JP2019179849A - 静止誘導機器 - Google Patents
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Abstract
【課題】微小間隙への電界集中を緩和することにより、必要な絶縁距離を縮小して静止誘導機器の小型化を図る。【解決手段】絶縁スペーサ150は、基部151と、複数の凸部152とを有する。互いに隣接している、基部151と、巻線120と、絶縁板160との間に、冷媒が位置する微小間隙180が形成されている。複数の凸部152が絶縁筒140と接していることにより、絶縁筒140と基部151との間に、冷媒が位置する冷媒空間190が形成されている。冷媒空間190の少なくとも一部は、基部151を間に挟んで微小間隙180と隣り合っている。【選択図】図4
Description
本発明は、静止誘導機器に関し、特に、スペーサを備える静止誘導機器に関する。
静止誘導機器の構成を開示した先行文献として、特開平8−22919号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載された静止誘導機器は、鉄心と、鉄心に同心円状に巻き回された巻線と、鉄心の周囲に同心円状に互いに間隔をおいて配置された内側絶縁筒および外側絶縁筒と、鉄心および巻線を冷却する絶縁性冷媒が封入されたタンクとを備える。鉄心、巻線、内側絶縁筒および外側絶縁筒の各々は、タンク内に配置されている。内側絶縁筒の外周面および外側絶縁筒の内周面の各々には、これら絶縁筒の軸方向に沿ってダクト形成用レールが配置されている。巻線の各巻回層の間にはスペーサが挿入され、スペーサがダクト形成用レールに固定されている。
特許文献1に記載された静止誘導機器においては、ダクト形成用レールとスペーサと巻線とに囲まれたくさび状の微小間隙が存在している。この微小間隙には、絶縁油またはSF6ガスなどの絶縁性冷媒が満たされている。これら絶縁性冷媒の誘電率は、ダクト形成用レールおよびスペーサを構成する固体絶縁物の誘電率よりも低いため、絶縁性冷媒で満たされた微小間隙に電界が集中する。従来の静止誘導機器においては、ダクト形成用レールなどの、巻線の中心軸に平行に延在する絶縁スペーサによって、絶縁距離を確保している。
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、微小間隙への電界集中を緩和することにより、必要な絶縁距離を縮小して小型化を図れる、静止誘導機器を提供することを目的とする。
本発明に基づく静止誘導機器は、鉄心と、巻線と、絶縁性の冷媒と、絶縁筒と、複数の絶縁スペーサと、少なくとも1つの絶縁板とを備える。巻線は、鉄心を中心軸として同心円状に巻き回されている。冷媒は、鉄心および巻線を冷却する。絶縁筒は、巻線と同心円状になるように、巻線の径方向内側および径方向外側の少なくとも一方に配置されている。複数の絶縁スペーサは、巻線と絶縁筒との間に配置されている。複数の絶縁スペーサは、中心軸と平行に延在する。絶縁板は、巻線の径方向に延在する。巻線は、同軸状に積層された複数の円盤状巻線で構成されている。複数の絶縁スペーサのうちの少なくとも1つの絶縁スペーサは、上記中心軸と平行に延在して巻線に接する基部と、基部から巻線の径方向に突出し、上記中心軸と平行な方向において互いに離間して位置する複数の凸部とを有する。絶縁板は、基部と複数の凸部とを有する絶縁スペーサの基部に接し、かつ、複数の円盤状巻線のうちの互いに隣接する円盤状巻線同士の間に配置されている。互いに隣接している、基部と、巻線と、絶縁板との間に、冷媒が位置する微小間隙が形成されている。複数の凸部が絶縁筒と接していることにより、絶縁筒と基部との間に、冷媒が位置する冷媒空間が形成されている。冷媒空間の少なくとも一部は、基部を間に挟んで微小間隙と隣り合っている。
本発明によれば、絶縁スペーサによって形成された冷媒空間が微小間隙と隣り合っていることによって微小間隙への電界集中を緩和することにより、必要な絶縁距離を縮小して静止誘導機器の小型化を図れる。
以下、本発明の各実施の形態に係る静止誘導機器について図面を参照して説明する。以下の実施の形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。また、以下の実施の形態においては、静止誘導機器として変圧器について説明するが、静止誘導機器は、変圧器に限られず、リアクトルなどでもよい。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る静止誘導機器の構成を示す斜視図である。図2は、図1の静止誘導機器のII−II線矢印方向から見た断面図である。図3は、図1および図2の静止誘導機器をIII−III線矢印方向から見た断面図である。図4は、本発明の実施の形態1に係る静止誘導機器の断面図であって、図2のIV部を拡大して示す図である。図5は、本発明の実施の形態1に係る静止誘導機器の断面図であって、図2のV部を拡大して示す図である。
図1は、本発明の実施の形態1に係る静止誘導機器の構成を示す斜視図である。図2は、図1の静止誘導機器のII−II線矢印方向から見た断面図である。図3は、図1および図2の静止誘導機器をIII−III線矢印方向から見た断面図である。図4は、本発明の実施の形態1に係る静止誘導機器の断面図であって、図2のIV部を拡大して示す図である。図5は、本発明の実施の形態1に係る静止誘導機器の断面図であって、図2のV部を拡大して示す図である。
図1〜図5に示すように、本発明の実施の形態1に係る静止誘導機器100は、内鉄型の変圧器である。静止誘導機器100は、鉄心110と、巻線120と、冷媒130と、絶縁筒140と、複数の絶縁スペーサ150と、少なくとも1つの絶縁板160とを備える。静止誘導機器100は、図示しないタンクおよび流路変更板170をさらに備えている。なお、図1においては、巻線120を図示しておらず、図1および図2においては、絶縁板160を図示していない。
鉄心110、巻線120、絶縁筒140、絶縁スペーサ150、絶縁板160および流路変更板170の各々は、タンク内に収容されている。タンク内には、絶縁性の冷媒130としてSF6ガスが充填されている。冷媒130は、鉄心110および巻線120を冷却する。なお、冷媒130は、絶縁ガスに限られず、絶縁油でもよい。
巻線120は、鉄心110を中心軸として同心円状に巻き回されている。本発明の実施の形態1に係る静止誘導機器は、巻線120として、低圧巻線121と高圧巻線122とを備える。高圧巻線122は、低圧巻線121の径方向外側で巻き回され、低圧巻線121より高い電圧が印加される。
巻線120は、同軸状に積層された複数の円盤状巻線125で構成されている。図2、図4および図5に示すように、円盤状巻線125は、絶縁紙127が表面に設けられた平角銅線126を円盤状に巻き回すことで構成されている。
絶縁筒140は、巻線120と同心円状になるように、巻線120の径方向内側および径方向外側の少なくとも一方に配置されている。本実施の形態においては、絶縁筒140は、低圧巻線121の径方向内側、低圧巻線121と高圧巻線122との間、および、高圧巻線122の径方向外側の各々の位置に、配置されている。絶縁筒140は、エポキシ樹脂などの絶縁性樹脂で構成されている。
絶縁スペーサ150は、巻線120と絶縁筒140との間に配置され、巻線120の中心軸と平行に延在する。
具体的には、図2および図3に示すように、低圧巻線121の径方向内側に位置する絶縁筒140と低圧巻線121との間において、複数の絶縁スペーサ150が、巻線120の中心軸の周方向において互いに間隔をあけて配置されている。低圧巻線121と高圧巻線122との間に位置する絶縁筒140と低圧巻線121との間において、複数の絶縁スペーサ150が、巻線120の中心軸の周方向において互いに間隔をあけて配置されている。
同様に、低圧巻線121と高圧巻線122との間に位置する絶縁筒140と高圧巻線122との間において、複数の絶縁スペーサ150が、巻線120の中心軸の周方向において互いに間隔をあけて配置されている。高圧巻線122の径方向外側に位置する絶縁筒140と高圧巻線122との間において、複数の絶縁スペーサ150が、巻線120の中心軸の周方向において互いに間隔をあけて配置されている。
図1および図3に示すように、絶縁スペーサ150は、巻線120の中心軸方向から見て、鼓状の外形を有している。ただし、絶縁スペーサ150の外形は、巻線120の中心軸方向から見て、鼓状に限られず、矩形状でもよい。
図4および図5に示すように、絶縁スペーサ150は、基部151と複数の凸部152とを有している。基部151は、巻線120の中心軸と平行に延在して巻線120に接する。複数の凸部152は、基部151から巻線120の径方向に突出し、巻線120の中心軸と平行な方向において互いに離間して位置する。なお、図1〜図3において、基部151および複数の凸部152は図示されていない。
本実施の形態においては、基部151は、巻線120の中心軸と平行な方向に一様な形状を有している。また、基部151と凸部152とを含む位置での絶縁スペーサ150の横断面の外形は、鼓状である。
本実施の形態においては、全ての絶縁スペーサ150が基部151および凸部152を含んでいるが、必ずしも全ての絶縁スペーサ150が基部151および凸部152を含まなくてもよく、少なくとも1つの絶縁スペーサ150が基部151および凸部152を含んでいればよい。
なお、後述する微小間隙への電界集中の緩和の観点から、高圧巻線122および絶縁筒140の各々に接するように配置されている絶縁スペーサ150が、基部151および凸部152を含み、この絶縁スペーサ150の基部151が高圧巻線122と接していることが好ましい。また、この絶縁スペーサ150が、高圧巻線122の径方向内側に配置されており、この絶縁スペーサ150の基部151が高圧巻線122の径方向内側にて高圧巻線122と接していることが、静止誘導機器100に存在する全ての微小間隙の中で最も強い電界が印加される微小間隙への電界集中を緩和する観点から、より好ましい。
本実施の形態においては、絶縁スペーサ150は、ポリエステルで構成されているが、絶縁スペーサ150の材料は、ポリエステルに限られず、ポリエチレンテレフタラートなどの絶縁性樹脂で構成されていてもよい。
低圧巻線121と高圧巻線122との間に配置されている絶縁筒140と、この絶縁筒140と低圧巻線121との間に位置する絶縁スペーサ150と、この絶縁筒140と高圧巻線122との間に位置する絶縁スペーサ150とによって、低圧巻線121と高圧巻線122との間の絶縁距離を確保している。
複数の絶縁スペーサ150は、静止誘導機器100の輸送時または短絡事故時に発生する機械力によって巻線120の位置ずれ若しくは変形が発生することを防止する機能も有する。
絶縁板160は、巻線120の径方向に延在する。絶縁板160は、略直方体状の外形を有する。絶縁板160は、複数の円盤状巻線125のうちの互いに隣接する円盤状巻線125同士の間において、巻線120の中心軸の周方向に互いに間隔をあけて配置されている。絶縁板160は、複数の円盤状巻線125の積層方向において円盤状巻線125同士に挟まれるように配置されている。本実施の形態においては、絶縁板160は、互いに隣接する円盤状巻線125の各々と接している。
絶縁板160は、図3に示すように、巻線120の径方向における両端に凹部を有している。絶縁板160の凹部の内側に、絶縁スペーサ150の基部151の一部が位置している。絶縁板160の凹部は、絶縁スペーサ150の横断面の外形に沿う形状を有している。
絶縁板160は、絶縁スペーサ150の基部151と接している。本実施の形態においては、絶縁板160の凹部は、絶縁スペーサ150の基部151の一部と係合している。これにより、絶縁板160が、絶縁スペーサ150に対して、巻線120の径方向および周方向のいずれにおいても位置決めされている。
絶縁板160は、ポリエステルで構成されているが、絶縁板160の材料は、ポリエステルに限られず、ポリエチレンテレフタラートなどの絶縁性樹脂で構成されていてもよい。
流路変更板170は、円環状の形状を有する。図2に示すように、流路変更板170は、絶縁筒140から巻線120の径方向に張り出すように配置されている。
具体的には、低圧巻線121の径方向内側に位置する絶縁筒140に、巻線120の中心軸方向において互いに間隔をあけて取り付けられている複数の流路変更板170の各々は、絶縁筒140から巻線120の径方向外側に張り出すように配置されている。
低圧巻線121と高圧巻線122との間に位置する絶縁筒140に取り付けられている複数の流路変更板170においては、絶縁筒140から巻線120の径方向外側に張り出すように配置された流路変更板170と、絶縁筒140から巻線120の径方向内側に張り出すように配置された流路変更板170とが、巻線120の中心軸方向の一方に行くにしたがって交互に位置している。
高圧巻線122の径方向外側に位置する絶縁筒140に、巻線120の中心軸方向において互いに間隔をあけて取り付けられている複数の流路変更板170の各々は、絶縁筒140から巻線120の径方向内側に張り出すように配置されている。
図5に示すように、流路変更板170は、互いに隣接する円盤状巻線125同士の間に配置された絶縁板160同士の間に配置される。流路変更板170には、絶縁スペーサ150を配置するための略矩形状の切欠部が形成されている。絶縁スペーサ150の凸部152の直下に流路変更板170の切欠部が位置している。これにより、絶縁スペーサ150の凸部152によって流路変更板170の切欠部の少なくとも一部を塞いで、流路変更板170の切欠部を冷媒130が通過することを抑制している。
流路変更板170が上記のように配置されていることにより、図2に示すように巻線120の中心軸方向の一方側から他方側へ向かって流れる冷媒130を流路変更板170に沿って迂回するように流動させることができる。なお、隣接する円盤状巻線125同士の間において絶縁板160が位置していない部分も、冷媒130の流路となる。よって、流路変更板170は、冷媒130と巻線120との接触長さを延長して冷媒130による巻線120の冷却効率を向上する機能を有する。
本実施の形態においては、流路変更板170は、プレスボードで構成されているが、流路変更板170は、プレスボードに限られず、乾燥木などで構成されていてもよい。
図4および図5に示すように、互いに隣接している、絶縁スペーサ150の基部151と、巻線120と、絶縁板160との間には、冷媒130が位置する微小間隙180が形成されている。
実施の形態1に係る静止誘導機器100においては、絶縁スペーサ150の複数の凸部152が絶縁筒140と接していることにより、絶縁筒140と基部151との間に、冷媒130が位置する冷媒空間190が形成されている。冷媒空間190の少なくとも一部は、基部151を間に挟んで微小間隙180と隣り合っている。
ここで、冷媒空間190が形成されていることにより、微小間隙180への電界集中が緩和されることを検証したシミュレーション解析の結果について説明する。
図6は、本実施の形態に係る静止誘導機器の図4のA部に発生する電界の分布を示す図である。図7は、比較例として、冷媒空間が形成されておらず、冷媒空間の位置にも絶縁スペーサが位置している場合の、図4のA部に発生する電界の分布を示す図である。
図6に示すように、本実施の形態に係る静止誘導機器100においては、平角銅線126の端部から離れるにしたがって順に電位が低くなっている等電位線P101〜P112が位置している。微小間隙180には、6本の等電位線P104〜P109が存在していた。
図7に示すように、直方体状の外形を有する絶縁スペーサ159を備える比較例に係る静止誘導機器においては、平角銅線126の端部から離れるにしたがって順に電位が低くなっている等電位線P101〜P119が位置している。微小間隙180には、10本の等電位線P106〜P115が存在していた。なお、等電位線P101〜P119において、互いに隣り合う等電位線同士の電位差は一定である。
図6および図7に示すように、実施の形態1に係る静止誘導機器100の微小間隙180に存在する等電位線の本数は、比較例に係る静止誘導機器の微小間隙180に存在する等電位線の本数よりも少なくなっていた。上記のシミュレーション解析結果から、冷媒空間190が形成されていることにより、微小間隙180への電界集中が緩和されることが確認できた。
冷媒空間190が形成されていることにより、微小間隙180への電界集中を緩和できるメカニズムは、下記の通りである。冷媒130の誘電率は、絶縁スペーサ150を構成する材料の誘電率、および、絶縁板160を構成する材料の誘電率の各々より低い。よって、冷媒130が位置する微小間隙180に電界が集中しやすくなるが、微小間隙180の近傍に冷媒130が位置する冷媒空間190を形成することにより、冷媒空間190にも電界が分担されるため、微小間隙180への電界集中を緩和することができる。
上記のように、本実施の形態に係る静止誘導機器100においては、基部151を間に挟んで微小間隙180と隣り合っている冷媒空間190にも電界を分担させることにより、微小間隙180への電界集中を緩和することができる。その結果、低圧巻線121と高圧巻線122との間で確保すべき絶縁距離を短くすることが可能となるため、低圧巻線121と高圧巻線122との間に配置されている、絶縁筒140の厚さ、および、絶縁スペーサ150の厚さの少なくとも一方を薄くすることができる。ひいては、巻線120の径方向における静止誘導機器100の大きさを小型化することができる。
さらに、冷媒空間190を形成することにより、絶縁スペーサ150の軽量化を図ることができるとともに、絶縁スペーサ150を作製するために必要な絶縁性材料を削減することができる。その結果、静止誘導機器100の軽量化および低コスト化を図ることができる。
高圧巻線122と隣接している微小間隙180は、低圧巻線121と隣接している微小間隙180と比較して、強い電界が印加される。よって、本実施の形態1に係る静止誘導機器100においては、高圧巻線122および絶縁筒140の各々に接するように配置されている絶縁スペーサ150が、基部151および凸部152を含み、この絶縁スペーサ150の基部151が高圧巻線122と接していることにより、比較的強い電界が印加される微小間隙への電界集中を緩和することができる。
さらに、高圧巻線122の径方向内側に配置されている絶縁スペーサ150が、基部151および凸部152を含み、この絶縁スペーサ150の基部151が高圧巻線122と接していることにより、静止誘導機器100に存在する全ての微小間隙の中で最も強い電界が印加される微小間隙への電界集中を緩和することができる。
実施の形態2.
以下、本発明の実施の形態2に係る静止誘導機器について説明する。本発明の実施の形態2に係る静止誘導機器は、絶縁スペーサの凸部が基部と比較して耐熱性の低い絶縁物を含む点が主に、本発明の実施の形態1に係る静止誘導機器100と異なるため、本発明の実施の形態1に係る静止誘導機器100と同様である構成については説明を繰り返さない。
以下、本発明の実施の形態2に係る静止誘導機器について説明する。本発明の実施の形態2に係る静止誘導機器は、絶縁スペーサの凸部が基部と比較して耐熱性の低い絶縁物を含む点が主に、本発明の実施の形態1に係る静止誘導機器100と異なるため、本発明の実施の形態1に係る静止誘導機器100と同様である構成については説明を繰り返さない。
図8は、本発明の実施の形態2に係る静止誘導機器の断面図であって、図4に対応する部分を拡大して示す図である。図9は、本発明の実施の形態2に係る静止誘導機器の断面図であって、図5に対応する部分を拡大して示す図である。図10は、本発明の実施の形態2に係る静止誘導機器の一部断面図であって、図9のX−X線矢印方向から見た図である。図11は、本発明の実施の形態2に係る静止誘導機器の一部断面図であって、図9のXI−XI線矢印方向から見た図である。
図8〜図11に示すように、本発明の実施の形態2に係る静止誘導機器は、絶縁スペーサ250を備えている。絶縁スペーサ250は、基部251と複数の凸部252とを有している。図10および図11に示すように、本実施の形態においては、基部251は、巻線120の中心軸方向から見て、鼓状の外形を有している。ただし、基部251の外形は、巻線120の中心軸方向から見て、鼓状に限られず、矩形状でもよい。
複数の凸部252の各々は、直方体状の外形を有している。複数の凸部252の各々は、基部251と比較して耐熱性の低い絶縁物を含む。本実施の形態においては、基部251は、ポリエステルで構成されているが、基部251の材料は、ポリエステルに限られず、ポリエチレンテレフタラートなどの絶縁性樹脂で構成されていてもよい。複数の凸部252の各々は、プレスボードで構成されているが、複数の凸部252の各々は、プレスボードに限られず、乾燥木などで構成されていてもよい。なお、複数の凸部252の各々が、基部251と比較して耐熱性の低い絶縁物を含んでいればよく、複数の凸部252の各々が、基部251と同一の材料を含んでいてもよい。
本実施の形態においては、基部251に、複数の凸部252が嵌め込まれる複数の凹部が形成されている。複数の凹部の深さは、たとえば約1mmである。ただし、複数の凸部252の基部251への固定方法は、嵌合に限られず、接合材によって複数の凸部252が基部251に接合されていてもよい。
図9および図11に示すように、本発明の実施の形態2に係る静止誘導機器においては、少なくとも1つの絶縁板は、脱落防止用絶縁板260を含んでいる。脱落防止用絶縁板260は、流路変更板170に載置されている。脱落防止用絶縁板260に、絶縁スペーサ250の絶縁物が載置されている。本実施の形態においては、脱落防止用絶縁板260に、絶縁スペーサ250の複数の凸部252のうちの1つの凸部252が載置されている。
脱落防止用絶縁板260は、ポリエステルで構成されているが、脱落防止用絶縁板260の材料は、ポリエステルに限られず、ポリエチレンテレフタラートなどの絶縁性樹脂で構成されていてもよい。
図10に示すように、流路変更板170には、絶縁スペーサ250を配置するための略矩形状の切欠部171が形成されていることにより、流路変更板170と基部251との間には隙間191が形成されている。
脱落防止用絶縁板260は、巻線120の径方向における一端または他端に、図11に示すように、開口部261を有している。脱落防止用絶縁板260の開口部261の内側に、絶縁スペーサ250の基部251が位置している。脱落防止用絶縁板260の開口部261は、絶縁スペーサ250の基部251の横断面の外形に沿う形状を有している。脱落防止用絶縁板260は、流路変更板170と基部251との間に形成された隙間191の少なくとも一部を塞ぐように配置されている。なお、本実施の形態においては、脱落防止用絶縁板260は、流路変更板170と基部251との間に形成された隙間191の一部191aを除いて塞いでおり、当該隙間191の一部191aは、絶縁スペーサ250の凸部252で覆われている。
本実施の形態に係る静止誘導機器においては、複数の凸部252の各々は、基部251と比較して、熱源である巻線120から遠い位置に配置されているので、基部251より巻線120から受ける熱影響が少ない。そのため、複数の凸部252の各々は、基部251より低い耐熱性を有していてもよい。
絶縁物は、一般的に、耐熱性が低いほど安価であるため、複数の凸部252の各々が、基部251と比較して耐熱性の低い絶縁物を含むことにより、絶縁スペーサ250の製造コストを低減でき、ひいては、静止誘導機器の低コスト化を図ることができる。
絶縁スペーサ250の絶縁物が脱落防止用絶縁板260に載置されていることにより、仮に、絶縁物が基部251から脱離した場合においても、脱落防止用絶縁板260によって絶縁スペーサ250の絶縁物が落下することを防止することができる。その結果、静止誘導機器の信頼性を維持することができる。
脱落防止用絶縁板260が、流路変更板170と基部251との間に形成された隙間191の少なくとも一部を防ぐように配置されていることにより、冷媒130が隙間191を通過することを抑制できる。これにより、図2に示すように巻線120の中心軸方向の一方側から他方側へ向かって流れる冷媒130のより多くを、流路変更板170に沿って迂回するように流動させることができる。その結果、冷媒130による巻線120の冷却効率を向上することができる。
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
100 静止誘導機器、110 鉄心、120 巻線、121 低圧巻線、122 高圧巻線、125 円盤状巻線、126 平角銅線、127 絶縁紙、130 冷媒、140 絶縁筒、150,159,250 絶縁スペーサ、151,251 基部、152,252 凸部、160 絶縁板、170 流路変更板、171 切欠部、180 微小間隙、190 冷媒空間、191 隙間、191a 隙間の一部、260 脱落防止用絶縁板、261 開口部。
Claims (6)
- 鉄心と、
前記鉄心を中心軸として同心円状に巻き回された巻線と、
前記鉄心および前記巻線を冷却する絶縁性の冷媒と、
前記巻線と同心円状になるように、前記巻線の径方向内側および径方向外側の少なくとも一方に配置された絶縁筒と、
前記巻線と前記絶縁筒との間に配置され、前記中心軸と平行に延在する複数の絶縁スペーサと、
前記巻線の径方向に延在する少なくとも1つの絶縁板とを備え、
前記巻線は、同軸状に積層された複数の円盤状巻線で構成されており、
前記複数の絶縁スペーサのうちの少なくとも1つの絶縁スペーサは、前記中心軸と平行に延在して前記巻線に接する基部と、該基部から前記巻線の径方向に突出し、前記中心軸と平行な方向において互いに離間して位置する複数の凸部とを有しており、
前記絶縁板は、前記基部と前記複数の凸部とを有する前記絶縁スペーサの前記基部に接し、かつ、前記複数の円盤状巻線のうちの互いに隣接する円盤状巻線同士の間に配置されており、
互いに隣接している、前記基部と、前記巻線と、前記絶縁板との間に、前記冷媒が位置する微小間隙が形成されており、
前記複数の凸部が前記絶縁筒と接していることにより、前記絶縁筒と前記基部との間に、前記冷媒が位置する冷媒空間が形成されており、
前記冷媒空間の少なくとも一部は、前記基部を間に挟んで前記微小間隙と隣り合っている、静止誘導機器。 - 前記巻線として、低圧巻線と、該低圧巻線の径方向外側で巻き回され、前記低圧巻線より高い電圧が印加される高圧巻線とを備え、
前記基部と前記複数の凸部とを有する前記絶縁スペーサは、前記高圧巻線および前記絶縁筒の各々に接するように配置され、
前記基部が、前記高圧巻線と接している、請求項1に記載の静止誘導機器。 - 前記基部と前記複数の凸部とを有する前記絶縁スペーサは、前記高圧巻線の径方向内側に配置され、
前記基部が、前記高圧巻線の径方向内側にて前記高圧巻線と接している、請求項2に記載の静止誘導機器。 - 前記複数の凸部の各々は、前記基部と比較して耐熱性の低い絶縁物を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の静止誘導機器。
- 前記少なくとも1つの絶縁板は、脱落防止用絶縁板を含み、
前記脱落防止用絶縁板に、前記絶縁物が載置されている、請求項4に記載の静止誘導機器。 - 円環状の形状を有し、前記冷媒を迂回させるための流路変更板をさらに備え、
前記流路変更板は、前記絶縁筒から前記巻線の径方向に張り出すように配置されており、
前記流路変更板と前記基部との間には隙間が形成されており、
前記脱落防止用絶縁板は、前記流路変更板と前記基部との間に形成された前記隙間の少なくとも一部を塞ぐように配置されている、請求項5に記載の静止誘導機器。
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