JP2019183232A - 電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents

電磁鋼板およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2019183232A
JP2019183232A JP2018076385A JP2018076385A JP2019183232A JP 2019183232 A JP2019183232 A JP 2019183232A JP 2018076385 A JP2018076385 A JP 2018076385A JP 2018076385 A JP2018076385 A JP 2018076385A JP 2019183232 A JP2019183232 A JP 2019183232A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel sheet
rolling
less
thickness
annealing
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2018076385A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6819646B2 (ja
Inventor
千田 邦浩
Kunihiro Senda
邦浩 千田
聡一郎 吉▲崎▼
Soichiro Yoshizaki
聡一郎 吉▲崎▼
善彰 財前
Yoshiaki Zaizen
善彰 財前
尾田 善彦
Yoshihiko Oda
善彦 尾田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2018076385A priority Critical patent/JP6819646B2/ja
Publication of JP2019183232A publication Critical patent/JP2019183232A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6819646B2 publication Critical patent/JP6819646B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Soft Magnetic Materials (AREA)
  • Manufacturing Of Steel Electrode Plates (AREA)

Abstract

【課題】高回転・高周波の条件で使用されるモータや発電機等の回転機の鉄心材料として用いて好適な電磁鋼板を提供する。【解決手段】質量%で、Si:4%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の組成からなり、圧延方向のB50が1.80T以上、圧延直角方向のB50が1.75T以上の磁気特性を有する板厚0.25mm以下とした母材鋼板に対して、外部からSiを注入し、拡散させることにより、板厚方向に均一に5.0〜7.0%のSiを含有させる。【選択図】なし

Description

本発明は、主としてモータや発電機などの回転機用の鉄心に用いて好適な高周波特性と磁束密度が優れた電磁鋼板およびその製造方法に関するものである。
モータや発電機で消費される電力量は莫大であり、エネルギー消費量削減の観点からこれらの機器で用いられる鉄心の低損失化が必要とされている。
また、電気自動車やハイブリッド電気自動車をはじめとして家庭用電気機器に至るまで、その小型・軽量化を進めるうえで回転機の高回転化が進展している。高回転の電動機の鉄心で発生する損失を有効に低減するためには、鉄心の高周波損失を低減する必要があり、そのためには、鉄心材として用いられる電磁鋼板の薄厚化と電気抵抗率の増加が有効な手段である。
上記したような用途に用いられる電磁鋼板として、素材鋼板を圧延法により十分に薄い母材としてから、化学気相浸珪法により鋼板表面にSiを蒸着し、さらに鋼板内部にSiを拡散させ、均一化させることで5質量%以上の高Siを含有する電磁鋼板を製造する方法が確立されており、高周波磁気特性の改善には有効であることが知られている。
ところが、この方法で得られる電磁鋼板はSi含有量が高いために飽和磁化が低く、多くの回転機で必要とされる磁界強度5000A/mでの磁束密度(B50)を高められないという問題点があった。回転機の鉄心として使用される電磁鋼板のB50が低い場合、十分なトルクが得られず、電流値の増加でこれを補おうとすると銅損が増加するという問題を生じる。
また、電磁鋼板の高周波鉄損を改善するためには板厚の低減も有効であるものの、例えば0.1mm以下の板厚の電磁鋼板を板厚精度も含めて安定的に製造することは困難性が高く、コストの上昇を招くという問題点があった。このため、高周波特性を改善するための実用的な手法としては、ある程度の薄厚化を達成した上で、Si含有量を十分に高くすることが有効であるといえる。
特公昭35−2657号公報 特開平4−362132号公報 特許第4123629号公報 特開平7-173542号公報 特開平6-128642号公報
さて、発明者らは、Siを5質量%以上添加したときの磁束密度B50の低下を防止するには、Si量の増加による飽和磁化の低下に応じて鋼板の結晶方位を改善することが有効でないかとの考えを持つに至った。
通常の電磁鋼板の開発においても集合組織の改善は磁束密度の向上に有効に作用し、一方でSi含有量の増加は電気抵抗率の増加を通じて鉄損改善に寄与することが知られているが、これらはそれぞれ単独で追及されるのが通常であり、本発明のように両者を相補的に用いる技術は提案されていなかった。
例えば、Si含有量が6.5質量%前後の高Si鋼板は、電気抵抗率と透磁率、鉄損、ヒステリシス損特性の点で理想的であるものの、高磁場域における磁束密度が劣位となるという問題点を有している。
これに対して本発明は、鋼板の集合組織として、正キューブ方位{100}<001>もしくは面内無方向方位{100}<uvw>を用いることで、高磁場域における磁束密度の低下を改善することを念頭において、このような鋼板を得るために種々の実験と検討を重ねた末に、開発されたものである。
電磁鋼板において磁化容易方向である<001>方向を板面内に集積させることは、磁化過程において1000〜10000A/m程度の磁界強度で得られる磁束密度を向上させるのに有効であり、電磁鋼板の磁束密度の代表値として用いられるB50の向上を図ることができる。鋼板面内の<001>方位を高度に集積させるための方法として、正キューブ方位{100}<001>あるいは面内無方向方位{100}<uvw>を発達させる手法が知られている。
正キューブ方位{100}<001>を改善する手法としては、例えば特許文献1に記載の技術がある。この特許文献1には、一方向に冷間圧延したのち、さらにこの冷延方向と交差する方向に冷間圧延を加え、短時間焼鈍と900〜1300℃の高温焼鈍を行う、いわゆるクロス圧延を利用して、{100}<001>方位粒を、インヒビターを利用して二次再結晶させる方法が開示されている。
また、特許文献2には、熱延方向に対して直角の方向に50〜90%の圧下率で冷延し、ついで一次再結晶を目的とする焼鈍を施したのち、二次再結晶と純化を目的とする最終仕上焼鈍を施して、{100}<001>方位粒を、AlNをインヒビターとして利用して二次再結晶させる方法が開示されている。
これらの方法はいずれも、通常の冷間圧延とは大きく異なるクロス圧延を用いているため、母材のSi含有量を極度に高めた場合、圧延時の割れなどのトラブルが発生し、工業生産が事実上不可能である。
また、特許文献3では、C:0.003〜0.08wt%、Si:2.0〜8.0wt%、Mn:0.005〜3.0wt%およびAl:0.0010〜0.012wt%を含み、かつSe、S、OおよびNをそれぞれ30ppm以下に低減し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる溶鋼を、スラブとし、ついで熱間圧延後、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げ、ついで再結晶焼鈍を施し、その後必要に応じて焼鈍分離剤を塗布してから、最終仕上焼鈍を施す一連の工程からなる電磁鋼板の製造方法において、最終冷延前における平均結晶粒径を100μm以上、650μm以下とする製造方法が開示されている。
この方法の場合、圧延前粒径を粗大にする必要があるため、圧延時に割れが発生しやすい。特にSi含有量を高めた場合、割れの発生がさらに助長されるため、高Siの材料を製造することが困難である。
また、面内無方向方位{100}<uvw>を有する鋼板の製造方法として、特許文献4には、1.0質量%以下のC、0.2〜6.5質量%のSi、0.05〜3質量%のMnを含有した鋼板を、タイトコイル状態もしくは積層状態にて最終焼鈍する際に、焼鈍分離剤として脱炭を促進する物質、もしくは、脱炭を促進する物質と脱Mnを促進する物質を用いて焼鈍する方法が開示されている。
この方法においても、高Si材を得るにはSi含有量の高い母材を冷間圧延する必要があり、Si含有量を4質量%以上とすることは困難である。
さらに、特許文献5には、質量%で、4.0%<Si≦8.0%、Al≦2.0%、残部Fe及び不可避的不純物からなる溶鋼を、移動更新する冷却体表面によって凝固せしめて鋳造鋼帯とし、次いで該当鋳造鋼帯を冷間圧延して所定の厚さとした後、仕上げ焼鈍する高珪素含有無方向性電磁鋼板の製造方法において、冷間圧延に際し圧延率を5%以上40%未満とすることにより面内無方向方位となる無方向性電磁鋼板を製造する方法が開示されている。
この方法では、鋳造により所定の厚さの鋼帯を得た後、冷間圧延して目的とする板厚とするため、冷間圧延率を低くすることができるが、急冷鋳造後の鋼帯には組織の不均一やエッジ部および内部に欠陥が生じやすいため、冷間圧延時の割れは通常の圧延よりも発生しやすく、やはり集合組織の発達した高Si材を安定的に得ることは困難といえる。
以上述べた二方向性電磁鋼板あるいは面内無方向性電磁鋼板の製造においては、製鋼段階でSi含有量を5%以上に高めた場合、冷間圧延が困難となるため、所望の製品が得られないという問題点が生じる。
これに対し、冷間圧延前の母材段階では冷間圧延で製造可能な範囲のSi含有量としておき、十分に集合組織が発達した鋼帯を得てからCVD法などによりSiを鋼板内部に注入してやれば、十分に板厚が薄い場合であっても安定的に高Siの電磁鋼板を製造することが可能であり、回転機用鉄心として適用した場合に低損失・高効率の実現が可能である。
本発明は、上記の知見に基づき、種々の実験と検討を重ねた末に完成されたものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.質量%で、Si:4.0%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の組成からなり、圧延方向のB50が1.80T以上、圧延直角方向のB50が1.75T以上の磁気特性を有する板厚0.25mm以下とした母材鋼板に対して、外部からSiを注入し、拡散させることにより、板厚方向に均一に5.0〜7.0%のSiを含有させることを特徴とする電磁鋼板の製造方法。
2.前記母材鋼板の平均結晶粒径が200μm以上であることを特徴とする前記1記載の電磁鋼板の製造方法。
3.前記母材鋼板が、質量%で、さらにMn:0.005〜2.0%、Sn:0.01〜0.50%、Sb:0.005〜0.50%、Mo:0.005〜0.50%、Cr:0.05〜1.50%、Ni:0.005〜2.0%およびP:0.005〜0.5%のうちから選んだ少なくとも一種を含有する組成になることを特徴とする前記1または2記載の電磁鋼板の製造方法。
4.Siを板厚方向に均一に質量%で5.0〜7.0%含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の組成からなる板厚が0.25mm以下の電磁鋼板であって、圧延方向のB50が1.60T以上、圧延直角方向のB50が1.55T以上であることを特徴とする電磁鋼板。
5.前記電磁鋼板が、質量%で、さらにMn:0.005〜2.0%、Sn:0.01〜0.50%、Sb:0.005〜0.50%、Mo:0.005〜0.50%、Cr:0.05〜1.50%、Ni:0.005〜2.0%およびP:0.005〜0.5%のうちから選んだ少なくとも一種を含有する組成になることを特徴とする前記4記載の電磁鋼板。
本発明により得られる電磁鋼板を、高回転・高周波の条件で使用されるモータや発電機等の回転機の鉄心材料として用いることにより、鉄損と銅損の両方を改善することができ、従来よりも高いモータ効率を達成することが可能である。
以下、本発明に従う電磁鋼板の製造方法および得られた電磁鋼板における各構成要件について具体的に説明する。なお、成分に関する「%」は、特に断らない限り質量%を意味するものとする。
(1) Si注入前の母材鋼板のSi含有量:4.0%以下(残部は不可避的不純物)
冷間圧延により製造されるSi注入前の母材鋼板のSi含有量が4.0%を超える場合、冷間圧延の荷重が過大となるとともに、鋼帯の割れ発生頻度が増加して通常の工業生産設備での製造が困難となるので、母材鋼板のSi量は4.0%以下に限定する。
(2) Si注入前の母材鋼板の磁気特性:圧延方向のB50が1.80T以上、圧延直角方向のB50が1.75T以上
Si注入後の飽和磁化の低下を考慮し、Si注入前に十分に高い方位集積度の鋼板を用いる必要がある。圧延方向のB50が1.80Tに満たない母材鋼板にSiを注入して、Si含有量を5%以上に高めたとしても、圧延方向のB50を1.60T以上とすることができない。また、母材鋼板の圧延直角方向のB50が1.75Tに満たないと、Siを注入してSi含有量を5%以上に高めたとしても1.60T以上のB50を得ることができない。
(3) 板厚0.25mm以下、板厚方向に均一に5.0〜7.0%のSi含有量(製品)
高周波磁気特性改善のため、板厚は0.25mm以下とし、Si含有量を5.0〜7.0%とする。板厚が0.25mmを超えるとSi含有量を高めても高周波磁気特性を十分に改善することができない。また、Si含有量が5.0%未満の場合、渦電流損が増加して鉄損が増加する。一方、Si含有量が7.0%を超えると鋼板の脆化が顕著となるため、7.0%以下に限定する。
板厚については、薄いほどSi含有量が高い効果と相まって効果を発揮するので、0.20mm以下の板厚とするのがより望ましい。
(4) Siの注入
圧延が容易なSi含有量:4.0%以下とした母材鋼板に対し、冷間圧延後にSiを注入することで高Si電磁鋼板を安定的に製造することが可能である。
Siを注入する方法としては種々の方法が適用可能であるが、化学気相浸珪法により鋼板表面のSi量を一時的に増加させた後、高温での焼鈍により板厚方向にSi分布を均一化させる方法が工業的に確立しており、本発明に適用するのに適している。
(5) Si注入処理前の母材鋼板の平均結晶粒径:200μm以上
後述する表1のNo.29〜36に示されるように、Si注入処理前の母材鋼板の平均結晶粒径を200μm以上とすることにより、Si注入処理によるB50の低下が防止されて、モータ鉄心として使用した場合に高いモータ効率が得られる。これは、Si拡散処理が1200℃に達する高温で行われるため、拡散処理中の一次粒成長の過程でB50増加に不利な{111}集合組織が発達するおそれがあるが、Si注入処理前の粒径を大きくしておけば拡散処理中の一次粒成長に伴う{111}集合組織の発達が抑制されると考えられる。
従って、本発明においては、Si注入処理前の鋼板において、圧延方向のB50を1.80T以上、圧延直角方向のB50を1.75T以上とすると同時に、一次粒径を200μm以上としておくのが好ましい。このような母材鋼板を得るためには、熱延板焼鈍温度を1080℃程度以上とし、冷間圧延を180℃程度以上、冷間圧延後の焼鈍温度を1080℃以上とするのがよい。また、母材鋼板の平均結晶粒径(一次再結晶粒径)は板厚方向に直交する平面で切った断面において計測するのが適している。
(6) 圧延方向のB50が1.60T以上、圧延直角方向のB50が1.55T以上(製品)
製品の圧延方向のB50を1.60T以上、圧延直角方向のB50を1.55T以上とすることにより、回転機として用いたときに十分に高いトルクを得ることが可能となるだけでなく、銅損の増加を防止することができる。また、分割鉄心として用いたとき、磁束密度が高くなるティース方向を圧延方向とすることで、より良好な特性を得ることができる。このため、圧延直角方向よりも圧延方向の磁束密度を高めておくことは実機特性改善の観点から有利である。
さらに回転機の効率高めようとする場合は、Si注入処理前の母材鋼板の方位集積度を高めることにより、製品における圧延方向のB50を1.65T以上、圧延直角方向のB50を1.60T以上とするのが望ましい。
次に、Si以外の任意添加成分について説明する。
Mn:0.005〜2.0%
Mnは、熱間加工性を改善するのに有用な元素であるが、含有量が0.005%に満たないとその効果がなく、一方2.0%を超えると集合組織形成が困難となるので、Mn含有量は0.005〜2.0%の範囲とすることが好ましい。
Sn:0.01〜0.50%
Snは、0.01%以上の添加で集合組織改善により正キューブ方位鋼板あるいは面内無方向鋼板の方位集積度向上に寄与するが、0.5%を超えると効果が飽和する一方、コストアップを招くため、上限は0.5%とすることが好ましい。
Sb:0.005〜0.50%
Sbも、Sn同様、磁束密度向上に効果のある元素である。しかしながら、含有量が0.005%に満たないとその添加効果に乏しく、一方0.50%を超えるとその効果は飽和に達するので、Sb含有量は0.005〜0.50%とすることが好ましい。
Mo:0.005〜0.50%
Moは、熱間圧延における鋼板表面の欠陥を防止すると共に、表層酸化抑制により鉄損低減に効果のある元素である。しかしながら、含有量が0.005%に満たないとその添加効果に乏しく、一方0.50%を超えた場合には炭化物を形成し、鉄損が増加するため、Mo含有量は0.005〜0.50%とすることが好ましい。
Cr:0.05〜1.50%
Crは、Siとともに鋼板の電気抵抗率を増加させることにより渦電流損を低減する作用を有する元素である。しかしながら、添加量が0.05%を下回るとこのような効果が得られず、一方1.50%を超えて添加すると炭化物を形成して磁気特性の劣化を招くため、Cr含有量は0.05〜1.50%の範囲とすることが好ましい。
Ni:0.005〜2.0%
Niは、強磁性体元素であることも磁束密度の向上に寄与しているものと推察される。しかしながら、添加量が0.005%に満たないと磁気特性の向上量が小さく、一方2.0%を超えると集合組織形成が不安定になり磁気特性が劣化するので、Ni添加量は0.005〜2.0%とすることが好ましい。
上掲した各成分は母材鋼板中に添加することで集合組織形成に寄与すると共に、製品の地鉄中に存在することで磁気特性を改善する効果を有する。
P:0.005〜0.5%
Pは、集合組織改善効果を有するが、この効果は0.005%以上で発現する。一方、0.5%を超えて添加すると鋼板の脆化を招く。従って、P含有量は0.005〜0.5%の範囲とすることが好ましい。
集合組織を適正に制御したSi注入処理前の母材鋼板を製造するために、上記の他にスラブ鋳造後の成分として、C:0.002〜0.10%、Al:0.0010〜0.015%を含有させることは、圧延方向および圧延直角方向に高い磁束密度を有する集合組織を形成する上で有利である。
C:0.002〜0.10%
Cは、冷間圧延において、結晶粒内における局所変形を促進させ、{100}<001>組織の発達を促して磁気特性を向上させるのに有効に寄与する。しかしながら、冷間圧延前の鋼中の含有量が0.002%に満たないと{100}<001>粒の生成効果が小さくなるために磁束密度の低下を招く。一方、C量が0.10%を超えると脱炭焼鈍で除去することが困難になるだけでなく、熱延板焼鈍時に部分的にγ変態を起こし集合組織の形成が困難となる。従って、C含有量は0.002〜0.10%とするのがよい。
Al:0.0010〜0.015%
Alは、母材鋼板を得るための集合組織形成のための焼鈍の際に{100}<001>粒を適度に発達させる作用を有する。Al量が0.0010%に満たないと{100}<001>方位の集積度が低下して良好な磁束密度が得られず、一方Al量が0.015%を超えると、やはり{100}<001>方位の集積度が低下するだけでなく、{110}<001>方位が増加して、圧延面内における平均的な磁気特性の劣化を招く。従って、Al含有量は0.0010〜0.015%の範囲とするのがよい。
次に、本発明の代表的な製造条件について述べる。
本発明の鋼板を製造するには、Siを4.0%以下含有し、必要に応じてMn、Sn、Sb、Mo、Cr、Ni、P、C、Alを含有する鋼スラブを、熱間圧延により板厚1.5〜3.5mmの熱延板とした後、必要に応じて温度1080℃〜1170℃の熱延板焼鈍を施し、ついで酸洗後、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により厚さ0.25mm以下の最終板厚としたのち、1回または複数の焼鈍を施すことにより母材鋼板を得る。
その後、CVD、電着塗装およびメッキなどの方法で鋼板表面にSiを濃化させた(外部からのSiの注入)のち、1150℃以上の高温の焼鈍で鋼中に拡散させて所望の鋼板を得る。ここで、冷間圧延は、鋼板最高温度が180℃以上の温度に1回以上達する条件で行うことが望ましい。また、鋼板表面にSiを濃化させる前に鋼中のC含有量が5ppm以上60ppm以下とする脱炭焼鈍を施してから、900℃以上に8時間以上保持するボックス焼鈍を施すのがよい。
このような一連の焼鈍においては、脱炭焼鈍後に所定のCを鋼中に残存させることにより、その後のボックス焼鈍により、圧延方向のB50が1.80T以上、圧延直角方向のB50が1.75T以上を実現する組織の形成が促進される。このボックス焼鈍では900℃以上に8時間以上保持することで、二次再結晶による粗大な結晶粒が得られるので、浸珪のための高温焼鈍で結晶粒成長が起こらず、磁束密度の低下を防止することが可能となる。
表1に示す「Si注入処理前成分」とC:0.015%、Al:0.0030%を含む組成からなるスラブを、連続鋳造にて製造したのち、1100℃で20分間加熱してから、熱間圧延により2.5mm厚に仕上げた。ついで、熱延板焼鈍および冷間圧延(圧延での最高温度)を表1に示す条件で行ったのち、同じく冷間圧延を施し、0.20〜0.30mmの最終板厚に仕上げた。
その後、水素:75%、窒素:25%、露点:50℃の雰囲気中にて表1に示す焼鈍温度で均熱時間:20秒の再結晶と脱炭焼鈍を兼ねた焼鈍を行い、鋼中Cを10ppmまで低減した。ついで、窒素雰囲気中にて950℃、35時間の仕上焼鈍を行った。仕上げ焼鈍後の地鉄中にはC:8ppm、Al:0.0015%が不純物として残留した。
上記した仕上げ焼鈍後の鋼板から圧延方向および圧延直角方向の磁気特性評価のためのエプスタイン試験片を採取後、Ar雰囲気で800℃に3時間保持する歪取り焼鈍を行い、圧延方向および圧延直角方向の磁束密度B50を測定した。
続いて、上記仕上げ焼鈍後の鋼帯に対して化学気相浸珪法により鋼板表面のSi濃度を濃化させた後、1200℃で10分間保持する焼鈍を行い、全板厚のSi分布を均一化させたのち、重クロム酸アルミニウム、エマルジョン樹脂、エチレングリコールを混合したコーティング液を塗布し、300℃で焼き付けて電磁鋼板の製品とした。この製品からエプスタイン試験片を切り出し、圧延方向および圧延直角方向の磁束密度B50を測定した。
続いて、得られた電磁鋼板を用いて定格容量3kWの8極のIPMSMモータ(分布巻き)を製作し、トルク2Nm、回転数10000rpmでのモータ効率を評価した。
得られた結果を表2に示す。
Figure 2019183232
Figure 2019183232
表2に示したように、本発明の電磁鋼板の使用により、従来の材料よりも高いモータ効率が得られている。
特に、母材鋼板の平均結晶粒径が200μm以上とし(No.29〜36)、さらに適量の任意成分を添加した場合(No.31〜36)には、高いモータ効率が得られている。

Claims (5)

  1. 質量%で、Si:4%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の組成からなり、圧延方向のB50が1.80T以上、圧延直角方向のB50が1.75T以上の磁気特性を有する板厚0.25mm以下とした母材鋼板に対して、外部からSiを注入し、拡散させることにより、板厚方向に均一に5.0〜7.0%のSiを含有させることを特徴とする電磁鋼板の製造方法。
  2. 前記母材鋼板の平均結晶粒径が200μm以上であることを特徴とする請求項1記載の電磁鋼板の製造方法。
  3. 前記母材鋼板が、質量%で、さらにMn:0.005〜2.0%、Sn:0.01〜0.50%、Sb:0.005〜0.50%、Mo:0.005〜0.50%、Cr:0.05〜1.50%、Ni:0.005〜2.0%およびP:0.005〜0.5%のうちから選んだ少なくとも一種を含有する組成になることを特徴とする請求項1または2記載の電磁鋼板の製造方法。
  4. Siを板厚方向に均一に質量%で5.0〜7.0%含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の組成からなる板厚が0.25mm以下の電磁鋼板であって、圧延方向のB50が1.60T以上、圧延直角方向のB50が1.55T以上であることを特徴とする電磁鋼板。
  5. 前記電磁鋼板が、質量%で、さらにMn:0.005〜2.0%、Sn:0.01〜0.50%、Sb:0.005〜0.50%、Mo:0.005〜0.50%、Cr:0.05〜1.50%、Ni:0.005〜2.0%およびP:0.005〜0.5%のうちから選んだ少なくとも一種を含有する組成になることを特徴とする請求項4記載の電磁鋼板。
JP2018076385A 2018-04-11 2018-04-11 電磁鋼板およびその製造方法 Active JP6819646B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018076385A JP6819646B2 (ja) 2018-04-11 2018-04-11 電磁鋼板およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018076385A JP6819646B2 (ja) 2018-04-11 2018-04-11 電磁鋼板およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019183232A true JP2019183232A (ja) 2019-10-24
JP6819646B2 JP6819646B2 (ja) 2021-01-27

Family

ID=68339915

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018076385A Active JP6819646B2 (ja) 2018-04-11 2018-04-11 電磁鋼板およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6819646B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
TWI764585B (zh) * 2020-04-06 2022-05-11 日商杰富意鋼鐵股份有限公司 電磁鋼板的加工方法、馬達及馬達磁芯的製造方法

Citations (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH05279742A (ja) * 1992-03-31 1993-10-26 Nkk Corp 高い磁束密度を有する珪素鋼板の製造方法
JP2000178647A (ja) * 1998-12-09 2000-06-27 Nkk Corp 磁束密度が高い高珪素鋼板の製造方法
JP2001158950A (ja) * 1999-12-03 2001-06-12 Kawasaki Steel Corp 小型電気機器用電磁鋼板およびその製造方法
JP2001303214A (ja) * 2000-04-25 2001-10-31 Kawasaki Steel Corp 高周波磁気特性に優れた方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2002217012A (ja) * 2001-01-19 2002-08-02 Kawasaki Steel Corp Ei型コア用の方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2003171718A (ja) * 2001-12-04 2003-06-20 Kawasaki Steel Corp 圧延面内での平均磁気特性に優れた電磁鋼板の製造方法
JP2007262519A (ja) * 2006-03-29 2007-10-11 Jfe Steel Kk 二方向性電磁鋼板の製造方法
JP2008150697A (ja) * 2006-12-20 2008-07-03 Jfe Steel Kk 電磁鋼板の製造方法
JP2011208188A (ja) * 2010-03-29 2011-10-20 Jfe Steel Corp 方向性電磁鋼板の製造方法

Patent Citations (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH05279742A (ja) * 1992-03-31 1993-10-26 Nkk Corp 高い磁束密度を有する珪素鋼板の製造方法
JP2000178647A (ja) * 1998-12-09 2000-06-27 Nkk Corp 磁束密度が高い高珪素鋼板の製造方法
JP2001158950A (ja) * 1999-12-03 2001-06-12 Kawasaki Steel Corp 小型電気機器用電磁鋼板およびその製造方法
JP2001303214A (ja) * 2000-04-25 2001-10-31 Kawasaki Steel Corp 高周波磁気特性に優れた方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2002217012A (ja) * 2001-01-19 2002-08-02 Kawasaki Steel Corp Ei型コア用の方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2003171718A (ja) * 2001-12-04 2003-06-20 Kawasaki Steel Corp 圧延面内での平均磁気特性に優れた電磁鋼板の製造方法
JP2007262519A (ja) * 2006-03-29 2007-10-11 Jfe Steel Kk 二方向性電磁鋼板の製造方法
JP2008150697A (ja) * 2006-12-20 2008-07-03 Jfe Steel Kk 電磁鋼板の製造方法
JP2011208188A (ja) * 2010-03-29 2011-10-20 Jfe Steel Corp 方向性電磁鋼板の製造方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
TWI764585B (zh) * 2020-04-06 2022-05-11 日商杰富意鋼鐵股份有限公司 電磁鋼板的加工方法、馬達及馬達磁芯的製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP6819646B2 (ja) 2021-01-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101591222B1 (ko) 무방향성 전기 강판의 제조 방법
JP5995002B2 (ja) 高磁束密度無方向性電磁鋼板およびモータ
JP5825494B2 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP6127408B2 (ja) 無方向性電磁鋼板の製造方法
JPWO2003002777A1 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
RU2771133C1 (ru) Лист из нетекстурированной электротехнической стали и способ его производства
WO2014142100A1 (ja) 磁気特性に優れる無方向性電磁鋼板
JP2020509184A (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2015131993A (ja) 磁気特性に優れる無方向性電磁鋼板
KR101650406B1 (ko) 무방향성 전기강판 및 그 제조방법
JP7078009B2 (ja) 電磁鋼板およびその製造方法
JP2008150697A (ja) 電磁鋼板の製造方法
JP7253054B2 (ja) 磁性に優れる無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP6339768B2 (ja) 弱め界磁性に優れたipmモータのロータ鉄心用鋼板及びその製造方法
JP2013044012A (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP6819646B2 (ja) 電磁鋼板およびその製造方法
JP5671872B2 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2009203520A (ja) 無方向性電磁鋼板の製造方法
JP4123629B2 (ja) 電磁鋼板およびその製造方法
JP2022509676A (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
CN111479942A (zh) 多层型电磁钢板
JP7445656B2 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2010185119A (ja) 無方向性電磁鋼板
JP2011026682A (ja) 分割モータ用コア
KR20160021164A (ko) 무방향성 전기강판 및 그 제조방법

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20191122

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20201125

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20201201

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20201214

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6819646

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250