JP2019180305A - 即席麺用添加剤及び即席麺 - Google Patents
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Abstract
【課題】湯戻し後及び湯戻しから時間が経過した即席麺における、かたさ、弾力及び歯切れの良さ等の食感を改善するための添加剤、並びに、それらの食感が改善された即席麺を提供する。【解決手段】グルコースオキシダーゼ、グルテン及びえんどうデンプンを含有する即席麺用添加剤、並びに、当該添加剤と穀粉とを含有する、即席麺である。【選択図】なし
Description
本発明は、即席麺用添加剤、特に即席麺の食感を改善する即席麺用添加剤、並びに、食感が改善された即席麺に関する。
即席麺は、小麦粉等の穀粉、かんすい、食塩、水等を原料として製造されており、その食味は、かたさ、弾力(コシ)、喉越し等の食感によって大きく左右される。従来、麺類の製造において、食感の改善や湯戻し(復元)時間の短縮等の品質改良を目的として、小麦粉等の原料の選択、原料配合の調整、工程の改良、製麺機械の開発等に加えて、原料に添加される、リン酸塩類、乳化剤、増粘剤等の品質改良剤の開発が行われている。
特許文献1には、α−グルコシダーゼ及びグルコースオキシダーゼを原料穀粉に対して所定量用いる麺類の製造方法が記載されている。特許文献2には、トランスグルタミナーゼ及びグルコースオキシダーゼ等の酸化還元酵素で処理されたタンパク質を含有する食品が記載されている。特許文献3には、2%水溶液粘度及びエーテル化度が特定されたカルボキシメチルセルロースNa塩からなる、即席麺類の改質剤が記載されている。
即席麺のかたさ、弾力及び歯切れの良さ等の食感は、湯戻し後、時間が経過するにつれて低下する傾向にあり、とりわけ麺線が比較的細い麺においてこのような食感の低下が強く感じられる場合があった。そのため、湯戻し後、及び、湯戻しから一定時間が経過した後の即席麺について、かたさ、弾力及び歯切れの良さ等の食感の改善が望まれていた。
本発明の課題は、湯戻し後及び湯戻しから時間が経過した即席麺における、かたさ、弾力及び歯切れの良さ等の食感を改善する即席麺用添加剤、並びに、それらの食感が改善された即席麺を提供することにある。
本発明の即席麺用添加剤は、グルコースオキシダーゼ、グルテン及びえんどうデンプンを含有する。
本発明の即席麺は、グルコースオキシダーゼ、グルテン及びえんどうデンプンを含有する即席麺用添加剤と穀粉とを含有する。
好適な態様では、穀粉が小麦粉である。他の好適な態様では、即席麺は、食塩及びかんすいを更に含有する。他の好適な態様では、グルコースオキシダーゼの添加量が、穀粉の総量に対して0.0001質量%以上0.01質量%以下であり、グルテンの添加量が、穀粉の総量に対して0.2質量%以上15質量%以下であり、且つ、えんどうデンプンの添加量が穀粉の総量に対して0.1質量%以上15質量%以下である。他の好適な態様では、即席麺の幅が1.07mm以上1.25mm以下である。
本発明により、湯戻し直後及び湯戻しから時間が経過した即席麺における、かたさ、弾力及び歯切れの良さ等の食感を改善する即席麺用添加剤、並びに、それらの食感が改善された即席麺を提供することができる。
以下、本発明に係る即席麺用添加剤及びそれを含有する即席麺について、詳細に説明する。なお、本明細書における「%」との記載は、特に言及する場合を除き、「質量%」を意味する。
本発明に係る即席麺用添加剤(以下「本添加剤」とも記載)は、グルコースオキシダーゼ、グルテン、えんどうデンプンを少なくとも含有する。即席麺は、小麦粉、そば粉等の製麺用穀粉を主原料とし、これに食塩、かんすい等の副原料と水とを加えて製麺及び乾燥したものに、適宜スープや薬味を添付したもので、簡便な調理で喫食できる麺類である。本添加剤は、原料穀粉及び副原料とともに配合されて用いられる。
〔グルコースオキシダーゼ〕
グルコースオキシダーゼは、グルコース、酸素、水を基質としてグルコン酸と過酸化水素を生成する反応を触媒する酸化酵素である。この反応により生成された過酸化水素は、タンパク質中のSH基を酸化することでSS結合(ジスルフィド結合)生成を促進し、タンパク質中に架橋構造を形成するものと推定されている。グルコースオキシダーゼは微生物由来、植物由来のものなどが知られているが、上記の酵素活性を有する限り、いずれのものも使用される。また、本添加剤に使用されるグルコースオキシダーゼは、グルコースオキシダーゼの酵素活性を有し、本発明の効果を阻害しないものであれば、他の製剤との混合物であってもよい。例えば、グルコースオキシダーゼとカタラーゼとを混合してなる酵素製剤を使用してもよい。本添加剤に含まれるグルコースオキシダーゼの入手方法は特に制限されず、グルコースオキシダーゼ又は酵素製剤として市場で入手可能なものを使用すればよい。
グルコースオキシダーゼは、グルコース、酸素、水を基質としてグルコン酸と過酸化水素を生成する反応を触媒する酸化酵素である。この反応により生成された過酸化水素は、タンパク質中のSH基を酸化することでSS結合(ジスルフィド結合)生成を促進し、タンパク質中に架橋構造を形成するものと推定されている。グルコースオキシダーゼは微生物由来、植物由来のものなどが知られているが、上記の酵素活性を有する限り、いずれのものも使用される。また、本添加剤に使用されるグルコースオキシダーゼは、グルコースオキシダーゼの酵素活性を有し、本発明の効果を阻害しないものであれば、他の製剤との混合物であってもよい。例えば、グルコースオキシダーゼとカタラーゼとを混合してなる酵素製剤を使用してもよい。本添加剤に含まれるグルコースオキシダーゼの入手方法は特に制限されず、グルコースオキシダーゼ又は酵素製剤として市場で入手可能なものを使用すればよい。
グルコースオキシダーゼの添加量は、麺の種類等に応じて適宜選択すればよいが、例えば、原料穀粉の総量に対して0.00003%以上0.01%以下であればよく、0.0001%以上0.005%以下が好ましく、0.00015%以上0.002%以下がより好ましい。或いは、グルコースオキシダーゼは、小麦粉等の原料穀粉1gに対してグルコースオキシダーゼの酵素活性が0.001U以上、より好ましくは0.002U以上500U以下となるように麺に添加されることが好ましい。グルコースオキシダーゼの添加量が少なすぎると、本添加剤の効果が十分得られないおそれがあり、グルコースオキシダーゼの添加量が多すぎると、麺がかたくなりすぎて食感が低下するおそれがある。
なお、グルコースオキシダーゼの酵素活性は、以下の方法で規定される。グルコースを基質として、酸素存在下でグルコースオキシダーゼを作用させることで過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素にアミノアンチピリン及びフェノール存在下でペルオキシダーゼを作用させることで生成したキノンイミン色素が呈する色調を、波長500nmで測定し、酵素活性を定量する。このとき、1分間に1μmolのグルコースを酸化するのに必要な酵素量を1U(ユニット)と規定する。
〔グルテン〕
グルテンは、小麦、ライ麦、トウモロコシ等の穀物に含まれる貯蔵タンパク質であり、従来麺類やパン類等の食品の製造に用いられている。本添加剤に含まれるグルテンとしては、例えば、小麦グルテン、コーングルテンを挙げることができ、特に小麦グルテンが好ましい。小麦グルテンの形態については特に限定されず、小麦粉から分離して得られる生グルテン、粉末状の活性グルテン、生グルテン又は活性グルテンを化学処理した後に乾燥、粉末化して得られる変性グルテン等のいずれを使用してもよい。本添加剤に含まれるグルテンの入手方法は特に制限されず、市場で入手可能なものを使用すればよい。
グルテンは、小麦、ライ麦、トウモロコシ等の穀物に含まれる貯蔵タンパク質であり、従来麺類やパン類等の食品の製造に用いられている。本添加剤に含まれるグルテンとしては、例えば、小麦グルテン、コーングルテンを挙げることができ、特に小麦グルテンが好ましい。小麦グルテンの形態については特に限定されず、小麦粉から分離して得られる生グルテン、粉末状の活性グルテン、生グルテン又は活性グルテンを化学処理した後に乾燥、粉末化して得られる変性グルテン等のいずれを使用してもよい。本添加剤に含まれるグルテンの入手方法は特に制限されず、市場で入手可能なものを使用すればよい。
グルテンの添加量は、麺の種類等に応じて適宜選択すればよいが、例えば、原料穀粉の総量に対して0.1%以上20%以下であればよく、0.2%以上15%以下が好ましく、0.5%以上10%以下がより好ましい。グルテンの添加量が少なすぎると、本添加剤の効果が十分得られないおそれがあり、グルテンの添加量が多すぎると、麺の弾力が高すぎて食感が低下するおそれがある。また、グルコースオキシダーゼに対するグルテンの添加量の割合(質量比)は、麺のかたさ及び弾力の向上の観点から、例えば、グルテン:グルコースオキシダーゼが、10:1以上10000:1以下であればよく、100:1以上6000:1以下であることが好ましい。
〔えんどうデンプン〕
えんどうデンプンは、えんどうの子実中に約50%程度含まれているデンプンを意味する。えんどう(Pisum sativum L.)は、マメ科の1〜2年草で、広く食用に供されている植物であり、その種類は特に問わない。デンプンは、α−グルコース分子がグリコシド結合によって重合した天然高分子であって、直鎖状の分子構造を有するアミロースと、分岐構造を有するアミロペクチンとで構成されている。えんどうデンプンの総量に対するアミロースの含有量(質量比)は、20%以上30%以下程度である。
えんどうデンプンは、えんどうの子実中に約50%程度含まれているデンプンを意味する。えんどう(Pisum sativum L.)は、マメ科の1〜2年草で、広く食用に供されている植物であり、その種類は特に問わない。デンプンは、α−グルコース分子がグリコシド結合によって重合した天然高分子であって、直鎖状の分子構造を有するアミロースと、分岐構造を有するアミロペクチンとで構成されている。えんどうデンプンの総量に対するアミロースの含有量(質量比)は、20%以上30%以下程度である。
えんどうデンプンは、えんどうを原料として常法に従って製造したものであれば、その製造方法は特に限定されない。一般的には、原料となる完熟したえんどうの子実を洗浄、乾燥し、外殻を取り除いた後、水を使用して繰り返し洗浄することにより、タンパク質、塩類、水溶性多糖類、食物繊維等を除去することで、本添加剤に使用されるえんどうデンプンが得られる。本添加剤に含まれるえんどうデンプンとしては、更に乾燥して粉末状としたものが好ましい。本添加剤に含まれるえんどうデンプンの入手方法は特に制限されず、市場で入手可能なものを使用すればよい。また、本添加剤に含まれるえんどうデンプンは、未加工(生デンプン)であってもよいし、公知の方法で加工された加工デンプンであってもよい。
えんどうデンプンの添加量は、麺の種類等に応じて適宜選択すればよいが、例えば、原料穀粉の総量に対して0.05%以上20%以下であればよく、0.1%以上15%以下が好ましく、0.2%以上10%以下がより好ましい。えんどうデンプンの添加量が少なすぎると、本添加剤の効果が十分得られないおそれがあり、えんどうデンプンの添加量が多すぎると、麺のしなやかさが低下するおそれがある。
本添加剤は、グルコースオキシダーゼ、グルテン及びえんどうデンプンの組合せを含有するものであれば、その形態等は限定されず、粉末の形態であってもよいし、顆粒、粒状に造粒物した顆粒の形態であってもよい。また、本添加剤を水に懸濁させた液状の形態であってもよい。本添加剤は、本発明の効果を損なわない限り、グルコースオキシダーゼ、グルテン及びえんどうデンプン以外に、賦形剤や上述のカタラーゼ等の他の成分を含有していてもよい。更には、グルコースオキシダーゼ、グルテン及びえんどうデンプンのそれぞれを個別包装したものを組み合わせたセットであってもよい。
本添加剤の添加方法としては、即席麺の製造中に、各成分が均一に配合される方法であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、本添加剤を小麦粉等の原料と混合してもよく、本添加剤を原料と混合する水(混捏水)の一部に分散又は溶解させて原料に添加してもよい。また、グルコースオキシダーゼ、グルテン及びえんどうデンプンを同時期に添加してもよいし、各成分をそれぞれ異なる時期に添加してもよい。
本添加剤の即席麺への添加量は、本添加剤の効果が得られる範囲内で、麺の種類等に応じて適宜選択すればよく、例えば、原料穀粉の総量に対して0.1%以上25%以下であればよく、1%以上15%以下が好ましい。本添加剤の添加量が少なすぎると、本添加剤の効果が十分発揮されないおそれがある。また、本添加剤の添加量が多すぎると、かたさや弾力が高過ぎる、麺を飲み込む際の感触(喉越し)が良好とはいえない等、食感が低下するおそれがある。
即席麺は、小麦粉、そば粉等の製麺用穀粉からなる主原料と、食塩、かんすい、麺質改良剤等の副原料とを含有する。本実施形態の即席麺に使用してもよい製麺用穀粉としては、小麦粉、そば粉の他、例えば、米粉;とうもろこし粉;大麦、ライ麦、はと麦などの麦類の粉;大豆粉等の豆類の粉等が挙げられる。麺の種類により、これらの穀粉を単独、若しくは2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。本実施形態の即席麺としては、主原料が小麦粉又はそば粉であることが好ましく、小麦粉がより好ましい。小麦粉は、薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉、デュラム小麦粉等に分類され、これらは麺の種類によって適宜選択される。例えば、細麺又は極細麺タイプの即席麺を製造する場合、製麺時の加工適正、麺の食感等の観点から、強力粉を主原料として用いることが好ましい。
即席麺における穀粉の含有量は、麺の種類等に応じて適宜選択すればよい。例えば、原料穀粉として小麦粉を使用する場合、小麦粉、食塩、かんすい、本添加剤及び他の麺質改善剤の合計量に対する小麦粉の含有量が、例えば60%以上であればよく、85%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。また、小麦粉の含有量の上限は、食塩、かんすい及び本添加剤を含有し得る範囲であればよく、例えば99.5%以下であればよい。
即席麺は、副原料として食塩を含有する。食塩を麺に配合することによって、復元性や味等を良好にすることができる。また、即席麺は、副原料として、例えばかんすい及びリン酸塩から選択される少なくとも1つを含有してもよい。かんすいとは、中華麺類の製造に通常用いられるアルカリ剤であって、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及びリン酸類のカリウム塩又はナトリウム塩のうち少なくとも1種類を含む、アルカリ性の液体又は粉体である。リン酸塩は、食品加工に通常用いられる添加剤であり、例えば、ポリリン酸カリウム、リン酸三カリウム及びリン酸水素二カリウム等のリン酸類のカリウム塩、並びに、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム及びメタリン酸ナトリウム等のリン酸類のナトリウム塩が挙げられる。かんすいやリン酸塩を麺に配合することによって、風味、食感、麺のなめらかさ、好ましい色合いを付与又は向上することができる。即席麺には、副原料としてかんすい及びリン酸塩の代替品を添加してもよい。
即席麺における食塩、かんすい及びリン酸塩等の副原料の含有量は、麺の種類等に応じて適宜選択すればよい。例えば、穀粉、副原料(食塩、かんすい及びリン酸塩等)、本添加剤並びに他の品質改良剤の総量に対して、食塩の含有量は0.1%以上5%以下であればよく、かんすい及びリン酸塩の含有量はそれぞれ0.03%以上3%以下であればよいが、これらの範囲に限定されない。
また、即席麺には、必要に応じて、麺質改良剤として、本添加剤以外に、えんどうデンプンを除くデンプン、卵、タンパク質、糖類(水溶性エンドウ多糖類を除く多糖類及びその誘導体を含む)、油脂類、着色料、調味料、着香料、呈味剤、乳化剤、界面活性剤等を配合してもよい。これらの成分は、本発明の効果を損なわない量で配合される。えんどうデンプン以外のデンプンは、食品の製造に一般に用いられるものであればよく、例えば、小麦粉デンプン、緑豆デンプン、馬鈴薯デンプン、タピオカデンプン、米デンプン、ワキシーコーンスターチ、甘蔗デンプン及びこれらの加工デンプン(例えば、デキストリン、アルファ化デンプン、酸化デンプン等)が挙げられる。また、水溶性エンドウ多糖類を除く多糖類としては、増粘多糖類として食品の製造に用いられるものであればよく、例えば、キサンタンガム、グァーガム、アルギン酸、アルギン酸Na、アルギン酸エステル、タラガム、カードラン等が挙げられる。
即席麺の製造に使用される水の量は、麺の種類及び製造方法に応じて適宜調整すればよく、特に限定されない。水の含有量は、例えば原料穀粉に対して20%以上60%以下であればよい。原料穀粉として小麦粉を含む即席麺を製造する場合、小麦粉に対する水の含有量は例えば30%以上45%以下であればよい。
即席麺の製造は、従来公知の製造方法に準じて実施すればよい。例えば、まず主原料である穀粉に副原料、水及び本添加剤を含む品質改良剤を添加し、混練して麺生地を調製する。この麺生地を複合機により複数合わせる複合を行った後、圧延ロールによって圧延して薄く延ばして麺帯とし、これを切り出して麺線とする。得られた麺線は、蒸煮や茹で処理等でアルファ化され、また、アルファ化後又はアルファ化前にカットされて所定量ずつに分けられる。カットした麺線は、油揚げ麺の場合は、通常は型に入れて、約130〜180℃で1〜数分間、食用油で油揚処理を行う。また、熱風乾燥麺の場合には、オーブン等を用いて50〜200℃の温度で5〜数十分間程度乾燥する。その他、高温気流乾燥法、マイクロ波乾燥法、凍結乾燥法で乾燥してもよい。
乾燥して得られた麺塊は、冷却した後、例えば、カップ入り即席麺の場合にはスチロール製のカップ容器等に収容され、袋麺の場合には包装フィルム等で包装される。スープは、小袋等に入れて別途添える方法、濃縮液を乾燥前の麺線に付着させる方法、スープの乾燥粉末をカップ容器に投入する方法等により添加する。また必要に応じて、凍結乾燥や熱風乾燥等の方法によって乾燥した具材をカップ容器に追加するか、小袋等に入れて別途添える。具材をレトルト殺菌等した後、パウチ(中袋)内に包装してもよい。このようにスープと必要に応じて具材とを添加した即席麺を包装して商品とする。
本添加剤を配合する即席麺の幅及び厚さは制限されないが、本添加剤は、麺線が比較的細い麺に好適に用いられる。例えば、即席麺の幅が1.0mm以上1.4mm以下であることが好ましく、1.07mm以上1.25mm以下であることがより好ましい。また、番手が24番、26番又は28番である切刃、より好ましくは番手が26番又は28番である切刃により麺帯を切り出して得られる麺線ないし即席麺であることが好ましい。
即席麺の食味を左右する重要な食感として、例えば「かたさ」、「弾力」及び「歯切れの良さ」が挙げられる。これらかたさ、弾力及び歯切れの良さは、即席麺の場合、湯戻し後、時間が経過するにつれて低下する傾向にある。これは、時間の経過に伴い、湯戻しした麺の内部全体に水分が取り込まれるためであると考えられている。とくに麺線が比較的細いほど水分の内部全体への浸透が容易であるため、喫食中においてもこれらの食感が低下し、いわゆる「麺が伸びた」ように強く感じられる場合があった。そのため、湯戻し後と同様、湯戻しから一定時間が経過した後の即席麺におけるこれらの食感の改善が望まれていた。一方、麺内部への水分の浸透を促進し、湯戻し時間を短縮することで、喫食者の便宜を図ることができるため、即席麺における食感の改善と湯戻し時間の短縮との両立も課題であった。
本発明者らは、鋭意検討の結果、グルコースオキシダーゼ、グルテン及びえんどうデンプンの組合せを含有する組成物を添加剤として配合した即席麺を製造することにより、湯戻し時間を延長することなく、湯戻し後の即席麺におけるかたさ、弾力及び歯切れの良さ等の食感を改善し、更には、湯戻しから一定時間が経過した後であってもこれらの食感の低下を抑制することができることを見出し、本発明を完成させた。本発明の添加剤及び即席麺が有するこのような効果は、小麦粉等の主原料中のデンプン及びタンパク質に対して、グルコースオキシダーゼ、グルテン及びえんどうデンプンの相互作用が働くためであると考えられる。
本添加剤は中でも、即席麺に添加することにより、湯戻し後の即席麺の歯切れの良さを改善できることに特徴を有する。ここで、歯切れの良さとは、咀嚼する際に「歯が食物に触れてから破断するまでの時間」等から受ける明瞭さに関しての印象である。他方、かたさとは、咀嚼する際に食物から返ってくる柔軟性の有無を問わない反発力であり、弾力(コシ)とは、咀嚼する際に食物から返ってくる柔軟性を伴った反発力である。即席麺の場合、上述の通り湯戻し後の「麺の伸び」の改善が望まれており、伸びの評価指標としてかたさや弾力が一般に知覚が容易であったことから、歯切れの良さの改善に着目した技術は多くは無い。しかしながら、歯切れの良さはかたさや弾力とは異なる食感の指標であり、例えば、歯切れの良い麺は咀嚼時にプツンプツンとした好ましい感触を喫食者に与え、食感を向上させるものである。
例えば、適度なかたさ及び弾力と、歯切れの良さの向上が望まれる麺類としては、とんこつラーメン等の麺線が比較的細い麺(細麺、極細麺等)が挙げられる。本添加剤は、グルコースオキシダーゼ、グルテン及びえんどうデンプンを組み合わせて即席麺に配合することにより、適度なかたさ及び弾力を付与しながら、優れた歯切れの良さを即席麺に与えるとともに、それらの食感を湯戻しからの時間経過後も維持することができる。そのため、本添加剤は、いわゆる「バリカタ」等の硬めの細麺又は極細麺タイプの即席麺用添加剤として、特に好適に用いることができる。
また、本添加剤を配合した即席麺では、喫食中にカップ容器内に残った麺の時間経過に伴うかたさ、弾力及び歯切れの良さの低下を抑制し、食感を維持することができるため、カップ容器に収容させる一食分の麺の増量を図ることができる利点を有する。
なお、本添加剤は、即席麺に限らず全ての麺類に対して使用してもよい。本添加剤を配合し得る麺類は、例えば、小麦、そば、米等の穀物粉を主原料として製麺してなる麺類であり、その形態としては、即席麺のほか、蒸し麺、茹麺、乾麺、チルド麺、冷凍麺等が挙げられる。より具体的な麺の種類としては、例えば、中華麺、そば、うどん、ひやむぎ、そうめん、きしめん、パスタ、ちゃんぽん等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
本添加剤の食感改善効果を確認するため、本添加剤を含有する即席麺を製造し、調理して得られた即席麺について、官能試験及びかたさ測定試験を行った。
〔即席麺の製造方法〕
強力粉700g、食塩7.0g、かんすい2.1g、グルコースオキシダーゼとカタラーゼとを含有する酵素製剤0.1g、小麦グルテン21g、えんどうデンプン7.0g、水231gを合わせて混捏し、麺生地を調製した。なお、酵素製剤0.1gにはグルコースオキシダーゼ0.0045g(活性150U相当)が含有されている。この麺生地を複合機により複合し、圧延して厚さ1mmの麺帯にし、得られた麺帯を24番の番手を有する切刃により1.25mm幅の麺線に切り出した。得られた麺線を蒸し器を用いて98℃で2分間蒸煮してアルファ化した後、1食分ずつに麺線を分けた。1食分の麺線を金型に入れ、150℃に加熱した植物油に2分間通すことで油揚げ処理を行い、実施例1のフライ即席麺を得た。
強力粉700g、食塩7.0g、かんすい2.1g、グルコースオキシダーゼとカタラーゼとを含有する酵素製剤0.1g、小麦グルテン21g、えんどうデンプン7.0g、水231gを合わせて混捏し、麺生地を調製した。なお、酵素製剤0.1gにはグルコースオキシダーゼ0.0045g(活性150U相当)が含有されている。この麺生地を複合機により複合し、圧延して厚さ1mmの麺帯にし、得られた麺帯を24番の番手を有する切刃により1.25mm幅の麺線に切り出した。得られた麺線を蒸し器を用いて98℃で2分間蒸煮してアルファ化した後、1食分ずつに麺線を分けた。1食分の麺線を金型に入れ、150℃に加熱した植物油に2分間通すことで油揚げ処理を行い、実施例1のフライ即席麺を得た。
下記表1に示す組成となるように、各成分の添加量を調整すること以外は、上記の即席麺の製造方法と同様にして、参考例1、実施例2、3及び比較例1〜4のフライ即席麺を製造した。参考例1では、グルコースオキシダーゼ、グルテン及びえんどうデンプンのいずれも添加していない。比較例1では、えんどうデンプンを添加せずにフライ即席麺を製造し、比較例2では、グルコースオキシダーゼ及びグルテンを添加せずにフライ即席麺を製造した。また、比較例3では、えんどうデンプンに換えてタピオカデンプン(酢酸にて加工された加工デンプン)を添加してフライ即席麺を製造し、比較例4では、えんどうデンプンに換えて馬鈴薯デンプン(ヒドロキシプロピル化リン酸にて架橋された加工デンプン)を添加してフライ即席麺を製造した。
〔官能試験〕
上記で得られた各試験サンプルについて、官能試験を行った。上記で調製されたフライ即席麺約50gに沸騰湯550mlを注ぎ、2分間かけて湯戻しを行った。丼に湯戻ししたフライ即席麺を沸騰水ごと移しかえ、湯戻し直後の麺とした。湯戻し終了の直後及び10分間経過後の各試験サンプルについて、4名の専門パネラーによる官能評価を行った。各パネラーは、約50gの試験サンプルを口に含み、かたさ、弾力及び歯切れの各食感を、以下の4段階の評価基準で評価した。なお製品化可能であるレベルを2点以上とした。表2に、3点満点で評価した専門パネラー4名の平均点を示す。
(かたさ)3点:しっかりとかたさを感じる、2点:かたさを感じる、1点:かたさをわずかに感じる、0点:軟らかく、かたさを感じない。
(弾力)3点:しっかりと弾力を感じる、2点:弾力を感じる、1点:弾力をわずかに感じる、0点:弾力を感じない。
(歯切れ)3点:しっかりと歯切れの良さを感じる、2点:歯切れの良さを感じる、1点:歯切れの良さをわずかに感じる、0点:歯切れが悪いか、歯切れの良さを感じない。
上記で得られた各試験サンプルについて、官能試験を行った。上記で調製されたフライ即席麺約50gに沸騰湯550mlを注ぎ、2分間かけて湯戻しを行った。丼に湯戻ししたフライ即席麺を沸騰水ごと移しかえ、湯戻し直後の麺とした。湯戻し終了の直後及び10分間経過後の各試験サンプルについて、4名の専門パネラーによる官能評価を行った。各パネラーは、約50gの試験サンプルを口に含み、かたさ、弾力及び歯切れの各食感を、以下の4段階の評価基準で評価した。なお製品化可能であるレベルを2点以上とした。表2に、3点満点で評価した専門パネラー4名の平均点を示す。
(かたさ)3点:しっかりとかたさを感じる、2点:かたさを感じる、1点:かたさをわずかに感じる、0点:軟らかく、かたさを感じない。
(弾力)3点:しっかりと弾力を感じる、2点:弾力を感じる、1点:弾力をわずかに感じる、0点:弾力を感じない。
(歯切れ)3点:しっかりと歯切れの良さを感じる、2点:歯切れの良さを感じる、1点:歯切れの良さをわずかに感じる、0点:歯切れが悪いか、歯切れの良さを感じない。
官能試験の結果、表2に示す通り、グルコースオキシダーゼ、グルテン及びえんどうデンプンの組合せを含む本添加剤を用いて調製された実施例1〜3の即席麺は、参考例1及び比較例1〜4により得られた即席麺に比較して、かたさ、弾力及び歯切れの良さのいずれにおいても優れ、食感が格段に改善されたことが明らかとなった。例えば、本添加剤を用いた実施例1と、えんどうデンプンを単独で用いた比較例2とを比較すると、湯戻し直後の歯切れの評価は、比較例2では1.5であったのに対して、実施例1では3.0であり、1.5ポイントも改善した。また、湯戻しから10分後の歯切れは、比較例2では1.0と低下したのに対して、実施例1では3.0を維持しており、2.0ポイントもの顕著な改善が見られた。更に、湯戻しから10分後のかたさ及び弾力は、比較例2ではいずれも0.0であったのに対して、実施例1では2.0及び1.8と、湯戻しから10分後であってもかたさ及び弾力を維持していた。同様に、本添加剤を用いた実施例1〜3と、えんどうデンプンを使用しない比較例1並びにえんどうデンプンに換えて他のデンプンを用いた比較例3及び4とを比較すると、特に、湯戻し直後の歯切れ及び湯戻しから10分後の歯切れにおいて、顕著な改善が見られた。
〔かたさ測定試験〕
上記で得られた試験サンプルについて、官能試験と同様に湯戻しを行い、湯戻し終了の直後及び10分間経過後の各試験サンプルについて、クリープメータ(REHONER II、型式名「RE2−33005C」、株式会社山電製)により、測定温度20℃、くさび形プランジャー使用、測定速度1mm/秒、圧縮率95.0%の条件にて、かたさ測定試験を行った。表3及び図1にかたさ測定試験の結果を示す。
上記で得られた試験サンプルについて、官能試験と同様に湯戻しを行い、湯戻し終了の直後及び10分間経過後の各試験サンプルについて、クリープメータ(REHONER II、型式名「RE2−33005C」、株式会社山電製)により、測定温度20℃、くさび形プランジャー使用、測定速度1mm/秒、圧縮率95.0%の条件にて、かたさ測定試験を行った。表3及び図1にかたさ測定試験の結果を示す。
かたさ測定試験の結果、表3及び図1に示すように、本添加剤を用いた実施例1〜3は、えんどうデンプンを単独で用いた比較例2、並びに、えんどうデンプンに換えて馬鈴薯デンプンを用いた比較例4に比較して、湯戻しから10分後のかたさの低下がより抑えられることがわかった。
Claims (6)
- グルコースオキシダーゼ、グルテン及びえんどうデンプンを含有する、即席麺用添加剤。
- 請求項1に記載の添加剤と穀粉とを含有する、即席麺。
- 前記穀粉が小麦粉である、請求項2に記載の即席麺。
- 食塩と、かんすい及びリン酸塩から選択される少なくとも1つとを更に含有する、請求項2又は3に記載の即席麺。
- 前記グルコースオキシダーゼの添加量が、前記穀粉の総量に対して0.0001質量%以上0.01質量%以下であり、
前記グルテンの添加量が、前記穀粉の総量に対して0.2質量%以上15質量%以下であり、且つ、
前記えんどうデンプンの添加量が前記穀粉の総量に対して0.1質量%以上15質量%以下である、
請求項2〜4のいずれか一項に記載の即席麺。 - 前記即席麺の幅が1.07mm以上1.25mm以下である、請求項2〜5のいずれか一項に記載の即席麺。
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---|---|---|---|
JP2018075956A JP2019180305A (ja) | 2018-04-11 | 2018-04-11 | 即席麺用添加剤及び即席麺 |
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- 2018-04-11 JP JP2018075956A patent/JP2019180305A/ja active Pending
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