下記の実施の形態は、本発明に係る使い捨てマスク10に関し、発明の不可欠な構成ばかりではなく、選択的及び好ましい構成を含む。図1及び図3では、マスク10の折り畳まれた状態の左半体パネル202の構成について説明しているが、右半体パネル201についても同様の構成を有する。
図1〜図3を参照すると、本発明の使い捨てマスク10の一例として示す、マスク10は、互いに交差(直交する)する上下方向Y及び幅方向Xを有し、肌対向面及びそれに対向する非肌対向面と、マスク本体20と、マスク本体20の両側縁20c,20dから延びる環状の一対の耳掛け部40とを含む。マスク本体20は、上下方向Yの寸法を2等分する仮想点で画成されたラインQと幅方向Xの寸法を2等分する縦中心線Pとを有し、縦中心線Pに隣接して上下方向へ延びるシールライン30を有する(図1〜図3参照)。本明細書におけるラインQは、マスク本体20の後述する上端縁20aおよび下端縁20bの上下方向Yの寸法を2等分する仮想点を連結することによって画成された幅方向Xへ延びる曲線である。なお、ラインQは直線であってもよい。また、本明細書において、マスク本体10の着用状態を考慮して、幅方向Xの中央を前方といい、幅方向Xの端縁を後方ということがある。
マスク本体20は、縦中心線Pに関して対称の形状を有し、着用者の顔面の右側を被覆する右半体パネル201と左側を被覆する左半体パネル202とを有する。右半体パネル201と左側パネル202との幅方向Xの内側に位置する内側縁部の内面どうしが、シールライン30を介して合掌状に接合されることによって、マスク10は、展開した状態において立体的な態様を有する。
マスク10は、左右半体パネル201,202の内側縁部の内面どうしが当接された状態で接合されていることから、常時、左右半体パネル201,202の内面どうしが互いに対向又は/及び当接した状態にある。マスク本体20は、着用者の顔面に対向する肌対向面と反対側に位置する非肌対向面とを有する。本明細書において、肌対向面は内面、非肌対向面は外面ともいう。
マスク本体20は、複数の繊維不織布を積層して形成されたものであって、着用者の口及び鼻を覆う部分である口鼻覆い部21(フィルター領域)と、両側部22とを有する。マスク本体20は、上端縁20aと、下端縁20bと、上下端縁20a,20bの間において上下方向Yへ延びる両側縁20c,20dとを有する。
マスク本体20の上端縁20aは、ウエーブ状であって、幅方向Xの中央部分において上方へ凸曲する中央部位36aと、中央部位36aの両側において下方へ凸曲した形状を有す両側部位36bとを有する。上端縁20aがかかる形状を有することによって、マスク本体20の上端部27は、幅方向Xの中央部において凸曲した形状を有する。マスク本体20の両側縁20c,20dは、幅方向Xの外側へ二股状に凸曲した形状を有し、下端縁20bは、両側縁20c,20dから下方に僅かに湾曲して延びる略V字状を有する。
マスク10は、主として3〜6歳迄の低年齢層を対象とした、いわゆる幼児用のマスクであって、外形寸法が比較的に小さく、図2を参照すると、例えば、マスク本体20の幅方向Xの寸法W1は、130〜190mmであり、上下方向の寸法W2は、100〜120mmである。マスク本体20は、展開した状態において略星形を有し、単なる矩形状、楕円形状等を有する従来の大人用のマスクとは異なる特異なデザイン性を有する。したがって、着用対象者である幼児に対して、丸みのある可愛らしい印象を与えて購買意欲を惹起することができる。
図2及び図4を参照すると、マスク本体20は、(幅方向X及び上下方向Yにそれぞれ交差(直交)する)厚さ方向Zにおいて積層された複数枚の繊維不織布から形成してあり、口鼻覆い部21の非肌対向面を形成する外層シート23と、外層シート23から順に肌対向面側に積層された、第1中間層シート(外側中間層)24、第2中間層シート(内側中間層)25、及び内層シート26とを有する。内層シート26は、口鼻覆い部21の肌対向面を形成している。外層シート23と第1中間層シート24とは、第2中間層シート25及び内層シート26よりも幅方向Xにおける寸法が小さく、マスク本体20の両側部22は第2中間層シート25と内層シート26とから形成されている。
マスク本体20の周縁に位置するシートは、図2に示すように、周縁に沿って間隔を空けて配置した溶着部38a,38bによって互いに接合されている。より詳細に説明すると、口鼻覆い部21に位置するシート23,24,25,26は、第1溶着部38aによって互いに接合され、両側部22に位置する第2中間シート25及び内層シート26は、第2溶着部38bによって互いに接合されている。第1溶着部38a及び第2溶着部38bによって、マスク本体20を環状に囲む外周シール域38が画成される。また、第1溶着部38a及び第2溶着部38bのそれぞれは、楕円形状であるため、着用者及び第三者に柔らかいイメージを与えることができる。
口鼻覆い部21の両側部21aには、上下方向Yにおいて間隔を空けて配置した第3溶着部39a,39bが、上下方向Yへ沿って間隔を空けて配置され、シート23,24,25,26が互いに接合されている。第3溶着部39a,39bによって、口鼻覆い部21を形成するシート23,24がシート25,26から剥離するのを防止することができる。また、上下方向Yへ列状に配置した第3溶着部39a,39bの中央部が凹曲部分53に隣接する。このため、凹曲部分53に隣接する箇所の剛性を向上することができ、着用時、両側部22が顔面から浮き上がるのを防止することができる。
マスク本体20を形成する複数のシートは、マスク本体20の外周縁に沿って延びる外周シール域38によって互いに接合されている。また、各シート23〜26は、口鼻覆い部21の幅方向Xの両側において、上下方向Yへ延びる縦断シール域39によって互いに接合されている。縦断シール域39は、ウエーブ状(曲線状)であって、上側及び下側において、後方へ凸曲するとともに、中央において前方へ凸曲した湾曲形状を有する。湾曲形状の縦断シール域39によって、着用者及び第三者に柔らかいイメージを与えることができる。なお、縦断シール域39は、間隔をあけて直線状に配置した第3溶着部によって形成してもよい。
図4(a)を参照すると、外層シート23と第1中間層シート24との外側縁23a,24aは縦断シール域39よりも幅方向Xの外側に位置しており、縦断シール域39から幅方向Xの外側に延びる外層シート23の一部と第1中間層シート24の一部とによってドライエッジ部分70が形成されている。
外周シール域38は、マスク本体20の外周縁に沿って互いに間隔を空けて配置された複数の溶着部38a,38bを有する。縦断シール域39は、口鼻覆い部21の両側部21aの上下方向Yにおいて互いに間隔を空けて配置された複数の溶着部39a,39bを有する。縦断シール域39の溶着部39bは先端が曲状の略星形であって、溶着部39aは、大きさの異なる円形状である。各溶着部38a,38b,39a,39bは、先尖状部分を有しておらず、曲状部分のみから形成されていることから、着用者に対して、比較的に剛性の高い各溶着部38a,38b,39a,39bに肌が当たっても刺激が与えられることのないような柔軟な印象を与えることができる。加えて、各溶着部38a,38b,39a,39bは、上下端縁20a,20b及び両側縁20c,20dから離れて位置するため、シート23〜26の溶着の際、シート23〜26の切れ端が発生することがないから、シート23〜26の切れ端が肌に対して刺激を与えることがない。また、溶着部39a,39bがデザイン性を有することから、縦断シール域39は装飾要素としての機能も発揮しうる。
各シート23〜26は、シールライン30を除き、外周シール域38及び縦断シール域39においてのみ互いに接合され、他の部分においては接合されていない。したがって、複数の繊維不織布を積層して形成されたシートの対向面全体が接着剤等の接合手段で互いに接合されている場合に比して、マスク本体20は柔軟性及び通気性に優れる。また、外周シール域38と縦断シール域39とが互いに交差する部分において、各溶着部38a,38b,39a,39bが互いに重なり合っていない。それによって、各溶着部が互いに重なり合うことによって局所的に剛性の高い部分が形成されるのを抑制している。
マスク本体20を形成するシート23〜26は、例えば、質量10〜60g/m2の通気性を有する熱可塑性合成樹脂の繊維不織布シートであって、メルトブローン繊維不織布、スパンボンド繊維不織布、SMS繊維不織布及びエアスルー繊維不織布等の各種公知の繊維不織布から形成することができる。第1中間層シート24は、微粒子の通過を阻止するフィルター機能を有する繊維不織布を用いることが好ましい。また、第2中間層シート25は、マスク本体20のベースシートとして機能するように比較的にシート強度の強い繊維不織布を用いることが好ましい。内層シート26には、着用者の肌に接触するため、肌触りの良好な繊維不織布を用いることが好ましい。
本実施形態においては、例えば、外層シート23として質量35〜50g/m2のスパンレース繊維不織布を用いてあり、第1中間層シート24として質量20〜30g/m2のメルトブローン繊維不織布を用いてあり、第2中間層シート25として質量35〜50g/m2のスパンボンド繊維不織布を用いてあり、内層シート26として質量20〜30g/m2のスパンボンド繊維不織布を用いてある。
マスク本体20の両側部22は、図2に示すように、後方へ凸曲状に延びる上凸曲部分(凸部)51と、下凸曲部分(凸部)52と、上凸曲部分51と下凸曲部分52との間において前方へ凹なる凹曲部分(凹部)53とを有する。上下凸曲部分51,52は、なだらかなカーブ状を有し、凹曲部分53は上下凸曲部分51,52に比べて曲率半径が小さく、急なカーブ状を有する。凹曲部分53は、連続して上下方向Yへ延びる上下凸曲部分51,52の間に位置する部分であるから、それらの一部と重なっている。両側部22における上凸曲部分51及び下凸曲部分52、並びに凹曲部分53がいずれも曲線状であるため、肌に触れても肌を強く刺激することがない。加えて、凹曲部分53に着用者の耳を入れることができるため、耳掛け部40の自由部42が長くなるのを防止し、着用状態において、着用者の顔面からマスク本体20がずれるのを抑えることができる。なお、上下凸曲部分51,52及び凹曲部分はカーブ状に限られず、直状でもよい。
表1の比較例1に示すマスクでは、上下凸曲部分51,52及び凹曲部分53の曲率半径が小さいため、着用者の耳の大きさに対して凹曲部分53を含む、耳掛け部40における両端部41a,41bの縦方向の寸法(両端部41a,41bのうち、上方に位置する一方の端部41aの下端から、下方に位置する他方の端部41bの上端の間の距離)が狭すぎ、耳掛け部40の両端部41a,41bが耳に強く接触してしまう問題があるとともに、凹曲部分53の中央部が着用者の頬から離れてしまう(マスクの凹曲部分53の中央部と着用者の頬との間に隙間が発生する)問題もあった。
表1の比較例2に示すマスクでは、凹曲部分53の中央部が着用者の頬から離れてしまう(マスクの凹曲部分53の中央部と着用者の頬との間に隙間が発生する)問題があった。
表1の比較例3に示すマスクでは、凹曲部分53の曲率半径が大きいため、着用者の耳の大きさに対して凹曲部分53を含む、耳掛け部40における両端部41a,41bの縦方向の寸法(両端部41a,41bのうち、上方に位置する一方の端部41aの下端から、下方に位置する他方の端部41b上端の間の距離)が広すぎ、凹曲部分53の中央部が着用者の頬から離れてしまう(マスクの凹曲部分53の中央部と着用者の頬との間に隙間が発生する)問題があった。また、着用者の顎のラインにマスクが沿わず、マスク本体20と着用者の顔面との間に隙間が発生する問題もあった。
一方、実施例1〜3に示すマスクでは、上下凸曲部分51,52及び凹曲部分53の曲率半径が適当な大きさであるため、顔面とマスク本体20の凹曲部分53との間に隙間が発生せず、マスク本体20が顔面にフッィトしていた。評価は、顔面に対してマスク10がフィットしてマスク本体20と顔面との間に隙間が発生していなかったら「○(良好)」とし、着用者の顔面にマスク10がフィットしていないため顔面とマスク本体20との間に隙間が発生していたら「×(不可)」とした。
また、両端部41a,41bの間の寸法から、両端部41a,41bの間の寸法の最大値は、38.5mm以下が好ましい。両端部41a,41bの間の寸法を38.5mmとしたとき、上凸曲部分51及び下凸曲部分52の曲率半径の最大値は、19.25mmになるが、上下凸曲部分51,52の曲率半径を19.25mmとすると、上凸曲部分51と下凸曲部分52とが接触して凹曲部分53を配置することができなくなってしまう。凹曲部分53の最大値である9mmを確保したとき、上下凸曲部分51,52の曲率半径の最大値は、(38.5mm−9mm)÷2=14.25mm(およそ14mm)となる。
上述の評価から、上凸曲部分51の曲率半径は、例えば、8〜14mmが好ましい。下凸曲部分52の曲率半径は、例えば、8〜14mmが好ましい。また、凹曲部分53の曲率半径は、5〜9mmが好ましい。
縦断シール域39と凹曲部分53との幅方向Xの間の寸法は、表1の結果、およびドライエッジ部分70を確保しながら、凹曲部分53の中央部と着用者の頬との間に隙間が発生しないようにするため、10〜15mmが好ましい。
耳掛け部40は、好ましくは弾性的に伸縮可能なものであって、不織布や織布、プラスチックフィルム、ゴムひも、織りゴム等の公知の材料によって形成される。特に、耳掛け部40に織りゴムを用いた場合には、耳掛け部40が比較的に幅広であっても、着用者の耳3に柔軟に接触して強い痛みを与えるおそれがない。
耳掛け部40は、マスク本体に固定された両端部41a,41bと、両端部41a,41bの間において環状に延びる自由部42とを有している。耳掛け部40の両端部41a,41bは、両側部22の外面において上凸曲部分51に位置する上固定部61と、下凸曲部分52に位置する下固定部62とを介してそれぞれマスク本体20に固定されている。上下固定部61,62においては、耳掛け部40の両端とマスク本体20とが熱溶着加工によって接合され(図4(a)参照)、マスク本体20を形成するシート25,26の一部が溶着してフィルム化している。また、耳掛け部40の両端部41a,41bが両側部22の外面に位置することから、着用時において耳掛け部40が後方へ引っ張られたときに両端部41a,41bによって両側部22を顔面に押し当てることができる。
図3を参照すると、上下固定部61,62は、例えば、四隅を曲線状にした長方形であり、長方形の対角線の交点である中心点61a,62aを有する。上下固定部61,62は、図示例の他に、三角形、正方形、多角形、円形、楕円形等の公知の形状であってもよく、上下固定部61,62が円形であるときには円の中心が、上下固定部61,62の中心点となる。すなわち、上下固定部61,62の中心点61a,62aとは、上下固定部61,62の重心であるといえる。
シールライン30は、図1及び図3に示すように、マスク本体20が折り畳まれた状態の側面視において曲線状であって、2つの変曲点34,35を有する。ここで、変曲点34,34とは、曲線と曲線とが交差する部位であって、直線と直線、または直線と曲線とが交差する部位を含むものではない。
図4(b)を参照すると、シールライン30は、例えば、3つの円弧、上方に位置する第1円弧C1、下方に位置する第2円弧C2、第1円弧C1及び第2円弧C2の間に位置する第3円弧C3によって画成される。第1円弧C1と第3円弧C3との交点が上変曲点34であり、第2円弧C2と第3円弧C3との交点が下変曲点35である。
第1円弧C1の半径R1は、例えば、85〜100mmであり、第2円弧C2の半径R2は、例えば、50〜65mmであり、第3円弧C3の半径R3は、例えば、95〜110mmである。第3円弧C3の半径R3が、第1円弧C1の半径R1よりも大きく、かつ、第2円弧C2の半径R2よりも大きい。したがって、第3円弧C3によって形成されるシールライン30の中央部分は、第1及び第2円弧C1,C2によって形成される上下側部分に比べて緩やかなカーブ状を有する。また、第2円弧C2の半径R2は、第1円弧C1の半径R1よりも小さくなっている。したがって、第1円弧C1によって形成される上側部分は、第2円弧C2によって形成される下側部分に比べて緩やかなカーブ状を有する。
図3を参照すると、上変曲点34は、シールライン30の上端縁30aと横中心線Qとの間に位置している。下変曲点35は、シールライン30の下端縁30bと横中心線Qとの間において、下固定部62の中心点62aよりも下方に位置している。
また、上固定部61の中心点61aとシールライン30の上端縁30aとを結ぶ第1仮想線(第1仮想線分)K1と、上変曲点34とシールライン30の上端縁30aとを結ぶ第2仮想線(第2仮想線分)K2とが交差してなる第1交角θ1は、下固定部62の中心点62aとシールライン30の下端縁30bとを結ぶ第3仮想線(第3仮想線分)K3と、下変曲点35とシールライン30の下端縁30bとを結ぶ第4仮想線(第4仮想線分)K4とが交差してなる第2交角θ2よりも小さい。
表2の比較例1に示すマスクでは、鼻根に対してマスク本体の中央部が浮き上がって、鼻根とマスク本体との間に隙間が生じてしまうおそれがあった。表2の比較例2に示すマスクでは、鼻の下方に対してマスク本体の中央部が離れてしまうおそれがあった。また、表2の比較例3〜4に示すマスクでは、鼻根のカーブに対して、マスク本体の中央部の曲状部分が合わず、鼻根の上方へマスク本体の上端部が張り出してしまった。一方、実施例1〜2に示すマスクでは、マスク本体の両側部及び下端部に隙間が発生せず、マスク本体が顔面にフッィトした。評価は、顔面に対してマスクがフィットしてマスク本体と顔面との間に隙間が発生していなかったら「○(良好)」とし、フィットしていない、若しくは顔面とマスク本体との間に隙間が発生していたら「×(不可)」とした。このため、第1交角θ1は、例えば、80〜90度が好ましい。
表3の比較例1〜3に示すマスクでは、顎の側方に位置するマスク本体の両側部の下方が顔面から浮き上がって隙間が生じてしまった。加えて、マスク本体の下端部が、着用者の下顎から張り出す態様となってマスク本体の下端部と下顎との間に隙間が生じてしまった。一方、表3の比較例4に示すマスクでは、マスク本体の下端部が、顎の先端から浮き上がって隙間が生じてしまった。加えて、マスク本体の下端部が、着用者の下顎から張り出す態様となってマスク本体の下端部と下顎との間に隙間が生じてしまった。一方、実施例1〜2に示すマスクでは、マスク本体の両側部及び下端部に隙間が発生せず、マスク本体が顔面にフッィトしていた。評価は、顔面に対してマスクがフィットしてマスク本体と顔面との間に隙間が発生していなかったら「○(良好)」とし、マスク本体が顔面にフィットせずに顔面とマスク本体との間に隙間が発生していたら「×(不可)」とした。このため、第2交角θ2は、例えば、95〜105度が好ましい。
また、表4の比較例1に示すマスクでは、第4仮想線K4の長さ寸法L2が短いため、マスク本体の下端部と下顎との間に隙間が生じてしまった。表4の比較例2に示すマスクでは、第4仮想線K4の寸法L2が長いため、マスク本体の下端部が着用者の下顎から張り出す態様となってマスク本体の下端部と下顎との間に隙間が生じてしまった。一方、実施例1〜2に示すマスクでは、マスク本体の下端部と下顎とがフッィトし、マスク本体の下端部と下顎との間に隙間が生じていなかった。評価は、顔面に対してマスクがフィットしてマスク本体と顔面との間に隙間が発生していなかったら「○(良好)」とし、マスク本体が顔面にフィットせずに顔面とマスク本体との間に隙間が発生していたら「×(不可)」とした。このため、第4仮想線K4の長さ寸法L2は、例えば、17〜30mmが好ましい。
第2仮想線K2の長さ寸法L1は、例えば、10〜45mmである。第2仮想線K2の長さ寸法L1は、第4仮想線K4の長さ寸法L2よりも大きくなっている。
図2及び図3を参照すると、マスク本体20の上端部27は、幅方向Xの中央において凸曲した形状を有し、上端部27の一部27aは、第1仮想線K1よりも上方に位置している。
例えば、大人用の従来のマスクでは、両側縁が直線状に延びた長方形状を有し、マスク本体の上端縁の幅寸法と下端縁の幅寸法とが同一である。一方、着用者の顔は、頬の幅寸法に比べて下顎の幅寸法が小さくなっている。加えて、幼児は、大人に比べて鼻根が低く、かつ、下顎の先端が丸いとともに下顎が小さい。このため、単に、大人用の従来のマスクを単に小さくしたマスクを幼児に着用すると、マスク本体の下端部が下顎の下部から張り出すような態様となって顔面とマスク本体の下端部との間に隙間が生じやすかった。加えて、マスク本体の中央部が、鼻背と頬との間を覆うことができないため、鼻背と頬との間に隙間が生じやすかった。さらに、従来のマスクでは、顔面に対してマスクを固定する位置が明確でないため、マスク本体と顔面との間に隙間が生じやすかった。
図5及び図6を参照すると、着用者がマスク10を着用するとき、例えば、鼻根4にマスク本体20の上端部27を接触させて、次に、両方の耳3に耳掛け部40の自由部42を掛け、最後に、下顎の先端1と下変曲点35とが対向するように、下顎の下部2にマスク本体20の下端部28を接触させて着用者の顔面にマスク10を着用する。着用状態においては、両側部22が後方へ引っ張られることによって、マスク本体20の上下端部27,28は後方へ、すなわち、顔面へ向かって折れ曲がる。かかる折れ曲がりの起点として上下変曲点34,35が機能し、上下変曲点34,35の間において鼻孔と口5とが位置する空間Sが画成される。
本発明に係るマスク10では、図3に示すように、上固定部61の中心点61aとシールライン30の上端縁30aとを結ぶ第1仮想線K1と、上変曲点34とシールライン30の上端縁30aとを結ぶ第2仮想線K2とが交差してなる第1交角θ1は、下固定部62の中心点62aとシールライン30の下端縁30bとを結ぶ第3仮想線K3と、下変曲点35とシールライン30の下端縁30bとを結ぶ第4仮想線K4とが交差してなる第2交角θ2よりも小さくなっている(第1要件)。
これによって、上変曲点34が上固定部61の中心点61aと前方に対向して位置してシールライン30の比較的に高い位置にあり、大人に比べて鼻筋の短い幼児の鼻にも上端部27がフィットする。また、下変曲点35が下固定部62の下方であってシールライン30の比較的に低い位置にあることから、下端部28が横に拡がるように丸い形状を有する幼児の下顎に対向してフィットされる。
また、マスク本体20の上端部27は、幅方向Xの中央において凸曲した形状を有し、上端部27の一部27aは、第1仮想線K1よりも上方に位置する(第2要件)。幼児の鼻根4は、大人と比較して低く横に拡がった形状を有することから、上端部27が第1仮想線K1よりも下方に位置する場合には、鼻根4の一部が外部に露出されてマスク本体20と顔面との間に隙間が生じる原因となるおそれがある。本実施形態においては、上端部27の一部27aが第1仮想線K1よりも上方に位置することによって、鼻根4の横側部分全体を被覆してマスク本体20と顔面と間に隙間が形成されるのを抑制することができる。また、上端部27が曲状を有することによって、鼻根4に触れても刺激を与えるおそれはない。
さらに、第2仮想線K2は、第4仮想線K4よりも長くなっている(第3要件)。これによって、着用状態において、上端部27が鼻背全体にフィットされるとともに、下端部28が下顎の下方へ先鋭状に突出して隙間が形成されたり、正面視においてマスク本体20が縦長となって、実際の顔よりも面長な印象を与えることはない。
以上のとおり、シールライン30が、これらの3つの要件を全て備えることによって、口5の前方に空間Sを有するとともに、大人に比べて鼻根4と頬が低く、かつ、下顎の先端1が丸いとともに下顎の幅が狭い幼児の顔面に隙間なくフィットするマスク10を提供することができる。加えて、下顎の先端1と下変曲点35とが対向するように、下顎の下部2にマスク本体20の下端部28を接触させてマスク10を着用するため、顔面に対してマスク10を固定する位置が明確となる。マスク10が正しい位置で着用されることで、マスク本体20と顔面との間に隙間が生じ難くなるとともに、着用中にマスク本体20が顔面からずれることを防止することができる。マスク本体の上端縁及び下端縁が、幅方向及び上下のそれぞれに対して傾斜するとともに、幅方向の中央に位置するシールラインを介して折り畳むことが可能である従来の大人用マスクを単に縮小しただけのマスクでは、上述したような作用・効果を奏することはできない。
従来のマスクにおける両側縁では、着用者の曲状の頬部に沿わせるように密着させることが困難であって、顔面との間に隙間が生じ易くなる。特に耳掛け部の引っ張り力によって顔面に押し当てられる上下固定部の間に位置する部分は顔面から浮き上り易くなる。一方、本発明に係るマスク10では、上下固定部61,62に隣接する部分には、溶着部38a,38b,39a,39bが存在しない非存在域54を配置してあるため、上下固定部61,62の周囲では適度な柔軟性を有する一方、非存在域54に隣接するとともに囲繞する態様で溶着部38b,39a,39bを配置してあるため、非存在域54の周囲に位置する溶着部38b,39a,39bが適度な剛性を有することによって、凹曲部分53を含む両側部22が、着用者の顔面から浮き上がるのを防止することができる。特に、凹曲部分53は、前方へ抉れるように凹曲しているとともに、凹曲部分53の中央部は、上下固定部61,62の最も内方に位置する両端よりも、さらに内方に位置するため、上下固定部61,62の周囲の変形を容易にし、胴体に対して顔面を動かしたときにも、マスク本体10が顔面からずれるのを防止することができるとともに、溶着部38b、39a、39bによって、両側部22が顔面から浮き上ることを抑制することができる。また、凹曲部分53と縦断シール域39とが最も近接する部位55においても非存在域55が存在し、非存在域55が上下方向へ連続することによって、上述した作用・効果を確実にすることができる。
マスク本体20における上端縁20a及び下端縁20bが、鋭角のコーナー部分を含まず、直線状であるか曲線状であるため、着用者及び第三者に柔らかいイメージを与えることができる。加えて、両側部22における上下凸曲部分51,52及び凹曲部分53がいずれも曲線状であるため、肌に触れても肌を強く刺激することがない。
マスク本体20の上端縁20aは、シールライン30の上方から幅方向Xのそれぞれへ延びる中央部位36aと、中央部位36aの端部から幅方向Xへ延びる一対の両側部位36bとによって画成され、両側部位36bは、幅方向Xの中央が下方へ向けて凹む曲線状であるため、着用中にマスク本体20が上方へずれても、目6にマスク10の上端縁20aが当たるのを防止することができる。このため、段落[0049]〜[0051]の作用・効果に付加して、鼻根の低い幼児の鼻の周囲にフィットして、マスク本体10の上端部27と顔面との間に隙間ができることを防止しながら、頬が高い幼児の顔の目6にマスク10の上端縁20aが当たるのを防止することができる。
図示していないが、マスク10の他の実施形態として、マスク本体20の下側部分の外面に、印刷によって花柄やキャラクター、文字、符号及び記号等の装飾要素をワンポイントで配置してもよい。かかる装飾要素は、意匠性を向上させるとともに、着用者にマスク10の上下を知らせるための識別要素としても機能しうる。特に、マスク10は、従来のマスクとは異なる特異な外形を有することから瞬時に上下を識別することができないので、かかる識別要素が有効に機能するといえる。また、意匠性を向上するという観点から、例えば、人間に模したような装飾デザインをマスク本体20の形状に合わせて施してもよい。もちろん、装飾要素は、上記のような機能を有するものであれば、ワンポイントのものに限られず、口鼻覆い部21の全体、又はマスク本体20の全体に配置してもよい。
また、図2に示すように、マスク本体20を拡げた状態において、下固定部62の中心点62aどうしの長さ寸法L3よりも、上固定部61の中心点61aどうしの寸法L4が大きければ、マスク本体20の上端部27における上固定部61どうしの距離を大きくし、空間Sを大きくするとともに、大人に比べて耳3の位置が低い幼児の顔面にマスク10をフィットさせることができる。なお、マスク本体20を拡げた状態とは、平坦な物の上にマスク本体20を置いたとき、マスク本体20のシールライン30の近傍を除いた部分が、平坦な物の上面に平行となる状態をいう。
マスク10を構成する部材には、特に明記されていない限りにおいて、本明細書に記載されている材料のほかに、この種の分野において通常用いられている公知の材料を制限なく用いることができる。また、本明細書において使用されている「第1」及び「第2」等の用語は、同様の要素、位置等を単に区別するために用いてある。
図1〜図3を参照すると、本発明の使い捨てマスク10の一例として示す、マスク10は、互いに交差(直交する)する上下方向Y及び幅方向Xを有し、肌対向面及びそれに対向する非肌対向面と、マスク本体20と、マスク本体20の両側縁20c,20dから延びる環状の一対の耳掛け部40とを含む。マスク本体20は、上下方向Yの寸法を2等分する仮想点で画成されたラインQと幅方向Xの寸法を2等分する縦中心線Pとを有し、縦中心線Pに隣接して上下方向へ延びるシールライン30を有する(図1〜図3参照)。本明細書におけるラインQは、マスク本体20の後述する上端縁20aおよび下端縁20bの上下方向Yの寸法を2等分する仮想点を連結することによって画成された幅方向Xへ延びる曲線である。なお、ラインQは直線であってもよい。また、本明細書において、マスク本体20の着用状態を考慮して、幅方向Xの中央を前方といい、幅方向Xの端縁を後方ということがある。
マスク本体20の周縁に位置するシートは、図2に示すように、周縁に沿って間隔を空けて配置した溶着部38a,38bによって互いに接合されている。より詳細に説明すると、口鼻覆い部21に位置するシート23,24,25,26は、第1溶着部38aによって互いに接合され、両側部22に位置する第2中間層シート25及び内層シート26は、第2溶着部38bによって互いに接合されている。第1溶着部38a及び第2溶着部38bによって、マスク本体20を環状に囲む外周シール域38が画成される。また、第1溶着部38a及び第2溶着部38bのそれぞれは、楕円形状であるため、着用者及び第三者に柔らかいイメージを与えることができる。
マスク本体20の両側部22は、図2に示すように、後方へ凸曲状に延びる上凸曲部分(凸部)51と、下凸曲部分(凸部)52と、上凸曲部分51と下凸曲部分52との間において前方へ凹となる凹曲部分(凹部)53とを有する。上下凸曲部分51,52は、なだらかなカーブ状を有し、凹曲部分53は上下凸曲部分51,52に比べて曲率半径が小さく、急なカーブ状を有する。凹曲部分53は、連続して上下方向Yへ延びる上下凸曲部分51,52の間に位置する部分であるから、それらの一部と重なっている。両側部22における上凸曲部分51及び下凸曲部分52、並びに凹曲部分53がいずれも曲線状であるため、肌に触れても肌を強く刺激することがない。加えて、凹曲部分53に着用者の耳を入れることができるため、耳掛け部40の自由部42が長くなるのを防止し、着用状態において、着用者の顔面からマスク本体20がずれるのを抑えることができる。なお、上下凸曲部分51,52及び凹曲部分はカーブ状に限られず、直状でもよい。
例えば、大人用の従来のマスクでは、両側縁が直線状に延びた長方形状を有し、マスク本体の上端縁の幅寸法と下端縁の幅寸法とが同一である。一方、着用者の顔は、頬の幅寸法に比べて下顎の幅寸法が小さくなっている。加えて、幼児は、大人に比べて鼻根が低く、かつ、下顎の先端が丸いとともに下顎が小さい。このため、単に、大人用の従来のマスクを小さくしたマスクを幼児に着用すると、マスク本体の下端部が下顎の下部から張り出すような態様となって顔面とマスク本体の下端部との間に隙間が生じやすかった。加えて、マスク本体の中央部が、鼻背と頬との間を覆うことができないため、鼻背と頬との間に隙間が生じやすかった。さらに、従来のマスクでは、顔面に対してマスクを固定する位置が明確でないため、マスク本体と顔面との間に隙間が生じやすかった。
従来のマスクにおける両側縁では、着用者の曲状の頬部に沿わせるように密着させることが困難であって、顔面との間に隙間が生じ易くなる。特に耳掛け部の引っ張り力によって顔面に押し当てられる上下固定部の間に位置する部分は顔面から浮き上り易くなる。一方、本発明に係るマスク10では、上下固定部61,62に隣接する部分には、溶着部38a,38b,39a,39bが存在しない非存在域54を配置してあるため、上下固定部61,62の周囲では適度な柔軟性を有する一方、非存在域54に隣接するとともに囲繞する態様で溶着部38b,39a,39bを配置してあるため、非存在域54の周囲に位置する溶着部38b,39a,39bが適度な剛性を有することによって、凹曲部分53を含む両側部22が、着用者の顔面から浮き上がるのを防止することができる。特に、凹曲部分53は、前方へ抉れるように凹曲しているとともに、凹曲部分53の中央部は、上下固定部61,62の最も内方に位置する両端よりも、さらに内方に位置するため、上下固定部61,62の周囲の変形を容易にし、胴体に対して顔面を動かしたときにも、マスク本体20が顔面からずれるのを防止することができるとともに、溶着部38b、39a、39bによって、両側部22が顔面から浮き上ることを抑制することができる。また、凹曲部分53と縦断シール域39とが最も近接する部位55においても非存在域54が存在し、非存在域54が上下方向へ連続することによって、上述した作用・効果を確実にすることができる。
マスク本体20の上端縁20aは、シールライン30の上方から幅方向Xのそれぞれへ延びる中央部位36aと、中央部位36aの端部から幅方向Xへ延びる一対の両側部位36bとによって画成され、両側部位36bは、幅方向Xの中央が下方へ向けて凹む曲線状であるため、着用中にマスク本体20が上方へずれても、目6にマスク10の上端縁20aが当たるのを防止することができる。このため、段落[0060]〜[0062]の作用・効果に付加して、鼻根の低い幼児の鼻の周囲にフィットして、マスク本体20の上端部27と顔面との間に隙間ができることを防止しながら、頬が高い幼児の顔の目6にマスク10の上端縁20aが当たるのを防止することができる。