情報である。制御情報では、例えば、装置本体20が備える複数のプローブポートと、互いに異なる位相を有する複数のクロック信号とが、プローブポートの位置に応じて対応付けられている。この対応関係において、プローブポートとクロック信号とは、当該プローブポートに接続された超音波プローブ10内のプローブ内送信回路1421へ入力される駆動信号と、このプローブ内送信回路1421へ入力される制御信号としてのクロック信号との間に生じる遅延差が所定範囲内におさまるように対応付けられている。所定範囲は、十分に短い、例えば、クロック信号1クロックの8分の1から4分の1までの間の長さに設定される。制御情報は、例えば、超音波診断装置1の設置時、又はメンテナンス時等の所定のタイミングで設定される。なお、制御情報は、必要に応じて更新されてもよい。
画像メモリ26は、例えば、磁気的若しくは光学的記録媒体、又は半導体メモリ等のプロセッサにより読み取り可能な記録媒体等を有する。画像メモリ26は、入力インタフェース28を介して入力されるフリーズ操作直前の複数フレームに対応する画像データを保存する。画像メモリ26に記憶されている画像データは、例えば、連続表示(シネ表示)される。
画像データベース27は、外部装置40から転送される画像データを記憶する。例えば、画像データベース27は、外部装置40に保存される過去の診察において取得された同一患者に関する過去の医用画像データを受け取って記憶する。過去の医用画像データには、超音波画像データ、CT(Computed Tomography)画像データ、MR画像データ、PET(Positron Emission Tomography)−CT画像データ、PET−MR画像データ及びX線画像データが含まれる。
なお、画像データベース27は、MO、CD−R、DVDなどの記憶媒体(メディア)に記録された画像データを読み込むことで、所望の画像データを格納してもよい。
入力インタフェース28は、入力装置60を介して、ユーザからの各種指示を受け付ける。入力装置60は、例えば、マウス、キーボード、パネルスイッチ、スライダースイッチ、トラックボール、ロータリーエンコーダ、操作パネルおよびタッチコマンドスクリーン(TCS)である。入力インタフェース28は、例えばバスを介して制御回路33に接続され、操作者から入力される操作指示を電気信号へ変換し、電気信号を制御回路33へ出力する。なお、本明細書において入力インタフェース28は、マウス及びキーボード等の物理的な操作部品と接続するものだけに限られない。例えば、超音波診断装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力される操作指示に対応する電気信号を無線信号として受け取り、この電気信号を制御回路33へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース28の例に含まれる。例えば、操作者のジェスチャによる指示に対応する操作指示を無線信号として送信できるような外部の入力機器でもよい。
通信インタフェース29は、ネットワーク100等を介して外部装置40と接続され、外部装置40との間でデータ通信を行う。外部装置40は、例えば、各種の医用画像のデータを管理するシステムであるPACS(Picture Archiving and Communication System)のデータベース、医用画像が添付された電子カルテを管理する電子カルテシステムのデータベース等である。また、外部装置40は、例えば、X線CT装置、及びMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、核医学診断装置、及びX線診断装置等、第1の実施形態に係る超音波診断装置1以外の各種医用画像診断装置である。なお、外部装置40との通信の規格は、如何なる規格であっても良いが、例えば、DICOM(digital imaging and communication in medicine)が挙げられる。
発振器30は、装置本体20が備える各回路を駆動するための源振クロック信号を供給する。発振器30は、例えば、320MHzの源振クロック信号を生成し、生成した源振クロック信号を分周器31に供給する。
分周器31は、発振器30から供給された源振クロック信号を分周し、分周したクロック信号を制御回路33に供給する。具体的には、分周器31は、例えば、発振器30から供給された320MHzの源振クロック信号を2分周し、2分周した結果生成される160MHzのクロック信号を制御回路33に供給する。
また、分周器31は、発振器30から供給された源振クロック信号に基づいて、互いに位相が異なる複数のクロック信号を生成し、生成した複数のクロック信号をマルチプレクサ32に供給する。具体的には、分周器31は、例えば、発振器30から供給された320MHzの源振クロック信号を4分周し、互いに位相が異なる80MHzのクロック信号を4つ生成する。分周器31は、生成した4つのクロック信号をマルチプレクサ32に供給する。
図2は、図1に示される分周器31で生成される互いに位相が異なる4つのクロック信号の例を表す模式図である。図2に示される4種類の位相のクロック信号C1〜C4がマルチプレクサ32へ供給される。
マルチプレクサ32は、制御回路33の制御の下、分周器31から供給された4つのクロック信号のうち、指定された1つのクロック信号を、プローブポートA、B、C、又はDに供給する制御信号として抽出する。これにより、各プローブポートに対応する制御信号が生成される。マルチプレクサ32は、生成したクロック信号を、プローブポートA、B、C、又はDに供給する。
制御回路33は、例えば、超音波診断装置1の中枢として機能するプロセッサである。制御回路33は、内部記憶回路25に記憶されている制御プログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。具体的には、制御回路33は、システム制御機能331、及びクロック制御機能332を有する。
システム制御機能331は、超音波診断装置1の入出力、及び超音波送受信等の基本動作を制御する機能である。システム制御機能331が実行されると、制御回路33は、例えば、分周器31から出力されたクロック信号を受信する。制御回路33は、受信したクロック信号に基づくクロックを基準クロックとして、各種制御を実行する。例えば、制御回路33は、分周器31から供給された160MHzのクロック信号に基づくクロックを基準クロックとして、送信のタイミング制御、及び、各回路への設定データ転送等を実行する。具体的には、制御回路33は、例えば、160MHzのクロック信号を送信回路21に供給する。
また、制御回路33は、超音波の送受信時に、各超音波振動子に設定される遅延時間(送信遅延時間及び受信遅延時間)に関する遅延制御データ(遅延データ)を演算する。制御回路33は、演算した遅延データを、設定情報と共に超音波プローブ10に供給する。
第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、超音波プローブ10と装置本体20とで分担して遅延データの演算処理を行う。すなわち、設定すべき遅延データの一部を超音波プローブ10が演算し、設定すべき遅延データの残りを装置本体20が演算する。
また、制御回路33は、例えば、入力インタフェース28を介して入力された情報に基づいて、内部記憶回路25に記憶されている制御情報の内容を更新する。これにより、超音波診断装置の設計変更等によりプローブポートの配置及び数等が変更された場合に対応することが可能となる。また、超音波診断装置の機種の違いにより、クロック信号の発振元の位置が異なることがあるが、機種の違いに関わらず、プローブポート間において、超音波プローブ10に設けられた送信回路14を駆動する駆動信号と、送信回路14の駆動タイミングを制御する制御信号との間の遅延差のばらつきを抑えることが可能となる。
クロック制御機能332は、後述する超音波プローブ10が備える複数のプローブ内送信回路1421に対する制御信号を、超音波プローブ10が接続されるプローブポートの位置に応じて生成する機能である。クロック制御機能332が実行されると、制御回路33は、内部記憶回路25から制御情報を読み出す。制御回路33は、超音波プローブ10が接続されるプローブポート、及び制御情報で表されている対応関係に基づいて、選択すべきクロック信号を選択する。制御回路33は、マルチプレクサ32に対し、例えば、分周器31から供給された4つのクロック信号のうち選択したクロック信号を抽出すべき旨を指示する。これにより、マルチプレクサ32において、選択したクロック信号が抽出され、抽出されたクロック信号が制御信号として当該プローブポートに供給される。なお、制御情報は、制御回路33に実装されたフラッシュメモリ等に記憶され、装置起動時に読み出されてもよい。また、制御情報は、例えば、入力インタフェース28を介し、必要に応じて更新されてもよい。
なお、制御回路33によって実行される各機能は、制御プログラムとして組み込まれていてもよいし、制御回路33自体または装置本体20に、各機能を実行可能な専用のハードウェア回路が組み込まれていてもよい。
制御回路33は、これら専用のハードウェア回路を組み込んだ特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Logic Device:FPGA)、他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、又は単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)により実現されてもよい。
プローブポートA、B、C、及びDは、例えば、超音波プローブ10を装置本体20に対して着脱自在に接続するための差込口である。第1の実施形態では、図1において、プローブポートBに接続される超音波プローブ10のみが図示されているが、プローブポートA、C、及びDにも不図示の超音波プローブが接続されているものとする。図1では、例えば、入力インタフェース28を介してプローブポートBが指定され、スイッチ34、35、及び36を切り替えることにより、プローブポートBに接続された超音波プローブ10が使用可能となる例を表している。このとき、超音波診断装置1は、装置本体20と、超音波プローブ10との間において、超音波スキャンに関する各種データを送受信することが可能となる。
また、第1の実施形態において、各プローブポートは、マルチプレクサ32から各プローブポートまでの距離がプローブポートA、B、C、及びDの順に大きくなるように設けられているものとする。このとき、マルチプレクサ32から出力されるクロック信号が伝搬する伝搬遅延時間は、プローブポートA、B、C、及びDの順に大きくなる。すなわち、マルチプレクサ32から出力されるクロック信号は、プローブポートAに最も早く到達し、プローブポートAと比してプローブポートB、C、及びDの順で遅く到達する。
次に、第1の実施形態に係る超音波プローブ10の詳細について図3、及び図4を参照して説明する。図3は、第1の実施形態に係る超音波プローブ10の構成の例を示すブロック図である。
超音波プローブ10は、接続部11(PODともいう)と、ケーブル12と、プローブ本体13(HEADともいう)とを含む。
図3において、プローブ本体13は、複数の送受信IC14と、複数の超音波振動子15(単に素子ともいう)とを含む。
複数の送受信IC14はそれぞれ、接続部11が備える不図示の通信制御回路を介し、例えば、装置本体20の制御回路33から設定情報、及び遅延データを受け取り(経路は不図示)、マルチプレクサ32からクロック信号を受け取り、送信回路21から駆動信号を受け取る。このとき、設定情報は、例えば、超音波ビームのフォーカス及び深度等の超音波プローブ10によるスキャンに必要な情報である。制御回路33から受け取る遅延データは、例えば、各サブアレイに属する各素子について決定される遅延データである。また、制御回路33から受け取る遅延データは、第1の配列方向と第2の配列方向とに沿って複数の素子が配列された二次元アレイプローブを用いる場合において、各方向について素子列単位で決定される遅延データであってもよい。
複数の送受信IC14はそれぞれ、設定情報、遅延データ、クロック信号、及び駆動信号に基づいて、自身が制御を行うサブアレイごとの素子の遅延量を設定し、超音波の送受信を所定のタイミングで制御する。以下、送受信IC14の詳細を具体的に説明する。
送受信IC14は、IC制御回路141、及び複数のサブアレイユニット142を含む。IC制御回路141は、装置本体20の制御回路33から取得した設定情報、及び遅延データからサブアレイごとにサブアレイに属する各素子の遅延量を計算し、複数のサブアレイユニット142にそれぞれ供給する。
複数のサブアレイユニット142はそれぞれ、送信回路21から駆動信号を受け取り、マルチプレクサ32からクロック信号を受け取り、IC制御回路141から遅延量を受け取る。複数のサブアレイユニット142はそれぞれ、受け取った駆動信号、クロック信号、及び遅延量に基づいて、割り当てられたサブアレイ内の素子の超音波送受信のタイミングを制御する。
複数の超音波振動子15は、送受信IC14の制御に基づくタイミングで発生した超音波を被検体Pに向けて送信する。
超音波プローブ10から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波として複数の超音波振動子15にて受信される。受信される反射波の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁などの表面で反射された場合の反射波は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。超音波プローブ10は、生体Pからの反射波を受信して電気信号に変換して、装置本体20に送信する。
次に、サブアレイユニット142の詳細について図4のブロック図を参照して説明する。
各サブアレイユニット142は、例えば、プローブ内送信回路1421と、及びプローブ内受信回路1422とを含む。プローブ内送信回路1421、及びプローブ内受信回路1422は、例えばチャンネル毎に存在する。
プローブ内送信回路1421は、例えば、送信回路21から駆動信号を受け取り、マルチプレクサ32からクロック信号を受け取り、IC制御回路141から遅延量を受け取る。プローブ内送信回路1421は、送信回路21から供給される駆動信号に対し、このサブアレイに属する超音波振動子15毎の遅延量を設定する。プローブ内送信回路1421は、マルチプレクサ32から供給されるクロック信号に基づくタイミングで、超音波振動子15を駆動するための駆動信号を生成する。プローブ内送信回路1421は、生成した駆動信号を、設定した遅延量だけ遅延させてサブアレイに属する超音波振動子15へ出力する。
プローブ内受信回路1422は、例えば、超音波振動子15から反射波信号を受け取り、マルチプレクサ32からクロック信号を受け取り、IC制御回路141から遅延量をそれぞれ受け取る。プローブ内受信回路1422は、反射波信号に基づく受信信号に対し、サブアレイに属する超音波振動子15毎に遅延量を設定する。プローブ内受信回路1422は、超音波振動子15で受信された反射波信号に基づき、受信信号を生成する。プローブ内受信回路1422は、生成した受信信号を、超音波振動子15毎に設定される遅延量だけ遅延させる。遅延された受信信号は、サブアレイユニット142が備える不図示の加算回路により加算され、ケーブル12を介して装置本体20に供給される。
次に、超音波スキャンが開始されてからプローブ内送信回路1421に駆動信号、及びクロック信号が供給されるまでの動作について説明する。以下の説明では、プローブポートA、B、C、及びDに対し、それぞれ超音波プローブが接続されているものとする。なお、プローブポートA、B、C、及びDにそれぞれ接続されている超音波プローブの構成は、図3に示される超音波プローブ10と同様であるが、用途によって形状、構造、及び一部の機能等がお互いに異なっているものとする。
まず、装置本体20が備える制御回路33は、例えば、入力インタフェース28を介して超音波スキャンを開始する旨の指示が入力されると、クロック制御機能332を実行し、内部記憶回路25から制御情報を読み出す。このとき、制御情報は、例えば、プローブポートA、B、C、及びDと、分周器31から供給された互いに異なる位相の4つの80MHzのクロック信号との対応関係を表す。
この対応関係では、プローブポートA、B、C、及びDと、4つのクロック信号とが、例えば、オシロスコープ等で操作者が観測することにより、プローブ内送信回路1421を駆動する駆動信号と、当該プローブ内送信回路1421の駆動タイミングを制御するクロック信号とが略同期するように対応付けられている。
なお、制御情報は、例えば、プローブポートA、B、C、及びDに供給されるクロック信号の伝送路長に基づいて、机上計算により各プローブポートに対応する位相のクロック信号が算出されることにより設定されてもよい。このとき、制御回路33は、マルチプレクサ32からプローブポートA、B、C、及びDまでの距離、すなわちクロック信号の伝送路長をそれぞれ計測し、計測した伝送路長に応じた位相のクロック信号を、各プローブポートにそれぞれ対応付けている。
制御回路33は、読み出した制御情報に基づいて、指定されたプローブポートに対応する位相のクロック信号を選択する。制御回路33は、マルチプレクサ32に対し、選択したクロック信号を抽出すべき旨を指示する。これにより、超音波スキャン開始後に、指定されたプローブポートの位置に応じたクロック信号がマルチプレクサ32において生成される。生成されたクロック信号は、指定されたプローブポートを介して、対応するチャンネルのプローブ内送信回路1421に供給される。
一方、制御回路33は、送信回路21を制御し、分周器31から供給された160MHzのクロック信号に基づくタイミングで駆動信号を生成し、生成した駆動信号を指定されたプローブポートを介して対応するチャンネルのプローブ内送信回路1421に供給する。
また、制御回路33は、超音波スキャン開始後に、例えば、入力インタフェース28を介し、プローブポートを切り替える旨の指示が入力されると、超音波スキャン開始時に読み出した制御情報に基づいて、切替後のプローブポートに対応する位相のクロック信号を選択する。制御回路33は、マルチプレクサ32に対し、選択したクロック信号を抽出すべき旨を指示する。これにより、プローブポートが切り替えられた後、すなわち用いる超音波プローブが切り替えられた後に、切替後のプローブポートの位置に応じたクロック信号がマルチプレクサ32において生成される。生成されたクロック信号は、切替後のプローブポートを介して、対応するチャンネルのプローブ内送信回路1421に供給される。
以上説明した動作によれば、どのプローブポートが用いられる場合においても、超音波プローブ10に設けられたプローブ内送信回路1421を駆動する駆動信号と、プローブ内送信回路1421の駆動タイミングを制御する制御信号との間の遅延差をできるだけ小さくした状態で、超音波スキャンを実行することができる。図5は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1が備える各プローブポートを経由してプローブ内送信回路1421に入力される各種信号について説明するための図である。図5は、プローブポートA、B、C、及びDを介して、プローブ内送信回路1421に入力される駆動信号と、クロック信号との関係をそれぞれ表している。図5では、クロック制御機能332により、マルチプレクサ32からプローブポートA、B、C、及びDにそれぞれ対応する位相のクロック信号が供給されているものとする。このとき、図5によれば、プローブポート間において、駆動信号の到達タイミングは、送信回路21と各プローブポートとの距離に応じてずれていることが分かる。一方、各プローブポートへは、それぞれに対応する位相のクロック信号が供給されているため、各プローブポートにおいて、駆動信号の立ち上がりの時点と、クロック信号がONからOFFに切り替わる時点とが略揃っている。すなわち、駆動信号とクロック信号とが略同期している。これにより、マルチプレクサ32からプローブポートA、B、C、及びDを介してプローブ内送信回路1421に供給されるクロック信号と、送信回路21からプローブポートA、B、C、及びDを介してプローブ内送信回路1421に供給される駆動信号との間の遅延差のばらつきが抑制される。
次に、第1の実施形態に係るプローブ内送信回路1421から出力される駆動信号の出力タイミングについて説明する。以下の説明では、超音波スキャン時に用いられるプローブポートとして、プローブポートBが指定されているものとする。図6は、第1の実施形態に係るプローブ内送信回路1421から出力される駆動信号の出力タイミングを説明するための図である。図6では、プローブポートBが指定されているため、装置本体20の制御回路33は、プローブポートBに対応する位相のクロック信号を選択している。
具体的には、制御回路33は、内部記憶回路25から制御情報を読み出す。制御回路33は、読み出した制御情報に基づいて、プローブポートBに対応する位相のクロック信号を選択する。制御回路33は、マルチプレクサ32に対し、例えば、分周器31から供給された互いに異なる位相の4つの80MHzのクロック信号のうち選択したクロック信号を抽出すべき旨を指示する。これにより、マルチプレクサ32においてプローブポートBの位置に応じたクロック信号が生成され、プローブポートBに供給される。このとき、図6に示されるように、プローブ内送信回路1421で受信される駆動信号が表す送信パルスの立ち上がりの時点と、プローブ内送信回路1421で受信されるクロック信号がONからOFFに切り替わる時点は同じt=t51となる。
プローブ内送信回路1421は、t=t51の直後にクロック信号がOFFからONに切り替わる時点t=t52において、クロック信号を1クロック分ラッチする。そして、プローブ内送信回路1421は、ラッチしたクロック信号がONからOFFに切り替わる時点t=t53において、送信パルスが立ち上がるように、超音波振動子15を駆動するための駆動信号を生成する。すなわち、プローブ内送信回路1421は、送信回路21から送信される送信パルスの立ち上がりに続いて発生する1クロック分のクロック信号を駆動タイミングとして使用する。これにより、接続されるプローブポートに関わらず、駆動信号が供給された後、所定のタイミングで、超音波振動子15を駆動するための駆動信号が生成されることになる。
第1の実施形態では、超音波診断装置1の装置本体20は、超音波を発生する振動子を駆動させるためのプローブ内送信回路1421を複数有する超音波プローブ10を接続可能なプローブポートA、B、C、及びDを有する。超音波診断装置1の装置本体20に含まれる制御回路33は、超音波プローブ10内に設けられるプローブ内送信回路1421に対するクロック信号を、超音波プローブ10が接続されるプローブポートの位置に応じて生成する。
ここで、装置本体の送信回路から、超音波振動子を駆動する駆動信号を超音波プローブに直接送信する従来の超音波診断装置では、送信回路の基板から引き回される駆動信号はプローブポート間では上記のばらつきが生じるが、プローブポート毎のチャンネル間では、駆動信号の経路はほぼ等長になる。
一方、超音波プローブ内に送受信回路を内蔵し、装置本体の同期信号をもとに超音波送受信を行う従来の超音波診断装置では、駆動信号とクロック信号との間の時相がずれる、すなわち駆動信号とクロック信号との間の同期タイミングがずれると、チャンネル間において送信位相及び受信位相がずれてフォーカスができなくなったり、送受信レート間において送信位相及び受信位相がずれてアーチファクト(カラードプラモード実行時に発生するノイズ等)が発生したりすることがある。
第1の実施形態に係る超音波診断装置1によれば、制御回路33は、システム動作中に、プローブ切替え信号によりプローブポートが切り替わった場合においても、切替後のプローブポートの位置に応じたクロック信号を生成する。このため、どのプローブポートが選択された場合でも、超音波プローブ10に設けられた送信回路14を駆動する駆動信号と、送信回路14の駆動タイミングを制御する制御信号とを略同時相で各プローブポートに供給することができる。
したがって、プローブポート間において、超音波プローブ10に設けられた送信回路14を駆動する駆動信号と、送信回路14の駆動タイミングを制御する制御信号との間の遅延差のばらつきを抑えることが可能となる。
また、第1の実施形態に係る超音波診断装置1によれば、制御回路33は、装置本体20に含まれる複数のプローブポートと、互いに異なる位相を有する複数のクロックとが、プローブポートのそれぞれの位置に応じて対応付けられた対応関係に基づいて、指定されたプローブポートに供給するための制御信号を生成する。これにより、プローブポート間において、超音波プローブ10に設けられた送信回路14を駆動する駆動信号と、送信回路14の駆動タイミングを制御する制御信号との間の遅延差のばらつきを抑えることを容易に実現できる。
また、第1の実施形態に係る超音波診断装置1によれば、制御情報で表される対応関係は、プローブ内送信回路1421を駆動する駆動信号と、プローブ内送信回路1421に対する制御信号との間に生じる遅延差が所定範囲内におさまるように設定されている。これにより、各プローブポートが使用される場合において、チャンネル間で生じる送信位相及び受信位相のずれ、及び送受信レート間で生じる送信位相及び受信位相のずれ等を抑制することが可能となる。
また、第1の実施形態に係る超音波診断装置1によれば、制御回路33は、マルチプレクサ32を制御し、指定されたプローブポートの位置に応じたクロック信号を生成する。これにより、各プローブポートに接続される制御信号のトレース長を、全プローブポートで等長配線する必要がなく、超音波診断装置の基板設計に関する工数削減、及び基板サイズの小型化を図ることが可能となる。
また、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、プローブポートに供給する制御信号よりも周波数の高い源振クロック信号を分周し、互いに異なる位相を有する複数のクロック信号を出力する分周器を備えている。これにより、例えば、高価な発振器を複数設ける必要がなくなる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、マルチプレクサ32が装置本体20に設けられている場合、すなわち接続されるプローブポートに対応する位相のクロック信号が装置本体20において選択される場合について説明した。第2の実施形態では、マルチプレクサが超音波プローブに設けられる場合、すなわち接続されるプローブポートに対応する位相のクロック信号が超音波プローブにおいて選択される場合について説明する。
第2の実施形態に係る超音波診断装置1Aを図7のブロック図を参照して説明する。
図7に示される超音波診断装置1Aは、超音波プローブ10A、及び装置本体20Aを含む。装置本体20Aは、ネットワーク100を介して外部装置40と接続される。また、装置本体20Aは、モニタ50、及び入力装置60と接続される。
超音波プローブ10Aは、複数の超音波振動子、素子に設けられる整合層、及び素子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。超音波プローブ10Aは、装置本体20Aと着脱自在に接続される。第2の実施形態に係る超音波プローブ10Aは、例えば2次元アレイプローブである。超音波プローブ10Aの詳細については、後述する。
装置本体20Aは、超音波プローブ10Aが受信した反射波信号に基づいて超音波画像を生成する装置である。装置本体20Aは、図7に示すように、送信回路21、受信回路22、信号処理回路23、画像生成回路24、内部記憶回路25、画像メモリ26(シネメモリ)、画像データベース27、入力インタフェース28、通信インタフェース29、発振器30、分周器31A、制御回路33A、スイッチ34、スイッチ35、スイッチ36、プローブポートA、プローブポートB、プローブポートC、及びプローブポートDを含む。
発振器30は、装置本体20Aが備える各回路を駆動するための源振クロック信号を供給する。発振器30は、例えば、320MHzの源振クロック信号を生成し、生成した源振クロック信号を分周器31Aに供給する。
分周器31Aは、発振器30から供給された源振クロック信号を分周し、分周したクロック信号を制御回路33Aに供給する。分周器31Aは、例えば、発振器30から供給された320MHzの源振クロック信号を2分周し、2分周した結果生成される160MHzのクロック信号を制御回路33Aに供給する。
制御回路33Aは、例えば、超音波診断装置1の中枢として機能するプロセッサである。制御回路33Aは、内部記憶回路25に記憶されている制御プログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。具体的には、制御回路33Aは、システム制御機能331を有する。システム制御機能331において制御回路33Aは、分周器31Aで生成されたクロック信号を、プローブポートA、プローブポートB、プローブポートC、又はプローブポートDを介し、超音波プローブ10Aに供給する。
次に、第2の実施形態に係る超音波プローブ10Aについて図8を参照して説明する。図8は、第2の実施形態に係る超音波プローブ10Aの構成の例を示すブロック図である。
超音波プローブ10Aは、接続部11と、ケーブル12と、プローブ本体13Aとを含む。
図8において、プローブ本体13Aは、複数の送受信IC14と、複数の超音波振動子15とを含む。さらに、プローブ本体13Aは、分周器16と、マルチプレクサ17と、制御回路18とを含む。
分周器16は、例えば、装置本体20Aから供給されたクロック信号に基づいて、複数の異なる位相のクロック信号を生成する。分周器16は、生成した複数の異なる位相のクロック信号をマルチプレクサ17に供給する。具体的には、分周器16は、例えば、装置本体20が備える分周器31Aで2分周された160MHzのクロック信号を2分周し、互いに異なる位相の4つの80MHzのクロック信号を生成する。分周器16は、生成した4つのクロック信号をマルチプレクサ17に供給する。
マルチプレクサ17は、制御回路18の制御の下、分周器16から供給された4つのクロック信号のうち、指定された1つのクロック信号を、各送受信IC14が備えるサブアレイユニット142に供給する制御信号として抽出する。これにより、各プローブポートに対応する制御信号が生成される。マルチプレクサ17は、生成した制御信号をサブアレイユニット142に供給する。
制御回路18は、例えば、超音波プローブ10Aの中枢として機能するプロセッサである。制御回路18は、プローブ本体13Aが備える不図示の記憶回路に記憶されている制御プログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。具体的には、制御回路18は、クロック制御機能181を有する。
クロック制御機能181は、超音波プローブ10Aに含まれる各送受信IC14が備える複数のプローブ内送信回路1421に対する制御信号を、超音波プローブ10Aが接続されたプローブポートの位置に応じて生成する機能である。クロック制御機能181が実行されると、制御回路18は、超音波プローブ10Aが接続されたプローブポート、及び制御情報に基づいて、選択すべきクロック信号を選択する。接続されているプローブポートについての情報は、例えば、超音波プローブ10Aの接続時、又は接続の切り替え時等に装置本体20Aから通知される。制御回路18は、マルチプレクサ17に対し、例えば、分周器16から供給された4つのクロック信号のうち選択したクロック信号を抽出すべき旨を指示する。これにより、マルチプレクサ17において、超音波プローブ10Aが接続されたプローブポートの位置に応じたクロック信号が制御信号として生成され、各送受信IC14が備えるサブアレイユニット142に供給される。
なお、制御情報は、例えば、超音波プローブ10Aが装置本体20Aに接続されたタイミングで、装置本体20Aが備える内部記憶回路25から制御回路18に供給されるものとする。また、制御情報は、制御回路18のメモリ(図示せず)に記憶されていても構わない。また、制御情報は、超音波プローブ10Aにおいて駆動信号とクロック信号との遅延差を計測することにより生成されてもよい。
第2の実施形態によれば、超音波プローブ10Aは、複数のプローブポートを有する装置本体20Aに接続可能である。また、超音波プローブ10Aは、超音波を発生する超音波振動子15を駆動させるための複数のプローブ内送信回路1421を有する。超音波プローブ10Aが備える制御回路18は、プローブ内送信回路1421に対するクロック信号を、超音波プローブ10Aが接続されるプローブポートの位置に応じて生成する。これにより、マルチプレクサ32が装置本体20に設けられている第1の実施形態と同様に、プローブポート間において、超音波プローブ10Aに設けられた送信回路14を駆動する駆動信号と、送信回路14の駆動タイミングを制御する制御信号との間の遅延差のばらつきを抑えることが可能となる。
(第3の実施形態)
第1及び第2の実施形態では、マルチプレクサ32,17により、超音波プローブ10,10Aが接続されるプローブポートと対応した制御信号が生成される場合を例に説明した。第3の実施形態では、超音波プローブ10が接続されるプローブポートと対応した駆動信号が生成される場合について説明する。
図9は、第3の実施形態に係る超音波診断装置1Bの機能構成の例を表すブロック図である。図9に示される超音波診断装置1Bは、超音波プローブ10、及び装置本体20Bを含む。
装置本体20Bは、ネットワーク100を介して外部装置40と接続される。また、装置本体20Bは、モニタ50、及び入力装置60と接続される。装置本体20Bは、超音波プローブ10が受信した反射波信号に基づいて超音波画像を生成する装置である。
装置本体20Bは、図9に示すように、送信回路21B、受信回路22、信号処理回路23、画像生成回路24、内部記憶回路25B、画像メモリ26(シネメモリ)、画像データベース27、入力インタフェース28、通信インタフェース29、発振器30、分周器31A、制御回路33B、スイッチ34、スイッチ35、スイッチ36、プローブポートA、プローブポートB、プローブポートC、及びプローブポートDを含む。
送信回路21Bは、制御回路33Bの制御に従い、接続されているプローブポートの位置に応じた駆動信号(送信パルス)を超音波プローブ10に供給するプロセッサである。送信回路21Bは、複数のチャンネルで超音波プローブ10が備える複数の超音波振動子15に駆動信号を供給する送信制御機能を有する。
送信回路21Bの送信制御機能は、例えば、チャンネル毎に設けられる回路群により実現される。具体的には、送信回路21Bは、例えば、チャンネル毎に、トリガ発生回路211、遅延回路212、及びパルサ回路213等を有する。
トリガ発生回路211は、例えば、メモリ2111を有する。メモリ2111には、送信回路21Bから送信される駆動信号に位相差を与えるための情報が予め記憶されている。駆動信号に位相差を与えるための情報は、例えば、互いに値が異なる複数の遅延量である。本実施形態においては、例えば、メモリ2111には、互いに値が異なる4つの遅延量が予め記憶されている。トリガ発生回路211は、制御回路33Bから供給されるクロック信号に基づくレート周波数に、メモリ2111に記憶されている遅延量のうち、制御回路33Bから指定された遅延量を与える。トリガ発生回路211は、遅延させたレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。
遅延回路212は、素子毎の送信遅延時間を、トリガ発生回路211が発生する各レートパルスに対し与える。パルサ回路213は、レートパルスに基づくタイミングで駆動信号を生成し、超音波プローブ10に供給する。これにより、送信回路21Bからは、超音波プローブ10が接続されるプローブポートに応じ、互いに位相が異なる駆動信号が出力されることになる。
図10は、図9に示される送信回路21Bから出力され得る互いに位相が異なる4つの駆動信号の例を表す模式図である。なお、これらの駆動信号は同時に発生することはないが、図10では、位相差を示すために並べて表示している。図10に示される駆動信号D1〜D4のうちいずれか1つが超音波プローブ10に供給される。
なお、選択された遅延量は、トリガ発生回路211で与えられることに限定されない。超音波プローブ10が接続されるプローブポートに応じ、互いに異なる位相の駆動信号が送信回路21Bから出力されれば、他の実現例もあり得る。例えば、選択された遅延量は、遅延回路212、又はパルサ回路213で与えられても構わない。
内部記憶回路25Bは、第3の実施形態遅延量設定方法に関する制御プログラム等を記憶している。また、内部記憶回路25Bは、制御情報を記憶している。第3の実施形態における制御情報は、例えば、駆動信号を制御するための情報である。制御情報では、例えば、装置本体20Bが備える複数のプローブポートと、互いに異なる位相の複数の駆動信号を生成するための情報とが、プローブポートの位置に応じて対応付けられている。このときプローブポートと対応付けられている情報は、メモリ2111に記憶されている情報、例えば、互いに値の異なる遅延量である。この対応関係において、プローブポートと遅延量とは、当該プローブポートに接続された超音波プローブ10内のプローブ内送信回路1421へ入力される駆動信号と、このプローブ内送信回路1421へ入力されるクロック信号との間に生じる遅延差が所定範囲内におさまるように対応付けられている。
なお、制御情報は、制御回路33Bに実装されるフラッシュメモリ等に記憶され、装置起動時に読み出されてもよい。また、制御情報は、例えば、入力インタフェース28を介し、必要に応じて更新されてもよい。
制御回路33Bは、例えば、超音波診断装置1Bの中枢として機能するプロセッサである。制御回路33Bは、内部記憶回路25Bに記憶されている制御プログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。具体的には、制御回路33Bは、システム制御機能331Bを有する。
システム制御機能331Bは、超音波診断装置1Bの入出力、及び超音波送受信等の基本動作を制御する機能である。システム制御機能331Bが実行されると、制御回路33Bは、例えば、分周器31Aから供給されるクロック信号に基づくクロックを基準クロックとして、各種制御を実行する。例えば、制御回路33Bは、分周器31Aから供給された160MHzのクロック信号に基づくクロックを基準クロックとして、送信のタイミング制御、及び、各回路への設定データ転送等を実行する。
また、制御回路33Bは、内部記憶回路25Bから制御情報を読み出す。制御回路33Bは、読み出した制御情報に基づき、指定されたプローブポートと対応する設定値を取得する。制御回路33Bは、送信回路21Bに対し、例えば、メモリ2111に記憶されている4つの遅延量のうち、取得した設定値(遅延量)を選択する旨を指示する。これにより、送信回路21Bの、例えば、トリガ発生回路211から、指定されたプローブポートと対応する遅延量が与えられたレート周波数でレートパルスが発生される。
また、制御回路33Bは、超音波の送受信時に、各超音波振動子に設定される遅延時間(送信遅延時間及び受信遅延時間)に関する遅延制御データ(遅延データ)を演算する。制御回路33Bは、演算した遅延データを、設定情報と共に超音波プローブ10に供給する。
次に、超音波スキャンが開始されてからプローブ内送信回路1421に駆動信号、及びクロック信号が供給されるまでの動作について説明する。以下の説明では、プローブポートA、B、C、及びDに対し、それぞれ超音波プローブが接続されているものとする。なお、プローブポートA、B、C、及びDにそれぞれ接続されている超音波プローブの構成は、図3に示される超音波プローブ10と同様であるが、用途によって形状、構造、及び一部の機能等がお互いに異なっているものとする。
まず、装置本体20Bが備える制御回路33Bは、例えば、入力インタフェース28を介して超音波スキャンを開始する旨の指示が入力されると、システム制御機能331Bを実行し、内部記憶回路25Bから制御情報を読み出す。このとき、制御情報は、例えば、プローブポートA、B、C、及びDと、互いに値の異なる4つの遅延量との対応関係を表す。
この対応関係では、プローブポートA、B、C、及びDと、4つの遅延量とが、例えば、オシロスコープ等で操作者が観測することにより、プローブ内送信回路1421を駆動する駆動信号と、当該プローブ内送信回路1421の駆動タイミングを制御するクロック信号とが略同期するように対応付けられている。
制御回路33Bは、読み出した制御情報に基づいて、指定されたプローブポートに対応する遅延量を取得する。制御回路33Bは、送信回路21Bに対し、取得した遅延量を選択する旨を指示する。また、制御回路33Bは、送信回路21Bに、分周器31Aで生成された160MHzのクロック信号を供給する。これにより、送信回路21Bから、選択された遅延量だけ遅延された駆動信号が、指定されたプローブポートを介してプローブ内送信回路1421に供給される。
また、制御回路33Bは、分周器31Aで生成された、例えば、80MHzのクロック信号を、プローブポートA、プローブポートB、プローブポートC、又はプローブポートDを介し、超音波プローブ10に供給する。
また、制御回路33Bは、超音波スキャン開始後に、例えば、入力インタフェース28を介し、プローブポートを切り替える旨の指示が入力されると、超音波スキャン開始時に読み出した制御情報に基づいて、切替後のプローブポートに対応する設定値を取得する。制御回路33Bは、送信回路21Bに対し、取得した設定値を選択する旨を指示する。これにより、プローブポートが切り替えられた後、すなわち用いる超音波プローブが切り替えられた後に、切替後のプローブポートの位置に応じた遅延量が与えられた駆動信号が送信回路21Bから出力される。出力された駆動信号は、切替後のプローブポートを介して、対応するチャンネルのプローブ内送信回路1421に供給される。
第3の実施形態では、超音波診断装置1Bの装置本体20Bは、超音波を発生する振動子を駆動させるためのプローブ内送信回路1421を有する超音波プローブ10を接続可能なプローブポートA、B、C、及びDを有する。装置本体20Bに含まれる制御回路33Bは、送信回路21Bを制御し、超音波プローブ10内に設けられるプローブ内送信回路1421に対する駆動信号を、超音波プローブ10が接続されるプローブポートの位置に応じて生成する。
これにより、どのプローブポートが用いられる場合においても、超音波プローブ10に設けられたプローブ内送信回路1421を駆動する駆動信号と、プローブ内送信回路1421の駆動タイミングを制御する制御信号との間の遅延差をできるだけ小さくした状態で、超音波スキャンを実行することが可能となる。
第3の実施形態に係る超音波診断装置1Bにおいて、各プローブポートを経由してプローブ内送信回路1421に入力される各種信号は、図5を用いて説明可能である。図5によれば、プローブポート間において、クロック信号の到達タイミングは、送信回路21Bと各プローブポートとの距離に応じてずれていることが分かる。一方、各プローブポートへは、プローブポートの位置に応じて遅延された駆動信号が供給されている。このため、各プローブポートにおいて、駆動信号の立ち上がりの時点と、クロック信号がONからOFFに切り替わる時点とが略揃うことになる。すなわち、駆動信号とクロック信号とが略同期している。これにより、プローブポートA、B、C、及びDを介してプローブ内送信回路1421に供給されるクロック信号と、送信回路21BからプローブポートA、B、C、及びDを介してプローブ内送信回路1421に供給される駆動信号との間の遅延差のばらつきが抑制される。
また、第3の実施形態に係る超音波診断装置1Bによれば、制御回路33Bは、装置本体20Bに含まれる複数のプローブポートと、駆動信号に位相差を与えるための情報とが、プローブポートのそれぞれの位置に応じて対応付けられた対応関係に基づいて、指定されたプローブポートに供給するための駆動信号を生成する。これにより、プローブポート間において、超音波プローブ10に設けられた送信回路14を駆動する駆動信号と、送信回路14の駆動タイミングを制御する制御信号との間の遅延差のばらつきを抑えることを容易に実現できる。
また、第3の実施形態に係る超音波診断装置1Bによれば、制御情報で表される対応関係は、プローブ内送信回路1421を駆動する駆動信号と、プローブ内送信回路1421に対する制御信号との間に生じる遅延差が所定範囲内におさまるように設定されている。これにより、各プローブポートが使用される場合において、チャンネル間で生じる送信位相及び受信位相のずれ、及び送受信レート間で生じる送信位相及び受信位相のずれ等を抑制することが可能となる。
また、第3の実施形態に係る超音波診断装置1Bによれば、制御回路33Bは、送信回路21Bを制御し、指定されたプローブポートの位置に応じた駆動信号を生成する。これにより、各プローブポートに接続される駆動信号のトレース長を、全プローブポートで等長配線する必要がなく、超音波診断装置の基板設計に関する工数削減、及び基板サイズの小型化を図ることが可能となる。
(第4の実施形態)
第3の実施形態では、超音波プローブ10が接続されるプローブポートの位置に応じ、装置本体20Bの送信回路21Bで互いに位相の異なる駆動信号が生成される場合について説明した。第4の実施形態では、駆動信号に対する遅延が超音波プローブ内で与えられる場合について説明する。
図11は、第4の実施形態に係る超音波診断装置1Cの機能構成の例を表すブロック図である。
図11に示される超音波診断装置1Cは、超音波プローブ10C、及び装置本体20Aを含む。
超音波プローブ10Cは、複数の超音波振動子、素子に設けられる整合層、及び素子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。超音波プローブ10Cは、装置本体20Aと着脱自在に接続される。第4の実施形態に係る超音波プローブ10Cは、例えば2次元アレイプローブである。超音波プローブ10Cは、例えば、接続部11と、ケーブル12と、プローブ本体13Cとを含む。
プローブ本体13Cは、制御回路18C、複数の送受信IC14、複数の超音波振動子15を含む。
制御回路18Cは、例えば、装置本体20Aから供給された駆動信号に基づき、送受信IC14を駆動するための駆動信号を生成する。制御回路18Cは、生成した駆動信号を送受信IC14に供給する。
例えば、制御回路18Cは、プローブ本体13Cが備える不図示の記憶回路に記憶されている制御プログラムを実行することで、遅延機能182を有する。遅延機能182は、装置本体20Aから供給された駆動信号を、超音波プローブ10Cが接続されているプローブポートに応じて遅延させる機能である。
具体的には、制御回路18Cは、例えば、メモリ183を有する。メモリ183には、装置本体20Aから供給された駆動信号に位相差を与えるための情報が予め記憶されている。駆動信号に位相差を与えるための情報は、例えば、互いに値が異なる複数の遅延量である。第4の実施形態においては、例えば、メモリ183には、互いに値が異なる4つの遅延量が予め記憶されているものとする。
遅延機能182において制御回路18Cは、第3の実施形態で記載される制御情報に基づき、接続されているプローブポートと対応する遅延量をメモリ183から選択する。制御情報は、装置本体20Aの内部記憶回路25から読み出されても構わないし、制御回路18Cのメモリ183に記憶されていても構わない。接続されているプローブポートについての情報は、例えば、超音波プローブ10Cの接続時、接続の切り替え時等に装置本体20Aから通知される。制御回路18Cは、装置本体20Aから供給される駆動信号を、選択した遅延量で遅延させる。制御回路18Cは、遅延させた駆動信号をサブアレイユニット142に供給する。
第4の実施形態によれば、超音波プローブ10Cは、複数のプローブポートを有する装置本体20Aに接続可能である。また、超音波プローブ10Cは、超音波を発生する超音波振動子15を駆動させるための複数のプローブ内送信回路1421を有する。超音波プローブ10Cが備える制御回路18Cは、プローブ内送信回路1421に対する駆動信号を、超音波プローブ10Cが接続されるプローブポートの位置に応じて生成する。これにより、プローブポート間において、超音波プローブ10Cに設けられた送信回路14を駆動する駆動信号と、送信回路14の駆動タイミングを制御する制御信号との間の遅延差のばらつきを抑えることが可能となる。
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(central processing unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びFPGA)等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、上記各実施形態の各プロセッサは、プロセッサ毎に単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、上記各実施形態における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、プローブポート間において、超音波プローブに設けられた送信回路を駆動する駆動信号と、当該駆動信号による送信回路の駆動タイミングを制御する制御信号との間の遅延差のばらつきを抑えることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。