JP2019179627A - 配線材 - Google Patents

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Abstract

【課題】導体としてアルミニウム導体を用いても、高い耐熱性と、優れた柔軟性及び皮むき加工性とを兼ね備えた配線材を提供する。【解決手段】アルミニウム導体の外周に、少なくとも1層の絶縁被覆層を有する配線材であって、絶縁被覆層のうちアルミニウム導体の外周に直接設けられた最内絶縁被覆層が、下記シラン架橋性組成物のシラノール縮合硬化物からなる配線材。<シラン架橋性組成物>エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方を含有するベース樹脂100質量部と、無機フィラー10〜400質量部と、ベース樹脂にグラフト化結合したシランカップリング剤1〜15.0質量部とを含有し、更にシラノール縮合触媒を含有するシラン架橋性組成物【選択図】なし

Description

本発明は、アルミニウム導体を有する配線材に関する。
電気・電子機器の内部及び外部配線に使用される絶縁電線、ケーブル、コード及び光ファイバー心線、光ファイバーコード等の配線材には、耐熱性が求められるため、その絶縁被覆層又はシースは架橋樹脂(例えば、架橋ポリ塩化ビニル、架橋ポリエチレン)で形成される。このような配線材としては、従来、導体としての銅線の外周に架橋ポリ塩化ビニル製等の絶縁被覆層を有するもの、更には架橋ポリエチレン製等のシースを有するものが多用されている。
一般に電力ケーブルや配電ケーブルには、絶縁被覆層に架橋ポリエチレン、シースにPVC樹脂(ポリ塩化ビニル)を施したCVケーブル(cross−linked polyethylene insulated vinyl sheath cable)が使用されている。
一方、配線材の導体として、資源希少性、コストや軽量化の観点から、銅導体の代わりに、アルミニウムで形成された導体(アルミニウム導体)を用いた配線材が電力分野や配電分野に使用されてきている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2017−143645号公報
しかし、アルミニウムは銅より電気導電率が低いため、同じ電流を流すためには導体径を太くする必要がある。更に、アルミニウム導体は硬く、また傷が入ると折れやすいなどの問題も多い。このようなアルミニウム導体を用いたCVケーブルは、配線すると、ケーブルが硬くなるため、配線時にケーブルがはねてしまい、配線しにくい(柔軟性に劣る。)。
また、従来のCVケーブルは、絶縁被覆層を導体から剥離しにくく、特に上記問題を有するアルミニウム導体を用いたCVケーブルは、皮むき加工性の改善が求められている。すなわち、皮むき加工する際に、アルミニウム導体に傷が入りやすく、丁寧に加工しないとアルミニウム導体が破断してしまうおそれがある。また、皮むき加工において絶縁被覆層の切断端面に絶縁被覆層の線状体ないし毛状体(ヒゲということがある。)や切断カスが残存することがある。このようなヒゲや切断カスが残存すると、コネクタ加工を行う際にヒゲがコネクタに噛こんでしまい、接触不良を起こす。
また、アルミニウム導体は傷に非常に弱いため、絶縁被覆層を剥がす際にあまり刃を食い込ませることができない。従来の架橋ポリエチレンは刃を十分に入れないと皮むき加工ができず、またその場合でもヒゲが残りやすい。このヒゲは後加工で取り除く必要がある。したがって、あまり刃を入れずに被覆を剥ければ、生産性が大幅に向上する。
本発明は、導体としてアルミニウム導体を用いても、高い耐熱性と、優れた柔軟性及び皮むき加工性(絶縁被覆層を剥離する際の加工しやすさ、皮剥性ともいう。)を兼ね備えた配線材を提供することを課題とする。
本発明者らは、アルミニウム導体に対してその外周に直接(接着層等を設けることなく)設ける絶縁被覆層を、エチレンゴム又はスチレン系エラストマーに対して特定量のシランカップリング剤がグラフト化反応したシラングラフト樹脂と特定量の無機フィラーとシラノール縮合触媒とを含有する特定のシラン架橋性組成物についてシランカップリング剤をシラノール縮合させて硬化させて得られるシラノール縮合硬化物で形成することにより、得られる配線材に、優れた柔軟性、皮むき加工性及び耐熱性を付与できることを見出した。本発明者らはこの知見に基づき、更に研究を重ね、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明の課題は以下の手段によって達成された。
<1>アルミニウム導体の外周に、少なくとも1層の絶縁被覆層を有する配線材であって、
前記絶縁被覆層のうち前記アルミニウム導体の外周に直接設けられた最内絶縁被覆層が、下記シラン架橋性組成物のシラノール縮合硬化物からなる配線材。
<シラン架橋性組成物>
エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方を含有するベース樹脂100質量部と、無機フィラー10〜400質量部と、前記ベース樹脂にグラフト化結合したシランカップリング剤1〜15.0質量部とを含有し、更にシラノール縮合触媒を含有するシラン架橋性組成物
<2>前記ベース樹脂が、有機鉱物油を含有している<1>に記載の配線材。
<3>前記エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの、前記ベース樹脂中の合計含有率が、少なくとも5質量%である<1>又は<2>に記載の配線材。
<4>前記無機フィラーが、金属水和物、シリカ、炭酸カルシウム及びクレーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、<1>〜<3>のいずれか1項に記載の配線材。
<5>前記絶縁被覆層が2層以上であって、その最外絶縁被覆層が、ポリ塩化ビニルの絶縁被覆層である<1>〜<4>のいずれか1項に記載の配線材。
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明の配線材は、導体としてアルミニウム導体を用いても、高い耐熱性と、優れた柔軟性及び皮むき加工性とを兼ね備え、更には軽量化も達成できる。
[配線材]
本発明の配線材は、アルミニウム導体の外周に少なくとも1層の絶縁被覆層を有している。少なくとも1層の絶縁被覆層(以下、単に被覆層ということがある。)のうち、アルミニウム導体の外周に直接設けられた最内絶縁被覆層は下記シラン架橋性組成物のシラノール縮合硬化物で形成されている。
−シラン架橋性組成物 −
エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方を含有するベース樹脂100質量部と、無機フィラー10〜400質量部と、ベース樹脂にグラフト化結合したシランカップリング剤1〜15.0質量部とを含有し、更にシラノール縮合触媒を含有するシラン架橋性組成物
シラン架橋性組成物において、ベース樹脂と、ベース樹脂にグラフト化結合したシランカップリング剤とを含有するとは、例えば、ベース樹脂(少なくともエチレンゴム及びスチレン系エラストマーの一方を含む。)に対してシランカップリング剤がグラフト化反応してなるシラングラフト樹脂を含有する態様が挙げられる。
このシラン架橋性組成物は、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方を含有するベース樹脂100質量部と、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、無機フィラー10〜400質量部と、ベース樹脂のグラフト化反応可能な部位とグラフト化反応しうる部位(グラフト化反応部位という。)を有するシランカップリング剤1〜15質量部とを、有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混練して、有機過酸化物から発生したラジカルによってベース樹脂とシランカップリング剤とをグラフト化反応させることにより、ベース樹脂にシランカップリング剤が共有結合等でグラフト鎖状に結合したシラングラフト樹脂(シラン架橋性樹脂ともいう。)を含む反応組成物(溶融混練物)として得られるシランマスターバッチと、シラノール縮合触媒を含有する縮合触媒マスターバッチとの混合物が好ましい。
本発明において、アルミニウム導体の外周に直接設けられるとは、アルミニウム導体の外周に、接着層やプライマー層、更には他の絶縁被覆層等の層を介することなく、アルミニウム導体の外周に接した状態で設けられることを意味する。
アルミニウ導体と、本発明のシラン架橋性組成物のシラノール縮合硬化物で形成された最内絶縁被覆層とを有する配線材が、高い耐熱性と、優れた柔軟性及び皮むき加工性とを兼ね備える理由の詳細は、まだ定かではないが、以下のように考えられる。
すなわち、従来の構成である、アルミニウム導体の外側に被覆された架橋ポリエチレンはアルミニウム導体と一体化することにより、アルミニウム導体の硬さを助長させる。しかも、アルミニウム導体は、銅導体と比較して導体抵抗が小さく許容電流が少なくなるために通常サイズアップ(大径化)するから、配線材自体が硬くなる。更に架橋ポリエチレン層は硬くて刃が入りにくく、しかも材料が伸びるため、導体近傍まで刃を入れないと皮むきすることができない。
しかし、本発明の配線材は、アルミニウム導体に直接接する部分(最内絶縁被覆層)を、シラン架橋性組成物のシラノール縮合硬化物で形成することで、アルミニウム導体の硬さが緩和されるとともに、配線時に作用する応力に対する配線材の反発も低減することが可能となる。また、アルミニウム導体の損傷とヒゲ及び切断カスの残存とを抑えて加工することができる。具体的には、被覆層をカッティングする際に、刃をアルミニウム導体ぎりぎりまで入れなくても、ヒゲや切断カスを残存させることなく、被覆層を剥離(切断、除去)することが可能となる。更に、シラン架橋性組成物のシラノール縮合硬化物は、短期の(例えば環境雰囲気の瞬間的高温化に対する)耐熱性に優れており溶融しにくく、しかも、長期の(例えば環境雰囲気の連続的若しくは断続的な高温化に対する)耐熱性も向上させることができ、配線材の小径化が可能となる。しかも、アルミニウムは比重が小さく、銅導体を備えた配線材に対して、軽量化を図ることもできる。
本発明の配線材は、優れた皮むき加工性を示すため、皮むき加工される前(未皮むき加工)の配線材である態様と、優れた皮むき加工性により所望のように被覆層が除去された後(皮むき加工済)の配線材である態様とを包含する。
本発明の配線材として採りうる絶縁電線は、アルミニウム導体の外周に少なくとも1層の絶縁被覆層を有する電線であればよく、アルミニウム導体としては単線でも後述するアルミニウム撚り線でも用いることができる。
本発明の配線材として採りうるケーブルは、アルミニウム導体の外周に、通常2層以上の絶縁被覆層を有するものであって、2層以上の絶縁被覆層のうち最も外側に位置する絶縁被覆層(最外絶縁被覆層)がアルミニウム導体とその他の絶縁被覆層を囲繞する形態を有するものをいう。例えば、アルミニウム導体の外周に最内絶縁被覆層を備えた、1本又は複数本の絶縁電線をシースと称される最外絶縁被覆層で一括して囲繞してなるケーブルが挙げられる。このケーブルにおいて、絶縁電線を複数有する場合、複数の絶縁電線は並列に配置されていてもよく、撚り合わされて配置(撚り線)されていてもよい。絶縁電線を撚り合わせる際の、絶縁電線の本数、絶縁電線の配置、撚り方向、撚りピッチ等は、用途等に応じて、適宜に設定できる。
配線材の直径は、用途等に応じて適宜に決定することができ、特に制限されない。例えば、絶縁電線として用いる場合、強度と柔軟性の点で、0.8〜35mmが好ましく、1〜30mmがより好ましい。ケーブルとして用いる場合、強度と柔軟性の点で、0.8〜50mmが好ましく、1〜35mmがより好ましい。
本発明の配線材は、主として配電ケーブルであるCVケーブルの代替電線ないしケーブルとして用いられ、その他、キャブタイヤケーブル、コード、鉄道用ケーブル、太陽光や風力発電ケーブル、また航空機用ケーブルとして好適に用いられる。
<アルミニウム導体>
本発明に用いるアルミニウム導体は、アルミニウム製の導体であれば特に制限されず、例えば、1本のアルミニウム素線からなる導体、又は、複数本のアルミニウム素線を撚り合わせた撚り線(アルミニウム撚り線ともいう。)からなる導体が挙げられる。
アルミニウム素線としては、従来、配線材に用いられるものを用いることができ、例えば、(純)アルミニウム若しくはアルミニウム合金で形成された素線を用いることができる。アルミニウム合金としては、特に制限されないが、例えば、1000系アルミニウム合金、2000系アルミニウム合金、3000系アルミニウム合金、4000系アルミニウム合金、5000系アルミニウム合金、6000系アルミニウム合金などが挙げられ、代表的には、Feが0.6質量%以下、Siが0.2〜1.0質量%、Mgが0.2〜1.0質量%の成分を含み、残部がアルミニウム及び不可避不純物からなるアルミニウム合金が挙げられる。
アルミニウム及びアルミニウム合金の中でも、アルミニウム純度が99%以上の1000系アルミニウム合金が好ましく、また、高い電気導電性を有するものが好ましい。
アルミニウム素線の断面形状は、用途等に応じて適宜に決定することができ、例えば、丸形(円形)や平角形(矩形)、六角形等が挙げられる。本発明においては、例えば撚り線を形成しやすい点で、断面円形が好ましい。
撚り線を形成するアルミニウム素線の数としては、複数(2本以上)であれば特に制限されない。
アルミニウム素線を撚り合わせる際の、アルミニウム素線の配置、撚り方向、撚りピッチ等は、用途等に応じて、適宜に設定できる。
アルミニウム撚り線は、外径を抑えるため、撚り合わせた後に更にダイス等によって絞りこんだ圧延導体が用いられることが好ましい。
アルミニウム素線の外径は、用途等に応じて適宜に決定することができるが、強度と柔軟性の点で、0.15〜3.5mmが好ましく、0.3〜3mmがより好ましく、0.35〜2.5mmが更に好ましい。
アルミニウム撚り線の外径は、用途等に応じて適宜に決定することができるが、強度と柔軟性の点で、0.8〜45mmが好ましく、1〜35mmがより好ましく、1〜30mmが更に好ましい。アルミニウム撚り線の外径は、撚り線の軸線に垂直な断面において、外側に配置された複数のアルミニウム素線の外周面に外接する仮想外接円の直径とする。
撚り線の外径、導体断面積は許容電流によって決定されるが、1本当たりのアルミニウム素線径は細い方が柔軟性に優れるものの、心線(素線)切れが生じやすくなる。その観点から素線径は0.3〜1mm程度が特に好ましい。
<絶縁被覆層>
アルミニウム導体の外周に設けられる絶縁被覆層は、絶縁層として機能するものであり、単層構造又は複層構造を有している。
絶縁被覆層が単層である場合、この絶縁被覆層はアルミニウム導体の外周に直接接設けられた最内絶縁被覆層となる。
一方、絶縁被覆層が複層構造である場合(複層絶縁被覆層という。)、複層絶縁被覆層を構成する構成層の数は、用途等に応じて適宜に決定することができ、例えば、2〜5層が好ましく、2層又は3層がより好ましい。特に、配線材がケーブルである場合、絶縁被覆層は複層絶縁被覆層であることが好ましく、複層絶縁被覆層における最外絶縁被覆層がシースとして機能する。複層絶縁被覆層においては、各構成層間には、接着層等の他の層を介することなく、直接積層されることが好ましい。
本発明において、便宜上、単層の絶縁被覆層(最内絶縁被覆層)を有する配線材を絶縁電線と称し、複層絶縁被覆層、特に最外絶縁被覆層(シース)を有する配線材をケーブルと称することがあるが、上述のように、絶縁電線であっても複層絶縁被覆層を有する形態を包含する。
本発明において、絶縁被覆層を形成する材料が同じ材料(成分及び含有量)で形成された層を積層した場合は、これらの層を合わせて1層としてカウントする。一方、絶縁被覆層を形成する材料が同じ材料で形成された層であっても隣接して積層していない場合、すなわち他の層を介して積層した場合は、それぞれの層を1層としてカウントする。また、絶縁被覆層を形成する材料が異なる材料で形成された層を積層した場合は、隣接しているか否かに関わらず、それぞれの層を1層としてカウントする。
− 最内絶縁被覆層 −
最内絶縁被覆層(以下、単に最内被覆層ということがある。)は、シラン架橋性組成物についてシラノール縮合反応してなる、シラノール縮合硬化物の層(硬化物層ということがある。)で形成される。この硬化物層は、例えば、シラン架橋性組成物を用いて後述する方法で形成することができる。
硬化物層は、詳細は後述するが、エチレンゴム又はスチレン系エラストマー樹脂を含有するベース樹脂に対して特定量のシランカップリング剤がグラフト化反応したシラングラフト樹脂と特定量の無機フィラーとを含むシラン架橋性組成物について、シラングラフト樹脂に結合したシランカップリング剤の加水分解性基を加水分解し、次いでシラノール縮合反応させることにより、架橋させたものである。この硬化物層は、ベース樹脂に含有される樹脂のうち少なくともエチレンゴム及びスチレン系エラストマーの一方がシランカップリング剤を介してシラン架橋されたシラン架橋物からなる層である。シラン架橋されるエチレンゴム及びスチレン系エラストマーは用いるエチレンゴム及びスチレン系エラストマーの全量でも一部でよく、用途等により適宜に決定できる。シラン架橋物は、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方にシラン架橋物を含有していれば、エチレンゴム及びスチレン系エラストマー以外の樹脂が他の樹脂とシラン架橋された架橋物を含有していてもいなくてもよい。
− 最外絶縁被覆層 −
最外絶縁被覆層(単に最外被覆層、又は表面層ともいう。)は、配線材に用いられる公知の樹脂で形成され、例えば、後述する熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂が挙げられる。
− 中間絶縁被覆層 −
絶縁被覆層が3層以上の複層絶縁被覆層である場合、最内被覆層と最外被覆層との間に設けられる中間絶縁被覆層は、配線材に用いられる公知の樹脂で形成され、例えば、後述する熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂が挙げられる。
− 絶縁被覆層の厚さ −
絶縁被覆層の厚さは、配線材の直径、用途等に応じて適宜に決定することができる。例えば、被覆層の総厚(複層被覆層の場合、各構成層の合計厚さ)としては、耐熱性、絶縁耐圧、強度と柔軟性の点で、0.2〜10mmが好ましく、0.6〜5mmがより好ましい。
各構成層の厚さも、被覆層の総厚、配線材の直径、用途等に応じて適宜に決定することができる。例えば、最内絶縁被覆層の厚さは、電線として用いる場合、例えば、0.2〜5mmが好ましく、0.5〜4mmがより好ましく、ケーブルとして用いる場合、例えば、0.4〜5mmが好ましく、0.5〜3mmがより好ましい。本発明において、最内被覆層の厚さは、アルミニウム導体の外径と最内被覆層の外径との差(最薄厚さ)とする。最外被覆層の厚さは、例えば、0.2〜5mmが好ましく、0.5〜4mmがより好ましい。中間絶縁被覆層の(合計)厚さは、例えば、0〜5mmが好ましい。
[配線材の製造方法]
まず、配線材の製造方法に用いる各成分について説明する。
<アルミニウム導体>
本発明に用いるアルミニウム導体は、市販品のアルミニウム導体を用いてもよい。アルミニウム撚り線は、市販のアルミニウム素線を公知の方法で撚り合わせて作製してもよい。
<ベース樹脂>
本発明に用いるベース樹脂は、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方を含有する。エチレンゴム及びスチレン系エラストマーは、後述する有機過酸化物から発生したラジカルの存在下において、シランカップリング剤のグラフト化反応部位とグラフト化反応可能な部位を主鎖中又はその末端に有している。このグラフト化反応可能な部位としては、例えば、炭素鎖の不飽和結合部位、水素原子を有する炭素原子等が挙げられる。ベース樹脂がエチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方を含有することにより、上記アルミニウム導体の強度とのバランスを良化できる。
このベース樹脂は、他の樹脂を含有してもよく、更に、必要に応じて、他の樹脂、有機鉱物油、可塑剤等を含有してもよい。
(エチレンゴム)
エチレンゴムとしては、エチレンとα−オレフィンとの共重合体のゴムであれば特に限定されない。例えば、エチレンゴムとしては、好ましくは、エチレンとα−オレフィン(好ましくは炭素数1〜12)との二元共重合体ゴム、エチレンとα−オレフィン(好ましくは炭素数1〜12)とα−オレフィン以外の、不飽和結合を有する第三成分との3元共重合体からなるゴムが挙げられる。第三成分としては、共役若しくは非共役のジエンが挙げられ、具体的には、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ジシクロペンタジエン(DCPD)、エチリデンノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン等が挙げられる。二元共重合体ゴムとしては、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、三元共重合体ゴムとしては、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)が挙げられる。
エチレンゴムは、1種を単独で用いても2種以上を用いてもよい。
(スチレン系エラストマー)
スチレン系エラストマーとしては、分子内に芳香族ビニル化合物を構成成分とするものをいう。このようなスチレン系エラストマーとしては、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とのブロック共重合体及びランダム共重合体、又は、それらの水素添加物等が挙げられる。このようなスチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、水素化SIS、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、水素化SBS、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、水素化スチレン−ブタジエンゴム(HSBR)等が挙げられる。
スチレン系エラストマーは、1種を単独で用いても2種以上を用いてもよい。
(他の樹脂)
ベースゴムが含有してもよい他の樹脂としては、特に制限されないが、後述するシランカップリング剤がグラフト化反応しうる点で、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
ポリオレフィン系樹脂は、エチレン性不飽和結合を有する化合物の単独重合体又は共重合体からなる樹脂であって、後述する有機過酸化物から発生したラジカルの存在下において、シランカップリング剤のグラフト化反応部位とグラフト化反応可能な部位を主鎖中又はその末端に有する重合体の樹脂が好ましい。
このようなポリオレフィン系樹脂としては、従来の耐熱性樹脂組成物に使用されるものを特に制限されることなく使用することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、酸共重合成分(酸エステル共重合成分を含む。)を有するポリオレフィン共重合体等の各樹脂、及び、これら重合体のゴム若しくはエラストマー等が挙げられる。ゴム若しくはエラストマーとしては、エチレンゴム及びスチレン系エラストマー以外のものであればよく、例えば、アクリル酸アルキルとエチレンとの共重合ゴム(エチレンアクリルゴム)等が挙げられる。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、酸共重合成分を有するポリオレフィン共重合体等の各樹脂が好ましい。
特に、エチレンゴムと併用される他の樹脂としては、ポリエチレンが好ましく、スチレン系エラストマーと好ましく併用される他の樹脂としては、ポリエチレン、酸共重合成分を有するポリオレフィン共重合体の樹脂等が好ましい。
ポリオレフィン系樹脂及び後述する各樹脂は、それぞれ1種を単独で用いても2種以上を用いてもよい。
− ポリエチレン樹脂 −
ポリエチレン樹脂は、エチレン構成成分を含む重合体の樹脂であればよく、エチレンの単独重合体、エチレンとα−オレフィン(好ましくは5mol%以下)との共重合体(ポリプロピレンに該当するものを除く。)、並びに、エチレンと官能基に炭素、酸素及び水素原子だけを持つ非オレフィン(好ましくは1mol%以下)との共重合体からなる樹脂が包含される。なお、上述のα−オレフィレン及び非オレフィンはポリエチレンの共重合成分として従来用いられる公知のものを特に制限されることなく用いることができる。
ポリエチレン樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMW−PE)、直鎖型低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)が挙げられる。中でも、低密度ポリエチレン、直鎖型低密度ポリエチレン又は超低密度ポリエチレンが好ましく、低密度ポリエチレン又は直鎖型低密度ポリエチレンがより好ましい。
− ポリプロピレン樹脂 −
ポリプロピレン樹脂は、主成分としてプロピレン構成成分を含む重合体の樹脂であればよく、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン樹脂)、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体等の樹脂を使用することができる。
− エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂 −
エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂としては、好ましくは、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体(上述のポリエチレン及びポリプロピレンに該当するものを除く。)の樹脂が挙げられる。
− 酸共重合成分を有するポリオレフィン共重合体樹脂 −
酸共重合成分を有するポリオレフィン共重合体樹脂における酸共重合成分(酸エステル共重合成分を含む。)としては、特に制限されないが、(メタ)アクリル酸等のカルボン酸化合物、酢酸ビニル、又は、(メタ)アクリル酸アルキル(好ましくは炭素数1〜12)等の酸エステル化合物が挙げられる。酸共重合成分を有するポリオレフィン共重合体樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体等の各樹脂が挙げられる。中でも、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体の各樹脂が好ましく、無機フィラーへの受容性及び耐熱性の点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体の樹脂がより好ましい。
ポリオレフィン系樹脂は、酸変性されていてもよい。酸変性に用いられる酸としては、特に限定されず、通常用いられる不飽和カルボン酸等が挙げられる。
他の樹脂としては、上記ポリオレフィン系樹脂の他にも、アクリルゴム、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマーなどが挙げられる。
(有機鉱物油)
有機鉱物油は、芳香族系オイル、パラフィン系オイル若しくはナフテン系オイル、又は、これら三者を含む混合油が挙げられる。有機鉱物油としては、樹脂組成物に通常用いられるものを特に制限されることなく用いることができ、パラフィン系オイル又はナフテン系オイルが好ましい。有機鉱物油は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
− ベース樹脂の含有率 −
ベース樹脂中の、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの合計含有率は、0質量%を越える限り特に制限されず、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましい。合計含有率の下限値は、100質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましい。
ベース樹脂中の、エチレンゴム又はスチレン系エラストマーの含有率は、それぞれ、上記合計含有率を満たす範囲内で適宜に設定される。例えば、エチレンゴム又はスチレン系エラストマーの含有率は、それぞれ、5〜40質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。スチレン系エラストマーの含有率は、皮剥性(ヒゲ発生の抑制)の観点からは、20質量%以上が好ましい。
ベース樹脂中の、ポリオレフィン系樹脂の合計含有率は、特に制限されないが、0〜85質量%が好ましく、10〜70質量%がより好ましい。
本発明において、ポリオレフィン系樹脂に包含される上記各樹脂の、ベース樹脂中の含有率は、それぞれ、ポリオレフィン系樹脂の上記含有率を満足する範囲で適宜に設定され、例えば、下記含有率に設定される。
ポリエチレン樹脂の含有率は、0〜30質量%が好ましい。ポリプロピレン樹脂の含有率は、0〜35質量%が好ましく、0〜20質量%がより好ましい。エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂の含有率は、10〜85質量%が好ましい。酸共重合成分を有するポリオレフィン共重合体樹脂の含有率は、0〜60質量%が好ましく、0〜40質量%がより好ましい。
ベース樹脂中の、他の樹脂のうちポリオレフィン系樹脂以外の樹脂の含有率は、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜に設定できる。
ベース樹脂中の、有機鉱物油の含有率(ベース樹脂が可塑剤を含有する場合、可塑剤との合計含有率)は、特に制限されないが、0〜40質量%であることが好ましい。
<無機フィラー>
本発明に用いる無機フィラーは、従来の樹脂組成物に通常用いられるものであれば特に制限されず、その表面に、後述するシランカップリング剤の加水分解性シリル基と水素結合若しくは共有結合等又は分子間結合により、化学結合しうる部位を有するものが好ましい。加水分解性シリル基と化学結合しうる部位としては、OH基(水酸基、含水若しくは結晶水の水分子、カルボキシ基等のOH基)、アミノ基、SH基等が挙げられる。
無機フィラーとしては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミニウムウイスカ、水和ケイ酸アルミニウム、水和ケイ酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、タルク等の水酸基又は結晶水を有する化合物のような金属水和物が挙げられる。また、窒化ほう素、シリカ(結晶質シリカ、非晶質シリカ等)、カーボン、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、ほう酸亜鉛、ホワイトカーボン、硼酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛等も挙げられる。
無機フィラーは、金属水和物、シリカ、炭酸カルシウム及びクレーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、この群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
無機フィラーは、各種表面処理剤で表面処理されたものを用いることもできる。例えば、シランカップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウムとして、キスマ5L、キスマ5P(いずれも商品名、協和化学工業社製)等が挙げられる。
無機フィラーは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
無機フィラーを粉体として用いる場合、その平均粒径は、0.2〜10μmであることが好ましく、0.3〜8μmであることがより好ましく、0.4〜5μmであることが更に好ましく、0.4〜3μmであることが特に好ましい。無機フィラーの平均粒径が上記範囲にあると、2次凝集を防止してブツのない外観を有する成形体を得ることができ、また、シランカップリング剤との結合を保持して十分な架橋を形成できる。無機フィラーの平均粒径は、無機フィラーをアルコール又は水中に分散させて、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置等の光学式粒径測定器によって求められる。
<有機過酸化物>
本発明に用いる有機過酸化物は、少なくとも熱分解によりラジカルを発生して、触媒として、シランカップリング剤のベース樹脂へのラジカル反応によるグラフト化反応(シランカップリング剤のグラフト化反応部位とベース樹脂のグラフト化反応可能な部位との共有結合形成反応であって、(ラジカル)付加反応ともいう。)を生起させる働きをする。例えばシランカップリング剤がグラフト化反応部位としてエチレン性不飽和基を含む場合、エチレン性不飽和基とベース樹脂とのラジカル反応(ベース樹脂からの水素ラジカルの引き抜き反応を含む)によるグラフト化反応(結合)を生起させる働きをする。
有機過酸化物としては、上記機能をするものであれば、特に制限されない。例えば、一般式:R−OO−R、R−OO−C(=O)R又はRC(=O)−OO(C=O)Rで表される化合物が好ましい。ここで、R〜Rは各々独立にアルキル基、アリール基又はアシル基を表す。各化合物のR〜Rのうち、いずれもアルキル基であるもの、又は、いずれかがアルキル基で残りがアシル基であるものが好ましい。このような有機過酸化物としては、ラジカル重合又は従来のシラン架橋法に用いられるものを特に制限されずに用いることができ、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン又は2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3が好ましい。
有機過酸化物の分解温度は、80〜195℃が好ましく、125〜180℃が特に好ましい。本発明において、有機過酸化物の分解温度とは、単一組成の有機過酸化物を加熱したとき、ある一定の温度又は温度域でそれ自身が2種類以上の化合物に分解反応を起こす温度を意味する。具体的には、DSC法等の熱分析により、窒素ガス雰囲気下で5℃/分の昇温速度で、室温から加熱したとき、吸熱又は発熱を開始する温度をいう。
有機過酸化物は、1種類を用いても、2種類以上を用いてもよい。
<シランカップリング剤>
本発明に用いるシランカップリング剤としては、有機過酸化物の分解により生じたラジカルの存在下で、エチレンゴム、スチレン系エラストマー又はポリオレフィン系樹脂のグラフト化反応可能な部位にグラフト化反応しうる部位(基又は原子)と、シラノール縮合可能な加水分解性シリル基とを有するものであれば、特に限定されない。このようなシランカップリング剤としては、従来のシラン架橋法に使用されているシランカップリング剤が挙げられる。
このようなシランカップリング剤としては、グラフト化反応しうる部位としてエチレン性不飽和基を有するシランカップリング剤が挙げられ、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、ビニルジメトキシブトキシシラン、ビニルジエトキシブトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニルシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシシラン等が挙げられる。中でも、ビニルトリメトキシシラン又はビニルトリエトキシシランが特に好ましい。
シランカップリング剤は、1種類を用いても、2種類以上を用いてもよい。
シランカップリング剤は、そのままの形態で用いてもよいし、溶剤で希釈した形態で用いてもよい。
<シラノール縮合触媒>
本発明に用いるシラノール縮合触媒は、ベース樹脂にグラフト化反応したシランカップリング剤を水の存在下でシラノール縮合反応(促進)させる。このシラノール縮合触媒の働きに基づき、シランカップリング剤を介してポリオレフィン系樹脂が架橋される。その結果、耐熱性に優れたシラン架橋樹脂成形体を得ることができる。
このようなシラノール縮合触媒としては、特に制限されず、例えば、有機スズ化合物、金属石けん、白金化合物等が挙げられる。具体的には、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート等の有機スズ化合物、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ナフテン酸鉛、硫酸鉛、硫酸亜鉛、有機白金化合物が挙げられる。好ましくは有機スズ化合物である。
シラノール縮合触媒は、1種類を用いても、2種類以上を用いてもよい。
<キャリア樹脂>
本発明においては、シラノール縮合触媒は、そのまま用いてもよいが、樹脂との混合物(縮合触媒マスターバッチ)として用いることができる。シラノール縮合触媒と溶融混練される(担持する)樹脂(キャリア樹脂という。)としては、特に制限されないが、上記ベース樹脂で説明したポリオレフィン系樹脂を用いることができる。好ましくは、シラノール縮合触媒と親和性が高く、高い耐熱性を付与できる点で、ポリエチレン樹脂である。キャリア樹脂は、1種類を用いても、2種類以上を用いてもよい。
<添加剤>
本発明においては、各種の添加剤を用いることができる。添加剤としては、配線材等において、一般的に使用される各種の添加剤が挙げられる。このような添加剤としては、例えば、酸化防止剤、架橋助剤、滑剤、金属不活性剤、難燃(助)剤、更には上記ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂が挙げられる。
酸化防止剤としては、従来の耐熱性樹脂組成物に通常用いられるものを特に制限されることなく用いることができ、例えば、ベンゾイミダゾール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ヒドラジン系酸化防止剤等が挙げられる。
<配線材の製造方法>
本発明の配線材は、特に制限されないが、シランマスターバッチの調製工程、縮合触媒マスターバッチの準備工程(調製工程)、シラン架橋性組成物の調製工程(c)、シラン架橋性組成物をアルミニウム導体の外周面に配置する工程(d)、シラン架橋性組成物を水と接触させて架橋する工程(e)を有する製造方法により、好ましく製造される。
以下に各工程について説明する。
(シランマスターバッチの調製工程(a))
シランマスターバッチは、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方を含有するベース樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、無機フィラー10〜400質量部と、グラフト化反応部位を有するシランカップリング剤1〜15質量部とを、有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混練(溶融混合)して、有機過酸化物から発生したラジカルによってベース樹脂にシランカップリング剤をグラフト化反応させることにより、シラングラフト樹脂を含む反応組成物として、調製できる。
この調製工程(a)において、ベース樹脂は、その全量(100質量部)を配合する態様と、ベース樹脂の一部を配合する態様とを含む。ベース樹脂の一部を配合する場合、ベース樹脂の残部は、工程(a)以外の他の工程であればいずれの工程で配合されてもよいが、好ましくは縮合触媒マスターバッチの準備工程(b)で配合される。調製工程(a)でベース樹脂の一部を配合する場合、調製工程(a)におけるベース樹脂100質量部とは、調製工程(a)で配合するベース樹脂と、他の工程で配合するベース樹脂との合計配合量を意味する。
調製工程(a)でベース樹脂の一部を配合する場合、調製工程(a)で配合されるベース樹脂は、その全量に対して、好ましくは55〜99質量%、より好ましくは60〜95質量%であり、他の工程、特に準備工程(b)で配合されるベース樹脂は、その全量に対して、好ましくは1〜45質量%、より好ましくは5〜40質量%である。
この調製工程(a)において、有機過酸化物の配合量は、ベース樹脂100質量部に対して、0.01〜0.6質量部である。有機過酸化物の配合量を上記範囲内にすることにより、適切な範囲でグラフト化反応を行うことができ、ブツの発生を抑えて押出性に優れたシランマスターバッチ(シラングラフト樹脂組成物)を調製することができる。有機過酸化物の配合量は、0.05〜0.3質量部が好ましく、0.07〜0.25質量部がより好ましい。
調製工程(a)において、無機フィラーの配合量は、ベース樹脂100質量部に対して、10〜400質量部が好ましく、30〜280質量部がより好ましい。無機フィラーの配合量を上記範囲内にすることにより、シランカップリング剤のグラフト化反応が均一となり、高い耐熱性、更には優れた外観をシラン架橋性組成物のシラノール縮合硬化物に付与できる。無機フィラーの配合量は、皮剥性(切断カスの残存抑制)の観点からは、100質量部未満が好ましい。
調製工程(a)において、シランカップリング剤の配合量は、ベース樹脂100質量部に対して、1〜15質量部である。シランカップリング剤の配合量を上記範囲内にすることにより、高い耐熱性、更には優れた外観をシラノール縮合硬化物に付与できる。シランカップリング剤の配合量は、3〜12質量部が好ましく、4〜12質量部がより好ましい。
調製工程(a)において、各成分の混合順は、特に制限されず、どのような順で混合してもよい。各成分を一度に溶融混錬することもできるが、上記各成分を、下記工程(a−1)及び(a−2)により、溶融混錬することが好ましい。
工程(a−1):少なくとも無機フィラー及びシランカップリング剤を混合して混合物を調製する工程
工程(a−2):工程(a−1)で得られた混合物と、ベース樹脂の全部又は一部とを、有機過酸化物の存在下で有機過酸化物の分解温度以上の温度において溶融混錬する工程
工程(a−1)において、無機フィラーとシランカップリング剤を混合する方法としては、特に限定されず、湿式混合でも乾式混合でもよい。本発明においては、無機フィラーにシランカップリング剤を加熱又は非加熱で混合する乾式混合(ドライブレンド)が好ましい。この工程により、表面(化学結合しうる部位)に(シラノール縮合可能な加水分解性シリル基を介して)強い結合でシランカップリング剤が結合又は吸着した無機フィラーと、表面に弱い結合でシランカップリング剤が結合又は吸着した無機フィラーとを調製できる。弱い結合としては、水素結合による相互作用、イオン、部分電荷若しくは双極子間での相互作用、吸着による作用等が挙げられ、強い結合としては、無機フィラー表面の化学結合しうる部位との化学結合等が挙げられる。これにより、工程(a−2)等においてシランカップリング剤の揮発を低減でき、また高い耐熱性の硬化物及び配線材を調製又は製造できる。
工程(a−1)の混合条件は、有機過酸化物の分解温度未満の温度で行い、グラフト化反応の生起を抑えて上記成分を混合する。混合温度としては、好ましくは10〜60℃、より好ましくは室温(25℃)で、数分〜数時間程度の条件に設定できる。この混合は、通常用いられる混合機、例えば、工程(a−2)で説明する混練装置を用いることができる。
工程(a−1)においては、上記分解温度未満の温度が保持されている限り、ベース樹脂が存在していてもよい。この場合、ベース樹脂とともに無機フィラー及びシランカップリング剤を上記温度で混合(工程(a−1))した後に溶融混錬することが好ましい。
次いで、工程(a−1)で得られた混合物と、ベース樹脂の全部又は一部と、工程(a−1)で混合されていない残余の成分とを、有機過酸化物の存在下で有機過酸化物の分解温度以上の温度において、溶融混錬する。これにより、有機過酸化物から発生したラジカルによって、シランカップリング剤のグラフト化反応部位とベース樹脂のグラフト化反応可能な部位とをグラフト化(結合)反応させる。エチレンゴム及びスチレン系エラストマーは、通常、ポリオレフィン樹脂等に対してシランカップリング剤のグラフト化反応が選択的(優先的)に進行する。そのため、工程(a)及び工程(a−2)において、ポリオレフィン樹脂等が共存していても、エチレンゴム又はスチレン系エラストマーに対してシランカップリング剤がグラフト化反応したシラングラフト樹脂(シラングラフトエチレンゴム及びシラングラフトスチレン系エラストマー)が得られる。
工程(a)及び工程(a−2)において、上記成分を溶融混錬する温度は、有機過酸化物の分解温度以上、好ましくは有機過酸化物の分解温度+(25〜110)℃であり、例えば150〜230℃の温度である。その他の溶融混錬条件、例えば混合時間は適宜設定することができる。これにより、有機過酸化物が分解し、シランカップリング剤に作用して、シランカップリング剤のベース樹脂へのグラフト化反応が進行する。
混練方法としては、ゴム、プラスチック等で通常用いられる方法であれば、特に制限されない。混練装置は、例えば無機フィラーの量に応じて適宜に選択される。例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等が挙げられる。中でも、バンバリーミキサー、各種のニーダー等の密閉型ミキサーが樹脂の分散性の点で好ましい。
ベース樹脂の混合方法は、特に限定されない。例えば、ベース樹脂を予め調製してから混合してもよく、各成分、例えばエチレンゴム、スチレン系エラストマー等の樹脂成分、有機鉱物油等をそれぞれ別々に混合してもよい。
有機過酸化物は、工程(a−2)を行う際に存在していればよく、工程(a−1)で混合してもよく、工程(a−2)で混合してもよい。有機過酸化物を混合する場合、混合温度は、有機過酸化物の分解温度未満の温度を保持する。
本発明においては、上記各成分を、一度に溶融混錬することもできる。この場合、上記成分を予めドライブレンドした後に溶融混錬することが好ましい。ドライブレンド及び溶融混錬の方法及び条件は工程(a−1)及び工程(a−2)で説明した方法及び条件を採用できる。工程(a−2)は、上記工程(a−1)と連続して行うことができる。
工程(a)、特に工程(a−2)においては、シラノール縮合触媒の非存在下で行い、シランカップリング剤の縮合反応を抑えることが好ましい。本発明において、シラノール縮合触媒の非存在下で溶融混練するとは、シラノール縮合触媒を実質的に配合せずに溶融混練することを意味する。すなわち、不可避的に存在するシラノール縮合触媒をも排除するものではなく、シランカップリング剤のシラノール縮合による下記混練性及び成形性の問題が生じない程度であれば存在していてもよいことを意味する。例えば、シラノール縮合触媒は、樹脂組成物100質量部に対して、0.01質量部以下であれば、存在していてもよい。上記溶融混練をシラノール縮合触媒の非存在下で行うことにより、シランカップリング剤の縮合反応を抑えることができき、混練性に優れ(溶融混練しやすく)、また成形性に優れる(所望の形状に押出成形できる)。
工程(a)においては、上記成分の他に用いることができる他の樹脂や上記添加物の配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で、適宜に設定される。
上記調製工程(a)、特に上程(a−1)において、シランカップリング剤は、その加水分解性シリル基で、無機フィラーの化学結合しうる部位と結合又は吸着する。更に、このシランカップリング剤は、調製工程(a)、特に工程(a−2)において、そのグラフト化反応部位で、エチレンゴム、スチレン系エラストマー又はポリオレフィン系樹脂のグラフト化反応可能な部位とグラフト化反応する。工程(a)において、シランカップリング剤がベース樹脂にグラフト化反応する態様としては、少なくとも次のものが挙げられる。すなわち、無機フィラーと弱い結合で結合又は吸着したシランカップリング剤が無機フィラーから脱離してベース樹脂にグラフト化反応する態様である。また、無機フィラーと強い結合で結合又は吸着したシランカップリング剤が無機フィラーとの結合を保持した状態でベース樹脂にグラフト化反応する態様である。
このようにして、ベース樹脂とシランカップリング剤とをグラフト化反応させることにより、シラングラフト樹脂が合成され、反応組成物としてこのシラングラフト樹脂を含むシランマスターバッチ(シランMBともいう)が調製される。このグラフト化反応においては、通常、1分子のシランカップリング剤が1つのグラフト化反応可能な部位に付加するが、本発明はこれに限定されない。このシランMB(a)は、後述の工程(d)により成形可能な程度にシランカップリング剤がベース樹脂にグラフトしたシラングラフト樹脂を含む反応組成物である。
(縮合触媒マスターバッチの準備工程(調製工程))
配線材の製造方法においては、縮合触媒マスターバッチの準備工程(調製工程)を行う。具体的には、シラノール縮合触媒とキャリア樹脂とを溶融混練して縮合触媒マスターバッチ(縮合触媒MB)を調製する。キャリア樹脂とシラノール縮合触媒との溶融混練は、キャリア樹脂の溶融下で行う方法であればよい。この溶融混練は上記調製工程(a)の溶融混練と同様に行うことができる。例えば、混練温度は、80〜250℃、より好ましくは100〜240℃に設定できる。その他の条件、例えば混練時間は適宜設定することができる。
キャリア樹脂としては、上記調製工程(a)でベース樹脂の一部を溶融混練した場合、ベース樹脂の残部を用いることが好ましい。この場合、樹脂組成物の残部とシラノール縮合触媒との配合割合は、上述の通りである。また、キャリア樹脂としては、上記ベース樹脂以外の樹脂を用いることができる。この場合、キャリア樹脂の配合量は、ベース樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜60質量部、より好ましくは2〜50質量部、更に好ましくは2〜40質量部である。
更に、縮合触媒MBは無機フィラーを含有していてもよい。縮合触媒MB中の無機フィラーの含有量は、特には制限されないが、キャリア樹脂100質量部に対して、350質量部以下が好ましい。あまりフィラー量が多いとシラノール縮合触媒が分散しにくく、シラノール縮合反応が進行しにくくなることがある。一方、キャリア樹脂が多すぎると、成形体の架橋度が低下して、所望の耐熱性が得られないことがある。
準備工程(b)においては、シラノール縮合触媒をキャリア樹脂と溶融混錬することなく、シラノール縮合触媒のみを準備(単独で用いる)してもよい。
(シラン架橋性組成物の調製工程(c))
配線材の製造方法においては、次いで、シランMBと縮合触媒MBとを溶融混練して、シラン架橋性組成物を調製する。
シラノール縮合触媒の配合量は、特に制限されないが、ベース樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜0.6質量部、より好ましくは0.001〜0.4質量部である。シラノール縮合触媒の配合量が上述の範囲内にあると、シランカップリング剤のシラノール縮合反応による架橋反応がほぼ均一に進みやすく、シラノール縮合硬化物の耐熱性を高めることができる。更には、外観荒れ及び物性の低下を防止でき、生産性も向上する。
調製工程(c)における溶融混練は、ベース樹脂の溶融下で行う方法であればよく、例えば、調製工程(a)の溶融混練と同様に行うことができ、混練温度は、例えば、80〜250℃、より好ましくは100〜240℃に設定できる。調製工程(c)は、ベース樹脂にグラフト化したカップリング剤のシラノール縮合反応を抑えて行う。例えば、調製工程(c)においては、水存在量が少ない条件で行うことが好ましく、また、シランMBとシラノール縮合触媒が混練された状態で高温状態に長時間保持されないことが好ましい。
調製工程(c)における溶融混練前に、各MBをベース樹脂又はキャリア樹脂の非溶融下で混合、例えばドライブレンドすることができる。ドライブレンドの方法及び条件は、特に限定されず、例えば、工程(a−1)での乾式混合及びその条件が挙げられる。
調製工程(c)においては、縮合触媒MBを用いているが、本発明の配線材の製造方法においては、縮合触媒MBの代わりに、シラノール縮合触媒を単独でシランMBに溶融混錬することもできる。
このようにして、シランMBと縮合触媒MBとの溶融混練物であるシラン架橋性組成物が得られる。このシラン架橋性組成物は、シラン架橋性樹脂とシラノール縮合触媒とを含有している。このシラン架橋性組成物(シラン架橋性樹脂)は、シランカップリング剤由来の加水分解性シリル基がシラノール縮合していない未架橋体である。実際的には、調製工程(c)の溶融混練により、一部架橋(部分架橋)は避けられないが、後述する工程(d)での成形性が保持されたものとすることが好ましい。
(シラン架橋性組成物をアルミニウム導体の外周面に配置する工程(d))
配線材の製造方法においては、次いで、シラン架橋性組成物をアルミニウム導体の外周面に配置する工程(d)を行う。この工程(d)は、通常、シラン架橋性組成物を配線材の最内被覆層の形状に成形して、アルミニウム導体の外周面に配置する。
シラン架橋性組成物の成形方法は、最内被覆層の形状に成形できる方法であれば特に制限されず、押出機を用いた押出成形法、射出成形機を用いた押出成形法、その他の成形機を用いた成形法が挙げられ、アルミニウム導体と同時に押し出す押出成形法が好ましい。押出成形は、汎用の押出成形機を用いて、行うことができる。押出成形温度は、ベース樹脂ないしキャリア樹脂の種類、押出速度(引取り速度)の諸条件に応じて適宜に設定され、例えば、好ましくは80〜250℃に設定することが好ましい。
工程(d)は、工程(c)と同様に、シランカップリング剤のシラノール縮合反応を抑えて行う。
工程(c)の溶融混練及び工程(d)の成形は同時に又は連続して行うことができる。すなわち、溶融混練の一実施態様として、例えば押出成形の際又は直前に成形材料(シランMB及び縮合触媒MB)を溶融混練する態様が挙げられる。例えば、連続して行う方法として、シランMBと縮合触媒MBとを常温又は高温(溶融しない状態)で混合(ドライブレンド)して得られたシラン架橋性組成物を成形機に導入して溶融混練する方法が挙げられる。また、シランMBと縮合触媒MBとを溶融混練してペレット化し、その後に成形機に導入して再度溶融混練する方法も挙げられる。より具体的には、シランMBと縮合触媒MBとのシラン架橋性組成物を被覆装置内で溶融混練し、次いで、導体等の外周面に押出被覆して、所望の形状に成形する一連の工程を採用できる。
上述のようにして、最内被覆層の形状に成形されたシラン架橋性組成物をアルミニウム導体の外周面に配置できる。シラン架橋性組成物(シラン架橋性樹脂)は上述のように未架橋体である。
(シラン架橋性組成物を水と接触させて架橋する工程(e))
配線材の製造方法においては、次いで、アルミニウム導体の外周面に配置されたシラン架橋性組成物(成形体)と水とを接触させる。これにより、シランカップリング剤の加水分解性シリル基が水により加水分解されてシラノール(ケイ素原子に結合するOH基)となり、シラン架橋性組成物中に存在するシラノール縮合触媒によりシラノールの水酸基同士が(脱水)縮合して、架橋反応が起こる(シラン架橋性組成物のシラノール縮合硬化が形成される)。
工程(e)は、通常の方法によって行うことができる。上記縮合反応はシラノール縮合触媒の存在下では常温で保管するだけで進行する。したがって、シラン架橋性組成物と水とを積極的に接触させる必要はない。この縮合反応を促進させるために、シラン架橋性組成物と水とを積極的に接触させることもできる。積極的に水と接触させる方法としては、例えば、水(温水)への浸水、湿熱槽への投入、高温の水蒸気への暴露等が挙げられる。また、その際に水分を内部に浸透させるために圧力をかけてもよい。
このようにして、アルミニウム導体の外周にシラン架橋性組成物のシラノール縮合硬化物からなる最内被覆層を備えた配線材が製造される。
シラン架橋性組成物のシラノール縮合硬化物は、エチレンゴム又はスチレン系エラストマーを含むベース樹脂に対して特定量のシランカップリング剤がグラフト化反応したシラングラフト樹脂と特定量の無機フィラーとを含むシラン架橋性組成物について、シラングラフト樹脂に結合したシランカップリング剤の加水分解性基をシラノール縮合により架橋させたものである。このシラングラフト樹脂は、シラングラフトエチレンゴム及びシラングラフトスチレン系エラストマーの少なくとも一方を含んでおり、エチレンゴム及びスチレン系エラストマー以外の樹脂に対してシランカップリング剤がグラフト化反応したシラングラフト樹脂を含んでいてもよい。シラノール縮合硬化物において、シラングラフト樹脂はシラノール結合(シロキサン結合)を介して縮合した架橋樹脂を形成する。無機フィラーはシラングラフト樹脂のシランカップリング剤に結合していてもよい。シラン架橋性組成物及びシラノール縮合硬化物において、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーは他の樹脂とは架橋されていない。
よって、この硬化物層は、シラングラフト樹脂(シラングラフトエチレンゴム及びシラングラフトスチレン系エラストマー)の架橋硬化物と無機フィラーとを含有している。シラングラフト樹脂の架橋硬化物は、ベース樹脂構成成分(エチレンゴム構成成分、スチレン系エラストマー構成成分、ポリオレフィン構成成分)、無機フィラー構成成分、シランカップリング剤構成成分を有している。硬化物層中の各成分の含有量は、反応条件、反応率等に応じて変動するが、好ましくは上記配合量の範囲内である。より詳細には、この硬化物層は、シラングラフト樹脂がシランカップリング剤により無機フィラーに結合又は吸着して、無機フィラー及びシランカップリング剤を介して結合(架橋)した架橋樹脂と、シラングラフト樹脂(シラングラフトエチレンゴム及びシラングラフトスチレン系エラストマー)にグラフトしたシランカップリング剤の反応部位が加水分解して互いにシラノール縮合反応することにより、シラングラフト樹脂同士がシランカップリング剤を介して架橋したシラン架橋樹脂とを少なくとも含む。また、架橋樹脂及びシラン架橋樹脂は、それぞれ、無機フィラー及びシランカップリング剤を介した結合(架橋)と、シランカップリング剤を介した架橋とが混在していてもよい。
配線材が複層被覆層を有する場合、最内被覆層の外周面に順次必要数の構成層(中間絶縁被覆層及び最外被覆層)を形成して配線材を製造できる。
構成層を形成する材料は、配線材に通常用いられるものであれば特に制限されず、有機樹脂が好ましい。有機樹脂としては、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられ、例えば、上述したベース樹脂以外には、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK、変性PEEKを含む。)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)、ポリエステル(PEst)、ポリウレタン、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリアミドエラストマー、フッ素樹脂、フッ素ゴム、アクリルゴム等が挙げられる。有機樹脂は1種を単独で用いても2種以上を用いてもよい。有機樹脂は、通常用いられる各種添加剤を含有していてもよい。
有機樹脂で構成層を形成する方法は、通常の方法を特に制限されることなく適用することができ、有機樹脂の押出成形、有機樹脂ワニスの塗布焼付等が挙げられる。
構成層の中でも最外被覆層は、ポリ塩化ビニルで形成されることが好ましい。最外被覆層を形成するポリ塩化ビニルは、軟質ポリ塩化ビニルがより好ましく、例えば、ポリ塩化ビニル100質量部に対して、通常用いられる可塑剤35〜70質量部と、無機フィラー20〜100質量部とを含有するPVC組成物が挙げられる。
構成層を形成する方法は、ベース樹脂又は樹脂組成物をアルミニウム導体の外周に配置する方法と同様である。
配線材の製造方法において、上記成分の他に用いることができる他の樹脂や上記添加物は、いずれの工程で混練又は混合されてもよく、また各工程における混合順も特に制限されない。本発明の製造方法において、添加剤の配合量は、特に制限されず、目的とする効果を損なわない範囲で適宜に設定できる。酸化防止剤の配合量は、適宜に設定できるが、樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.1〜15.0質量部、より好ましくは0.1〜10質量部である。
本発明の配線材を製造する方法は、具体的には、下記の、調製工程(a)、調製工程(c)、配置工程(d)及び架橋工程(e)を有し、ただし、下記調製工程(c)で縮合触媒MBを用いる場合、更に準備工程(b)を有する。
調製工程(a):エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方を含有するベース樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、無機フィラー10〜400質量部と、ベース樹脂のグラフト化反応可能な部位とグラフト化反応しうる部位を有するシランカップリング剤1〜15質量部とを、有機過酸化物の分解温度以上の温度で、好ましくはシラノール縮合触媒の非存在下、溶融混練して、有機過酸化物から発生したラジカルによってベース樹脂にシランカップリング剤をグラフト化反応させることにより、シラングラフト樹脂を含むシランMBを調製する工程
準備工程(b):シラノール縮合触媒とキャリア樹脂とを、好ましくはシラノール縮合触媒の非存在下、溶融混練して、縮合触媒MBを調製する工程
調製工程(c):シランMBとシラノール縮合触媒又は縮合触媒MBとを溶融混練する工程
配置工程(d):調製工程(c)で得られたシラン架橋性組成物をアルミニウム導体の外周面に配置する工程
架橋工程(e):アルミニウム導体の外周面に配置されたシラン架橋性組成物と水とを接触させる工程
上記製造方法における各工程、更にはシラン架橋法における反応及び得られる縮合硬化物の形態については、例えば、特開2017−145370号公報の記載を適宜に適用でき、この公報に記載の内容はそのまま本明細書の記載の一部として取り込まれる。
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
表1〜表3において、各例の配合量に関する数値は特に断らない限り質量部を表す。また、各成分について空欄は対応する成分の配合量が0質量部であることを意味する。
表1〜表3中に示す各成分(化合物)の詳細を以下に示す。
<ベース樹脂>
− エチレンゴム ―
三井EPT0045H:商品名、EPM、三井化学社製
ノーデル3720P:商品名、EPDM(エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンゴム)、ダウ・ケミカル社製
− スチレン系エラストマー ―
セプトン4077:商品名、SEEPS、クラレ社製
タフテック(登録商標)N504:水素化SEBS(スチレン/エチレン・ブチレン比=32/68、旭化成社製)
セプトン4033:商品名、SEEPS、クラレ社製
クレイトン1901FG:商品名、マレイン酸変性スチレン系エラストマー、クレイトンジャパン社製
− ポリオレフィン系樹脂 −
エボリューSP1540:商品名、LLDPE、プライムポリマー社製)
NUC7540:商品名、LLDPE、日本ユニカー製
PB222A:商品名、ポリプロピレン(エチレン−プロピレンランダム共重合体樹脂)、サンアロマー社製
NUC6520:商品名、エチレン−アクリル酸エチル共重合体樹脂、日本ユニカー社製
EV360:エバフレックスEV360(商品名)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、三井・デュポンポリケミカル社製
− 有機鉱物油 −
ダイアナプロセスPW−90:商品名、パラフィン系オイル、出光興産社製
<無機フィラー>
アエロジル200:商品名、親水性フュームドシリカ、日本アエロジル社製
キスマ5L:商品名、シランカップリング剤表面処理水酸化マグネシウム、協和化学工業社製
ソフトン1200:商品名、炭酸カルシウム、備北粉化工業社製
グローマックスLL:商品名、カリオンクレー(焼成カリオン)、竹原化学工業社製
<シランカップリング剤>
KBM−1003:商品名、ビニルトリメトキシシラン、信越化学工業社製
<有機過酸化物>
パーヘキサ25B:商品名、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、分解温度179℃、日本油脂社製
<酸化防止剤>
イルガノックス1010:商品名、BASF社製、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
<シラノール縮合触媒>
アデカスタブOT−1:商品名、ジオクチルスズジラウレート、ADEKA社製
<PVC混和物>
SHV9877P :商品名、PVCコンパウンド:硬度80A リケンテクノス製
実施例1〜10及び比較例4〜6において、ベース樹脂100質量%のうち、一部(95質量%)を調製工程(a)で用い、残部(5質量%)を調製工程(b)でキャリア樹脂として用いた。
<工程(a)及び工程(b)の実施>
(実施例1〜10及び比較例3〜7)
表1〜表3のシランMB欄に示す配合量で、シランカップリング剤と有機過酸化物を25℃で混合し、次いでそこへ無機フィラーと酸化防止剤とを投入して30℃で混合した。次いで、得られた混合物と、表1〜表3のシランMB欄に示す配合量で、ベース樹脂とをバンバリーミキサーに投入して120〜200℃で10分溶融混錬した後、材料排出温度200℃で排出し、フィーダールーダーを通して、シランMBのペレットを得た(工程(a))。
上記バンバリーミキサーでの溶融混練により、シラングラフト化反応を惹起させた。
一方、実施例1〜10、比較例4及び6については、表1〜表3の縮合触媒MB欄に示す配合量で、キャリア樹脂、シラノール縮合触媒及び酸化防止剤をバンバリーミキサーに投入して170℃で溶融混錬した後、材料排出温度180℃で排出し、フィーダールーダーを通して、縮合触媒MBのペレットを得た(工程(b))。
比較例3、5及び7については、縮合触媒MBを調製しなかった。
(比較例1)
有機過酸化物、シランカップリング剤及びシラノール縮合触媒を用いなかったこと以外は、上記実施例と同様にして、シランMBのペレットを得た。
(比較例2)
表3に示す有機過酸化物以外の成分をバンバリーミキサーに投入して170℃で溶融混錬した後、材料排出温度180℃で排出し、フィーダールーダーを通して、ペレットを得た。その後、ロール温度を90℃に設定し、上述のペレットを練り込んだ後に、有機過酸化物を所定量混合することで、混合ロールシートを得、更に角ペレタイザーをかけることによりペレットを得た。
<調製工程(c)、配置工程(d)及び架橋工程(e)の実施>
(実施例1、3〜9、比較例4及び6)
次いで、調製した、シランMBのペレットと縮合触媒MBのペレットを表1〜表3に示す配合割合でドライブレンドした。
得られたドライブレンド物を、直径が40mmのスクリューを備えた押出機(スクリュー有効長Lと直径Dとの比:L/D=24、圧縮部スクリュー温度190℃、ヘッド温度200℃)に導入した。この押出機内にてドライブレンド物を溶融混錬(シラン架橋性組成物を調製)しつつ(調製工程(c))、導体として1/0.8mmアルミニウム導体の外周面に肉厚1mmで直接押出(配置)して、外径2.8mmの細径被覆導体を得た(配置工程(d))。
これとは別に、得られたドライブレンド物を、直径が90mmのスクリューを備えた押出機(スクリュー有効長Lと直径Dとの比:L/D=28、圧縮部スクリュー温度190℃、ヘッド温度200℃)に導入した。この押出機内にてドライブレンド物を溶融混錬(シラン架橋性組成物を調製)しつつ(調製工程(c))、導体として38SQ(19/1.6)(導体径7.3mm)のアルミニウム撚り線の外周面に肉厚1.2mmで直接押出(配置)して、外径9.7mmの太径被覆導体を得た(配置工程(d))。
得られた2種の被覆導体(細径被覆導体及び太径被覆導体)を、それぞれ、温度60℃、相対湿度95%の雰囲気に24時間放置して、水と接触させた(架橋工程(e))。
このようにして、単層被覆層(最内被覆層)を有する、2種類のアルミニウム導体電線(細径絶縁電線及び太径絶縁電線)を製造した。
(実施例2及び10)
実施例2及び10については、上記のようにして単層被覆層を有する太径絶縁電線を製造した。
一方、細径絶縁電線についてはその外周面に以下のようにして最外被覆層(シース)を形成して、2層被覆層を有するケーブルを製造した。すなわち、実施例1のアルミニウム導体電線の製造と同様にして、調製工程(c)、配置工程(d)及び架橋工程(e)を実施して、アルミニウム導体電線(細径絶縁電線)を製造した。得られたアルミニウム導体電線の外側に、直径が90mmのスクリューを備えた押出機(スクリュー有効長Lと直径Dとの比:L/D=28、圧縮部スクリュー温度170℃、ヘッド温度180℃)にPVC樹脂混和物を供給し、アルミ導体絶縁電線の外側にPVC樹脂混和物を被覆し、層厚2mmのシース層を形成した。こうして、外径6.8mmの2層被覆層を有するケーブルを製造した。
なお、表1及び表2において、シースを形成した場合、表中の「PVC樹脂混和物」に「使用」と表記した。
(比較例1、3、5、7)
実施例1における上記配置工程(d)において、シランMBのみを用いたこと以外は、実施例1における配置工程(d)と同様にして、細径被覆導体及び太径被覆導体を得た。
得られた2種の被覆導体(細径被覆導体及び太径被覆導体)を実施例における上記架橋工程(e)と同様にして水と接触させて、単層被覆層(最内被覆層)を有する、2種類のアルミニウム導体電線(細径絶縁電線及び太径絶縁電線)を製造した。
(比較例2)
上記工程(b)で得られたペレットを直径が65mmのスクリューを備えた押出機(スクリュー有効長Lと直径Dとの比:L/D=22、圧縮部スクリュー温度70℃、ヘッド温度90℃)に導入し、その後に200℃4.5気圧に調整された水蒸気架橋管を通すことで、導体として1/0.8mmアルミニウム導体の外周面に肉厚1mmで直接押出(配置)して、外径2.8mmの細径被覆導体を得た。
これとは別に、得られたドライブレンド物を、直径が115mmのスクリューを備えた押出機(スクリュー有効長Lと直径Dとの比:L/D=24、圧縮部スクリュー温度70℃、ヘッド温度80℃)に導入した。その後に200℃3.5気圧に調整された水蒸気架橋管を通すことで、導体として38SQ(19/1.6)(導体径7.3mm)のアルミニウム撚り線の外周面に肉厚1.2mmで直接押出(配置)して、外径9.7mmの太径被覆導体を得た。比較例2においては、こうして得た細径被覆導体及び太径被覆導体を、それぞれ、単層被覆層(最内被覆層)を有する、アルミニウム導体電線(細径絶縁電線及び太径絶縁電線)とした。
製造した絶縁電線について下記評価をし、その結果を表1〜表3に示した。
<加工性試験>
(絶縁電線のカッティング性試験)
絶縁電線の皮むき加工性を、下記各試験に基づくカッティング性試験により、評価した。
− 1.ヒゲ発生の有無確認試験 −
各実施例及び比較例で製造した、1/0.8mmアルミニウム導体を用いた細径絶縁電線(実施例2及び10についてはケーブルからシースを取り除いた細径絶縁電線)をワイヤーストリッパーで加工し、ヒゲ発生の有無を確認した。ヒゲとは、絶縁被覆層を厚さ方向に切断できずに切断端面に残存する(切断端面から延在する)、絶縁被覆層の線状体(毛状体)をいう。
ストリッパーの穴径は1.0mmのものを使用し、シース及び被覆層の皮むき長は15mmとした。この加工を各細径絶縁電線に対して4回試験を行った。
評価は、4回の試験全てにおいてカット部に発生したヒゲの長さが3mm以下であった場合を「A」、4回の試験全てにおいてカット部に発生したヒゲの長さが3mmを越え6mm以下であった場合を「B」、1回でもカット部に発生したヒゲの長さが6mmを越えた場合を「C」とした。本試験において、評価ランク「A」及び「B」が合格である。
− 2.切断カスの残存確認試験 −
各実施例及び比較例で製造した、38SQアルミニウム撚り線を用いた太径絶縁電線をワイヤーストリッパーで加工し、アルミニウム撚り線の表面及び内部に残る絶縁被覆層の切断カスを確認した。
ストリッパーの穴径は10mmのものを使用し、被覆層の皮むき長は15mmとした。この加工を各太径絶縁電線に対して4回試験を行った。
評価は、4回の試験全てにおいてカット部のアルミニウム撚り線に切断カスの残存が確認できなかった場合を「A」、1回でもカット部のアルミニウム撚り線に切断カスの残存が確認された場合を「B」、2回以上の試験においてカット部のアルミニウム撚り線に切断カスの残存が確認された場合を「C」とした。本試験において、評価ランク「A」及び「B」が合格である。
− 3.導体の損傷(切断)の有無確認試験 −
各実施例及び比較例で製造した、38SQアルミニウム撚り線を用いた太径絶縁電線をワイヤーストリッパーで加工し、アルミニウム撚り線の切れの有無を確認した。
ストリッパーの穴径は9.0mmのものを使用し、被覆層の皮むき長は15mmとした。この加工を各太径絶縁電線に対して4回試験を行った。
評価は、4回の試験全てにおいてアルミニウム撚り線の切れ、傷(折れ)が確認されなかった場合を「A」、1回でもアルミニウム撚り線の切れ、傷(折れ)が確認された場合を「B」、2回以上の試験においてアルミニウム撚り線の切れ、傷(折れ)が確認された場合を「C」とした。本試験において、評価ランク「A」が合格である。
<絶縁電線の柔軟性試験>
各実施例及び比較例で製造した、38SQアルミニウム撚り線を用いた太径絶縁電線をU字状に、4D(Dは太径絶縁電線の半径を示す。)に曲げた際(U字状曲部の内径は太径絶縁電線の半径の4倍)に、曲げるのに必要な力をテンシロンで測定した。
表1〜表3には曲げるのに必要な力の測定値を記載した。本試験においては、曲げるのに必要な力が35N以下である場合を「合格」、35Nを超える場合を不合格とする。
<加熱巻き付け試験>
絶縁電線の耐熱性を、下記の加熱巻き付け試験により評価した。
具体的には、各実施例及び比較例で製造した、1/0.8mmアルミニウム導体を用いた細径絶縁電線又はケーブルを自己径(直径)と同一の外径を有するマンドレルに6ターン巻き付けて試験サンプルを作製した。この試験サンプルを160℃の恒温槽に24時間放置した。放置後、試験サンプルを常温に戻し、試験サンプルから細径絶縁電線を解いて、その表面を確認した。なお、実施例2及び10のケーブルについては、シースを取り除いてから(細径絶縁電線について)本試験を行った。
評価は、細径絶縁電線が全体にわたって溶融していなかった場合を「A」、細径絶縁電線が溶融して隣接する細径絶縁電線(ターン部同士)と融着しているが、アルミニウム導体が見えていなかった場合を「B」、細径絶縁電線が溶融してアルミニウム導体が露出していた場合を「C」とした。本試験において、評価ランク「A」及び「B」が合格であり、これら評価ランクは、銅導体を用いたこと以外は同様にして製造した細径絶縁電線が示す耐熱性と同等以上の耐熱性を示す。
Figure 2019179627
Figure 2019179627
Figure 2019179627
表1〜表3の結果から、以下のことが分かる。
アルミニウム導体と、本発明で規定するシラン架橋性組成物のシラノール縮合硬化物からなる最内被覆層とを併用しない比較例の配線材は、いずれも、耐熱性、皮むき加工性及び柔軟性を兼ね備えるものではないことが示されている。
すなわち、比較例1は無機フィラーを少量含有する非架橋の樹脂組成物からなる最内被覆層を有する配線材であり、十分な耐熱性を示さない。比較例2は、シラン架橋ではなくベース樹脂同士を有機過酸化物で自己架橋させた最内被覆層を有する配線材であり、皮むき加工性も柔軟性も劣るものである。比較例3は、無機フィラーを少量含有するシランMBを用いて形成した最内被覆層を有する配線材であり、皮むき加工性と柔軟性に劣る。比較例4は、エチレンゴムもスチレン系エラストマーも含有しないベース樹脂と無機フィラーを無含有のシランMBを用いて形成した最内被覆層を有する配線材であり、皮むき加工性及び柔軟性が十分ではない。比較例5は、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーを含有していてもシランカップリング剤がグラフト化反応していないシランMBを用いて形成した最内被覆層を有する配線材であり、皮むき加工性が十分ではなく(加工時にヒゲの発生を抑制できず)、耐熱性にも劣る。比較例6は、無機フィラーを多量に含有するシランMBを用いて形成した最内被覆層を有する配線材であり、柔軟性が低く、皮むき加工性が十分ではない(加工時に切断カスの残存が顕著となる)。比較例7は、シラノール縮合触媒を含有しないシラン架橋性組成物を用いて形成した最内被覆層を有する配線材であり、皮むき加工性が十分ではなく(加工時にヒゲの発生を抑制できず)、耐熱性にも劣る。
これに対して、アルミニウム導体と、本発明で規定するシラン架橋性組成物のシラノール縮合硬化物からなる最内被覆層とを組み合わせて直接接した状態に配置した実施例1〜10の配線材は、いずれも、絶縁電線のカッティング性試験、絶縁電線の柔軟性試験及び加熱巻き付け試験に合格しており、高い耐熱性と、優れた皮むき加工性及び柔軟性とを兼ね備えていることが分かる。

Claims (5)

  1. アルミニウム導体の外周に、少なくとも1層の絶縁被覆層を有する配線材であって、
    前記絶縁被覆層のうち前記アルミニウム導体の外周に直接設けられた最内絶縁被覆層が、下記シラン架橋性組成物のシラノール縮合硬化物からなる配線材。
    <シラン架橋性組成物>
    エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも一方を含有するベース樹脂100質量部と、無機フィラー10〜400質量部と、前記ベース樹脂にグラフト化結合したシランカップリング剤1〜15.0質量部とを含有し、更にシラノール縮合触媒を含有するシラン架橋性組成物
  2. 前記ベース樹脂が、有機鉱物油を含有している請求項1に記載の配線材。
  3. 前記エチレンゴム及びスチレン系エラストマーの、前記ベース樹脂中の合計含有率が、少なくとも5質量%である請求項1又は2に記載の配線材。
  4. 前記無機フィラーが、金属水和物、シリカ、炭酸カルシウム及びクレーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の配線材。
  5. 前記絶縁被覆層が2層以上であって、その最外絶縁被覆層が、ポリ塩化ビニルの絶縁被覆層である請求項1〜4のいずれか1項に記載の配線材。
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