JP2019184102A - 金属製錬炉及びその操業方法 - Google Patents
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Abstract
Description
図1は本発明に係る金属製錬炉の一実施形態である自溶炉の概略正面断面図である。図示された自溶炉1は、概略として、一端側に設けられた反応シャフト2と、他端側に設けられたアップテイク4と、反応シャフト2とアップテイク4の中間部に位置するセットラ3を備えて炉体が構成されており、自溶炉1の炉体全体は鋼材等の金属製材料によって形成されたシェル(缶体)によって形成されている。反応シャフト2は、略円筒形状とされ、その上部に精鉱バーナ7が配置されている。そして、精鉱バーナ7には酸素富化空気の供給部8が設けられている。反応シャフト2に精鉱バーナ7から酸素富化空気あるいは高温熱風と同時に精鉱(製錬原料)が吹き込まれると、瞬間的に化学反応が生起し、反応した精鉱(製錬原料)は比重差によってセットラ3の炉低部1a上でマット(下層)とスラグ(上層)とに分離される。セットラ3のマットレベルには不図示のマットタップホールが設けられ、セットラ3のスラグレベルには不図示のスラグタップホールが設けられる。スラグタップホールは不図示の錬かん炉に連結されており、スラグに含まれていた銅はマットとして回収される。一方、アップテイク4は、スラグ上層の排ガスを廃熱ボイラへ誘導して廃熱の回収を行い、冷却された排ガスは硫酸工場に送られる。なお、セットラ3の周壁には、図1に示すとおり、互いに連結された複数の水冷ジャケット10が配置されており、これら複数の水冷ジャケット10の周囲にはジャケットを保持するための複数のバックステイ2aが配置されている。本実施形態では、セットラ3の周壁に配置された水冷ジャケット10を主として説明するが、反応シャフト2の周壁にも適当な水冷ジャケットが配置されている。
図2は、水冷ジャケット10の部分斜視図、図3は、水冷ジャケット10を自溶炉1に配置した状態の側面断面図、図4は、水冷ジャケット10の炉外側を示す背面図、図5は、水冷ジャケット10の平面図である。
図示された水冷ジャケット10は、概略として、内部に冷却水路11を備えたジャケット本体20と、ジャケット本体20の表面から炉内側へ突出するようにして形成された複数の冷却フィン30を備えて形成されている。ジャケット本体20と冷却フィン30は、ジャケット本体20の内部に冷却水路11となる金属パイプを内装した状態で一体鋳造することによって形成されている。また、互いに隣接する冷却フィン30の間隙(スペース)32には耐火物層(後述)が充填される。ジャケット本体20と冷却フィン30及び冷却水路11は熱伝導性が高い金属、例えば銅によって形成すると、冷却フィン30やジャケット本体20が冷却水路11内を流通する冷却水によって耐火物層を効率的に冷却することができる。
次に、水冷ジャケット10の炉内側に位置する耐火物層について説明する。冷却フィン30の相互間(図2のスペース32)及び最上部及び最下部の冷却フィンの片側の隙間には、図3に示すように、耐火物層31が形成されている。自溶炉1はその稼働時に下側からマットレベル(Mレベル)101、スラグレベル(Sレベル)102及びガスレベル(Gレベル)103の3つのレベルが形成される。一例を示すと、自溶炉1におけるマットホールレベルを0mmとした場合、マットレベルが600〜800mm、スラグレベルが700〜1,300mmである。また、マット抜きの際の溶湯レベルはマットレベルが500〜700mm、スラグレベルが700〜1,200mmであり、スラグ抜きの際の溶湯レベルはマットレベルが600〜800mm、スラグレベルが700〜1,000mmである。反応シャフト2の直下のスラグレベル102及びガスレベル103はマットレベル101に比べてより高温に晒されること、ならびに溶湯レベルの変動によりガスと溶湯界面が移動する範囲であり負荷変動が大きいために溶損し易く、このスラグレベル102及びガスレベル103に焼成マグネシアクロミア耐火煉瓦を用いた場合、スラグレベル102及びガスレベル103の耐火煉瓦は6カ月程度で溶損しはじめるおそれがある。
次に、水冷ジャケット10による水冷の方法について説明する。自溶炉1においては冷却水路11の供給口12から所定の流速で冷却水を流し、それを排出口13から排出することによって耐火物層31を積極的に冷却して自溶炉の安定操業を行うことが出来る。また、冷却水路11への冷却水の流量を適宜調整することで冷却の強弱を調整することが出来る。この場合、熱電対40による常時監視のデータを利用して測定温度が上昇した場合には冷却水の流量を増やし、温度が安定してきたら冷却水の流量を減らす等の調整をコンピュータ管理によって行わせることも出来る。
次に、冷却フィン30の形状について説明する。図2に示すように、水冷ジャケット10の冷却フィン30は、略水平な姿勢で上面及び底面を有した概略板状のフィンであって、略鉛直方向にかけて略等ピッチで複数配列されている。上面及び底面が非水平となるように冷却フィン30の姿勢を変更することも可能であるが、耐火物層31が溶損した後に形成されるスラグコーティングの保持の観点から、略水平とされること好ましい。また、冷却フィン30の形状及びサイズは、設置部の熱負荷条件において、耐火物層を安定維持し、且つ適切な厚みのコーティングを形成するために必要な冷却能力に応じて決定される。尚、ジャケット本体20は冷却水によって冷却されているので、ジャケット本体20と一体鋳造で形成される冷却フィン30は熱伝導により冷却され、冷却フィン30の相互間に充填された耐火物層31が溶損したときに、冷却フィン30の相互間をジャケット本体20に向かって進行してくる溶湯は冷却されて凝固し、スラグコーティングとして冷却フィン30の相互間に保持されるので、冷却フィン30が残存している状態であればジャケット本体20が直接溶湯と接触することはない。
次に、水冷ジャケット10の寸法について説明する。水冷ジャケット10の厚さは、約100〜200mmに設定され、冷却フィン30の厚さは、約30〜80mmに設定され、冷却フィン30の間隔(スペース32の厚さ)は、冷却フィン30の厚さと同様の約30〜80mmに設定される。自溶炉1の通常の操業状態において、スラグの厚さは約400〜700mm、マットの厚さは約600〜800mm、スラグとマットを合わせた最大湯深は約1,400mmであるので、これに適合するよう水冷ジャケット10の高さ(冷却フィン30の配列数)が設定される。また、自溶炉1の通常の操業状態において、スラグ及びマットの温度は約1,200〜1,300℃であるので、これに適合するよう冷却フィン30の幅サイズや突出長さが設定される。ここで、冷却フィン30の突出長さは、ジャケット本体20a〜20cの表面から例えば約100mm〜約200mmに設定することができる。
ここで、図6は比較例における熱負荷の分布を説明する図である。比較例は、本実施形態の自溶炉1と同様の構成を有した自溶炉であるが、セットラ(溶湯保持部)の周壁の全周に亘り水冷ジャケット10の冷却性能が一様である点において本実施形態の自溶炉1と相違する。図6において符号3で示すのは、比較例のセットラを水平面で切断してできる概略断面であり、図6において符号2で示すのは反応シャフトの直下に位置する領域であり、図6のグラフは、セットラの炉内壁面にかかる熱負荷分布を示すグラフである。図6に示す4つのグラフは、セットラの周壁である4つの炉内壁面の水平方向における熱負荷分布をそれぞれ示している。グラフの縦軸は熱負荷(Mcl/h)であり、グラフの横軸は水平方向の位置である。なお、熱負荷の値は、冷却水抜熱量に基づき計測することができる(後述する熱電対を用いてもよい)。
次に、本実施形形態に係る自溶炉1の特徴的な構成(比較例との相違点)を自溶炉1の操業方法と共に説明する。
また、本実施形態の自溶炉1では、少なくともセットラ3の周壁に配置された水冷ジャケット10は、図3に示すとおり、炉外側に耐火層(不定形耐火物、定型耐火物などの耐火物層)を設けることなく剥き出しの状態とされる。よって、耐火物層を備えない分だけ水冷ジャケット10を自溶炉1の炉体外郭サイズの限界位置まで下げて配置することができるのでその分だけ溶湯保持容積の増大を図ることができる。また、水冷ジャケット10の炉外面(背面)に耐火物層を設けなかったことで、水冷ジャケット10の炉外面(背面)からの直接的な放熱が可能となり、熱拡散効率の向上、省エネルギ化を図ることができる。
以上説明したとおり、本実施形態に係る自溶炉1は、セットラ3の炉内壁面側における熱負荷に応じて冷却能力の異なる水冷ジャケット10を配置しているので(図7参照)、熱負荷の低いエリアにおける過剰な冷却(除熱)が抑制されることとなり、これによって当該エリアにおける過剰な炉内コーティング(鋳付き)の生成が防止され、ひいては炉内溶湯保持容積の縮小(炉内埋り)を防止することが可能である。よって、自溶炉1の炉体外郭サイズを変更することなく溶湯保持容積を拡大することができるという効果がある。
上述した実施形態において、水冷ジャケット10bの各冷却フィン30は、図8に示すように、両側の水冷ジャケット10a,10cの冷却フィン30に対し設置位置が異なる千鳥配置になるように高さをずらして配置してもよい。このような千鳥配置を実現するために水冷ジャケット10bの最上部に位置する冷却フィン30と最下部に位置する冷却フィン30の厚さは他の冷却フィン30の厚さのほぼ2倍の厚さにすることができる。これにより冷却フィン30と耐火物層31が挟み込まれる空間部が千鳥配置となり、耐火物層31は上下左右方向に位置する冷却フィン30及びジャケット本体20の表面の5方向から効率的に冷却されることになる。また、ジャケット本体20は冷却フィン30と耐火物層31によって溶湯とは直接接触しないのでジャケット本体20の溶損が効果的に抑制され、それによって水漏れトラブルから守られることになる。尚、水冷ジャケット10の分割形状は上述した構造に限るものではなく、水冷ジャケット10a,10bを一つのユニットとして左右に連続配置することも可能である。
また、上記実施形態では、冷却能力の異なるエリアの数(区分数)を「3」としたが(図7参照)、区分数は「3」に限定されることはなく「4以上」にすることもできるし、「2」にすることもできる。
また、冷却能力の異なるエリアのサイズは、上記実施形態におけるそれに限定されることはない。例えば、エリアの最小単位は、水冷ジャケット一つ分(又はこれを構成するパーツ一つ分)としてもよいし、冷却フィン一つ分としてもよい。
また、上記実施形態では、セットラ3の周壁を横方向(水平方向)にかけて区分したが、縦方向(鉛直方向)にかけて区分してもよい。
また、上記実施形態では、セットラ3の周壁における熱負荷冷却フィン30の厚さを均一としたが、熱負荷の低いエリアほど厚さを小さくしてもよい(耐火物層を厚くしてもよい)。
また、上記実施形態では、冷却能力に分布を設ける壁面を、セットラ3の巾方向(図7の上下方向)に並ぶ1対の壁面としたが、セットラ3の長さ方向(図7の左右方向)に並ぶ1対の壁面としてもよいし、セットラ3の全ての周壁としてもよい。また、自溶炉1の他の壁面(反応シャフト2の周壁など)としてもよい。例えば、反応シャフト2の周壁の熱負荷分布に応じて、当該周壁に配置される水冷ジャケットの冷却能力を設定してもよい。
また、水冷ジャケット10には冷却フィン30の溶損進行度を把握するために3つの熱電対40が配置されている。図9は熱電対による温度監視の説明図である。3つの熱電対40によって測定された温度データは、図9に示すコンピュータ50を用いて解析することによって冷却フィン30の溶損進行度を常時監視するようになっている。3つの熱電対40は、水冷ジャケット10a〜10cに設けられた所定の冷却フィン30の基端部に取り付けられており、この部分で測定された温度が図示しない制御室に設置されたコンピュータ50に常時取り込まれて監視される。この温度によって冷却フィン30の溶損の進行状態を把握することができる。コンピュータ50は測定温度に基づいて冷却フィン30の寿命を推定し、音や光(ランプ)による警報、プリントアウト等により保安要員等に警告及び通知する。これを基に保安要員等は、予め交換の必要な水冷ジャケット10を準備しておくことにより、長時間の操業停止等を回避することが可能になる。また、予めコンピュータ50に所定の温度を設定しておき、熱電対40による測定温度がその設定温度になったときに水冷ジャケット10の交換を促す警報を行うように構成することも可能である。尚、熱電対40の数は3つとしたが、これに限るものではなく、1又は複数を設けることも可能である。
本発明は各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
1a 炉底部
2 反応シャフト
2a バックステイ
3 セットラ
4 アップテイク
7 精鉱バーナ
8 酸素富化空気供給部
10 水冷ジャケット
10a 水冷ジャケット
10b 水冷ジャケット
10c 水冷ジャケット
11 冷却水路
12 供給口
13 排出口
14 締着部材
20 ジャケット本体
20a ジャケット本体
20b ジャケット本体
20c ジャケット本体
21 取付部
22 取付部
30 冷却フィン
32 スペース
31 耐火物層
34 スペーサ
40 熱電対
50 コンピュータ
101 マットレベル
102 スラグレベル
103 ガスレベル
201a ジャケット本体
201b ジャケット本体
200 自溶炉
201 反応シャフト
202 セットラ
205 マットタップホール
206 スラグタップホール
203 アップテイク
204 精鉱バーナ
220 錬かん炉
Claims (5)
- 金属製錬炉の炉内壁面側における熱負荷に応じて冷却能力の異なる水冷ジャケットを配置することにより、炉体の外郭サイズを変えることなく炉内容積の拡大を可能としたことを特徴とする金属製錬炉。
- 請求項1に記載の金属製錬炉において、
炉内壁面側における熱負荷に応じて前記フィンの長さが異なる水冷ジャケットを配置したことを特徴とする金属製錬炉。 - 請求項2に記載の金属製錬炉において、
炉内壁面側における熱負荷の低い箇所に設置する水冷ジャケットのフィンの長さは熱負荷の高い箇所に設置するフィンの長さよりも相対的に短くしたことを特徴とする金属製錬炉。 - 請求項1から3のいずれか1項に記載の金属製錬炉において、
前記水冷ジャケットは、炉外側に耐火層を設けることなく剥き出しの状態としたことを特徴とする金属製錬炉。 - 金属製錬炉の炉内壁面側における熱負荷分布を測定するステップと、
測定された熱負荷分布に基づいて熱負荷の異なる2以上のエリアに前記炉内壁面側を区分するステップと、
区分されたエリアの熱負荷に応じて冷却能力の異なる水冷ジャケットを配置するステップと、
を含み構成されていることを特徴とする金属製錬炉の操業方法。
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